宮永照(28)「…アラフォーじゃないッ!まだアラサー!!」 (53)

立つ?

照「咲~、こっちこっち~!! 元気だった?」

咲「うん。お姉ちゃんどうしたの急に? 予定より一週間も早いよ?」

照「契約が思ったより早くまとまって暇だったから、繰り上げて帰ってきちゃった」

和「お義姉さん、お久しぶりです。今年も大活躍でしたね」

照「…あ、原村」ジトー

和「…私もいるとわかった途端にテンションをあからさまに下げるのは止めていただけませんか?」

咲「もう、お姉ちゃんったら! いいかげん和ちゃんと仲良くしてよね」

照「…父さんや母さんは認めたのかもしれないけど、私はまだ全面的に賛成した訳じゃない」ブー

咲「わざわざスペインまでお姉ちゃんのために和ちゃんとのこと報告しに行ったのに…」

照「確か咲の必死さに打たれて快く赦してあげた、気がする」

咲「……快く? あの時、お姉ちゃんが和ちゃんに何したかまだ覚えてるよね?」

照「……私は過去に囚われない主義。そんな昔のこと、もう覚えていない」ドヤッ

咲「じゃあ思い出させてあげようか? お姉ちゃんはね、和ちゃんに三日三晩麻雀を楽しまさせたんだよ…」ギロッ

照「…うーん、そんな酷いことした覚えない」

咲「そのせいで和ちゃん、一週間生死の境を彷徨うことになったんだからね!」

和「…も、もうあの時のことは思い出したくもありません」カタカタ

照「まぁ、いいじゃん! 可愛い咲のお願いを最終的には聞いてあげたんだから。…原村は絶対に許さないけど」

咲「もう… そんなことばっか言うならお姉ちゃんが将来結婚する時、私も相手に同じことするよ!」

照「そ、そんな血も涙もない酷いこと止めて!」

咲「…じゃあ一応は認めてくれたんだし、和ちゃんともっと仲良くしてね」ニコッ

照「うぅ…」ブスゥ

和「まぁまぁお義姉さん、久しぶりの日本なんですから呑んでください」トクトクトク

~で~


照「原村~ 豚なんこつとぼんじりお願いね~♪」

和「はい。飲み物はコークハイでよろしかったですか?」

照「うん。…あ、それとおしんこの盛り合わせも追加で~」

咲「…ごめんね和ちゃん。お姉ちゃんにつきあわせちゃって」

和「大丈夫ですよ、お義姉さんの機嫌もだいぶ良くなって何よりです。咲さんはグラスワインでよかったですか?」

咲「それじゃあ白をお願い。和ちゃんもお姉ちゃんなんか気にしないでドンドン飲んでね」

和「はい、ありがとうございます。 …あ、すいません。注文いいですか?」

咲「もう、お姉ちゃんったらピッチ早過ぎだよ!」

照「久しぶりで日本の休暇なんだからさぁ、たまにはいいじゃん~♪」

照のコレジャナイ感

これは支援

元祖アラフォーが危険すぎる年代設定はやめろ

和「でも、なんか不思議ですね。欧州でも活躍する代表のエースがこんなごく普通の焼き鳥屋なんて」

照「あっちだとこういうジャンクな物、なかなか食べれないから」

咲「お姉ちゃん、本当に昔っから食事とか何も節制しないのに体形変わらないよね。羨ましいよ」

照「昔は胸が大きくならないのが嫌だったけど、今はこの体質が嬉しいかも」ヘラヘラ

和「そうですね。私なんかも最近はちょっと不摂生するとすぐ体重が増えちゃいますから」

照「…どうせお前は増えた分、ここがまた大きくなるんだろ?」ムニュ

和「~~ッ!?」///

咲「 お 姉 ち ゃ ん !!」ゴッ

照「いいじゃん少しぐらい揉んだって。コイツも一応身内なんだし、減るもんでもないだからさぁ~」ケラケラケラ

咲「うぅ、最低だこの酔っ払いは… 大丈夫、和ちゃん?」

和「あ、はい。ちょっと驚いただけですから」///

照「なんか原村、前あった時よりまた大きくなってないか? あ、そっかやっぱ咲に毎晩…」

咲「お、お姉ちゃん、いいかげんにしないと怒るよ! …もう、そんなにセクハラしたければ菫さんにしなよ!!」

和「…咲さん!?」

咲「……あ」

照「」

ん?

