【ガルパン】後藤隊長「特車二課 あんこう小隊、か…」【パトレイバー】 (268)



祝!「ガールズ&パンツァー 最終章」製作決定&「機動警察パトレイバーREBOOT」発売記念

・約35000字を予定、長くてすいません。
・コラボSSが苦手な方にはお勧め出来ません。
・時系列、設定のご都合独自設定あり。
・パトレイバー漫画版 第一巻の再構成となります(設定は色々良いとこ取りです)。

毎夜のんびりと更新していきます。
よろしくお願い致します。





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〈 第0章. プロローグ 〉


煌々と日差しの照りつける、とある夏の日。
よくある中古マンションの窓際で、一人の中年男がビールを片手に煙草を燻らせている。

二週間ぶりの休日という事もあり、気になっていた部屋の掃除と洗濯物干しを終えた後の一服。
家族もいない中年男にこれといった予定があるはずも無く、悠々と堕落をむさぼっていたのだ。

音量を絞ったテレビのチャンネルをザッピングし、とりとめもない世間のニュースを眺める。

環境保護団体のデモ活動、著名芸術家の展覧会、アイドルの一日署長、各種スポーツの話題…etc。

そんな中、とある話題になった所でテレビの音量が大きくなる。男の興味を引いたのは、「戦車道全国高校生大会」に関するものだった。



『…ついに大洗女子学園が決勝進出!黒森峰女学園とは、因縁の西住流姉妹対決となります。強豪の黒森峰に対し、大洗がどのような奇策で挑むのか?実に楽しみですね!!』


義務感だけの笑顔と声色で最低限のレポートを行うアナウンサーにしかめ面をしつつ、男は一人ごちる。


「ほう、決勝進出か。こりゃあスゴいわ…」


どちらかと言えばマイナーな部類に入る競技「戦車道」。男自身も知識では知っていたが、それほど興味があった訳では無い。

それが今では無意識に情報を追いかけるようになり、形ばかりとは言え、世間一般のニュースにも取り上げられるようになった。



こうなる原因は一つしかない。
素人が一目見て分かるような、常識を覆す台風の目「スーパースター」が現れたからだ。


「…なるほど、面白いな…」


ふと何かしらを思い付いた男が浮かべた表情は、決して誉められるような顔では無かった。

良からぬ事を企む「悪い」笑顔だ。


「…おー~、てーかちゃ~んす♪」


上手く事が運べば、以前から心中の何割かを占めていた懸念事項が、一気に解決するかもしれない。

男は上機嫌で、たった今思い付いた「悪企み」を形にすべく、テーブル上のノートパソコンを開き、何事かをポツポツと不器用に打ち込み始めた…。


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〈 第1章. 特車二課の憂鬱 〉


ハイパーテクノロジーの急速な発達と共に、あらゆる分野に進出した多足歩行式大型機械「レイバー」。
しかしそれは、レイバー犯罪とも呼ばれる新たな社会的脅威をも産み出した。

続発するレイバー犯罪に対抗すべく、警視庁は本庁警備部内に特殊機械化部隊を創設した。
通称「特車二課」…パトロール・レイバー中隊、パトレイバーの誕生である。



特車二課は、才女「南雲警部補」が隊長を勤めるエリート部隊の「第一小隊」と、曲者「後藤警部補」が隊長を勤める愚連隊「第二小隊」の、計二小隊で構成されている。

物語は、第二小隊 後藤隊長のもとに、刑事部捜査一課の「松井警部補」が訪れた、約一ヶ月前に遡る…。


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--特車二課棟内 中階段 喫煙コーナー


後藤 「…東京・大阪で、過激派環境保護団体による同時破壊活動計画?」

松井 「そ。二ヶ月後、大阪に新たに出来る特車課立ち上げ式典前後のタイミングでね。確か、アンタん所の第二小隊も参加するって…」

後藤 「大阪で採用されたレイバーが最新鋭のAVS-98。ウチと同じAVシリーズって事で、合同訓練に一週間ほど駆り出される事になってね」

松井 「一緒に行くんだろ?悪ガキ共を引き連れて」

後藤 「引率係は南雲さん。旧式レイバーの第一小隊は、俺と一緒にお留守番」

松井 「ややこしいな。何でアンタが行かないの?」

後藤 「特車二課にとっては久しぶりの花道だよ?南雲さんもこんな僻地に島流しされて色々溜まってただろうから、花道を譲ったって所かな」

松井 「嘘つけ。大方、お上と顔合わせるのが面倒で押し付けたんだろう?」

後藤 「俺みたいな不良中年が行くよりは、エリートで美人な南雲さんが行く方がよっぽどマシさ。まあ、win-winなやり取りだよ」



松井 「…まあいいさ。話を戻すと…その計画、実は東京では二ヶ所。大阪と合わせて合計三ヶ所で行うつもりらしい」

後藤 「小規模な過激派団体にしては、ずいぶんと景気の良い話じゃない?」

松井 「『地球防衛軍』『海の家』、二つの過激派団体の共同作戦だよ」

後藤 「そこまで分かってるんなら、一気に踏み込んで一網打尽にしちゃえば?」

松井 「それが出来るなら苦労は無いさ。第一、アンタん所に来やしない…状況証拠ばかりだし、物的証拠は何も無い。でも、事実なんだ」

後藤 「東京圏内のレイバー事件に対処するのに、二小隊だけでも足りないってのに…ったく」

松井 「特車二課が手薄な頃合いを見計らって、今までの恨み辛みを一気に晴らそうって腹みたいだな…で、どうする?」




後藤 「どうする、とは?」

松井 「何か策はあるのか?って事だよ。袖の下無しで協力するぜ。今回に関してはな」

後藤 「策って言ってもなあ…無い袖はさすがに振れないよ。動いてどうにかなる位なら、とっくに第三小隊が出来てるって」

松井 「かと言って、周辺区に配属されてる交通管制用レイバーとロードモビルの寄せ集め部隊じゃ、暴走レイバーの相手が務まる訳が無いだろ?」

後藤 「こっち側のレイバーはまだ何とかなる。問題は金と、何よりも人材さ。有能そうなのは例の大阪に軒並み持っていかれちまったからね」

松井 「流石のカミソリ後藤も、今回に関しては『超法規的措置』すら取れないか…」

後藤 「人聞きの悪い事を。その何ちゃら措置って言い方、止めてもらえない?」

松井 「その何ちゃらを幾度となく行ってきた問題だらけの特車二課が、何のお咎めも無く今だ健在な所が、一番凄い『超法規的処置』だけどな?」

後藤 「その半分以上は、アンタからの持ち込み案件だって事を忘れてもらっちゃ困るよ」




松井 「…ま、何か思い付いたら連絡くれや。ボチボチ行くよ。こっちばかりじゃなく、たまには本業の方も進めておかないと、また上からドヤされちまう」

後藤 「何はともあれ、貴重な情報をありがと。そっちも何か動きがあったら…」

松井 「了解、すぐ連絡するよ」

後藤 「この借りはいずれ、また。精神的に」

松井 「ハッ!心にも無い事を…第一、中年男からの恩返しなんざ、気持ち悪くていけねえや」


後藤 「…名目、体裁、タイミング。そして、才能か。あ~あ、どっかにいないかね?そんな都合の良いライトスタッフが」


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〈 第2章. 廃校阻止大アピール作戦です! 〉


古くから大和撫子の嗜みとして、華道・茶道と並び称される武芸「戦車道」。

今年度限りの廃校が決定していた「大洗女子学園」の「角谷 杏 生徒会長」は、「文部科学省 学園艦教育局担当官」との交渉により「優勝すれば廃校撤回の可能性有り」との言をとり、戦車道を復活させる。

名門「西住流」の名を持ちながら戦車道から遠ざかっていた転校生「西住みほ」は、杏からの依頼により大洗のチームリーダーとして戦車道に復帰。「あんこうチーム」の精神的支えもあり、大洗の快進撃を支え、見事優勝へと導いた。




ところが事ここに至り、当の文科省担当官から「先の言葉はあくまでも可能性でかつ口約束であり、廃校撤回成らず」と告げられてしまう。

後藤が頭を悩ましていた頃から約一ヶ月半後。学園艦を追われた大洗女子学園は再び、最大の危機に直面していたのだった…。


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ーー大洗女子学園 臨時滞在地 生徒会室


杏 「…という訳で、今後の我々『生徒会 執行部』3人の役割分担を発表するよ?」

桃子 「ハッ!」ビシッ

柚子 「はい!」ビシッ

杏 「まずは…かーしま?生徒会長代理として、今から私の持つ大洗校内全てにおける権限を一任する。引き続き待機中の全生徒の面倒を見つつ、転校先の振り分けを終わらせるんだ」

桃子 「ううっ…か、会長ぅ~…」グスグス

杏 「泣くな、かーしま。私はこれから、大洗女子学園存続のために外部交渉に向かうんだから!」

桃子 「!?」ハッ

柚子 「か、会長はやっぱり諦めていなかったんですね?!」ウルウル

杏 「もちろん!だからこそ、私のいない間の大洗は任せるよ…出来るね?」

桃子 「ハッ!お任せ下さいっ!!」




杏 「それと、小山?…私は大洗存続に向けてあらゆる手段を講じるつもりだけど、小山にはかーしまのフォローと並行して、その細かい詰めをしてもらう。大洗校内と外部のパイプ役と言ったところかな?」

柚子 「はい、分かりました!」

杏 「廃校最終日の8月31日までに廃校措置を止め、復活まで道筋を作らないといけないからね。でも…そのためには、もう1つやっておかなきゃならない事があるんだ」

桃子 「この忙しい最中に、まだやる事があるんですか?!」

杏 「後ろ楯の無い私達が頼りに出来るのは『戦車道優勝の実績』と、それに伴う『世論の後押し』しか無い。この世論を更に味方につけるため『戦車道メンバーを徹底的に世間に露出させる』事にする!!」



桃子 「世間に露出って…会長、具体的にはどうされるつもりなんですか?!」

杏 「幸いな事に、戦車道優勝校という事で外部から幾つかのイベント参加オファーが来ていたよね?」

柚子 「それはもう、夏休みという事もあって色々と…こんな感じですね」


・アヒルさんチーム…ビーチバレー関連

・アリクイさんチーム…ゲーム・キャラクター関連

・ウサギさんチーム…バラエティ番組(素人参加型)

