月「計画通りだ」 L「はぁ?」 (74)

デスノLNWのネタバレしかないので注意。


トリ違うけど前作
月「デスノ2016に向けてそろそろスタンバっとくか」 L「え?」
月「デスノ2016に向けてそろそろスタンバっとくか」 L「え?」 - SSまとめ速報
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月「デスノLNW、思ったより面白かったな」

L「おや、意外ですね」

L「てっきり『ミサミサはそんなこと言わない!』とか『ハッピーバースディ、デスノート!』とか言うかと思ったんですが」

月「お前は僕を何だと思ってるんだ」

月「だがまあ、あくまで“思ったよりは”酷くなかったって話だよ」

月「つっこみ所をあげ始めるとキリがないが……」

月「少なくとも、実写デビルマン程の史上最悪の殺人映画ではない」

月「せいぜい『L change the WorLd』レベルじゃないかな……ははっ」

L(こいつ……)

月「まあ、それはともかく」

月「確かに皆が期待してたであろう頭脳戦はほとんどないに等しかったが……」

月「ラストのどんでん返しはちょっと面白かったかな」

月「後、原作ではなかったけど、あってもおかしくない展開の補完という意味でもなかなか興味深かった」

月「そういう意味では、一応“デスノートを題材にした映画”にはなってたんじゃないかな」

月「どこぞのスピンオフとは違ってね」

L「ああ、『DEATH NOTE 完全収録版』に初収録されたニアが主役の特別編の事ですね」

L「主役は不人気キャラ、ノートの所有者は馬鹿と、おざなりな内容でしたね」

L「さて、話を戻しましょうか」

月「そ、そうだな……」

L「で、どの辺りが興味深かったと?」

月「そうだな。例えば、竜崎と死神アーマの関係」

L「私ですか?」

月「お前じゃない」

月「お前が行きずりの女に孕ませた、あの究極!!ひょっとこ仮面の方だ」

L「究極かどうかは知りませんが、私はやりまくりの月君とは違うとあれほど……」

月「あっ…(察し)」

L「違います」

月「だから何も言ってないじゃないか」

月「結局竜崎のクローンなんだったか? だから薬を飲まないと体が持たない……だっけ?」

月「でもその設定、映画で説明されてなかった気がするんだが」

L「……どうでしたかね。ノベライズ版でははっきり言及されてるのですが」

L「何にせよ、いい迷惑ですよ」

月「安心しろよ、竜崎。竜崎がそんな奴じゃないって、僕は分かってるよ」

L「月君……」

月「ははっ、童貞乙」

L「月君は必ず死刑台に送ります」

L「だいたい月君は人の事を言えないと思いますが」

月「ああ、息子の事? あれには僕も驚いたけどね」

L「やる事やってたのは月君の方でしたね」

月「…………」

月「ああ、やったよ」

L「!?」

月「海砂ともやったし、高田ともやった」

月「ユリともシホともエミともマユともやったな」

L「」

月「こう見えても僕はけっこうモテるんだよ、竜崎」

L「……もういいです。話を戻しましょう」

L「竜崎とアーマの関係でしたか」

L「確かに二人の間には、恋とは違うのでしょうが、確かな絆があったように見えましたね」

月「原作でも人間に好意を持ったが故に死んだ死神はいたが、その感情は全て一方的なものだったからね」

月「それにしても、僕のノートに憑いていたのがリュークじゃなくアーマだったらどれだけ楽だったか……」

L「腹黒い月君はそもそもアーマに好かれないでしょう」

月「仮に好かれなくてもだ、四六時中付き纏われるなら中村獅童より沢城みゆきの方がいいだろ?」

L「ちょっと月君が何言ってるのか分かりません」

月「他にも、ラストで呉越同舟的にではあるが、キラとしての記憶を持つ三島と竜崎が協力してただろ」

月「あれは結構多くのファンが原作でも見たかった展開じゃないのかな」

L「そうですね。私が共闘したのはあくまで記憶をなくした正義の月君でしたし」

