【グラブル】ゼタ「今以上親密に……ねぇ」 (50)

ベアトリクスとゼタのふたなりもの
生えてないシーンも


 きっかけはなんてことはない。ありふれたこと。狭い人気のない路地で怪しげな露店主に声をかけられたことだった。

?「あのー、そこのお嬢さんー」

 小さな身体にローブをすっぽりと身にまとった,ハーヴィン? どこか聞いたことのある声で彼女はこちらの返答を待たずにこやかに言う。

?「こちらの指輪、いかがでしょうか? 気になる同性の方と異性のように親密になれると話題の……輪だけに」

 ……同性と異性のように?
 あ、怪しい……。

?「今ならお安くしてますよ? いかがですか?」

 うーん……。

>>3 ベアトリクスorゼタ(ここで選んだキャラが視点の主に)

>>4 片想いしてるのはどちらか(ベアトリクスorゼタ。シチュエーションや展開に差が)

ベアトリクス

ゼタ



 私は頭を悩ませた。

ベアトリクス「と言われてもなぁ……あげる相手なんていないし」

?「またまたー、ご謙遜を。一人や二人いるでしょう?」

ベアトリクス「一人や二人……」

 考えてみる。
 仲良くなりたい同性……。

ベアトリクス「いないな」

?「あれえっ!?」

ベアトリクス「どうしたんだ? 別に驚くこともないだろ」

?「い、いえまあそうなのですが……予想が外れてびっくりしました」

ベアトリクス「なんだそりゃ」

 フードで顔は見えないけど目に見えて焦っている店主。私がその怪しい指輪を買うとでも思っていたのか……。大体、そんなもの何に使えばいいか――

ベアトリクス「……むっ」

 ぴんと思い付く。
 同性と言われて思い浮かんだのは付き合いの長い同僚。紅い服にブロンドの髪、いつも私をからかったり説教してくる余裕に満ちた表情。……半分は怒られるようなことをしたりヘマをする私が悪いんだけど――ちょっと仕返ししてやってもいいかもしれない。
 例えば、


