穏乃「変な手紙を貰った」憧「!?」 (96)

穏乃「なんか変な手紙が机の中に入ってたんだー」

憧「変な手紙?」

穏乃「見てよこれ」


いきなりの手紙をごめんなさい。
今日、部活が終わってから、1-A組に来てくれませんか?
話があります……。


玄「……」

宥「……」

灼「……」

憧「……」

穏乃「果し状かな?」

玄宥灼憧(いや、これってラブレターなんじゃ……)

穏乃「私、何かしたかなぁ?」

憧(てかてかシズにラブレターってラブレターって!!!)

灼(落ち着いて)

憧「落ち着いてなんていられるかー!!」

穏乃「わっ!?憧?ど、どうかした?」

玄「あ、ちが……け、毛虫がね」

憧「……」モゴモゴ

宥(まだラブレターと決まったわけじゃないし)

灼(差出人の子の恋路を邪魔するのはよくな……)

憧(ハルエにラブレターが来ても同じこと言えんの?)

灼(そ、それとこれとは関係な……)

憧「あぁー!もうっ!」

晴絵「あれ?まだ始めてないの?」

晴絵「大会も近いんだからさっさと始める!」

穏乃「はーい」

憧(気が気じゃないわよ)

\4

しあ

晴絵「はい、お疲れ様」

穏乃「お疲れさまでーす」

憧「……」ソワソワ

晴絵「憧?今日は凡ミス多かったぞ」

憧(そ、それどころじゃ……)

穏乃「あ!私、用事あるんで先に行きますね」

憧「あっ!」

晴絵「待て」グイッ

憧「へ?」

晴絵「憧はちょっとお説教な」ニッコリ

憧「え?えええええええええ!?」

宥(憧ちゃん…)

灼(ハルちゃんと二人きりとか……)

玄(灼ちゃん今そこじゃない)

灼(とりあえず先に行ってる?)

玄(気になるもんね)

憧「うぅぅぅぅ……」


1-A


穏乃(よし、戦闘に備えてアップをしとこう)

穏乃「シュッ!シュッ!」

宥(あれは……)

灼(ボクシング?)

玄(穏乃ちゃん気合い満点だね)

灼(あ、あの人かな)

憧「ま、間に合った!?」

宥(憧ちゃんしーっ!)

憧(あ、ごめんごめん)

玄(ちょうど今来たところだよ)

灼(ハルちゃんのお説教は?)

憧(お姉ちゃんを呼んで、なんとか巻いてきた)

灼(憧のお姉ちゃん、ね……)

憧(って、あの子!)

宥(知ってる子?)

憧(同じクラスの子)

玄(つまり穏乃ちゃんとも同じクラスってことかーなるほどー)

灼(フラグ立つ要素もばっちりだね)

憧(ちょっと!あんたどっちの味方なのよ?)


差出人「あ、あれ?穏乃ちゃん?」

穏乃「あれ?もしかしてこれの差出人って差出人ちゃん?」

差出人「……っえ?」

穏乃「え?」

宥憧玄灼(え?)

差出人「あ、あわわわわ」

穏乃「へ?」

差出人「ごめん、穏乃ちゃん!!!!」

穏乃(なんだろう?とりあえずバトルは避けられるかな?)

差出人「そ、その手紙なんだけど……」

差出人「本当は憧ちゃん宛なのに、間違えて穏乃ちゃんの机に入れちゃった……」


憧「ええ!?」

灼(静かに!)バッ

玄(ばれちゃうから)バッ

宥(あったかそう)バッ

憧「~~~~~」ムグムグ

差出人がゲシュタルト崩壊した

\4

穏乃「え?これは本当は憧に?」

差出人「うん」

穏乃(この果し状は憧宛ってこと?)

穏乃「な、なんで?(憧に何か恨みでもあるのかな?)」

差出人「阿知賀に高校から入ってきて」

穏乃(気に食わないとか?)

差出人「オシャレだし、可愛いし」

穏乃(それに嫉妬して)

差出人「それでいて頭もすごくよくて……」

穏乃(それで憧をボコろうとしたのか……)


憧(ななななな、何よ!差出人ちゃんってあたしのことそんな風に思ってたの!?)

