智絵里「こ、これ以上紗枝ちゃんにPさんの匂いを嗅がれたら……た、大変なことに!」 (23)

――撮影現場

智絵里「どうせ死ぬなら……最後、は……」

紗枝「くろーばー……くろーばぁー!!」


智絵里「……」

紗枝「……」


<ハイオッケー!


智絵里「ふぅー……」

紗枝「はぁ」ケホッ


……
…………

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――控え室

智絵里「Pさん、わ、私の死ぬ演技、どうでしたか?」

P「うん、今回もちゃんと死んだように見えたわよ」

智絵里「やった……えへへ」

紗枝「智絵里はんの役、2週間に1回は死んどるような気ぃがするけど……」

智絵里「次の台本でも、やっぱり生きてたみたいだからね……あはは」

P「出オチキャラみたいなものでしょ。ほら2人とも、今日の撮影も終わりだし、早く撤収して事務所戻るわよ」

智絵里「あ、はーい」

紗枝「早く着替えんとあきまへんなぁ」ケホッ、ケホッ

P「あら、紗枝あなた風邪ひいてる? 撮影中も咳してたけど……」

紗枝「なんもありまへんよ。乾燥した季節やし、ほんのちょっぴり咳き込んで……」ケホッ

P「無理しちゃダメよ? ちゃんと温かくして、寮に戻ったら部屋で加湿器使いなさいよ?」

紗枝「はぁい」ボフッ!

P「っと、ちょっと紗枝いきなり抱きつくのやめなさいって」

智絵里「さ、紗枝ちゃん!」

紗枝「うちがぷれぜんとしたこーと、ちゃあんと着てくれはって嬉しいわぁ」スンスンスン

智絵里「だ、ダメ……そんなにPさんの臭い嗅いだら……」

智絵里(男の人の臭いだって気付かれちゃう可能性が……!)

紗枝「Pはんのええ匂い嗅いで、この前使いきったこんち気も溜めなおしておきまへんと」スゥー……

P「私はそのこんち気っていう存在が未だに何のことなのか分からないわよ」

紗枝「ふふふっ」スン、スン、スン……ケホッ


……
…………

――翌日、某スタジオ

司会「さぁ、智絵里ちゃんがいま地上8Mに設置している鉄骨を渡りきる、渡りきるぞぉー!!」

智絵里「うっ、うう……あと少し……」



P(幸子は渡ったけど、智絵里も大丈夫そうね……)

prrrrr!

P「ん……すみません、少し外します」

スタッフ「了解でーす」


智絵里「う、う……うわあああああああ!!」ズルッ!!

司会「おーっと! 智絵里ちゃんゴール目前で落下してしまったぁー!!」


……
…………

――通路

P「もしもし裕美、どうしたの?」

裕美『あ、Pさんお仕事中にごめんなさい……あのね、紗枝ちゃんが風邪ひいて熱が出ちゃったみたいで……』

P「あら、あの子昨日の撮影でも咳き込んでたし……いま寮に誰かいる?」

裕美『早苗さんが早朝撮影終わらせてもう少しで帰ってくるって言ってたけど……』

P「早苗さん帰ってくるか……裕美、あなたもう少しでラジオ局行かなきゃダメでしょ?」

P「私のほうで早苗さんに電話して、紗枝を病院に連れて行ってもらうようにお願いしておくから、あなたはお仕事行ってきなさい」

ピッ!

P「うーん、風邪かぁ……この寒い時期だし、インフルじゃなかったらいいんだけど……」

P「……とりあえず早苗さんに電話しておかないと」ポパピプペ


……
…………

――数時間後、某病院


医者「インフルエンザのA型ですね」

早苗「あちゃー……」

紗枝「うぅ……」ケホッ

早苗「こりゃ女子寮組は気をつけないとねぇ……プロデューサーとちひろさんに連絡しておかないと」

紗枝「早苗はん、すんまへんなぁ……」ケホッ

早苗「まー仕方ないわよ。外で誰が振り撒いているか分かんないし……紗枝ちゃんは寮に戻ったら部屋から出ちゃダメよ?」

早苗「他の子もインフルになり始めたら事務所も一旦閉めなきゃダメだろうし……あー、シメるのは好きだけどそっち閉めるのは痛いわねぇ」

紗枝「……」ケホッ


……
…………

――夕方、事務所

ちひろ「というわけでうちの事務所からインフル患者が出たわけですよ」

P「とりあえず親御さんには連絡入れておきましたけど……後は寮の子たちにはマスクつけるように言っておかないと……」

智絵里「紗枝ちゃん、大丈夫かな……」

P「智絵里、あなたも気をつけなさいよ? この前紗枝と一緒に収録したばかりだし、調子が悪かったらすぐ言って頂戴」

智絵里「は、はい……でも私は最近、別の要因で病気か怪我しそうですけど……」

智絵里(で、でも……ちょっと、ヒドイかもしれないけど、しばらくの間なら紗枝ちゃん、Pさんの臭いのことは忘れてくれそう……)


ちひろ「とりあえず今週の紗枝ちゃんのお仕事なんですけど……」

P「代役どうしよっか……空いてる子いるかなぁ」


智絵里(病気が流行って事務所が閉鎖するのも大変だけど、Pさんが男の人だってバレて事務所が永久閉鎖するよりは……)


……
…………

――翌日、女子寮(紗枝の部屋)

紗枝「……」ケホッ、ケホッ

ヴヴヴヴヴ……

紗枝「……」

ヴヴヴヴヴ……

紗枝「……」

ヴヴ……

紗枝(また誰かからのめーるや……送ってもらえるんは嬉しいけど、いまは返事を返すのも億劫やし……)

紗枝(はぁ……お仕事、どなしいよ……Pはん……)

コンコンコンコンッ!!

