瑞穂「提督と晩酌を」 (28)


艦これSS


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~執務室~


瑞穂「提督。ヒトハチマルマルです。瑞穂、そろそろお夕飯の支度に入りますね」


提督「ああ、すまん」


瑞穂「今晩は何がいいかしら……。ああ、炊き込みご飯と、イワシのつみれ汁はいかがでしょう?」


提督「美味そうだな。だが、今日は少し酒が飲みたいと思ってるんだ。ご飯は除いてくれるか」


瑞穂「あら。晩酌ですか? 良いですね、承知致しました」


提督「それと、その……」


瑞穂「ん?」


提督「よ、良ければ君と、酒を嗜みたいと思っているんだが」


瑞穂「まぁ。私とですか? どうしましょう……」


提督「あ、す、すまん。嫌だったか?」


瑞穂「いいえ、嫌だなんて。瑞穂、嬉しいです……」


提督「そう言ってくれてよかった。良い大吟醸を冷やしてあるんだ。君の口に合うと良いが」


瑞穂「うふふ。では日本酒に合うおつまみを作ってきますね」


提督「ああ、楽しみにしてるよ。ありがとう」




コトリ コトリ


瑞穂「提督、おつまみをお持ち致しました」


瑞穂「先日艦隊の皆さんで獲った秋刀魚のお刺身、塩焼きと、銀杏です」


瑞穂「栄養を考えて、冷奴とほうれん草のおひたし、酢の物や焼き鳥もご用意致しました」


提督「おおぉ、うまそうだけど、ちょっと多いね」


瑞穂「て、提督と二人での晩酌ですから……。瑞穂、気合を入れてしまいました……すみません……」


提督「あぁ、いや、責めてる訳じゃないんだ。豪華な食卓で、気分が高揚してしまった」


瑞穂「うふふ♪ なら良かったです」


提督「では大吟醸を出そう。熱燗が良かったか?」


瑞穂「いえ。熱燗ですとすぐに火照ってしまいますので……提督と同じ冷が良いです」


提督「そうか、良かった。ではおちょこを」


瑞穂「はい。失礼致します」


トットットッ


提督「じゃあ。乾杯しようか」


提督「今日は君が、我が艦隊に配属されてちょうど2年の日だ」


瑞穂「まぁ。覚えていてくださったのですか?」


提督「忘れる訳がないだろう。いつも陰ながら鎮守府を支えてくれて、ありがとうね」


瑞穂「こちらこそ、ありがとうございます……」


提督「では、乾杯」


瑞穂「はい、乾杯」


カン



提督「……ん、うまい。わざわざ島根から取り寄せた甲斐がある」


瑞穂「……んっ。とてもフルーティで美味しいです。澄んだ味が致します」


提督「俺の出身は島根県雲南市でね。神を祀る県でもあり、日本酒に関しては上品なものが揃っているんだ」


瑞穂「そうなのですね。私もお酒は日本酒派ですから、提督とお話が合いそうで良かったです」


提督「そういえば瑞穂という名の由来は、日本の別称である瑞穂国から取られているんだよな」


瑞穂「ええ、そうです。改めて言われると恥ずかしいですけど……」


提督「いやいや、別称とはいえ、国を想う素晴らしい名前じゃないか。……っと、すまない、食事が冷めてしまうな、頂こう」


瑞穂「はい、どうぞ、召し上がれ♪」


提督「ん? いや、瑞穂も食べていいんだぞ?」


瑞穂「わ、私は、その……提督の後で大丈夫ですから……」


提督「何言ってるんだ。君の祝いでもあるのだから、君自身も食べなさい」


瑞穂「は、はい」


瑞穂(提督が箸をつけた後に食べたかったなんて言えない)