~そして~


和(咲さん、地雷踏んでしまいましたね…)

咲(ゴメン、ついね… こうなるとお姉ちゃん面倒だからなぁ…)

照「……なに二人でヒソヒソ話してるの? 言いたいことあるならはっきり言って!」ギロッ

咲「べ、別に何も言ってないって。ね、和ちゃん?」アセアセ

和「は、はい。全くもってお義姉さんの勘違いですよ」アセアセ

照「…嘘。いっつも皆、裏で私の悪口言ってるんだから」プンスカ

咲「そんな事ないってばぁ。 お姉ちゃんよくないよ、そういう酔っぱらい方…」

照「そう、思い出した! この前の代表の時だってさ、練習終わってダラーってしてたんだけどさ」

咲「うん、代表の練習結構キツいもんね」

照「そしたら夢乃にね 『…なに、このおばさん?』 って目で見られた~!」

和「…マホちゃんがそんな目で見る訳がないじゃないですか」

照「どうせ私は麻雀しか取り柄のない、行かず後家なアラフォーなとこも小鍛治さんの後継者ですよぉ~だ!」

咲「だ、大丈夫だって、小鍛治さんが結婚したのもお姉ちゃんと同じくらいの年齢だったんだし」

照「違う!! まだ私はアラフォーじゃないッ!アラサー!!」

咲「いや、そんなこと誰も言ってないよ…」

和「ええ、それにいい年頃ですし、そろそろ弘世さんだってお義姉さんに…」

照「……あ”ン? あのドヘタレ菫に一体何ができるって!?」ギロッ

咲・和(最悪だ……)

照「…10年だよ、10年? こんだけつきあってるのに、菫から何かしてくれた事なんてろくにない!」

咲「いや、それはその… そう、菫さんがそれだけお姉ちゃんのことを大切にしてるんだよ!」

和「そ、そうですよ。 プラトニックなお付き合いって言うのも素敵じゃないですか!」

照「違うッ、あれはただヘタレなだけ! …全く、チ○コついてんのかってーの!!」

咲「…いや、ついてたら嫌でしょ?」

照「別に菫ならついてたっていい! …って言っても、あのヘタレならどうせ一生使わず仕舞いだろーけど」ケラケラケラ

和(…お義姉さん、よっぽど鬱憤が溜まってるんですね)

咲(…うん。菫さんにもいい加減、お姉ちゃんを何とかしてもらわないと困るよぉ)

咲「ええっと… ほら、菫さんもお仕事忙しいって言ってたよね?」

照「うん、今日も仕事で地方に行ってるって…」

咲「そっか、だからいなかったんだ… それじゃあほら、会える機会自体が少ないし仕方ないんじゃない?」

照「まぁ、家業を継ぐのも大変だってのはわかるけど…」ブー

咲「そう思えば私も去年会ったっきりだけど、菫さんはお元気なの?」

照「連絡はきてるから元気なんじゃない?  あ、これ最近の菫。見てみる?」ヒョイッ

和「わぁ、和服が似合っていますね。 ええっと、弘世さんのご実家って確か …任侠のお仕事でしたっけ?」

照「違う、日本舞踊の家元! ほんと昔っからそんな風に誤解されるよね、菫は」

和「すいません。でも弘世さんを久しぶりに拝見しましたけど、ますますお綺麗になられましたね」

照「でしょでしょ~? もう、菫ったら私の為に順調に育ってくれちゃってたまんないよね~」デヘヘ

咲(和ちゃんGJ!! もうこのまま惚気させといて、とっとと酔いつぶれてもらおうね)

和(そうですね。機嫌も直った様子ですし、何とかこんな調子のままで…)

咲「確かお姉ちゃん、菫さんとは高校の頃からつきあっているんだよね?」

照「うん。ほら、何って言うの? 運命の出会いだった、あれは」デレデレ

和「そうでしたか。じゃあお付き合いのきっかけもきっと素敵だったんでしょうね!」

照「……」ピクッ

和「……あれ?」

咲「……お姉ちゃん?」

和(……あの、もしかしてまた地雷踏んじゃいましたか?)

