女「2次元の世界から出てきて!」 男「・・・」(101)

男「こんちゃ~」

男「だれもいないの~?」

ピコーン

男(ん?)

女さんからフレンド申請が来ています

男(・・・)

フレンド申請を承認しました

男(・・・またか)

ピコーン

チャットに誘われました。入室しますか?

男(・・・)→はい

女「こんにちわ~」

男「こんにちわー」

女「私こういうの始めたばかりで、強そうな方にいろいろ教えていただきたくて声かけちゃいました」

男(・・・)

女「ご迷惑でしたか?^^;」

男「いえいえ、大丈夫ですよ~。それでどこからはじめますかー?」

女「そうですね、まずは毎日どのくらいINしたらそのくらい強そうになれるのか教えていただきたいですね!」

男(・・・・・・・・・・・)

ガラガラガラ

男「おいくそ女!出てこい!下手な三文芝居してんじゃねー!教えていただきたいですね!じゃねーよ!」

ガラガラガラ

女「な、なによ!アンタがずっと引きこもってるからでしょう!?」

男「うるせぇ!ネトゲの世界に来てまで現実に引き戻そうとすんな!」

女「アンタの今の姿はあるべき高校生の姿じゃないわ!そんなのは60超えてからの老人の姿よ!」

男「ジジイババアがネトゲなんかするか!」

女「そういうことを言いたいんじゃないの!いい加減学校に来てまともな生活を送れって言ってんのよ!」

男「んなことしたらイベントに参加できねぇだろ!」

女「現実のイベントに参加しなさいっていってんのよ!」

男「もう何でもいいじゃねえか。ほっといてくれよ」

女「そういうわけにもいかないわ。だって私生徒会長だもの」

男「だからって人の家まで来るか普通?」

女「不良生徒を更生させるのが生徒会長の責務よ」

男「悪かったなダメ生徒で。さ、帰った帰った」

女「ちょっと!話を聞きなさいよ」

男「うるせぇ。俺はネトゲで忙しいんだ」

ガラガラ ピシャッ!


男「……ったく。しつこいよな、アイツも」

男「いくら生徒会長だからってここまでするかよ普通」

男「くそ……今日は徹夜でネトゲしてやる」

・・・・・・

翌朝


???「おーい、男。起きなさい。朝よ」

男「あん……?何だよこんな時間に……」

???「ほら、何寝ぼけてるのよ。早く起きないと遅刻するわよ」バッ

男「寒っ!! おい誰だ!何布団を……って」

女「目が覚めたみたいね」

男「お、女……!?てめぇなんでここにいるんだ!」

女「なんでって……アンタがちゃんと起きれてるかどうか見に来たのよ」

男「はぁ!?なんだよそれ!お前には関係ないだろ」

女「私は生徒会長よ?私の前で遅刻は許さないわよ」

男「お前が勝手に上がり込んできたんだろうが……」

女「つべこべうるさい奴ね……。そんなんじゃ女の子に嫌われるわよ」

男「別に嫌われてもいい」

女「ほら、寝言言ってないでさっさと着替えて学校行く支度する!」

男「うるせぇなぁ。俺は遅刻していくからいいよ。お前ひとりで先に行け」

女「いやよ」

男「なんでだよ!?」

女「私がみすみす遅刻を許すと思う?」

男「いいだろ別に俺が遅刻するくらい。お前の内申に響くわけでもないし」

女「バカ。そういう風に遅刻常習犯を放置しみなさい。徐々にクラスの遅刻者が増えて行くに決まってるわ」

女「そういう事態を防ぐためにも、絶対遅刻は許さないわよ」

男「じゃあ俺は二度寝するわ。おやすみ」

女「ってアンタ喧嘩売ってんの!?」


女「ほら、起きなさいって」グイグイ

男「まだ眠いんだよ」

女「昨日何時に寝たのよ」

男「徹夜でネトゲしてたから朝の5時くらいだ」

女「アンタねぇ……。高校生なんだから自分の睡眠時間くらいきちんと管理しなさいよ」

男「だから遅刻してから行こうって言ってるじゃねぇか」

女「それとこれとは話が別よ」

男「とにかく。俺は寝る。テコでも動かねぇからな」


女「ほんとしょうがないわね……。わかったわよ」

男「やっと分かってくれたか。じゃあ早速学校に行って来い」

女「何言ってんの?アンタも一緒に来るのよ」

男「は?」

女「あたしのバイクの後ろに乗せたげるって言ってるの。アンタは寝てていいからさ」

男「お前バイクなんて持ってるのか」

女「うん。こんなこともあろうかと今日はバイクで来て正解だったわ。さ、着替えだけはしてね」

男「どうしても連れてくつもりかよ……。くそ、わかったよ。ちょっと着替えてくる」

女「その間朝ご飯並べとくね」

男「あ?」

女「何ボサっとした顔してるの?朝ご飯よ」

男「なんだこれ……?お前が作ったのか?」

女「当たり前じゃない」

男「お前いつからこの部屋にいたんだ」

女「うーんと……1時間前くらい?」

男「さて、住居侵入で警察に通報するか」

女「そんなこと言ってると朝ご飯食べさせてあげないわよ」

男「ぐ……(食欲には勝てん……)」


男「……着替えてきます」

女「よろしい」

・・・・・・

男「……うめぇ」

女「でしょ?料理には結構自信あるのよ」

男「久々にまともな朝飯を食べた気がする」

女「アンタいつも何食べてるの?」

男「うーん……大体菓子パンとかかな。あとは冷蔵庫に入ってるものから適当に」

女「ちょっと!そんなんじゃダメじゃない!栄養が偏っちゃうわよ!」

男「いいだろ別に。食えりゃなんでも」

女「ダメよ。そんなんじゃ生活習慣病になるわよ」

男「大丈夫だよ。まだ若いし」

女「その油断がダメなのよ。いい?ちゃんと食事はバランスよくとるのよ?」

男「オバさんくさいこといってるんじゃねえよ」

女「誰がオバさんよ!」

女「……さて、そろそろ行くわよ」

男「もうか?バイク乗っけてくれるんだろ?ならもうちょい遅くてもいいだろ」

女「……ゴメン、それ嘘」

男「は?」

女「生徒会長がバイク乗って登校したら問題になっちゃうじゃない」

男「お前……だましたな」

女「つべこべ言わない!さ、行くわよ!」グイッ

男「っておい!分かったから引っ張るなよ!?」

・・・・・・

教室

男(はぁ……朝からひどい目に遭った)