ベアトリクス『ゼタ。話がある』

ゼタ『なぁに? ベア。またなにかヘマでもした? まったくもう、仕方な――』

 ドンッ

ゼタ『……え?』

 振り向いたゼタへ、さっとその肩を掴み壁へ優しく押し付ける私。ゼタはきょとんと私を見つめる。

ゼタ『え、ちょっ、ベア? なんのつもり?』

ベアトリクス『ゼタ……これを受け取ってくれ』スッ

ゼタ『指輪……? ベア、これって』ドキドキ

ベアトリクス『そうだ……』

 静かに顔を近づける私。恥ずかしさと緊張で目を閉じたゼタへ、私は……ほくそ笑み、彼女の額を小突く。

ベアトリクス『なんてね、冗談だぜ仔猫ちゃん』キラッ

ゼタ『な……も、もう! 無駄にドキドキさせて!』プンスカ

ベアトリクス「……これだな!」

 ふっふっふ。私でもきちんと身なりを整えればかっこよく見えるだろうし、いつも私の姉的な立場にいるゼタを引き下ろしてやろう。

?「なにやら単純な妄想が見えたような……」

ベアトリクス「気にするな! 指輪買ってやるからさ」

?「本当ですか? ではこれを一つ10000ルピで」

ベアトリクス「い、一万!? なんでそんなに高いんだ?」

?「特殊な品物でして。高度な魔法がかかっているんです」

ベアトリクス「そ、そうなのか……? うーん……けど、見ても分からないし」

?「では安心のクーリングオフシステムをご利用しますか? 使用から三日後まで、商品に満足いただけないときは私に返していただければ代金をお返しします」

ベアトリクス「そんなことができるのか。じゃあ試しに買ってみようかな。お金はギリギリあるし……」

?「はいー。ここに指輪のルールが書いてある紙があるので、大切に保管してくださいー」

ベアトリクス「ああ。じゃ、お金を……ギリギリだな、本当に」ジャラ

?「はい、たしかにー。ではお受け取りください」

ベアトリクス「ん。しっかりしてるな……」

 指輪のケースを受け取り、パカッと開く。中にはピンク色の宝石が一つ付いたシンプルな指輪が。これはもっと値段がしてもおかしくないかな……。尚更怪しいこの商人。

ベアトリクス「本当にこの値段でいいんだな?」

?「はいー。半分クーリングオフされないかのテストですので、利益はお気になさらず」

ベアトリクス「そういうもの……なのか」

 商売についてはさっぱり分からない。でも安い値段で指輪を買えるなら買うしかない。不満という曖昧な理由で返せるのならば文句はないだろう。

ベアトリクス「わかった。じゃあ有効活用させてもらうからな」

?「はいー。くれぐれも悪用にはお気をつけてー」

ベアトリクス「くくく……見てろよゼタ」

 ポケットにケースをしまっておきニヤニヤと笑う。恨みはないがちょっとしたイタズラの餌食になってもらおう。
 私はさっきよりも少し足早にグランサイファーを目指した。



 さてグランサイファーである。

ゼタ「おっ、ベア。帰ってきたんだ」

 部屋に戻って作戦会議……などと思っていたら、どこからともなくゼタが現れた。いつも通りの気さくな笑みを浮かべヒラッと手を振り挨拶をしてくる。

ベアトリクス「ゼタ。今帰ってきたんだ、ただいま」

ゼタ「おかえり。で、何して来たの? 一人で街行って」

ベアトリクス「別に何も。ただの散歩だ」

 できるだけボロは出さないようにっこりと笑顔で答える。指輪のことは勿論秘密だ。

ゼタ「ふーん。まぁ暇よねー、最近」

ベアトリクス「だな。仕方ないけどなぁ」

ゼタ「あたし最近やることなくて。組織からの依頼もないじゃない?」

ベアトリクス「うん、そうだな」

 頷く。最近、正確に言うなら2日前から現在まで。私たち団員は調べものをしている団長たちに待機を伝えられ、退屈な時間を過ごしている。

ゼタ「……」ジー

ベアトリクス「……? なんだ? ジッと見て」

ゼタ「……そうよね」ハァ

ベアトリクス「何がだ?」

ゼタ「何でもない。気にしないで」

ゼタ「ね、ベア。暇なら夜に二人で飲まない? ワインがあるの」

ベアトリクス「ワイン? 二人で?」

ゼタ「うん。量が少ないからね。甘いお菓子でも食べながら。どう?」

ベアトリクス「いいな。ゼタの部屋に行けばいいのか?」

ゼタ「そ。待ってるからね」

 お菓子とワインを混ぜたお菓子は食べたことがあるけど、ワインをお菓子をつまみながら食べるなんて初めてだ。
 どんな味がするのだろうか。

ゼタ「よっし、ベアならお菓子出せば頷いてくれると思った……」

 ルンルンなご機嫌な様子でゼタが私を通り過ぎ、部屋のある方向へと歩いていく。去り際そんな台詞が聞こえてきたが……私をお菓子で釣ってまで一人呑みは寂しいということか。私にはよく分からない。




今回はここまで


ベアトリクス「でもこれでゼタに会う口実はできたんだよな……」

 自室に戻った私はふと気がつく。
 二人でゼタの部屋で呑む。イタズラを仕掛けるならばこれ以上ないシチュエーションだ。

ベアトリクス「こういう時は運がいいんだな、私」

ベアトリクス「さてと……」ポスッ

 ベッドに腰掛けポケットを漁る。取り出したケースを開いて指輪を確認。うん、なくしてない。

ベアトリクス「あとはこれをゼタにかっこよくはめるだけなんだけど……」

 よく分からない指輪をいきなりゼタにはめるのも悪い気がしてきた。いやまあイタズラなんだからどっち道悪いんだけど、変な力でも込められてたらどうなるか。

ベアトリクス「……」ウーン


 >>17 自分で確かめてみる? 確かめない?

確かめない

ベアトリクス「……親密になれるって言ってたし、別に大丈夫だよな!」

 そうだ。あの店主を信じるならば何も確認しなくとも良い。それに見た目はただの指輪。はめたって何も問題はないだろう。

ベアトリクス「そうと決まれば準備しておこうかな……」

 いわば今日は勝負の日。服装はいつもの服だと堅苦しいし、普通に部屋着でいいかな。髪とか身だしなみもしっかりしておかないと。
 まだお昼過ぎというのに私は夜の準備をはじめた。イタズラのためにこうも張り切るとは、我ながら子供っぽいというか……。

ベアトリクス「ふふん、ゼタに一泡ふかせて……フフフ」

 あの怪しげな露店の店主を信じるという前提すらおかしかったことにも全く気づかない浮かれっぷり。
 これから何が起こるかだなんて、私は考えもしなかったのだ。


 そんなこんなで長い準備を終え、そわそわと体感時間の恐ろしさを痛感しつつ自室で待機。
 夕食をほどほどに食べて夜と呼べる時間が来たところで、私はゼタの部屋を訪れた。

ベアトリクス「……よし」

 ショートパンツにニットのオフショルダーシャツ。ちょっとラフだけど、部屋着ならこれくらいがいいだろう。
 自分の身だしなみをチェック。最後にポケットの中を確認して、ドアをノック。

ゼタ「ベア、やっと来た。遅いんじゃない?」

 ドアを開いて顔を出す彼女。私だと分かると彼女はドアを完全に開いて姿を見せた。
 ……なんて言うんだろう。その姿を見て、私はちょっとドキッとしてしまった。
 ゼタが着ていたのは黒のキャミソール。ワンピースみたいになっていて、フリルとか付いていて可愛らしいのだけど一段階薄くなっているスカート部分が微妙に透けていて太ももの肌色が見えている。
 女の子同士だからいいけど、男の団員と呑んだりするときはこの格好じゃないよな……。

ベアトリクス「そ、そうか? 夜だよな?」

ゼタ「夜になってから一時間は過ぎてると思うけど? ま、いいや。入って入って」

 けろっと笑顔を浮かべ、私の手を握り引っ張るゼタ。半ば強引に部屋へ入れられ、彼女はそのまま私をベッドに座らせるとドアを閉める。
 部屋は薄暗かった。私の部屋と同じような広さと家具なのに雰囲気は全然違う。ベッドの横に小さなテーブルが置かれていて、そこに唯一の光源である蝋燭が。ワインとグラス、お菓子が照らされていてなんだか絵画みたいな幻想的な光景に見えた。