・カバさんチーム…地域復興・歴史関連

・レオポンさんチーム…各種レース関連


杏 「義憤、同情、泣き落とし!世間から文科省への抗議が勢いのあるうちに、話題性を風化させないよう、次の一手を打たなきゃならない」

柚子 「会長、それでは…?!」



杏 「校内外の仕事を行う我々カメさんとカモさんチーム以外は、片っ端からスケジュールを叩き込んじゃえ!」

桃子 「でも会長?コレ等はいずれも、学生にあるまじき『際どい格好』を要求するとして一度は却下したものばかりですよ?!」

杏 「この際、命に危険が及ばないのなら多少の事には目をつぶろう!ウチにはスタイル良いのからマニアックなのまで、あらゆるニーズに答えられる逸材が揃っているからね?!」

柚子 「か、会長が久しぶりに暴走してる…!」

杏 「名付けて『廃校阻止大アピール作戦』!期間限定出血サービスだ持ってけドロボー!!」コンチクチョー




桃子 「ではあんこうチームは、大洗観光大使でもしてもらいますか?」

杏 「それ良いねー!また例の格好であんこう躍りでもしてもらおっか!?」

柚子 「際どい格好をさせるのが目的になってませんか?!…冗談はともかく、あんこうチームは戦車道がらみの各種イベントにオファーが殺到しています」

杏 「今は戦車道関係者の協力が必要不可欠。ナーバスなこの時期に、あまり余計な気使いはさせたくないし、したくないな」

桃子 「では、大洗に待機させますか?」

杏 「話題性抜群のエースを遊ばせておくつもりも無いんだなあ…実は一つ面白いオファーがあってね?あんこうチームは『基本的に』こっちをやってもらおうと思ってる」

桃子 「ん?『警視庁 特車二課 体験入隊』?…あのパトレイバー中隊であんこうチームに何をさせようってんですか?」

杏 「『一日署長さん』のような物らしいよー?制服着て、撮影して、パレードして、業務の真似事をするとか何とか」




柚子 「『基本的に』というと、何か気になる事でもあるんですか?」

杏 「…条件項目を読み上げてみてくれる?」

柚子 「ええと…予定期間は8月第三週から四週の12日間。記者発表から八王子の特機専門研修校に移動し、5日間の講習。後2日の休日を挟み実地で5日間勤務…な、何ですか、これ?!」

桃子 「『一日署長』なんて軽いものじゃ無いじゃないですか?!」

杏 「そういう事。警察がPR用の『提灯』として依頼してきたにしては、ガチ過ぎるんだよねー…『あんこう』だけに!」ドヤァ

柚子 「では、どうしますか?」スルー

杏 「私が責任者の所に行って直接話してみる。あんこうチームの皆には話をして準備を進めておいてよ。問題があるようなら、この話は断る…どうにもキナ臭いんだよね?この案件…」ヤレヤレ


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ーー大洗女子学園 臨時滞在地 離れ小屋


みほ 「私たちが特車二課、パトレイバー中隊へ体験入隊、ですか?」

優花里 「何か、トンでもない所から話が舞い込んで来たものですね」

柚子 「現在行方知れずの会長自ら話をつけてきたの。もちろん、あんこうチームの皆の了承を得てからの話になるんだけど…」

優花里 「他チームの皆も、馴れないイベントに参加してアピールに努めている中…」

華 「…私たちだけ断るわけにはいきませんよね?」

みほ 「うん、私もそう思ってた。じゃあ参加という事で皆、良いかな?」

麻子 「枕が変わると上手く寝れないんだが、まあ仕方ないかな」

みほ 「沙織さんはどう…あれ?」

沙織 「…き…き…キターーーッ!!」




みほ 「キャッ?!」

華 「さ、沙織さん?もう少し落ち着いて…」

沙織 「コレが落ち着いていられますかっての!コレよ、コレ!こういうのを待っていたの!!」

麻子 「ノリノリだな、沙織」

沙織 「これ全国のニュースで流れるんだよね?!しかも、行き先は東京だよね?!」

柚子 「え?え、ええ。そのはず、だけど…」

沙織 「ううっ、燃えてきた~…あーもー!この機会に、東京で、いや!日本中の男達を虜にしちゃうんだからね!!」

みほ 「あはは…。でも、東京は私も少し楽しみかも。ショッピングや、ボコ関連グッズが充実してそうで」



柚子 「あ、西住さんは入隊式と除隊式の各々で一言挨拶してもらうから、何を話すか考えておいてね?会長から『文科省が廃校撤回を反古にした事は必ず言っておいてねー』との伝言よ」

みほ 「」

優花里 「みほ殿が一瞬で固まってしまいました」

華 「みほさん…大勢の人前で話すのが苦手なの、相変わらずなんですよね」

麻子 「とても戦車道を制した『軍神』とは思えないな」

沙織 「変わってあげたいのは山々なんだけど…コレばっかりは隊長の役目だから、仕方ないね」




柚子 「…それにしても、さすがあんこうチームはね。廃校の件があっても落ち着いてて…」

優花里 「実感が沸かないだけでありますよ。落ち込んでいても仕方ありませんし」

華 「…花はどこにでも咲けますから。それに、廃校阻止のために生徒会長が外回りしてくれている訳ですものね?」

沙織 「そうそう!今は東京とテレビの事だけ考えてればいいの!!」

麻子 「…その後、会長からの連絡は?」

柚子 「それが、まだ…。でも、桃ちゃんが言ってたの。こういう時にこそ、我々が何とかしなければ、きっと会長が何とかしてくれるって!だから皆さん、頑張りましょうね?!」

みほ 「…」


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--特車二課棟内 2階 隊長室


南雲 「…それじゃあ何?後藤さんは、普通の女子高生をレイバー隊にでっち上げるつもりなの?!」

後藤 「でっち上げるだなんて人聞きの悪い。本気で一端のレイバー隊員位には仕立て上げるつもりだよ?…そもそも彼女達は普通じゃない。戦車道履修生の中でも超一級の逸材なんだってば」

南雲 「同じ事よ!まだ子供じゃないの」

後藤 「…(年増なら良いのかね?忍さんみたいな)」

南雲 「何か言いたそうね、後藤さん?」

後藤 「別にー…それよりもさ?よく考えてご覧よ。そうでなくても、金喰い虫、東京辺境への島流し、出世街道脱落コース、始末書製造元…散々な風評被害に晒されている我が特車二課にだよ?」

南雲 「よくもまあ、自分の所の悪口をスラスラと並べ立てれるわね?」

後藤 「俺自身の悪口じゃないもん。第一、それが事実だし」



南雲 「…はいはい、認めます。要は、現役の警察官で、こんな所に好き好んで来る物好きなんかいないって事よね?」

後藤 「そ。かといって短期教育の予備校生は、正直 質が悪い」

南雲 「…数少ない優秀者は、予備人員も含めて大阪に送り込んでしまったし、ね」

後藤 「忍さんの危惧する所は、俺も同じだよ。今の候補者は、いずれもレイバー隊員としての資質に欠けるって言いたいんでしょ?」

南雲 「それはそうだけど、だからと言って素人の女子高生に頼るわけにはいかないでしょ?」

後藤 「素人、ね…。1つ聞きたいんだけど、忍さんの考える『レイバー隊員としての必要資質』って、3つ最低条件を上げるとしたら、何?」

南雲 「3つの最低条件?そうね…」



後藤 「ちなみに俺はこう考えてる。
その1。レイバーという特殊ツールを運用するための『専門技量』。
その2。与えられた条件下で、最適化した『作戦立案能力』。
その3。隊のチームワークによる『作戦実行能力』」

南雲 「…まあ概ね、そんなところかしらね?」

後藤 「『その1』はともかく、『その2』『その3』いずれも短期育成の予備校生には荷が重過ぎる。限られた資材と人材、土地の利…刻々と変化する状況に、基本はチームで、時には個別に即時対応しなきゃならない訳だから」

南雲 「その条件を満たしているのが、例の戦車道履修生って言いたい訳?」

後藤 「その通り。特に無名校だった大洗を優勝に導いたあの西住って子、あれは本物だ。それに彼女が搭乗している戦車は、他の奴らと動きの次元が違う」

南雲 「随分とその西住さんとやらにご執心な事」

後藤 「まあ、一目惚れみたいなもんだからね」




南雲 「『その2』『その3』は、後藤さんの熱意に免じて百歩譲るとしてもよ?…私は『その1』が一番の問題だと思うんだけど」

後藤 「…まあそれは、先方も戦車という『特殊車輌』を扱う『同じ穴の狢』という事で」

南雲 「さすがにそれは、ちょっと強引過ぎるんじゃない?!」

後藤 「無茶は承知の上。そのためにわざわざ研修期間を設けたんだから…まあ、いざとなったら俺もいるし」

南雲 「カミカゼ管理職ねー…」ハァ

後藤 「んで、各自の特性を活かした役割分担を行い、特機専門研修校で各々の基礎を徹底的に叩き込んでもらう」

南雲 「八王子の特機専…別名『レイバーの穴』ね」

後藤 「佐久間が教官なら、元々才能のあるメンバーだし、短期間でも何とか形にするだろう。そのためには、まず元締めに本案件を納得してもらわにゃならんわけだが…」




キキイッ…バタム

南雲 「あら珍しい。松井さん以外が特車二課を訪ねて来るなんて…何あのレトロな軍用車は?!何で警察の敷地内に軍用車が乗り込んでくるわけ?!」

後藤 「ほう、くろがね四起か…俺も見るのは初めてだ。さすがは戦車道の…」

南雲 「そんな事どうでも良いのよ!何でこんな所に、軍用車で女子高生が乗り付けてくるかって聞いてるの?!」

後藤 「落ち着きなさいって。例の大洗からのお客様だよ」

南雲 「え?ええ…じゃああれが、後藤さんの恋人?」ヒソヒソ

後藤 「…いや。どちらかというと、彼女の親御さんて所かな?」ヒソヒソ

南雲 「何よそれ、不安になるような事を言わないでくれる?」ヒソヒソ

後藤 「興味、出てきたでしょ?」ヒソヒソ

南雲 「嫌な予感しかしないわよっ?!」ヒソヒソ


杏 「…♪」ニイッ


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※…「桃子」って誰?「桃」ちゃん、ですね。
ごめんなさい。

フルメタの人?

なんでパトレイバーssは後藤隊長メインなんだろう……

・大洗の女子達が自衛隊のレイバーに乗るガールズ&レイバーなんて同人誌があったな

・しほと後藤or南雲の絡みとかあったら面白そう

自然保護団体で”海の家”か……柑橘系な名前の建物で、人型海生軟体動物が住み着いてそうな気がする場所だなw

35000字とかすげえな

本庁が黙認してるのはもしかして成功したら戦車道修得者を優秀なレイバー隊員として勧誘できるからかな?