友「お、男!お前、朝からいるなんて珍しいな」

男「ああ。今日は無理やり起こされたんだよ」

友「起こされた?お前、寮部屋だろ?誰に」

男「まあ、破天荒な目覚まし時計みたいなもんだ」

友「なんだよそれ」

男「世の中知らない方がいいこともある」

友「中途半端に隠すなよ。気になるじゃねぇか」

男「ほんとにたいしたことじゃないから」

友「ふうん?ま、そういうことにしといてやるよ」

男「代わりに絶対遅刻する方法教えてやるな」

友「知っても嬉しくないよそんな情報!?」

・・・・・・

お昼休み


友「男ー!昼飯食おうぜー!」

男「ああ」

友「学食でいいか?それとも購買のパンにする?」

男「なんだ、おごってくれるのか」

友「いや、一言もそんなこといってないんすけど」

男「なんだよ。俺今月ピンチだから助かったと思ったのに」

友「残念ながら俺もピンチなんだ」

男「……購買の安いあんぱんでしのぐか」

友「そうだね……」


女「……話は聞かせてもらったわ」

男「げ、女!?てめぇなんでまたここにいんだよ!?」

女「アンタ……。朝あれだけ食事はバランスよくっていったのにちゃんと話聞いてたの?」

男「金がないんだから仕方ないだろ」

女「……ほら」

男「なんだよ?」

女「お弁当。さ、一緒に食べましょ?」

友「あの……突然の展開で話が見えてこないんだけど……」

女「ああ。私のことは気にしないで食べてて」


友「てか生徒会長さん、だよね?」

女「そうよ」

友「おい男!!!」

男「なんだよ急に。うるせぇな」

友「生徒会長さんがお前に弁当ってどういうことだよ!?」

男「俺だって知らねぇよ」

女「私が勝手に作ってきただけだから。気にしないで」

友「いや、めちゃくちゃ気になるし……ってか普通作ってこないよね!?」

女「こいつ、かなり偏った食生活してるからね。その是正のためよ。あくまで生徒会長の責務」

友「普通そんなことまでする必要あるのかなぁ……」

女「そこまでしないとダメなのよ。コイツは。ね?」

男「ねっ、て言われても反応に困るんだが」

女「さ、いつまでも話してると昼休み終わっちゃうわよ。さっさと食べなさいって」

男「あ、ああ……」

友「会長さん、ちなみに俺の分は?」

女「あるわけないじゃない」

友「……あんぱん買ってきます」



男「……弁当もうめぇ」

友「え?弁当『も』?」

男「いや、なんでもねぇよ」

女「よかった。朝あんまり時間なかったからちゃんとできてたか不安だったのよねー」

友「なあなあ。俺にも一口くれよ」

男「お前はあんぱんがあるだろ」

友「あんぱんなんかより会長さんの弁当の方が美味いだろ。なあ、いいだろ?」

男「だって。どうする?」

女「仕方ないわねぇ……。明日、アンタの分も作ってきてあげるわ」

友「えっ!?マジで!? ラッキー!」

男「よかったな。多分お前の人生で 最初で最後の手作り弁当だから、明日は味わって食べろよ」

友「勝手に俺の人生を寂しいものにしないでくれませんかね!?」

・・・・・・・

男の家


男「くそ……なんか今日はアイツに振り回されっぱなしだったな」

男(この分だと明日の朝もまた勝手に来そうだな……。そうだ!)

男「どれ、模様替えだ」ズルズル


男「……よし!これで玄関も簡単には開くまい」

男(見てろよ……。明日は午後まで寝てから堂々と遅刻してやる)

