矢矧と聖夜の一日 (99)

2回目の投稿です

誤字脱字等見受けられましたらご容赦ください。
内容はタイトル通りです。矢矧可愛いですね。ゲーム内でも限定グラ出してください

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ー12月24日 午後1時 食堂ー


阿賀野「………」ジーー

矢矧「……」

阿賀野「うーーん…悩ましいなぁ…」

矢矧「……」ハァ

阿賀野「ねぇ、矢矧はどっちが良いと思う?ショートケーキとモンブラン♪阿賀野だけじゃ決められないよー」

矢矧「あのねぇ…阿賀野姉、さっきから何回目の質問よ。そろそろ選んでちょうだい。間宮さんの所のショーケースの前でどれだけ粘るつもり?」

間宮「あははは…私は大丈夫ですので、ごゆっくりどうぞ」

矢矧「すみません…さっさとつまみだしますので」


阿賀野「えぇ~でもでも、こういうのって悩んじゃうじゃない?二者択一の選挙みたいで、負けた方とはもう永久に会えなくなったらどうするのよ!あ、さっきのあのねぇと阿賀野姉って、もしかして掛けてた?」

矢矧「怒るわよ」

阿賀野「じょ…じょーだんよぉ!あ、矢矧はぷりぶりしてても可愛いわねぇ♪あは、あははは!」

矢矧「……」

阿賀野「ははは…はい、すみませーん」

阿賀野「ちぇー、それじゃあ迷った時の定番。どちらにしようかな、神様の言うと・お・り!」ビシッ

矢矧「ショートケーキね」

阿賀野「じゃあ矢矧がモンブランにすれば、全部解決ね!」

矢矧「私、モンブランそんなに好きじゃないのよ」

阿賀野「えぇ!?じゃじゃあ、阿賀野がモンブランにして、半分こすれば解決!ね?」

矢矧「いたしません」

阿賀野「そんなぁ~!」


矢矧「間宮さん、ショートケーキ二つ、お願いします」

間宮「はい♪毎度ありがとうございます」

矢矧「それじゃあ阿賀野姉。行きましょう」

阿賀野「あ~ん、待ってよぉ~!」

間宮「ありがとうございましたー!」

間宮「…相変わらず仲が良いわねえ。羨ましいなぁ」


阿賀野「あー…んっ!ン~~♪美味しい♪あまーい♪えへへ♪」

矢矧「ご満悦ね。ショートケーキにして良かったじゃない」

阿賀野「そうねぇ~♪あはは、矢矧の選択はやっぱり正しいわね」

矢矧「別にモンブランでも外れじゃないとは思うけどね」

矢矧「それにしても、ケーキが出ているなんて珍しいわね。いつもは和風なお菓子が並んでいるけど…今日って何かあったかしら?」

阿賀野「え、矢矧?それ本気で言ってるの!?」

矢矧「わ、驚いた…急に大きな声をたててどうしたのよ」

阿賀野「心当たりないの?本当にないの?嘘でしょ!?」

矢矧「悪いけど、全くないわ。なんの日なの?」

阿賀野「…はぁ~やれやれ…仕事にばっかり忠実だから、ボケちゃったのね」


阿賀野「いや、それとも惚けているだけかしら…照れ隠しという可能性もあるわね…いやもしかすると…」

矢矧「……ちょっと、阿賀野姉!」

阿賀野「なーに?」

矢矧「勿体ぶらないで、教えてちょうだい。今日は何か特別な日だったかしら?」

阿賀野「…知りたいの?」

矢矧「そりゃあね…なにかしら、そんなに改まった姿勢で言う事なの?」

阿賀野「人類の約半分が恨むと言われている、悪しき呪われた日よ…それでも知りたい?」

矢矧「…知りたいわ」

阿賀野「じゃあ…教えるわね…」スッ

矢矧「(な…なに?阿賀野姉の背後から、地鳴りのような効果音が聴こえるよう…そんなにおぞましい日だったの!?そして何故、そんな忌むべき日に可愛らしいケーキを売っているの?もしかして間宮さん…暗黒卿の崇拝者だったりして…)」

阿賀野「矢矧…よく聞いて。今日は…ね…」ゴゴゴゴゴゴ…

矢矧「……」ゴクッ


阿賀野「じゃじゃん!今日は子日だよ~♪」ニパー

矢矧「……」ギリギリギリギュー

阿賀野「ふわっひぃうふうわひうわぁ~~!いはいよやはうぃ~!」ピャー

矢矧「…もうっ!真面目に聞いて損したわ!」

阿賀野「ううぅ…ほっぺた痛いよ~…」ヒリヒリ

矢矧「自業自得ね。まったく阿賀野姉は、ほんとうにいつまで経っても阿賀野姉だわ。どうしてそんなに阿賀野姉なのかしら。そんなんじゃ何年経っても阿賀野姉のままよ?」

阿賀野「な、なんか褒められてる気がする…えへへ…」

矢矧「褒めてないわよ」


阿賀野「あははは…ごめんごめん。本当はね、クリスマス・イブよ。一年に一度だけの、特別な日♪だからケーキを売っていたのよ」

矢矧「クリスマス…あぁそうか、もうそんな日だったのね」

阿賀野「そうよぉ。どこもかしこもイルミネーションでとっても綺麗に飾られているの♪鎮守府の正面玄関に植えてあるおっきな樹も、今日と明日だけ点灯させるって言ってたわ」

矢矧「あぁ、電気を無駄に出来ないものね。一番良いのはやらないことだろうけど」

矢矧「まったく、なにがおぞましい日よ。あんまり嘘ばっかりついてると、間宮さんに言って阿賀野姉の嫌いなレーズンを使った献立にしてもらうわよ」

阿賀野「えぇ!?それはやだよぉ!いやちょっと待って、そもそも嘘じゃないよ!半分くらいの人が今日を恨んでるのは本当だって!」

矢矧「なんでわざわざ聖夜を呪うのよ」

阿賀野「ほら、リア充爆発しろなんて言葉があるくらいだし?きっと多くの人が聖夜を恨んでいるわよ!絶対そうよ!」

矢矧「はぁ…しょうもない屁理屈ばっかり捏ねて。本当に仕方ないわね」

矢矧「分かったわよ。今日はそういうことにしてあげるわ。聖夜に言い争いするのも馬鹿らしいしね」


阿賀野「やったぁ!矢矧ありがと~大好きよ♪」

矢矧「はいはい、どうも」

阿賀野「それじゃあそんな大好きな矢矧に、特大イチゴを半分プレゼント~。はい、あーんして♪」

矢矧「……」アーン

阿賀野「えい!」

矢矧「……」モグモグ…ゴクン

阿賀野「どーお?美味しいでしょう?」

矢矧「そうね…甘酸っぱくて、美味しいわ」

阿賀野「でっしょお!?阿賀野の舌に間違いはないのよ~♪それじゃあ…はい♪」アーン

矢矧「どうしたのよ。鯉みたいに大口開けて」

阿賀野「え?矢矧も阿賀野に食べさせてくれる流れじゃないの?」

矢矧「言ったでしょ。半分こにはしないって」


阿賀野「えぇー!?ヒドイ!そんなの不公平よぉ~!」

矢矧「何言ってるのよ。さっきのおちゃらけたイタズラと手打ちよ」

阿賀野「うぅ~…わかったわよぉ…それじゃあ阿賀野は、残ったイチゴの半分食べちゃうわね…」パクッ

矢矧「……」モグモグ…

阿賀野「ごちそーさま…」ショボン

矢矧「……」モグモグ

阿賀野「… …」ジー

矢矧「……」チラ

阿賀野のお皿「」カラッポ

矢矧「……はぁ」


矢矧「しょうがないわねぇ」

矢矧「ほら、あーんして」

阿賀野「いいの!?」

矢矧「イチゴの半分だけ。それなら許してあげるわよ。はい」スッ

阿賀野「わーい♪矢矧大好きぃ!」パクッ

阿賀野「ん~~♪美味しいよぉやはぎぃ、えへへへ♪」

矢矧「はぁ…ふふ、まったく、本当に阿賀野姉は、いつまで経っても阿賀野姉ね」


ー午後2時 鎮守府軽巡洋艦寮前廊下ー


能代「あれー、おかしいな…夕張ったら、どこに行ったのかしら…」

能代「もしかして午前に頼んだこと、もう忘れたんじゃ…もぉ、私も暇じゃないのに~」

北上「あれ~、能代さんじゃん。こんなところで彷徨いてるとサンタの格好させられるよ~」

能代「あら北上…なにその姿?」

北上「これねー。ウチのところの長女が皆に配ってんの。サンタクマースからの粋なプレゼントだよ~」

能代「あぁ~そうなの…サンタの格好、可愛いじゃない。大井が喜びそうね」

北上「いやー、喜ぶなんてもんじゃなかったよ。興奮しきって人語を忘れちゃったんだからさぁ、大変だったわ。まあトナカイの衣装買いに行くって出ていったから、しばらくは静かなんじゃないかな?」

