慕「本当にすごいんだよ、はやりちゃん」

耕介「うん、慕がはやりちゃんはすごいって思ってることはよくわかってきたぞ」

慕「はやりちゃんなんでもできるんだよ……運動はちょっと苦手だけど」

耕介「そうなのか……でも、ダンスはできるんだろ？」

慕「うん、習ってるからすっごく上手だよ」

耕介「それじゃあ、ダンスはともかくとしても、慕の方が運動は上なんじゃないか？」

慕「私の方が足も早いけど……でも、だからってどうってこともないでしょ？ ちょっと運動できないくらいの方がかわいいし……」

耕介「ふむ……まあ、たしかにそうかもな。 女の子はそれくらいの方がいいかも……」

慕「…………」

耕介「ん？ どうした？」

慕「おじさんは……私が足早いからかわいくないと思ってるんだ……」

耕介「いやいや！ そんなこと言ってないだろ！？ 慕はかわいいし！ それに……えっと、ほら！ 閑無ちゃんだって慕より足早いけどかわいいだろ？」

慕「…………」

耕介「え……な、なに？ 今度はなに？」

慕「……べつに！ おじさん、みんなかわいいって言うし……女の子ならなんでもいいんだなーって思って」

耕介「え！？ そ、そんなことないぞ！？ 俺だって恋人欲しいけどどんな人でもいいってわけじゃ……！」

慕「ふーん……どうだか」

耕介「し、慕？ な、なんでそんな冷たい目で……」

慕「まあ、冗談は置いておいて……」

耕介「なんだ、冗談か……ちょっと本気でドキドキするからやめてくれよ……」

慕「……おじさん、私にドキドキしちゃった？」

耕介「……その言い方はなんか違うんじゃないかな」

慕「はぁ……しかも、はやりちゃんはそれだけじゃないんだよ」

耕介「まだすごい点があるのか。 それはすごいな」

慕「かわいいし！」

耕介「うん、たしかにはやりちゃんはかわいいよなぁ……前にはやりちゃんの家のお店行ったけどお母さんもかわいい系の美人さんだったなあ……はやりちゃんも大きくなったらきっとますます……」