咲(……っぽいね。こんなとこにも埋まってたなんてわかるわけないよぉ)

照「…そうだ。そう、思えばあの頃から菫のヘタレ具合は酷かった」ゴッ

~白糸台卒業式・当日~


照「…本当に私たち、卒業しちゃったんだね」

菫「ああ、今となってはあっと言う間だった気がするよ」

照「この3年間、楽しかったね…」

菫「私もだよ。きっとここで過ごした時間は忘れることがないのだろうな」

照「そうだね。 …ところで菫、高校生活でまだ何かやり忘れていることない?」ニコッ

菫「やり忘れたこと…? ああ、まだ部室に最後の挨拶を済ませていなかったな」

照「…うん、それも凄く大事。でも他にもっと大事なことあるんじゃない?」ニコニコ

菫「…他にもっと大事なこと?」

照「…先月のバレンタイン、私に大事な話があるって言ってたよね?」イラッ

菫「……あ」

照「でもあの日は結局何も言ってくれなくて、卒業までには絶対伝えるって約束、し・た・よ・ね…?」ゴッ

菫「あ、ああ、そんなこともあったな…」

照「うん。で、今日が卒業式だったんだけど……」ゴゴゴ

菫「そ、そうだな」カタカタ

照「はい。じゃあ今日こそ聞かせてもらうから、お願いね?」ニコッ

菫「」


~5分後~

菫「ええっと、つまり私はだな…」///

照「……」


~10分後~

菫「しかしだ、周囲に勘違いされても私が… いや、私は構わないがお前に迷惑がかかる可能性も…」///

照「………」イラッ

~30分後~

菫「そう、こういったことは早急に決めるべきではないのかもしれないし…」///

照「」ブチッ

菫「……て、照?」

照「あああああああああぁぁッッ!! このヘタレがァッッ!!」

菫「ッッ!?」ビクゥッ

照「いい、今日で卒業なんだよ、わかってる? もう私たち、これからは今みたいに毎日会えないかもしれないんだよ!?」

菫「いや、確かにそういった機会は減るかもしれないが私も努力するし、どうしても仕方ない時は電話なりメールとかで連絡を…」

照「……ダ・マ・レ」ゴッ

菫「」

照「私は1年の時から菫のことが大好きだったし、今も菫のこと大好きなの!!」

菫「ワ、ワタ、ワタシモ(カン高い裏返った声)」///

照「ああ、もう余計なこと言わなくていいッ!! 菫も私もこと好きだよね?『はい』か『イエス』で答えてッ!!」

菫「ハ、ハイ」///

照「うん、わかった。私は菫とこれからもずっといっしょにいたい。菫はどうなのッ!?」

菫「ハイッ! ワ、ワタシモテルト・・・」///

照「そう、ありがと。 …で、これからはもう私たちは友達じゃなくって恋人になるんだけど問題ないよね?」ゴッ

菫「」/// コクコク

照「うん。じゃあ改めて、よろしくね菫ッ!!」ニパァァァ

菫「」///

もう照がプロポーズしたらいいんじゃないかな?

照「…そう、こんな調子であのヘタレは結局最後まで自分から言えなかった」

咲(…今の話ってもうほとんど脅迫だよね)

和(…そ、そうですね。でも、お義姉さんのお気持ちを考えたら仕方ない面もあるかと)

咲(それにしても菫さんがこんなに奥手な人だったなんて意外だったよ…)

