リーリエ「大好き」 (37)

(カントーに旅立ってから4年)

(マサキさんにも無事に出会うことが出来、母の治療の目処自体は経っていたのですが)

(結局、アローラに帰るタイミングを見失っていました)

(今、どうしてるのでしょうか、兄さんは、ハウさんは)

(博士は、博士の奥様は、島巡りで出会ったいろんな人達は)

(…そして)

リーリエ「…」

リーリエ「…あ」

リーリエ「…見えてきました」

リーリエ「…アローラ…!」

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リーリエ「…んしょっと…」

リーリエ「…」

リーリエ「…うぅ…事前に伝えてなかったとはいえ…寂しいものですね…」

「…おい」

リーリエ「ひっ!?」

「…久しぶりだな」

リーリエ「…兄さん?」

グラジオ「…」

リーリエ「…どうして?」

グラジオ「…」

グラジオ「お前と来たら…研究に夢中なのか知らないが、連絡ひとつまともによこさずに…!」

リーリエ「…あ、いやその…」

グラジオ「ようやくまともな荷物が届いたと思ったら何だあれは」

リーリエ「…えーと…分離機です… 」

グラジオ「…知っている…そういう意味じゃない」

リーリエ「…あ、はは」

リーリエ(…兄さん…怒ってる…?)

グラジオ「もっと連絡を寄越せと言ってるんだ…!今日だって俺が居なかったらお前はどうしてたんだ」

グラジオ「…ったく」

リーリエ「…」

リーリエ「兄さんにだけは言われたくないですけれどね」

グラジオ「…んぁ!?」

リーリエ「初めに私たちから離れて連絡ひとつ寄越さず心配させたの兄さんの方ですし」

グラジオ「…ぐうっ…!」

リーリエ「そもそもお母様が大変な時期に居なくなって、私はもうダメかと思いました」

リーリエ「私たち家族はこのまま崩壊するんだって、流した涙で枕を濡らした夜は、両手の指じゃ足りません」

グラジオ「うおっ…!!」

リーリエ「アレやめたんですか?手のひらを右手にかざすあれ」

グラジオ「ぐぁぁっ!!!!」

リーリエ「…」フンス

グラジオ「…い、言うようになったじゃないか」

リーリエ「…ともあれ、確かに今回は私のミスです…」

リーリエ「…迷惑をかけて…すみません」

グラジオ「…良い」

リーリエ「…それよりどうして今日が分かったんですか?」

リーリエ「急な休暇だったのに…」

グラジオ「…」

グラジオ「毎朝ここによるのが、俺の日課だ」

リーリエ「…」

グラジオ「見るな!」

リーリエ「…ふふ」

リーリエ「兄さん、今日は…」

グラジオ「そろそろ休みでももらおうと思っていたところだ、財団は意外とブラックだからな」

リーリエ「…ふふ、ありがとうございます」

グラジオ「それにしても、お前が送ってきたあれ、お前が作ったのか?」

リーリエ「まさか、理論は確かに私も加わりましたけど、実際に作ったのはマサキさんです」

グラジオ「…理論に加わるだけでも、凄いと思うんだがな」

リーリエ「いえいえ、マサキさんは本当に素晴らしい方です」

リーリエ「例え理論が存在してても、形にできなければ意味がありませんから」

グラジオ「…そうか」

リーリエ「…それで、その後…お母様の様子は?」

グラジオ「今はもう、普通に食事も出来ている」

グラジオ「まだアレが取れてはいないが、取れるのも時間の問題だろうな」

リーリエ「…良かった…」

グラジオ「…それにしてもお前、変わったな」

リーリエ「そうですか?どの辺が?」

グラジオ「…昔は、口だけで何も出来ない奴だった」

リーリエ「かきーん」

グラジオ「…?」

リーリエ「その言葉をそのまんま打ち返しました」

グラジオ「…」

リーリエ「本当に、子供でしたね、私たち」

グラジオ「…ああ」

グラジオ「子供同士で、似た者同士、タチが悪い」

リーリエ「お母様が暴走してしまったのも、頷けます」

リーリエ「…大人に、ならざるを得なかったんでしょうか」

リーリエ「お母様に追いつくために、お母様の支えになるために」

グラジオ「…フッ」

リーリエ(…あ、今のは昔っぽいな)

