肇「えっ?紗枝ちゃん、水着持ってないの?」 (45)

短め。
よろしくおねがいします。

[風光る乙姫]小早川紗枝のセリフバレを微妙に含みます。
ご注意ください。

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秋は一体どこへいったのか。

あっという間に風が冷たくなった初冬。

事務所でみんなでぬくぬくしていたら、紗枝ちゃんから相談を持ちかけられた。

肇「ちょっと意外かも。てっきり持ってるんだと思ってた。」

紗枝「うち、そもそも泳げへんしなぁ。」

いつき「へー、そうなんだ。じゃあ今度特訓しよう!教えてあげるよ!」

紗枝「あ~……お手柔らかになぁ。」

いつきさんに教わるのはいいかもしれない。

ダンスレッスンの時も、的確なアドバイスをくれたりするし。

紗枝ちゃんはあんまり乗り気じゃないみたいだけど。

聖來「あれ?でもこの間、南国のビーチでお仕事、行ってきたんじゃなかった?」

いつき「あー、行ってたね。確か、ニュー……なんだっけ、カドレナ?」

肇「ニューカレドニア、です。天国に一番近い島って言われてますね。」

いつき「そうそう、そこニアそこニア。いいなー、南の島。こっちは寒いのに向こうは暖かかったんでしょ?」

紗枝「せやなぁ。ぽかぽかしてて、えぇ気持ちやったで~。」

肇「その時はどうしたの?ビーチのお仕事っていったら、水着も着たんじゃ……」

いつき「まぁ、お仕事だし。衣装さんが用意してくれたやつじゃない?」

紗枝「あぁ、この間のはPはんが用意してくれた水着やったんよ。」

聖來「あら、Pさんが。ちょっと意外かも。どんなのだったの?可愛かった?」

紗枝「なーんも。普通のすくーる水着やったんよ。」

3人「へ~、スクール水着かぁ……」

紗枝ちゃんの言葉を、3人同時におうむ返ししてしまう。

……ん?

今なにかすごいこと言われたような……?

聖來(え、今スクール水着って言った!?なに!?紗枝ちゃんトコのPさんってソーユー趣味の人だったの!?)

いつき(知らないですよ!Pさんたちの性癖に詳しいのは聖來さんじゃないですか!!)

聖來(変な言い方しないでよ!あたしはお酒の席でそういう話を聞くだけだし!肇ちゃんだって紗枝ちゃんトコのPさんとも仲良いじゃない!)

肇(私だってたまに相談はされますけどそこまで深くは知りませんでしたよ!っていうか紗枝ちゃんも普通のって言ってませんでした!?)

紗枝「……なんや、3人だけでずいぶんおもろそうな話してますなぁ?」

3人「はい!すいません!」

思わず敬語になってしまった。

確かに目の前でひそひそ話はよくなかった。

でも内容が内容だし……

いつき「と、とにかく!要は紗枝ちゃんの水着選びに付き合えばいいって事だよね!?」

紗枝「お願い、できますやろか?」

肇「も、もちろん!私も前に手伝ってもらったし。」

聖來「そ、そういう話ならあたしの出番かな!?」

明らかに強引に話を進めたいつきさんに乗る。

この話を続けるのは危険な気がした。

……あのPさん、真面目な人だと思ってたんだけどなぁ。

善は急げ、ということで、また4人で買い物へ。

もうすっかりこのメンバーで出かけることが多くなった気がする。

お店へ向かう道中、後ろで聖來といつきさんが、ひそひそと話している。

聖來(そのうち、あたしたちもスクール水着着ることになるのかな……)

いつき(ま、まさかぁ…… 需要ないですよさすがに……)

聖來(でも、美波ちゃんも志乃さんも着てたし……)

いつき(……あー……そういえば智香ちゃんなんか、その上でランドセル背負わされてたっけ……)

聖來(……覚悟、しておいた方がいいのかなぁ。)

いつき・聖來(はぁ~……)

