【涼宮ハルヒの憂鬱】神様サンドイッチ (97)

このSSは驚愕後の時間軸を舞台とした2次創作です。
未熟者のため拙いところが多数あると思われますが、
温かい目で見守っていただけるとうれしいです。

現時点で未完です。
完結を目標として隔週、
隔々週程度の頻度で更新していく予定です。

スレが落ちてしまった場合は>>1が立て直します。

※未熟者嫌い、アンチハルヒの方は
そっとスレを閉じていただくことを推奨します。

※2 >>1の主観が多分に含まれているSSになります。
予め御了承下さい。

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1479540503

本日は序章と2章を投下していきます。

神様サンドイッチ ~序章~

未来人、超能力者、宇宙人の思惑が交錯した結果引き起こされた、SOS団はおろか佐々木までも巻き込んだ大事件が収束し早くも2ヶ月。

時折不機嫌になる団長様は相変わらずだが、俺たちはそこそこ平穏な高校2年生を満喫していた。

そんなある日、例によって我らが団長様によって、平穏な高校生活が脅かされることになる。

「キョン!あんたと佐々木さんは一体どういう関係なのよ!?」

週末、金曜日。ホリデー前最後のクラスルームが終わって早々、我らが団長様は鬼の様な形相で俺に迫っていた。

「どうもこうも佐々木本人が言ってだろ、親友だって。
それ以上でも以下でもないぞ?
それにあれから一度も会ってないしな」

団長様の突発的な不機嫌はいつものことなのだが、今回の矛先は佐々木と俺との関係に向いているようだ。

あの日を最後に佐々木とは連絡を取っていない。
まぁ、同窓会でそのうち顔を合わせることにはなるのだろうが。

「馬鹿は休み休み言いなさい!キョン!
思春期の男女が2人乗りするような間柄までいって親友なんてところで止まってるなんて異常よ!異常!!

仮に正常だとしてもあんたが不全か同性愛者のどっちかが前提にならないとおかしいじゃない!」

「おいおい、ひどい言い草だな。
そもそもあいつは俺の前じゃ男言葉で話していたし、そういう対象として見るなって釘を刺されてるようなもんだったんだぞ?

踏めば確実に爆発する地雷を踏みぬけるほど俺はマヌケじゃないんでね」

なぜ俺と佐々木の過去を知っているのかを詮索しても状況は好転しないのは分かりきっているので、あえてそれはしないことにした。

にしても、マヌケじゃないとは言ったものの、
1度はその地雷を踏みぬいてやろうかとも悩んだものだが…
まぁ、それはとっくの昔に消化された悩みだ。
そんなことをこいつに言おうものなら余計に暴れ出しそうなもんだがな。

「あぁ、この朴念仁!!
そんなんだからあんたは一生平団員なのよ!!」

本っっっ当にこいつは鈍ちんよ!鈍ちん!
自転車2人乗りして塾にいく?
いっつも2人で談笑していた?
クラスのみんなからは恋人だって言われていた?

国木田に聞いてみたらそんなことを言っていたけど、そんなの明らか彼女はあいつに気があったに決まってるじゃない。
あいつは昔っから朴念仁だったのかと考えると、私のイライラが溜まっていくばかりだ。

…ってなんで私がイライラしなきゃならないのよ!
これじゃまるで私があいつのことを…ってないない!それはありえないわ!

「私がキョンのことを気にかけているのはSOS団の風紀を守るためであってそれ以外に理由はないっての!!」

「ハルヒ、別に俺はお前に気にかけて貰わなくても風紀を乱すようなことはしないぞ?」

しまった。声に出しちゃうなんて、私らしくない。
けど気になるのは事実だ。
でもキョンに聞いたってろくな答えは返ってこないだろうし、
ここはひとつ強硬策に出ようかしら。

「うるさいわね!とにかく!あんた佐々木さんを呼び出しなさい!

団長として三者面談の時間を設けさせて貰うわよ!!」

おいおい…なんだその明らかに俺の胃袋に風穴が穿たれるであろうイベントは…
そんなことをしようものなら俺はおろか古泉までもが過労死直行コースになりかねん。
なんとしてもこれは阻止しなくては。

「いや、なにもお前にそこまでさせる必要はないだろう。
俺と佐々木は親友、そこになにか風紀を乱すようなことがあるのか?」

まずはこれ以上なく無難な、ささやかな抵抗を試みる、

「いーえ!もうこれは決定事項なの!
それに親友っていうなら私と面談することになんら問題はないでしょ!!!
と!に!か!く!
あんたは今日中に佐々木さんを誘う!
で、その日時を私に報告する!

以上!!今日の団活は休みにするから、あんたからみんなに伝えておきなさい!!!」

そういうとハルヒは嵐のように教室から飛び出していった。
おいおい、これじゃ阻止しようが無いじゃないか。
こうなるともう、古泉や長門さんの知恵を借りるほか無いぞ。

「おい!キョン!
お前に浮気をするような根性があるとはおもってなかったぞ!」

さっきまで傍観を決め込んでいた谷口が水を得た魚のように話しだす。

「キョン、佐々木さんと親友っていうことに僕からはなにも言わないことにするけど、一体どうしたんだい?」

国木田まで横槍を入れてくる始末だ。

「谷口、浮気も何も俺はそもそもハルヒとはなんともないし、無論佐々木とも何もない。

国木田、どうしたもこうしたもハルヒの奴が急に佐々木と合わせろって騒ぐんだよ。
一体なんでなんだろうな?」

谷口は羨ましいぜこの野郎なんて言いだすし、
国木田はなにか哀れな物を見るような目をしている。
お前らは他人事かもしれんがこっちは大惨事一歩手前なんだ、
すまんが俺は部室に行かせてもらうぞ。

そんな一悶着を経て、俺は部室へと向かう。
例の如く朝比奈さんの着替えと鉢合わせないようノックをしてから部室のドアを開ける。

どうやら朝比奈さんはまだのようで、長門だけが相変わらずの雰囲気でひとり読書にふけっていた。

「よぉ、長門。今日の団活は休みになった。
団長様がお怒りでな。」

「…そう」

それだけ言うと長門は読んでいた本を閉じる。
あの事件以降長門はすっかりいつも通りだ、
熱の影響で饒舌になるなんてこともない。
いや、あったとしてもそれはそれで困るんだが。

「お怒りの理由なんだが、
あいつはどうやら俺と佐々木の関係が気に入らないらしくてな。
そんな話をしているうちに、
怒ったハルヒの奴が俺と佐々木とハルヒの3人で会いたいと言い出しやがったんだ」

「…そう、別に問題は無い。
佐々木という個体と天蓋領域の間にもう接点は無い、大丈夫」

長門が大丈夫というならそういった方向では問題はないのだろうが、俺の胃袋には支障がありそうな話なんだが。

「あなたは一度そういう場を経験するべき。
もしかすると多少の変化が見られるかもしれない」

長門の口調は少し怒気を含んでいたようにも感じたが、問い正そうにも長門は帰り支度を始めてしまった。

そうこうしているうちに朝比奈さんが部室へと顔を出す。
俺は今日の団活が休みであることを伝え、長門へした説明と質問を朝比奈さんにも投げかける。

「えぇっと…ごめんなさい、禁則事項みたいです。
この件に関して私からキョン君にアドバイスは出来ないみたいで…
ごめんなさい、けど、悪いようにはならないみたいだから、そのあたりは安心して大丈夫です」

なんて返事が返ってくる始末で、俺は一瞬目眩がした。
最後の頼みの綱、古泉からはいつのまにかメールが届いていて

"閉鎖空間が発生しました。
涼宮さんにはバイトが入ったと伝えておいてください。
あ、詳細は後ほどお伺いさせてもらいますので"

最初から原因を俺だと決めつけてかかるのはやめてほしいな。
いや、まぁ今回は確かに俺が原因みたいなものなんだが。

"了解。
ちなみに今日の団活は団長様の気まぐれにより中止だそうだ"

ひとまずそれだけ返信し携帯を閉じた俺は、
当面の任務も終えているため部室を後にする。

佐々木を呼び出すことに過去感じたことのない躊躇いを抱えながらの家路は、
割とここ最近のトップ3に入るレベルの胃痛を俺にもたらしてくれた。

「やれやれ。どうなることやら…」

そんな台詞に誰かが助け舟を出してくれるなんてことは勿論なく、
重たい足取りで自宅へとたどり着いた俺は、ベッドの上で携帯電話とにらめっこに興じるのであったー

神様サンドイッチ ~面談前夜~

携帯電話とのにらめっこを一時中断し、
夕飯、風呂と日々のルーチンを終えて、
どうにか三者面談とやらを回避する上手い言い訳が天から降ってこないかと思案にふけるも一向にその気配はなく頭を抱える。
そんな中、古泉から電話が来た。

「こんばんは。一体なにがあったんですか?
今回の神人はやけに暴れまわったと思ったら急に膝を抱えて座り込んだりと中々に珍しい行動をしていて、非常に気になるところなのですが。」