能代「自分で着るつもりね…イブでも、人はやることが変わらないものね」


北上「で、能代さんはなにしてんの?なんか悩み事?」

能代「あぁそうなの!あのね、夕張に頼み事をしてたんだけど、見掛けなかった?大事なお願いがあるんだけど…」

北上「あぁ~、確か年末セールだとか言って、どっかのパソコンショップ行くとかの感じだったかな。お昼食べたら瑞鳳さんと出掛けて行ったよ~」

能代「うぅん…パソコンショップかぁ。だいじょうぶかなぁ。夕張を信じるしかないか…」

能代「そうだ。北上は今時間ある?おつかい頼まれてくれないかしら」

北上「あ~、ごめん。私もチビたちにプレゼント配って回らなきゃなんないからさ~。提督がめったら買い込んだもんだから、サボるにサボれなくて…」

能代「倉庫に隠してあるあれか…そういえばあったわね…じゃあ無理かー、うーん…」


矢矧「あら、二人とも何をしているの?」

能代「あ、矢矧!」

北上「おっすー、矢矧さーん」

能代「丁度よかったわ!矢矧、今暇?なら頼まれてくれないかしら」

矢矧「え、えぇ…暇だけど」

能代「よかった~。第六の子たちとお菓子を買いに行って欲しいの!本当は私が鳳翔さんに頼まれたんだけど、私も急な用事が入って…夕張に一緒に頼もうと想っていたんだけど、見当たらなくて」

矢矧「そういうこと。いいわよ」

能代「よかったぁ!じゃあこれ、お金ね。好きに選んでいいけど、大袋をたくさん買ってきてちょうだい」


北上「えぇ~、能代さん。矢矧さんに頼むのは悪いよー」

能代「え、どうして?」

北上「だって今日はイブだよ?ほら、特別な日だし、提督と一緒にさせてあげないとぉ」

能代「あーー、うん、そうねぇ」

矢矧「なんの話?私と提督がどうしたの」

能代「あ、いやいや!なんでもないなんでもないわ!えぇ、なんでもないの」

北上「こっちの話だよ~」

矢矧「……?」


矢矧「よくわからないけれど…おつかいでしょ?引き受けるわ」

北上「えぇ~、ホントにいいの?」

矢矧「遠慮しないでちょうだい。今は私、やることがないから」

能代「そう…それじゃお願いするわ」

矢矧「えぇ。それじゃあ行ってくるわ」

能代「……」

北上「うーん。クリスマスイブにはあまり興味がない感じ…」

能代「これは、こっちで矢矧に雰囲気を出させてやるしかないわね」

北上「でも矢矧さんって、わりと堅物だからね~。そういうところは提督と反対だよね」

能代「でも矢矧だって、女の子よ。提督がどんなお気持ちなのかを知れば、絶対に上手くいくわ!なんとしてもあの二人を良い感じにしてあげるんだから!」

北上「いやー、妹を想う姉の気持ちってのは、どこも変わんないんだね~」


ー午後3時 スーパーマーケット店内ー


暁「さぁ、着いたわ!いーい、みんな?迷惑にならないよう静かに買い物をするのよ。目標はお菓子、索敵範囲は50m!いくわよ!」

響「だー」

雷「はーい♪」

電「了解なのです!」

矢矧「あら、暁ったら、ちゃんとお姉さん出来てるわね。偉いわ」ナデナデ

暁「当たり前よ!私だって成長するんだもの。…あ、なでなで気持ちいい…」

雷「顔がにやけちゃってるわよ、暁!」

響「うーん。人がいっぱいいるね。少し埃っぽいな」

電「これくらいは我慢できないと、遊園地なんてもっと行けないのです」

響「それもそうだね」


響「さて、それじゃあ適当に見繕いますか」

雷「響!そっちはお酒コーナーよ。お菓子売り場はこっち」

響「おや失敬。失念していたよ。目標はこっちだね」

電「お酒入りのお菓子ばっかり選んでるのです…」

響「バッカス…ラミー…ポートワイン。ふふ、輸入菓子のコーナーも見てみようかな」

雷「響!大袋を選ばないと怒られるわよ!」

響「大丈夫さ。戦艦の人たちをこれで買収すればいい」ノ[ビーフジャーキー]