二人で同時にため息。

気分が重そうだ。

……私にも、そういうお仕事、来るのかなぁ。

そんな話をしているうちに、事務所近くのマリンショップへ到着。

いつき「この時期でも水着売ってるとこあるんだねー。」

聖來「そりゃね。それにこのお店もうちの事務所の御用達だし。」

紗枝「な、なんや緊張してきたなぁ……」

聖來「ほら、何してるのー。さっさと入るよー。」

いつき「一名様、ごあんなーい!」

肇「なんか見覚えあるなぁこの流れ。」

お店の前でたじろいだ紗枝ちゃんの背中を押して、4人で店内へ。

ひとまずはみんなで見て回ることになった。

さすが、事務所御用達ということもあって色んな水着が並んでいる。

……私も新しいの、買おうかなぁ。

聖來「どう?何か気になるのとかある?」

紗枝「せやなぁ……これ、とか。」

早速見つけたという紗枝ちゃんの指の先には

『寒い海でも安心!

服を着たまま着られます!

ドライスーツ \149,800』

紗枝「これ、和服でも着られるんかなーて。」

いつき「いやー、さすがに和服は無理だと思うよ。」

聖來「ていうか気になるってそうじゃないでしょ!?」

聖來さんが思いっきりツッコむ。

聖來「紗枝ちゃん今日の目的わかってる!?Pさんの目を覚まさせるんでしょ!?」

肇「それも微妙にズレてる気が……」

聖來「とーにーかーく!ちゃんとかわいい水着買うんだから!ちょっとこっち来なさい!」

息巻く聖來さんが紗枝ちゃんの腕を掴んで店の奥へと引っ張っていくので、慌ててついていく。

どうやらスイッチが入ったみたいだ。

聖來「はい!そこの試着室に入る!いつき、水着持ってきて!」

いつき「はいはーい。」

応じたいつきさんが、店内から片っ端から水着を持ってくる。

着せ替えタイムの始まりだ。

様々な色や種類の水着を、取っ替え引っ替え紗枝ちゃんに着せていく。

……なるほど、これはちょっと楽しいかも。

私の時に、みんながノリノリだった気持ちが、なんとなくわかった。

いつき「しかし、紗枝ちゃんも素材がいいから何着ても似合うねー。」

紗枝「せ、せやろか……なんや、恥ずかしいわ。」

聖來「そうなんだよねー。逆に決めにくいかも。紗枝ちゃんはどんなのがいいとかある?」

紗枝「ん~、あんまり肌を出すんは恥ずかしゅうて……」

肇「でも、紗枝ちゃんのステージ衣装って、なんというか、結構大胆なのが多いと思うんだけど。ほら、七夕の織姫さんとか。」

紗枝「あー、あれはかいらしい衣装やったなぁ。」

いつき「……ラインがさっぱりわからない。」

紗枝「ほんまにな~。なんでやろな~。」

肇「まぁ、本人もよくわかってないみたいですし……」

聖來「紗枝ちゃんもなかなか独特の感性持ってるよね……。」

その後も四人で、あーでもない、こーでもないと意見を交わすも、一向に結論が出る気配がない。

いつき「仕方ないなー。ここはいつきさんが、とっておきの水着を用意してあげよう。はいこちらっ!」

自信ありげにいつきさんが一着の水着を持ってきた。

それは……

紗枝「あ、ひも……」

肇「だからなんでそんなのまで売ってるんですか……」

いつき「いやー、前にも紗枝ちゃんこういうの気にしてたじゃん?なんか私も気になっちゃって持ってきておいた!」

黒い紐のような水着だった。

いや、水着のような紐……?

そもそも水着って呼んでいいのかな。

っていうか外で着て大丈夫なんだろうか?