照「そうだよ。私だって女の子なんだしさ、もっとロマンチックな告白を期待してたんだよ…」グスッ

咲「お、お姉ちゃんも大変だったんだね…」

照「あの頃は本当に苦労した。手を繋ぐまで半年もかかったし…」

和「は、半年ですか…?」

照「でも、その後がもっと大変だったなんてあの頃は想像してなかった…」

~付き合い始めて数年後~


菫「おい、大丈夫か照? 仕方ない奴だな、あれだけ飲み過ぎるなと注意したと言うのに…」

照「う~ん、ごめんね菫ェ~ うう、ぎもぢわるい……」

菫「おいおい、戻すのか? 全く… いまトイレまで連れてってやるからもう少し我慢しろ」

照「…ううん、大丈夫。横になれば済むと思うからベットまでお願い~」

菫「ああ、わかった。 …ほら、おとなしく寝ていろ。いま水を持ってきてやるからな」

照「ありがと、でも水はいらない~ ……それより菫、何かすごく暑いから脱がせて」チラッ

菫「…へっ?」

照「…ちょっと胸も苦しいから服を脱げば楽になる」チラチラッ

菫「ええっと自分では脱げない…、のか…?」

照「無理。早くして菫、じゃないと死んじゃうかも(棒読み)」

菫「わ、わかった。ボ、ボタン外すだけでいいよな?」

照「…ん? 上を脱がせ終わったら下もね。じゃないと苦しくて死んじゃうかも(棒読み)」

菫「」

すごくいいぞー

照「…で、手が震わせながらボタン全部外すまで1時間。下を脱がすのも横を見ながらで更に1時間」

咲「そ、そうだったんだ…」

照「…そこまで御膳立てしたのにあの馬鹿、一切何も手を出さなかった」ゴゴゴ

和「そ、それはその… そう、弘世さんはお義姉さんの体調を心配されていただけですよ!」

照「違う。私、女としての魅力ないのかな…」

咲「いや、籍入れたりするまではそういう事しない人なんて幾らでもいるから気にし過ぎだって!」

照「そうかな? あの頃はまだアイドル雀士してて結構人気あると思ってたんだけどなぁ…」

咲「あの頃はまだお姉ちゃん猫被って人気凄かったし、今も代表なんだから魅力はあるって!」

照「女の魅力… やっぱりおもち…、おもちなのッ!?」クワッ

咲「あ、お姉ちゃん人の話を全然聞いてないでしょ?」

照「そっか、そういう事だったんだね… 原村ァ、その無駄脂肪を少し私に寄越してッ!!」ギュルルル

和「や、止めてくださいお義姉さんッ!?」///

咲「お 姉 ち ゃ んッ!!」ゴッ

ほほう

照「…ごびんなざい」ボロッ

咲「…いい、お姉ちゃん? おもちはね、大きい人のをどんなに触ったりしても自分のは全然変わらないの」

照「そうなんだ、悲しいね…」

咲「…うん、怖いくらい運命って残酷だよね」

和(…あ、咲さんがいつも私のにあんな感じなのはそういう意味だったんですね)///

照「…ねぇ、そこの奇乳淫乱デジタルピンクは何で顔を赤らめてるの?」

和「えっ? 顔が赤いのはお酒を飲んだからで、別にやましい事なんて何も…」

照「嘘だッ!! …お前の事だ、どうせ咲とエッチなことしてたの思いだしてたんだッ!!」

咲「の、和ちゃん!?」///

照「…言ったよね、仕方ないから認めてあげるけど婚前交渉は絶対に禁止だって」

和「だから違いますって! お義姉さんの勘違いですし、約束も守ってます!!」///

照「……本当に」ジトー

咲「そ、そうだよ、大事な約束を破る訳ないって!」

照「だよね♪ 咲が私に嘘なんて吐く訳ないよね!」ニコッ

咲(…うん、約束してからなら嘘を吐いてる訳じゃないよね)

