紅ノ亞里亞「男を呪うのですね」紅莉栖「ええ」【オカン×シュタゲ】 (81)


紅莉栖「……本当にあなたが紅ノ亞里亞さん?」

亞里亞「ええ。それがなにか?」

紅莉栖(私より年下じゃない……)

紅莉栖「そう。ならいいんですけど」

亞里亞「ご依頼の内容は?」

紅莉栖「そうですね。私の依頼は―――」





紅莉栖「―――ある男を呪ってほしい」



SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1478747480

※オカンとシュタゲのクロスSSです
オカン側は亞里亞と悪魔しか登場しないシュタゲ寄り話
5pb.祭り公式SS世界線のような世界だと思っていただければ
その辺嫌な方はブラウザバックをお願いいたします

――――――
―――

Site1 牧瀬紅莉栖
[2時間前 未来ガジェット研究所]


ダル「うーん……うーん……?」カタカタ ッターン

岡部「ダルよ。さっきからモニターの前で何をうんうんと唸っているのだ」

ダル「いやあ、とあるお店の店員さんがとっても萌え~だって、ある筋からタレこみがあったんだけど」カタカタ

まゆり「萌え~な店員さんか~。可愛いんだろうなぁ~♪」

ダル「ネット上のどこを探してもその子の個人情報に行きつかないんだよねぇ」

ダル「まるで何かに守られてるような……。こんなこと今までで初めてでさ」カチカチ

岡部「……今俺は軽く引いているぞ。お前のスーパーハカーの腕をそんなくだらんことに使うなどとッ!」

ダル「だからハカーじゃなくてハッカーだっつの!」

紅莉栖「そういう問題じゃないだろーが!」ゴチン!

