ガチャ……バターン! ※モバマスSS (38)

シリーズ物ですが、繋がりはありませんのでお気になさらず。

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――CGプロ社長室――


社長「37……38……39……40」


社長「ひゃひゃひゃ……私は札束を数えるのがだーい好きなんだぁ」



ガタタッ……



社長「ん、なんだ?ドアの向こうから音がしたような」


『……し……』


社長「?」


『く……ろ……』


社長「だ、誰かいるのか」


『寿司を……』


社長「!?」


ガチャバターン!!


「寿司を食わせろオォォォォォ!!」


社長「ギャアアァァァ!!」



社長「なんだ!モバP君か!ノックぐらいしたまえ!」


モバP「SUSHYYYYY……」


社長「す、寿司?」


モバP「俺はなぁぁ、一人前になったら稼いだ金で、銀座に行って寿司を食うのが夢だったんだよォォ」


モバP「ところがどうだ、金はそこそこ稼いだのに……
5年間で1日も休みが無いとはどういう事だ

人の夢を踏みにじり続けやがってええええええ」クワッ


社長「うわぁぁ!
キミその人知を超えた顔するのやめてくれない!?」


モバP「だったら有給をよこせぇぇぇ!」


社長「いやしかし一人きりのプロデューサーに現場を離れられるわけには……」


モバP「何だと?」クワッ


社長「ヒェッ……た、頼む、何とか半休で勘弁してくれ」


モバP「は、半休だと」


社長(あぁぁ、やっぱりムシがよすぎたか……!?)


モバP「この野郎ぉぉぉ!!」


社長「スイマセン!」


モバP「いいんだな!?ホントに半休貰っていいんだな!?」


社長「スイマセ……えっ?」


モバP「もう取り消し出来ねーからな!半休だ!ヒャッホー!」


社長「…………」


モバP「ありがとう!ありがとう社長!いいとこあるなぁ貴様!」


社長「いや、半休はやるがちょっと待て。スケジュールを調整するから。
そうだな、キミの半休は……


6ヶ月先になるな」


モバP「ろっ、6ヶ月先!?」


社長「6ヶ月先だ」


モバP「馬鹿な!そんな事があってたまるか!6ヶ月だぞ!?半年だぞ!?」


社長「待てないなら休みはやれんな」
 

モバP「半年……」


モバP「半年か…………」




モバP「うん、待てる!」


社長「すごいなキミ」




――半年後 事務室――

午前11時50分



モバP「とうとうこの日が来た」


ちひろ「とうとう来ましたね」


モバP「さすが人気店、昼の予約しか取れなかったけど……仕方ない」


ちひろ「仕方ないですね」


モバP「この日のためにどれだけ残業をこなしたか……
辛かったね、ちひろさん」


ちひろ「そうですね、絶対おかしい」


モバP「何が?」


ちひろ「プロデューサーさんを寿司屋に行かせるために、
私まで無闇な残業をさせられたこの半年間はおかしい!」


モバP「本当にありがとう」


ちひろ「そのうえ午後は私だけで全部回すというのもおかしい。
だんじておかしい!キーーッ!」


モバP「落ち着いて。まずスタジオ収録のフォローだよ。よろしくね」


ちひろ「ああ、寿司食べるの失敗しないかなあ。
ワケ有り顔のアイドルが急に飛び込んできて、対応に追われているうちに予約時間過ぎないかなあ」


モバP「早く行かないと入り時間過ぎるよ?」


ちひろ「そうですね、いってきます」


モバP「いってらっしゃい」 


ちひろ「すべてのネタに小骨が入っていたらいいのに」


ガチャ


ちひろ「湯飲みが爆発したらいいのに」


バターン




モバP「ふん……銀座の名店“ミツボシ”が、小骨を残すなんてミスをするものか。
それに……」


モバP「ワケ有り顔のアイドルが飛び込んでくるって?
バカめ!担当アイドルなら今日は全員オフにしてやったわ!」


モバP「さあモバP、時計を見て時間を確認した。

出発か、出発するのか、あーっとどうやら出発だ、書類のファイルを棚に戻した!