男「さて、ネトゲネトゲ、っと……」

翌朝


???「こらー。朝よー。起きなさーい」ボカッ

男「いたっ!?こんな時間に誰だよ……って」

女「やっと起きたわね。おはよ」

男「やっぱりてめぇか」


男「くそ……。昨日は徹夜でバリゲード作ったのに。どこから入ったんだ」

女「窓が開いてたからね。そこから」

男「しまった、閉め忘れてたか……。しかしお前すげえ執念な」

女「私は生徒会長だから。不良生徒を見逃すわけにはいかないわ」

男「ちなみにどうやったら見逃してくれるんだ?」

女「決まってるじゃない。アンタが更生すればよ。それまでつきまとうわよ」

男「ストーカーみたいだな」

女「あら、よかったわね。こんな美人のストーカーにつきまとわれて」

男「こっちはいい迷惑だ」

女「なら早く更生することね」

男「くそ……面倒なことになったな」


・・・・・・

通学路


女「てわけでね。私、アンタの更生プロジェクト考えてきたのよ」

男「更生プロジェクト?」

女「うん。名付けて小テストで満点取っちゃおう大作戦」

男「すげえそのまんまなプロジェクト名だな」

女「分かりやすくていいじゃない。ほら、アンタって勉強に自信なくしてるとこあるでしょ」

男「まあな。ネトゲばっかりやってるしな」

女「でしょ?だから来週の小テストで満点を取って、自信を取り戻してもらう作戦よ」

男「言っとくが俺には無理だと思うぞ。そもそも勉強なんてやる気ねぇし」

女「そこは私がサポートするから大丈夫よ」

男「何か嫌な予感しかしないんだが」

女「変なことはしないから大丈夫よ。さ、今日も頑張りましょ?」

男「俺は寝るのを頑張るな」

女「授業はちゃんと受けた方がいいわよ」

男「今日もお前に無理やり起こされたからな。睡眠時間が足りないんだ」

女「また夜更かししてたのね……。昨日あれだけ言ったのに」

男「ネトゲしてるとつい、な」

女「まったく……。明日からちゃんと早寝早起きするのよ」

男「へいへい」

女「アンタのへいへいは信用できないわ」

男「ひいひい」

女「何……?疲れてるの?」

男「誰かさんのせいでな」

女「このくらいで疲れないの。ほかのみんなは普通にやってるんだから」

男「俺には6時間起きて授業を受けてる奴のが異常だと思う」

女「それが普通なの。ほら、行くわよ」グイ

男「だから引っ張るなって!?」

・・・・・・

教室


友「よっ!男!なんだ今日も早いんだな」

男「まあな」

友「で、お前昨日のあれは結局なんだったのよ」

男「なんだよ昨日のあれって」

友「生徒会長さんだよ。昨日のお昼お前んとこ来てたじゃん」

男「ああ、そのことか」

友「もしかしてお前たちあれか?付き合ってんのか?」

男「バカなこと言ってんじゃねぇよ。俺はただの被害者だ」


友「被害者ぁ?どういうことだよ」

男「要するに俺は遅刻常習犯だから会長に更生させられてるってことだ」

友「なるほどね……。要は監視されてるってわけか」

男「そういうことだ」

友「でもいいよな。それで弁当作ってきて貰えるなら。俺も明日から遅刻しよっかな」

男「やめとけって。ロクなことにならねえぞ」

男「それより一時間目体育だぞ?早く着替えろよ」

友「ああそうだったな。……ってあれ?俺の体操服がない……?」

男「ああ、それなら俺が着といた」

友「ってアンタ何やってんの!?」

男「朝急いでで体操服忘れちまったからさ。つい」

友「つい、じゃねぇよ!? これじゃ俺が授業出れないだろ!」

男「制服でよかったら貸してやるぞ」

友「んなもん貸されても困るよ!?」

男「じゃあ大人しく見学だな」

友「アンタって、結構鬼畜なとこあるよね?」

男「大丈夫だ。この恩は必ず仇で返すから」

友「仇で返すんじゃねぇよ!!」

・・・・・・

昼休み


友「お昼だぜー!男!」

男「言われなくても分かってる」

友「今日も来るのかな、生徒会長さん」

男「さあな」

友「また弁当もってくるのかな」

男「なんとも言えんな」

友「くそ……いいよなお前は。タダ飯食えて」

男「昨日お前の分も作ってくるって言ってたじゃん」

友「あ……。そういやそうだったね」

友「いやー、楽しみだ!あ、もし俺の方が豪華だったら俺に気があるってことかな!?」

男「そんな宝くじで三億円当てるより確率低いこと言われてもな……」

友「俺、そこまで人間としての魅力ないんすかね……」


女「アンタたち……。騒がしいわよ。廊下まで声聞こえてたわよ」

男「おっ、噂をすれば、だな」

女「何?私の話してたの?」

男「ああ。うちの生徒会長超怖いよねーって」

女「……なんですって?」

男「ってこいつが言ってた」

友「はっ……!?い、いやいや言ってねえって!」


女「何よ……。冗談?」

男「ちょっとしたアメリカンジョークだ」

友「はぁ……まったく急に冗談言うなよな。さっきの会長さんの顔超怖かったよ。鬼の形相と言うかさぁ」

女「……友くん?」

友「はっ!?い、いやいやその!か、会長さんは美人だなーっ!あはは!」

男「すげえわざとらしいぞ」

友「お前のせいでこんな話の流れになったんでしょ!?」

女「それで、今日もお弁当作ってきたわよ」

男「なんか悪いな」

女「いいのよ遠慮しないで。自分の分作るついでだし」

友「あの、会長さん?ちなみに僕のは……」

女「安心しなさい。ちゃんと作ってきたわよ」

友「えっ、マジ!?ひゃっほーぅ!!会長さんの手作り弁当!!」

女「はい。これが友くんの分よ」パカ


友「……あの、会長さん?」

女「うん?」

友「僕の目がおかしくなければ……これは俗にいう日の丸弁当ってやつですかね」

女「そうよ」

友「なんか男の弁当とすごい格差を感じるんすけど……」

男「まあ、なんだ。愛国心が育まれそうな素晴らしい弁当じゃないか」

友「そんなフォローいらねぇよ!?」

・・・・・・・

放課後

男「さて……今日もネトゲすっか」


男「こんちゃ~」

男「だれもいないの~?」

ピコーン

男(お?)

女さんからフレンド申請が来ています

男(……ってまたかよ)カチッ

フレンド申請を承認しました

ピコーン

チャットに誘われました。入室しますか?

男(……くそ、あいつ何企んでるんだ)


男「ういっす」

女「おっ、来たわね。じゃあ早速ネトゲをやめて、私と一緒に小テストの対策をしよう!」

男「……」

ガラガラガラ

男「おいくそ女!出てこい!小テストの対策しよう!じゃねーよ!!」

女「何よー。朝言ったじゃない。今度の小テストは満点取らせるって」

男「だからって俺の貴重なネトゲ時間を邪魔すんじゃねえ」

女「わかったわよ……」

男(お?いやにあっさり引いたな)