月「ははっ、それじゃまるで今の僕が極悪人みたいじゃないか」

L「え?」

月「え?」

L「ま、まあ……記憶を失っている間の経験や思考が、所有権を取り戻した後の三島さんの行動にも影響を与えたのは興味深いですね」

L「というより、それに関してはむしろ月君のケースの方が特殊なのでしょうが」

月「デスノートの目新しい使い方としては、竜崎が死神の目を警戒して家を出る度に所有権を放棄してたのは面白かったかな」

月「もっとも、その設定がまったく活かされてない脚本はどうかと思うが」

月「それどころか竜崎も新生キラに結局自分から所有者だとばらしてるし」

月「だいたい別に自分のノート持ち出さなくても、警察の持つノートだけで取引出来ただろ」

月「むしろ二代目Lの僕から言わせてもらえば、それをやってのけてこそのLの後継者じゃないのか?」

L「とりあえず月君を二代目と認めた覚えはありません」

月「そもそも、厳密に言えばあの手って使えないんだよな」

月「原作では触れられてないけど、“所有権を得ることでデスノートの記憶を取り戻せるのは最大6回まで”というルールがあるからね」

L「流石デスノートオタクですね」

月「オタクじゃない」

月「仮にオタクだとしても、オタクという名の神だ」

L「アイドルグループのライブでペンライト振ってそうな神ですね」

L「竜崎は記憶を失っている時に捜査してるわけですから、捜査に必要な記憶は消えません。支障はないはずです」

月「そうか? まあ、捜査には支障はないかもしれないが……」

月「数日ごとに死神に驚いたり、記憶を失う前の自分がキラかどうか疑心暗鬼にならないといけないわけだろ?」

月「それを考えると、決していい策とも言えないなと思ってね」

月「竜崎、お前の後継者選び、失敗だったんじゃないか?」

月「いや、映画の方の竜崎……ややこしいな。ともかくあいつがお前のクローンだとすれば、竜崎自身も失敗って事かな」

L「…………」

L「それを言うならば、あなたの後継者も十分無能ではありませんか? 夜神ペンライト君」

月「!?」

月「ふざけるな、竜崎。三島は最終的に映画の方の竜崎に勝利してるじゃないか」

月「後、僕はイチゴBERRYのファンじゃない」

L「その竜崎に庇ってもらっておいてよく言いますね」

L「そもそも三島さん自身は実際は何もしていない」

L「国家と交渉したのも、途中から実際に裁きを行っていたのも紫苑さんです」

L「三島さんは戦争を止めるなんて大層な事を言ってましたが、偶然優秀なサイバーテロリストがいなければどうなっていたやら」

L「おっと、それは魅上と海砂さんなしでは何も出来なかったペンライト君も同じでしたか」

月「くっ……」

月「い、いいや! その理屈はおかしい!」

月「そんな事を言い出せば、過去も今回も、竜崎だって一人で捜査をしてきたわけじゃない!」

月「むしろ、行動を制限された状況でいかに手駒を利用するか……」

月「僕達の戦いにはそういう要素も含まれていたはずだ!」

月「後、僕はイチゴBERRYのファンじゃない!!」

L「まあ、前者は否定しませんが……」

月「後者も否定しろ!!」

L「ただ、ペンライト君と三島さんでは置かれた状況が違いすぎる」

月(こいつ……!)

L「そもそもペンライト君が周りに頼らざるを得なかった原因は何か」

L「それはペンライト君に目の取引をしないという信念と、行動を見張られ自由に動けないという状況があったから」

月「お前、いい加減月君に戻せ! 文字数がもったいないだろ!!」

L「そこにいくと、三島さんはそれまで疑われていたわけでもなければ、行動も特に制限されていない」

L「しかも、竜崎が捜査本部に加わると知るや否や、即目の取引をした」

L「そこはせめて、紫苑さんを利用して竜崎の本名を知る策を考えるべきでは?」

L「自分の力で何かを成す意思がないばかりか、すぐ思考を放棄し楽な方へと逃げたがる……」

L「そんな丸出だめ夫が月君の後継者ですか。へえ、そうですか」

月(こいつ、また懐かしいものを……!)

