雁淵ひかり「下原さんの手、温かかったなぁ…」 (28)

 

ペテルブルク基地



ニパ「ん、何ヒカリ? 何か言った?」

ひかり「ぇ! あ、いえ何でもないです! ただの独り言で…」アハハ

二パ「?」



『おい何やってんだよお前ら! 来ねえなら置いてくぞ!?』



二パ「あーはいはい、わかってるよー! …まったく、ヒカリがいるからって張り切ってるなぁカンノ」
 
二パ「――…いこうヒカリ? 朝食までそんなに時間も無いし」

ひかり「はい」



『…早くしろよ、あと5秒!! ごー! よん――』



二パ「もう、今行くってば!」タッ

ひかり「……! あ、二パさん!? 足元――」


ズルッ


二パ「だぁ!?」ズテンッ

ひかり「二パさん! だ、大丈夫ですか!?」

二パ「~~っ、いてて……。な、なんでここだけこんなに霜が…?」

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――――
――



<プァーパッパパー



ひかり「――! もう朝礼?」タタ


ひかり「……ペース配分間違えた、あんまり追い込めなかったなぁ」



――タッタッタッ


直枝「っ…ぜぇ……はっ…! くそ、こいつ…」

二パ「はぁ……はぁ…」

ひかり「!」

直枝「む、“無駄に”体力だけは……~っぜは、…ありやがって!」ガク

ペテルブルク → ペテルブルグ

 
二パ「…ほ、ホント凄いねヒカリ? 体力“なら”502で一番なんじゃないかな?」ニコ

直枝「へ、へんっ! 実戦に活きなきゃそんなもんっ……ぃみねぇ…ぜ!」ハァ フゥ

ひかり「!!」

二パ「また素直じゃないよ。だったらなんでカンノも走ってるのさ?」

直枝「う、うるせぇな!? ///」


ひかり(……そうだ。こんな体力だけつけたって、ウィッチの魔法力〈ちから〉が伸びないんじゃ…)モヤ


ひかり「っ…」ギュ

二パ「ヒカリ…?」

直枝「? なんだ、実はお前もバテて喋れねえのか?」

 

食堂


クルピンスキー「いやぁ、朝からこんなに豪華なメニューなんて久々だね」

ロスマン「ん、この風味…? 確かに、ワインの漬け込みに手間がかかってそう」

直枝「なんだ? 今日って何かの祝い日だったか?」

ジョゼ「はむ。~……はむっ」モグモグ

下原「い、いえ! その…雁淵さんの入隊にあやかって、佐世保の海軍名物を真似たビーフシチューを作ってみただけです //」

直枝「ほーん? これが佐世保鎮守府〈さちん〉のビーフシチューか、こんな美味ぇんだな」

下原「あ、でも多分同じには作れてないから…!」

二パ「いや、それでも凄く美味しいよ!」

ジョゼ「はむっ…~」モグモグ

サーシャ「ふふ。という事はつまり、雁淵ひかり軍曹の502入隊祝いという意味合でしょうかね、隊長?」チラ

グンドュラ「……。美味い」

 
ひかり「……」

下原「…? 雁淵さん、どうしたの?」

ひかり「ぇ…!」

下原「なんだか元気ない様子だけど、やっぱり食べ慣れた味と違うよね? ごめんなさい」シュン

ひかり「へ!? いぃやっ、そんな事ないですよ!? とっても美味しいですから、私なんかの為に有難うございます!」


二パ「…ヒカリ、食欲出ないのかな?」カチャ

直枝「はんっ、結局グロッキーかよ? 半人前のくせに、俺達の真似して朝練なんかすっからだぜ」

二パ「!? ちょっとカンノ、止めなって!」

 
サーニャ「そうよ貴方達? あまりに騒がしくするなら正座して食べてもらいます。隊長やジョーゼット少尉を見習いなさい」

ジョゼ「~…はむ」モグモグ

グンドュラ「……。美味い」

直枝「……わかったよ」

二パ「(う~、ワタシもか…)すみません」




ひかり「……」

下原「雁渕さん? 具合が悪いなら後で温め直して――」

ひかり「いえ平気です。ちょっと考え事をしてただけですから」

下原「……」

ひかり「ぃ…いただきます!」カチャ

下原「…大丈夫ですよ」ヒソ

ひかり「えっ」

 
下原「この間のネウロイの一件、ジョゼと雁渕さんが居てくれて私とても心強かったです」ニコ

ひかり「下原さん…!」


直枝「――下原~、まだお代りあるのか?」

ジョゼ「! あ、定ちゃん!? 私も…」

下原「ふふ、はい。順番にやるから待ってて?」ガタ

ジョゼ「ぅ、うん。ごめん //」

直枝「肉多目に頼む!」ズイ

下原「はい」スタスタ




ひかり(下原さん優しい。慰められちゃったな)アム

ひかり「――! おいしい、本当に佐世保のビーフシチューみたい…!?」


ひかり「はむ、ぁむっ…~」パクパク


ひかり「~…(温かい!)」モグ

本当だ
自分でも気づいてなくて笑ってしまった

※サーニャ → サーシャ

 

