千歌「君の奇妙な心は輝いてるかい?」 (767)

これは世にも奇妙な物語風オムニバス形式のSSです

・一日一ストーリー(全部で九つ)で更新するつもりですが毎日出来る保証はないため結果的に不定期になります
・ストーリーによって地の文があったり無かったりします
・ストーリーによってキャラの性格、口調、時系列、舞台や関係など他根本的な内容が違います
 ・Aqoursメンバー内でのお互い呼び名がまだ定着していないところがあるので二人称(呼び名)は若干オリジナル要素が入っています(イメージで呼び名を決めてます)
・一ストーリー9500~15000文字を“目安”にしています
・インターネットの不調でよく電波が消えるので投下が急に無くなる可能性があります
・タモリ→理事長です

完結まで長くなりますがよろしくお願いします

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1481906115

~理事長室

理事長「どうも、こんにちは、こんばんは」

理事長「…え?なんで私がここにいるって?」

理事長「今日の仕事はこれですから…」

理事長「まぁそういう私事は置いといてこれより始まるのは“Aqours”が主役の物語」

理事長「主役は九人です」

理事長「あ、ここ静岡の浦の星女学院の理事長室なんですが…なんか狭いですね」

理事長「…失礼、時間が空いてるのですが何か話すことはー…」

理事長「あ、そうだ実はこの物語のμ’s版もあるのでよかったら見てくださいね」

穂乃果「みんなで叶える奇妙な物語」
穂乃果「みんなで叶える奇妙な物語」 - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1476491804/)

理事長「最初のストーリーだけでも見とけばどんな感じか分かると思います」ボソッ

ピーンポーンパーンポーン

「これよりAqoursによる奇妙な物語を開演いたします」

理事長「あ、始まるようですね」

理事長「それではAqoursによる奇妙な物語…」

理事長「始まり始まりです……」

~~~~~

理事長「ハンドルネーム、またはニックネーム、オンラインネームなどまぁいわゆる愛称のようなもの、あなたにもありますよね?」

理事長「あだ名は知りませんがゲームや機械、後はそうですね…芸人であったりどこかの部隊とかで使われる仮の名前は本名隠すため、というのが結構あったりします」

理事長「自分の名前が見知らぬ誰かに発信されるのもなんかイヤですもんね」

理事長「しかしとある世界は違います」

理事長「この“仮の名前”の使い道が根本的に違う世界があるんです」

理事長「あなたも考えてみてください、この世界の…」


理事長「この名前の使い道に…」


~~~

「あ、あの…助けてくれてありがとうございます…」

「いいのよ、好きでやってることなんだから」

「そうずら!」

「その制服…浦の星女学院の方ですか…?」

「そうだよ、一年生ずら!」

「同じく」

ルビー「あ、あの私ルビーって言います!私も一年生で…」

ルビー「二人のお名前もよかったら教えてくれませんか…?」

「私の名前は―――」



【本名】




ルビー「ふう…ずら丸ちゃんとヨハネちゃんと会えてよかったな…ずら丸ちゃんがいなかったら勉強もよくわからなかったし友達も作れなかったし…」

ルビー「それに…」

ルビー「………」

ルビー「あ、でも勉強はお姉ちゃんが教えてくれるかな?」

ルビー「…いずれにせよよかったな、あの二人と会えて」

私の名前は黒澤ルビィ

でも今はルビー

高校一年生、最近やっと高校生活も慣れてきました

「あ、ルビーちゃん、こんにちは」

ルビー「ん?あ、果南さんこんにちは」

果南「今帰り?」

ルビー「はい!」

果南「ダイヤから聞いたよ?高校生活は大丈夫そう?」

ルビー「はい!一応は大丈夫そうです!」

果南「そっか、それならよかったよ」

果南「あ、ごめん私用事あるんだった」

果南「それじゃあね!」

ルビー「それでは!」

ルビー「………」

ルビー「お姉ちゃんは…そうだったね…」

もし同じ世界がいくつもあるならこの世界はきっとおかしい世界の部類に入るんだと思う

この世界に住む人は名前が二つあるんです

一つ目は産まれてすぐにつけられる本名と呼ばれる名前
二つ目は幼稚園、保育園どちらか二つに入る際に決められる仮の名前、通称ニックネーム

二つ目であげた二つの教育施設を初めにそれ以降、とあることが無い限りは一生二つ目の名前を使っていくことになります

ルビー「ただいま」

ダイヤ「おかえりなさい、ルビー」

ダイヤ「学校はどうですか?」

ルビー「大丈夫そうだよ、ちゃんとやれてるから大丈夫」

ダイヤ「そうですか、なら安心ですわね」

ダイヤ「あ、後名前についてですか…」

ルビー「うん、分かってるよ」

ダイヤ「そ、そうですか…」

ルビー「私勉強するからもういくね」

ダイヤ「ええ、平均以上ならいいですので無理はしないように」

ルビー「うん!」

スタスタスタ

「ィ」
わざと?

お姉ちゃんの名前は黒澤ダイヤ

…見てわかる通りお姉ちゃんは二つ目の名前ではなくて一つ目の名前、つまりは本名を使ってる

ルビー「お姉ちゃんは見つけたんだな…」

ルビー「……いいな」

そう、とあることが起こせば二つ目の名前は消滅する
お姉ちゃんはそのとあることを起こした人

とあることをして“成功”したから本名を使ってる

「1年〇組ルビー」

ルビー「………」

教科書やノートに書かれているのは二つ目の名前

苗字は書く必要がない

私みたいなのはいいけど二つ目の名前の中には特徴的な名前もあって苗字と噛み合わないことがよくあるからニックネームだけでいいようになってる

>>12 わざとです

ピロロン♪

ルビー「あ、ずら丸ちゃんからメールだ」

『あした。ヨハねちゃんと私とルヒーちゃんでどこかへ遊びにいきませんかる』

ルビー「あはは…やっぱりずら丸ちゃん機械には弱いんだね…」

『うん!分かった!いつ集合とか決めてるかな?』

ルビー「送信っと…」

ルビー「ふう…」

ピロロン♪

ルビー「………」

ルビー「…あ、メールきてた」

『午前十字に沼図駅でどうてすか』

ルビー「ごぜんじゅうじに…ってずら丸ちゃん沼津のづがずになってるし…」

『了解しました!』

ルビー「よし、これで大丈夫だね」

二つ目の名前っていうのは親が決めるのですが本人の希望があるならそれを採用します
私は何も考えずに自分の名前

“ルビィ”

を当時は口ずさみました

結果、私の二つ目の名前はルビー

今となってはもうどうしようもない笑い話
どっちの名前もほとんど同じなんてそうそういないと思う

ルビー「………」

ルビー(疲れたから一度寝ようかな…)

ルビー「おやすみぃ…zzz」

~次の日

ずら丸「あ、ルビーちゃーん!ここずらー!」

ルビー「遅れてごめんなさい!」

ヨハネ「別にいいわよ」

ヨハネ「で、どこにいくの?」

ずら丸「…決めてないずら」

ヨハネ「はぁ?!ずら丸から誘ったんだから予定くらい作っときなさいよ…」

ずら丸「ご、ごめんずら…」

ルビー「あの…私は良いと思います…よ?」

ルビー「考えなしにとりあえず巡ってみるのも…いいと思いませんか?」

ヨハネ「…まぁそれでいいわ」

ずら丸「ずらぁ…!」キラキラ

ずら丸「ありがとうルビーちゃん」

ルビー「いえいえ…」

この二つの名前、もちろんただあるだけじゃない

理由(わけ)があって二つ存在してることは小さい時から分かってました

漢字も学年を重ねるごとに難しい漢字を覚えていくように名前も学年を重ねていくごとに段々と仕組みとその存在する理由を知ることになります

ずら丸「あ、お店のお菓子…!」

ずら丸「おいしそうずら~!」

ヨハネ「よだれまで垂らして食べたいならここ寄ってく?」

ルビー「私はいいですよ!」

ずら丸「よってくずら!」

その二つの名前について教えてもらってようやく高校一年生

多分、この時期から意識し始める人がほとんどなんだと思います

一つ目の名前について…。

ルビー「………」

ヨハネ「どうしたの?そんな難しい顔して」

ルビー「ヨハネちゃんって…一つ目の名前を使う予定とかってあったり…します?」

ヨハネ「…ないわね、少なくとも今はないわ」

ルビー「そうですか…」

ヨハネ「ルビーはあるの?」

ルビー「…今見つけてるところだよ」

ヨハネ「そう…見つかるといいわね」

ルビー「ヨハネちゃんは…使いたいって思わないの?」

ヨハネ「あんまり…というかこの二つ目の名前私結構気に入ってるのよ、あまり捨てたくないっていうか…」

ルビー「そ、そうなんだ…」

ずら丸「お買い物終わったずら!二人は何も買わなくていいの?」

ヨハネ「私はいいわ」

ルビー「私も…買うとしても帰りかな…今買ったら荷物になっちゃうし…」

ずら丸「分かったずら!じゃあいこっか!」

スタスタスタ

ずら丸「二人とも何のお話してたの?」

ヨハネ「一つ目の名前、本名に関してよ」

ずら丸「本名かー」

ルビー「ずら丸ちゃんは使う予定ってないの?」

ずら丸「考えたことなかったずら、もちろん使う予定はないずら」

ルビー「そうなんだ…」

ずら丸「…でも、焦る意味はないと思うずら」

ルビー「え?」

ずら丸「ゆっくり使い時を考えるのが一番だと思う、名前は二つあっても本名は」


ヨハネ「一つしかない」


ヨハネ「そうよね?」

ずら丸「その通りずら!」

ルビー「なるほど…」

ルビー(二人とも考えてないとはいってるけどしっかりしてるんだね…)

一つ目の名前を使うってことは少なくとも憧れること、考え方によっては興味ない人もいるみたいだけど私にとっては憧れる存在

ずら丸「次どこいくずら?」

ヨハネ「適当に巡るんでしょ」

ずら丸「あ、そうだったずら」エヘヘ

ルビー「ふふっ…」クスクス

ヨハネ「そういえばどうして私たちを誘ったの?」

ずら丸「二人ともっと仲良くなりたかったから、かな?」

ルビー「ずら丸ちゃんは…優しいね」

ずら丸「でも予定は考えてなかったから結局上辺だけの考えだよ」

ルビー「ううん、その考えがあるだけでも…優しいよ」

ずら丸「あ!あそこのお店ちょっと寄ってもいいずら?」

ヨハネ「どうぞどうぞご自由にー」

ルビー「うん、いいよ!」

ずら丸「すぐ戻るずらー!」ダッ

ヨハネ「全くずら丸は昔から自分勝手ねー…」

ルビー「そういえばヨハネちゃんはずら丸ちゃんと小さい頃から知り合いなんだっけ?」

ヨハネ「まぁね」

ルビー「そっか、なんかそういうのって羨ましいな…」

ヨハネ「そう?ルビーみたいにお姉ちゃんがいるのも私的には羨ましいけど」

ルビー「お姉ちゃんは確かに優しいけど多分ヨハネちゃんが思ってるような存在じゃないよ」

ヨハネ「そうなの…」

ルビー「うん…」

ヨハネ「…そういえばルビーのお姉ちゃんは本名を使ってるんだっけ」

ルビー「うん…つい最近からだけど本名を使ってる」

ヨハネ「そう…だから本名の話をしてたのね」

ルビー「うん、そうだよ」

そう、私はお姉ちゃんが本名を使わなかったら名前になんて関心を持ってなかったと思う
世界の人口の約6割くらいは多分、本名を使いたいって思ってる人

私もその6割に最近入った

でも考えれば考えるほどどうしようもなくってお姉ちゃんみたいにはいかないなって自分の甘い考えが浮き出てくる

ヨハネ「そう…まぁ身近な人、それも家族ならやっぱり意識はするのかもね…」

ヨハネ「私は一生この名前でもいいかなって考えてる」

ルビー「……?」

ヨハネ「どうして?って顔をしてるわね」

ヨハネ「なんでかっていうとまぁそれはさっきもいった通りこの二つ目の名前が好きだから」

ヨハネ「それに私単純に興味が無いのよね、一つ目の名前の使い道に」

ヨハネ「私はただのんびり自由に淡々と暮らせれば充分って感じなのよ」

ヨハネ「本名を使うことで劇的に変化するわけじゃないけどね」

ルビー「ヨハネちゃんはすごいよ…」

ヨハネ「…そう?」

ルビー「とってもすごい…私は近くに誰かがいないとなんていうか…安心できないな…」

ルビー「ヨハネちゃんみたいに強くないや…のんびりと自由に、そんなのも悪くはないけどそれ以前に誰かと一緒じゃないと始まらないな…」

ヨハネ「……そう」

ヨハネ「…でもやっぱり焦る必要はないと思うわ、ゆっくり…それが一番だと思うの」

ルビー「うん…ありがとう、そうだよね」

ヨハネ「ずら丸は本名を使いたいっていう願望はないんじゃないかしら」

ルビー「そうなの?」

ヨハネ「ええまぁ…」

ルビー「なんでわかるの?」

ヨハネ「それは」

ずら丸「お待たせずらー!」

ヨハネ「…ごめん、話はまた今度ね」

ルビー「う、うん…?」

今更だけどこの二人は私が高校一年生になってすぐに友達になってくれた二人
車に轢かれそうになったところを助けてもらってからが始まり

ずら丸『私の名前はずら丸!』

ヨハネ『堕天使ヨハネよ…』キランッ

私はあの時、二人の名前を教えてもらった

こっちまで笑ってしまうような眩しい笑顔と回りが温かくなるような雰囲気を作ってくれるあの二人

私はいつしか二人の本当の名前を知りたくて二人の後ろをついていった



ずら丸「二人ともばいばい!」

ルビー「今度は月曜日に!」

ヨハネ「また今度~」

スタスタスタ

ピタッ

ルビー「………」

二人と別れて一人夕日を見ながら立ち止まって考えてた

この二つ目の名前っていうのは言ってしまえば

“仮の名前”

本名を隠すための名前で、それ以上の意味を持っていない

それに仮の名前で生涯を終えるってことはとても虚しいこと

トントン

ルビー「!」

「ルビーちゃんこんにちは」

ルビー「あ、みかんさんこんにちは!」

みかん「どうしたの?そんな難しい顔して」

ルビー「みかんさんの方こそ…なんていうか…難しそうな顔してましたよ…?」

みかん「ありゃーばれてた?実はねーヨーソローちゃんとリリーちゃんに本当の名前を教えてって言われちゃってね~…」

ルビー「えぇ?!それって…」

みかん「そうなんだよー迷ってるのさー」

ルビー「すごい…一気に二人からなんて…」

ルビー「もうどっちを選ぶかっていう検討をついてるんですか?」

みかん「いや全然だよ~…私名前の事なんて全然考えてなくてねーそもそも私の本名ってなんだっけ?って感じからだったよ」

ルビー「そ、そうなんですか…」

みかん「まぁちゃんと考えてはいるんだけどね」

ルビー「両方選ぶ…じゃダメなんですか…?」

みかん「え?」

ルビー「いえ…なんでもないです」

みかん「両方選ぶ…?」

みかん「………」

みかん「それだよ!!それしかないよ!!!」

ルビー「えっ…」

みかん「いやールビーちゃんと話してよかったよ!解決!」

ルビー「いやあの…」

みかん「よーしそうと決まれば二人の家にいくぞー!」ダッ

みかん「今度みかんあげるからねー!!!」

タッタッタッ

ルビー「いっちゃった…」

ルビー「両方なんて…許してくれないよ、きっと…」

みかんさんは私の先輩
元気いっぱいでとにかくポジティブ、頼りにはあんまりならないけど先輩の明るさに元気をもらったりする

みかんさんの明るさはとにかく前向きでそれに心動かされる人も少なくない
きっとその明るさが今の状況を生み出したんだと思う

ルビー「みかんさんはすごいな…」

本名は一つしかない、それは誰でも同じ

それって何を意味するか分かりますか?

…まだ分からなくていいんです
きっと知ることになると思います

きっと、遠くないうちに。

~数日後

「ルビーちゃん!」

ルビー「ん?あ、みかんさ」

「違う!みかんはもう私の名前じゃないよ!」

ルビー「!」

ルビー「それって…」

千歌「私の名前は高海千歌!」

千歌「えへへ二人に私の名前を“同時に”知ってもらったんだ!」

ルビー「それはつまり…」

千歌「うん!ルビーちゃんの言う通り、二人とも選んだ!」

ルビー「わぁ…」

千歌「えっへん!不可能を可能にする奇跡の女の子、高海千歌だよっ!」

ルビー「ほ、ほんとにやったんですね…」

千歌「まぁ今日はきたのは名前がみかんから千歌に変わったって話をしに来たんだ」

千歌「これはみかんじゃなくて千歌でよろしくね♪」ニコッ

ルビー「わ、わかりました!」

千歌「それじゃあ!」

ルビー「は、はい!」

ルビー「…まさか本当に」

ルビー「みか…じゃなくて千歌さんはすごいなー…」

ルビー「そういえば千歌って名前なんだ…」

ルビー(いい名前だな…)

私がみかんさんに何気ないアドバイスをしてから数日後、みかんさんは千歌さんに変わって私のところにやってきました

千歌さんの笑顔はいつにも増して輝いてた

希望で満ち溢れたような笑顔だった

~教室

ヨハネ「あ、ルビーおはよう」

ルビー「おはようヨハネちゃん」

ヨハネ「聞いたわよ、ルビーの親しい先輩本名に変わったんだって?」

ルビー「あ、みたいだね、私もさっき知ったばっかなんだ」

ヨハネ「ルビーの近くでは本名に変える人多いわね…」

ルビー「確かに…」

ずら丸「何々何の話ずら?」

ヨハネ「あんたには無縁の話よ」

ずら丸「無縁って…いいから言ってみるずら」

ヨハネ「言っても関心薄いからいいわ」

ずら丸「ずらぁ…」プクー

ヨハネ「よっと」ツンッ

ずら丸「!」プシュー

ずら丸「ずらっ?!」

ルビー「ふふっ…」クスクス

ヨハネ「ずら丸ならわかるでしょ?」ジロッ

ずら丸「…!」

ルビー「?」

アイコンタクトをしてるように感じました
私には通じない二人だけのアイコンタクト

次第にずら丸ちゃんは理解したようで頬を膨らますのをやめた

…正しくはやめさせられただと思うけど

ずら丸「そっか」

ヨハネ「ええ」

ルビー「え?どういうこと?」

ヨハネ「まぁ以心伝心みたいなものよ」

ずら丸「ちょっと前に色々あってね…」

ルビー「そ、そうなんだ…」

私には分からない話で二人は分かち合ってた

そんなことされると自分だけ仲間外れにされてる気がしてなんだかちょっぴり寂しくなった
もちろん二人にそんなつもりはないのは分かってるんだけどね。

ヨハネ『全くずら丸は昔から自分勝手ねー…』

昔から一緒にいたら私も分かったのかな
やっぱり羨ましいな、と再度思った

ルビー「………」

こういうところからまだ、二人の輪に入れてないなって思う

ずら丸「…ごめん、私ちょっとお手洗いにいってくるずら」

ルビー「あ、うんいってらっしゃい」

スタスタスタ

ヨハネ「悪いわね、ルビーにはさっぱりでしょ?」

ルビー「え、あ…うん」

ヨハネ「昔の話よ」

ヨハネ「ずら丸って一回はちゃんと本名に興味持ったのよ?」

ヨハネ「今は食い意地を張った食いしん坊だけど」

ルビー「そうなの?」

ヨハネ「ええ」

ヨハネ「まぁその興味を無くす原因となったのが私、だけどね」

ルビー「えっ…」

ヨハネ「高校生になる前に言われたの、本名を教えてくれないかって」

ルビー「!」

ヨハネ「私はそれを冷たく返したわ、教えるつもりはないって」

ルビー「どうして…?ずら丸ちゃんは可愛いし優しいし…」

ヨハネ「…まぁ色々あるの、それからずら丸は今までのが嘘だったかのように本名に興味を示さなくなった」

ヨハネ「後よく食べるようになった」

ルビー「それって…」

ヨハネ「本名にトラウマを持ってしまった、のかしらね」

ルビー「そんな……」

ヨハネ「悪いことをしたとは思ってるけど不可抗力としか私は言えない」

ヨハネ「今本名を教えてって言われても多分同じように返すから」

ルビー「どうして断ったの?わけってなんなの…?」

ヨハネ「だから言ったじゃない、色々あると」

ヨハネ「でも一番理由はこの前言ったけど本名というものに興味がないから」

ルビー「そんな…それじゃあずら丸ちゃんが…」

ヨハネ「可哀想、そうでしょ?」

ヨハネ「仕方ないことなのよ、だからちょっとは納得してほしい」

ルビー「………」

私はヨハネちゃんの問いにはいともいいえとも返せなかった

それでもってやっぱり、という感じだった
何がやっぱりなのかはあえて言わない

ルビー「…でもちょっと羨ましいかも」

ヨハネ「え?」

ルビー「そういう経験があるなら将来役に立ちそうだなって…」

ルビー「立派っていうか…私も言われたいなって…」

ヨハネ「ふーん…でも案外いいものじゃないかもよ?」

ルビー「そうなの…?」

ヨハネ「微妙なラインかも」

ルビー「えぇ…?」

ずら丸「おまたせ二人とも!」

ヨハネ「おかえり」

ルビー「………」

ずら丸「ルビーちゃん?」

ルビー「…あ、おかえりずら丸ちゃん!」

その日からちょっとだけずら丸ちゃんを見る目が変わった
優しくて頭も良くて思いやりがあって

でも

過去に何かあったからこそ今のずら丸ちゃんがあるんだなって

ルビー「………」ジーッ

ずら丸「……?」ニコッ

私に向けてくれる笑顔もどこか寂しく感じた



ルビー「ただいまお姉ちゃん」

ダイヤ「おかえりなさい、みかんさんが千歌さんになったそうですわね」

ルビー「みたいだね、今日の朝千歌さんに言われたよ」

ダイヤ「あなたはいつですかね」フフッ

ルビー「…いつかな」アハハ

私のお姉ちゃんは果南さんに本名を教えてた
教えたから何が変わるかって言われれば正直何も変わらない

変わる人もいれば変わらない人だっている

ルビー「じゃあ勉強するね」

ダイヤ「ええ分かりましたわ」

スタスタスタ

ピタッ

ルビー「…お姉ちゃん」

ダイヤ「なんですの?」

ルビー「お姉ちゃんって名前いうの、怖くなかったの?」

ダイヤ「とても怖かったですわ、でも言わないでおくのも怖かったからどうせなら言おうかなと思いまして」

ルビー「そっか…」

ルビー「もし…果南さんに教えてもらえなかったらどうしてた?」

ダイヤ「そうですわね…とりあえず本名には目を向けなくなると思いますわ」

ダイヤ「思い出すとイヤですし」

ルビー「…そっか、ありがとう」

ダイヤ「何かお悩みでも?」

ルビー「ううん、大丈夫気にしないで」

ルビー「それじゃあ」

ダイヤ「え、ええ…」

スタスタスタ

ルビー「お姉ちゃんも同じなんだ…途中まで…」

時に失敗は必要だけど本名が絡んでくるなら誰しもが成功を祈る

それはずら丸ちゃんも同じだったはず

でもずら丸ちゃんはお姉ちゃんと違って失敗した
だから関心が無くなった

ルビー「…私がなんとかしなきゃ」

あの二人の背中を押したい気持ちでいっぱいだった
そんな私を奮い立たせて今日を終えた

~次の日

ルビー「ずら丸ちゃん!」

ずら丸「ルビーちゃんどうしたの?」

ルビー「ちょっときて!」

ギュッ

ずら丸「わぁ?!ま、まってー!」

タッタッタッ

ずら丸「はぁ…はぁ…どうしたの?」

ルビー「ずら丸ちゃん本名言えなかったの…?」

ずら丸「…その話どこから?」

ルビー「ヨハネちゃんからだけど…」

ずら丸「はぁ…ヨハネちゃんは口が軽いずら…」

ルビー「もう諦めちゃったの…?」

ずら丸「だって仕方ないずら、断られたものはどうしようもないずら」

ずら丸「進まないならそれ以上はない、これ私の答えずら」

ルビー「でも名前伝えたかったんでしょ…?」

ずら丸「でも断られた、正直もうどうでもいいずら」

ルビー「もう伝える気はないの?」

ずら丸「ないずら、誰にも」

ルビー「!」

やっぱり分厚い壁を作ってた
相当トラウマになってると予想がつく

ルビー「そんな…そんなのただ逃げてるだけだよ…」

ずら丸「逃げてても別にいいずら、私がしてることが逃げることならそれが私にとっての一番の選択だから」

ルビー「違うよ…!ずら丸ちゃんは…ずら丸ちゃんは…!」

ダイヤ『とても怖かったですわ、でも言わないでおくのも怖かったからどうせなら言おうかなと思いまして』

ルビー「っ……」

ずら丸ちゃんはそれを名前を伝えようとして失敗した
再度伝えようって応援しようとしてもなんだか頑なに反論されるしずら丸ちゃんは初めてじゃなくて二回目、しかも同じ人

だからそれ以上の言葉が出てこない

ルビー「ずら丸ちゃんは……」

ずら丸「大丈夫ルビーちゃん、別に私とヨハネちゃんは仲が悪くなっただけじゃない」

ずら丸「関係がはっきりしただけだから」

ルビー「それが…ダメなんだよ…」

ずら丸「それでいいずら」

ルビー「ダメ!」

ずら丸「!」

ルビー「絶対に本名を使うべきだよ」

ルビー「ずら丸ちゃん無理してるもん」

ずら丸「べ、別に無理なんて」

ルビー「してる!してるよ!」

ルビー「もう一回、挑戦してみよう?」

ルビー「失敗したらもう何も言わない、私は…逃げてることに納得がいかないから」

ずら丸「……考えとくずら」

ずら丸「私図書室行く予定があるからまた後でね」ダッ

ルビー「あ、まっ」

ルビー「いっちゃった…」

ヨハネ「お、ルビーおは…」

ルビー「………」ジトーッ

ヨハネ「何よ…?」

ルビー「ヨハネちゃん…」

ヨハネ「だから何よ…?」

ルビー「ずら丸ちゃんを認めてあげて!」

ヨハネ「はぁ?」

ルビー「ずら丸ちゃんに名前を、本名を教えてあげてよ?」

ヨハネ「は?なんでよ」

ルビー「ずら丸ちゃん絶対近いうちにまた言ってくるから!」

ヨハネ「…それほんと?」

ルビー「…多分」

ルビー「だから絶対にいってよ?」

ヨハネ「…考えとくわ」

ヨハネ「私今日色々やることあるからそれじゃあ」

スタスタスタ

ルビー「………」

ルビー「後は今日屋上に…」ピッピッピッ

ルビー「よしっ!頑張ってね、二人とも…」

~放課後

ずら丸「………」

ルビー『でも名前伝えたかったんでしょ…?』

ずら丸(またあの話なのかな…)

ずら丸(私は……)

ずら丸(…名前がヨハネちゃんに届くなら……)

ガチャッ

ずら丸「あ、ルビーちゃ…あれ?ヨハネちゃん?どうしてここに?」

ヨハネ「それはこっちのセリフよ、どうしてここにずら丸がいるのよ」

ずら丸「ルビーちゃんに話があるって言われて…」

ヨハネ「え、私もなんだけど…」

「………」

ヨハネ(一本食わされた…どんだけ二人っきりにしたいのよ…!)

ずら丸(ルビーちゃん…そんなに私たちを…?)

ルビー「よし、後は頑張って…」

私はどうしてもあの二人の背中を押したかった

『あ、あの私ルビーって言います!私も一年生で…』

初めて二人にあったあの日から絶対にお礼をしたいって思ってた
形はどうであれずら丸ちゃんのいうそれ以上に進めるならちゃんと返せてると思う

本名、それは知ることが出来たら幸せなものなんです

ずら丸「………」

ヨハネ「………」

ルビー『ずら丸ちゃんに名前を、本名を教えてあげてよ?』

ヨハネ(そういえばずら丸は…)

ヨハネ「…ねえ」

ずら丸「…何?」

ヨハネ「何か言うことあるんじゃない?」

ずら丸「言うこと…?」

ずら丸「………」

ルビー『もう一回、挑戦してみよう?』

ずら丸「…ヨハネちゃん」

ヨハネ「何?」

ずら丸「………」

ヨハネ「………」

ずら丸「…なんでもない」

ヨハネ「そう…」

ずら丸「……」

ずら丸「ねぇヨハネちゃん」

ヨハネ「何よ…」

ずら丸「私の本当の名前、聞いてくれないかな?」

ヨハネ「………」

ヨハネ「私は」

ずら丸「私、ルビーちゃんに言われてもう一回だけ…勇気出してみた」

ずら丸「だからヨハネちゃんの名前も聞きたいな」

ヨハネ「私は……」

ずら丸「私の名前いうね」

ヨハネ「まっ…」

花丸「私の名前は国木田花丸、ヨハネちゃん、あなたは?」

ヨハネ「っ!?」

ルビー「………」ドキドキ

ヨハネ「ずるいわよ…そんないきなり…しかも強制的に聞かされるなんて…」

ヨハネ「まさかずら丸…ううん、花丸がそんな強引なことするなんてね」

ヨハネ「私は……」

善子「津島善子、それが本名」

花丸「!!」

善子「…あーあ、言っちゃった」

善子「あの名前気に入ってたんだけど……」

善子「はぁ…名前、言ったの初めてなんだから責任とりなさいよね」

花丸「…うん!」

善子「…それで、そこで隠れてるあんたの名前は?」

ルビー「ピギィ?!」

花丸「あ、ルビーちゃん…」

ルビー「おめでとう二人とも、これで二人は…」

善子「はいストップ、あんたも聞いてたんでしょ?私たちの会話?」

ルビー「え?ま、まぁ…」

善子「ルビーも私の名前と花丸っていう本名を初めて聞いたんだからいうのが当然でしょ?」


善子「あなたの名前は?」


ルビィ「…!」

~二年前

ダイヤ『ルビー』

ルビー『ん…何?』

ダイヤ『なぜ本名を隠すのか知ってますか?』

ルビー『ううん分からない…』

ダイヤ『本名は指輪そのものです、本名を教えるということは指輪を渡す、というのと同じことなんですよ』

ダイヤ『あなたに名前を教えたい、というのはあなたが好きです、ということなのです』

ルビー『そうなんだ!初めて知ったよお姉ちゃん』

ダイヤ『しかし左手の薬指というのは一人一つしかありません、つまりは一人しか選べません、それは一人にしか名前を公開することが出来ない、ということです』

ダイヤ『そしてお互いがお互いの本名を知る関係になった暁には』

ルビー『恋人!』

ダイヤ『はい…いや違いますわ、恋人ではありません』

ルビー『え?』

ダイヤ『互いに支え合う存在になるのですよルビー、友達でも親友でも恋人でも夫婦でもない』

ルビー『どういうこと…?』

ダイヤ『ですからルビー』

ルビー『?』

ダイヤ『お名前はなんていうのですか?と聞かれたら』

ダイヤ『黒澤ルビィ、とお答えなさい、そうすればきっとわかります』

ルビー『うん!分かったよお姉ちゃん!』



ルビー「私の名前は…」



ルビィ「黒澤ルビィ!!」


本名、それは指輪です

一つの指輪は一つの薬指にしかはめられません

でもそんな決まり無視していいんだと思います

ダイヤ「はぁ…ルビィ…」

ルビィ「えへへ…」

ダイヤ「その指輪を付けてる方がこの世界には、二人いらっしゃるようで…」

ダイヤ「随分と贅沢なことをしましたね…」ナデナデ

指輪、それは本名です

この世界には二つの名前があります

一つ目は指輪を意味する本名と呼ばれる名前
二つ目、それは本名を隠すための名前

指輪を受け取ってもらえたなら二つ目の名前は必要ありません

だから今日から私は本名で生きていく

「花丸ちゃーん!」

花丸「ずら?」

「善子ちゃーん!」

善子「なに?」

花丸「どうしたの?」

「私の名前も呼んでよー!」

善子「はぁ…仕方ないわね」

花丸「わかったずら!」

「せーっの」



「ルビィ(ちゃん)!」



END

~~~

理事長「名前を教えるということは、つまりは好意を表すということなのです」

理事長「指輪をはめたことで変わることといえばなんでしょう?」

理事長「……ふふふ、分かりません」

理事長「あなたも本名について学んでみないとわかりませんね」

「あなたのお名前はなんていうの?」

理事長「そして私の学校にもいました、相手の名前を聞きまくる天然タラシが」

理事長「それでウチの娘まで犠牲に…」シクシク

理事長「…なんて冗談です」ウフフ

理事長「…もしかしたらあなたも知らないうちに、指輪をさしだれてるかもしれませんよ?」


理事長「お名前はなんていうんですか?」


一つ目終わりです
「ん?」ってなった方すいません、最後に一気にくるパターンのストーリーなので途中まで何の話だよってなった方一人くらいはいると思います
そしてですがこのストーリーは特に「ん?」ってなる感じでしたので疑問などがあれば答えたいと思いますのでどうぞ分からないことがあれば何なりと(残りの八つも同じく)
また後八つのストーリーを展開していくのでその時もよろしくお願いします

