【モバマスSS】 Time trap 【SF注意】 (23)

チートな池袋博士が中心のSF物モバマスSSです。

タイムマシンとか出てきちゃいますので、
そう言うの苦手な方は閲覧注意でよろしくお願いします。

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201○年4月1日



遂に装置完成のメドがついた。

如何にこの天才、池袋晶葉と言えども、
このタイムマシンの完成には心底苦労をさせられた。

私は今迄の困難や苦労を思い返しながら記憶を遡り、
私の原点とも言える箇所にまで辿り着いていた。

思えば五歳の誕生日のあの日、父から貰ったあのプレゼント…、
アレが、その後の私の人生を決めたのかもしれない…。




当時の私は既に天才だった。


幼い頃から何故か機械いじりが好きで
その分野においては、驚異的な集中力と能力を見せたのだ。

両親もそんな私の長所を伸ばす様に手配し、
既に小学校に上がる前に機械工学への理解度は、大卒課程にまで達しようとしていた。


しかし、小学校に入学するにあたり、問題が起こった。


更に機械への理解を深めようとしていた私と、小学校に入学したばかりの幼い子供達。

当然周りの子供達と私が、話が合う訳もない。

私は孤立し、幼さ故の残酷さか、周りから虐めにも似た境遇に置かれ、
益々私はただ一人、機械を組み立てる事だけに熱中したのだった。


そんな私を小学校の先生達も、大いに持て余し放置した。

当然だろう、一部の知識では自分達では理解できない習熟を見せ、
それを殊更鼻にかける子供など、一体誰が好んで相手にすると言うのか。

今でこそアスペルガー症候群等と言う言葉も定着し、私の様な子供達にも理解の手が差し伸べられようとしているが、
私がいた環境にはそう言う概念はまだ浸透しきってはいなかったのだ。


