【予定は未定】ライラ「年の瀬の」 千早「風物詩」 (57)

・アイマス×モバマス
・千早とライラさんともう一人で力仕事
・ヤマ、オチ特になし
・口調等に違和感があったらごめんなさい

頑張って年内には完結させたいと思います
以上、よろしければお付き合いください


↓なお前回
【予定は未定】千早「一周年?」 ライラ「おー」
【予定は未定】千早「一周年?」 ライラ「おー」 - SSまとめ速報
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千早「皆さんこんばんは、如月千早です」

ライラ「ライラさんでございますよー」

千早「いつも通りの不定期放送、予定は未定をお送りします」

ライラ「千早さん千早さん」

千早「何かしら?」

ライラ「この服、なんと言うものなのでしょうか?」

千早「これは作務衣ね」

ライラ「サムエですかー」

千早「確か、昔の人の作業着みたいなものだったかしら」

ライラ「おー、確かに動きやすいのです」


千早「珍しく衣装が指定されているわけだけど、なんで作務衣なのかしら」

ライラ「あー、今日のゲストの方が関係しているのだと思いますよー」

千早「そうなの?」

ライラ「はいです。事務所でもよく着ていらっしゃいます」

千早「……ライラさん、本当に作務衣知らなかったの?」

ライラ「お着物のお仲間なのかなーとは思ってましたです」

千早「間違ってはいないんじゃないかしら、多分」

千早「ではライラさん、ゲストの紹介をお願いするわね」

ライラ「はいですよー、今日のゲストの藤原肇さんなのですー」

肇「藤原肇です。よろしくお願いします」

千早「ようこそ、藤原さん」

ライラ「よろしくお願いしますですよー」


千早「…………」

肇「あの、どうかしましたか?」

千早「いえ、私たちと違って様になっているなと思って」

肇「あ、ありがとうございます」

ライラ「お似合いでございますねー」

千早「さすが、普段から着ているというだけはあるわね」

肇「あの、出来ればそのあたりで……」

ライラ「おー、それでは行きますですよー」

千早「予定は未定、どうぞお楽しみください」

ライラ「それで、今日は何をするのですか?」

千早「さあ?」

肇「……え?」

ライラ「あー、いつも通りでございますか」

千早「何かを企画していそうな雰囲気はあったけれど」

ライラ「それでは、行ってみれば分かるのですねー」

肇「それでいいんですか?」

千早「まあ、いつものことよ」

ライラ「なるようになるのですよー」

肇「はあ……」


***************************


千早「なるほど」

肇「臼と杵、ですね」

ライラ「おー、お餅つきでございますか」

肇「向こうには屋外用のかまどまでありますね」

ライラ「何に使うのですか?」

肇「おそらく、もち米を蒸すんだと思いますが」

千早「……ただ餅をつくだけではない、と」

肇「かなり本格的な準備がしてあるようです」

千早「まあ、ウチのスタッフのことだから簡単ではないと思っていたけれど」


ライラ「えーと、時間の都合上、前日までに必要な準備はしています、とのことですが」

千早「つまり?」

肇「普通、研いだもち米を一晩くらい水に浸けておかないといけないんです」

ライラ「おー、そうなのですか」

千早「藤原さん、詳しいのね」

肇「実家では恒例行事でしたので」

千早「実家?」

ライラ「あー、肇さんのお家はトウゲイをなさるそうなのですよ」

肇「はい。実家は備前焼の窯元をしていて、それなりに名前も知られているんです」

千早「ああ、そういう所って季節の行事を大切にしていそうだものね」

肇「お察しの通りです」


ライラ「おー、ではライラさんの出番は少なそうなのですねー」

肇「いえ、そんなことはないと思いますが……」

千早「そういえば、今年の初めに餅つきの仕事をしたって言ってたわね」

ライラ「でも、ライラさんたちはペッタンペッタンしただけなのですよ」

肇「そうなんですか?」

千早「ふふ、じゃあライラさんには頑張ってついてもらおうかしら」

ライラ「おー、頑張りますですよー」


――――――
――――
――

千早「で、まずは何をすればいいのかしら」

ライラ「もち米、硬いままですねー」