ゼタ「落ち着くでしょ? セッティングしておいたの」

ベアトリクス「なんだか手が込んでるな」

ゼタ「それはそうよ。せっかくお酒を楽しむんだから。それにワインはこういう雰囲気が似合うと思わない?」

 私の横へゼタが座る。ふんわりと香る部屋と同じいい匂い。微かな光に照らされる彼女はいつもより綺麗に見える。


ベアトリクス「そうだな」

ベアトリクス「……」

 ま、まずい。言葉が出てこない……。

ゼタ「ぷっ、何黙ってるの? 珍しい。」

ベアトリクス「め、珍しいってどういう意味だっ」

ゼタ「そのまんまよ。あっ、もしかしてあたしに見とれちゃった?」

ベアトリクス「ち違っ」

ゼタ「ふふ。さ、お酒を呑もう?」

ベアトリクス「無視すんなっ」

ゼタ「はいはい。んーと、ワインはちょっとずつだっけ」

 ムキになって否定しようとする私を軽く流して、ゼタがワインの栓を開ける。何かを思い出すように呟き、グラスへと慎重にワインを注いだ。

ベアトリクス「普段ビールばかりだから洒落た飲み物のことはよく分かってないみたいだな」

ゼタ「お互い様でしょ。ベアこそ、飲んでまずいとか言わないでね」

ベアトリクス「私は大人の女だぞ。そんなことはない」

 胸を張って言い切る私。ちなみにワインは経験したことない。

ゼタ「なら平気ね。はい、どうぞ」

ベアトリクス「ん。ありがとう」

ゼタ「よしよし。ちゃんとお礼言えてるわね」

ベアトリクス「……私をなんだと思ってる」

 ジトッとゼタを見る。けれど彼女は変わらず笑顔で、手にしているグラスをこちらへ差し出した。

ゼタ「話は後にして、とりあえず乾杯」

ベアトリクス「……乾杯」

 仕方なくグラスを合わせワインを一口。……存外、美味しい。苦味は少なくて甘味があり香りが強い。その代わり……例えるなら果物の皮だけをかじったみたいなえぐみが。癖が強い風味だ。

ベアトリクス「……美味しい、のかな」

ゼタ「まずいって思わなければ多分そうなんでしょ。お酒はそれくらいでいいのよ。呑みすぎちゃうし」

ゼタ「お菓子、ワインに合うらしいから適当につまんで」

ベアトリクス「ああ、もらうよ」

 マフィンを選び、口へ。甘味は弱めでチョコレートの香りと苦味が広がる。続けてワイン。ちょうどいい具合にそれぞれの味が中和され、チョコレートとワインの香りがすっと鼻を抜ける。
 お酒を混ぜたお菓子を食べた時によく似ているけど、それよりも大人な味わいで複雑な深みが楽しい。アルコールによる高揚も大きいのだろうが。

ゼタ「ベアって戦いの時は荒っぽいのに、普段はきちんとしてるわよね」

ベアトリクス「なんだ、いきなり」

ゼタ「隣で見てて絵になるなぁって思っただけ」 

 それを言うならゼタもそうだが……口には出さない。

ベアトリクス「小さい頃から教わってたからな。自然とだ」

ゼタ「そう。……ベア、もう一杯どう?」

ベアトリクス「あぁ、もらうよ」

 ゆったりとした雰囲気の中、二人でお酒を楽しむ。なんてことはない、友人とのささやかな飲み会なのだが私は随分と癒されているような気がした。

ゼタ「さっきの話なんだけどね」

 ワインがそろそろ底をつきそうな頃、不意にゼタがグラスを置いて話を切り出した。

ベアトリクス「さっきの?」

ゼタ「ほらお礼とか」

 あぁ、そのことか。……酔いで頭が回ってないのかもしれない。ゼタもほんのりと赤いし、私はしっかりしておかないと。

ゼタ「ベア丸くなったなぁ、と思って。前は色々大変だったでしょ? 一人で突っ走って」

ベアトリクス「そうだったか? 私は変わったつもりはないぞ。今だって星晶獣は倒したい」

ゼタ「嘘。すごい変わった。昔なら一日待機の時点で団から離れてた、絶対」ムスー

ベアトリクス「……否定できない」

 膨れ顔で言われ私は狼狽えた。
 そう言われてみればなんで私は大人しく待機なんてしているんだ。早く功績を上げなくちゃいけないのに。


ゼタ「でしょ? やっぱり良かったね、この騎空団に入って」

ベアトリクス「……まぁ、そうだな」

ゼタ「あたしじゃベアと一緒に戦うくらいしかできなかったから……ちょっと悔しいかも」

ベアトリクス「ゼタ……」

 多分私は恥ずかしいことを言おうとしている。反射的にそう思った私はグイッとワインの残りを飲み干し、テーブルへグラスを置く。

ベアトリクス「私が変わったなら、多分それはゼタのお陰だ」

ゼタ「ベア?」

 きょとんとするゼタの両肩の上に手を置いて、私は言葉を続ける。

ベアトリクス「その、荒んでた私のことも見捨てないで仲間でいてくれて――色々ゼタから学んだこともある。正直、救われたと思うしさ……飾る必要がない相手ができて嬉しかった」

ベアトリクス「ゼタからは返しきれないくらい恩がある」

 ……私は何を言っているんだ。と内心ツッコミはある。けれどぼんやりした意識では口を止めることは叶わず、私はこのタイミングであれを取り出した。

ベアトリクス「……受け取ってくれ。私の気持ちだ」

ゼタ「こ、これって……あれよね? え、指輪?」

ベアトリクス「……あ」

 全て言い切ってから、極限まで大きくなっていた気持ちが急激に小さく。
 自身を卑下するゼタへの感情がやってしまった感に隅へ追いやられる。
 ほぼほぼ妄想通り。決まり文句もそうだし、壁へは押し付けてないが距離は近い。
 が、そこへ至るまでの流れが大きく異なっていた。

ゼタ「……ありがと、ベア。ちょっと照れ臭いけど――あたしも嬉しい」

 そして結果も。
 指輪のケースを両手で抱き締め、目を閉じるゼタ。とても冗談だとかドッキリだとか言えない雰囲気だとすぐに分かった。
 ……どう考えてもプロポーズ的な流れ。そして反応を見るに、成功してしまったらしい。

ベアトリクス「……そ、その、ゼタ?」

ゼタ「ん? ――あ、そうよね。指輪は付けないと。ベア、お願い」

ベアトリクス「う゛……」

 赤面したゼタへ言われ思わず呻いてしまう。撤回などする勇気はなく、私は言われるがままケースを開いて指輪をゼタの指へ慎重にはめた。

ゼタ「……なんか信じられない。ベアとあたしがね……初対面なんてひどかったのに」

ベアトリクス「会って早々口喧嘩だったからな……」

ゼタ「ふふ、でも今は……あれっ?」

ベアトリクス「どうした?」

 バッと突然私から距離を取り、股間の辺りを手で押さえるゼタ。……どうしたのだろう? 透けてることに今気づいた……はないか。

ゼタ「な、なななんでもない!」

ベアトリクス「その反応でそれはないだろ。隠し事するのか?」

ゼタ「う。……その、信じてくれるなら話す」

ベアトリクス「……あぁ。信じるさ」

 ゼタが涙目に……よっぽどなのだろう。信じるに決まっている。
 私が躊躇いなく答えると、ゼタは控えめに私へ近づき隠していた手をどけた。
 異変は一目で分かった。そして原因も。