グラジオ「どこか行きたいところはあるか?」

リーリエ「…そうですね」

リーリエ「色んな人に会いたいです」

グラジオ「…」

リーリエ「島巡りで出会った人達や、お世話になった人たち」

グラジオ「…そうか」

リーリエ「ええ」




ククイ「…」

ククイ「…はー、ダメか、どうにかしてUBの技をポケモン達に覚えさせたいけれど上手くいかないな」

ククイ「ポケモンとUBの違いか…」

ハウ「まずUBとポケモン達が仲良くならないと無理じゃないかなー?」

ククイ「そうかなぁ…そうだよねぇ」

コンコン

ククイ「ん?ハウ」

ハウ「はーい」

ククイ(モンスターボールをベースとしたウルトラボールでUBは捕獲できる)

ククイ(つまりやっぱりUBとポケモンは近似種という事か)

ククイ(そもそもこっちの環境に適応できている時点でその推測はついてる)

ククイ(ルナアーラのような例もいるしね)

ククイ(だとしたら )

ハウ「わっ!?」

ククイ「…?」

ハウ「博士ー!」

ククイ「どうしたんだい?ハウ…わっ!」

リーリエ「お久しぶりです、博士」

ククイ「リーリエ!?」

ククイ「どうしたんだい!?来るなら連絡くらい寄越しても…!」

リーリエ「あはは、もう兄さんに怒られました」

グラジオ「久しぶりだな、ハウ」

ハウ「うん、グラジオも、リーリエも!」

リーリエ「休暇を貰ったので、アローラに行こうと思って」

ククイ「…ほんと君達兄弟は思いつきで行動するなぁ…」




ククイ「それで、研究の方はどうだい?」

リーリエ「はい、順調です」

ククイ「だろうね、以前君が送ったあの装置、思わず目が丸くなったよ」

リーリエ「あはは…殆どはマサキさんですよ」

ククイ「UBとポケモンの差異を検出してから、分離、抽出」

ククイ「言葉で言うのは簡単だけれど、そうそう現実に出来るものじゃない」

ククイ「やったじゃないか、リーリエ」

リーリエ「…えへへ…ありがとうございます」

ククイ「どうするんだい?こっちに戻ってくる気はないかな?」

ククイ「今度は助手とは言わないよ、正式にうちで働いてもらいたいんだけれど」

リーリエ「…ごめんなさい」

ククイ「…」

リーリエ「カントーでポケモンさんの研究をするうちに、私はもっとポケモンについて知りたいって思ってしまったんです」

リーリエ「アローラのポケモンさんも素敵ですけど、カントーのポケモンもすっごく素敵なんですよ」

ククイ「はは、研究熱心なのは両親譲りかい?」

リーリエ「あはは…」

ククイ「残念だけれど仕方が無いね、ロフトは残してあるからいつでも帰っておいで」

リーリエ「はい!」

ククイ「…それにしても…」チラッ

リーリエ「?」




グラジオ「またあいつに負けたのか」

ハウ「うん、防衛戦する度に強くなってるよー、ビーストブースト持ってるんじゃないかってくらい」

グラジオ「俺が手合わせしてやろうか」

ハウ「あはは、冗談はいいよー」

グラジオ「はははは…は?」

ハウ「アローラで2番目に強い僕の相手はチャンピオンしかいないよ」

グラジオ「なんだと?」

グラジオ「俺がお前より弱いということか?」

ハウ「…?」

グラジオ「シルヴァディ!」

ハウ「わわわ!」

グラジオ「なら教えてやる、昔の俺じゃないということをな」



リーリエ「…あはは…」

ククイ「顔を合わす度にあの調子さ、リーリエの爪の垢でも煎じて飲んでもらいたいよ」

ククイ「全く、いつになっても子供だなぁ」

リーリエ「…子供、ですか?」

ククイ「…?」

リーリエ「…そう、ですよね、やっぱり私たちはまだまだ子供…」

ククイ「どうしたんだい?」

リーリエ「…いえ…」

