男「絶対に失敗しない告白のセリフを考えてほしい」女「告白相手と一緒に?」 (23)

男「ちなみにこういう告白に弱い、とかある?」

女「ちょっと待って」

男「……」

女「……」

男「……」

女「……」

男「できれば2、3個に絞ってもらった方が……」

女「いや、今取捨選択の途中じゃなくて…………」


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女「あの、一旦整理していい?」

男「どうぞ」

女「えっと、私は今日、男君に呼び出されたんだよね?この体育館裏に」

男「うん」

女「学期末の終業式に」

女「今はまだ、ただのクラスメイトでしかない私たちは、順当にいけば次に会うのは夏休み明け」

女「そんな状況を打破できるかもしれない今日という日に」

男「そうだね」

女「男君から、私に、大事な話があるって、顔を赤らめながら言ってくれて!」

男「さっきは緊張したよ」

女「この体育館裏に!」

男「来てくれてありがとう」

女「それでその大事な話っていうのは……」

男「君に告白したいんだけど、いいセリフが思いつかないから意見を聞きたいなって」

女「どういうこと!?」

女「整理してみたけど、まだとっちらかってるよ」

男「んー、だから告白したいから意見を聞きたいなって思って」

女「誰の意見?」

男「君の」

女「誰に告白?」

男「君に」

女「私これ以上はこの状況を噛み砕けない」

女「そもそもどうしてこんな発想に?」

男「どうしてって……ほら、まず僕、君のこと好きでしょ?」

女「ん、んんっ!?////」

男「どうしたの、そんな顔真っ赤にして」

女「その、好きっていうのは……どの種類の……」

男「ん?もちろん、異性としてだよ。彼女になって欲しいし、夏休みは二人でいろんな所に遊びに行きたいし、もっともっと仲良くなりたい」

女「……ッ/////」

男「君みたいな、可愛くて、優しくて、裏表のない、笑顔のステキな子と一緒にいれるかも、なんて思うだけで僕は幸せになれるよ」

女「えへへへへ……////」

男「初めて見たときから気になってたし、一緒のクラスになって君と仲良くなる内にどんどん好きになっていった」

女「あ、あの!」

男「ん?どうしたの?」

女「じ、じつは……私も…………は、はじめてあったときから、ずっと、その、す、すきでした!」

男「うん。そのことを昨日女友さんから教えてもらったんだけど」

女「なんですと!?」

女「女友ちゃんってあの女友ちゃん!?同じクラスの!?」

男「うん。昨日の夜電話かかってきて。『女は告白を待ってるから早くしてあげて。あの子どうせ自分から告白なんて出来ないだろうし』って」

女「ひ、ひみつっていったのに!」

男「だからもうあとはロマンチックな告白だけだなって思って。だけど昨日一晩中考えてても思い浮かばなくて……」

女「それでそんなにクマが……」

男「で、どうしたもんかなって考えてたらさ、思いついたんだよ!」

女「何を?」

男「ほら、プレゼントって買って渡す以外にも一緒に買いに行くパターンがあるでしょ?その方が間違いがないっていって」

女「確かによくあるけど……」

男「だから、告白も間違いがないようにするには……」

女「告白相手と相談しながら?」

男「その通り」

女「間違いだらけだよ!」

女「普通でいいんだよ!告白はシンプルな言葉だけで充分なの!」

男「え?でも女友さんが『女は引くほどロマンチストだから告白は気合入れなきゃダメ』って」

女「余計なことを!」

男「『中二までサンタを信じてた』って」

女「もう絶交だ!」

男「それでどう?理想の告白は思いついた?」

女「こんな状況で思いつくほど私は肝が据わってないよ」

男「そうか、そうだよね。こんなこと急に言われてたらそうなるよね。ごめんね、せかしちゃって。あ、冷たい飲み物あるけど飲む?」

女「気遣いは凄いんだけどなぁ……」

男「じゃあ二択は?」

女「二択?」

男「そう。例えば、直接的に好きっていうのか、比喩とか使った方がいいのか」

女「……それなら、直接の方が」

男「電話と対面では?」

女「対面、かな」

男「言葉だけの方がいい?それとも、手とか握ったほうが……」

女「ギュッとしてほしい…………じゃなくて!」

男「初デートはプール?テーマパーク?」

女「ランドよりはシー……違うんだよ!」

男「座右の銘とか持ってる方?」

女「いよいよやり取りが取材じみてきてるよ!」

女「なんでそこまでセリフなんて考えるの!?普通で充分だってのに!」

男「なんで?なんでって、大好きだからに決まってるじゃないか!万が一にも失敗したくないんだよ!」

女「え、えぇ!?////」

男「この告白が失敗すれば、君と付き合うどころか今まで通り話すこともできなくなる。もう僕は君がいない生活なんて考えられないんだよ!」

男「それくらい僕は君のことが好きなんだ!」

女「……………………今行われてるのは告白?相談?」

男「相談」

女「冗談?」

男「相談」

女「……はぁ、どうしてこうなったの……」

男「やっぱり恋って難しいね」

女「この難しさは一般的じゃないけどね……」

男「」クラッ

女「男君!?」

男「……ぁあ、ごめんごめん。一瞬気が抜けちゃって」

女「大丈夫!?良く見ると凄く顔色悪いよ!?体調悪いの!?」

男「体調というか……昨日から寝てないし食べてないから……ごめんね、心配かけて。大丈夫だよ」

女「大丈夫には見えないよ!ねぇ、今日はもう帰ろう?」

男「でもまだ何も成果が出てないし、こんな状態では帰れないよ」

男「完璧な告白をするためにも時間を無駄にはできない」

男「いくら調子が悪くても、ここは譲れない」

女「なんでそこまで……」

男「決まってる。君のためだよ」

女「え?」

男「失敗したくないってのもあるけど、それ以上に君の理想通りの告白をしてあげたいんだよ!」

女「男君……」

男「僕は君の笑った顔に惚れたんだ!君のあの屈託のない笑顔のためだったら、僕はなんだってやってやる!」

男「何のとりえもない僕だけど、今はまだ君に見合った男ではないけども、これからも君の笑顔を守り続けるために、作り続けるために、君のために、君の理想を叶えたいんだよ!」

女「男君……ありがとう。そこまで考えてくれてたなんて」

女「……私、今まで告白なんてされたことなかったし、理想の告白なんて言われても分からなかった」

女「今日だってここに来てから一生懸命考えてみたけど、自分が思いつくのはどこか陳腐で聞いたことのありそうな言葉ばっかりだった」

女「だけど、だけどね、さっき男君が言ってくれたセリフ。私のために私の理想を叶えてくれるっていうあの言葉」

女「あの言葉は、今までの人生のなかで聞いた一番うれしい言葉だったんだよ」

男「女さん……」

女「だから、あの言葉そのものが、私の理想の告白です!」

男「……ありがとう、教えてくれて」

女「う、うん。じゃあ……」

男「それをベースに告白のセリフを考えてくるね!じゃあ、また連絡するよ!」

女「もう私から告白させて!!」

以上です。
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