暁「あ、響!なによその…えーと、よくわかんないお菓子は!無駄遣いは私が許さないわ!」

雷「お菓子っていうか、つまみじゃない。ダメよ、シャンパンに合わないわ!やっぱりここはチーズとかオシャレな方が雰囲気も出るわよ!」

電「指摘するのはそこなのですか?」


矢矧「みんなー、騒がないの。響も、後で好きなお菓子を一つ選んでいいから、先に大袋のお菓子を選んでちょうだい」

暁雷電「「「はーい!」」」響「え~…一つか…厳しいな…」

矢矧「はぁ…皆元気ねぇ。見ていて微笑ましいものだわ」

矢矧「さて、私も適当に見ていこうかしら…あら。ここは駄菓子のコーナーね」

矢矧「うわぁ、懐かしい。ていうか安いわね。一本十円で買えるなんて信じられないわ」

矢矧「品揃えも…ぜんぜん変わってないわ。すごい…」


矢矧「昔は頻繁に買っていたと思うけど…年齢が上がるにつれて、見向きもしなくなったわね。何故かしら。やっぱり、子供が食べるものだって潜在的に避けていたのかしら」

矢矧「最後に食べたのはいつだったかな…何を食べて、どんな気持ちだったかなんて、なにも覚えてない」

矢矧「いや、待って。確か、以前に提督が買ってきてたわね。その時食べたのは…」

矢矧「……」

矢矧「一つくらいなら、無駄遣いも許してくれるわよね」ヒョイ


雷「ポテチばっかり買ってどうするの?ここは野菜スティックも買って栄養を整えないと!」

暁「でもパーティーなんだから、皆で楽しく食べられればなんでもいいでしょ!?野菜スティックをパーティーで食べるなんて聞いたことないわよ!」

電「でもポテチは手が汚れちゃうのです。やっぱり個包装のお菓子がいいのです」

暁「それだと数が限られちゃうじゃない!ポテチのほうが、長く楽しめるに決まってるわ!」

矢矧「ん、なにやらさわがしいわね…皆どうしたの?」

暁「矢矧さん!パーティーにはやっぱりポテチが良いわよね!?」

雷「野菜も食べた方がいいわ!」

電「小袋に別れてるほうがいいのです!」


矢矧「え、あー。そうねぇ」

矢矧「うん。それぞれが意見を持っているのは素晴らしいわ。誰かの為にという気持ちも伝わってくる。申し分ないわ」

矢矧「だから、三人の意見の良いところを合わせましょう」

暁「良いところ?」

矢矧「そうよ。暁が言う楽しめる要素と、電の手が汚れないという要素。雷の言う栄養は…鳳翔さんに言って、野菜を多目に出してもらうようにしましょう」

電「わぁ、すごいのです!それなら意見がまとまるのです!」

雷「でも、それってどんなお菓子なの?」

矢矧「そうねえ。マーブルチョコなんてどう?見た目も楽しめるし、手が汚れないし、数も多くてそんなに高くないし、条件に合うと思うけど…」

暁雷電「「「そんなのつまらない!」」のです!」

矢矧「え…そう?」

雷「矢矧さん…センスがいまいちね!」

矢矧「」ガーーン


ー午後5時 車内ー


矢矧「あぁ…疲れたわ…」

長門「お疲れ様。はは、本当に疲れたという顔をしているな」

矢矧「子供を四人もまとめるのって、すごい手がかかるのね…車で帰れなかったらお手上げだったわ。お迎えありがとうね」

長門「提督が心配して寄越したんだ。まあ、この子達が行けばお菓子の選定で時間がかかるだろうとは思っていたがな」

矢矧「そうだったの…後でお礼をしておかないと」


矢矧「……」チラリ

雷「…むにゃ……」

電「…んぅ…」

暁「…もぅ…もっと私に頼ってよ…うぅん…」

響「結局ポッキーで手打ちされてしまった…なんということだ…」ポリポリ

矢矧「…響は、疲れてないの?」

響「私は店内をぐるぐると見て回っていただけだからね。三人よりは眠くないさ」モグモグ

矢矧「そう…夕御飯前だから、それで最後にしておきなさい」

響「だー」

矢矧「うん。良い子ね」ナデナデ

響「……司令官以外の手も、悪くないな…ふふっ…」

長門「ははは。すっかり仲良くなったみたいだな」


長門「そういえば矢矧。最近お前たち二人はどうなんだ?」

矢矧「二人って、誰の事よ。阿賀野姉?」

長門「違う違う。提督との事に決まっているだろう」

矢矧「提督と?そうねぇ」

矢矧「最近どうときかれても、別に喧嘩をしたわけじゃないし、会えば普通に会話も出来るわ」

長門「いやそうじゃなくて…ほら、前に話題にのぼったろう?指輪のことだよ」

矢矧「あぁ…ケッコンカッコカリね」

長門「そうだ。提督は候補は何人か既に挙げられているらしい。まあその中には私も含まれているが…量産品の方じゃない。一つしか存在しない指輪のことだ」


長門「せめてそれだけはじっくり考えたいと、随分前に配られてから今日に至る。だが最近になって、ようやく本命が決まったらしいともっぱらの噂だ」

長門「誰だと思う?」

矢矧「……」

矢矧「…そう、ね。艦種に関係なく選ぶと仰っていたし…金剛とか、榛名とか」

長門「そうだな。あの二人は…というか金剛型四姉妹は、よく提督をお茶に誘っているな。他には?」

矢矧「ほか?えぇと、うーん」

矢矧「空母なら、赤城さんや加賀さんもよく一緒に話しているのを見掛けるし、重巡なら妙高や鈴谷、軽巡なら長良型の皆…駆逐艦は候補が多いわ」

長門「それだけか?」

矢矧「あとは潜水艦の子達に、陸軍から来た子も…実は私、あの子らとそんなに接点ないのよね」

長門「それだけか?」

矢矧「ん…それだけね。ていうか、なんの質問なのよ」


長門「なるほどなぁ。なんとなくお前の基準が見えた気がする。隣の芝は青く見えると言うが…」

矢矧「話が見えてこないわ」

長門「まあ話のネタに付き合え。別に難しく考えなくてもいいさ」

長門「もし本命が私だったとしたら、お前は祝えるか?」

矢矧「もちろん、祝えるわ」

長門「響だったら?」

矢矧「祝えるわよ」

長門「阿賀野だとしても、素直に祝えるか?」

矢矧「…いわ、えるわ」

長門「どもったな」

矢矧「祝えるわ!」

長門「ははは!わかったわかった。今のでお前の本音が聞こえたよ」

長門「私としては、それだけ知ることができれば十分だ」

矢矧「もう…なんなのよ!阿賀野姉も意味もわからずからかってくるし…能代たちにも提督がどうのこうのって言われるし…」


長門「そりゃあ気にもするだろうさ。なにしろ、今日はクリスマスイブだ。いつもとは違う出来事が起こっても不思議じゃない。因果がどのように結実するのか、皆気にしているんだよ」

矢矧「私と提督が、因果関係の中心にいるとでも言いたいの?」

長門「そうだ。なんだ、分かっているじゃないか」

矢矧「…それは、ないわ。だって…」

矢矧「私、あの人と話すのはいつも仕事のことばかりよ。あとはせいぜい、おはようとかおやすみとかの挨拶。それだって、特段笑顔で接している訳じゃないし。私を好いてくれているなんて、想像にしても限度があるわ」