古泉は事の顛末の説明を求める。
少しでも助言を授かりたい俺は、古泉に事のあらましを説明した。

「なるほど、相変わらずなようで僕は少し頭が痛くなってきます。
あなたはこの1年間で成長したかと思っていましたが、やはりそういったところはとことん疎いようで…
正直、僕は呆れて言葉も出ません。

神人も今回は破壊衝動に駆られるだけの危険な状態では無かった、ということだけは改めて伝えておきますが、
それ以外には頑張ってください、としか僕には言えませんね。」

「おいおい、どういうことだ?
世界の崩壊には繋がらそうだってことはなんとなくわかるが、それ以外はさっぱりだぞ?」

「こればっかりはご自身の頭を抱えるのが1番かと。
それでは、後はお任せしますので」

と訳の分からん台詞を最後に電話を切られる始末だ。
長門といい朝比奈さんといい、今回は俺に助け舟を出しては貰えないようで、
またしても俺は1人で解決のために奔走することになりそうだ。

頭を抱えに抱え、悪いことにはならないという朝比奈さんの言葉を思い出し、
ようやく佐々木へ電話をする決心がついたころには、時計の針は8時をまわっていた。

これ以上遅くなるわけにもいかないと、
意を決して俺は佐々木へと電話をかける。
1コール、2コール、3コール。
佐々木が電話に出る。

「もしもし。キョン、どうしたんだいこんな時間に?
同窓会はまだ先だったと記憶しているが?」

「よぉ、佐々木。夜分の連絡ですまないな。
ちょっと厄介なことになってだな、
相談、というよりお願いしたいことがあるんだが、いいか?」

「ふむ、あの事件に関わることかな、キョン?」

あの事件。思い出したくもないであろう事件を思い出させてしまったことを心の中で詫びる。

「幸いなことに別件だ。
いや、まぁ不幸なことには変わりないんだけどな」

「あの事件絡みでないことが聞けて僕も多少安心したよ。
それで、キョン、その不幸なこととは一体何かな?」

おおよそ涼宮さん絡みなことは間違いないのだろうけれど、彼に説明を促す。

「あぁ、それがだな…なんというか、
佐々木と俺が親友という関係であることをうちの団長様は異常だと考えているようで、
団員が風紀を乱す前に三者面談とやらを設けたいと仰せなんだよ。

で、俺は今日中にお前を誘って、
その日程を団長様へ報告しなくちゃいかん、ってなわけだ」

ありのままを佐々木に説明する。
さて、どんな回答が返ってくるだろうか。
ふざけるな、だとか、また巻き込むつもりか?
といった言葉が返ってくる可能性が浮かび、少なからず俺は身構える。

「くつくつ…全くもって彼女らしい物言いだね、キョン。
まぁ、彼女がそこまで言うのなら仕方あるまい、余り乗り気はしないが、
他ならぬキョンの頼みだ、いいだろう、その三者面談とやらを受けてあげようじゃないか。
せっかくだし僕も彼女と話したいことが少しはあるからね」

話したいことが少しはあるという部分に引っかかりを感じる以外には、ありがたい親友からの返答。
だが、俺はもうひとつ気になることがあった。

「すまない佐々木、恩にきる。
だが、この前告白されたって話してたよな、
あれは大丈夫なのか?
いや、別に他意がある訳ではないんだが、
男1人に女2人、しかもおそらくハルヒの奴は超不機嫌だ。

そんな状況を誰かに見られる可能性がないとは言い切れない以上、場合によっては佐々木に来てもらうわけにはいかなくなってくるんだが」

「キョン、そこは問題ないよ。
あの後丁重にお断りさせてもらったからね。
僕が浮気をしたように見られるという可能性は万が一にもない、だから心配ご無用だ」

なるほど、俺の心配は杞憂だったようだ。
まぁ、あいつが誰かと付き合うなんてことはもとより想像し難いことなのだが。

「すまん、余計な心配だったな。
それじゃあ、早速で申し訳ないがいつなら時間を取ってもらえそうだ?」

「こういう事は早めに片付けるに越したことはないよ、キョン。
明日の朝10時に、
"僕と涼宮さんが邂逅を果たした駅前"
そこで待ち合わせっていうのはどうだい?」

「あぁ、わかった。
おそらくあいつのことだ、不思議探索よりこっちを優先しそうなもんだし、問題ないと思うぞ。
無理を言ってすまないな、佐々木」

「本当だよ、まったく。
埋め合わせは期待しているからね、キョン。
ではまた、明日に」

そう言って佐々木は電話を切った。
続けて我らが団長様に報告だ。

が、電話で報告する気力はでなかった俺は、団長様へ佐々木を呼び出したこと、明日の10時に待ち合わせ希望である旨のメールを送る。

"わかったわ。
あ、ちなみに明日の費用は当然だけど
全額アンタ負担だからね"

ものの5分もたたないうちに返信が届く。

"了解"

とだけ返信して、俺は眠ることにした。
もう、なるようになれってやつである。


_____________________________________________

「明日ねぇ…とりあえず明日の不思議探索は中止とだけみくるちゃん達にメールしなきゃね」

中止を伝えるメールを送ってから、
私は明日の服装をどうするかで悩んでいる。

佐々木さんは私服だろうし、私だけ制服っていうのもアレよね…
キョンはどんな服装が好みなのかしら?
というかなんで私がキョン好みの服装を気にしなきゃいけないのよ!
この完璧美少女超人たる私がただの平団員ごときに恋するなんてことは、
仮に世界がひっくり返ってもありえないし、そもそも恋愛なんて精神病の一種でしかない。
って、なんで恋愛について考えてるのよ私は。

ただ、どうも佐々木さんとあったあの日から、なんとなく、なんとなくだけれどアイツが気になる。それは間違いない。

「あー!もうっ!私らしくない!
とにかく適当よ!適当!
服装なんてなんだっていいわよもう!
そもそも私が着飾るんじゃなくって、
私が着たことで服の魅力が高まるのよ!!」

我ながらむちゃくちゃな独り言を言い放つ。
だが、おかげで多少冷静になれた結果、
よくよく考えればただ単にキョンの昔の友人?と会うだけだ、深く考える必要もないと結論付けるに至った。

こうして、涼宮ハルヒの夜は更けていくー

_____________________________________________

彼との再会の機会は思いがけずやってきた。
もっとも、おまけで涼宮さんが付いてくるのは想定外だったけれども。
やれやれ、私も厄介なことに巻き込まれたものだ。

親友という関係で決別したはずの彼、
そんな彼をまるで取り合うようにも見えなくもない光景を思い浮かべる。

彼女は親友という関係に納得できないのだろう。
そしてその理由もなんとなくわかる。

自覚なき恋…嫌な言葉が頭に浮かぶ。
自覚がないことは厄介だ、特に恋においては。
気付くのが遅ければ遅いほど、取り返しがつかなくなる。
それも相手がかなりの朴念仁ならなおさらだ。

思考が廻る。自分がどうしたいのかまだはっきりと見えてはこない。

行き当たりバッタリは私の望むところではないのだけれど、今回ばかりはしょうがないのかもね。

なんてことを考えながら、夜は更けていくー
_____________________________________________

三者三様の夜。
賽は投げられた、出る目は誰にも予想できないー

本日の投下は以上になります。
おそらく2000文字程度を隔週投下になると思いますので、
よろしければ完結までの間、お付き合いいただけると幸いです。


それでは、また来週。


前スレも面白かったから期待してる

>>14

ありがとうございます!
励みになります!


初めて長編をかくので、
完結させることを目標に書いていきますので、
どうかお付き合いください!


>>1の前作教えてくれ

>>17
前作が処女作なので至らないところだらけですが、
こちらになります。

ex14.vip2ch.com/i/read/news4ssnip/1479433667/

割と筆が進んでくれまして、
本日ただいまより新たに2話、投下致します。

神様サンドイッチ ~面談当日~

「キョンくーん!!!!」

ドンっ!と音を立てて妹のフライングボディプレスが炸裂し、俺は生き地獄の前のわずかな極楽から引き戻される。

あぁ、とうとう朝が来ちまった…
妹に苦言を呈することなど忘却の彼方へ飛ばしてしまうほどには憂鬱な目覚めである。

「キョンくーん?元気ないけど大丈夫ー?」

「いや、寝起きだからだ。
ほれ、着替えるから出てった出てった」

「えー?おでかけでもするのー?
私もいきたーい!」

あぁ、妹よ、お前を連れていくことが出来ればどれだけ心強いかなんて考えたのは初めてだよ。
あの団長様が般若の如く怒り狂う姿が簡単に想像できちまう以上、そんなことは絶対に出来ないんだがな…

「今日はちょっと大事な用でな、
また今度連れていってやるよ。
ほれ、出てった出てった」

「ちぇー。あ!じゃあお土産だけよろしくねー!
あと朝ごはん!用意できてるってー!」

そういうと妹は駆け足で部屋から出ていく。
お土産を買ってこれるような状態で済めばいいんだがな…

っと、ボヤいてる時間もない。
時計の針はすでに8時半を指している。
10時に待ち合わせだがこんな日にあいつらを待たせると後が怖い、とっとと準備を済ませて向かうとしようか。