以上の理由で、常に周りから孤立していた私は、
大抵独りで家に居るか、親に心配を掛けない様に河原で日が暮れるまで時間を潰していた。


父は不器用な人間だったが、そんな私を見て父なりに心配したのだろうか…、
ある日、私の身体の半分ほどもある、綺麗にラッピングされた箱を私の前に持って来た。


私はそれで初めて、その日が自分の誕生日だと言う事に気づいたのだった。

それほどまでに、私は自分の事に興味が持てず、また可愛げのない子供だったのだ。


箱の中身は過剰なまでに装飾された、合体変形をする特撮物の巨大ロボの玩具だった。

当然、娘に送る様な代物ではない。

父は不器用なりに頭を悩ませ、考え抜いた末に、自分が子供の頃に欲しかったものを用意したのだろう。

今ではそれが手に取る様に理解でき、また、その時の父の喜んでくれるかどうか不安そうな表情を思い出し、
思わず苦笑を覚える。


しかし、そんな苦笑を覚える様な父の思惑は、実は見事に的中したのだった。

巨大ロボの玩具は性別の枠を越え、私の心をガシッと捉えたのである。


日が暮れるまでロボを弄り、時を過ごし、思う存分ブンドドして遊んでいた。

しかし、そうしながらも頭の片隅では、その天才的な知能をフル回転して、ある方法を模索していたのである。


私に出来た初めてのトモダチ――

このロボットを、実際に作る方法を――




今のままでは足りない、技術も、知識も、経験も…。

自分には何もかもが足りない事に気づいた私は、こうして機械工学に全てを捧げる事を決意したのである。


アスペルガーの特徴故か、機械の他に全く勉強に興味は無く、
時間も取らず、未だに学校の成績はそれほど良くない。


人間の友達もおらず、部活にも参加せず、オシャレにも色恋にも興味が無い私は、
その青春の全てを機械工学に費やしたと言っても過言ではない。

その甲斐も有ってか、予算の都合で巨大な――とまでは行かないが、
ロボを製作する事にも成功し、研究は次の段階へと移ったのだ。





色々な装置を開発し、実験する。


子供の頃に興味の延長線上で読んだ漫画の、青色の猫型ロボットが取り出す数々のひみつ道具は、
私の探求心を捉えて離さなかった。

アレらの道具を再現出来たらどんなに素晴らしい事か。
私は冗談でも何でもなく、真剣にそう思っていたのだ。


しかし、その頃、私の環境は考えられないほどの激変を見せていた。

こんな私をアイドルにしたい、等とスカウトしてくる変わった青年が私の周りに現れたのだ。

青年はアイドルのプロデューサーだった。


プロデューサー…今では私は助手と呼ぶが 

――彼は変わった人間だ。

機械にしか興味が無く、また無愛想な私をアイドルにスカウトし、また、その才能を見事に開花させた。

最初は私にアイドルなどは無理だと思っていた。

半ば強引に連れてこられた事務所には美少女で溢れ、その誰もが愛想も抜群に良かった。

私などが居る場所ではない。

そう思ったことも何度もある。

しかし、彼は根気強く私を育て上げ、今では池袋晶葉と言う名前は、アイドルとしてそこそこの地位を占めている存在でもある。


その過程で色々と他のアイドル達との交流も増え、今では人間の中にも、友達と言える存在が増えて来た。

私の狭い世界――それはそれで居心地が良かったのだが――を広げてくれた助手には感謝の言葉しかない。

私はそんな助手にせめてもの感謝の気持ちを込めて様々な装置を与えて来た。

しかし、最初は純粋に感謝の気持ちから、
だったのだが、次第に彼の喜ぶ顔、はしゃぐ顔が見たくなり――

そして、今ではソレが装置を作る理由の殆どになっていたのだった――


私は彼に自分が作り出した様々な装置を与え、彼がそれを使い様々な騒動を起こす、
私はそんな毎日に青色猫型ロボットと眼鏡の少年を思い出し、大変満足していたのだった――



そして、私の研究の集大成と言える研究が、今、成功した。


タイムマシンだ。


機械工学の枠を越え、またアイドル活動で新たに知り合った、
某財閥の娘からの資金援助も潤沢に受け、遂にこの歴史的も言える発明に辿り着いたのだ。

私が最初にこの装置の完成を真っ先に報告し、共に喜びを分かち合ったのは、

道を示してくれた父でもなく、

資金援助をしてくれた財閥の関係者でもなく、私が助手と呼ぶ、一人の青年だった。



タイムマシン…。

それも助手が強く望んだ装置だった。

彼と共に見た某アニメ、一人の青年が偶然からタイムマシンを作り上げ、
その為に幼馴染を失う危機に巻き込まれ、その悲劇を乗り越えるために何度も何度も過去に向かう、と言う作品だ。