基地野外

モニュメント前



ひかり「――よし、とにかく少しでも前進! 頑張るぞー!」フィィン


ひかり「ん……っと!」グイ

ひかり「…魔法力を右から左手に素早く、切り替えて! ふんっ!」バッ



――――

――





ひかり「ゃ、やった! また天辺まで来れた!」


ひかり(疲れたけど、さっきよりは苦戦しないで登れた気がする。よし次はこれより速く――)ゴソ

ひかり「……? ぁ…(しまった、ストップウォッチのスイッチ入れ忘れてる…)」



『おいっ! ひかりーー!!』



ひかり「! …あ、菅野さん?」

 

『何してんだお前ーーっ!!』


ひかり「見てください菅野さーーん! 私、もう完璧に上れますよー!?」


『そうじゃねえ馬鹿野郎ー!! とにかくさっさと降りて来いっ!』


ひかり「??」


――



直枝「お前、どういうつもりだよ?」ジト

ひかり「どういうって、訓練です。もっと魔法力を上手く使えるようになれば私も――」

直枝「チッ…努力すんのは勝手だけどな。お前、“此処”に訓練しに来てんのか?」

ひかり「ぇ?」

直枝「今ネウロイが出て、出撃しなきゃならなくなったらどうする気だ」

ひかり「!」

 
直枝「出涸らしの魔法力で戦う気かよ? こんなの2回も3回も一気に登りやがって」

ひかり「……菅野さん、ずっと見てくれていたんですか?」

直枝「ぅぐ…!? た、たまたま視界に入ってただけだっ!! なんで俺がお前の訓練なんか見守ってやんなきゃなんねえんだ!? //」ズイッ

ひかり「す、すみません」


直枝「~っ……とにかく、変な無茶してんじゃねえ。お前は一応ロスマン先生の課題をクリアしたんだ――」

直枝「…面子に入った以上はいつでも戦えるようにしとけ」

ひかり「分かってます! だから少しでも役に立てるように、1日でも早く強くならなくちゃいけないんです!」

 
直枝「……けっ! 俺の言った事分かってねえだろ? いざって時にてめぇが死んでも、そんな言い訳何にもなるかよ」

直枝「お前が“対等”でもない癖に俺らと“平等”なったのはお前の責任だ。本末転倒な事して俺達の足引っ張んな」プイ

ひかり「…でも、私これくらいしかやる事が無いです。ストライカーや武器を使った訓練は勝手に出来ないですし」

直枝「だったらロスマン先生にでも頭下げて扱いてもらえ。そんでさっさと音を上げて扶桑に帰れ」スタスタ

ひかり「そうですね、分かりました!」


直枝「!? は…?」クル

ひかり「ロスマン先生の所に行ってみます! 有難うございます菅野さん!」ダッ


――タッタッタッ



直枝「……。都合の良い所だけ聞いてんじゃねえよ…」

 

司令官室


グンドュラ「…エディータが止めに行く前に菅野が何か吹き込んだな」

ロスマン「ええ。おもむろに走り出しましたが」

グンドュラ「……。恐らくここへ来るぞ」

ロスマン「え?」

グンドュラ「“先生”を探しに、いずれ此処まで来ると見た」

ロスマン「…そうですね。確かに」

 
グンドュラ「このオラーシャで戦うには半端な魔法力だがモチベーションは高い、そして接触魔眼…。あの歪な才能は我々の手に負えると思うか?」

ロスマン「……道はあります」

グンドュラ「そうか」

ロスマン「…ただ、相当な苦難を背負うのは間違いないでしょう」

グンドュラ「だろうな。残念ながら姉に取って代える訳には到底いかない」

ロスマン「しかし彼女にも辿り着ける“かたち”は存在します。問題はそこへの導き方です」

グンドュラ「まさかそこが問題になるのか…。それができる人材だから、無理を押してまで来てもらったんだがな?」

ロスマン「ここまで切迫した状況で即物的な成長を促すのは簡単ではありません。土台となる何もかもが未熟ですから」

 
グンドュラ「私が口を出すのは烏滸がましいだろうが、逆ではないか? 経験上、環境によって人は変わり得ると思うが」

ロスマン「…それは私の方針から逸脱する事を、隊長も知っている筈なのでは?」チラ

グンドュラ「……そうだな。君はギャンブルを嗜んでも運否天賦は決してやらないタイプだったな」

ロスマン「経験から多く得られるのも事実ですが、502の実戦ベースで彼女を鍛えるのは余りに危険過ぎる。技術的には勿論、なにより精神〈メンタル〉が先行してしまう恐れがあります」

グンドュラ「成る程、菅野の次は妹か…。雁淵中尉の人徳もまったくもって罪作りだ」

ロスマン「菅野さんの件は実力を備えたベテランウィッチだったからこその荒療治でしたが、彼女は寧ろ志気のみが成熟してしまっている状態です。実戦でそれが突出してしまえば、我々はまた“8人”になってしまうことでしょう」