肇「ですので、まずはもち米を蒸かさないといけません」

千早「なるほど」

ライラ「蒸かす、ですか?」

肇「お湯を沸かして、その湯気でもち米を柔らかくするんですよ」

ライラ「おー」

千早「お湯を沸かす……ね」

ライラ「どうしましたですか?」

千早「お湯を沸かすには、火が必要よね?」

ライラ「そうでございますねー」

千早「でも、私たちの前にはかまどと薪しかないわ」

ライラ「あー、ライラさん分かりましたですよ」


肇「火、おこしましょうか?」

千早「できるの、藤原さん?」

肇「ええ、陶芸と火はセットですから」

千早「それは頼もしいわね」

ライラ「あー、肇さんのお気持ちは嬉しいのでございますが……」

肇「どうかしましたか?」

ライラ「スタッフさんから、簡単に出来ては面白くない、とのお言葉でございまして」

千早「……ええ、そうでしょうとも」


肇「えっと、あの……?」

千早「ああ、藤原さんは気にしなくていいわ」

ライラ「いつものことですからねー」

千早「私たちが四苦八苦する姿が見たいのよ」

肇「では、助言くらいは……?」

ライラ「……大丈夫なようでございますねー」

肇「分かりました。精いっぱい務めさせていただきます」

千早「私も人のことは言えないけれど、この番組ではもっと楽にしていていいのよ?」

ライラ「そこが肇さんのいいところなのでございますよ」

肇「そ、そうでしょうか?」

ライラ「はいですよー」

千早「ふふ。ライラさんが言うなら、そうなんでしょうね」

一先ずここまで
カバーガール、なんていうものもありましたね
どれだけの人が覚えているんでしょうか……

題材的にも年を越すとマズいので頑張ります
お付き合いいただけましたら幸いです


***************************


千早「さて、火をおこさなければならないようなんだけども」

ライラ「どうすればよろしいのでしょうか」

肇「まずは薪を組みましょう」

千早「とはいっても、サッパリなのよね」

肇「細かい薪は燃えやすいですが長持ちしません。大きい薪はその逆です」

ライラ「ふむふむ」

肇「そして火は下から上に燃えるので、そこに注意して頂ければ」

ライラ「他には何かありますですか?」

肇「そうですね。あとは空気の通り道を作ってあげればいいかと」

ライラ「おー」


千早「(そういえば以前のキャンプの時、プロデューサーはどうしていたかしら?)」

千早「えーと、焚き付け用の新聞紙の上に細かい薪を置いて……」

肇「新聞紙は丸めたほうが火が移りやすいですよ」

ライラ「こうでございますか?」

肇「はい、そんな感じです」

千早「両脇に大きな薪を置いて、その上を渡すように薪を……」

肇「千早さん、実はやったことありませんか?」

千早「いえ、これは見様見真似というか」

ライラ「そうなのですか?」

千早「去年のキャンプの時を思い出して、ね」

ライラ「あー、懐かしいでございますねー」

千早「本当に上手くいくかは分からないけれど」

肇「いえ、これならたぶん大丈夫だと思います」

ライラ「肇さんがそうおっしゃるなら大丈夫ですねー」

肇「…………いざとなったら、私が」

千早「(そんなに気負わなくていいのに)」


ライラ「それで、火はどうやってつけるのですか?」

肇「これ、みたいですね……」

千早「マッチ箱ね。いやに軽いけど」

ライラ「おー、ライラさん初めて見ますですよ」

肇「普通、使いませんからね」

千早「マッチが三本しか入っていないのはどういうことなのかしら」

ライラ「仲良く一本ずつでございますねー」

肇「……ライラさんって、すごいですね」

千早「ええ、本当に」


ライラ「これはどうやって使うのですか?」

肇「箱の横にあるザラザラの所と、マッチの頭をこすると火が点くんですよ」

ライラ「おー、やってみていいでしょうか?」

千早「じゃあ、トップバッターはライラさんね」

ライラ「えい」

肇「…………あ」

千早「…………あ」

ライラ「うー、折れてしまいましたです」

肇「ちょっと力が入り過ぎたみたいですね」


千早「じゃあ次は私かしら」

ライラ「頑張ってくださいですよー」

千早「あんまり見られると緊張するわね……はい、と」

ライラ「おー、火がつきましたです」

肇「消えないうちに新聞紙に点けてください」