提督「んーっ! うまい! 秋刀魚の焼き加減は最高、銀杏の塩加減も抜群だな」


瑞穂「ありがとうございます。そう言ってくださると嬉しいです」


提督「昨日の秘書官は磯風だったもんでな……」


瑞穂「ああ……」


提督「さすがに真っ黒の秋刀魚でご飯は食べられなかった」


瑞穂「そ、そのぉ……。磯風さんも努力はされていたのですが……すみません、私も昨日は出撃だったもので……」


提督「いやいや、いいんだ。また今度磯風に、料理を教えてやってくれ。瑞穂が教育係なら安心だ」


瑞穂「そんな……恐縮です……」



提督「では冷奴とおひたしも頂こう」パク


提督「……ん、うまい」


瑞穂「お醤油はかけなくてもよろしいのですか?」


提督「ああ。瑞穂の料理の腕は素晴らしいからな。醤油で味を濁してしまっては、失礼にあたる」


瑞穂「そんなことは……。瑞穂は、提督が美味しく料理を食べてくだされば、なんだって大丈夫です」


提督「事実、この豆腐も自家製だろう? 大豆の旨みが効いててな、何もかけずに食べるのがクリーミィで凄く美味しいんだよ」


瑞穂「じ、自家製と知っておられたのですか!?」


提督「?? ああ。もちろん。鳳翔からも聞いていたのでな」


瑞穂「あぁ、恥ずかしい……!」


提督「何をいうか。誇って良いことだぞ。うん、うまい。酒が進む」


瑞穂「いえいえ……。これも鳳翔さんに教えを頂いた賜物ですから。お礼なら……鳳翔さんに……」


提督「まぁたそんなことをいう。ほら、箸が止まってるぞ。瑞穂も飲んで食べて。どんどんやってくれ」


瑞穂「あ、ありがとうございます……」パタパタ


提督(自分の両手で赤くなった顔を扇いでいる。……可愛い)



瑞穂「ではいただきます。……ん……美味しいですね♪」


瑞穂「あら、でも自分で作ったものに感想を言うのも……変でしょうか?」


提督「いやいや、実際うまいんだし、良いじゃないか」


瑞穂「うふふ♪」


提督「……その、瑞穂はさ」


瑞穂「はい?」


提督「いつまでも謙虚で、こう、必ず他人を敬うよな」


瑞穂「ええ。だって、本当にそう思っていますから」


提督「偉いよなぁ。俺も瑞穂を見習わないと」


瑞穂「何を仰るんですか。提督だって、艦娘お一人お一人に正しい言葉をくださるのに」


提督「ええ……。そうかなぁ。曙や霞や満潮には、いつも罵られてばかりだぞ」


瑞穂「それでも一度もお叱りにはならないでしょう? それに、あの子たちも皆、貴方を大好きなことは目に見えて分かりますし」


瑞穂「確実に間違っているのなら叱る行為は必要かもしれませんが、提督はあの子たちの長所を伸ばすように接しておられます。ですから、それが、正しい接し方なのだと瑞穂は思います」


提督「そ、そう言ってくれるならありがたいが……」


瑞穂「ええ。それこそ、瑞穂には真似ができません。私はどんな方でもこういった接し方しか出来ないので……」


提督「あはは。お互いがお互いとも、見習うべき点があるってことか」


瑞穂「ええ。お互いに持っていないものを、尊敬し合う関係、と言いますか。ですから私は、提督にお仕えできて……とっても幸せです」


提督(お互いに尊敬し合える恋人って良いよな……)


瑞穂(お互いに尊敬し合える夫婦って良いですね……)



提督「お、瑞穂。もう3杯いってしまったか」


瑞穂「ええ。とても美味しいので、まるで水のように喉を通っていきました」


提督「すまなかった。ほら、今日は気兼ねなく飲んで」サッ


瑞穂「ありがとうございます。ほ、頬は赤くないでしょうか?」


提督「……少し赤い、かな?」


瑞穂「わぁぁ……どうしましょう」パタパタ


提督(くそ、可愛いな。頬が夕焼けのようにオレンジ色に輝いて、とても綺麗だ)


瑞穂(ああ……提督の前で失態を……! お酒に飲まれることなどあってはならないのに……!)