L「そもそも勝敗で言えば、あれはむしろ竜崎の勝利でしょう」

月(ま……まさか……何を言ってるんだ、こいつ!?)

月(どう考えても竜崎が三島に勝っているはずがない……」

月「変な奴だとは思っていたが、マジでおかしいのか!?」

L「口悪いですね」

L「竜崎は新生キラが三島さんだと特定したうえで、三島さんを捕まえている」

L「これを勝利と言わず、何と言うのです」

月「ふざけるな。そんなのただの偶然じゃないか」

月「紫苑が黒幕じゃないと知ったのも偶然リュークが口を滑らせたから」

月「さらに言えば、黒幕の三島があの場にいたのも偶然だ」

月「あの場に三島がいなければ、竜崎は本当に三島がキラだと確信を持てていたか?」

月「それどころか、特殊部隊に蜂の巣にされて終わりだったんじゃないのか?」

L「いいえ」

L「流石に竜崎も既に自身の名が書かれているとは思ってはいなかったでしょう」

L「確信を得たのはリュークの一言が原因かもしれません」

L「しかし、竜崎は三島さんを少なくとも新生キラの容疑者の一人としては見ていました」

月「馬鹿な!!」

L「考えてもみてください」

L「例えば、あのキラウィルス……あの映像を見ただけでも、新生キラの容疑者はかなり絞り込める」

L「新生キラは夜神月=キラだと知っている人物という事は明白です」

L「月君がキラだという事を警察内でどれだけの人間が知っているかは分かりませんが……」

L「何にせよ、新生キラは警察関係者、或いは夜神月の協力者」

L「もしくは、そのいずれかと新生キラは接触している」

L「さらに、新生キラから警察に送られたメッセージ」

L「そこに映っている月君の映像……あれは新生キラが月君の写真等を加工して新たに作った物でしょうか?」

月「……その可能性は低い」

月「松田さんにだけは、映像の中にリュークの姿が見えていた」

月「新規に映像を作成したならば、わざわざそこにリュークを映り込ませる意味がない」

L「そうですね。となると、あの映像は月君がまだ生きている間に残した物」

L「内容自体は加工されている可能性もあるので、そこから何かを推測する事は不可能ですが……」

L「少なくとも新生キラは月君の残した映像を入手する事が可能な者という事です」

L「10年前の事件の際、日本警察がそんな映像を回収していたとすれば、いくら何でもデスノート対策本部には伝わっている」

L「ならば、新生キラは月君から映像を送られた当人か、その映像を譲渡された、もしくは奪った者……」

L「その二点から考えた時、真っ先に捜査線上に浮かぶ人物は誰でしょう?」

月「……魅上」

L「そう。魅上は生前の月君に接近するなどの怪しい動きを見せていたと記憶を失った三島さんが言っています」

L「これはつまり、捜査本部も知っている情報。当然竜崎にも伝わっている」

L「ならば一年前の失踪はキラとして動き易いように姿を消したか……」

L「魅上から映像を奪った者……すなわち新生キラに消されたか」

L「そう考えれば、魅上の捜査をしていた三島さんも当然容疑者の一人として浮上します」

月「……そう思わせる為に、新生キラが映像にあえてリュークを映り込ませた可能性は?」

L「ゼロではないでしょうが……それならそれで、新生キラは捜査本部内部の状況を知っている者に絞られる」

L「対策本部に10年前にノートに触れた者がいなければ、その仕掛けは意味をなしませんから」

L「その場合も、やはりノートの力をよく知り、捜査本部の中心でもある三島さんは最重要容疑者の一人です」

月「くっ……」

L「そう、竜崎は三島さんを事件の黒幕として疑っていた」

L「しかし、証拠がない」