課長「後藤君、君に頼みたいことがあるんだ・・・」

後藤「何でしょう?」

課長「実は娘が西住みほのファンなんだよ・・・サインを頼めないかな?」


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--特車二課棟内 2階 会議室


後藤 「…粗茶ですが」コトッ

杏 「やあやあ、どーもどーも。本日は急なご相談にお付き合い頂き、誠にかたじけない」ズズーッ

後藤 「遠路はるばる、ご苦労さんです。私、特車二課 第二小隊の隊長を務めさせて頂いてる後藤って者です」ズズーッ

杏 「大洗女子学園の生徒会長、角谷 杏です」ニカッ

後藤 「…で、わざわざお越し頂いたという事は、私どもからのご依頼の件で、ですよね?」コトッ

杏 「ええ。この度は大変魅力的な催しにウチのあんこうチームをお誘い頂き、誠にありがとうございます」コトッ

後藤 「…あ、この際ですから足は崩して頂いても構いませんよ?無用の遠慮は、お互い無しと言うことで」

杏 「そいつは有難い。それじゃ遠慮無く…足を崩すと言っても、中は見せないけどね?」キャーエッチ

後藤 「ありゃま。そりゃ残念」ヤレヤレ




杏 「…ぶっちゃけ、『この時期』に、『二週間』も、何でウチの『あんこうチーム』をわざわざ指定してきたのか?その理由が知りたいんすよ」

後藤 「うら若き可愛らしい女の子と制服、ウチの場合はあとメカか…この手の組合せは、昔から手堅い人気がありましてね?」

杏 「確かにウチの子達は普通に可愛いですが…知名度的にも容姿的にも、芸能人や著名人に劣りますよね?ただの女子高生な訳だし」

後藤 「さっきの件に1つずつ答えていくと…『学生さんが夏休みな事を考慮し』、『充分な知識と体験を通じ、安全性をも身に付け』、『今話題の戦車道のスーパースターをお迎えする』…そうおかしな話でも無いと思いますが?」

杏 「…今ウチがどんな状況か、分かってて言ってます?」

後藤 「…ああ。優勝したにも関わらず、廃校が免除されなかったとか…お気の毒でしたなあ?ナーバスな話題かと思って、あえて触れなかったんですが」

杏 「そう、その通り。だから私達には時間が無い。本来ならこんな所で油売ってる暇なんか無いんです」



後藤 「…聞きたい事があるなら、スパッと言ってもらえる?」

杏 「この話の出所はどこ?本当にここ特車二課からの物?」

後藤 「もちろんウチからの依頼だけど…いや。むしろ俺の独断専行に近いってのが問題なのか…」

杏 「…公衆の面前で恥をかかせ、大洗の評判を地に落として廃校を確実な物にしようと…つまりは、そう言うことですよね?!」

後藤 「?…どうにも話が噛み合わないな…何か誤解があるようだ」

杏 「さっきも言った通り、私達には時間がないんです!そっちこそ、隠し事は無しにしてハッキリと言ってもらわないと困ります!!」バンッ



後藤 「…そりゃ確かに失礼でしたね。ごめんなさい」アタマサゲ

杏 「…え?」ポカーン

後藤 「ん?どうかした?」

杏 「あーいや、まさか素直に謝られるとは思っていなかったから…私はてっきり『ばーれーたーかー』とか言い出すのかとばかり」

後藤 「ヒーロー物の敵ボスじゃあるまいし。ま、確かに全てを話していなかったのは事実だからね?身内の恥を晒すような話だし…」

杏 「…あれ?ひょっとして隠してたのって…私はてっきり…」

後藤 「ちょい待ち。そっちが何と勘違いしてたかは後で聞くとして…今から話す事は、依頼を受ける受けないに関わらず、内密で頼むよ?」





(※事の経緯を説明中)







杏 「…なぁんだ!特車二課の人手不足期間を、あんこうチームで補おうって話だった訳ね?」セコイナー

後藤 「まあ、そういう事。失敗なんか考えたくもない話。むしろ成功してくれないと、俺の立場が無くなっちまうよ。それに…」ソーユーナヨ

杏 「それに?」

後藤 「…戦車道に精通するあの子達が、暴走レイバー相手でも十二分に戦える所を見てみたかったから…かな?」

杏 「あーっはっは!ずいぶんと個人的な理由なんだね?…でもま、そういう事なら私も納得できたかな」

後藤 「で、結局アンタが疑っていた事って何なの?」

杏 「例の文科省担当官の遠回しな嫌がらせかと思ってた。あーあ、余計な気を回して損しちゃったよ」

後藤 「こういっちゃ何だが、俺たちは警察の中でも特に浮いてる存在だ。正当性にこだわる連中は、俺たちの事なんか見向きもしやしないよ」



杏 「確かにおじさん、普通のお巡りさんにはとても見えないよね?」

後藤 「おいおい。大洗戦車道のファンに向かっておじさん呼ばわりは勘弁してくれよ?こちらは全国大会での活躍を見てファンレターを出しただけなんだからさ」

杏 「…今、ウチの学校は実質存在しないんだよ?それでも構わないの?」

後藤 「戦車道を勝ち抜いてきた実力は本物だ。それに、このまま廃校で終わらせる気は無いんじゃなかったっけ?」

杏 「そりゃそうだ!(…でもま、そういう事なら、ウチにとってはむしろ良いアピールになりそうだし)」ブツブツ




後藤 「何か言ったか?…なら依頼の件はOKという事で良いのかな?」

杏 「…彼女達を参加させるにあたり、私がハッキリさせておきたい事は一つだけ」

後藤 「まだ何かあるの?!」

杏 「そう嫌な顔しなさんなって。人様からお預かりしてる、私達の大切な戦友の件なんだから。むしろこれからが本題かもよ?」

後藤 「…で、本題って何?」

杏 「決まってる。あの子達の安全策を、責任者として具体的に提示してほしいんだよね」

後藤 「…まあ、そう来るわな」

杏 「でないと、手放しで承認はしかねるよ?さ、頑張って私を納得させるだけの安全策を提示してよね?!」ニカッ


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--特車二課棟内 中階段 喫煙コーナー


後藤 「…」ハァーッ

南雲 「あら、打合せは終わったの?ずいぶんと時間がかかったわね」

後藤 「はあ…若いって素晴らしいなあ。おじさん眩しすぎて疲れちゃったよ」

南雲 「一体何があったの?」

後藤 「…一筋縄には行かない相手でね?しかしまあ最後は、幾つかの提案をさせてもらって和やかに同意して頂きましたよ~…」



南雲 「ちょっと…さては若い娘にかどわされて、無理無茶な難題を押し付けられたんじゃないでしょうね?」

後藤 「んな訳ないでしょーが…そんなに知りたいの?」

南雲 「…知りたいわね」

後藤 「ん~…」

南雲 「何よ、やけに渋るわね?」

後藤 「…やっぱ、教えたげない」


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〈 第3章. レイバーの穴 〉~一日目


ーー「警視庁 特車二課 体験入隊」入隊式会場 特設ステージ袖


麻子 「これが特車二課の制服。何か、窮屈で息苦しい…」ヒソヒソ

華 「…皆さん、よくお似合いですよ?」ヒソヒソ

沙織 「色合いが派手でビックリしたけど…結構カッコいいよね?!」ヒソヒソ

優花里 「少しパンツァージャケット風なんですよね。…でも、他チームの皆さんに少し申し訳ない気もします」ヒソヒソ




華 「アリクイさんチームやカバさんチームのコスプレはまだ良いとして…」ヒソヒソ

優花里 「レオポンさんチームはメカニックなのにキャンギャルさせられて」ヒソヒソ

麻子 「アヒルさんチームもビーチバレー用水着…」ヒソヒソ

沙織 「ウサギさんチームなんかバニーガールだよ?」ヒソヒソ

優花里 「それに比べたら、私達のは機能的でまともな制服ですからね」ヒソヒソ

沙織 「この制服姿が全国のニュースで流れるんだよね?今度こそ日本中の男達を虜にしちゃうんだから!」

華 「沙織さん?!声抑えて」ヒソヒソ



麻子 「沙織はブレないな…ん?そろそろ挨拶も終わるな」ヒソヒソ

みほ 『…ミッミナサンゴゾンジノトオリ,ワレワレハイマハイコウノキキニタッテイマス.キキトイエバ,ボコラレグマノボコ!ボコハサイコーナンデス!ミンナボコヲミテクダサイ!…』ガピー…

優花里 「ああっ…みほ殿は逆にブレ過ぎですぅ」


後藤 「おうおう、初々しい上にかしましい事…でもま、これでようやく役者が揃ったって訳だ」ニヤリ


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ーー東京 八王子市 「特機専門研修校(レイバーの穴)」 校庭


後藤 「…よう佐久間。毎度毎度、無理な注文ばかり押し付けてスマンね?」

佐久間 「全くだよ。まさかこの歳になって戦車道教本を片っ端から総ざらいする羽目になるとは思わなかったぜ?」

後藤 「で…やれそうか?」

佐久間 「ギリギリって所だな。共通言語を見出だすのに手こずったが、このメンバー構成でのポジションに合わせたカリキュラムは既に組んである」ポジションメモワタシ

後藤 「まあ後は出たとこ勝負、彼女達の頑張りに期待するとしますか…おーい皆、集合!」ウケトリ




ザカザカザカッ!

みほ 「…大洗女子学園。戦車道履修生、西住みほ以下五名。赴任しました!」ケイレイ

後藤 「うんうん(…凛々しいねえ…)」

佐久間 「…おい後藤?」

後藤 「ゴホンッ…あー、この度は大変な時期にこちらからの依頼を受けて頂き、感謝の念に堪えません。私は特車二課 第二小隊隊長の後藤喜一警部補であります」

沙織 「…(撮影スタッフ帰っちゃった…。隊長って言うから凛々しい感じかと思ってたけど、何かイメージと違う)」ブー

優花里 「…(専用車輌や特機はさすがにまだ片付けたままですよね…)」

麻子 「…(朝早かったから…眠い…)」

華 「…(お腹が空きました…)」

みほ 「…」




後藤 「戦車同様、一つ間違えば驚異にもなりうるレイバー運用ですので、これから五日間のうちに、諸君らにはこの特機専でレイバー運用の基本を徹底的に学んで頂きます」

沙織 「…(えー?徹底的にって…せっかくの東京なのに遊びにも行けそうに無いじゃない!)」

優花里 「…(特機はどこまで弄らせてくれるのでしょうか…)」

麻子 「…(…眠い…ヤバイ…)」

華 「…(お昼ご飯はまだでしょうか…)」

みほ 「…(驚異…)」

後藤 「…とまあ、お堅い話はここまでにして。まずは実際に君達が動かす事になる特機と特殊車輌を見てもらおうか」ニヤリ

優花里 「!!」


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これは期待!



