鉛筆の闘争 (43)

ボールペン「……」

コンコン


シーン


ボールペン「返事はないな……」

ボールペン「……」

ボールペン「入るぞ、鉛筆」


ガチャッ

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モワ~ン

ボールペン「っ!?酒くさっ!!」

ボールペン「……あたりに酒瓶が散らばってやがる……」

ボールペン「あいつどれだけ飲んだんだよ……」

ボールペン「……それにしても、鉛筆……いないのか?」


ムクリ

ボールペン「!!」

鉛筆「……ん……ボールペン……か……」

ボールペン「……鉛筆」

鉛筆「……何か用かよ」

ボールペン「なに、筆箱さんから、お前がなかなか部屋から出てこねぇって言われたからよ」

ボールペン「ちょいと様子を見に来たのさ」

鉛筆「……そうか」

鉛筆「……別に大丈夫だ。心配しなくていいと伝えてくれ……」

ボールペン「そうはいってもなぁ……お前いくらなんでも飲みすぎだぜ」

ボールペン「そんだけ荒れてたら心配するっつーの」

鉛筆「……」

ボールペン「まあそう落ち込むなよ。こんなこと、よくあることで───」

鉛筆「黙れよ」

ボールペン「……っ」

鉛筆「お前に何が分かるんだよ……!」

ボールペン「……」

鉛筆「……悪い」

鉛筆「一人にさせてくれ……」

ボールペン「……」

バタン

筆箱「あ、ボールペン君。どうだった?」

ボールペン「生きてはいましたけど……かなり荒れてますね」

ボールペン「一人になりたいとのことです」

筆箱「そっかぁ……やっぱりかなり傷ついてるみたいだね」

ボールペン「そうですね……」

定規「ったくよぉ!失恋したくれーで女々しい奴だぜ!」

定規「もっとまっすぐビシッと生きられないもんかねぇ!」

ハサミ「そういうな。切り離せない思い出や感情というものは、誰しもが持っているのだ」

スティックのり「そうそう。私とかかなり粘着質になっちゃうし……」

筆箱「うーん、どうにかしてあげられないかなぁ……」

ボールペン(鉛筆がああなってしまったのは、定規が言ったように失恋が原因だ)

ボールペン(奴には消しゴムって言う彼女がいて、鉛筆ととても仲が良かった)

ボールペン(周囲からもお似合いカップルと呼ばれていたが……)

ボールペン(そんな鉛筆と消しゴムの前に、奴が現れた……)

鉛筆『ぐはぁっ!!』ドザァッ

消しゴム『鉛筆君……』

???『フフフ、その程度かい?』

鉛筆『な、何者だ、てめぇ……』

シャーペン『僕の名前はシャープペンシル。シャーペンと呼んでくれたまえ』

鉛筆『シャーペン……何なんだてめぇは!いきなり出てきやがって……!!』

鉛筆『さっさとその汚い手を消しゴムから離しやがれ!!』

シャーペン『おっと、これは手ではない。クリップというんだよ』

シャーペン『田舎者の君にはわからないかな?』

鉛筆『んだとぉ……!!』ギリッ

シャーペン『その様子だと、消しゴムさんから聞いていないのかい?』

鉛筆『何……?』

消しゴム『……』

シャーペン『僕と彼女は婚約関係にあるんだよ』

鉛筆『!!!』

鉛筆『なん……だと……?』

鉛筆『おい……どういうことだよ消しゴム……』

消しゴム『……っ』

鉛筆『おい!嘘だろ!嘘だって言ってくれよ!!』

消しゴム『……鉛筆君』

消しゴム『……ごめんね』

鉛筆『っ!!』

シャーペン『フハハハハ!!実に滑稽だな、鉛筆君』

鉛筆『ぐ……そんな……そんなこと……』

シャーペン『ん~~~実にいい表情だ!原稿用紙に詩的表現で書き綴って出版社に送り付けたいくらいに!!』

シャーペン『今の君は実に無様で、矮小で、下等な存在に見えるよ!フハハハハ!!!』

鉛筆『……てめぇ……!』

鉛筆『許さねぇ……許さねぇぞおおおおおおおおおおおお!!!!』バッ

シャーペン『ノック』カチッ

ドゴォッ!!