照「……いいよ、そんなすぐわかる嘘なんて。原村なんかがこんな可愛い咲に手出ししてない訳がない」

和「あの、お義姉さんは私の事を一体どんな目で…」

咲「ごめんね、お姉ちゃん… 約束は破ってないよ。でも、もっと前に和ちゃんが獣のように無理やり…」

和「…咲さん、色々と誤解を招くのでそういう説明は控えてもらえますか?」

照「いいよいいよ… もうこうなったら私も瑞原さんみたいに魔法の王国でも建てよっかなぁ~」ヘラヘラ

和「あ、最終的にはそういうのもアリかもしれませんね」

咲「和ちゃん、実の姉が17歳と252ヶ月なんて絶対嫌だからそういう事を軽々しく言うのは止めてね」ニコッ

照「ハァ…… もう本当にあの頃からずっとこんな調子。私が一方的に押してただけなんだよね…」

咲「だから菫さんはさ、ちょっと他人より奥手でお姉ちゃんのことを大事に思ってるだけだよ」

照「そうかな? 菫は言い出せないだけでさ、とっくに私になんて興味ないんじゃないの?」グスッ

和「お義姉さん… そんなことは多分ないでしょうから、あまり気にされないで…」

照「いいって、少しでも早く会いたいからって折角急いで帰ってきたのにさ、結局こんなだし…」グズッ

咲「…お姉ちゃん」

照「一番大事なことは菫からって、ずっとずっと待ってるのにさ全然そんな雰囲気ないし…」

照「もぅね…… なんか、少し待つのも疲れちゃった…、かな……」zzz

和「…お義姉さん、だいぶお疲れだったようですね」

咲「うん、あんな重圧が凄いとこで頑張ってるんだもん仕方ないよ」

和「そうですね。せめてオフの時ぐらいは気兼ねなくリラックスして頂きたいのですが…」

咲「まぁね。でも、みんな都合とかもあるし… あれ、和ちゃん電話鳴ってる?」

和「いえ、私じゃないです。お義姉さんの携帯でしょうか?」

咲「そうみたいだね。 どうしよう、起こした方がいいかなぁ?」

和「困りましたね。 お義姉さん、お電話が入っているみたいですけど?」ユサユサ

照「…菫のドヘタレ んぁにがシャープシューターだ! ムニャムニャ」zzz

咲「熟睡ぽいね。 お父さんたちじゃないだろうし、誰からだろう? あ……」

~そして~


菫「済まなかったな咲ちゃん、コイツの面倒を見て貰っていたみたいで」

和「弘世さん、ご無沙汰しています」ペコッ

菫「…原村か? 久しぶりだな、咲ちゃんとの事は聞いているよ。 …全く、義理の妹にも面倒かけていたとはな」ハァ

咲「いえ、お姉ちゃんなら普段通りだったんで気にしないでください。 それより菫さん、出張に行ってたんじゃ?」

菫「ああ、関西の方にね。 午前中、いきなり照から連絡があったから急いで帰京してきたよ」

咲「そうだったんですか。お姉ちゃんの我が儘でご迷惑おかけしたみたいですいません」ペッコリン

菫「気にしないで、咲ちゃんが謝ることじゃないよ。 …コイツは昔っから変わらないな」

和「…あの、弘世さん一つ伺ってもよろしいですか?」

菫「…うん?」

よけ

和「関西にいらっしゃったのなら、直接長野に来られた方が早かったでしょうし何故東京へお寄りに?」

菫「…ああ、ちょっと東京でやっておきたい用事があってな」

咲「そうだったんですね。 でも、もっと早く電話でもくれていたらきっと起きて待っていたと思いますよ」

菫「そうだね。 まぁ、確かに遅くはなったが東京出る時には連絡したんだがなぁ…」

和「そうみたいですね、この表示ですと未読のメールが何通かあるみたいです」

咲「もぅ、お姉ちゃんったら相変わらず機械音痴なんだから…」

菫「さてと、駆けつけたはいいが肝心の本人がこれではな…」フゥ

咲「…あの、菫さん」オドオド

菫「うん、何かな咲ちゃん?」

咲「…その、凄く失礼と言うか、答え難いことだと思うんですけど聞いてもいいですか?」

菫「別に構わないが、それは私が答えられることかな?」

咲「はい。 姉は私みたいに色々抜けていて、昔から菫さんには迷惑かけてばかりだったとか」

和「咲さん…?」

咲「私は、いえ父も母も菫さんみたいなしっかりした人が傍にいてくれて本当に安心しています」

菫「私は別にそんな…」

咲「でも、菫さんにもお仕事とか自分の大切な事があると思うんです」

菫「……」

咲「姉は色々と強引なので昔からご迷惑おかけしていたみたいですし…」

菫「やれやれ、どうやらコイツから昔の話を聞かされていたみたいだな」

咲「ええ、だからもし、菫さんにとって姉が負担になっていたりしていたなら…」

良い

菫「負担か… そういった物ではないと思う。…だが、私にとって照の存在が重いのは否定しないよ」

和「…!?」

菫「彼女は今や世界有数の雀士だと言うのに、私はただ親の仕事を継いだだけだからね…」

咲「…そんなことないです。最近、菫さんのお名前を見聞きする機会は多いですよ」

菫「いや、まだ照に比べたら話にもならないさ。 時にはそんな関係に重圧を感じることもあったし、どこか癪だったのだろうな」

和「癪…?」

菫「子供じみているのは自覚しているが、負けず嫌いの性分はどうにも直らなくてね」

咲「ふふ、なんだかそういう所はお姉ちゃんと少し似ていますね」

菫「違う世界だろうと少しでも照のいる高みに近づこうと、勝手に張り合って仕事に没頭していたのかもしれないな」

和「そうだったんですね…」

ふんふむ

菫「だからかな、ここ数年は私も余裕がなかったのかもしれないな…」

菫「貴重なオフに連絡をくれる気持ちは嬉しかったのだが、なかなか都合を合わせられなくてね」

咲「…ええ、簡単にはその辺りの話は」

菫「…そうか。だから最近はたまの機会に顔を合わせても喧嘩になったりする事も多かったよ」

咲「もう、お姉ちゃんったら…」

菫「いや咲ちゃん、悪いのは私なんだよ。昔から他人に思いを伝えるのが酷く苦手な性質だった私が」

和(つまりは弘世さんのヘタレさが原因、なんて言える空気じゃありませんね…)