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ーー東京 八王子市 「特機専門研修校(レイバーの穴)」 機材格納庫


優花里 「97式レイバー指揮車に98式特型指揮車!あっちには四菱製 98式特殊運搬車も…!」

後藤 「そっちじゃないよ。いや、そっちもなんだが…先に見せたかったのはこっち。お前さん達が実際に運用する特機『パトレイバー』の方だよ」


沙織 「うわー…」

麻子 「デカい。というか、高い」

華 「なかなか男前な面構えですね」


後藤 「『AV-98Tドーファン』…ウチの98式の試作機みたいなもんだ。パワーは劣るが、練習用だから扱いやすい上、機動性も高く、実戦使用に充分耐えうる」


みほ 「…(実戦…?)」




優花里 「はあ…こんな大きな人型機械が街中を歩き回ってるだなんて。よくよく考えてみるとゾッとしますよねー…」

後藤 「俺からしたら、街中を戦車が走り回りって実弾ブッ放している方がよっぽどゾッとするわ…クーデターじゃあるまいし」ボソッ

優花里 「…今時二・二六事件でありますか?ですがこの平和な日本、しかも東京で、クーデターなんか起きる訳無いじゃないですかー」アハハー

後藤 「…」




ナカジマ 「…あー来ましたね、あんこうチームの皆さーん!」


みほ 「レオポンさんチームの皆さん?!」

ナカジマ 「入隊式、見てましたよー?」

沙織 「ヤダモー♪」

華 「それにしても、皆さんどうしてここに?」

ホシノ 「レイバーをはじめとする皆さんの車輌全てに、例の特殊カーボンによる追加装甲を施すよう依頼があったんですよー」

後藤 「そういう事。第一の安全策って事で、ノウハウを持つ彼女達に協力をお願いしたって訳」

スズキ 「いやあ、警察車両しかもレイバー関連の物を外部の者が弄れる機会なんてそうそう無いですからね!貴重な経験をさせて頂きました」

後藤 「ウチの整備員共とは上手くやれた?」

ツチヤ 「最初は多少ギクシャクしましたが、最後は技術者同士、良い感じで連係がとれました
!」

ホシノ 「今度ウチのコスモ・スポーツと、先方のACコブラで、レースしようとも話してたんですよー?」

後藤 「…(整備員共、まーたおやっさんの車で勝手な事をするつもりだな…)…で、首尾はどう?」




ナカジマ 「レイバーに関しては、研修校で複数使用している練習用の機体から、二機+予備一機をお借りしました」

ホシノ 「特殊カーボンによる装甲追加に伴い、頭部センサーと各種装備はメーカー支給のAVS-98の物に換え、カラーリングも変更してあります」

華 「パトカーと同じ色合いなんですね」

スズキ 「運用及び情報統合システムの搭載も既に完了していますから、すぐにでも初期設定作業に入れますよ」

後藤 「研修初日に何とか間に合わせてくれたか。助かります」



優花里 「レオポンさんチームの皆さんも、私達と一緒に配属されるんですか?」

ツチヤ 「いやあ。私達は車両の引き渡しが済んだら、トンボ返りで次のレース会場に向かいます」

麻子 「それは残念だな…」

ナカジマ 「…あ。カラーリング変更の際、こっそり『あんこうマーク』も入れておきました。時間がある時にでも探してみてください!」

みほ 「皆さん、ありがとうございます!」

スズキ 「…引き渡しも無事終わったから、そろそろ私達も移動しないとね?」

ツチヤ 「それじゃあんこうチームの皆さんも頑張って下さい!」


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ーー東京 八王子市 「特機専門研修校(レイバーの穴)」 機材格納庫


後藤 「とまあ、実際にお前さん達に使用してもらう特機と車輌を見てもらった訳だが、ここからは…」

佐久間 「教官の佐久間だ。お前達に事前に受けてもらった特性試験の結果を基に、こちらで割り振ったポジションを今から発表する」

麻子 「最初は暗いのが嫌だったが、終わってみれば中々楽しいアトラクションだった」

華 「派手に揺すられましたよね~」

優花里 「ワクワク♪」

みほ 「…(優花里さん、特車・ハイ?)」

沙織 「ユカリンも変わらないよね~」






・1号 フォワード (レイバー担当)…冷泉 麻子
・1号 バックス (98指揮車担当)…武部 沙織
・1号 キャリア (レイバー運搬車担当) …

・2号 フォワード (レイバー担当)…五十鈴 華
・2号 バックス (98指揮車担当)…秋山 優花里
・2号 キャリア (レイバー運搬車担当) …

・総合指揮車 コマンド (小隊指揮)…西住 みほ
・総合指揮車 バックス (97指揮車担当)…





優花里 「やりました!まさか『98式特型指揮車』に乗れるなんて!!」

華 「特機関係なら、もはや何でも良いのでは…」

麻子 「やっぱりこうなったか…不安しかない」

沙織 「それ、どういう意味よ?…でもアレに乗らずに済んで良かったよ~。あんなに揺れちゃ、髪も服も乱れ捲りだもん」

華 「そんな程度の問題ですか?!」

みほ 「あっ、あのっ!…私の『コマンド』と言うのは?」

後藤 「ああ、それな…西住。お前さんには、この小隊の『隊長代理』を務めてもらう」



みほ 「…ええっ?!わ、私が?」

優花里 「みほ殿はそのまま私達の隊長でありますか?!」

後藤 「この小隊メンバーのやる気とやり易さを考えた上での、適材適所を考えての配置だ。あまり気にするな…と言っても無理か?」

みほ 「わっ私、レイバーの事ほとんど知らないし、警察の事もよく分かってないのに…」

後藤 「隊長『代行』じゃない。あくまで『代理』であって、この小隊に限っての権限だ。責任は俺が持つ。周辺配置やフォローはしてやるから、いつも通り安心して指揮してくれや」

みほ 「そ、そんな…」



沙織 「大丈夫だってミポリン!『一日署長』みたいなもんだって、生徒会も言ってたじゃない?」

佐久間「あー…本日はポジション毎に、担当機に登載された運用情報統合システムの『しつけ(初期設定作業)』を行ってもらう」

後藤 「先に言っておくが『しつけ』は全て本人がやらないと意味が無い。周りの者がしていいのは助言まで。手助けは許さんからな?」

沙織 「えーっ?!」

華 「厳しいですが、やるしかありませんね…」

みほ 「…私、こっちの方が自信無いかも」

麻子 「そうか?時間をかければ誰でも出来そうなものだが」

沙織 「それは麻子だからでしょう?!」

優花里 「助言は許されているんです、頑張りましょう!」

後藤 「短い間だが、これからコイツ等に命を預ける事になる。皆、気合を入れて作業してくれ」

みほ 「…(命を、預ける?)」



後藤 「ところで佐久間。各キャリアと指揮車ドライバーが抜けてるんだが」

佐久間 「聞いてないぞ。そっちで用意するんじゃなかったのか?」


後藤 「…しまった、忘れてた」


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ーー大洗女子学園 臨時滞在地 生徒会室


杏 『3名追加希望だぁ~?』

柚子 「電話をかけて頂いたついでにすいません、会長。何でもレイバーキャリアと指揮統合車輌に、各々ドライバーが必要なんだとか」

杏 『特車二課ってのは、本当に金も人も無いんだね~』

柚子 「先方は、あんこうチームと同じく戦車道履行者三名を希望していますが…どうします?」

杏 『戦車道メンバーのほとんどは、私自ら売り込みかけちゃって出張ってるからねえ…ああ!ちょうど良いのがいるじゃない?』

柚子 「え?」

杏 『ヤサグレてるのが約3名ほど』

柚子 「…ああ、なるほど!」


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質問なんですが
この作品、パトレイバーサイドはどうゆう時空列なんだ?
コミック版?
劇パト2以降ならイングラムと野明達は居ないはずだし・・・

そういうことは気にしたらダメ



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~二日目


ーー東京 八王子市 「特機専門研修校(レイバーの穴)」 機材格納庫

麻子 「…それで強制的に連れて来られたのか。不様だな、そど子」

そど子 「学校も無くなったてのに、何をやるっていうのよ…」

沙織 「大洗戦車道の皆で行ってる、例の『廃校阻止大アピール作戦』の一環だよ?知らなかったの?」

華 「カモさんチームの皆さんは、風紀委員の仕事がありましたからね…」

ゴモヨ 「…でも、もう学校が無くなっちゃって…」

パゾ美 「風紀委員も…もう」

みほ 「ああっ、皆さんそんなに落ち込まないで下さい」

優花里 「そうですよ。廃校阻止のために私達あんこうチームが行ってるのが、この『警視庁 特車二課 体験入隊』なんですから!」

佐久間 「はいはい、積る話はそこまで。それじゃあ、三人のポジションを発表するぞー」




・1号 キャリア (レイバー運搬車担当) …園 みどり子(そど子)

・2号 キャリア (レイバー運搬車担当) …後藤 モヨ子(ゴモヨ)

・総合指揮車 バックス (97指揮車担当)…金春 希美(パゾ美)




佐久間 「…ちなみに1号キャリア担当の園は、フォワード冷泉たっての希望により採用の運びとなった」

そど子 「ちょっと冷泉さん?アンタ何て事してくれてんのよ?!」

麻子 「フッフッフッ…かつてソド子は言っていた、規則は守るためにあるのだと。ここではその規則に従って、せいぜい私のレイバーを丁寧に運ぶが良い…馬車馬のようにな?!」ドヤァッ