宥(憧ちゃんに憧れてるのね)

玄(憧に憧れる)プッ

灼(こっちのフラグとは思わなかった。おめでとう憧)

憧(おい!)

差出人「それで……」モジモジ

穏乃(何も悪いことしてない憧がボコられるなんて…そんなの…そんなの絶対おかしいよ!)

穏乃「ふふふ」

差出人「?」

穏乃(差出人ちゃんよ……私に話したのが運の尽きだったな)

穏乃「そんなことさせるかー!!」

差出人「!」ビクッ


宥(そんなことって穏乃ちゃん、それはひどい)


穏乃「憧は私が守る!!!!!」


憧「!!!!!!」

玄(こ、これは……)

灼(驚きすぎて呆けてる)

差出人「……そっか」

差出人(穏乃ちゃんって憧ちゃんのこと好きなんだ……)

差出人(憧ちゃんって穏乃ちゃんのこと好きっぽいし……)

差出人「やっぱだめだよね(私の入る隙なんてないし)」

穏乃「だめだよ(暴力なんて)」キリッ

差出人(こんなに穏乃ちゃんも憧ちゃんのこと想ってるとは思わなかったな)

穏乃(暴力とか駄目ってわかってくれたかな?)

差出人「わかった、ごめんね」

穏乃「わかってくれたんならいいんだ」

差出人「私、応援するね」

穏乃「へっ?」

差出人「憧ちゃんを狙ってる子は私以外にも沢山いるから(憧ちゃんって人気者だしね)」

穏乃「な、なんだって!?」

灼(憧ってモテモテなんだね)

宥(あったかいねー)

憧「……」

玄(憧ちゃん顔が真っ赤だよー)


穏乃「誰が相手だって私は負けないよ!絶対憧を守るんだ!」


憧(穏乃が私を守るって守るって……)

憧(誰にも負けないって……そ、それって)

灼(両想……)

憧(ああぁああぁあぁ)

宥(おめでとう憧ちゃん)

玄(長年の片想いここに成就、これも松実館の温泉の効用!)

憧(な、何この幸せ)

憧(ていうかシズもシズよね)

憧(そんなにあたしのことを好きなら早く告れっての)

憧(あぁ~もう嬉しい)

灼(舞い上がってるね)

宥(憧ちゃんの体温あったか~い)

玄(差出人さん帰っちゃったね)

灼(仕方ないから部長としてここは憧の背中を押そ……)

宥(先輩として……)

玄(幼馴染として)

ドンッ

憧「わ、わ!!」

穏乃「あ、憧!」

憧「し、シズ!」

穏乃「先に帰ったんじゃ……」

憧(は、恥ずかしくてまともに顔を見れない……)

SSのアコチャーはヒロイン力高いなぁ

穏乃「まぁいいや!それよりも憧!」

憧「ひゃ、ひゃい!」

憧(う、うわー変な声出ちゃった)

穏乃「あんまり私から離れないでね」

穏乃(いつ誰が憧を狙ってるか分からないし)

憧「う、うん!」キュンキュンキュンキュン

憧(ふみゅー、シズがかっこいいよ)


玄(いい感じだね)

灼(一件落着)

宥(あの二人あったか~い)

穏乃「憧おはよー!迎えに来たよ」

憧「え?シズ、わ、わざわざ?」

穏乃「出来るだけ早く憧と一緒にいたいからさ」

穏乃(登校時って隙多いし、狙われやすいもんな)

憧「も、もう……シズったら……」ドキドキ

穏乃「あ、そだそだ」

憧「今度は何よ?」

穏乃「はいっ」ギュッ

憧「へ?」

穏乃「手を繋いで行こう」

憧(シズと手を繋いで歩くなんて何年ぶり……)

穏乃「いや?」

憧「い、嫌なわけないじゃない」

憧(むしろ嬉しいというか……)

玄「穏乃ちゃん憧ちゃんおはよう」

宥「おはよう」

穏乃「おはようございます」

憧「おはよー」ホワホワ

宥(あったか~い)