ゼタ「そ、その……生えてるわよね? これ」

 ……生えていた。何なのかは服の上からでも形でなんとなく察しがつく。なんで大きくなっているのかは分からないが。

ゼタ「ねえ、ベア。指輪が外れなくて……疑いたくないけど、もしかして……」

ベアトリクス「ご、ごめんなさい!」

 私は素早く床へ土下座した。指輪の効果もそうだが、告白のこともついでに含めて。

ゼタ「……話してくれる?」ゴゴゴ

 上からの威圧感をひしひしと受けつつ、私は今日一日のことを素直に白状した。


ゼタ「へー……最初はイタズラするつもりだったんだ。ほー」

 で、当然ゼタは拗ねた。
 刺されてもおかしくはないことをしでかしたのだから、この反応でも激甘なのだけど……辛い。申し訳なさと不甲斐なさが。

ベアトリクス「で、でも一応責任はとって付き合おうと……」

ゼタ「一応?」

ベアトリクス「ぐっ……。勢いがあったのは認めるよ。けどゼタと付き合ってもいいと思ったのは本当だ!」

ゼタ「……っ」カアア

ゼタ「それなら……さ」

 ゼタが顔を真っ赤にして、自分の隣を手でポンと示す。座れということらしい。
 しかしゼタがこんな表情を見せるなんて。思わずドキッとしてしまう。

ベアトリクス「……なんだ?」

 ベッドに座り、中々話し出さないゼタへ続きを促す。その間もゼタのあそこには大きくなったままのあれが。もじもじと脚を擦り合わせ、ゼタはようやく口を開く。

ゼタ「……やらせてよ。責任とって」

ベアトリクス「……は、はぁっ!?」

 突然な提案に声を上げる私。聞き間違え……ではなさそうだ。

ベアトリクス「きゅ急にそんなこと言われても――」

ゼタ「あたしにこんなことしたんだから拒否権なし! 恋人になるつもりだったんでしょ!? だったら大人しくする!」

ベアトリクス「早すぎるだろ――ひゃっ!」ドサッ

 ゼタへ押し倒され、ベッドへ仰向けに。私の上には四つん這いのゼタが。

ゼタ「ベアと近くで二人っきりで、ずっと我慢してたんだから……。それにこれは、そう、お仕置きよ」ハァハァ

 ……完全に理性を失っている。息を荒くさせながらゼタは私を熱っぽい目で見つめ、すっと手を伸ばした。

 『同性の方と異性のように親密になれると話題の』

 私の頭に露店の店主の言葉がフラッシュバックする。
 同性の方と異性のように……つまり、今のゼタのような異変が起きるということか。
 逃げられそうもない諦めからか、私は冷静に考え、心の中で大きくため息を吐いた。




今回はここまで


ベアトリクス「分かったよ……こんなことになったのも私の責任だからな」

 こうなっては仕方ない。実際私が酔いに任せていなければ何も問題は……や、まぁ店主に説明されてなかったのもあるけど。
 でも、確かに私はゼアへ告白した。今更身体を許せないというのも酷だろう。
 ……ゼタ、すごく辛そうだし。

ベアトリクス「ただ初めてなんだ、優しく……してくれよ?」

ゼタ「っ……あ駄目、ムラッときちゃう」

ベアトリクス「重症だな……」

 落ち着こうとしているのは分かる。けれどその理性を通り越して性欲が強まっているようだ。
 呆れて呟く私。ゼタはごくりと唾をのみ込み、おもむろに私の胸へ手を伸ばした。

ベアトリクス「っ、いきなり……っ」

ゼタ「胸の形に張りついて、やらしい服よね……谷間だって見えるし、あんまり無防備にしたら駄目よ?」

ベアトリクス「お前、だって……ぁ」

 服の上から撫で回すように触れてくる。ちょっとくすぐったくて、ゼタに触れられてると思うと身体が熱くなってくる。

ゼタ「あたしはベアの前だけだもん。――っていうか、あれ。ベア下着付けてないの?」

ベアトリクス「寝るときは……大体そうだけど」

ゼタ「へー……えいっ」ズルッ

 ニコニコと楽しげに笑っているゼタが胸の谷間辺りに手をやり、突然私の服を下に下げる。
 止める間もない。膨らみが服からぶるんと揺れ露となる。
 完全には脱がさずに胸だけ露出。……す、すごく恥ずかしい。ゼタがまじまじと見てくるから尚更。

ゼタ「ベアのは大きいよね……ふふふ、これからあたしの好きにしていいんだよね?」

ベアトリクス「時と場所はわきまえてくれよ?」

ゼタ「分かってるって。あたしはいつ触られてもいいけどね?」

 胸に手を置きずいっと私へ顔を近づけるゼタ。色気のある笑みを浮かべて間近で囁かれ――

ベアトリクス「……ば、馬鹿」

 私は分かりやすく照れてしまった。そんな私を見て満足そうに笑う。

ゼタ「ベアはほんと苛めたくなる子よね。言われたから優しくするけど」

ベアトリクス「言わなかったらどうするつもり、んぁっ」

ゼタ「お、かわいい声。胸って気持ちいいの?」

 口を胸の突起に付けて吸い、空いている方を手で優しく揉んでくる。ただ撫でるだけとは違う。素肌と素肌で触れ合い、快感を与えようと愛撫する。その差はとても大きくて、私は自然と声を出してしまう。

