安部菜々「北欧に来たので北極を見に行きますよ」佐藤心「ちょ、遠い☆」 (38)

※モバマスSS
※とある楽曲を参考にしたため、元ネタあり
※台本地の文混合
※意味もなくうさみんはぁと
※崩壊かもしれない
※各所考察雑
※オチが暗い
※すがすが☆みーん
※くがくが☆みぃん
※某MYBABYネタあり
※許して

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1480691243

はぁとたちは撮影で北欧に来てた。
プロデューサーが『もうシーズンだし、北欧の地を踏んでサンタコスで撮影しようか』なんて思いつきみたいに言っちゃって、
スケジュール的にも無理があるむちゃくちゃな仕事でここに来たまではよかったんだ。
うん、来るまではよかった。機内で映画観れたし☆

「めっちゃさむくねーか☆あと外暗すぎ☆何時なの今☆」
「冬の北欧ですから極夜なんじゃないですかねぇ。
今の時刻は……えーっと15時20分……日本だと22時20分ですね。暗いので時差の違和感を感じませんね」
「撮影スタッフとかいないじゃん……ここについてもう1時間経ってるんだけど☆」
「明らかにおかしいですよね。待ち合わせの場所も時間も正しいはずですが。連絡ミスでしょうかね?」

何のせいかわからないけど、はぁとたちと合流する予定だった
撮影スタッフ、通訳、監督全員が待ち合わせに2時間以上遅刻して、はぁとたちは待ちぼうけを喰らっちゃった。
広い空港の待合室は長時間居ることを考えて作られてないっぽくて、
満足に暖房が効いてなくて屋内なのに手足が悴むくらい寒かった。

これ以上は待ってられない。先にホテルに行こう、と菜々に提案して、
はぁとはプロデューサーに教えてもらった先方の連絡先に電話を入れることにした。

「はぁとちょっと通訳さんに電話するねー」
「お願いします。ナナは国際電話でプロデューサーさんに連絡入れてきます」
「おっけー」

そう言って菜々は、待合室に設えてあった国際電話対応の公衆電話へ向かった。
はぁとはこの日のために支給されたフィンランドで通じる携帯電話で通訳さんの番号を探した。

「えっと、あったあった、通訳さん……っと」
「あっちは夜中だけど通じますかね……あ、すぐ出た。
もしもし、夜分遅くすみません。プロデューサーさんですか?安部ですー。あの、今回の撮影の件なんですけど……」

こっちは繋がるかな……?
10秒くらい呼び出し音が鳴って、やがて初老の女性の声が聞こえた。
早口で何か言ってるのを制してはぁとは切り出す。
はぁと、さすがにフィンランド語はわからない。

「もしもし、通訳さんですか?」
「あ、あぁ。日本の方ね。初めまして、エヴェリーナです。電話越しにごめんなさいね」

もっと事前打ち合わせしとくべきだったろ、とか、他に謝ることあるだろ、とかいろいろ言いたくなるのを堪えて、はぁとは尋ねた。

「346の佐藤です、初めまして。もうこちら空港に着いてるんですが、そちらどうなってます?」
「日本、346、佐藤さんね……ちょっとまってね」

少しの沈黙と、通話越しに聞こえる紙をめくる音。

「あら……?撮影は来週だったはずよ?」
「……え?」
「打ち合わせが急だったからねえ。連絡ミスよね、ごめんなさい」
「うそ……こちらこそごめんなさい、連絡ミスだったなんて……」
「こちらこそもっと頻繁に連絡するべきだったわね。来週またお会いしましょう?」
「はい、申し訳ありませんでした」
「いえいえ。それじゃあね」
「失礼します……今日のうちはヘルシンキのホテルにいるので、何かあったらまた連絡しますね」
「はーい」

……帰国したら覚えてろ、プロデューサー☆
はぁとの電話が済むと、プロデューサーとの連絡を終えた菜々が話しかけてきた。
すっかり気の抜けて、少しげんなりした顔をしてる。たぶんはぁとも同じ顔してると思う。

「ホテルが手配されてるようなので一旦そこで待ちましょう。なんて連絡しました?」
「同じく別の場所で待ってるって伝えといた。ホテルに着いて、それからなんかあったらまた連絡するって言って切ったよ」
「出国したあとにスケジュールミスに気づかれたそうです……まったく。まさか1週間後だったなんて」
「ほんとだよ……はぁとたち1週間フィンランド暮らしじゃんか……」
「……いまから帰国します?」
「えーチケットまたとっていろいろやってーって正直今からやるのダルいー寝たいー☆」
「ですよね……明日以降にしましょうか」
「ん……」