鉛筆『ぐはぁっ!?』

鉛筆(芯が……伸びやがった……!?)

鉛筆『ぐ……!』ドザァッ

シャーペン『じゃあ行こうか、マイフィアンセ』

消しゴム『……はい』


鉛筆『ま、待て……』

鉛筆『待ち、やが、れ……』

ガクッ

ボールペン(消しゴムはシャーペンに連れていかれ、今結婚式の準備中らしい)

ボールペン(こんな形で恋人を失った鉛筆は、今荒れてるってわけだ)

スティックのり「私が定規に鉛筆を貼り付けて、部屋から連れ出させてみる?」

定規「それだと俺と鉛筆がくっついて離れねぇだろうが!」

ハサミ「なら私が切り離してやろうか?」

定規「どっちかの身がほぼ確実に削れるじゃねぇか!こええよ!」

筆箱「でも無理やり出すのはよくないよ?彼自身が気持ちの整理をしないと」

定規「でもこのままだとあいつ、死ぬんじゃないんですかい?」

ハサミ「酒もかなり飲んでるようだしな……」

筆箱「うん、だから早めにどうにかしてあげたいんだけど……」

ボールペン「でも、どうにかって……一体誰が何を……」

???「なら、私に任せてはくれないか?」

一同「!!」

筆箱「あなたは……!」

コンコン

鉛筆「……」

コンコン

鉛筆「……」

鉛筆「……ボールペンか?一人にさせてくれって言ったろ……」

鉛筆「それとも筆箱さん?俺は今、ここから出る気はなくて……」

バンッ!