女「じゃあ私はここで勉強してるわね」

男「は?」

女「私のことは気にしなくていいから。アンタはゲームしてていいわよ」

男「勉強なら自分の家でやればいいだろ」

女「アンタがいつやる気になってもいいようにここで待ってるのよ」

男「アホか。絶対やる気になんてなんねえよ」

男「ったく。ネトゲの邪魔はすんなよな」

女「りょーかい」

男「……」カチカチ

女「……」カリカリ

男「……」カチカチ

女「……」カリカリ


男「……だぁーっ!!やっぱり集中できねぇー!!」

女「私、邪魔してないわよ?」

男「お前がいるだけで気になるんだ!今すぐ出てけ!」

女「アンタが勉強したら出てくわよ」

男「くそ……それまで居座るつもりかよ」

女「勉強もやってみると楽しいわよ?ほら、やりましょ」

男「……1時間したら帰ってくれるか?」

女「うーん……。初日だし、まあいいか」

男「ちょっと待て。これからもずっと来るつもりなのか」

女「当たり前じゃない」

男「はぁ……。マジでめんどくせぇことになったな……」

女「小テストで満点取ったらご褒美あげるわよ」

男「ご褒美……?ど、どんなだよ」

女「そうね……。えらいえらいっ!って頭なでてあげる」

男「そんなんじゃやる気はおきねぇな」

女「じゃあどんなのがいいのよ」

男「そうだな……。お前に何でも命令できる権利とか?」

女「うわ……えっちなことしようとしてるでしょ」

男「んなことしねぇよ。そんなまな板みたいな胸のやつに」

女「うっ……。今のは結構グサリときたわ」

男「悪い。ちょっと言い過ぎたか?」

女「いや。……分かったわ。アンタが満点とったら私への命令権を与えましょう。ただしエッチなことはダメ」

男「わかった。それなら俄然やる気が出てくるな。さて、今から復讐の方法を考えとくか」

女「復讐だなんて人聞き悪いわね」

男「俺の貴重なネトゲ時間を潰されてるからな。それくらいのことはさせてもらわないと」

女「まあ、まずは満点取らないと始まらないけどね。ほら、やるわよ」

男「あっ、お前俺が満点なんて取れるわけないって思ってるだろ」

女「そんなことないわよ?」

男「くそ……見てろよ!絶対取ってやる」

女「すっかりやる気になったわね……」

・・・・・・


男「はあ……流石にもう疲れた……」

女「お疲れ様。凄いじゃない!2時間も。やればできるじゃん」

男「まあ一人じゃ絶対無理だったな。お前のおかげだ」

女「嬉しいこと言ってくれるじゃない」

男「でも今日はもうやらねえぞ。これからはネトゲタイムだ」

女「その前に晩御飯にしない?」

男「……お前、まさか作ってくれるのか」

女「ついでだからね。いらないならいいけど」

男「是非にお願いします」

男「……お前、ほんと料理上手いよな」

女「そうかな?よくわかんないわ」

男「いやいや絶対上手いって。クラスで一番なんじゃないか?」

女「何?おだてても何も出ないわよ」

男「いや、なんか朝ご飯やら弁当やら、挙句の果てには晩御飯まで作ってもらっちゃって何か悪いなと」

女「いいわよそんなこと気にしなくて。生徒会長なんだから当然よ」

男「……ふふっ」

女「何よ急に笑って」

男「いや、なんか俺たちの関係ってなんか不思議だなって思えてきてさ」

女「不思議?」

男「はたは頭脳明晰、容姿端麗の生徒会長。はたは落ちこぼれネトゲ廃人。それが一緒に飯食ってるんだもん」

女「そうかしら?でも同じ学校の生徒なわけだし」

男「まあな。でもやっぱりお前は変な奴だと思うよ」

女「そんなに私変わってるかしら」

男「こんな落ちこぼれに粘り強く相手する奴なんてなかなかいないだろ」

女「生徒会長なら当然だと思うけど」

男「ははは。やっぱりお前は変わった奴だ」

女「あ!また笑った」

男「悪い悪い」

女「もう……」クス

・・・・・・

男「で、女さんよ」

女「うん?」

男「お前はいつまでここにいる気なの?」

女「アンタが布団に入って寝付いたことを確認するまでよ」

男「はぁ!?なんだよそれ!俺は深夜までネトゲしたいんだよ!」

女「ダメよ。また朝起きられなくなるわよ」

男「まあそれはそうだけどさ」

女「なんだ。わかってるなら早く寝なさいよ」

男「でも俺はネトゲをやらないといけないんだ」

女「ダーメ。ちゃんと寝なさい」


男「ネトゲできないと禁断症状が起きちまうんだよ」

女「そんなの気合いで乗り切りなさい」

男「俺は根性論が嫌いなんだ」

女「いいからさっさと寝る!ほら、布団かけて!」バッ

男「お、おい!何すんだよ!」

女「それとも寝付くまで一緒に寝てあげようか?」

男「はぁ!? ば、バカなこと言ってんじゃねぇよ」

女「じゃあすぐに寝なさい」

男「くそ……。分かったよ。寝りゃいいんだろ寝れば」

女「よろしい。じゃあ電気消すわねー。おやすみー」バタン

男「けっ……やっと帰ったか。さて、もう一度起きてネトゲといくか」ポチッ


男「……あれ?パソコンがつかねぇ……」

男「……って電源コードがねえじゃねぇか!!」

男(あいつめ……。コードだけ持ち去りやがったな)

男「くそ……。しゃあねぇ、寝るか……」

男(……こんなに早く寝るのも久々だな。明日は、アイツに起こされる前に、起きてやるか……)

翌日


男「うーん……」ムクリ

女「おはよう。今朝は早いじゃない」

男「ああ。昨日は誰かさんのせいでネトゲできなかったからな」

女「ごめんごめん。コードはあとで返すからさ」

男「なんか、もうこの状態が自然になってるよな。お前が朝飯作って」

女「好きでやってることだから気にしなくていいわよ」

男「ああ。こういう風に毎日お前が飯とか弁当とか作ってくれれば楽なんだがな」

女「あ、アンタ急に何言ってるのよ」

男「あ……。まああれだ、寝言みたいんもんだ。聞き流してくれ」

・・・・・・

男「こうやって余裕を持って登校するのは久しぶりだ」

女「アンタほんとに今までずっと遅刻してたのね」

男「遅くまでネトゲが当たり前だったからな」

女「……そういえば、明日って土曜日よね」

男「ああ、そういえばそうだな」

女「アンタ、週末の予定とかあるの?」

男「ネトゲ」

女「だと思った」

男「外に行くより家でネトゲしてた方が楽しい」

女「ま、そこは人それぞれよね」

女「でも、そしたら運動とかあんまりしてないでしょ」

男「まあ確かに……。体動かすのは登下校の時とか体育の時くらいだな」

女「運動不足は生活習慣病のもとよ?」

男「お前またそれかよ。大丈夫だって」

女「アンタのこと心配して言ってるのよ」

男「それも生徒会長の責務か」

女「うん」

男「大変だな、生徒会長って……。ならなくてよかった」

女「そう?結構楽しいわよ?……特に今とかは」

男「あ?何か言ったか?」

女「なんでもないわ。さ、行きましょ」

・・・・・・

教室

友「うぃっす、男!お前、今日も早いんだな」

男「まあな」

友「なんだ?やっぱり生徒会長さんに監視されてるからか?」

男「まあそんなところだ」

友「お前も大変だなぁ。それじゃ心が休まる暇もないだろ」

男「いや。もう慣れた」

友「ふうん?ま、見てるぶんには楽しいからいいけどね」

男「お前も目つけられないように気をつけろよ」

友「俺は大丈夫だって。模範的な生徒だし」

男「反面教師としてか」

友「お前には言われたくないよ!?」

休み時間

友「おーい、男ー!」

男「あ?」

友「今日お前んち遊びに行っていいか?」

男「俺んちに……?なんで」

友「ほら、この前出たあの新作のシューティングゲーム!お前買ったんだろ?やらせてくれよ」

男「1時間1000円な」

友「って金取るのかよ!?」

男「冗談だ。まあ別に放課後なら……」

友「ん?どうしたの?」

男「わりい。やっぱ今日はダメだわ」

友「え!?なんでよ」

男「ネトゲしたいんだよ」

友「なんだよ、それなら隣でやらせてくれよ。ネトゲはPCだけあればできるだろ?」

男「お前の横でやるネトゲは楽しさが半減するんだ」

友「そんなこと言わずにさー。頼むよー」

男「やだよ。やりたきゃ自分で買えって」

友「なんだよ……。ま、しゃあねえか。また今度やらせてくれよな」

男「ああ」

男(あぶねえ……。今日も絶対アイツが来るはずだからな。そんなとこコイツに見られたらどんな噂流されるか分からんからな)