千早「え、えっと……こう?」

ライラ「あー」

肇「消えてしまいましたね……」

千早「……急に動き過ぎたかしら」


ライラ「あと一本でございますねー」

肇「私がやってもいいんでしょうか?」

千早「火が点かないと番組が進まないし、いいんじゃないかしら」

ライラ「お任せしましたです」

肇「わかりました」

千早「よろしくお願いするわね」

肇「それでは……」

ライラ「おー」

千早「……恐ろしく手際が良いわね」

ライラ「あっという間に薪に火が点きましたです」

肇「こういうことは、慣れが物を言いますから」

千早「私たち部分、必要だったのかしら」

肇「いえ、千早さんたちがきっちり薪を組んでくれたおかげです」

ライラ「お役に立てて良かったのですよー」

肇「あとは適当に薪を足しながら、お湯が沸くのを待ちましょうか」

ライラ「たき火、あったかいですねー」

千早「ふふ、そうね」


――――――
――――
――

千早「…………ねえ」

ライラ「はいです?」

千早「スタッフが隣で、ものすごい勢いで火を焚いているんだけれど」

ライラ「おー、ポッカポカですねー」

千早「初めから……ううん、なんでもないわ」

肇「多分、臼と杵を温めるためのお湯を沸かしているのかと」

千早「お湯?」

肇「臼が冷たいままだと、上手くお餅にならないんですよ」

ライラ「そうなのでございますか」

千早「(スタッフまでたき火をする必要、あるのかしら?)」


肇「ですので、この先は時間との勝負です」

千早「どうすればいいのかしら」

肇「まずは蒸し上がったもち米を臼に移して、こねて潰します」

千早「杵でつくんじゃないの?」

ライラ「いきなりつくとお米が飛んでくるのですよー」

千早「(あ、これは実際にやっちゃったのね)」

肇「大体潰し終わったら、いよいよ杵でつきます」

千早「ようやく私が知っている餅つき、って感じね」

ライラ「ペッタンペッタン、楽しいのですよ」

肇「最初は、合いの手は私がやりますね」

千早「ええ、きっとそのほうがいいわね」

ライラ「合いの手は難しかったですからねー」

肇「息を合わせて頑張りましょう」

ライラ「おー」


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千早「杵って、結構重いのね」

肇「はい。こうやって体重をかけて、ねじるように、潰して、いきます。」

ライラ「おー」

千早「な、なかなか大変そうね」

肇「さあ、ご一緒に」

千早「そうね」

ライラ「ライラさんもー」


千早「これは、ホントに、キツイ、わねっ」

ライラ「難しいですねー」

肇「でも、この工程が、出来をっ、左右します、のでっ」

千早「どれくらい、潰せば、いいのかしら?」

ライラ「うんしょ、うんしょ」

肇「粗方、潰し終わる、まで、ですっ」

千早「さ、先は、長そうね……!」

ライラ「頑張りますよー」

千早「でも、これ」

肇「なん、ですか?」

千早「テレビ的に、どうなのかしら、って」

肇「…………地味、ですねっ」

ライラ「あー、今更でございますねー」

千早「それは、そうだけどっ」

肇「(あれ、ライラさん余裕なのかな?)」


――――――
――――
――

千早「ふぅ、これくらいでいいのかしら」

肇「ええ、十分です」

ライラ「それでは、ライラさんの出番ですねー」

千早「杵、重いわよ?」

ライラ「あー、力はそんなにいらないのでございますよー」

千早「え?」

肇「杵は臼の真ん中に落とすようなイメージですね」

千早「杵を……落とす?」


ライラ「えへへー、まずはライラさんがお手本をお見せしますですよ」

肇「よろしくお願いしますね」

ライラ「よろしくですー」

千早「(こう、杵を一気に振り下ろすイメージだったんだけど)」

ライラ「よいしょー」

肇「はいっ」

千早「(ホントに力はいらないのね)」

ライラ「よいしょー」

肇「はいっ」

千早「(もっと激しい感じかと思っていたのだけど)」

ライラ「よいしょー」

肇「はいっ」

千早「(すごく和やかな感じね)」

ライラ「よいしょー」

肇「はいっ」

千早「(藤原さんも手馴れている様子だし)」

ライラ「よいしょー」

肇「はいっ」

千早「(これなら私も大丈夫、かしら)」


ライラ「ふー、ちょっと休憩でございますよ」

