風間「しんのすけ、お前大学はどうするんだ?」 (176)

北与野博士「つ、ついに完成したぞ!私の長年の研究が実を結んだんだ!バンザーイ!」





とある高校の放課後

しんのすけ「トオルちゃん、一緒に帰ろ~」

風間「分かったからその気持ち悪い口調をやめろ!」

しんのすけ「もう、素直じゃないんだから」

風間「ったく……そういやしんのすけ、お前大学はどうするんだ?」

しんのすけ「ずいぶんと唐突だな風間くん」

風間「それを言うなら……って合ってるか」

しんのすけ「え、ていうかなに、真面目なおはなし?
やめようよ辛気臭いしオラの父ちゃん足臭いし」

風間「たまにはクソ真面目な話したっていいだろ?」

しんのすけ「オラなんかそういうの苦手。照れくさいしオラの父ちゃん足くさいし」

風間「でも必要な話だよ」

しんのすけ「ほーい」

風間「だって、僕らもう高3、しかももうすぐ12月だぜ?そろそろ志望校決めないと……」

風間「……ってあれ、しんのすけいない」汗

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しんのすけ「ねえねえおねいさんおねいさん」デレデレ

おねいさん「ええ?」

しんのすけ「オラ野原しんのすけ18歳!
老後の夢は、『昔、ナンパしたギャルたちを牛乳を飲みながら思い出し、ニヤニヤすること』」

おねいさん「はあ」

しんのすけ「ラーメンは豚骨派?醤油派?」デレデレ

おねいさん「し、塩かな」汗

しんのすけ「おお!気が合いますな。よかったらオラと一緒にラーメン巡りの旅に……」デレデレ

風間「しんのすけ!僕の話をちゃんと聞けよ!」

しんのすけ「しょうがないなあ、せっかく綺麗なおねいさんとデートできそうだったのに」

風間「なわけないだろ!見てみろ!お姉さんだってあんなに迷惑そうな顔を……」バッ

おねいさん「……」デレ

風間「あんたも満更でもないのかよ!」泣

風間「コホン!では改めて」

しんのすけ「顔も赤らめて」ニヤ

風間「ええい!赤らめるな気色が悪い!」

しんのすけ「あ、まさか……あなた他に男ができたの!?」

風間「ああ、残念だけど、僕たち別れよう……ってちがーう!」

しんのすけ「で、話ってなんなの?風間くんったらいつになっても本題に入らないんだから」

風間「お前が話を逸らすんだろーが!」泣

しんのすけ「あらま」

風間「『あらま』じゃないんだよ!『あらま』じゃっ!」泣

風間「はあ……はあ……んで、大学どうするんだ?しんのすけは」

しんのすけ「大学かあ……あんまり考えてないや」

風間「ええ?もう今11月だぜ?」

しんのすけ「ていうか、大学いかないかも」

風間「ええ!?それはまずいだろう」

しんのすけ「ほうほう。何がどうまずいの?」

風間「お前なあ。このご時世、それなりの大学は卒業してないと社会から必要とされないんだぞ?」

風間「それに僕らが通ってるのは進学校だから、大学に入らない生徒なんてまずいないよ」

しんのすけ「じゃあオラ、この学校で唯一の高卒になれるんだな!やったァ!」

風間「相変わらず呑気なやつだなあ」

風間「……なあしんのすけ、誰かに尾行されてるような気がしないか?」

しんのすけ「しない」

風間「あ、そ……じゃ、思い過ごしかな」

しんのすけ「そうだ風間くん、オラの家に寄ってかない?」

風間「しんのすけの家か……そうだな、久しぶりに行こうかな」

しんのすけ「……い、いやらしいこと考えないでね!」

風間「考えるかっ!」

野原家

しんのすけ「おかえリチャード・ギアに一度でいいから間違われたい」

風間「おじゃましまーす……」


シ---ン

風間「誰もいないのか?」

しんのすけ「いや、いる。わずかだけど、気を感じる」

しんのすけ「さては妖怪昼寝女になってるな」

ひまわり「ぐ~……すぴ~zzz……」ポリポリ

風間「あれ、ひまわりちゃんもう帰ってるんだ」

しんのすけ「テスト期間だから」

風間「しかし凄い寝相だな……」

しんのすけ「……い、いやらしいこと考えないでねっ!」

風間「考えねーよっ!!」

しんのすけ「さてと」

しんのすけ「すう……はあ……」

風間「?」

しんのすけ「あ!キアヌリーブスが脱いでる!」

ひまわり「!!?!!??」バッ

ひまわり「え!?どこどこ!?キアヌリーブスどこにいるの!!??」キョロキョロ

ひまわり「……」

風間「……」

しんのすけ「よ!」

ひまわり「……」ニッコリ

げ ん
こ つ

しんのすけ「……み、みさえ譲りのげんこつ……」シュウウゥゥゥ

ひまわり「ったくロクな起こし方しないんだから」

風間(ほんと、毎回毎回しんのすけの母そっくりだな……)

ひまわり「!」

風間「……あ、ひまわりちゃん、おじゃましてるね」

ひまわり「……あんただれ?」

しんのすけ「こら!ひまわり!」

風間「いいんだよしんのすけ別に。僕はなんとも……」

しんのすけ「あんたじゃなくて、トオルちゃんって呼びなさい!」

風間「ちがああああうっ!!!」泣

ひまわり「あはは、ごめんなさい!ちょっとしたジョークってやつ!?」

しんのすけ「そうだそうだ!かるいジョークだゾ!苦情は受け付けてないよ!」

風間(この兄にしてこの妹あり、だな……)