ククイ「背伸びする必要は無いよ、子供は子供らしく、ね」

リーリエ「…」

リーリエ「…でも、あの人は大人だったじゃないですか」

ククイ「…あの人?」

リーリエ「…」

ククイ「…あぁ…彼?」

リーリエ「…いつだって、周りの人のことを考えて、誰よりも頼りになって…いつの間にかみんなに慕われて」

リーリエ「…いつの間にか、手の届かないところに行っちゃって…」

ククイ「…」

ククイ「好きなんだねー」

リーリエ「はい…って、え!?」

ククイ「…くっくっ…しかし、彼が大人かぁ」

リーリエ「…」

リーリエ「…今、あの人は何をしてるんですか?」

ククイ「防衛戦に応じながら、各地のチャンピオンと今後の以降の話し合い」

リーリエ「話し合い?」

ククイ「カントーにはジムがあるのは知ってるかい?」

リーリエ「…あぁ、はい」

ククイ「そのジムをアローラにも作らないかって話」

リーリエ「…」

ククイ「けれど彼は反対してね、「僕が強くなれたのは、アローラの島巡りがあったからだ」って」

ククイ「…嬉しい事言ってくれるよね」

リーリエ「…やっぱり、大人じゃないですか」

ククイ「…今度帰ってくる時は、事前に連絡寄越してね」

ククイ「彼、後日来たって聞いたら悔しがると思うから」

リーリエ「…そう、ですね」




ハウ「僕の勝ちー」

グラジオ「いや、引き分けだ!」




ククイ「…さてと」

リーリエ「…?」

ククイ「いつまでここにいるんだい?」

リーリエ「…えーと、明日の朝には帰らないと…」

ククイ「そっか、そしたら今夜はバーベキューでもしようか」

ククイ「彼は今遠い所にいて帰れないけれど、せめて残った僕らだけでもリーリエの無事を祝おうと思ってね」

リーリエ「いいんですか?」

ククイ「もちろん、背伸びなんてせずに存分に楽しんでよ」

リーリエ「はい!」

グラジオ「シルヴァディ、大丈…うわっ!舐めるな!」

ハウ「あはは、仲いいね」

リーリエ「兄さん」

グラジオ「ちょ、この…!こら!…ん?なんだ、リーリエ」

リーリエ「後一つだけ、行きたいところがあるんですけど」

グラジオ「…あ、母様のところか」

リーリエ「はい」

グラジオ「そうだな、顔くらい見せておかなくちゃな」

ククイ「グラジオ、夜にまたおいで、バーベキューするから」

ハウ「バーベキュー!?やったー!」

リーリエ「あはは…」





グラジオ「博士と何の話をしてたんだ?」

リーリエ「…あ、えっと…その…」

グラジオ「あいつの事か…」

リーリエ「…」

グラジオ「だったら何で連絡を寄越さない」

リーリエ「怖かった、のかもしれませんね」

グラジオ「怖い?」

リーリエ「手の届かないところに行ってしまった彼に、なんて声を掛けていいのか…」

グラジオ「…」

リーリエ「…臆病ですよね、こんな所は…変われていません」

グラジオ「…好きなのか…?」

リーリエ「…!」

リーリエ「すっ、好きじゃないです!あくまで友達として…!」

グラジオ「…」

リーリエ「…好きじゃ、ない…ことも無い…ことも…無い…ことも無いです」

グラジオ「…」

グラジオ「その内あいつの尻でも叩いてカントーに向かわせる」

リーリエ「え?」

グラジオ「後悔し続けてたんだ、あいつも、お前も」

リーリエ「…???」

グラジオ「…まぁいい、そら、着いたぞ」





ルザミーネ「…」

ルザミーネ「…」

コンコン

ルザミーネ「…どうぞ」

グラジオ「…」

ルザミーネ「…あら?どうしたの?グラジオ…?…!」

リーリエ「…あの…その…」

ルザミーネ「…リーリエ…!」

リーリエ「…えぇっと…お久しぶり…で…きゃっ!」

ルザミーネ「…」ギュウッ!!