この作品を見ながら助手は、

「見てられない、俺ならもっと上手くやれる」

と力説し、方法を語った。



その様子が、年上の異性に使う言葉ではないが……、私にはとても愛らしく、また、微笑ましかった。

微笑みながら助手の話を聞く私――

その瞬間に、私の頭脳に一つの閃きが起きた。

この理論を使えばタイムマシンの作成も可能かもしれない――

その時、そう考えた私が最初に思った事は、実際にタイムマシンを作り上げたら、
助手はどれくらい喜んでくれるだろうか、と、言う事だった。


その思いだけでこれほどの大発明をしてしまうのだから、我ながら呆れる他はない。


助手はそれはもう大喜びしてくれた。


今までに見たことのない喜び様で、私の苦労を大いに癒してくれた。

思えば、今までの孤独や苦難はこの顔を見る為に有ったのかもしれない…。

そう思うと、私の眼には思わぬ涙が溢れ始めたのだった。


突然の私の涙に驚いた助手は、心配そうに私に訳を訪ねてきた。

私は、心配するな、うれし涙だ、と言い、慌てて涙を拭きながら、理由を正直に話した。

今までの苦労が報われた事、

子供の頃は孤独だった事、

孤立して虐めなどもあった事、

トモダチは父からプレゼントに貰った巨大ロボットしかいなかった事――



語る内に助手の顔が辛そうな真顔になっていく。

そして、私が語り終えるのを待っていたかのように、私に向かい、高らかに宣言したのだった。

「よし!決めたぞ!!時間旅行の最初の旅の目的は……、晶葉、昔のお前の友達になってくる事だ!!」
、と。

どうやら私の孤独だった頃の話が、助手の中の琴線に触れたらしい。

そんな寂しい思いをしている幼い私を一人にはしておけない、だそうだ。

私は、そんな助手の気持ちを受け、嬉しく思う反面、ある懸念を抱き、それを口出そうとして――止めた。


助手はそんな私の様子に気付きもせず、嬉々として装置の操作の手順を頭に叩き込んでいた。

そして、ある程度習熟した所で、最初の時間旅行に乗り出す為に装置に乗り込んだのだった。



まず、私達は装置の中と外で綿密に計画を話し合った。

普通に過去に戻り、過去の私に接触しても、不審者扱いされて信じては貰えないだろう。

ちなみに当時の私はキッチリ防犯ブザーを所持し、それを鳴らす事に躊躇いは無かった事を付け加えておく。

だから私は、タイムマシンで直接、昔の私の目の前に降り立つことを提案した。

実際に目にすれば流石の過去の私も、本当に未来から来た事を理解するだろう、と推測したのだ。

また、当時既にそれを理解するだけの知能はある自覚があった。


他の人の目に触れる危険性や座標の問題などの心配も無い。

当時私は、人目の付かない河原の片隅で、隠れる様にただ時が過ぎるのを待ち続けていた。

今でも当時の日付や時間、場所などは詳細に思い出せる。


その事を語ると助手は目に涙を溢れさせ、それを拭いながら、

「待ってろよ、晶葉…、俺がそんなお前の孤独を振り払ってやるからな…っ!!」

と、拳を握り、力強く宣言した。

私はそんな助手の思いに対して、胸に秘めたこの考えを隠す事に、改めて少なからず胸の痛みを覚えたのだったーー


そして遂に、助手が過去に飛び立つ瞬間がやって来た。

私は装置の最終チェックを行い、助手が装置を起動する瞬間を待つ。

助手はそんな私に笑顔を向けながら、ニッと微笑みながら、装置を起動した。

溢れる光線、電撃。
思わずそれらから目を背けた一瞬の後、装置は綺麗に研究室から姿を消していた。


成功だ――


実験には何度も成功しては居たが、実際に成功するとなると喜びもまた一入だ。

私は充実感に胸を震わせながらも、タイムマシンが消えて行った空間に向かい、申し訳なさそうにポツリと呟いた。


「すまない、な。 助手――」



二千○年、五月一日

ママから日記を書くように勧められ、一月が経ちました。

とは言っても毎日書く事なんて同じ。

河原で日が暮れるまで考え事をしながら時間を過ごす、ただそれだけ。

周りから受けている嫌な事なんて書きたくないし。

後から見返して思い出したくないもの。

そんな繰り返しの毎日。

今日だって何も書く事なんてきっとない、朝まで私はそう、思い込んでいました。


でも今日は違いました。 河原で足元に転がった石を投げていると、後ろの方から突然光線と電撃が発生したのです。


驚いて振り返ると、光線と電撃が収まった後、そこに突如として見た事も無い装置が現れたのです!!
唖然として見ていると、そこから降りて来た一人の男性が私を見るなり、親しげに声を掛けて来ました。

「おお、成功か……。信じてはいたけど、やっぱすげぇな……おっ、そこに居るのは昔の晶葉か!?
 ははっ、面影はあるけどやっぱりちっちゃいな!!w」


私はそう言いながら近寄ってくる男性を警戒して、ポケットに入れていた防犯ブザーを素早く取り出しました。

その様子に気付いた男性は、大慌ての早口で自分の事を語りだしたのです。


自分は未来の私が作ったタイムマシンで過去に来た事。

私は将来アイドルになっていて、自分はそのプロデューサーだと言う事。

突然現れたのは、証拠を見せれば過去の私は信じてくれるだろう、と未来の私が言ったからだ、と言う事。



私はそんな胡散臭い説明をされながらも、
全く不思議な事に、何故かその話を信じ始めていました。

だってタイムマシン……。
にわかには信じられないけど、実際に突然現れた事を見ても、今の私に理解出来る範囲を軽く超えています。


軽く中身の機械を見せてもらいましたが、
複雑すぎてちんぷんかんぷんです。

取り合えず冗談やドッキリで作れるシロモノではない事だけは分かりました。


どうやら信じるしかないみたい。


ニコニコと此方を見ている男性……プロデューサーさん…助手と呼んでくれ、と言われたのでそう呼びます。

助手は、友達の居ない私に友達に成りに来た。と言いました。


何それ、余計なお世話だけど。


別にそんなの要らないし!と、強がってみましたが、考えてみればこの人は未来の私から、どれほど辛い思いをしたか、
河原でどれ程寂しい思いをしていたか、を聞いている筈です。