慕「……おじさんもはやりちゃんみたいな子がいいんだ」

耕介「え？ あ、いや！ そりゃ、はやりちゃんはかわいいと思うけどそういうことじゃなくってだな……」

慕「はやりちゃんかわいいし！ おっぱい大きいし！ おじさんだってそういう子が好きなんでしょ！」

耕介「な、なんで怒ってるの！？」

慕「だって！ はやりちゃんすっごくかわいいし！ おっぱい大きいし！ おっぱい大きいし！」

耕介「……羨ましいの？」

慕「…………」

耕介「いや、まだ中学上がったばっかりなんだし……はやりちゃんみたいな子の方が珍しいだろ？ 慕だってもう何年かすれば大きく……」

慕「な、なんでおじさんが私やはやりちゃんのおっぱいのこと気にするの！ バカ！ えっち！」

耕介「え！？ ご、ごめんなさい……」

慕「……今日はおじさんの大好きなトマト料理たくさん作ってあげるから楽しみにしててね」

耕介「慕さん！？ ちょっ……それは理不尽でしょ！？ だいたい慕がおっぱいの話題を振ってきて……」

慕「おっぱいおっぱい言わないでよバカぁ！ えっち！ 変態！ 女子中学生のおっぱいに興味津々の変態！」

耕介「違っ……違うよ！ 本気でへこむからやめてください！」

――――――

慕「…………」

はやり「……？ 慕ちゃん？ どうしたの？」

慕「……はやりちゃんってさ」

はやり「なぁに？」

慕「かわいいよね」

はやり「あ、ありがとう……？」

慕「おっぱい大きいし」

はやり「はやっ！？」

玲奈「慕は最近そればっかだな……」

閑無「すっかりセクハラおやじだな」

慕「……おやじじゃないもん」

閑無「それもそうだな……じゃあセクハラ少女だな。 セクハラ少女」

杏果「いかがわしさがすごい単語だね」

玲奈「犯罪のにおいがするな」

慕「はやりちゃん！ 気をつけてね。 はやりちゃんかわいいしおっぱい大きいし変な人に狙われやすいよ、きっと」

はやり「はやぁ……こ、怖いこと言わないでよ……」

慕「それにしても……見れば見るほどかわいいよね、はやりちゃんは」

はやり「な、なんでそんなにしみじみと……」

慕「はやりちゃんかわいいっ！」

はやり「うぅ……は、恥ずかしいからやめてよぅ……」

閑無「言われ慣れてんだろ。 ファンに言われるだろ？」

はやり「そ、それとはまた違うよ……友達に言われるのじゃ……」

玲奈「私、閑無がはやりちゃんかわいいとか言ってるの聞いたことないけど」

閑無「わ、私は関係ないだろうが！！ べ、別にファンじゃねーし！ ファンじゃねーし！！」

杏果「閑無もはやりちゃんかわいいとか思ってたんだ……」

閑無「思ってねぇって！ 別にファンじゃねーから！」

はやり「それに、最近アイドル的なお仕事減らしちゃってるからそういうこと言われる機会も減ってるし……」

閑無「だからなんで仕事減らすんだよ！？ お前を待ってるファンだっているんだぞ！？」

杏果「なぜ泣くし……」

玲奈「隠す気もないよね」

慕「はぁ……はやりちゃん、かわいいなぁ……」

玲奈「慕、さてははやりちゃんのファンか」

慕「そういうことではないんだけど……」

はやり「違うって言われるのはそれはそれで傷つくんだけど……」

慕「あ！ 違うんだよ！？ はやりちゃんのことは好きだから！」

はやり「……そ、そうはっきり言われるのは照れるんだけど」

杏果「まあ、わかるけどね。 慕ちゃんの言うこと」

はやり「はやっ！？」

玲奈「思わぬところから援護射撃が」

杏果「はやりちゃんは……ほら、すっごく女の子らしいから……そういうとこ、ちょっと羨ましかったり、憧れたり……みたいな？」

慕「そーなの！ はやりちゃんは……ほんっとうに、いかにも！ 女の子！ って感じで……いいなぁ……」

玲奈「おい、女子力上位のふたりがなんか言ってるぞ」

閑無「すごい向上心だな。 お前も見習えよ」

玲奈「閑無に言われたくないんだけど」

閑無「私は得意料理もあるんだぞ？ 玲奈よりは上だ」

玲奈「カップ麺や冷食解凍するのは料理って言わないから。 つか誰でもできるし」

閑無「なんだとぉ？」

杏果「ほらほら、くだらない喧嘩しないで……」

はやり「はやー……」

慕「どうしたの？」

はやり「……照れてるのっ」

はやり「はやりからしたら、慕ちゃんや杏果ちゃんの方がよっぽど女の子らしいと思うんだけどなあ……あんまりほめられると変な気分……」

慕「でもほら、はやりちゃんおっぱい大きいし」

はやり「はやぁ……結局そこなんだ……」

杏果「まあまあ、私たちまだ中学上がったばっかなんだし……そのうち大きくなるんじゃない？ はやりちゃんは成長期来るのが早かったんでしょ」

慕「むむ……大きくなるのかなあ……」

杏果「結局胸が羨ましいのか……」

慕「……正直羨ましい」

閑無「今から悩むこともないだろ。 成長期終わって成長してなかったら悩めばいいんだよ」

玲奈「いや、成長期終わってから悩み始めたら遅いだろ……」

杏果「成長の余地が残ってるうちに悩んどこうよ」

慕「……えいっ」

はやり「はやっ！？」

慕「……やっぱり大きいなあ」

閑無「な、なな、なにやってんだ慕！ おい！」

杏果「なんで閑無が怒るのよ……」