瑞穂「こちらこそすみません。気が利かず。提督、お酌致します」


提督「ん? ああ、すまん、頼む」


瑞穂「……」トクトク


提督「……」


瑞穂「どうぞ」


提督「ああ。ありがとう」


瑞穂「いえいえ」


提督(……ケッコンしたい)


瑞穂(……結婚したい)



提督「なあ瑞穂」


瑞穂「あの提督」


提督「!」


瑞穂「あ……」


提督「す、すまん。なんだ?」


瑞穂「い、いえ。提督こそ、何かご質問でも……?」


提督「い、いやっ。そのな。えーっと。み、瑞穂こそ、何かオレに聞きたいことがあったんじゃないのか?」


瑞穂「い、いや、えっと。でも、提督のご質問が優先ですから……」


提督「そ、そうか」


瑞穂「は、はい……」


提督「……」


瑞穂「……」







秋津洲(なにこれかも)





秋津洲(せっかく瑞穂ちゃんとお風呂行こうと思って執務室の前に来たのに)


秋津洲(なにこれ!!? 青春かも!!? 高校生の甘い青春物語かも!!?)


秋津洲(まぁ前からお互いがお互いを意識していたのは知ってたかも。でもこれはちょっとうぶすぎだと思うかも)


秋津洲(むぅぅ。こうなったら秋津洲が二人をくっつけてやるかも!)


秋津洲(大艇ちゃん、電気室に行って、執務室の電気を消してくるかも)


二式大艇(了解だ。マスター)



提督「あー、その、なんだ」


提督「瑞穂は好きな人とか、いないのか?」


瑞穂「ええっ? す、好きな人ですか?」


提督「う、うむ」


瑞穂「そ、そうですねぇ……。将来、一緒になりたいと思っている殿方はいらっしゃいますが……」チラチラ


提督(なにぃぃいいぃいいいいいいいいいいい!!!!!)


提督(そ、そんな男性がいるのか!? どこの馬の骨だ!! 鎮守府はオレしか男性はいないはず……も、もしかして外出先で知り合った男性とか!!?)


提督(……終わりだ……。まぁそうだよな、これだけ美人で綺麗で、性格も良い瑞穂が、唯一のケッコン指輪を受け取ってくれるハズもないか……)


提督(艦隊でただひとり、レベル99になった、大好きな人だったというのに……)


瑞穂「……て、提督?」


提督「……お、おう。なんだ」


瑞穂「提督は、その……。婚姻したい人などはいらっしゃるのでしょうか?」


提督「まぁ……。一応はな……」


提督「だがその艦娘(ひと)には、他に想い人がいるらしくてさ……」


瑞穂(なんですってぇえぇええええええええええええええ!!!!)


瑞穂(こんなイケメンで優しい提督に想い人がぁあぁぁあああああああああああああ!!!!???)


瑞穂(相手を思いやって、いつでも謙虚で、私みたいな艦娘にも尽くしてくれる提督がぁぁあああああああああああ!!!!)


瑞穂(うう……まあそうよね。それくらい魅力がある男性だもの、提督は……。低速で遅い私なんかが、妻になれる訳は……)



提督「……」


瑞穂「……」


提督「な、なんか、その、通夜みたいになってしまったな。すまない」ドヨーン


瑞穂「い、いえ……。瑞穂は大丈夫です……」ドヨーン



提督「……み、瑞穂は、才色兼備で素敵な女性だしさ。その男性と、うまくいくと良いな」


瑞穂「て、提督こそ……部下の気持ちが分かる紳士な御方ですので……。その女性と、お幸せになってくださることを祈念致しております……」


提督「い、いやいや。さっき話したとおり、オレはふられてしまったんだよ」


瑞穂「そ、そうだったのですか。すみません……。実は私も、好きな人に間接的にふられてしまったんです……。その方には好きな御仁がいらっしゃると聞いて……」


提督「そうか……」


瑞穂「はい……」


提督(ん?)


瑞穂(ん?)


提督(あれ、これって)


瑞穂(これってもしかして)


提督&瑞穂(自分にもまだチャンスがあるのでは……!?)


バチッ


提督「っ! なんだ、停電か!?」


瑞穂「わ、わわわわ……!」


秋津洲(……大艇ちゃん、ナイスタイミングかも!)