~~~~~

理事長「死、それは実に儚いものです」

理事長「誰かが死ぬことで失うもの、たくさんありますよね」

理事長「愛情、友情、命、心にぽっかり穴があいたような感覚に襲われます」

理事長「来世で会おうなんてロマンチックな言葉、あまり耳にしませんが一回くらいは見たり聞いたりしたことあると思います」

理事長「じゃあ会ってみましょう、来世ではありませんがこの世でまた、人間として会ってみましょう」

理事長「あなたの人生において最大の不幸で空いた穴は最大の幸福で埋めるべきなのです」

~~~

梨子「曜ちゃんお疲れ様!」

曜「お疲れ様ー!」

曜「もう私帰るねー!」

梨子「はーい、また明日!」

タッタッタッ

果南「あ、もう帰るの?」

曜「うん!今日はまぁ…色々ある日だしね!」

果南「…そっか、大丈夫?」

曜「うん!大丈夫!」

果南「…あの言葉の意味分かった?」

曜「…いや分からないや」

果南「そっか」

曜「もういくね!それじゃ!」

果南「うん!それじゃあね」

梨子「あ、果南さん」

果南「梨子ちゃんこんにちは、曜ちゃんは大丈夫そう?」

梨子「うーん…よく分からないです…」

果南「…まぁ今日で一年だもんね」


果南「千歌が死んで一年経ったんだもんね」



【空も心も晴れるから】


曜「………」

タッタッタッ

千歌ちゃんが死んで一年経った

『一年経ったら、雨の季節に戻ってく…るよ…!』

千歌ちゃんが残した最後の言葉
何が言いたかったのか全く分からなかった

ポツ…ポツ…

曜「あ、雨…」

ザーザーザー

曜「うわわわ!ど、どこか雨宿りできる場所は…」

曜「あ、バス停だ!」

タッタッタッ

近くにあった屋根付きのバス停で少し雨宿り
傘も持ってないしびしょ濡れになりながら帰るわけにもいかないから当分帰れそうになかった

曜「はぁ…止むまで何しようかなぁ…」

ザーザーザー…

曜「………」

雨が地面に打ち付ける音だけが私の耳に響く

「隣、いいですか?」

曜「あ、はいどう……ぞ…?」

オレンジ色の髪に引き込まれる笑顔、心地よい声、全て感じたことあるモノだった

「ありがとうございます!」


曜「ち、千歌ちゃん…?!」


千歌「ん?私は確かに千歌!苗字は…なんだっけ?」

曜「ほ、ほんとに千歌ちゃん?!」

千歌「うん!千歌!」

曜「私のこと覚えてる?!曜だよ!渡辺曜!」

千歌「…?ごめん、分からないや……」

千歌「でもね!あなたとは初めて会った気がしないんだ!」

千歌「曜ちゃん!」

曜「!」ドキッ

千歌「ここで会ったのも何かの縁だよ、よろしくね♪」

眩しい笑顔と一緒に手を差し伸べてきた

ギュッ

曜「……うん!」

その日不思議なことが起こった

感じれないはずの温もりを感じた
死んだはずの千歌ちゃんが帰ってきた

曜「千歌ちゃんはどこからきたの?」

千歌「私?うーん…どこからだっけ?」

曜「…お家はどこなの?」

千歌「私の家?あれ?どこだっけ?」エヘヘ

曜「分からないの…?」

千歌「えへへ…なんか記憶になくて…」

曜「………」

曜「あ、じゃあここはどこか分かる?」

千歌「ん?ここ?ここはー…どこだろう…」

曜「えっ……」

千歌「いや~私も気付いたらここにいたんだよね~それでね歩いてたら雨が降ってきてどこか雨宿り出来るところないかなって思ってたらここについてね!」

千歌「それであなたにあったんだ!」

曜「えっ…じゃあどうやってここに来たの?」

千歌「それはさっき言ったじゃん!気が付いたらここにいたんだよ!」

千歌「こう…ほらっ!ふわっと意識が戻ってきて…戻ってきて?うーん…なんかとりあえず気が付いたらここにいたんだよ!」

曜「ははは…そうなんだ…」

曜「………」

でも記憶が無かった
どこから来たのか、どこに住んでるのか
苗字は何なのか

私との思い出も

全てが無くなってた

『一年経ったら、雨の季節に戻ってく…るよ…!』

奇跡が起こったはずだった
はずだったんだけどどこか違うんだ

曜「千歌ちゃん…」

千歌「ん?なーに?」

ダキッ

曜「会いたかったよぉ……!」ポロポロ

千歌「わわわ!?どうしたの?!」

曜「うわあああああああぁ…」

千歌「と、とりあえずよしよし…」ナデナデ

でも流れてく感情はその“がっかり”っていう…ううん、もっと違う繊細で言い表せないような何かとは真反対の何かが流れ出した

曜「千歌ちゃあぁん…どうしていなくなっちゃったのぉ…!」

千歌「よくわからないけどごめんね…?」

~十分後

曜「ごめんね…急に泣いて…」

千歌「ううん、大丈夫!」

ザーザーザー…

千歌「雨…止まないね」

曜「千歌ちゃんどこに帰るの…?」

曜「家分からないんでしょ…?」

千歌「…あははなんとかなるよ、きっと」

曜「…私の家に来る?」

千歌「え、いいの?」

曜「うん!」

千歌ちゃんのお母さんたちには伝えずとりあえず私の家に呼ぶことにした

ホントのこと言えば離したくなかった

もう一生会えないと思ってた人に会えた
目を離した隙に消えちゃうんじゃないか、そんな思いと一緒に私の中で泡沫の千歌ちゃんが出来上がった

ギュッ

千歌「!」

曜「雨だけど、走ろっか!」

グイッ

千歌「わぁ?!」

タッタッタッ

曜「あはは!私、雨が好きなんだ!」

千歌「わあわあわあ?!速いよ!」

千歌「ちょちょちょ!」

ズコッ

千歌「うわぁああ?!」

ズサー…

千歌「いてて…」

曜「あ、ごめん…大丈夫?」

千歌「もー!」プンプン

曜「ごめん…」

千歌「もうちょっと遅く走ってよね!」

曜「うん!了解であります!」ビシッ

どんなときも私を引っ張って、導いてくれる存在は千歌ちゃんだった
例え地に打ち付くような雨でも私を強引にでも引っ張ってくれた

でも今日だけは…ううん、今日からは私が引っ張っていきたかった

千歌「…あ、そうそう!曜ちゃんのお家ってどこ?ゆっくり休める?」

曜「ふふっははははは!千歌ちゃんらしいよ!」

千歌「もー!私らしいってなんなんなのさー!」

曜「なんでもないよーだ!私の家はあっち!」

千歌「分かった!じゃあいこ!」

グイッ

千歌「うおっとぉ?!あーもういきなりだなー」

曜「こんな大雨なんだからのんびりしてたらびしょ濡れになっちゃうでしょー!」

千歌「もうびしょびしょだってぇ…」

曜「ずっとびしょびしょだったら風邪ひくよー?」

千歌「…確かに」

ぴちゃぴちゃと水がはねる音が足音と一緒に鳴る
雨の喧騒に紛れることのない二つの声が辺りに伝った

ピチャ!ピチャピチャ!

曜「ひゃー!冷たいっ!」

千歌「あ、靴下濡れたぁ…」

曜「ふっふっふ…私なんてもうびしょびしょだよ!」

千歌「それは自慢にならないよ~…」

ただただ水たまりが出来た道を駆け抜けた
冷たい水に打たれても千歌ちゃんの手は温かった

その日、私の人生で最大の幸福が訪れた

だから、この幸福を私は心から祝福する
雨で気分が下がっても全然下がった気がしない
だからこそ思ったんだ死んだはずの千歌ちゃんと一緒になら

空高く雲の上まで翔べる気がした

曜「千歌ちゃん水たまり!」

千歌「いやいやあれ渡るの?!」

曜「じゃあああんぷ!」

千歌「うわああああ!?」

ビシャア!

千歌「うへー……」

曜「あはははは!千歌ちゃんびしょびしょ!」

千歌「もー…」

曜「こうしちゃいられない!早く家に帰ろうか!」

グイッ

千歌「もういくのー?!」

~次の日、学校

ザワザワザワ

千歌「よ、曜ちゃん…?なんでこんな視線集めてるの…?」

曜「それはー…」

曜(千歌ちゃんが死んだはずの人間だなんて私の口からは言いたくないな…)

「曜ちゃん!」

曜「ん?」

梨子「なんでこんなにって千歌…ちゃん…?」

千歌「…?ごめん、記憶がないみたいであなたのこと分からないんだ」

梨子「千歌ちゃん…だよね?」

千歌「うん!私は千歌、苗字は分からないんだ」

千歌「でも今は曜ちゃんの苗字の渡辺ってことにしてもらってるんだ!」

梨子「………」チラッ

曜「…あ、私もよくわからないんだ」ボソボソ

曜「でも千歌ちゃんだよ、みんなが知ってる千歌ちゃん」

梨子「…いやいやおかしいでしょ!だって…だって千歌ちゃんは…」ボソボソ


梨子「千歌ちゃんは死んだんだよ…?!」


曜「私だってそう思ってたよ…?」

曜「…でもあの千歌ちゃんは何なの?」

曜「幽霊とか幻覚っていうなら私は千歌ちゃんが生き返ったって言われた方が納得できる」

梨子「…確かにあの千歌ちゃんは幽霊でもないし幻覚でもない」

曜「後ね、千歌ちゃん記憶が何一つ無いみたいなんだ」

梨子「さっきの苗字とか私のこととか?」

曜「うん、最初会った時は自分の名前くらいしか覚えてなかった」

梨子「…え?!ほかの事は?!」

曜「何にも覚えてなかった…どこに住んでるかも過去の全てもここがどこかすらも分かってなかった」

梨子「…それってどうなの…?」

曜「…何が?」

梨子「色々おかしいでしょ!第一死んだはずの人間がやってくるって…!」

曜「…分かってるよ、でも自然なままで接してほしい、今まで千歌ちゃんにしてきたように過ごしたいんだ」

迷いのない瞳で梨子ちゃんを見つめた

梨子「…!」

梨子「はぁ…分かったわ」

千歌「あのー…さっきから二人で何話してるの?」

梨子「あ、ごめんなさいね」

梨子「私は桜内梨子、曜ちゃんのお友達なの」

千歌「そっか!ごめんね、きっと私も友達だったはずなのに覚えてなくて…」

梨子「ううんいいの、これから楽しく過ごしていきましょう?」

千歌「…うんっ!」

その日は千歌ちゃんを学校に連れて行った
今日千歌ちゃんの家に行くつもりだ、いつまでも千歌ちゃんを死んだままの人間にしているわけにもいかないからね

果南「曜ちゃん!梨子ちゃん!」

果南「なんか千歌がって…千歌?!」

果南「千歌だよね?!生きてるならどうして出てきてくれなかったの!」ユサユサ

千歌「えっえ…え?」ユラユラ

曜「か、果南ちゃんストップストップ!」

千歌「ご、ごめんなさい…私もよくわからなくて…」

果南「はぁ?」

曜「千歌ちゃん、記憶が全くないみたいで…」

果南ちゃんに千歌ちゃんのことを話した
納得こそしてくれなかったけどここは納得するしかないんだ
何を言われようと死んだはず人間が今目の前にいる事実は変わらない

果南「…それじゃあ私のことも曜ちゃんの覚えてないの?」

千歌「うん…ごめんね…」

果南「……そっか、なら仕方ないね」

果南「今日はどうするの?」

千歌「ん、曜ちゃんと私の家にいくよ」

果南「そっか、分かった気を付けてね」

千歌「うん!」ニコッ

曜「じゃあ今日は挨拶だけしてこっか」

千歌「はーい」

まだ昼も過ぎてない
けど私と千歌ちゃんはもう帰る
今日は授業じゃなくて挨拶をするだけだからね

~帰り

千歌「さようなら!」

曜「さようならー!」

千歌「ここが曜ちゃんの通ってる高校なんだね」

曜「浦の星女学院って言うんだよ?」

千歌「へーそうなんだ」

曜「千歌ちゃんもここに通ってたんだよ?」

千歌「そっかー…ごめんね何にも覚えてなくて…」

曜「ううん、いいよ」

千歌「…いい学校だね」

曜「……そうだね」

千歌「ねぇ曜ちゃん」

曜「何?」

千歌「なんで私って記憶が無いんだろうね、みんなの話を聞けば私長い間みんなの前に姿を現してなかったみたいだし」

曜「それはー……」

いうべきなのかな、ちょっとした選択を私は迫られてる

曜「………」

千歌「…あ、青色の蝶々だ!」

千歌「待ってー!」

グイッ

千歌「うぉおお?!」

曜「ダメ、一人でどっかいったら」

千歌「えぇ~…子供じゃないんだから~…」

曜「ダメだよ、そうしたらまた…っ!」

つい“また”死んじゃうからって口が滑りそうになって息を止めた

千歌「また…?」

曜「ううんなんでもない!とにかく千歌ちゃんのお家にいこ!」

千歌「あ、うん」

曇り空の下を駆け抜けた
手を繋いで千歌ちゃんのペースに合わせて走った

曜「千歌ちゃん」

千歌「何?」

曜「もしかしたら千歌ちゃんは、お母さんたちと会って辛い思いをするかもしれない」

曜「…それでも行く?」

千歌「………」

もしかしたら千歌ちゃんのお母さんやお姉ちゃんの口から千歌ちゃんが死んだとかそれに関連する言葉や内容が出てくるかもしれない
だから遠回りながらも私は忠告をする

千歌「…行く」

曜「そっか、分かった」

曜「もうすぐだから歩こうか」

千歌「うん」

スタスタスタ…

寂しく鳴る足音と時折聞こえる鳥の鳴き声だけが聞こえる

千歌「………」

曜「………」

ピタッ

千歌「…!」

曜「ついたよ、ここが千歌ちゃんのお家」

千歌「…旅館?」

曜「うん!千歌ちゃんのお家は旅館なんだ」

曜「私は千歌ちゃんの邪魔にならないところにいるから、千歌ちゃんはいっておいで」

曜「………」ニコッ

千歌「…うん、分かった」

私は千歌ちゃんににっこり笑顔を送って千歌ちゃんの力強い初めの一歩を見届けた

~夜

千歌「………」

曜「千歌ちゃん…よかったの?」

千歌「…うん」

千歌『私は曜ちゃんの家で過ごしたい』

曜『えぇ?!ち、千歌ちゃん?!』

千歌『…私は曜ちゃんといたい』

曜「…ホントによかったの?」

千歌「迷惑だった?」

曜「あんなに千歌ちゃんのお姉ちゃん喜んでたのに離れてもいいのかなって…」

千歌「…今は曜ちゃんがいい」

曜「…そっか、そう言ってもらえるのは嬉しいよ」

あの後千歌ちゃんは家族の人と会った
でも千歌ちゃんを見るに関心はあまり無かった

千歌ちゃんの見るもの全ては“初めて”だからかな

頭の上にはてなマークが浮かんでるようにも見えた

グゥ~…

千歌「あっ…」

曜「お腹空いたの?」

千歌「うん…」

曜「そっか、じゃあ何か持ってくるね、ここで待ってて」

ガチャッ

千歌「はぁ…」

千歌「…なんで私には記憶が無いんだろう」

千歌「あ、この写真って…」

この時の私は分からなかったけど千歌ちゃんやっぱり悩んでた

千歌「分からないな…私、どうすればいいんだろう…」

ガチャッ

曜「千歌ちゃーん!はいっ!千歌ちゃんの大好きなミカンだよ!」

千歌「ミカン?」

曜「うん!千歌ちゃんの大好物!食べてみて!」

千歌「う、うん」

千歌「………」パクパク

曜「どう?」

千歌「おいしい…おいしいよ!」

曜「でしょー?」

曜「いっぱいあるから好きなだけ食べてね!」

千歌「わぁ!ありがとう!」

曜「えへへへ…」

でもそんな千歌ちゃんの悩みを私は消したかった

今という今を楽しみたかった

千歌ちゃんがどうやってまたこの世に帰ってこれたのかより千歌ちゃんとどうすれば楽しく過ごせるか私は考えてた

~次の日

キーンコーンカーンコーン

千歌「ん~!疲れた~…」

曜「お疲れ様、千歌ちゃん今日の授業の内容分かった?」

千歌「いやあんまり…」

曜「あはは…そっか」

梨子「千歌ちゃんどう?今日学校きてみて」

千歌「うん、まぁ普通かな?」

梨子「普通…そっか、大丈夫ってことだよね?」

千歌「うん!心配してくれたの?」

梨子「う、うんまぁね」

千歌「そっか!ありがとう!」ニコッ

梨子「今日は何か予定があるの?」

千歌「ううん、無いよ」

曜「当分は何も無いかな?」

梨子「じゃあここ内浦を満喫してもらわないとね」

千歌「えへへなんか楽しみだなー」

曜「じゃあ私たちはもういくね!」

曜「梨子ちゃんもくる?」

梨子「ん?あ、ごめんなさい今日は用事があって…」

曜「そっか、じゃあまた今度だね」

梨子「ええ、今度一緒にいきましょう!」

曜「うん!」



千歌「う~んおいしい!」

曜「でしょでしょー?ここのケーキはとってもおいしいんだから」

千歌「うちうら…だっけ?」

曜「うん、そうだよ」

千歌「とってもいいところだね!」

曜「うん!」

千歌「…あ、すごい可愛い子がいる!」

曜「ん?」

千歌「ちょっといってくるね!」

ギュッ

千歌「!」

曜「ダメ」

千歌「えー?どうして?」

曜「急に話しかけたら驚いちゃうでしょ」

千歌「近くまでいくだけだよー」

曜「ダメなものはダメ」

千歌「なんでさー?もしかして曜ちゃんって知ってる人にしか話しかけられないの?」

曜「な、なんでそうなるの!」

千歌「私知ってるよ?そういう人のこと、こみゅしょうっていうんでしょ?」

曜「…!」

曜「だ、ダメだよ千歌ちゃん?話しかけるにもマナーってものがあるんだよ?」

引きつった笑顔で千歌ちゃんに言葉を返しながら必死にこみ上げてくる何かに耐えてた

曜「………」

千歌「私に何かついてる?」

曜「…あ、いやなんでもない!」

曜「それよりそれ食べ終わったら宿題だよ!」

千歌「うえ~…宿題なんてやりたくないよ~…」

曜「そう言わずに早くやって後を楽にしないと!」

千歌ちゃんとのこれからはやっぱり不安だった
上手くいってるように見えてもどこかで私と千歌ちゃんは違う方向を向いてる

千歌ちゃんは死ぬ前の千歌ちゃんよりちょっぴり分からず屋になってた

フレンドリーで人懐っこい

そこは変わらないけどそこからが変わってた

~一週間後

曜「ほら千歌ちゃん!早く帰ろ!」

千歌「梨子ちゃんも一緒に帰ろ!」

梨子「あ、待ってて!」

あれから一週間が経った
特にトラブルはなくごく普通な生活を送ってる、はず

千歌「ねぇねぇ梨子ちゃん!」

梨子「ん?何?」

千歌「この前のピアノもう一回聞かせてよー!」

梨子「う、うんまた今度ね」

千歌「この前行ったあそこのお店もまた行きたいな~」

梨子「はいはい、でもその前にちゃんと勉強しないと」

千歌「でもなんだかんだ許してくれるのが梨子ちゃんだよね~」

千歌「そこは曜ちゃんと違うや」

梨子「私だけじゃなくて後ろに曜ちゃんもいること忘れてない?」

千歌「ん?あ、知ってた知ってたよ!」

梨子(もしかしてホントに忘れてたんじゃ…)

梨子「曜ちゃん寂しがってるよ?千歌ちゃんは私とじゃなくて曜ちゃんといてあげなきゃ」


千歌「えぇ~私は曜ちゃんより梨子ちゃんの方がいいな~」


梨子「?!」

曜「っ?!」

曜「……ぁ」クラッ

梨子「ちょちょ大丈夫?!」

梨子「…ホントに大丈夫?」

曜「うん…大丈夫…」

梨子「あまり無理しないでよ?千歌ちゃんといるのが辛いなら千歌ちゃんのお母さんとかにいうよ?」

曜「大丈夫…大丈夫だから…!」

梨子「…!」

ただ私は毒を耐えて…いや受け入れて必死に千歌ちゃんに引っ付いていた

果南「曜ちゃーん!千歌ー!」

千歌「ん?あ、果南さんどうしたんですか?」

果南「あはは…千歌にその果南さんって呼ばれるのいつになっても慣れないな…」

曜「……どうしたんですか?」

果南「いやぁ千歌が帰ってきたのはいいけど私まだ千歌とあんまり話してなくてね、だからいつ話せるかな?って」

曜「あー千歌ちゃんいつなら…ってあれ?!」

果南「千歌…いなくなってるね」

梨子「あ、千歌ちゃん今向こうに向かって走ってたよ?」

曜「っ!」ダッ

果南「あ、ちょっと!」

もしかしたら、なんて悪寒がした

最悪の事態を考えたらいてもたってもいられなくてただ千歌ちゃんを探しに走り続けた

曜「千歌ちゃん!」

千歌「ん?あー曜ちゃん!」

ギューッ

千歌「わっ…どうしたの急に?」

曜「勝手にどっか行かないでよ!心配するでしょ?!」

千歌「ご、ごめん…」

曜「いつもいってるじゃん!一人でどっかいったらダメって!絶対に行かないでよ?!」

千歌「そ、そんな私は子供じゃないしペットでも…」

曜「ダメなものはダメ!」

千歌「よ、曜ちゃんは束縛するのが好きなの…?」

曜「っ……!」

千歌「私だって立派な高校生だよ、一人でどこかいくことくらいできるよー!」

千歌「曜ちゃんは心配しすぎ、私をなんだと思ってるのさー」

千歌「それとも私を遠くにいかせたくない理由でもあるの?」

千歌「私を信じてもらえないなんて残念だな~」

曜「!」

パリンッ

私の心の中で何かが割れた
次第に心が黒く濁って

その心は外に漏れだした

曜「……いっ」

千歌「何?」

曜「何も分かってない…!」

千歌「え?」

曜「何も分かってないよ千歌ちゃんは!」

曜「一回死んでるくせに一人でどこか行けるなんて言葉使わないでよ!!」

曜「私がどれだけ千歌ちゃんを心配して行動してるか分かってないよ!」

曜「一人でどっかいくから一人で死んで…!それなのに厳しいとか嫌いとか…!」

曜「全然分かってない…!全然分かってないよ!」

千歌「い、一回死んでるって…」

曜「!!」

曜「え、あっ……」

千歌「一回死んでるって何…?一回死んでるってなに?!」

千歌「私幽霊なの?!ねぇ答えてよ!私って何なの?!」

曜「……っ」

曜「ち、千歌ちゃんなんてだいっきらい!!」ダッ

千歌「あ…まっ……」

ズコッ

千歌「うわっ!」

千歌「……うあっ…ひっぐ……」

千歌「うぇえええええん!!」

その日私と千歌ちゃんの関係に亀裂が入った
私は千歌ちゃんを一人にしたくなかった

泡沫の千歌ちゃんは泡沫の千歌ちゃんのままだと思ってた

元々死んだ人が生き返るなんてファンタジーな現象が起こるなら千歌ちゃんはいつ消えてもおかしくないって思った
だから一人にさせたくなかった

一人にしたら消えちゃうかもしれないから

曜「なんで…なんで分かってくれないのかな…!」

曜「私はただ…ただ千歌ちゃんを……」

グッ

心の底から色んなモノが込み上げてくる

怒り、悲しみ、疑問、後悔

そんなものが溢れてた

曜「………」

曜「帰ろ……」

~家

千歌「あ……」

曜「千歌ちゃん……」

千歌「あ、あの…」

ガチャッ

千歌「………」

結局家には私も千歌ちゃんもいる
だけど会話一つさえも交わすことのない空気の重さが私の部屋に漂う

お互いどうすればいいか分からなかったんだ

~次の日

梨子「おはよう曜ちゃん、今日は千歌ちゃんと一緒じゃないの?」

曜「う、うん今日はね」

梨子「…?何かあった?」

曜「ううん!なんでもないよ!」

曜「それより早くいこっ!」

梨子「う、うん」

千歌「………」

梨子「あ、千歌ちゃーん!」

曜「!」

ダッ

梨子「あ、ちょっと曜ちゃんどこにいくの!」

梨子「もう…どうしたのかな…あ、千歌ちゃん…ってあれ?」

シーン…

梨子「いない…」

その空気の重さは学校内でも続いた
お互いに一定の距離から近付こうとしなかった

キーンコーンカーンコーン

梨子「曜ちゃん!ってもういないし…」

梨子「千歌ちゃー……」

梨子「ってまたいない…」

梨子「二人ともどうしたんだろう…もう帰っちゃった…」

スタスタスタ

「…曜ちゃんのしたいこと、未だに分からないな……」

梨子「!」

梨子「この声は…」

梨子(千歌ちゃん…?)

千歌「…梨子ちゃんがよかった」

千歌「梨子ちゃんなら…梨子ちゃんなら一人でどこかへ行くのも許してくれたのに…」


千歌「梨子ちゃんのとこに住みたいなぁ…」


梨子「………」

スタスタスタ

梨子「こんなところにいたの?」

千歌「ん?あ、梨子ちゃん!」

梨子「曜ちゃん帰っちゃったよ?帰らないの?」

千歌「い、いや…今は帰らなくていい…」

梨子「…何かあった?」

千歌「…何も」

梨子「……そっか」

千歌「………」

梨子「………」

千歌「ねぇ梨子ちゃん」

梨子「何?」

千歌「その…さ、私梨子ちゃんのこと好き、っていったらどうする?」

梨子「…友達的な意味で?」

千歌「もちろん!親友の中の親友って意味で!」

梨子「曜ちゃんは…?」

千歌「親友…だけど梨子ちゃんよりかは…」

梨子「…ごめん、千歌ちゃん私は千歌ちゃんのこと友達だなんて思いたくないや」

千歌「え…?」

梨子「曜ちゃんの気持ちも分かってあげられないだけじゃなくて曜ちゃんを捨てて私に縋ろうとするんだ…」

千歌「い、いや待っ」

梨子「私今、すごく怒ってるんだよ?」ポロッ

梨子「あんな必死に千歌ちゃんを支えてるのに千歌ちゃんは曜ちゃんを厄介扱いするんだもん、酷いよ…酷いよ!」

千歌「そんなこと言われたって…そんなこと言われたってどうしろっていうのさ!!!」

千歌「実際曜ちゃんは私の立場からすれば束縛してるようにしか見えないよ!そこからどう私のためって話になるのさ!」

千歌「それなら優しい梨子ちゃんと一緒にいた方が楽しいもん!一緒にいて楽しいを選ぶのは当然でしょ?!」

千歌「梨子ちゃんは違うの?!もし違うなら理由を教えてよ!」

千歌「教えてよ!ねぇおし」

バチーン!

千歌「っ…!」

梨子「さいっ…てい…!」

梨子「千歌ちゃんは一回死んだんだよ…?それなのになぜか帰ってきて…でも自分が千歌って名前以外の記憶は無くなってて…」

梨子「千歌ちゃんは前の記憶もないから分からないと思うけど千歌ちゃん、勝手に一人行動して死んだんだよ…?!車に轢かれて曜ちゃんや私がやっと来た頃に死んじゃって…」

梨子「千歌ちゃんは同じ過ちを二回も繰り返して曜ちゃんを悲しませるの?!今でも曜ちゃんの心はボロボロだよ!私の方がいいとか軽く口ずさむように何回も何回もいって…!」

梨子「これも知らないと思うけどね、曜ちゃんは千歌ちゃんの幼馴染なんだよ?一回死んででも奇跡が起こって千歌ちゃんは帰ってきた」

梨子「あのくらいするのが当然だと思うよ…?千歌ちゃんは死にたいから一人行動をするの…?」

千歌「…!」

千歌「……ごめ」

梨子「謝るなら曜ちゃんに謝って!」

梨子「曜ちゃんがいいなら私もいいから…」

梨子「…行ってきなよ、曜ちゃんはきっといつもと帰り道にいるよ」

千歌「……うん!」

ダッ

梨子「……頑張ってね、千歌ちゃん」



曜「……はぁ」

久々に一人で帰った気がした

曜「………」チラッ

千歌『曜ちゃーん今日はどこによってくのー?』

曜「私だって……千歌ちゃんを拘束したいわけじゃないのに…」

この一週間横を見れば千歌ちゃんがいた

どんなことがあっても横にいた

けど今はいない

曜「………」ポロッ

ポツ…ポツ…ポツ…

曜「あ、雨…?」

お天道様の涙に先を越された
大量の涙が降ってきた

曜「わわわ!今日雨降るなんて聞いてないよー!」

昨日やってた明日は嘘をついた

曜「えっとえっとこの辺で雨宿り出来るところは…」

曜「あ、あのときのバス停!」

タッタッタッ

曜「ふぅ…またお世話になっちゃうなー」

ザーザーザー…

曜「…当分帰れそうにないな」

大粒で勢いのついた涙が降ってた
もうすぐそこに水溜まりが出来てた

曜「………」

千歌『ここで会ったのも何かの縁だよ、よろしくね♪』

考えればここが始まりの場所だった
綺麗な肌色に染められた笑顔を向けられたのもここだった

それからは楽しく過ごしてたはずだった
でもどこかで心がすれ違ってるんだ

私の心と千歌ちゃんの心

その二つの心に楔があるんだ

「隣、いいですか?」

曜「………」

不意に聞こえる問いに返事はしなかった
次第にその問いをした人は私の隣に座って青色のイスについた私の手に自分の手を重ねてきた

とっても温かった
いつかに握った太陽の手にそっくりだった

「…私、曜ちゃんのこと全然分かってなかったみたい」

「知ってたよ、私がただ単に記憶喪失じゃないってこと」

「最初は行方不明だったんだって思ってた」

「でも曜ちゃんのあの一言でなんか全て理解した気がしたよ」

「私ね、ホントに急だったんだ、動けるって生きてるって気付いたの」

「真っ白の視界から急に木々や草が生い茂った森の中に変わってね」

「歩いてたら曜ちゃんにあった」

「私、生き返ったんだ」

曜「………」

「梨子ちゃんから聞いた、えへへ…はたかれちゃった…」ヒリヒリ

曜「………」

「私のこと、どうしても一人にしてくれないのはまた死んじゃうかも、そう思ったんでしょ?」

曜「……うん」


千歌「…そっか、やっぱり私バカ千歌だな…」


曜「そ、そんな千歌ちゃんはバカじゃないよ!」

千歌「ううん、曜ちゃんの優しさに気付けなかったんだもん」ポロッ

千歌「ごめんね…!ホントに…曜ちゃんのこと全然理解してなかった…!」

ポロポロ…

ギューッ

曜「ち、千歌ちゃん…」

千歌「うぅ…うわあああああああん!」ポロポロ

曜「………」ナデナデ

千歌「怖かった…!曜ちゃんに捨てられるんじゃないかって思ってた…!」

千歌「私を捨てないで…!」

曜「捨てないよ、絶対に捨てない」

モギューッ

~十分後

千歌「ごめんね…ホントにごめんね…」

曜「もういいって!また今日から楽しく過ごしていこ?」ニコッ

心と心とが初めて繋がった時だと思った
千歌ちゃんは私の気持ちに気付いてくれた

だから私も千歌ちゃんの気持ちを受け止めたんだ

千歌「…!」

千歌「うん!」

ザーザーザー…

曜「…そういえば雨、止まないね」

曜「帰ろっか!またあの時みたいに!」

千歌「ううん、その必要はないよ」

曜「え?」

千歌「………」

スタスタスタ

屋根から外れ大粒の雨は千歌ちゃんに打ち付ける

曜「ちょ、何してるのさ千歌ちゃん!」

千歌「すぅ………」


千歌「雨やめー!!!!!!!」


ザー…ポツ…ポツ…………

曜「え、う、嘘…?!」

千歌ちゃんが叫んだ途端雨はすぐに止んだ
雲間に幾つもの光が差し込み始めた

千歌「…空、晴れた」

千歌「ほらもう大丈夫!」

曜「…!」

こちらに振り向いてにっこり笑顔で私に答えをくれた

グイッ

曜「わぁ?!」

千歌「家まで走ろうよ!」

私の手を握って引っ張って走り出した

タッタッタッ

千歌「私、晴れが好きなんだ!」

曜「ふふっそっか!」

雲から顔を出す陽光がスポットライトのように私たちを追ってた

タッタッタッ

千歌「………」ニコッ

曜「!」

あぁやっぱり千歌ちゃんは千歌ちゃんなんだ

走りながらも時に後ろを見て笑顔をみせてくれる

私を引っ張ってくれる、導いてくれる存在なんだ
強く打ち付ける雨を消して私を引っ張ってくれた

あの日の奇跡をまた、強く噛み締めた

千歌「曜ちゃん!水溜まりがあるよ!」

曜「…なるほど、わかったよ!」

だからこそ千歌ちゃんと一緒なら今度こそ翔べる気がしたんだ

千歌「ジャーンプ!」

曜「とおっー!!!」

オレンジと青が混ざった色の空に手を上げて高く翔んだ

千歌「やった!翔べたよ!」

曜「やったね!」

ボー…

船が夕陽に向かって海を航ってた

千歌「私、まだまだ頑張れるよー!!!」

果てしなく広がる海とその地平線の彼方にあるオレンジ色の夕陽に向かって叫んでた

晴れた空の下を駆け抜けてたら千歌ちゃんや梨子ちゃん達と面白いことしたくなっちゃった

だからまずは千歌ちゃんに言わなきゃ


家に帰ったら


千歌「あははは!」

曜「もー速いよー!」

そしてこの晴れがずっと続くように願うんだ


「明日は晴れ!」


END

~~~

理事長「その奇跡は必然でした」

理事長「分かり合えない二人の心は曇り空でした」

理事長「しかしその曇り空を晴れにしてくれる人がいるってとても素敵だと思いませんか?」

理事長「上手くいかないんじゃないんです」


理事長「上手くいかない時があるだけなんです」


理事長「ちなみにですけど天気予報は信じない方がいいですよ」

理事長「次の日晴れって天気予報で聞いて洗濯物干して疲れて寝てたら大雨でびしょびしょになった時は目も当てれませんでした」

理事長「だから私もそうことが無いように願うんです!」


理事長「明日は晴れ!」

二つ目終わり
暇だったので終わらせました、友情的な意味のようちかを書きたかった
三つ目もよろしくお願いします

~~~~~

理事長「悪いことをしたら悪いことが返ってくる、そんなの当然ですよね?」

理事長「しかし世界は報われない人がたくさんいます」

理事長「良いことをしたのに悪いことしか返ってこない」

理事長「なぜ運命は良いことをした人に悪いことを与えるのでしょうか」

理事長「世界はこうあるべきなのです」


理事長「良いことをしたら良いことが返ってくる運命であると」


~~~

善子「ずら丸今日はホントに助かったわ…」

花丸「別にいいずら、でも今度からはやってくるんだよ?」

善子「分かったわ!」

花丸「ふふふっ」

善子「それにしても意外ね、しっかり者のずら丸があっさりノート写させてくれるなんて」

花丸「別にマルはしっかりなんてしてないし写すのは悪いなんて思ってないよ?」

善子「えっ…それはもっと意外だわ」

花丸「まぁとりあえず今度からはしっかりするんだよ?」

善子「了解よ!」

善子「じゃあ私はこっちの道だからここでお別れね」

花丸「分かったずら」

善子「また明日!」

花丸「また明日」

フワァ…

花丸「!」

善子ちゃんと別れて一歩目を歩いた時でした
フワッと風が流れて視界がぱっと変わりました

花丸「…駅?」

花丸「あ、駅員さんだ」

スタスタスタ

花丸「すいません、ここはどこですか?」


駅員「ここは、未来行きの駅だよ」



【みらいちけっと】

花丸「え?すいません、もう一度いってもらっていいですか?」

駅員「ここは未来行きの駅だよ」

花丸「未来行きの駅…?!」



『善き行いの後には善き未来をあなたに』

『未来選びは慎重に』

『疲れたあなたを癒す未来を』

花丸「わぁ!未来ずら~!!」

ポスターがたくさん貼ってある通りを走ってた

沼津駅にはないようなものに興奮した
気になるものの近くにいってはよく眺めてを繰り返してただ何も考えず駅の中を駆け巡ってた

駅員「ちょっと君!」

花丸「!」

駅員「ここに来るのは初めてかい?」

花丸「あ、はいそうずら…あ、そうです」

駅員「ここは今まで君がやった良い事をお金に換えてそのお金で好きなMIRAI TICKETが買えるんだよ」

花丸「みらいちけっと?」

駅員「おっとそうだったね、MIRAI TICKETっていうのはいわゆる君の未来の出来事を先に決めるためのアイテムみたいなものだよ」

駅員「良いことをしたら良いことが返ってくるのが当たり前だと思わないかい?それに因んでこういう駅が作られたんだ」

花丸「そうなんですか」

駅員「あ、ここは歩いて辿りつく駅ではないからね、三日に一回程度の割合で勝手に連れてこられる駅なんだ」

花丸「私は今日が初めてですけどみんな必ずこの駅にくるんですか?」

駅員「ううん、そういうのは完璧にランダムなんだ」

駅員「あ、チケット購入場所はあそこだよ、試しにいっておいで」

花丸「わ、分かりました…」

なんだか不思議なところにきてしまったみたい
見るもの全てが新鮮でキラキラしてた

花丸「えーっと…どう使うんだろう…」

花丸「みらいちけっと購入…?これかな…?」

ピッ

花丸「残金を確認します…?」

マルはお寺産まれで機械とかは全く分からなかった
だからとりあえずそれっぽいものを押してみる

花丸「わぁ…10万円もある…!」

花丸「ん…チケットが色々ある…」

花丸「どのチケット買えばいいのかな…」

画面の中には何十枚ものチケットがある

花丸「食べ物がもらえる未来チケット…1000円?」

花丸「食べ物がたくさんもらえる未来チケット…3000円」

画面を縦にスライドすると下にスクロールしてって次から次へと新しいチケットが画面の中に出てきた

花丸「ちょっと良いことが一つある未来チケットが300円、ちょっと良いことがたくさんある未来チケットが700円」

花丸「…どうしよう」

花丸「じゃあこの食べ物がもらえる未来チケット…買ってみようかな…」

ピッ

花丸「あ、これかな…?」

下の取り出し口みたいなところからチケットが出てきた

花丸「食べ物がもらえる未来…」

食べ物がもらえる未来と書かれた硬い紙が出てきた、駅というのだから切符なのだろうけどあまり切符とは呼べるようなものではないと思う

花丸「すいません、切符を買ったんですけどどうすればいいですか?」

駅員「あそこの角を右に曲がると改札があるからそこでその切符を使って後は適当に乗れば大丈夫だよ」

花丸「て、適当に…?」

駅員「あぁ、その切符があくまでも未来へ行くための鍵だからね、列車はただの演出みたいなものだよ」

花丸「そ、そうなんですかわかりました、説明ありがとうございました」ペコリ

駅員「よい未来を」

駅員の人に言われた通りに走った先の角を右に曲がって改札を通った

花丸「あ、この階段を上ればいいのかな…」

タッタッタッ

花丸「わぁ……」

左右に新幹線が停まってた
人がたくさんいて視界の真ん中にはお店がある

花丸「お弁当…?」

急に未来感が無くなった
お店に売ってるものは至って普通のもの

焼肉弁当、ポテトチップス、お茶

そんなようなものが売られてた

『適当に乗ればいいよ』

花丸「…とにかく乗ってみようか」

お店はとりあえずスルーして新幹線に乗ることにした

プルルルルルルルル

花丸「!」

乗った瞬間に発車のサイレンが鳴り出した
後ろを振り向いたらもう扉は閉まってた

花丸「え、えっと取り合えず座ればいいんだよね…?」

ガララ…

花丸「わぁすごいずら~…」

中は汚れが一つも見当たらないくらいに綺麗だった
花柄のイスで窓にはカーテンが付いてた

豪華

そんな風に思いながらも近くの空いてるイスに座った

花丸「いっ…?!」

座った瞬間突然頭痛がした
頭を抱えて小刻みに震えた

花丸「う…あっ……」

そして目の前が真っ暗になった
意識だけが曖昧にあるような、そもそも意識が今あるのかそれ以前の問題も更に曖昧でとにかくよく分からない状況だった

花丸「んー……はっ?!」

花丸「ここは…家?」

花丸「………」キョロキョロ

花丸「!!!」

花丸「わぁ!のっぽパン!えっと一つ二つ三つ…」

花丸「五つあるずらぁ!」

花丸「でもどうして…」

花丸「!」

花丸『じゃあこの食べ物がもらえる未来チケット…買ってみようかな…』

花丸「まさか本当に…」

気が付くと家にいた
私の机には五つののっぽパンが置いてあってどれも本物でおいしそうだった

駅員『「あ、ここは歩いて辿りつく駅ではないからね、三日に一回程度の割合で勝手に連れてこられる駅なんだ』

花丸「三日に一回…ってことは三日後までにまた…」

ガララ

花丸ママ「あ、起きたの?」

花丸「あ、お母さん」

花丸「!そういえばこののっぽパンって…」

花丸ママ「善子ちゃんがくれたのよ?くじでのっぽパンたくさんもらったからマルちゃんにあげるって」

花丸「善子ちゃんが…」

花丸(いつも不運なのに珍しい…)

花丸ママ「あ、そうそう今日お菓子とっても安かったから奮闘して買っちゃった!いっぱい食べていいからね!」

花丸「う、うん!」

花丸「………」

花丸ママ「マルちゃん?難しい顔して何かあった?」

花丸「…あ、ううんなんでもないよ」

花丸「今度善子ちゃんにお礼言わないとね」

花丸ママ「ええそうしてあげて」

花丸「………」

疑いながらも私はあのチケットのおかげなのかな、と思いました

花丸ママ「後もうすぐご飯だから出来たら呼ぶね」

花丸「分かったずら」

ガララ

花丸「……のっぽパン…!」ゴクリッ

花丸「ホントに食べていいんだよ…ね?」

花丸「と、とにかくもうすぐご飯だから後か明日ずら!」

花丸「…でも、よかったのかな」

花丸「あのチケットのおかげだとしたら…」

花丸「………」

『「ここは今まで君がやった良い事をお金に換えてそのお金で好きなMIRAI TICKETが買えるんだよ』

花丸「私のやったことがお金になるなら…」

食べ物がたくさん食べれて気分が舞い上がってたけどちょっと引っかかった

そもそもみらいちけっとってなんだろう

今思えばあの駅、おかしいことがたくさんあった

花丸「外に人がいなかった…」

私があの駅にいるって気付いた時、後ろに外へ出るための扉があった
色々困惑とか興奮とかしてて違和感を感じなかったけど人が一人もいなかった

しかも駐車場に何一つ車が停まってなかった

花丸「……三日後」

三日後までにまた一回行けるはず、そう思ったマルは次駅についたとき駅員の人に聞くことをメモする

花丸「…なんだったんだろう、あれ」

~二日後、学校

花丸「千歌さんこれ落ちてたよ」

千歌「ん?あ、ありがとう!これ探してたんだ!」

千歌「ホントにありがとう!今度お礼するね!」

花丸「お、お礼なんていいずら、それよりまた落とさないようにしてくださいね」

千歌「うん!」

善子「ずら丸!」

千歌「あ、善子ちゃんこんにちは!」

善子「こんにちは、何かあったの?」

千歌「花丸ちゃんが私が探してたものを拾ってくれたんだ!」

善子「へぇそうなの」

花丸「善子ちゃんは私に何か用ずら?」

善子「いや、用ってわけじゃないんだけどただ会いたくなっただけ」

千歌「あら~…じゃあ私は素早く退散!」

千歌「花丸ちゃん今度お礼するからねー!」

花丸「お礼はって…もう行っちゃったずら…」

善子「ずら丸って誰にでも優しいわよね、毎日誰かの為に動いてるって感じがするわ」

花丸「別にそんなつもりはないよ?」

善子「知ってるわよ、いいわよね、その心の広さとか出来具合が羨ましいわ」

花丸「善子ちゃんは善子ちゃんなりの良さがあっていいずら」

善子「はぁ…変わらないわねぇ…」

花丸「?」

善子「それでなんだけど…」

花丸「ん?」



花丸「えぇ?!今度はノートを忘れちゃった?!」

善子「お願い!また写させて!」

花丸「もう…これで最後だよ?」

善子「ほんとありがと!絶対に借りはかえすわ!」

花丸「だからお礼は別に…」

花丸「とにかくはい、ノート」

善子「ありがたき幸せっ!」

花丸「はぁ…」

善子「写し終わったら返すわね、待ってなさい!」ダッ

花丸「善子ちゃん頭良いはずなのにもったいないずら…」

スタスタスタ

フワァ……

花丸「!!」

花丸「ここ…って…」

二回目も突然だった
視界がパッと変わって目の前にはこの前見た未来な世界が広がる

“未来行き ←未来 未来→”

“未来まで12分 未来まで31分”

“未来”

花丸「どこも未来ずら…」

行き先には未来しか書いてなかった

花丸「あ、外!」

看板に気をとられてて忘れてた
すぐさま出口へ走った

タッタッタッ

駅員「君!」

花丸「ん?あ、この前の」

駅員「二回目だね、今日はもう帰っちゃうのかい?」

花丸「帰る?」

駅員「外に出るということはMIRAI TICKETを買わずに現世に帰るってことになるんだよ」

花丸「…え?現世に帰るってここはどこなんですか?」

駅員「ここは現世から完全に切り離れてる隔離空間みたいなところなんだ」

花丸「隔離空間…?」

駅員「いわゆる“歪”みたいなものだよ」

駅員「ほらコンピューターでインストール途中の何かを何らかの方法で強制終了すると中途半端なプログラムファイルだけが残るでしょ?」

駅員「この世界はその中途半端なプログラムファイルみたいなものなんだ」

花丸「は、はぁ…?」

機械には全く詳しくない私は馬の耳に念仏状態だった

花丸「と、とりあえず教えてくれてありがとうございました」

花丸「帰る気はないのでみらいちけっと買ってきますね」

駅員「よい未来を」

コンピューターの下りはよくわからなかったけどここが私の住む世界じゃないことは分かった

花丸「………」

スタスタスタ

この駅はほどほどに人がいるみたいで年齢層も結構広かった

私と同じくらいの学生の人や腰を下げてないと辛そうなお年降りの人もいる

花丸「えっとどれ買おう…迷うずら…」

ピッピッ

花丸「…あ、残金が2000円増えてる!」

花丸「なるほど…こうやって増えていくんだね」

花丸「うーん……」

後ろに並んでる人はいないからゆっくり見てた
チケットは一枚しか買えないみたいで慎重に選ばないといけない

花丸「わぁ…このチケット高い…二万円…!」

花丸「食べ物がたくさん貰える×5ととても良いことが起こる×2ってぼりゅーみーずら…」

お得セットみたいなチケットもあるみたいで一つのチケットで複数回効果を発揮するみたい

花丸「じゃあこの二万円の…」ピッ

花丸「二万円セット…」

“二万円セットの未来”と書かれた硬い紙が出てきた

花丸「それにしてもちょっと欲張りだったかな…」エヘヘ

二万円という超高額なものを買ってしまった
手持ちに十万円あったから買ってみたけどどんなものなのだろう
私自身こんなお買い物は初めてでちょっとだけワクワクしてた

花丸「ここを右に曲がって…」

花丸「改札を通って…」

花丸「階段を上って…」

花丸「ホームずら!」

二回目となれば流石に慣れてた
ホームだけは人がたくさんいるのはなんでだろう
そんな新たな疑問を抱えながらも新幹線に入る

プルルルルルルルル

花丸「!」

まただ
また入った瞬間に発車のサイレンが鳴った

花丸「閉まってる…」

後ろを見ればドアは既に閉まってる

花丸「…またあの頭痛起こるのかな」

花丸「あんまり座りたくないずら…」

この駅で唯一イヤって思ったのは座った時に起こるあの頭痛

実はものすごいってほどの激痛でとても正気ではいられない

花丸「すー…はー…」

花丸「よしっ…」

花丸「痛くないずらっ!」

ドサッ

花丸「うぅ…?!」

花丸「なに…これぇ…!」

頭痛はしなかったけど今度は視界がぐにゃぐにゃになって意識が朦朧とし始めた

一言で言えば気持ち悪かった

でもその感覚はすぐに終わった

花丸「んー…んー?」ゴシゴシ

善子「やっと目覚めたのね…」

ルビィ「あ、花丸ちゃん!」

千歌「あー!よかったよー!」ギューッ

梨子「よかった…!何があったかよくわからないけどあんま無理しないでよ?」

花丸「あれ…私…」

善子「急に倒れてビックリしたのよ?しかも全然起きないし何かあったらどうしようって心配だったんだから」

花丸「そ、そうだったんだ…」

果南「花丸ちゃんが倒れるなんて私は何があったか想像も出来ないや、何かあったの?」

花丸「えっ…」

花丸(未来行きの駅に行ってたとかいっても信じてもらえないよね…)

花丸「え、えっとダイエットで朝ご飯食べてなくて…」

鞠莉「Oh!そうとこととなれば私が用意した果物を食べてください!」

千歌「うわぁ!何この数…!」

ルビィ「スーパーにあるかご二個くらいでやっと埋まりそう…」

ダイヤ「ちょ、鞠莉さん?流石に量がありすぎでは?」

鞠莉「No Problem!マルちゃんならこのくらい朝飯前です!」

曜「マルちゃん…?」

花丸「す、すごいずら…で、でもこんなにもらって…」

鞠莉「大丈夫!お見舞いに持ってきたものだから心配いらないわ!」

善子「流石金持ちは言うことが違うわね…」

マルは確信しました
これはあのチケットの力なんだねって。

一回目は目覚めたら家でした
だから夢かなとも思ってたんだけどやっぱり違った



花丸「………」

花丸「お母さん…」

花丸ママ「…なに?」

花丸「なにこれ…」

花丸ママ「また善子ちゃんが商店街のくじ引きで大当たり当ててきてのっぽパン一年分貰ったらしくて半分分けてくれたのよ」

花丸「うん…のっぽパンはいいとしてこっちは…?」

花丸ママ「なんか知り合いの人達が一斉に色々くれて…果物に野菜にお魚に…」

花丸「……当分は食べ物に困らないね」

花丸ママ「そうね!」

帰ったら玄関に食べ物の山がありました
鞠莉さんに手伝ってもらって大量の果物も合わさって当分は何も買わなくても過ごせそうな量でした

マルはその量に唖然してました

花丸「………」ゾクッ

そしてあのチケットの効果に恐怖を感じていました

一人称が急に私からマルになってますが普通にミスです、すいません

~二日後

ダイヤ「すいません花丸さん、生徒会でもないのに書類整理の手伝いをしてもらって」

花丸「このくらい大丈夫ずら!」

曜「花丸ちゃん!今から衣装作りするんだけどこれる?」

花丸「分かったずら!」

花丸「じゃあダイヤさん後で!」

ダイヤ「え、ええ」

善子「ずら丸昨日はホントにありがと!」

曜「ん?また善子ちゃん花丸ちゃんのノートのお世話になったの?」

善子「やるところを間違えたのよ!仕方ないじゃない!」

花丸「あはは…」

ルビィ「花丸ちゃん今日はありがとう!絶対にお礼するからね!」

花丸「う、うん!」

追記なんですが作ってる時は私じゃなくてマルで進めてたと思うのでこのままマルで行きます

~二日後

ダイヤ「すいません花丸さん、生徒会でもないのに書類整理の手伝いをしてもらって」

花丸「このくらい大丈夫ずら!」

曜「花丸ちゃん!今から衣装作りするんだけどこれる?」

花丸「分かったずら!」

花丸「じゃあダイヤさん後で!」

ダイヤ「え、ええ」

善子「ずら丸昨日はホントにありがと!」

曜「ん?また善子ちゃん花丸ちゃんのノートのお世話になったの?」

善子「やるところを間違えたのよ!仕方ないじゃない!」

花丸「あはは…」

ルビィ「花丸ちゃん今日はありがとう!絶対にお礼するからね!」

花丸「う、うん!」

花丸(…私、こんな貪欲だったのかな)

マルの前で笑うみんながマルの心を痛めた
みんなを助けて笑顔にしてるはずなのに何か違う感じがした



鞠莉「お疲れ様♪体調管理はしっかりするのよ?」

「はーい」

花丸「ふぅ…疲れたぁ…」

梨子「お疲れ様、花丸ちゃんは特に体調管理気をつけてよ?また倒れたりしないようにね」

花丸「わ、分かったずら!」

千歌「ん?曜ちゃんどうしたの?」

曜「いやーまだ衣装のやつがあんま進んでないから今日はもうちょっとここにいようかなって」

果南「衣装作るの?」

曜「うん!」

花丸「手伝うずら!」

曜「い、いいよそんな悪いし」

花丸「大丈夫!私今日暇だから!」

善子「随分と積極的ね…」

花丸「…はっ」

一瞬我にかえった
みらいちけっとで良いことが起こせるように何かを良いことにつくづく貪欲になってた

曜「んーよくわからないけど分かった!花丸ちゃんが手伝ってくれるなろ百人力だよ!」

花丸「う、うん頑張るよ!」

私は知らないうちに変わってた



曜「お疲れ様!衣装作りも大分進んだよ!」

花丸「そっか、また困ったら言ってね」

曜「うん!いやー花丸ちゃんは色々手伝ってくれて助かるよ、家に来てほしいくらい!」

花丸「家に?あはは…」

曜「まぁとりあえずお疲れ様!」

花丸「お疲れずら」

曜「よっと、じゃあ私千歌ちゃんの家に行くからもうお別れだね、また明日!」

花丸「また明日ずら!」

スタスタスタ

フワァ…

花丸「!」

花丸(この感覚…)

花丸「…やっぱり」

“未来行き”

花丸「………」

スタスタスタ

マルは何も言わず思わずでチケット購入場所に向かいました

ピッ

花丸「おぉ…一万円増えてる…」

花丸「えーっと今日は…」

花丸「今やってることが良い方に発展するチケット…?」

花丸「今やってること…スクールアイドルかな?」

花丸「二万五千円…ちょっと高いけどまだまだ余裕はあるし…」

花丸「…いやでもそんなスクールアイドルが簡単に成功しても面白くないずら!」

花丸「適当にくとても良いことが起こる×3チケットにするずら!」

ピッ

花丸「とにかくとても良いことが起こる未来行き…」

一回目、二回目と同じようにどんな未来か書かれた硬い紙が出てきた

花丸「…!」

あまり気にしてなかったけどマルの周りにいるほとんどの人

目に光が無い

外見は至って普通だけど顔だけ雰囲気が違う
何かに操られてるような、ただ歩いてるだけみたいなそんな感じだった

花丸(気味悪いずら…)

視野を広くしてよくよく見てみると気付くこと
ちょっとだけ変だなと感じ始めてきた

~三日後

曜「花丸ちゃん衣装作りもうすぐ終わるんだけどラストスパートってことで手伝ってくれないかな?」

花丸「あ、じゃあこのダイヤさんのお仕事のお手伝い終わったらいくね」

千歌「もぉ~…歌詞作りが上手くいかないよぉ~…」

千歌「誰か手伝ってぇ~…」

梨子「あはは…なんか全然思いつかないみたいで…」

果南「梨子ちゃんは作曲大丈夫なの?」

梨子「うん!私は多分大丈夫!」

鞠莉「スクールアイドルフェスティバル!それに私たちは呼ばれたんだから張り切ってbestなコンディションでいかないとね!」

果南「そうだよ?困ったらちゃんと誰かに頼ってよ?」

ダイヤ「す、すいません花丸さん…」

花丸「いえいえ、じゃあマルは行きますね」

曜「…あ、じゃあやろっか!」

千歌「花丸ちゃん後できてぇ~…」

花丸「衣装作り終わったらいくね」

千歌「ホントー?!やったぁ!」

善子「ずら丸ばっかに押し付けてずら丸は大丈夫なわけ?」

花丸「うん、マルは大丈夫ずら!」

ルビィ「花丸ちゃん最近すごくお手伝いとかボランティアに積極的だよね」

花丸「えっそ、そうかな?」

ルビィ「うん、すごく積極的」

千歌「でもそれって良いことなんじゃない?私はすごい助かってるけどな!」

曜「私も!」

梨子「うんうん、いつもありがと花丸ちゃん♪」

花丸「いえいえ…」

意図は濁っててもやってることは“良いこと”だからマルは何も思わなかった

ボランティアじゃない、手伝いじゃない

自分に利益が“必ず”来るから断らずやってる
今までは何となくやってたつもりだけどなんだか意識し始めちゃって気付けばもう戻れないところまで来てた

~帰り

善子「ねぇずら丸」

花丸「何?」

善子「これ勘違いかもしれないけど」


善子「あんた変わった?」


花丸「!」ピクッ

花丸「き、気のせいずら」

善子「そう…でも最近のずら丸…」

善子「手伝うことに…ううん何かに必死になってる気がするのよ」

花丸「そんなことないずら!マルはいつも通り!」

善子「そ、そう……」

花丸「え、えっと…」

ブッブー!