俺は適当に着替えて身の回りを整えた後、
朝食を食べて家を出る。
時間は9時10分、うん、20分前くらいには到着しそうだな。

駅までの道のりを自転車で行く。
心なしかペダルはいつもの1.5倍増しで重たく感じた。


駅前に到着し、駐輪場に自転車を止めて広場に向かう。
幸いなことに1番乗りなようだ。

「ふぅ、これで遅刻を咎められる可能性はなくなったな」

なんて独り言を呟く。

「キョン、そうだね。こんな日に遅刻なんてしようものなら流石の僕も擁護のしようがないよ」

「おわっ!?佐々木!?
まったく気づかなかったぞ。
というかなんで制服なんだ?」

くつくつ、と佐々木は喉を鳴らすように笑う。

「私服で来ようかとも考えたんだがね、
三者面談などといういかにも学校行事のそれそのままの名目でお呼ばれされたことを考えて、
あえて制服で来てみたんだよ。
それともキョン、君は僕の私服が見たかったかな?」

なんて冗談を佐々木は返して来る。
何故そんな余裕があるのだ、佐々木よ。
いや、しかしその服装はなんだかな…
色々と思い出すものがある。

「いや、まぁなんだ、私服で来るもんだと思っていたのは確かなんだが…中学時代の制服とは意表を突かれたぞ、佐々木よ」

佐々木は喉の奥で笑いながら

「何、ちょっとした僕なりのジョークとでも言おうか、特別な理由はないさ。
それともキョン、君はこの姿の僕に思うところでもあるのかな?」

なんて嘯いていやがる。
時折佐々木は俺にはその思惑が想像もつかない行動をすることがあるのだが、
特に今日のそれは一段と読めない。

「なんか中学時代を思い出してな。
あぁ、いや、すまん。巻き込んでおいてこんな呑気なこと言ってる場合じゃないよな」

あの頃みたいに二人乗りで今から逃げ出したい、なんてことも浮かんだが、心の中にしまっておく。

「キョン、君は制服姿を見せないと僕との友誼を思い出してはくれないのかい?
…なに、冗談さ、そんな困った顔をしないでくれたまえ。
それに僕は君からの穴埋めという楽しみを得るためにここにいるんだ、なにも謝ることはないのさ。
しっかりと対価は頂戴する訳だからね」

ー結局私はまだ捨てきれていないのだろう。
中学時代の制服を引っ張り出して、わざわざアイロンをかけてまで来てくるあたり、
自分の愚かさに我ながら辟易する。

「あぁ、そこはしっかりやらせて貰うよ」

佐々木なりの優しさに感謝していると、
見覚えのある超絶不機嫌フェイスが近づいてくる。

「キョーン?なにをしっかりヤらせて貰うんですってー?」

聞いていたのか…
しかもどこかイントネーションがおかしいぞ、ハルヒよ。

「いや、なんだ。無理言って呼び出しちまったからな、その穴埋めを今度させて貰うって話をしていただけだ」

「あっそう!まぁ、別にいいけどSOS団の風紀を乱すような真似はしないことね!

とりあえずこんなとこで立ち話するわけにも行かないし、さっさと適当な喫茶店にでも入るわよ!
伝えてある通りもちろん費用はキョン、アンタもちよ!」

やれやれ…予め言われていたがなんとも言えん気持ちになるぞ、これは。

「僕は自分の分くらいは出させて貰うよ。
安心したまえ、キョン」

あぁ、佐々木。俺には今お前が女神に見えるぞ…
なんてことは口が裂けても言えんな、色んな意味で。

「佐々木さん、無理言ってごめんなさいね。
だから今日はそこのアホに支払わせるだけ支払わせていいわよ、気を使う必要なんてないわ」

「こんにちは涼宮さん。
別に気を使ってるわけじゃないのよ、私が自分の飲食した費用を無理やり他人に出させる
のが嫌なだけなの。
お気遣いだけいただいておくわね」

「あっそ。ま、いいんじゃない。
それと、なんであなた制服なわけ?
しかもそれ、サイズが少し小さいんじゃない?」

「涼宮さんから三者面談で呼び出されたってキョンからは聞いていたから、
とりあえず制服で来ようと思ったのよ。
ほら、なんか学校行事みたいじゃない?」

「ふーん、まぁ確かにその通りね」

まさか制服で来るとは思ってなかった。
しかも中学時代の物を着てくるなんて、なにへの当てつけかしら?

「おい、とりあえず喫茶店にでも入るんだろ?
こんな場所で話してたら悪戯に目立つだけだし、さっさと入っちまおう」

なんだか不穏な空気を感じた俺は、
人目を避けたいことと早く落ち着きたいという思いから移動を促す。

「そうね、じゃあさっさといきましょうか。
とりあえずいつもアンタが罰金を払ってばかりのあそこでいいわよね」

「あぁ、どこでも構わん。任せる」

そう言って俺たちは歩き始める。
そして少し、いやかなり気になることがあったので俺はハルヒに問う。

「ところでハルヒ、なんでお前ポニーテールなんだ?」
長さが足りてはいないが、確かにあいつは後ろで髪の毛を束ねている。

「うっさいわね!気分よ!気分!
あんたには関係ないでしょ!バカキョン!」

…そういえばキョンはポニーテールが好きだと言っていたっけ。
涼宮さん、あなたも大概女の子ね、それも普通の。

無論、彼はその思惑にはまったく気づいていないみたいだけどね。
本当どうしようもない男よ、彼は。

そんなことを考えながら私は2人の後ろをついていくー

神さまサンドイッチ ~三者面談~

喫茶店に入った俺たちは、
当然だがとりあえず何か頼もうという流れになる。

「あたしはカフェラテにするわ!
アンタと佐々木さんはどうするの?」

「俺はアイスコーヒーだけで構わん、そんなに余裕があるわけでもないしな。
佐々木もそれでいいか?」

「うん、僕もアイスコーヒーで構わないよ」

当たり前のように佐々木さんはキョンの隣に座るのね。
しかも注文もこなれた感じ。
なーんか嫌な感じがするわね。

「決まりね!すみませーん!!

カフェラテ!あとアイスコーヒー2つください!」

ハルヒの声が響く。
相変わらずこいつはどんなところでも変わらない奴だ。

「で、三者面談だったか。
一体なにを話すんだ、ハルヒよ?」

生き地獄は短い方がいい。
そう判断した俺はハルヒを促す。
さて、どんな爆弾が飛び出てくるのか…
ここまでくればもう腹は決まったし、受け止めるまでなんだが。

「なんであんたが仕切ろうとするのよ!
あたしが質問する立場にあるの!
アンタと佐々木さんはそれに答えてくれればいいんだから、ちょっと待ちなさい!」

そういうとハルヒはどっしりと座り直し、
あからさまな咳払いをしてから話し出す。

「では、三者面談を始めます!
まず、今回佐々木さんとキョンを呼び出した理由だけど、
とある情報のリークを受けて、
SOS団員たるキョンが風紀を乱す可能性があることが判明したからよ!」

「風紀を乱す?涼宮さん、それは具体的にどういうことを指しているのかしら?」

俺は店員さんが運んできた飲み物をそれぞれに渡しながら話を聞く。

「いい質問ね!佐々木さん!
具体的に言えば人目もはばからずにイチャついたり、団長に隠れてこっそりと交際したり、思春期の欲望を彼女にぶつけたり、まぁそんなところかしら!」

「あら、ならその可能性は全て0よ?
私とキョンの間に男女の関係は無いし、
交際している事実もないわ。
それにキョンに涼宮さんのいう思春期の欲望をぶつけられるほどの意気地はないだろうし」

佐々木よ、わかってはいるがそう見事に両断されると、すこし胸が痛むぞ。
それに意気地なしって…いやまぁ、確かにそうなんだが。

「口で言うのは簡単だわ!
でもね、あたしは情報のリークがあったって言ったでしょ?