L「だからこそ、あえて三島さんを逮捕した後に解放し、警察にすら見張られず自由に動けるようにしたんです」

L「そうすれば、三島さんが新生キラなら何らかの行動を起こすでしょうから」

月「ま、待て! その解放だ!! それがおかしいじゃないか!!」

月「僕ならば三島が逮捕された時点で数日間は解放しない」

月「三島が動けない事で裁きが止まるかどうか……確認くらいするのが普通じゃないのか!?」

L「それも一つの手ではありますが……その時点で取引の日は既に決まっている」

L「こちらから新生キラにコンタクトを取れない以上、当日まで新生キラが三島さんかどうか確認する術はない」

L「取引自体は行う前提で動かざるを得ないんです」

月「別に三島を拘束したままで取引を進める事だって出来たはずだ!」

L「そうもいかないんですよ」

L「今活動しているキラが三島さん本人ではなく三島さんの駒だった場合……」

L「その状況で駒のみを捕まえると、三島さんの罪を証明する事が出来なくなる」

L「だからこそ、竜崎は三島さんを解放した。どういった状況にも対応出来るように」

L「他のデスノート対策本部のメンバーにも声を掛けたのは、三島さんの監視も兼ねて」

L「ついでに言えば、先程月君の言っていた、竜崎の持つ最後のデスノート」

L「あの存在をオープンにしたのも、三島さんを疑っていたからですよ」

L「三島さんがキラならば、警察が保管するノートはいつでも奪える」

L「そのノートでは取引が成立しないんです」

月「……は……」

月「はははっ!! たいした想像だな!」

月「竜崎、お前探偵より小説家にでもなったほうがいいんじゃないか!?」

L「月君、それ負けフラグです」

月「ふ、ふん……仮にお前の言う通りだったとしても、どうしても納得出来ない事がある」

L「何でしょう?」

月「紫苑が竜崎のテレビ出演を促したメッセージへの返答だ」

L「ああ、確かにあの映像の出来は許せませんね」

L「月君の映像に比べて出来が悪すぎる。先代へのリスペクトが感じられません」

L「あの糞CGだけで出演:松山ケンイチはもはや詐欺ですよ」

L「そもそも新生キラが私の顔を知ってるとも限らないじゃないですか」

月「そこに関しては向こうにリュークがいるから分かるだろうという考えなのかもしれないが……」

月「違う、そこじゃない」

L「では何だと言うんですか」

月「全国に流れる映像で僕の名前出しちゃ駄目だろ!!」

L「……ああ」

月「『月君、お久し振りです』じゃないんだよ!!」

月「キラウィルスの映像と合わせたら完全に個人特定されるじゃないか!」

月「お前の後継者にはモラルとかないのか!?」

L「まあ、それは確かに……ご愁傷さまと言いますか」

月「これで僕の家族が『犯罪者の親』や『キラの妹』呼ばわりされたらどうするんだ!?」

L「それは月君のせいです」

月「まあ、それはともかく……」

月「結果的には竜崎は死に、三島は生きている。これは紛れもない事実」

月「例え竜崎が三島を疑っていようと、これは僕の勝ちという事だろう!?」

L「どうでしょう。勝利条件が曖昧なので何とも言えませんが」

L「しかし、少なくとも月君の後継者が優秀と言えない事に変わりはないかと」

L「というか、月君の後継者は有能無能以前の問題です」

月「……どういう事だ?」

L「三島さんは偶然ノートを手に入れ、短絡的にキラの猿真似を始めた」

L「そして竜崎が捜査本部に加わると知ると、これまた短絡的に目の取引をした」

L「これは先程も話しましたが……」

L「その後、疑われないようノートの所有権を紫苑さんに渡しましたよね?」

L「何の策もなしに」

月「…………」