玄「朝からやりますな」ニヤニヤ

憧「ちょ、ちょっとそんな生温かい目でこっちを見ないで」

穏乃「何恥ずかしがってるのさ、今更」

穏乃「私と憧の仲なんだから恥ずかしがることないでしょ」

憧「!!!」

玄「ふぅ~む、なるほどなるほど~」

宥「あったかいねー」

ニヤニヤ

憧「ち、違っ!」

穏乃「えー?違うのー?」

憧「え、や、そ、それは違わな……」

玄宥灼「にやにや」

玄「あれ、灼ちゃんいつの間に?」

灼「あまりの桃色空間に話しかけるチャンスを逃した……」

憧「も、桃色空間って!そ、そんなんじゃ……」

穏乃「えー、灼さん。まだ桃の季節じゃないですよ」

灼「あー……そろそろ急がないと遅刻す……」

穏乃「た、大変だ!行くよ憧!」ダッ

憧「ちょっ!」ダッ

玄「手と手を取り合って……」

灼「微笑まし……」

宥「あったかーい」

玄「ほらほらお姉ちゃん、私たちもこのままじゃ遅刻しちゃうよ、行こう?」ギュッ

宥「うん」タッ

灼「……………」

灼「……はぁ……」

晴絵「あれ?灼?」

灼「え、は、ハルちゃん?」

晴絵「こんな時間にまだここにいるなんて珍しいね、寝坊?」

灼「寝坊したわけじゃないけど」

晴絵「まぁいっか。乗ってくっしょ?」

灼「え?」

晴絵「遠慮しなくっていいからさー」

灼「あ、ありがと……」

幸せになれよアコチャー

穏乃「憧さ、体力落ちたよね」

憧「はぁはぁ……あ、あんたが無駄に体力があるだけよ」ハァハァ

穏乃「小学校の時だったら同じくらいのスピードで走って行けたじゃん」

穏乃「中学の時何してたのさ」

憧「はぁ……はぁはぁ……」ズキッ

穏乃「まぁいいや」

憧(中学の時か……)

憧(あの頃は穏乃と和から逃げるように阿太峯に行って)

憧(麻雀部に入って……髪伸ばしたり、化粧覚えたり……)

憧(大人になりたかったから沢山背伸びしたけど……結局あたしは子供で……)

憧(……なんで、あたしは阿知賀を選んだんだろう)

穏乃「よいしょっと」ヒョイッ

憧「ってええ!?」

穏乃「落っこちないようにね」

憧「あああ、あんたいきなり何をやってんのよ!?」

穏乃「だって全力疾走してきたら憧が疲れ切っちゃってるみたいだからさ」

憧「そ、そりゃ疲れたけど」

穏乃「階段昇るのとか辛いかなって」

憧(だからって、お、お姫様だっこって……)

憧「お、重いでしょ?」

穏乃「そんなことないよ」

穏乃「だけど本当に憧って大人っぽくなったよね」

穏乃「私は全然変わらないのにさ」

憧「……見た目だけだよ……」ボソッ

穏乃「おはよー」

憧「そうだ、もう学校の中だった」

穏乃「おはよー」

憧「なに普通に挨拶してんのよ」

つ④

憧「微笑ましい顔で見られた」

憧「あっちはひそひそ話してるし」

憧「は、恥ずかしすぎる……」

穏乃「ふっふーん!とうちゃーく!!」

憧「やっと着いた……」

穏乃(誰がいつ憧を襲うかもわからないし、ちゃんと気合い入れとかないと)ウォー

憧(何燃えてるんだか……)

キーンコーンカーンコーン

穏乃(さすがに授業中は大丈夫だよね……いやいやだからって寝ちゃ駄目だって)

憧(シズが真面目に授業受けてる……)

憧(……)

憧(あの日のシズからの着信履歴、今も消えないように残してある)


中学に入学すると、忙しくて、シズと遊ぶ機会なんてなかった

嘘。

作ろうと思えば時間なんていくらでもあったのに
こんなに離れたことなんてなかったから、今までどうやって遊んでいたかとか約束したかとかわからなくなった
連絡をしないでいると、連絡のとり方なんてわからなくなって
返事が来なかったらどうしようとか、不安ばかりが大きくなって