ひまわり「じゃ、風間くん、ごゆっくり~」スタスタ

しんのすけ「風間くんはここでくつろいでて。ちょっと物を取ってくる」

風間「うん」

しんのすけ「……」ジ--ッ

風間「な、なんだよ」

しんのすけ「ひまわりの抜け毛食べないでね」

風間「食べないよっっ!ゴキブリじゃねえんだから!」

しんのすけ「ほっ」

風間「なんだよそのマジで安心した感じの『ほっ』は」

しんのすけ「じゃ、そゆことで」

風間「どうゆうことだよ」

二階

しんのすけ「え……と、確かここにあったはず……」

ひまわり「おい、お兄ちゃんやい……ちょっと」

しんのすけ「えーなに?オラ今ゴボウなのに」

ひまわり「それを言うなら多忙じゃね?」

しんのすけ「そうともゆう」

ひまわり「そうじゃなくて、あんたのせいで変な噂が立ったらどうしてくれんの?」

しんのすけ「変な噂?」

ひまわり「あたしが変態だと思われちゃうでしょ?あんたがあんな起こし方してたら」

しんのすけ「大丈夫、もう思われてるよ」

ひまわり「少しはもちっと妹を気遣え少しは~!」グリグリグリグリ

しんのすけ「みさえ譲りのグリグリ攻撃……!」グリグリグリグリ

しんのすけ「いってー」

ひまわり「噂ってのは風の如く広まっていくんだからさ……今後あの起こし方禁止だかんね」

しんのすけ「ブラジャー」

ひまわり「そうそうブラと言えばさ、この前一緒に原宿に行った時に買ったブラウス知らない?」

しんのすけ「知らないよ」

ひまわり「えー、どこにしまったかなァあれ……」

風間「しんのすけ遅いなあ」

しんのすけ「よ!」

風間「しんのすけ!何探してたんだ?」

しんのすけ「ビデオ。ほらこれ」

風間「一昔前のもんだね」

しんのすけ「オラたちが小さかった頃からの映像がいろいろ入ってるんだ」

風間「なるほど、これを見せるために、僕を家に呼んだんだな」

しんのすけ「え?なんで分かったの!?すごい、エスパー?」

風間「……普通分かるだろ流れで」

しんのすけ「ほうほう」

風間「じゃ、さっそくビデオ見てみよーぜ」

しんのすけ「お、いいね」

風間「……」

しんのすけ「……」ジ--ッ

風間「……おい」

しんのすけ「ほうほう……」ジ--ッ

風間「ビデオそのものを直で見てどうすんだよ……」

しんのすけ「マーサーオーくん!」

マサオ「しんちゃん、そっちはよその家だってば」

しんのすけ「お、いつの間に引っ越したの?」

マサオ「だから最初からこの家だってば、いい加減覚えてよ」泣

しんのすけ「それにしてもフクザツなあたまだね」

マサオ「坊主ほど単純な頭も珍しいと思うけど……」

風間「やあ!マサオくん!久しぶり!」

マサオ「あ!風間くん久しぶりだね!」

風間「3年前に防衛隊の皆で集まった以来だね」

マサオ「うん!懐かしいね」

しんのすけ「まあまあ、立ち話もなんですから、中へどーぞ」

マサオ「しんちゃんそれ僕のセリフ……」

しんのすけ「むさ苦しいところですがどーぞあがってください」

マサオ「それも僕のセリフ!」

マサオ「ネネ!風間くんとしんちゃんが来たよ!」

ネネ「うそ!?」

ネネ「ほんとだァ!風間くん!しんちゃん!久しぶり!」

風間「ネネちゃん!?ほんと久しぶり!懐かしいなあ」

しんのすけ「おお!ネネちゃんまで!土偶ですなあ」

ネネ「それを言うなら奇遇でしょ」

しんのすけ「そうともゆう」

ネネ「あはは、三年前から変わってなくて安心したわ」

ネネ「今お茶淹れてくるね」

しんのすけ「伊右衛門ね。できればクッキーなんかもあるといいなァ」

風間「ずうずうしいぞ、しんのすけ」

ネネ「大丈夫大丈夫!ちょうどクッキー焼いてたとこなの!」ニコッ

風間「マサオくん、突然押しかけてごめんね」

マサオ「いいのいいの、今ビデオデッキセットしてるからちょっと待ってね」

ネネ「しんちゃん家、ビデオデッキなかったっけ?」

しんのすけ「あったけど、壊れちゃったの」

ネネ「ふうん」

しんのすけ「んー、懐かしのしつこいお味」モグモグ

ネネ「言うと思ったァ。そんなにしつこいかなあこれ」

風間「いや結構美味いよこれ」汗

マサオ「うん、美味しい!」汗

ネネ「ならいいんだけど」

風間「でも、なんでネネちゃんがマサオくんの家にいるの?」

ネネ「ああ、実は……」

マサオ「二人で漫画を描いてるんだ」

ネネ「それで、ちょいちょいこっちに来てるの」

風間「ああ、マサオくん漫画描くの好きだったもんね」

マサオ「うん。僕が絵を描いて」

ネネ「ネネが脚本を書くの」

風間「そうか。昔から暇さえあれば、リアルおままごとの台本考えてたし」

ネネ「うん。こういうの向いてるんだと思う」

マサオ「一応既に持ち込みもして、担当ついてるんだ」

風間「へえ、羨ましいなァ」

マサオ「え?」

風間「あ、いや、なんでもないんだ」

風間「あれ?でもネネちゃん女優を目指してたんじゃなかったっけ」

ネネ「うん。実際、高校で演劇部入って演技の練習したんだけど、イマイチ身にならなくて……」

ネネ「で、先輩に『脚本書いてみないか』って言われてやってみたら、なかなか筋がいいって褒められたのよね」

ネネ「私、女優より裏方の方が向いてたんだって気付いたんだ」

風間「なるほど、そんなことが……」

しんのすけ「でめたしでめたし」モグモグムシャムシャオチムシャ

風間「マサオくんやネネちゃんの親はこのこと、知ってるの?」

マサオ「うん」

ネネ「最初は怒られるかなあって不安だったけど、どうしてもやりたいって言ったら、好きにしなさいって」

マサオ「僕も大体そんな感じ」

風間「なるほど……」

マサオ「よしこれでオッケー。しんちゃん、ビデオ貸して」

しんのすけ「ほい、優しくしてね」

マサオ「任せて」

……

風間「お、流れたぞ」

『いや~ん、うっふ~ん♡』

『あっは~ん♡』

ネネ「なにこれ!女の人がプロレスしてる!」

しんのすけ「いっけね!間違えてトゥナイトⅡ録画したビデオ持ってきちゃった!」

マサオ・ネネ・風間「だーーーーーっ!!!!」ズコ---ッ

風間「ったく、何やってんだよしんのすけ!」

しんのすけ「いやァそれほどでも~」

ネネ「褒めてないってば……」

『マーサーオーくうん!』

マサオ「え?」

ネネ「マサオ、誰かが呼んでるわよ。外から聞こえるけど……」

風間「この声、ひまわりちゃんじゃない?」

ひまわり「マーサーオーくうん!」

マサオ「やっぱりひまわりちゃん……僕ん家はこっちだよ」

ひまわり「あ、マサオくん!」

ひまわり「あれ?いつの間に引っ越したの?」

マサオ「……前からずっとこの家だよ」

ひまわり「あら、そうだったっけ」

マサオ「うん」

ひまわり「中、入ってもいい?」

マサオ「いいよ」

マサオ「……ってもう入ってるよ……」

マサオ「間違いなくしんちゃんの妹だ」

ひまわり「お兄ちゃん!間違えてトゥナイトⅡのビデオ持ってったでしょ!ほら、本物持ってきてやったよ」

しんのすけ「おおサンキュ!やっぱり持つべきものは妹だなァ」

ひまわり「いやはや、今回はうちの兄がご迷惑わりまして……」

風間「かけまして、だろ?」

しんのすけ「割り切れませんでした」

風間「分数使えよ」

しんのすけ「あ、ひまわり、このトゥナイトⅡのビデオ返すね。ごめんね勝手に借りて」

ひまわり「あたしのじゃねーよっ!!誤解されるようなことをほざくなっ!!」

ネネ「そうだ、ひまわりちゃん、良かったら一緒にそのビデオ見ない?」

マサオ「いいねそれ」

風間「賛成」

しんのすけ「でもひまわりはテスト期間……」

ひまわり「いいね!見る見る!テストはテキトーでいいやァ、勉強飽きたし」

しんのすけ「」

風間「いいの?」

ひまわり「いいのいいの!子どもはわがままなぐらいがちょうどいいんだって!」

風間「ふうん……」

ひまわり「あ、それと風間くん!萌えPの携帯ストラップ家に忘れてったでしょ!持ってきてあげたよ!」

風間「え、ちょ」

ひまわり「ていうかさ、これ試写会に来た人限定のレアストラップだよね?しかも7年前の!
萌えPの形態も映画版のだし、すんごいレアだよこれ。
あたしもこのタイプのは初めてみた」ペラペラペラペラオペラオペラ

マサオ「風間くん、萌えPの試写会行ったんだ」

風間「ままま待ってくれ!それは誤解で、本当は仕方なく……」汗

しんのすけ「風間くん」

風間「なんだよ」汗

しんのすけ「素直になろうよ」

風間「……」

しんのすけ「オラとトオルちゃんの仲でしょ~隠し事はいやん。素直になりましょうよん」

風間「だーーーーーっ!!!!抱きつくな気色悪い!」

ひまわり「11月27日、しんのすけと風間くんが恋人のように抱き合った。と」カキカキ

風間「んなことを勝手に日記に書くなあああああああああ!!!」泣

ネネ「風間くんが萌えP好きだなんて、ネネたち昔から知ってたわよ」

風間「……え?」

マサオ「うん、風間くん嘘が下手なんだもん」

風間「皆気付いてたんだ……」

しんのすけ「えー!?オラ全然気付かなかった!皆いつ気付いたの?」

ネネ・マサオ・風間・ひまわり「……」

ひまわり「別に風間くんが萌えP好きだからって、あたしたち引いたりしないよ」

マサオ「うん、僕もちょくちょく見てたし」

ネネ「無理に隠そうとする方がいけないと思うの」

しんのすけ「よかったね風間くん」

風間「うん……そうだよね、うん。今まで隠しててごめん」

風間「僕、風間トオルは『魔法少女萌えP』が大好きです!!!」

しんのすけ「オラは風間くんが大好き」

風間「ああああああ!耳をはむはむするなああ!」

しんのすけ「さて、ビデオ見ますか」

風間「温度差すごいな。月かよ」

上映

しんのすけ『……』ガチガチ

ひろし『しんのすけ、写真じゃないんだから~~』

みさえ『動かなきゃ意味ないのよ』

しんのすけ『……』ギクシャクギクシャク

ひろし『どうもぎこちないなァ』

しんのすけ「ビデオカメラ買って初めて撮ったやつだな、たぶん」

マサオ「幼稚園の時のしんちゃんだ!」

ネネ「しんちゃん緊張してるゥ、かわいい~」

風間「大半は野原家の映像なんだね」

ひまわり「あたしが生まれるまえかァ、なんか新鮮で不思議」

しんのすけ「この頃のオラはカメラの前だと固まっちゃってたなァ。
今はそんなことないけども」

30分後

風間「順番ゴチャゴチャだけど、いろんな幼稚園の行事が見られて楽しいね」

ネネ「ビデオに映ってた卒園式の後、しんちゃん家に集まってパーティーみたいなのしたよね!」

マサオ「ああ!やったやった!風間くんの私立小学校合格記念も兼ねて!」

風間「そんなこともあったね。懐かしいなァ」

しんのすけ「懐かしいって気持ちがやっと分かったね、風間くん」

風間「あ、確かに……今ならオトナ帝国にハマってた大人たちの気持ちもちょっとは分かる気がするよ」

マサオ「そういえばさ、なんでしんちゃんは急にこのビデオを見ようと思ったの?」

しんのすけ「探し物があるんだ」

風間「探し物?」

ネネ「なにそれ」

しんのすけ「タイムカプセル」

ネネ「……あ」

風間「そういえば……」

マサオ「幼稚園の時にタイムカプセル埋めたんだっけ。いつかみんなで掘り起こそうって」

ひまわり「へえ~」

しんのすけ「数日後までに掘り起こしたいんだ、オラ」

風間「ずいぶん急だな」

ネネ「でも、いい機会だし、掘ってみましょうよ!」

マサオ「うん、いいかもしれないね」

ひまわり「面白そうだねェ、で、それ何処に埋めたの?」

しんのすけ「そう、問題はそこなんですよ奥さん」

ひまわり「誰が奥さんだコラァ」

ネネ「確か……アクション幼稚園のどこかに埋めたわよね」

しんのすけ「その『どこか』が正確に思い出せなかったんだゾ」

風間「あ、もしかして」

しんのすけ「そう。当時ビデオカメラでカプセルを埋める場所を撮っておいたはずなんだ」

風間「なるほど……当時の行動が功を奏したわけか」

ネネ「あ!ビデオ見て!」

マサオ「タイムカプセルを埋めてるシーンだ!」

ひまわり「えっと……ここは……?」

ネネ「アクション幼稚園のウサギ小屋よ!」

風間「そうか!思い出したぞ、僕たちウサギ小屋の中の地面に埋めたんだ!」

マサオ「ここなら誰にも見つからないだろうってしんちゃんが言ったんだよね」

しんのすけ「全く、無責任な野郎だ」

マサオ「君のことだよ……」

ひまわり「ウサギ小屋……あったようななかったような……?」

しんのすけ「早速明日掘り起こしにいこうっと」

風間「でもボーちゃんがいないぜ?」

ネネ「三年前、アメリカに行っちゃったもんね」

マサオ「でも何年も待ってたらその内にカプセルが取られちゃうかも」

しんのすけ「え、それは困るなァ」

ネネ「取られるってことはないとは思うけど……」

ひまわり「ボーちゃんに電話してみたら?」

風間「そうしてみようか」

マサオ「……もしもし、あ、ボーちゃん?」

ボー「マサオくん どうしたの?」

マサオ「急なんだけどさ、タイムカプセル埋めたの覚えてる?幼稚園に」

ボー「……!」

ボー「覚えてる」

マサオ「よかった。話がはやいね」

マサオ「しんちゃんがね、カプセルを掘り起こしたいらしいんだけど、ボーちゃん今アメリカにいるじゃない?」

ボー「ボー」

マサオ「だ、だよね」

マサオ「僕たちだけで掘り起こしちゃっても大丈夫……かな?どうしても待てないみたいなんだ」

ボー「しんちゃんが そう 言ってるなら 掘っていいよ 掘れるもんなら」

マサオ「え……うん、ありがとうボーちゃん。ボーちゃんのも大切に保管しておくね!」

ボー「ボー。じゃ そろそろ時間だから……」

マサオ「時間?そっか。うん。ばいばい」

マサオ(掘れるもんなら……?)