飛行機のロングフライトでの緊張が解放されたと思ったらこのザマだし。
緊張が一気に解放されて、はぁとたちはどっと疲れちゃった。

「はぁ……」
「はぁ……」
「……こんな寒いとこいつまでもいられないから、ホテル行こっか」
「そうしましょう」

そうして空港から出てすぐの、ヒルトンヘルシンキにはぁとたちは赴いた。

「外もっと寒っ!?」
「わー……これは防寒着選択ミスりましたね」
「やっばー……行こ、行こ。風邪ひいちゃうよ」
「行きましょう」

ターミナルの連絡通路から出てすぐとはいえ、
大きい道路を挟んでいるから目の前にホテルがあるのになかなかたどり着けない。
10分くらいかけてどうにかエントランスに入り込む。

チェックインを済ませて、予約の部屋に入る。
入るやいなやはぁとは荷物を放り投げてベッドに崩れ落ちる。

「もがー……」
「何もしてないのに疲れましたね……」
「はぁともう何もしたくない。1週間ここにいる」
「……予定だと今日一日しかこのホテルにいられないので、
チケットの手配済ませてしまいましょう」
「……マジ?」
「大マジです」
「でぇえぇぇあぁぁぁぁ……」

……ダルい。

「……ナナもちょっとめんどくさくなっちゃいました。寝ましょうか」
「んんー……」
「……んまぁ、どっちみち本来の撮影場所はここからだいぶ北のロヴァニエミって所らしいですから、
帰るにしたったって早めの現地入りするにしたったって、どのみちチケットはとらないといけないわけですが」
「がぁぁぁー……」
「奇声出してないで、ほら、とりますよチケット」
「はぁい……」

文明の利器のおかげで、指先だけでチケットは取れるというものの、
慣れない手続きのせいでものすごく面倒臭く感じてしまう。

「明日の9時の便でいい?」
「起きれますか?」
「早く寝ればいいじゃーん。
すぐ移動のつもりだったから暇潰すものなんて何もないっしょ?」
「まぁ、そうですが……じゃあとりますね」
「E5席で」
「隣の4取りました」
「はーい終了ー!はぁと眠いから寝るぞ☆」
「あの、スキンケアは」
「いっけね☆」

いろいろ済まして、菜々とはぁとが寝たのはその日の現地時間19時だった。

……まあ、早起きしちゃうよね。

「ふぁ……あふ。今何時……?」
「あ、おはようございます心ちゃん。5時ですよ。朝の」
「えぇ……はぁと10時間も寝てたの」
「大変お疲れだったようですね。
寝息も立てないものですから先に何処かいかれてしまったのかと焦りましたよ」
「パイセンいつ起きたの?」
「ほんのついさっきですよ。50分くらいです。
何もありませんからね、何して暇潰そうかって……」
「あぁ……そういえば……」
「支度の時間込みでも少なめに見積もって2時間はあるんですよ」
「え゛え゛え゛……」
「チェックアウトも10時ということになってるので、限りなく暇です」
「どうしよ、どうする?」
「どうしようって……どうしましょうか」
「早くチェックアウトして空港見学する?ロヴァニエミの情報とか少しはわかるでしょ」
「そうしましょうか」

というわけで、朝の諸々や支度、
チェックアウトを済ませてはぁとたちはヘルシンキ空港へと戻り、フライトまでの時間を空港見学に費やした。

「おぉ……とは言っても、空港ってあまりどこも変わらないものですよね」
「書いてある文字のほとんど、英語以外もはやまったく読めねぇけどな☆」
「こういうところに来ると、英語が書いてあるのを見るだけで安心しますよね」
「わかるー☆」
「ナナもフィンランド語はあまりわからないので……」
「少しはわかるの?」
「ま、ヒュヴァーフオメンタ……おはようございます、しかわかりませんけどね」
「だめじゃん☆」

「Rovaniemi……これロヴァニエミですね。ちょっと読んでみましょう……か……」
「物の見事にフィンランド語でしか書いてねーな☆せめて英語でなんか書いてないのかよ☆」
「あ、これなんかどうでしょう」
「いやフランス語じゃねーか☆」
「ま、フランス語くらいなら……」

お、マジか。菜々パイセンの意外な一面。

「千夏ちゃんフレちゃんにちょっと教わってましたからね」
「ちょっとだけでそんなに読めんの☆」
「意外と」
「マジか☆」

ガイドブックによると、ロヴァニエミ空港の近くにサンタクロース村があり、たぶんはぁとたちはそこで撮影することになる。

「もうちょっと素朴で地味な感じをイメージしてましたが、割と派手に観光名所として打ち出してますね」
「ど田舎かと思ったらそうでもなかったぞ☆」
「おっと、読んでたらもうこんな時間ですか」