キョンと佐々木さんが中学時代によく二人乗りをしていたことも、
事あるごとに2人でいたことも、
クラス公認のカップルだったことも把握しているんだからね!」

おいおい、なんでこいつがここまで知ってるんだ?
一体どこのどいつかリークしたのかは分からんが、俺はそいつを恨むぞ。

「涼宮さん、どこであなたがそれを知ったのかは知らないけど、最後のひとつは明確に否定させてもらうわ。

恋愛なんて精神病の一種で、麻疹みたいなものなのよ。
そんな一時の気の迷いに身を委ねるほど、私は愚かな人間でいたくないの」

そうだ、こいつはこういう奴だ。
常に理性的で、感情に流されるようなことを嫌う。
突発的な事故でそこを踏み越えそうなったこともあるが、
結局俺はあの言葉で踏みとどまるに至ったのだ。

「そうだぞ、ハルヒ。
たしかに2人で塾に行くときに二人乗りはしていたが、あれも俺が受験戦争で敗残兵になりそうなところを佐々木が見兼ねて、
救いの手を差し伸べてくれたお礼でしかないし、
よく一緒にいたのも佐々木が俺の受験勉強の面倒を見ていてくれたに過ぎん。
そして最後のそれはただのクラスメイトの噂以外の何者でもない。

そもそも、俺が佐々木と付き合うなんて佐々木に対して失礼な冗談にもほどがあるし、
俺としてはお前にそんな情報をリークした奴の名前を是非ご教示いただきたいところだ」

ハルヒの勘違いの解消と情報元の特定を図るべく、俺は弁明する。
隣の佐々木が一瞬どこか悲しげな雰囲気を出していたように見えたが、俺の気のせいだったようである。

「そうね。それに私とキョンがもし恋仲だったとしたら、私は間違いなくキョンと同じ北高を受験していただろうし。
1年間もほったらかしにするようなことはしないと思わない?」

なんて追撃を繰り出す佐々木。
このままあいつが納得してくれるといいんだがな。

「確かにキョンと佐々木さんが言っていることはもっともだわ。
でも、互いに口裏を合わせてるだけかもしれないし、キョン、アンタちょっとその辺で時間潰してなさい!
あたしは佐々木さんと2人で話したいことがあるから!」

やっぱりこいつは一筋縄ではいかないな。
やれやれ、納得するまで付き合ってやるしかなさそうだ。

「佐々木、俺は構わないがお前はどうだ?」

「あぁ、構わないよ。
それに言ったろう、僕も少し涼宮さんと話したいことがあったしね。
申し訳ないがキョン、それには君がいない方が都合がいいことには違いない。
少し席を外してくれるかな?」

ん、俺がいない方がいいってどういうことだ?
いや、まぁお前がそういうなら従うことはやぶさかではないんだが。

「決まりね、キョン!
終わったら電話するからアンタはちょっとどっか行ってなさい!
あ、不思議が転がってないか探すのを忘れないでよ!」

なんてことを言われた俺は喫茶店を後にする。
まぁ正直なところ、ひとまずあの空間から解放されるのはありがたいの一言に尽きるのだが。
さて、公園のベンチで昼寝でもしようかね。

「行ったわね…
ごめんね、佐々木さん。
だけどあいつがいたら今からする話は出来ないと思うから、あたしも、あなたも」

そういうと涼宮さんはカフェラテを飲む。
私もつられてアイスコーヒーにストローを刺す。

「それにしても、あいつの朴念仁ぶりには呆れを通り越して怒りを覚えるわね、本当に。

佐々木さんがとなりですっごい悲しそうな顔してるのにも気づかないなんて、男の風上にも置けないとはまさにこのことだわ」

そういうと涼宮さんは優しい眼差しを向ける。

「苦労したのね、あなたも」

だめだ、こんなのは私じゃない。
常に理性的であることを理想としているのに、
そのために色々なものを捨てたのに。
なのにどうしてだろう、涙が止まらなかった。

「あんな風に好意を否定されたら誰だって涙のひとつやふたつ出てくるわよ。
本当はあいつをどう思っていたか聞こうと思ってたんだけど、そんな質問意味がなくなっちゃった」

そういうと彼女は私が落ち着くのを黙って待っていてくれた。
ははっ、確かにこんな姿は彼には見せられないね。

「ありがとう、涼宮さん。もう大丈夫よ。
多分あのまま話していたら彼の前でボロを出していたと思うし、本当に助かったわ」

「でしょうね、あなた凄く悲しい顔しながら私に話してたもの。

…そんなにキョンのことが好き?」

私は今日2番目に知りたかったことを彼女に尋ねる。

「えぇ、好きだったわ。
いや、もうあなたに嘘をつく必要はないわよね。
…好きよ、どうしようもないくらいに。
彼とそういう関係になったら、
おそらく私は理性的ではいられないと確信するほどに、彼が好き」

じゃあ、なんであなたはー

彼女が言い終わる前に私は叫ぶ。

「しょうがないじゃない!
私は理性的でいたかったの!
自分の夢を追いかけて、学問を追いかけて、
そういう生き方がしたかったのに!

けど、彼というイレギュラーは私の中で次第に大きくなっていって
彼と同じ高校へいって、自分の夢への道のりが遠周りになる、
それでもいいと思ってしまうくらいに!!

…でも、理性的でいたい、そのために被っていた私のペルソナは、それを許さなかったの。いいえ、許せなかった。
変人と言われて、青春を犠牲にして、
それでも夢を追いかけていた仮初めの私も、
私の想像以上に私の中で大きくなっていたのよ。

それに結局、彼は最後まで踏み込んでくることはなかったわ。
一度だけ、一度だけ隙を見せてしまった日にさえも。
捻くれ者な私にとって、それだけでもう投げ捨てるには十分だったわ。

だけど、だけどー」

あぁ、彼女もあたしと同じ。
変に捻くれて、周りから変人とみられて。
国木田が言っていた通りだ。

「キョンと出会う前の佐々木さんは、
変人と呼ばれて、孤立して、すごく脆そうな印象だったよ」

その言葉通り、脆くて、たけど普通の女の子。
多分、相当悩んだだろうし、
色んなものが退屈に見えていたんだろうな。

そして、あたしがジョン・スミスに出会って、
この世界は思っているよりマシなものなんだと思えたように、
彼女もきっと、キョンと出会えて色んなことが良い方向に変わったんだろう。

でも、彼女は結局自分の仮面に勝てなかった。
それは逆に言えば凄いことで、
身を焦がすような好奇心や欲望を理性だけで抑えたってことになる。

そんな真似、あたしには絶対無理。
絶対に真似できないことだって、考えなくてもわかる。

だってジョン・スミスが北高に通っていたってだけで、私は北高を選んだのだがら。


だけど、このままじゃ彼女があまりに不憫だ、
そう思う反面、
敵を増やしたく無いってズルい考えが顔を出す。

けど、そんなあたしをあたしは好きになれそうにないし、
あのお人好しなキョンにも顔向けが出来ない。
だから、あたしはー

「アンタ、そうやって何でもかんでも諦めてきたわけ?
ようはキョンを待ってたけど、自分の思い通りにいかなかったからっていう、
身勝手な理由で勝手に諦めただけじゃない。

そんなにあいつが好きだったなら、
ちゃんとそう言えばよかったじゃない!
そんなにボロボロなるくらい後悔して、
嘘ついて、何が楽しいのよ、アンタ!

あたしはキョンが好きよ。
気付くまで時間がかかったのは、アンタと同じかもしれないけど、
あたしはもうそこから目を背けないわ。

多分、しばらくは意地をはってあいつにキツくあたったり、
思ってもないことを言っちゃうだろうけど、
でも、必ず最後には思いを伝えるわ。

じゃないと自分に、そしてキョンに失礼だもの。

ねぇ、あなたは本当にそれでいいの?
そんなになるまで大きくなった気持ちを、
あなたはそのまま閉まっておくの?」


噂通りの傍若無人。
私の傷に容赦なく塩を塗り込んでくる。
そして、彼のことを好きだといいながら、
恋敵を増やすようなことを平気でする。

小学生のころ憧れていたままの、
真っ直ぐな、真っ直ぐな彼女の瞳。
私のペルソナのベース。
けど、それはただの勘違いだったと思い知らされる。
羨望していただけで、理解した気になるなんて烏滸がましいことなのだけれど。

あぁ、やっぱり彼女は凄いな。
私も自分に、自分に正直になろうって、
こんな短い時間だったのに、そう思わせてくれる。

「嫌に決まっているじゃない。
私だってキョンが好き」

一度投げ捨てた癖に"告白された"
なんてチープなブラフで動揺を誘うような真似をしちゃうくらいには、
まだ彼を諦めきれていないもの

「あら、いい顔になったじゃない。
言っておくけど負けないわよ、佐々木さん」

うん、これでいいのよ。
多分、あいつがあたしの立場でも同じことをしただろうしね。

「ふふふっ。私も負ける気はないわよ、涼宮さん」

あぁ、こんなにも簡単なことに悩んでいた自分が馬鹿みたいだ。
でも、ここからがやっと、私のスタートライン。
ペルソナを捨てた、本当の私の。

「あ、そうだ。佐々木さん私に話したいことがあるって言ってたけど、あれって何?
地味に気になってたのよね」

そうね、その話もしなくちゃ。

「実は私、涼宮さんと同じ小学校に通っていたのよ。
卒業と同時に苗字が変わったし、同じクラスになったことはなかったんだけどね。

恥ずかしい話だけど、あなたに憧れていたのよ、私」

「そうだったの!?」

喫茶店の注目を集めるには十分すぎるオーバーリアクションをした彼女は、
実に不思議なものを見るような顔をしていたのをよく覚えている。

そこからは他愛のない、本当にくだらない、
同じ小学校に通っていたのものどうしの思い出話しに花を咲かせていた。

何年の頃の何々先生があーだったとか、
あの頃はあーだったとか、
あと、キョンの話とか。
所謂、普通の女の子として涼宮さんとの時間を過ごした。

「あっ!?もうこんな時間じゃない!
あたしたちキョンのこと2時間近く放置しちゃってる!」

「それは私もうっかりしていたわ。
けど、あの朴念仁にはいいお灸になるんじゃないかしら?
気づかれないことの辛さを知った方がいいわよ、彼は」

「それは間違いないわね!
けど、まぁ可哀想だし、電話してやるとしますか」

そう言って彼女はキョンに電話をかける。
…少し妬いたのは秘密だ。

「もしもし、キョン!戻ってきなさい!
お会計だけして帰るわよ!」

着信音で飛び起きた俺は、
起床早々ハルヒの怒声を浴びていた。

「おいおい、2時間近くもほっといてその言い草はないだろう。
それに三者面談はもういいのか?」

「面談はもういいわ、お終いよお終い!
それより、どうせあんたのことだから不思議なものなんて見つけてないんだろうし、
10分以内に戻ってこないと死刑だからね!」

やれやれ、いってくれるぜ団長様よ。
まぁ、おっしゃる通りどころか公園で爆睡していたわけなんだが。
とりあえず、なにがあったかは後で佐々木に聞くとして、
いそいで戻るとしようかね。