さらに、PCをスリープに叩き込んで、バッグを手にしたぞ!

一直線に出口へ向かう、もはや迷いはない!」


モバP「まぐろ!こはだ!あーなーご!
まぐろ!こはだ!あーなーご!

モバP、いまドアノブに手を伸ばした!
ドアノブの先端が描く曲線は、栄光への架けは――」


ガチャバターン!!!








     神 谷 奈 緒







神谷奈緒「……」ワナワナ


モバP「な」


奈緒「……」プルプル


モバP「ど、どうし」
奈緒「あ、あっれープロデューサーさん!こんな所で会うなんて偶然だなあ!」


モバP「偶然ってお前、ここ事務し」
奈緒「いやーたまたま!
たまたま事務所の近くを通りかかったんだけどさー!」


モバP「お前涙目になって」
奈緒「せっかくだし、偶然だし、せっかくだし偶然だからちょっと話があるんだよね!時間あるかなあ!」


モバP「お、俺に?どうしても俺に?」


奈緒「どうしても!って、わ、わけじゃないんだけど?
どっちかっていえばプロデューサーさんが、良いなあ、うん!」


モバP「……」



モバP「……」



モバP「よし……奈緒、そこに座って待っていてくれ」


モバP「いまプロデューサーを呼んで来るから!」ダッ


奈緒「プロデューサーはあんただろ!?」ガシー


モバP「そうなんだよなあ!あーーー!!!
これ長引くうわーーーー!!!
ソファに座って待ってろ!茶を入れて来るからー!!」


奈緒「う、うん?」




モバP(どうする……どうしたらいい!

話がある、とか言ったって照れ屋の奈緒の事だ。
自分から話を打ち明けるなんて希望的観測は捨てるべきだ!

俺の見立てではあの顔は……
2時間は黙ったままだぞ。

だが寿司屋の予約まではあと1時間。移動にかかるのは30分……

くそう!!やれるか、俺のプロデュース力で!?)



 うおおおおおお! ガッシャー



奈緒「」ビクッ!


モバP(何を弱気になってんだ。
どんな修羅場も掻い潜ってきたじゃないか)

モバP(凛が俺を「ご主人様」と呼び間違えた時だって、
ヘレンが一切の打ち合わせなく暗黒舞踏をおっ始めた時だって、何とかごまかしてきた!)


モバP(俺はやれる、俺はやれる、モバPだ、モバPだ、俺はモバPだ!)ブチブチーン




モバP「待たせたな……」


奈緒「ううん、大丈──Yシャツのボタンが全部無い!」


モバP「それで、奈緒、どうしたんだ?」


奈緒「うん、その、な……」


モバP「うん、どうした」


奈緒「えっと……」


モバP「……」


奈緒「……」



モバP(やっぱりダメか)


モバP(こっちから探りを入れていくしかないな)


モバP(俺に隠し事なんか通用しないんだぜ、奈緒。
見せてやる。誰が髪を切ってもすぐ気付くと評判の観察眼……)


モバP(プロデューサーアイ!!)ギン


奈緒「目がこわい」


モバP(……髪を切ったわけではないな)


モバP(あっ、髪を……?切ったわけでは……?ないなあ)


モバP(うーーーん?)


奈緒「あ、もしかして、髪を切ったのやっと気付いた?……なあ、聞いてる?」


モバP(やっぱり髪を切って……?……ないな)


奈緒「そうだ!いまお昼休憩だけど。もう昼ご飯食べたのか?
腹減ってるんじゃ」
モバP「ちょっと静かにしてろ!!」

奈緒「え、えぇ~……」


モバP(どこかに……どこかにヒントがあるはずだ……!)



10分経過


モバP(じーーー)

奈緒「なんでそんな睨んでくんの?」



20分経過


モバP「じーーー」

奈緒「近い……近い近い近い!」



30分経過


モバP「ない」ガクーン

奈緒「」どっきんどっきん


モバP(ん?ほ、ほんぎゃー!!30分経ってんじゃねーか!!

どどどどうしよう……?やばいもう今すぐ出ないと!

だから、奈緒の話を5秒で聞き出して5秒で悩みを解決して……

出来る出来る俺なら出来る!)