長門「ほぉ。なかなか興味深い主観的観察だな」

矢矧「だって…そうよ。私、あの人のこと、全然知らないもの」

矢矧「どんな料理が好きなのか…どんなお茶が好みなのか、どんな女の子が好きなのか、私は全然知らないの」

矢矧「今までだって知る機会は幾らでもあったのに、私はしなかった。それなのにお近づきになりたいって思うんだもの。おかしな話ね」

長門「ふむぅ…ようするに、自信がないのだな、矢矧は」


長門「響。今の話を聞いて、どう思う?」

響「そうだね。私もおかしな話だと思うな」

矢矧「わぁ!?…そうだった…この子だけ起きてたんだったわね…」

響「矢矧さんは、もっと自信を持つべきだよ。司令官が好きなんだろう?」

矢矧「す…きか、どうかは置いておいて…でも、やっぱり私が本命なんて、ないと思うわ。それこそ、響たちのほうがもっと提督の事を知っているだろうし…私はなにも…」

響「ふぅん?でも、秘書艦はよく任されているじゃないか。その職に就ける人は、そう多くはないよ」

矢矧「書類作業は得意なのよ。その能力を買われただけよ。それに大淀の方が、私よりも多く秘書艦に就いているわ」

響「出張で人手がいるときは、必ず着いていっているだろう?」

矢矧「そうだけど…それだけでは何とも言えないわ」

響「なかなか強情だね」

長門「うーん…陸奥ではないが、やきもきするのも分かる気がする…」


矢矧「わ、私のことはもういいじゃない!想像で語ってもしょうがないわ!」

矢矧「ほら、長門は運転に集中して。もうすぐで鎮守府に着くんでしょ?」

長門「大丈夫だ。慣れているし、クリスマスに事故を起こそうなんて考えちゃいない」

響「クリスマスだからこそ、何が起きても不思議じゃないよ」

長門「ははは!そうだ、響の言うとおりだな。運転に集中するよ」

矢矧「笑い事じゃないわよ…」

響「そうだ、矢矧さん」

矢矧「なに?」

響「珍しい物を買ったんだ。後でプレゼントするよ。今日のお礼だよ」

矢矧「あら…いいの?ありがとう」

響「ふふふ…きっと気に入ってくれるよ」


ー午後6時 鎮守府二階大広間ー


鬼怒「えー、お集まりの皆様。本日はー、お日柄もよくー…」

五十鈴「なーに言ってるの。今日は一日中曇りよ」

鬼怒「そうだっけ?でもお日柄は良くないけど、トリガラは美味しいのが出来てるから問題ないよね!あははは、はは!」

由良「……」

長良「……」

名取「…あ、はは…」

阿武隈「ブッ…!ククク…」プルプル

五十鈴「詰まらないわ」

鬼怒「えーーっ!?」


矢矧「ただいま。ようやく帰ってこれたわ」

長良「お、お疲れさまー!待ちくたびれちゃったよ!」

由良「すごい大荷物ね。もっと大人数で行った方が良かったかも」

長門「なに、私がいればこの程度は造作もないことだ。任せておけ」

鬼怒「なんだよー!詰まらないって直球で言わなくてもいいじゃん!もっとオブラートに包んでよ、オブラートにさぁ!鬼怒のガラスのハートにも優しくしてよ!」

五十鈴「あーうるさい…矢矧お疲れ様。急に頼まれたんだって?悪いわね」

矢矧「いいわよ。ところで、夕張はまだ帰ってないの?」

五十鈴「夕張?あぁ、夕張が行く予定だったんだ…あ、あの子は急な用事が入って、行けなくなったんだってさ!さっき連絡がきたわ」

矢矧「パソコンショップに行ったんでしょ?聞いたわ」

五十鈴「パソコンショップ?」

矢矧「違うの?」

五十鈴「あぁー、そうね!そうだったわ!うん、そうそうパソコンショップね!あははは!」

矢矧「……?」


矢矧「えぇと、じゃあお菓子は適当にテーブルに配っていけばいいのね?」

五十鈴「うん。お願いするわ。もうすぐでクリスマスパーティが始まるからね」

長良「じゃあ私も手伝うよ!」

名取「皆で手分けして配りましょうか」

由良「んー。ポテチと大袋のお菓子とたくさんあるわねぇ。バランスよく入っているわ。さすが矢矧が選んだだけあるわね」

矢矧「お菓子一つで大袈裟よ」


響「矢矧さん、矢矧さん」

矢矧「あぁ響。他の皆は目が覚めた?」

響「問題ない。冷水を背中に垂らしてやったよ」

矢矧「そ、そう…ワイルドな方法ね」

響「時に矢矧さん。珍しい物をプレゼントするよ。世にも奇妙な十二味唐辛子さ」

矢矧「十二?そんなの初めて聞いたわ」

響「そう。普通は出回っていないんだけど、特殊な条件を満たすと存在できる調味料さ」スッ

矢矧「……」

響「……」

矢矧「え、これが?七味って書いてあるけど…しかも開封済み」

響「そうさ。開封済みでなければ十二味唐辛子にはならないよ」

矢矧「えぇと、説明してくれる?」


響「あのスーパーは、とても埃が舞っていたね。つまりはゴミ、五味さ。あのスーパーの中で開けることにより、空気が容器の中にも入って七味と五味が合わさる」

響「そうして世にも珍しい、十二味唐辛子の出来上がりさ。矢矧さんにプレゼントだよ」

矢矧「……」

響「……」ドヤァ

矢矧「(どうしよう…響って、こんなに変な子だったの!?)」


鬼怒「…いい!響ちゃん、それスッゴく面白いよ!パーフェクトだよ!えくせれんとだよ!」

響「その通りさ」

名取「え、じゃあ…刺身に七味をかけると、37足す7だから…四四味唐辛子?」

由良「お花見に七味を持っていけば九四味ね。よし、こっちの方が数が大きいわ!」

長良「それだと何でもアリになっちゃうじゃない!もっと調味料らしいのはないの?」

阿武隈「あ、じゃあ、薬味を入れればいいんじゃないかや?ネギとかミョウガとか…」

「「「それだっ!!」」」

五十鈴「さすが末妹!そして一番調味料らしいわ。伊達に雷巡並みじゃないわね!」

阿武隈「そ、そう?それほどでもぉ…あるかなぁ!えへへへ♪」

矢矧「……落語みたいになってるわね…」


ー午後7時 同場所ー


北上「やぁやぁチビどもー。スーパーサンタクロースのお出ましだよー。プレゼント配るから順番に並びなー」

「プレゼントだー!」

「サンタさんだー」

「北上様ありがとー!」

北上「いや…私は北上様じゃなくてサンタクロースだってば…ちょっと群がんないでよ~…も、もお!やっぱりこの役目は大井っちに譲るよ!」

大井「うへ…うへへぇ…きた、北上さんのおみ足でどこまでも進むトナカイの私…いい…すごくいいわ!北上さん!もっと指示を出して、私を行軍させて!地の果てまで!アイスランドまで!!」

北上「お、大井っち…?」


鈴谷「なんかめっちゃ賑わってんじゃ~ん?いいよね、こういう雰囲気ってさ!」

熊野「あら、一番賑やかしているのアナタではなくって?サンタの格好、可愛らしいですわね」

鈴谷「や、別にさぁ!?球磨ちゃんが勧めてくるから着ただけだし!じゃなかったらケーキ食べて過ごしてるかんね!?」

熊野「あら、提督にアピールするために張りきってたのはどこの誰だったかしら」

熊野「うぐぅ…あ、矢矧さん!やっほ~メリクリ~!」

矢矧「メリークリスマス。鈴谷、熊野」

熊野「メリークリスマスですわ。聖夜に肉体的なアピールなんて、なかなか鈴谷も罪作りな子ですわよねぇ?」

鈴谷「はぁ!?そんなんじゃないし!可愛いカッコしたいだけだもん!」


鈴谷「だいたい、スカート短すぎだし~。男の人は長いだぼだぼのズボンなのに、不公平だよねぇ」

熊野「それが世の中の流れというものですわ」

熊野「ほらほら、文句ばっかり言ってないで、歌でも口ずさみながらプレゼントを配ってはいかが?駆逐艦の子たちが待ちくたびれていてよ」

鈴谷「は~い。あわてんぼうのーサンタクロースーミニスカ履いてーやってきたーあいたたたたた…あれ?なんか違う気がする」

熊野「矢矧さん。せっかくだから、アナタもサンタの格好、してみます?」

矢矧「私?いやいや、いいわよ。そんな柄じゃないし…」

熊野「まあまあ無粋なことは仰らずに。皆も着ているのですから、きっと楽しいですわよ?」

矢矧「いや…うーん…」


鈴谷「えぇ、矢矧さんサンタの格好すんの?」

矢矧「するとは言ってないわよ!?」

鈴谷「えぇ~…そんなんされたら、ますます勝てないじゃん…弱ったなぁ…」

矢矧「え?」

鈴谷「……ホントにすんの?」

矢矧「……してもいいの?」

熊野「決まりですわね。じゃあ鈴谷、球磨さんから衣服を取り寄せてちょうだいな」

鈴谷「…はぁ…しょうがないなぁ…こりゃあ完敗かもなぁ…」スタスタ…


矢矧「…つい聞き返してしまったわ」

熊野「うふふ♪これでまたサンタが増えるわね。縁起の良いことですわ」

矢矧「ん…なんか熊野に騙された気がするわ」

熊野「ふふ…それは気のせいですわ♪」

矢矧「…なんか、今日はそんなのばっかりだわ。からかわれたり、変な事を聞かれたり。クリスマスイブだからって、何がそんなに違うのかしら」

熊野「あら、それは他の場所で呟いてはいけませんよ?アナタ以外の何人かは、今日と言う日を最後のチャンスと考えているのですから」

矢矧「提督の本命がどうっていうやつ?」

熊野「その通り♪」


矢矧「はぁ…熊野もなんだかんだで、色恋沙汰が好きなのね」

熊野「提督は悪い人ではないと思いますわ。それはアナタもよく存じ上げているのではなくて?」

矢矧「そりゃ知ってるわ…でも、提督が私をどう思っているのか、私は全然分からない。今まで一度も一歩を踏み出そうなんて考えなかったから…当然と謂えば当然ね」

熊野「ふぅん?自信に欠ける物言いですわね」

熊野「人の気持ちなんて、究極的には誰にも分かりませんわ。あまり難しく考えると身動きとれませんわよ」

熊野「今年最後の大型イベントだもの。もっと楽しんでみるのも、悪くないと思いません?」

矢矧「…そうねぇ。考えてみるわ」

熊野「…もぉ…そっけないですわねぇ」


ー午後9時 同場所ー


利根「わっはっは~!ちくま~もっとワインを注ぐのじゃ~」

筑摩「はい、利根姉さん♪」

利根「ちくま~~ターキーを食べたいのじゃ~」

筑摩「はい、利根姉さん。あーんして♪」

利根「うむ!あー…ムグっ!もぐもぐ…旨い!」テーレッテレー

霞「ちょっと…まがりなりにもサンタが堕落してるのはどうなのよ」

利根「さっき働いたからいいのじゃ!正当な対価じゃぞ~?もっと食べ物をもってこーい!」

筑摩「はい♪誰か、持ってきてくださーい!」

磯風「わははは、待たせたな!この磯風、とっておきのライスボールを作ってやったぞ!瑞穂から教えてもらった。遠慮なく食すといい!」

霞「ゲッ!?…いや、私は関知しないわよ…」


矢矧「……ちょっと…待ってよ…」プルプル…

熊野「あらあら。よくお似合いでしてよ?」

矢矧「いや、これ…スカート短すぎないかしら?」

鈴谷「そんなことないよ~。めっちゃよく似合ってるよ!ちょー可愛いじゃん!」

矢矧「で、でも!…やだぁ…なんかいろいろスースーするし…」

鈴谷「あははは!矢矧さんめっちゃ顔赤いじゃん!面白~い!」

矢矧「ううぅ…帰りたい…今すぐ脱ぎたい…」


矢矧「いやいやおかしいわ!鈴谷が履いてるものと違うじゃない!丈が短すぎるわこれ!」

鈴谷「あっははは!いやいやそんなことないよ~!」

熊野「そうですわ。着てるからには観念したほうがいいですわよ?」

矢矧「あぅ…」

熊野(まぁ本当は矢矧さんの為にわざわざ作ったのですけどね)