喫茶店に戻ると、なぜだかやけにハルヒと佐々木が親しげに話していた。
まぁ、俺としては平和的に話しが終わったのであれば特に問題はないんだが。

ハルヒに促され会計を済まし、喫茶店を出る。
ところで、佐々木は自分の分は出すと言っていたはずだが、
俺が全額支払うことになったのは何故だろうか。
なんてことを考えていると、我らが団長様が口を開く。

「さて、今日は解散!
キョン、明日は休みだからゆっくりやすみなさい!
じゃ!また月曜日にね!」

そういうとハルヒは颯爽と走り去っていった。
相変わらず自由なやつだよ、まったく。

さて、俺はことの顛末を説明してもらうべく、佐々木の方へと向きなおる。

「佐々木、今日はありがとう。
おかげで助かったよ。
どうやら丸く収まったみたいだが、一体何を話してたんだ?」

「キョン、いかに君とはいえ流石に今日の内容を私の口から教えるわけにはいかないな。
ただ、この機会を作ってくれた君に私も涼宮さんも感謝しているとだけ言っておくよ」


!?!?
口調こそいつもの佐々木だが、
一人称が"私"になるなんて一体何があったんだ!?
朝比奈さんは大丈夫って言っていたけど、
もしかして明日世界が滅んだりしないだろうな!?

俺が目を白黒させているのを余所目に、
佐々木は歩き出しながら

「まぁ、心境の変化って奴だよ、キョン。
私にも色々あるんだ、これでもまだ10代の乙女だからね。

まぁ、これ以上はフェアとは言えないし、
今日はこれまでとしようじゃないか。

あ、埋め合わせの件はちゃんと考えておいてくれたまえよ?
では失礼するよ、キョン」

そんなことをいい残し人混みへと消えていく。
あぁ、古泉、すまんな、俺はしくじったかもしれん。

この世の終わりを感じながら、
俺は駐輪場へと向かい、自転車を回収し家路についた。

以上、今週の投下は今度こそ終了です。
一応、最初の山場まで持っていくことができて一安心しています。

お楽しみいただけたでしょうか?
そうであれば幸いです。

では、また来週お会いしましょう!

告知ですー
今週土曜の夕方あたりに投下しますー
では、

投下開始ですー

神様サンドイッチ ~世界改変~


「キョンくんおかえりー!
あれ?どうして暗い顔してるのー?」

妹よ、もしかすると明日世界は滅ぶかもしれん…
なんて冗談を言う気力もなく、
少し疲れただけだと伝えて部屋に戻る。
お土産に対して言及してこないあたり、できた妹だ。

ベットに身体を預けると案の定、
監視カメラでも付いてないと不可能なほど見事なタイミングで着信が入る、古泉からだ。

「よぉ、古泉。明日にでも世界は滅ぶかもしれんぞ」

俺は開口一番、古泉に告げる。

「またまた、ご冗談を。
どうやら上手くやってくれたみたいですね、流石です。

さきほど、涼宮さんの力がかなり安定し、
縮小傾向にあると長門さんから連絡がありましたよ。
もしかして切り札、使ったんですか?」

古泉の口から告げられたの内容は俺の予想とは真反対だった 。
安定?縮小?本当なのかそれは?
じゃあ佐々木のあの変わりようはハルヒに関係ないってことなのか?

「いや、ハルヒに俺がジョン・スミスだってことを明かしてはいないぞ。」

「ふむ…では一体何があったのでしょう?
詳しく聞かせてもらってもよろしいですか?」

俺は最初ハルヒが俺と佐々木の関係を疑っていたこと、
途中ハルヒに退室を命じられて公園で2時間ほど寝ていたこと、
そのあと戻ったら佐々木とハルヒがやけに仲良くしていて、
佐々木の口調に異常な変化があったこと。
今日の一連の流れをありのままに伝える。

「なるほど。まぁあなたが寝ていた2時間の間に何かがあったのは間違いないでしょう。

その後で2人が親密そうにしていたということと、佐々木さんの口調の変化から、
その2時間になにがあったかはおおよその想像がつきましたが」

「あぁ、あの2時間の間に何かがあったことは流石にわかるんだが、俺にはまったく想像がつかなくてな。

古泉、そのおおよその想像って奴を聞かせてくれないか?」

「やれやれ、あなたって人は本当に…
一度その頭の中身を見てみたいものです。

申し訳ありませんが、僕の口からそれをお伝えすることはできませんので、ご自身でよく考えてください。

ひとまず、お礼は言わせていただきます。
まぁ、あなたに自覚がないことが心残りではありますがね。
それでは、また月曜日に」

そういうと古泉は電話を切る。
やれやれ、俺の頭はもうパンク寸前だぞ、まったくー

唐突な三者面談を終え、答えの出ない問題に頭をひねった結果、
答えが出ない物は放り投げ、
シャミセンと戯れ、妹に勉強を教える。
そんなつかの間の日曜日を謳歌することにした。

そんな中に入った一本の電話。
まさか、それが新たな嵐を呼ぶことになろうとは俺は考えてもいなかった。

夕飯、風呂といった恒例のルーチンを終え、
ベットに横たわっていると、珍しくも長門から電話があった。

「もしもし、長門か。
電話をかけてくるなんて珍しい、
なにかあったのか?」

挨拶もなしに長門がまくし立てる。

「ついさきほど、涼宮ハルヒを中心とした情報フレアの発生を観測。
その残滓から小規模ながら世界の改変が行われたと判断。現在改変内容を調査中。
また、情報フレアの消失と同時に涼宮ハルヒ内に強力なプロテクトの生成を確認。
即時にプロテクトの解析を実行、涼宮ハルヒの持つ願望実現能力の存在は確認できたが、本人による認識及びに行使が不可能となっている模様。
また、プロテクトは自己およびに自己に関係する生命体に対して生命の危機、またはそれに準じる状況の発生をトリガーとした一時的なアンロック機能を有していることが確認された、報告は以上」

「おいおい、世界の改変ってハルヒの力は安定したんじゃなかったのか!?
それにプロテクト云々だとか、長門、すまんがもう少し砕いた説明を頼んでもいいか?」

「了解した。
つまり涼宮ハルヒは世界を改変した後、
自らの能力に対して大幅な制限を設けた。

具体的には、今後彼女は能力を自己認識することがほぼ不可能となった他、
彼女か彼女の知人が何かしらの危機に瀕した場合以外にその能力を行使することが出来なくなった」

「つまりあいつはもう無意識に世界を改変したりすることが出来なくなったってことか?」

「その通り」

「でもなんだってそんな制限を設けたんだ?
というかそんなことが出来るなんて、
あいつは自分の力を自覚していたのか?」

「制限を設けた理由に関して予想される理由はいくつかあるが、現時点で正確な理由は不明。また、彼女が自己の能力を認識した場合に想定される情報爆発は観測されていないため、今回の一連の事象は無意識下で行われたものだと情報思念体は判断している」

なるほど、唐突に自覚した線は消えたわけだ…
だがまてよ、能力に制限がかかったとなると長門は勿論、
古泉や朝比奈さんに影響があるんじゃないのか?
そんな不安が脳裏をよぎる。

「補足すると、
情報思念体はこの事象に対して非常に興味を示している。
現に私は観測の継続及び詳細化を命じられている。

また、古泉一樹および朝比奈みくるの属する機関も同様。
能力が消失したわけではないということと、
彼女が能力を自覚した場合など、
状況が急変するケースが多数想定される為、
現状維持、経過観察を指示されたと彼らから聞いている」

流石長門、俺の考えなんてお見通しってわけだ。

「わかった、ありがとうな。
ちなみに改変の内容はまだわからないのか?」

「礼には及ばない。
改変内容はあと13時間程度で解析が完了する予定。
内容が判明次第報告する。それじゃ」

長門はそういうと電話を切った。
改変内容がまだわからないのが不安だが、
小規模だと言っていたし、最悪の事態では無さそうだ。

それにしてもなんだってあいつは…
1年以上の付き合いになるが、
まだまだわからないことばっかりだ。
まぁ、明日になれば長門から改変内容は教えて貰えるだろうし、
とりあえず今日はもう寝るとしよう。