善子「!」

花丸「ずら?!」

善子「危ない花丸!」

歩道に車が突っ込んできた
そう気付く頃にはもう遅かった、避けるにも避けられない

死を確信しました

フワァ…

花丸「!」

花丸「ここ…!」

“未来駅”

花丸「!」

ダッ

タッタッタッ

駅にいたと気付いた瞬間急いで出口へダッシュしました
善子ちゃんを残してマルだけこの駅にワープした

ドンッ!

押して開けるドアをタックルして開ける

フワァ…

花丸「!」ピタッ

さっきまで温かった体が急に冷えだした
飛び出した先は外じゃなくてどこかの病室の前

千歌「………」

曜「善子ちゃん…!」ギューッ

ルビィ「うぅ……」ポロポロ

花丸「…!」

暗く重い空気が漂う部屋
部屋に入らずとも廊下からみんなを見てれば察しが付いた

花丸「……ぁ」ガクッ

膝をついた

善子ちゃんが死んだ

花丸「うそ…うそ…!うそだよ!うそうそ!!」

花丸「ウソだよ!!!」

千歌「花丸ちゃん!」

ルビィ「花丸ちゃん!!」

頭を抱えてただ現実を受け止められないでいた

花丸「どうして…!どうして…!!」


花丸「どうして良いことをしてるのに悪いことが起こるの?!」


果南「な、何の話…?」

回りから頭がおかしくなったって思われてるかもしれない
けどそれ以上に感じるモノがあった

マルはちゃんとみらちけっとで未来は良いことが起こるように仕向けたはずなのになんで悪いことが起こるんだろう

マルはそこに怒りを覚えてた

花丸「…ごめん、帰るね」

そう言い残してマルは帰った

花丸「どうして…」

花丸「………」

花丸「次行った時に絶対駅員の人に言わなきゃ…」

不具合で善子ちゃんが死んだ、なんて言われたらどうしよう
誰に怒ればいいか分からないや

花丸「………」

今日は星が何一つ光ってなかった

~二日後

花丸「はい、ダイヤさん」

ダイヤ「あ、ありがとうございます」

花丸「困ったらマルに言ってくださいね」

ダイヤ「…無理してませんか?」

花丸「何がずら?」

ダイヤ「よ、善子さんが死んで辛いのならそこまで普通でいる意味なんて…」

花丸「大丈夫、心を入れ替えて前を向いてるだけずら」

ダイヤ「そ、そうですか…」

花丸「今日は用事があるので帰りますね」

ダイヤ「分かりました、また明日」

花丸「また明日」

フワァ…

花丸「…来た」

もうピクって驚く事も無くなった
最初は視界も真っ白なだけだけどだんだん未来行きの駅が浮き上がってくる

花丸「………」スタスタスタ

花丸「すいません、ちょっといいですか?」

駅員「ん?あ、君か」

駅員「どうだい?MIRAI TICKETを駆使して過ごす未来は」

花丸「そのことでなんですけど…」

駅員「ん?」

花丸「良いことが起こるチケットを使ったんですけどよしこ…じゃなくてマルの友達が死んじゃったんですけど…」

駅員「んー?ちょっと待っててね」

そう言うと手元に持ってたタブレットで何かを確認してた

駅員「なるほどねー」

花丸「…?」

駅員「君が良いことが起こるっていうチケットを買わなきゃその友達と一緒に死ぬ未来だったんだよ」

駅員「良いこと、つまりは死を回避できた、ということさ」

花丸「!」

駅員「未来を決めるのは君だけど未来の内容は決められないんだ、未来は友達と君を助けるんじゃなくて君だけを助ける未来を選んだんだよ」


駅員「でもほら、死ななかったんだから良いことでしょ?」

prrrrrrrrr

駅員「あ、ごめん何かあったみたいだから行くね」

花丸「あ、はい…ありがとうございました…」

花丸「………」

誰に怒ればいいのか分からなかった

全然良いことなんかじゃなかった

花丸「どうせならあそこで…殺してほしかった…!」

グッ

もしマルのとって良いことというならばあそこは二人一緒に助かる未来なはずなのになんでこんな悪いことが起こる未来になったんだろう

花丸「………」

その日は何も買わず駅を出た

失望感と脱力感がすごかった

花丸「………」

外の一歩目を踏み出したら世界が自分の部屋に変わった

花丸「…良いことってなんだろう」

花丸「マルにとって…?」

机に置いてあるAqoursの写真を見て思った
今は亡き善子ちゃんが写ってる

希望があって笑顔で生きている善子ちゃん

花丸「………」

花丸「…どうすればいいんだろう」

考えたけど分からなかった
だからそのうち悟ったんだ

考えるだけ無駄だなって

~二週間後

ルビィ「わぁ…すごい…今日も花丸ちゃん100点…!」

花丸「えへへ勉強した甲斐があったよ」

花丸「ルビィちゃんも90点!やったね!」

ルビィ「花丸ちゃんが教えてくれたから…」

花丸「でもやったのはルビィちゃんでしょ?おめでとうずら!」

ルビィ「あ、ありがとう!」

ルビィ「あ、そういえばお姉ちゃんが花丸ちゃんに感謝しきれないほどに感謝してたよ」

花丸「ダイヤさんが?」

ルビィ「うん!是非生徒会に入ってほしいって言ってたよ」

花丸「…そっか、考えとくね」

ルビィ「うん!言っておくね」

果南「お、花丸ちゃん聞いたよ?町中のゴミ一人で片付けちゃったんだって?」

花丸「あ、うん」

果南「私もボランティアとかやってみようかな~なんて花丸ちゃんに影響されて考えてるんだ」

花丸「じゃあやるときは一緒にやりましょうね!」

果南「うん!」

千歌「あー花丸ちゃん!」

千歌「はい!ミカンだよ!」

花丸「このミカン…」

千歌「いやぁこの前旅館の仕事の手伝いしてくれたでしょ?」

千歌「流石にただ働きはまずいからね、そのお礼だよ!」

ルビィ「すごいよ花丸ちゃん!」

果南「うんうん!流石だね!」

花丸「えへへ…」

花丸「あ、とりあえず今日はもう帰るね!それじゃあ!」

タッタッタッ

あれから二週間が経った

もちろんマルは正常…

花丸「ふふふ…ふひひはっはっは!」

なわけがなかった
マル自身笑えてなくてマルの本能が笑いたいって思い始めて勝手に笑ってた
あの時からマルの心と頭のネジは外れてしまった

花丸「今日は何買おうかな~」

花丸「わぁ100万円超えたぁ♪」

でもそんなこととうに知ってた

ただそうと分かって無視してた
マルは目的無くただ良いことをしてその良いことをお金に換えて楽しんでた

何も感じずにただ。

プルルルルルル

花丸「………」

この新幹線のイスも何回か座るうちに何も感じなくなった
痛みも異変も何も

花丸「…のっぽパンが」

花丸「…30個はあるかな」

目が覚めたらのっぽパンがあるなんてもはや当たり前だった

花丸「おいし…くないや…」

でもそんなのっぽパンも何故かまずかった

しょっぱくて苦くてしめぼったくて、ただ食べてるだけだった

花丸「味覚が狂っちゃったのかな…」

ポロポロ

のっぽパンと一緒に口に入る数えきれないほどの雫

この時だけはマルが泣いていられる時だった

『流石花丸ちゃん!』

『花丸ちゃんすごいよ!』

『助かったよ!』

花丸『いやぁえへへ…』

普段のマルっていうのは良いことをしてみんなに褒められたり感謝されたりするマル
時に笑って怒って、心配もしてそれでいてしっかり者、それがマル

そこに泣くマルなんて存在しない

花丸「えへへ……」パクパク

のっぽパンはひとりぼっちの味がした
涙の味がした

みらいちけっとで悲しい気持ちをずっと誤魔化してた

花丸「やったぁ150万円突破ずら!」

チケットを買っても買っても増え続けるお金に喜んでた

現実世界では良いことをして過ごしてるから減らなかった

良いことをする理由もなく。

いつか気味悪いと思った光がない人間になろうとしてた

千歌「やっぱり花丸ちゃんすごいねー」

梨子「やっぱり大学とかは名門校にいったりするの?」

花丸「ま、まだ決まってないよ」

鞠莉「でも行かなきゃ損よ?マルちゃんみたいな子がいい会社入らないなんて宝の持ち腐れよ!」

ダイヤ「その通りですわ!」

マルにどんな気持ちがあっても丸自身やってることは

紛れもない“良いこと”だ

だから誰もマルが狂ってるなんて気づかれることもなかった
助ける気持ちなんてないのに、助けたいなんて気持ちもないのにただ目的を失ってやってたことが“良いこと”なだけなのに

花丸「200万…!」

そんな時だった
マルは面白いみらいちけっとと出会った

ピー

花丸「!」

花丸「何このちけっと…」

花丸「あなたの現実を変えるちけっと…」

花丸「値段が100万円って相当なのかな…」

見たこともないチケットが画面の中にはあった

ピッ

花丸「…買っちゃった」

マルは迷うことなくそのちけっとを買った

花丸「どんな現実にしてくれるんだろ…」

もし少しでも現実が楽しくなってくれるならそれだけで100万円を消費した価値はあったかな、妥協点を低くしてちけっとを手に取った

花丸「真っ白だ…」

花丸「未来…?」

“未来”

と書かれただけの真っ白いチケット

スタスタスタ

花丸「右に曲がって…」

花丸「改札を通って…」

花丸「階段を上って…」

花丸「ホーム…だね」

花丸「………」

シーン…

いつも人がいっぱいだった駅のホームには誰も人がいなかった

それに何とも思わず私は新幹線の入り口へ向かう

「そこのあなた」

花丸「!」ピクッ

花丸「あ、はいなんですか?」

どこからきたのか、30代くらいの女の人が話しかけてきた

「あなたもそのチケット使うの?」

花丸「あなた…も?」

「ええ、私もこのチケットを使おうと思ってるのよ」

花丸「そうなんですか…」

「どんな現実がお望み?」

花丸「…死んだ友達がいて心の底からみんなと笑えて毎日が楽しい現実が欲しい…です」

「そう…叶うといいわね」

花丸「…先に乗りますね」

「ええ」

スタスタスタ

プルルルルルル!

花丸「!」

後ろを振り向いたら扉が閉まってなかった

花丸(あぁ…まだ戻れるんだ…)

きっとその未来をキャンセルしたいが人のため
でもマルはキャンセルをしない

視界の真ん中にぼったつ30代くらいの女の人が口をパクパクさせてマルに何か言ってるように感じた
でもその声は新幹線と環境音の喧騒でマルの耳には届かなかった

『花丸ちゃん!』

『花丸ちゃん!!!』

そんな喧騒の中どこからともなく切羽詰まった感じでマルを呼ぶ誰かの声が聞こえた

花丸「………」

でもマルはそれに動じることはなかった

プルルルルルル

そして扉が閉まる合図の音がした

スタスタスタ

花丸「…きっとマルは夢を見てるんだ」

花丸「長い夢…」

ヘタッ

マルは真っ白いちけっとを握りしめてイスに座った

パッ

次の瞬間視界はブラックアウトした

花丸「………」

ギュッ

それでもまだ強く握りしめてたちけっと

“未来”

視界がブラックアウトした今でもこの真っ白いちけっとだけは見えてた

花丸「ん…」

だからマルはこのちけっとをかざした

ピカーン!

花丸「眩しい…」

そしたらちけっとが光ってた
次の瞬間にはブラックアウトした世界がホワイトアウトした

『ずら丸!』

花丸「善子ちゃん…?」

『なーに寝てるのよ!』

何も見えず善子ちゃんの声だけが聞こえた

花丸「ど、どうして…?!死んだんじゃ…?!」

『何いってるのよ!堕天使に死なんてないわよ!』

『ほらっ起きなさい、手、貸してあげるから』

スッ

真っ白い視界から急に手だけが浮き上がった

花丸「!」

ギュッ

マルはこの手を取った

花丸「…そっか」

花丸「えへへ…マルやっぱり夢を見てたんだ…」

花丸「善子ちゃんが死ぬわけないもん!」

花丸「うん!善子ちゃんはここにいる!」

マルはその日、未来を買った

『疲れたあなたを癒す未来を』

マルは人生に疲れた
だから“未来”を変えることを選んだ

行けるのことのない世界へ身を移すことを選んだ

“未来”

死んだら未来なんてありません


ただ私は夢を見てただけなんです


悪夢を、現実という悪夢を。

『花丸ちゃん!』

外からマルを呼ぶ声はもう聞こえなかった。

END

~~~駅のホーム

理事長「良いことは良いことで返ってくる、残念ながら違うんです」

理事長「運命はそうなるシステムを作ろうとも良いことだけを与えてくれるわけではありませんでした」

理事長「彼女にとって“現実”とは何なのでしょうか?」

理事長「…分かりませんね」

理事長「おや?こんなところに人が」

理事長「そこのあなた」

「!」ピクッ

理事長「あなたもそのチケット使うの?」

「あなた…も?」

理事長「ええ、私もこのチケットを使おうと思ってるのよ」

「そうなんですか…」

理事長「どんな現実がお望み?」

「…死んだ友達がいて心の底からみんなと笑えて毎日が楽しい現実が欲しい…です」

理事長「そう…叶うといいわね」

「…先に乗りますね」

理事長「ええ」

理事長「…彼女はもう溺れてしまったのでしょう」

理事長「きっと、今も深く沈んで夢を見ているのでしょう」

理事長「まぁ今は冬ですし沈んでくとかそういうシーズンじゃな」

プルルルルルル!!!

理事長「最後まで言わせてよ!!!」

三つ目終わりです
μ’sでいう穂乃果枠なんですが前回の失敗も踏まえてだいぶ分かりやすく書いてみたつもりです
ここまで三回連続地の文ありだったので次は地の文無しです、四つ目もよろしくお願いします

~~~~

ペラペラペラ

理事長「桃太郎をご存じですか?」

理事長「むかーしむかしあるところに金太郎という子がおり浜辺で虐められてる亀を助けたら竜宮城につれてってくれた」

理事長「え?違う?いやいや…会ってますよ?」

ペラペラ

理事長「と、いうのはウソです」

理事長「世界には昔話や神話など各国で有名な童話があります」

理事長「しかし最近、その各国の童話がおかしくなってしまってるようです」

理事長「今日はそんなおかしな童話を読んでみましょう」

理事長「むかーしむかし―――」

ペラッ

~~~

~学校、理事長室

鞠莉「ふぁ~…生徒とはいえど理事長だとやっぱり仕事があるのよねぇ…」

鞠莉「これはまとめたし、自分の宿題は終わらせたしもういいかな?」

鞠莉「よし!今日はTHE END!早く帰ってゲームでもしましょう!」

ガチャッ

鞠莉「夜の学校もそろそろ慣れたわ、この季節になるとご、ゴキブリが…」

カサカサ

鞠莉「きゃーっ?!?!」

鞠莉「ってあれはBunny?なんでこんなところにウサギが…」

ピョンピョン

鞠莉「あ、待ってー!」

タッタッタッ

鞠莉「ウサギってあんなに速いの?!か、果南か曜ちゃんじゃないと追い付かないかも…」

鞠莉(赤色の宝石をつけた首輪をつけてる…誰かに飼われてるのかな…)

ピョンピョン

鞠莉「あそこは部室…!」

タッタッタッ

鞠莉「もう逃げられないわよ!」

鞠莉「って…なにこの穴…!」

ピョーン

鞠莉「あ、待ってー!」ダッ

ピョーンッ!



【不思議な国のかぐや姫】

鞠莉「……んん?」

鞠莉「あれ?ここどこ…?」

鞠莉「どこかの中にいる…」

鞠莉「壁は緑色…丸の空洞……」

鞠莉「…竹?」

鞠莉「っ?!」

鞠莉「上がずっと続いてる…?」

鞠莉「何ここ…」

鞠莉「………」

鞠莉「待って…私どうやってここにきた…?」

鞠莉(考えろ私…遊びじゃないんだから真剣に考えるのよ…)

鞠莉「ウサギを追って…部室にあった穴に飛び込んで…」

鞠莉「それから…それから……」

鞠莉「…!もしかして…!」

鞠莉「落ちた先がここ…?」

鞠莉「で、でも部室に穴なんて…」

ザクッ

鞠莉「ひいっ?!」

鞠莉(お、斧?!)

ザクッザクッ

鞠莉「ひゃっ…」

鞠莉(もしかして殺されちゃうのかな…)

鞠莉(果南とダイヤとやっとスクールアイドル始めれたのに…)

鞠莉(もっと色々したかったな…)

ザクッザクッザクッ

「あ、きれた!」

鞠莉「ん…?」

「うわぁ!お、女の子がいる!」

鞠莉「千歌ちゃん?!」

千歌「ん?確かに私は千歌だよ!」

鞠莉「どうしてここに…」

千歌「それは私のセリフだよー」

千歌「どうしてここに君がいるの?この竹から」

鞠莉「竹?」

鞠莉「!」

鞠莉(あれ…全然長くない…あの穴からここに繋がってたんじゃないの…?)

千歌「んー…まぁいっか!」

ギュッ

鞠莉「ふぇっ?!」

千歌「とりあえず家にきてよ!あなたのお家の竹切っちゃったし…」

鞠莉「う、うん…?」

~千歌家?

曜「あ、おかえり千歌ちゃん!」

千歌「ただいま!」

千歌「ほら、あなたもこっちにきてきて!」

曜「?」

鞠莉「ま、待って待って…」

鞠莉「って曜ちゃん?!」

曜「ん?確かに曜だけど何で知ってるの?」

鞠莉「知ってるも何も友達じゃない!ここっててどこなの?なんで曜ちゃんや千歌ちゃんはここにいるの?」

曜「ん?ん?ちょっと待って、私はあなたと初対面だよ?」

鞠莉「えっ……」

千歌「……あ、あなたのお名前はなんていうの?」

鞠莉「ま、鞠莉だけど…」

千歌「じゃあ鞠莉ちゃん!」

鞠莉「何?」

千歌「ほらっ…鞠莉ちゃんのお家の壊しちゃったし…とりあえずここに住んでよ!」

鞠莉「えぇ?!」

千歌「あはは…こんなおんぼろな家じゃいやだったかな…?」ズキズキッ

鞠莉「そ、そうじゃなくてね…」

鞠莉(みんなは…スクールアイドルをしてるみんなはどうしてるんだろう…)

曜「千歌ちゃんお家壊しちゃったの?」

千歌「うん…」

曜「じゃあ是非ここに住んでよ!」

曜「三食ちゃんとあるし不自由って感じることはあるかもだけど普通に暮らせるよ!私たち女だしそれなりに充実してるし!」

鞠莉「う、うん!じゃあ住まわせてもらうね!」

曜「うん!よろしくね!鞠莉ちゃん!」

鞠莉(とりあえず住まわせてもらおう…色々調べたいことあるし千歌ちゃんも曜ちゃんも優しいし生活に関しては解決かな…)

千歌「…にしても鞠莉ちゃんって綺麗っていうか美人さんだね」

曜「分かるよ!多分この辺じゃ一番綺麗なんじゃないかな?」

鞠莉「えぇ?!そ、そんなえへへ…」テレテレ

千歌「お姫様になれるんじゃない?」

鞠莉「お姫様?」

曜「うんうん!絶対になれるよ!」

鞠莉「も、もうそんな褒めないでって!」カアアア

千歌「ごめんごめん、ついね…」

千歌「あ、そういえば今日は満月だね」

曜「月が綺麗ですね」

千歌「死んでもいいよ」

鞠莉「えぇ?!ちょ、ちょっと!」

千歌「ふふっごめん、月が綺麗ですねって言われたらこう返すのが定番なんだよ」

鞠莉「そ、そうなんだ…」

千歌「あ、そうだ!鞠莉ちゃんは月のように輝いてて綺麗だから」


千歌「かぐや姫!鞠莉ちゃんは輝夜姫だよ!」


鞠莉「かぐや姫…!」

鞠莉(月に帰っていったっていうあの…)

曜「いいね!いやー我が家にもお姫様がやってきた!」

千歌「いよーっ!」パンパンッ

鞠莉「どこにも月要素ないような…」

千歌「細かいことはいいの!」

鞠莉「もう…適当ね…」

曜「あ、今日だっけ?ウサギがここに降り立つ日は」

千歌「うん、そうだよ」

鞠莉「…?どういうこと?」

曜「月にはウサギがいるんだよ、それで満月の日にウサギが地上と月を行き来するんだ」

鞠莉「ウサギ…」

鞠莉(あのときのウサギも…)

鞠莉「そ、そのウサギって穴とか掘ったりする?」

曜「いや聞いたことないよ、穴は掘らないと思う」

鞠莉「そ、そっか」

千歌「そろそろ寝よっか」

鞠莉「え?もう?」

千歌「もうって今12時だよ?午前の」

鞠莉「え?!もうそんな時間?!」

曜「じゃあ寝よっか!」

鞠莉「う、うん…」



鞠莉「あ、あの…」

千歌「ん?」

鞠莉「私…なんで二人の間で寝てるの…」

曜「だってふとんが二つしかなくて…床でただ寝かせるわけにもいかないでしょ?」

千歌「鞠莉ちゃんぎゅー!」

モギューッ

鞠莉「ひゃあ?!」

千歌「うぅ~ん!いい抱き心地!」スリスリ

曜「あ、ずる~いじゃあ私も!」

モギューッ

鞠莉「ちょ、曜ちゃんまで…」

千歌「こんな綺麗な人がいたら抱きつきたくなるよー」

曜「うんうん!今日はこのままでいさせて!」

鞠莉「もう…仕方ないわね…」

ナデナデ

曜「えへへ~…」

千歌「ずるい!私も!」

鞠莉「はいはい」ナデナデ

千歌「くぅ~ん」

鞠莉(こうしているとこの二人も可愛いわね…)

鞠莉(ってそうじゃない!明日から元の世界に帰る方法を探さないと!)

鞠莉(…ま、今日は寝ましょう、千歌ちゃんと曜ちゃんもいることだし)

鞠莉(おやすみ千歌ちゃん、曜ちゃん)

~次の日、昼

鞠莉「あ、そういえば今日は何するの?」

千歌「街へいくよ、お買い物!」

曜「そうだね、でも私は家でやることがあるから二人でいくことになるね」

鞠莉「街?」

千歌「うん!まぁちょっとまってて準備するから!」

鞠莉「わ、分かったわ」



千歌「お待たせ!」

千歌「じゃいこっか!」

曜「待って!お腹空いたらこれでも食べてね!」

曜「はいっ!」

鞠莉「…きびだんご?」

千歌「ありがとーっ!」

千歌「じゃあいってくるねー!」

曜「いってらっしゃーい!」

スタスタスタ

鞠莉「…すごいオシャレな服着てるのね」

千歌「今日は舞踏会だからね!」

鞠莉「舞踏会?」

千歌「お城でパーティーやるんだよ!」

鞠莉「わお!パーティーはいいわね!」

千歌「毎年王子様が誰かと踊るんだけど今年は誰だろうね」

鞠莉「毎年違うの?」

千歌「うん!といっても王子様が納得いかないから変えてくれって言ってるだけなんだけどね」

鞠莉「すごい贅沢なのね…」

千歌「でもすごい優しい人らしいよ、常識があって正義感が強いとか」

鞠莉「でも女を見る目はなさそう…」

千歌「それは私も同意かな…」

千歌「私たちもいけるんだよ、だから曜ちゃんも誘っていこっか!」

鞠莉「ええ!」

ザワザワザワ

鞠莉「ん?」

千歌「あ、もうすぐ街だね」

鞠莉「うわぁ……!」

鞠莉(すっごい広そう…しかもMarchen…!)

鞠莉「私たちが住んでる場所とは真反対…)

鞠莉「あのお城…」

千歌「あのお城が舞踏会の会場だよ」

鞠莉「すごい…ディ〇ニーランドのあのお城みたい…」

千歌「?」

鞠莉「あ、どこにいくんだっけ」

千歌「えっとね」

「待てー!」

「ずらー!!!」

鞠莉「あれは…花丸ちゃん?」

千歌「知り合い?」

鞠莉「いや…知り合いだけど千歌ちゃんと曜ちゃんを見るに知り合いじゃないっていうか…」

千歌「ん?」

鞠莉「って、とにかく早く助けないと!」

千歌「分かった!」

千歌「君!」

鞠莉「花丸ちゃん!」

花丸「!」

鞠莉「こっち!」フリフリ

タッタッタッ

「待てー!」

鞠莉「この角を曲がって…よしこの樽に隠れましょう」

千歌「分かった!」

鞠莉「花丸ちゃんも!」

花丸「う、うん!」

ササッ

鞠莉「………」

花丸「………」

シーン…

鞠莉「行ったかな?」

千歌「………」キョロキョロ

千歌「いないよ!」

鞠莉「ほっ……」

花丸「あ、ありがとうずら…」

鞠莉「いいのいいの」

鞠莉「というかどうしてあんなガラの悪い連中に追われたの?」

花丸「っ!そ、それは……」

鞠莉「…?」

花丸「マルの魔法の…ランプ……狙われてて…」

千歌「魔法のランプ?」

鞠莉「魔法のランプ…」

鞠莉(昔絵本で読んだことある…)

鞠莉(ランプをこすると魔人が出てきて何でも願いを叶えてくれる…だったっけ…)

鞠莉(…まぁどうせ偽物でしょうけど)

花丸「このランプはなんでも願いを叶えてくれるずら…」

千歌「えぇ!?すごいねそれ!」

千歌「…あ、でも奪ったりはしないよ」ニコッ

鞠莉「ええそうね!花丸ちゃんのだもの!」

千歌「あの人たちに見つからないうちに帰りなよ?私たちもういくから」

花丸「あ、ありがとうずら!」

花丸「絶対にお礼はするずらー!」

タッタッタッ

千歌「ふういこっか」

鞠莉「ええ」



スタスタスタ

千歌「鞠莉ちゃんこれもって!」

鞠莉「はいはーい」

鞠莉「大量に買ったね…」

千歌「あんまりこの街にはいかないからねー」

鞠莉「そうなんだ…」

ドンッ

「いたっ…」

鞠莉「す、すいません!」

「穢らわしい体で私に近付かないで」

鞠莉「え?」

「ぶつかったことはいいからもう私に近付かないで、それじゃ」

スタスタスタ

鞠莉「梨子ちゃん…」

梨子「っ!?」

梨子「なんで私の名前を知ってるの?私は誰にも名前を教えた覚えはないんだけど…」

千歌「知り合い?」

鞠莉「知り合い…だけど今は違うというか…」

千歌「?」

梨子「名前を知ってる以上…」ジロッ

鞠莉「?」


梨子「責任とってもらうわよ?」


鞠莉「は?」

千歌「…!そっか!あなたはユニコーンだから…!」

鞠莉「Unicorn?」

千歌「ユニコーンは人前には滅多に姿を現さない珍しい生き物なんだよ?」

千歌「角が生えてて、翼があって…でもそれ以外は私たち人間と何も変わりがない生き物なんだ」

梨子「ちょっと、その下劣な生き物と同等なみたいな扱いはやめて、私は清楚で純白、綺麗なモノしか認めない誇り高きユニコーンなんだから」

鞠莉「そ、そうなの…」

鞠莉(すごい…なんというかこの梨子ちゃん怖いわね…)

「こんなところで会えるなんてこれも運命かしら…」

梨子「げっ…お前は…」

鞠莉「善子ちゃん…?」

善子「そう…私は善子…じゃなくてヨハネよ!!!」

善子「まさかユニコーンと会えるなんてね、悪魔族と天使族もやはり戦うべき運命なのね…」

鞠莉「悪魔族?天使族?」

千歌「悪魔族は翼が黒い生き物のこと、逆に天使族は翼が白い生き物だよ」

千歌「この二つの種族は長い年月対立してて今も雲の上で戦をしてるんだって」

鞠莉「へ、へぇ~…」

鞠莉(なんかよく言われてる天使と悪魔みたい…)

梨子「こんなめんどくさい人がいるなら帰るわ、さようなら」

スタスタスタ

善子「はぁ?!めんどくさいって何よ!」

善子「待てー!その角引っこ抜いてやるわ!」ダッ

梨子「こ、来ないで穢れるわ!」

善子「むしろあんたは一回穢れた方がいいのよ!」

梨子「きゃー!!!」

善子「待てー!」

タッタッタッ

鞠莉「…楽しそうね、あの二人」

千歌「まぁ天使も悪魔も面白い人はいるからねー」

千歌「じゃあいこっか」

鞠莉「ええ」

鞠莉「ってそういえばなんで梨子ちゃんは私に責任とってとかいってたの?」

千歌「あ、そうだったね」

千歌「ユニコーンは名前を隠すのが基本なんだよ、名前を教えるってことはあなたが好きですって結婚してくださいとか付き合ってくださいとかそういう意味を持つんだって」

鞠莉「なるほど…だからか…」

千歌「まぁ行っちゃったし気にしなくていいと思うよ」

鞠莉「え、ええ…」

スタスタスタ

鞠莉(そういえば今日は舞踏会なんだっけ…ここって天使とか悪魔とかもいるみたいだし変な化け物とかいないよね…?)

~夜、街

鞠莉「うわぁ…すごい…何そのドレス…」

千歌「えへへ曜ちゃんの手作りなんだよ?」

鞠莉「すごいわね!」

曜「ご、ごめんね…至急で鞠莉ちゃんのドレス作ってたんだけど間に合わなかった…」

鞠莉「いいっていいって、この制服で出るわ!」

千歌「せいふく?」

鞠莉「あら?ここにはないの?」

曜「聞いたことないね、でもすっごく可愛い!」

「ちょっと待つずらー!」

鞠莉「あ、花丸ちゃん…?!」

曜「そ、空飛んでる!」

千歌「すごーい!空飛ぶじゅうたんだ!」

鞠莉「花丸ちゃん…どうしてここに?」

花丸「あなたにお礼をしに来たずら!」

曜「お礼?」

千歌「私たちで助けたんだよ!」

鞠莉「別に大丈夫よ?」

花丸「ううん!させてほしいずら!」

花丸「お願い魔人さん!このお方にドレスをあげてください!」

「了解やん!」

鞠莉「?!」

「ウチはなんでも願いを叶える魔人さんや!このお方というのはキミやね?」

鞠莉「え…あ、はい!」

鞠莉(うそ…まさか本物だったの…?!)

「ふーむ…ドレスなぁ…キミはかぐや姫という二つ名的なのを持ってるね?」

鞠莉「え…まぁはい…非公認に近いですけど…」

「じゃあ君にはこのドレスを授けよう!」

「ふーむむむ…はっ!」

キラキラキラ

鞠莉「わぁ…」

花丸「ずらぁ…」

曜「すごいすごい!何そのドレス!」

鞠莉「こ、これ…」

鞠莉(…ドレス?)

鞠莉「…これ浴衣じゃない?」

「んー?ナンノコトカナー」

「それじゃあウチは退散!後頑張ってね!」

鞠莉「あ、ちょっと!」

千歌「綺麗だね!すごい!初めて見るドレス!」

鞠莉「あ、あの…これはドレスじゃなくて…」

花丸「すごい…新しいずら…未来ずら!」

鞠莉「oh…」



ザワザワザワ

千歌「すごい見られてるね、私たち」

曜「主な原因は鞠莉ちゃんだけどね」

鞠莉「舞踏会の会場ってこ、こんなに広いんだね…」

千歌「お城だからねー」

曜「鞠莉ちゃんはこういうところ来るの初めてなの?」

鞠莉「初めても何もこんなところ私の近くには…」

鞠莉「…あ、ごめんねちょっとトイレ行ってくるわね」

千歌「いってらっしゃい!」

スタスタスタ

鞠莉「………」

鞠莉(広いわね…絵本や映画でしか見たことないような場所…迷ったりしたら一生帰れなさそう…)

「そこの君!」

鞠莉「!」

鞠莉「は、はい…っ?!」

鞠莉「果南…?!」

果南「ん?いかにも僕だけど?」

鞠莉「僕…?!果南は女でしょ?」

果南「!!」

果南「君、どうして僕が女だってことを知ってる?」

鞠莉「は?」

鞠莉「…!」

鞠莉(私はかぐや姫…曜ちゃんと千歌ちゃんはそのかぐや姫を見つけた老婦人…花丸ちゃんの魔法のランプと魔法のじゅうたん…アラジンと魔法のランプね…)

鞠莉(梨子ちゃんと善子ちゃんは天使と悪魔…なのかしら…?)

鞠莉(もしかしてこの果南も何かの物語の人…?)

果南「…なんで黙ってるんだい?」

鞠莉(でも一国の王女を男として育てた物語なんてあったかしら…)

鞠莉(うーん…うーん…)

鞠莉(そもそも童話とかそういうのあんま知らないからあったとしても絶対に分からないわね…)

果南「君!」

鞠莉「は、はい!」

果南「僕の正体がばれてることはちょっと気がかりだけど…」

果南「えっと…その……」

鞠莉「…?」

果南「今夜、一緒に踊ってくれないか?」

鞠莉「…よろこんで」

ギュッ



千歌「あ、鞠莉ちゃん帰ってきた!」

曜「一緒にいるのは…王子様?!」

千歌「おほー!やっぱり今年は鞠莉ちゃんかー!」

曜「まぁこの街で一番綺麗っていっても過言じゃないからねー」

千歌「かぐや姫ー!」

鞠莉「!」

鞠莉「もう…千歌ちゃんったら…」

果南「どこかのお姫様なのかい?」

鞠莉「ううん、二人が勝手につけただけ」

果南「そうなのか、でも姫って呼ばれても案外違和感はないかもね」

鞠莉「え…」

果南「ほら?ここの人たち全員姫で納得してるよ?」

「ハラショー!お姫様なのね!」

「納得にゃー」

鞠莉「…!」パアアア

果南「では、お手を取りに」

鞠莉「…うん!」

鞠莉(何気果南の手を取ってみたけど…)


鞠莉(どうやって踊るの?!)


鞠莉(ああ…こんな公で恥かくの…?)

鞠莉(ううぅ…助けてかなあん…)

果南「そろそろ音楽が始まるよ、僕がリードするから任せて」

鞠莉「う、うん…」

~~♪~~~~♪

鞠莉「…あれ?」

果南「ん?どうしたんだい?」

鞠莉「この音楽…Guilty Night Guilty Kiss…?」

果南「なにそれ?」

~~~~♪~~~♪

鞠莉「…やっぱりそうよ」

鞠莉(雰囲気と全然あってないし…)

果南「おっとそろそろ始まるよ」

果南「もう一度言うけどリードは任せて」ボソッ

鞠莉「え、ええ…」

~~~♪~~~♪

鞠莉(振り付けが似てる…ワルツみたいにアレンジされてるのね…)

鞠莉(案外私たちの世界と通ずるところがあるのかしら…)

果南「………」ニコッ

鞠莉「…!」ドキッフルフル

鞠莉(なんで果南は男として育てられてるんだろう…)

果南「君上手いね、何かダンスとかやってるのかい?」

鞠莉「アイドルをやってるのよ」

果南「アイドル?なんだいそれは?」

鞠莉「え?」

鞠莉(そっか、この世界にはないのね…)

鞠莉「私たちの住んでるところの伝統行事みたいなものよ」

果南「そっか、どうりでうまいわけだよ」

果南「ふふふ」

鞠莉「ふふっ…」

鞠莉(いい雰囲気なのは良いとして選曲がもう事故レベルね…)

鞠莉「………」チラッ

千歌「!」

千歌「とっても綺麗だよー!」フリフリ

曜「ち、千歌ちゃん声大きすぎだよ!」アセアセ

果南「ふふっ元気だね、あの二人」

鞠莉「え、ええ…」

~~~♪~~~……♪

鞠莉「終わった…」

鞠莉「ほっ…」

果南「緊張してたの?」

鞠莉「ま、まぁね…」

果南「そっか、じゃあちょっと休もうか」

鞠莉「うん!」

スタスタスタ

果南「あ、そういえば君の名前、名前はなんていうの?」

鞠莉「名前?名前は…」

ピョンピョン

鞠莉「!」

果南「どうかした?」

鞠莉(あのうさぎは…)

鞠莉『ってあれはBunny?なんでこんなところにウサギが…』

鞠莉(あの時の…!)

鞠莉「ごめんなさい!また今度!」ダッ

果南「あ、ちょっと!」

千歌「えぇ!?どこいくの鞠莉ちゃーん!」ダッ

曜「ま、待ってー!」ダッ

ポロッ

鞠莉「あ!靴が…!」

ピョンピョン

鞠莉「っ…!そんな靴なんかに気を取られてる場合じゃないわ!」

ゴーンゴーン

千歌「あ、もう十二時だ」

曜「そうだねー」

千歌「って呑気に12時の鐘をきいてる場合じゃないよ!」

曜「そうだよ千歌ちゃん!何してるのさ!」



鞠莉「待ってー!」

ピョンピョン

鞠莉「あなたなんでしょー?!部室に穴あけてここまで私をつれていったのは!」

ピョーン!

鞠莉「えぇ?!あのウサギ…」

鞠莉(空飛べるの…?!)

鞠莉「!」

曜『月にはウサギがいるんだよ、それで満月の日にウサギが地上と月を行き来するんだ』

鞠莉「まさかあのウサギは…」

鞠莉「どうしよう…!!!」

鞠莉(これじゃああのウサギを追えない…)

「ほらっ!私の手を握って!」

鞠莉「!」

梨子「穢らわしい人間の手を触るのは御免だけどあなたは別!」

梨子「その代わりちゃんと責任とってもらうから!」

鞠莉「あ、ありがとう梨子ちゃん!」

ギュッ

梨子「あのウサギを追えばいいのよね?」

鞠莉「ええ!」

フワァ

鞠莉「空…飛んでる…!」

梨子「翼があるんだから当然よ、スピード上げていくからちゃんと私の手握っててよ!」

シュンッ

鞠莉「はっや!」

梨子「もうすぐ追いつくわ!」

梨子「あのウサギを捕まえる準備だけしといて!あなたをぶん投げてやるわ!」

鞠莉「は?ちょ、ちょっとまっ」

梨子「いくわよ!せーのっ!」

鞠莉「ちょちょま」

ブンッ!

鞠莉「OMGOOOOOOOOO!!!!!」

鞠莉「も、もういいわ!こうならやけよ!」

鞠莉(あのウサギを絶対に捕まえてやるわ!」

鞠莉「届けー!!!」

ギュッ

鞠莉(届いた!)

鞠莉「よしっ!絶対にあなたを離さないから!」

梨子「キャッチしたー?」

鞠莉「したわよー!」

梨子「待っててー!今いくからー!」

シュンッ

鞠莉「速い…」

ギュッ

梨子「よし、絶対に手を離さないでよ?落ちるから」

鞠莉「え、ええ…」

「もー…人使い荒いわこのユニコーン…ん?人じゃなくて悪魔使いかしら?」

鞠莉「!」

鞠莉「善子ちゃん!」

善子「後から来る二人を連れてけってあんたらが空遠く宇宙まで行くから中々追いつかないじゃない!」

鞠莉「後から来る二人?」

千歌「やっほー♪」

曜「すごい!宇宙だよ!」

千歌「!」ピクッ

千歌「奇跡だよ!」

善子「はぁ…それでどうするのここで」

梨子「そのウサギが何かあるの?」

鞠莉「何かあるはずなんだけど…その何かが分からなくて…」

ウサギ「………」

鞠莉「ねえウサギって喋ったりしないの?」

千歌「え?しないと思うよ?」

千歌「そこのユニコーンさんみたいに獣人とかなら喋れるだろうけど」

梨子「そのウサギが何かしたの?」

鞠莉「…私をここに連れてきたのがこのウサギなの」

善子「ここ?」

千歌「あー!鞠莉ちゃんは竹からやってきたんだもんね!」

梨子「竹?」

千歌「大きくて光る竹を切ったらなんと!鞠莉ちゃんがいてお持ち帰りしたんだー」

曜「そ、そうだったんだ…それは私も初耳…」

鞠莉「元々穴に落ちて落ちた先があの竹の中で…」

千歌「え?でもあの竹はそんな空高い場所になかったし上に地面なんてないから入れないよ?」

鞠莉「そう、そこが疑問なのよ」

鞠莉「どうやってあの竹の中に繋がったのかなって…」

梨子「そういうこと」

善子「首輪がついてるわね、赤い宝石も一緒に」

千歌「綺麗だね!」

善子「これは…ルビーね」

曜「ルビー?」

善子「レリックよ、昔は盛んに流通してた宝石のこと、今じゃとっても貴重なのよ?」

千歌「へえー」

ウサギ「………」グー…

曜「お腹空いてるのかな?」

梨子「でも生憎食べ物なんてもってきてないわよ」

鞠莉「あ、食べ物ならあるわよ!」

鞠莉「これ!」

千歌「あ、曜ちゃん特製きびだんごだ!」

曜「おお!これがそんな時に役に立つなんて!」

鞠莉「はい、どうぞ」

ウサギ「………」モグモグ

善子「…やけにおいしそうに食べるわね」

鞠莉「あなたも食べる?」

善子「…いただくわ」

ウサギ「………」ケプッ

曜「すごい満足そうだね」

千歌「そうだね~」

ウサギ「そ、そなたたちの目的は分かった」

鞠莉「うわっ?!喋った?!」

ピカーン!

千歌「眩しい…」

善子「ちょっ…悪魔の前で光はやめて…」ジュー…

鞠莉「んんー…やっと前が見えるようになってきた…」

「そなたの悩みを解決しよう!」

鞠莉「わぁ…ってルビィちゃん?」

ルビィ「ぴぎぃ?!なんで私の名前を…」

ルビィ「ってそんなことではなくてそこの黄色い髪のそなたは元の世界に帰りたいのじゃな?」

鞠莉「え、ええ…」

鞠莉(じゃなって…しかもそなたとかキャラが濃いわね…)

千歌「わぁ!ウサギが人に変身したよ!」

ルビィ「私はウサギの獣人、ウサギになれるのは当然です!」

千歌「へえー」

ルビィ「とりあえず地上に降りませんか?ここじゃ何の解決にもならないので」

鞠莉「え、ええ…」



梨子「元の世界に帰るって…」

梨子「私との責任を果たしてよ?」

曜「ま、まぁユニコーンさん…」

ルビィ「そなたが元の世界に帰るにはこの首輪を使えば解決」

鞠莉「じゃあ早速お願い!」

ルビィ「もちろ」

ポイッ

ポチャ

善子「あっ……」

ルビィ「あっ…」

梨子「首輪を指でクルクル回してるからそうなるんだよ?」

鞠莉「と、とにかくあの首輪を取らないと!」

ピカーン

善子「?!」

善子「湖が光ってるわよ?!」

曜「ほ、ほんとだ…」

「あなたが落としたのはこの…」

「銀の首輪ですか?」

「それとも…」

「金の首輪ですか?」

千歌「お、女の人が出てきたー!!?!」

梨子「女神…?」

鞠莉「ダイヤ…」

ダイヤ「おや?わたくしのご存じとは私の名前をそこまで知れ渡ってるのかしら」フフッ

ダイヤ「とにかくあなたが落としたのはどちらの首輪ですか?」

善子「金のくび」

ダイヤ「ブッブーですわ!」

善子「?!」ピクッ

ダイヤ「あなたには聞いてませんの、わたくしが聞いてるのはそこの黄色い髪のお方ですの」

千歌「鞠莉ちゃん…」

ルビィ「どうしますか…?」ウルウル

鞠莉「………」

鞠莉(これは金の斧と銀の斧よね…)

鞠莉(なら答えは簡単…!)