鈴谷(なんかギミック仕込んであるらしいじゃん?夕張さんもよく作ったね~こんなの)

阿賀野「じんぐるべーるじんぐるべーる鈴がー鳴る~♪ふぉっふぉっふぉ~!良い子の皆はいるかーい?」

矢矧「うわ…阿賀野姉っ…!?」

鈴谷「サンタさーん!鈴谷にもプレゼントちょーだい♪」

阿賀野「はーい、大きなお友だちにもプレゼントを~…ん?んん?んんん!?」

矢矧「見つかった…」


阿賀野「……」

矢矧「…な、何よ。黙ってないで、なんか言ってよ…」

阿賀野「……いい…」

熊野「どうですか、阿賀野さん。妹さんのサンタ姿♪とっても愛嬌があって、お人形さんのようですわ」

阿賀野「最高ですねっ!!」ブシャア!

鈴谷「うわっ、阿賀野さん鼻血出てるよ!?ちょ…これまずいって!サンタ服の色と同化してるよ!」

阿賀野「あぁ…これが私が追い求めていた理想郷なのね…神さまありがとう…奇跡は本当に起こったわ…」サラサラサラ…

矢矧「あ、阿賀野姉!?」

熊野「あ、これは良くないパターンですわ」


ー午後10時 同場所ー


雪風「~~♪」カキカキ

初風「あれ、雪風?何か書いてるの?」

雪風「はい!お願い事を書いてました!これをクリスマスツリーに飾ります!きっとサンタさんが願いを叶えてくれます!」ガサゴソ

時津風「おぉ~おもしろそ~♪私もやるやる~!」

天津風「え?クリスマスツリーってそういうものだっけ」

初風「全然違うわよ…季節を180度間違えてるわ」

雪風「初風と天津風もお願いごとしましょう!皆で一緒に飾れば効力倍増です!」

初風「はいい!?や、やらないわよ!ただでさえサンタの格好して恥ずかしいのに、これ以上恥を重ねたくないわ!」

初風「…ていうか、倍増ってなにがよ」

雪風「はい♪皆で同じ願いをしましょう!来年も、再来年もその先もず~っと一緒に、いられますようにって!」

初風「うぐっ………し、仕方ないわねぇ…今回だけ特別よ」

天津風「じゃあ…私も書くわ。サンタさんが見てくれるかは分からないけどね」

雪風「はい!絶対見てくれますよ!信じましょう!」


矢矧「…ヒック…なぁんで、私がこんな格好して歌わなきゃなんないのよぉ~…ヒック…」

酒匂「ぴゃあ…矢矧ちゃん、完全に酔ってるよ~」

矢矧「酔ってないわよ!酔ってるわけないじゃない、この私がー…」

長門「これは完全に出来上がってるな。珍しい光景が見れたものだ」

酒匂「長門さんどうしよ~」

長門「ははは。まぁ矢矧も日頃のストレスがあるだろうからな。静かに見守ってやるんだ」

長門「…にしても、ワイン二杯でここまで酔うとは思わなかったな…」


矢矧「ヒック…ところで、提督はどこにいるの?今日は一回も見てないわ」

長門「まだ仕事だ。末端の我々と違って、管理する側は聖夜とか関係ないからな。さっき金剛たちがケーキを差し入れに持っていってたが…」

矢矧「…金剛…?」

長門「あぁ…どうした、声を低くして?」

矢矧「……ケーキを持っていって、どうするのよ?」

長門「ん?そりゃあ、食べるんだろうさ。ケーキは生物だからな。長期保存はできん」

酒匂「ケーキについてるサンタさんの人形なら大丈夫だよ~♪あれって食べられるのかなぁ?」

矢矧「…金剛は、提督のことが好きなんでしょ?」

矢矧「じゃあ、提督にあーんとかしてあげてるかもしれないじゃない。くちびるについたクリームとか拭って、それを金剛が食べてるかもしれないじゃない…」

矢矧「なんかそういう恋人がやりそうなことをしててもおかしくないじゃない!」

長門「な、なんだなんだ…矢矧、大丈夫か?水飲むか?」

矢矧「いらないわ!酔ってないもの!」


矢矧「なによ!話が違うじゃない!提督は私が本命なんじゃなかったの?それなのに他の女の子といちゃいちゃして~…もう、こうするわ!」グビッグビッ!

長門「酒匂…矢矧って、怒り上戸なのか?」

酒匂「うーん…わかんないな~。でもこういう矢矧ちゃんもおもしろーい♪」

矢矧「…ぶはぁ!…ヒック…ふん。聖夜だからってどこかデートにでも誘ってくれるのかなって思ったら、仕事だし…結局何が一番大事なのよ!」

長門「提督は今日一日中、ずっと執務室にこもっていたさ。お前以外の誰かと遊びに行ったという事実はないよ」

矢矧「それでも…期待くらいさせてくれてもいいじゃない…せめて一度くらいは顔を見せてくれてもいいじゃない…」

矢矧「……」ムッスーー

長門「なるほどなぁ。本音はそれか。安心したよ」

酒匂「矢矧ちゃん、とっても乙女だよ~♪」


ドタドタドタ…

長門「ん?廊下が騒がしいな」

ガチャ!

能代「ほらほら提督!クリスマスイブが終わる前にパーティーに出てください!もぉ、誰の為にこんなに苦労したと思って…」

提督「待て待て能代!そんなに押さなくても自分で歩けるから…」

金剛「そうデース!提督はお疲れなんですから、もっとユックリしっぽり致しマショ?」

雪風「あ、しれぇやっと来てくれました!」

鬼怒「提督遅すぎだよ~もう料理ほとんどなくなっちゃったよ?」

提督「あぁすまない。なかなか立て込んでいてな…」


矢矧「…てい…とく…?」ヒック

雷「はい司令官♪ちゃんと司令官の分はとっといてあるわ!」

暁「遅れる人のための配慮は、レディとして常識よね♪」

提督「ありがとうな、雷、暁。おぉ、旨そうな料理じゃないか!」

北上「ほら提督~。球磨ちゃん印のハチミツ味ブラウニーだよ~」

利根「メリークリスマスじゃ提督!ほれ、我輩がプレゼントをやろうではないか!」

提督「ありがとうな、北上、利根。あとでゆっくりいただくよ」

矢矧「……むぅぅぅ…」


鈴谷「ちーっす提督~。どーよ鈴谷のサンタコス~♪一回くるんって回ってみようか?ホラホラァ♪」くるくる

提督「ほぉ、あつらえたように似合っているじゃないか。さてはお前、本当にサンタか?」

鈴谷「あ、分かる~?分かっちゃう~?へへへっ♪提督だけの専用サンタクロースだよー!なんかお願いごとがあったら、一個くらいなら叶えちゃうかもよ?あ、キモい願いは却下だからねっ!」

提督「ははは!そうだな、何か考えておくよ!」

矢矧「……なによ、私のことはあんな風に褒めてくれたことないじゃない」


響「やぁ司令官。メリークリスマス」

電「メリークリスマスなのです!」

提督「メリークリスマス、響、電。その手に持っているものはなんだ?」

響「これかい?これはね、私たち特製のスペシャルドリンクさ」

響「司令官さんがお疲れなので、つくってみたのです!」

提督「お、嬉しいねえ。中身はなんだ?」

電「ハチミツレモンなのです!赤城さんに教わったのです!」

響「希釈してあるから飲みやすいよ。私たちからの日ごろのお礼さ」

提督「へぇー、聞いたことあるな。学生が部活でよく作っていると聞くが…まあいいか。ありがとうな、二人とも」ナデナデ

電「え、えへへ…♪」

響「ふふ…やっぱり司令官の手はいいな」

矢矧「……なによなによ、私にはあんな風に撫でてくれたこと、一度もないじゃない…」


提督「ははは、少し無理をしてよかったな。十分すぎるほどに楽しめたよ。今日一日の疲れが飛ぶようだ。明日からまた頑張れそうだな!」

金剛「デース!提督の疲れは私たちがきっちり癒しマース!」

矢矧「……っ!」

金剛「それじゃあ提督ゥ!私と一緒に食べるネー!あ、七面鳥がとっても美味しそうですヨー」

提督「お、おい金剛…皆が見てる前で腕を絡めるな」

金剛「ダメですヨ♪ここは、わたしの特等席デース!」

矢矧「……っ…ぁ…!」


バァンっ!!