小難しい単語はやはり俺の脳みそには負担が大きいからな。

世界改変。
久しぶりに聞いたそのワードにどこか不安を覚えながらも、
少し楽しみな気持ちを感じながら俺は眠りに落ちたー

翌朝、俺は長門に改変内容を聞けることを割と楽しみだと思っていたらしく、
いつもより早く目が覚めてしまった。
遠足前の小学生のような気持ちを思い出しながら、すでに起きていることに驚愕する妹をあしらい、身支度を済ませる。

朝食を食べ終え、まだ少し早いが家を出ようかなどと考えていた時、予想外の人物からの着信が入る。

「もしもしキョン、私だけど。
いや、僕だけどと言ったほうがわかりやすいかな?」

電話越しにくつくつと笑う佐々木。
こいつの一人称はどうやら私に固定されたようだが、正直に言うと違和感が半端じゃない。

「いや、声でわかるから大丈夫だ。
というよりどうした、こんな朝早くに?
高校は休みなのか?」

「声でわかる、か。
それは嬉しいよ、キョン。

それはさておき、すごく急な話なのだが、
私は今日から北高に転校するのだよ。
そこでもし君さえ良ければ一緒に登校したいと考えているんだが、如何かな?」

あぁ…長門よ、俺はお前から聞くよりも早くに改変内容を知ってしまったようだ。
こんな急にそんなことが決まるなんてデタラメ、あいつの力以外に説明がつかんからな。

「もしもし?キョン、聞こえているかい?」

「あ、あぁ、大丈夫だ、聞こえている。
色々と聞きたいことはあるが、
それはあってからにするよ。
とりあえず今から駅前に集合でいいか?」

言い終えるやいなやインターフォンが鳴り、我先にと妹が飛び出していく。

「あー!佐々木のおねーちゃんだー!
おはようございまーす!」

「おはよう、妹ちゃん。キョンはいるかな?」

なんで会話が聞こえてくる。
おいおい、もう家の近くにいたのならそう言ってくれりゃいいものの…

「よう、佐々木。近くにいたんなら電話なんかしないでよかっただろうに」

佐々木はくつくつと笑うと

「いや、なんというか、ちゃんと一緒にいく約束をしてからの方がいいんじゃないかと思ったのさ。

それに何も言わずに私がキョンの家にお邪魔したとして、君が寝ていて待ちぼうけを食らう可能性も否めないからね」

あぁ…嘘じゃないんだな、
と北高の制服を見にまとった佐々木をみてようやく実感する。

「たしかに普段ならまだ寝ていたかもわからんが。
とりあえず行くとしようぜ、佐々木。
自転車、後ろ乗ってくか?」

「それは素晴らしい申し出だね、キョン。
ぜひそうさせてもらおうかな」

そんなやりとりをして俺たちは北高へと向かう。
流石にハイキングコースを二人乗りで登り切るのは不可能なので、
佐々木には途中で降りてもらって俺は自転車を押す。


「それにしても佐々木、随分と急な話だが一体何があったんだ?」

「それがだね、前々から母親が担任の教師と何やら指導方針で揉めていたようでね、
あんな高校に通わせるくらいなら、ということで北高への編入手続きをしていたみたいなんだよ。
なぜ北高なのかを聞いても答えてはくれなかったがね。
で、元々の偏差値が北高よりかなり高かったこともあって編入試験がなくなり、
晴れて今日転校となる旨を昨日の夜に母から聞かされたって寸法さ」

なるほど、出来過ぎた話だ。
それにしてもなんだってまぁハルヒの奴は、
佐々木の転校なんざを願ったんだろうか、
この前までは佐々木の名前を出すとあからさまに不機嫌になっていたはずなんだが。

「なるほどな。だがよかったのか?
お前のいうとおり北高の偏差値は前の高校とは雲泥の差だ。
進学とかにも影響があるんじゃないのか?」

「キョン、それは問題にならないよ。
勉学なんてどこの学び舎でもできるし、
研鑽を惜しまなければ学力なんてものはどんな環境でも向上していくものさ。

それに私は転校できてよかったと思っているくらいだよ、キョン」


流石、頭の出来が根本から違う奴は言うことも違う。
それに佐々木がいうとなぜだが妙に説得力がある。
だが、転校できてよかったっていうのはどういうことなんだ?

「それは口が裂けても言えないね。
年頃の乙女には秘密がつきものなのさキョン、私も例に漏れることなく、ね」

ううむ、一人称が私になったうえに普通の女の子みたいなことも言うようになったのかこいつは。
これもハルヒの改変の影響なのかね?

そんなことを考えているうちに校門前に到着する。
佐々木は何やら職員室に行ってから担任とともにクラスにお披露目されるようで、
一足先に校舎へと入っていった。

朝比奈さん(大)が出てくるなら今か?などと考えたもののそんな気配はなく、
この状況が著しく危険なものではないと予想した俺は、多少の安堵を覚えながら自転車を止め靴を履き替え、教室へとたどり着いて早々、俺の後ろ席の持ち主に声をかけられる。

「キョン!今日は転校生が来そうな予感がするわ!これは絶対にくるわよ!」

「お前は何を言い出すんだ?
こんな時期に転校生なんて来るわけないだろう」

まぁ、間違いなく来ることはわかっているが、
そんなことを宣って変な目で見られるのは御免だからな。

「じゃあキョン!もし転校生がきたらジュースおごりね!」

俺の財布から小銭が消えることがこの時点で確定した。
結果がわかっているのにBETできないギャンブルとは割と、いやかなり心苦しいものがある。

そしてまぁ、わかってはいたことだが岡部が佐々木を連れて教室に現れ、
ハルヒは渾身のドヤ顔、谷口は女の転校生ということで大興奮と、
おおよそ想像した通りの光景が広がる。

「転校生が来たし席替えするからな」
という岡部の一言で教室のボルテージは最大限に高まり、俺はその結果でここまでがハルヒの筋書きであると悟った。

「キョンが隣か、これはついてるね」

教室1番後ろの窓側、俺の左に佐々木が座る。

「キョン、あんたの隣なんて気が滅入っちゃうわ。
早く次の席替えが来ることを願うばかりね」

俺の右に恨み言を漏らすハルヒが座る。
これはなんとも精神をすり減らしそうな配置だ。

これからどうなっちまうのか、
なんとも言えない不安が募るばかりで、
俺は机を動かすときに谷口がこぼした、
"キョンの奴、恨むぜ…"
なんてセリフに反応する余裕すらなかったー

今週は以上です。

今週も土曜日夕方投下になります。
次回で一旦ラストです。

すみません、忙しく投下しそしびれました
今から投下します

神様サンドイッチ ~新入団員~

転校生からの席替えのコンボにより、
ボルテージの上がった教室は昼休みに入ってもその勢いを維持していた。

佐々木は女子たちに質問攻めにあい、
俺は谷口含む一部男子から女子転校生を掻っ攫った妬みの対象として、
実に心地よくない眼差しを浴びている。

そんな中、国木田の爆弾発言が尚更俺へのヘイトを集めることとなる。

「キョン、よかったじゃないか。
これが元サヤって奴なのかな?」

その瞬間にクラス中の視線は俺と佐々木に集まる。
おいおい国木田、ハルヒがいる前でそんな不用意な発言は頼むから控えてださいお願いします。

心の中で念仏を唱えながら俺はハルヒの様子を伺おうとするー

「キョン!佐々木ちゃん!ちょっと来なさい!!」

あぁ、クラス中の視線が痛い。
頼む、俺の平和な高校生活よ、戻って来てくれ…
なんてことを考えながら、俺と佐々木、およびに国木田はハルヒに引きずられるように部室へと連れていかれた。

「ふぅ、ここなら安心ね。
全く、人の恋路を面白半分で好奇の的にするなんてクラスの連中はロクな趣味じゃないったらありゃしない。

佐々木ちゃん、大丈夫?」

「ありがとう、涼宮さん。
私もあのまま好奇の目に晒され続けるのはちょっと耐えられそうになかったから」

まぁ、そりゃ俺との昔話なんざが広まるのは佐々木にとったら大迷惑だろうな…

「それに国木田!あんたもあんたよ!
あたしに情報提供してくれたことには感謝してるけど、あんな馬鹿どもにひょいひょい格好の餌を与えてどうするのよ!」

聞きづてならないハルヒの発言に、俺と佐々木の視線が国木田に集まる。
国木田よ、お前は俺を怒らせたぞ…

「いや、ついうっかりしてたんだ。
僕も谷口に毒されちゃったかな?」

「国木田、君にはある程度の常識が備わっていると思っていたのだが、それは僕の勘違いだったようだね。
実に残念だよ、同じ中学で勉学に勤しんだ者にここまで失望することになるとは。