未送信メールが沢山……


穏乃「憧!憧!昼休みだよ」

憧「え?あ、うそ?」

穏乃「もしかして憧ずっと寝てた?」

憧「や、寝てはないけど……」

穏乃「体調悪い?大丈夫?」

憧「う、うーん、一応保健室行っとこうかな」

ミ④

非常によいと思います

穏乃「歩ける?」

憧「歩けるよ」

穏乃「心配だから一緒に行く」

憧「ありがと」

憧「ってまた手を繋ぐの?」

穏乃「一応ね(弱ってる時は狙われやすいだろうし)」

憧「はぁ……」


シズは、あたしが阿太峯に行くって言った時、何を思ったんだろう

あたしはあの時、止めてほしいなんてばかなこと考えてたけど


穏乃「何か悩みでもあるの?」

憧「なんで?」

しえ

穏乃「授業中ずーっとぼーっとしてたでしょ」

憧「あ、ああ」

穏乃「昨日からなんか様子が変」

憧「なんか色々あって頭も体もついていかないのよ」

穏乃「いろいろ?」

憧「うん(シズにラブレターかと思ったらあたし宛で、シズはあたしを守るとか言って、朝はお姫様抱っこ……)」

憧「なんか夢を見てるみたいで」

穏乃「夢、かぁ……」

憧「シズは、どんな中学時代を過ごしたの?」

穏乃「中学……かぁ……」

穏乃「阿知賀の麻雀部を復活させて……」

憧「それは知ってる。その前」

穏乃「その前かぁ……麻雀部を復活させてから毎日が濃すぎて忘れちゃったよ」

穏乃「あぁでも、和から転校するって言われた時のことは覚えてるよ」

憧「和……」

穏乃「結局みんな離れ離れになっちゃうんだなって」

穏乃「仕方ないんだって、諦めるしかないってさ」

憧(あぁそっか……きっとシズはあたしが阿太峯に行くって言った時、大人だったんだ)

穏乃「憧は?」

憧「あたしは麻雀してた……ていうかそれしかしてなかったかも」

穏乃「うっそだー」

憧「嘘じゃないって」

穏乃「だってこんなに大人っぽくなっちゃってさ」

憧「それは……」


大人になりたいって思ってた

大人になれば、シズの事も割り切れるって思ってた

だけど……大人になんてなれなかった

しえん

しえん

穏乃「もうすぐ昼休み終わるね」

憧「そうだね」

穏乃「授業出られる?」

憧「出られるわよ」

穏乃「無理しないでね」

穏乃「もしキツかったらすぐに言うんだよ」ハイッ

憧「まさか……」

穏乃「帰りも手を繋ぐでしょ?」


シズは優しいから、大人だから、あたしを止めなかったんだ

あたしを困らせないようにって

穏乃「部活いける?」

憧「当然」

穏乃「無理しないでよ」


あたしは結局まだまだ子供で

怖くてかけられなかった電話がシズの方から来て、平静を装ってみたけど

本当は嬉しくて、嬉しくて……

気付いたら、シズのところに走ってた


玄「手を繋いで登場とは……」

宥「あったか~い」

灼「部活中はちょっとは自重するように」

憧「もう茶化さないでよ」

晴絵「仲良きことは美しきかな」

穏乃「そりゃあ仲が良いなんて当然です」

玄「ふぅ~む」

しえ

穏乃「大事な友達ですから!!」

久しぶりに憧ちゃんの思いが成就するのを見たきがする

憧「……え?」

穏乃「え?だって憧は大切な友達だもん」

憧「え……?」

玄宥灼「え……?」

憧「あたしを守るって……?」

穏乃「え、それはだって、友達だから当然……」

灼「本気で言ってるの?」

穏乃「あの果し状あったじゃないですか」

憧「え……果し状……?」

穏乃「あれを憧宛だって聞いて、しかも差出人ちゃんが憧を狙ってる人多いって言うから」

穏乃「憧を守らなきゃって……え?」

憧「……」

成就はしてないんだよなぁ……

透華速くてすばらっ

1行だから一瞬見落としかけたわ。アコチャー・・・

玄宥灼(まさか勘違いしたままだったとは……)