P「紗枝ー、起きてるー?」

紗枝「P、Pはんっ」ビクッ!

P「あ、声が聞こえた。入っていい?」

紗枝「あ、う……だ、大丈夫……やけど……」ケホッ

紗枝(ちょうどPはんのこと考えとったところやったのに……)

……
…………

――数分後

P「38度9分か……もうお昼ご飯食べたかしら?」

紗枝「……」フルフル

P「そっか。それじゃこれ食べなさい。さっき食堂の台所借りて作って来たから」ガサッ

紗枝「お粥……」

P「ご飯食べるのも億劫でしょ? 味噌と梅干、どっちがいい?」

紗枝「お味噌……」ケホッ

P「はいはい、ちょっと待ってて……はいよし、マスク外して身体起こしなさい」

紗枝「んっ……」

P「ほら、あーん」スッ

紗枝「……恥ずかしいわぁ」

P「何言ってんの。ご飯食べないと薬飲めないでしょう? ほら、あーん」

紗枝「……あー」

P「もっと口開けなさい……はい、ちゃんと噛んで食べなさいね」

紗枝(Pはん……うちがお仕事休んで、迷惑掛けてるのに……)モグモグ

P「全部……は食べきれないわね。まぁもう少しくらいは頑張って食べなさい」

P「あとは……ほら、プリン買ってきたからこれも食べてね」

紗枝「ん……」モグモグ

紗枝(Pはんのご飯……おいしゅうてなぁ……)


……
…………

――更に十数分後

P「さてと、ご飯は食べさせて薬は飲ませたし、一応顔と首周りと手くらいは拭いたし……」

P(それ以上拭くと犯罪になるし……まあ後は早苗さんに様子見てもらってお願いするか)

紗枝「Pはん……もうお仕事いかはるん?」

P「ちょっと出ておかなきゃならない仕事もあるからね。紗枝も、ちゃんと寝て治しなさいね?」

ギュッ……

紗枝「……」ケホッ

P「何あんた、退屈なの?」

紗枝「1人やとかなんわぁ……Pはん、あとほんの少し……」

P「……」

P(最近変な子になってきたと思ったけど、こういうところはまだまだ子どもね……)クスッ

P「ほら紗枝、頭少し上げなさい」スッ

紗枝「ん……」

ポフッ

紗枝「Pはんの膝枕……」


P「よい子はねんねしなー……なんて、そんな歳じゃないか、紗枝も」ポン、ポン

紗枝(柔らかい……Pはんの膝……)

紗枝「やっぱりPはん……お母はんみたいやわぁ……」

P「はいはい、私もお母さんだったりお父さんだったり忙しいわねホント」

紗枝「それに……ええ匂い……」スン……

P「弱っててもまだそれやるの……」

紗枝(やっぱりうち……Pはん……)

紗枝「……」スー、スー……


P「……寝ちゃったみたいね。さてと、私も仕事に戻らないと」



ガタッ!


……
…………

――同時刻、女子寮(廊下)

智絵里(Pさん……紗枝ちゃんのお見舞いに来たけど大丈夫かな……)コソッ

カチャッ……

智絵里「!?」



P「はいはい、私もお母さんだったりお父さんだったり忙しいわねホント」

紗枝「それに……ええ匂い……」



智絵里(さ、紗枝ちゃんがPさんに膝枕をしてもらって……う、うらやま……じゃなくて……!)

智絵里「ま、まさか紗枝ちゃん……」

ポワポワポワポワ……



紗枝『こうやって風邪をひいてPはんの油断させておけば……おやまぁ、Pはんのこん匂い……』

紗枝『男ん人の匂いかもしれへんなぁ……ほなら通報せな……けほっ、けほっ! うぇっ、けほっ!』




智絵里(さ、紗枝ちゃん……まさかそこまで計算して……!)ガタッ!

智絵里「な、何か対策を立てないと……」



……
…………

――数日後、事務所

紗枝「……」スン、スン、スン、スン……

P「紗枝ー」カタカタカタッ

紗枝「んー……」スン、スン、スン……

P「重い」カタカタカタッ……

prrrr!!

ちひろ「はいもしもし」ガチャッ

紗枝「んーぅ……」スン、スン、スン……


ガチャッ

智絵里「お、おはようご……!」ビクッ!

P「あなたが私の頭にしがみ付いてくるようになってから首が変な方向に曲がるようになってきたんだけど」

紗枝「んーんー……」スン、スン、スン

智絵里「さ、紗枝ちゃ……」


紗枝「……」チラッ

智絵里「……!?」


紗枝「……んー」スゥー……スン、スン

智絵里「あ……あ、あ……」ガタッ……

智絵里(い、いま紗枝ちゃんの顔が……)

紗枝「Pはんの匂い……んーこんち気が溜まるわぁ……」スンスンスン


智絵里(紗枝ちゃんの顔が……雌の顔に……!)ガクガクブルブル

智絵里「こ、これは……別の意味で、ま、マズイ……!」


――その後1ヶ月、智絵里は不測の事態に備えてPの背後から離れることはなかった。

おしり

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