鞠莉「いいえ、私はどちらの首輪でもありません」

鞠莉「落としたのは赤い宝石がついた茶色の首輪です」

ダイヤ「ふふふ、あなたは正直ですね」

ダイヤ「正直なあなたにはこの金の首輪と銀の首輪を差し上げます」

千歌「おおー!!」

ルビィ「えっ……」

鞠莉「…え、ちょっと待って元の首輪は?」

ダイヤ「では私はこれにてさよならですわ」

鞠莉「ちょ、まっ…」

善子「…行っちゃったわね」

ルビィ「あの…大変言いにくいんですけどあの首輪じゃないと戻れません…」

鞠莉「…まぁそうよね」

梨子「…私が取ってこようか?」

鞠莉「ううん、ちょっと待ってて」

スタスタスタ

曜「?」

千歌「湖覗いて何かあるの?」

鞠莉「まぁいろい…?!」

善子「…?どうかした?」

善子「ってうわぁ?!なにこれ?!」

千歌「わぁ…!すごい!湖の中に穴がある!しかもどこかと繋がってるのかな?」

鞠莉「あの先……」

鞠莉(部室だ…部室の天井が見える…)

鞠莉(この距離ならすぐにいける…)

鞠莉「……みんな」

千歌「ん?どうしたの?」

曜「なになに?」

梨子「………」

善子「………」

ルビィ「………」

鞠莉「私、旅に出る」

鞠莉「でも絶対に帰ってくるよ」

鞠莉「千歌ちゃんようちゃ…」

鞠莉「ううん、お父さんお母さん」

鞠莉「一日しか住めなかったけどまた来る、いつか絶対に来るよ」

千歌「……そっか、帰っちゃうんだ」

鞠莉「ごめんね…」

千歌「ううん!いいよ!」

曜「覚悟はしてたけど…辛いね…」ポロッ

千歌「…じゃあこれ持っていって」

鞠莉「これは…」

千歌「三つ葉の髪飾り、寂しくなったらこれを見て私たちを思い出して?」

曜「うぅ…!ほんとに行っちゃうの…?」

鞠莉「…ごめん」

曜「……絶対に帰ってきてよ?」

鞠莉「もちろん!」

鞠莉「梨子ちゃんも!」

梨子「!」

鞠莉「責任、果たしにまた来るからね」

梨子「え、ええ!待ってるからね!」

鞠莉「ルビィちゃんも善子ちゃんもここまでありがとう」

ルビィ「私は特に何も…」

善子「そうよ!このヨハネに感謝しなさい!」

鞠莉「……それじゃあ!」

千歌「待ってるからね」

曜「帰ってきたらおいしいものいっぱい食べようね!」

梨子「責任を果たすなら期限は無限だからゆっくりでいいからね」

善子「まぁ色々あったけどあんたといた時間は楽しかったわ、また会いましょう」

ルビィ「またこの世界へあなたを誘います、その時にまた!」

鞠莉「………」ポロポロッ

鞠莉「そ、それじゃあね!」ニコッ

ザブーン!



鞠莉「ん……ここは…?」

鞠莉「…家?」

鞠莉「そっか…」

鞠莉「長い夢だったわね…」

ギュッ

鞠莉「!」

鞠莉「この髪飾り…!」

鞠莉「…ふふっやっぱり夢じゃなかったんだ」

千歌「しかもまだ続きがあるんだよ?」

千歌「そのあとかぐや姫はユニコーンと月に向かったんだって」

曜「ユニコーンと?」

千歌「そう!かぐや姫にシンデレラ、そしてユニコーンまで出てきちゃった!」

千歌「…でもそこで古文が切れちゃってるんだ、肝心の続きは謎のままでさ」

果南「へぇーそんな夢みたいな話があるんだね」

千歌「この古文書いたのって一国の王子様らしいんだけど恋してたっぽいね~」

ダイヤ「すごい話ですわね…」

鞠莉「…ふふっそっか」

ダイヤ「どうしました鞠莉さん?とても機嫌が良さそうですが」

鞠莉「ううん!なんでもない!」

千歌「あ、その髪飾り!」

鞠莉「あ、気付いた?」

千歌「私とお揃いだー!」

梨子「えっ…」

果南「千歌と何かあったの?」

鞠莉「ううん、大切な人に貰ったの」

千歌「大切な人に?どんな人?」

鞠莉「それは秘密♪」

鞠莉(みんな、待っててね)


鞠莉(また、会いましょうね!)


『待ってるからね』

鞠莉(…うん!)

END

~~~

理事長「何も一つ一つ全てが別の世界で行われてるわけではありません」

理事長「三銃士が三つの家を作ったってオーロラ姫が狼に食べられたって浦島太郎が鬼を倒したってそれはおかしくありません」

理事長「世界は一つ、これ当たり前のことです」

理事長「おや、こんなところにみずうみっ?!」

ザブーン!

「あなたが落としたのはこの…」

「金の理事長ですか?」

「それとも…」

「銀の理事長ですか?」

??「いいえ♪どちらでもありません♪」

「あなたは正直ですね、ではこの両方の理事長を差し上げます」

理事長(銀)「童話と言うのは案外…」

理事長(金)「身近なところにあるのかもしれません」

四つ目終わりです
静岡にはかぐや姫は最後月じゃなくて富士山に向かって帝はそれを追って探して、で話が長くなるので省きますが最終的に富士山にある湖にかぐや姫と一緒に沈んでいったという後日談のようなものがあるんですよ
だからこれにいれて見ました
後梨子の設定ですがルビィのストーリーのやつを流用しました、ルビィの方を後に書いたんでこっちが元ですけど…
では五つ目の時もよろしくお願いします

~~~~~

理事長「あなたにとって代償とは何が一番辛いですか?」

理事長「そうですね…世界を救う代わりとしてあなたに代償を与えたとします」

理事長「その時貰う代償は何が一番辛いでしょう?」

理事長「記憶が消えてしまう?体のどこかの部分が機能しなくなる?好きなものが食べられなくなる?」

理事長「それとも死、でしょうか?」

理事長「違いますね、死なんて一瞬です」

理事長「私の考えだともっともっと辛い代償、あると思います」

理事長「こんな代償が…」

~~~

善子「んー…疲れたぁ…」

梨子「よっちゃんお疲れ様」

千歌「今日の練習はこれで終わり?」

果南「そうだね、続きはまた明日」

ダイヤ「体調管理はしっかりするように」

曜「お疲れ様!」

善子「お疲れ様、じゃあ私は用事があるから先に帰るわね!」

花丸「お疲れ様ずら」

ルビィ「お疲れ様です!」



スタスタスタ

善子「さて今日の配信の予定は…」

ポトッ

善子「ん?」

善子「なにこれ…宝石…?」

善子「…!」

善子「もしかしてこれは天からの贈り物…!」

善子「この宝石…中に何か入ってる…?」

善子「白い金平糖…?」

善子「まぁ空から降ってきたんだしとりあえず持ち帰ってみましょうか」

スタスタスタ…



【死ぬことより辛いこと】

~家

善子「それにしても不思議な宝石…」

善子「中に何か入ってるってことは人工物なのかしら…」

善子「………」ツンツン

パーン!

善子「わぁ?!」

善子「弾けた……」

善子「………」

善子「と、とりあえず欠片を集めましょうか…」

「ピィー!」

善子「?!」

(・8・)「あの宝石を壊したのはお前か?」

善子「え…あっ…は、はい…」

(・8・)「正直でよろしい」

(・8・)「でも正直に吐いたところで罰は受けてもらうちゅん」

善子「ば、罰?!」

(・8・)「お前が今壊したのはこの世界のバランスを保つ為の宝石ちゅん、中に白い金平糖みたいなのが入ってたちゅんな?」

善子「う、うん…」

(・8・)「その白い金平糖みたいなのと回りのオレンジ色の宝石がないと世界はこれからいろいろとおかしなことが起こるちゅん、原因不明の事故や爆発、あるところでは重力がおかしくなったり気温が急激に上がったり下がったりと様々な影響をもたらすちゅん」

善子「そ、そんな!じゃあどうすればいいの?!」

(・8・)「あの白い金平糖的なのは壊れてないからいいとしても宝石部分はもうばらばらになってるから何もなしに復元は不可能ちゅんな、でもお前の精気があれば復元可能ちゅん」

善子「精気?」

(・8・)「あの宝石を復活させるかわりにお前の精気がほぼ無くなる、これが復元の条件ちゅん」

善子「ちょ、ちょっとまって精気って」

(・8・)「ちなみに言えばここでもしあの宝石を復元させなかった場合はそのうちここの地域も滅びるちゅんよ、世界が滅びるのも時間の問題ちゅん」

善子「!」

(・8・)「お前のせいで世界が崩壊するちゅんなぁ、それなのに知らんぷりなんて酷いやつちゅんなぁ」

(・8・)「それにもし復元するなら世界を救ったことになるちゅんよ、英雄ちゅんよ」

善子「ふんっいいわよ!その私の精気ってやつあげるわ!だから世界を救って!」

(・8・)「よろしいちゅん、じゃあ目を瞑るちゅん」

善子「う、うん…」パチッ

(・8・)「目をあけていいって言ったらあけるちゅん、開けたら全てが元通りちゅん」

(・8・)「ただしお前の精気はほとんどないということ自覚するちゅん」

善子「その精気って」

(・8・)「はい、目をあけていいちゅんよ」

善子「う、うん…」

善子「…あれ?あの鳥は…」

(・8・)「これで世界は平和になったちゅん」

善子「ちょ、どこにいるの?!」

(・8・)「後ろちゅん」

善子「いつの間に…」

(・8・)「少しの間はこのトッリがいてあげるちゅんから安心して過ごせばいいちゅん」

善子「そ、そう…」

善子「それにしても精気って何なの?」

(・8・)「いずれ分かることちゅん、今はその時は待つちゅんな」

善子「そ、そう…」

(・8・)「それより…」

善子「?」

(・8・)「何かやることあるちゅんなぁ?」

善子「あ、配信ね!」

善子「配信の準備をっと…」



〈【初見歓迎】堕天使ヨハネによる漆黒のラジオ〉

善子「堕天使ヨハネの配信にようこそ」

善子「気軽にコメントしてね」

「誰?」

善子「誰って堕天使ヨハネよ!」

「あ、ごめんなんか一瞬誰だかわからなかったわ」

善子「は?なによそれ!」

「あ、それ俺もだわ」

「俺も」

「ヨハネいつ呪文覚えたんだ?」

「黒魔術かな??」

善子「はぁ?私何もしてないんだけど…」

善子「あ、そういえば…」

『ただしお前の精気はほとんどないということ自覚するちゅん』

善子「……いやなんでもない」チラッ

(・8・)「………」

善子(この鳥のコメントがないわね…みんなには見えてないのかしら…)

(・8・)「トッリはお前以外には見えない存在ちゅん、トッリのことは気にせず配信すればいいちゅん」

善子「え、ええ…」

「誰と話してるんだ?」

~次の日

善子「おはよう!」

花丸「……?」

善子「ずら丸?」

花丸「あ、善子ちゃんかおはようずら」

善子「善子ちゃんかって…というか私はヨハネ!」

花丸「はいはい」

善子「むきー!その反応やめなさいって!」

(・8・)「そのヨハネとかいうキャラ正直見てて痛々しいちゅん、黒歴史にならないうちにやめることをオススメするちゅん」

善子「うるさいわねぇ!」

花丸「?!」ピクッ

善子「あ、ごめんなさい…ちょっと悪口が聞こえた気がしたから」

花丸「う、うん…?」

花丸(善子ちゃん怒らせちゃったのかな…?)

花丸(…善子?)

ルビィ「二人ともおはよう!」

善子「おはよう」

花丸「おはようずら」

ルビィ「今日寒いね…とてもじゃないけど半袖でなんかいられないや…」

善子「そりゃもう冬だからね」

花丸「こたつの時期ずら」

(・8・)「急に寒くなってるけど別にあの宝石のせいじゃないから安心するちゅん」

ヒュー…

善子「ひぃ~!さむさむさむっ…」ブルブル

花丸「くしゅん!」

ルビィ「は、早く教室いこう!」

善子「え、ええ!」

タッタッタッ

フワァ…

善子「っ?!」

ピタッ

善子「…あれ?」

花丸「善子ちゃんどうしたの?」

善子「いや…」

善子「体が浮いたような感じがあったんだけど…」

花丸「気のせいじゃない?マルは別に何も無かったよ?」

ルビィ「私も…」

善子「ま、まぁそうよね」

ヒュー!

花丸「さ、寒い…」ブルブル

ルビィ「も、もう早くいこうよ!」

善子「え、ええ止めて悪かったわいきましょう」

善子(確かに浮いた感覚がしたんだけど…)

タッタッタッ

善子「………」

善子「…!」

善子(やっぱり浮いてる…)

善子(でも私今ちゃんと走ってる…)

善子(足は地面についてるし何なのこの感覚…)

ピタッ

善子「ごめん、先にいってて後でいくわ」

ルビィ「う、うん!」

花丸「分かったずら」

タッタッタッ

善子「ねぇあんた」

(・8・)「なにちゅん」

善子「この浮いたような感覚ってそのせいきとかいうのと関係してるの?」

(・8・)「知らないちゅん」

善子「あんたは何しに私の近くにいるわけ?」

(・8・)「観察ちゅん、それに次第に説明も必要な状況になるのは確定だからいるちゅん」

善子「なにそれ…」

善子「…というかよくよく考えれば言葉しゃべれる鳥なんてどこのファンタジーよって思うし私以外見えない存在ってあんた何者なの?」

(・8・)「トッリはトッリちゅん、それ以外何者でもないちゅん」

善子「はぁ?」

(・8・)「………」

(^8^)「………」

善子「何笑ってんのよ」

(・8・)「そろそろ行かないと不幸なことが起こるちゅんよ」

善子「あ?」

(・8・)「いいからいくちゅん」

善子「……はぁ、なんなのよこいつ」

スタスタスタ

善子(説明が必要な状況になるってどんな状況よ…)

~教室

花丸「あ、善子ちゃん遅かったね」

善子「ごめん、落とし物が風に流されちゃったのよ」

花丸「そっか」

ルビィ「………」ジーッ

花丸「ルビィちゃんとどうしたの?マルたちに何かついてる?」

善子「どうしたの?」

ルビィ「ピギッ?!」ビクッ

善子「ルビィ…?」

ルビィ「…あ、善子ちゃんだ」

善子「は?」

ルビィ「なんか善子ちゃんが一瞬誰だか分からなくなって…」

善子「…ひょっとして喧嘩売ってるの?」

ルビィ「ち、違うよ!ホントに…ホントに名前も出てこなくて…」

善子「…!」

善子(昨日の配信でもそんなこと視聴者がいってたわね…)

花丸「ルビィちゃん大丈夫?具合でも悪いの?」

ルビィ「い、いや具合は悪くないけどでもなんでだろう…」

善子「もういいわ、気にしてない」

ルビィ「ご、ごめんね…」

善子「だからいいって」

善子「………」チラッ

(・8・)「ちゅんちゅん」

(・8・)「時は金なりちゅんよ」

善子「…?」

善子(私ってそんな別人って思われるほど顔変わってるのかしら…)

善子(いや違う、名前も出てこないってどういうこと…?)

(・8・)「この世は諸行無常だちゅん」

(・8・)「考えるより実感しなきゃ分からないこと、たくさんあると思うちゅんよ」

善子「…それ私にいってるの?」

花丸「え?」

善子「あ、ごめんなんでもない」

(・8・)「いずれわかるちゅん」

善子(またそれ…)

善子「考えるより実感しなきゃ分からないこと…?」

ルビィ「…?」

花丸(善子ちゃん独り言多いずら…)

~部室

曜「こんにちは!花丸ちゃんにルビィちゃんに……」

善子「?」

曜「…誰?」

千歌「何言ってるのさ!善子ちゃんじゃん!」

曜「…あ、そうだ!あれ…?なんで私誰なんて言ったんだろう…」

梨子「大丈夫?具合でも悪いの?」

曜「いや…そういうわけじゃないと思うんだけど…」

善子(さっきと同じ展開…何なのこれ…)

花丸(さっきのルビィちゃんと全く同じこと言ってる…)

ルビィ(さっきの私だ…どういうことだろう…)

千歌(三人とも同じ顔してる…?)

曜「ほんとになんで善子ちゃんのこと分からなかったんだろう…」

千歌「もー私やAqoursのみんなこと忘れないでよー?」

曜「忘れるわけないよ!」

ダイヤ「皆さんもう集まってますわね」

鞠莉「今日も練習練習!」

果南「あれ?その子新入り?」

千歌「え?」

善子「…え?私?」

果南「うん、あなたしかいないよ」

鞠莉「何言ってるの果南?善子は私たちより先にいたAqoursのメンバーよ?」

果南「え?」

鞠莉「え?」

梨子「果南さんまで…」

ダイヤ「果南さんまで、というのは?」

千歌「曜ちゃんまで善子ちゃんのこと忘れてたんだよー?今は思い出してるけど」

ルビィ「私も実は今日の朝善子ちゃんが誰だかわからなくて…」

鞠莉「Mysteryね…」

善子「一応聞くけど私をからかってるわけじゃないわよね?」

千歌「違う違う…よね?」

曜「違うよ!」

ルビィ「私も!」

果南「え?え?私まったくあなたのこと覚えてないんだけど…」

善子「………」チラッ

(・8・)「考えなくても待てばイヤでもわかるちゅん」

(・8・)「真実はいつも一つちゅん」

(・8・)「つまり答えは一つしかないちゅん」

善子(なにいってるのよこの鳥は…)

鞠莉「果南!善子よ?!善子!!」

果南「善子…?」

果南「…ごめん全く分からない」

鞠莉「はぁ?」

ダイヤ「果南さんはからかうとかそういうことはしますがあそこまでするとは思えません…」

千歌「うん、果南ちゃんは真面目だもん」

花丸「ということはあれは素ってことずら?」

ダイヤ「多分…」

梨子「それって大丈夫なの…?」

曜「私の予想だと大丈夫!」


曜「…じゃないよね」


ダイヤ「そもそもルビィや曜さん、果南さんまでもが善子さんを忘れそうになる原因はなんでしょうか?」

梨子「もう一人既に忘れてるけど…」

善子「……まさか精気って」

(・8・)「いずれ気付くちゅん」

善子(またそれ…)

鞠莉「ねぇホントにふざけてるわけじゃないのよね?」

果南「ホントだって、その善子ちゃんって子がAqoursに入ってるのだって初めて知ったよ」

鞠莉「はぁ…ダメねこれは」

梨子「…どうする?」

善子「…いいわ」

善子「初めまして、私は津島善子…いや堕天使ヨハネよ」

善子「あなたも私のリトルデーモンになってみない?」ギランッ

果南「う、うん?」

果南「私は松浦果南、よろしくね」

梨子「ちょ、ちょっと…!」

ダイヤ「これじゃあ結成当時みたいですわ…」

善子「仕方ないでしょ、だってこうでもしないと始まらないんだし」

千歌「確かに…」

善子「………」チラッ

(・8・)「思い出以上になりたくて…」

(・8・)「あのねがんばれちゅん」

善子「はぁ…?」

~帰り

善子「はぁ…散々な一日だったわ…ルビィちゃんや曜ちゃんには忘れかけられるし何故か果南ちゃんには完全に忘れ去られてるし…」

善子「あんたはさっきから何言ってんだか分からないし…」

(・8・)「来るべき時が来たら話すちゅん」

(・8・)「ちなみに言うと果南だかなんだか忘れたけどそんな人は別にふざけてるわけじゃないちゅん、ホントに記憶からお前が消えてるちゅん」

善子「…それホント?」

(・8・)「ホントちゅん」

善子「………」

善子「まさかだとは思うけど明日も私が誰かの記憶から抹消されるなんてことはないわよね?」

(・8・)「知らないちゅん、全ては時の赴くままにちゅん」

善子「は?」

(・8・)「チンピラみたいに、は?とか連発してると人が近寄らなくなるちゅんよ、他の人から見てれば一人で喋ってるアブナイ人ちゅん」

善子「………」

(・8・)「仕方ないちゅんなぁ、明日少しだけ教えてあげるから今日は元気出すちゅん」

善子「…分かったわよ」

(・8・)「あぁ~ハノケチュンに会いたいちゅん」

善子「…誰よそのはのけちゅんって」

(^8^)「トッリのお嫁さんちゅん」

善子「何?あんた男だったの?」

(・8・)「いや女ちゅん」

善子「はぁ?」

(・8・)「愛の力は偉大ちゅん、いかなる時も不可能を可能にするちゅん」

善子「そう…」

(・8・)「………」

善子「………」

スタスタスタ

善子「都会の人って歩くのが速いらしいわね」

(・8・)「そうなんちゅんか」

善子「…知らないわ、ただ聞いたことあるだけ」

(・8・)「ただ聞いたことを鵜呑みにするのは間違いちゅんよ」

善子「………」

(・8・)「早く帰るちゅん、そして勉強して寝るちゅん」

善子「はいはい…」

~次の日

「おはようございます!」

善子「!」

善子「あぁ、梨子ちゃん…」

梨子「ん?私の名前知ってるの?というか知り合いだっけ?」

善子「えっ…」

善子「何言ってるのよ、善子よ!よ・し・こ!」

梨子「善子…?」

梨子「…あ、よっちゃん!」

梨子「ごめんごめん、なんか頭に浮かんでこなくて…」

善子「はぁ…何なのよまったく…」

善子「何してたの?」

梨子「朝の挨拶だよ、こうやって正門の前に立って挨拶する活動あるでしょ?」

梨子「そういう活動に参加する人は朝ちょっとだけ早くいかないといけないんだ」

善子「ふーん…」

梨子「あ、おはよう千歌ちゃん曜ちゃん!」

千歌「あ、梨子ちゃんおっはよーう!」

曜「梨子ちゃんおはヨーソロー!」

善子「おはよう千歌ちゃん、曜ちゃん」

千歌「お、おはよう…?」

曜「お、おはようございます!」

梨子「二人ともどうしたの?」

千歌「この子梨子ちゃんの知り合い?」

梨子「え?」

梨子「何言ってるの千歌ちゃん、よっちゃんだよ?」

千歌「よっちゃん?ごめん分からないや…」

曜「…ごめん、実は私も分からないんだ」

梨子「えぇ?!」

善子「これって…」

梨子「果南さんと同じ…」

千歌「よく分からないけどよろしくね!えっとよっちゃん…でいいのかな?」

梨子「ちょ、ちょっと…!」

千歌「ん?何?」

梨子「ホントに分からないの?」

千歌「うん…分からないや…」

曜「私も…」

善子「………」

梨子「ふざけてるわけじゃないよね?ふざけたら怒るよ?」

千歌「もー!ふざけてないって!」

千歌「この子とは初対面!一切会ったことないって!」

曜「………」コクコク

善子「…!」

梨子「うそっ…」

善子「…いいわ、先行ってるわね」

梨子「いや、ちょっとまって!」

善子「話は後でしましょう」

スタスタスタ

(・8・)「真実は教室に眠るちゅん」

善子「…それは私にまず最初に教室にいけってこと?」

(・8・)「そうちゅん」

善子「分かったわよ」

~教室

善子「おはようずら丸、ルビィ」

花丸「え?すいません、マルあなたのことわからないみたいで…」

ルビィ「う、うん…私も…」

善子「………」チラッ

(・8・)「………」

善子「…ごめんなさい、人違いだったみたい」

花丸「ずら」

ルビィ「あ、はい…」

スタスタスタ

善子「…ねぇあんた、精気ってさ」

善子「いやあの宝石を復元させた代償って私を知ってる人の記憶から私が消えるってこと?」

(・8・)「仕方ないから少しだけ説明してるやるちゅん」

(・8・)「お前はこれから普通には暮らせていけないちゅん、普通には」

善子「………」

(・8・)「実感してわかる通り人の記憶からお前が消えるちゅん」

(・8・)「…言うことはここまでちゅん」

善子「…なるほどね」

善子「私は孤独になると、そういうことでしょ?」

(・8・)「………」

善子「…なんとなくわかってたわ」

(・8・)「堕天使なんて堕ちてから拾ってくれる人なんていないもんちゅん」

(・8・)「もし拾ってくれる人がいたならそれを運命と呼ぶちゅん」

善子「………」

(・8・)「今日の部活動は休むといいちゅん」

善子「…どうして?」

(・8・)「それは自分で考えろちゅん」

善子「何なのよ…」

梨子「よっちゃん!」

善子「ん?あぁ梨子ちゃんか…」

タッタッタッ

梨子「大丈夫?顔引きつってるよ…?」

善子「ま、まぁ…」

善子「何か用?」

梨子「いや…あのね…千歌ちゃんや曜ちゃんがよっちゃんのこと全然覚えてなかったでしょ?」

善子「そうね…」

梨子「もしかしたらと思って三年生の皆にも確認取ってみたけど…」


梨子「みんな善子ちゃんのこと知らなかった…」


善子「!」

梨子「花丸ちゃんとルビィちゃんといないってことは…」

梨子「ねぇまさか花丸ちゃんやルビィちゃんまで…」

善子「…その通りよ」

梨子「そんな…そんなことってあり得るの?!」

善子「………」

梨子「果南ちゃんに至っては昨日知り合ったばっかなのにまた忘れてたし…本当どうしたんだろう…」

ギューッ

梨子「よ、よっちゃん?」

善子「ずら丸もルビィちゃんも私の事忘れてた…千歌ちゃんからは初対面と言われてあの二人からはそっけない態度を取られて…」

善子「とっても辛いのよ…!」

善子「だから…だから梨子ちゃんは私の事…」


善子「ちゃんと覚えといてよ…?」ウルウル


梨子「もちろん!絶対に忘れない!」

(・8・)「………」

善子「…今日は部活休むわね」

梨子「そ、そうだね…みんなよっちゃんのこと忘れてるんじゃやるにもできないもんね…」

善子「ええ」

キーンコーンカーンコーン

梨子「あ、チャイムね」

梨子「…また今日の部活前にもう一度会いましょう?皆を見る限り忘れちゃったらそれ以上はないんだし…」

善子「分かったわ」

梨子「じゃあね!」

タッタッタッ

善子「………」

(・8・)「いいちゅんなぁ感動ちゅん」

善子「うるさいわね…」

(・8・)「トッリもああいう友達欲しかったちゅん」

(・8・)「…心の準備くらいはしといた方と思うちゅんよ」

善子「なんの話?」

(・8・)「これから何も起こらないわけないちゅんな?」

善子「………」



梨子「よっちゃん!」

善子「あ、梨子ちゃん」

梨子「私はまだ覚えてるからね!」

善子「え、ええ」

千歌「あ、待って待って梨子ちゃーん!」

梨子「あ、千歌ちゃん」

千歌「あ、今日の…」

善子「どうも…」

梨子「どうしたの?」

千歌「新曲の歌詞出来たよ!」

梨子「ほんと?!見せて見せて!」

千歌「はいっ!」

梨子「…?これホントに千歌ちゃんが書いたの?」

千歌「え?うーん…いや多分私だけが書いたわけじゃないと思うんだけど…誰が書いたのかが分からなくて…」

善子「でいどりーむうぉーりあー…」

善子「…あ、その歌詞私も協力したやつだ」

梨子「ということは…」

善子「記憶が抜けてる、いや私という存在が抜けてるのね…」

梨子「なんでこんな…」

曜「あ、二人とも酷いよー!私を置いてくなんて!」

曜「何してるの?」

梨子「新曲の歌詞が出来上がったんだって」

曜「新曲?あ、そうそう!私も新曲の衣装のデザイン出来上がったよ!」

千歌「え?!見せて見せて!」

曜「んーっと、はい!」

梨子「衣装は純白だけど後ろの翼は黒なんだね」

曜「そうそう!堕天使って感じをイメージしたんだ!」

千歌「へぇー珍しいね、曜ちゃんがそういうのをイメージするなんて」

曜「うーん…そうなんだよねーなんでこんな衣装思いついたのか自分でもよくわからなくて…」

善子「あ、それも私が提案したやつ」

梨子「え?!」

曜「ん?どうしたの?」

梨子「衣装はよっちゃんが提案したって…」

梨子「そうだよね?」

善子「ええ、堕天使でお願いって言ったわ、翼が黒い天使って」

梨子「ほら」

曜「…え?梨子ちゃん誰と喋ってるの?」

善子「っ?!」

梨子「え?ここにいるじゃんよっちゃんが」

曜「……あ、ホントだ」

曜「ごめん、どこ見てたんだろう…」

善子「………」

善子「ごめん、帰るわね」

善子「また明日」

梨子「う、うん…」

スタスタスタ

(・8・)「梨子って子はとっても強い子ちゅんね」

(・8・)「もう大体の人はお前の事忘れてると思うちゅんよ」

善子「………」

(・8・)「思い出って結局その程度ってことちゅん、何かが欠けるだけで全部忘れちゃうちゅん」

(・8・)「どんなに運命的な出会いをしてもどんなに仲が良くてもどんなに愛し合ってても忘れちゃえば原形もなくその関係は崩れるちゅん」

(・8・)「脆いちゅんね、人って思い出って何もかもが脆いちゅん」

善子「あんたはその脆い全ての何を知ってるのよ…」

(・8・)「………」

善子「はぁ…」

~次の日

「おはようございます!」

善子「ん?」

梨子「おはようございます」ニコニコ

善子「おはよう梨子ちゃん」

梨子「あれ?どこかでお会いしましたっけ?」

善子「…!」

梨子「ごめんなさい、あなたは私を知ってるみたいだけど私は分からなくて…」

梨子「名前は」

花丸「梨子ちゃんおはようずら」

ルビィ「おはようございます!」

梨子「おはよう♪」

善子「………」

梨子「ほら、あなたも挨拶しないとダメだよ?」

ルビィ「あなた?」

梨子「ほらっこの子だよ、おはようの挨拶は?」

花丸「誰もいないずら…」

梨子「え?」

善子「!」

梨子「ほら、ここにいるじゃん!見えないの?」

ルビィ「多分私たちには見えて…ないと思います…」

花丸「………」コクコク

善子「ちょ、ちょっと待って!私が見えないの?!」

梨子「………」チラッ

花丸「…?」

ルビィ「?」

善子「聞こえてない…?!」

梨子「わ、私には聞こえてるからね?」

花丸「??」

梨子「あ、ごめん先いってて」

ルビィ「はい、また後で!」

花丸「また後でずら!」

梨子「はーい!」

善子「………」

梨子「よくわからないけどあなたは私にしか見えないのかな?」

善子「………」

梨子「あはは…こんな不思議なこと起こってるのに冷静な私っておかしいのかな」

梨子「あなたとは初めて会った気がしなくてね」

梨子「…まぁよろしくね!」

ギュッ

善子「!」

善子(梨子ちゃんの手温かい…)

善子「あ、あのね」


梨子「あれ?」


スッ

梨子「私ここで何してたんだろう…」

善子「え?」

梨子「あ、そうだ花丸ちゃんたち追いかけないと!もう挨拶も終わりだし!」

善子「ちょ、ちょっと待ってよ!」

ガシッ

梨子「きゃあ?!」

梨子「…あれ?今誰かに掴まれた気がしたんだけど……」

善子「まさか…梨子ちゃんまで…!」

梨子「奇妙ね…さっさと行きましょう!」

タッタッタッ

善子「待って!待ってってば!」

タッタッタッ

梨子「!」

梨子「足音が二つする…」

梨子「誰!」ピタッ

善子「!」ピタッ

梨子「…誰かいるならもうこないでよ、気持ち悪い」

キーンコーンカーンコーン

梨子「あ、いけない!」ダッ

タッタッタッ

善子「ま、まって……」

善子「待ってよぉ…!!」

善子「………」ポロッ

善子「どういうことよ…」

善子「ねぇどういうことよ!」

(・8・)「お前は皆から忘れられたちゅん」

(・8・)「ただしそれは今までの関係を、ということじゃないちゅん」


(・8・)「存在すら忘れられたということちゅん」


善子「!」

(・8・)「その証拠にお前は今空を飛べるちゅん」

フワァ…

善子「うそ…飛んでる…」

(・8・)「お前は幽霊と同義ちゅん、一方的に見るしか出来ない存在ちゅん」

善子「なによそれ…!」

善子「私はこれからどうすればいいのよ!!」

(・8・)「知らないちゅん、お前の勝手にしろちゅん」

善子「はぁ?!」

(・8・)「幽霊だからお腹も空かないし病気にもならない、まぁ死にたければ死ねるちゅんけど」

善子「わ、私はそんなことになるなんて聞いてないわよ!」

(・8・)「精気が何なのか分からなかったお前が悪いちゅん、知りたければググっていくらでもわかったはずちゅん」

善子「そんな理不尽な…!」

(・8・)「お前は一生独りぼっち、でもお前のおかげで世界は救われた」

(・8・)「誰もお前に感謝するやつはいないけどよかったちゅんな」

善子「ふざけるんじゃないわよ!!なんでこんな…こんなことに私が…!」

(・8・)「………」

(^8^)「………」

善子「何笑ってるのよ…!!」



善子「何笑ってるのよぉ!!!!」


リ`・ヮ・) 「ねぇ知ってる?静岡のどこかの学校にAqoursっていうスクールアイドルがいてホントは八人なのに何故か途中までPVやCDには“九人”いたんだって」

リ`・ヮ・) 「でもメンバーの皆誰もその姿を見たこともないし声も聞いたことない、名前も分からないしどんな子なのかも分からないらしくてね」

リ`・ヮ・) 「奇妙に思うメンバーがいるなかメンバーの一人が」

『きっとこの子もAqoursの子なんだと思う』

リ`・ヮ・) 「って言い出して衣装を九人分作ったんだって」

リ`・ヮ・) 「そしてその衣装を使った初ライブの後に部室に戻ったら余ってた衣装一つが消えてたんだって」

リ`・ヮ・) 「その後も衣装を九つ作ったら必ず衣装が一つ消えていってね、その子はAqoursを天から見守る神様だって結構有名な話があるんだ」

(・8・)「そうなんちゅんか」

リ`・ヮ・) 「今でもその子の声が聞こえなくなった区切りの歌、Daydream Warriorを皆と歌いたくて彷徨ってるんだって」


リ`・ヮ・) 「その衣装を着て…」

「………」

梨子「ひ、人が倒れてる…!」

梨子「助けなきゃ…!!」

タッタッタッ

梨子「こ、この子Daydream Warriorの衣装着てる…」

梨子「同じものを作ったのかな?すごいなぁ…」

梨子「ってそんな感心してる場合じゃないよ!」

梨子「だ、大丈夫ですか?!」

「!」ピクッ

梨子「よかったぁ…死んでるんじゃないと思ったよ」

梨子「ところで本当に大丈夫…で……あれ?あなた…」

梨子「………」

『私は堕天使ヨハネ…あなたも私のリトルデーモンにならない?』

『その衣装私が提案したのよ』

『私よ!―――!』

梨子「よ、よ……」


梨子「よっちゃん!!」

(・8・)「そうなんちゅんかぁ、その子もまたみんな踊れるといいちゅんなぁ」

リ`・ヮ・) 「そうだね!」

(・8・)「愛の力は不可能を可能にするちゅん」

(・8・)「堕天使を拾ってくれる人、まさに運命ちゅんなぁ」

(^8^)「やっぱり“よしりこ”なんだよちゅんなぁ…」

END

~~~

理事長「死ぬより中途半端に生きてる方が苦しいと感じませんか?」

理事長「誰もあなたを知りません、あなたは私を知ってるのに、私はあなたを知りません」

理事長「時と場合にもよりますが人に傷つけられるより人に無視される方が辛いのだと思います」

理事長「代償の大小は見極めねばなりませんね」

ヒュー………

理事長「ひぃ~寒い!」

理事長「なんで冬なのに窓開いてるのよ!」

理事長「実にフユカイだわ!」

理事長「…冬に窓を開けただけに」

カチンカチンッ

五つ目終わりです
早い話ですけど見直しとかする中でやっぱりルビィのストーリーが納得いかないのでどういう趣向になるか分かりませんがアレとは全く別のストーリー作ってリベンジするつもりです
六つ目もよろしくお願いします

~~~~~

理事長「女性というのは誰もが白馬に乗ってどこかへ連れて行ってくれるような王子様に憧れを持つと思います」

理事長「今は持ってないにせよ持ったことはあると思います」

理事長「そしてそれを気軽に体験できるのが漫画や小説といった想像上の世界です」

理事長「そういう話になると壁ドン、とか顎クイとかいわゆる恋愛をする漫画の基本が出てきます」

理事長「ありきたりでなんだか悪く見られがち、でもそういうことに憧れることはすごくいいことだと私は思います」

理事長「…とはいえ、現実でそんなことしてたら痛い人たちとしか思われませんね」

理事長「最近、壁ドンや顎クイを“そのまま”体験出来るおまじないのようなものが話題になってるそうです」

理事長「そのおまじないを使ったならば…」

理事長「裏の浦/裏でお会いしましょう」

~~~

千歌「久々に梨子ちゃんの家来たなー」

梨子「いつもは千歌ちゃんの家で集まってるもんね」

千歌「そうだね、今日は歌詞と作曲と衣装ってことで集まったけど…」

梨子「曜ちゃん何してるんだろうね」

千歌「学校でなんかあったみたいだよ、何かは分からないけど」

梨子「そうなんだ」

千歌「…ん?」

ガサゴソ

梨子「ちょ、勝手にそこ」

千歌「わー!なにこれ!」

千歌「壁ドン…顎クイ…」

千歌「ときめく秘密のおまじない…?」



【逆さまの逆さま】

梨子「ダメー!」

千歌「うわぁ?!ちょちょとびかからないでって!」

梨子「それ返して…」ギロッ

千歌「…!」

千歌「は、はい…」

梨子「はぁ…」

千歌「それなに…?見られちゃまずいやつなの?」

梨子「当たり前でしょ!」

千歌「へぇーでも梨子ちゃんってそういうの興味あったんだー」

梨子「………」

千歌「おまじないだっけ?私は良いと思うな!そういうの!」

梨子「………」

千歌「あ、そうだ!あのおまじないってもうやったの?」

梨子「…やってない」

千歌「ならやってみようよー!」

梨子「い、いやいいよ…」

千歌「ほーっら!どうやるの!やり方教えてやってみよ!」

梨子「わわ、分かったから無理矢理取らないでって!」

千歌「そのおまじないはどういう効果があるの?」

梨子「恋愛漫画でよくあることが起こる環境になるって書いてあるわ」

梨子「効果はそこまで長くは続かないらしい…多分一日か二日くらい…」

千歌「なにそれ?そのれんあい漫画でよくあることが起こる環境?ってやつ」

梨子「………」

千歌「?」

梨子「壁ドン…とか」

千歌「壁ドン?」

梨子「…まぁ準備しましょう」

千歌「う、うん?」

~10分後?

千歌「おーい!梨子!」

曜「寝てるんだからあまり起こさないほうが…」

梨子「ん…?」

曜「あ、起きた」

千歌「おはよう梨子!」ニコッ

曜「おはよう!」

梨子「お、おはよう…?」

梨子(梨子…?千歌ちゃんって私のこと呼び捨てにする人だっけ…)

梨子(それになんだろうこの何とも言えない違和感は…)

梨子「…あれ?」

千歌「ん?どうしたの?」

梨子「………」ジーッ

曜「…?」

梨子(二人の服が変わってる…)

梨子(それに二人とも若干声が低い…?)

千歌「ん?俺になんかついてる?」

梨子「俺…?!」

梨子「ちょ、ちょっとやめて千歌ちゃんそんな冗談は」

千歌「千歌ちゃん?おいおいそっちだろ冗談を言ってるのは」

梨子「え?」

千歌「え?」

曜「?」

梨子「………」

梨子(落ち着け私…千歌ちゃんだけどこの千歌ちゃんは千歌ちゃんじゃない…?)

梨子(そういえば私なんで眠ってたんだっけ…)

千歌『おまじない試してみよ!』

梨子「!」

梨子(まさかおまじないが本当に…)

梨子(もしそうだとしたらこの千歌ちゃんと曜ちゃんは…)

千歌「まったくまだ寝ぼけてるの?」

曜「あはは仕方ないよ、僕もよくあることだから」


梨子(男…!)


梨子(恋愛漫画でよくあることが起こる環境になるってみんなが男になるってこと…?!)

千歌「大丈夫?顔が青いよ?」

梨子「あ、うん…大丈夫だよ」

曜「じゃあ勉強ちゃちゃっと終わらせてなんかしようか」

千歌「そうだね」

梨子「す、スクールアイドルの話は?」

千歌「スクールアイドル?」

曜「新しいゲームの話?」

梨子「えっ…」

梨子(もしかしてスクールアイドルってないのかな…)

梨子「…ううん!なんでもない!」

梨子「勉強、しよっか?」

曜「うん!」



千歌「あーえっとここがこうだっけ?」

梨子「うん、そうだよ」

梨子「千歌ちゃん勉強できないとか言ってるけど出来てるじゃん、謙遜はよくないよ?」

千歌「んー?勉強できないとかいったっけ?まぁホントにできないけど…」

梨子「え?」

梨子(あ、そっか…男の子だから色々違うのかな…)

梨子「あ、そうだったね、ごめん」

曜「なんかさっきから記憶違い多いけど大丈夫?」

梨子「うん、大丈夫気にしないで」

千歌「まったくしっかりしてくれよー?」

梨子「う、うん」

曜「気分悪くなったらいつでも言ってよ?」

曜「僕たちが助けてあげるから!」

千歌「まぁそうならないようにしてもらえると嬉しいけど」

梨子「あ、ありがとう…」

梨子「………」

梨子(なんか男っぽい千歌ちゃんと曜ちゃんって…)


梨子(カッコいいかも…?)


曜「そういう冷たいこと言わないの」

梨子(曜ちゃんは優しくて爽やかなイケメンかな…?)

千歌「…まぁもちろん助けはするけど」

曜「ふふふっ…」

梨子(千歌ちゃんは体育会系でちょっと照れ隠しなところがある感じかな…?)

千歌「あーもうそういう話いいから早く勉強終わらせるよ!」

曜「はーい」

梨子「う、うん!」

~二時間後

曜「はぁー今日も楽しかった!それじゃあまた明日!」

梨子「うん!また明日!」ニコー

千歌「また明日な、曜」

曜「また明日!」

タッタッタッ

梨子「………」

千歌「………」

梨子「いっちゃったね」

千歌「仕方ないよ、俺たちは家隣なんだし」

梨子「そうだね」

千歌「…なぁ梨子」

梨子「何?」

千歌「その…曜ってどうなんだ?」

梨子「どうって?」

千歌「だから…その…」

千歌「好き…なのか?」

梨子「えっ……」

梨子(これは脈を確かめる発言…?!)

梨子「別にそういう気持ちはないよ、親友って感じだよ」

千歌「そっか!」

千歌「ほっ……」

梨子(安心してるってことはやっぱり…)

梨子(分かりやすいな~…)

千歌「…あ、じゃあ俺もいくね!」

千歌「暇になったらメールするかもだからよろしくっ!」

梨子「暇になったらって家で何でやることなんてあるの?」

千歌「酷いな…俺だってやることくらいあるさ」

梨子「そっか、じゃあまた明日ね」

千歌「また明日!」



梨子「はぁ…ホントにあのおまじない効果があったんだ…」

梨子「千歌ちゃんと曜ちゃん男の子になってるし…」

梨子「スクールアイドルは何故かやってないことになってるし…」

梨子「………」

梨子「…スクールアイドルはあのおまじないで出来る環境には必要なかったってことなのかな」

梨子「なんか寂しいな…それって」

ピロロン♪

梨子「ん…」

梨子「メール…曜ちゃんからだ…」

「今日は誘ってくれてありがとう!また誘ってくれると嬉しいな!
それでなんだけど…今度一緒にお出掛けでもしない?
無理だったらそれで大丈夫だから遠慮なくいってね!」

梨子「お出掛け…デートかな…」

梨子「というか私が誘ったんだ…そりゃあ千歌ちゃんも好きなのかなって思うかもだね…」

梨子(というか地味に最後の文弱気…曜ちゃんって意外に謙虚かも…)

梨子「…あ、返信しないとね」ポチポチ

「また誘うね!お出掛けいいよ♪日程はまた明日にでも決めよっか♪」

梨子「こんな感じでいいのかな…」

梨子「送信っと…」

梨子「にしても男の子…か、あまり出過ぎた行動は出来ないね…手を繋ぐとか二人きりになる…とか」

梨子「二人きりはいいのかな…基準がよく分からないな…」

梨子「うーん……」

「梨子ー!ご飯よー!」

梨子「あ、はーい!今いくよー!」

梨子「…ま、明日考えればいっか、今考えててもどうにもならないし」

梨子「私、ファイトだよっ」

~次の日

「おーい梨子ー!」

梨子「ん…む…?」

梨子「………」

梨子「あー!!寝坊したー!!」

梨子「千歌ちゃん待っててー!」

「そのちゃん付けはやめろってー!」

ドタドタドタ

梨子ママ「あ、梨子ごは」

梨子「朝ご飯はいい!寝坊したから急がないと!」

梨子ママ「で、でも…」

梨子「行ってきまーす!」

ガチャッ

梨子「お、おまたせ千歌ちゃん…」

千歌「だからーその千歌ちゃんってなんなのさ、俺は男だよ?」

梨子「ご、ごめん…」

千歌「にしても…」

梨子「?」

千歌「寝癖すごいが…」

梨子「はー?!あーもう直してくるから先いっててー!」

千歌「いいよ、待ってるからゆっくりやってきな」

ガチャッ

梨子ママ「あ、おかえ」

梨子「寝癖酷いなら言ってよー!」

梨子ママ「いや急いでるなら言わない方がいいかなって…」

梨子「もー!」

ドタドタドタ

ガチャッ

梨子「おまたせ千歌ちゃ…千歌君!」

千歌「まだバス間に合うから走っていこう!」

千歌「ちょっと手借りるよ!」

ギュッ

梨子「っ?!」

千歌「辛くなったらいつでもいってよ!」

タッタッタッ

梨子「わわわっ!」

梨子(足速い…男の子だからかな…)

梨子「おっとっと?!」

千歌「大丈夫?」

梨子「だ、大丈夫!」

タッタッタッ

梨子(ナチュラルに手繋いじゃったけど大丈夫なのかな…)

梨子(千歌ちゃんの手温かいな…)

千歌「よしっ間に合ったー!」

梨子「う、うんそうだね!」

千歌「ふぅ朝から疲れた~」

梨子「ごめんね、迷惑かけて…」

千歌「いいよいいよ、好きでやってることだし」

梨子「優しいね、千歌…君は」

千歌(意識よ…ちゃん付けはダメよ…)

千歌「梨子にはね」

梨子「曜君には厳しいの?」

千歌「そういうわけじゃないよ、言葉の綾ってやつだよ」

梨子「ふふっそっか」

千歌「そうだよ」

~学校、廊下

曜「おはよう梨子ちゃん!」

梨子「おはよう曜君」

千歌「おはよう曜」

曜「おはよう千歌!」

千歌「今日も朝から生徒会の仕事?」

曜「まぁね」

梨子「生徒会の仕事って?」

曜「え?」

千歌「忘れたの?曜は学年でも一番成績優秀だから生徒会に自動で入れられちゃうんだよ」

梨子「あ、そ、そうだったね!頑張って!」ニコッ

曜「うん!」

梨子(曜ちゃんってそんなにすごいんだ…流石だな~…)

千歌「じゃあ先いってるね」

曜「うん、分かった」

千歌「行くぞ、梨子」

梨子「あ、うん!」

善子「梨子、おはよう」

梨子「あ、よっちゃ…善子君おはよう」

千歌「おはよう善子、何か用?」

善子「いや…梨子に声をかけたくなっただけ」

千歌「はぁ?」

善子「梨子」

梨子「ん?何?」

アゴクイッ

梨子「っ?!!?」


善子「好きだ!」


梨子「!??!?!」ドキッ

梨子(何…?!このよっちゃん…!)