穏乃「あ、憧?」

憧(何舞い上がってたんだろう、あたしのばか)

憧「……決まってんじゃん!友達だもんね、あたしたち!」

憧「それにしても、シズってば、明らかにラブレターだったのに果し状ってずっと勘違いしてたんだね」アハハ

憧「勘違いして……ばかみたい……」

穏乃「ラブレターだなんてわかんないし」

憧「シズらしいよ!」

憧「あーほんと、シズってば……」アハハ

玄宥(憧ちゃん……)

穏乃「もうそんな笑わなくていいじゃん!恥ずかしい」

灼(憧……)

憧「笑い過ぎて涙が出てきたわ」

穏乃「え、憧?どこ行くの?」

憧「はは……やっぱりあんまり体調良くないみたいだし、帰るね」フラ

穏乃「じゃ、じゃあ私も一緒に」

憧「いいよ!」

穏乃「!」ビクッ

憧「ごめん、大丈夫だから」

憧「ばいばい」ニコッ

穏乃「……!」

玄「穏乃ちゃん」

穏乃「……どうして、憧は泣いてるのに笑ってたんですか……?」

穏乃「やっぱり憧のこと放っておけない」

灼「落ち着……」

宥「穏乃ちゃん」

穏乃「ゆ、宥さん?」

宥「今行っても憧ちゃんを傷つけるだけだよ」

穏乃「傷つけるって……私が?」

宥「穏乃ちゃんはなんで憧ちゃんが泣いてると思う?」

穏乃「え……」

宥「穏乃ちゃんが答えを見つけなきゃだめだよ」

穏乃「……」

宥「そしたら、憧ちゃんのところに行ってあげるんだよ」

玄「お姉ちゃん……」

穏乃(私が憧を傷付けた?)

穏乃(守るって言ったのに)

穏乃(大切な友達なのに……)

憧「ははは……はぁ……」

憧「ばかだな、あたし……」

憧(よくよく考えれば、確定的な言葉をシズから貰ったわけじゃないし)

憧(そもそもあの手紙すら、果たし状と勘違いしてるんだから当然よね)

憧(なのに、あたしときたら……)

憧(勝手に舞い上がっちゃってばかみたい)

??「……憧ちゃん?」

憧「ん?」

差出人「部活は?お休み?」

憧(差出人ちゃん……)

差出人「穏乃ちゃんは一緒じゃないんだね」

憧「まぁね」

憧(差出人ちゃんが手紙を間違えてシズに渡してなければこんなことにならなかったのかな)

憧(なーんて……何考えてんのよ、あたし)

差出人「憧ちゃん?大丈夫?」

憧「へ?」

差出人「これ使って」ハイッ

憧「え、なんで、ハンカチなんて……」

差出人「……憧ちゃん、泣いてるから……」

憧「え……」

差出人「……何かあったの?」

憧「な、何もない!何もないから」ダダダッ

差出人「あっ」

憧(な、何泣き顔見られてんのよあたし!)

憧(しかもハンカチをそのまま持ってきちゃってるし)

憧(でも……口を開いたらたぶん……沢山あの子に文句を言っちゃう)

憧「あぁーもうっ!」

差出人(憧ちゃん……)

