隼「孤軍の隼(はやぶさ)」(18)


※融合次元が来る前の平和なエクシーズ次元でのお話です。


黒咲家・トイレ……

隼「…………」

集「……ふぅ」

隼(まさかシャワー中にいきなり便意に襲われるとは……俺の胃もまだまだだな)

隼(しかし慌てていたとはいえ全裸でトイレに駆け込んでしまった)

隼(瑠璃が出掛けていて助かった。こんな姿、万が一あいつに見られたら大変だからな)

隼(少なくともあいつの前では俺は完璧な兄でなければならない)オシリフキフキ


隼(とにかく瑠璃が帰って来る前に早急に着替えなければ……)

隼「…………」チラッ

隼「我ながら随分と出したものだ」フッ

ジャー

隼(さて、着替えたら瑠璃の部屋でも掃除しておいてやるか。きっと喜ぶに違いない)ガチャ

隼「……ん?」ガチャガチャ


隼(何だ? ドアが、開かない?)

ガチャガチャ

隼「くっ!」

ガチャガチャ

隼「ふん!」

ガチャガチャガチャ

隼「ガブリンチョ!」

ガチャガチャガチャガチャガチャガチャ

隼「くっ、駄目だ! びくともしない!」


隼「どうして急にドアが? まさか壊れたのか? 勝手に?」

隼(これは不味いぞ。俺は早く出て着替えないと……ええい!)

隼「開け! 開けと言っている!!」

ガチャガチャ……ポロッ

隼「なっ!?」

隼「ドアノブが外れた……だと?」


…………

隼「…………」←全裸で便器に座り足を組みながら考え込んでる

隼(落ち着け、俺。こういう時こそ落ち着いて状況を整理するのが重要だ)

隼(まずここは密閉されたトイレ。そして俺は全裸だ)

隼(現時点でドアを開くのは不可能。想像以上に頑丈で体当たりをしてもビクともしない)

隼(助けも呼べない。瑠璃はまだ帰らないし、ディスクも部屋の中だ)

隼(窓はあるが小さ過ぎてとてもじゃないが潜るのは不可能だな。仮に潜れたとしても……)

<ワイワイガヤガヤ

隼(ここは人通りも多い。全裸で外に出れば俺は社会的に死ぬだろう)


隼「やはり何度考えても全裸がネックだな……くしゅん!」

隼(何だか急に冷えて来たな。考えてみれば今は冬だし、シャワーを浴びた後にちゃんと身体も拭いて無かった)ガクブル

隼(不味いぞ、このままでは脱出する前に風邪を引いてしまう。何か身体を温めるものはないか?)

隼(だがトイレの中にあるものといえば……ん、トイレットペーパーか)

隼(これを巻けば少しはマシになるか? しかしだからとて……)

隼(いや、背に腹は代えられん。くそ、なぜ俺がこの様な目に)マキマキ


…………

隼「…………」←全身にトイレットペーパーを撒いて便器に座り足を組みながら考え込んでる

隼(そういえば子供の頃に読んだ小説にこんな話があったな)

隼(主人公の少年がトイレで読書をしていると2人組の泥棒が家に入ってきた)

隼(少年は助けを呼ぶ為にトイレットペーパーに文字を書きトイレの窓から放った)

隼(この方法なら助けは呼べる。ペンは無いが最悪血で書く事も出来るが……)

隼「…………」

隼「……普通にホラーだな、それ」


隼(いかんな、柄にも無くテンパっているのかまともな思考が出来ない)

隼(そんな事をしてみろ。ある意味、全裸で出るより恥だし何より妹である瑠璃まで笑われる危険がある)

隼(兄の恥は妹の恥でもある。俺は兄として何としても瑠璃を守る義務がある)

隼(瑠璃が恥をかくくらいなら、俺は一生このトイレに閉じ込められたままでいい)

隼「…………」

隼(やはりまだ寒いな。トイレットペーパー、顔にも巻いておくか)マキマキ


瑠璃『ただいまー』

隼「!」

隼(今のは瑠璃の声? 帰宅したのか? こんなに早く?)

瑠璃『あれ、兄さん居ないの?』

隼(しかしどうする? 助けを呼ぶか? だが今の俺は羽毛を抜かれたハヤブサ……こんな姿を瑠璃に晒す訳にはいかないしどうすれば?)

瑠璃『まあいっか。サヤカ、その子と一緒に上がりなよ』

サヤカ『うん、お邪魔します~』

隼(なっ、サヤカを連れて来たのか? くっ、これではますます助けを呼べん!)

隼(しかも今瑠璃は『その子』と言った……まだ他に誰か居るのか?)


瑠璃『それにしても君は可愛いね~それに男前だよ♪』

隼(男前? まさかユート……いや、瑠璃はユート相手にあんな事は言わない)

サヤカ『この子遊ぶの本当に大好きなのよ。瑠璃もきっと気に入るわ』

隼(瑠璃、サヤカ……お前達は一体誰を……?)

瑠璃『じゃあ早く私の部屋に行ってたくさん遊ぼうか……あっ』



瑠璃『もうせっかちさんね……駄目よ、そんな所舐めたら///』



隼「!?」


…………

瑠璃「あ~本当に子猫って可愛い♪ 私も飼いたいな~」

子猫「にゃ~」

サヤカ「瑠璃ったら目の色変わってるわよ……って、あれ?」

瑠璃「どうしたの?」

サヤカ「あそこに何か落ちてない? ドアノブ?」

瑠璃「あっ、本当だ。でもあれって確かトイレの……」

ガチャガチャガチャガチャ……!!!

瑠璃&サヤカ「!?」ビクッ


サヤカ「何? 何なの?」ガクブル

瑠璃「わ、分からない。でも……」ガクブル

ガチャガチャガチャガチャガチャガチャガチャガチャ……!!!

サヤカ(何かがあの中で暴れていて……)

瑠璃(音も段々激しく……)

ガチャガチャガチャガチャガチャガチャガチャ……バン!!!!!



隼「■■■■■■■■■■■―――! 」←声にならない叫び



瑠璃&サヤカ「きゃああああああああ!?!?(涙」

子猫「にゃーーーー!?」


隼「■■■■■―――!!」

瑠璃「きゃー! きゃー!!」

サヤカ「変態ー! いやー!!」

隼「■■■■■■■■■■■―――!!」ダッダッダッ

瑠璃&サヤカ「…………」ガクブル

瑠璃「で、出て行った……?」

サヤカ「る、瑠璃……今のは一体……」

瑠璃「わ、分からないわ。全身に紙を巻いてたから顔は見えなかったし……」

サヤカ「とりあえず警察を呼ばないと……だけど……」

瑠璃&サヤカ(紙の隙間から零れていたの……思いっきり見てしまった///)


…………

ユート「さて、買い物も済んだし家に帰るか……ん?」

ユート(何だ? 路地裏の奥に人影が?)

ユート「そこに誰か居るのか……!?」



隼「……瑠璃ぃ」←走っている途中にトイレットペーパーが全部ほどけて再び全裸になった状態で体操座りしてる。



ユート「…………」


その後、隼はユートによって保護され事なきを得た。
そして黒咲家に現れた謎のトイレットペーパー男の謎も闇に葬られたのであった。

<おわり>


読んでくれた人、ありがとうございました。

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