L「月君の場合はあえてノートを『自分の欲望の為に使いそうな者』に渡すようレムに指示してましたが」

L「今回の場合、相手は世界的に有名なサイバーテロリスト」

L「既に各国からマークされているであろうにも関わらず捕まっていない程の者です」

L「一刑事の三島さんがどうこう出来る相手じゃありません」

L「だからこそ、約束の場所に紫苑さんが向かうよう伝えていたのかもしれませんが……」

L「紫苑さんが約束の場所に向かうタイミングで、記憶を失った三島さんがその場にいる保証なんてありませんよね?」

L「今回は偶然が重なって辿り着けましたが」

L「そもそも竜崎がノートを持っていなければ? 青井さくらのノートも先に紫苑さんが奪っていれば?」

L「三島さんが捜査本部でぼんやりしているうちに、紫苑さんは一人約束の場所へ」

L「誰も現れずおしまい、です」

L「ここまでくると、もはや有能無能の問題ではない」

L「何も考えず、ただ状況に流されるだけの木偶……」

L「仮に私の推測通りでなかったとしても、多少は策を練ってるだけ竜崎の方がマシでしょう」

月「フッ……」

L「……? 何がおかしいんです、月君」

月「いや、世界一の探偵も随分とヌルくなったなものだと思ってね」

月「いいか? そもそも約束の場所を知っているのは、正しくは紫苑ではなく海砂だ」

月「だからこそ、紫苑は海砂に接触したわけだが……」

月「不思議に思わなかったか?」

月「何故三島は紫苑に“海砂が約束の場所を知っている”という情報だけを与えたのか」

月「何故直接約束の場所が何処かを教えなかったのか……」

L「…………」

月「答えは簡単。全ては三島の計画だったからだ」

月「まず三島は紫苑に自分がノートの切れ端を所持しており、指示に従わなければ殺すと伝えていた」

月「実際は三島は切れ端を持たず、所有権と共に記憶を失うわけだが、紫苑にはそれを知る術はない」

月「これは紫苑のキラに脅されていたとの発言からも推測できる」

月「そのうえで、6冊のノートを集め、海砂の知る約束の場所へ“海砂と一緒に”向かうよう指示をする」

月「竜崎、お前の言った通り、確かに紫苑を探すのは難しいだろう」

月「しかし、今も女優として活動する海砂の行動を監視する事はそう難しい事ではない」

月「三島が自ら動かずとも、キラ事件が再開されれば警察は必ず第二のキラであった海砂を監視する」

月「後は、三島は捜査本部の一員として海砂を監視すればいいだけ」

月「そうすれば、自然と約束の場所に辿り着く事が出来る」

月「分かったか、竜崎?」

月「三島が約束の場所へと辿り着いたのは、お前の言う偶然などではない」

月「もはや必然――――」

L「…………」

月「その後は約束の場所で二人を拘束、ヨツバ編の僕のようにノートに触れ記憶を取り戻す」

月「流石にその場で名前は書き込めないだろうから、何とか切れ端を入手……」

月「いや、どの道誰かが所有権を持つ必要があるんだ。交渉次第では合意の上で所有権を得られる」

月「三島はあの時点での対策本部のリーダー。そう難しい事ではない」

月「後は既に名を書いた竜崎が死ぬのを待ち、キラとしての活動を再開すればいい」

月「各国との交渉役は別の者を探してもいいし、ノートを使えば紫苑を解放する事も不可能じゃない」

月「フッ、悪くない計画だよ」

月「どうだ竜崎。これでもまだ三島が木偶だとでも?」

L「……確かに……思ったより三島さんは頭が回るのかもしれません」

L「ですが、実際は何一つ計画通りにはいっていませんよね?」

月「!?」

L「海砂さんの監視も中途半端。紫苑さんの妨害もあり肝心な事は分からずじまい」

L「結局約束の場所に向かったのも紫苑さん一人ですし」