リーリエ「…お、お母様…!?」

ルザミーネ「…全く、あなたったら連絡ひとつ寄越さないんだから…」

リーリエ「…い、痛いです…お母様…」

リーリエ(…でも、あったかい)

リーリエ「…ごめんなさい、お母様…リーリエは元気です」

ルザミーネ「…うん、うん…」

グラジオ「…」

ルザミーネ「…グラジオ、あなたもおいで」

グラジオ「…は?うわっ!?」

ギュウッ!!

グラジオ「ちょ、母様!お、俺はいい…って!」

ルザミーネ「…」

ルザミーネ「…改めて、ごめんなさいね、リーリエ、グラジオ」

ルザミーネ「…そして、ありがとう」

グラジオ「…」

リーリエ「…」

ルザミーネ「あなた達だけは、どこにも行かないでね」

グラジオ「気持ち悪いな、母様」

ルザミーネ「ふふ、これが普通なの…今までこんなことすらしていなかったのね」

リーリエ「…」

ルザミーネ「…あの人の代りに、UBを追いかけて、いつしか大切なものを見失っていたわ」

ルザミーネ「…生きてくれて、ありがとう、2人とも」

リーリエ「…」

グラジオ「そろそろ離してくれ」

リーリエ「もう、兄さんたら…」

グラジオ「…それで、母様の調子は?」

ルザミーネ「…ええ、リーリエのコレでもうすっかり元気よ」

リーリエ「…良かった…」

ルザミーネ「それにしても凄いわ、リーリエ」

ルザミーネ「将来はUB研究者ね」

グラジオ「勘弁してくれ…二の舞にさせるつもりか…」

ルザミーネ「ふふ、冗談よ」

ルザミーネ「リーリエ、あなたとっても綺麗になったわね」

リーリエ「そ、そうかなぁ…?」

ルザミーネ「ええ、私譲りでね」

グラジオ「…」

ルザミーネ「連絡をくれないから私のこと嫌いになっちゃったのかと思ったじゃない」

リーリエ「…そんな…」

グラジオ「母様」

ルザミーネ「あら、ごめんなさい、ついつい沢山話したくなっちゃってね」

ルザミーネ「リーリエ、あなた、fallって知ってる?」

リーリエ「fall…?」

グラジオ「お前が帰ってきた時に、この話をしようと母様と決めていたんだ」

ルザミーネ「fall…ウルトラホールに飲み込まれて、あの空間に長く浸っていた人間をそう呼ぶの」

ルザミーネ「…だから、私もfallなのよ」

グラジオ「UBはその染み付いた匂いを辿って襲いかかってくる」

グラジオ「全てのUBはあいつが捕獲したが、まだ安全とは言いきれない」

ルザミーネ「リーリエ、私たちはあなたがカントーで研究している間、このfallについて調べていた」

ルザミーネ「そして、つい最近、匂いを消す方法を生み出したの」

リーリエ「…」

ルザミーネ「さ、リーリエ、UBに目をつけられる前に、fallを…」

リーリエ「あの、その…」

ルザミーネ「…?」

リーリエ「その匂い、どうしても消さないといけませんか?」

ルザミーネ「…」

グラジオ「…!?」

グラジオ「当たり前だろ!そのせいで襲われた人間だって居るんだぞ!」

リーリエ「で、でも…!」

ルザミーネ「いいわ、でもどうして?あなたはどうしてfallで居たいの?」

リーリエ「…別に、襲われたいわけじゃないんです…」

リーリエ「…ただ、これは私にとってお母様や皆に、誇れるものだと思うんです」

リーリエ「…やっと、少しだけれど、何か出来たその証」

ルザミーネ「…」

グラジオ「そんなもの…もうとっくに…!」

ルザミーネ「分かったわ」

グラジオ「…母様!?」

ルザミーネ「あなたがそういうのなら仕方が無いわね」