風間「じゃ、明日アクション幼稚園に17時集合にしよう」

風間家

風間「ただいまー」

風間ママ「おかえり、今日は予備校休みだったのに遅かったわね。どこ行ってたの?」

風間「ああ……カフェで勉強してたんだ」

風間ママ「あらそう。お疲れでしょ?夕飯食べなさい」

風間「うん、ありがとうママ」

風間トオルの部屋

風間「……二項定理を微分して……ああ!やめた!」

風間「……」

風間「…………」

風間「……僕、なんのために勉強してるんだっけ」

風間「東大に入るため……じゃ、なぜ東大に入りたい……?」

風間「……」

風間「分からない」

風間「小さい頃から、パパみたいにいい大学に入って、いい会社に入りなさいって言われてて」

風間「ママの期待に応えたくて……周りに認められたくて……」

風間「その一心で勉強してたんだっけ……」

『お前なあ。このご時世、それなりの大学は卒業してないと社会から必要とされないんだぞ?』

風間「そう自分に言い聞かせていた」

『それに僕らが通ってるのは進学校だから、大学に入らない生徒なんてまずいないよ』

風間「周りと違うのが怖くて、僕は大学に入るのか?」

『もう、素直じゃないんだから』

『風間くん』

『素直になろうよ』

風間「しんのすけ……僕も君みたいになれるかな」

『無理に隠そうとする方がいけないと思うの』

『最初は怒られるかなあって不安だったけど、どうしてもやりたいって言ったら、好きにしなさいって』

風間「……引き出しの中に、執筆途中の漫画原稿があること、ママが知ったらどんな顔するだろう」

『いいのいいの!子どもはわがままなぐらいがちょうどいいんだって!』

風間「ママ……」

風間ママ「あら、トオルちゃん。どうしたの?そんな改まった顔して」

風間「僕、漫画家になるよ」

風間ママ「え?……やだそんな真面目な顔でジョークだなんて」

風間「ジョークじゃないよ。僕、真剣なんだ」

風間ママ「……」

風間「僕、昔から魔法少女萌えPが大好きで、萌えPみたいな漫画を描きたいって密かに思ってた」

風間「実際に描いてみたら、そりゃ大変だけど、勉強よりずっと集中できるんだ。何より、すごく面白い」

風間ママ「でも、漫画家なんて簡単になれるものじゃないわ」

風間「分かってるよ。でもやりたいんだ」

風間「やっと素直になれそうなんだ。自分が本当にやりたいことに」

風間「よく考えたら、僕は勉強が特別好きなわけでもないし、大学に入ってこういうのを勉強したいっていうのも全くなかった」

風間「だから大学にはいかない」

風間「ママが何と言おうと、僕は漫画を描くよ」

風間ママ「……」ワナワナ

風間「……」

風間ママ「……ありがとう、トオルちゃん」ギュッ

風間「え……」

風間ママ「トオルちゃんが自分から、何かをやりたいって真正面から反抗してきたの初めてだから、嬉しくて」

風間「ママ……」

風間ママ「トオルちゃんは漫画が描きたかったのね。ママ知らなかったわ」

風間ママ「ごめんね……トオルちゃんの本心も知らないで、勉強ばっかりさせて……」

風間「こっちこそごめんなさい……。こんなに教育にお金をかけてもらってたのに……」

風間ママ「ううん、お金なんてどうにでもなるわ。それよりも、トオルちゃんが後悔のないような人生を送れるかどうかの方が大切よ」

風間「ママ……ありがとう」泣

風間ママ「こちらこそ、本音をぶつけてくれてありがとう」

野原兄妹の帰り道

ひまわり「うーん」

しんのすけ「うんこ?」

ひまわり「るせえよ!!ていうかちがうし!!!」

しんのすけ「じゃ、なに」

ひまわり「いや、なんかね、ストーカーされてるような気がして……」

しんのすけ「ひまわりに限ってそれはないから大丈夫!」

ひまわり「どういう意味だよっ!!!」

しんのすけ「ひまわりは成長するにつれて母ちゃんに似てくるんだゾ」

ひまわり「え~ヤダなァ」

しんのすけ「ひまわりが北与野博士のハヤスギルンDSを飲んだ時に、オラはひまわりの成長過程を見届けたもんね」

ひまわり「ったく変な薬作りやがって……」

ひまわり「いや~しかしさあ」

ひまわり「お兄ちゃんにもあんな時期があったんだねェ、腹抱えて笑っちゃった」

しんのすけ「父ちゃんや母ちゃんにもあんな時期があったんだよね。不思議だよね」

ひまわり「ホントだね」

ひまわり「…………」

ひまわり「ねえねえ」

しんのすけ「なあにい」

ひまわり「ママ怒ってるかなァ……」

しんのすけ「テスト期間だし、かもね」

野原家

ひまわり「車ある……やっぱりママ、パートから帰ってきてるかァ……」

ひまわり「ただいまァ……」ガチャ

みさえ「……ひまわり、どこ行ってたの?」

ひまわり「……と、友だちの家」

みさえ「ママとのお約束第338条!『テスト期間中に勉強を放ったらかして夜遅くまであそんではいけない!』」

みさえ「忘れたとは言わせないわよ」

しんのすけ「かあちゃん、オラが悪いんだよ。無理やり連れてっちゃったから」

ひまわり「え……!?」

みさえ「しんのすけ!ひまわりを甘やかしちゃダメでしょーがっ!」グリグリグリ

しんのすけ「ひいいぃ!本日二度目のグリグリィィ!」

ひまわり「ママ」

みさえ「なに」

ひまわり「あたしにもグリグリして」

みさえ「ああ言われんでももちろんするよ!」グリグリグリ

ひまわり「ひいいぃ!もうしませんごめんなさあああいィ!」

みさえ「……今後は気を付けるのよ」

ひまわり「うん」

しんのすけ「ひまわり……」

ひまわり「……なに?」

しんのすけ「Mだったんだね」

ひまわり「ちげえよ!!!!!」

ひろし「ははは、まあ中学生なんて、遊びたい盛りだよなァ」

ひまわり「……」

みさえ「あなた、ひまわりにはホント甘いんだから」

しんのすけ「まただ、カボチャ煮はホント甘いんだから」

ひろし「んでひまわり、何して遊んでたんだ?」

しんのすけ「んでおかわり、味いいね COME ON 出番だ」

ひまわり「そんなのパパに関係ないでしょ」

しんのすけ「今夜の辛(から)いな、例外でしょ」

ひろし「なんだ、冷たいなァ」

しんのすけ「なんだ、味噌汁冷たいなァ」

げ ん
こ つ

みさえ「あんたはさっきからゴチャゴチャうるさい」

しんのすけ「本日二度目のげんこつ……」シュウウゥゥ

ひまわり「ごちそうさまぁ~ずバカルディ」

スタスタスタスタ……

みさえ「あらやだあの子またサンマ残しちゃって……」

しんのすけ「ひまわり、小さい時喉にサンマの骨が刺さって以来焼き魚嫌いになっちゃったもんね」

ひろし「ひまわりも反抗期っぽいなァ」

しんのすけ「今わりと缶コーヒー濃いなァ」ゴクゴク

ひろし「しんのすけ、何して遊んでたか知ってるか?」

しんのすけ「ビデオ見てたの。ほら」

ひろし「何々……トゥナイトⅡ録画集……ってこれ俺が昔みさえに内緒で録画してたやつじゃねーか!
こんなもん見てたのか!?」

しんのすけ「あ、父ちゃんうしろ」

みさえ「」

ひろし「」

みさえ「」ニッコリ

ひろし「だーーーーーっ!!!!いてっ!すまんすまん!うわああ!」ドカッバシッグリグリ

しんのすけ「父ちゃんごめん、ホントはこっちだった」

ひろし「最初からそっちを出せよっ!!!」

しんのすけの部屋

しんのすけ「はあ……はあ……」

ガチャ

ひまわり「お兄ちゃん、さっきは……ってちょ、何やってんの!?」汗

しんのすけ「!?」

しんのすけ「こ、こらァ!はあ……ノックしてから入れって……はあ……言っただろォ!」汗

しんのすけ「はあ……はあ……オラ、集中して『怪人にやられそうになってピンチのアクション仮面が進化形態に変身する』シーンの練習やってたのにィ」

ひまわり「あ、なるほどね。ごめんごめん、えへへ」

ひまわり「では気を取り乱して」

しんのすけ「取り乱してどうする」

ひまわり「おーい」コンコン

しんのすけ「今ノックしても遅いの」

ひまわり「ほうほう」

しんのすけ「にしても、ひまわりがオラの部屋に入ってくるなんて珍しいなァ。金ならやらないゾ」

ひまわり「違うよ。お礼を言いにきただけ」

しんのすけ「?」

ひまわり「お兄ちゃん、さっきは、ありがとね」

しんのすけ「さっき……?」

しんのすけ「あ、トゥナイトⅡのビデオのことかァ!」

ひまわり「だからちげえよ!!!いい加減トゥナイトⅡから離れろ!!!」

ひまわり「そうじゃなくてほら、庇ってくれたでしょ」

『かあちゃん、オラが悪いんだよ。無理やり連れてっちゃったから』

しんのすけ「ああ……」

しんのすけ「気にするなひまわり。ある意味ホントだしな」

ひまわり「そっか、ありがと」

しんのすけ「それより明日のテスト。大丈夫なのか?オラは心配で心配で昼も眠れないゾ。夜は眠れるゾ」

ひまわり「よゆーよゆー!こう見えても数学と理科はチュートリアルなんだ!」

しんのすけ「ええと……」

ひまわり「遅い!」

しんのすけ「それを言うなら得意だろ、かァ」

ひまわり「それそれ。もちっとテンポ良くいかないと旦那」

しんのすけ「オラ、ツッコミには慣れてないんだァ あははは」ニヤニヤ

ひまわり「あ、携帯鳴ってるよ」

しんのすけ「風間くんだ」

ひまわり「スピーカーにしてね」

しんのすけ「はいもしもし。おれおれ詐欺ですか?」

風間「風間トオルです!」

しんのすけ「なんだ風間くんか。そうならそうと早く言ってよね」

風間「番号で誰か分かるだろ……」

しんのすけ「で、いきなりどうしたの?」

風間「ああ……ちょっとした報告があって……」

ひまわり「へえ~、風間くんが漫画家になりたいだなんて、初めて知ったァ」

風間「うん、しんのすけたちのおかげで僕も踏ん切りがついたよ」

風間「大学に行かずに漫画描く。決めたんだ」

しんのすけ「……大学行きながら漫画描けばいいのに。風間くん家お金もあるし」

ひまわり「あ、それ言っちゃう?」

しんのすけ「意外と影響されやすい性格なのかも」

風間「ははは」汗

風間「それももちろん考えたんだけどさ、理系の大学ってかなり忙しいみたいだし、漫画描く時間なんてないかなって」

風間「それに、大学という保険をかけてたら、漫画に100%本気になれない気がしてさ」

しんのすけ「そっかァ。オラ折角この学校で唯一の高卒になれると思ったのになァ。まあいっか」

ひまわり「なるほどねー。あたしは応援してるよ。決めたからには頑張れ風間くん!」

しんのすけ「うん。オラは崖から風間くんの背中を押すことしかできないけどさ、頑張ってね!」

風間・ひまわり「『崖から』は余計だろっ!!!」

しんのすけ「おお」

翌日 17時 アクション幼稚園

ネネ「うわああ!懐かしいィ」

風間「僕ここに来るの12年ぶりかも」

マサオ「外から見た感じは昔とあんまり変わんないね」

しんのすけ「みどりのやつ、元気でやってるかなァ」

風間「入ってみようか」

みどり「しんちゃん!それに皆も!すごい久しぶり」

しんのすけ「よ!みどり、元気してたか?」

みどり「元気も元気よ」

風間・ネネ・マサオ「お久しぶりです!」

みどり「皆大きくなったわねェ。私身長抜かれちゃった」

風間「あはは、幼稚園の時は、吉永先生があんなに大きく見えたのに」

しんのすけ「お胸も大きく見えたのに」

みどり「今は小さいって言いたいの?」ワナワナ

しんのすけ「そうともゆう」

みどり「そうとしか言わんだろうが!」

みどり「しんちゃんの話は妹のひまわりちゃんからよく聞くんだけど、他の皆は全然だから、皆の話聞きたいわ」

ネネ「今でもひまわりちゃんと会うんですか?」

みどり「娘の桃がひまわりちゃんと友だちなのよ」

ネネ「へええ、そうなんだァ」

マサオ「意外な繋がりだね」

しんのすけ「……ふと『もも』」ボソッ

みどり「おい聞こえてんぞ!細いからね!細ももなんだから!」

ネネ「そういえば、まつざか先生と上尾先生は?」

しんのすけ「何か足りないと思ったら、梅さんとますみちゃんがいないのか」

みどり「まつざか先生は結婚してそのまま退職したわ。田舎に帰って農業を営みながら穏やかに暮らしてるみたい」

マサオ「ええ!?」

ネネ「まつざか先生が結婚!?」

風間「これはめでたいですね」

しんのすけ「石坂さんとまつざか先生の夫、どっちの方がかっこいい?」

みどり「そりゃあもちろん石坂さん……って何言わすのよ」

みどり「上尾先生は黒磯さんと結婚して、退職」

マサオ「上尾先生も!?」

ネネ「けっこーん!?」

風間「これもめでたいですね」

しんのすけ「黒磯……って誰だっけ?」

マサオ「あいちゃん……酢乙女あいの執事じゃない?ほら、いつもサングラスかけてた」

しんのすけ「ああ、あいちゃんの……なんか居たような気がしてきたゾ」

「へっくしゅん」

ネネ「ん?今誰かくしゃみした?」

風間「いや、誰もしてないと思うけど……」

ネネ「?」

竜子「あ!ジャガイモ小僧!」

しんのすけ「おお!師匠!なんでこんなところに!?」

みどり「ここで幼稚園の先生をやってるのよ」

竜子「へへっ、ま、そういうことさな」

しんのすけ「お笑い芸人は諦めたんだね……」泣

竜子「だからあたいはお笑い芸人じゃねーよっ!!!!!」

竜子「まあなんつーかさ、あたい、結構小さい子相手するの好きみたいでさ」テレテレ

竜子「厳しい家で育ったから作法とかも詳しいってのもあるかもしんねーけどよ、それ抜きにしたって、今の仕事は結構気に入ってんだ」


しんのすけ「ふっ、いい歳してセーラームーンのパンティーか」ニヤ

竜子「てめえ!!!話聞いてんのか!!!!」

竜子「ったく……そういやよ、てめえの話はあそこのバラ組の教室にいる先生からよく聞くぜ」ニヤ

しんのすけ「え?」

ネネ「しんちゃん、心当たりある?」

しんのすけ「うーん……でもあの人はここにいるはずは……」

『お空に向かってズンズズン♩』

風間「あれ?なんか音楽が聴こえる」

『どんどん伸びるよズンズズン♩』

風間「なんか聴いたことあるぞ!」

『こ~んなち~っちゃいタネなのに♩』

マサオ「ひまわり体操だ!昔踊ってたよね!」

『こ~んなでっかい 花が咲くっ♩』

ネネ「バラ組の教室から聴こえるゥ!」

竜子「おいジャガイモ!行ってきな」

しんのすけ「う、うん」

バラ組の教室

しんのすけ「ああ!」

風間「しんのすけ、どうしたんだ?」

しんのすけ「ななこおねいさん……!」カ--ッ

マサオ「しんちゃん顔真っ赤」

ななこ「あれ……?しんのすけ!?」

ななこ「ごめん、今音楽止めるね」カチ

しんのすけ「ななこおねいさん……ダンスのキレ良かったね」

ななこ「ほんと!?お遊戯会のために練習してたんだ。ちょっと恥ずかしいけど、良かったなら良かった」

しんのすけ「でも、な、ななこおねいさん、と、都内の幼稚園で働いてるって去年言ってたけど、え、なんでここに」カ--ッ

ななこ「半月前にここに移ったの。まだ言ってなかったね」


ネネ「……」

ななこおねいさんってしんちゃん呼びじゃなかったっけ?