ソド子 「くっ…何という屈辱!」

華 「ここぞとばかりにやり返してますね…」

優花里 「あんなドヤ顔の麻子殿は滅多に見た事がありません」

後藤 「フォワードとキャリアに上下関係は無いんだけどね」



佐久間 「2号キャリアの後藤モヨ子は…おい後藤?お前の関係者か?」

後藤 「んにゃ。赤の他人」

佐久間 「本当かあ?お前は何を仕掛けてくるか解らんからな…。とにかくこっちの後藤は、戦車道において現操縦手というのが極め手となった」

モヨ子 「ううっ、別に運転がすごく得意な訳でも無いのに…やりますけど…」

優花里 「一緒に頑張りましょう!」

華 「よろしくお願いしますね?」



佐久間 「キャリアは大型車輌だから扱いが難しいぞ?二人とも心してかかるように。…で金春は、西住隊長代理のサポートも兼ねて総合指揮車の運転手を勤めてもらう」

パゾ美 「…にっ、西住隊長のサポート役…?」

みほ 「私は作戦指揮にかかりっきりになっちゃいそうだから…総合指揮車の方はパゾ美さんに任せるね?」

佐久間 「…という事で早速だが、後参のお前達にも『しつけ』の洗礼を受けてもらう。総合指揮車は既に西住がしつけを終えているから、金春は二人に協力してやってくれ」

そど子 「しつけ?!何よそれ…」



麻子 「我々が先に苦しんだ『しつけ』の恐怖、貴様達も存分に味わうが良い…」フフフ

沙織 「難しすぎて頭の中が沸騰しそうになったよね…」

みほ 「やってもやっても終わらないし。エラーが出たらまた最初からやり直しだし…」

優花里 「苦労しました…結局終わったのが夜の十時。それまで晩飯はお預けで…」

華 「お腹が空いて死ぬ思いをしました…」

佐久間 「…昨日PC作業に苦しんだお前達を、今日は外での基本操作訓練で徹底的にしごいてやるからな?!」

沙織 「エーッ?!」

華 「頭脳労働の後は、肉体労働という訳ですか…」

麻子 「やーめーてーくーれー…」

優花里 「今日も泥のように眠れそうですね…」




佐久間 「それじゃあ皆、各担当機の方に移動してくれ!…おい、後藤」

後藤 「ん、何だ?」

佐久間 「…そろそろちゃんと話をしておけよ?さすがに覚悟の無い奴を育て上げられる程、俺の腕は良くは無いからな!」ヒソヒソ

後藤 「分かってる。今から話をするつもりだ」ヒソヒソ

佐久間 「頼むぜホントに…」

後藤 「…あ~、西住?お前さんは別だ。今日は俺に付き合ってもらうから」





沙織 「え、二人きり?…ミポリン、何かあって嫌だったら、大声出してすぐ逃げるのよ?」ヒソヒソ

麻子 「その冗談はさすがに無理がある」

華 「何かあった段階で大問題です」

優花里 「…何かあって嫌じゃ無い状況って、どんな状況なんでしょうか?」

後藤 「聞こえてるぞー。一応俺もお巡りさんなんだけどな?…大丈夫、とって食いやしないよ」

みほ 「大丈夫だよ…多分」アハハ…


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ーー東京 八王子市 「特機専門研修校(レイバーの穴)」 教室内


後藤 「さて…西住。今回の件、どのように聞いている?」

みほ 「生徒会からは『一日署長』みたいなものだと…。制服を着て、撮影取材を受けて、パレードして、業務の真似事をするとか何とか…」

後藤 「…あの角谷とかいう生徒会長とは、話をしなかったのか?」

みほ 「会長は大洗廃校阻止のため、外部を飛び回っていて最近は顔すら会わせてないんです…」

後藤 「さて、どう話したものか…(自分で撒いた種は、自分で刈り取れって事だな。これは…)」




みほ 「あの…隊長?」

後藤 「西住?お前さんにはきちんと話しておきたくてな…先に謝っておく。すまなかった!」

みほ 「え?それは、どういう…」

後藤 「…『一日署長』云々って言うのは、俺が周辺関係者を説得するために使った方便みたいなもんでね?残念ながら、業務の真似事では済まない」

みほ 「方便…ウソ、って事ですか?」

後藤 「そうだ。…来週のいずれかに、お前さん達は十中八九、暴走レイバーとかち合う事になる」

みほ 「え?!う、嘘ですよね…」

後藤 「俺が信頼する筋からの情報でね…残念ながらこれは、嘘じゃない。五日もかけて教習を受けてもらってるのも、実はその対策だ」




みほ 「…どうして、そんな事に?」

後藤 「俺は、大洗が戦車道で躍進を始めた頃からのにわかファンでね。戦車道という枠に捕らわれないお前さんの戦い方は、きっとここでも通用すると思っていた」

みほ 「そ、そんな。私なんか…」

後藤 「それだけじゃない。その戦い方を受けこなす優秀なチームメイトの存在もある…その実力を高く買った俺が、窮地を救ってもらうために大洗に泣きついたんだ」

みほ 「…」

後藤 「この話を受けてくれれば、世間により『大洗危機』をアピール出来る。更に暴走レイバーを討ち取ったとなれば、こちらからの感謝状で『文科省』は無視その物が出来なくなる。…大洗復活の気運を高める大きな力になるはずだ。そういう『取引』を俺から提案したって訳」

みほ 「…そういう事だったんですね…」

後藤 「どちらにしても最終決断は、お前さんと、チームメイトに委ねる…どうだろう西住。気を悪くしただろうが、どうかこの通り。助けてもらえないだろうか?」




みほ 「…もし私が、私達が、やらないと言ったら…どうするつもりなんですか?」

後藤 「残念ながら、この話はご破算って事になるな…あ、そうだ。西住、こんな時に何だが、サイン頼めないかな?」

みほ 「…え?は、はい…私のなんかで良ければ…」

キュッ…キュッ…

後藤 「…悪いね。福島課長の娘さんが、お前さんの熱烈なファンらしくてさ…名前?聞いてないな。良いよ書かなくて…あ、俺のは『後藤さんへ』で」

みほ 「…これで、いいですか?」

後藤 「ありがと。…うん、これでお前さん達は義理を果たした事になる」

みほ 「え?そうなんですか?!」



後藤 「そりゃそうさ。さっきも言ったじゃない?『俺が周辺関係者を説得するために使った方便』だって…。大洗メンバーによる暴走レイバー討伐にこだわってるのは、あくまで俺個人の話なんだから」

みほ 「…はぁ…」

後藤 「ま、当初の予定通り『一日署長』的なお仕事って事でシメだな。そちらにしても『大洗危機』アピールは出来た訳だし、損にはならなかったろ?」

みほ 「あ、あの…?」

後藤 「悪かったね、不快な時間を取らせちゃって。…さ、話はこれで終わりだ。皆の所に戻って良いぞ?」



みほ 「…ま、まだ!」

後藤 「ん?」

みほ 「…まだ、お話を全部お聞きしていません」

後藤 「?いや、さっきも言った通り、話はこれで…」

みほ 「…私、まだ『やらない』って言ってません」ニコッ

後藤 「…何だって?」

みほ 「私達が『本当にやらなくて良い』んですか?」



後藤 「ふう…西住?警察ってのは、実は最初から『負け戦』だって話、聞いたことがあるか?」

みほ 「?いいえ…」

後藤 「警察は基本、何かが起きてからで無いと動く事が出来ない。そりゃそうさ、疑惑だけで逮捕してたら、それはただの横暴だからな」

みほ 「それは…そうですよね」

後藤 「何時だって事が起きてからの事後処理しか出来ない…それが『警察は基本負け戦』な理由だ」

みほ 「はい…分かります」



後藤 「『男には、時に負けると分かっていても戦わなければならない時がある』…某かがどこかで言わせていた言葉だが、随分と失礼な台詞だよな?実際には男女の区別無く、誰にだって戦わなきゃならない時があるってのに…」

みほ 「私達の戦いは、何時だってそうでした」

後藤 「そうだよな?著作権訴えてきたら、逆に差別発言を訴えてやりたい位だよ…ま、冗談はともかく」

みほ 「…」

後藤 「事件が起こるのが分かってて、被害を最小限にするために上申した条件を、上自体が拒否したとしても…ひと度事件が起これば、俺たち現場は上から必ず責められる」

みほ 「それはずいぶんと勝手な…」

後藤 「そう思うだろ?でも言われるのさ。もっと早く対応出来なかったのか?被害は最小限に食い止められたはずだ!なんてな…」

みほ 「ひどい話ですね…」



後藤 「全くだ。お前さんからせっかくもらったサインも、残念ながら俺の上司に対する免罪符にはならない…何故だか分かるか?」

みほ 「…いえ」

後藤 「責め立てる者の後に『被害者』がいるからだ。彼らの気持ちを考えたら、結果の報われない理不尽な戦いなんて言ってられない」

みほ 「…『被害者』の、気持ち…」

後藤 「それに…ただ『負け戦』とは言え、黙って見過ごす訳にはいかない。泣いている『被害者』が確実にいる限り、俺たちお巡りは自分にムチ打って被害を最小限に食い止めねばならん」

みほ 「…はい」

後藤 「そんな俺達に出来るのはせいぜい事前対策くらいなものさ。だからこそお前達を頼った…今の俺の思い付く最高の『切り札』だ」

みほ 「最高の『切り札』…」



後藤 「もちろん『切り札』の無いブタ札でも、出来るできる限りの事をやり、市民への被害を最小限に食い止めるつもりだ。それが警察官たる俺達の義務。いや…意地だからな?」

みほ 「…隊長は、レイバー戦初心者の私達が、本当に『切り札』になれると…」

後藤 「思ってるよ。自分の見立てには結構自信があるんだ。ミスキャストがあったら、監督は降りるぜ?」



みほ 「…今までのお話って、うちの会長が知らないはず無いんですが…どうして引き合いに出さなかったんですか?」

後藤 「お前さん達の会長に対する想いを考えると、どうしても同列に話す事は出来なかった。どう引き合いに出しても、彼女を楯にする事になる。他人を引き合いに出して自分を上げる…そんな奴は、俺の方が願い下げだからな」

みほ 「ふふっ…後藤隊長のお話は分かりました。期待に添えるかは分からないけど、私、今回の件頑張ってみようと思います!」

後藤 「え…本当に?いや、それならありがたい話だが…なぜ、その気になったんだ?」




みほ 「…事実を正直に話してくれて、強制せず私に判断を任せてくれました。それに、私達の実力を買ってくれたんですよね?」

後藤 「…ああ、その通りだ。でも、それだけで危険な現場に出る気になるのか?」

みほ 「…何か、嬉しかったんです。私の周りの大人は、私の気持ちなんか無視したり、結果を蔑ろにする人しかいなかったから。…それに」

後藤 「それに?」

みほ 「隊長の言葉の端々から嫌な予感がして、ちょっと覚悟してましたし」

後藤 「…バレてた?」



みほ 「ふふっ、ええ。…後藤隊長?最後に一つだけ聞いていいですか?」

後藤 「何だ?」

みほ 「私は…私達はここにいて、いいんですよね?」

後藤 「?ああ、こちらからお願いしている位だからな。むしろ、いてくれないと困る」

みほ 「…分かりました。あんこうチームの皆には、私から話をしておきます」




後藤 「それはありがたい。こちらも全力でサポートするから、ぜひよろしく頼むよ。…で、納得してもらったところで早速なんだが」

みほ 「…はい!」

後藤 「総合指揮車のシステムを使って、ウチの小隊が出くわした『状況』データを基に、実際に『対策』と『対応』をシミュレーションしてもらう」

みほ 「そんな事が出来るんですね…ちょっとスゴい」

後藤 「お前さんには、こういうやり方の方が合うと思ってな?いわば『状況』を呈示する俺とのタイマン勝負って訳だ。…どうだ、やれるか?」ニヤッ

みほ 「…分かりました。その勝負、受けて立ちます!」ニコッ


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乙です
後藤さんとみほの会話楽しませていただきました

あとスレ主、投下終了の告知はやって欲しいです

乙です 期待

>>92
寝オチなんだから察してやりなよ。

スレ主です。
いつも本スレをお読み頂き、誠にありがとうございます。
思った以上に書き込みがあり、ちょうど章が終わり句切りも良いので、色々お答えしていきます。

SSを書き始めて間も無いため、経験不足から途中コメントに対する返答で炎上させてしまった事があります。
ですので今回は返答をグッと堪え、ひたすら完成に向けて打ち込んでおりました。

ただやはり途中コメントは励み&アイデアとなります。頂いた物は全て本作のどこかに反映させて頂いております。

>>30
ごめんなさい、違います

>>31
良いキャラですもんね

>>32
参考にさせて頂きます!