友「? どしたの?」

男「ああ。宇宙の本質について考えてた」

友「急にすげえ学術的になったね!?」

・・・・・・・

放課後

女「やあ」ガチャ

男「やっぱり来たか」

女「当然よ。アンタの勉強を見なきゃだからね」

男「そう思ってもう教科書とか準備しておいたぞ」

女「男……!ついにやる気になったのね」

男「ああ。今日で勉強にはケリをつけて明日明後日はネトゲするためにな」

女「今日でケリ……?何言ってるのよ」

男「だから今日で全部覚えきって……」

女「でもその後二日も勉強しなかったら忘れちゃうわよ?いい?明日明後日も勉強だからね?」

男「ま、マジですか……」

・・・・・・

女「……ま、今日はこんなとこでいいかしらね」

男「はぁ……。もうしばらく単語帳は見たくねえ」

女「何言ってるの。明日もやるのよ」

男「ネトゲをか?」

女「そんなこと言ってるとまたコード持ってっちゃうわよ?」

男「代わりに単語帳で勘弁してくれ」

女「ダーメ。ほら、そろそろ晩御飯にするわよ」

男「おう。今日もよろしく頼むぞ」

・・・・・・

男「ごちそうさま」

女「どう?美味しかったでしょ」

男「ああ……。お前はいい嫁さんになれるぞ」

女「何よ急に……。気味悪いわね」

男「そこは素直に喜んどけ」

女「それもそうね。ふふっ、ありがと」


女「じゃ、私はそろそろ帰るわね」

男「今日は早めに帰るんだな」

女「あ、もしかして寂しいの?」

男「なわけあるかアホ」

女「まあ、明日の準備とかもあるからね」

男「明日どっか行くのか?」

女「うん」

男「ふうん。じゃあ明日はネトゲやり放題ってわけだ」

女「さて、コードを……」

男「うそうそ。ちゃんと勉強もするからさ」

女「ならよろしい。じゃ、また明日ねー」ガチャ

男「ああ。……って明日?」

翌日

男「……うん?」ムクリ

男「……まだ7時か」

男(そういえば昨日も結局、早く寝ちゃったんだよな。もっと夜更かししとけばよかったかな)


ガチャ

女「あれ?もう起きてるとは意外ね。おはよう、男」

男「……あ?」

男「っておいちょっと待て!」


女「どうしたのよそんな大声出して」

男「お前、昨日は明日出かけるって言ってなかったか?」

女「言ったわよ」

男「じゃあなんでここにいるんだよ」

女「当たり前じゃない。だってアンタと出かけるんだもん」

男「……は?」

女「ほら、昨日アンタ休日はあんまり外出ないって言ってたじゃない?だから今日は出かけましょ」

男「なんでそうなるかな……。やだよ。俺は家にいるのが好きなんだ」

女「そんなこと言わずにさ。いいじゃない、たまには」

男「よくねえよ」

女「外見てよ。とってもいい天気だよ?」

男「まあ確かにそれは認めるけどさ……。だからって……」

女「あ、もしかしてデートみたいに思われるのがやなの?」

男「ばっ……!ちげえよ」

女「ならいいじゃない。はい、決定!」

男「なっ!?……くそ、はめられたか」

男(まあ、でも確かに。たまにはこういうのもいいか……)

・・・・・・・


男「で、どこに行くんだよ」

女「図書館よ」

男「図書館?てことはまさか」

女「そ。お勉強しにいくの」

男「帰る」クルッ

女「って帰らないの!いいわよー?図書館は。空調も快適だし」

男「でも自習スペースとか人いっぱいいるじゃん」

女「その方が刺激になっていいいじゃない」

男「俺はただ気が散るだけだと思うが」

女「もう!つべこべ言わずに行くわよ!」グイッ

男「いてて!だから引っ張るなって!」

・・・・・・

男「うわ……。図書館とか久々に来たな」

女「アンタあんまり本読まなそうだもんね」

男「まあな。教科書だって新品同様だ」

女「じゃ、今日はボロボロになるまで勉強しましょ」

男「たかが一日でそんなになるかよ」

女「大丈夫よ。自分もボロボロになるまで勉強すれば教科書もきっと応えてくれるわ」

男「ほどほどで勘弁してください……」

男「げ……自習席、ほぼ満席だな」

女「あちゃー。ちょっと出遅れちゃったかしら」

男「あそこが一席だけ空いてるな」

女「ほんとだ。男ー、その席とっといてー」パタパタ

男「って女!? なんだよアイツ。急に走り出して……?」


女「おまたせー」

男「ああ……ってなんだよそれ」

女「司書さんに頼んで椅子だけ調達してきたの」

男「調達したって……。そもそもどこに座るんだよ」

女「アンタの隣に決まってるじゃない」

男「は?よく見ろよ。俺の隣は空いてないぞ」

女「この机を二人で使うのよ」

男「またすげえ強引だな……」

男「なぁ……」

女「うん?」

男「やっぱり狭くないか?」

女「そうかしら?私は別に気にならないけど」

男「でも腕とか動かすたびにお前の体に当たっちゃうし。痛くないか?」

女「全然。痛くもかゆくもないわ」

男「それになんかさ、恥ずかしくない?」

女「そう?別に普通じゃない?」

男「少なくとも一つの机を二人で使うのは普通じゃないと思うが」

女「いいじゃない。誰にも迷惑かけてないんだし」

男「まあそれはそうだけどさ……」

女「ほら、さっさとはじめるわよ」

数十分後



男(……おっ、隣の席の奴帰ったな)