ルザミーネ「でも、いつでもfallを止めたくなったらここへ来なさい」

リーリエ「…はい」

グラジオ「待て待て!リーリエ…!お前…!」

ルザミーネ「グラジオ、もうリーリエも子供じゃない」

ルザミーネ「自分の行動に、責任が持てるのね?覚悟は出来てるのね?」

リーリエ「もちろんです!」

ルザミーネ「…ふふ、逞しくなったわ」

ルザミーネ「また何かあったらいらっしゃい、私はいつだってあなた達の味方よ」





グラジオ「信じられないな」

リーリエ「もういいじゃないですかその話は…」

グラジオ「…全く、母様も何を考えているんだか」

リーリエ「…それに…」

グラジオ「…?」

リーリエ「fall…でしたっけ…?それを止めてしまったら…思い出まで消えてしまうような気がしてしまって…」

グラジオ「思い出?」

リーリエ「…あの人との、あの世界での出来事…を」

グラジオ「…お前…もしかして恋愛脳なのか?」

リーリエ「そ、そんなんじゃないです…!」

グラジオ「ゾッコンじゃないか?」

リーリエ「ゾッコンじゃないです!」






ククイ「やあ、今日の主役の登場だ」

リーリエ「…あ」

ハウ「リーリエー!集まれるだけ集めてきたよー!」

リーリエ「み、皆さん…」

グラジオ「まだちょっと早くないか?」

ククイ「まぁまぁ、バトルだってしたいだろ?」

グラジオ「…!」

ククイ「…見てあげるよ、グラジオ」

グラジオ「…フッ、望むところだ」




「…はぁ」

リーリエ「…あ」

「あ、リーリエ、帰ってきたんだったね」

リーリエ「…あの、お久しぶりです」

「うん、無事で何よりだよ」

「見なようちの旦那、まるで子供みたいにはしゃいじゃってさ」

リーリエ「…」

「ポケモン研究者って言っても、根はポケモンバカなんだねえ」

リーリエ「あはは…」

「っと、そういやもう1人ポケモンバカがいたっけ」

リーリエ「…?」

「チャンピオンだよ」

リーリエ「…あ」

「旦那が言ってたよ、リーリエはチャンピオンが大人に見えてたって」

リーリエ「…でも、それは本当の事じゃないですか?」

「いやいや、そんな事ないって」

「彼も、ポケモンが好きなだけさ」

リーリエ「…」

「ね、リーリエ」

リーリエ「はい…」

「難しいことなんて、言えないけどさ、大人も子どもも関係ないと思うよ」

「リーリエは、大人さ、だけど私にとっては子供みたいなもんだ」

リーリエ「…」

「次会ったらさ、今度は後悔しないように、行動しなよ」

リーリエ「…な、何を…」

「好きなんでしょ?」

リーリエ「…だ、だからっ!」

「自分の気持ちを認めるのも、大人の条件だとおもうけどなー」

リーリエ「…」

「はは、説教臭いこと言っちゃったね、さ、楽しんできなよ」

リーリエ(なんにも変わっていませんでした)

リーリエ(取り巻く環境も、季節も、年齢も、見た目も)

リーリエ(それらは確かに驚くほどに変わっていましたけれど)

リーリエ(皆さん自身は、変わっていませんでした)

リーリエ(アローラは変わらず、私を受け入れてくれました)

リーリエ(心配するほどの事じゃなかったのかなって、思います)

リーリエ(もしかしたら、私の悩みなんて、大したことなかったのかなって…)

リーリエ(怖かったんです、変わってしまっていたらどうしようって)

リーリエ(…でも、皆暖かくて、優しくて…)

リーリエ(…やっぱり、いつまでもここに居たいって思えて…)