>>33
押井氏脚本回の過激派組織の名なのです

>>34
すいません、今40000…

>>52.53.66.67
ありがとうございます!

>>68
ガルパンとパトレイバーではそもそも時代設定がずれているので「携帯スマホのある時代にそのまま移動」させてます。
大まかにテレビ&漫画版で最初の「グリフォン襲撃→第2小隊が押し返し」後、第一小隊の次世代機の噂が出始めた時期です。


>>69
フォローありがとうございます!

>>92
アドバイスありがとうございます。
今後は記載していきますね。

>>93
ありがとうございます。

>>94
フォローありがとうございます!

ついでに…

・本スレは「ガールズ&パンツァー 劇場版」と「機動警察パトレイバー」のコラボSSです。

・今後も書くのに集中してしまうと思いますので、返信は「章」終わりにまとめて行います(全7章)。

・今日は仕事が忙しく更新出来ないと思います。
ごめんなさい。

以上となります。では次回
〈 第4章. レイバー道(?)を邁進です! 〉
もよろしくお願い致します。

追伸です。

>>36
そうだと思いましたので、早速反映してみました。ありがとうございます。



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〈 第4章. レイバー道(?)を邁進です! 〉


ーー東京 八王子市 「特機専門研修校(レイバーの穴)」 教員室内


後藤 「…お疲れー…」ハァ…

佐久間 「おう!お疲れー…って、えらいやつれ様だな?何があった?!」

後藤 「…何だかよく分からんが、西住のやる気に火を点けちまったみたいだ。凄まじい勢いで情報統合管理システムの使い方を吸収して、シミュレーション上に用意した『状況』を片っ端に『終了』させてるよ」

佐久間 「『話』がうまく行ったみたいで何よりだ。他の連中へは?」カチャカチャカチャ

後藤 「西住が説得を快諾してくれたよ。これから話すんじゃないかな?」

佐久間 「それが一番良い形だろうな。早く周りにも波及させてほしいもんだ…っと!」ターン!



後藤 「…さっきから一生懸命何やっとんの?」

佐久間 「ん?今日の基本操作訓練の結果を踏まえたアイツ等のカリキュラム変更に決まってんだろうがよ」ジーッジジッ

後藤 「おい、まさかこれ以上講習内容を減らすんじゃないだろうな?」

佐久間 「バッカ、逆だよ逆!…お前とんでもねえ連中を連れてきたもんだな。こりゃ本庁に戦車道習得者採用の提言をしとかなきゃならんかも知れんぞ?」トントン

後藤 「そもそもレイバー隊自体がレアなんだから、採用人数その物が少ないのが問題なんでしょうが」



佐久間 「全く残念な話だよ…話を戻すが、奴等にはレイバー機器運用の『いろは』だけじゃ勿体無い。一つ、レイバー戦の『型』を仕込んでやろうと思ってな…ほれ草案!」バサッ

後藤 「ほう…『型』で運用出来るスキルを身に付けれれば、作戦を展開する西住に少しでも楽をさせてやれるな…」ペラッ…ペラッ…

佐久間 「『型』が出来れば、実稼働訓練も効率化出来て、特車二課に行ってもアイツ等だけで行える。良い事尽くめって訳だ…どうだ?」ニヤニヤ


後藤 「…面白いな。乗ったよ、この話」ニヤッ


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ーー東京 八王子市 「特機専門研修校(レイバーの穴)」 教習生宿泊室内


麻子 「…風呂、ご飯、トイレ…全てがメンドイ。今すぐグッスリ眠りたい…」グダー

沙織 「…女の子なんだから、せめてお風呂は入ろうよう?」グダー

華 「…気持ちは分かりますが、せめてご飯は食べません~?」グダー

優花里 「…生理現象は無視ですかあ?」グダー

みほ 「…皆、大丈夫?近くのコンビニで飲み物買ってきたよ」ハイ,スキナノエランデ

沙織 「…ミポリン、ありがと~」ゴクゴク

麻子 「…天使だ、天使がいる…」ゴクゴク

みほ 「気にしないで?私は今日一日、シミュレーションだけだったから」フンス!

華 「…ありがとうございます。コンビニ、近いんですか?」ゴクゴク

みほ 「片道15分位かなー?」

優花里 「ブフォッ?!…こ、コンビニでその距離でありますか?!」



みほ 「?地元ではもっと遠かったから…片道30分までなら、我慢できる距離だと思うよ?」

優花里 「…(いやいやいや!その感覚はおかしいですよ?ですが、最も恐れる事態の可能性が…)」

みほ 「カモさんチームは『しつけ』の真っ最中かあ…(皆、疲れてるし…今のうちに話しておかなきゃね、うん!)」

麻子 「…ハッ!そど子め、精々苦しむが良い。私たちは今日夕方には解放されて、今は惰眠を貪っている。実に気分が良いぞー?」グダー

沙織 「…動けなくなってるだけじゃなーい…」グダー




華 「…そういえば沙織さん。夕方の自由時間を利用して、街に繰り出すつもりだったのでは?」ムクッ

沙織 「…行きたい!けど…今日は無理…明日こそ、必ず…っ!」ググッ

華 「そうですか…ご近所の食事処を押さえておこうと思っていたのですが、今日は諦めます…」ショボン

みほ 「…」メソラシ

優花里 「!…(やはりここは…陸の孤島の可能性、大!)」


みほ 「あのね?…(カモさんチームには後で話すとして…)…実は私から皆に、今からどうしても話しておかなきゃならない事があるの。…聞いてくれるかな?」


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~三日目


ーー東京 八王子市 「特機専門研修校(レイバーの穴)」 教員室外


後藤 「 …皆、済まなかった!ごめん!この通り謝る!…これで良いか?」

華 「…一応納得しました。ですが、今後はこういう、大事な事は黙ったままというやり方は無しにして下さい。よろしいですね?!」

優花里 「…私達、この手のやられ方で、生徒会長に散々な目にあってますからねえ」

後藤 「分かった、分かったからさ…(やっぱあの大洗のせいか…)」

佐久間 「まあ、今回の件は後藤が全面的に悪い。こいつのやり方はいつもそうだからな?」

後藤 「少しは身内を庇いなさいよ…。西住?お前さんも少しは加減て奴をさあ…」

みほ 「あ、あはは…ご、ごめんなさい…」

沙織 「ミポリンは優しすぎるの!強く言えない性格を逆手に取らないで下さい!!」

後藤 「すいませんでした!(…女は強いねえ…)」




佐久間 「…それにしても、お前ら本当に良いのか?試合の戦車道とは根本的に違う。人の悪意と直接やり合う事になるんだぞ?」

沙織 「ミポリンだけで行かせる訳無いじゃないね?」

麻子 「水臭い。同じチームの仲間なんだからな」

華 「私達は、みほさんのやりたい事に付いていくだけです」

優花里 「それに…これが戦車道あんこうチームとしての、最後の課外活動になってしまう可能性が高いですし」

みほ 「…皆、ありがとう…」



麻子 「…いいや。私はまだ納得してないぞ?聞けばみほさんは、どれだけ特車二課に向いているか熱く語られた様子…その照れっぷりは、私から見ても大層 魅力的なものだった」

みほ 「ちょっ…ま、麻子さんっ?!」カアッ

後藤 「そうなのか?西住」

みほ 「…しっ、知りませんっ!」プイッ

優花里 「拗ねてしまったみほ殿可愛いはともかくとして…我々としても、能力を見込まれて呼ばれたとして、それを提示してもらわなければ自信を持って務め上げる事が出来ません」



後藤 「つまり…どういう事だ?」

沙織 「本人の口から直接言うのは、ちょっとはばかれるよねえ…?」ヤダモー

麻子 「私達を褒めろ。称えよと言うことだ」

華 「さすが麻子さん。その答えに一切の躊躇い(ためらい)がありません」

麻子 「地獄のシゴキのせいか、夜更かしせず寝てしまい、朝自然に目覚めてしまう。疲れが残っているにも関わらずにな?お陰さまで朝から頭は冴えに冴えている」

佐久間 「感謝こそされ、恨まれる要素が全く無いな」

麻子 「疲れが残っていると言ったじゃないか」




佐久間 「だって…なあ?」

後藤 「…お前さん達、褒めたら絶対調子に乗るタイプでしょ?」

麻子 「何を言う」

沙織 「失礼しちゃうわ」

優花里 「それは大きな偏見でありますよ?!」

華 「まあまあ。…今後の厳しい局面を乗り切るための心の支えという事で、ほんの少しでよろしいですから、私達の評価を聞かせて頂けませんか?」

後藤 「…まあ、俺にも後ろめたい所があったからな。二度とは言わない条件で、お前さん達の長所を伝えておこうか」

今回はここまでです。

おつー

乙です
後藤さんのあんこうチームへの評価、長短がどういったものになるか楽しみ

作中での呼称がちょっと変かな?