穏乃「はぁはぁ……ねぇ、憧見なかった?」

差出人「憧ちゃん?なんで?」

穏乃「え……あー……」

差出人「憧ちゃんとケンカでもした?」

穏乃「うーん……ケンカというか……」

穏乃「……私、憧を傷付けちゃったみたい」

差出人「えっ」

穏乃「わかんないんだけど……私が悪いから謝らないと」

差出人「穏乃ちゃんが何をしたの?」

穏乃「……うーん……」

穏乃「あ、あの……この話蒸し返すのは気が引けるというか……」

差出人「……もしかしてラブレターの話?」

穏乃「あ、うん……」

差出人「私は構わないよ」

しえ

穏乃「……あの手紙なんだけど……」

穏乃「私ラブレターだと思ってなくて……」

差出人「え??じゃ、じゃあ何だと思ってたの!?」

穏乃「は、果たし状」

差出人「果たし状……?」

穏乃「う、うん……差出人ちゃんが憧をボコろうとしてるんだと……」

差出人「え!?ほんとに!?」

穏乃「う、うん……だから私が憧を守らなくちゃって」

穏乃「友達だし」

差出人「…………」

穏乃「……」

差出人「それは……穏乃ちゃんが悪いね。私が憧ちゃんでも傷付くよ」

しずもんなでなで

穏乃「……なんでなのかなぁ」

差出人「たぶんね……」

穏乃「なに?」

差出人「穏乃ちゃんが謝りに行かなくても、たぶん……」

差出人「憧ちゃんは明日何事もなかったみたいに学校に来るよ」

穏乃「え……なんで?」

差出人「それは、教えてあげない」

穏乃「な、なんでさ」

差出人「不用意に謝っても憧ちゃんを傷付けるだけだよ」

穏乃「……」

差出人「……」チラッ

差出人「それにしても失敗したなぁ」

穏乃「失敗?」

差出人「憧ちゃんに渡すはずだったラブレターというか呼び出しだけど」

差出人「間違えて穏乃ちゃんに渡しちゃったんだもん」

穏乃「え……」

差出人「私が間違わずに憧ちゃんに渡せてれば……」

差出人「もしかしたら、憧ちゃんと付き合えたかもしれないのに」

穏乃「え……」

差出人「だってそうでしょ」

差出人「ちゃんと憧ちゃんに渡せてれば、昨日私は憧ちゃんに告白してたんだよ?」

穏乃「告白……」

差出人「望みが0なわけじゃないわけだし」

差出人「あ、でも……二人が付き合ってないんだったら、改めてちゃんと告白しようかな」

穏乃「こく……はく……」

差出人「ねぇ穏乃ちゃん……どう思う?」

穏乃「え?」

差出人「穏乃ちゃんは応援してくれるよね?」

穏乃「私は……私は……」

差出人「……明日改めて手紙を渡そうっと」

穏乃「うぁぁーーーーーーー」ダダダダダダダ

差出人「……」

差出人「応援するって言ったでしょ……」

差出人(はぁ……泣くのは帰ってからにしよう)トコトコ


穏乃(差出人ちゃんが憧に告白!?)

穏乃(で、でも、憧はそれを受けるわけないよね)

穏乃(って、私なんてひどいことを考えてんだ!?)

穏乃(わかんない……わかんないよー)ウワァー

しあ

差出人たそ~

憧(うん、もう大丈夫)

憧(明日からちゃんと笑える)

憧(バカだな、シズはってちゃんと言える)

憧(だから……傷付いてなんかない)

コンコン

憧(ちょっ、こんな時間に窓から変な音が…!?)

コンコン

憧(まさか泥棒!?)

憧(こんな田舎にもいるもんなの?)

コンコン

憧(どうしよう、お姉ちゃん呼ぼうかな)

コンコン

憧(と、とりあえず寝たふり寝たふり)

憧(あたしは何も聞いてないし見てない)