提督「瑞穂! ど、どこだ! 大丈夫か!?」


瑞穂「て、提督ぅ~。どこでしょう……? 何も見えなくて……!」


提督「ちょっと待てよ、今ペンライトを探してるからな!」


瑞穂「わぁぁ……。どうしましょう……」


提督「あ、あれ? ライトが見つからん! くそっ」


瑞穂「て、提督ー! どこですかぁ!?」


提督「ま、待ってろ、とりあえずそっちに行くから!」


瑞穂「は、はい~!」


ムニッ


瑞穂「あっ、うん……!」


提督「この感触は……瑞穂か!?」


瑞穂「そ、そうです……」


提督「よし、とりあえず合流できたな。しかしいやに柔らかい感触が……」


瑞穂「て、提督……。そこは、その……」


提督「なんだ!?」ムニッ


瑞穂「ひゃうっ!」



秋津洲(なんという王道展開かも)



提督「はっ! す、すまん、これはもしかして……!」


瑞穂「そ、そのぉ……はい……」


提督「うおぉおぉ。も、申し訳ない……!」


瑞穂「い、いえ……」


提督「しかし、一体何故執務室が停電に! まさか、深海棲艦の新手の攻撃か!?」


瑞穂「ど、どうなんでしょう……」


提督「瑞穂、オレの側を離れるなよ。今は海上ではない、君は戦えない。オレが命を賭けてでも君を守る!!」


瑞穂「……そ、そんな……! 提督がもし傷ついたりしたら、瑞穂は……!」



秋津洲(なんかムカついてきたかも)



提督「……オレはどうなったっていい。君さえ守れれば……!」


瑞穂「そんなのは絶対に駄目です! 私だって、提督がご無事なら……」


提督「……」


瑞穂「……」


提督「なぁ、瑞穂」


瑞穂「は、はいっ」


提督「……最後かもしれないだろ」


提督「だから、全部話しておきたいんだ」


瑞穂「え……」



秋津洲(どこのオレ死んでまうストーリーかも)



提督「オレは……。オレは、君がこの艦隊に配属されてからずっと……」


瑞穂「は、はい……」


提督「……ずっと……」


瑞穂「……ゴクリ……」


提督「君のことが……」


瑞穂「て、提督……」


瑞穂「私も、貴方のことが……」


パッ


提督「っ!」


瑞穂「で、電気が……!」


提督「て、停電、直ったのか……?」


提督「……」


瑞穂「……」


瑞穂「……よ、良かったですね、あはは……」


提督「そ、そう、だな……あはは……」



秋津洲(もう帰るかも。やってらんないかも。後は二人で勝手にするかも)



提督「……」


瑞穂「……」


提督(瑞穂の体、柔らかかったな……それに、良い匂いだった……。あんな状況でも、俺の身の危険を心配してくれてたし……)


瑞穂(提督。命を賭けて私を守ってくれるなんて……)


提督(やっぱりオレは)


瑞穂(やっぱり私は)


二人(この人が好きなんだなぁ)




後日 



まあなんやかんやあって、瑞穂と提督はうまくいき、晴れてケッコンカッコカリを行ったそうな。


誰もが幸せになり、艦隊の士気も向上すると思われた。しかし。





~鎮守府近海 1-1にて~


榛名「これが運命ならば……」


榛名「受け入れられる訳ねぇだろぉがぁああああああ!!!!」ドォンドォン


金剛「ばぁぁぁあああああああああにんぐぅぅぅうううう!!!!」


金剛「くそったれがぁーーー!!!!」ドォンドォン


グラーフ「おどりゃぁああああああああああ!!!」ピシュンピシュン


酒匂「死ねぇぇええええええええええええ!!!!!」ドンドン


吹雪「ぶっ殺せぇぇえええええええええええええ!!!!!」ドンドン


不知火「無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄ァ!!!!」ドンドン


陸奥「アラアラアラアラアラアラアラアラアラアラアラ!!!」ドンドン




圧倒的提督ラブ勢によるイ級狩りが行われ、数年間は近海に深海棲艦が現れない日々が続いたという。




秋津洲「……」


秋津洲「キラ付けできないかも……」







ご愛読いただきありがとうございました。
今後とも瑞雲と師匠をよろしくお願い致します。

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