鉛筆「……!」


鉛筆削り「……こんなところで何をしている、鉛筆」

鉛筆「おやっさん……!」

鉛筆「どうしてここに……」

鉛筆削り「お前が何やら荒れていると聞いてな。周りにも心配をかけているようではないか」

鉛筆「……へん、説教しに来たってことか」

鉛筆「いいぜ、好きなだけしろよ。聞く気はねぇがな」

鉛筆削り「そうではない。私はお前に伝えたいことがあって来たのだ」

鉛筆「伝えたいこと……?」

鉛筆削り「お前、どうして消しゴムがシャーペンの婚約者になったか知っているか?」

鉛筆「あん?さあ、知らねえな」

鉛筆「強いて言えば、奴が俺より強いからじゃないのか。強い奴に惹かれ、それから俺に見切りをつけて、こっそり奴と婚約を……」

鉛筆削り「違う。これはすべて彼らの両親が望んだことだ」

鉛筆「何だって……!?」

鉛筆削り「シャーペン……非常に素晴らしい機能性を持つ文具だ。文具としての人気は高い」

鉛筆削り「そんなシャーペンの家から誘いが来たら、消しゴムの家は断る理由はないのだ」

鉛筆削り「消しゴムの意思とは無関係に、な」

鉛筆「……」

鉛筆削り「どうした?」

鉛筆「……でも、俺なんかといるよりも……」

鉛筆「シャーペンと一緒にいたほうが、消しゴムのためになるんじゃないかって、思うんだ……」

鉛筆削り「……」

鉛筆「おやっさんの言う通り、奴はすごい奴だ……前に戦った時、まるで歯が立たなかった」

鉛筆「消しゴムもやっぱり、そんなすごくて頼りになる奴と一緒にいたほうがいいって、思ってるんじゃないのか……?」

鉛筆削り「……」

鉛筆削り「……本当にそう思ってるのか?」

鉛筆「……え?」

鉛筆削り「今、消しゴムはお前を求めている」

鉛筆削り「お前が来てくれるのを、ずっと待って居るはずだ」

鉛筆「……どうしてそんなことが言えるんだよ」

鉛筆削り「わからないのか?」

鉛筆「……」

鉛筆「……!!そうか!!」

鉛筆「……」スクッ

鉛筆「ありがとう、おやっさん。目が覚めたよ」

鉛筆削り「なに、気にするな」

鉛筆削り「それより、消しゴムのもとへ行くのだろう?」

鉛筆「ああ……だから、その前によ」

鉛筆「俺の命……また、削ってくれねえかな?」

鉛筆削り「……お安い御用だ」スッ

鉛筆「ただし」

鉛筆削り「……?」

鉛筆「やりすぎちゃあ、駄目だぜ?」

鉛筆削り「……わかってるさ」ニヤリ

消しゴム「……」

シャーペン「どうしたんだい?消しゴムさん」

消しゴム「……いいえ、なんでもありません」

シャーペン「ふぅん……まあ、いいけどね」

シャーペン「……鉛筆君のことを考えてたんだろう?」

消しゴム「!!」

シャーペン「あんな負け犬なんて、もう忘れちゃえばいいのにさ」

シャーペン「あんな文具、どこに需要があるんだい?理解できないね」

消しゴム「……っ」

シャーペン「そんなことより、未来のことを考えようよ。輝かしい未来のことを、ね」

消しゴム「……」

消しゴム「……鉛筆君は、負け犬なんかじゃない」

シャーペン「……ん?」

シャーペン「いきなり何を言いだすんだい、消しゴムさん?」

シャーペン「実際彼は僕に負けたろう?君がここにいるのが何よりの証拠だ」

消しゴム「いいえ、彼は負けてなんかない」

消しゴム「彼は例え失敗しても……何度でも立ち上がる」

消しゴム「何度も、命を削ってでも、必ず立ち上がってみせる!」

消しゴム「まだ彼は負けてない!きっとすぐに来てくれる……」

消しゴム「私には、彼が必要なの!!」

シャーペン「……っ」

シャーペン「言わせておけば、この女……!」バッ

消しゴム「っ!!」



「よく言ってくれたぜ、消しゴム!!」

シャーペン・消しゴム「!!!」

バリィィィィィィィィィィン!!!!


シャーペン「な、何ぃ!?」

消しゴム「鉛筆君!!」

鉛筆「悪い、待たせちまったな!!」

消しゴム「……ごめんね、鉛筆君」

鉛筆「ああ、鉛筆削りのおやっさんから全部聞いた」

鉛筆「気にすることはねぇ。さっさと帰るぞ」

消しゴム「……うん!」

シャーペン「ふん……事情を知ったか」

シャーペン「ならわかるだろう?僕との結婚がなくなれば、彼女の家はお終いだ」

シャーペン「彼女も、彼女の家族もみんな不幸になってしまう。それでいいのかい?」

鉛筆「あん?何言ってんだてめぇ」

シャーペン「ん?」

鉛筆「消しゴムの人生は消しゴムの人生だろうが。なんでてめえごときに左右されねぇといけねえんだよ」

シャーペン「……」

鉛筆「……それに」

シャーペン「?」

鉛筆「今から俺みたいな弱小文具に倒されちまえば……お前の面目も丸つぶれになって、そんなこと言えなくなるだろ?」

シャーペン「ふん、減らず口を……」

シャーペン「だったら、そんな口が二度と聞けないように……」スッ

シャーペン「木片と黒鉛の破片だけにしてくれる!!」カチッ

ビュオッ!!

鉛筆「!!」シュバッ

シャーペン「ほう、一回目のノックは避けたか……」

シャーペン「だが、まだこの程度で終わりはしないぞ!!」カチカチッ

ビュオッ!! ビュオッ!!

鉛筆「っ!!」シュババッ

シャーペン「そらそらぁ!避けるので精一杯かぁ!?」カチカチッ

ビュオッ!! ビュオッ!!

鉛筆「……」

シャーペン「フハハハハ!!ほらほら、もっと何かして見せろよ!」

シャーペン「避けるだけで僕を倒せると思ったら大間違いだぞぉ!!!」カチカチッ

鉛筆「……」

消しゴム(違う、鉛筆君のあの目……)

消しゴム(何かを狙ってる……!)

鉛筆「……」ギロリ

シャーペン「どうだぁ!!この圧倒的リーチの差!芯がかなり伸びてしまったぞぉ!!」

シャーペン「いい加減避けるのもつらくなってきたんじゃないのかぁ!?」

鉛筆「……」

シャーペン「そろそろ終わりにしようかぁ……」

鉛筆「……」スッ

消しゴム(!!鉛筆君の構えがさっきまでと違う!!)