肇「ふふ、お疲れ様です」

千早「どんな感じかしら?」

肇「だいぶいい感じですよ」

ライラ「千早さんもやりますですか?」

千早「そうね、せっかくだし」

肇「細かい調整は私がやりますので、千早さんはとにかく真ん中に杵を落とすようにしてください」

千早「お手柔らかにお願いするわね」

ライラ「頑張ってくださいですよー」


肇「それでは、行きましょうか」

千早「よっ、と」

肇「ふふ、いい感じですよ」

千早「そう、かしら!」

ライラ「おー、お上手でございますねー」

千早「そうなら、いいのだけどっ」

肇「本当に初めてなんですか?」

千早「いえ、前に一度、やったことは、あるけどっ」

ライラ「どなたとでございますか?」

千早「事務所のみんなと、なのだけれど」

肇「その時もこんな風に?」

千早「いいえ、私は、ちょっと触った程度でっ」

ライラ「でもお上手なのですよ」

千早「でもこれ、結構しんどい、わね!」

肇「それでは、いったん休憩しましょうか」

千早「……ふう」


ライラ「お餅、どんな感じでございますか?」

肇「これなら、あとちょっと仕上げをすれば大丈夫ですね」

ライラ「おー」

肇「お二人に倣って、私も少し頑張りますね」

千早「合いの手はどうするのかしら?」

肇「これくらいなら私だけで問題ないと思います」

千早「……そうなの?」

肇「仕上げだけですから」


ライラ「おー、肇さん力強いのです」

千早「餅をつくスピードが違うわね」

肇「経験があるかどうか、だけだと思いますよ?」

ライラ「音も違うのですねー」

千早「これぞ餅つき、ていう音ね」

ライラ「ペッタンペッタン、とは違うのですよ」

肇「お二人も、慣れればこれくらい、すぐできるように、なりますよっ」

千早「私は、もうちょっと力をつけないとダメかしら」

ライラ「うー、ライラさんもですねー」

肇「さて、これくらいでいいかと」

千早「あとはお餅を丸めればいいのよね」

ライラ「はいですよ」

千早「ここからは私も経験があるから、大丈夫だと思うわ」

肇「お手並み拝見、ですね」

千早「……御眼鏡にかなうといいのだけれど」

今日はここまで
……何とか、今年中には完結できそうです

お楽しみいただけたなら幸いです


***************************


千早「まずは餅とり粉をふってその上に、よね?」

ライラ「食べやすい大きさにちぎって丸めるのですよー」

肇「その前に、そのままちょっとだけ食べてみてください」

千早「え?」

ライラ「いいのですか?」

肇「ええ、ぜひ」

千早「……ん、と」

ライラ「おー、あったかいですねー」

肇「ふふ、つきたてですから」


千早「! 柔らかくて、甘い」

ライラ「うー、噛み切れませんです」

肇「出来立てでしか味わえない贅沢です」

千早「何にもつけていないのに、すごく美味しいわ」

ライラ「あー、おかわりはありませんですか?」

肇「あんまり食べすぎると無くなっちゃいますから……」

千早「ふふ、おかわりは我慢しましょうか」

ライラ「うー、残念でございます」


肇「では、丸めていきましょう」

千早「こんな感じでいいのよね?」

肇「はい。粉をまぶして、親指と人差し指で絞り出すように」

ライラ「こうでございますか?」

千早「そうそう。ライラさんも上手ね」

ライラ「えへへー」


――――――
――――
――

千早「丸め終わったわね」

ライラ「この後はどうするのですか?」

肇「実は、こんなものを用意しました」

千早「大根おろし?」

ライラ「美味しそうで……うー、ちょっと辛いでございます」

肇「ライラさん……」


千早「これにお餅をつけるのかしら?」

ライラ「お餅、辛くなりませんですか?」

肇「ふふ、それが良いんですよ」

千早「じゃあひとつ」

ライラ「……どうでございますか、千早さん?」

千早「うん。お餅の甘さと大根おろしの辛さがちょうどいい感じ」

肇「つきたてのお餅で食べると格別なんですよ」

ライラ「では、ライラさんもー」

千早「どう?」

ライラ「おおー、美味しいでございます」

肇「ふふ、良かったです」

ライラ「おかわりしてもいいですか?」

千早「ええ、どうぞ」

ライラ「あー、幸せでございますよー」