L「自分の駒だと思っていた紫苑さんも、目の契約をして新生キラを殺そうと考える始末」

L「そもそもあの混乱した状況で、竜崎につけたマイクから約束の場所の情報が都合よく拾えるものですかね?」

月「……何が言いたい?」

L「それも全て竜崎が仕組んだ事だったんじゃないですか?」

月「か、仮にそうだとしても、竜崎が確信を得たのはリュークが口を滑らせたせいだ!」

月「三島の落ち度じゃない!!」

L「そうですか?」

L「怪しまれたのは三島さんが月君の息子についてのファイルを完全に削除してなかったせいでもあると思いますが」

L「そもそも、三島さんにリュークを非難する資格はないでしょう」

L「リュークは月君のケースからは考えられないほど三島さんに協力しています」

月「うっ……」

L「月君もそう思いませんか?」

L「サイバーテロリストを交渉役にしようと考えたのはいいとして」

L「それをリュークに探させるのは、どうなんでしょう?」

L「死神が全面的に所有者に協力し始めたら、デスノートというお話は成り立たない」

L「我々追う側に勝ち目がなくなりますから」

L「それなのに、今作のリュークは協力的すぎる……」

L「まあ、最後のメット外しはまだいいでしょう」

L「あの時点で紫苑さんの命が長くない事は死神の目を使わずとも明らか」

L「どうせ結末が変わらないのであれば……」

月「確かに、リュークの性格を考えると、暇潰しの『遊び』としてあのくらいやってもおかしくはない……」

L「しかし『探して欲しいサイバーテロリストがいる』は違うでしょう」

L「それを相手に悟られずどう探すかがデスノートという作品の醍醐味ではないのですか?」

L「それなら『殺して欲しいLの後継者がいる』でおしまいです」

月「い、いや、待て……それはリュークの性格からありえない」

月「きっとリュークはサイバーテロリストを探した方が自分も楽しめると思ったから探したわけで……」

L「まあ、そんな所でしょうね」

月「?」

改めて原作は神作品だったと再認識できる映画だったよな
支援

L「つまり、その時点でリュークは後の混乱をある程度予測していた事になります」

L「世界的なサイバーテロリストがキラに脅迫されたらどうなるか」

L「その能力を利用し、逆にキラを探そうとする……」

L「リュークはそう考えたのかもしれませんね」

L「そして、形は違えど最終的に紫苑さんは三島さんに牙を剥いた」

L「つまり三島さんの計画は、破綻する事がかなり早い段階から死神にさえ分かっている程度の計画という事です」

月「うぐぅぅぅ……」

月「……罠だ」

L「は?」

月「これは罠だ!! Lが僕を陥れる為に仕組んだ罠だ!」

L「はぁ?」

月「よくよく考えてみれば、生前の僕は三島なんて奴は知らない!」

月「それが僕の後継者だというのはおかしいじゃないか! それが罠だという証拠!!」

月「そうだ……僕の後継者は別にいる……」

L「ああ、トチ狂ったうえに魅上にあっさり殺された息子ですか?」

月「」

L「そもそも月君の息子のくだり……あれ必要でしたか?」

月「なっ、僕の息子がいらないだと……!?」

L「だって原作第二部の月君ならともかく、実写映画の月君ってただの大学生ですよ?」

L「それが捜査機関に絶対見つからない方法で後継者を育てたなんて、設定に無理があるでしょう」

L「そして、無理を通して出した割にはあの扱い」

月「くっ……」

月「く……ふふ……ふふふ……」

月「ふはははははははははははっ!!」

L「!?」

月「違うよ、竜崎……正しくは、僕に後継者など存在しない」

月「そうだ……僕がキラだ」

L(またおかしな事言い出したな)