ククイ「…やあ、リーリエ」

リーリエ「あ、博士」

ククイ「バーベキューはどうだった?たのしめたかな」

リーリエ「はい、とっても」

ククイ「…皆寝てしまったね」

リーリエ「…はい、でも、私は眠れなくて…」

ククイ「時差もあるんだし、そうかもね」

リーリエ「…」

ククイ「君が帰ってきてくれて、無事でいてくれてよかったよ」

リーリエ「…」

ククイ「送り出した時、本当は引き留めようかと思ったんだ」

ククイ「でも、君の目を見たら、そんな言葉どこかに行っちゃった」

リーリエ「…私の目、ですか?」

ククイ「…」

ククイ「母親譲りの意思の強さと、兄譲りの行動力さ」

リーリエ「…」

ククイ「リーリエ、君は本当は、とっても強い人間だ」

ククイ「ただ、その事を君自身が知らなかっただけなんだ」

リーリエ「…」

ククイ「…強く願うといい、そして口に出して見るといい」

ククイ「君はもう、1人じゃないんだから」

リーリエ「…あの…っ…博士…!」

ククイ「…おや、僕はもう寝るよ」

ククイ「…ふふ、月が落ちてきそうなくらい、いい夜だ」

リーリエ「…あ…」

バタン

リーリエ「…行っちゃった」

リーリエ「…月が…落ちてきそうなくらい…かぁ…」

リーリエ「…」

リーリエ「…って、え!?」

リーリエ「お、落ちてきてる!?」

リーリエ「きゃあっ!?」

リーリエ「…」

リーリエ「…」

リーリエ「…一体…」

「マヒナペーアッ!」

リーリエ「…っ!!!」

リーリエ「…この…」

リーリエ(…この声は…この…)

「…リーリエ」

リーリエ「…っ!!」

「…帰ってきてるなら、言ってくれても良かったのに」

リーリエ「…あ…あ…」

「…ほしぐもちゃんが、君の匂いを見つけたんだ」

「…辿るのは簡単だった、僕と同じ匂いだったから」

リーリエ「…」

「…久しぶり、リーリエ」

リーリエ「…」

リーリエ(…口に、出さなきゃ)

リーリエ(…でも、何て?)

リーリエ(何をいえばいいの?私は…彼に何を伝えたいの…?)

「…リーリエ…?」

リーリエ(…もう、後悔したくない)

リーリエ(…後悔したくないなら…私は何て…!)




リーリエ「好きです」

「…!?」

「マヒナペ」

リーリエ「あ、ちょ、あの…!!違う…!!いや…違くないけれど…!!」

「…」

「マヒナペ、マヒナペー?」

リーリエ「…その…あの…!!」

「先に言われちゃった」

リーリエ「…!!」

「リーリエ、好きだ」

「やっと、伝えられた」

「僕は、君が好きだ」

リーリエ「…」

リーリエ「…」

「君が居なくなって、後悔してた」

「あの時、言葉を伝えられたら、どんな返事だったとしても、受け止められてたのにって」

「でも、会えなかった時間が、肯定以外の答えを塗りつぶした」

「もっともっと、君が好きになった」

リーリエ「…」

リーリエ「…そんなに…喋る方でしたっけ…?」

「頑張ってるんだ、好きだから」

リーリエ「…」

「君が好きなんだ、リーリエ」

リーリエ「…」

リーリエ「…私は…」

リーリエ「……」

リーリエ(…私はもう、子供じゃない…)

リーリエ(…けれど、大人になりたいわけでもなかった)

リーリエ(この人と、並びたかったんだ)

リーリエ「…私も」









リーリエ「大好き」












リーリエ(結局、その後何があるわけでもなく、彼はすぐに帰っていってしまった)

リーリエ(思いを告げて、告げられて、それで何が起こることもなく)

リーリエ(彼はまたチャンピオンとして、私はポケモン研究者として別々の道を歩むのだ)

リーリエ(…少しだけ、ううん…とっても寂しい)

リーリエ(でも、悲しくはない)

リーリエ(だって、またいつだって会えるから)

リーリエ(同じ空の下に、私たちは生きてる)

リーリエ(…朝は太陽が強く輝いて、夜は月が落ちてきそうなほど綺麗)

リーリエ(そんなアローラに、いつかまた戻ってこよう)

リーリエ(今度は、彼に連絡して)





リーリエ「じゃあね!皆、アローラ!」

「「「アローラ!!!」」」

リーリエ「皆さん、大好きです!」

おしまい
リーリエで抜きました
両手の指じゃ足りません

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