梨子(やばい…顎クイってこんなにドキドキするの…?!)

善子「俺と…つきあ」

千歌「あーはいはい、一日一回イケメン風告白終了終了」

善子「はぁ?!今いいところだったのに!」

千歌「梨子じゃなきゃとっくに潰されてるんだぞ、大体先輩に顎クイとか命知らずすぎるよ」

善子「そこを許してくれるのが梨子のいいところ」

千歌「まぁね」

梨子「………」ドキドキ

千歌「どうした?」

善子「まさかとうとう俺の良さに気付いてしまったか…」

梨子「………」ドキドキ

梨子(や、やばい…あの顎クイは…!)

善子『好きだ!』

梨子「きゅう~……」

バタッ

千歌「お、おい梨子!」

善子「え、えっ…」

千歌「よいしょっ」

善子「お、お姫様抱っこって…梨子の彼女にでもなったのかよ」

千歌「仕方ないだろ、おんぶは梨子が動いてくんないと出来ないし抱っこはダメだし」

善子「俺もいっていい?」

千歌「どっちでも」

タッタッタッ

~保健室

梨子「…ん…?」

鞠莉「あ、目覚めた!」

梨子「ま、鞠莉さん…?」

鞠莉「NONO!鞠莉さんじゃなくて鞠莉」

鞠莉「俺はそう呼んでほしいな!」ニッ

梨子「ま、鞠莉…君」

鞠莉「ooooh…もうちょっとなんだけどなー…」

梨子「そういえばどうしてここに?」

鞠莉「梨子が倒れたって聞いて理事長権限使って授業サボってきた!」

梨子「はぁ…そんなんで理事長務まるんですか?」

鞠莉「仕事はちゃんとやってるからセーフ!社会でいう有給みたいなものだし大丈夫!」

梨子「は、はぁ…」

鞠莉「善子の話によればあの善子の顎クイで目が眩んで倒れたって聞いたけど」

梨子「いや…その…」

鞠莉「千歌はおもいっきり否定してたけどもし善子の話が本当なら…」

梨子「…?」

ユカドン!

梨子「っ?!?!!」

鞠莉「梨子を俺のものに出来るChanceってことだよね?」

梨子(床じゃなくてベットだけどこれは床ドン…)

梨子(鞠莉さんってああ見えても独占欲強いほうだしやっぱりそういうのも影響するのかな…)

梨子(誰よりも早く手にしたい、と…)

スーッ

梨子(顔近い…)

鞠莉「愛してるよ、梨子」ボソッ

梨子「ふぁ、ふあああぁ……」

梨子(やばい…この耳元で囁くのはとてもじゃないけど…)

梨子「きゅう~……」

梨子(耐えられない…)

ガクッ

鞠莉「ありゃ…ホントに倒れちゃった…」

鞠莉「いつもの梨子は軽く受け流すんだけど…なんでだろう」

キーンコーンカーンコーン

鞠莉「あっ」

鞠莉「もっと色々話とかしたかったけど…」

梨子「きゅう…」クラクラ

鞠莉「梨子があの様子じゃ仕方ないか…」

スタスタスタ

鞠莉「失礼しました」

ガララ

~昼

キーンコーンカーンコーン

梨子「んん…?」

花丸「あ、目覚めたよ!」

千歌「おはよう、鞠莉から授業を抜け出してみてたけど一度目覚めなかったって聞いた時はどうなるかと思ったけど大丈夫そうでよかったよ」

果南「おはよう、体調の方は大丈夫?」

梨子「あ、大丈夫です」

梨子(鞠莉さん適当に誤魔化したんだ…)

花丸「ゆっくり休むずら!」

果南「そうだよ?昼まで目を覚まさないなんて疲れてる証拠だよ」

梨子「あ、はいわかりました…」

果南「敬語じゃなくてタメ口でいいんだけどな…」

梨子「い、いえ…こっちの方が私的には…」

梨子(変な事も言いたくないし…)

千歌「梨子は神経質だからね、敬語の方がしっくりくるんだよ」

果南「そっか、分かったよ」

花丸「梨子さん!」

梨子「ん?何?」

花丸「困ったことがあったらオラにいってください!」

梨子「う、うん!」

ギュッ

花丸「絶対に助けにいくんで!」

千歌「…花丸、手」

花丸「あ、す、すいません!」

梨子「い、いえ…大丈夫…」

果南「やっぱり花丸君は梨子ちゃん一筋だね~」

梨子「ひとす…は?!」

千歌「あれ?気付いてなかったの?花丸は梨子のこと」

花丸「い、言わないで!」

果南「ふふっまぁそういうことだよ」

梨子「そ、そうなんだ…」

ガララ

曜「あ、目を覚ましたんだ!」

善子「また顎クイをやっ」

千歌「それはダメ」

善子「あれ結構効いてた感じあったんだけどなー」

果南「そういうのセクハラの類に入るんじゃない?」

梨子「あはは…」

善子「…まぁホントに俺のせいで倒れたならごめん」

梨子「だ、大丈夫気にしないで」

梨子(よっちゃんはあんまり変わってないのかも…真面目な時とふざけてる時の差別化がよくできてる感じかな…)

花丸「今度からそのあごくい…?とかいうのはしちゃダメだよ!」

善子「俺のレパートリー減らしてどうすんだ!」

花丸「知らないずら!」

梨子(花丸ちゃんはTHE田舎って感じがする…)

梨子(やることやいうことは真っ直ぐだけどいざ照れが入る…カッコいいというよりは可愛い系かな…)

果南「まあまあ二人とも落ち着いて」

果南「梨子も嬉しかったと思うよ?こんなにみんなから好き好きされて」

梨子「なっ…」カアアア

果南「みんな梨子の為にとか梨子に対する愛ある行動だからね」ニコニコ

善子「は、はぁ?!」

花丸「ち、違うずら!」

果南「違うの?」

花丸「ちが…くはないけど…」

善子「………」メソラシ

果南「ほらやっぱり」

曜「あはは…」

梨子(果南さんは余裕綽々な感じがあるな~…女の子の果南さんとは大分違うかも…)

梨子(でも常識はある…やっぱりふざけてるだけかな…)

鞠莉「はーい!こんにちはー!」

鞠莉「愛しの梨子が目覚めたと聞いて駆け付けたよー!」

千歌「情報はやっ…」

梨子(やっぱり鞠莉さんはどんなところでも鞠莉さんなのかな…隠さないところが鞠莉さんらしいや…)

梨子(元気でやんちゃっぽくて好きなら好きっていうしイヤならイヤっていういわゆる無垢な感じ…)

鞠莉『梨子を俺のものに出来るChanceってことだよね?』

梨子(…それとはちょっと違うか……)

曜「でもよかったよ梨子ちゃんが目覚めて!」

鞠莉「うんうん!」

梨子(誰のせいで二度目倒れたと思ってるんですか…)

トントン

「失礼します」

ガララ

果南「あ、ダイヤ」

花丸「ルビィ君までこんにちは!」

ダイヤ「こんにちは」

ルビィ「こ、こんにちは!」

ダイヤ「僕と将来お付き合いする人に手を出さないでください」

梨子「!?」

鞠莉「誰もそんなこと言ってないし決めてないけどね」

花丸「冗談ってやつずら」

ダイヤ「じょ、冗談じゃないです!真面目な話です!」

千歌「真に受けなくていいからね、梨子」

梨子「う、うん…」

曜「ダイヤさんはいつもこうだよね」

梨子(いつもこうなんだ…)

善子「梨子に一目惚れしたらしいもんね」

梨子(そういうのって本人の前でいうものじゃないような…)

ルビィ「あ、あの大丈夫ですか…?」

梨子「うん大丈夫だよ」

ルビィ「よ、よかったです…!困ったことがあったらいってくださいね、なんでもします!」

梨子「ふふっありがと」ナデナデ

ルビィ「えへへ…」

梨子(ルビィちゃんは守ってあげたくなる系の子だね…花丸ちゃんと同じカッコいいより可愛い系)

ダイヤ「あ、あのですね!僕は本当に」

果南「無理無理、梨子はああ見えても好き嫌いくらいはあるからね、ダイヤみたいな堅苦しいの苦手だと思うよ」

ダイヤ「そ、そんなぁ…」

善子「ふっ…」

梨子(ダイヤさんはしっかり者だけど恋愛に疎いタイプかな…逃げも隠れもしない直球な感じも見受けられる…)

善子「え?じゃあその理屈で言えば俺最強じゃん!」

鞠莉「はいはーい!俺も!」

花丸「あんまりやんちゃしてるのも梨子さんは絶対に無理ずら」

果南「梨子は誰が好きだったりするの?この中で」

果南「もし恋人にするならって感じで」

梨子「えっ…」

梨子「うーん…」

梨子(悪いけど鞠莉さんやよっちゃんにはついていけないかも…ダイヤさんと果南さんはどう接していいんだかわからないな…)

梨子(花丸ちゃんとルビィちゃんは付き合うとはいっても友達としてって感じかな…)


梨子(守るより守ってもらいたいし…)


梨子(となるとと曜ちゃんか千歌ちゃんだね…)

梨子「………」

梨子「曜…君かな」

千歌「っ?!」

曜「ほんと?!ありがとー!」

花丸「頭もいいしスポーツもできるしすごく人柄もいいし曜君には勝てないずら…」

善子「やはり曜か…」

鞠莉「oh…」

千歌「………」

梨子「…でも千歌君もいいな」

千歌「!」


梨子「千歌君か曜君がいいな!」

千歌「う、うん…」メソラシ

鞠莉「あー嬉しいからって顔隠すなよ~」

千歌「か、隠してない!」

梨子「ふふっ嬉しいって思えてもらえて私も嬉しいわ」

千歌「!!」カアアア

曜「あー昼だけどみんなご飯は食べたの?」

梨子「あ、私まだだ」

曜「じゃあ食べよっか♪一人で立てる?」

梨子「うん、大丈夫!」

梨子「よっと…」

梨子「じゃあお弁当持ってくるね!ちょっとまってて!」

ガララ

タッタッタッ

梨子(みんなが男の子の世界も悪くない…かも)

梨子(やりにくさとかはあるけど…)


『私、輝きたい!』


梨子「でもスクールアイドルがないのはちょっとあれかな…」

梨子「…やっぱりみんなの女の子の方がいいや……」

~帰り

千歌「今日、大丈夫だった?」

梨子「うん、大丈夫だったよ」

千歌「そっか、ならよかった」

千歌「…覚えてる?」

梨子「何が?」

千歌「ほら…俺と梨子が出会った時…」

梨子「…急にどうしたの?」

千歌「小さい時からずっと一緒だったじゃん」

梨子「…?」

梨子(あれ…そうなんだ…幼馴染ってやつなのかな…)

梨子「う、うん」

千歌「そのさ……」

梨子「…?」

千歌「…やっぱりなんでもない!」

ガタッ!

千歌「お、俺もうここで降りる!それじゃ!」

梨子「あ、ちょっと!」

梨子「もう……」

ピロロン♪

梨子「あ、曜ちゃんからメールだ」

「明後日土曜日の10時集合了解!楽しみにしてるよ!」

梨子「曜ちゃんってしっかり決めてくるんだよね、流石成績優秀なだけある…」

梨子「いつも一緒にいた千歌ちゃんが羨ましいな…」

梨子「…あ、この次で降りるんだよね」

梨子「千歌ちゃ…千歌君別に降りなくてもよかったのに…」



梨子「ただいまー」

梨子ママ「おかえりなさい」

梨子ママ「あ、そういえば机の上に置いてあった楽譜、あれ梨子ちゃんが作曲したの?」

梨子「え?」

梨子ママ「え?」

梨子「…?机の上に楽譜なんて置いたっけ…」

梨子ママ「まだ机の上に置いてあるわよ」

梨子「確認してくるね」

スタスタスタ

ガチャッ

梨子「あった…見たこともない曲だな…」

梨子「作詞高海千歌…作曲桜内梨子…」

梨子「こっちの世界の私たちが作った曲…?」

梨子「…作詞作曲が私と千歌ちゃんだし私たちしかないか」

スタスタスタ

梨子「お母さん、私が作った曲だねこれ」い

梨子ママ「やっぱり?千歌君が作詞なんていい曲になりそうじゃない」

梨子「そうだね」

梨子ママ「誰の想いを描いたの?」

梨子「え?」

梨子ママ「その歌よ」

梨子ママ「もしかして千歌君?それとも曜君?」ニヤニヤ

梨子「そ、そんなこと言われても…」

梨子ママ「私はどっちでもいいかな~どっちもしっかり者だし」

梨子「もう、私いくからね」

スタスタスタ

梨子「ふぅ~…」

梨子「あ、そういえば部屋が片付いてる…お母さんが片付けてくれたんだ」

梨子「…!」

梨子「まさか…!!」

ガサゴソガサゴソ

梨子「あった~…見つかってなかった…」

梨子(押入れの奥底にある壁ドンとかの本…やっぱり隠す場所は同じなんだ…)

梨子「というかこの世界にもこ…?!??!」

梨子「なにこれ…!」ペラペラ

梨子「壁ドンじゃない…顎クイじゃない…!」

梨子「なにこれぇ…!!」

梨子「お、女の子同士って…!!」

梨子「………」

梨子「…ダメダメダメ!」

梨子(何考えてるのこの世界の私は?!)

梨子(そりゃあよっちゃんや鞠莉さんのアレに何とも思わないわけだよ!!)

梨子(こんな私のこと好きに思ってくれてる千歌ちゃんに申し訳ないよ…)

梨子(…はっ!こんな危険物を表に出しておくわけにはいかないから早くしまおう)

ササッ

梨子「ふう…」

梨子「よっちゃんのアレを一日一回受け続けられるわけがようやく分かったわ」

梨子(見なかったことにしよう)

~夜

梨子「ふわぁ…眠い…」

ヒュー…

梨子「さ、寒い…誰よ勝手に窓あけたの…」

ヒラヒラヒラ

梨子「あ、楽譜が!」

梨子「よいしょっと」

梨子「そういえばこの楽譜…」

梨子(あんなもの読んでるくせに歌はしっかりしてるんだ…)

梨子「…ちょっとだけ弾いてみようかな」

梨子「準備しよ」



梨子「すー…はー…」

梨子「…よしっ」

~~~♪~~♪

梨子「何かをつかむことで~…」

梨子「何かをあきらめない♪」

梨子「想いよひとつになれ~♪」

梨子「どこにいても~同じ明日を~♪」

梨子「信じてる~♪」

梨子「いい歌…」

千歌「梨子…?」

梨子「!」

梨子「千歌君!」

千歌「梨子の歌声して…窓開けたら梨子がピアノ弾いてて…」

梨子「そっか」

千歌「想いよひとつになれ、だっけか」

千歌「俺が歌詞に挑戦したやつ」

千歌「自分で言うのも難だけどいい歌だな…」

梨子「う、うん…」

梨子(作ったのは私じゃないけど…)

千歌「…ちょっと外に出てきてくれない?」

梨子「…?とりあえず分かったわ」

スタスタスタ

ガチャッ

千歌「ごめん、夜遅くに」

梨子「いいよ、それよりどうしたの?」

千歌「ちょっと浜辺までいかない?」

梨子「うん、分かった!」

スタスタスタ

千歌「………」

梨子「…何かのお話?」

千歌「ま、まぁ…」

梨子「…そっか」

千歌「手…握ってもいい?」

梨子「…うん、いいよ」

ギュッ

千歌「…ありがと」

梨子「………」

千歌「…海、蒼いね」

梨子「夜だもん」

千歌「……話の内容っていうのはさ」

千歌「そのさ…俺…俺さ…」

梨子「………」

梨子(これは…)

カタトン

グイッ

梨子「うぇ?!」

チュー

梨子「ちょ、ちょっと?!」ドキドキ

千歌「俺と、付き合ってほしい」

梨子「え、えぇ?!」

千歌「曜と俺なんか張り合えないことくらいは知ってる、でももしダメならダメでいい」

千歌「俺は、ただはっきりさせたいんだ」

千歌「でも願わくば俺は…」


千歌「梨子と輝きたい!」


梨子「!」ドキッ

千歌「どうだ?」

梨子「え、えっと…」

「はい、ストーップ!」

千歌「!」

梨子「!」

曜「どうも♪」

千歌「曜?!」

梨子「曜君?!」

千歌「どうしてここに…」

曜「千歌君たちのお姉さんたちのお手伝いだよ、お手伝いとかは積極的にしていきたいからね」

千歌「そ、そうなのか…」

曜「そんなお二人は浜辺でプロポーズかー羨ましいなー…」

曜「でも駆け抜けは流石の僕でもちょっとやだなぁ…」

千歌「………」

梨子「………」

梨子(…え?何これ修羅場ってやつ…?)

曜「梨子ちゃん!」

梨子「あ、は、はい!!」

曜「僕は梨子ちゃんのことが好きです、大好きです!」

千歌「?!」

梨子「えぇ?!」

曜「僕と千歌君、どちらを選んでくれますか?」

千歌「…曜がその気なら受けてたつよ」

千歌「梨子!どちらか決めてくれ!」

梨子「え、えっ…ええ…」

梨子(そんなこと言われても…こういっちゃ悪いけど違う世界だしあんまり思い入れないし…)

梨子(恋愛漫画でよくあること、二人以上の男の人から好意を持たれる…ってやつなのかな)

梨子(…どっちも選ばない、あるいは時間をもらう選択が安定…?)

梨子(…いや、決めた方がいいよね…二人とも真剣なんだし…)

梨子「私は……」

ズキッ

梨子「…いっ!?」

千歌「どうした?!」

梨子「頭がいた…い…!」

『りっこちゃーん!』

梨子「ちか…ちゃん…?」

『もー曜ちゃん起きないよー?』

梨子「うぅ…痛い…」

曜「大丈夫?!」

梨子『効果はそこまで長くは続かないらしい…多分一日か二日くらい…』

梨子(もしかしておまじないの効果がきれかけてるのかな…)

千歌「梨子!大丈夫か?」

梨子(だとしたらもうこの二人ともいれる時間はない…ね…)

梨子(最後になるんだったらおもいっきり…)


梨子(好きの気持ち伝えてあげてもいいよね…?)


千歌「梨子…?」

曜「梨子ちゃん…?」

梨子「私は…私は……」



梨子「――君が好き!!」



バタッ



梨子「ん……」

千歌「あ、梨子ちゃん!やっと目覚めた!」

梨子「あ、あれ私…」

千歌「もーおまじないやったら梨子ちゃんすぐ眠っちゃったんだもん」

曜「おはよう♪」

梨子「お、おはよう…」

梨子(そっか…やっぱりおまじないがきれちゃったんだ…)

梨子(楽しかったな…ちょっと不便というか足りないところもあったけど…)

曜「梨子ちゃんの寝顔可愛かったな~♪」

梨子「~~~~っ!?」

梨子「ちょ、ちょっと!」カアアア

千歌「あ、顔赤い~」クスクス

千歌「でも曜ちゃんダメだよ?そんなからかっちゃ」

梨子(流石千歌ちゃん!わかってくれて)


千歌「私の梨子ちゃんにからかうなんてダメだよ?」


梨子「…え?」

曜「いやいや梨子ちゃんは私のだよ?」

梨子「ちょ、ちょっと待って!」

千歌「何?」

曜「これは私たちの戦いなの」

梨子「いやそういう問題じゃなくて…」

梨子「ふ、二人ともどうしたの…?」

千歌「どうしたっていつも通りだよ?」

曜「うん!」

千歌「それより梨子ちゃん!」

梨子「は、はい!」

曜「私と」

千歌「私!」

「どっちが好き?!」

梨子「ちょ、ちょっと二人とも怖いよ…」

梨子「決めるから!決めるからそんな迫らないで!」

千歌「梨子ちゃん!」

カベドン!

梨子「!?」

千歌「私を…選んで?」

曜「ふぬぬぬ…!」

千歌「ちょ、何曜ちゃん!」

曜「そこどいて…!」

カベドン!

梨子「ひっ…」

曜「私を選んで!」

「さぁどっち!!」

梨子(どうして…!?おまじないはもうきれたはずなのに…)

梨子(もしかして悪ふざけ…?!でも曜ちゃんまでこんなことするのかな…)

梨子(それにどっちを選べばいいのぉ…!)

梨子(もしかしてこの流れでいくとAqoursのみんなも…)ゾクゾクッ

梨子(こ、こんなことになるなら…)

梨子「も、もう…!」

千歌「?」

曜「?」



梨子「もう壁ドンは勘弁よぉ!!!」



END

~~~

理事長「裏の裏です」

理事長「表はどんなに回しても表、それは裏も同じです」

理事長「しかし何回も回してくうちに変わってくるものもあると思います」

理事長「時と場合もよりますが例えば地面が土のところでコイントスをしたら表にも裏にも汚れがついたりします、何回も回してくうちに…」

理事長「そうして同じ世界だったはずの“浦(裏)”が変わってしまったのです」

理事長「じゃあそろそろ私はAqoursのゲームをするので今日はこの辺で失礼しますね」

「AqoursHEROES!君はどのヒーローを倒したい?待ってて❤愛の歌❤」

理事長「あぁ~いいですね~…」

理事長「…あ、それではまた来週!」

六つ目終わりです
クリスマスの日にクリスマスじゃないSSを書くのは場違いかなと思ったけど時間が余ってたのでやりました
ルビィのリベンジストーリーは九つ目をやる前に多分やります、まだ全然作ってないので時間を空ける形になると思いますが…
とりあえず七つ目もよろしくお願いします

~~~~~

理事長「なんでも知ってるように心を見透かしてるような人、たまにいますよね?」

「聞こえないでしょう♪心の声は~♪」

理事長「いえいえ、いるんです」

理事長「心の声を聞ける人がいるんです」

理事長「ですが心の声が聞けるってそこまで良いことではないようですね」

理事長「これはそんな耳のいい彼女の憂鬱な物語…」

~~~

キーンコーンカーンコーン

曜「ちーかちゃん!一緒にご飯食べよ?」

曜(やった!千歌ちゃんのところに一番乗り!これは二人っきりゲット!)

梨子「あ、私もいいかしら?」

曜「えっ…」

梨子(露骨に嫌そうな顔してるなぁ…)

梨子(二人っきりなんて安易に作らせるわけないでしょ…)

梨子(私の千歌ちゃんなんだから)フフッ

千歌「すー…すー…zzz」

曜「ありゃ…寝てる…」

梨子「起こしちゃうのは…まずいよね…」

曜(うぅ~ん…千歌ちゃんは寝てるし梨子ちゃんに邪魔はされるし今日は不幸…)

梨子(帰りは絶対に千歌ちゃんと二人っきりでいないと…)

曜「はぁ……」

梨子「……よしっ」

スタスタスタ

千歌「………」

千歌(聞こえてるよ…その心の声…)



【夜空に向かって】

千歌「すー…すー…zzz」

私は高海千歌
今という今で輝きたい高校二年生!

そして輝きたい私の傍には二人の親友がいます

昼休みは毎日二人が一緒にご飯を食べようと誘ってくる、そんな誘いを私は三日に一回“寝たふり”で断ってる

曜(はぁ…千歌ちゃん…)

梨子(えっとデートのプランはっと…)

二人とも個性的でよく私はこの二人に助けられています

千歌(そんなに好きなら躊躇わず私に直接好きって言ってくれればいいのに…)

私には生まれつきの超能力のようなものがある

第六感とでもいうのかな?

いやそもそもそういう系じゃなくてただ単にある種が優れてるだけというか…
とりあえず私の耳は普通の耳ではない

地獄耳

私はどこまでも遠く離れた生き物の声や音を聞くことが出来る
でもそれは“聞こうと思えば聞ける”ってだけで別に無理矢理他人の会話を聞かされるわけじゃない

ただし

それは私の特異点の話
この能力的な何かを制御できるのはここまで

梨子「曜ちゃん、千歌ちゃん寝てるし一緒に食べましょう?」

曜「うん!分かった!」

梨子(敵の動きを探っていくのは結構リスク高いけどまぁ仕方ないわ…)

曜(うわぁ…明らかになんか企んでるなぁ…)

千歌「………」

千歌(だから素直に言ってくれればいいのに…)

私の耳は遠くの音が聞こえるだけじゃない


私は心の声が聞こえる


それも強制的に聞かされる。

心の声が聞こえる条件は二つ

どちらかの条件一つを満たせば心の声が聞こえる

一つ目は私の近くにいること
二つ目は私の視界に入った人であること

ザワザワザワザワ

千歌(あーもう心の中でべらべらうるさいなぁ…)

クラスのいる人たちの聞きたくもない心の声でイライラは止まらない
世界には知らない方が幸せなことがたくさんある

そんな知らないほうが幸せなことを無理矢理聞かされる

(―――ちゃんうざいなぁ…)

千歌(そんなこと考えてる君がうざいよ…)

クラスにいる子たちの心の声が私の耳に響いてくる
それを私は心の中で返答する

千歌「………」

私はどうしても感情が表に出やすくて顔にも同様よく出てしまう
だから昼休み、心の中で雑念がたくさん飛び交うこの時間はもううんざりしてる

寝たふりで顔を見せないように誤魔化す時が最近は更に増えてるしね

~帰り

(困ったなぁ…)

千歌「!」

キョロキョロ

千歌「あ、運びましょうか?」

「ほ、ほんとかい?!助かるよ!」

千歌「いえいえ」

(あぁ助かった…それにしてもいい子だなぁ…)

まぁそれでも悪いことばかりではない
心の中で助けを呼ぶ人とかは逆に便利だったりする

数少ないこの耳の使い道だよ

(話長いな…)

千歌(話が長い先輩とかってめんどくさいよなぁ…)

(あれ…家のガス止めたっけ…)

千歌(よくあるやつ)

(家帰ったら何しようかな~)

千歌(……宿題でしょ)

帰る時見える街並みと一緒に映る人の心の声が不意に聞こえる
その声に私は同情したり否定したり感情移入をしたりする

勝手に聞こえてくるんだから私が何を思うと勝手なはず

今日も昨日と同じように心の中で独り言を呟いてた

~夜

千歌「はぁ…どうすればいいんだろ…」

千歌「心が読めても全然…面白くないや…」

千歌「………」

星々が並ぶ夜空を窓から見てた
夜の空は綺麗だし誰も視界に映らないから前を向くよりかは心の声が聞こえづらい

だから静かに眺めるのが乙なもの

千歌「私は…私は…」

千歌(どうすればいいんだろう…)

(言いたいことを言えばいいじゃん)

千歌「!」

心の声が聞こえてきた
その声は誰かにそっくりでまるで私に言ってるような言葉だった

千歌「………」

千歌(気のせいだよね…?)

(気のせいじゃない)

千歌「!!?」

そうだ、今のは絶対に私に向かっての言葉だった

千歌(どういうこと…?!私以外に心を読める人がいるの…?!)

(………)

千歌「…?」

今度は何も返ってこなかった

(えっと…千歌ちゃんの同人誌はどこだっけ…)

千歌「この声…梨子ちゃん…?」

梨子「あった!!!」

千歌「こっちまで聞こえる…」

梨子(はぁ…可愛い…ホントに可愛い…)

千歌「なんか照れるな~…」エヘヘ

梨子(にしても曜ちゃんは邪魔ね…どう分断させるかが重要ね…)

千歌「梨子ちゃんって独占欲強い…?」

千歌(…!そうだ、さっきの声の正体は梨子ちゃん…?)

千歌「…電話してみよっと」

prrrrrrr

梨子「あ、千歌ちゃんだ!」

梨子「千歌ちゃん千歌ちゃ~ん♪」

ピッ

千歌(元気だなぁ…)

梨子「はい、もしもし!」

千歌「もしもし梨子ちゃん?」

梨子「どうしたの?」

千歌「ちょっと用があったから電話したんだ」

梨子「曜?」ギロッ

千歌「え?」

梨子「あ、ごめんなんでもない」

梨子(曜って言葉に反応しちゃった…なんとか抑えていかないと…)

梨子(でもやった♪曜ちゃんより私を選んでくれたのかな?)

千歌(仲悪いのかな……)

千歌「梨子ちゃんは今何してたの?」

梨子「え?今?」

梨子「今は勉強してたよ♪」

千歌「そっかーやっぱり偉いね梨子ちゃんは!」

千歌(ウソばっかり…)

そう、この耳の数少ない使い道の一つ

嘘を見抜くことが出来る

人って表面上ではどこまでも加工して嘘をつくれるけどやっぱり心の中では正直になっちゃうんだ
もし嘘をついてなお心の中も偽ることが出来るっていうならそれはある種の才能だと私は思う

梨子「千歌ちゃんもちゃんと勉強しなきゃだよ?」

千歌「うぇ~…だるいんだも~ん…」

梨子「ふふふ…」

だけど別に嘘をつくことはどうでもいい
ただ私がイヤなのは誰かの陰口を無理矢理聞かされること

梨子ちゃんや曜ちゃんだって汚い言葉は使ったりするけど根は多分綺麗だから別にいいんだ

…何もない限り。

千歌「…それでなんだけどさ」

梨子「何?」

千歌「梨子ちゃん、さっき言いたいことは言え、みたいなこと考えてなかった?」

梨子「え?」

千歌「いや…そのさ…ちょっとあって…」

梨子「うーん?言いたいことは言え…?」

梨子「ううんそんなこと考えてないよ」

梨子(言いたいことが言えたら今頃千歌ちゃんにだって告白してるのに…)

千歌(…梨子ちゃんじゃないな)

千歌「そっか、ありがとう、それだけだよ」

梨子「うん、分かった!いつでも電話待ってるね♪」

千歌「はーい、それじゃ」

ピッ

千歌「…誰なんだろう」

梨子「千歌ちゃん千歌ちゃーん!!」

ギューッ

梨子「はぁ~…HJNN千歌ちゃんしか抱けないのがつらい…」

千歌「!!!」プシュー

千歌「もー!梨子ちゃんうるさい!」

千歌「はぁ…」

千歌「………」

また少し時間をおいて夜空に話しかける

千歌(あの…私の友達に曜ちゃんっていう友達がいて…もう一人梨子ちゃんって友達がいて…なんか仲が悪いみたいで…)

千歌(…あの二人は大丈夫ですか?)

(大丈夫だよ)

千歌「!」

千歌「ほんと?!」

(ほんと、二人ともちゃんとした常識人、変わってるけど)

誰だか分からないけど助言をくれた

千歌(そっか、ありがとう!)

(………)

その日はそれっきりで返事がなかった
よく分からないけど嘘でもそういってもらえるのは嬉しいな

だから今日は笑顔で夜を過ごせた

~二日後、昼休み

千歌「すー…すー…zzz」

曜「また千歌ちゃん寝てる…」

梨子「最近よく寝てるね、夜何かしてるのかな?」

曜「うーん…分からない…」

梨子「…まぁ無理矢理聞くのもダメだよね」

曜「そうだね!」

曜(嫌われたらやだし…)

梨子(嫌われたら元も子もないし…)

千歌(二人とも息ピッタリ…)

昼休み、今日も陰口が聞こえる空間で目を伏せて我慢する
幸いにもこの二人は悪いこと考えてないからいいものの変なこと考えてたらどう接していいか分からない

あの夜聞こえた謎の声もあれから聞こえない

千歌「………」

怒るにも弱気な私は怒れないから誰か私の代わりにこの怒りを振りまいてくれないかな

そんな無茶なお願い事を心の中で誰かに縋りたい思いで祈る

ザワザワザワ

別にざわつくのは昼休みだしいつものことだけど私が聞こえるのは口から出して聞こえる声だけじゃない

(〇〇ちゃん死んでくれないかな)

千歌「!」

千歌(やけに物騒な事心の中で言ってるなぁ…)

汚れた心の声を聞き過ぎて次第に声がノイズのようなものとして聞こえるようになってきた

もちろんホントにザーザー聞こえるわけじゃないしモノの言い方ってやつだけど聞いててうるさいし耳を塞ぎたくなるほど耳障りなものに変わりはない

心の声が聞こえるって誰もが想像してる以上に辛いし不便だ

そして私の心の中で鳴るのは荒々しい音

火花が散り響く斬撃音が鳴り汗が滴る
ただただ振り回して暴れる
切るものも殴るものも倒すものもないのにただただ何か振り回す

そんな私が心の中に潜んでる

ガヤガヤガヤガヤ

千歌「んむぅ~……zzz」

どんなに他が鈍感でも聴覚だけは敏感で耳を塞いでもなお聞こえてくる心の声

千歌(うるさいなぁ…)

千歌(お家帰りたいな…みかん食べてゆっくりしてたいな…)

千歌(曜ちゃんと梨子ちゃんのところにでもいこ…)

スタスタスタ

(〇〇ちゃん気持ち悪い…)

(自慢うっざ…)

千歌(分かったから私に話しかけでよ…)

なるべく過剰に反応せずに受け流すようになってきた
悪口陰口はもう聞き飽きた

私が心の中で何かを言ったところで誰にも届かないし誰にも響かない

千歌「………」ムスッ

鼻のあたりまで黒い影が落ちる
他の人から見れば今の私はどう見ても機嫌が超悪い人

顔に今の気持ちが出てきてる

廊下を歩いてもまだ教室から聞こえる喧騒

悪口が飛び交ってそれがバウンドし私に届く、廊下にいる人、教室にいる人、今すれ違った人
そういう人のほとんどから陰口が聞こえる

千歌「おーい!梨子ちゃん曜ちゃーん!」

曜「あ、千歌ちゃん!」

梨子「千歌ちゃんこんにちは、寝てたから起こさなかったけどよかった?」

千歌「うん!大丈夫!」

曜(やっぱり千歌ちゃんは可愛いな…)

梨子(あぁ千歌ちゃん…尊い…)

千歌(…そんなに私って魅力的なのかな?)

(ど、どうしよう…)

千歌「…?」

(花瓶が…)

千歌(えっと…図書室の方かな…)

千歌「ごめん、来たばっかで悪いけどちょっと用事思い出したからいくね」

梨子「う、うん!わかったじゃあね」

曜「また後で!」

タッタッタッ

千歌「あ、あの子かな…」

千歌「君、大丈夫?」

ルビィ「ぴぎぃ?!あ、す、すいません!わざとじゃないんです!」

千歌「ん?あ、いいよ、君はもう戻っていいよ」

ルビィ「で、でも…」

千歌「先生呼んでくるよ、私が割ったって言っとくから」

ルビィ「い、いえそんなことは…」

千歌「いいからっ」ニコッ

ルビィ「す、すいません!」ダッ

ルビィ(今度お礼しないと…)

千歌「はぁ…こういう真面目な子がいっぱいいてくれたらなぁ…」

千歌「…先生呼んでこよ」

もし心の中で困ってる人がいるならば助けるのが当然だと私は思う

世は正義ではなくて悪が蔓延る時代

誰しもが聞いててイヤな気持ちになる汚い言葉を喋ってる
私はそういうの子供の頃からイヤというほど聞かされてきたから知ってる

私が触れた優しさの半分くらいは優しさじゃない、下に見られてたり可愛く見られてるだけの余裕とか慈悲とかそんなもの

私に協力したり同情したりするのはホントにそうしてるわけじゃない、損得の利益を考えた友情とかそういうのが関係ない策略がほとんど

世界はウソばっかり

千歌「………」

落ちた花弁を拾い上げて思う

あんな純粋で真面目な子がいっぱいいてくれたら私も何も思わず過ごせたのかなって。

~帰り

千歌「それぞれがす~きなことで頑張れるなら~♪」

千歌「新しい~場所が~♪」

「うるさいうるさい!」

千歌「!」ピクッ

千歌「………」キョロキョロ

千歌(どこにいる…か分からないけど歌っちゃダメだったかな…)

「もー!果南ちゃんのバカー!」

千歌「ん?」

声は聞こえるけどどこにいるかが分からなかった

千歌「えーっと…」

目を閉じ耳を澄ませてどこから聞こえるのか研ぎ澄ます

千歌「右…?」

千歌「…あの子たちかな」

果南「悪いのは花丸ちゃんでしょ?」

花丸「違うずら!ルビィちゃん泣いてたじゃん!」

花丸「本の山が倒れてその勢いが花瓶が割れるなんて考えるわけないずら」

果南「でも最後に本乗せたのは花丸ちゃんでしょ?」

花丸「もー!人のせいにして!」

果南「それはこっちのセリフよ!」

花丸「大体オラはちゃんと割ったって白状しようって言ったのにどうしてオラを連れて逃げるずら!」

果南「仕方ないでしょ…どうしろっていうのよ」

花丸「だから正直に」

果南「それがイヤなの!」

千歌「あの花瓶割ったのってあの二人だったんだ…」

千歌「どうすればいいか分からなかったからとりあえず逃げて…」

千歌(それであの赤い髪の子が見つけて私が来たって感じか…)

千歌「あはは…どんな反応すればいいんだろ…」

花丸「………」

果南「………」

花丸(素直に言えばいいのに…)

花丸(でも言い方もっと優しかった方がよかったかな…)

果南(こうなるんだったら素直に言えばよかったかな…)

千歌「ふっ…」

千歌「…あの二人は大丈夫そうかな」フフッ

心の声が聞こえるってちょっといいかもって思う時だってある
あの二人を見て微笑ましくなった

「好きです!付き合ってください!」

千歌「!」

突然聞こえる告白に目を丸くする
左の浜辺のずっと先の向こうから聞こえた

「…よろしくお願いします」

千歌「わぁ…!」

ここから向こうまでかなりの距離があった
少なくとも120mはある

千歌(やっぱりこの耳すごいなぁ…)

茜色の空とオレンジ色に光る海

そこでさっき聞こえたカップルを尊い目で見てた

千歌「…心の声が聞こえないや」

千歌「どっちも正直な気持ちなんだね…」

嘘というモノがどんなモノか分かるからこそ感じられる
正直ってどれだけいいことなのかと

千歌「…お幸せに」

スタスタスタ

そう言葉を言い残してその場を離れた

心にかかった雲がちょっとだけ晴れた気がした

~夜

千歌「…はぁ」

今日も夜空を見てた
これが私の日課

夜空を見て考え事

楽しくないけどこういうことしないと気持ちが落ち着かない

千歌「誰か助けてくれないかな…」

(誰かに頼ってても意味ないと思うな~)

千歌「!!!」

千歌「あの時の…!」

千歌「じゃ、あなたは言えるんですか?」

(言えるよ、思いっきり大きな声で)

千歌「す、すごい…」

(だから口で言えたらあなたも変われると思うんだけどな)

千歌「………」

千歌「どうすればいいと思いますか…?」

(………)

返事が無くなった
その後も時間を置いて喋ってみたけど返事は返ってこなかった

~数日後、夜

千歌「……いますか?」

(いるよ)

千歌「!」

夜は一回、必ずこの誰かに話しかけるようになった
この人は必ず私が夜空を見てる時にしか返事をくれない

どこから答えてくれてるのか声もいまいち特徴が掴めない

誰かに似てるような似てないような、そんな声
それに左から右から上から下から、色々な方向から聞こえてるからとりあえず私は夜空に向かって話しかけてる

千歌「あの…今度友達二人とお出掛けにいくんですけど…どんな服着てけばいいですか?」

(着たい服を着ればいい)

千歌「…確かに」

(言いたいことは言えばいい)

千歌「………」

千歌「…あなたは私の何を知ってるんですか?」

(………)

返事が返ってこなくなった
空に向けて言葉を投げると返ってくる、私は空の彼方にいる宇宙人と交信してるのかな
不思議に思った

千歌「…あなたは誰なんですか?」

(………)

千歌「えっと…答えたくないんですか…?」

(………)

千歌「…?」

千歌「…明日のご飯は何かわかりますか?」

(知らないよ)

千歌「!」

返事を返してくれる時と返してくれない時がある
…というか返してくれる質問と返してくれない質問がある、といった方が正しいのかな

千歌「Aqoursって知ってますか?私スクールアイドルやってるんですけどそこのグループにいて…」

(知ってるよ、いつも見てる)

千歌「ほんと?!ありがとう!!」

千歌「どの歌が好き?」

(全部好きだよ、全部)

千歌「そっかぁ!私も全部好き!」

千歌「誰推しですか?」

(みんな)

千歌「箱推しかー」

千歌「私もみんな大好き!」

返事をくれない質問以外はちゃんと答えてくれた

「千歌ー!」

千歌「あ、はーい!」

千歌「ごめんなさい、もういくね、また今度」

(………)

最後は返事をくれなかった、何かあったのかな
その日はそんな言葉を残して夜空に向けての会話を終えた

~次の日、朝

「いやーホントないよねー」

「ないね」

「ないわー」

朝っぱらから愚痴を嫌々聞かされた
聞いてても不快なだけだし明らかに自己中な発言だし全然面白くないしとにかく気が重くなった

千歌「あはは…」

そんな愚痴でヘラヘラしてる自分がイヤになる
冗談でも笑えない、というような感じなのに顔と態度は相手に合わせようとしてる

心は違うのに。

千歌「……はぁ」

千歌(……はぁ)

現実の私も心の中の私も同じようにため息を吐いた

私だって正直に言いたいのに、心の中ならいくらでも言えるのに言葉に出していえない私がイヤになる

千歌「……zzz」

昼は相変わらずの寝たふり

曜「千歌ちゃん今日も寝てるー…」

梨子「最近多くなったね…また深夜まで何かやってるんじゃ…」

曜(大丈夫かな…)

梨子(起きたら何があったか聞いてみましょう)

千歌(二人ともごめん…)

ちょっと曲がったところはあれど二人はやっぱり常識人

夜空の時に答えてくれるあの人も言った通りで心の中で私の事を心配してくれてた

千歌「……ありがと」ボソッ

そういうことが分かってくるのはとても嬉しかった

そんでもってあちこちから聞こえてくるバカとか、アホとかゴミとかそういう悪口
毎日毎日聞き飽きたよ

千歌(………)

こんな日に飽きてきた

~夜

千歌「…いますか?」

(いる)

千歌「言いたいこと…言えないです、言いたいけど…」

(言いたいことは言えばいい)

千歌「……はぁ」

(ねえ)

千歌「!!」

今、向こうから話しかけてきた
いつもは質問をしたら答えてくれる程度だったのに

(言いたいこと、私は言えるよ?)

千歌「…?」

千歌(私…?)

(言ってあげようか?)

千歌「…え?」


(あなたの代わりに)


その声は私の体全体にまで響いた
まるで後ろから囁かれてるような感覚に陥って、次第にその声は木霊してそれから…

~次の日

梨子「おはよう千歌ちゃん♪」

曜「千歌ちゃんおはヨーソロー!」

千歌「おはよっ!」ニコー

あれからの記憶はない、気が付いたら朝が来てた

梨子(あぁ…!千歌ちゃんの笑顔が眩しい…!)

曜(やっぱり千歌ちゃんだなぁ…)

千歌「…もっと笑ってあげようか?」

梨子「え?」

曜「え?」

千歌「あ、なんでもない!いこっか!」

梨子「…?」

曜「??」

千歌(言いたいことが口に出ちゃった…抑えないと…)

それでなんだろう、その“違和感”に気付くことが出来なかった
私はいつも通り過ごしてるつもりだった

(〇〇邪魔だなぁ…)

千歌「!」

千歌「ごめん、曜ちゃん梨子ちゃん、ちょっと待ってて」

曜「はーい」

梨子「分かったよ」

曜(梨子ちゃんより私のことを先に呼んでくれた♪これはやっぱり…)

梨子(なんで私を先に呼んでくれないの…?!)