グンドュラ「ならばまたフォロー役をたてるか」

ロスマン「…技術的なフォローは精神面よりも限界があります。百戦錬磨のラル隊長が常に付いてくれると言うのなら、検討しますよ?」ニコ

グンドュラ「……」

ロスマン「無理ですよね? そういうことです」

 
グンドュラ「そうか、エディータがそう言うのなら従おう。…スパルタにも色々あるのだな」

ロスマン「根性第一主義は教官としては邪道〈ファンタジー〉ですよ」

グンドュラ「……。そういうものか」

ロスマン「ええ。生徒を死なせないようにするのがその命題ですから」

グンドュラ「…成る程、正論だ。しかし雁淵軍曹がこうして我々の一員と、エディータの指導を勝ち取った要因がその“根性とやる気”という事実が可笑しいな」フッ

ロスマン「皮肉ですか? 司令官に苛められる労働環境なら、私は帰らせてもらいますけど」ジト

グンドュラ「いやすまない。クルピンスキーに倣ってジョークを言ってみたんだが、楽しくないか」

ロスマン「あ、あのですね…? そもそも偽伯爵の軽口を楽しんだ覚えもありませんから。真面目な顔して冗談はやめてください」

グンドュラ「……」



コンコンッ


ロスマン「!」

グンドュラ「……」


『あの、お仕事中すみません! ロスマン先生はそちらにいませんか!?』

 
グンドュラ「来たか」

ロスマン「…ひかりさんね? 私はここよ、入って来なさい」


『あ、はい! 失礼しますっ!』


ガチャ


ひかり「…ロスマン先生!! 私の訓れ――」スタタ

ロスマン「落ち着きなさい」ピッ

ひかり「んんっ!?」ビク

ロスマン「貴方の用件は分かっているわ」

ひかり「ぇ? えっ、どうして!?」

ロスマン「オベリスクの自主訓練もここから観ていたわ。魔法力の制御には大分習熟したようね?」

ひかり「!! あ、ありがとうございます!」

 
ロスマン「けれど少し無計画にやり過ぎ。菅野さんが止めなければ私が中止していた所よ?」

ひかり「すみません…」

グンドュラ「…雁淵」

ひかり「は、はい!」ビク

グンドュラ「端くれでも君は既に我々の戦力として勘定に入っている。魔法力を空にして待機するウィッチなど到底有り得ない、いいな?」

ひかり「(ぅぅ…菅野さんにも注意されたことだ…)はいっ、気を付けます!」

ロスマン「取り敢えず、明日からは私が指導するから今日は休みなさい」

ひかり「え…!? で、でも先生! 今日はまだ一日中残ってますし、魔法力を使わない訓練を――」

ロスマン「駄目、今日は私も時間が取れないから大人しくしてなさい。適切な方法で訓練をしないと返って逆効果になる事もあるわ」

ひかり「!」ガーン

 
ロスマン「ひかりさん、貴方の気持ちはわかるけど少し気負い過ぎよ? 強く在りたいのなら正しく、その為にも貴方は前以外も見る視野を持ちなさい」

グンドュラ「……至言だな」ギシ

ひかり「ぇ??」

グンドュラ「…雁淵軍曹、本日中の出撃及び魔法の行使を一切禁止する。エディータに言われた意味を少し考えてみろ」

ひかり「は、はい…」

かりモハ書きたかっただけなのに何だか変な風になってきた
寝る

 
ハイデマリー「ぇと……? とりあえず工藤さんのご意見について、この場での着地はどうしましょうか…?」キョロ

ルーツィア「どうって言われてもな…。無いもんは無いんだからしょうがないだろ」

オクタヴィア「まあ、それはそうかしらね。べつにお湯に浸かったリラクゼーションは皆賛成でしょうけど、この基地に浴槽設備がないのはどうしようもないわ」

敏恵「ぐぅぅ…。悲しい…」

ハイデマリー「工藤さん…」

エステル「悲しい時に“ぐー、悲しい”なんてまんま言う人初めて見たわ」


敏恵「…あたしだけなんて、なんか腑に落ちない! 皆はお風呂の時間をもっと大事にしないの!? どうなのマリ!?」ビシッ

ハイデマリー「えっ、私ですか…?? ぃぇ、あの……べつに大切にしていない訳ではないと思いますが…」

敏恵「本当に? でも哨戒一緒だった後はいつも不自然に時間ずらすし、それで後から来たと思えば10分くらいですぐ出て行っちゃうじゃん!?」

ハイデマリー「!! そ、それは……その…。恥ずか…ぃです…ら… //」モゴモゴ

敏恵「?」

やばい、間違えてしまった。
>>26関係ないです

このSSまとめへのコメント

1 :  SS好きの774さん   2016年11月28日 (月) 23:39:05   ID: 4DxfXODr

編集ミスされると某所で纏めなくなるから注意して・・・

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