いつからでしょうか、自分が不幸だと思い始めたのは

それまでも折り畳み傘を持ってないときに限って雨に降られたり、学校の行事のたびに風邪を引いてしまったりと

不幸だな…と思う時はありました

けど、はっきりと意識し始めたのは…二度目の倒産を経験した時でしょうか


だって中々無いでしょう？所属事務所が倒産した経験があるなんて…

一度不幸だと思ってしまってからは酷かったですね

どんなに小さな事でも

「やっぱり、私は不幸なんだ…」「不幸を呼び込む体質なんだ」って

そういう風に思い込むばっかりで…

今考えると、そう思いたかっただけなのかも知れませんね

自分は不幸な人なんだ、だから幸せになれないのは仕方のないことなんだって

不幸を逃げ道にして

…可笑しいですよね？幸せになりたいって思っているのに

この事務所に移籍してきた時も、心の奥では少し思ってたんです

「ああ、ここもいつもみたいに潰れちゃうのかな」って

…けれども、待っても待っても倒産しないんですよこの事務所は

…倒産してくれなかったんです

そうなるともう悩みますよ、なんで、なんで？どうしてって

…「なんで私がいるのに倒産しないの？」って

その時に気づいたんです、私、自分を不幸なんだと思っていたいだけなんだって

もう本当に恥ずかしかったですよ

幸せになりたいって願っていながら、それと同じだけ不幸になりたいって願っていたなんて

恥ずかしくって、悔しくって、悲しくって…申し訳なくて

夢に向かって疑うことなく努力している彼女たちが眩しすぎて


そんな彼女たちを無意識だったとしても邪魔をしようとしていた自分が惨めで…

それから一晩中泣いて、泣いて、泣いて、泣いて…朝になって

空っぽになった頭で思ったんです

「不幸なままじゃいられない」って

居ても立っても居られなくなって、事務所まで走りました

途中で靴紐が切れて転びそうになったりしましたけど

そんな些細な事、気になりませんでした

事務所には朝早くにも関わらず結構な人数がいました

みんなが驚いた顔で私を見つめてきます

そりゃそうですよね

突然、息を切らして入ってきて

泣き腫らした眼をしているんですもの

それでも、みんなを見つめ返して

精一杯、大きな声で言いました

今までの幸せをじっと待っていた私とさよならして

アイドル「白菊ほたる」として幸せを掴み取るんだって！

こんな私でもシンデレラになれるって事を証明するんだって！

「ごめんなさい！そして、これからよろしくお願いします！」