千歌「ねぇ君」

「!」

千歌「そんなに邪魔なら自分の手でどかせばいいじゃん」ニコッ

千歌「それであなたが得するんでしょ?どかしてきなよ」

千歌「ほらっいってきなよ」ニコニコ

千歌「ほらほらっ」グイグイッ

「ひっ……」

千歌「はっまたやっちゃった……」

千歌「ごめん、なんでもない、今の忘れて」

千歌「それじゃ」

スタスタスタ

千歌「はぁ……」

千歌(また言ってしまった…抑えたいんだけど抑えられないなぁ…)

千歌「お待たせ!」

曜「あの子に話しかけてどうしたの?泣いてるけど…」

千歌「ううんなんでもないよ」

曜「そ、そっか…?」

なんだか今日の私は言いたいことをつい言ってしまう私だった

千歌(言いたくないのになぁ…)

心の中の私は言いたくないって思ってるのについ言葉として出てしまう
こんなに正直に言ってしまう自分がイヤになってきた

昨日とはまったく違うことを考えてた

~夜

千歌「…聞こえますか?」

(聞こえてるよ)

千歌「あの…私…言いたいことをつい言ってしまって…」

千歌「どうにか抑えたいんだけどどうにかなりませんか?」

(分からないな、私は言いたいことなんて言えないけどな)

千歌「…私はあなたが羨ましいよ」

(ううん、こちらこそあなたが羨ましいよ)

(…あ、じゃあさ私があなたの代わりに抑えてあげようか?)

千歌「…え?」

~次の日

千歌「おはよう!二人とも!」ニコッ

曜「おはよう千歌ちゃん!」

梨子「おはよう!」

曜(今日も良い笑顔だなぁ…)

梨子(この笑顔を独り占めしたいな…ってそんな物騒なこと考えちゃダメダメ!)

千歌(あはは…二人はいつも通りだな…)

千歌「じゃいこっか!」

曜「うん!」

梨子「ええ!」

心が聞こえる人物、私の知る中では一人いるんだ
夜空が見える時だけ答えてくれる不思議な人

私の心の中には言いたいことを言ってる私がいる

自分の心だったら近くにいなくても目に見えなくても心の声は聞こえるんじゃないかな?

だって自分の心だもん

千歌(…ねぇあなたってもしかして)

(………)

千歌(ううん、なんでもない)


夜空


この時だけ二つの心が交差するんだ
一つに体に存在する二つの心

ガヤガガガヤ

千歌「うるさいなぁ…」

千歌(あぁ…また言っちゃった…)

言葉と心が噛み合わない私
交差する心は度々中身を入れ替えて形を現す

千歌「…あなたの名前ってさ」


夜空


その時が二つの心が交わって形を変える時

私が心の声を聞くことが出来ること知ってる人、それは自分だけ

つまり夜空の向かって話しかけていた人は……

それを知るのはまだ遠いお話

千歌「二人とも!」

曜「ん?」

梨子「どうしたの?」


千歌「大好き!」ギューッ

千歌(大好き…!)


ただ、心も言葉も唯一噛み合うモノがあったとするなら私はそれを大切にしようと思う

そして今日も声をかけるんだ


夜空という、私に向かって


END

~~~

理事長「彼女は二重人格と似たような何かだった、のかも?」

理事長「自分のことは自分しか知らない、心を読める人は自分が知ってる限り自分しかいませんね」

理事長「憧れや目標の人も案外上ではなくて下を夢見てるのかもしれません」

理事長「でもそういうものってなって初めて気付くもの、ですよね?」

理事長「彼女の二つの心は一生、互いが必要としてる言いたいことを抑える心と言いたいことが言う心を共有できないのかもしれません」

(君の心は輝いてるかい?)

理事長「彼女がアイドルとしてデビューした際にはきっと、そんなような歌が作られることでしょう」フフッ

七つ目終わりです
ルビィのストーリーに全然手をつけてないので多分八つ目の終わりと同時に期間空くと思います
八つ目の時もよろしくお願いします

未だに前作のオチがわからん

>>487 前作というのは六つ目の梨子のストーリーですか?それともμ’s版のどれかのストーリーですか?

~~~~~

理事長「世界というのは型があります」

理事長「簡単に言えば、そこがどういう世界かを決める地盤のようなものです」

理事長「魔法が使えない型なのであれば一生魔法は使えません」

理事長「ですが世界の型は突然変わります、何の予知も兆しもなく一瞬で変わります」

理事長「さて何の話か分からないと思うので話を変えますが世の中には天才とか奇跡のとかで表現される能力の高い人間がいます」

理事長「1と2くらいの差はあれど1と10なんていう差があるのはおかしいと思いません?同じ人間ですよ?」

理事長「天才ってそもそもなんでしょう?人間なんでしょうかね?」

理事長「“一生”人間は知りえない、天才だけ知りえること」

理事長「世界の型を変わった時にあなたも知ることになるでしょう」


理事長「色んな人が天才と呼ばれる理由を…」

~~~

果南「んー……」

千歌「あ、お姉ちゃんおはよう!」

千歌「お姉ちゃんに言われた通り魔法の動作ちゃんと確認しといたよ!」

果南「ち、千歌?!何で私の部屋にいるの?!」

千歌「私の部屋?ちょっとちょっと~いつからお姉ちゃんの部屋になったのさー!」

果南「はぁ?」

果南「…てあれ?!ここ…私の部屋じゃない…!」

千歌「ここは私とお姉ちゃんのお部屋でしょ?旅館やってるじゃん!」

果南「う、うーん…?」

果南(確かに千歌の家は旅館だけど私は違うし…)

果南(というかお姉ちゃんって…)

果南「ねぇ千歌」

千歌「何?」

果南「私の苗字って何?」

千歌「もー!私をからかってるのー?お姉ちゃんの苗字は高海!私と同じじゃん!姉妹じゃん!」

ガタッ

果南「はー?!?!?!」



【イレギュラー】

果南「な、なにそれ…」

千歌「ホントに大丈夫…?熱でもあるの…?」

千歌「ちょっとごめんね」

ピタッ

果南(近い…)

千歌「んー…熱はないみたい…」

果南「…あっ」

千歌「ん?」

果南「そういえばさっき魔法とか言ってたけど何の話?」

千歌「えぇー?!」

千歌「魔法忘れちゃったの?!」

果南「魔法って…」

千歌「魔法じゃん!魔法だよ!」

果南「まさか魔法が使えるとか言わないよね?」

千歌「いやいやこの世界では魔法は必ず使えるモノじゃん!」

果南(夢でも見てるのかな…)

グイッ

千歌「ちょちょっとほっぺ引っ張らないでって!

千歌「これは夢じゃないよ!」

果南「痛い…」

千歌「もしかして何にも分からないの?」

果南「うん…」

千歌「もう、仕方ないなぁじゃあこの千歌ちゃんが教えてあげるから!」

果南「う、うん頼むよ」

千歌「この世界は魔法が使えるんだよ!」

千歌「産まれた時にその人には魔法が宿り九つの力に分類された魔法の一つが使えるようになるのだ!」

果南「九つ?」

千歌「うん!」

千歌「えーっと魔法っていうのは大きく九つの種類にわけて分類されるんだけどその九つの中にも更に種類があって魔法にも結構個性があるんだ」

果南「うーん…よく分からないけどまぁとりあえず分かった…」

千歌「私が使えるのは干渉の力!」

果南「干渉の力?」

千歌「うん!九つの力の一つ!特定の何かに干渉してその干渉した何かを自由に操ることが出来る魔法の類だよ」

千歌「私が出来る主なことは物体を動かしたり形を変えたりすることが出来る魔法!残念ながら生き物とかには出来ないけど…」

果南「私は?」

千歌「お姉ちゃんは空間の力だよ!」

果南「空間の力?」

千歌「道の距離を伸ばしたり空間の温度を操ったりと指定した空間の環境を好きにできる能力だよその中にいる人とかは操れないけどね、あくまで操れるのは形のないものだけ、お姉ちゃんはそれが使える」

千歌「まぁ私の物体もお姉ちゃんの空間もぶっちゃけ曖昧なラインだけどね、だって私の物体の定義なんて物体とは言うけど液体も自由にできるからね」

果南「ふーん…どうやって使うの?」

千歌「念じれば使えるよ!」

千歌「まぁ私は念じるんじゃなくて声に出して使ってるけどね!その方が気合も入るし発動スピードも若干早いし!」

果南「念じる…?」

千歌「心の中で喋るって言った方が分かりやすいかな?」

果南(えーっと…なら部屋の温度よ冷たくなれ…とかでいいのかな?)

カチンッ

千歌「ひゃー?!さむさむさむ…」

果南「つめたっ?!」

千歌「も、元に戻して!戻してって言えば直る!」

果南「も、元に戻ってー!」

千歌「さ、寒かった…」

果南「戻った…?」

千歌「ホントに大丈夫…?」

果南(説明するべきなのかな…)

果南(…した方がいいよね)

果南「ねぇ千歌」

千歌「何?」



千歌「えぇ?!お姉ちゃん別世界からきたお姉ちゃんなの?!」

果南「多分…少なくとも私はこの世界を知らない…」

千歌「うーん…そうなんだぁ…」

千歌「戻れる方法とかあるの?」

果南「いや知らない…」

千歌「…じゃあちょっとこの世界に住んでみたら?」

果南「え?」

千歌「ここも結構住みやすいところだと思うよ!」

果南「うーん…って言っても解決方は思いつかないし仕方ないね、少しの間は千歌に従うよ」

千歌「よかった~…お姉ちゃんいないと私立場ないもーん」

果南「ん?どういうこと?」

千歌「学校での種目は二人ペアでしょー?お姉ちゃんいないと私何も出来ないんだよー…」

果南「え?意味が分からないんだけど…」

千歌「もーお姉ちゃんは超優秀な魔法使いなんだから私を引っ張ってくれるってこと!」

果南「…私が千歌を?」

千歌「うんっ!」ニコッ

果南(やっぱり夢なのかな…)

グイッ

千歌「だーかーらー!夢じゃないって!」

「千歌ー!果南ー!そろそろいかないと遅刻よー!」

千歌「はーい!」

ギュッ

果南「ん…」

千歌「とにかく早く学校いくよ!五月で色々強化期間なんだから急がないと!」

果南「わぁわぁ?!分かったから引っ張らないで!」

~学校

果南「ここって…」

千歌「浦の星女学院だよ!」

果南(私の世界の学校と外見はあんまり変わってないな…)

果南(外見は……)

果南「千歌」

千歌「何?」

果南「なにここの草原、ところどころ燃えてるところとか穴が開いてるしキャンプでもしたの?」

千歌「ここは模擬戦専用、第三フィールドだよ?」

果南「模擬戦?」

千歌「魔法を駆使して胸の辺りについてる宝石を壊した方が勝ちの戦いだよ」

千歌「ほら、この制服宝石がついてるでしょ?」

果南「う、うん…」

千歌「あ、早くしないと結果発表間に合わない!」

果南「結果発表?」

千歌「いいからいいから!」

千歌「飛べ!」

果南「?」

果南「うわぁ?!」

千歌「鞄をイス代わりにして空を飛んで時間短縮だよ!人いっぱい集まるだろうし空から見てようね」

果南「お、落ちるよ!」

ギュッ

千歌「私の手、握ってて」


千歌「絶対に落とさないから」


果南「…!」ドキッ

果南「う、うん…」

果南(やっぱり怖いな…シートベルトとか命綱もないし…)

果南「あ、あそこ?」

千歌「そうそう!もう発表終わっちゃったね…」

果南「……!」

果南(みんないる…善子ちゃんや花丸ちゃんだ…)

千歌「あ、みてみて!私たち二位だよ!」

果南「え?」

「二位 千歌&果南」

果南「なにこれ?」

千歌「ついこの前の魔法テストの総合順位だよ、模擬戦、障害物競争、ペーパーテストの三つで順位が決まるんだ」

果南「…え?この学校で二位取ったの?」

千歌「うん!」

果南「…!!!」

「一位 鞠莉」

果南「鞠莉…?!」

千歌「あれ?お姉ちゃんって理事長と知り合いなの?」

果南「え?」

千歌「理事長は一匹狼って感じの人なんだよ、見ての通り一人だけで一位を取っちゃう人だからね」

果南「………」

果南(…確か鞠莉は死んだはずなのに……)

果南(世界が違うから生きてるの…?)

果南「………」

「三位 曜&梨子」

果南「……曜ちゃんと梨子ちゃんが三位なんだ」

千歌「あの二人強いよねー…私はお姉ちゃんがいなかったら絶対勝てないよー…」

果南「そんな私千歌を助けてるみたいだけど具体的に何してるの?」

千歌「ん?あーえっとね私の魔法を最大限に扱えるような状況を作ってくれるのといい成績が出せるように作戦を出してくれるんだ!」

果南「うーん…」

果南(私には出来なさそうだなぁ…)

千歌「まぁ実際障害物競争なんてお姉ちゃんの距離を使えば作戦なんか考えずともトップなんだけどさー…」

果南「まぁ距離が操れるならレースでは無敵かもね…」

キーンコーンカーンコーン

千歌「あ、もうホームルーム始まっちゃうね、話は後で!お姉ちゃんの一限目は実技だから適当にやってればいいよ!出来なくても調子が悪いで言い訳すれば充分に効くから!」

果南「う、うん…」

千歌「終わったら私のとこ来てね!」

千歌「着地!」

フワァ…

果南「おお…」

千歌「よっと…それじゃあ後で!」

タッタッタッ

果南「…なにこれ」

果南(よく分からない世界に来ちゃったなぁ…夢なら早く覚めてくれないかな…)

果南「それにしても鞠莉…」

果南(この世界では生きてるなんて…夢だったらとんだ悪夢ね…)

~一限目後

キーンコーンカーンコーン

果南「ふぅ…毎日運動してた分体を動かすのはだいぶ楽だったかな…」

果南「あ、千歌のところいかないと」

スタスタスタ

千歌「おーいお姉ちゃーん!」

果南「あ、千歌!」

千歌「大丈夫だった?」

果南「まぁなんとか…」

「果南さんこんにちは」

「こんにちは!」

果南「ん?」

千歌「あ、曜ちゃん梨子ちゃん!」

曜「流石だね!やっぱり二人には敵わないよ!」

千歌「えへへ…でも果南ちゃんがいてくれたから…」

梨子「ううん、千歌ちゃんの力もすごいよ」

曜「うん!すごいよ!」

千歌「そう?ありがとう!」

梨子「それにしてもあのイレギュラーの鞠莉さんとやり合うなんて流石でした」

果南「イレギュラー?」

梨子「え?」

千歌「…あ、果南ちゃんちょっと寝ぼけてて…」

千歌「徹夜してたから…」

曜「そうなんだ、目下の私がいうことじゃないですけど体調管理はしっかりしてくださいね!」

果南「う、うん」

千歌「ごめん!用事あるからまた後でね!」

梨子「うん!じゃあね!」

曜「ばいばーい!」

千歌「ふぅ…」

千歌「分からなくても適当にはいはいって答えといてね?ここって結構実力社会だからね無知と無力って差別されちゃうんだ」

果南「…ホント?」

千歌「うん…」

千歌「果南ちゃんの世界は違うの?」

果南「差別なんてありえないよ…みんな仲良く楽しく暮らして…」

千歌「そうなんだ…」

果南「…そういえばイレギュラーって何?」

千歌「嫌われ者につく名前なんだ」

果南「嫌われ者?」

千歌「正式には九つの力の内の一つ、他の八つに分類できない魔法のことを意味する力なんだ」

千歌「理事長が使えるのは時間を操る魔法」

千歌「時間を止める、止まった時間を動かす、過去へ行く、未来へ行く、この四つが出来るんだって」

千歌「模擬戦では果南ちゃんが距離の魔法さえ使っちゃえば理事長は一生私たちのところへ行けないんだ、だって時間は止まっても魔法は継続するから」

果南「なるほど…」

千歌「理事長には過去に行ける能力があるでしょ?負けたら過去に戻ってやり直しを何回も繰り返せばいつかは勝てるんだよ」

果南「…なるほど」

千歌「それ故にそして更にイレギュラー故に嫌われ者、イレギュラーの人のほとんどは魔法が反則級に強いんだ」

千歌「バランス崩壊の原因でね、リアルチートとか化け物とかそう呼ばれてるんだ」

千歌「そして強い者ほど嫌われる場所なんだ、ここは」

千歌「だから嫌われ者につく名前」

果南「ん?それって…」

千歌「そう、私たちも一応は嫌われ者」

果南「なにそれ…」

千歌「でも私たちは正統派!イレギュラーが正統派じゃないとは言わないけど…少なくともマイノリティーには属さないからまだいい方だよ!安心して!友達もいっぱいいると思うよ!むしろ尊敬される側だと思う!」

果南「そ、そっか」

千歌「よーしいつもお姉ちゃんに助けてもらってるから今回ばかりは私が助けるぞ!」

千歌「なんかお姉ちゃんにこんなこと言うのは変だけど…」

千歌「これからよろしく!」

果南「うん!よろしくね!」

ギュッ

~約二週間後

果南「お疲れ様」

千歌「お疲れ様!」

千歌「お姉ちゃんもすっかりここに馴染んじゃったね」

果南「あはは…自分でもびっくりだよ」

千歌「でもよかった!お姉ちゃんが変にならなくて」

千歌「成績はいつも通り、作戦も立てて私を助けてくれるお姉ちゃんだね!」

果南「初めて模擬戦やった時は全然おぼつかなかったなぁ…」

千歌「ずっとどうすればいいか分かってなかったもんね」

果南「千歌のおかげでなんとか勝てたけど…」

千歌「でも今は安定してるから大丈夫!」

果南「たった二週間ちょっとでこんな慣れてる私が怖いよ…」

千歌「そして明日は…」

果南「鞠莉との模擬戦…だっけ」

千歌「うん…多分今回も勝てないかな…」

果南「うーん……」

千歌「理事長との模擬戦は見たこともないよね?」

果南「うん」

千歌「理事長は時間を止めて止めた時間の間で相手に近寄って宝石を直接破壊する戦法なんだ」

千歌「あの宝石は自分とその味方以外の人が五秒間触っていれば壊れるからね」

千歌「私たちはお姉ちゃんの距離を使うことでその戦法は効かないけど…」

千歌「結局時間を止めて移動する理事長には近寄れないし私たちから近づくしかないんだ、でも果南ちゃんの距離を使ったら私とお姉ちゃんまで理事長に近寄れなくなっちゃうから距離を使ってない状態で止められてフィニッシュって感じ…」

果南「なるほど…攻めても守っても負けちゃうんだ…」

千歌「うん…」

千歌「理事長が時間を止めてる間っていうのは私たちの一瞬に含まれるからどうやったっても対応は出来ないんだ、今までいろいろ試したけどどれもダメ」

千歌「勝ちパターンは未だに見えてこないまま…」

果南「八方塞がりだね…」

果南「でも負け戦だとしても私は精一杯抗いたいな!だから勝てるように頑張ろう?」

千歌「うん!」

「果南さん、千歌さん」

果南「!」

千歌「あ、理事長…」

果南「鞠莉…」

鞠莉「…?私を名前で、それも呼び捨てで呼んでいいなんて一言も言ってませんが…」

果南「…す、すいません」

千歌「あ、あの…今日は何の用でしょうか…?」

果南(怯えてる…?)

鞠莉「明日の模擬戦の挨拶を先に、と思いまして」

鞠莉「…私は今回も負けません、言いたいことはそれだけです」

鞠莉「円満の姉妹に水を差すつもりはありませんので私はこれで」ペコリ

果南「う、うん…」

千歌「………」

千歌「ふはぁ…やっぱり雰囲気というか覇気がすごいな~…」

果南「あれが鞠莉…?」

果南(別人みたいな雰囲気してたな…)

『私は負けません』

果南「…楽しいのかな」

千歌「え?」

果南「この模擬戦って何の役に立つの?」

千歌「うーん…護身術とかじゃない?私もよく…」

果南「そっか」

果南「明日、勝ちたいな」

千歌「頑張ろうね!」

果南「うん!」

~次の日

「これより理事長、小原鞠莉対高海果南、高海千歌ペアの模擬戦を行う」

「勝敗の決定は相手の胸元にある宝石を破壊して戦闘不能状態にするか降参のどちらか」

千歌「は、はい!」

果南「はい」

鞠莉「よろしく」

ザワザワザワ

果南(すごいいっぱい人いるなぁ…)

「では両者定位置に」

スタスタスタ

千歌「…頑張ろうね」

果南「うん!」

「では、始めます」

「3」

千歌「……よし」

「2」

鞠莉「………」

「1」

果南「いくよ…」

「はじめ!」

鞠莉「停止!」

スウォーン…

果南「…?!」

果南(あれ…動けない…)

果南(あ、時間が止まってるんだね…)

果南(…というか…一瞬じゃなかったの…?)

果南(止まってる間も意識があるなんて逆に辛いな…)

果南(…早く動きたいなぁ)

スウォーン

千歌「…あ、お姉ちゃ」

鞠莉「もう一回!」

鞠莉「停止!」

スウォーン

鞠莉「こ、これで…」

果南「………」

果南(今度は動けない…?!)

鞠莉「よ、よし…これで果南さん、あなたはおしまいです」

スタスタスタ

果南(動け…!動いて!!)

ピクッ

果南「よし動ける!」

鞠莉「なっ…なんで動けるの?!」

果南「ふ、ふう…」

鞠莉「…!まさか隠し玉があった…?!」

果南「動いてって念じたら動けたよ」

鞠莉「はぁ?!そんなわけ…」

果南「…鞠莉はどうするの?鞠莉は時間が止まって無防備になった人間しか倒せない」

果南「空間を操る私に勝ち目なんてあると思う?」

鞠莉「くっ……」

鞠莉(解除…!)

鞠莉「もう一回!」

鞠莉「停止!!」

果南「…動けるよ」

果南「………」

果南「…私たちの勝ち、だね」

鞠莉「な、なんで?!」

鞠莉「果南まで私をいじめるの?!酷い…!こんな世界イヤだ…!」


鞠莉「元の世界に帰りたいよ…!!」


果南「!」ピタッ

果南「…元の世界?」

鞠莉「私は…私はみんな平等で…果南やダイヤとも仲良しの世界にいたのに…急に世界が変わった…!」

鞠莉「時間を止める魔法…それが私の所有魔法…でもそれが私の足枷になってた!」

鞠莉「みんなから嫌われて…ダイヤも果南も私を敵対視して…その妹ルビィちゃんや千歌ちゃんからも怯えられて…学校中のみんながそのどっちかで私は一人だった…!」

鞠莉「果南も私を底辺に引きずりおろすの?!」

鞠莉「お願い…!お願いだから勝たせて…!!」

ポロポロ

鞠莉「私…負けたらホントに立場が無くなっちゃうの…!!」

鞠莉「だから…だからッ!!!」

果南「鞠莉」

鞠莉「な、なに…?お願いならなんでもきく!だから…!」

果南「実は私も別世界から来た人なんだ、鞠莉ともダイヤとも千歌ともみんな仲良しの世界から来た人」

鞠莉「えっ…」

果南「あはは…二週間前に来たばっかなんだけどね、慣れるのが早かったからこの世界にいた私と変わらない様を送ってるけど」

果南「私の世界の鞠莉、死んじゃったんだ」

果南「この世界の鞠莉はとっても怖くて前の世界みたいにはいかないのかなって思ったけど」

果南「なんか前の世界と大して変わらなそうで安心したよ」

果南「何でもしてくれるっていったよね?」

鞠莉「う、うん…」

果南「鞠莉のいた世界のようにまた、私と千歌だけでも仲良くしてほしいな」ニコッ

鞠莉「…!」

鞠莉「う…うぅ…うわあああああああかなああああああんっ!!!」

モギューッ

鞠莉「かなぁん…!!」

果南「あはは…やっぱり変わらないね」

鞠莉「怖かったよ…寂しかったよぉ…!!」

果南「よしよし」ナデナデ

~五分後

鞠莉「…私、決めた」

果南「ん?」

鞠莉「私…負けるわね」

果南「え?!」

鞠莉「果南見てたら一人じゃないんだって思ったのよ」

鞠莉「一人じゃないなら私…」

鞠莉「負けてもいいや!」

鞠莉「降参します!」

パリーン!

鞠莉「はいっ私の負け」

果南「…ホントによかったの?」

鞠莉「うん!そのかわりこれからずっと一緒にいてね?」

果南「…お手柔らかにね」

鞠莉「もちろんっ!」

千歌「う…そ…勝っちゃった…?」

果南「あれ魔法が解けてる…」

鞠莉「宝石が割れたからね」

ウオオオオオオオオオ

果南「…すごい歓声だね」

鞠莉「だって私負けちゃったんだもん」

果南「勝ったつもりはないけど…」

鞠莉「負けは負け、勝ちは勝ちなのよ」

果南「ふふ、そうだね」

「…あ、勝者高海果南、高海千歌ペア!」

「礼!」

果南「ありがとうございました」

千歌「あ、ありがとうございました!」

鞠莉「ありがとうございました★」

鞠莉「後でね、果南」

果南「ええ」

スタスタスタ

千歌「すごいよお姉ちゃん!どうやって理事長に勝ったの?!」

果南「それが私にもよくわからなくてさ…」

千歌「え?」

果南「止まった時間の中でも動けてね」

千歌「え…でもお姉ちゃんの空間の力に時間を止める魔法を無効化させるような魔法はないよ…?」

果南「なんでだろう…」

千歌「時間停止を無効化させる魔法なら確か…」

千歌「指定した魔法を無力化させる魔法、指定した魔法をコピーする魔法…とかその辺くらいしか…」

千歌「でもどっちも無の力の魔法だし…」

果南「うーん…鞠莉に聞いてみよっか」

千歌「え…?理事長に聞きに行くの…?」

果南(怯えてるなぁ…)

果南「千歌、大丈夫だよ鞠莉はとっても優しい人だから」

千歌「で、でも…」

果南「もし何かあったら守ってあげるから」

千歌「う、うん!」

~理事長室

鞠莉「うーん…私の知識からだと千歌ちゃんがいってた魔法とかもいけるんだけど果南は空間の力の魔法使いでしょ?」

鞠莉「イレギュラーはイレギュラーでしか対応できないはずなの、一部の相性を除けば…」

鞠莉「果南がイレギュラーの可能性って…無いの?」

千歌「な、無いと思います…だってお姉ちゃんの魔法は空間の力って結果が出てますし…」

鞠莉「うーん…」

鞠莉「じゃあテストしてみましょうか」

果南「テスト?」

鞠莉「私に勝てるイレギュラーの力があるか、もしあったらそこから絞っていけばいいでしょ?」

鞠莉「まず、浮ける?」

果南「え?」

果南「果南は空が飛べるかってこと」

千歌「無理だよ、あ、でも指定した空間の重力を変えればいけるね!」

鞠莉「NONO!普通に飛べるか試してるのよ」

千歌「それは…無理だと…」

果南「分かった、やってみる」

果南(空…飛べ!)

果南「わぁ…?!」

千歌「え…空を飛ぶ魔法なんて…」

鞠莉「ふむふむ、空を飛べると」

鞠莉「この時点で空間の力だけじゃないことが分かるわね、果南は明らかなイレギュラーよ」

千歌「お姉ちゃんがイレギュラー…?」

鞠莉「次、物を動かせる?またその動かせた場合物体をどこまで操れる?形を変えれるかとか重さを変えるとか」

鞠莉「試しのこの鉛筆、動かしてみて」

果南「う、うん」

果南(鉛筆…浮け…!)

フワァ…

千歌「浮いた…」

果南「えっと…形を変えればいいんだっけ…」

鞠莉「ええ」

果南(長くなれ…とかでいいのかな?)

千歌「わぁ…長くなった…」

鞠莉「物体も操れるのね」

千歌「えぇー?!これじゃあ私いる意味ないじゃん!」

果南「千歌の能力と丸被りだね…」

鞠莉「ふむ…もう大体は検討ついてきたわ」

果南「え?もう?」

鞠莉「ええ、最後」

鞠莉「人に干渉出来る?」

千歌「え、それって人を好きなように出来るかってことですか?」

鞠莉「そうよ、試しを私を浮かせて」

果南「分かったよ」

果南(鞠莉…浮いて)

フワァ…

鞠莉「おお…」

千歌「浮いた…」

千歌「すごいすごい!私も浮かせて!」

果南「千歌浮いて」

千歌「わぁ!浮いてる!物体を足場にしなくても空飛べてるよ!」

鞠莉「はいテスト終わり、多分決まりね」

千歌「あはは!すごいよお姉ちゃん!」

果南「二人ともいつまで飛んでるのよ…」

~五分後

鞠莉「ごめんなさいね、空飛べるなんて思ってなかったから」

千歌「私も!すごいね果南ちゃんの魔法!」

果南「それでその魔法って何の魔法なの?」

鞠莉「ええ、もうイレギュラーなのは確定」

鞠莉「そして多分この魔法なんじゃないかしら」

果南「どれ?」

鞠莉「絶対干渉よ」

果南「絶対干渉?」

千歌「あー!それってあの!」

鞠莉「そう、スピリチュアル東洋の魔女と呼ばれたあの人の魔法よ」

果南「スピリチュアル東洋の魔女?」

千歌「名門音ノ木坂が生み出した超天才魔法使いだよ!勝てる人が未だにいない最強魔法使い!」

果南「その人が使ってる魔法と全く同じものが私に使えるの?」

鞠莉「多分…」

鞠莉「空が飛べて、物が動かせて、人を操れる、こんなことを一つの魔法で実行するならそれくらいしか…」

鞠莉「それに私が時間を止めてた時、動きたいと念じたら動けたのよね?」

果南「ん?あ、まぁ…」

鞠莉「もう確定よ」

千歌「すごいよお姉ちゃん!果南ちゃんもこれからスピリチュアル西洋の魔女って名乗れば?」

果南「日本は西洋じゃないよ…」

鞠莉「どうする?この事公表する?」

千歌「私はしないほうがいいと思う…」

千歌「だってイレギュラーって言えばみんなから嫌われちゃうよ…?お姉ちゃんはみんなから尊敬されてる人なんだからダメージは計り知れないよ…」

鞠莉「私はどっちでもいいかな」

果南「うーん…じゃあやめとくよ、秘密ってことにしといて」

鞠莉「ええ」

千歌「うん!」

~一ヶ月後

千歌「飛べ!」

果南「ふ~その魔法で飛ぶのはいつになっても慣れないね…」

千歌「仕方ないじゃんこの方法でしか空飛べないんだから~」

鞠莉「私の鞄もいい?」

千歌「うん!」

千歌「飛んで!」

鞠莉「よっと」

千歌「結果発表もう出てるね!」

鞠莉「えっとぉ私たちは…」

果南「探す必要なんてないでしょ」

「一位 鞠莉&果南」

千歌「あはは…」

「二位 千歌&果南」

鞠莉「この学校にはもう敵なしね、流石果南だわ!」

果南「鞠莉の時は何もしてないでしょ」

果南「模擬戦じゃ時間止めて私はずっと鞠莉が宝石壊すの見てるだけだし」

果南「障害物競争は時間止めて一緒に歩いて1秒でゴールだし」

鞠莉「あはは!シャイニー★」

千歌「ぶぅ~私のお姉ちゃんを横取りして楽しいですか???」ムスッ

鞠莉「えぇ~実際私と果南は通ずるものあるし?私と果南なら敵なしだし相性も抜群だし…」

鞠莉「そもそも横取りして何が悪いの?」

千歌「あぁー!本性現したー!!」

果南「あはは…」

千歌「私も鞠莉さんに勝てる力があれば…」

鞠莉「残念だけどそれは無理よ」フフッ

千歌「理事長権限ってずるいな~…」

鞠莉『今日から果南は私のペアよ!』

果南「ものすごいブーイングだったもんね」

鞠莉「でも私は気にしない~」

千歌「…もー!お姉ちゃんは私のなのに!!!」

モギューッ!

千歌「絶対に渡さないから!」

モギューッ!

鞠莉「いやもう貰ってるし!」

鞠莉「果南は私のものだから!」

果南「あーもう私は誰のものでもないから」

千歌「えぇー?!」

鞠莉「なんでよ!」

果南「なんでって…」

キーンコーンカーンコーン

果南「ほら、ホームルーム始まるから解散解散」

千歌「ぶぅ~…」

鞠莉「は~いじゃあいきましょうか・な・ん★」

千歌「もう!果南ちゃんなんか知らない!」

果南「帰ったら一緒にいてあげるから」

千歌「ホント?!」キラキラ

果南「うん、約束するよ」

千歌「ぅやったー!よーしいってくるよー!」

千歌「着地!」

フワァ…

千歌「じゃあ後でー!」

鞠莉「まだまだ子供ねぇ」

果南「鞠莉もね」

鞠莉「はぁ?!なんでよ!」

果南「争いは同じレベルでしか発生しないのよ」

鞠莉「ぐぬぬ……」

果南「まぁとりあえず行きましょう」

スタスタスタ

鞠莉「…これでもね、感謝しきれないほどに感謝してるのよ」

果南「………」

鞠莉「この世界に来たのは二年前だったかな」

果南「二年前?」

鞠莉「もうすぐ高校一年生って時に急にここにきたのよ、私は一人っ子だし親も忙しくて構ってくれないから最初はこの世界が魔法の世界だなんてわからなかったのよ」

果南「!」

果南(高校一年生手前で…?)

果南(…たまたまか)

鞠莉「でも学校に来たら見たことない建物や部屋があるしみんな何かしら奇妙なことしてるし」

鞠莉「あ、奇妙なことって魔法の事ね」

果南「うん、分かるよ」

鞠莉「果南やダイヤにおはようって元気よく挨拶したら軽くあしらわれてね…そこからよ、私の孤独は」

鞠莉「段々と無視されたり疎遠されたりするうちに一人の方がいいなって思って…」

果南「…そっか」

ギューッ

果南「!」

鞠莉「千歌ちゃんといるのはいいけど私ともいてよ?」

果南「はいはい、分かったよ」

果南(二年前か…)

果南(私の近くにいた鞠莉もそのくらいだったかな…)

果南(交通事故で…)

果南「………」

~家

千歌「えへへ~お姉ちゃあ~ん!」

果南「なになにあんまり引っ付いてると引っ付き虫って呼ぶよ?」

千歌「もー!酷いなー!」

千歌「…あ、そういえばどう?この世界は」

果南「うん、すごくいいと思うよ」

千歌「前の世界とどっちがいい?」

千歌「…もし戻れたら戻る?」

果南「えっ……」


鞠莉『うん!そのかわりこれからずっと一緒にいてね?』

千歌『「…もー!お姉ちゃんは私のなのに!!!』

果南「…ごめん、分からないや」

千歌「そっか、変なこと聞いちゃったね、ごめんね」

千歌「でも、これからも一緒にいてくれるんでしょ?」

果南「うん、いるよ」

果南「戻るつもりでいても結局帰る方法が分からないしね」

千歌「…やっぱりもし戻れたら帰るの?」

果南「…ごめん、ノーコメント」

千歌「そっか…」

果南「さてもう寝よ?明日は模擬戦結構あるでしょ」

千歌「うん!分かった!」

果南「おやすみ」

千歌「おやすみ!」

~次の日、朝

千歌「うわぁああああ?!?!」

果南「うるさいな…どうしたの?」

千歌「ど、どうしたってなんで果南ちゃんが私の部屋に…」

千歌「いやそこじゃなくて果南ちゃんは死んだはずなのになんでここにいるの…?」

果南「は?」

果南「!」

果南(私が千歌の部屋に来た時と同じだ…もしかしてこの千歌も…)

果南「…ん?ちょっとまって私が死んだって…」

千歌「三年生になって少し経った頃に階段から転げ落ちて死んじゃって…」

果南「階段から…?」

果南(…あれ?私この世界にくる前日何してたんだっけ…)

果南「思い出せない…」

千歌「…?」

果南「千歌、昨日何してた?」

千歌「昨日…?昨日はえっと…あれ…何してたっけ…?」

果南「一昨日は?」

千歌「一昨日は曜ちゃんと梨子ちゃんと私で松月に行ったよ」

果南「じゃあ昨日は?」

千歌「それが昨日の記憶が全くなくて…」

果南「………」

果南「千歌、その私っていつ死んだ?」

果南「三年生になって少し経った頃っていつ?」

千歌「え、えっと詳しくは覚えてないけど五月だよ」

果南「五月…」

千歌『とにかく早く学校いくよ!五月で色々強化期間なんだから急がないと!』

果南「…!」

果南「まさかあの鞠莉って…」

ギュッ

千歌「ふぇ?」

果南「詳しい話は後でするから早く支度して!学校いくよ!」

千歌「う、うん!」



果南「距離!」

千歌「ええ?!果南ちゃん何したの?!」

果南「いいから!」

タッタッタッ

果南「これで迷惑にならない程度に距離を縮めて時間短縮してくよ!」ダッ

ピタッ

果南「いや違う…」

果南「千歌!」

千歌「は、はい!」

果南「鞄よ浮けって心の中で言って!」

千歌「う、うん!」

千歌(鞄よ浮け!)

フワァ…

千歌「えぇ?!なにこれ?!」

果南「よっと、その鞄に座って」

千歌「で、でも落ちちゃうよ!」

果南「大丈夫」

ギュッ

果南「絶対に落とさないから」

千歌「…!」ドキッ

千歌「う、うん!」

果南「よし!それで心の中で浦の星女学院に向かえって言って」

千歌「わ、分かったよ」

千歌(浦の星女学院に向かえ…でいいのかな…?)

千歌「うわぁ?!??!」

千歌「浮いてるー?!」

千歌「速い!速いよぉ!?」

果南「距離!」

千歌「うわわわ?!」

千歌「空が飛べるんだったら瞬間移動でも使ってよー!」

シュイン

果南「わぁ?!」

千歌「ほ、ほんとに瞬間移動した…」

千歌「ここは…浦の星女学院…?」

千歌(なんか外見は一緒だけど中は違うような…)

果南「あれ…千歌って物体を操る魔法だったんじゃ…」

果南「………」

ギュッ

果南「まぁそれも兼ねて今すぐ鞠莉に会いに行くよ!」

千歌「引っ張らないでぇ~!」

~理事長室

鞠莉「…確かに私もこの世界にきた前日の記憶がない」

果南「やっぱり…」

果南「ねぇもしかしてなんだけどさ」


果南「私たち、同じ世界で死んでここに来たんじゃないの?」


千歌「え…」

鞠莉「!」

果南「千歌にも確認を取ったけど私がこの世界にきた前日と千歌がいう私の死んだ日は多分同日なの」

千歌「じゃ、じゃあ私は死んだってこと…?」

果南「分からない…」

果南「確認方法が無いのよ…」

千歌「………」

千歌「あ、そういえばここの世界って…」

鞠莉「魔法が使える世界よ」

千歌「魔法って…」

果南「千歌は物体を操る魔法が使えるはずなんだけどさっき瞬間移動が出来たのよ」

鞠莉「それほんと?」

果南「ええ」

鞠莉「……ねぇ私一つ思ったことがあるから試していい?」

果南「何?」

鞠莉「果南にしたイレギュラーテストよ」

果南「千歌にもやらせるの?」

鞠莉「ええ、簡単だから」

鞠莉「千歌ちゃん」

千歌「な、なんでしょう…」

鞠莉「私を浮かせることって出来る?」

果南「心の中で鞠莉浮けって言えば浮くよ、そういう魔法があるならばだけど」

千歌「う、うん…」

千歌(鞠莉さん浮いて…)

フワァ…

鞠莉「浮いた…わね」

千歌「わぁ…奇跡だ…人が飛んでる…」

果南「さっきも飛んでたでしょ」

鞠莉「次、波導が使える?」

千歌「波導?」

果南「目を瞑って波導って心の中で言うと目を瞑ったままでも前が見えるようになるんだ、煙とか暗い場所だとこっちの方がよく見えて便利なんだって」

千歌「そ、そっかやってみるね」

千歌(波導…)

千歌「………!」

千歌「前…見えるよ…」

鞠莉「どんな感じ?サーモグラフィーみたいになってない?」

千歌「そのまま…いつも見てる感じ…」

鞠莉「なるほど…もう分かったわ」

果南「何?」

鞠莉「千歌ちゃんの魔法は…」


鞠莉「イレギュラー、奇跡を操る魔法よ」


~家

千歌「……私たち一回死んだんだね」

果南「みたいだね…」

千歌「ねぇ私たちどうすればいいの…?」



鞠莉『今出た会話をまとめると…』

鞠莉『イレギュラー、九つの内の八つに分類できない魔法全ての事を示す』

鞠莉『しかしイレギュラーの真実は違う』

鞠莉『時代はどの世界線にも繋がってた、一回死ねばその時死んだ年齢のまま別の世界に移される』

鞠莉『私たちが今いる世界は一回死んだら移される世界』

鞠莉『死んだ人間はイレギュラーへと変わりこの世界に移される』

鞠莉「間違いない?』

果南『ええ…』

千歌『………』


果南「イレギュラーとして生きていくしかないよ」

果南「私と千歌と鞠莉、この三人で頑張ろう?」

千歌「…うん!分かった!」

果南(私たちは一生を終わりにし二生目を生きていくことにした)

果南(イレギュラー、それはバランス崩壊魔法のことではなく)


果南(前の世界で死んだ人間のことだ)


果南(でもそれを知るのはイレギュラーの人間だけ)

果南(きっと私の最初の世界にいるみんなは私が…いや私や千歌、鞠莉が天国に行ったと思ってる)

果南(世界の型の仕組みを一生で知る人間はおそらくこの先もいないのかもしれない)

END

~~~

理事長「転生って言葉、知ってますか?」

理事長「死んだら生き返りません、そうであるように私たち人々は死んだ先が分かりません」

理事長「死んでみないとわかりません、その先に新しい世界があったとしてもそれを死ぬ前の世界に伝える術は一切ありません」

理事長「あなたは世界の真実を知っています、知ってるということはもしかしたらここが二番目の世界かもしれませんよ?」

理事長「さて私たちの世界のイレギュラーはどういう人たちでしょうか?」

理事長「天才、でしょうか?強運の持ち主、でしょうか?」

理事長「分かりませんね、それを知ってるのは死んでこの世界に来た人たちだけですから」

理事長「そして私はここで魔法を発動!」

理事長「イレギュラー!今すぐ話を終わらせる魔法よ!」

理事長「話よ、終われ!」

ピッ

八つ目終わりです
この物語書いててとても楽しかったのでこのSSが終わった次はこれの死んだ先の世界とかいうの関係なく丁寧に設定を練り直してバトル系みたいなのを作ろうかなと考えてます
わざわざ九つの力の設定まで用意したのにストーリーでは二つ(名前だけなら三つ)しか出てこなかったのでそれを無駄にしないためにもとりあえず挑戦はしてみます
それとルビィのストーリーですけど一昨日少し作ってみたんですがなんか意識して作るとどうも納得いくのが作れないのでもしかしたらそのまま九つ目に行くかもという予防線だけ張っておきます(明後日まで挑戦して何も作れなかったら九つ目やります)
九つ目はμ’s版と同じように他のストーリーの二倍の長さがありますがその時もよろしくお願いします

今からほんの少しだけ更新しますが今からやるのは九つ目の更新になります
ルビィのストーリーはあれ(二日前)からちゃんと最後まで作って見直しして没になったストーリーが一つ、途中まで作ってダメと判断したやつのが一つ、テーマだけ考えて最初の部分だけ書いて面白くないってなって没になったのが三つでこのままやっても時間食うだけだと判断したのでルビィのリベンジストーリーは無しにします、勝手に言い出しといて勝手にやめるのはどうかと思ったんですが納得出来るストーリーを作れるまで繰り返してたらいつまでかかるか分からないので悔しいですけど仕方がないと考えています
それと九つ目の話なんですけどこのストーリーには普通にあの人たちが出ますけどあくまで主役は“Aqours”です

~~~~~

理事長「あなたはやり残したこと、ありませんか?」

理事長「大人になってもっと勉強しとけばよかった、歳を重ねてもっとやりたいことやればよかった」

理事長「“あの時”の決断に悔やむこと、絶対にあると思います」

理事長「タイムマシンは理論上として話を進めても実際には作ることは出来ません、作れたとしてもそれは自分が死んでなおもっと歳月が経たないと作れないでしょう」

理事長「しかし私たちの世界もそんな理論と実践だけの世界ではありません、過去に行く手段はタイムマシンを作ることだけではありません」

理事長「今からでも間に合います、いやいつでも間に合います、ですからやり残したこと、今すぐにでもやりにいきましょう」

理事長「あなたの過去とあなたの未来にために……」

~~~

『…投票結果が発表されましたわ』

『………』

『………』



Aqours 0

『…まぁ仕方ないですわ、歌えなかったんですもの』

『………』

『………』


『スクールアイドル…やめますか?』



【過去まで送ります】

「おーい!曜ちゃん!始めるよー!絶対に!」

「分かった分かった!協力するからそんな引っ張らないでって!」

「スクールアイドル、μ’sのように輝くんだー!」

「お、おー?」

ダイヤ「………」

ルビィ「お姉ちゃん?」

ダイヤ「ん?あ、ルビィですか、どうかしましたか?」

ルビィ「いや…あの人たち見てたから…」

ルビィ「スクールアイドル…やるって言ってたね…」

ダイヤ「私は反対ですわ」

ルビィ「どうして…?」

ダイヤ「それは……」


ダイヤ「わたくしがスクールアイドルを認められないからです」


ダイヤ(スクールアイドル…私たちの二の舞になるのが見えますわ…)

ダイヤ(…私の為にもあの子たちの為にもスクールアイドルの受理は反対せねばなりませんね…)

ダイヤ(そして私は……)

ダイヤ(…いえ、やめましょう)

ダイヤ「こんなところにつったってないで早く教室に行きなさい、スクールアイドルなんぞ遠い話ですわ」

ルビィ「う、うん…」

ルビィ「じゃ、じゃあね!」

ダイヤ「また後で」

スタスタスタ

ダイヤ「ふう…」

ダイヤ「果南さんは休学、鞠莉さんは転校してしまってはもう手の付けようがありません…」

ダイヤ「もう一度Aqoursを…」

ダイヤ「そのためにはわたくしが頑張らねば!」

~??