ダル「ひでぶっ!!」


まゆり「ダルくん、だいじょうぶ?」

ダル「よ、洋書の角はやめたげてよぉ……」プルプル

紅莉栖「私とまゆりの目の前で普通に気持ち悪いストーカー行為をすんなっ!」

岡部「お、落ち着け助手。マイフェイバリットライトアームは某超国の女スパイの動向を探ろうとだな……」

紅莉栖「厨二病乙! あと助手って言うな! ってかこれ見てよくそこまで妄想できるわねっ」

岡部「これとは?」



http://www.rouge_small_castle.co.jp/


         紅

         ノ

         館
  



岡部(おお、これはいかにもな感じではないか……!)ドキドキ


まゆり「なんだか怖そうだよ、クリスちゃん」

紅莉栖「大丈夫よ、まゆり。見るからに厨二病こじらせちゃった痛い人のページだから」

ダル「牧瀬氏は何もわかってないお! この厨二病ど真ん中なサイトと店舗を運営してるのが"ロリかわクール系美少女"だってところが最高なんだってばよ!」

ダル「きっと紅ノ亞里亞ちゃんはゴスロリファッションで自作のぬいぐるみを抱きしめてて『私は悪魔に魂を売ってしまったの』とか言っちゃってる系少女なんだお!」

まゆり「ダルくん元気だねぇ~」ニコニコ

ダル「ちなブラコン設定な。呼び方は『お兄様』か『兄くん』以外にありえないww」コポォ

岡部「ソースは?」

ダル「@ちゃんですがなにか?」

岡部「貴様のとある筋というのはソレか……」ガックシ


岡部「というかお前、今『店舗』と言ったか?」

紅莉栖「ここってその店員さんの超絶恥ずかしいポエムとか設定集とか設定画置き場じゃないの?」

ダル「違うお。普通に吉祥寺にあるお店のサイトだお」

ダル「つか牧瀬氏、中身もよく見ないで決めつけとか(・A・)イクナイ!」

紅莉栖「橋田の妄想設定もたいがいだろうが」ゴゴゴ

ダル「ヒェッ」

まゆり「ここってなんのお店なのかな? ぬいぐるみのお店だったらいいな~♪」

紅莉栖「……なになに? 『紅ノ館へようこそ。復讐心に燃える心、嫉妬に駆られる日々云々……黒魔術代行』」


紅莉栖「黒魔術!?」

岡部「黒魔術だと!?」


岡部「まさかこの現代日本に黒魔術代行業が残存していようとはな……ククク」ニヤリ

紅莉栖「…………ハァ(ため息)」

まゆり「黒魔術って、魔法のこと~?」

岡部「ちっがーうぞぉ、まゆり! 黒魔術とは神をも欺く禁術! その圧倒的な力ゆえに術者をも蝕んでしまうという悪魔の秘術なのだぁフゥーハハハ!」

紅莉栖「……………………ハァー(ため息)」

ダル「あっ。しまった、これは波乱のヨカーン」

岡部「ルーン、セイズ、ガンド……我が右腕に封印されし悪霊を解き放つべく、今まさに奴らは決戦の準備をしていることだろうっ!」バサッ

紅莉栖「……まだ厨二病の痛いホムペだったらどれだけよかったか」

岡部「どうした助手ぅ。まさか科学の申し子ともあろう貴様が、黒魔術の真実を前にして怖気づいているのではあるまいなぁ?」ニヤニヤ

紅莉栖「だってこれ……ただの詐欺サイトじゃない」

岡部「がっ!!」

ダル「アチャー」


紅莉栖「『呪いには三つのコース』……うわ、結構な額をふんだくるのね」カチカチ

岡部「おい、クリスティーナッ! 我が感動を一瞬にして台無しにしてくれたな!?」

紅莉栖「はあ? 私は事実を言ったまでですがなにか?」ギロ

岡部「どこが事実なのだっ! この店の経営者が詐欺行為をしているという証拠でもあるのか!?」

紅莉栖「黒魔術なんてあるわけないだろーが。ないもので商売してる時点で詐欺。はいQ.E.D.」

岡部「ほおーう。つまり貴様は、我が眼に宿りし魔眼リーディングシュタイナーまでも否定すると言うのだな?」

紅莉栖「当たり前でしょ。あまりにも非科学的過ぎよ」

岡部「なっ! ならDメールを送信した後、俺だけ記憶を維持している理由が説明できるのかっ!?」

紅莉栖「だから、それこそあんただけが記憶を維持しているかもまだ証明できてないでしょーが!」

まゆり「ちょ、ちょっと二人とも~! 喧嘩しちゃダメだよ~ぅ!」

ダル「いや、こうなることが簡単に想像できたのに止められんかった僕に非があるっつーか……」


岡部「そうやってなんでもかんでも否定する気か、クリスティーナよ」

紅莉栖「っ……。私は、非科学的なものが許せないのよ」

紅莉栖「しかもそれで人様から金を巻き上げて、自分の利益にしてるなんてもっと許せないわ」

岡部「だが黒魔術が存在しないとも証明できていない」

紅莉栖「確かにまだ科学が現象を説明できない分野はあるかもしれない! だけど、ないものをあるって言うのはペテン師のやることでしょ!」

岡部「いいや、黒魔術は存在する。もし巧妙にその事実が隠されているのだとすれば、それは宇宙規模の陰謀だ」

紅莉栖「……どうしてあんたはそういうことを平気で言えるわけ?」

岡部「フッ、当たり前だ。この鳳凰院凶真の言葉は常に真実なのだからな! フゥーハハハ!」

紅莉栖「……話にならない」ギリッ


ダル「つ、つかさ、そんなに疑うんだったらリア凸すればいんじゃね? 場所、吉祥寺っぽいから総武線で一本だお」アワアワ

まゆり「そ、そうだよ! まゆしぃもそれがいいと思いまーす!」

岡部「うむ、ラボメンナンバー2とナンバー3にしてはなかなか鋭い提案――――」

紅莉栖「だったら私だけで行くわ」

岡部「な、なにぃ!?」

紅莉栖「冷静に考えて、こんな恥ずかしい白衣の男の人と一緒に吉祥寺になんて行けない」

岡部「」チーン

ダル「ぐはー。なんか牧瀬氏の表面温度が氷点下な件について」

まゆり「クリスちゃん……」


紅莉栖「いいわ。岡部の熱意に免じて『この世に黒魔術は存在する』という仮説を立ててあげる」

紅莉栖「ゆえに私はこれからこの仮説を否定するためのデータを集めてくる」

紅莉栖「そのためには実験的に誰かを呪う必要があるわけだが」

紅莉栖「私は岡部を呪おうと思うわ」ウフフ

岡部「…………」ガクガク

ダル「…………」ブルブル

紅莉栖「もし怪我でもしたら自業自得ね。ま、そんなこと起こるわけないけど」ガチャ キィ

まゆり「クリスちゃん、いってらっしゃーい」フリフリ

紅莉栖「あ、岡部。髪の毛数本もらうわよ」ブチブチッ

岡部「い、いだだっ!?」

紅莉栖「てゆーか黒魔術とか有り得ないに決まってる。え? 論破? するのも馬鹿馬鹿しすぎるんですけどww」プギャー

岡部「この女……」プルプル


―――
―――――

Site2 牧瀬紅莉栖
[紅ノ館]


亞里亞「男を呪うのですね」

紅莉栖「ええ」

紅莉栖(むしろ一発くらい天罰でも食らえばいいわ……って、なにを非科学的なことを)ウウム

亞里亞「では、黒魔術を執行するための"触媒"を」

紅莉栖「ああ、その辺はHPで読みました。呪う対象の髪の毛ですよね」スッ

亞里亞「確かに。では―――」

紅莉栖「相手の情報はこちらに書いておきました」スッ

亞里亞「随分準備がよろしいようで」

紅莉栖「実験の成功の鍵はその準備の周到さにあるので」

亞里亞「……そうですわね」


亞里亞「ですが、こちらの羽ペンと紙を使ってもう一度お書きください」

紅莉栖「これじゃダメなんですか?」

亞里亞「呪いにおいて最も大切なのは貴女の意志ですので。貴女としても、呪いをかけたという実感がほしいとお思いでしょう?」

亞里亞「今ここで書くことが儀式なのですわ」

紅莉栖「なるほど……。この黒い羽ペンには何かあるんですか?」カキカキ

亞里亞「闇の眷属であるカラスの羽。インクにはコウモリの血を混ぜています」

紅莉栖(うわあ、これはフェイリスさんと別方向に吹っ切れた痛さね……)カキカキ

紅莉栖「……はい、書けました」

紅莉栖(私、アイツの個人情報そんなに知らないんだな……)

亞里亞「コースは?」

紅莉栖「『悪魔の儀式』で。これ、お金です。確認してみてください」スッ

亞里亞「確認します」スッ

紅莉栖(さてどこから切り込んでいくか)


紅莉栖(さっき出されたハーブティー……スンスン。いや、毒を入れるメリットが無い)

紅莉栖「お茶、いただきます」ツツーッ

亞里亞「…………」

紅莉栖「……何です? そんな大きな目で見つめて」

亞里亞「いえ、あなたが初めてだったものですから」

紅莉栖「初めて?」

亞里亞「ここで私の出したハーブティーを飲んでくださったのが」

紅莉栖(あー……これは失敗した? 確かにこんな胡散臭い場所だし……)

紅莉栖(それに、他人を本気で呪おうとしてる人間の精神状態じゃ普通は気味悪くて飲めないか)

紅莉栖「えっと。実はこのお店に来るまでは緊張してたんですけどね」

紅莉栖「亞里亞さんが若い方だったし、お部屋の香りも素敵なので癒されてしまって」

亞里亞「そうでしたの」

紅莉栖(誤魔化せた……? この人、桐生さんみたいに表情が読めないわね)


亞里亞「……たしかに66,600円、いただきました」

紅莉栖「そのお金なんだけど、結構な額ですよね?」

亞里亞「そうかもしれませんね」

紅莉栖「それだけ払っても呪いが成功するとは限らない……違います?」

亞里亞「おっしゃる通りですわ。どんな時も必ず発動する魔術など存在しません」

紅莉栖(詐欺師の常套句じゃない……)

紅莉栖「だからね、私から提案があります」

亞里亞「提案?」


紅莉栖「期限を設けさせていただけませんか?」

亞里亞「はぁ」

紅莉栖「もし1週間以内に呪いが発動しなかったら返金していただきたいのですが」

亞里亞「……いえ、ごめんなさい。それはできませんの」

紅莉栖「なぜです?」

亞里亞「黒魔術において契約を改めたり、途中で変えるというのは禁忌ですので」

紅莉栖(そう来たか)

紅莉栖「なるほど、確かに悪魔の契約ですね」

亞里亞「……拝金主義者の悪魔の、ですわ」

紅莉栖「……?」


亞里亞「ですが、1週間以内という期限は受け付けます。それを過ぎてしまいましたら、そういうこともありますとしか」

紅莉栖(この人が本当に詐欺師なら、今まで騙してきた人たちに対して謝ってほしいんだけどね……)

紅莉栖(まあいざ来てみればちょっと怪しい雰囲気があるだけのお悩み相談所だし、お客が納得してるのならいいのかも?)ウーン

亞里亞「そしてこの場合、呪詛が返ってくる場合がありますわ」

紅莉栖「え?」

亞里亞「人を呪わば穴二つ」

紅莉栖「……ああ。"When you curse someone, you dig your own grave."ってこと」

亞里亞「そこはご了承いただけますかしら?」

紅莉栖「ええ。構わないです」

紅莉栖(呪詛返しなんてあるわけないでしょ)

亞里亞「……わかりましたわ」


亞里亞「では、使うドールの数は5体」

紅莉栖「ドール?」

亞里亞「使い魔のようなものとお考えになって。こちらから、『アーリマン』、『ゴルゴーン』、『カヴン』、『ペテロ』、『リリス十二世』ですわ」

紅莉栖(うえっ、気味悪い見た目……)

紅莉栖(名前は見事に魔術用語ね。でも十二世?)