男「おい、女」

女「ん?何?」

男「隣空いたから移動したらどうだ?」

女「え?なんでよ?」

男「なんでって言われてもな……。そっちの方がスペースに余裕できるだろ」

女「私は別にこのままでもいいわよ」

男「俺はよくない」

女「なに今更恥ずかしがってんのよ。いいじゃない、近い方が私も教えやすいし」

男「それがいやだって言ってんだよ……」

男「くそ……。わかったよ、じゃあ俺が移動する」

女「あらそう?仕方ないわねぇ」


男「ふぅ……やっとこれで余裕持って勉強できるな」

女「そうね。よいしょっと……」

男「……あの、女さん?」

女「ん?」

男「ん?じゃねぇよ!なんでお前も移動してるんだよ」

女「アンタが急に移動しだすからじゃない」

男「お前も移動したらさっきまでと何も変わらんだろ!?」

女「細かいわねー、アンタは。別にいいじゃないこれで。あっちの席は他に使う人いるかもしれないし」

男「はぁ……もうこのままでいいです」

・・・・・・


男「うぇ……さすがにもう疲れてきたぞ」

女「そうね。ちょうどそろそろお昼だし、今日はここまでにしよっか」

男「ああ。そうする」

男「じゃあ早速家に帰ってネトゲを……」

女「ダメ。お昼がまだでしょ」

男「家帰ったら何か作ってくれ」

女「材料買ってないわよ」

男「じゃあ家でネトゲして待ってるから買い出し頼む」

女「イヤよ。せっかく外きたんだから外食しましょ」

男「はぁ?なんでそうなるんだよ」

女「いーじゃない。いつもご飯とかお弁当とか作ってあげてるんだからさ。たまにはおごってよ」

男「ぐ……。そう言われると何も反論できない」

女「決まりね。それじゃ、レッツゴー!」

男「元気だなお前……」

男「で、どこに行くんだよ」

女「最近この辺にできた喫茶店があるのよ。そこでいい?」

男「へぇ……。この辺にそんなのできてたのか」

女「あれ?アンタ知らなかったの?」

男「休日は家でずっとネトゲしてるからな」

女「不健康ねー。たまには外出しなさいよ」

男「うっせ」

女「ま、でも丁度よかったんじゃない?久々の外食になってさ」

男「あんま高いもん頼むなよな」

女「それは保証できないわね」

男「俺が破産してもいいのか」

女「そん時は私が貸してあげるわよ。利息はトイチだけど」

男「全力で遠慮させてもらいます……」

・・・・・・

男「で、女さんよ」

女「うん?」

男「数分前に俺、あんま高いもんは頼むなよって言ったよな」

女「うん」

男「じゃあお前がさっき頼んだメニューの名前言ってみろ」

女「ビッグゴールデン・デリシャスパフェデラックス、税込3780円」

男「お前……遠慮なさすぎだろ」

女「だって食べたかったんだもん」

男「はぁ、この店もなんでこんなくそ高価なもの取り扱ってるかな……お前絶対残さず食えよな」

女「大丈夫よ。甘い者は別腹だし」

男「ま、全部食ったら太ることは確定だな」

女「あー!見てなさいよ。パフェの栄養全部胸に集中させてやるんだから」

男「せめて緩やかな丘陵地ぐらいになれるといいな」

女「バカにしてるわね……!見てなさいよ。エベレストみたいになってやるんだから」

男「それはいくらなんでも大きすぎだろ」

・・・・・・

女「……お、男」

男「なんだよ」

女「もう、食べれないかも……」

男「お前あれだけ食えるって言ってたのに結局それかよ」

女「予想以上に量多かったんだもん……。ごめん、手伝って……」

男「いいのか?エベレストになれないぞ」

女「今回ばかりは富士山で妥協することにしたわ……」

男「妥協してんのかそれ」

女「まあいいじゃない。ほら、男。美味しいよ?」

男「俺は甘いもん苦手なんだ」

女「そうなの?でも食べたら案外いけるかもよ?」

男「やだよ。俺は食わねぇからな」

女「はい、あーん♪」

男「そんな手にのるかよ」

女「スキあり」ズボッ

男「!!? ゲホッ!ゴホッ!!」

女「あ、ごめん。流石に強引すぎたかしら」

モグモグ……ゴクン

男「はぁ、はぁ……。てめぇいきなり何すんだよ!不意打ちすぎるだろ!」

女「ちょっとした悪ふざけじゃなーい。怒らない怒らない」

女「で、どうだった?美味しかった」

男「……意外と味は悪くねぇな」

女「でしょー?やっぱり食わず嫌いだったのよ」

男「勘違いするな。税込3780円の補正も入ってこそだ」

女「確かに、高いお金出して食べるものって美味しく感じるよねー。もちろん、おごってもらっても美味しいけど」

男「くそ……調子いいこと言いやがって」

女「ほら、もう少しなんだから。頑張って一緒に食べちゃいましょ?」

男「ああ。……と見せかけて」

女「えっ?」

男「スキあり」ズボッ

女「!!? ~~~~~!!」バタバタ

男「ははは。さっきのお返しだ」

モグモグ……ゴクン

女「はぁ、はぁっ……。いきなり何すんのよ」

男「元気にしゃべってたから栄養補給が必要かなって」

女「アンタもやるようになったわね……」

男「まあこんなことできる女子なんてお前くらいだけどな」

女「アタシだってこんなことアンタにしかしないわよ」

男「ま、あんな乱暴じゃなくて もっと優しく食べさせてもらえたらなおよかったんだけどな」

女「なにアンタ、やっぱり食べさせてほしかったの?」

男「なわけあるかよ」

女「そういうことは彼女ができたらやってもらいなさいな」

男「お前もな。くれぐれも優しく食べさせてやるんだぞ」

女「はは。ま、彼氏なんていないけどね」

男「ふうん。なんか意外だな」

女「そお?私は生徒会長だからさ。その使命とかのが今は大切かな」

男「志が高いんだな」

女「そんなことないわよ。私なんてまだまだよ」

男「お前ぐらいのレベルでまだまだなら俺はミドリムシ程度の存在だな」

女「そうかな?そんなことないと思うけど」

男「ま、んなことよりさっさと食っちまおうぜ。いつまでもぐだぐだしてると日が暮れちまう」

女「そうね。よーし!食べるわよー!」

……

店員「ありがとうございましたー」


男「……なんとか食いおわったな」

女「私……しばらく、動けないかも……」

男「しゃあねぇな。どっかで休んでくか……」

男「おっ」

女「なに?どうしたの」

男「そこにゲーセンがあるな。よし、そこで遊んでこうぜ」

女「そんな余裕ないよ……」

男「お前は座って休んでろよ。さ、行こうぜ」

ゲーセン

女「うわー!やるじゃない!またパーフェクトよ」

男「音ゲーは得意なんだ。ここは昔通いまくってたからな」

女「人間何かしら特技はあるものね……」

男「おいてめぇ。それはどういう意味だ」

男「で、腹の調子はもう大丈夫か?」