だからこそココヘ来たのでしょう。


強がってみても仕方ありませんでした。



私は諦めてため息をつく。


「で、友達になってどうしてくれるの??」

ジト目でそう呟いた私に、助手は満面の笑顔で、

「取り合えず、今日は一日遊びまわろうぜ!!今日がずっと思い出になる様にな!!」

と、私の手を取り、同意もロクに得ずに、駆けだす様に歩き始めました。



助手は抜かりなく今使えるお金(お札もちょいちょい変わってるみたい。人物は変わってないみたいだけど)
を用意していたので、そのお金で千葉なのに東京を名乗ってる某夢の国に連れて行ってくれました。

パパもママもお仕事で忙しいのでこんな所に来たのはじめて。

思わずネズミの耳を付けてはしゃぎ回ってしまいました。



ネズミの耳を売ってくれたアルバイトのお姉さんが、

「はい、落とさないでくださいね? では夢の国をお楽しみください、キャハッ!」

と言っていたのを見て、助手が何故か固まって、

「マジか……全然変わってねぇ……サイボーグか……??」

と、ブツブツ言ってたのが印象的でした。

一体、何があったんだろ??


散々遊んで、色んな乗り物に乗って、お土産も買ってもらい、私は大満足で助手と一緒に河原へと戻って来ました。

でも、一歩一歩歩く毎に、これで助手は未来に帰ってしまうんだな、と思うと、
歩みが心なしか重く、歩幅も段々狭くなっていきました。


その事に気付いた助手は、私の繋いだ手を優しく握りしめ、

「晶葉……今は辛いだろうが、頑張れよ?? 後、数年頑張れば俺がお前を迎えに行く。
アイドルになれば友達も一杯出来る。俺が保証する。 …だから、頑張れ」

そう言いながら、もう片方の手で私の頭を撫でてくれました。


私はコクリと頷くと、溢れて来た涙を拭いながら、ぎゅっと強く手を握り返したのです。


そして遂に河原に辿り着き、変わらずそこに有ったタイムマシンに助手が乗り込もうとしました。


しかし、最後に挨拶を交わそうとしたその瞬間、大変な事が起きたのです。


確かに其処に有ったタイムマシンが何と、突然掻き消えてしまったのです!!


最初は呆然と、しかし次の瞬間は真っ青な顔で助手が、

「た、タイムマシンが消えた……。一体、どうなっているんだ……」

と、絶望的な表情で呟きました。


私は急に起きた余りの出来事にどうして良いか分からず、河原に膝をつく助手の背後で、
ただただオロオロする事しか出来ませんでした……。


二千◯◯年12月24日


あの日、助手が未来に戻れなくなってから十数年が経過した。

時を経た今だからこそ理解る。
タイムマシンが掻き消えた理由が…。


多分私は、初めて出来たトモダチ、プレゼントされたロボットへの思いが、
人間の友達が出来た事によって薄れ、機械に対する異常ともいえる執着心を無くしてしまったのだろう。

若くしてタイムマシン等を作り上げる異常な才能は、
生まれ持った才能だけでは到底たどり着けない領域である事だけは確かだ。


それこそ寝食を忘れて、文字通り全てを投げ出さなくては。


前の世界の私にはそれが出来た。
いや、せざるを得なかったのだろうか…。


しかし、今の世界は助手が過去にやって来て、私の友達になってくれ、
未来にも希望を示した事で、私は未来に光を見た。


その結果、どうやらその執着は失われてしまったらしい。


そんな私ではタイムマシンなど、到底作り上げることは出来ないだろう。


結果、タイムマシンを作り上げる未来は掻き消え、タイムマシンも失われた訳である。


それを証拠に今の世界でアイドルをやっていた私は、ロボット作りはするが、
精々キャタピラで動く程度の市販に毛が生えた程度の物しか作れなかった。


科学者としては大いに残念ではある。


歴史に名を残せたかもしれないのである。

無念さも有る。

自分の至らなさに歯痒くも有る。


しかし、その何れよりも価値がある、と私が考えるモノを、今、私は手にしていた。


左手の薬指に輝く結婚指輪だ――

助手は結局未来には戻れず、この世界で暮らす事になった。

何しろ、コレから起きるほとんどの公的ギャンブルの結果(競馬のG1等の大きなレースくらいらしいが)
を把握しているので、金には全く困らないらしい。


やがて大金を積んで裏から戸籍を手に入れ、働き始めた。


ただ遊んで暮らしているだけではヒマでしょうがない、そうだ。



そして、色々な仕事に手を出した後、

「結局、俺にやれる事はアイドルのプロデューサーしかない」

との事で、助手はこの世界でもプロデューサー業を始めた。

346プロと言う元からいた会社は、この時代にはアイドル部門は無いそうなので、
765プロと言う関係のあった会社に勤め始めたようだ。

どうやら面接もティン!と来たらしく、上手くいったらしい。

そこで気儘にアイドルを発掘し、毎日を過ごしていた。

何と彼は、前の世界で長年苦労したアイドルや、挫折しかけたアイドル 、事務所を数件潰したアイドル等を手早く先に発掘し、
育て上げ、彼女達の運命をより良い方向に導く喜びを見つけたようだった。