亞里亞「それとこちら」スッ

紅莉栖「こ、これは……ナイフ……っ」ドクン


  『パパっ!? 盗むのっ!?』

  『父より優秀な娘など……っ!!』

  『――――あああぁぁぁぁあああああっ!!!!!』


紅莉栖「――――ッ!?!?」


紅莉栖(な、なに、今の記憶は……。さっきのは、岡部の叫び声?)ドクン

亞里亞「……落ち着きました?」

紅莉栖「えっ? あ、すいません」ビクッ

亞里亞「いえ。驚かれたのなら謝りますわ」

紅莉栖(ホントにさっきのハーブティーに変なモノでも入ってたのかしら)

紅莉栖「もう大丈夫です。それで、このナイフはいったい――」

亞里亞「短剣(ダガー)」

紅莉栖「え?」

亞里亞「ナイフではなくて†短剣(ダガー)†ですわ」

紅莉栖「あっはい」


亞里亞「貴女の血を数滴、いただきます。どちらの手でもいいですので、指を傷つけてくださいますか?」

紅莉栖(そこまでしないといけない、か)

紅莉栖「わかりました……っ」スッ

亞里亞「滴をこちらの小瓶に」

ポタッ

亞里亞「はい、結構」

亞里亞「次に触媒を蝋燭の火で燃やしますわ。その間、思いつく限りの呪詛を心の中で唱えなさい」

紅莉栖「…………」

紅莉栖(岡部の変態、岡部のロリコン、岡部の女たらし、岡部の巨乳好き、岡部のすけこまし、岡部のバカ、岡部の鈍感、岡部の朴念仁、岡部の――――)

亞里亞「以上で儀式は終わりですわ」

紅莉栖「――岡部の厨二病、岡部のむっつりスケベ、岡部のヒゲ、岡部のマッドサイエンティスト」ブツブツ

亞里亞「……こほん」

紅莉栖「……えっ? あ、もう終わりですか」

亞里亞「凄まじい念を感じます」

Site3 日下部吉柳
[ハモニカ横丁 紅ノ館入口]


紅莉栖「ありがとうございました」ガチャ

亞里亞「あなたの意志が強ければ呪いは成就するでしょう」

紅莉栖「……私の意志は強いわ。誰よりも」コツ コツ コツ

亞里亞「…………」


??『あれが今度の客とは悲しいなぁ』


亞里亞「あら、いらしていたのですね」

亞里亞「悪魔さん」

日下部『ちょうど予定が開いてたからな』


紅莉栖「……ん? 今、男の声みたいなのが聞こえたような……疲労で発生した耳鳴りかな……?」コツ コツ コツ


日下部『あの女、テメエの仕事部屋を気に入ったみたいだぞ。随分熱心に眺めてやがった』

亞里亞「ハーブティーもアロマも気に入っていただけたみたいで、悪い気はしませんでしたわ」

日下部『フン……同世代の女としゃべれて友達気分か?』

亞里亞「まさか。そのような俗世のものなど知りたくもないのに」

日下部(こいつの心が俺だけに依存してる状態を維持するのに牧瀬とかいう女は邪魔だ)

日下部(こいつはこう見えて心には隙だらけだ。いつ誰にハメられるかもわからねえ)

日下部(どういうわけか牧瀬はこの女に興味津々だった。まあ、良く見てもゴシップ的興味だろう)

日下部(……とりあえずは仕事をしておくか。先立つものは金だ)

日下部『で、俺は1週間以内にその男を呪えばいいんだな?』

亞里亞「ええ。くれぐれもあの約束をお忘れなきよう」

日下部『契約では呪う相手を殺してはならない、だったか』シュタッ


日下部(……呪う相手は殺さねえとは言ったが、呪った本人を殺さねえとは言ってねえぜ)ニヤリ

今日はここまでです

期待

期待

悪魔の儀式を選ぶとは……やはりセレセブ……

Site4 岡部倫太郎
[翌日 未来ガジェット研究所]


岡部「――ホントに俺を呪ったのか!?」

ダル「うわぁ……」

まゆり「クリスちゃん……」

るか「牧瀬さん……」

紅莉栖「ちょっ!? 昨日そういう流れだったでしょ!?」

ダル「い、いや、あの時はなんかそういう流れになっちゃってたけどさ」

ダル「冷静に考えて冗談でも人を呪うとか無いわーマジ無いわー」

紅莉栖「」


まゆり「まゆしぃはね、悲しいのです……」シュン

紅莉栖「うぐぅっ!? だ、だから、これは黒魔術とかいうシロモノが存在しないことを証明するためにだなっ!」

るか「あの、牧瀬さんが科学者さんだってことはわかります。で、でも、霊的な力を悪用するのは、よくないかと……」

紅莉栖「そうじゃないのっ! その霊的ななんとかがそもそもこの世に存在してないって言ってるのぉっ!」

ダル「いや、本職巫女のるか氏に言っても説得力皆無な件」

岡部「この世に存在しなくとも、あの世に存在していればこちら側に影響を与えることも可能なのではないか?」

紅莉栖「あぁぁーーーもうっ! 知らないっ! 車にでも轢かれろバカ岡部ぇ!!」ガチャッ バタンッ!


ダル「いやー、ちょっと僕らも悪ノリし過ぎたっぽい」

まゆり「まゆしぃ、昨日のお話をよくわかってなかったよ。ごめんね、クリスちゃん。止めてあげられなくて……」

岡部「……あいつの何がそこまで動かすのだろうな」

ダル「何って?」

岡部「いや、どうしてそこまでオカルト的なものにこだわるのかと思ってな」

岡部「科学者だから疑似科学を許せない。これはまだわかるが、ここまで徹底的なのは珍しいんじゃないか?」

ダル「本人は性格って言ってた件」

岡部「この電話レンジ(仮)に関してもだ。最初はタイムマシンなぞ非科学的だなんだと批判していたが、今やなんだかんだで主任研究員となっている」

岡部(まあ、父親との間に何かがあったのだろう、ということくらいはわかるが……)


るか「岡部さん! 今すぐ神社でお祓いさせてくださいっ!」ウルウル

岡部「ふ、ふおぉっ!? か、顔が近いぞルカ子っ!」ドキッ

岡部(だが男だ……)

るか「はっ! す、すいませんでした……」カァァ

まゆり「るかくんと一生懸命説得すれば、呪いさんも帰ってくれると思うなぁ」

岡部「なんと言ってもルカ子はこの秋葉の原の防人だからなっ! フゥーハハハ!」バサッ

るか「は、はいっ! ボク、がんばりますっ!」キラキラ


岡部「……ダルよ。なにかあったらすぐDメールでなかったことにするからここに待機。いいな?」ヒソヒソ

ダル「らじゃ!」


[万世橋]


岡部「……自分が呪われていると思うと、この暑さも涼しく感じる」ブルッ

まゆり「夏風邪ひかないようにしないとねー」

るか「そう言えば、牧瀬さんはどちらに行ってしまったんでしょう」

岡部「今頃自分のホテルに帰り枕に顔をうずめ己の愚行を自戒しワンワン泣いているのだろう」

岡部「ククク……俺を呪ったことを後悔するがいい。そして、呪いなど受け付けぬこの鳳凰院凶真の力に恐れおののくが――――」


キャァァァーーーー!!
イヤァーーーー!!
ウワァァァーーー!!