ベアトリクス「だ、誰が気持ちよく、なんか……」

ゼタ「まーたそうやって強がる。いいよ、ヒイヒイ言わせてあげるから」

 手も乳首への攻めにシフト。時折甘噛みを混ぜ、先程よりも強い刺激を与えてくる。

ベアトリクス「あっ、ぁ……ふぅ、んっ」

 私はなんとか耐えようと口を結んでいるのだが、ゼタはそれが面白いらしい。ニヤニヤと笑い私の顔をすぐ目の前で眺める。

ゼタ「ベア、気持ちいいみたいね。どんどんここが固くなってきてるよ」

 突起をつまみ、指と指で擦る。それだけで段々と高まっていた身体は震えてしまい、甘い快楽が走る。

ベアトリクス「っ、あ……そんな、こと――」

ゼタ「おっぱい触られて気持ちいい? 言ってみてよ」

 両手で胸を寄せ、離し、こねるように少々乱暴に触られる。ゼタの手で形を変えられ、ゼタの好き勝手に触れられて。
 他の人なら嫌悪するのに、彼女には……。

ベアトリクス「ゼ、ゼタぁ……そ、その――ひぁっ」

 もう耐えられそうにない。ぴりっと走る甘い感覚に声を上げ、私は降参しようと口を開く。


ゼタ「フフッ、あたしの勝ち」

 が、その瞬間にゼタは私へ顔を近づけ、口づけした。間近で香る彼女のにおい。髪がさらっと私の顔へかかり、唇に柔らかな感触が。

ゼタ「ん……」

ベアトリクス「んっ!?」

 私の上へ身体を重ね、一度目を開くゼタ。不意をつかれて戸惑っている私を見て目を細めると、彼女は舌をこちらの口へ入れてきた。
 ぬるりと唇の間を通り私の口内をゆっくりと撫でてくる。いわゆるディープキスというものなのだろう。
 知識はあったのだが……なんだこれは。ゼタの舌が口の上を撫でたり、舌と舌を絡めたり、ただそれだけなのに柔らかくて、溶け合うような心地よさが。

ベアトリクス「ん、んぁ……っ」

ゼタ「ん、ちゅ……じゅ、ちゅる」

 自然と突き出すようにしてしまっていた私の舌を、今度は唇で愛撫してくる。唾液で濡れたゼタの唇が淫靡な音を立てて舌を扱く。
 身体の反応が押さえられない。ぞくぞくと身体が震えてしまうのを感じながら、私はされるがままに口づけを受け入れた。

ゼタ「ぷはぁ……どう? 気持ちよかった?」

ベアトリクス「はぁ、はぁ……ぁ、ん」

 唇を離し、自信満々といった表情で問いかけるゼタ。私はなんとか首を縦に振り答えた。
 息苦しさすらも気持ちよくて、意識が薄れてきても止める気になれなかった程だ。最後の方は何が何だか分からなかった。

ゼタ「……」ゾクゾクッ

 そんな息も絶え絶えな私を見て、ゼタはすごくいい笑顔を浮かべている。……あいつ、結構な変態だな。

ゼタ「ベア……そろそろいいかな?」

 何が、と聞く前にゼタが私の服を脱がす。ショートパンツをベッドの横へ放り、下着へ手をかけてくる。
 快感で呆けていた私はハッと我に帰る。

ベアトリクス「ちょっ! は、恥ずかしいって!」

ゼタ「もう今更。あたしも我慢できそうにないし無理」

ベアトリクス「真顔で答えるな!」

ゼタ「大丈夫だって。優しくするから」

 結局口では止められず下着を脱がされてしまう。手にした下着を見やり、ゼタはまたニヤニヤと笑う。

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ゼタ「ベアー? すごく濡れてるんじゃないの?」

 下着を広げて見せるゼタ。自分でも気づかない内に濡れていたようで、黒い下着の色があそこのある場所だけ濃くなっていた。

ベアトリクス「……そ、そういうゼタこそ」

 が、それはゼタも同じで。身体を起こしてこちらをからかう彼女の股間部分、男性器の先端があるであろう場所が濡れているのが見えた。

ベアトリクス「今すぐ私を犯したいんだろ? いいよ、付き合ってやる」

ゼタ「ははは……ほんと生意気」

 お互い挑発的に見つめ合い、脚を開き、男性器を露にさせ先端をあてがい、クスッと笑う。
 こんな時ですら張り合うなんて。相手のことをどう思っているかなんて、分かりきっているのに。

ゼタ「いくよ、ベア……」

ベアトリクス「あぁ……」

 ……私の秘部へあてがわれているそれ。間違いなくゼタの股間部分、男性と同じように生えている。大きさは……実物を見る機会なんてなかったけど、大きいと思う。
 ゼタの女性らしい綺麗な身体にアンバランスに反り立つペニス。何故だか妙に興奮してしまう。