ぐるぐる考えていると、しばらく思案顔だった聖來さんがにやりと笑って

聖來「そんなに気になるんなら着てみる?」

いつき「んなっ?!」

突然、いつきさんに爆弾を放り投げた。

思わぬところから攻撃されて顔が一瞬で真っ赤になるいつきさん。

いつき「いや!これは紗枝ちゃんにって……」

紗枝「せやなぁ。それ、いつきはんにとぉってもよく似合うと思うで~。」

いつき「ちょっ!?」

すかさず乗っかる紗枝ちゃん。

これは、巻き込まれないようにしたほうがよさそうだ。

聖來「いつきなら大丈夫でしょ。結構スタイルいいんだし。」

いつき「そりゃこれでも気をつけてますから……じゃなくて!なんで?!なんで私になったんですか!?」

聖來「実は興味深々っぽいいつきが可愛かったから♪」

いつき「だからってなんでそーなるんですか!?」

聖來「ほーら、見てあげるからこっちきなさーい。」

いつき「いや!?ちょ、肇ちゃん!!紗枝ちゃん!!助けて!!」

肇「あー……ファイト、です。」

紗枝「いってらっしゃ~い」

いつき「そんなーーーーー!!?いーーーーやーーーーーーー…………」

あっという間に、いつきさんは聖來さんに引きずられていってしまった。

残された私は、心の中でいつきさんに手を合わせる。

肇「さて……どうしよっか。」

紗枝「ん~、せやなぁ……」

二人で、水着のラインナップを改めて見る。

紗枝「肇はんは、どれがえぇと思う?」

肇「私?私は……」

聞かれて、今までの水着姿の紗枝ちゃんを思い浮かべる

実際、どれを着ても似合ってたのは間違いないけど……

肇「これが、一番似合ってたと思うよ。」

ひと組の水着を指差した。

白い、シンプルなビキニタイプの水着に、花の模様があしらわれたパレオ。

装飾が少ない方が、彼女らしさを引き立てているような気がした。

紗枝「うちも、これえぇな~て思てたんよ。このひらひら~が衣装のと似てるな~て。」

肇「パレオがあれば、ある程度は身体も隠せると思って。」

紗枝「せやなぁ。……ん、決めた。肇はんのお墨付きももろたし、うち、これにするわ。」

紗枝ちゃんはそういって、選んだ水着を大切そうに胸に抱えると、

紗枝「おおきになぁ、肇はん。」

にっこりと微笑んだ。

うん、やっぱり彼女の笑顔は、とてもかわいらしい。

ちょうど買い物を終えたタイミングで、聖來さんといつきさんも戻ってきた。

聖來「あれ、決まったんだ。」

紗枝「はいなー。肇はんが選んでくれたんよ~。」

聖來「おー、肇ちゃんも選んであげられるようになったんだねー。お姉さんは嬉しいよ。」

肇「おかげさまで、私も学ばせてもらってるので。あの、ところで……大丈夫ですか?」

聖來さんの後ろで、どんよりとしているいつきさんに声をかける。

いつき「ハズカシメラレタ……モウオヨメニイケナイ……」

聖來「何言ってるの、似合ってたじゃない。」

いつき「そういう問題じゃないですよ……」

紗枝「いつきはん、人をからかう時は、ちゃあんと反撃されんようにせなあきまへんえ~♪」

いつき「反省します……」

あのいつきさんがへとへとになっている。

どうやら相当遊ばれたみたいだ。

肇「でも、似合ってたんですか。……ちょっと見てみたかったな。」

聖來「見たい?あとで事務所に戻ったら見せてあげるよ。スマホで撮ったから♪」

肇「ほんとですか?……ちょっとドキドキしますね。」

紗枝「楽しみやなぁ♪」

いつき「だめ!!っていうか消してくださいよ!!」

聖來「えー、どーしよっかなー♪」

いつき「うぅ……もしPさんにまで見られたら……」

聖來「いいじゃない。あ、もしかして直接見せてあげたいとか?」

いつき「そうじゃなくて!……あーもう疲れたよぉ……」

聖來「冗談だよ。ちゃんとPさんたちには内緒にしておくから。」

いつき「お願いしますよ……」

そんなやりとりをしながら、店を出る。

事務所へ戻る道中、心なしか紗枝ちゃんの足取りは軽やかだった。

ちょっとは恩返しできたかな、と思いつつ、またこの四人で出かけたいとも思った。

来年は夏が楽しみだ。

以上になります。

デレステのイベント直後にガチャで来るとは思っていませんでした。
もう空っぽです。


関連作はこちら。
よろしければこちらも読んでいただけると幸いです。


いつき「肇ちゃんの下着ってさぁ」

紗枝「いつきはん、最近よー食べるなぁ。」


ありがとうございました。

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