岡部「な、なんだ!?」ビクッ


キィィィーーーーーッ!! バターーーーーンッ!!
ガリガリガリッ!!


るか「自動車が横転しましたっ!?」ビクッ

まゆり「えっ?」オロオロ

岡部「――――まゆりっ!!!」ダッ


 ド ン ッ



―――――
―――




岡部(……空が赤い。なんだこれ、血か……?)


「――――リンッ! オカリンッ!」


岡部「……え?」


「――――さんっ! 岡部さんっ!」


岡部「あ、あれ……どう、なって……」ゴフッ

まゆり「オカリン!? 気が付いたの!?」ポロポロ

るか「お、岡部さぁぁぁぁん!!」ポロポロ

岡部「あ、ああ……。――――っ!」ズキッ

岡部(体がものすごく痛い……。そうだ、俺はまゆりをかばって横転したバンに跳ねられた)

岡部(少なくとも額と内蔵から血が出てる。全身の骨も何本かイったのだろう、まともに動けない)

岡部(死にはしなかったが……)

岡部(まさか、これが呪いなのか……?)


岡部「お、お前たち……ケータイを、出せ……」ズキズキ

まゆり「オカリンッ!? ど、どうするの!?」

岡部「D、メールで……なかった、ことに……」ズキズキ

るか「え、えっと、ボクのケータイでよければっ!」

岡部「ダルに、電話して、セットを……。まゆりは、メールを……」

まゆり「電話レンジちゃんにメールだね!?」

岡部「文面は……18文字……。この事故を、回避させろ……」

まゆり「わかったよ、オカリンっ!」ピッ ピッ

るか「橋田さんと通話繋がったよ、まゆりちゃん! いつでもオーケーだって!」

まゆり「ダルくんっ、送り先は10分前っ! 送るよっ!?」ピッ


 グ ワ ン


岡部(ぐっ……来たか、リーディングシュタイナー……ッ!!)


――――
Site5 日下部吉柳
[謎の場所]


岡部「……ここは?」

日下部『チッ。逃げやがったな』

岡部「な、なんだ貴様はっ!?」ビクッ

日下部『安心しろ。もうそっち側へ俺はついていけねえ』

岡部「な、なにっ!?」

日下部『今のテメエは元居た脳ミソから飛び出して別の脳ミソへと移動中らしいな』

岡部「……リーディング・シュタイナーを知ってるのか!?」

日下部『なあ。霊体の俺がどうやってあのバンを転ばしたと思う?』

岡部「はぁっ!?」


日下部『こんな俺でも音波や電波は出せるんだ』

日下部『だから波長の合うやつとなら会話だって出来る』

岡部「貴様、幽霊なのか!?」

日下部『空気の振動を利用して直接テメエの眼球や鼓膜を破壊してもいいが、それはつまらねえ』

日下部『原因は現実にありそうな事故じゃないと面白くねえんだよ』

日下部『車の運転手が責任を取らされるんだろうなぁ。俺のせいだとも知らずに』ニタァ

岡部「お、おい! 何の話だ!」

日下部『てなもんで、ちいっとあの車の機器を弄らせてもらった』

岡部「……貴様が、呪いの正体か」

日下部『精密機械になればなるほど俺の操れるレベルのモノになる。狙いは少しズレちまったが』

岡部「貴様がっ! まゆりを殺そうとしたのかっ!」

日下部『ま、ここでの出来事は記憶できねえ。テメエには今脳がねえから』

岡部「質問に答えろっ!」

日下部『期限のこともあるから呪いは1日1回までだ。テメエの主観でな』

日下部『こっちも仕事なんだ。よろしく頼むぜ』

岡部「おいっ! おい―――――」



――――


Site6 岡部倫太郎
[未来ガジェット研究所]


岡部「…………」

チク タク チク タク 

岡部「…………」

チク タク チク タク 

岡部「…………」キョロキョロ

まゆり「どうしたの、オカリン?」

るか「どうかされましたか?」

岡部「……2人とも、よくやった」ダキッ

まゆり「わっ、オカリン!」

るか「えっ……ええええええええっ!?!?!?」カァァァ

ダル「ちょ!? ラボはラブホじゃねーっつーの!」ガタッ


ガチャ


紅莉栖「――岡部、さっきは急に出て行ってごめうおおおおおいいいおぉぉかぁぁべぇぇぇぇ!!!!」


岡部「……理不尽だっ」ジンジン(※洋書で叩かれた)

紅莉栖「だ、黙れこのHENTAIっ! よくもまあJK2人に――いや片方男だが――同時にセクハラしておいて平然としていられるわね!」フーッ フーッ

岡部「まさかこれも呪いなのか?」プルプル

紅莉栖「呪いなんかあるわけないと言っとろーが! 自分の非を呪いのせいにする男の人って!」キシャーッ

ダル「ちょ、牧瀬氏もちけつ」

まゆり「クリスちゃん、まゆしぃは大丈夫だよ? オカリンに抱きしめられたの久しぶりだったからビックリしちゃっただけで」

紅莉栖「はい常習犯確定。被害者からの証言は絶対」スッ(※洋書2撃目用意)