ネネ「風間くん、マサオ、先にタイムカプセル掘りに行ってましょ」

マサオ「え?でもしんちゃんが……」

ネネ「いいの。さ、行くわよ」

風間「……そうだな、しんのすけ、先に行ってるよ」

>>56
13年経つ内に前より仲良くなりしんのすけ呼びになったという設定です、一応

>>57 訂正

ネネ「風間くん、マサオ、先にタイムカプセル掘りに行ってましょ」

マサオ「え?でもしんちゃんが……」

ネネ「いいの。さ、行くわよ」

風間「……そうだな、しんのすけ、先に行ってるよ」

ネネ「……あ、そうだ」

ななこ「1年前に野原家と大原家合同で旅行した以来だね」

しんのすけ「熱海ね。ボク、今でもあの時の夢を見るんだ」

ななこ「あは、何それ、やっぱりしんのすけ面白い」

しんのすけ「そう言ってもらえると元気も出るってみのもんた」

ななこ「あはは」

ななこ「しんのすけももうすぐ高校卒業だよね。もう大人だ」

しんのすけ「ボクが初めて会った時のななこおねいさんの歳に、もうすぐ追いついちゃうんだから、ホント信じられないよね」

ななこ「そっか、もうそんなに……時が経つのって早いなァ。私もおばさんになっちゃったし」

しんのすけ「いやいやいや全然、まーったくおばさんには見えないよ!まるで20代!ピチピチ!」

ななこ「えー、ホントかなァ」


ネネ「スタンバイオッケー……」

みどり「……ネネちゃん、ラジカセの前で何やってんの」汗

ネネ「お構いなく」

しんのすけ「な、ななこおねいさん!」

ななこ「急にどした」

しんのすけ「今度また、一緒に食事しよう」

ななこ「え?……うん、また忍やみさえさんたちとみんなで楽しく食事し……」

しんのすけ「そうじゃなくて!」

ななこ「え……?」

しんのすけ「ボクと二人で……二人きりで食事したいんだ」

ななこ「しんのすけ……」


ネネ「今だ!」カチッ

ジャカジャジャン♪(『ラブ・ストーリーは突然に』のイントロ)

しんのすけ「…………」

ななこ「…………」

ななこ「……うん」

しんのすけ「え」

ななこ「いいよしんのすけ。二人でどっか食べにいこ!」

しんのすけ「ななこおねいさん……!」

ななこ「ななこでいいよ。もうおねいさんじゃないし、しんのすけも大人でしょ?」

しんのすけ「……な、ななこ……」

ななこ「あ、ちょっとどしたの、泣いてるの!?」

しんのすけ「ううん、目にゴミが入っただけさ……」泣

『あの日あの時あの場所で 君に会えなかったら』

『僕らはいつまでも 見知らぬ二人のまま』


みどり「ネネちゃん、バックに名曲の『ラブ・ストーリーは突然に』を流すのは止しなさい」汗

ネネ「もう、盛り上がってたのにィ」カチッ

みどり「やっぱり流すべきは演歌でしょ!北埼玉ブルースでしょ!」

ネネ「でーーっ!突っ込むとこそっちかい!」ズコ--ッ

ななこ「こすっちゃダメ。どれどれ?」

しんのすけ「……」

ななこ「ホントだ。『ハンカチでちょい』しないと」

ななこ「……とれたみたいね!」

しんのすけ「ありがとうななこ」

ななこ「どうしたしまして。んで、食事だけど、私は明日にでも行けるんだけどどうする?」

しんのすけ「よし、明日にでも是非行こう!」

ななこ「決まりだね。明日のランチ、一緒に食べるということで」

しんのすけ「うん!」

ななこ「詳しいことは、また電話して決めよ」

しんのすけ「うん。ごめんね、仕事中邪魔して」

ななこ「はは、いいのいいの、踊ってただけだし」

しんのすけ「じゃ、また明日!」

ななこ「うん、また明日」

草むら

黒磯「……なんと」

あい「しん様……」

黒磯「あ、あい様!いつの間に」

あい「さっきからずっといましたわ」

黒磯「本当ですか?気がつかなかった……」

あい「……もう、終わっていいですわ」

黒磯「え?」

あい「しん様を追いかけて様子を報告するの、やめていいですわ」

黒磯「し、しかし、それでは……」

あい「……いや、それだけではなく、あいに仕えるのも今日で終わりです」

黒磯「あ、あい様!?」

あい「あいももう18……いつまでも黒磯にいてもらうわけにはいきません」

黒磯「……」

あい「あんなに幸せそうなしん様の顔、あいの前では見せたことありませんでしたわ」

あい「あの二人、お似合いですもの」

黒磯「……あい様、それでいいのですか?」

あい「いいんですわ。あいもやっと踏ん切りがつきましたの」

あい「しん様が幸せでいてくれるなら、あいはそれでいいのですわ……」

黒磯「……分かりました」

あい「仕事ならちゃんとあるから安心しなさい黒磯」

黒磯「ありがとうございます、あい様」

あい「……早く帰って、家族サービスでもするんですわ。子どももいるのでしょう?」

黒磯「は、はい。いいのですか?」

あい「さっさと行きなさい!最後の命令ですわ!」

黒磯「あい様……」

あい「早く行って!」

黒磯「はい。で、では」

あい「…………」

「しんのすけ!やっと来たか、遅いぞ!」

「いや~ごめんくさい風間くん」

「なんか、やけに上機嫌だなァしんのすけ。それより大変なんだ」


あい「……しん様……もう、これっきり……」

あい「さようなら、ですわ……」

しんのすけ「何が大変なの?」

風間「見ろよ!ウサギ小屋があった場所に!」

ネネ「プレハブが建ってるのよ!」

しんのすけ「おお、それはへんたいだゾ……」

風間「もうタイムカプセルは掘り出せないよ」

マサオ「そ、そんなァ……」

ネネ「なんとかならないかしら……」

しんのすけ「おお!オラ、頼れる人を知ってるゾ!」


マサオ(『掘れるもんなら』ってそういうことだったのか……)

北与野博士「ほうほう。なるほどね」

博士「それじゃあいいものがある。ついさっき完成したんだよ」

博士「タイムマシン!」

風間「ええええ!」

マサオ「タ、タイムマシンって、あの?」

博士「そう!あの!」

ネネ「なるほど!過去に行って、プレハブができる前にタイムカプセルを掘り出すって算段ね」

しんのすけ「みさえは三段腹ね」

博士「んで、何年前に戻るんだ?」

風間「そうだなァ……」

『えっと……ここは……?』

『ウサギ小屋……あったようななかったような……?』

風間「おそらく、ひまわりちゃんがアクション幼稚園に入った時には既に……」

風間「だけど、僕たちの頃はまだウサギ小屋は健在だったから……」

風間「となると……」

しんのすけ「ドナルド?」

風間「ちがう」



注 原作の「しんのすけのバックトゥザフューチャー」という話はなかったことにしています

風間「今4人で話し合って決めた結果、12年前……僕たちが6歳だった頃、卒園する日に行こうと思います!」

博士「12年前、卒園の日、1998年の3月にいくんだな」

風間「えっと……3月だから、そういうことになりますね」

博士「よしきた。ただ、タイムマシンは二人乗りだから、四人は乗れないよ」

しんのすけ・風間・ネネ・マサオ「え!?」

博士「いやま、乗ろうと思えば乗れるかもだけど、ちょーきついよ」

ネネ「ちょっと、どうすんの?」

しんのすけ「そうだ!ジャンケンで決めよう」

風間「おいおいテキトーだなァしんのすけ。そんなんでいいのか?」

マサオ「でも確かに、一番公平な方法だよね」

ネネ「よーし、じゃ、いくわよ!ジャーンケーン……」

風間「なんでわざわざ公園でタイムスリップするんですか……」

博士「この場所じゃないとダメなんだよ。時空うんたらのせいで」

しんのすけ「なんかうさんくさいね」

風間「しかもトイレ型って……」

しんのすけ「なんかうんこくさいね」

しんのすけ「まあいっか!風間くん、乗ろうよ」

風間「ああ」

博士「あ、あっぶね!これ渡すの忘れるとこだった!」

博士「このトイレの……いやいやいや、タイムマシンの鍵!しんちゃんに渡しておくからね!
絶対に鍵をかけて『使用中』の表示にして出かけるんだぞ!」

しんのすけ「ほほーい」

博士「あ!それから!タイムスリップしてから24時間以内に現在に戻らないと、一生戻れなくなるからな!」

しんのすけ「ほほーい」

博士「……ほんとに大丈夫かな」

タイムマシン(トイレ型)内

風間「このレバーを『小』の方に回せば過去にいくんだな」ガチャ

ギュイイィン 

しんのすけ「風間くん」

風間「なんだよ」

しんのすけ「やっと二人きりになれたね」

風間「気色悪いこと言うなよ!!!」

しんのすけ「んもう、照れちゃって」

風間「照れてない!」

しんのすけ「お、もう過去に着いたみたいだゾ」

風間「はや」

2009年 11月28日 18時30分 公園

博士「お、消えた。無事過去に行ったみたいだな」

博士「じゃ、研究所に戻って録画した再放送の『不揃いの蛇苺たち』の再放送見よ!」

1998年 3月 卒園の日 17時 公園

風間「……ほんとに、過去に戻ったのかな」

しんのすけ「たぶん」

風間「僕らがまだ幼稚園児だった頃か」

しんのすけ「風間くんがプールでタマタマを堂々と見せたり、女子高の文化祭でうんこ漏らしたりしてた頃だね」

風間「なんでそういうことばっかり覚えてるんだよっ!!!」泣

風間「……とにかく、アクション幼稚園に行ってみよう!」

アクション幼稚園

風間「もう園児は皆帰ったみたいだね」

風間「先生たちは……職員室だな、たぶん」

しんのすけ「みどりにあいさつしてく?」

風間「ばか!当時のよしなが先生からしてみれば、僕たちは赤の他人なんだぞ!」

しんのすけ「ほうほう」

風間「よし、今なら掘りに行ってもきっとバレないぞ!」

しんのすけ「えー、大丈夫かな。夜中まで待ったほうがいいんじゃない?」

風間「博士が、24時間のタイムリミットがあるって言ってたろ?おちおちそんなことも言ってられないよ」

しんのすけ「ほうほう」

風間「僕の合図で一気にウサギ小屋まで行くぞ……今だ!」

ウサギ小屋

しんのすけ「無事、ウサギ小屋の前まで来たね」

風間「ああ、さっさとスコップで掘っちゃおう」

ザッザッザッザッ

しんのすけ「ウサギちゃん、ちょっとごめんね」

ザッザッザッザッ

風間「変だな……確か金属製の箱に入れてた気がするんだけど……」

しんのすけ「全然見つからないゾ……」

カキン

風間「あ、あった!?」

ガサゴソガサゴソ

風間「おかしい……こんなに小さかったけな」

しんのすけ「風間くんのちんちん?」

風間「ちがうよ!!!」

しんのすけ「風間くん、しーーーっ!」

風間「あ……」

シ--ン

風間「気をつけないと……」

風間「!?」

風間「中身がない!?これやっぱり僕たちが埋めた箱じゃないよ!」

しんのすけ「紙が一枚入ってる」

風間「ほんとだ……」

『ほりだせなくなるまえに ほっておいた』

しんのすけ「この字……幼稚園児なのは間違いなさそうだね」

風間「うん、そして、この場所を知っているのは当時、防衛隊の5人だけ」

しんのすけ「じゃ、この紙を書いたのは……」

風間「おそらく……」

しんのすけ・風間「ボーちゃん!」

風間「……いや、まてよ」

しんのすけ「え?」

風間「ボーちゃんの字ってこんなだったっけ……」

しんのすけ「……どうだったっけ?オラよく覚えてないや」

風間「こんな丸い感じだったっけなァ……これじゃまるで女の子……」

風間「とにかく、ここに長居するのはまずい。一旦外へ出よう」

しんのすけ「うん」

春日部をぶらぶら歩く二人

しんのすけ「で、どうするの?」

風間「とりあえずボーちゃんを探すしか……」

「アン!アン!」

しんのすけ「あれ、この声は……」

シロ「アン!アン!アン!」

しんのすけ「おおお!やっぱりシロだゾ!」

風間「え!?ほ、ほんとだシロだ!」

しんのすけ「シロ~!!久しぶり!!オラずっと会いたかったんだゾ……!!」ギュッ

シロ「クウゥン!」

しんのすけ「シロ!わたあめ!」

シロ「アン!」クルッ

しんのすけ「ちんちんかいかい~」

シロ「アンア~ン!」カイカイ

しんのすけ「おお!さすがだシロ!全然鈍ってないな!」

風間「でもなんでシロはお前がしんのすけだって分かったんだ?」

しんのすけ「シロはオラのにおいを嗅ぎ分けてきたんだよ」

風間「そうか、しんのすけのにおいは昔と今でそう変わらないから……」

風間「まてよ……におい……?」

風間「そうだ!!!」

しんのすけ「お?」

風間「シロ!この紙のにおいを嗅いでみて!」

シロ「アン!」

しんのすけ「おお!それでこの紙を書いた人を捜すんだな!」

風間「そう!察しがいいなしんのすけ!」

シロ「アンアンアン!」

しんのすけ「お、こっちだって!」

風間「ついてってみよう!」

風間「はあ……はあ……」

シロ「アン!アン!」

しんのすけ「お、もしかしてあそこにいる人なのか?」

風間「ボーちゃん……じゃなさそうだね」

しんのすけ「声をかけてみる?」

風間「うん」

風間「あのー……」

バッ

風間「ちょ、なんだなんだ!?放してください!」

しんのすけ「サングラスの男……もしかして」

風間「あ……黒磯さん……?」

黒磯「!?……な、なぜ私の名を……」

あい「黒磯、この二人を放してさしあげなさい」

黒磯「しかし……」

あい「昨日おじいさまが大切にしていたティーセットがなくなっていましたわ。
監視カメラでティーセットが割れる瞬間を撮ってありますわ。
おや、ここに写っているのは……」