「今日も頑張ってね!」

ダイヤ「もちろんです!」

「ごめんなさい、ホントはもうあなたは過去にいってるはずなのに私のせいで…」

ダイヤ「いえいえ絵里さんはわたくしの恩人なんですからこのくらいはどうということないです!」

絵里「ごめんなさい、私の免許が返ってきたらすぐに過去まで送るからね」

ダイヤ「は、はい!」

「いってらっしゃーい」

ダイヤ「あ、ちょっと何か食べてから行きます、そうですね…ホットケーキでお願いしますわ」

「はーい、待っててやー」

ダイヤ「ここのバーも長らくお世話になってますわね…」

絵里「決まった客しかこないからいつもの顔ぶれに自動的に入ってたもんね」

ダイヤ「ええ…あのタクシーの関係者しか来ませんものね」

絵里「ホントごめんね!まさかあそこで引っかかるなんて…」

ダイヤ「し、仕方ありませんわ」

「はい、お待ちどーさん」

ダイヤ「ありがとうございます、希さん」

希「いいっていいって、ウチのやることっていったらこのくらいしかないからねー」

希「えりちは早く免許返してもらってダイヤちゃん送ってあげなよ?」

絵里「分かってるわよ」

希「スピード違反で捕まって免許没収なんて笑えないで?」

絵里「…分かってるわよ」ムスッ

希「あ、そういえば今日な、このバーに新しい店員さんがくるんよ」

絵里「え?急にどうして?」

希「ん?いやウチも詳しい理由は聞いてない、というか誰が来るのかすら聞いてないんよ」

ダイヤ「だ、大丈夫なんですかそれ…?」

希「大丈夫大丈夫!ここに野蛮な人はこれないからね、これる時点でしっかり者確定や」

カランカラン

「し、失礼します…!」

希「あ、新入りさん?」

「は、はい!」

梨子「桜内梨子と言います!今日からここでお手伝いをさせていただきます!よろしくお願いします!」

希「うん!よろしく、ウチがここのバーの店長!東條希!よろしくなー」

絵里「…あ、私はこの店の常連的な人、絢瀬絵里よ、よろしく」

ダイヤ「絵里さんと同じく、黒澤ダイヤですわ、よろしくお願いしますね」

梨子「よろしくお願いします!」

希「新入りさんのためにちょっとだけ説明な、ここはとあるタクシーの関係者だけがこれるバーなんよ」

希「そのタクシーっていうのは過去に行けるタクシーのこと、これに乗って過去に行くことが出来るんよ」

希「ダイヤちゃんはその運転手さん、まだ高校生だけど特許みたいなので認められてるんよ」

梨子「こ、高校生なんですか…」

ダイヤ「え、ええ…」

希「ただ過去に行くとは言ってもな、完全に過去に行くことは出来ない、やり残したことだけをやってまたこの現在に帰らなきゃならない、過去にいってそのままそこにいたらこっちの本人は行方不明やもん」

梨子「確かに…」

希「だからこのタクシーの本来の目的は過去に行くことじゃなくてやり残したことを無くすためのタクシーなんよ」

希「えりちは元運転手って感じでスピード違反して免許没収、それでその免許の権利をダイヤちゃんが受け継いでるって感じ」

梨子「そ、そうなんですか…」

絵里「いやぁ…あんまり変な目で見ないで…」

ダイヤ「ど、どんまいですわ…」

ピーピーピー

ダイヤ「!」

ダイヤ「すいません、そろそろいかないとダメみたいですので行ってきます」

希「いってらっしゃい!」

ダイヤ「このホットケーキは皆さんに差し上げますわ、また口もつけてないのでご安心を」

ダイヤ「では!」

カランカラン

ダイヤ「…ふー今日も一日頑張りますわ!」



ブッブー

ダイヤ「田舎ですからお客さんもあんまりいませんわね…」

ダイヤ「あ、手を挙げてる人がいますわ」

プー!

「すいません、夜分遅くに」

ダイヤ「いえいえ、どちらへいきますか?」

ダイヤ「…ちなみに過去に行くこともできますが」

「は…?過去?」

ダイヤ「あの…失礼ながらお名前は…」

善子「善子よ、善子」

ダイヤ「で、では善子さんは何か過去でやり残したことがあるようでしたらその過去に行くことが出来ますよ、もちろんやり終えたら現代に戻りますが」

ダイヤ「料金は昔行くほど変わります、一年進むごとに料金が100円増えます」

ダイヤ「どうですか?」

善子「い、いや…まず過去にいくって…」

ダイヤ「ちなみにどこにおいきなるつもりでしたか?」

善子「えっ…ちょっとお寺の方に…」

ダイヤ「そうでしたか、過去にいってる間に経った時間はここの時間には比例しないので時間は消費しませんよ」

ダイヤ「それに過去から現代に戻ったらちゃんとそのお寺までお送りします」

ダイヤ「どうですか?」

善子「…なんでそんな進めてくるのよ」

ダイヤ「わたくしもこの過去にいくタクシーにお世話になってるもので…」

ダイヤ「過去に行く機会なんてわたくしたちの一生に無いと思います、過去に行けるなら行った方がわたくしは良いと思います」

ダイヤ「もちろん料金は発生しますし強要するものではありませんが…」

善子「……じゃあその過去とやらにいくわ」

ダイヤ「どちらへ?」

善子「じゃあ三年前に行くわ」

ダイヤ「三年前?どのようなご要件で?」

善子「…喋らなきゃダメ?」

ダイヤ「いえ、喋らなくても結構です、では三年前ですね」

ダイヤ「出発します」

ブッブー

善子「わぁ…?!なにこれ?!」

ダイヤ「時空間ですよ、ド〇えもんのタイムマシンでどこかへ行くときに通るあの空間的なやつです」

善子「まさか本当に…?!」

プー!

ダイヤ「到着です、わたくしはここで待ってますのでどうぞやり残したことをしてきてください」

善子「明るいわね…」

ダイヤ「どうせやるなら夜より昼の方がやりやすいかと思いまして…」

善子「なるほど…」

ダイヤ「万が一こちらの方で何かがあればこちらから善子さんを迎えに行きますわ」

善子「わ、分かったわ…」

善子「じゃあ行ってくるわね!」

ダイヤ「ええ、いってらっしゃいませ」

ダイヤ「……ふぅ」

ダイヤ「待ってる間スクフェスやらなんやらでもしてましょう」

~二時間後

ダイヤ「あぁ親指はやはりやりにくい…車の中では親指でしかできないのは不便ですわ」

ダイヤ「…そういえば善子さんは何をしているのでしょう」

ダイヤ「ここは三年前の内浦…ちょっと散歩でもしてみますか」

スタスタスタ

ダイヤ「ここの海はいつでも綺麗ですわ…青く透き通って…」

ダイヤ「透き通って………」

果南『よーし!私たちもスクールアイドル頑張るぞー!』

ダイヤ『ちょ、ちょっと果南さん!スクールアイドルなんてまた…!』

果南『絶対やるよ!私もμ’sみたいに輝きたい!』

ダイヤ『みゅ、μ’s?』

果南『伝説のスクールアイドル!ダイヤも協力してね!』

ギュッ

ダイヤ『ちょっ急に走らないでくださーい!』

果南『明日鞠莉を誘うよ!私たち三人で輝きましょう!』

タッタッタッ

ダイヤ『もう一体なんですのー?!』

ダイヤ「……ふふっ」

ダイヤ「そういえばこの浜辺が始まりの場所でしたね」

ダイヤ「この浜辺で練習したこともありましたっけね…」

果南『あくあ?』

鞠莉『そう!アクア!』

ダイヤ『アクアということはえーきゅーゆーえーでAQUA、ということですか?』

鞠莉『NONO!』

鞠莉『こうよ!』カキカキ

ダイヤ『えーきゅーおーゆー…』

果南「Aqours…』

果南『…あこーず?』

鞠莉『だから違うって!アクア!』

ダイヤ「Aqours…待っててくださいね」

ダイヤ「絵里さんの免許が返ってきたら必ず成功へ導きますので…!」

ダイヤ「…帰りましょうか」

スタスタスタ

ダイヤ「おや?あれは善子さん…?」

ダイヤ「善子さん?」

善子「うひゃあ?!なんでここにいるのよ!」

ダイヤ「わたくしも三年前の内浦を観光してましたわ」

善子「別に私は観光目的で来たわけじゃ…」

ダイヤ「まぁそれは置いといてここで何をしてますの?」

善子「…あそこよ」

ダイヤ「ん?」

よしこ「よしもうすぐ中学生!リトルデーモン増やしていくわよー!!!」

よしこ「あ!そこの人!私のリトルデーモンにならない?」キリッ

ダイヤ「なんかすごい盛り上がってる子がいますわね…」

善子「あれは私、まぁ見ての通りすごく痛い子なのよ」

善子「中学校ではぶっ飛んだことしまくってたわね、もちろん変な目では見られたけど友達はまだいたわ」

善子「中学校生活は失敗…とも言わないけど成功とも言えない感じだった」

善子「だから今度は私が教えて成功にしてあげようかなって」

ダイヤ「なら何故ここに…」

善子「なんか私を見てたらあのままでいいかなって思い始めて」

ダイヤ「…わたくしは何も言いませんわ、善子さんが決めることです」

善子「……いいわ、帰るわ」

ダイヤ「よろしいのですか?お金を失うだけですが…」

善子「いいわよ、なんかちょっとだけ答え分かった気がしたし」

ダイヤ「答え…?」

よしこ「ねー!そこのあなた!」

善子「ん?」

よしこ「?!あなた私そっくりね!はっ!これは運命…!」

よしこ「あなた!私のリトルデーモンにならない?!」

善子「ふっ…いいわよ」

よしこ「ホント?!」

善子「でもそれはあなたが一人前になってからね」

善子「いうなれば…そう、堕天使ヨハネ…!」

善子「それがこれからのあなたの名前よ」

善子「いざ往くのです、虚構の彼方、まだ存在しないゼロの世界をイチにしてからまた私に会いにきなさい」

善子「そしたらあなたのリトルデーモンになってあげるわ」

よしこ「わぁ…堕天使ヨハネ…!」キラキラ

よしこ「分かった!絶対にあなたをリトルデーモンにするわ!」

善子「ええ待ってるわね」

善子「それじゃあ私はこれで」

よしこ「うん!ばいばい!」

善子「ばいばい」

スタスタスタ

ダイヤ「なんていうか…すごいお方ですわね…あなた…」

善子「ふっ堕天使ヨハネを褒めると高くつくわよ?」

ダイヤ「…?」

善子「もう!せっかく堕天使ヨハネになってあげたのにそんな反応しないでよ!」

ダイヤ「す、すいません…」

善子「もーさっさとお寺まで送って」

ダイヤ「わ、分かりましたわ…」



ダイヤ「お寺に到着です」

善子「はい、じゃあこれお金ね」

ダイヤ「ぴったりとは意外ですね」

善子「何よ?そんな大雑把に見える?」

ダイヤ「いえ…いやはいというべきでしょうか…」

善子「そうですかそうですか!」

ダイヤ「あ、失礼しました…」

善子「はいはい、じゃあ私は行くわね」

ダイヤ「またのご利用お待ちしておりますわ」

ダイヤ「…面白い方でしたわね」

ダイヤ「ふぅ今日はもう遅いですし車を返して帰りましょう」



絵里「お疲れ様!」

ダイヤ「お疲れ様ですわ」

希「おつかれさーん」

梨子「お疲れ様です!」

ダイヤ「今日面白い方に出会いましたわ、すごくキャラが濃い方に」

希「へぇ~にこっちが喜びそうやん」

ダイヤ「にこさんはああ見えて今でも人材探してますからね」

絵里「流石私たちの広報係ってところね」

ダイヤ「…あ、すいませんわたくしはそろそろ行きますね、また明日」

希「はーい、また明日なー」

絵里「また明日会いましょう!」

梨子「お疲れ様でした!」

あんまり進みませんでしたが中断します

~数日後、学校

「だ~か~ら~!お願いって!」

梨子「こ、困ります…私は別にスクールアイドルなんて…」

「お願い!そこをなんとか!」

梨子「そこをなんとかって言われたって…」

ダイヤ「梨子さん…?」

梨子「あれ?!ダイヤさんどうしてここに?!」

「ん?知り合い?」

梨子「あ、うん…色々あって…」

ダイヤ「その制服…」

ダイヤ「あなたもこの学校の生徒でしたか…」

梨子「ということはダイヤさんも…」

ダイヤ「ええ、三年生ですわ」

梨子「す、すごい偶然ですね…」

ダイヤ「え、ええ…」

ダイヤ「ところで何か揉めてるようでしたが?」

梨子「あ、いえ…なんでもないんです」

梨子「ただの話し合いです」

ダイヤ「そ、そうですか…」

梨子「ごめんね、私先帰るね」

「あ、ちょっと待ってー!」ダッ

ダイヤ「梨子さんはここの生徒でしたか…」

ダイヤ「それにしてもあのオレンジ色の髪の子は…」

『スクールアイドル!μ’sのように輝くんだー!』

ダイヤ「果南さんにすごく似てて…」

ダイヤ「そしてあの子は…」

ダイヤ(絶対に失敗しますわね…)

ダイヤ「…あ、いけません早く絵里さんのところにいかなくては」



カランカラン

希「いらっしゃーいってダイヤちゃんか、仕事の時間はまだだよー」

ダイヤ「え、ええ少し早く来過ぎましたので少しここでゆっくりしてますわ」

希「りょーかーい」

希「はい、ウチからサービスの紅茶や」

ダイヤ「あ、どうもありがとうございます…」

希「まだまだウチらは長い付き合いになりそうやからね、その祝福や」

ダイヤ「と、いうと?」

希「カードがウチにそう告げてるんよ」

ダイヤ「な、なるほど…」

ダイヤ「希さんってなんでこのバー始めたんですか?」

希「んー?えりちがウチのスピリチュアルパワー借りたいって言ってたからやっぱり休めて盛り上がれる場所は必要かなーって思ったんよ」

ダイヤ「ん、ん?」

希「過去にいけるのはウチのスピリチュアルパワーのおかげなんやで?」ニヤニヤ

ダイヤ「そうなんですか?!」

希「当たり前やん!それで始めたのがこのタクシー会社!今は中堅会社くらいは名乗れるくらいに大きくなって安定もしてきてるやんね」

ダイヤ「え、ええ…」

ダイヤ(やっぱりすごいですわ…絵里さんも希さんも…)

ダイヤ(とても敵いません…)

ダイヤ「…そろそろ出ますわね」

希「えーもっとゆっくりしてけばええのに」

カランカラン

絵里「あら、もう来てるのね」

ダイヤ「こんにちは絵里さん、もうすぐ出ますわ」

絵里「そんな急がなくて大丈夫よ?」

ダイヤ「いえ!お仕事頑張ります!」

ダイヤ「希さんには悪いですがその紅茶は絵里さんに差し上げますわ!希さんごめんなさい!」

希「ええってええって」

絵里「じゃあお言葉に甘えて…」

ダイヤ「ではまた後で!」

希「いってらっしゃーい」

カランカラン

絵里「………」ゴクッ


絵里「あっつ!!」



ブッブー

ダイヤ「走り始めたものの…なんだか流石に早すぎましたわね…」

ダイヤ「あら手を挙げてる人がいますわ、すごいお嬢様っぽい人…」

プー

「すいません…ここが過去にいけるタクシーですか?」

ダイヤ「え?」

「え…あっ…ち、違うならす、すいません…降ります…」

ダイヤ「いえこのタクシーで間違ってませんが…」

「うぇえ?!ホントに行けるの?!」

ダイヤ「え、ええまぁ…」

ダイヤ「しかしその情報をどこから…」

「えっと…にこちゃ…じゃなくて知り合いからこの地域にそういうタクシーがあるって…」

ダイヤ(にこちゃ…?)

ダイヤ「そ、そうですか…」

ダイヤ(もしかしてネットとかではもう有名なのでしょうか…)

ダイヤ(それだとしたら色々まずいことが…)

「…?何?」

ダイヤ「あ、いえ…失礼ですがお名前をお聞きしてもよろしいでしょうか?」

真姫「真姫よ」

ダイヤ「真姫さんですか、では真姫さんどちらへ?」

ダイヤ(サングラスにめちゃくちゃセレブっぽい服…おしゃれな帽子までして絶対お嬢様ですわ…)

真姫「えっとじゅうに」

「ちょっと待ったー!」

ダイヤ「!?」ピクッ

「ねぇ!私を先に連れてって!お金はこの人の倍出すから!」

真姫「はぁ?!何よ後から入ってきたくせに!」

真姫「お金で何とでもなると思わないで!」

「こっちは急いでるのよ!あなたにも行き先までのお金渡すから譲って!お願い!」

真姫「お金なんていらないわよ!」

ダイヤ「ちょ、ちょっと二人とも…」

ダイヤ「…あれ?」

「ん?なに?」

真姫「何?今この人と話し合ってるんだけど!」

ダイヤ(サングラスにセレブっぽい服…しかもおしゃれな帽子…)


ダイヤ(まさかこの人もお嬢様…?!)


ダイヤ(まずいことになりましたわ…二つの派閥のお嬢様が対立してますわ…)

「いいわ、ならこの小原家総勢兼小原鞠莉があなたの相手してあげるわ」

真姫「ふっ小原だか野原だか知らないけどこの私、西木野家に勝てると思う?」

真姫「焼け野原にしてあげるわ!」

鞠莉「小原よ!お・は・ら!」

ダイヤ「小原…?西木野…?」

ダイヤ「………」

ダイヤ「あー!!!?」

真姫「?!」ピクッ

「わっ?!」

ダイヤ「あ、す、すいません…」

ダイヤ(真姫さんって西木野真姫さんでしたか…それに小原って鞠莉さんですわ…)

ダイヤ(帰ってきてたのですか…果南さんには…)


ダイヤ(伝えないほうがいいですわね…)


鞠莉「とにかくいいわね?私が先ってことで」

真姫「は?私そんなこと一言もいってないんだけど?」

鞠莉「あなた私より年上でしょ?ここは可愛い年下の女の子を優先するのが普通でしょ?」

真姫「その逆よ!年上だから私が先、後可愛くないから」

鞠莉「あ?」

真姫「い?」

鞠莉「う?」

鞠莉「って違うから!」

真姫「大体先来たのは私なの、モラルというものがあるでしょ?」

ダイヤ「まり…じゃなくてそ、そこの黄色の髪の方はもうあきらめるしか…流石に順番はありますから…」

鞠莉「むー…あなたどこへ行くのよ」

真姫「十年前」

鞠莉「は?」

真姫「このタクシーは過去に行けるのよ、そんなことも知らないの?」フフッ

ダイヤ(いや真姫さんもさっき知ったばっかじゃ…)

鞠莉「むきー!!!何なのこいつ!!」

鞠莉「いいわ!じゃあその過去とやらに連れていってよ!」

ダイヤ「い、いいですか料金が」

鞠莉「いいわよいくらでも払うから早く!」

ダイヤ「い、いいですか?」

真姫「いいわよ、こいつが邪魔さえしてこなければ」

ダイヤ「では十年前に行きますね」

ダイヤ「出発します」

ブッブー

鞠莉「っ?!」

真姫「にこちゃんのいう通りだ…なにこれ…」

プー!

ダイヤ「到着です、やることをやったらまたここに戻ってきてください」

ダイヤ「現実の方へ返しますので」

鞠莉「ほんとに過去なの?」

ダイヤ「はい、過去です」

ダイヤ「お時間はそうですね…二時間くらいならいいですがそれ以上かかるのであれば追加料金をいただきますわ」

真姫「分かったわ、それじゃあ私はもう行くわね、時間に追われてるなら急がなきゃ」

タッタッタッ

ダイヤ「あなたはどうしますか?ここに来た以上あの方が帰るまでは帰れませんよ」

鞠莉「わ、分かってるわよ…」

鞠莉「…そういえばあなたってそっくりね」

ダイヤ「!?」ピクッ

ダイヤ「な、何がですか?」

鞠莉「昔の友達にほんとそっくりね!」

鞠莉「でもまだ車運転できる歳にはなってないから別人なんだろうけど…」

ダイヤ「ど、どんな方でしたの?」

鞠莉「うーんポンコツだったわねー」

ダイヤ「ぽんこっ…」

鞠莉「でも友達とか人のことになると生真面目な性格に変わるのよね、すごくいい子だったわ」

ダイヤ「そ、そうなんですか…」テレテレ

鞠莉「小学校の頃から友達で高校一年生から急に関係が近くなったんだけどその後色々あって一年もしないうちに海外に留学して離れちゃって…」

鞠莉「だから私はまたここに帰ってきてやり残したことをやりにきたのよ!」

ダイヤ「やり残したこと?」

鞠莉「すくぅあいどぉ!」

ダイヤ「すくぅあいどぉ?スクールアイドル?」

鞠莉「いえす!」

鞠莉「昔もやってたのよ!だからまたやるの!昔のメンバーで!」

ダイヤ「そ、そうなんですか…」

ダイヤ(鞠莉さんはそんなこと考えてるのですか…)

ダイヤ(ですが果南さんは…それにわたくしも…)

ダイヤ「……頑張ってくださいね」

鞠莉「ええ!」

鞠莉「じゃあ私もどこへ行こうかしら、ここでじっとしてるのも面白くないし」

ダイヤ「…わたくしも行ってもよろしいですか?」

鞠莉「え?まぁいいけど…」

ダイヤ「…イヤですか?」

鞠莉「うーんちょっと一人でいたいかも!」

ダイヤ「そ、そうですか…じゃあ私は別行動しますね」

鞠莉「うん!分かったわ!それじゃあまた後で!」

ダイヤ「また後で」

スタスタスタ

ダイヤ「…はぁ」

ダイヤ「スクールアイドル…鞠莉さんも気持ちは同じなのですね…」

ダイヤ「ですが気持ちだけ同じでも…」

ダイヤ(今からではどうにもなりません…なったとしてもどうしろというのですか…)

スタスタスタ

ダイヤ「とりあえず懐かしい感じがしますわ」

ダイヤ(田舎ですから静かですわね…賑やかでも正直困りますが…)

ヒュー!

ダイヤ「潮風が気持ちいいですわ…」

ダイヤ(まぁこの風のせいで錆が加速するんですが…)

ダイヤ「あ、このお店懐かしいですわね!」

ダイヤ「よくルビィと駄菓子買いに行った覚えがありますわ!」

ダイヤ(少し寄っていきましょうか)



ダイヤ「ふぅ懐かしいものだらけで色々買ってしまいましたわ、ヤングドーナツを二つずつ分けて食べようって買うのに結局ルビィが三つ食べてましたわね…」

ガサゴソ

ダイヤ「そしてこれ!ポテトフライの駄菓子!私もルビィも必ず買ってましたわ!」

ダイヤ「うまい棒は定番のチョコよりコーンポタージュ派でしたわ、ルビィはチョコでしたが」

ダイヤ「って…」

ダイヤ(何をわたくしは駄菓子に夢中になってるのでしょうか…)

ダイヤ「…駄菓子はルビィと一緒に食べましょう」



ダイヤ「鞠莉さんのホテルは健在ですわね…」

ダイヤ「そしてよく果南さんと鞠莉さんとわたくしでよくあそこに…ってあれ?」

かなん「すくぅあいどぉ?なにそれ?」

鞠莉「すくぅあいどぉっていうのは高校生になったら出来ることよ!あなたたちは高校生になったら絶対にスクールアイドルをすることよ!」

だいや「あ、あいどる…きいたことあります、歌って踊ることをいう人だと」

かなん「ええー私はー歌うとかより泳ぐのがいいなー」

まり「え、えっと…」

ダイヤ「鞠莉…じゃなくて黄色の髪の方!!」

鞠莉「!」

鞠莉「あ、運転手さん!」

ダイヤ「安易に過去の自分に会ってはいけませんわ!会うだけで未来が変わったりすることもあるんですから!」

鞠莉「え?そうなの?」

ダイヤ「そうです!」

ダイヤ「ご、ごめんなさいお邪魔しましたわ」

ダイヤ「この黄色いお姉さんのことは気にしなくて結構ですので」

鞠莉「えぇ~?!ちゃんとやってよー!すくぅあいどぉ!!」

ズルズルズル

鞠莉「あぁんもう強引!」

だいや「い、いってしまいましたわ…」

かなん「あのおねえさんたちだいやちゃんとまりちゃんに似てたねー」

まり「う、うん…」



ダイヤ「過去の自分に会うならそれ相応の理由をもって会わないと過去がおかしくなってしまいますわ、実際そういう人がいたんですから、その人が存在しなくなってるっていうパラレルワールドに変わった時が」

鞠莉「そ、そんなに危ないの…」

ダイヤ「まぁ最悪って場合ですからそんな簡単にはおきませんが…」

鞠莉「…ん?そういえばどうして過去の私があの中にいるって分かったの?」

ダイヤ「っ?!」ピクッ

ダイヤ「か、髪型とかがそっくりでしたのでこれは、とお、思ったのですわ!」

鞠莉「………」ジーッ

ダイヤ「………」ダラダラ

鞠莉「まぁ確かに私の髪型は特徴的だし一目瞭然か」

ダイヤ「……ほっ」

鞠莉「なにその袋?」

ダイヤ「駄菓子ですわ、懐かしくてつい買ってしまいました」

鞠莉「私にも頂戴!」ガサゴソ

ダイヤ「あ、ちょっと!」

鞠莉「あ!タケノコの里!」

鞠莉「…とキノコの山…?」

鞠莉「えー?運転手さんまさか平和に両方派的な人?」

ダイヤ「いえキノコ派ですわ、るび…妹がタケノコ派なのですよ」

鞠莉「えぇ…キノコはないわ運転手さん!」

ダイヤ「なんですって!?キノコの方が美味しいじゃないですか!」

鞠莉「味は割とどうでもいいのよね」

ダイヤ「え?」

鞠莉「私キノコの上と下のバランスが嫌いなのよね、一口で食べようとするとなんか色々アレなのよ」

ダイヤ「アレ…?」

鞠莉「んー!なんか説明できないやつよ!come on!Inspiration!」

ダイヤ「は、はぁ…?」

ウェーンウェーン

ダイヤ「…なんか子供の泣き声しません?」

鞠莉「確かに…」

ダイヤ「こっちからでしょうか…?」

タッタッタッ

真姫「ちょ、ちょっと泣かないで!」

「うぇえええええええええん!」

真姫「あぁーもう!どうすればいいのよ!」

ダイヤ「真姫さん?!何してるのですか?!」

真姫「あぁ運転手さん…小さい時の私を泣かせちゃって…」

鞠莉「ふっそれだから独身なのよ、子供もろくに喜ばせることが出来ないなんて」

真姫「あ?私一言も独身なんていってないんですけど?」

鞠莉「実際独身でしょう?」

真姫「………」

鞠莉「ほーっらやっぱり」クスクス

真姫「うるさいわねぇ!なんならあんたが泣き止ませてみせなさいよ!」

まき「うぇええええええええええええええええ!!!!」

ダイヤ「うきぃ…!超大音量ですわぁ!」

真姫「あなたは私なんだからもっとしっかりしなさいっての…!」

鞠莉「いいじゃない、やってやるわ!」

鞠莉「よーしよしよしいい子いい子」ナデナデ

真姫「うぅ……」シクシク

鞠莉「どうしたの?何かあった?」

まき「あの赤いお姉ちゃんが…怖くて…」

鞠莉「ふっ…」

真姫「!」ピキッ

鞠莉「そっかそっか、怖かったね」

鞠莉「でももう大丈夫!私が来たからね」

鞠莉「あの赤いお姉ちゃんは確かに怖いからねー」

真姫「!!」ピキピキ

鞠莉「将来ああならないようにしなよ?独身とかじゃなくてちゃんとした人をもって」

カチンッ

真姫「黙って聞いてればべらべら私の悪口ばっか…!」

スタスタスタ

グイッ

鞠莉「うわっ?!」

ダイヤ「?!」

ダイヤ(む、胸ぐらを掴んで…)

真姫「あんた喧嘩でも売ってるの?!私はあんたと違って真剣に過去にきて過去の自分と向き合ってるの!」

真姫「それなのに小さい私は泣いちゃうしあんたには散々バカにされるし独身だってばれるし…」ポロポロ

真姫「泣きたいのはこっちよぉ…!」

ポロポロ…

鞠莉「あ、え…」

ダイヤ(独身のことめちゃくちゃ気にしてたみたいですわ…)

まき「う、うぅ…うわああああああああああん!」

鞠莉「え、ちょっあなたまで泣いてどうするのよ!」

真姫「泣かせたのはあんたでしょお…!」

まき「いみわかんなぁあああああい…!」

ダイヤ「はぁ…」

ダイヤ(いみわかんないのはこっちですわよ…)

ガサゴソ

ダイヤ「食べますか?おいしいですよ」

まき「うぅ…うぅん…?」

ダイヤ「タケノコの里とキノコの山どっちがいいですか?」

まき「たけのこ…」

ダイヤ「そうですか、ではどうぞ♪」

鞠莉「wow…泣き止ますのはやっ…」

真姫「私にもちょうだい…」

鞠莉「私も!」

ダイヤ「あまり食べちゃダメですわよ?」

真姫「…もう帰りましょう……」パクパク

鞠莉「え?いいの?」パクパク

真姫「もう諦めたわ…」

ダイヤ「い、いいんですか?」

真姫「ええ、もういいわ…」

ダイヤ「で、では…」

まき「おいしい!」パクパク

ダイヤ「そ、そうですかそれはよかったです♪」

真姫「私…じゃなくてまき」

まき「ん?」

真姫「この先迷ったらあなたのやりたいと思った方を選びなさい、それがあなたにとって一番楽しい選択だから」

まき「うん?」

真姫「…寂しくなったら私を思い出してよね!」


まき「うん!」ニコー


真姫「!!!」ポロッ

真姫「い、行きましょ!」ダッ

ダイヤ「え、ええ」

鞠莉「う、うん」



ダイヤ「では戻りますね」

真姫「ええ」

鞠莉「了解よ!」

ブッブー

鞠莉「はぁ疲れた…それにしてもとっても楽しかったわ、また来たい気分ね!」

ダイヤ「私が運転してる時ならいつでもいいですわよ」

鞠莉「ほんと?!また来るわね!」

真姫「はぁ…」

ダイヤ「…真姫さんは子供の時の真姫さんに何をしようとしてたのですか?」

真姫「音楽の素晴らしさを教えようかと…」

ダイヤ「音楽の素晴らしさ?」

真姫「私、音楽が無かったら人生7割くらいは損してたの、だから絶対に気付かせてやるんだって思ったんだけど…」

鞠莉「泣かせちゃったと」

真姫「………」シュン

鞠莉「まぁいいじゃない!これからよこれから!」

真姫「誰も結婚の話なんてしてないわよ!!」

真姫「だから色々道具だって…」

真姫「…ってあれ?」

ダイヤ「どうかしました?」

真姫「はぁ~…ポータブルピアノ過去に置いて来ちゃった…」

ダイヤ「す、すいません…いまから戻るのはちょっと…」

真姫「いいわよ別に、まだ新しいし誰かに使ってもらえると嬉しいわ」

鞠莉「あら意外と優しい」

真姫「何よ…このくらい普通でしょ」フンッ

ダイヤ「ふふふっ…」

~過去

まきママ「あら?そのピアノどうしたの?」

まき「赤いお姉ちゃんがくれたの!」

まきママ「赤いお姉ちゃん?」

まき「うん!これね!ここ押すと音がでるんだ!」

まき「これってどう使うの?教えて!」



ダイヤ「到着です、と、いっても真姫さんの行き先は過去でしたので具体的にはどこにも到着してませんが」

真姫「そう、じゃあ私はここで降りるわ」

ダイヤ「どこかへ行く予定があるようでしたら送りますが?」

真姫「…そんなに商売大事?」

ダイヤ「え?あ、いやそういうわけでは…」

真姫「ふふっ知ってるわよ」

真姫「別に送らなくていいわ、ここに用があったのはそれだけじゃないし」

真姫「それじゃあね」

スタスタスタ

ダイヤ「まり…じゃなくてあなたはどうしますか?」

鞠莉「うーん最初は送ってもらおうって思ってたけど過去にいって気分変わっちゃった!私もここで降りるわ!」

ダイヤ「分かりました」

鞠莉「素敵な旅をありがとう!絶対にまた来るわ!」

タッタッタッ

ダイヤ「またのご利用お待ちしております」

ダイヤ「ふぅ……疲れましたわ…」

ダイヤ「まさか鞠莉さんが帰ってきてるとは…」

ダイヤ「それに真姫さんまでここに来てるとは…」

鞠莉『だから私はまたここに帰ってきてやり残したことをやりにきたのよ!』

ダイヤ「鞠莉さん、あなたは……」

ダイヤ(この世界で自らの手でスクールアイドルを…わたくしたちの過去を取り戻せるのですか…?)

~約二週間後

「浦の星女学院のスクールアイドルすごかったね!」

「うん!歌もよかった!」

ダイヤ「………」

ダイヤ(あの後幾度となく断固拒否したはずなのに…)

ダイヤ(何故かあの方たちは輝きたいと頑張りたいと何かしたいと訴え続けて体育館を人で埋めるほどの注目を集めてしまいましたわ…)

ダイヤ(メンバーは現在で三人、新学期で盛り上がってたあの二人と……)

ダイヤ「…絵里さんたちのところへ行きましょう」



カランカラン

希「おーダイヤちゃんいらっしゃーい」

絵里「いらっしゃいってあれ?何か嫌な事でもあった?」

ダイヤ「え?」

絵里「すごい機嫌悪そうな顔してるけど…」

ダイヤ「え、そんなに顔に出てますの?」

希「めっちゃ出てるでー」

ダイヤ「そ、そうなのですか…」

希「なんかあったんー?」

ダイヤ「い、いえ…大したことでは…」

カランカラン

希「梨子ちゃんいらっしゃーい」

梨子「お邪魔しま…あ、ダイヤさん…」

ダイヤ「梨子さん…」

ダイヤ(そう…三人のうちの一人はこの梨子さんであること…)

ダイヤ「わたくしは絶対にスクールアイドルという活動を認めませんわ、もう人気が出てしまったことには仕方がありません」

ダイヤ「ですがあなたたちの活動は絶対に認められませんわ、浦の星女学院非公認です」

ダイヤ「すいません、絵里さん希さんもう出ますわね」

希「う、うん…」

絵里「い、いってらっしゃい…」

ダイヤ「では」

カランカラン

梨子「………」

希「何かあったん?」

梨子「実は……」



ブッブー

ダイヤ「はぁ…躓いてほしくはありませんが…人気が出てしまっても困りますわね…」

ダイヤ「これじゃあマイナスにブーストをかけるどころじゃなくて続けることに勢いがかかってしまってますわ…」

ダイヤ「鞠莉さんはあの三人を試したようですが結果的にはあの三人の背中を押す形となってしまったようですし…」

鞠莉『あの三人のグループ名、Aqoursっていうんだって』

鞠莉『私はあの三人を応援したいかも!』

ダイヤ「鞠莉さんは…」

ダイヤ(これからどうするおつもりなのですか…?)

ダイヤ「!」

プー!

「すいません!十千万までお願いします!」

ダイヤ「あ、あなたは…」

「ん?」

ダイヤ(確かにAqoursの方でしたね…えっと…)

『曜ちゃーん!』

ダイヤ(曜…さんでしたっけ)

ダイヤ「…あ、どちらへおいきでしたっけ」

曜「十千万までお願いします!」

ダイヤ「わ、分かりました」

ダイヤ「ちなみにこのタクシーは過去にも行けますが過去に行く予定はありませんか?」

曜「か、過去?」

ダイヤ「過去に戻ってやり残したことをやるために行ったりします、お客様はやり残したことありませんか?」

曜「やり残したことかー…」

曜「数えきれないほどあるけど、過去に行くのはいいかなー!」

ダイヤ「…失礼ながら理由をお聞きしてもよろしいですか?」

曜「うん!今はやり残したことよりやり始めたことをやりたい気分かな、最近やっと勢いにのれてきたし!」

曜「今過去に行ってその過去に滞在してたら今やってることがパーになってそれこそそれ自体がやり残したことになっちゃうよ」

ダイヤ(そうか…曜さんは過去に行ったきりだと思ってるのですか…)

ダイヤ(…でも羨ましいですわ)

ダイヤ「そ、そうですか、頑張ってくださいね」

曜「ありがとうございます!」

ダイヤ「では、出発します」

ブッブー

曜「そういえば運転手さんって私の学校の生徒会長にそっくりですね」

ダイヤ「?!」ピクッ

曜「ん?どうしましたか?」

ダイヤ「い、いえ…それでその方ってどんな方でしたの?」

曜「んー運転手さんそのまんまですよ、口調とか髪型とか」

曜「…でもまだ運転出来る歳ではないと思うんですよね」

ダイヤ「そ、そうなんですか…」

曜「私、スクールアイドルっていうのをしてるんですけど始めた時からものすごく反対されてて…」

曜「口調がどこかお嬢様っぽくてアイドルのことを下品とかそういう目で見てるのかなって思ってたけどやたらスクールアイドルに詳しくてなんか理由があるんだなーって」

曜「もしそうだとしたら是非私を頼ってほしいなって思いますね」

ダイヤ「…訳アリな感じと?」

曜「そうです!」

ダイヤ「そうですか…」

ダイヤ(あなたは…いえ曜さんは優しいのですね…)

ダイヤ「あ、すいません手を挙げてる方がいるので一度止まりますね」

曜「了解です」

プー!

「す、すいません…あ、もう人が乗ってたんですか…」

「じゃ、じゃあ別のタクシーに乗りますね…」

曜「そんなこと言わないで一緒に乗りましょうよ!ここの運転手さん色々お話してくれますよ!」

「で、でも…」

曜「運転手さんはいいよね?」

ダイヤ「わ、わたくしはお客様がいいのであれば…」

「じゃ、じゃあ…」

曜「それじゃあ全速前進ヨーソロー!」

ダイヤ「ちなみにメガネをかけたお客様はどちらへ?」

「あ、えっととりあえずは乗ってるだけでいいですか…?行き先は後で言うので…」

ダイヤ「わ、分かりましたわ」

ダイヤ「では出発します」

ブッブー

「そういえばどんなお話をしてたんですか?」

曜「スクールアイドルです!」

「スクールアイドルやってるんですか?」

曜「はい!最近やっと流れに乗れて…」

「そうなんですか、頑張ってくださいね!」

曜「はい!」

ダイヤ「…そういえばお二人ともよく似てますね」

「え?そうかな…?」

曜「んー?確かに似てるかも?」

ダイヤ「ええ髪型と顔がとても似てます、姉妹って言っても案外ばれないかもしれませんよ」フフッ

「そんなかなぁ…?」

曜「お姉さんお名前はなんていうんですか?」

花陽「小泉花陽と言います、よろしくね!」

ダイヤ「えっ…」

曜「うん!私は渡辺曜!よろしくお願いします!」

ダイヤ(小泉花陽…?真姫さんに続いて花陽さんもここに用が…?)

曜「そういえば花陽さんってどっか聞いたことあるような…」

花陽「うーん…なんだろうね?多分気のせいじゃないかな?」

曜「…それもそっか!」

ダイヤ「あ、花陽さん」

花陽「あ、はいなんですか?」

ダイヤ「このタクシーは過去に向かうことも出来ますがいかがなされますか?」

ダイヤ「やり残したことなどとかありませんか?」

花陽「…過去は遠慮しておきます」

ダイヤ「理由をお聞きしてもよろしいですか?」

花陽「早い話、今を楽しく生きるのが一番なんですよ」

曜「?」

花陽「私はやり残したこと、たっくさんあるけど過去は過去のままでいいんだと思いますよ」

花陽「失敗は成功の元っていうじゃないですか」

曜「なるほど…そう聞くと確かにそれでもいいかも…」

ダイヤ「そう…ですか…」

ダイヤ(なら…花陽さんは少ない時間で過去を取り戻せるのですか…?)

ダイヤ「………」グッ

~十分後

曜「でねー千歌ちゃんがさー」

花陽「ふふふっその千歌ちゃんって子、私の先輩にも似たような人がいたなー」

曜「そうなんですか?」

花陽「うん!どこかおっちょこちょいで頼りないところもあったけどいざちゃんとした時は誰よりも頑張って一寸先も見えない闇を一緒に歩いてくれる、誰よりも強くて誰よりも頼りある人になってくれる、そんな人だったな」

花陽「千歌ちゃんって子もきっとそんな子じゃないかな」

曜「うーん…分からないや…」

プー…

ダイヤ「十千万到着です」

曜「あ、分かりました!」

曜「えっと、お金と…」

曜「運転手さんも花陽さんも話し相手になってくれてありがとうございました!」

花陽「いえいえ…」

ダイヤ「またお話出来るのを待ってますわ」

曜「はい!それでは!」

タッタッタッ

ダイヤ「…いってしまいましたね」

花陽「すごく明るい子でしたね」

ダイヤ「それで行き先の方は…」

花陽「…希ちゃんのバーまでいいですか?」

ダイヤ「…その話はどこからお聞きに?」

花陽「希ちゃんからです…希ちゃんのバーに行くにはここの地域の顔の右下にほくろがついてる人が運転してるタクシーに言うと連れてってくれる、と聞いて…」

ダイヤ「なるほど…分かりました、では出発します」

ダイヤ(ほくろで判別ですか…なんか複雑ですわ…)

ブッブー

ダイヤ「到着です」

プー!