岡部「ちょぉっ! ウェイウェイ! まゆりは幼馴染だっ!」

るか「ボ、ボクのことは、いいんです……きっと、岡部さんにも事情があったと、思うので……」カァァ

ダル「ウホッ」

紅莉栖「何か言い残すことは?」ニコォ

岡部「こ、これを見ろっ! 俺のケータイだっ! まゆりからDメールを受け取っているはずっ!」スッ

紅莉栖「Dメール?」


紅莉栖「『ラボから出ち ゃだめ車にひか れぐちゃぐ』……なるほど、そういうことだったの」

岡部「ほう、あの時まゆりはこんな文章を……。咄嗟だったにしては上出来じゃないか」

まゆり「えっへへ~。また褒められちゃったのです」

岡部「また? そうか、このDメールを受信した時の俺がお前を褒めたのだな」

紅莉栖「……ねえ。っていうことは、本当に、その、あの」プルプル

岡部「ああ。俺の記憶では間違いなく車に跳ね飛ばされた。だが、Dメールによってそれをなかったことにしたのだ」

紅莉栖「わ、わたしが、くるまに、ひかれちゃえ、とか、い、いった、から……」プルプル

岡部「お、おい、クリスティーナ……?」

紅莉栖「わたし、が……おかべ、を……の、のろっ……う、う、うう……」


紅莉栖「――――うわぁぁぁぁ……ごべんねぇぇっ……っ」ポロポロ


まゆり「落ち着いた? クリスちゃん」ナデナデ

紅莉栖「うぐっ、ひぐっ。えぐっ」ズビーッ

るか「あの、お水、ゆっくり飲んでくださいね」

ダル「いやあ、女子の泣き顔hshsなこの僕でさえ心の底から心配しちゃうマジ泣きだったお」

岡部「なあ、クリスティーナ。思ったんだが」

紅莉栖「ご、ごめんなさい……。なんでもするから、許して……」ヒグッ

岡部「話を聞け! よく考えてみれば、この世界線において呪いは発動していないのではないか?」

紅莉栖「……ふぇ?」


岡部「お前が泣きじゃくっている間にダルに調べてもらったが、この世界線では万世橋で交通事故など起こっていない」

岡部「つまりそれは、あの事故は俺があの時万世橋に居たからこそ発生したものだ、ということ」

岡部「ならば、貴様のかけたという呪いはまだ現実化していない。未確定の状態だ」

岡部「俺たちに電話レンジ(仮)がある限り、呪いは"なかったこと"にし続けられるのではないか?」

紅莉栖「……話が本末転倒だわ」

紅莉栖「黒魔術の存在を科学的に否定しようとしていたら、黒魔術を科学の力で抹消し始めていた。なにを言ってるか(ry」 

岡部(こいつ、やはりネラーか……)


紅莉栖「でもそれはつまり、別の呪いが今まさに待ち構えている可能性がある、ということよ?」

紅莉栖「本来起こるはずの交通事故をなかったことにした。それは、呪いが発動する可能性を先延ばしにしただけなんじゃないの?」

岡部「落ち着け助手よ。そもそも呪いなど科学的に存在しないのではなかったのか?」

紅莉栖「えっ? あ、いや、そりゃ、そうだけど……」

紅莉栖「……そう! 絶対にあの亞里亞とかいう女の裏に闇の組織が居て、ってなんで岡部と同類の陰謀論を唱えてるのよ私……」ガックリ

岡部「どうやらさすがの天才HENTAI少女も混乱しているようだな」ククッ

紅莉栖「へ、HENTAI言うなっ!」

岡部「案外呪いなど発動せずに平和に過ごせるかもしれない。仮に発生したとしても、Dメールを使えばいい」

岡部「いずれ呪いと呼べるようなものが何ひとつない世界線へと到達できるかもしれない」

紅莉栖「……そうね、挑戦する価値はあるのかもしれない」


紅莉栖「待って。昨日にDメールを送って私を吉祥寺に行かせないようにすれば、そもそもこんなことにならないんじゃない?」

岡部「お前はそれで満足するのか?」

紅莉栖「……岡部が酷い目に遭うのなら、私の科学的好奇心なんて要らない」

岡部「確かに、本当にどうしようもなくなったらそうするしかないだろう。だが、呪いひとつ跳ね返せないようでは鳳凰院凶真の名が廃る」

岡部「それにだ。正直、今回の件はお前を焚きつけた俺にも責任がある」

紅莉栖「い、いいの? 許してくれるの?」

岡部「ラボメンだからな。というか、あの泣き顔を見せておいてそれはないだろう」

紅莉栖「おかべぇ……」ウルッ

岡部「そ、それにだな、貴様は我がラボの重要な研究員だ。今後とも電話レンジ(仮)の改良に専念してもらわねば困るっ!」

紅莉栖「……うん」

岡部「ならばッ! 今すべきことはなにかッ!」バサッ

紅莉栖「ふぇ!?」ビクッ

岡部「これより第666回対黒魔術対策円卓会議を行う! ラボメン全員集結せよッ!」


鈴羽「呪いなんてあたしの蹴りで霧消させてあげるよ!」シュッ シュッ

萌郁「……いい記事……書けそう……」

るか「と、とりあえずラボに結界を張りました!」

フェイリス「フェイリスの前世は白魔導士だったニャン♪ 黒魔術なんて敵じゃないニャ!」

まゆり「みんなでオカリンを守ろーっ!」


紅莉栖「逆に不安になってきたわ……」

岡部「う、うむ……」


ダル「つかさ、普通に亞里亞たんにお願いして契約解除してもらえばいんじゃね?」

紅莉栖「悪魔の契約だから契約違反はダメなんですって」

フェイリス「ク、クーニャンの口からそんなセリフが出てくるニャんて……」

紅莉栖「したくてしてない! あと、本当の意味での呪いは信じてないから!」

紅莉栖「絶対なにか裏がある……けど、亞里亞っていう娘が岡部を直接襲ったとも考えにくいのよね……」

鈴羽「どうして?」

紅莉栖「今までの客にすべて同じように接してるんだったら、あの娘はもう捕まってておかしくない」

紅莉栖「完全犯罪を成し遂げそうなほど狡猾って感じでもなかったし、裏に居るヤバイ組織を6万円ちょっとで動かせるとも思えない」

岡部「相手がどんな手段を使っているのだとしても使っていないのだとしても、こちらには電話レンジ(仮)がある」

紅莉栖「それに頼り切りになってるのも危ない気がするけど……まあ、そうね。この場合原因はなんでもいいか」


紅莉栖「それで、実際どうするかって話なんだけど」

岡部「会議を仕切りおって。委員長キャラめ」

紅莉栖「うっさい! えっと、これから6日間、誰かが常に岡部の側に居る」

紅莉栖「なにかあったらすぐラボで待機してる橋田に連絡して、電話レンジ接続ケータイのアドレスにDメールを送る。OK?」

るか「常に岡部さんの側に……」カァァ

フェイリス「それってデートとかしちゃってもいいニャ?」

紅莉栖「ハァ!? ダメに決まってるでしょ!?」

岡部「う、うむ。俺としてもあまり動き回るのはよくないと思うのだが」

萌郁「ずっとラボに……引きこもるのは……?」

紅莉栖「それなんだけど、もしこのラボごと巻き込まれたら一巻の終わりなのよね。それができるのかは知らないけど」

岡部「ということは、今すぐにでもここを離れたほうがいいのか?」

フェイリス「だったらフェイリスのうちにくるニャ! あそこなら絶対安全ニャ!」

紅莉栖「ちょっと待ちなさい! 6日間の持ち回りは公平に決めるわよ!」

岡部「よしっ! では"魔術祓い作戦"<オペレーション・ガンバンテイン>開始だっ!」バサッ

今日はここまでです
悪魔の設定は妄想ですのでアニメ放送と矛盾が起きるかも

面白いから頑張ってくれ

亞里亞と悪魔側期待


Site7 秋葉留未穂
[タイムスタワー エレベーター内]


フェイリス「前は万世橋で車に跳ねられたニャ?」

岡部「ああ。今回も車に狙われるかも知れないと思ったが、警戒していたせいか何も無かったな」

フェイリス(凶真の担当の初日はフェイリスに決まったニャ)

フェイリス(くふふ……これも最初に勢いで凶真をゲットしたフェイリスの作戦!)キラーン

フェイリス(それにしても凶真はまた面白い遊びを考えたものニャ。あのクーニャンに魔術を肯定させるニャんて)

フェイリス(これを機に凶真やクーニャンをFESのライブにでも誘ってみようかニャ~?)