女「うん。もう大丈夫」

男「そうか。じゃあそろそろ帰るか」

女「あ!待って男!」

男「なんだよ」

女「帰る前にあれやってかない?」

男「あれって……プリクラか?」

女「うん。いいでしょ?」


男「やだよ恥ずかしい」

女「いいじゃない少しくらい。ね、やろうよ?」

男「どうしてそんなにやりたいんだよ」

女「しばらく撮ってなかったからさ。久しぶりに撮りたくなったの」

男「お前なぁ……。そんなら女友達と撮ればいいだろ」

女「私はアンタとでも別に構わないわよ」

男「……俺の顔だけ切り抜いて遅刻常習犯ですって校内に貼るつもりじゃねぇだろうな」

女「そんなことするわけないじゃない。アタシがただ撮りたいだけ。ね、いいでしょ?」

男「ちっ……わかったよ。一回だけだぞ」

女「さすが男!話がわかるー!それじゃ、行きましょ?」

男「あ、ああ……」

・・・・・・

男「うわ……こうして中に入るとなんか改めて恥ずかしいな」

女「そお?別に普通じゃない?」

男「俺は緊張するぞ。カメラが苦手なんだ」

女「大丈夫よ。どうせ元から面白い顔なんだから」

男「せめて個性的とかもうちょっとオブラートに包んでくれよ……」

女「ごめんごめん。ほら、撮るわよー」

カシャ

男「……なんかすげえ普通の写真になったな」

女「何?もっと近づいて撮った方が良かった?」

男「いや、これくらいでいいよ」

女「そお?恥ずかしがらなくていいのよ」

男「別に恥ずかしがってねぇよ」

女「アンタがこれでいいんならいいけど……。じゃ、これで完了ね」

男「いやちょっと待て。なんだこれ、写真に文字が書けるのか?」

女「うん。そのペンみたいので画面に書き込めば書けるわよ」

男「せっかくだから何か書くか」

女「それもいいわねー。で、何書くの?」

男「まあ見てろって」キュッキュッ

女「……レベル999?何これ」

男「どうだ?俺強そうに見えるだろ?」

女「ゲームのやりすぎよ」

男「そんなこと言う奴にはこうだ」キュッキュッ

女「えっ……?お、男……?」

男「あ、やべ。書き間違えた……」

女「私の目がおかしくなってなければ、恋人って書いてあるように見えるんだけど」

男「ぐぁ……。変人って書こうとしたんだがな」

女「本当に?」

男「本当だバカ。誰が好き好んで恋人って書くかよ」

男「くそ……さっさと修正して……」

ピピー


女「あ、制限時間切れね」

男「ってマジかよっ!!?」

女「ぷぷっ……恋人だって。うわー、恥ずかしいわねー、アンタ」

男「くそ……笑うんじゃねえよ」

女「だって面白すぎたんだもん」

男「はぁ……どうすんだよこれ。クラスの誰かに見られたら絶対勘違いされるぞ」

女「じゃ、二人だけの秘密ね」

男「当たり前だ。お前絶対見せびらかすんじゃねぇぞ」

女「分かってるわよ。ほら、帰りましょ?」

男「くそ……。人生最大のミスだぜ」

女「置いてくわよ?」グイッ

男「だから腕を引っ張るな!!」

……

男「はぁ、なんか今日はどっと疲れた」

女「ふふ。お疲れ様」

男「お前、明日も来るのか?」

女「うん。明日が小テスト前に勉強できる最終日だしね」

男「小テスト、か。確か満点取る約束だったよな」

女「そうよ。もし満点とれたらこういう生活もおわりっ」

男「そう考えるとなんか寂しくなるな」

女「アンタ何か勘違いしてない?満点取った場合の話だからね?そのために明日みっちり勉強するからね」

男「げ……マジかよ」

女「マジ。大マジよ。最後の追い込みよ」

男「でもそうか。もう明後日がテストなんだな」

女「そうよ。だからグダグダしてる時間はないの」

男「ここまで来て満点取れなかったら俺は泣くぞ」

女「その時は私が慰めてあげるわよ。いたいのいたいのとんでけーって」

男「おちょくってあげるの間違いじゃないのかそれ……」

女「あはは。冗談よ。てかそもそも満点取らないと許さないわよ?」

男「強制かよ」

女「そ。だから今日は夜更かししないですぐ寝るのよ?明日のためにね」

男「ちっ、わかったよ。くそ……もうここまで来たら最後まで付き合ってやるよ」

・・・・・

翌日


男「……はぁ、疲れた」

女「お疲れ様ー。ま、これだけみっちりやっとけば明日は大丈夫でしょ」

男「一日中勉強したのなんて人生初めてだ」

女「心地よい疲れでしょ?」

男「まあな。やりきった感はあるな」

女「でも明日の小テストが終わるまで気抜いちゃダメよ」

男「わかってるって」

女「さっ、じゃあ晩御飯にしましょ?」

男「ああ」

男「……これが最後の晩飯になるかもしれねえんだな」

女「え……何アンタ急に。何があったか知らないけど早まっちゃダメよ」

男「そういう意味じゃねぇよ。お前の晩飯食えるのも今日が最後かもしれねえってこと」

女「あ……そういえばそうね。ま、満点取ったら明日は御馳走作ってあげるわよ」

男「でもそれ以降は来ねえんだろ?」

女「そうなると思う……。最近アンタ一人で起きれるようになったし、テストで満点取れば大分自信もつくでしょ?」

男「多分な」

女「不良生徒の更生があくまで私の責務だから……。アンタならもう私の力がなくてもやってけると思う」

男「まあ確かに。一週間前と比べてだいぶ人間らしい生活してるとは思う」

女「でしょ?アンタもやればできるのよ」

男「ほとんどお前のおかげだと思うがな」

女「私は当然のことをしたまでよ。あとはアンタの頑張り次第ってとこね」

男「そうだな。とりあえずここまで来たら明日は全力でぶつかってみるよ。当たって砕けろだ」

女「そうそう、その意気よ。男、絶対満点取るのよ」

男「ああ。任せとけ」

・・・・・・

翌日


友「よっ……男……。はぁ……」

男「なんだお前。元気ねぇな」

友「当たり前だろ。だって今日小テストだぜ?しかも今年一番難しい範囲らしいじゃん」

男「だからなんだよ」

友「なんだよお前。すげえ余裕ぶっこいてるじゃん……。あ、もしかしてもう諦めたのか?」

男「んなわけねえだろ」

友「またまたー。目標点数言ってみ?俺は20点」

男「100点に決まってるだろ」

友「ひゃ……100点?男、朝メシ変なモンでも食ったのか?」

男「手作りの美味しい朝飯しか食べてない」

友「え?手作り?」

男「いやなんでもねえよ。とにかく俺は100点を目指す」

友「すげえ自信たっぷりだね……。でも男、お前には無理だよ」

男「なんでだよ」

友「どうせこの土日もネトゲ三昧でまともに勉強してねえぇんだろ?無理だって」

男「じゃあもし満点だったらお前コマネチ!って連呼しながら全学年の廊下駆け回れよ」

友「いいぜ。まあお前が満点なんて ポーカーで初手にロイヤル・ストレートフラッシュが揃うより確率低いと思うがな」