黒磯「は、はい今すぐ!」汗

風間「……じゃあ、君は……酢乙女あいちゃん?」

あい「なぜあいの名前を知っているのです?」

風間「そ、それは……」汗

しんのすけ「オラたち未来か……」

風間「わー!わー!」

しんのすけ「……」

風間「いやね、僕たち別に、怪しいもんではないんですよ」

しんのすけ「そうだそうだ!」

あい「オラ……?」

シロ「アン!アン!」

あい「この犬……しん様が飼ってる……」

あい「短髪の方」

しんのすけ「オラのこと?」

あい「はい。納豆はどうやって食べますの?」

しんのすけ「そりゃあもちろんネギを入れて。これが美味いんだなァ」

あい「嫌いな食べ物は?」

しんのすけ「ピーマン、たまねぎ、ニンジン」

あい「好きなテレビ番組」

しんのすけ「アクション仮面シリーズ、カンタムロボシリーズ」

しんのすけ「風間くんの好きな番組は?」

風間「もちろん魔法少女萌えP!!!」ニヤニヤ 

しんのすけ「少女向けアニメ好きな18歳の男性が6歳の女の子に声をかける……へっ」ニヤリ

風間「おい!!!誤解を招くような言い方はやめろよ!!!」泣

あい「……今のニヤリとした笑い方……!」

あい「やっぱり……野原しんのすけ……しん様ですわね!」

しんのすけ「ええ!?なんで分かったのー!?すごーい」

風間「ば、ばか」

しんのすけ「まあいいじゃない。どうせバラさないと『あれ』貰えないだろうし」

風間「ああ、まあ……そうか」

あい「わたくしには分かりますわ!そのキリッとした目、渋い声、愛らしい笑顔……間違いなくしん様ですわ!」

風間「そうかなァ……」

黒磯「お、驚きました……」

しんのすけ「あいちゃん」

あい「なんですの、しん様!」

しんのすけ「この紙、やっぱりあいちゃんが書いたの?」

『ほりだせなくなるまえに ほっておいた』

あい「そうですわ!これはまさしく、わたくしが書いたものです!」

風間「ボーちゃんじゃなかったのか……」

しんのすけ「一体なんで……」

あい「それは黒磯が説明してくれますわ」

黒磯「……」

シロ「アン!」

黒磯「え?あ、はい、説明します」汗

しんのすけ「完全に油断してたね今」

黒磯「実は、まだ公式には発表されていない情報を酢乙女家は入手したのです」

黒磯「それは、アクション幼稚園に新たな校舎を建てるというものでした」

黒磯「で、これは謝らないといけないかもしれませんが……」

黒磯「私はいつも草むらの中からあい様を見守っておりまして……偶然にもしんのすけさんたちがカプセルを埋めていたのを見てしまったのです」

しんのすけ「の、のぞきがシュミだったのかァ……」

黒磯「ち、違います!」汗

黒磯「それで、あい様がこう言ったんです」

黒磯「しん様がタイムカプセルを掘り出せなくなるのは可哀想だから、先に掘り出しておきなさい、と」

あい様「念のために、その紙も書いておいたんですわ」

風間「でもなんで、この紙には酢乙女あいの名を書かなかったんだ?」

あい「書く必要がないからですわ。そもそも、このような形でしん様にバレるのは本望ではないのです」

風間「ふうん……」

しんのすけ「で、肝心のタイムカプセルはどこにあるの?」

あい「ボーちゃんが預かっています。彼には、来たるべき時にそれをしん様たちに打ち明けて欲しいと言いました」

しんのすけ「ほうほう」

風間「やっぱりボーちゃんが」

しんのすけ「ボーちゃん捜しにいこう!」

風間「うん!あいちゃんありがとう!」

しんのすけ「ありがとうあいちゃん!」

シロ「アンアンアン!」

黒磯「二人とも行ってしまいましたね」

黒磯「しかし、本当になぜ、名前を書いておかなかったんです?」

あい「そもそも、わたくしが関与したことは、バレたくなかったのですわ」

あい「わたくしの筋書きでは、
大人になったしん様たちが同じく大人になったボーちゃんからタイムカプセルを受け取る。
ただそれだけなのですわ」

あい「カプセルのことは、あの5人だけの秘密であるべきだったのですわ」

黒磯「あい様、それでいいのですか?」

あい「しん様が幸せでいてくれるなら、あいはそれでいいのですわ!」

あい「それより、大人になったしん様があんなにかっこいいなんて……わたくし、ますます燃えてきましたわ!」

あい「しん様とは違う小学校になっちゃうけど……どこまでも追いかけていきますわ!いいわね、黒磯!」

黒磯「あ、はい!追いかけていきます!」

あい「それと、風間くんが萌えP好きだったなんて意外ですわ……これはネネちゃんに伝えなきゃですわ」

風間「あいちゃんのおかげでカプセル、助かったみたいだね」

しんのすけ「うん!未来に戻ったら、未来のあいちゃんにもお礼しにいこーっと!」

シロ「アン!」

1998年 3月 卒園の日 18時30分 野原家

みさえ「むさえ、泊まっていかないの?珍しいわね」

むさえ「うん帰る。しんのすけが卒園するってんで、美味いもん食べれるかな~って来ただけだし」

みさえ「あ、そ」

むさえ「じゃ、またいつか来るね」

みさえ「はいはい、じゃあね」

しんちゃん「むさえちゃん行ってきマス寿司」

みさえ「しんのすけ、さようならでしょ!」

むさえ「ははは、しんのすけ!さよう奈良の大仏!」

むさえ「はあ、家まで地味に距離あるから歩くの疲れるんだよなー」

むさえ「!!!」

むさえ「こ、この腹の痛みは……きた!」

むさえ「と、トイレどこだ!」

むさえ「あ、あそこの公園の公衆便所でいいか……!」

むさえ「急げ漏れる!」

ガチャ

むさえ「南無三!」

むさえ「うう……ううん……」

むさえ「…………ふう」

むさえ「ああ、生きててよかったァ!!!」

むさえ「公衆便所で『大』便したのいつぶりだったかなァ」ガチャ

ギュイイイィン

2009年 11月28日 19時

むさえ「あ!やっべ!ねーちゃん家に忘れ物しちゃった!」

むさえ「取りに帰らないと」

むさえ「……」

むさえ「春日部ってこんなだったっけ……?」

むさえ「ま、いいや」

野原家

「おーい!ごめん開けてェ!忘れ物しちゃってさ!」ドンドンドン

みさえ「びっくりしたもう誰よ急にドンドンドンドン!」

みさえ「ひまわり、出てくれる?今私手が放せないのよ、料理してて」

ひまわり「あたしも今手が放せないから無理」

みさえ「ええ?何やってるのよ」

ひまわり「玉木宏の写真集見てニヤニヤしてる」ニヤニヤ

げ ん
こ つ

みさえ「要するに暇なんだろーが!はよいけっちゅうねん!」

ひまわり「手放してるやん……」泣

ガチャ

ひまわり(……?この人どっかで見たことあるような……)

ひまわり「……えっと、どちら様ですか?」

むさえ「そ、それはこっちのセリフなんだけど……あんただれ?」

ひまわり「?……よく分からないけど、間違い訪問ですか?」

むさえ「違うよ!私むさえだよ!む、さ、え!」

ひまわり「むさえ……むさえ!!??」

ひまわり(それって、死んだはずのママの妹の名前じゃん!)

ひまわり(道理で既視感があるわけね……!)

ひまわり(ってんなバカな……)

むさえ「家に財布置いてきちゃってさ、取りに来たんだよ。入るね」

ひまわり「あ、ちょっと!」

みさえ「ちょっと何家の中にはい……」

むさえ「あれ?なんかねーちゃん急に老け込んでない?」

みさえ「…………!?」

むさえ「ど、どしたの?震えてるよ、包丁落としてるし……ていうかさっき夕食食べたばっかりじゃ……」

みさえ「うそ……」ブルブル

むさえ「え?それよりさっき財布を……」

みさえ「ゆ、ゆ、ゆ……」ガクガクブルブル

むさえ「ゆ?」

みさえ「幽霊が出たあああああああああああああああ!!!」

むさえ「え、うそ!?幽霊!?どこ!?」

ひまわり「マ、ママ!!とりあえず落ちついて!!」

居間

ひまわり「ママ……大丈夫だから……落ち着いて……深呼吸……」

みさえ「はあ……はあ……むさえ、あんた生きてたの?」

むさえ「うん、そりゃ生きてるよ。ねーちゃんなんかおかしいよ?」

みさえ「バカァ!!!」

みさえ「何年も行方不明になって、何今頃になってのこのこ帰って来てんのよ!」

ひまわり「……」

むさえ「え……?」

みさえ「私が今までどんっだけ心配したと思ってんの!!?」

むさえ「……ねえ、ねーちゃん、イマイチ話の筋が見えないんだけど……」

むさえ「私何年も行方不明になんかなってないよ」

みさえ「……ど、どういうことよ」

むさえ「だからさ、さっきまでしんのすけの卒園祝いパーティー的なもんやってたじゃん」

みさえ「……!」

むさえ「で、私が一旦帰ったんだけど、財布をこの家に忘れちゃって今戻ってきた」

むさえ「30分ぐらいしか空いてないよ、ねーちゃん」

ひまわり「……」

みさえ「そんな……むさえはあのパーティー以来、行方不明になったのよ!」

みさえ「 『ははは、しんのすけ!さよう奈良の大仏!』 」

みさえ「……これがむさえから聞いた最後の言葉だったはずよ……」

ひまわり(最後の言葉しょうもなっ)

みさえ「一体どういうことなの……?」

むさえ「ていうか、ずっと気になってたんだけど、その女の子だれ」

みさえ「ひまわりよ」

むさえ「ひまわり!?」

ひまわり「……こ、こんちは」

ひまわり(なんか空気が重い……お兄ちゃん、パパ、どっちでもいいから早く来て)

むさえ「ま、まてよ……急に老け込んだねーちゃん、急に日本語覚えたひまわり……」

「ただいまー!」

ひまわり(パパだ!救世主がきた!)