ゼタ「っ……」

 ゼタが大きく息を吸い、慎重に男性器を中へ。お酒を飲んでるせいか体温が熱く、彼女のそれも同じように感じられた。

ベアトリクス「あっ……ん、ふぅ」

ゼタ「痛かったら、言って……」

 大丈夫だと私は短く答える。自分の中へ何かが入る。未知の感覚に怖さはあるが、それ以上に今はゼタが愛しくて。

ゼタ「やっば……熱くてぬるぬるしてて、すごい気持ちいい」

ベアトリクス「腰が、引けそうに……んっ、なってるぞ」

ゼタ「そっちだって締め付けて……ん、ふぅ……」

 本当に気持ち良さそうだ。さっきまで私をからかっていたゼタが、ゆるんだ表情をしている。中であれがびくびく跳ねているのも感じた。
 徐々に強くなる圧迫感。

ベアトリクス「っ、う……!」

 と、一瞬痛みが走る。初めてだからだろうが、それほど痛くはなかった。

ゼタ「ベアっ? 大丈夫?」

ベアトリクス「だ、大丈夫……だけど。ゼタ……抱き締めてくれるか?」

ゼタ「あー……かわいい」

 ふっ、謀らずも勝ってしまった。顔を赤くさせたゼタが身体を私へ重ね、抱き締めてくれる。薄い布越しに感じる彼女の体温。私の緊張が和らぐのが分かる。

ベアトリクス「奥に、入ったな……」

ゼタ「うん。えっと……ベア、動いていい?」

 待ちきれない、といった様子でゆるく腰を動かしながら確認してくる彼女。私は彼女を抱き締め返し頷いた。

ゼタ「じゃあ……いくよ」

 ゼタが腰を引く。私の中を擦り、蜜と絡み音を立てて、私の身体に愛撫とは比較にならない快楽が走る。

ベアトリクス「んあっ! あっ……んうっ!」

 ぞくぞくと背筋を震わせる快感に浮く腰。それを押し付けるように奥を突かれる。圧迫感に、一瞬意識が途絶えそうになるほどの快感。
 相手に組伏せられ犯される。女として快感がこれほど強いものとは思わなかった。

ゼタ「はぁっ、ベア……気持ちいい……っ」

ベアトリクス「ああっ! ゼタッ、ぁ、んっ、ふあっ!」

 段々と激しさを増す動きに、男性器と秘所が起こす卑猥な音。ゼタと私の身体がぶつかり、愛液で粘着質な水音を立てる。
 彼女に中を擦られ抉られる度に私の身体は反応し、快感が頭を支配する。

ゼタ「ベアの中、すごくきつくて、あっ、もう――っ!」

 それはゼタも同じ。攻めているはずのゼタも腰を動かす度にだらしない顔をして、目をとろんと蕩けさせてしまっている。数分もしない内に限界が近くなっているようで、激しく動いてしまう反面、耐えきれない快感に私へ完全に体重を預けていた。
 密着して奥へ押し付けるみたいに腰を動かすゼタ。彼女は私の胸へ顔を押し付け、ギュッと抱き締めてくる。

ゼタ「あっ、あっ、んうっ、もう――イッ、く――!」

ベアトリクス「ゼタ、あっ――んっ、んああぁっ!」

 度重なる快感に私も限界が来ていたようだ。極限まで高まった快感に頭が白く染まり、何も考えられなくなる。ゼタの男性器から熱いものが注がれ、自分が満たされる幸福な感覚。
 互いに同時に達する。初めての経験のはずなのに虜になりそうなほど気持ちよくて、達したしばらく後も余韻に身体が震えてしまう。

ゼタ「……ぁ、これ、ヤバすぎ……」

ベアトリクス「……みたい、だな。中でまだ大きいままだぞ」

ゼタ「はは……ベアとしてるんだって思ったらつい、ね」

ベアトリクス「……。その、私も気持ちよかった。癖になりそうなくらい」

 ゼタの素直な感想に私も自分の気持ちを告げる。胸の上に顔を乗せたゼタは嬉しそうに笑った。

ベアトリクス「どうする? おさまらないといつもの服も着るの大変だろ」

ゼタ「……そうね」

ベアトリクス「よし、次は私がやってやるよ。んっ……」

ゼタ「ひゃんっ。え、ベアが?」

ベアトリクス「ああ。……って、本当に気持ちいいんだな」

 抜いて私よりリアクションが大きいって。
 私が言うと彼女は恥ずかしそうに俯いて、私の秘所へ視線を向ける。どろっと溢れる白濁に、少量の血。ゼタのあれがビクッと震えた。……分かりやすい。

ゼタ「……一回パニックになるよ、ベアなら絶対」

ベアトリクス「へー、そうなのか」

ゼタ「うっわ、他人事な反応」

ベアトリクス「他人事じゃないさ。ただ、それだけ感度がいいと弄り甲斐もあると思ってな」

 笑い、私はベッドの上に座ると彼女のペニスについた汚れを指ですくい、舐めてみる。……なんとも言えない味だ。

ゼタ「ベア……すごくエロい」

ベアトリクス「そうか? ゼタのもてらてら濡れてて、いやらしいけど」

 確か……これを舐めたりくわえたりすると気持ちいいんだよな。座っているゼタの脚の間に顔を近づけ、間近でじっくり観察する。

ベアトリクス「ゼタの……大きいな」

ゼタ「息が、ぁ……ベアぁ、もどかしいから、早く……」

ベアトリクス「わ、分かった……」

 色っぽい声で催促され、ドギマギしながらまずは裏の筋に沿って舌を這わす。熱くて固いそれを舐めると、ゼタが甘い声で喘いだ。

ゼタ「ふぁっ、ベアがあたしの……を、んっ」

 私の頭の上に手を置き、うっとりとした表情でゼタが呟く。味は悪くてグロテスク。なのにこうして可愛らしく反応してくれるゼタを見ていると、もっと気持ちよくしようって気になるから不思議だ。


ベアトリクス「歯が当たると痛いよな……んっ、う」

 もう少し頑張れる。ゼタをもっと気持ちよくしてあげようと、私は男性器の根元を掴むと先端からゆっくりと口へふくむ。
 やっぱり見た通り大きくて、ただ先端をくわえるだけでも一苦労。多分全てくわえきることはできないだろう。

ゼタ「ベアの、口の中に……っ!」ハァッハァッ

ベアトリクス「んむ……っ、ぷぁ」

 喉の奥の手前、吐き気がくるちょっと前で停止。えっと、本ではここから頭を動かしながら舐めて、くわえられないところは手で扱くんだよな。

ベアトリクス「ん、ちゅ――じゅる」

 頭の中で思い出しながら口と手でゼタへ
奉仕する。唾液をのみ込むこともできずに次第に大きな音が立つようになり、滑りが増す。

ゼタ「やっ、ぁ――ベア、すご、くぁっ、上手――っ」

 話すこともままならなそうなゼタの大きな反応。内心得意気に笑いつつ、唾液を口からこぼれないよう吸い、口による奉仕を続ける。
 ゼタが私の奉仕によって乱れ、喘いでいる。自分の身体がまた火照っていくのを感じた。