チーン


フェイリス「さ、ついたニャ。この最上階なら車も突っ込んでこないニャ!」

岡部「そうだな……む? エレベーターのドアが開かないが」

フェイリス「ニャニャ?」



ガタッ!! ガクンッ!!


岡部「のわっ!?」

フェイリス「きゃぁっ!?」

岡部「ちょ、今、少しエレベーターが下がらなかったか!?」

フェイリス「え、えっ!? そんな!? 今までこんなこと1度もなかったよ!?」

岡部「これはもしや……フェイリス! メールの準備をっ!」

フェイリス「わ、わかった!」ピッ ピッ


ガクンッ!! ガクンッ!!


フェイリス「いやあっ!!」ビクッ

岡部「もしもしダルか!? ああ、そうだ! 今すぐDメールの準備――――」


ガッ!! キュルキュルキュルキュルキュル!!
ヒューーーーーーッ!!

岡部「う、うわああああああああっ!!!!!」

フェイリス「いやあああああああああっ!!!!!」ピッ




  グ ワ ン


[タイムスタワー 非常階段]


岡部「…………」

フェイリス「ちょ!? 急に立ち止まらないでほしいニャ!」

岡部「こ、ここは?」

フェイリス「えっ? もしかして別の世界の記憶を受信したニャ?」

岡部「そ、そうだ! Dメールの受信履歴はっ!」スッ

岡部「『エレベーター 使うな!』……なるほど。だいたい状況が飲み込めたぞ」

フェイリス「やっぱり……。ってことは、本当に呪いが発動したのかニャ?」

岡部「ああ……だが、それもフェイリスのおかげで跳ね返すことができたぞ!」

フェイリス「ニャフフ。フェイリスの魔力はこの銀河の誰よりも強いのニャ!」


Site8 岡部倫太郎


岡部(その後も俺は数々の呪いを乗り越え――)




鈴羽『UPXのモニタが割れたっ!?』

岡部『ぐあああっ!!』



萌郁『電車が……止まらない……っ!』

岡部『くそぉっ!』



るか『ガスが漏れてます!?』

岡部『ごふっ……がはっ……!』



まゆり『コンビニで火事なんて……』グスッ

岡部『まゆり……Dメールを……』



紅莉栖『岡部っ! 岡部ぇっ!』

岡部『なかったことに……っ!』



[御茶ノ水 ローズホテル東京 牧瀬紅莉栖の部屋]


岡部「…………」

紅莉栖「岡部? どうしたの、急に黙っちゃって。……もしかして、過去を変えた?」

岡部「……ああ。全く、俺が落ちてきた電線に感電した程度でワンワン泣きおって」クク

紅莉栖「えっ!? 岡部、大丈夫!? 痛いところない!?」

岡部「……お前こそ大丈夫か?」

紅莉栖「……ダメね、相当混乱してるみたい」ハァ

岡部「無理もない。ここ1週間、ずっと気を張り詰めていたのだ」

岡部「だが、これで最後の試練を乗り切った。どういうわけか呪いは1日1回だったからな」

紅莉栖「経験則ではそうらしいけど、本当に呪いが終わったかは明日になるまでわからない」

紅莉栖「不安はまだ続くわよ……」


[翌日 未来ガジェット研究所]


紅莉栖「ふわーっはっはっは! 呪い!? 黒魔術!? なにそれおいしいの!?」ドヤァ

岡部(こいつ……)

まゆり「でも良かったよー、オカリンの身になにもなくて」

ダル「つかさ、結局最初の目的は達成されたん?」

岡部「実際に黒魔術は発動しなかったからな。科学的な意味においては肯定できない……のか?」

紅莉栖「少なくともこの世界線ではね。岡部が体験した呪いってのもどんな裏があったかわかったもんじゃないけど」

岡部「それでいいのか?」

紅莉栖「……もうさすがに疲れたわ。確かにカラクリをいずれ解き明かす必要はあるとは思うけど」

紅莉栖「穏便な方法がないわけだし、もう手を引くわ。電話レンジの改良作業も残ってるしね」

岡部「カッコカリだっ!」


Site9 日下部吉柳
[紅ノ館]


亞里亞「……いらしてたのですね」

日下部『牧瀬紅莉栖の依頼は達成できなかった』

亞里亞「今日は成果報告をしに? 珍しいですこと」

日下部(こちらが仕掛けようとすると、まるで未来が視えてるかのごとく躱してきやがった)

日下部(事故に見せかけてダメージを負わせるどころか、事故を引き起こすことすらかなわなかった)

日下部(あいつらの根城のテナントビルには変な電波が飛び交ってて近づくことすらできねえ)

日下部(俺も忙しいんだ。時間かけてやったのが全部パーになってイライラしてんだぜ)

日下部『……契約では成果報告はしねえと言ったはずだ。実際、成果は出してねえ』

亞里亞「そういうこともあるのでしょう。彼女には申し訳ないことをしました」

日下部『だからテメエは舐められるんだ。実際、あの女は……』

亞里亞「……?」


日下部『牧瀬紅莉栖は男を呪いたかったわけじゃない。テメエの黒魔術を否定したかっただけだ』

亞里亞「……。……そう、でしたの」

日下部『今までも遊び半分で依頼しにくるやつは居た。怖いもの見たさでな』

日下部『そういう意味ではあの女は異質だったわけだが……おい、どうした?』

亞里亞「…………」

日下部(なんだ? 今さら黒魔術を馬鹿にされたくらいで絶望してんのか?)

日下部(あるいは、親しみを感じた人間に裏切られて落ち込んでいるか……)


日下部『ともかく、この俺の力が通用しなかったんだ。何か見えない大きな力が働いたのかも知れねえ』

亞里亞「つまり、別の呪いに妨害されたと?」

日下部『その可能性もある。そんなわけで、俺はもうひとつの契約を実行すべきと思うわけだ』

亞里亞「……呪詛返し、ですわね」

日下部『フフン……見に来るか?』

亞里亞「え……」

日下部『いや、俺の勘違いならいいんだが、テメエは牧瀬紅莉栖に言いたいことがあるんじゃねえかと思ってな』

亞里亞「…………」

亞里亞「……連れて行ってくださいませ」

日下部『……高くつくぜ』ニタァ


Site10 紅ノ亞里亞
[御茶ノ水 路上]