ところで、僕も君の秘め事のうち最も重要と思われることを知っている訳だがね、
今回の件はそれの公開で手打ちにする形にしようと思う、いかがかな?」

あぁ…佐々木がここまで怒っているのを見るのは初めてだが、なんというか…俺はこいつをハルヒと同じくらい怒らせたくないなと思ったと同時に、国木田に対しての一人称は"僕"のままということに多少の引っ掛かりを感じていた。

「ちょっ!佐々木さん、ごめんってば!
本当にそれは勘弁してくれ…すみません、勘弁してくれませんか…」

「くつくつ、僕も加虐趣味があるわけじゃないからね。
ひとまずは缶ジュース3本で手を打ってあげるよ」

「今すぐ買って来まーす!!」
そういうと国木田は部室から飛び出していく。
俺も何かいってやろうと思っていたが、
あの国木田があそこまで狼狽えるのを見ることなんて稀だ、今回は溜飲を下げてやるとしよう。

「やれやれ、私にも羞恥心はあるというのに。
困ったものだよね、キョン」

一人称が私になっていることに少しの恐怖のような感情を抱いてしまったのは気のせいにしようかね。

「まぁ、あいつも悪気があったわけじゃないだろうし、
もし次があれば俺にも考えがあるからな、
今回は目をつぶってやろう」

「くつくつ、キョンがそういうなら私としてはもう言うことはないよ」

「あらあら、お熱いこと!
あたしがいるの忘れてない?佐々木ちゃん」

こいつが佐々木をちゃん付けで呼ぶのも正直アレなところがあるが、敢えてツッコむような真似はしないぞ、絶対にな。

「涼宮さん、からかうのはよして欲しいかな…」

「ま、積もる話は後でするとして、
ようこそ!北高へ!」

ほぼ強制的に呼び寄せた人間の言い草じゃないよなぁ…なんてことは口が裂けても言えん。
というか色々とツッコミどころがありすぎてちょっと目眩がするくらいだ。

「ありがとう、涼宮さん。
これからよろしくね」

「えぇ、負けないわよ!」
ーなんて話しを聞いているうちに昼休みも終わりそうだ。
何の勝負をしているのかは知らんがな。


そんなこんなで俺たちが教室に戻ると、
やはり好奇の眼差しが向けられるのだが、
ハルヒの超絶不機嫌フェイスから繰り出された

「何よ?なんか文句でもあんの?」

という脅迫に等しい追求の前では、
クラス連中に立ち向かおうなんて気概は生まれないらしい。

余談だが、午後の授業が始まってから5分後、慌てた顔でコーラを抱えながら教室に飛び込んで来た国木田が、クラス中の視線を集めたのには笑えたね。

放課後、俺と佐々木はまたしてもハルヒに引きずられながら部室へと連れていかれる。

「おい、ハルヒ、まさか佐々木をSOS団に入れるとか言わないよな?」

「あら、キョンのくせに冴えてるじゃない、
そのまさかよ!」

あぁ、こうなったハルヒが止まらないことを俺はよく知っている。
佐々木よ、申し訳ないがここは諦める以外に選択肢は無いし、
俺からは援護のしようがない、すまんな。

「涼宮さん、私が入ってもいいの?」

「あったりまえよ!頭脳明晰、容姿端麗!
SOS団に入る資格は十分にあるわ!
それにクラスの連中と同じ部活になんて入ったらまーた格好の餌食だろうしね!」

SOS団に入ることで奇異の眼差しを向けられる可能性が高まるなんてことを考えないあたり、やはり団長様は流石である。
佐々木が乗り気なことが唯一の救い…なのか?

そんな流れで佐々木のSOS団入りは規定事項となり、
現メンバーとの顔合わせを経て、
SOS団新入部員歓迎ミーティングなるものが始まった訳である。

「さて!記念すべき新入部員が入ったことだし、今後の活動方針を決めるためにもミーティングを始めたいと思います!

で、早速あたしからなんだけど、
平日のうち火曜日と木曜日は受験対策の時間にするわよ!
あと毎週土曜日の不思議探索は隔週に変更!代わりに勉強会を開催することにしたわ!」

…古泉、あいつ自身には改変の影響って出てないんだよな?

…えぇ、そう長門さんから聞いていますが。

…あいつ、どうしたんだ一体?

…僕にも分かりかねるところです。
まぁ、悪いことではないのでしょうけど。

「そこ!ちゃんと話しを聞く!
いい!?天下のSOS団員たるもの、
この学校の歴史に残るような大学へ進学する義務があるのよ!

で、進学先なんだけれど、
みくるちゃんは大学いかないのよね?」

「はぃい…働きながら一人暮らしをしたいと思っていて…駄目ですかぁ?」

「いいえ、それも立派だと思うわ。
だけど卒業してからも団活には顔を出して頂戴ね!」

朝比奈さんは学年がひとつ上のため、
流石に大学までは一緒に入れないみたいだ…
だが、一人暮らしっていう設定にしておけば完全に疎遠になるってことはないし、
ある程度の距離ならハルヒの通う大学近辺に住むことも可能だろうし、妥協点ってところなのか?

「で、あたしたちなんだけど、
もう目指す大学は決めてあるの!」

さて、どんな難関校が飛び出してくるのか…

「スバリ、京都大学よ!
ここなら間違いなく北高生徒、教師、木っ端もろとも度肝を抜いてやれるわよ!」

おいおい…
その大学は俺でも聞いたことがあるレベルの超絶難関校じゃないか…
ハルヒよ、俺の頭はそこまで優秀ではないぞ。

「涼宮さん、それ、本気?」

佐々木が不安そうに声を上げる。
恐らく心配してるのは俺の頭だろう。

「本気も本気、超本気よ!!
ちなみにみんなに拒否権はないからね!

大丈夫、最っっ高のプランを考えてあるわ!」

「ハルヒよ、流石の俺もこればっかりはキツいと思うぞ。
お前や佐々木、長門は問題ないとして、
古泉…は多分頑張ればなんとかなるだろう、
問題は俺だ、申し訳ないがこれっぽっちも自信がない」

「ふふん、でしょうね。
あんたみたいな万年赤点区域警備員がどれだけ自分で勉強したって、
残りの寿命を費やしても不可能に近いことくらい私でもわかるわ。

けど、今日新団員が入部したこと、すっかり忘れてない?」

「おいおい…流石にそれは傷つくぞ、ハルヒよ。
それに新団員が入部したのはわかっているが、まさかお前、佐々木に家庭教師でもやらせる気じゃないだろうな?」

「察しがいいじゃない、キョン!
そうよ、佐々木さんにキョンをビシバシ鍛えて貰うわ!
勿論、佐々木さんだけじゃなくてあたしも特別に手を貸してあげるけどね!

で、古泉くんは有希とマンツーマンで猛特訓!
この布陣なら1年と少しもあれば十分に合格を目指せるわよ!」

こいつの思いつきは大概とんでもないが、
今回は群を抜いてとんでもないことになってきたぞ…

「涼宮さん、確かにその布陣であれば合格できる可能性は大いにあると言えますが、
肝心の佐々木さんの意見は聞いてあげるべきなのでは?

入団早々、京大を目指して活動するというのは少々酷なお話かと」

おお、古泉、俺は久しぶりにお前が頼りになると思ったぞ。
このままいくと俺の青春は勉強に埋め尽くされちまうところだったからな。
まぁ、元より春なんてのはないに等しいんだが。

「古泉さん、僕は別に構わないよ。
元より京大は第一志望校であったし、
それに人に教えるということは無駄なことでもないんだ。
人に教えることで理解が深まるということも確かにあるからね。

涼宮さん、というわけで私は賛成よ。
一度しかない人生だもの、
高い志を持つことは大切だわ」

佐々木さんよ…お前はいつからそんなにアグレッシブになっちまったんだ…

「それじゃあ、決まりね!!
早速だけど、私と佐々木さんで参考書選びに行ってくるから、今日は解散ね!

じゃ!あとよろしく~」


そういうとハルヒは佐々木を引っ張って部室から飛び出していく。
やっぱりあいつは1年前から変わってない…
しかし、今日は4人になってからが本題だ、
飛び出して行ったことは僥倖とも言えなくはない。


「さて、もうみなさんわかっているとは存じますが、
長門さん、今回の改変に関する説明をいただけますか?」

「わかった。もうすでに説明してあることも含め、改めて説明する」


古泉の一声から始まった長門の説明を要約すると以下の通りだ。

・佐々木が北高に転校するよう世界は改変された

・ハルヒは現在、能力を行使出来ない

・外部要因が働かない限り、ハルヒが自己の能力を認識する可能性はほぼ0となった

・これはハルヒが無意識に設けたプロテクトによるもの

・なお、ハルヒ本人や俺たちが危機に瀕したときのみ、プロテクトは一時的に解除される


「だが、なんでハルヒの奴はこんな改変を行ったんだ?
佐々木を北高に転校させるなんて、俺はちょっと信じられないな」

言い終わるやいなや、3人から絶対零度の視線を浴びる。

「あなたは本当にどうしようもない人ですね、まったく。
ここまでやられてもまだ気づかないなんて、
是非一度あなたの頭の中を覗いてみたいものです」

なんて古泉は言っている。
おいおい、俺がなにに気ついてないって言うんだ?