しえん

アコー

憧「ひっ!」

アコー

憧「ちょ、ちょっと待ってよ」

憧「な、なんで泥棒があたしの名前を呼ぶわけ!?」

アコー アケテヨー

憧「………………」

憧「あ、あれ……?この声どこかで」

アコー

憧「え!?し、シズ!?」

ガラッ

穏乃「やっと開けてくれたー」

憧「普通窓からなんてやって来ないわよ」

穏乃「こんな時間だしさ」

憧「それでも、わざわざ木に登って、危ないわよ」

穏乃「えー、こんなの普通だよ」

憧「そりゃあ木登りはシズ得意だけどさ」

憧「まぁそのままでいるのもなんだし……入りなさいよ」

穏乃「おっと」

憧「危なっ!ほら、手、貸してあげるから」スッ

穏乃「ありがと、憧」ギュッ

憧「大したことないわよ」グイッ

穏乃「よっと!お邪魔します」

憧「はいはい……ってシズ」

穏乃「?」

アコー

憧「もしかして帰ってないの?」

穏乃「あー、うん」

憧「何してんのよ、こんな時間まで」

穏乃「ちょっと山に登ってた」

憧「はぁ……呆れた」

穏乃「山に登って考えてた」

憧「……何を?」

穏乃「ちょっと私の話を聞いてくれるかな?」

穏乃「阿知賀に入学して憧と離れて、和ともクラス違って……」

穏乃「なんだかね、無性に山に登りたくなったんだ」

穏乃「なんかね、ああやって体を動かし続けてなくちゃ、色々考えちゃって駄目だったんだ」

憧「考えちゃうって」

シズー

穏乃「阿知賀に入学して玄さんも和もいた……だけど憧だけがいなかった」

穏乃「あの頃は考えることから逃げて、憧を感じる痕跡みたいなのからずっと避けてたんだ」

穏乃「小学生の頃なんてさ、わざわざ約束して遊ぶなんてなかったから

穏乃「いざ離れると連絡のとり方わからなくなっちゃってさ」

穏乃「でも、憧から何か連絡があるわけでもなかったし」

穏乃「たぶん、私、寂しかったんだ」

穏乃「憧がいなくて……寂しかったんだ」

穏乃「だからかな……和に転校するって言われた時ももう諦めの気持ちの方が大きくなっててさ」

穏乃「あの日……和のインターミドルを見た時、なんだかよくわからない気持ちになった」

穏乃「誰かに何か言いたくなった」

穏乃「自然と憧に電話してた」

支援

穏乃「あの日のことはうまく説明できないけど……」

穏乃「憧と一緒にまたやれるって気がしたんだ」

穏乃「なのに憧は現実的な話ばっかするんだもん」

憧「現実的って……」

穏乃「電話切ってからちょっと後悔した。なんで私っていつも後先考えないんだろうって」

穏乃「部室で玄さんに会った時、麻雀でみんな繋がってるんだって思えた」

穏乃「和とあの舞台で遊びたいって思ったし、もし、憧が晩成に行っても麻雀をやってる内は繋がってるんじゃないかって思えた」

穏乃「憧が来てくれて、驚いた、けど嬉しかった。嬉しかったんだよ」

穏乃「そのあとみんなで活動していくにつれてさ、ちょっと不安な自分がいたんだ」

穏乃「だってさ、あのちっちゃくてちょっと抜けてる憧がさ、こんなに大人っぽくなってて、頭もよくなっててさ……」

穏乃「なんだか遠くの人みたいって寂しく思ったり……」

穏乃「だけどさ、合宿とか一緒に過ごしていくうちに中身はあまり変わってないなって思って安心した」

憧「あたし、そんなに変わってない?」

穏乃「勉強はできるけどどっか抜けてたり、調子に乗ったり……」

憧「それ誉めてないよ」

穏乃「いいとこだと思うけど」

穏乃「なんで憧がいない中学時代にあんなに虚しい気分になったかとか、久しぶりに会った憧の変化に不安を覚えたかとか」

穏乃「ちゃんと考えたことなかったんだ」

穏乃「あの果し状もさ」

憧「果し状じゃないけどね」

穏乃「確かに私の勘違いだったけどさ」

穏乃「憧を守りたいって心から思ったんだよ」

憧「友達だから、でしょ?」

穏乃「友達だからって思ってたけど違ってた」

憧「え……」

穏乃「勘違いって分かった時にさ、憧が笑ったじゃん」

憧「そうだっけ」

穏乃「そうだよ……あの時の憧は笑ってるのに泣いてたんだ」

憧「……」