シャーペン「喰らえええええええええええええ!!!!!」スッ

鉛筆(今だっ!!!)バッ







ポキッ




シャーペン「……」

鉛筆「……」

シャーペン「うわああああああああああああ!!??ぼ、僕の芯がああああああああああああ!!!!!」

シャーペン「根元から、バッキリとおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!」

鉛筆「芯を伸ばしすぎだ……お前の芯は元々かなり細くて、弱い」

鉛筆「どうやら、ナノダイヤなんてもの使ってたみてえだが……」スッ

鉛筆「こうなっちまえば、折るのは簡単さ」ボキィッ!

シャーペン「ぐっ……」

シャーペン「ぐっ……くそぉ……」

シャーペン「でも……何度でも……」

シャーペン「何度でも僕の芯は伸びるんだああああああああああああああ!!!!!」カチッ

ビュンッ!!

鉛筆「!!」

消しゴム「鉛筆君!!」

シャーペン(どうだぁ!!貴様の芯めがけて攻撃してやった!)

シャーペン(僕と違ってお前は簡単に芯を元通りにすることはできない!この勝負、僕の……)


ポキッ


シャーペン(僕……の……?)

鉛筆「……」

シャーペン「な、なんで……」

シャーペン「何で僕の芯の方が……折れてるんだ……?」

鉛筆「……俺は確かに、文具としてはお前に負けてるかもしれない」スッ

シャーペン「……!?」

鉛筆「お前は高い機能性を持ち、デザインもかっこいい」

鉛筆「一方俺は、不格好で、芯を伸ばすにもおやっさんの力が必要だ」

鉛筆「……こんな俺だが、お前に勝ってると思うことが、一つだけある」ザッ

シャーペン「ヒィッ……!!」

鉛筆「いいか、シャーペン!!鉛筆はなぁ!!!」ゴゴゴゴゴゴゴゴゴ



鉛筆「強くて硬い『芯』を、持ってんだよおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!」


ドゴォオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオッ!!!!!!!


シャーペン「うわあああああああああああああああああああああああああああああああああっ!!!!????」


ビュォォォォォォォォォォォォォォ……

キラーン

鉛筆「……終わったか」

消しゴム「鉛筆君……!」ダキッ

鉛筆「消しゴム……ごめんな、遅くなって」

消しゴム「ううん、来てくれて本当にうれしかった」

鉛筆「はは、おやっさんに目ぇ覚まさせてもらってな」

鉛筆「あの人には頭が上がらねぇや」

消しゴム「ふふ、今度お礼しないとね」

消しゴム「ごめんね、鉛筆君」

鉛筆「ん?」

消しゴム「婚約のこと、黙ってて」

鉛筆「だから気にするなって言ってるだろ?仕方ねえって」

消しゴム「ううん、そうじゃなくて」

消しゴム「……私が黙ってたのは、鉛筆君を信じ切れてなかったからだと思うの」

鉛筆「……」

消しゴム「きっと、本当に鉛筆君のことを信じてたら、ちゃんと話してたと思うの」

消しゴム「鉛筆君があんな奴に負けないって、信じられてたら……」

鉛筆「……」

鉛筆「……なんだ、そんなことか」

消しゴム「え……?」

鉛筆「仕方ねえよ。実際奴は強かった。不安感は消しきれないさ」

鉛筆「でもさ……お前、さっきは俺のこと、ちゃんと信じてくれてただろ?

消しゴム「……うん」

鉛筆「なら、それで十分なんだ」

鉛筆「ありがとうな、消しゴム」

消しゴム「……えへへ」

鉛筆「消せない過去のことを考えたってしょうがない。それより、新たな未来を描き出そうじゃないか」

鉛筆「やらないといけないことが、あるんだろ?」

消しゴム「ああ、そうだった!鉛筆君の力が必要なの!」

鉛筆「ふん、こんなちんけな文具の力が必要たぁ、面白いじゃねえか」

鉛筆「よし、早速行くぞ、消しゴム!」

消しゴム「うん!」

鉛筆・消しゴム「さあ、センター試験で、共に戦おう!!」



終わり

以上です。見てくださった方、ありがとうございました
こんな日のこんな時間にこんなスレ見てる受験生はさすがにいないと思うけど、ちょっと早めのセンター試験応援ssです
年明けたらほとんど時間は残されていないぞ!頑張れ受験生!!

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