千早「でも、あんまり食べ過ぎちゃ駄目よ?」

肇「このあと、焼き餅もありますからね」

ライラ「焼き餅でございますか?」

千早「ええ、あっちでスタッフが火の準備をしているわ」

ライラ「おー」

千早「(心なしか、いつも以上にスタッフがはしゃいで見えるわね)」

肇「では行きましょうか」


ライラ「ふー、あったかいのでございますよ」

千早「ライラさんって、寒いのはダメだったかしら」

ライラ「あー、苦手ですねー」

肇「じゃあ、あったまりながらお餅を焼きましょう」

ライラ「網の上に乗せるだけでいいのですか?」

千早「そうね。味付けは後で」

ライラ「楽しみですねー」

肇「ふふっ」


千早「それにしても、藤原さんって頼もしいのね」

肇「そうでしょうか?」

千早「ええ。今日は頼りっぱなしだもの」

ライラ「美味しいお餅も、肇さんのお陰でございますねー」

肇「それは、たまたま経験があったというだけで」

千早「経験があっても、それを人に伝えるのはまた別の問題よ」

肇「そう……でしょうか」

ライラ「ライラさんも分かりやすかったのですよー」

千早「私は、人に伝えるというのがあまり上手くないから……だからこそ、凄いと思うわ」

肇「……ありがとうございます」


ライラ「肇さん力持ちでございますし」

千早「そういえばそうね。杵なんかも軽々使いこなしていたし」

肇「軽々かどうかは……その」

肇「でもそうですね。ずっと土いじりをしていたので、力はある方だと思います」

ライラ「土いじり、でございますか」

肇「ええ、陶芸は体力勝負なところもありますから」

千早「ふふ」

ライラ「どうしたのですか?」

千早「陶芸の話をしている藤原さんは、すごく楽しそうだなって」

肇「……そうかもしれません」


千早「どうしてアイドルに?」

肇「『小奇麗にまとまってはいるが、色がない』、そんな風に言われまして」

ライラ「?」

肇「私が作る器には、作った人間の顔が見えないんだそうです」

千早「作った人の……顔?」

肇「陶芸を通じて表現する、自分というものが弱い……そういうことなんだと思います」

肇「だから、まったく別の世界で自分を見つめ直してみたいと思いまして」

肇「私は何が出来て何が出来ないのか、そして何がしたいのか」

ライラ「肇さん、なんだか格好いいのです」

肇「そんな……」

千早「謙遜することはないと思うわよ?」

肇「まだまだ未熟者です」


ライラ「ちょっとずつ進めば、それでいいのですよー」

千早「そうね、ライラさんの言う通りだと思うわ」

肇「……前に進めているなら、嬉しいです」

千早「(藤原さんにとっての陶芸は、きっと、私にとっての歌のようなものなのね)」

ライラ「千早さん肇さん、お餅が膨らんでいるのです」

千早「あ、つい話し込んじゃったわね」

肇「ライラさん、お餅をこの砂糖醤油につけてください」

ライラ「こうでございますか?」

肇「つけたらもう一度炙って、完成です」


千早「香ばしい、良い匂いね」

ライラ「うー、早く食べたいです」

千早「ふふ、あとちょっとの辛抱よ」

ライラ「あー、お腹が空く良い匂いでございますよー」

千早「(……今にも涎をたらしそうな顔ね)」

肇「……もういいと思いますよ」

ライラ「待ってましたです!」


千早「じゃあ、海苔をまいて……いただきます」

ライラ「いただきますですよー」

肇「……やっぱりつきたてのお餅は弾力が違いますね」

千早「ええ……すごく…………伸びる」

ライラ「はふっはふっ」

肇「ふふっ」

千早「甘辛い砂糖醤油との相性がすごくいいわね、これ」

ライラ「お餅、柔らかいのですよー」

肇「これを知っちゃうと、市販のお餅が物足りなくなるんですよね」

千早「ああ、分かる気がするわ」


ライラ「とても美味しいのですので、おかわりが欲しいのですよ」

肇「はい、どうぞ」

千早「……うん、いくらでも食べられそう」

ライラ「はふっはふっ……うー、幸せでございますー」

肇「……食べ過ぎには注意してくださいね?」

千早「……肝に銘じるわ」

ライラ「美味しいですねー」

肇「ライラさんは……まあ、これでいいんでしょうね」

千早「ええ、これがいいのよ」


***************************


千早「ライラさん、満足した?」

ライラ「はいです! 大満足でございます」