男「お前に彼女ができる確率よりは高いから安心しろ」

友「それ俺には彼女できないって言ってるようなもんだよね!?」

・・・・・・

教師「よーし。今日の小テスト返すぞー」

友「ついに来たな。まあどうせひでえ点だろうけど」

男「ああ」

教師「友ーっ」

友「あ、ハイ」ガタッ

教師「お前もうちょっと頑張れよな」

友「今回は調子悪かったんです。次がんばりまーす」


友「へへ、15点だった」

男「うわ……。お前やる気あんのかよ」

友「ちゃんと本気で解いたさ。どうせお前もこんくらいの点数だって」

教師「つぎ、男ーっ」

男「はい」ガタッ

教師「男……。今回はお前よく頑張ったな。正直先生、とても感動してる」

男「あ、はい……ありがとうございます」

教師「しかし驚いたよ。まさか満点とはな。先生信じてたぞ。お前もやればできるんだって」

男「ははは……。俺だけの力じゃないっすよ」

教師「いいや。お前の実力だよ。男、よくやった」

男「……ありがとうございます」

教師「? どうした?そんな浮かない顔して。もっと誇りに思っていいんだぞ」

男「……大丈夫です。すみません、ありがとうございました」

友「お、おい……男。先生感動したとか何とか言ってたけど何点だったんだよ……」

男「ご覧の通りだ」

友「あ……ぁ……百点……!?マジ……なのか?」

男「マジだ。大マジだ」

友「……コマネチ!」ガタッ

教師「お、おい友!?どうした!?」


友「コマネチ!コマネチ!コマネチッ!!」ダッ

キャー!? ウワッ、ナンダ!? ヘンタイガデタゾー!!


教師「ど、どうしたんだアイツは……。突然廊下に飛び出して……」

男「ああいう病気なんです」

教師「ったく……。あとでアイツは説教だな。よし、次ー……」

男(ふぅ……。ともかくこれで、全て終わりだな……)

・・・・・・

男の家


男「ほら、約束通り満点取ってきたぞ」

女「アンタ……!やったじゃない!」

男「ああ。でもまさか本当にとれるとはな」

女「当たり前よ。あんなに頑張ったんだから」

男「ま、何はともあれお前のおかげだな」

女「ふふっ、そうね。さっ、食べましょ?今夜は御馳走よ」

男「ああ」

男「……これ食い終わったらお前とはもうお別れなんだな」

女「そうね……ちょっと寂しいかも。私がいなくても明日以降もちゃんとするのよ?」

男「わかってるって」

女「……」

男「……」

女「ほ、ほら。そんなに悲しそうな顔しないでよ。一応めでたい日なんだから」

男「してねぇよ、そんな顔……」

女「あ、そうだ!そういえば約束、まだちゃんと果たしてなかったわね」

男「なんだよ約束って」

女「いいこいいこーっ」ナデナデ

男「うわっ!?お、お前急になんだよ!?やめろって」

女「やーだ。私が飽きるまでやめなーい」ナデナデ

男「マジで恥ずかしいって!……ったく、まさか本当にやるとは」

女「満点とったご褒美だからね」ナデナデ

女「……」

男「? やっと飽きたか」

女「……飽きてなんかない」

男「あん?」

女「私も本当は、もっと……アンタと一緒にいたいの」

男「え……?」

女「本当は明日だって、その次の日だって……。アンタを起こして、一緒にご飯食べてってしたい」

女「でも、アンタはもう不良生徒なんかじゃないから……」

男「別にそんなの関係ねぇだろ。お前が来たいんなら、来ればいいだろ」

女「ダメよ。だって私、生徒会長だもの。理由もなく、特定の生徒だけひいきすることはできないわ」

女「だから今日でお別れよ。ありがと。今まで楽しかったわ」

男「女……」

男「……理由があればいいんだな?」

女「……え?」

男「俺も、命令権を使ってないのを思い出した」

女「ふふっ、そういえばしてたね。そんな約束。いいわよ、最後に何でも聞いてあげる」


男「……お前、明日も朝飯作りにここに来い」

女「……えっ?」

男「朝飯だけじゃねえ。昼飯も、できれば夕飯も……。つまり今までと一緒だ」

男「もちろん明日だけじゃねえ。これからもずっと、だ」

女「男……?それって……」

男「ああ。女……。俺の彼女になってくれないか?」

女「……!!」

男「彼女なら、別に一緒に飯食おうが、一緒に仲良く過ごそうが全然変じゃないだろ?ダメか?」

女「ふふっ……卑怯よ。命令権をそんな風に使うなんて」グス

男「もちろんこれは命令じゃねえよ。でも、俺の本心だ」

男「……正直俺もさ、満点取った時、嬉しさよりも寂しさが先に襲い掛かってきたんだ」

男「テスト受けてるときもそうだった。絶対満点取れるって手ごたえはあったんだけどさ、正直、一問でもいいから
  どこか間違ってくれればと思ってた」

男「わざと間違えてやろうかとも思ったんだけど……。そんなことしてもお前が悲しむだけだしな」

男「まあそもそもの話、お前が元ネトゲ廃人の俺でもいいなら、だけどな」

女「……いいに決まってるじゃない」

男「女……?」

女「男。明日のお弁当楽しみにしててね?思いっきり豪華にしてあげるわよ」

男「女、それって……」

女「明日からもよろしくね、男」

男「……ああ。こちらこそ、な」

翌朝


女「男ー、そろそろ行くわよ」

男「わりい。今行く」

女「カバン持った?忘れ物ない?戸締りはした?」

男「ああ。全部大丈夫だ」

男「いや……一つだけ忘れてた」

女「ん?なに?」

男「これがないと一日はじまらない、っていう重大なやつだ」

女「何よそれ?お祈りか何か?」

男「ま、そんな感じのやつかな。わりい、ちょっと目瞑っててくれるか?」

女「何する気ー?こう?」

チュッ

女「!!?」

女「あああああ、アンタねぇ///」

男「ははは。ちょっといきなりすぎたかな」

女「もう、不意打ちすぎるわよっ」

男「わりいわりい」


女「……でも、嬉しい。朝からこんなに幸せでいいのかな」

男「バカ。俺だって幸せだ」

女「これからもずっと一緒よね?男?」

男「ああ。といっても、成績とかまで一緒のレベルにはなれないがな」

女「いいわよ、そんなのどうでも。アンタと毎日一緒に居られるだけで十分」

男「ま、お前がそれでいいんならいいけどさ。でも俺も頑張るよ」

女「頑張るって?」

男「……同じ大学、一緒に行けたらいいだろ?」

女「男……!」

女「ふふ。なら今日は早めに行って少し自習しよっか」

男「は!? 行動に移すの早すぎねえか!?」

女「善は急げよ。さ、行くわよ男!」グイッ

男「イテテ、だから腕を引っ張るなー!!」


おわれ

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