ひろし「今日もつかれ……」

ひろし「……え、君は……」

むさえ「や、やっぱり老け込んでる……!ま、まさか!」

むさえ「ねーちゃん!今の時間は!?」

みさえ「え……19時20分よ」

むさえ「何年の!!!」

みさえ「2009年にきまってるじゃない」

むさえ「……やっぱり」

むさえ「タイムスリップしちゃったんだ、私……」

みさえ・ひろし・ひまわり「なんだってー!?」

ひろし「ほほほ本物のむさえちゃんなのか!?」

ひまわり「らしいよ」

ひろし「こ、こいつは驚いたぜ……」

みさえ「タイムスリップ……きっとこれは」

みさえ・ひまわり「博士の仕業に違いない!!!」

むさえ「……しかし2009年の芸能界ってどうなってんだろ」

ひまわり「俳優の藤原啓治とアンジェラ小梅が昨年離婚したよ。不倫が原因だって」

むさえ「うっそマジ?あんなにラブラブだったのに。やっぱ男同士って満たされないのかな」

みさえ「んなこと言うとる場合か!!!博士のとこに行くわよ!!!」

北与野博士の研究所

マサオ「ネネ……さっきから何してんの?」

ネネ「絶妙なタイミングで名曲『ラブ・ストーリーは突然に』のイントロをかける練習よ!」

マサオ「……ネネって昔からそういうの好きだよね……」

博士「あー『不揃いの蛇苺たち』面白かった」

ピンポ-ン

博士「お、誰だろう」

「おい!早く開けろ!!」

博士「はいはい今すぐ開けますよ!おーこわ」

むさえ「あ、あの公衆便所がタイムマシンだったの!?」

ひろし「まじかよ……」

みさえ「幽霊じゃなかったのね、よかった……よかないけど」

博士「むさえさん、トイレに『使用中』の表示なかったの?鍵は?」

むさえ「鍵?いいえ」

ネネ・マサオ「!!」

博士「しんちゃん……あれほど言ったのに……」

ひまわり「ね、ねえねえちょっと!お兄ちゃんがなんか関係あるの!?」

博士「ああ、しんちゃんはタイムマシンを使って過去に行ったんだ」

ひろし「う、うそだろ!?」

みさえ「帰りが遅いと思ったら……過去に行っただなんて」

ひまわり「お兄ちゃんは……しんのすけは無事帰ってこれるんだよね!?」

博士「……」

みさえ「ちょ、ちょっと……」

ひろし「おい!うそだろ?なんとか言えよ!」

ネネ「そ、そんな、しんちゃんが……風間くんだって過去に……」

ひまわり「か、風間くんまで……!?」

むさえ(……なにこれ、もしかして、もしかしなくても、私のせい……だよね)汗

みさえ「博士……!」

博士「…………」汗

ひまわり「…………」

博士「…………」汗

ひまわり「……おいおいおいコラジジイ!!」

博士「ジ、ジジ」

ひまわり「いい加減にしろよ!黙ってちゃらちがあかねえだろーが!!
あ?
てめえが作ったタイムマシンだろ!
さっさと策を練るなり説明するなりしろやアホンダラっ!!
つーかてめえの薬のせいで死にかけたの今でも根に持ってるからなこんにゃろー!!!」

博士「……す、すまん」

ネネ「なかなかやるわね。ネネの弟子にしてやってもいいかも」

マサオ「ひまちゃんかっこいいなァ」

博士「分かった、説明する」

博士「あのタイムマシンには一往復分の燃料しか乗せていなかった……いや、そもそもそれしか燃料が用意できなかったんだ」

博士「そして、その一往復分の燃料は使い果たしてしまった……燃料がないとタイムマシンは動かない」

みさえ「じゃあ、タイムマシンでしんのすけたちを助けに行く方法はもうないの!?」

博士「いや、あるにはある」

ひろし「お、おい!どうすりゃいいんだよ!」

博士「記憶だよ」

ひろし「記憶だァ?」

博士「そう、記憶」

みさえ「なによそれ、どういうことなの?」

ひまわり「具体的に説明してよ」

博士「例えば、5年前のある日に行きたいとする。その場合、その『5年前のある日』の記憶が確固たるものとしてあるならば、過去に行ける」

みさえ「な、なによそれ」

ひろし「イマイチ基準がわかんねーよ!」

博士「私だって、この方法は成功したことないから基準は分からんのよ」

ひまわり「……よく分かんないけど、あたしが助けに行くことは無理そうだね」

ネネ「……あ」

マサオ「そっか……」

ひまわり「1歳の時の記憶なんかほとんどないしね……無念」

ひろし「とにかく、俺は行くぞ!しんのすけを助けに!」

みさえ「わ、私だって行くわ!」

ネネ「ネネが助けにいく!風間くんもしんちゃんも大事な友達なんだから!」

マサオ「じゃ、ぼ、僕だって行く!!」

むさえ「じゃ、私も助けにいく!私に責任あるし!」

博士「私は行かない!」

…………

ひろし「てめえ!」ボコスカ

みさえ「せっかくいいダチョウ倶楽部の流れだったのにィ!」ドガッバシッ

ネネ「そもそもあんたがタイムマシン作らなければこんなことには……!」ガンッゴンッ

マサオ「博士の分からずや!」ボコスカ

ひまわり「あの時の恨み!げんこつ!」カキンコキン

むさえ「…………」カシャ

ひろし・みさえ・ネネ・マサオ・ひまわり・博士「冷静に写真を撮るな!!!」

1998年 3月 卒園の日 ボーちゃん家

ピンポ-ン

ボー「ボー……誰ですか?」

風間「信じられないかもしれないけど、僕は未来から……2010年から来た18歳の風間トオルなんだ」

しんのすけ「オラはキアヌリーブスだゾ」

風間「違うだろっ!!」

ボー「しんちゃん……」

しんのすけ「おお!なんで皆オラのこと分かるのー?こんなにありふれた平凡な青年なのに」

風間「どこがだよ……」

風間「でも……ボーちゃん、僕たちのこと驚かないの?」

ボー「世の中 不思議 たくさんある」

風間「な、なるほど……」

ボー「これ、タイムカプセルの 箱」

風間「そうそう!これだよ!僕たちが埋めたのは!」

しんのすけ「そうだっけ」

風間「うん間違いない!裏に春日部防衛隊の皆の名前も書いてあるし!」

ボー「未来の 僕にも 渡してね」

風間「もちろん!任せといて!」

「おーい!ご飯できたわよー!」

ボー「ボー! 今 いく!」

ボー「もう 行かなきゃ」

風間「ああ、そうだね……」

ボー「大丈夫 すぐに会えるよ」

しんのすけ「うん すぐに会える!」

風間「そうだな、すぐに会える!いつか未来でまた!」

風間「タイムカプセルも無事取り戻したことだし、あとは未来に帰るだけだな」

しんのすけ「そういえば、この犬の飼い主はどうしてるんだろ」

風間「あいつのことだから、ホイホイと綺麗なお姉さんにでも付いて行ってるんじゃないのか?」

しんのすけ「なんてハレンチな奴なんだ!けしからん!」

風間「お前のことだよっ!!!」

シロ「アン!アンアン!アン!」

しんのすけ「あ、シロ!どこ行くんだ?」

風間「あ!あのイガグリ坊主は……!」

しんちゃん「おお!シロ!こんなところにいたのかァ!」

シロ「アン!アン!」

風間「ま、間違いない!過去のしんのすけだ」

しんのすけ「懐かしいですな」

しんちゃん「……」ジ--ッ

風間「……な、なんだよ坊主」

しんちゃん「未来の風間くんだ」

風間「なんで分かったんだよ!」

しんちゃん「前に一度家に来た。ターミネーチャン倒しに」

風間「タ、ターミネー……そんなの僕は知らないぞ!」

しんのすけ「ほんと?オラもちょっと覚えてるゾ」

風間「え、うそ」

しんちゃん「で、なんでシロがこの二人と……?」

風間「あ、それは……」

しんちゃん「分かった!未来の風間くんと未来のオラだァ!」

しんのすけ「正解!」

しんちゃん「わーい!当たった当たった 商品はなんだー!」

風間「なんで皆そんなすぐ分かるんだよ!」

しんのすけ「風間くんが特殊すぎるから」

風間「どう考えても特殊なのはお前だろ!」

しんのすけ「じゃあ、シロにエサちゃんとやるんだゾ」

しんちゃん「ほい」

しんのすけ「みさえにはエサやりすぎるなよ」

しんちゃん「むずかしい ちゅうもん」

しんのすけ「父ちゃんの足のにおいに気をつけろ」

しんちゃん「おえ」

しんのすけ「ひまわりがサンマを食べる時は、ホネをちゃんととっておいてあげるように」

しんちゃん「やれやれ 手間のかかる妹だ」

風間「なんなんだよこの会話……」

しんのすけ「風間くんには優しく耳をはむはむしてあげてね」

風間「やめろ!」

しんのすけ「シロ 行っちゃったね」

風間「元々お前が飼ってたんだから、当然だろ」

しんのすけ「まあね」

風間「さてと、やっと公園についた。これでタイムマシンに乗って帰れ……」

しんのすけ「風間くん、何固まってんの?」

風間「……ない」

しんのすけ「え?」

風間「タイムマシンがなあああああああああああああああああああああああああああいいいいいいいいぃぃ!!!!!」

しんのすけ「そんな大声出すほど嬉しいんだな、良かったよかった」

風間「よかねーよ!!!嬉しくねーよ!!!」泣

風間「ああ、もうダメだよ戻れないよアハハハ アハ アハハハハ!!」泣

しんのすけ「……やっぱりうれしそう」汗

風間「ていうか鍵がかかってたはずなのになんで……まさかしんのすけ!」

しんのすけ「あ」

風間「『あ』の一文字で済ませるなああああ!!!!!」泣

しんのすけ「うっかりどっかり鍵かけるの忘れてた」

風間「しっかりしてくれよしんのすけ……」泣

しんのすけ「ま、あんまりうようよするなよ」

風間「お前のせいだろーが!!!それに、うようよじゃなくてくよくよだし!!!」泣

しんのすけ「もう風間くん短期なんだから。こういう時こそデラックスデラックス」

風間「ああそうだよね、リラックスだよねアハハハハ!」泣

風間「もっとマジになれよしんのすけ!早くなんとかしないと一生未来に帰れなくなるんだぞ!」

しんのすけ「えええ!!?そんなのやだよオラ明日ななことランチの予定があるのに!」

風間「そうだろ!?ななこさんとデートしたいだろ!?」

しんのすけ「したい!」

風間「じゃあ何か策を考えなきゃ!」

しんのすけ「そうだ!この時代の博士に会いに行くってのは水曜どうでしょう」

風間「よし!とりあえずそれでいこう!……どこかの洋画で見たことあるような展開な気もするけど」

風間「かくかくしかじか……というわけなんです」

博士「なるほど……君たちは未来のしんちゃんと風間くん……」

風間「はい……」

博士「じゃあ、タイムマシンの研究は成功するってことか!バンザーイ!」

しんのすけ「バンザーイ!」

風間「なんでしんのすけまでバンザイするんだよ!」

しんのすけ「今の『バンザーイ』はウルフルズの『バンザーイ』だから」

風間「紛らわしいんだよ!」

博士「君、記憶がタイムマシンの動力源にもなり得るといったね」

風間「ええ」

博士「ならば、私たちが記憶に残るような事件を起こすってのはどうだ」

風間「ああ……」

しんのすけ「?」

風間「例えば、しんのすけの両親がこの時間に戻りたい場合、
二人はこの時間に関する鮮明な記憶がないと戻ることができない」

風間「だから、二人が鮮明な記憶を持たざるを得ないような……
悪く言えば、二人にとってトラウマになるような事件を起こす」

風間「そうすれば、二人はこの時間に戻ることができるようになるかもしれない」

博士「そういうことだ」

しんのすけ「なんかオラよくわかんないけど……、やらなきゃいけないことだけは分かった気がする」

風間「お前は野上良太郎かってーの」

しんのすけ「よく分かったね風間くん」

風間「僕のオタ知識なめるなよ」

博士「だが、リスクはある」

風間「そうですね……問題はそこです」

しんのすけ「リスクって?」

風間「それがトラウマになりすぎて、両親のその後にかなりの影響を及ぼす可能性もあるということ」

風間「さらに、両親に影響があった場合、しんのすけにも影響が出るってことだ。つまり、今のしんのすけではなくなるかもしれない」

博士「トラウマ故に、その記憶を封印されるかもしれないっていう可能性もある」

しんのすけ「なんだ、そんなの大丈夫!」

風間「しんのすけ……」

しんのすけ「オラの父ちゃんと母ちゃん、ずぶといから!」

風間「多分、お前にだけは言われたくないだろーよ……」

博士「うむ」

しんのすけ「とにかく!それしか方法がないなら、やるしかないよ!」

風間「ああ、そうだな!しんのすけの言うとおりだ!」

博士「じゃあ今から作戦を……」

2009年 11月28日 21時 公園

ひろし「俺とみさえの二人で行くことになったはいいものの……」

みさえ「どうすりゃ過去にもどれんのよ」

博士「とにかく、当時の記憶を鮮明に思い出すんだ!ある臨界点を越えれば自動的にその過去に飛ぶ!」

ひろし「わ、分かった!確か卒園式の日は……」

みさえ「式の後、家でしんのすけたちがパーティー開いてたはずよ!あなたも仕事休みだったから覚えてるでしょ?」

ひろし「そうだったっけ……?もう10年以上前のことだからあんまり覚えてねーよ……!」汗

みさえ「ちょっと何よそれ!卒園式の日だってのに!」

ひろし「んなこと言ったって、小学校や中学校の卒業式の方が印象に残ってるだろ!」

みさえ「あなた、子どもたちへの愛が足りてないんじゃないの!?」

ひろし「んだと?
じゃあ何か?
俺がしんのすけやひまわりのことを愛してないとでも言うのかよ!」

みさえ「だからそう言ってるでしょ!
大体あなたはいつもいつも……」

博士「ああ、二人ともこんな時に喧嘩は……」

北与野博士の研究所

マサオ「しんちゃん……風間くん……」

ネネ「二人とも、無事に帰ってこなかったら承知しないんだから!」

ひまわり「大丈夫だよ!あの二人のことだよ!きっと……きっとなんとかなるよ!」

むさえ「……今朝、横着せずにトイレ行っておくべきだったわ……」

マサオ・ネネ・ひまわり「……」汗

ネネ「ねえ、おばさん」

むさえ「おばさんはやめて!」

ネネ「あ、すいません。あの、むさえさんさっきまで過去にいたんですよね」

むさえ「まあ、そういうことになるわね」

ネネ「じゃあ、もしかしてむさえさんが一番記憶が鮮明なんじゃないですか?」

むさえ「それ博士に言ったんだけどさ、どうも記憶があるだけじゃダメみたい。
その時間に行きたいっていう熱意みたいなもんがないといけないんだってさ……」

ネネ「そんな……」

ひまわり「なによそれ、非科学的ね……」

むさえ「私だって熱意はあるつもりだけど、親が子を想う気持ちにはそりゃ勝てないよね」

マサオ「パーティーの映像もビデオカメラで撮っておけばよかったね……」

むさえ「カメラで撮っておけば……?」

むさえ「そ、そうだ!このカメラ!」バッ

むさえ「マサオくん!1000円貸して!はやく!」

マサオ「え、はい」

ひまわり「どうしたんですか!?急に立ち上がって!」

むさえ「ちょっと出かけてくるっ!」ガチャ

ジャカジャジャン♪(『ラブ・ストーリーは突然に』のイントロ)