奈緒「あ、あの、プロデューサーさん。
そろそろ話を聞いてもらってもいいか?」


モバP「えっ」


奈緒「いいかげん、話を聞いてくれる……?」


モバP「あ、はい……」


モバP(ちゃんと話してくれるようだ。

まさかとは思うが、……この30分はムダだったんだろうか。
いやいやそんな事は後で考えよう。
今はまず話を聞いて──

──ん?)


奈緒「すーはー。あの、ね?」ぎゅっ


モバP(何だ、奈緒が握りしめている巾着袋は。初めて見るやつだ)


モバP(小さい辞書くらいの物が入っている様に見える。あれが今日の本題というわけか……)


モバP(何だろうか。そうだな、サイズ的に、例えば弁当箱なんかが入っていそうだが)


モバP「……」







モバP(弁当箱!?!?!?)




奈緒「……」ぎゅ


モバP(まさか奈緒、まさか奈緒が俺のために、弁当をををを

傘を、傘をひとつ届けるのにもぐちゃぐちゃに照れ果てていた奈緒が

ウチを代表するツンデレが

デレを代表する、手作り弁☆当☆を)ブワッ


奈緒「プロデュー……えっ!?泣いてんのか!?」


モバP(俺のこの5年間は、天文学的な勤務時間はムダではなかった。ムダではなかった……



思い出の向こうにーー弁当がある



さあ、奈緒の弁当を食べることで、俺のプロデュース業を今こそ成就させよう。

その、弁当を、食べて──)


モバP「……」





モバP「これから寿司食うのに!!??」


奈緒「急に何だよ!?寿司!?
聞いてよ、実はさ、これ、あたしが作っ」
モバP「あいや待てい!ちょっと待てえい!!」

奈緒「なんなんだよもう!!」



モバP(奈緒、奈緒……いや、神!俺の運命よ!!
なぜだよ!なぜ今日なんだよ!!
5年越しの夢をなぜ同時に並べたんだよ!)

モバP(くそ、こうなったら弁当を食ってから寿司屋に行くか?

ダメだ、何をバカな事を。見掛けによらず少食な俺の胃が、弁当プラス寿司のコンボに耐えられる訳がない!戻す!

だいたい移動時間を考えたら弁当を1分ちょっとで食わなきゃならないじゃねーか!

苦労して作った弁当をご飯おかずの垣根なく丸飲みにされる奈緒の気持ちも考えろ!!)


モバP(ならば貰うだけ貰っておいて後で食うか?

ダメだ、何をバカな事を。おかずの一つ一つにSTORYがあるのだ。
それを奈緒に解説して貰いながら食べるのが醍醐味だろうが!!

プロデューサーさんは普段茶色いものばっかりだから、緑色を多くしたんだ、とか

焦げちゃった玉子焼きを必死に言い訳したりとかさあ!!)


奈緒「なあ、もういいか?いつまで頭抱えてんだよ」


モバP「まーだだよ!!」


奈緒「いい加減にしてくれよ!これさ、その……ね?
こっ、この袋のなかさ、へ、ヘタクソなんだけどさ!

プロデューサーさん、いつも茶色いのばっかだし、えっと、緑色のものをって、おも」
モバP「そこまでだ!!」

奈緒「もがが!?もがもが!」


モバP(危ねえええ!奈緒が弁当を見せた瞬間に、今ここで食べる事が確定する!!

今日寿司を食べに行かないと次はいつ行けるか……半年間の苦労が……!)


奈緒「んー!んー!ぷはっ」


モバP(何かないのか、これを切り抜ける妙案はないのかぁぁヒエェェあと10分しかないぞどうすんだ!
どうすんだ!

どうすんだ!

どうすんだ!)





奈緒「もういいよ」





モバP「……へっ?」


奈緒「プロデューサーさん、何か用事があるんだよな?
さっきから時計ばっか見てるし。
時間大丈夫か?」


モバP「な、なお」


モバP「ごめん、ホントは気付いてたんだけどさ、私もちょっと、すっごい、勇気を……出して来たから、引き下がれなかったよ」


モバP「あ、あ」


奈緒「でも、た、タイミングが悪かったみたいだな!
バッカみたい!ごめん!ホントごめんな!