長門「おわっ!?…矢矧、どうした?」

酒匂「矢矧ちゃんがすっごく怖い顔してるぅー…」

矢矧「まだよ…まだ…まだ勇気が足りないわ…こんなんじゃ素面と変わらない…こんなんじゃ…」

矢矧「提督は…渡したくない!」ガシッ

矢矧「…ゴクッ…ゴクッ…ゴクッ!」

長門「おいおいおい!?矢矧、その辺にしておけ!無理はするな!」


金剛「はい提督ゥ♪あーん!」

提督「あ…あーん…」パク

金剛「どうですカー?私も手伝って作ったデース!」

鈴谷「ぐぬぬ…て、提督!こっちのブッシュドなんとかって奴もイケるし!ほらほら、あーん!」

提督「あむ…もぐもぐ」

鈴谷「美味しいっしょ?熊野と一緒に作ったんだよね~♪」

金剛「ウウゥ~…て、提督!こっちのほうが美味しいデース!」

鈴谷「違うし!こっちのが美味しいよね提督?」

提督「お前ら…もう少しゆっくり食わせろよ」

提督「………ん?」




ザッ!!

\バァァァァァァァン!!/

矢矧「……そこまでよ!!」

矢矧「金剛型一番艦!最上型三番艦!」

矢矧「神妙に提督から離れなさい!」フラフラ…



提督「……」

金剛「……」

鈴谷「……」

矢矧「…ヒック…なによ、何か言いなさいよ」

提督「いや…え、矢矧…だよな?なんだその酔拳の姿勢は…」

矢矧「そうよ。私は阿賀野型三番艦、矢矧よ。ヒック…」ユラユラ…

金剛「oh…そんなに赤くなって…見事なワインライダーデース…」

鈴谷「矢矧さん…そのポーズだとパンツ丸見えだよ」

矢矧「きゃっ!?」ガバ!


矢矧「うぅう…負けないわ…」

矢矧「…提督!」

提督「お、おう!なんだ!?」

矢矧「……提督あなたは、どうしてそんなに女の子とばっかりいちゃいちゃしてるの!頭を撫でるの!あーんしてもらってるの!」

矢矧「節操が無さすぎるわ!」

矢矧「私だって…提督といちゃいちゃしたい!頭を撫でて欲しい!あーんしたい!どうして提督はわたしにそれを求めてくれないの!?私はいつでもその時を待っていたのに!」

矢矧「私がこんな格好してるんだから、せめて一言くらい感想言ってよ!」

矢矧「私だって…私だって……!」

金剛「ま…まさか矢矧…ウソでショ!?このタイミングで言うつもりデスか!?」

鈴谷「マジで~…こんなの絶対ノーカンにできないじゃん…印象強すぎぃー…」


矢矧「…はぁ…はぁ…」フラフラ

矢矧「(あ…あれ?何を言おうと思ったんだっけ…)」

矢矧「(お酒の勢いで言おうと思ったんだけどなぁ…なんか意識が飛びそう)」

矢矧「(あぁだめ…すっごい気持ちよくて、抗えないわ…このまま寝ちゃいそう…)」

矢矧「(…ふふ…まぁ、仕方ないわね…ズルは良くないってことかし…ら…)」


矢矧「……」

??『矢矧…矢矧…?聞こえるー?おーい』

矢矧「……誰?」

??『あ、よかったー。ふふん♪遂に私の出番のようね!奥手な矢矧をナビケートする、通称マスク・ド・メロンよ!服に矢矧にしか聞こえない小型スピーカーつけるの大変だったんだから!』

矢矧「…幻聴…かしら…」

??『あちゃー、結構お酒回ってるみたいね。なら手短に済ませようか!』

??『いい矢矧?これから私が言うことを、一言一句違わずに提督に伝えるのよ!そうすれば、二人は晴れて恋人同士!いい感じね!』


矢矧「…あなたは…誰?神さま?」

??『神さまじゃないけど…まあいいんじゃない?だって今日は聖夜だし!みんなも言っていたでしょ?』

矢矧「…ふふ…そうね」

矢矧「今日は聖夜…何が起きても不思議じゃないわね」

矢矧「だから…奇跡が起きても…別にいいわよね…」

??『ふふふ…あとで今の気持ち、聞かせてね♪メリークリスマス♪』


提督「…や、矢矧?」

矢矧「…提督」

天津風「わ…わぁぁ…!これって…これって…!?」

矢矧「私は」

利根「筑摩…もしやこれって…」

筑摩「えぇ…そのまさかですよ!利根姉さん!」

大井「矢矧さん…なんて大胆なの!?」


矢矧「アナタのことが!」

時津風「うはぁ~やるねぇ~矢矧さん…可愛い可愛い~♪」

初風「ほ、ホント?ホントに告白するの?あの矢矧さんが?」

矢矧「好き…だから!」


矢矧「アナタと…結婚したい…です…」フラリ…

提督「…矢矧!」ガシィ!


提督「おい矢矧!矢矧!?しっかりしろ!」

矢矧「…うぅん…すぅ…すぅ…えへへ…」ムニュムニュ

提督「寝ているだけ…か。よかった…」

提督「よいしょ…っと。まったく…なんという奴だ…」

雷「司令官!おめでとう!遂に矢矧さんとケッコンね!?」

電「はわわわ!す、すごい場面に遭遇したのです!」

能代「やったわ提督!プロポーズよ、プロポーズ!もちろん受けますよね!?」

酒匂「しれいと矢矧ちゃんがケッコンするんだぁ!おめでとう!」

長門「提督!もし矢矧を泣かせたら、この私が許さんぞ!」

提督「ま、待て待てお前ら!落ち着け!な?」


暁「返事はどうなの!?もちろん受けるのよね!」

北上「ここで断ったら皆を敵にまわすよ~」

提督「あーー…えーー…」

提督「こほん…返事は直接矢矧に伝える!以上、解散!」ダッ!

雪風「逃げました!」

五十鈴「逃がさないわ!行くわよ、長良型六姉妹!!」

長良「よぉし!日頃の鍛練を見せる時ね!」

名取「私も…こればかりは気になります!」

由良「ふふ…さぁ気張って行くわよ!」

鬼怒「追いかけっこだね!盛り上がってまいりましたぁ!」

阿武隈「夜戦だね!腕が鳴るなあ~」

川内「夜戦っ!!?私も混ざるぅっ!!」

阿武隈「わ!うるさ!」


まてーー提督~~……

ついてくるなぁ~~……

ドタドタドタ…

金剛「……」

鈴谷「……」


金剛「NOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOO!!!!」

鈴谷「うるさいなぁ…感傷にも浸れないじゃん…」

鈴谷「ま、こうなることは、なんとなく分かってたけどねぇ…ははは…」グス…

熊野「あら鈴谷ったら、泣いてますの?」

鈴谷「べ、別にぃ?埃が目に入っただけだし!そうに決まってるし…」

熊野「…鳳翔さんのお店でお酒でも飲みます?」

鈴谷「…のむ」

金剛「て、ていとくぅぅ…とうとう私のハンドが及ばぬところへ…ウゥゥ~…」

熊野「金剛さんもご一緒にいかがかしら?」

金剛「…Take with you!」


ー翌25日 午前6時 阿賀野型共同部屋ー


ピピ…ピピ…ピピ…

ピピピピピピピピピピ

ピッ!