沙織:ミポリン→みぽりん
優花里:みほ殿→西住殿
麻子:みほさん→西住さん



麻子 「ではまず私から」

後藤 「…(何でこの子は、こんなに頑なに評価を聞きたがるんだろう)」

佐久間 「…(この子が確かに一番才能があるんだが、何故か本人には伝えたく無いんだよな)」

麻子 「さあ。遠慮なく」

後藤 「冷泉は、レイバー操縦に関して間違いなく天才だ」

麻子 「…おお。…それから?」ユサユサ

後藤 「…以上。他に語るべき言葉が無いんだよなあ」ガクガク

麻子 「何でだ?他にも言い様があるだろう?」ユサユサ

佐久間 「確かにお前は凄いんだよ。覚えもコツを掴むのも早い。だが要所要所で残念さ…いや、突っ込み所が滲み出てくるんだよ!」ガクガク



麻子 「心外だ。あんなに真面目に乗り回しているというのに」ガーン

佐久間 「二足歩行人型機械『レイバー』なんだぞ?『常にドリフト移動する』レイバーなんざ異常に決まってんだろ?!『黒いレイバー』戦ぐらいでしか見た事無えよ!」

後藤 「冷泉。お前、自分の中に『リミッター』を設けろ。『解除』は、コマンドの西住が許可した時以外は認めんからな?」

麻子 「何でだ?ギリギリを見極めて攻めてるつもりなのに」

佐久間 「サスもフレームも接地シートも保たねえっつってんだろ?オートバランサーも過負荷で焼き切れ寸前、整備員共を修理だけで過労死させる気か?!」




後藤 「…『攻め過ぎ』なんだよ、お前さんは。まあさすが、普段から戦車を跳んだり跳ねたり回転させてるだけの事はあると思ったけどね」

麻子 「お陰さまで、どうやれば、いつ履帯が切れるかも分かるようにはなったぞ」

後藤 「じゃあ次、五十嵐で行こうか」

麻子 「さすがにこの仕打ちは、あんまりじゃないか?」



後藤 「…五十嵐は、何と言っても射撃能力の高さに尽きる。特に停止状態での射撃精度は、ほぼ百発百中と言って良い」

華 「ありがとうございます。基本は戦車の時と変わりませんからね」

後藤 「無駄な動きが無いからロスが無く、機体への負担も少ない。集中力の高さと持続力もあるから、レイバー単体での長時間稼働にも期待出来る」


麻子 「…私とはずいぶんと扱いに差があるじゃないか」

佐久間 「態度の違いだろ?殊勝な奴に無理強いする必要は無いからな」



後藤 「自分の問題点は…分かってるな?」

華 「はい。やはりレイバーの扱い方がまだまだかと…」

佐久間 「初心者だからな、充分予想の範囲内だ。とにかく今後の訓練でレイバーにひたすら慣れ親しんでくれ」

華 「分かりました」

後藤 「お前さんには日本のお巡りに必要不可欠な素質がある…『連撃必中』は必要無い。『一撃必中』…いや『一撃必殺』を常に狙え!」

華 「はい!」



優花里 「五十鈴殿、ベタぼめですぅ…」

後藤 「んで、次は秋山だが…実は最後まで『フォワード』候補に入っていた。技術・知識・身体能力全てをバランス良く兼ね備え、あらゆるパートを任せられる逸材だ…」

優花里 「おおっ!思わぬお誉めの言葉を頂きましたよ?」

後藤 「…ただし『戦』に関しては、だが」

優花里 「おやおやー?やはり不穏な流れになってきましたよ…して、その心は?」

後藤 「お前さんが引っ掛かったのは『適性検査』の方だ」



優花里 「そ、それって…『能力』以前に『人として』問題があるって事じゃないですか!?」

後藤 「いや、そこまでの物じゃないが…」

優花里 「一体私の何が問題なんですか?!」

後藤 「…ずばり『一般常識』」

優花里 「そっ!…それは私が『ぼっち』で、友達付合いが無かったからって事ですか…?」ポロポロ

沙織 「ちょっと!ウチのゆかりんを苛めるの、止めてくれる?!」

後藤 「参ったな。そんな事知らなかったし、知りたくも無かった…なんか、ごめんな?」ポリポリ

優花里 「その同情の目は止めてください、余計に痛たまれません!私のどこが一般常識に欠けるっていうんですかあ?!」ワーン

佐久間 「…ここに何枚かの写真を用意した。これが何か答えてみてくれ」



・俯瞰の街並み

優花里 「市街戦!」

・地下鉄入口

優花里 「トーチカ!」

・一般家屋

優花里 「延焼危険障害物!」

後藤 「お前ら『街並み』の写真見せても、発想が既に『市街戦』なんだもん。それは『戦車道』の発想だろ?『情け容赦が無さ過ぎる』にも程があるわ」

優花里 「…?」

佐久間 「心底不思議そうな顔で俺を見るなよ!お巡りとして…いや、人としての常識が崩れそうになるわ!!」



後藤 「西住以下四名は、多かれ少なかれこの傾向が見受けられた。これは由々しき問題だ。
『街』は『街』、『ビル』は『ビル』、『家』は『家』…そこに人の営みがある事が『常識』。それを守るのがお巡りさんの仕事なの」

優花里 「…何々ですか、この評価の仕方?結局半分以上説教じゃないですか!…素直に長所だけ褒めて下さいよう」


ギャーギャー


沙織 「はあ…(でも何だかんだ言って皆、才能あるって認められてるもん。私なんか全然才能無いし、人気投票でも一番下だったし…)

後藤 「…そういう意味では、武部がいなかったら今回の話その物が無くなっていたかもしれない」


沙織 「…え?」



後藤 「確かに武部本人も自覚している通り、特出した能力や特長がある訳じゃない。だがお前さんには『周りを思いやり行動する』という得難い美点がある」

沙織 「『美』点、ですか?!」

麻子 「…何かアクセントが変じゃないか?」

後藤 「ああ。民間の立場に立った周りへの気配りと細やかなフォローは、警察官にとって無くてはならない大切な物だ」

沙織 「…!(やだ…冴えない只のおじさんに見えてたけど、実は凄くイイおじ様なのかもっ?)」

みほ 「沙織さん?!」ハッ?!

優花里 「お帰りなさい、西住殿」

麻子 「そしてチョロいな、沙織」




後藤 「?…そういえばシステムの立上げには手間取っていたが、使いこなすのは早かったな?」

沙織 「は、はい!私、他の人と繋がれたり、皆の役に立つ道具は、すぐ使い方を覚えちゃうんです!」パアッ

後藤 「ふむ…コミュニケーションツールの使いこなしはお手のものって所か。ただ、公共機材を使っての都内有名スポットチェックは止めなさい」

沙織 「…はぁーい」ガクッ

後藤 「…(フォワードとバックスの組合せが、常識人とその他の組合せとか言ったら怒られそうだから、ここは黙っておこう…)」




みほ 「…」ドキドキ

後藤 「最後は、西住か…」

みほ 「!」ドキッ!

後藤 「西住は…ま、いっか。昨日話したばっかだしな?」

みほ 「…そ、そうですよ!ね…」シュン…




後藤 「…さ、皆の評価はこんなとこだ!そろそろ朝礼の時間だぞ?さっさと機材格納庫に行きなさい!!」パンパンッ


ハーイ!
ナニモーオワリー?
シカタナイイクカー
ゾロゾロ…


みほ 「ハァ…(…私、納得してるはずなのに…何で落ち込んでるんだろ…)」

後藤 「…おーい、西住。ちょい待てや」

みほ 「はっ、はい!」ドキッ



後藤 「…今日朝礼終わった後な?昨日の続きを総合指揮車でやってもらう予定だったが、それ変更だ」

みほ 「え?」

後藤 「今日の午前中は、俺と一緒に他チームメンバーの練習内容を見学してもらう」

みほ 「?はい、私は構いませんが…」

後藤 「…実は昨日までのお前さん達の実習結果から、その特性を活かした『レイバー戦での戦い方』…『型』を一つ用意させてもらった」

みほ 「…『型』、ですか?」

後藤 「そうだ。お前さんに少しでも楽をさせてやりたくてな…また少しばかり、付き合ってくれや?」ニヤリ


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今回はここまでです。

乙でしたー
麻子の操縦技術はみぽりんの無茶振りへの適応と、自動車部のチートじみたバックアップあってだよなぁww

まあレイバー整備班もプロの趣味人だし女子高生に簡単に改良はできないだろうけど



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ーー東京 八王子市 「特機専門研修校(レイバーの穴)」 教員室内


後藤 「…やれやれ。準備途中だってのに、朝っぱらから大騒ぎだよ…」

佐久間 「後藤よ。俺ぁ構わねぇんだけどよ、特車二課に戻らなくて良いのか?」

後藤 「あっちは、出張ギリギリまで南雲さんに任せてある。ウチの小隊には優秀なお守りもいるし、ま、大丈夫でしょ?」

佐久間 「…鬼かお前は。アイツらだって大阪出張の準備で忙しいだろうに」

後藤 「二小隊いるってのは、その位余裕が出来るって事なんだよ。来週はこっちの方が大変なんだから、この位はね?第一、こっち人手足りてないじゃない」



佐久間 「人手といやあ…そういや西住の評価はどうなんだ?こっちに来てからのは俺もまだ聞いてないんだが」

後藤 「…レイバーに関しては、操縦技術は武部とどっこいどっこい、身体能力は僅かに冷泉を上回り、知識は五十鈴以下、総合力は秋山がブッチギリだ。だがそんな事は、些細な問題にすらならない」

佐久間 「やっぱりアレか?『戦車道』と同じく…」

後藤 「状況把握、行動判断、環境応用…『指揮能力』は間違いなく高い。…が、群を抜いてる程でも無い」

佐久間 「やっぱり畑違いだったんじゃ無いのか?」

後藤 「でもな?昨日然り気無くやらせてたの、あれ幹部候補用のだぜ?それも嫌がらせに用意した奴」

佐久間 「何やってんだよお前は…だがノルマきっちり終らせてたよな?確か」

後藤 「ああ。ただし、肌感覚を伴う総合システム上でのシミュレーションだけの話ね?それも時々とんでも無いポカをやらかす。何かを試した結果なんだろうが…」



佐久間 「…結局、一言で言うと何なんだ?」

後藤 「一言で言えば『規格外』だな。あと敢えて言えば『ほっておけないカリスマ性』か…
正直何だかよく分からん。が『見てて面白い』のは確かだ」

佐久間 「『戦車道』でのアナウンサーと同じコメントじゃねえか」

後藤 「同じ隊長という立場だからか、どうにも冷静さに欠けるんだよ、あの子の評価は…。
あ、他のメンバーには言うなよ?間違いなく嫉妬されちまうからさ」

佐久間 「言えるわけ無いだろ?そんないい加減な評価…さ、行くぞ。アイツらが待ってる」


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ーー東京 八王子市 「特機専門研修校(レイバーの穴)」 特機模擬戦闘用広場~指揮テント内


チュイイイン…チュイイイン…ズシュンッ!