ゼタ「そ、それ、ヤバ――すぐイッ、ちゃ――!」

 また短い時間で達しそうになるゼタ。彼女をイかせようと私は腰を掴み、もう少し深くくわえこもうとするのだが――

ゼタ「ベア、出るっ――出すよっ!」

ベアトリクス「んんっ!?」

 グイッと彼女に頭を掴まれ強引に奥までくわえさせられる。本能的に吐き出そうとする、その動きにペニスが刺激されたのか、直後射精がはじまる。

ゼタ「ぁ、出てる――いっぱいっ」

 喉の奥に精液が吐き出され、強制的にのみ込まされる。乱暴な扱いで当然苦しいはずなのに、私はどこか興奮を覚えてしまっていた。

ベアトリクス「んぶっ、ぷぁ――ぁ、げほっ! けほっ」

 射精が終わりゼタの手から力が抜けたのを見計らい口を離す。……の、飲んでしまった。喉がべたべたしてるような気がする。吐き出そうと咳き込んでも、晩御飯ごと出てきそう……。

ベアトリクス「ゼタ! 急に乱暴なことするなって!」

ゼタ「……へ? あ、うん。ごめん……」ポケー

ベアトリクス「トリップすんなって」ペシッ

ゼタ「あいたっ。あ……ご、ごめんベア! 我を忘れてつい」

 余程だな……。
 ゼタがこうなるって、世の男はどうなるのだろうか。それとも指輪による効果のせいか?

ベアトリクス「今度はしたいなら事前に言ってくれよ?」

ゼタ「えっ、言えばいいのっ?」

ベアトリクス「検討するだけ」

ゼタ「だよねー……。ベア、今度あたしがあんなことしたら縛っていいから!」

ベアトリクス「そんなこと言っていいのか? まだ今日はする必要があるんだぞ?」

ゼタ「え? ……あ、まだ大きい」

 自分の下半身を見て苦笑いするゼタ。彼女のあれはまだまだ大きいまま。おさまる気配がない。


ゼタ「でもこれでベアともっとできるってことだよね?」ギュッ

ベアトリクス「ゼタがもてばな。ほら、来な……」

ゼタ「ベアもすぐ降参しないようにね?」

 再びゼタに押し倒され、身体を重ねる。
 その後私たち二人は何回かお互いを求め、貪り……けれどゼタのものは大きさがちっとも変わらず。

ベアトリクス「……そ、それ、なんでそんなに元気なんだ?」

ゼタ「さぁ? よく分からないけど……あれっ?」

 何度目かの事後。いい加減疲れが出てきた私が問うと、ゼタが間抜けな声を上げた。どうしたのかと見れば、彼女は指輪を手にしていた。
 外れないと言っていた指輪をだ。

ベアトリクス「ゼタ? どういうことだ?」

ゼタ「ちょっ、その目止めて! 嘘じゃないわよ、本当に外れなくて。……一回してからゆるんだ気がしてたけど」

ベアトリクス「うおいっ!」

ゼタ「だって、外したら終わりそうだし。まだやりたかったし」

ベアトリクス「だからって……心配してたんだからな。私の責任でもあるし」

ゼタ「うん……ごめん。ワガママだったよね」

ベアトリクス「お互い様かな……おっ、なくなってるな」

 そうしょんぼりされては怒る気にもならない。怒る筋合いもないし。
 フッと笑い視線を下げた私は彼女の身体の変化に気づく。指輪を外したお陰か、彼女の男性器が消えていた。


ゼタ「なるほど……誰かとすれば外せるみたいね 」

ベアトリクス「呪われた指輪かと思ったけど、他に何もないならお買得品だったな」

ゼタ「本当にね。でも普段は付けないようにしないと」

ベアトリクス「……普段は?」

 指輪をケースにしまいながら呟く彼女の言葉に首を傾げる。まるである時は身に付けるみたいな言い方だ。

ゼタ「こんなの知ったらやめられないでしょ? ベアにも指輪はめてみたいし」

ベアトリクス「わ、私かっ?」

ゼタ「あたしも女の子なんだから、ベアから攻めてもらいたい……って言っても駄目?」

ベアトリクス「……駄目、じゃない」

 ……断れない。いつからこんなにゼタに弱くなったんだ私は。
 上目遣いで甘えるみたいに小首を傾げて、思いきり演技なのにときめいてしまう私……単純すぎる。

ゼタ「だよね? ふふ、これから楽しめそうね」

 ……でも悪い気はしない。
 彼女が恋人になって、彼女が私のことを求めてくれて、幸せと言うより他に相応しい言葉があるだろうか。
 指輪のこととか、告白を受け入れた理由とか、気になることは色々あるけど……今は休もう。腰が痛いから。

ゼタ「待機って明日もかな? そしたら朝から連戦とかどう?」

 ……団長。早く用事を済ませてくれ。




 今回はここまで
 今後はベアが指輪をつけたり、水着、ハロウィンなどイベントの話や衣装を絡めたりする予定


 翌朝。あのままぐっすりと二人して二人して眠ってしまい、目覚めた私たちは身体を洗ったりベッドを綺麗にしたりと慌ただしく後始末をして、食事をとろうと街へ出かけた。

ゼタ「付き合って初めてのデートね。ふふっ」

 私の隣を歩くゼタは機嫌がよさそうだ。店が並ぶ通りをきょろきょろと見て、時折私へ視線をやるとクスッと笑う。
 口喧嘩が多かった私達だったが、こうしてのんびり歩いているのも悪くない。
 むしろ楽しそうにしている彼女をすぐ近くから眺めている、それだけでも幸せな気持ちを感じてしまう。