花陽「早い…」

ダイヤ「どうぞ、ここが希さんのバーです」

カランカラン

希「いらっしゃ…あ、花陽ちゃん!」

花陽「希ちゃん!久しぶりだね!」

希「おひさ~」

絵里「花陽?!花陽が来てるの?!」

花陽「あ、絵里ちゃんも!」

絵里「はなよぉ~!久しぶりね~!」

梨子「お知り合いですか?」

希「そうやね!」

ダイヤ「では私は失礼します」

希「仕事終わったら絶対にくるんよー!」

絵里「そうよー!花陽がいるんだからね!」

ダイヤ「わ、分かりましたわ…」

カランカラン

ダイヤ「………」

花陽『私はやり残したこと、たっくさんあるけど過去は過去のままでいいんだと思いますよ』

ダイヤ「わたくしは……」

ダイヤ(ここで過去に戻らなかったら、きっと未来で過去に戻っとけばよかったと後悔しそうなんです…)

曜『うん!今はやり残したことよりやり始めたことをやりたい気分かな、最近やっと勢いにのれてきたし!』

ダイヤ「あの子たちは…今も…」

ダイヤ「…!」フルフル

ダイヤ「仕事に集中しましょう!」

スタスタスタ

ブッブー

~数週間後

ザワザワザワザワ

鞠莉「果南!やり直しましょう!!」

果南「いやよ」

鞠莉「これ!覚えてる?」

果南「………」

鞠莉「あの時の衣装!これを着てまたやりましょう!」

果南「やだ」

鞠莉「私、果南がやるっていうまであきらめないからね」ニッ

果南「………」

鞠莉「果南!」

果南「………」キッ

スタスタスタ

グイッ

鞠莉「ちょっ…」

果南「こんな衣装…!」

ポイッ

鞠莉「果南!」

果南「な、なに…?こっちこないで!」

ギューッ

鞠莉「果南がスクールアイドルやるっていうまで絶対に離さないから!」

果南「離して!離せって言ってるの!」

鞠莉「良いと言うまで離さないっ!」

鞠莉「強情も大概にしておきなさい!たった一度失敗したくらいでいつまでもネガティブに」

果南「うるさいっ!いつまでもはどっち?!もう二年前の話だよ?!」


果南「大体今更スクールアイドルなんて!」


果南「私たち、もう三年生なんだよ?」

ダイヤ「二人とも!おやめさない!みんな見てますわよ!」

ダイヤ(あれからかなり経ちました)

ダイヤ(鞠莉さんは果南さんが復学したのを知って超強引にスクールアイドルをやり直そうとしてます)

果南『大体今更スクールアイドルなんて!』

ダイヤ(私の気持ちは果南さんと全く同じ)

ダイヤ(…やはり無理なのでしょう、今からじゃ遅いんですわ)

ダイヤ(だから私は…過去に戻って鞠莉さんの言う失敗を消して成功した未来を作ろうとした)

ダイヤ(ですがまだ絵里さんの免許が返ってきてないのでいけません…)

ダイヤ(梨子さんがいる今のAqoursは私の妹のルビィやこの前タクシーに乗ってくれた善子さんとその友達が入ったみたいで現在は六人だそうですわ)

ルビィ『お姉ちゃん…私スクールアイドルやりたい!』

ダイヤ(妹が入ってる以上はスクールアイドルを認めなきゃなりませんわ、しかし認めるだけでそれ以上はありません)

ダイヤ(絵里さんを待つ私の立場上私は鞠莉さんと果南さんのギクシャクした関係も現Aqoursもただ見てるだけの人なのですわ)

鞠莉「ダイヤもそう思うでしょ!」

ダイヤ「いい加減やめなさい!いくら粘っても果南さんは再びスクールアイドルなんて始めることはありませんわ!」

鞠莉「どうして!あの時の失敗はそんなに引きずること?!」

鞠莉「ちかっち達だって再スタートをきろうとしてるのになんでっ?!」

「………」

果南「千歌とは違うの!」

「……!」

果南「鞠莉には他にやるべきことがたくさんあるでしょ!」

曜「千歌ちゃん!」

ダイヤ「!」

鞠莉「!」

果南「千歌…?」

千歌「いい加減にぃ……」

千歌「しろおおおおおおおおおおおおおっ!!!!」

シーン……

千歌「もー!なんかよくわからない話をいつまでもずーっとずーっと!ずううううっと!!!」

千歌「隠してないでちゃんと話しなさい!」

果南「千歌には関係な」

千歌「あるよっ!!!」

ダイヤ「いや…ですが…」

千歌「ダイヤさんも鞠莉さんも放課後、部室に来てください」

果南「いや…でも…」


千歌「いいですねっ?」


「…はい」

~部室

果南「だから、東京のイベントで歌えなくって」

千歌「その話はダイヤさんから聞いた」

果南「!」ジロッ

ダイヤ「!」プイッ

千歌「けど、それで諦めるような果南ちゃんじゃないでしょ」

鞠莉「そうそう!ちかっちの言う通りよ!だから何度もいってるのに」

千歌「何か事情があるんだよね?」

果南「………」

千歌「…ね?」

果南「…そんなものないよ、さっき言った通り私が歌えなかっただけ」

ダイヤ「………」

千歌「うああぁ!イライラするー!!」

鞠莉「その気持ちよぉ~くわかるよ!」

鞠莉「ほっんと腹立つよね!こいつ!!!」

ダイヤ(私と果南さんは目的こそ違うものの考えは全く同じ)

ダイヤ(今更スクールアイドルなんて…私たちは三年生…)

ダイヤ(だから利害の一致で私たちは黙秘を続けるんです)

ダイヤ(それに今からスクールアイドルがやれても困るんですの)

果南「とにかく私はスクールアイドルを…」


果南「絶対にやらない!」


スタスタスタ

梨子「まったく……」

梨子「ダイヤさん」

ダイヤ「!」ピクッ

梨子「何かしってますよね?」ジロッ

ダイヤ「えぇ?わたくしは何も…」

梨子「じゃあどうしてダイヤさんは果南さんの肩をもったのですか?」

ダイヤ「そ、それは…」ダラダラ

ダイヤ「っ!」ダッ

千歌「善子ちゃん!」

善子「任せて!」

「いぎゃああああああ!!!」

~黒澤家

ダイヤ「ん、んん…」

「わざとー?!」

ダイヤ「そう、東京のイベントで果南さんは歌えなかったんじゃない」

ダイヤ「わざと歌わなかったのですの」

鞠莉「…どうして?」

善子「まさか闇のまじゅ」

花丸「善子ちゃん!」スッ

善子「うわっ?!」

ドサッ

ダイヤ「あなたのためですわ」

ダイヤ(あの後すぐに捕まった私はしぶしぶ話をしましたわ、肩を持つ理由は違うものの梨子さんたちが求めてる理由は私が口から出す理由は同じです)

鞠莉「私の…?」

ダイヤ「覚えていませんか?あの日、鞠莉さんは怪我をしていたでしょう」

ダイヤ(そう、あの日というのが私がタクシーで過去に戻るつもりの日でした)

ダイヤ(怪我を無くすのは不可能だと思いましたわ、だって必死に練習をした末でのこと、不可抗力とでもいいますでしょうか)

ダイヤ(だからまずダメでもなんでも最初に説得しようかと考えましたわ)

鞠莉「そんな…私は…そんなことしてほしいなんて一言も…」

ダイヤ「あのまま進めていたらどうなってたと思うんですの?怪我だけでなく事故まで起こってもおかしくありませんでしたわ」

鞠莉「でも…」

ダイヤ(でも絵里さんの免許が剥奪されて私があのタクシーの運転手になり色んな人を過去に送って現実に返してるうちに考えは変わりましたわ)

ダイヤ(説得という甘い方法じゃ無理、そういう結論にいたりました)

ダイヤ「心配してたのですわ、あなた留学や転校の話があるたびに全部断っていたのでしょう」

鞠莉「そんなの当たり前でしょ!!!」

ダイヤ(そう、仮にあそこが成功したとしても次が無かったのでした)

ダイヤ(だから怪我を無くすとか説得がとかいう前に鞠莉さんの回りの環境を変えなければいけませんでした)

ダイヤ(もし成功してたら果南さんも私も喜んでスクールアイドルを続けてたかもしれない、けどそんなのはただの結果論)

ダイヤ(次第にどうすればいいのか分からなく“とりあえず”過去に戻るということだけを考えて過ごしましたわ)

ダイヤ「果南さんは思っていたのですわ、このままでは自分たちのせいで鞠莉さんの未来の色んな可能性が奪われてしまうのではないかって」

鞠莉「まさか…それで…!」

鞠莉「…っ!」ダッ

ダイヤ「どこにいくんですの!」

鞠莉「ぶん殴る…!そんなこと…一言も相談せずに…!」

ダイヤ「おやめなさい、果南さんはあなたのことずっと見てきたのですよ」

ダイヤ「あなたの立場も、あなたの気持ちも、そして…」

ダイヤ「あなたの将来も」

ダイヤ(鞠莉さんは暴風雨の外を駆け出しました)

ダイヤ(ここまで話せば私は蚊帳の外です)

ダイヤ(後は…果南さんと鞠莉さんだけの世界です…)

ダイヤ(私は…私の世界でやるべきことがあるのですから)



果南「ハグ、しよ?」

鞠莉「果南…!うわあああああああん!」

ギューッ!

ダイヤ「………」

スタスタスタ

ダイヤ(果南さんと鞠莉さんは仲直りをしてました)

ダイヤ(私はそれを笑顔で、そして無言で確認して外の世界への一歩を踏み出しました)

千歌「うふふっ!」

ダイヤ「!」

千歌「ダイヤさんってほんとに二人が好きなんですね!」

ダイヤ「それよりこれから二人を頼みましたわよ」

ダイヤ「ああ見えても二人とも繊細ですから」


千歌「じゃあダイヤさんもいてくれないと!」


ダイヤ「え?!わたくしは生徒会長ですわよ、とてもそんな時間は…」

千歌「それならだいじょぶです!鞠莉さんと果南ちゃんと…あと…六人もいるので!」

ダイヤ「……!」

~浜辺

ダイヤ「…はぁ」

絵里「どうしたの?冥い海なんて見て」

ダイヤ「え、絵里さん?!ど、どうしてここに…」

絵里「ダイヤが住んでるところに来てみよかなーって」

ダイヤ「そ、そうですか…」

絵里「ねぇ迷ってるんでしょ、あそこまで言われて」

ダイヤ「なっ…聞いてたのですか?」

絵里「ううん私はその場にはいなかったわ、希のスピリチュアルパワーを借りたの」

ダイヤ「え、えぇ…?」

絵里「私はいいと思うけど」

絵里「スクールアイドル始めるの…いや」


絵里「やり直す、かな?」


ダイヤ「………」

絵里「なんでまだ躊躇ってるの?ダイヤが昔やってたスクールアイドルのメンバーだってAqoursに入ったんでしょ?」

ダイヤ「ど、どうしてグループ名を…」

絵里「梨子から聞いたのよ」

ダイヤ「そ、そうなんですか…」

絵里「私は躊躇う理由が見当たらないんだけど」

ダイヤ「…まだ今更、という気持ちを振り切れないんです」

ダイヤ「それにわたくしがやろうとしたのはこれからのことではなく過去の事、これから頑張り今を変えるのではなくて過去を変えて相対的に今を変えたかったのです」

ダイヤ「今更スクールアイドルなんて…」

絵里「私はそうは思わないわよ?」

ダイヤ「え?」

絵里「だってそれって結局五年後十年後になってやっとけばよかったって後悔するんでしょ?」

絵里「そしたらこのタクシー使うの?そんなのただ損じゃない」

絵里「趣味とか事々っていうのはいつやっても遅くないって私は思うわよ?まだ間に合うとかじゃなくていつでも間に合うんじゃないかしら」

絵里「そう気付けなかった人のためにあのタクシーがあるんだからね?ダイヤは気付けたんだから」


絵里「答えは簡単よね?」


ダイヤ「…!」

絵里「それとねもう一つ言わなきゃならないことがあるの」

ダイヤ「なんですの…?」

絵里「なんと!私の免許が返ってきたわ!」

ダイヤ「おお!おめでとうございます!」

絵里「でね、返ってきて最初に乗せるお客さんはダイヤがいいの」

ダイヤ「わたくし…?」

絵里「今からちょっと乗ってくれない?」

ダイヤ「わ、分かりましたわ…」



ダイヤ「行き先はどちらへ…?」

絵里「まぁ見ててって」

絵里「出発しますね」

ダイヤ「分かりました」

ブッブー

絵里「到着です」

プー!

ダイヤ「ここは…東京?!」

ダイヤ「…なんとなく見覚えがありますわ」

ダイヤ「二年前のあの日…あの日に見た景色とまったく同じ…」

絵里「そう、ダイヤたちの運命を変えたあの日よ」

ダイヤ「!」

ダイヤ「ど、どうしてこんなところに!」

絵里「いいからついてきて」

ギュッ

ダイヤ「ま、待ってください!」

スタスタスタ

ダイヤ(会場…お客さんがいっぱい…)

絵里「そろそろかしら」

ダイヤ「…!まさか…!」

絵里「あ、きたわよ」

ダイヤ「あれは…二年前の…」


ダイヤ「私たち…!」


ダイヤ「どうしてここに!!」

絵里「いいから見てなさいって」

ダイヤ「いや、でも!!」

絵里「いいから!!!」

ダイヤ「!」ピクッ

ダイヤ「わ、分かりました…」

~~~~♪

ダイヤ「あ、あれ…?」

絵里「………」

「いつもそばにいても♪伝えきれない想いで♪」

「こころ~迷子になる~♪」

ダイヤ「どうして…?!あの時は歌えずに終わったはずなのに…!」

絵里「ダイヤ、別に過去なんて無理して変える必要なんてないの、現実が動けば過去も動く」

絵里「現実が動いて過去も動くのと、過去が動いて現実も動くのじゃ意味が全然違うの」

絵里「あれが答えよ、ダイヤが動かそうした過去とAqoursのみんなが動かした現実(いま)の答え」

「言葉だけじゃ足りない♪そう言葉すら足りない~♪」

「故に~すれ違って~♪」

ダイヤ「………」ポロッ

ダイヤ「!」フキフキ

ダイヤ「絵里さんはこれを見せに…?」

絵里「当たり前でしょ、ダイヤ達いい笑顔で踊ってるわね」

「わかってほしいと願う♪気持ちが止まらなくて~♪」

「きっと傷つけたね~♪」

絵里「これがあなたの望んだ過去でしょ?」

ダイヤ「…はい」

絵里「…案外過去って簡単に変わるモノよ」

絵里「それはあくまでいい意味でね」

絵里「悩んだらとりあえずやってみる、とっても大事なことだと思うの」

絵里「…まぁ今のは私の後輩の受け売りなんだけどね」

「どんな未来かは~♪誰もまだ知らない~♪」

「でも楽しくなるはずだよ~♪」

ダイヤ「………」

ポロポロ

ダイヤ「ありがとうございます…!絵里さん…!!」

絵里「いいのよ、これくらい」

絵里「これから頑張ってね?」

ダイヤ「…はい!」

絵里「Aqoursのみんなと」



「みんなとなら~♪無理したくなる♪」

「成長したいな~♪まだまだ~♪」



「未熟DREAMER~♪」




絵里「良いステージだったわね」

ダイヤ「…はい」

絵里「ところで投票は誰にいれたの?」

ダイヤ「わたくしですか?」

絵里「ええダイヤしかいないでしょ」

ダイヤ「わたくしは…どこにも入れてませんわ」

絵里「ええー面白くないわね」

ダイヤ「そういう絵里さんは誰にいれたんですか?」

絵里「私?んーっとね」


絵里「秘密♪」


ダイヤ「ええ…」

絵里「ほらっ!早く現実に帰りましょう!」

ダイヤ「きゅ、急に走らないでください!」

タッタッタッ

絵里「よーし!現実に出発します!」

ダイヤ「了解ですわ」

ブッブー!!

ダイヤ「っ?!ちょ、ちょっと絵里さん?!」

絵里「え?何かしら?」

ダイヤ「スピード速すぎません?」

絵里「え?ってあー!やばっ…!」

ダイヤ「え?ちょ、早くブレーキを!」

ピー!!!

絵里「あっ…」

ダイヤ「あっ…」



希「えりち…ウチえりちのこと嫌いになってもいい?」

絵里「返す言葉もない所存です…」

梨子「あははは……」

ダイヤ「………」アハハ

希「またスピード違反で免許取られるポンコツがどこにおるん?!」

バンッ!

絵里「ひぃい!!すいません!!!」

ダイヤ「ま、まぁ希さん落ち着きましょうよ絵里さんもわざとではなかったですし…」

希「あれだけスピード違反しないために再勉強したのに…昔のえりちのえの字もないわ…」

絵里「仰る通りでございます…」

ダイヤ「はぁ……」

希「それでなんだけど…」

絵里「………」

希「えりちの免許が返ってきたらダイヤちゃんの免許は返却という話だったんだけどまたえりちが剥奪されたことによって…」

ダイヤ「…!」

希「ダイヤちゃんはタクシー運転手、引き続きえりちの免許を引き継ぐ形になるで」ニッコリ

ダイヤ「はぁああ…そうでしたわ…!」

希「まぁこれからもよろしくな!」

ダイヤ「ええよろしくお願いします!」

絵里「うわーん!ごめんなさいだいやぁああ!!」

梨子「ふっふふふふ…」クスクス

希「ふふふはっはははは!」

ダイヤ「…ふふふ」

~東京イベント後

ダイヤ「イベントの投票結果が発表されましたわ!」

鞠莉「ほんと?!」

果南「見せて見せて!」

ダイヤ「結果は……」



Aqours 1

ダイヤ「いち……」

果南「うーん……」

鞠莉「いいじゃない!」

果南「!」

ダイヤ「!」

鞠莉「一人、私たちに投票してくれた人がいたのよ!」

鞠莉「それだけで充分だと私は思う!」

果南「…うん!そうだね!」

ダイヤ「ええ!その通りですわ!」

ダイヤ(私の過去と未来を変えた物語)

ダイヤ(そして…)



ダイヤ(これは私たち“Aqours”の0が1になった物語)



鞠莉「よーし!これからも頑張るよー!」



「Aqours!サンシャイン!!!」



END

~~~

「無謀な夢から始まって~♪奇跡のようにすべてが繋がって~♪」

理事長「今やらなくちゃ過去に後悔する、当たり前のようで全然知られてません」

理事長「やりたいことはいくつになっても遅くないんです、今やれば何年後には形になってます」

理事長「失敗したから後悔するのは間違ってます、それは経験として扱いましょう」

理事長「それに、やらない後悔よりやる後悔の方がいいと思いません?」

「あたらしい~夢が生まれてくると~♪僕たちは知ってるよ~♪」

理事長「そして時代は引き継がれていきます、旧時代から新たなる新時代へと変わってゆきます」

「君のこころは輝いてるかい?」

理事長「彼女たちが新時代の主役なようです」

理事長「しかしまだ始まったばかりです、これからの活躍に…」

鞠莉「期待しててくださーい!」

理事長「?!?!?」

鞠莉「旧時代の理事長さんはbackback!」

鞠莉「はぁ~い!私新時代の理事長!よろしくね♪」

理事長「いやなんですか!これは私の仕事ですよ!」

鞠莉「それを私が引き継ぐってことで♪」

理事長「それは引き継がなくていいわあああ!!!」

~~~~~

理事長「さて九つのストーリー、いかがでしたでしょうか?」


千歌「私の名前は高海千歌!」
穂乃果「私の名前は高坂穂乃果!」


理事長「二人の彼女の物語はまだまだ終わりません」」

穂乃果「後はよろしくね!」

千歌「うん!任されたよ!」

ギュッ

理事長「…ふふ、こうして彼女たちの物語は引き継がれていきます」




千歌「さて…私の片方の手を埋める人は…」



理事長「時は過ぎ、また来ることでしょう」


理事長「三代目の主役…まだ誰だかわかりませんがきっと引き継がれていくでしょう」


理事長「その時にまた…お会い出来ればな、と思います」

ことり「お母さん、はいプレゼント♪」

理事長「あら、ありがとうことり!」

理事長「でも急にどうして?」

ことり「お母さん♪今日はクリスマスだよ?」

理事長「そうね~サンタさんから何もらったの?」

理事長「ってわざわざリア充見に行く日を二回もしなくていいわよ!」

ことり「お母さん、トリックアトリート♪」

理事長「えぇ?!今お菓子持ってないんだけど…」

理事長「ってちがーう!!!」

ことり「じゃあ今からお花見いこっか♪」

理事長「そうね、この頃は桜が満開…ってそれもちがーう!!!!!」

ことり「お母さん、HAPPY NEW YEAR♪」

理事長「あえ…?」

理事長「あ、あけましておめでとうございます」

理事長「今年の私たち、μ’sや」

鞠莉「どーもー!」

理事長「彼女たち、Aqoursも頑張る故に応援よろしくお願い致します」

理事長「さてさてお時間が来てしまったようです」

理事長「皆さんこれにてさようなら、よいお年を!」

ことり「よいお年を♪」

鞠莉「よいお年をー!」

「せーのっ!」



「μ’s!Aqours!μ’sicサンシャイン!!!」



END

ということで終わり(の予定です)
さっきぱっと思いついたルビィのストーリー試しに書いていけそうなら締まりませんが数日後にやろうかなって思います、出来なさそうなら出来ないと判断した時にhtml化の依頼を出しておきます
μ’s版、Aqours版ときてμ’s版第二とかAqours版第二を作る予定はありませんがもし作るようなきっかけがあった時にはまたよろしくお願いします

それと八つ目の終わりでもいいましたが次は多分バトル系なのでもしよかったらその時もまたよろしくお願いします
そしてこれはまだよくわからないんですがスクフェス発のスクールアイドルというのがモブキャラじゃなかった場合(※モブキャラだとキャラが全く分からないので)はそっちを優先して書こうかなと思います、まだ情報も出てませんしいまいち優先とかそういうものがあるのかすらわかりませんけど…

元ネタ一覧です

ルビィ→特に無し ※後日作れた場合は“三つの願い”
曜→“いま、会いにゆきます”
花丸→“MIRAI TICKET”
鞠莉→特に無し
善子→特に無し
梨子→特に無し
千歌→“夜空は何でも知ってるみたい?”(がテーマ)
果南→特に無し
ダイヤ→“素敵な選TAXI”

~~~~~

理事長「三つの願いという童話をご存じでしょうか?」

理事長「成り行きは省きますが三つだけなんでも願いを叶えてくれる、というのがメインのお話になります」

理事長「三つ、なんでも願いを叶えてくれると言われたら何をお願いしますか?叶えれくれる願いを増やすなんて願いはダメですよ?」

理事長「まぁゆっくり考えるのがいいでしょう、さてさて今宵あなたは特別な人間として選ばれました」

理事長「願いを叶えてあげましょう、ただし…」


理事長「叶えられる願いは一つだけ……」

~~~

ルビィ「ただいまー!」

ダイヤ「おかえりなさいルビィ」

ルビィ「えへへただいま!」

「おかえりなさい!」

ルビィ「!!」ピクッ

ダイヤ「どうかしましたか?」

ルビィ「…?」

ルビィ(気のせいかな…?)

ルビィ「ううん、なんでもない」

スタスタスタ

「もー!無視するなんて酷いよ!」

ルビィ「ピギィ?!」

ポンッ

千歌「私の名前は千歌!あなたの願いを一つ、叶えてあげる神様だよっ!」



【一つの願い】

ルビィ「ぴぎゃああああああ?!??!」

千歌「わあわあ!待って!大丈夫何もしないから!」

千歌「絶対に何もしない!命かけるから!」

ルビィ「え、えっと…」オロオロ

「ルビィー!どうかしましたかー!」

ルビィ「!」

千歌「お願い…!いないってことにしといて…!」ウルウル

ルビィ「う、うん……」

ルビィ「お姉ちゃんなんでもないー!」

ルビィ「………」

千歌「えへへありがとう!」

ルビィ「あの…あなたは…」

千歌「私はさっきも言ったけど千歌という名前の神様なのだ!」

ルビィ「神様…?」

千歌「だってほら?私浮いてるでしょ?」

ルビィ「…!言われてみれば…!」

千歌「奇跡でしょー?すごいよねー」

千歌「ってそうじゃなくて私はあなたの願いを“一つ”叶えてあげるためにここにきたんだ」

ルビィ「私の願い…?」

千歌「そうそう!なんでもいいよ!お金持ちになりたい!頭がよくなりたい!好きな人と結婚したい…なんでもおっけー!」

千歌「…あ、でも叶える願いを増やしてとかそういうのはダメだよ?ずる賢いところは評価するけどこっちにも色々あるからねー」

ルビィ「叶えてほしい願いって…」

ルビィ「…なんで私なんですか?」

千歌「それはあなたが良い行いをしてきたから!そんな人には私からとびっきりのクリスマスプレゼ…いやお年玉…違う誕生日プレゼント…んー?なんだ?とにかくスペシャルプレゼントとして願いを叶えてあげちゃうのさー!」

ルビィ「は、はぁ…?」

千歌「とりあえずなんでもいいよ!ほらほら遠慮せずに言っちゃって!」

ルビィ「そんなこと言われたって…」

千歌「ん?あ、もしかして胡散臭いって思ってる?」

ルビィ「いや…そういうわけじゃ…宙に浮いてますし…信じてないってわけじゃないんですけど…」

ルビィ「突然すぎて…」

千歌「あ、そっか!じゃあゆっくり決めよっか!私はいくらでも待つからね」

千歌「一つしか叶えられないもん!慎重に決めないとダメだよね!」

千歌「あ、後願いを叶えたら私は消えちゃうからね」

「ルビィ?入りますわよ?」

ルビィ「ピギッ?!」

ルビィ(やばっ…千歌さんが…)チラッ

千歌「?」

ルビィ(隠れる気ゼロ?!)

ガララ

ダイヤ「先ほどの叫び声はなんですか?」

ルビィ「え?」

ルビィ(あれ…お姉ちゃんには見えてないのかな…千歌さんが…)

ダイヤ「え?」

ルビィ「あ、ううん色々荷物とか落ちちゃって…」

ダイヤ「そういうことでしたか、しっかりするのですよ?」

ルビィ「はーい」

ガララ

ルビィ「………」チラッ

千歌「ん?あ、私はあなたにしか見えないよ、だから安心してよ、私が邪魔することはないから」

ルビィ「そ、そうなんですか…」

千歌「まぁすぐ決まっちゃうかもだけどこれからの間、色々案出すからよろしくね!」

ルビィ「わ、分かりました!」

千歌「あ、決まったらすぐにいってね?すぐに叶えるから」

ルビィ「は、はい!」

ルビィ(すごい神様に出会っちゃった…)

ルビィ(願いか…いざ言われみると全然思いつかないな…)

千歌「迷ってるねぇ~」ニヤニヤ

千歌「まぁそんな難しい顔せずとも明日になればぱっと思いつくかもよ?」

ルビィ「ふむふむ…」

千歌「あまり考えるのも疲れちゃうからもう明日にしよ?そんな急ぐ必要なんてないから」

ルビィ「わ、分かりました…」

~次の日、学校

千歌「ねーねー」

ルビィ「ん?なんですか?」

千歌「友達とかいないの?朝来てからまだ誰とも話してないじゃん」

千歌「あ、いないなら友達作らない?友達は絶対に必要だよ?強がって生きていたらいつか壊れちゃうよ!」

ルビィ「だ、大丈夫!友達…あんまりいないけどちょっとはいるから…」

ルビィ「それに友達って自分で作るものだと思うんです、誰かの力を借りるとかじゃなくて…」

千歌「そっか…ごめん無神経だったね」

ルビィ「いえ…大丈夫です…」

「すーすー…zzz」

「…ずらっ?!寝ちゃダメずら!」

ルビィ「………」

千歌「あの子を見てどうしたの?」

千歌「あ、もしかして友達になりたいんだ~?」クスクス

ルビィ「あの子、いつも一人図書室で本読んでてね」

ルビィ「なんだか私と似てるなって思って…」

千歌「通ずるものがあると…」

ルビィ「うん、そんな感じ」

千歌「そっか、あの子と友達になれるように頑張ってね」

ルビィ「はい!」

千歌「…でももし無理だなって思ったらいつでも私にいっていいよ?願い、叶えてあげるから」

ルビィ「だ、大丈夫です!」

千歌「ふふふっ分かったよ」



ルビィ「んん…?」

千歌「難しいの?このテスト」

ルビィ「い、今話しかけないでください…」ボソボソッ

千歌「ごめんごめん、なんか苦戦してるように見えたから」

ルビィ「………」

ルビィ(この問題…なんだろう…)

千歌「ふっ…今のあなたの気持ちをあててあげるよ!」

ルビィ「…?」

千歌「ずばり!もうちょっと頭が良かったらこんな問題簡単なのに…と思ってるね?」

ルビィ「別に思ってないです…」ボソッ

千歌「頭をよくすることだって出来るよ?東大だって余裕で受かっちゃう!きっとタイムマシンだって一生のうちに作れるくらいの頭に出来るよ!」

ルビィ「だ、大丈夫です…勉強くらいは自分でします…」ボソボソ

千歌「もーホントしっかり者だなー…欲が人並みにないっていうか…」

千歌「やるべきことは自分でやる人っていうか…」

千歌「ちゃんと一つ願い事決めてよー?私は叶えることがお仕事なんだからー…」

ルビィ「………」

~帰り

千歌「ルビィちゃん…あ、ごめんあなたってすごいしっかり者なんだね」

ルビィ「ルビィでいいですよ」

千歌「分かったよ」

千歌「いやーここまでしっかり者は久しぶりだよ」

ルビィ「そうなんですか?みんなこんな感じじゃ…」

千歌「ううん、みんな案外すぐ決まっちゃうよ、お金持ちになりたいとか好きな人と恋人になりたいとかそういうのがほとんど」

千歌「でもルビィちゃんは自分でこなそうとしてるから私もあんまり案が出せないんだよね…」

千歌「今までいい子にしてたんだから一回の願いくらいは贅沢してもいいんだよ?」

千歌「お金は?家だって多分その辺のショッピングモール丸々買えるよ?お城だって買えるお金も出せるよ?」

ルビィ「いいんです、今欲しいもの特にありませんし……」

ルビィ「叶えるならもっと別のものを…」

千歌「好きな人とかは?今すぐ恋人になれるよ?」

ルビィ「私の通ってるところ…女子校ですから好きな人は特に…」

千歌「あぁ…そういえばそうだっけ…」

ルビィ「そういえばなんか目線が私に集まってるような…?」

千歌「あ、それは多分ルビィちゃんが独り言を喋ってるように見えてるからだよ」

ルビィ「あ、そういえば千歌さんは…」

千歌「そうだよ、ルビィちゃんにしか見えないからね、ルビィちゃんは私と会話してるつもりでもほかの人から見れば一人で喋ってる危ない人に見えてると思うよ」

千歌「まぁこの辺人多いし私と会話してると目を寄せちゃうかも…」

ルビィ「不便だね…」

千歌「ごめんね、私たちは内緒の存在だから…」

ルビィ「い、いえ…」

千歌「あ、そうだ!」

ルビィ「?」

千歌「超能力とかどう?空を飛びたいとか瞬間移動をしたいとか!」

ルビィ「え?!そんなことできるんですか?!」

千歌「うん!出来るよ!世界に影響が出ない程度なら大丈夫!」

ルビィ「そ、空を飛べるんだ…」

千歌「うん!飛べるよ!」

ルビィ「ちょ、ちょっと考えますね」

千歌「うんうんそうしてそうして!」


千歌「ふふっ…決まるといいね…」ボソッ

ルビィ「…あっ」

千歌「ん?どうしたの?」

ルビィ「あの子……」

「はむっ!のっぽパンはやっぱり最高ずら~!」パアアア

千歌「あの子は今日の…」

ルビィ「よくあのお店に寄ってはデザートとあののっぽパンをよく食べてるんです、帰りに何回も見てまして…」

千歌「食いしん坊なんだね」アハハ

ルビィ「確かに…」

千歌「あの子の名前とか分からないの?やっぱり近づくためにはそういうの知っておいた方が良いと思うよ?」

ルビィ「確か花丸ちゃん…って呼ばれてたと思う…」

千歌「花丸ちゃんか、じゃあ花丸ちゃんとお友達になれるように今から行ってきたら?」

ルビィ「そ、そんないきなり押しかけて迷惑かけるなんて…」

千歌「うーん…勇気がないのか~…」

千歌「…あ!じゃあ勇気をあげようか?!あの人みたいになんでも挑戦するような勇気!」

ルビィ「あの人…?」

千歌「私の憧れの人だよ、まぁそこは気にせず勇気はどうかな?」

ルビィ「勇気は……」

千歌「勇気は?」

ルビィ「大丈夫です!」

千歌「うーん…勇気もダメか…」

千歌「まぁとりあえず行ってみたら?あの子優しそうだしきっと仲良くしてくれると思うけど」

ルビィ「………」

千歌「ルビィちゃん?」

ルビィ「…あ、はい!なんでしょう?」

千歌「だから花丸ちゃんのところに行ってみたら?って話」

ルビィ「い、いえ…やめておきます…あんなおいしそうに食べてる最中に邪魔するのもどうかなって思ったので…」

千歌「真面目だな~…」

千歌(というより神経質か…)

スタスタスタ

千歌「ルビィちゃん嫌いなものとかないの?虫とか食べ物とか、そういうのを克服出来たりもするよ?」

ルビィ「大丈夫です!」

千歌「そ、そっか…」

千歌「あ、持病とかないの?家族の人や大切な人の病気だって治せるよ?」

ルビィ「…もしいたらそうしてたかもしれないけど……」

千歌「あ、そっか…いないんだね…」

ルビィ「うん…」

千歌「うーんなら仕方ないね」

千歌「ルビィちゃんってあんまり欲が無いね」

ルビィ「なんかさっきも聞いたような…」

千歌「だって本当なんだもん」

千歌「案を出しても断られちゃうかしもしかして逆のパターンで叶えたい願いがありすぎて私の案が通用してない感じ?」

ルビィ「いえ…ただ単に思いつかないだけで…」

千歌「またそれは逆の意味ですごいね…私ならすぐ決まっちゃうと思うのになー」

千歌(珍しい子もいるもんだな~)

~家

ルビィ「ただいまお姉ちゃん」

ダイヤ「おかえりさないルビィ、学校の方で何かありませんでしたか?」

ルビィ「うん!大丈夫だったよ!」

ダイヤ「そうですか、ならいいのですが」

ルビィ「…あ、そうだ」

ダイヤ「?」

ルビィ「もし願いを一つだけ叶えられる…ってなったらお姉ちゃんは何を叶える?」

ダイヤ「そうですわね…」

ダイヤ「…そういわれると困りますわね……一つだけ…」

ルビィ「そんなにいっぱいあるの?」

ダイヤ「当たり前です!なんでも叶えてくれるのですから!」

ルビィ「えぇ……」

千歌「ほらね?ルビィちゃんは珍しいんだよ」

ダイヤ「やはり…エリーチカに会ってみたいですわ!」

ルビィ「へ?」

千歌「え?」

ダイヤ「ルビィも知ってるでしょう!μ’sのエリーチカを!」

ルビィ「う、うん…知ってるよ、お姉ちゃんの大好きな」

ダイヤ「その通り!あの方に会えるというのならそれはもう幸せじゃ表しきれないくらいに幸せですわ!!」

ルビィ「そ、そっか…」

ルビィ「………」チラッ

千歌「ん?いやぁあはは…変わってると思うけど悪くはない願いだと思うよ?」

千歌「憧れの人や有名人に会いたいっていう気持ちは私もなんとなく分かるし」

ルビィ「そ、そうなんだ…」

ダイヤ「ん?誰と会話してるのですか?」

ルビィ「ぴぎっ?!な、なんでもない!」

ルビィ「私勉強してくるね!」

タッタッタッ

ダイヤ「あ、ちょっと!」

ダイヤ「一体なんだったのでしょう…」



ルビィ「ふぅ…」

千歌「いやぁ面白いね、ルビィちゃんのお姉ちゃんは」

ルビィ「私もあんな回答するなんて思ってなかったよ…」

千歌「ルビィちゃんはいないの?会いたい人」

ルビィ「会いたい人…いないこともないけど…」

千歌「じゃあその人に会ってみるっていうのはどう?」

ルビィ「うーん…」

千歌「ゆっくり悩みなよ?一度叶えたらキャンセルは出来ないんだから」

ルビィ「う、うん…」

~次の日

ルビィ「わぁ!遅刻だー!」

タッタッタッ

ルビィ「私のことずっと見てたなら起こしてくださいよー!」

千歌「いやぁえへへ…私はお世話役じゃないから…」

千歌「あ!瞬間移動なら今すぐ学校にいけるよ?どう?瞬間移動」

ルビィ「瞬間移動…!」

千歌「念じればどこへでも行けるよ!」

ルビィ「うううぅ…とにかく今は走ります!」

千歌「そ、そっか!」

千歌(うーん…中々決まらないな~…)

タッタッタッ

千歌「ねえねえもし決まらないなら誰かのために何かをしてあげたら?」

ルビィ「誰かのために?」

千歌「流石に赤の他人はアレかもだけどほら、昨日ルビィちゃんのお姉ちゃんが言ってた会いたい人に会わせてあげるとか今まで育ててくれたお母さんに感謝の気持ちとして何か高級なものをあげるとかそういうのでもいいと思うな!」

ルビィ「誰かのために…か」

千歌「うん!願いはあなたの手の中にあるんだから自分のことで決まらないようだったら相手のことでもいいんだよ?」

ルビィ「…それも考えておきます」

千歌「うん!可能性の一つに入れといてね」

~昼

キーンコーンカーンコーン

ルビィ「よいしょっと」

千歌「あれ?もうお昼?」

ルビィ「そうですよ」

千歌「早いね~」

ルビィ「千歌さんは何も食べないんですか?」

千歌「私は神様だから何も食べなくて平気だよ」

ルビィ「そうなんだ…」

千歌「それより決まった?願い事」

ルビィ「………」


ルビィ「…はい」


千歌「おお?!?!」

千歌「何々?!今すぐ叶えよう!!」

ルビィ「お姉ちゃんに絵里さんを会わせたいと思います、私のことは…そこまで重要じゃなかったので…」

千歌「うん、分かった」

千歌「確認だけど本当にそれでいいんだね?」

千歌「願い事を叶えた後にごめん別の、なんていうのは出来ないよ」

ルビィ「大丈夫です!」

千歌「うん、分かった、どういう形で出会うかは分からないけど近い間、きっとお姉ちゃんとその絵里さんって人は会うよ、きっと親しい関係になれる」

千歌「では唱えます…」

千歌「はー」

グゥ~…

千歌「…?」

ルビィ「?」

千歌「あれ?ルビィちゃんお腹の音鳴らした?」

ルビィ「いえ…」

千歌「あれ?」

千歌「ど、どうしたの?」

ルビィ「お願い事、変えていいですか?」

千歌「い、いいけど…」


ルビィ「私のお願い事は―――――」

~数か月後

千歌「いやー前の子の願いを叶えて数か月…」

千歌「まさか次の子も同じ地域に住んでるなんて…」

「前の子?」

千歌「私は願いを叶えたらその人から見えなくなっちゃう、だからあなたが私と会う前に一緒にいた子だよ」

千歌「前の子は結構優柔不断だったけどちゃんと自分で決めたよ?しかもとっても個性的なお願い事だった、あんなお願い事初めてだったよ」

「どんなお願い事だったの?」

千歌「………」

ポワポワポワ―――――


ルビィ『のっぽパンを二つください!』


千歌『えぇ?!?!のっぽパンってあのパンだよ?!お店で買えるよ?!』

ルビィ『いいんです!』

千歌『いやでも…』

ルビィ『私が決めたことなんです!後悔はしません!』

千歌『んー……本当にいいの…?』

千歌『願いを叶えるなんてもう一生無いんだよ…?もっとさ…ほらっ贅沢なお願い事にしない…?』

千歌『お願い事を叶える立場の私がこんなこと言うのも難だけどさ…もったいないよ…』

ルビィ『いいんです!』

千歌『!』

ルビィ『私…お願い事叶えてくれるって聞いた時はとってもワクワクしたんですけどいざ考えるとなんだか何も浮かばなくて…お金も困ってなかったし助けたいって思ってる人もいなかった』

ルビィ『超能力にしようかなって思ったけどなんだかそんなもの使ったら色々おかしくなりそうで…』

千歌『………』

ルビィ『いいですか?のっぽパン二つで』

千歌『はぁ…分かったよ、のっぽパン二つで了解しました』

千歌『では願いを叶えます』

千歌『はー…むむむむ……はああああああ!!!』

ピカーン!

ルビィ『うっ…眩しい…』

ポンッ

ルビィ『わぁ?!のっぽパンが!』

千歌『願い事通りのっぽパン二つだよ、いやぁまさかこんな願い事をしてくる人がいるなんて…』

千歌『じゃあ私は願いを叶えたからもう行くね、もう会うことはないけど良き未来を祈ってるよ』

ルビィ『待って!』

千歌『ん?』

ルビィ『はい、どうぞ』

千歌『それは願いで出したのっぽパン…私にくれるの?』

ルビィ『はい!短い時間でしたけど一緒にいれて楽しかったです!』

ルビィ『こののっぽパンはお礼です!そのパンはここ静岡だけでしかないんですよ、絶対においしいですから食べてくださいね!』ニコッ

千歌『!』ジワッ

千歌『えへへ…君は本当にいい子だよ、ごめん前言撤回する』

千歌『きっとあなたは再度願いを叶えられる時がくるよ、その時にまた会おうね』

千歌『このパン、ありがたく貰うね!』

ルビィ『はい!』

千歌『じゃあね!あなたに良き未来が来ますように!』

キラキラキラ…

ルビィ『……行っちゃった』

ルビィ『あ、そうだ!』

タッタッタッ

ルビィ『あ、あの!』

花丸『ずら?』

ルビィ『あの…もしよかったらのっぽパン半分こしませんか?』

花丸『わぁ…!のっぽパン…!』

花丸『…ってどうしてマルに?』

ルビィ『お昼ご飯、忘れてたっぽかったので…』

花丸『あれれ…バレバレだったかな…』

ルビィ『よいしょっと…はい、どうぞ!』

花丸『あ、ありがとう…』

花丸『…でも…本当に良いんですか?』

ルビィ『はい!』

花丸『…ありがとうずら!え、えっと…名前…』

ルビィ『あ、黒澤ルビィです!』

花丸『うん!ありがとうルビィちゃん!』

ルビィ『いえいえ…』エヘヘ

花丸『マルは国木田花丸ずら!よろしくね!』

ルビィ『よろしくお願いします!』

花丸『あ、ルビィちゃん』

ルビィ『ん?』

花丸『良かったらマルと…』


『お友達になりませんか?』


プワプワプワ…

千歌「すごい子だったよー」

「ふーん…」

千歌「それでさーあなたはまだ決まらないの?」


千歌「曜ちゃん!」


曜「だから私は別に叶えたい願いなんて無いんだってばー」

千歌「お金は?」

曜「今が充実してるから要らない」

千歌「恋人は?」

曜「女子校だからいない、それに私にはまだ早いよ」

千歌「夢は?叶えたい夢は?」


曜「そういうのは自分で掴むものだよー」


千歌「あああああ!!!なんか前の子と同じこと言ってるうううう!!!」

曜「叶えちゃったら千歌ちゃんは消えちゃうんでしょ?」

千歌「ん?そうだよ、次の人の願いを叶えないといけないからね」

曜「…ならいいや、私に叶えたい願いなんてない」

千歌「ならって何?!ならって!」

曜「なんでもないよー」

千歌「ああもう!早く叶えてよ!」

曜「だから叶えたい願いなんてないよー」

千歌「はぁ…」

曜「叶えたら…千歌ちゃんが消えちゃうし…」ボソッ

千歌「え?」

曜「なんでもないよ!」

千歌「もー!早く願い叶えてよねー?」

曜「思いついたらねー」



花丸「あの人、さっきから独り言喋って何してるんだろう?」

ルビィ「ん?」


曜「いやだからちゃんと考えてるよ!」

曜「ほんとほんと!」

曜「いつか叶えるから!」

曜「え?いつ?それは分からないよー!」


曜「ゆっくり決めろって言ったのは千歌ちゃんでしょ?」


ルビィ「!!!」

ルビィ「ふふふっ…そっか」

花丸「ずら?ルビィちゃんどうかしたずら?」

ルビィ「ううん!なんでもない!」

花丸「?」

ルビィ「すぅ……」



ルビィ「千歌さーん!!!ありがとー!!!」



花丸「ずらっ!?」


「千歌さーん!!!ありがとー!!!」

千歌「ん?」

曜「え?」

ルビィ「………」ニコニコ

千歌「!」

千歌「ふふ…元気にやってるみたいだね…」

千歌「曜ちゃん、曜ちゃん」

曜「何?」

千歌「あの子に向かって“次はちゃんとしたお願い事するんだよー”って言ってよ」

曜「え?どうして?」

千歌「いいから!」

曜「もー仕方ないなぁ…」

曜「すぅ……」


曜「次はちゃんとしたお願い事するんだよー!だってさ!」


ルビィ「!」パアアア



「はいっ!!!」



END

~~~

理事長「願いは小さくてもいずれ大きな波紋を生み出します」

理事長「他の人から見れば小さくてもその人から見れば大きく見えているでしょう」

理事長「ありふれていて贅沢で夢のような願いを叶えるのもいいですけど」

理事長「小さくて…でも大きくて…そんな小さな願いに詰まった大きな幸せを噛みしめるのも悪くないと思います」


理事長「のっぽパンなだけに」


ヒュー………

理事長「んんっ!失礼」

理事長「あなたも良い子にしてれば願いが届くかもしれませんよ?」

理事長「今日もどこかで神様に会ってる人がいるのでしょう、きっと次は…」


理事長「あなたの番…」

ということでホントにこれで終わりです
最後の方ぐだぐだしてましたがここまでみてくれて本当にありがとうございました
ルビィのストーリーは>>4->>66ではなくて>>712->>763のつもりで見てくれればな、と思います
最後に改めてここまで見てくれた方本当にありがとうございました
またの機会もよろしくお願いします

乙ー楽しませてもらった
最後の話って何か元ネタあったりするん?
花陽と穂乃果で似た話を見た記憶が

>>766 似たようなやつがあったなっていうのを他のところでも言われたので色々調べて見てきたのですがめちゃくちゃ似てますね、こちらの方の元ネタは『三つの願い』という童話のお話しになってますがその三つの願いというのも実際読んでみるとこちらのストーリーと全然話の内容が違いますのでほぼオリジナル(すごく似たような作品があったので二番煎じ?)になります

まったく関係ないことですが>>746>>747の間に抜けてる会話がありまして…違和感を感じた人がいたらすいません、作業しながら更新してたので未確認のまま更新してたのだと思います。
その他いくつか抜けてる場面やなぜか同じ場面を二回更新してたりしてまして「やっちゃったなー」って感じです
以後気を付けます

このSSまとめへのコメント

このSSまとめにはまだコメントがありません

名前:
コメント:


未完結のSSにコメントをする時は、まだSSの更新がある可能性を考慮してコメントしてください

ScrollBottom