矢矧「……」ノソリ

矢矧「寒いわ…私、いつの間に布団で…」

ギシ…ギシ…

テクテクテク…

シャアア!!

矢矧「……わぁ」

矢矧「雪…積もってるわ…!」


阿賀野「ウウウ…ささささささ…さむいよぉ…むにゃむにゃ…」

矢矧「阿賀野姉?起きてるの?」

阿賀野「すぅ…すぅ…」

能代「……んぅ…」

酒匂「ぐぅ…ぐぅ…」

矢矧「……困ったわね。昨日に何があったのか知りたいのだけど…」

ーー私は…アナタが…好き!

矢矧「ッ!!!???」

矢矧「ア゛ッ!?…あぁぁ…ぁ…」

矢矧「私…なんてことをおぉぉぉ…」プシュゥゥゥ…


ー午前7時 縁側ー


提督「さっみぃ…よくまぁ一晩でこれだけ積もったな。動かせる人間起こしてさっさと雪かきするかぁ」

提督「ん?」

矢矧「……」

提督「……おはよう矢矧」

矢矧「……おはよう」

提督「よく眠れたか?」

矢矧「多分…ね。とっても気分が良かったことだけは覚えてるわ」


提督「ははは!まさか矢矧があんなに大胆な行動に出るとは、聖夜も馬鹿にならんな!」

矢矧「も、もう!蒸し返すのはやめて!本当に恥ずかしい…」カアアアア

提督「ふふん。矢矧は酒に弱いことがわかったからな。初めて弱点を掴んだ気がするぞ?」

矢矧「もう二度とお酒は飲まないわ」

提督「そうかい?婚礼の義には日本酒が欠かせないんだが…」

矢矧「あっ…やっぱり嘘。飲むわ…ってなに言わせようとしてるのよ!」

提督「聞きたいか?」

矢矧「あぅ…待って…やっぱり心の準備が…」


提督「…矢矧。俺はお前が好きだ。指輪は、お前に最初に渡したいと思っているよ」

矢矧「ちょっと待って…って、もう言っちゃったわね… はは…」

矢矧「……」

矢矧「…正直」

提督「ん?」

矢矧「正直、信じられないわ。どうして私なんかを好きに…」

提督「なんか、なんて言うなよな。悲しくなるだろう?」

矢矧「あ、そうね。ごめんなさい…」

提督「なんだなんだ、自信なさげだなぁ」


矢矧「それはそうよ。私、アナタと世間話みたいなこと、今までほとんどしたことないし…」

矢矧「金剛や鈴谷とはあんなに気さくに話をしているのに、私とは仕事のことばかりだったでしょ?」

矢矧「アナタの好みも知らないし、昔のアナタも知らないし、将来のあなたも分からない。今現在の提督も分からないのだから、当たり前か…」

矢矧「とにかく…どうして私を…好きになってくれたのか、気になるわ」

提督「うーん?…本気で言っているのかなぁ…」

矢矧「?」


提督「矢矧。俺がお茶を選ぶとしたら、なんだと思う?」

矢矧「いえ、あなたの好みは把握していないのよ、ごめんなさい」

提督「そんなことはないさ。過去の出張を思い出せばいい。俺はそこで何を飲んでいる?」

矢矧「……玄米茶」

提督「そうだ。それが俺の好きなお茶だよ」

矢矧「え」

提督「じゃあ弁当は?」

矢矧「…豚肉のしょうが焼き?」

提督「正解。なんだ、やっぱりよく知っているじゃないか」

矢矧「え…えぇぇ~?」


提督「まぁこれ見よがしに見せつけて食べていたからな。それで分からないって言われたらお手上げだった」

提督「ま、矢矧はそういうところ、よく見ているのを知っているからこそ出来たんだが」

矢矧「…」

矢矧「むぅぅぅ…」プックー

提督「んあ?おいおい、何故頬を膨らます?」

矢矧「だって…なんだか提督の手のひらの上だったみたいで悔しいわ…」

提督「……」

矢矧「……」プクゥゥ

提督「えい」ブス

矢矧「」ブフー

提督「はははは!可愛いなあ矢矧は。ほれほれ♪」ムニュムニュ

矢矧「うぅぅ~…もう!からかうのはやめて!」パシッ


提督「くくく…俺がどうしてお前を好きなのか、知りたいって?」

矢矧「もう…いいわ。また今度聞くから」

提督「悪かった悪かった。そう拗ねるなって」

矢矧「……」プックー

提督(ははは…もしかしてこれは無意識なのか?本当に愛らしい奴だなぁ)

提督「……」ギュ!

矢矧「!?!?!?~~~///」ボフン!

提督「そんな格好じゃ寒かろうに。今はこれで我慢しろ」

矢矧「だだだだだ、だからってなんで抱きつくのよ!そそそ、そんな優しく後ろから抱き締めないでよ!」プシュゥゥゥ

提督「何も恥ずかしがることなんてないだろうに。昨日のほうがよっぽど恥ずかしかったぞ?衆目監視の前で」

矢矧「誰か通ったらどうするのよ!?もう7時なのよ!時間と場所をわきまえなさい!」

提督「却下する」

矢矧「そんなぁ…」


提督「矢矧…俺はな、お前のそういうところに惚れたんだよ」

矢矧「そういうところって…どこよ…」

提督「妙に真面目臭くて、でも完全にはお堅い訳じゃなくて、どこか世間知らずで、意外な大胆さも見せてくれて。強さと弱さが混じりあった矢矧という一人の人間が、俺はたまらなく好きだ」

矢矧「……うん…」

提督「なかでも一番好きなのが…くく…今でも思い出すと笑ってしまうのだが…楽勝な海域だからと勇んで出発していき、帰ってきたらぼろぼろに項垂れていたときがあったよなぁ。あの時のお前の顔は青葉に撮ってもらえばよかった」

矢矧「も、もう…そんな昔のこと、よく覚えているわね」

提督「あの後、阿賀野たちにさんざん慰められて、ドック行って飯食って、寝るときまで一緒だったんだよな」

矢矧「えぇ…心配性な姉妹で、もう子供じゃないのに過保護すぎるのよねぇ」

矢矧「でもそうじゃなかった…私はまだまだ子供だったわ。昨日も一日中構ってくれて、ようやく私は勇気を出せた…」

提督「で、あの酔拳のポーズに行き着いたと」

矢矧「……えぇそうね。もう、認めたほうが早そうね。はぁ…」


提督「あぁそうだ。矢矧、これ」ゴソゴソ

矢矧「なに?も、もしてかして…ゆびわ…」

提督「ほら、これ」

矢矧「?…あ、さくらもちね。昨日私が買ったものだわ」

矢矧「そういえば提督が食べていたなって思い出して、買ったの」

提督「やはりお前が買ったのか。懐かしいなぁ。ここでは数回しか食べてないのに、矢矧こそよく覚えていたな」

矢矧「ま、まぁね…」

提督「えーと…薄いシートを剥がして楊枝でぶっさして…」ペリペリ…


提督「矢矧、食べさせてくれよ」

矢矧「えぇいいわよ…ちょっと、それだと私の口に入るじゃない」

提督「そうだよ。つまりはそういうことだ」

矢矧「???」

矢矧「………ぁ」

矢矧「えっ!?ちょっと…ここで!?」

提督「あぁ」

矢矧「え…えぇ~~~」


矢矧「……」ゴクッ…

矢矧「……」パク

矢矧「……落としたらごめん…」

提督「いいさ。おかわりはまだある」

矢矧「……」

矢矧「……」チュ

矢矧「…ん…ちょ…~~///」

矢矧「まっ…!ぁむ……んぅ…ちゅ…ぷはぁ!!」

提督「もぐもぐ…変わらない味だなぁ」


矢矧「~~~。バカっ!バカバカ!もお!」ポカスカ

提督「ははは!まったく痛くないぞ矢矧!」

矢矧「バカ!ほんとに、ほんとにもう……もお~~~!」


矢矧「もう…信じられないわ…初めてのキスなのに…」

提督「懐かしい味がしたな」

矢矧「あなたはそれで良かったかもしれないけど…もう、いいわ」

提督「で、矢矧。最後に聞きたいんだが」

矢矧「……なに?」

提督「俺はお前が好きだ。お前はどうだ?」

矢矧「っ!き、昨日言ったでしょ?あの通りよ」

提督「だめだ。昨日は酔っぱらっていたから、素の声を聞きたいんだ」

矢矧「……言わなきゃだめなの?」

提督「当たり前だ」

矢矧「あぅ…うぅ…んぅ…わかった…言うわ」


矢矧「あの…提督」

提督「あぁ」

矢矧「私は…私も!あなたの事が…」

ちょ、これ以上押さないでよ…倒れる倒れる!