午前7時40分。フライトまでは時間あるけれど、暇をつぶすには短すぎる。
はぁとたちは昨日降りたターミナルとは別のターミナルで手続きを済ませて搭乗口に来た。
やっぱそんなに暖房効いてなくて、寒い。

「うー、ここで待つのキツいぞ☆」
「寒いですものね……」
「……パイセン、くっついてもいい?てかくっつかせて☆」
「えっちょ」
「照れんなってー☆」
「あぁ、もう」
「あったかー☆」
「ほっぺはまずいですって……んにゅ!」
「んー♪すうぃーてぃー♪」

めっちゃ痛い目線が言葉の壁を乗り越えて突き刺さってくるけど、日本だろうが世界だろうがそんなの関係ねぇ☆慣れた☆
そんなんではぁとが一方的に菜々といちゃいちゃしてると、搭乗の準備ができた旨のアナウンスが待合室に流れた。

「乗れるみたいですね、行きましょうか」
「はーい☆」

成田からヘルシンキまでの長旅と違って、ものの1時間ほどでロヴァニエミに到着した。

「もっとさむっ!?ナニコレ!?てかまだ10時なのに夕暮れみたい!?」
「ヘルシンキよりも高緯度ですからね……
くぅー……これはだいぶ厳しいですね。ヘルシンキの時点で上着新しく買っておくべきだったかもしれません」
「ちょ、無理寒い」
「だからってくっつかないでください歩きづらいです」
「早くターミナル、ターミナル!」
「わかってますから、あっ、やっ、ちょ転びますって!」

空港の近くで厚めの防寒着を新調して、改めてはぁとたちはサンタクロース村へと赴いた。
ロヴァニエミ空港の近くには宿泊施設がなく、サンタクロース村で直接宿泊する形となる。
フィンランドといえばサンタクロース……
と、連想するレベルで有名なはずなので、部屋が取れないと思ったけど、運良く取れたみたい。
しっかしこの防寒着、結構たけーな☆

「経費で落とせないのー?」
「予定外ですから流石に手が回せないと思います。とはいえ、後々落としてもらえると思いますが……」
「スケミスなんだからこれくらいは負担してくれてもいいよねー」
「まあまあ。その分だけナナたちも撮影がんばりましょうよ」
「パイセン張り切ってるなぁ」
「いやまあそりゃ。仕事じゃないですか」
「せっかく1週間あるんだからさ、楽しんでこうぜ☆」
「はいはい……」

サンタクロース村では気さくなおじさんがはぁとたちを案内してくれた。アウリスさんっていうらしい。
このまま赤い服と帽子を着せたらサンタクロースになりそうなおじさんだった。
英語がなんとか通じたので、身振り手振りを加えながら、
はぁとたちが日本から来たこと、(一応)芸能人なこと、ここで撮影させてもらうこと、をなんとか伝えた。

「Vaude! SygäSygä☆Miin! あれだろ? "もうはなさなーい"のヤツだろ?
ハッハー!スターの子たちがここまで来てくれるなんてねえ!
ありがとう、歓迎するよ!小さい村だけど、自然はたくさんあるよ!
ちょっと案内するよ。ついて来てくれ!」

「もう離さない」のところだけやたら流暢な日本語だったのがおかしくてつい笑みが溢れる。
一応、それははぁとたちの公式曲じゃないんだけどね。

「英語が通じてホッとしましたよ」
「フィンランド語ってなんか可愛い響きしてるよね」
「『猫の言葉』って言われてるらしいですね」

宿泊する小屋からすこし歩くと、凍った湖と、それを取り囲む森が見えて来た。

「天気と運がいいと、夜にはオーロラと星が同時に見れるんだ!
今日は曇りらしいから難しいかもしれないけどね!」

そこから諸々練り歩いて、2時間くらいで全ての名所を見て回った。
北極圏の境界を表す線、ここから諸外国に向けてサンタクロースからの手紙を送ることができる郵便局。
などなど、さっきのガイドブックには書いてなかったことをいっぱい見聞きできた、新鮮な2時間だった。

「さ、遅いけどそろそろお昼にしようじゃないか」
「ちょうどパーティをやってるようですね」
「え、これ飛び入りオッケーなの?」
「オッケーなんじゃないですかね?」
「当然オッケーさ!アイドルって聞いたらみんな驚くぜ!」
「んじゃお邪魔するか☆」