月「竜崎、お前はラストの僕の台詞を覚えているか?」

L「ええと……」

L「スペースランドに行ったのは二人だけの秘密……何故なら君の思い出も心の中も僕だけの物にしておきたいから……」

L「ですか?」

月「違う! それは原作での僕の名台詞だ!!」

月「お前まさかエンドロール途中で帰ったんじゃないだろうな!?」

L「冗談ですよ。『計画通り』でしょう?」

L「あのファンサービスの為に無理矢理付けたようなラストが何か?」

月「やれやれ……竜崎、お前ちゃんと映画見てたのか?」

L「はあ。私が竜崎に飴をあげる名シーンは見てましたが」

L「竜崎の『デスノートは犯罪の道具だから使わない』という素晴らしい信念も私の教育の賜物です」

月「その割には普通に特殊部隊に発砲してたけどな」

L「」

月「その辺も犯罪者を裁くのは悪だと言いながら、死刑囚は平気で実験台にするお前そっくりだが……」

月「まあそれはどうでもいい。映画のラストシーンを思い出してみろ」

月「三島はキラであった時の記憶を持ちながら、更にLとして動ける立場になった」

月「原作での僕のようにね」

月「これらは全て三島の……いや、僕の計画通り……」

月「竜崎や三島の行動……そして、キラの復活……そんなものは全て読んでいた」

月「どちらの後継者が、などという問題ではない。全てを読んでいたこの僕こそが勝者!!」

月「L! 僕の!! 勝ちだっ!!!」

L「いいえ」

月「!?」

L「確かに、月君は頭脳明晰。死神すら操り、私に勝利した……それは認めます」

L「しかし10年前に三島が新生キラになる事を予測していたなど、いくらなんでも通りません」

L「そんな事が出来るのは、もはや神しかいない」

月「そう、神……僕が神なんだよ、竜崎」

月「いいか? 三島は父さんの……夜神総一郎の部下だった」

月「父さんのパソコンをハッキングしていた僕には分かっていたんだ」

月「三島創という男が、僕に近い考えを持っている事にね」

L「……いや、ついさっき『生前の僕は三島なんて奴は知らない』って……」

月「言ってない」

L「ここまでくるといっそ清々しいですね」

L「確かに、三島さんがキラに興味を持っている事を、月君が知る事は可能かもしれません」

L「しかし、その三島さんが魅上と月君の息子に出会ったのはまったくの偶然」

L「それとも、三島が魅上の捜査を命じられるよう月君が操作したとでも?」

月「まさか。操作なんてしてないさ。そんな事はこの僕でも流石に不可能だ」

月「しかし、予測は出来る」

月「キラに惹かれている三島が、海砂の担当検事であり、生前の僕と接触を持つ魅上の事件を担当したがる事くらいはね」

L「……!」

月「だいたい、おかしいと思わなかったか?」

月「僕と魅上の接触を、無能な日本警察が知っていた事を」

L「わざと知られるように行動していたとでも……?」

月「ああ、そうだ。そして、それを知られる事は僕にとって一つもマイナスではなかった」

月「魅上には僕がキラだと伝えはしたが、生前の僕のキラとしての裁きに魅上は関わっていない」

月「10年前の段階では、魅上を洗っても何も出てこない」

月「現に10年前の実写映画に魅上なんて影も形もないだろ?」

L(馬鹿な……ただの後付けじゃなかったのか……!?)

月「魅上……そして僕の息子は、三島とデスノートを結ぶ為の触媒にすぎない」

月「もちろん、直接三島にノートを渡すという選択肢もあったが……」

月「三島がキラに本格的にのめり込むのは事件後。父から事件の顛末を聞いた後、そしてノートの存在を知った後だ」

月「その頃を見計らって三島にノートを渡せなんて面倒な事、リュークがしてくれるとも思えない」

月「しかし、僕の息子にノートを渡せという頼みなら?」

月「あいつなら面白がってやってくれるだろう」

月「そして、僕の息子が狂うのも予想通り」

月「たかだか9歳の子供があれだけの力を上手く使えるはずがない」

月「まあ魅上が僕の息子を殺した瞬間に三島が出くわしたのは出来過ぎだが……」

月「魅上なら僕の息子を殺した後は自分がキラの意思を継ごうと考える」

月「どちらにせよ、三島は魅上に辿り着く……」

L「……そんなもの、何の証拠もない、それこそ月君の妄想にすぎません」

L「生前の月君は自分の子供が立派にキラを継いでいると思い『計画通り』の言葉を残した」

L「しかし実際は子供はあっさり死亡、その後を継いだ三島もノートを失ったばかりか竜崎に感化されてさえいる」

L「つまり、月君は自分を神などと勘違いしているただの糞間抜け野郎」

L「ただそれだけの何者でもありません」

月(こいつ……思ったより読んでいる……!)