ひまわり「行っちゃった……」

マサオ「……ネネ、まだタイミング狙ってたんだ」

ネネ「あはは、つい癖で……」

むさえ(私、カメラでパーティーの様子の写真撮ってたから、これを現像すれば……)

むさえ(少しでもねーちゃんたちの助けになるかも)

むさえ(カメラ屋に急がないと……)

むさえ「くっそお!走れ私!もっと速く走れむさえ!」

1998年 3月 卒園の日 20時 野原家

みさえ「あらやだ、むさえ財布忘れてってるわ」

ひろし「おい、それよりしんのすけはどこだ?」

みさえ「シロをどっかに置いてきちゃったからって、捜しに行ったのよ。でも、一人で行かせたのはまずかったかしら……」

ひろし「この時間に一人で行かせたのかよ。事故にでもあったらどうすんだ!」

みさえ「……私、心配になってきた」汗

ひろし「……あ、あいつのことだから、大丈夫だと思うけど……」

21時

ひろし「……おい、しんのすけまだ帰ってこないぞ!」

ひまわり「うえええええええん」泣

みさえ「……こうしちゃいられないわ!二人で捜しに行きましょう!」

ひろし「ああ、今俺もそう思っていたとこ……」

プルルルルルルル

みさえ・ひろし「!」ビクッ

プルルルルルルル

ひろし「…………みさえ、電話だぞ」

プルルルルルルル

みさえ「あ、あなたが出なさいよ」

ひろし「なんでだよ」

プルルルルルルル

みさえ「お願いあなた……」

プルルルルルルル

ひろし「わーったよ!俺が出るよ俺が!」

みさえ「スピーカーにしてね」

ひろし「わかってるよ」

ガチャ

ひろし「はい、野原です」

?「御宅のしんのすけ君を誘拐した」

みさえ「」

ひろし「な……」

?「返して欲しければ、アクション幼稚園まで歩いてくるんだ」

ひろし「おい!!しんのすけは……しんのすけは無事なのか!!おい!!」

?「ほほーい!オラピンピンしてるゾ!」

みさえ「しんちゃん!」

ひろし「しんのすけ!」

ひまわり「たいのたい!」

?「あ、父ちゃん!今夜放送のドラマ『不揃いの蛇苺たち』録画しといてね」

ひろし「……ああ」汗

みさえ「おバカ……」汗

?「そういうことだ。じゃあまた会おう」プチッ

ひろし「あ……切れちまった」

みさえ「アクション幼稚園に歩いて来いって言ってたわ……」

ひろし「ああ……金を持って来いとは言ってなかったが……一体何のために!」

みさえ「ま、まさか……!私の身体が目的……!?」

ひまわり「……け」

ひろし「ないない」

げ ん
こ つ

みさえ「さ、早く幼稚園に行くわよ」

ひろし「はい」

ひまわり「たい」

アクション幼稚園

ひろし「みさえ、周りに気をつけるんだ」

みさえ「うん」

「おーい!父ちゃん母ちゃーん!」

みさえ「こ、この声は!」

ひろし「しんのすけ……しんのすけがいるぞ!」

しんちゃん「父ちゃん母ちゃん!」

シロ「アン!アン!」

みさえ「しんちゃん!それにシロも……無事でよかった!」ギュッ

ひろし「ああ……!」

みさえ「ま、待ってでも、誘拐犯は一体どこに?」

ひろし「そ、そうだった!誘拐犯!一発ぶん殴ってやらないと気が治まらないぜ!」

しんちゃん「あの人たち、結構いい人だったよ」

みさえ「しんちゃん……意外と心優しいのね」泣

しんちゃん「雛形あきこの写真集見せてくれたからいい人!」

みさえ「少しでも感動しかけた私が馬鹿だった」

ひろし「しんのすけお前って奴は……めちゃめちゃイケてるぜ……」泣

ひまわり「け!」

しんちゃん「あの人たちなら、あっちの方へ行ったよ」

ひろし「あっちか!よし!」

みさえ「追いかけるの!?」

ひろし「ったりめーだろ!ひっ捕まえて、警察に突き出してやる!」

22時 公園

風間「これでしんちゃんの両親の記憶がより鮮明になってくれればいいが」

しんのすけ「風間くん、オラたち犯罪者だね」

風間「や、やめろー!……お金取らなかったから、大丈夫だろきっと……」

しんのすけ「ねえねえ、もし誰も未来から助けに来なかったら、二人でたくましく生きていこうね」

風間「……そうなったらな」

しんのすけ「ラブラブカップルだと思われちゃうかもね」テレテレ

風間「思われねえよっ!!」

2009年 11月28日 22時 公園

ひろし「そうだ……思い出した……あの日、しんのすけは誘拐されたんだ!」

みさえ「そうよ!確かに、そうだったわ!」

ひろし「くそっ!こんな大変なこと、なんで今まで思い出せなかったんだ!」

みさえ「なんか急に頭の中に入ってきた気もするけど……」.