パーティに参加していた人たちは一部の地元の人を除いてみんな観光客で、
みんながみんな、それぞれ初対面のようだった。
フィンランドの人達ってすこし内向的なイメージがあったから、こういうパーティをするのは意外だった。
空席に2人して腰掛けると、向かいの席の男の人が目を見開いて。

「おいおい、もしかしてcugacugamiinじゃないかい?」
と言った。呼応するように隣の女性もはぁとたちをを見て
「ua!ほんとだー! ねえねえ、ko pampe'o miやってよ!"もうはなさないー"って!」

まさかまた同じ日本語を別の外国人の口から聞くことになるとは。
遠い地でもそこそこ有名なのは嬉しいけど、持ち曲じゃないってことまでは知らないのかな?

「お願いしますー!」
「おねがーい!」

たぶんはぁと達を知らない人も、その場のノリに合わせてコールを始めた。

「ほらほら、みんなお待ちかねだよ!」

アウリスさんもその輪に混じってはぁとたちを煽る。
どうやら選択肢は一つしかないみたいだ。

「やりましょうか、心ちゃん」
「あれ一度もリハしてないんだけどな。持ち歌じゃないし」
「サビのフレーズ以外では私たちの持ち歌の振り付けをアレンジしてぶっつけで合わせましょう。いけますよね?」
「……おっけー、いっちょかましちゃうぞ☆」

有名な、あのフレーズを繰り返すイントロを口ずさむと会場みんなそれに合わせてコールし始めた。
日本人ならわかるかもしれないけど、此処はフィンランドなのにすごいな。みんなよく知ってるなぁ。

~~~~~~
飛び入り参加のパーティでの小さなライブはコールとも歓声ともつかない熱狂の大盛り上がりの中でクライマックスを迎えた。

「フゥー!Kiitos!」
「ありがとー!」
「.a.FUfn! .a.FUfn! ki'ecai!」
「サイコーだったよ!!しゅがみんはクールだぜ!」

パッションとキュートなんだよなぁ。

ステージを降りて、熱狂の席に戻る。

「握手はオッケーだけどお触りははぁとアタック(物理)だぞ☆」
「すみませんちょっと席に戻りたいので……」
「さあさ、どいたどいた!お嬢ちゃんたちのショーはもう終わったんだ!
みんな、パーティの続きと行くぞ!道を開けておくれ!」

アウリスさんがはぁとたちを先導して、人をかき分けて席へ連れてってくれた。


「パーティ、意外に疲れますね」
「まさかあっちの方で有名だったなんて予想してなかったんだけど☆」
「サビの振り付けだけでも覚えといて正解でしたね」
「パイセンが意外にノリノリだったのにはぁとはびっくりしたぞ☆」
「心ちゃんも歌詞ばっちりだったじゃないですか」
「まあ何回も聴いてたら覚えるよな☆」
「日本語で歌ってる方が何人もいらっしゃって、そっちにもびっくりしました」
「ぶっちゃけはぁとたちより"あの2人"が有名なだけだよね……」
「それは今は言わないでおきましょうか……」
「おう……」

そのあとに続いて、ポルカとか、ボイスパーカッションとか、
やたらとノリのいい人たちによるちょっとした音楽祭になっていた。
観客側に回ったはぁとたちも、その場に合わせて踊ったり、唄ったりしてはしゃいだ。
ロヴァニエミは日の入りが早いから、あたりはもうすでに真っ暗。それでもしばらくはパーティが続いた。

「さて、料理もあらかた終わったところだし、そろそろお開きにするぞ!みんな、手伝っておくれ!」
「終わりみたいですね」
「たのしかった~☆」
「これは翌日の筋肉痛が怖いですね」
「言うな☆」

みんなが積極的に協力したからか、パーティ会場はもうすっかり片付いてしまった。
なんか現段階でもう若干二の腕が痛えんだけど☆

s/若干二の腕が/二の腕が若干

~~~~~~
パーティの後片付けをしてしばらく、はぁとたちは日中案内してもらった場所に来ていた。
はぁとたちが泊まってるところからしばらく歩いた場所。森の近くの凍った湖だ。

「うーん、ガスっちゃってますねえ……」
「んー……ちょっと星が見えるかな、
ってカンジだから、待ってたら星くらいは見えるんじゃない?」
「オーロラは無理そうですかね……」
「雲があるとダメらしいよ」
「うーん……」

「まあまあ。まだあと1週間……6日か。時間あるんだし、その間に見れると思うよ。
もう23時だし寝よーぜパイセン☆」
「この湖、渡りたくありませんか?」
「対岸じゃないと氷薄そうだよ」
「心さん、ちょっとあの森行きたくありませんか?」
「おい☆話聞いてたか☆」
「行きましょう心さん」
「おいマジかよ☆」

一旦小屋に戻って、菜々はLEDのランタンと厚めの手袋を持ってきた。

「はいこれ、つけてください」
「なんかでけー手袋だなおい☆」

……あれ、なんで3つ?