慕「いいなぁ……ちょっと分けてよ」

はやり「分けられないよ！？ ……というか、分けられるなら分けたいぐらいだけど……」

玲奈「え、そういうもんなの？」

はやり「だって……牌のお姉さんになるには、あんまり大きいとよくないって聞くし……」

玲奈「そんな隠された条件が」

閑無「なんだそれ。 偉い人の趣味か？」

杏果「それは酷い理由だな……」

慕「はやりちゃん、麻雀上手だしかわいいからおっぱい大きくても牌のお姉さんになれると思うけどなあ……」

はやり「は、恥ずかしいからあんまりおっぱいおっぱい言わないでよぅ……」

慕「はやりちゃんは……男子にも人気あるよね」

はやり「そう？ そうなのかな……あんまりそういう感じしないけど……」

杏果「はやりちゃんはアイドルもやってるし……高嶺の花扱いだもんね。 だからあまり話しかけられたりはしてないけど……」

閑無「私は男子ともよく話すぞ？」

玲奈「閑無のは違うだろ。 男友達扱いじゃん」

閑無「は？ どこからどう見てもかわいい女の子だろ」

玲奈「自分で言うかナルシスト……」

はやり「閑無ちゃん、元気で表情豊かですっごくかわいいと思うけど……」

閑無「は……はぁ！？ な、な、なに言ってんだはやりこの野郎！ お前、そんな……お前、お前っ！？」

杏果「とりあえず落ち着け」

玲奈「照れんなよ」

閑無「照れ、照れてないし！」

慕「……おじさんも昨日、閑無ちゃんかわいいって言ってたよ」

閑無「ふーん、あのおっさんにも見る目があったとはな」

慕「少しは照れなよ！」

閑無「いや、別におっさんに褒められたところで……」

玲奈「はやりちゃんに褒められてあんなに動揺したのにな」

杏果「昔からわかりやすいよね、閑無は」

玲奈「……というか、どういう流れでそんな話に？ ロリコンなの？ ちょっとキモい……」

慕「ロリコンじゃないよ！ おじさんはちゃんとした大人だよ！ それに……」

杏果「それに？」

慕「おじさんも、きっとおっぱいの大きい子が好きなんだよ……はやりちゃんみたいな！」

はやり「はやっ！？」

閑無「ふざけんなっ！ おっさんがはやりを……っておい！ ちょっと待て！ それじゃあ結局……ロリコンじゃねーか！」

慕「あれっ！？」

杏果「いやいや、なんかツッコミどころが多いかな……」

玲奈「胸のでかい子が好き=はやりちゃんが好きは飛躍しすぎでしょ。 はやりちゃん胸でかいけど」

はやり「れ、玲奈ちゃんまで……」

慕「でも、絶対はやりちゃんみたいなかわいくておっぱい大きい子は人気だよ！」

閑無「そうだな。 まだまだローカルとはいえ人気のアイド……」

はやり「……？」

閑無「っ……！ 調子に乗んなよ！ お前なんてまだまだだからな！？」

はやり「別に調子に乗ってるつもりはないんだけど……」

杏果「……慕ちゃんは男子にモテたいの？」

慕「え？ そうじゃなくて、おじさんが……」

慕「…………」

杏果「……んー？」

慕「な、なんでもないよっ！？」

慕「とにかく、私が言いたいのは……」

玲奈「はやりちゃんおっぱい大きい、か」

はやり「はやっ！？」

慕「違うよ！？ いや、そりゃあよく思ってるけど！」

杏果「というかよく口に出してるよ」

閑無「セクハラ少女待ったなしだぞ。 やめろよ、こいつこれでもアイドルなんだから」

はやり「はやぁ……こ、これでもって……はやり、頑張ってるんだけどなぁ……」

閑無「あ、いや！ お前の頑張りはよくわかって……」

閑無「……だ、だったら！ ちゃんとアイドルの仕事しろよぉ！ 麻雀も大事だけど！ 今のファンも大事にしろよ！」

はやり「ご、ごめん……閑無ちゃん、はやりの心配してくれてるんだね。 ありがとう」

閑無「……べ、別にっ！ お前の心配なんかしてねぇよ！ 自惚れんな！ バーカバーカ！」

玲奈「子どもか！」

杏果「いいから泣くなよ……」

慕「……なんて言えばいいんだろ……そう、私が男の子だったら、はやりちゃんと結婚したい！」

はやり「はやっ！？」

杏果「唐突な告白」

玲奈「ライバル出現だぞ」

閑無「はぁ！？ わ、私は別に、はやりのことがどうとかそういうアレじゃねーし！」

慕「はやりちゃん、やっぱりすごいよ……ダンス習ってるし、ピアノもひけるし、勉強できるし、菓子作れるし……」

慕「かわいいし！」

慕「おっぱい大きいし！！」

はやり「だ、だからなんでそこをそんなに強調するの！？」

慕「はやりちゃん、すごく女の子してて……羨ましいなぁ……私なんて、全然……」

はやり「……慕ちゃん！」

慕「は、はいっ！ ど、どうしたの？」

はやり「はやり、慕ちゃんは運動だってできるし、お料理上手だし、優しくて、がんばり屋さんで、すっごく笑顔がキラキラしててかわいいと思う！」

慕「えぇ！？ な、なに？ どうしたの急に……は、恥ずかしいよ……」

はやり「はやりから見たら、慕ちゃんだってすっごく女の子らしくて魅力的だと思うな、ってこと！」

はやり「だから、私なんて、とか言ったらダメだよ？ 慕ちゃんが言ってくれたみたいな、はやりの良いところははやりの良いところで、慕ちゃんは慕ちゃんの良いところ、たーくさんあるんだからっ！ ね？」