菫「……だから、もう彼女との関係にも私から明確な答えを出さなければいけないのだろうな」スッ

咲「…えっ!?」

和「弘世さん…、それは…?!」

照「菫の馬鹿… 鈍感ヘタレ……」zzzz

菫「…これが私の答えだ。彼女が目をさましたら、必ず言葉も添えるよ」

菫「……ずっとずっと伝えられなかった言葉を、ね」

咲「…わかりました。じゃあ私たちはお邪魔でしょうから帰ります。 …姉をよろしくお願いしますね」ペッコリン

菫「…何時目をさますかわからないのだし、咲ちゃんたちなら居ても構わないんじゃないか?」

和「全く弘世さんったら… そんな大事なお話の時に居合わせたらきっと後までずっと私たちも怒られちゃいますよ」

咲「そうだね。 あ、でもお姉ちゃんそそっかしいからすぐには気づかないかも、左手に」クスッ

照「……ん? あれ、菫……??」ムクッ

咲(…!? それじゃあ、後は頑張ってくださいね菫さん!!)タタタ

菫「あ、咲ちゃん! ……やっと目をさましたか。全くお前は何でも急すぎるんだよ、前もって連絡くれれば」クドクド

和「お義姉さん、指輪にちゃんと気付くでしょうか? それに弘世さんもきちんと伝えられるか少し心配です」

咲「…うん、大丈夫だよきっと。お姉ちゃんも菫さんも、ずっとずっとお互いに想いあっていたんだもん」

和「…そうですね。 さすがは弘世さん、狙いを確実に撃ち落とす技術は御健在のようです」

咲「懐かしいね。白糸台のシャープシューター、だっけ? でも、お姉ちゃんならとっくの昔に撃ち落されてたんじゃない?」

和「フフ、きっとそうだと思います。 目が覚めたらその指には…、昔のCMみたいでロマンチックですね」

咲「実際だと結構恥ずかしいけどね。和ちゃんもああいうのって憧れる?」

和「まぁ、それはそのぉ… 『も』ってことは咲さんもああいう演出がかった方法が?」

咲「う~ん、やっぱり姉妹だから好みも似てるのかなぁ? 菫さんみたいな素敵な人にあんな感じで貰っちゃったらね~」

和「さ、咲さん!?」アワワ

咲「アハハ、冗談だよ。 でも、好みが似てるってのは本当。だからお姉ちゃんもきっと和ちゃんのこと好きだと思うよ」

和「そうですか、本当にそうなら嬉しいのですが… あの、咲さん何か携帯が」

咲「あ、なんだろうまたこんな時間に? メールかな」

和「…誰からでしょう?」

咲「……お姉ちゃんからだ。『色々ありがとう。あと、暫く連絡できなくなるけど心配しないで』だって」

和「……どういうことでしょうか?」

咲「……わからない。そんなことより菫さんとどうなったのか気になるのにお姉ちゃんったら」

~3日後~


照「ただいま~」

咲「お姉ちゃん、あの後一体どうしたの!? 全然連絡取れなくてみんな心配してたんだよ!!」

照「あ、本当に~? ゴメンゴメン、こっちも色々と忙しくってね~」ニコニコ

咲「それに本当だったら今朝スペインに戻るはずだったよね、大丈夫なの?」

照「うん、いいのいいのそんなこと心配しなくても。お父さんとお母さんは?」

咲「そんなことって… 二人とも出かけてていないよ。それよりお姉ちゃん、あれから一体何があったの?」

照「そっか。 じゃあ、咲が一番最初に話す人になるのだけど、実はお姉ちゃん結婚することになりました!」