「なんで3つしかないの?」
「中で、こうするんです」

そう言ってはぁとの右手に手袋を被せて、そして菜々が左手をその中に入れてきた。
手のひらと手のひらが手袋の中で重なる。

「こうしたらあったかいですし、何より森ではぐれないじゃないですか♪」

ちょちょちょちょ、おい☆
……おい☆

きゅっ、と菜々が右手を握ってきた。

「……さ、行きましょ!日付跨がないうちに!」
「わ、待って、待ってったら」
「早く早く♪」


……マジかー☆

~~~~~~
森に入ってだいぶ時間が経った……気がする。
森の中って同じ木ばっかりで見飽きてくるし、木の間が広い森とはいえ灯りが心許ないと、多分すぐに迷う。
それでも菜々ははぁとの手を引いて、御構い無しと言わんばかりにガンガン前に突き進んでいく。
左手に見える湖を見失わないように気をつけてはいるけれど。

森の中で、菜々はずっと前ばかり見て、顔を合わせてくれなかった。

「結構歩きましたかね……あいた!」
「ちょっと大丈夫?」
「平気です、ちょっと木の根につまづいただけ……もう直ぐ着きますって。もっと遠く行きましょう」

そう言って菜々は、またずんずんと先へ歩いていく。

「引き返さないとまずいってー……絶対迷子になるよ?」
「大丈夫ですって。さっきの湖に戻るだけですから……
ここで左に行けば、多分さっきの場所から見て対岸の場所に出るんじゃないですかね?
……うふふ♪なんかいい予感がしてきました!」

木ばっかり見てて空を見てなかったから気づかなかったけど、木の間から見える空が、少し明るくなってる。
うそ?もしかして?

「ほらついた!あの小さい子屋がさっきいたところですよ!
わー!すっごい!さっきまで曇ってたのに!!
オーロラですよオーロラ!!緑!すっごい緑!
ピンクにも見えますよ!!星も見えます!!
今日は見えないかもしれないって思ってたのに!!きゃー!!」
「……わぁ」
「すごい!すごい!すごーーい!!感激ですー!」

ガスることもなく透明に透き通った夜空に、輝く満天の星とオーロラ。
ここまで文句ない完璧な景色ってある?

菜々はまるで小学生みたいにはしゃいで、凍った湖の上の、まだ誰も踏んでいない雪に思い切りダイブした。
勢いよくダイブするもんだから、はぁともそれに引きづられて雪の中に転がる。

雪の上で仰向けになった2人。
手袋の中で、菜々の手の暖かさがずっと続いてる。

「はぁー……見てくださいこの景色!」
「言われなくてもがっつり見えてるって」
「綺麗ですよねー……」


「……うん」


それだけしか言えなかった。

凍った湖の上に降り積もった雪に足跡をつけていく。はぁとたちの他には誰もいない。
誰も見ていない。はぁとと、菜々の2人きり。




「……ねぇ、菜々」

「はい?」




こっち、向いてよ。

菜々とはぁとの目が合った。


手元のランプが消えた。






オーロラは緑と紫を滲ませながら、音もなく揺らめいていた。









場所が場所だったし、ちょっと、冷たかった。

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今回も最後まで読んでいただき、本当にありがとうございました。
気温の低い日が続きますね。みなさん体調に気をつけてください。
インフルエンザの予防接種は受けましたか?私は受けました。
湿度はやつらの天敵ですから、寝る部屋で洗濯物を乾かすとちょうどいい湿度になるのでおすすめです。


以下は今回の参考楽曲です。

満ち潮の夜/ZABADAK
http://m.youtube.com/watch?v=Uur2OFIK5v0

かえりみち/ZABADAK
http://m.youtube.com/watch?v=7BdlbUhwS7g

北極を探しに/ZABADAK (これがタイトルの元ネタ)
http://m.youtube.com/watch?v=9cf-jIeza3c

スノースマイル/BUMP OF CHICKEN
http://m.youtube.com/watch?v=FgKSRWhxAXk

それでは、繰り返しになりますがありがとうございました。
次回もよろしくお願いします。

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