ひろし「覚えてる……!あの日は覚えてるぞ!忘れられるわけねーよ!」

みさえ「ええ!」

むさえ「ねーちゃん!」

みさえ「む、むさえ!?どうしたの全速力で!」

むさえ「パーティーの写真、現像してきたんだよ!ほらこれ!」

みさえ「!」

ひろし「むさえちゃん!俺にも見せてくれ!」

むさえ「うん!」

ひろし「はは、しんのすけ、あそこにぞうさんの絵描いてやがる」

みさえ「昔はいつも描いてたわよね」

ひろし「この写真なんか、しんのすけの声が聴こえてきそうだぜ。
『見てみて~、女のおまた』ってな」

みさえ「やだ、ほんとお下品ね」

ひろし「この後、しんのすけが『シロを置いてきちゃったから』ってシロを捜しに行って……」

みさえ「なかなか戻らなくて心配してたら……」

ひろし「電話がかかってきて……」

みさえ「幼稚園で無事会えた時は思わずホッとしたわ」

ひろし「そのあと、誘拐犯を捜して……捜して……」

みさえ「確か……公園で見つけて……」

ギュイイィィン

1998年 3月 卒園の日 公園

風間「まだか……頼む、タイムマシン現れてくれ!」

しんのすけ「お、なんか何人かが走ってこっち来るゾ」

風間「……って、あれこの時代の野原一家じゃないか!」

ギュイイィィン

風間「!!!」

しんのすけ「タイムマシンが現れた!」



しんちゃん「あそこの公園にいる2人がそうだよ!」

ひろし(35)「あいつらが誘拐犯か!おい!待ててめーら!」

ひろし「な、なんだ!?」

みさえ「私たち、過去に飛べたのよ!」

ガチャ

ひろし「しんのすけ!風間くん!」

風間「僕たち追われてるんです!中に入らせてください!」

みさえ「うん。さ、早く!」

しんのすけ「おじゃましまうま~」

風間「しんのすけ!鍵!」

しんのすけ「ほほーい!」




ひろし(35)「おい!出てこい!……くそっ、鍵かけやがった!」

タイムマシン(トイレ型)内

しんのすけ「さすがに四人入ると狭くて苦しいね」

ひろし「みさえ!だからこういう時に備えてダイエットしておけとあれほど……」

みさえ「あ?」

ひろし「いやなんでもないです、はい」

風間「あん……おいしんのすけ!どこ触ってんだよ!」

しんのすけ「あらトオルちゃんどうしたの?顔が赤いわよ」

風間「お前のせいだろっ!!」泣

ピ-ポ-ピ-ポ-

ひろし「お、おい……これ」

みさえ「パトカーよ、警察が来たのよ!」

「おとなしくドアを開けて出て来なさい!」

風間「まずいぞ!今外に出たら確実に警察に捕まる……!」

しんのすけ「じゃ、未来に帰るしかないね」

風間「おじさん、おばさん!どうやって未来に帰るんですか!?」

ひろし「え?」

みさえ「風間くん、博士に教えてもらってないの?」

風間「え」

ひろし「」

みさえ「」

風間「」

しんのすけ「ほうほう。ゲームオーバーってやつですな」

「おとなしく出てこないなら、こちらから強引にドアをこじ開けるぞ!」

風間「ま、まずいぞ……」

風間「一体どうやったら未来に帰れるんだ……」

しんのすけ「きっと父ちゃんと母ちゃんが過去に来れたのと同じ原理だよ」

風間「……というと」

みさえ「記憶と……」

ひろし「未来に帰りたいという熱意……」

しんのすけ「そうともゆう」

風間「そうとしか言わないだろ」

ひろし「記憶ならさっきまで未来にいたんだから、十分鮮明だ!」

みさえ「じゃ、問題は熱意だ」

しんのすけ「未来に帰りたいって強く思うんだゾ!」

風間「よ、よし!」

風間「『魔法少女萌えPスイート』の最新話が早く観たい!!!」キリッ

ひろし「よし、お、俺も」

ひろし「会社に行かないと怒られちまう!!!だから戻りたい!!!」キリッ

しんのすけ「切実ですな」

みさえ「私だって!」

みさえ「ひまわりを一人にはさせられない!!!」キリッ

しんのすけ「オラは」

しんのすけ「ななことおデートしたいから!!!」

四人「BACK TO THE FUTURE!」

ギュイイィィン

2009年 11月28日 22時30分 公園

風間「……今の感覚は」

みさえ「警察の声、聞こえなくなったわ」

ひろし「戻ったんだ……俺たち、帰れたんだよ!」

しんのすけ「わーはっはっはっはっ!正義は勝つ!」

風間「正義……なのかな」

ガチャ

むさえ「ねーちゃん!それにみんなも!」

みさえ「むさえ!……あれ、博士は?」

むさえ「なんか発明品が急に産まれそうになったからって研究所に戻ってる」

ひろし「なんだそれ、妊婦かよ」

風間「……お、おい……しんのすけ……!」

しんのすけ「お?どうしたの風間くん」

むさえ「しんのすけもよく戻ってこれ……」

むさえ「……」

しんのすけ「むさえちゃんもどうしたの?女の子の日?」

みさえ「こらしんのすけ、そんなこと軽々しく言うもんじゃ……しんのすけ!?」

ひろし「お、おいお前、身体……」

しんのすけ「え?オラの身体がナイスバディ?」

風間「そんなこと言ってない!」

ひろし「身体が……透けてるぞ……」

しんのすけ「え?」

しんのすけ「おお!ホントだァ!」

みさえ「い、いや!消えないでしんのすけ!」

しんのすけ「オラ透明人間になれたら女湯に入ろっとパイロット」

ひろし「お、いいねぇ」ニタァ

みさえ「……コホン!」

ひろし「ば、ばか!そんなこと言ってる場合か!」

風間「研究所に急ぎましょう!博士なら原因を突き止められるかも!」

北与野博士の研究所

むさえ「発明品は産まれたんですか?」

博士「ああ!無事産まれたよ!予定より一ヶ月早かったけどね」

ひろし「だから妊婦かってーの!」

風間「博士!それよりしんのすけが大変なんです!」

ネネ「し、しんちゃん!?身体が……」

マサオ「透けてる……!」

ひまわり「まるでママのおパンツみたい……!!!」

ドガッ バキッ ゴンッ

みさえ「ママとのお約束第43条『みさえのパンツがスケスケであることを、よその人に言ってはいけない。』!!!」

ひまわり「自分も大声で言ってもうてるやん……」汗

しんのすけ「博士、どんな発明品が産まれたの?」

博士「ああ、成長型サイボーグだよ。今はまだ赤ん坊だが、短期間で成人女性の身体に成長するんだよ」

しんのすけ「……ま、まさかその成長した身体を……」ゴクリ

博士「ちちちがうぞ!この身体を使ってエロいことをしてやろうもか全く思ってないからね!」

博士「そもそもこれは人間のボディーガード用のサイボーグなんだ。ちなみに、この絵が完全体になった時のものだよ」

しんのすけ「おお!綺麗なおねいさん!でもオラこれ見たことあるよ!」

博士「な、なに!?」

しんのすけ「ねえ父ちゃん母ちゃん!これ見たことあるよね?」

ひろし「……確か、昔しんのすけの命を狙いに来た……」

みさえ「あったあった!ターミネーチャンとか言ったわよね。写真も数枚残ってるわ」

風間「ターミネーチャン……さっきも誰かそんなようなこと言ってたな」

『未来の風間くんだ』

『前に一度家に来た。ターミネーチャン倒しに』

風間「……」

みさえ「そういえば確かこのとき……」

風間「僕が未来からきたんですか?」

みさえ「そう!そうよ!部屋散々散らかしてたからよく覚えてるわ!」

風間「……」泣

ひろし「あのとき、風間くん19歳って言ってたよな……2010年から来たって言ってた気がするぞ」

しんのすけ「ちょうど来年だね」

みさえ「大学生って言ってたわ!確か大学は……」

風間「……東大?」

みさえ「そう!ドヤ顔で言ってたから印象に残ってるわ!」

風間「……ドヤ顔」泣

ひろし「東大にたまたまコンピューターに対抗する組織があったんだよな」

みさえ「そうそう、それでジャンケンに負けて過去のしんのすけを助けにきたって」

しんのすけ「でも風間くんは東大には入らないんだゾ」

ひろし・みさえ「ええ!?」

風間「はい。入らないつもりなんです」

ひろし「ちょっと待て、それじゃあ風間くんはもちろんその組織に入らないから……」

みさえ「風間くんはしんのすけを助けにいかないことになる」

しんのすけ「そしてオラはターミネーチャンに殺される」

みさえ・ひろし「うわあああああああああ!!!」

風間「ちょっと待ってくださいよ!僕が行かなくても他の誰かが助けにいくんじゃないですか!?」

しんのすけ「風間くんじゃないときっとダメなんだゾ!」

風間「しんのすけ……」

みさえ「そうよ風間くんお願い!東大に入って!!」泣

ひろし「そうだ!しんのすけの命がかかってるんだァ!」泣

風間「……しかし」

博士「その必要はない」

風間「博士……!?」

博士「このボディーガード用のサイボーグがそんなことに使われるとはな……思いもしなかったよ」

博士「今のうちにこのサイボーグは破壊する!」

グサッ バキッ ガンッゴンッグシャッ

博士「ふう、ストレス解消になったわい」

風間「……」汗

みさえ「あなた!しんのすけが!」

ひろし「あ!透けてたのがみるみる治っていく!」

風間「博士がターミネーチャンを破壊したのが功を奏したんだ!」

しんのすけ「博士ありがとう!」

博士「いやいや、しんちゃんが無事でよかったよ」

ひろし「……あ、そうだ。しんのすけ、ちょっとこっちに来い!風間くんも!」

風間「え、僕もですか?」

しんのすけ「なに?父ちゃん」

ゴツン ゴツン

ひろし「しんのすけを誘拐した罰だぞ」

風間「すいませんでした……」

しんのすけ「オラ、誘拐された側でもあるのに……」汗

ひろし「誘拐犯をいつかぶん殴ってやると誓ってから12年も経っちゃったぜ……」

ネネ「風間くん!しんちゃん!とにかく、無事でほんと良かったよね」

しんのすけ「いや~いろいろへんたいだったよ」

マサオ「ターミネーチャンってやつも破壊したし、もうこれで大丈夫だよね」

風間「タイムカプセルも無事、取ってきたよ」

マサオ「ほんとだ!ありがとう!」

ネネ「ありがとう!」

しんのすけ「あいちゃんのおかげだよね」

風間「うん。今度お礼言わなきゃな」

マサオ「さっそく、開けてみる?」

風間「でもボーちゃんが……」

ピンポ-ン

ネネ・マサオ・風間・しんのすけ「ボーちゃん!!!」

ボー「みんな ひさしぶり……!」

マサオ「……あれ?ボーちゃん、アメリカにいるって……」

ボー「日本時間で昨日 飛行機に乗って日本まで来た」

『ボー。じゃ そろそろ時間だから……』

マサオ「なるほど、時間って飛行機に搭乗する時間のことだったんだ」

ボー「そうゆうこと」

ボー「預かってたもの 渡すつもりだったけど すでに渡してたみたい」

マサオ「?」

ボー「……風間くん、しんちゃん」

ボー「すぐに 会えたね」

風間・しんのすけ「……うん!」

しんのすけ「さあ!タイムカプセルを開けるゾ!」

パカッ

しんのすけ「みんな、自分の小箱をとってね」

風間「あああ……!僕の愛しの萌えP激レア金ピカフィギュア!!!!!会いたかったよ萌えP~!!!!!」泣

ネネ「あたしはうさぎのぬいぐるみ!また可愛がってあげるね!」ギュッ

マサオ「幼稚園の時描いた漫画『いがぐりマサちゃん』!まだ下手っぴだけど懐かしいなァ」

ボー「完璧な球体の 石……!!!」

しんのすけ「オラのは、アクション仮面ゴールドカード!!!!!」

風間「お、おい!これ世界で数十枚しかないっていう……!」

ひまわり「あたしも知ってる!今じゃ激レアすぎてマニアは喉から手が出るほど欲しがってるやつだ……!まさかお兄ちゃんが持ってたとは……!」

ネネ「すごーい!しんちゃんそんなすごいの埋めてたんだァ」

風間「これを急いで取り出したかったのか……でもなんで?」

しんのすけ「いや、現場の人たちに見せて自慢しようと思って~」

風間「現場の人たち……?」

しんのすけ「うん。新番組『アクション仮面W(ダブル)』の撮影現場の人たち」

風間「え?」

マサオ「てことは、しんちゃん……」

ネネ「アクション仮面シリーズに出るの!?」

しんのすけ「えっへん!しかも主人公だゾ!」

ひまわり「お兄ちゃん、いつも部屋で演技の練習してたもんねー」

しんのすけ「そりゃ、主人公ですから」

『この頃のオラはカメラの前だと固まっちゃってたなァ。
今はそんなことないけども』

風間「あれはそういう意味で言ってたのか……ていうか、だから大学行かないんだな……」

風間「でも隠し事はダメよって言ってたのに、隠してたのか?しんのすけ」

しんのすけ「オラ別に隠してないよ」

風間「じゃ、なんで教えてくれなかったんだ」

しんのすけ「聞かれなかったから」

風間「あ そ……お前らしいや」汗

マサオ「どうしてアクション仮面シリーズに出ることになったの!?」

しんのすけ「えっとね、原宿にこの前行った時に、事務所にスカウトされたの」

ひまわり「あれはびっくりしたね」

しんのすけ「そんでその事務所が、アクション仮面のオーディション受けてみないかって」

しんのすけ「で、喜んで受けたら、受かったんだ」

ネネ「すごいすごい!しんちゃん芸能人なんだ!」

しんのすけ「いや~それほどでも~」

風間「褒めてるよ……」

ボー「また みんなで 集まろうね」

マサオ「うん!」

ネネ「ネネたちはいつまでも繋がってるのよ!」

風間「じゃ、最後に、未来に向かって」

しんのすけ「いきますか!」

しんのすけ「春日部防衛隊!ファイヤー!」

5人「ファイヤァァァァァ!!!!!」

みさえ「むさえ、あんた一体どうするの?過去に戻るの?」

むさえ「……いや、あたし戻んなくていいや」

みさえ「ええ!?」

ひろし「いいのかよそれで!」

むさえ「うん。幸いカメラは持ってきてるし、ねーちゃんよりひと回り以上若いってのは優越感あるしね」

みさえ「なによそれ……ったく、それでもいいけど、おふくろのとこに顔出しなさいよ」

むさえ「わかってる。でも相当怒られるだろうなァ……」

みさえ「当たり前よ。10年以上行方不明で、マジで死んだと思ってたんだから」

むさえ「はは、違いない。それで、住まいのことなんだけど……」

みさえ「ま、まさか!」

むさえ「居候ということで、お世話になります!」

みさえ「ったくほんとこいつは~!」

2009年 11月29日(土) 朝 野原家

みさえ「あなた!今日は休日出勤なんでしょ!早く起きないと遅刻するわよ!」

ひろし「だーーーーっ!そうだった!みさえ、メシ!」

みさえ「はいはい。しんのすけも今日はななこちゃんとデートで……ってもう支度できてる!」

しんのすけ「当然だゾ。この日をどれだけ待ちわびていたか!」

みさえ「全くななこちゃんのこととなると、いつもこうなんだから」

みさえ「ひまわりも土曜だからってダラダラしない!早く起きなさい!」

ひまわり「んー……玉木宏ィ……チュチュチュゥ……」

みさえ「……ろくな大人にならねーなこいつ……」汗

朝食をとる野原家

しんのすけ「うんうん!やっぱり納得にはネギですな」

むさえ「食パンに納豆挟むのも美味いぞ~!しんのすけもどう?」

しんのすけ「遠慮しときます」

ひまわり「いや~やっぱりサンマとご飯が最高に合うね!」

しんのすけ「あれ?ひまわりいつの間にサンマ食べられるようになったんだ?」

ひまわり「……?何言ってんのお兄ちゃん。あたしは昔っからサンマ大好きじゃん」

しんのすけ「……ほうほう」

ひろし「ごちそうさま!行ってきます!」

ひまわり「あ、パパ……!」

ひろし「え、ひまわり……なんだ?」

ひまわり「……行ってらっしゃい。仕事、頑張ってね!」

ひろし「……ああ!ひまわりのためにも頑張るぜ!」

みさえ「あなた、ネクタイが曲がってる」

ひろし「あ、ああ、わりぃ」

みさえ「昨日はいろいろ大変だったけど、なんか昔の自分たちを思い出したわよね」

ひろし「ああ……しんのすけが小さい頃……あの時は俺も若かったな」

みさえ「あら、私今だってまだまだ」

ひろし「みさえ……」

みさえ「あなた……」

しんのすけ「ひまわり、オラが二階で数学を教えてあげる。メネラウスの定理という裏技をさずけよう」

ひまわり「わーいわーい。二階で教えてもらおう。二人ともあたしたちのことは気にしなくていいからね」

みさえ・ひろし「こらこらこら!余計な気を使わんでいい!!!」

ひろし「ああやべ、時間が。じゃ、ホントに行ってくる!」

みさえ「気をつけてね」

むさえ「ねーちゃん!あたしの財布の中身に万札入ってなかった!?」

みさえ「あ、ごめん。それかなり前に使っちゃった」

むさえ「ちょっと!いくら実の姉妹でもやっていいことと悪いことがあるよ!」

みさえ「だって、とっくに死んだと思ってたんだからしょうがないでしょ!」

むさえ「勝手に妹を殺すな!」

しんのすけ「やれやれ……」

ひまわり「むさえちゃんって面白い人なんだなァ」

しんのすけ「お、もうそろそろだ」

しんのすけ「行ってきますだおかだなんだかんだおもろい」

ひまわり「わかる」

みさえ「行ってらっしゃインパルスもなかなか」

ひまわり「それもわかる」


みさえ「まったく、あの子ったらあんなに張り切っちゃって……この先もし失恋したら3日ぐらい寝込んじゃいそうね」

ひまわり「いや、一週間は寝込むと思う」

みさえ「あはは、言えてる」

ひまわり「……なんか、お兄ちゃんって、昔から変わんないよね」

みさえ「そうね、確かにあんまり変わんないかも」

みさえ「でも、それがあの子の良さでもあるのよ。誰にも流されない、芯がしっかりしてる」

ひまわり「うん」

みさえ「私の自慢のかっこいい息子だわ」

ひまわり「あたしの自慢のかっこいいお兄ちゃんでもあるよ」

みさえ「しんのすけ、頑張れよ、これからも……」

END

このSSまとめへのコメント

1 :  SS好きの774さん   2016年12月29日 (木) 20:45:06   ID: uzr1TdtJ

面白かった
またやってほしい

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