ベアトリクス「デ……そ、そうだな。出掛けることは何回もあったけど」

ゼタ「買い物とかランチとかでしょ? 喧嘩するのに仲いいわよね、あたしたち」

ベアトリクス「あぁ。――そういえばゼタ、ちょっと気になってたんだけど」

ゼタ「なに?」

ベアトリクス「なんで私の告白を受けたんだ?」

 ピタッと笑顔のままゼタの表情が固定される。……な、なんだこの反応。

ゼタ「それ言わせる? っていうか分からない?」

ベアトリクス「……さっぱり。イタズラするつもりだって言っても、はっきり怒ったりしなかったし」

ゼタ「ベアって鈍感だよね……今まであたしも苦労させられてきたんだけど」

 はぁ、とため息。鈍感? などと首を捻る私を見て、更に呆れ顔に。


ゼタ「二人で、あたしのあの服装で、ベアの告白にあっさり頷いて、イタズラって言われて怒らないで――はい、答えは?」

ベアトリクス「はっ? えっ? えーっと、前から好きだった?」

ゼタ「……分かるじゃない」

ベアトリクス「言われてみれば……なるほど。そうだったのか」

ゼタ「その鈍さであんな告白素でするのよね、ベアは。女の子泣かせてないよね?」

ベアトリクス「ないって。多分」

 ジトッとした目で見られ、狼狽えながら考える。少なくともそんなことはない筈だ。

ベアトリクス「そうか……ゼタが私のことをな」

 今度はその理由が分からない、とか言ったら怒られそうなのでやめておく。好きな理由なんて聞かれたら恥ずかしいに決まってるし。

ゼタ「はい、この話はおしまい! ベア、あの店行こう」

ベアトリクス「ああ。……そうだ、後で少し寄りたい場所があるんだけど」

ゼタ「いいよ。どこでも付き合ってあげる。どこ行くの?」

ベアトリクス「ちょっと、な……」

 言葉を濁す私。ゼタは怪しそうな目をして見ていたけれど、ついて行けば分かること。あっさりといつもの調子に戻り、私の前を歩く。
 さて。昨日と同じ場所にいればいいんだけど……。

 ゼタと食事をして、私の用事を済ますことに。あれこれ聞いてくるゼタへ道すがら昨日のことを話し、あっという間に目的地へ。

??「あ、昨日のお客様ー。いかがしました?」

 すると、いた。昨日と同じ路地、同じ位置にまた露店を開いている小さな店主。今日はこいつに話があったのだ。

??「あ、今日はお二人ですか。この人がお客様のご相手で?」

ベアトリクス「関係ないだろ。答えないぞ」

??「ふふふ、恥ずかしがって。分かりました、お客様のプライバシーは守ります」

ゼタ「この人が……話の店主?」

ベアトリクス「ああ。なんか怪しいだろ」

??「本人を目の前にして怪しいとは中々……」

ゼタ「怪しいっていうか……シェロさんじゃ」

??「おっほん。気づいても言わないようにお願いします。表向きに売れないカテゴリの商品なのでー」

ゼタ「ははー、なるほど。確かにあんな指輪、表沙汰にはできないよね」

ベアトリクス「だな。……で、この店主は誰なんだ?」

ゼタ「ベア……鈍い。ま、ここの商品は大丈夫そうよ? あたしが保証するから」

店主「安全安心、夜の生活をサポート。マニアックな商品を取り揃えております」

ベアトリクス「胡散臭いんだけど」

ゼタ「いいのいいの。ベア、ちょっとあっちで待ってて。あたし買い物してくから」

ベアトリクス「なんで私を遠ざけるんだ?」

ゼタ「恥ずかしいでしょ。……あと見られたら止められそうだから」

ベアトリクス「後半が第一の理由だろそれ」

ゼタ「はいはい、とにかく行ってて」

 私の背中を押して、路地の入り口辺りまで連れていくゼタ。彼女は露店まで戻るとこそこそ話をはじめた。

ベアトリクス「……はぁ」

 一体なにを買うというのだろう。気になる。

ゼタ「へぇー母乳が……面白そ――」

店主「これもおすすめで……精力……で、」

 ちらほらと聞こえる単語が不吉でしかない。私が近くで聞いてたら間違いなく止めていたな。今も充分止めたいから。

ゼタ「いやー。こういうお店も楽しいね」

 そわそわしながら待ってるとゼタが買い物を終えてこちらへやって来た。手には布の袋が。中身は見えないが結構大きい。

ベアトリクス「なにを買ったんだ?」

ゼタ「ふふ、秘密。用事は済んだし、休む?」

ベアトリクス「……そうだな。することもないし」

ゼタ「ん、ならついてきて」


 昨日は色々あって疲れた。まだ朝だけどグランサイファーに戻って休むとしよう。
 何故か案内するみたいに先を歩くゼタについていき、徒歩数分。明らかにグランサイファーではない場所でゼタが立ち止まった。
 ここは……宿屋?

ベアトリクス「グランサイファーに戻らないのか?」

ゼタ「え? うん。朝からだと聞こえるかと思って」

ベアトリクス「……ま、まさか」

 けろりと答えるゼタに、嫌な予感がする私。この流れで宿屋ということは……。

ゼタ「今回はベアに指輪つけてもらおうかな。覚悟しておいてよ?」

ベアトリクス「や、やっぱり! 嫌だ、二日連続は堪える!」

ゼタ「ベア、本当に嫌なの?」ギュッ

 断ろうとする私の腕に抱きつく彼女。柔らかな感触が伝わり、指先であごの下を撫でられる。
 分かりやすい誘惑だ。

ベアトリクス「こ、今回だけだからな……」

ゼタ「ふふっ、ありがとうベア」

 ……あ、あれ? なんで私断らないで宿屋に向かってるんだ?
 疑問に思うが身体は止まらず、私は自分の理性の弱さを痛感するのだった。



 今回ここまで

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