まあ、流行するジャンル等も数年先まで把握しているチートなので、彼女達を売り出すのは容易い事だったのだろう。


最近の悩みは挫折を知らない某ウサミミアイドルが、ちょっと最近、調子に乗ってきてる事らしい。

何もかも上手くはいかないものだ。


さて、私はと言えば、何故この指輪をしているかを説明しなくてはならない。

助手がこの世界で暮らす様になったとは言え、彼の事を本当に知っているのは世界でただ一人、この私だけだ。


偽りの戸籍を手に入れ、人間関係が増えたとは言え、やはりまた、彼も孤独だったのだろう。

事有る毎に私の元を訪れ、語り、また遊びにも連れて行ってくれた。

私もそんな助手にまた良く懐き、元の世界よりもさらに親密な関係となっていった。


そして、私が16歳を迎えた頃、指輪を送られて告白されたのだった。


数年前から望んでいた事だ。
返事は即答だった。 イエスと。


親も子供のころから忙しい自分達に代わり、我が子の面倒を見てくれた青年を憎からず思っており、
しぶしぶながらも結婚を認めてくれた。

父は早すぎる、とご立腹だったようだが、
私にしてみたら遅すぎると言いたいくらい待っていたのだ、それは勘弁してほしい。

助手も、私があの年になるのをずっと我慢していたのだから。



そして今、私はアイドルを引退し、アルバイトとして、
アイドルとして所属していた765プロで、事務員見習いをしている。


事務員の音無さんに事務の仕事を教わりながら、助手の仕事を支えている毎日だ。


助手の助手と言う訳だ。

何か訳の分からん存在になっているのは気のせいだろうか??



助手はこの世界では偉くモテるので、少し心配になる事があるが多々有る。

どうやら本人にはその自覚が無いようだが、前の世界でも似た様な感じだったらしい。
…コレは前の世界では、私は相当苦労していたのでは無いだろうか…。


しかし、この世界では、どうやら私だけを見てくれているので、私は大変満足している。


少々怪しい視線を向けてくるアイドルがまだ数人いるので、到底安心などは出来ないのだが……。




しかし、こうなって不思議に思う事が一つある。

前の世界の私は天才だった。
今の私が及びも付かないくらいの。

そんな彼女に遠く及ばない私程度が辿り着いた結論、

―機械に対する執着を失った為のタイムマシンの消失―

果たしてその事を予想できなかったのだろうか?? 
今の私を遥かに超える天才が??

私はその矛盾について考えた末に、ある一つの結論に達した。



おそらく彼女はこの出来事を予想していた。

その上で敢えて、助手が過去に旅立つのを、黙って見送ったのだろう。


当然、助手は過去に取り残される。
周りには自分を知る人間など誰も居ない。

ただ一人、全てを知る私を除いては。


必然的に助手は、孤独ゆえに私の存在を強く求めるだろう。 事実、そうなった。

結果として今、私の左手薬指にはこの指輪が嵌っている。


数年彼を独占した上に、その心まで手に入れたのだ――

もし全てが彼女の策ならば、今、この時代に見事に成就した、と言えるだろう…。


コレが私の想像する全てのあらましだ。


そして多分、この考えは間違っていない。

確証は無いが自信は有った。


なぜなら、私は前の世界の、そしてこの世界の誰よりも彼女の事を知っているのだから…。


だが、私はこの推測を助手に告げるつもりは無い。

ただ、この薬指に光る輝きが示す証、
そして今はまだ確証はないが、このお腹に宿る命――

この二つが事実としてあるならば、私には何の問題も無いからだ。




私は差し込む日光に左手を翳し、光り輝く指輪を見て――
ただ、ニコリと微笑むのだった――







【完】

終わりです。

最初のチートな晶葉さんは二次創作によく居るイメージ。
終わりの晶葉さんは原作寄りのイメージです。

では、HTML化依頼出してきます。

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