月「ま、まあ僕の息子や魅上が立派にキラを継ぐなら、それはそれで問題はない」

L「いや、だから継いでないんですってば」

月「だから続編で三島がノートを再び手に入れてキラが復活するんだよ!」

月「その証拠として、最後三島が出所するシーンで不敵な笑みを浮かべてただろう!?」

L「逆光で表情はよく分かりませんでしたが」

月「いいや、死神の目で視力3.6の僕には確かに見えた!」

L「月君目の契約してませんし、そもそも視力関係ありませんし」

月「だが、負け惜しみでも何でもなく、世界にはキラが必要なんだ!」

月「いいか? 竜崎達は6冊のノートを人間界に封印すれば全てが終わると言うが、それは違う」

月「人間界にデスノートを譲渡している死神は、所有者を殺す事が認められているからだ」

月「死神大王がキラの復活を望んでいる以上、ノートの封印なんて不可能」

月「ノートが封印されれば死神の手で所有者は殺され、ノートは死神に回収される」

月「何処にノートを隠そうと、壁をすり抜けられる死神には関係無い」

月「そしてまたノートは人間界にばら撒かれ、再び混乱が起きる」

月「分かったか、竜崎?」

月「死神大王が関与した時点で、混乱を収める方法はただ一つ」

月「死神大王の望む、真にキラの意思を継ぐ者が6冊のノートを所有する事」

月「それしかない」

月「僕は生前、キラこそがこの世界に必要な存在だという事を示した」

月「その対象は人間だけでない。死神さえも含まれていたんだ!」

月「お前達がそこに気付けなかった時点で、既に勝敗は決していたんだよ!!」

月「まさに――――」





月「 計  画  通  り !! 」

L「いいえ……まだ手はあります」

L「デスノートの効力を無効化するルールは決して少なくはない」

L「例えば124歳以上、生後780日未満の者はデスノートでは殺せない」

L「また、4度名前を書き間違えられた人間はデスノートは効かなくなる」

月「だが……そのルールは故意に名前を間違えた場合には適用されない」

月「それどころか、わざと間違えて名を書いた人間の方が死亡するはずだ」

L「ですが、やり方次第では不可能ではない」

L「それこそ、信念を曲げる事にはなりますが、ノートによる行動操作を使えば……」

L「それに、私も使った、事前に先の日付で名を書いておく方法」

月「フン、23日ごとに所有者を殺していくつもりか」

月「それこそ人類が滅びるぞ」

L「そうです。その状況は死神大王も望んでいないはず」

L「人間がいなくなれば、人の寿命を奪い生きている死神も共倒れになる」

L「つまり、条件次第では死神大王と交渉も可能なはず」

月(こいつ……本気か……!?)

L「また、23日ごとに所有者が死ぬとも限りません」

L「死因を病死とし、病名は書き時間を指定しない場合、その病気で死ぬのに24日以上かかる時は23日の制限はない」

L「あくまで実現可能な病名でなければ実現不可で心臓麻痺となるのでしょうが……」

L「もしくは、所有者を殺す事が誰かの寿命を延ばす結果に繋がる状況を作る事が出来れば」

L「自分の命を懸けてまで大王に尽くす死神がいるとは思えません」

L「いずれにせよ、まだ完全に希望が潰えたわけではない」

月「…………」

月「フ……フフ……」

月「面白い……流石は竜崎。キラが認めた世界一の探偵だ」

月「久し振りにゾクゾクしてきたよ」

L「私もですよ、月君」

L「我々は既に舞台から退場した身」

L「しかし、その決着は未だついていない」

月「そうだ、後継者だ何だと言っても、つまる所これはキラとLとの戦い」

L「我々のどちらの考えが真の正義なのか……」

月「勝負は次回作に持ち越し……だな」

L「ええ……そこで全てに終止符を打ちましょう」

月「L……」

L「キラ……」

月「僕が」

L「私が」






月L「  正  義  だ  !!  」




月「というわけで、次回作『デスノート 復活のキラ』もよろしく!」

L「これまでの作品を再構成した全三章の総集編も公開予定です」

リューク「いや、それ違うやつだし」

おしまい。
読んでくれた人ありがとう。

いろいろ書いたけど、三島と竜崎の関係は嫌いじゃなかったぜ。


見てないけどこれ読んだら興味沸いたから見てくるわ


やっぱこいつらが戦わないとダメだな



>>71
これ読んで興味持ったら多分がっかりするぞ

nainai

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