わぁー!

いたいー!

ドサドサドサ!

矢矧「!?」

提督「うわ…お、お前ら!」


飛鷹「やば…バレちゃった!」

蒼龍「にっげろーー!」

提督「お前ら…覗き見とはいい度胸だな…!」

赤城「違うんです提督!ここまで空母が誰も出ていないからとにかく出したいという作者の思いが顕現して!」

提督「意味の分からん言い訳を使うなぁ!」

加賀「赤城さん、ここは逃げるが勝ちです」ダッ!

大和「え?皆さん待って!あ、矢矧!お幸せに!素敵な告白だったわ!メリークリスマス♪」

矢矧「大和!?アナタまで!?」

提督「待てこらお前ら!どこから見てやがった!?」


鎮守府のみなさーん、スクープでーす!

提督が矢矧さんと~~!

大声で撒き散らすなぁー!



矢矧「……」ポツネン

矢矧「行っちゃった…みんな」

矢矧「残念ながら、奇跡は長くは続かなかったわね」

矢矧「…ふふ。まあいいわ」

矢矧「あとは、私が頑張るだけね」

矢矧「メリークリスマス。みんな」


ー午後1時 食堂ー


阿賀野「うぅーーん…んー…悩むなぁ」

酒匂「ぴゃあ…四つもケーキがあるよぉ」

間宮「昨日の残りですので、無料となっております。ただし、お一人様一つまで♪」

能代「チョコとフルーツとショートにモンブラン。じゃあ私はフルーツにしようかしら」

阿賀野「え!?こういうのってお姉ちゃんが先に決めるんじゃないの?」

能代「そんなルールはありません」

酒匂「じゃあ酒匂はフルーツ♪すっごくおいしそ~♪」

阿賀野「あれぇ?昨日と同じになっちゃった!」

阿賀野「え、えーとえーと…あーん、やっぱり選べない~!」

矢矧「じゃあ私はショートをいただくわ。阿賀野姉ははモンブランね」


阿賀野「あ、矢矧じゃない!おっはよー♪」

能代「あら矢矧。今日は冷えるわね。暖かい格好しときなさい」

酒匂「矢矧ちゃんおはよー!ぴゃあ♪時の人だよみんな~♪」

矢矧「さ、酒匂!そんなことは言わなくてもいいの!」

阿賀野「あれ、矢矧。昨日もショートだったでしょ?こ、ここはお姉ちゃんが妹に譲るわ!うん、譲るわ!」

矢矧「言ったでしょ?私、モンブランそんなに好きじゃないの。遠慮しなくてもいいわよ」

阿賀野「そうだっけ?じゃあ遠慮なくモンブランを…えへへぇ…」

能代「じゃあ間宮さん。ケーキ残り四つ、いただきますね」

間宮「はい♪ありがとうございます♪」


阿賀野「あー…ん♪うぇへへぇ…美味しい~♪」モグモグ

能代「良い表情してるわねぇ」

酒匂「でも美味しいよ~。さすが間宮さんのケーキ♪ぴゃん!」モグモグ

矢矧「そうね。いくら食べても飽きがこないわ」モグモグ

阿賀野「でも矢矧、昨日と同じだよ。かわいそうだよ~」

能代「そうだったの?早く言ってくれればよかったのに」

矢矧「ううん。皆と一緒に食べているんだもの。私はそれだけでも嬉しいわ」

酒匂「びゃあ…矢矧ちゃんすっごく大人だよぉ」


阿賀野「んー。モンブラン苦手って言っても、食べられないわけじゃないんでしよ?」

矢矧「そ、そうね。一口くらいならいけると思うけど」

阿賀野「じゃあ…はい♪あーんして!阿賀野がモンブラン食べさせてあげるわ♪」

矢矧「あは、大丈夫よ。本当にショートでも十分に満足しているわ」

酒匂「じゃあ酒匂も矢矧ちゃんに食べさせるね♪はい、あーん♪」

矢矧「ちょ…酒匂まで」

能代「あら、それじゃあ私も分けてあげるわ。妹なんだから、遠慮しなくていいのよ♪」

矢矧「う…うぅん…」


矢矧「そうね。じゃあありがたくいただこうかしら…」

阿賀野「はーい、どうぞ~♪」

矢矧「あむ…もぐもぐ…あ、甘さ控えめなのね…美味しいわ」

酒匂「矢矧ちゃん!こっちもこっちも♪」

矢矧「ぱく…果物がジューシーでとても美味しいわ」

能代「チョコレートケーキも召し上がれ♪」

矢矧「あーん…もぐもぐ…ほろ苦さがあって、私好みの味だわ」

阿賀野「えへへぇ…矢矧に餌付けするの楽しいなぁ♪」

矢矧「変な言い方しないの」


矢矧「…あの、じゃあ私も皆に食べさせてあげるわ」

酒匂「ほんとぉ!?やったぁ食べる食べる~♪」

能代「あ、せっかくだから全員分食べさせ合うのはどう?」

阿賀野「おぉ!ナイスアイデアよ能代~♪」

矢矧「そ、それと皆!一旦聞いて!」


矢矧「昨日はありがとう…私、たくさんの支えがあったから、今の幸せな結果に繋がったと考えているわ…いろいろと、手を焼いてくれたのよね」

矢矧「だから、ありがとう。何よりも三人が私のために尽くしてくれたのが、嬉しかったわ」

阿賀野「……やはぎぃぃぃ~~!」ギュウ

矢矧「わぁ!?」

阿賀野「もう、お姉ちゃんに遠慮しなくてもいいんだからね!これからも阿賀野は矢矧のお姉ちゃんなんだから!」

矢矧「ちょ…阿賀野姉暑苦しいわ…」

能代「うふふ…私も今日は、阿賀野姉と同じ気持ちだわ!」ギュウ!

矢矧「わ、能代まで!」

酒匂「酒匂も嬉しいよぉ~矢矧ちゃん♪」ギュウ


阿賀野「えへへぇ~。阿賀野型は、これからも仲良くやっていけるわね♪」

能代「そうね」

酒匂「ぴゃん♪」

矢矧「……ふふ、その通りね」

矢矧「ありがとうみんな…大好きよ」

これで終わりです。まだなにか書けるかなと思ったんですけどね…力量不足です

鈴谷がグラ来るのは分かってたんですが、熊野は追いきれませんでした。なんで熊野は普段着のままです
それでは、また何か投稿できればと思います。

依頼出してきます。

このSSまとめへのコメント

1 :  SS好きの774さん   2016年12月25日 (日) 08:38:01   ID: FsEJu_Jt

矢矧嫁のワイ提督、S勝利。やったぜ。
確かに矢矧って生真面目で堅物っぽさがあるけど、そこがいいというか何と言うか愛嬌がある。(ちゃっかり)ジュウコンしてるけどやっぱり正妻が一番ですわ。
あと矢矧ってケッコンボイス聞く限りだと間宮って呼び捨てにしてるっぽいですね

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