慕「……うん！ ありがとう、はやりちゃん！」

はやり「慕ちゃんのその笑顔、とっても素敵だよっ☆」

閑無「まあ、胸は大きくなるかどうかわからないけどな」

玲奈「いやーここからはやりちゃんに追いつくのはなかなか厳しいんじゃ……」

慕「うぅ……やっぱり……？」

杏果「きれいに解決しかけたのに余計なこと言わない！」

――――――

慕「お嫁さんになりたい！」

耕介「へ？」

慕「って言ったらどうする？」

耕介「いやいやいや！ ダメだ！ まだそんな、中学生なのに！ も、もしかして好きな男子とかできたのか！？」

慕「いや、そういうわけじゃないんだけど……」

耕介「そ、そうか。 ホッとしたぞ……」

慕「でもまあ、いずれはね？」

耕介「……………………ま、まあ、いずれはな……？ 慕、かわいいし……世の男どもはほっとかないだろうな……」

慕「えっ？ えへへ、そうかな……？」

耕介「だ、ダメだぞ！？ そんな、まだ早いからな！？」

慕「わかってるよ。 っていうかまだ結婚できないし。 相手もいないし」

耕介「うん、だよな？ そうだよな？」

慕「でもほら、やっぱり女の子の夢のひとつじゃない？ お嫁さんって」

耕介「……うん、そうかもな。 俺、男だからわからないけど……」

慕「……おじさんは、女心を勉強しないと当分結婚できないね」

耕介「ぐっ！？ ……う、うん……そ、そうかもな……がんばる……」

慕「……ところで、おじさんに聞きたいことがあるんだけど……」

耕介「ん？ なんだ？」

慕「おじさんだったら……私のこと、お嫁さんにしたい？」

耕介「んー……」

慕「……そんなに悩まないでほしいんだけど」

耕介「いや、こうして考えてみるとさ……今の生活、慕と結婚してるようなものだなぁって」

慕「ふぇ！？」

耕介「家事も分担してるとはいえ、かなり慕にやってもらっちゃってるしな……掃除に洗濯、料理だって……」

耕介「ふむ……自分で言うのもなんだけど、慕とは相当うまくやれてるよな？ いつも楽しく暮らせてるし、一緒に料理したりとか趣味も合うしな」

耕介「かわいくて性格もいいし、家事全般バッチリ！ 嫁さんにするには文句なしだな！ さすが慕だ！」

慕「っ……！ そ、そう？ よかった……わ、私も、その……」

耕介「？ どうした、慕？」

慕「な、なんでもない……」

耕介「あっ！ でもここまでスペック高いとやっぱり慕ってモテるよな……俺は許さないからな！？ まだ早いぞ彼氏なんて！ 将来はともかくっ！」

慕「う、うん……大丈夫だよ。 そんな心配しなくても……今は私、おじさんが……」

耕介「ん？ 俺？」

慕「あ、えっと……私！ 今は麻雀が一番だから！ 閑無ちゃんやはやりちゃんたちと頑張って結果出して、おか……」

耕介「…………」

慕「……えへへ、なんでもない」

耕介「慕……俺は、なにがあってもずっとお前の味方だし、側にいるからな」

慕「……おじさん」

耕介「あっ、慕が嫌ならやめるけど！ あと、なんでも応援するとは言ったけど、もし結婚するとかってなったら相手の男確実に一発は殴っちゃうけど！ 基本的にはなにがあっても味方だから！」

慕「……ふふ、おじさん、締まらないなぁ」

耕介「うっ……ご、ごめん」

慕「ふふっ……あ、そうだおじさん」

耕介「なんだ？」

慕「今日はトマトパーティー中止にします！」

耕介「おおっ！ 本当か！？」

慕「うん、ラーメン作ろうかと思って……」

耕介「ラーメンか！ ……好きだけど、この前も食べたろ？ 珍しいな、メニュー近いのにまただなんて」

慕「うん、最近ちょっと研究中なんだよね……」

耕介「なんでだ？ ラーメン食べたいならまた周藤でも呼びつけて……」

慕「だって、ラーメン食べたくなる度に来てもらって作ってもらってじゃ悪いでしょ？」

耕介「まあ、それはたしかにな……」

慕「それに！ やっぱり負けてられないし！ おじさんにおいしいご飯作るのは私のお仕事なんだから！」

耕介「いや、別に仕事じゃ……」

慕「いいから！ これは私の主婦としての、妻としてのプライドの問題なの！」

耕介「はは、主婦はともかく妻じゃないだろ」

慕「……やっぱり、トマトダメになったらもったいないしトマトラーメンにしよっか？」

耕介「あれ！？ なんで！？ 俺なにか悪いことした！？」


カン！