あたし帰るから」


モバP「ああ、まって」


ガチャ


奈緒「時間取らせた上に、渡す事も出来なくて、何しに来たんだってカンジだよな。

ホントごめん。

プロデューサーさん。

これの、ことは、うくっ、ながっだ、ことに。

おねがい、わずれで」



パタン……





奈緒「ぶろでゅーざーさ」


モバP「奈緒、行くんじゃない」


奈緒「だっで、やだぼう」


モバP「許してくれ」

スッ、スッ、ピッ
トゥルルルルル


モバP「あ、もしもし、ミツボシ寿司さんですか」 

モバP(バカだ俺は)

モバP「13時に予約をしたモバPと申します」

モバP(奈緒は初めから勇気を振り絞ってくれていたんだ)

モバP「大変申し訳ないのですが」

モバP(奈緒を傷付けて食べる寿司なんて、うまいはずがないんだ)




モバP「予約を取り消させてください」




奈緒「プロデューサーさん」


モバP「はい、ご迷惑をおかけします。失礼いたします」ピッ


奈緒「あの……良かった、の?」


モバP「奈緒の涙に優先する用事なんかないよ」


奈緒「でもプロデューサーさん。プロデューサーさんは涙すっごい出てる」


モバP「大人には色々あるんだ」


奈緒「んふふ」



モバP「さあて、奈緒、その袋の中身を貰おうかな。
俺のために頑張って作ってくれたんだもんな?」


奈緒「なにっ、そんっ、いや、そう、なんだけど」


モバP「早起きして作ってくれたんだろ?」


奈緒「は、早起きはそんなしなかったけど」


モバP「楽しみだな」


奈緒「うぬぬ……。

ううん。そう。

そうなんだ。

プロデューサーさん、あたし、あたし、初めて作ったから、へったくそで……
気に入って貰えるか分からないけど」


モバP「うん」


奈緒「心を込めて作ったから」


モバP「うん」ぽろぽろ


奈緒「受け取ってほしい。この……」ずぼっ




奈緒「マフラー」





モバP「……」




モバP「……」




モバP「……」







モバP「えええええええええええーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!?!?!?

だってお前、えええええええええええ」


奈緒「プロデューサーさん、いつもオッサンみたいな茶色のマフラーだから、ね?
これ、緑色にして、みたんだけど」かぁぁぁ


モバP「」(真っ白)


奈緒「ごめん、ココとココとココがほつれてて……
やっぱダメだよな!こんなん要らないよな!持って帰る!やっぱ!」


モバP「いや、奈緒、嬉しいよ、貰うよ、ありがとう」


奈緒「ほ、ほんとか……?」


モバP「ああ、大丈夫だよ完璧だよ。

ちゃんと中まで火が通ってるよコレ」モシャモシャ


奈緒「何食ってんの!?」


モバP「奈緒は料理が上手だなあ」モシャモシャ


奈緒「だ、だれか来てー!プロデューサーさんがこわれたー!!」






   カァ カァ




モバP「………………………………」ごろん


モバP「あ、3時だ」


モバP「ハラ 減ったな……」


モバP「あ、そうだ、かっ○寿司行こう」

モバP「寿司かー久しぶりだなー」

モバP「一人前になったら、一流店で寿司を食うのが夢だったんだよなー」


モバP「さあモバP立った。施錠を確認する。
あったかいマフラーを巻いてバッグを手にしたー」


モバP「あとは遮る者のない栄光へのビクトリーロード。
まぐろ、こはだ、あーなーご。

モバP、ドアノブに手をかけーー」
『プロ、デューサー、さん……』

ガチャ……






    北 条 加 蓮











    北 条 加 蓮 ))フラッ







       ⌒ フラフラ
       ⌒
    北 条 加 蓮



バターーーン!!


モバP「かれーーーん!!」



おわり



奈緒、可愛いもよう。
テキスト漁りながら悶絶してました。
加蓮Pの皆様、すいません。

では依頼を出してきます。

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