「キョン君、こればかりは流石に古泉くんに同意します。
キョン君は乙女心が分からなすぎです!」

「同意。あなたは流石にどうかしているレベル」


朝比奈さん、長門までそんなことを言いはじめる始末だ。
ううむ、正直な話全く分からんのだが、
俺はそんなに異常なのかね?

なんてことを考えていると、
3人から今日はもう帰ってくれとの三行半と、
ちゃんと涼宮さんと佐々木さんの気持ちを考えてくるようにという宿題をだされ、
俺は部室から締め出されてしまった。

学校に居てもやることはないし、
しょうがない、帰るとするか…

「まったく、キョン君は本当に思春期なんでしょうか?
わたしは彼が仙人かなにかの生まれ変わりなんじゃないかって不安になりますよ!」

朝比奈さんが珍しく口調を荒げる。
最も、僕もその意見には賛同するところだが。

「まぁ、彼は今までもことごとく涼宮さんのアプローチを無に帰してきましたからね。
これくらいはやるでしょうけれど、
今回ばかりは正直呆れを通り越して驚愕を禁じ得ません」

「同意。彼の鈍さは異常。
彼の脳内における電気信号伝達パターンの解析申請を出しているものの許可がおりないことが悔やまれる」

「本当、今回の改変なんて涼宮さんの乙女心の表れ以外の何物でもないっていうのに…」


乙女心、いや、これを乙女心と呼ぶのだろうか。

彼女は、恋敵である佐々木さんにチャンスを与えた挙句、
無意識ではあるが自らがもつ願望実現能力の大半を制御することで、
対等の立場で彼女と張り合おうとしているのだ。

自己の能力を認識していない状況でここまで繊細な改変を行ってしまえるあたり、
彼女が神であるという事実を改めて実感する。
それと同時に、1人のありふれた思春期真っ盛りの女の子であるということも。

その精神は"見事"以外に表現できる言葉はなく、賞賛をおくらずにはいられないほどだ。
だからこそ、そんな彼女の気持ちに毛ほども気づかない彼に我々は頭を抱えているのだろう。

「ですが、僕は気になりますね。
彼が涼宮さんと佐々木さん、どちらを選ぶのか」

「それはわたしもです!
一緒にいる時間が長い分、涼宮さんを応援しちゃいそうですけど…」

「それは推奨できない。
彼女が対等を望んでいる以上、
私たちに出来ることは彼女が用意した舞台を守ること」

その通りだ。
この舞台はなんとしても守りきらなくてはならない。
涼宮さんの力が制限されている今、
妙な動きをする輩が出てくることは想像に容易い。

「ですね。
微力ながら僕も全霊をもってこの舞台を守り通してみせます」


「そうですね!
緊急時の対策を残しているのも涼宮さんらしいしけれど、
わたしは出来ればもう涼宮さんが力を使うことなく、
普通の女の子として暮らしていければ、なんて考えちゃって…

だから、私たち3人はあの子たちを陰から守ってあげなくちゃ、って思うんです」

「全面的に同意。わたしも最善を尽くす」

「えぇ、なんとしても、なんとしても守りぬきましょう、僕たちでー」

気づかぬ者、そして神たる資格を持つ少女達、それを守ろうと決意する者達。
歯車は確かに、回り始めているー

遅れてしまいすみませんでした。
ひとまず第一部が終わります。

年末年始の忙しさに煽られ筆を取る時間がなかなかとれないので
第2部は年明けしばらくしてからの投下になる予定です。

お付き合いありがとうございました。

http://i.imgur.com/zqI2Qlo.jpg
先原直樹・ゴンベッサ

都道府県SSの痛いコピペ「で、無視...と。」の作者。

2013年、人気ss「涼宮ハルヒの微笑」の作者を詐称し、
売名を目論むも炎上。そのあまりに身勝手なナルシズムに
パー速、2chにヲチを立てられるにいたる。

以来、ヲチに逆恨みを起こし、2017年現在に至るまでヲチスレを毎日監視。
バレバレの自演に明け暮れ、それが原因で騒動の鎮火を遅らせる。

しかし、自分はヲチスレで自演などしていない、別人の仕業だ、
などと、3年以上にわたって稚拙な芝居でスレに降臨し続けてきたが、
とうとう先日ヲチに顔写真を押さえられ、言い訳ができなくなった。

2011年に女子大生を手錠で監禁する事件を起こし、
警察に逮捕されていたことが判明している。

先原直樹・ゴンベッサ まとめwiki
http://www64.atwiki.jp/ranzers/

異動、出張などなどが重なりなかなかスレを開く機会もなく、
おまたせしていることは承知の上で放置しており、大変申し訳なかったです。


まさかスレが生きているとは思っておりませんで、
書きだめもない状況です。

書きだめが用意出来次第投下していこうと思います。
遅筆なものでおまたせしてしまうとは思いますが、
お待ち頂けますと幸いです。

ありがとうございます

自分が書いていたハルヒ、佐々木を思い出す意味も兼ねて
近いうちにまずは幕間を投下しようとおもいます。

どうぞよろしくおねがいいたします。

拙いながら投下していきます


幕間 ー大きな溜息ー


やれやれ…唐突にとんでもないことを持ちかけられたが、よく私もあそこでOKしたものて ね。
まぁ、涼宮さんが「特別に手を貸す」と彼に告げた以上、あそこで私だけが引くわけにも行かなかった手前、勢いに身を任せたのはあながち間違いでなかったのは確かでしょうけれど…

「佐々木ちゃーん!!なにぼーっとしてるの!!さっさといくわよ!!!」

件の彼女は相変わらず元気溌剌という言葉がぴったりな勢いで商店街を駆けていく。

「周りの人の迷惑になるからもう少し落ち着いて"歩か"ないと」

「んもぉ!相変わらず堅いのは変わらないのね!!」

恋敵ー
私と彼女は恋敵、それは紛れもない事実だ。
ただ今は彼の恋愛感が答えを出せない3歳児、いや最早恋愛など知らない、産まれて間もないに等しい赤ん坊並みである以上、イーブンな立場で彼と向き合うチャンスをくれたことは素直に感謝すべきことに違いない。

「…ありがとう」

「唐突になによ?」

少し空気が冷める。

「キョンの家庭教師の件よ。まだ何曜日を私で何曜日が涼宮さんかは決めていないけれど、そこも考えてあるのでしょう?」

感謝しつつ釘を刺すのは私の悪いところだけど、ここは譲れない。

「あったりまえじゃない!!!あんな恋心の"こ"の字も知らない朴念仁なんて、家庭教師に美女がきたりなんかしたら勢いですーぐ鼻の下を伸ばすんだから!!」

「それは涼宮さんの言う通りだけど…まぁ彼のことだから鼻の下を伸ばすだけになるかもしれないわよ?」

「それはそれよ!!でもそんなチャンスをあんな気持ちをぶつけてきたアンタを出し抜いて独り占めするなんて一生の恥よ、恥!!!」

曜日の件は敢えてスルーよ…
ひとまず日曜日を自習にさせて月・水・金と火・木・土に分けて、時間の取れる土曜日をいただ…

「それを言われちゃうと恥ずかしいわね…ところで繰り言になるけどキョンの家庭教師の担当曜日はどうするの?」

ぐっ…キョンのことだとグイグイくるわね…
下手な策は通じないでしょうし、ここはイーブンにしておくべきだわ…

「もっちろん!ちゃんと決めてあるわよ!!!月・水を佐々木ちゃん、火・木が私で金曜は自習、土曜日を2人で見ることにすれば完璧じゃないかしら?
日曜日は自習やキョンの息抜きに使わせないとアイツは倒れちゃうだろうし、どう?」


「うん、それなら完璧じゃないかしら」

攻めた甲斐があったか、かなりイーブンな状況で早々に決着がついた


「さて…目的地に到着よ!!参考書を買う費用は先生に無理言ってぶん取ってきたし、団員それぞれに合いそうなものを選んで買っていきましょ!」

「そうね、特にキョンは国語が致命的に駄目だから、なるべく問題文がわかりやすいものを選ぶ必要があると思うわ」

「国語…感想を述べよとか確かにアイツには無理そうね!!」

「枕草子がテスト範囲に入っていた時は悲惨どころの騒ぎじゃなかったのを言ってて思い出したわ…」

「あー」

なんて遠い目をして漏らした涼宮さんと私は
ひとつ大きな溜息をついてから、参考書コーナーを物色しにいきましたとさ。

以上です。
久しぶりな事もありかなり短いですがご容赦ください。

次回分の書きだめがまだ仕上がってませんで、
お待たせすることになることも合わせてご容赦願います。

このSSまとめへのコメント

このSSまとめにはまだコメントがありません

名前:
コメント:


未完結のSSにコメントをする時は、まだSSの更新がある可能性を考慮してコメントしてください

ScrollBottom