肇「それはよかったです」

千早「それにしても、今日は藤原さんに助けられっぱなしだったわね」

肇「いえ、私は口を出すばっかりで」

千早「大根おろしや砂糖醤油、藤原さんが用意してくれたのよね?」

ライラ「おー、そうだったのですか」

肇「……どうせなら美味しいものを食べてもらいたいなって」

ライラ「肇さん、ありがとうございますですよ」

肇「喜んでもらえたなら、頑張った甲斐があります」


ライラ「今度ライラさんにお料理教えていただけませんですか?」

ライラ「ライラさんも、もっと自分でお料理できるようになりたいのです」

肇「え、ええ。私で良ければ」

千早「良かったわね、ライラさん」

ライラ「はいですよ」

肇「(料理、勉強しなきゃ)」

ライラ「いつか、ライラさんのお弁当を千早さんに食べていただきたいですねー」

千早「ふふ、楽しみに待ってるわね」

ライラ「千早さんのお弁当のお返しなのですよ」

肇「(あれ……責任重大?)」


千早「さて、そろそろ時間ね」

ライラ「あー、もうでございますか」

千早「藤原さんはどうだったかしら」

肇「はい、すごく楽しかったです」

千早「そう言ってもらえるとこっちも嬉しくなるわね」

ライラ「突然のお餅つきでございましたからねー」

千早「私たちはある程度慣れているけど、ね」

肇「あ、あはは……」

千早「それではお別れの時間です」

千早「如月千早と」

ライラ「ライラさんとー」

肇「藤原肇がお送りしました」

ライラ「またお会いしましょー」

千早「また、会えるのかしらね?」

肇「え?」

ライラ「予定は未定でございますからねー」

千早「どうなることやら」


***************************

【収録後】

P「お疲れ、千早」

千早「お疲れ様ですプロデューサー」

P「……何か言いたそうな目だな」

千早「いえ、なんでプロデューサーがいい汗かいた風なのかなって」

P「いやー、久しぶりだと疲れるな、餅つき」

千早「……そういえば、後ろで何かやってましたね」

P「おう、もち米も余ってたしな」

千早「何人かで臼を囲んでお餅をついていたのは見ましたけど」

P「ああ、俺も一緒に餅ついてた」

千早「……なにやってるんですか」

P「年の瀬といえば餅つき、やらない手はないだろ」


千早「……はぁ」

P「どうした?」

千早「プロデューサーは相変わらずプロデューサーだな、と」

P「褒めてる?」

千早「呆れてます」

P「そうなの?」

千早「……で、久しぶりっていうのは?」

P「昔は朝から夕方までぶっ通しでついたりしたもんだ」

千早「…………はい?」

P「いやー、あのころに比べるとさすがに衰えを感じるな」


千早「今日も結構な速さでついてませんでした?」

P「そりゃ、人数がいたから」

千早「ああ、テレビで流れているようなつき方をしていましたね」

P「慣れないうちはやっちゃ駄目だぞ?」

千早「やりません」

P「やらないの?」

千早「やりません」

P「たまには冒険を?」

千早「しません」

P「そうか、しないか……」


千早「また何か企んでいるんでしょう?」

P「んー、なんのことかなぁ」

千早「誤魔化せてませんよ」

P「千早も手強くなったなぁ」

千早「誰のせいですか」

P「誰?」

千早「今私の目の前にいる人のせいです」

P「成程」


千早「言っても止める気はないんでしょうけど」

P「さすが、よく分かっていらっしゃる」

千早「どれだけの付き合いだと思ってるんですか」

P「よし、土産の餅持って帰ろう」

千早「……露骨に話を逸らさないでください」

P「んー、なんのことかなぁ」

千早「……まったく」

千早「(お陰で退屈しませんけど、ね)」


<もう終わる>

当初予定の年内には完結させることが出来ました
食べ物を美味しそうに書く能力の無さに絶望しています

なお、複数人による高速餅つきは経験のない方はおやめください
石臼を割る、もみじ餅ができる等、悲惨な結末につながる恐れがあります
実際に行った場合のいかなる事象にも>>1は責任を負いかねます


お付き合いいただきましてありがとうございました

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