まゆり「それじゃ、まゆしぃは丸の内線で帰るね。ばいば~い!」タッ タッ

紅莉栖「バァイ、まゆり」

紅莉栖「……はぁ」

紅莉栖「なんだかとっても疲れた1週間だったわ……。6万円も払って、私、何やってるんだか……」トボトボ

紅莉栖「いつか仕返ししてやるんだから! オカルトなんて科学的に全否定してやるっ!」グッ

紅莉栖「…………」

紅莉栖「お風呂入って寝よ……」トボトボ


亞里亞「ごきげんよう、牧瀬紅莉栖さん」


紅莉栖「っ!?」ビクッ


亞里亞「呪いが発動せず申し訳ありませんでした」ペコリ

紅莉栖「あ、あなたは紅ノ館の……。えっと、その件に関してはもういいんです」

亞里亞「もういい、とは?」

紅莉栖「実はその男とはさっき和解できたので……。今思えば発動しなくてよかったなーなんて」

亞里亞「そうでしたの。それは良かったですわ」

紅莉栖「え、ええ……」

亞里亞(目の動き、仕草、わずかににじむ汗……)

亞里亞「……嘘ですわね」

紅莉栖「えっ!?」ビクッ

亞里亞「貴女は最初から男を呪う気などなかった……違いますか?」


紅莉栖「あ、いや、えっと……」

亞里亞「私を試すような真似をしたことは構いません」

亞里亞「ですが、貴女が私のお店でした発言はすべて嘘だったのですね」

紅莉栖「……逆に質問させてください。あなたは、今までどうやって相手を呪ってきたんですか?」

亞里亞「それは貴女もよくご存じのはず。儀式を行い――」

紅莉栖「そういう話を聞いてるんじゃないわ」

亞里亞「…………」

紅莉栖「どうやって実際に人を傷害……いえ、もしかしたら殺害までしてたのかって聞いてるんです」

亞里亞「……何のお話かしら」

紅莉栖「とぼけないでッ! あんたが何らかの方法を使って人を傷つけてるのはわかってるのよ!?」

亞里亞「…………」

亞里亞(他人から向けられる明らかな敵意。酷く苦しく醜い)

亞里亞(同じ『紅』の属性を持つ者同士理解し合えるかもと思いましたが、どうやら思い過ごしだったようですわ)

亞里亞(ハーブティーもアロマも、新しいものに取り換えなくてはなりませんね)


日下部『……準備はできた。あと30秒だ』

亞里亞「…………」コクッ

紅莉栖「ちょっと、どこ見てるの? 話聞いて――」

亞里亞「貴女、有名な脳科学研究所の研究者さんなのですね。インターネットで検索させていただきましたわ」

紅莉栖「……ええ、一応。それが何か?」

亞里亞「そんな貴女に聞きたいことがあるのです」ギュッ

紅莉栖「ちょ、あの、なんです? 手、離してください」

亞里亞「貴女は――」

亞里亞「――死後の世界を信じますか?」パッ



キキィーーーーーー!!



紅莉栖「え――――――――――」




・・・
・・・
・・・



―――――

To:岡部倫太郎
件名:
本文
紅莉栖を紅ノ 館へ行かせる な!殺される

―――――


Site11 岡部倫太郎
[未来ガジェット研究所]


岡部「…………」

紅莉栖「――って、話聞いてんの? 岡部?」

岡部「……紅莉栖」ガシッ

紅莉栖「ふぇぇ!? いきなり真顔で名前を呼ぶなぁ! 肩に触るなぁ!」カァァ

岡部「お前が、無事でよかった……」

紅莉栖「」プシュー


紅莉栖はまゆりと別れてすぐ事故に遭い病院に運ばれた。

重傷ではあったが死んではいなかった。

Dメールで『殺される』と書いたのは過去の自分を騙すための嘘だ。

そこまでしないと引き留めそうにないからな。

紅莉栖を跳ねた車は歩道に乗り上げ理不尽な軌道を描いていたという。

俺には呪詛返しのように思えた。

どういうわけか紅莉栖に付き添って救急車に乗ってきたという紅ノ亞里亞を問い質したところ、やはりそういう契約だったらしい。


―回想―
[六井記念病院]


岡部「はぁっ、はぁっ……ま、待ってくれ! じゃなかった、待ってください!」

亞里亞「…………」

岡部「あなたが紅莉栖を見つけて救急車を呼んでくださったんですね。ありがとうございます」

亞里亞「いえ、私は感謝されるようなことなどしていませんわ」

岡部「あの、もしよければ名前と電話番号を教えてもらえませんか?」

岡部「紅莉栖が事故に遭った時の様子を詳しく聞きたいので」

亞里亞「……紅ノ亞里亞、と言えばわかりますかしら」

岡部「なっ……!?」


岡部「まさか、あんたが……い、いや、車は歩道に乗り上げていたらしい。紅莉栖を車道に突き飛ばしたわけじゃない……」ブツブツ

亞里亞「自動車のほうも大した速度は出ていませんでした」

岡部「な、なあ! あんたなら何か知ってるんじゃないか? どうして俺じゃなく紅莉栖がこんな目に遭ったんだ!?」

亞里亞「……そう。貴方が岡部倫太郎さんなのですね」

岡部「あ、ああ。そうだ」

亞里亞「随分と牧瀬紅莉栖さんをご心配なさっているご様子」

岡部「当たり前だッ! あいつは、俺の大事な……ラボメンなんだっ」

亞里亞「…………」

亞里亞「……嫌らしい」


亞里亞「いいでしょう。お教えしますわ」

亞里亞「契約では1週間呪いが発動しなかった場合、呪詛返しが発動することになっていましたの」

岡部「やはり……!」

亞里亞「私は黒魔術を代行したまで。……現場に居合わせたのは初めてですが」

亞里亞「血だまりの中に倒れる彼女、美しかったですわ。どうして似合っていたのかしら」

岡部「……なぜそんな器用なことができたんだ」

亞里亞「私は悪魔に心を売った存在。悪魔に聞けばわかることがあるのです」

岡部(何を言っているんだ、この女……!?)


――回想終了――



俺はDメールを送らなければならなかった。

俺が呪われていた時は1週間という期限があったが、紅莉栖のソレには期限がない。

この呪いを解く方法はただひとつ。1週間前の紅莉栖を紅ノ館へと行かせないことだけだ。

この1週間はなかったことになってしまったが、紅莉栖が無事ならそれでいい。


紅莉栖「このHENTAIっ! 橋田とまゆりが出かけてるからって手を出すなんて……い、いや、あんたがしたいなら、その、あのっ、でもぉっ!」モジモジ

岡部「お前は黒魔術を信じるか?」

紅莉栖「へっ!?」ビクッ

紅莉栖「……先週、あんたから謝ったじゃない。黒魔術なんて無いから俺が悪かった、って」

岡部「そ、そうなのか……」

紅莉栖「あんたまさか、Dメールを送って過去の自分に謝らせたの?」

岡部「まあ、そういうことになるのか」

紅莉栖「……その顔は何かあったのね。あとで洗いざらい教えなさいよ」

岡部「言ったところでお前が黒魔術を信じるとは思えんがな」クク


紅莉栖「やっぱりそっち絡みの話なのね」ハァ

岡部「ああ。もうあんな思いはこりごりだ」

紅莉栖「そう言われると聞くのが楽しみね」

岡部「お前が大事な仲間なんだと思い知ったよ」

紅莉栖「大事な仲間……」トクン

岡部「そ、そうだ。なぜならっ、貴様は我が助手なのだからなっ! フゥーハハハ!」

紅莉栖「だっ、だから助手じゃないと言っとろーが!」

岡部(ともかく、これで全ては元通りだ。黒魔術の存在は惜しいが、しばらくは放置だな)