咲「本当に!! じゃあ、菫さんのプロポーズ受けたんだね。おめでとうお姉ちゃん!!」

照「うん、ありがとう」ニパアァァ

照「そう、それで将来のことなんだけど… あれ、咲の電話鳴ってるよ?」

咲「……えっ? う、うん、ちょっとごめんね。あれ和ちゃん?」

和『あ、咲さんお義姉さんと連絡は取れましたか!?』

咲「ああ心配かけてごめんね、お姉ちゃんならたった今帰ってきで目の前にいるけどどうしたの、そんな慌てて?」

和『お義姉さんのWebサイトでついさっき現役引退の声明発表があって、いま世界中大騒ぎになっているんですよ!!』

咲「ええええぇぇぇっ!? …お、お姉ちゃん現役引退ってどういうこと?」

照「あ、今から言おうとしたのに。 お姉ちゃんね、お嫁さんになるから麻雀辞めたんだ」

咲「はい!? …いや、チームと契約だってあるし、代表だってあるよね?? 世界ランクだって1位なのにそんな勝手なこと…」

照「いいのいいの、これからは菫に養って… あ、妹の前でも旦那様って呼ばなきゃいけないのかな?でも女同士だし…」

咲「お、お姉ちゃん、こんな大事なことは勝手に決めちゃダメだって昔っから言ってるよね…」

照「ごめんね、咲。でも麻雀とかも大切だけどさ、貰ったコレに比べたら大したことないよね~」ニコォ

咲「…全くお姉ちゃんったら。          ………ま、いいか」

和『咲さん?咲さん?? それと大星さんからもその前に連絡があったんですが…』

咲「あ、ごめんごめん。淡ちゃんから? 珍しいね」

和『ええ、それで先程弘世さんが病院に緊急搬送されたって騒ぎになっているとか…』

咲「えええっ!? なんで菫さんが? ね、ねぇお姉ちゃん菫さんが病院に運ばれたって!!」

照「…うん、知ってる。病院まで送ったの私だし、意識もしっかりしてて体調も疲れてるだけらしいからとりあえず帰ってきた」

咲「いや、でもそんな結婚する相手をおいてきちゃうなんて有り得ないよ!」

照「…うん、私だってずっと付き添っていたかったよ」

咲「…じゃあ何で戻ってきちゃったの?」

照「だって、お医者さんから患者が私に怯えてるから付き添いはダメって」

あっ…(察し

ワロタ

咲「怯えてるって… お姉ちゃん、菫さんに何かしたの?」

照「心当たりが全くない」

咲「…そうなの? じゃあ今日まで連絡取れなかったのは何か関係ある?」

照「ああ… まぁ、ほら晴れて夫婦になるんだからもう遠慮いらないんだし、十年分の欲求不満を解消してきただけ!」ツヤツヤ

咲「……じゃあ、あれから今日までずっと?」

照「うん! 菫の調子が本当にまずくなってきたから、仕方なく途中で止めてきた」ブー

咲「」

和『咲さん、聞こえてますか? それで弘世さんは『回るの怖い』と扇風機にも怯える尋常じゃない状態だとか…』

咲「ええっと、和ちゃんそれはその……」

照「早く菫、調子戻らないかなぁ~ またヘタレられないよう既成事実をとっと作っておきたいのに…」

咲「……お姉ちゃん」



おしまい。

乙乙

ギュルル

おつかれちん

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