穏乃「それが心配でさ、玄さんとか宥さんとか灼さんに相談したんだ」

穏乃「そしたら怒られちゃった」

穏乃「悪いなって気持ちもあるにはあったんだけど……」

憧「だけど……?」

穏乃「嬉しいって思っちゃったんだ」

憧「え?」

穏乃「憧が私のことを好きってことかなって思ったら、嬉しいなって」

穏乃「なんで嬉しいんだろうって、虚しかったんだろうって、不安だったんだろうって」

穏乃「それは全部、全部憧が好きだからだって」

穏乃「やっと気付けたんだ」

シエン

穏乃「憧を守りたかったのは、好きだから、なんだよ」

憧「し、シズ……気持ちは嬉しいけどさ、あたしの好きって、あれだよ」

憧「キスとかしたいって思ってる方だよ」

穏乃「憧とならできるよ、ていうかしたい!」

憧「え?」

穏乃「憧は嫌?」

憧「そんなこと……」

穏乃「目、瞑って」

憧「……」ドキドキ

憧(変な感じ……恋愛沙汰に疎いと思ってたシズがこんなに積極的に……)

憧(あ、気配がする……シズの息がかかる……)

チュッ

憧(触れた……あたしの唇とシズの唇……)

しえ

憧「……シズ、顔真っ赤」

穏乃「憧だって真っ赤だし」

憧「……ほんっとシズって計算出来ないんだから」

穏乃「憧が考えすぎなんだって」

憧「そうかもね。あたしシズのそういうところ好きだし」

穏乃「……分かった?」

憧「何が?」

穏乃「私の好きの意味、かな」

憧「分かったわよ……ありがとう、あたしも好き」


その日、シズはあたしの家に泊まった。
お母さんに怒られたらしいけど、あたしの家だとわかるとそれ以上は言わなかった
(事前に言いなさいとは言われてたけど)

穏乃「おやすみ、憧」

憧「おやすみ、シズ」

同じベッドに潜って、手を繋いで目を閉じた。
本当は全部あたしの夢で、ふと目が覚めるんじゃないかって怖かった。

憧「ん……」

憧「シズ……?あれ……?」

憧「あぁ……やっぱり夢か……」

憧「はぁ……」ギュッ

憧「……ん?」

憧「この感触……いつもの抱き枕じゃない」

\4

穏乃「んん……く、苦しい……」

憧「ひゃ!」

穏乃「へ!?」

憧(なにシズを抱きしめて寝てんのよ、あたし)

憧(は、恥ずかしい……)

穏乃「あ、憧、おはよー」

憧「お、おはよ」

あたしたちは手を繋いで登校した

さすがにお姫様抱っこなんて暴挙はなくて、手を繋いでゆっくり歩いた
目が合うとなんだか照れ臭くて目を逸らしたりしながら……

穏乃「みんなに見られたら恥ずかしいな」

憧「何言ってんのよ、もうあの勘違いの時からみんな生温かい目で見てたわよ」

穏乃「いや、でも私全然意識してなかったし」

憧「……まずはちゃんと麻雀部のみんなに言わなきゃね」

憧「心配かけたみたいだし」

穏乃「お礼も言わなきゃ」


ゆっくり歩いたのに、気付いたらもう学校で


穏乃「……手、離す?」

憧「今更いいわよ」ギュッ

穏乃「そっか、そうだよね」フフフ

キマシテルー

緩めかけたシズの手を思わず強く握ってしまった

穏乃「憧って案外甘えん坊だよね」

憧「そんなことないわよ」

穏乃「あるよ」

憧「……」

穏乃「ね、憧」

憧「ん?」

穏乃「帰りもこうやって帰ろうね」

憧「うん」

ああ^~いいですわぞ^~

穏乃「明日の朝もこうやって行こうね」

憧「もう、シズも甘えん坊じゃない」

穏乃「憧相手だからね」

憧「じゃああたしもシズ相手だから」

穏乃「ふふ」

憧「あはは」


頑張って大人になろうと背伸びしてみたけど、まだまだあたしはお子様で、我儘で。

計算なんてできない人生だけど、シズがいれば、なんとかなりそうな気がする、なんてね。




おわり


よかったよかった

差出人ちゃんは頼れる先輩達がおいしくいたd…しっかりフォローしました
たまには憧ちゃんの想いが成就してもいいと思うんだ

思遠

よくやったぞ

おつ

おつなのよー

おつ!

おつ

おつかれちん

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