岡部「よしっ、では早速電話レンジ(仮)の改良について取り掛かるぞ! おおっ、ヘッドギアがついているではないか!」


ガチャ

ダル「ただいまー。なんかあったん?」

岡部「なにかとはなんだ?」

ダル「いや、僕が戻ってきたらまゆ氏が全力ダッシュで走っていったからさ」

紅莉栖「まゆりが?」

ダル「え? ラボの中に入ってなかったん?」

岡部「ということは……」

紅莉栖「……まさか、あの恥ずかしいやり取りを玄関で聞かれた!?」

ダル「男女が2人で恥ずかしいやり取り……ふざくんなリア充このヤロウ!!」

紅莉栖「黙れHENTAI!」

岡部「……なんだか嫌な予感がする」

岡部「まゆりを探してくるっ!」ダッ


Site12 紅ノ亞里亞
[紅ノ館]


亞里亞「……重荷になりたくない、ですか」

まゆり「まゆしぃがいつまでも頼りきりになってたらオカリン困っちゃうなーって思って」

まゆり「オカリンにはもう、同じ未来を一緒に歩いて行ける人が居るから……」

まゆり「まゆしぃにはわからない難しい話を楽しそうにできる、とってもかわいい女の子が居るから……」

亞里亞「具体的にはどのような依頼になるのでしょう。ここは黒魔術代行屋ですわ」

まゆり「呪いはダメかなぁ。えっとね、魔法でまゆしぃを救ってほしい……のです」

亞里亞「救う……つまり、魂の救済かしら」

亞里亞「そもそも、あなたはどうしてここへ?」

まゆり「オカリンがね、ここの黒魔術はホンモノだーってずっと言ってたから」ニコニコ

亞里亞(……なんて一途で反吐が出るような愛情ですこと)


[ハモニカ横丁 紅ノ館入口]


まゆり「アリアちゃん、ばいば~い。今度は一緒にお人形さん作ろうね!」ガチャッ

亞里亞「…………」フリフリ

亞里亞(不思議な雰囲気の人……)


日下部『あれが新しい仕事とは泣けてくるな』

亞里亞「あの子はおそらく勘違いしているか、よくわかっていないですわ」

日下部『だが金はもらったし契約は成立した。儀式を実行したのはテメエ自身だろうが』

亞里亞「髪の毛を燃やす手順は省略してしまいました。代わりに緑の人形をもらいましたけれど」




まゆり『髪の毛は持ってないけど、オカリンからこの間もらった”う~ぱ”があるのです』スッ

亞里亞『ではそれを触媒としましょう。すべては燃やせないので軽く火あぶりにします』

まゆり『えっ!? で、でも……うん。オカリンに迷惑かけちゃだめだよね……』



亞里亞「貴方はどうお考えなんですの?」

日下部『魂の救済だろ? この場合は自死しかねえ』

亞里亞「私にはあの子が自殺をしたいと思っているとは到底思えない……自殺をしようとした私だからわかるのです」

日下部『ほう? たった一度の自殺未遂で断言できるのか?』

亞里亞「まるで何度も自殺をした経験があるような口ぶりですね」

日下部『フフン……』

亞里亞「……契約では呪う相手を殺さないと約束したはずですわ」

日下部『"相手"は殺さねえとは言ったな』

亞里亞「…………」

日下部『悪いがこっちにも事情があるんだ。……テメエの心を奪う人間が居ると困るんだよ』ボソッ

亞里亞(……聞き取れなかった。たまに悪魔の声がよく聞こえない時がある)

亞里亞(この声がいつの日か永遠に聞こえなくなる日が来ると考えるだけで、不安になる)


日下部『それに、こうも考えることができる』

日下部『目に見えない大きな力のせいで呪いが発動してしまった、ってな』

亞里亞「…………」

亞里亞(私は既に人の不幸で収入を得ることへの罪悪感を悪魔に半分ほど肩代わりしてもらっている)

亞里亞(この上さらに呪いの発動さえも誰のせいかわからないのだと考えろと言う)

亞里亞(結局私は、自分が安心したいだけ……)

日下部『前にも言っただろ。死ってのはな、選ばれし者に"与えられる"ものなんだ』

日下部『なんの因果か知らねえが、あの乳のデカいメスガキからは腐った死の臭いがする』

亞里亞「……品の無い下衆な表現ですこと」

日下部『運命とでも言えばいいか? ともかく、これ以上口を出すな。あとは俺の仕事だぜ』

亞里亞「…………」


日下部『……俺が何をしたところで、もう関係ねえのかも知れねえけどよ』ボソッ

シュタッ


亞里亞(……また、聞き取れなかった)


Site13 岡部倫太郎
[池袋 雑司ヶ谷霊園]


岡部「はぁっ、はぁっ……」タッ タッ

岡部「……やはりここに居たか。良かった……」

岡部「まゆり。探したぞ」

まゆり「んー? あー! オカリンだー!」

岡部「全く、心配させるな。急にどうしたんだ?」

まゆり「……えっへへ~。でも、どうしてここがわかったの?」

岡部「お前は俺の人質だからな。人質がどこに居るか、俺は常に把握しているのだ」

まゆり「……あのねオカリン。まゆしぃは、オカリンの人質を――――」


プルルル プルルル


岡部「ん? すまん、俺のケータイだ」

まゆり「あ、ううん。出て出て」


岡部「俺だ」ピッ

岡部「……もしもし?」

   『…………』

岡部「おい、誰だ?」

   『……俺……じゃ、ねえ……』

岡部「っ!? 貴様は、誰だ!?」ドクン





まゆり「あれ~? まゆしぃのカイちゅ~止まっちゃってる……」


まゆり「――――」




岡部「な……っ!?」

岡部「まゆり……? おい、まゆり……っ」


岡部「―――――まゆりぃぃぃぃぃぃぃぃぃっ!!!!!!」







END
シュタゲ本編のような展開へ

おまけ


まゆり『とぅっとぅるー! まゆしぃです☆』

日下部『お、おう』






以上です。レスおよび読了ありがとうございました
原作未完ゆえ設定が間違っているかもしれません
オカンサイドがあまり書けませんでしたが亞里亞と悪魔の関係いいですよね

亞里亞と悪魔のやりとりよかったです
日下部さんが珍しくデレたので最高でした



オカンの方は知らなかったけど面白かった

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