後藤 「…どうだ?」

佐久間 「フォワードの二人に『型』の概念を理解してもらった上で、ドーファンに搭乗してもらった」

後藤 「…物になりそう?」

佐久間 「…まだ分からんな。お互い感覚を探っている感じだ。まあこういうのは、数をこなして体で覚えるしか無い。今から三回戦目を始める所さ…二人とも、礼!」


ギィッ


佐久間 「では模擬戦三回目、始め!」





ガシイッ!ズシュンッズシュンッ…


後藤 「おいおい…現場じゃ礼なぞしちゃくんないぞ?」

みほ 「電気動力にしては音が大きいんですね…しかも、圧がスゴい!」

後藤 「守られた車輌の中から見るのとは迫力…いや、怖さが違うだろ?何しろ8mもの巨人がド付き合いしてるんだ。体積的には、お前さん達ん所の戦車が立ってぶつかり合ってるような物だからな!」

みほ 「はい!」


ギィッ・ギ・ギ・ドズンッ!


後藤 「街中で遭遇する暴走レイバーの怖さはコレの比じゃない。どう動くか読めない上に、僅かな動作で一瞬で迫って破壊する。この驚異から一刻も早く市民を解放するのが我々の任務だ!」

みほ 「分かりました!」




ギュアアアア!

スチャチャ

ギュアアアア!


後藤 「…と言う訳で、この至近距離でも会話するために防音型通信機が必要となってくる。コレさえあれば、チーム内の誰とでもセレクターで自然な会話が可能だ」

みほ 「…(戦車道のと形が違う…)」


麻子 『ハッ…ハッ…ハッ…』


みほ 「…麻子さん、苦しそう。戦車道ではこんなの、最近見たこと無いのに…」

後藤 「戦車道に向けて体を作ってきた証拠だな。だがレイバー戦にはまだ不慣れ。そこから来る緊張は、想像以上に体力を消耗させる」


華 『…フーッ…スーッ…スーッ…』


後藤 「それに対し、五十鈴は落ち着いた物だ。これだけ早く違いが出るというのは…操作スタイルの違い以前に、体の根本的な造り『地力』の差が出てると思う」

みほ 「『地力』ですか?」



後藤 「分かりやすく言えば、体の大きさや完成度の違いだ。冷泉は体も小さく、成長過程の真っ只中なんだろう。よく寝てるのも、眠気が抜けないのも、無意識に体が休息を欲し、体力を温存しようとするためなんじゃないか?」

みほ 「私、低血圧だからかとばかり思っていました…」

後藤 「まあ低血圧も地力も、それっぽい言葉でで当人が早く納得したいだけかも知れん。本当に気になるなら、ちゃんと医者とか専門の人に相談するようにしようや?」


ギュイイイイッ!


みほ 「…隊長の理屈で言うと、華さんはどうなるんですか?」

後藤 「五十鈴の場合は、身体も充分成長して完成されているって事になる。よく食べよく寝てよく鍛え、溜め込む所にしっかり溜め込み、絞る所はしっかり締めて良い身体に…うん?」

みほ 「…後藤隊長?」ジーッ

後藤 「んんっ、ゴホン!…す、すまんすまん。少し、セクハラだったか?」

みほ 「…いいえ?かなり、ですっ!」プイッ

後藤 「いや?!溜め込んでるっていうのは体力の事で、絞ってるってのは鍛えてるって…」

みほ 「…(やっぱり男の人って、華さんみたいにスタイルの良い人の方が好きなんだよね…)」シュン




ズシュンッズシュンッ


佐久間 「何やってんだあ?…それにしても、思ったよりも冷泉の体力が持たないな…五十鈴も釣られてか動きにキレが無い…」


ギィッ


後藤 「…という事で、西住…おい、どうした?」

みほ 「ひゃ、ひゃいっ!?な、何でも無いですっ!」ムネカラテオロシ

後藤 「いや、俺がお前さんに話があるんだが…」

みほ 「すっ、すいません!…大丈夫、ですっ」

後藤 「西住…今、見学してもらってるのは、実際に練習での動きを見てもらい、チームの『型』の完成形をイメージしてもらうためっていう話はしたな?」

みほ 「…はい!」



後藤 「『戦車道』という大海は、お前さんなりの経験値によって既に航路や基準点があり、自由に航行…『戦略・戦術』を決めることが出来ているはずだ」

みほ 「そう、なんですか、ね…」

後藤 「だが『レイバー戦』という別の海に関しては、まだお前さんには何の航路も基準点も無いはずだ」

みほ 「…その通りだと思います。だから、ちょっと不安で…」

後藤 「だからこそ『型』という『基準点』を用意した。これは、航行の自由と言う点からは少し離れてしまうが、無限の可能性の中から幾つかの『選択肢』を絞り混むきっかけにはなるはずだ」

みほ 「…はい!」



後藤 「本来、フォワードには幾つかの『型』を持たせ、『状況』に合わせて『選択』する事が出来るようにしておくんだが…」

みほ 「それは…」

後藤 「うん。ご存じの通り、お前さん達には時間が無い。だから、手っ取り早く用意出来る『型』を一つだけ用意した。訳だが…」


チュイイイン


後藤 「…どうにも埒が明かないので、体力に代わる気力を注入しようと思う」

みほ 「?…どうするんですか?」

後藤 「決まってる。こういう時は…煽るんだよ!おい、冷泉!!」


ギュインッ?!


麻子 『なっ…何だ?た、隊長なのか?』ハアッハアッ




後藤 『何だ何だ?そのへばり具合は!さっきまで褒めろ褒めろ言ってた天才はどこ行ったんだあ?』ガピー

麻子 『このっ…す、好き勝手な事を…』ハアッハアッ

後藤 『…冷泉!お前は確かに天才だ。だが体力が無い上ムラっ気が過ぎる!!現に今、決着を早めようとして動作が雑になり、確実にダメージを与えられてないんじゃない?』ガピー

麻子 『ぐうっ』ハアッ…

後藤 「…で、ここからが『冷泉用の型』だ。西住、よく聞いておけよ?」

みほ 「…はいっ!」グッ

後藤 『いいか?短期決戦を望むなら、近接接近で縦横無尽な動きで相手の隙を誘い、死角から的確に相手の関節に電磁警棒を叩き込め!』ガピー




麻子 『~…こうすればいいんだろーっ』ハアッ!


ギュイイイイッ…ゲインッ!


華 『?!キャッ!』


後藤 「…うんうん。外れはしたが、意識の入った良い一撃だ。次は五十鈴…彼女の場合は、動揺を抑えさせるために逆になだめる。すると…」ニヤニヤ

佐久間 「対応の違いに逆上した冷泉は、益々気合いが入る…相変わらずエゲツ無えなあ?後藤は」ニヤニヤ

後藤 「おいおい、忘れたのか?俺が誰にそれを習ったのか」ククク

みほ 「…(大人の嫌な部分を垣間見たような気がします…)」



後藤 『五十鈴、大丈夫か?』ガピー


ギュイン


華 『はっ、はいっ!』

後藤 『確かにお前のレイバー操縦技術は高くない。だがさっきも言った通り、お前には、他の者に無い集中力と持久力がある。だから焦る事は無い』ガピー

華 『後藤隊長…』

後藤 「続けて、ここからが『五十鈴用の型』だ。いいか?西住」

みほ 「はい、お願いします!」グッ

後藤 『お前さんは、相手が攻められずこちらが攻めれる中距離を保ち、照準を合わせ続けてプレッシャーで押し潰せ!相手が焦れて射線を走り出したなら、射撃百発百中という必殺技があるんだからな!?』ガピー



華 『…了解!』


バシャッ…ジャコンッ!


麻子 『このっ』


ジュシュウン、ジュシュウン、ジュシュウン


華 『落ち着いて…落ち着いて!』


ギュイイイイッ…ゲインッ!ザシュウッ


後藤 「ふうっ…どうだ、佐久間?」

佐久間 「うん、悪くない…よし、噛み合った!」

みほ 「…」ジーッ




ギィッ・ズシュンッ


後藤 「…これで均衡状態に持ち込めた。一回の模擬戦の長くなって、内容の密度も上がるはずだ…西住?」

西住 「…はい?何ですか」ジーッ

後藤 「今二人が行ってるのが、稚拙ながら二人の『型』な訳だが…どう見る?」

みほ 「…え?そうですね…『水と油』、というか…」ジーッ

後藤 「…ほう。そりゃ本来の意味でか?」

みほ 「いえ!…絶対違って混ざらないんだけど、液体という意味では同じだから、同じコップに入れられて一つになるっていうか…あ、あれ?本来の意味とは違うんですが…何て言うんだろ…うまく言えないです…」

後藤 「…いや、その感じ方は悪くない。明日からはチーム全体での模擬練習になるんだが、その時に西住の言ってる感覚を説明するよ」




チュイイイン…


佐久間 「…しかし、冷泉にはレスリングか柔道の寝技や投げ技に持ち込む『型』、五十鈴には銃剣かナギナタの『型』を仕込みたかったな…ま、レイバー用銃剣とかナギナタなんざ無いけどな?」

後藤 「じゃあ今度、ウチの整備士共にでも試作させてみるか?…冷泉の寝技・投げ技に関しては、ウチの整備士共に相談してみるわ」

みほ 「…レイバーに『ナギナタ』ですか?」

後藤 「全くおかしい話でも無いんだぞ?レイバー…特にこの『AVシリーズ』のような『人型を模した格闘戦用レイバー』は、文字通り人間と全く同じ動きが出来る…理論上はな?」



佐久間 「時間さえかければ、打撃・投げ技のみならず、サブミッション(間接技)やロープワーク(紐術)…あらゆるサバイバル術『特殊アクション』を覚え込ませる事が可能だ」

後藤 「そんな『特殊アクション』は、一旦覚え込ませておけば、後はコンピューターの方で勝手に判断して最適なタイミングで『発動』してくれる。これを『動きの効率化』と言うんだが…ん?」

みほ 「…???」


後藤 「…すまんすまん。この辺りの話はフォワードの連中にでも任せようや。んじゃ次は、キャリアとバックスの連中の様子を見に行こうか」


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今回はここまでです。

乙です

麻子と華、それぞれの特徴を生かす『型』の話面白かったです
さてさて…優花里と沙織の方はどうなるか楽しみです



>>120
浅草一帯火の海にするつもりか………

薙刀は扱いにくいのが特徴だから、某ロボアニメでも需要が無くて廃れたんだよ。

そういやPSのパトレイバーゲーは関節技やら投げ技やら豊富だったなぁ

無粋なツッコミだけど、華さんは五十嵐(いがらし)じゃなくて五十鈴(いすず)ですよ~



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ーー東京 八王子市 「特機専門研修校(レイバーの穴)」 特殊車輌用特設コース(街中想定レイアウト)


ブウウウ…ンッ


後藤 「さて西住。本来なら次は『バックス』の『型』を教えるべきところなんだが、『キャリア』の『型』から説明するのには訳がある」

みほ 「どんな訳があるんですか?」

後藤 「実は、レイバー産業における篠原重工の躍進に焦りを感じた四菱から、せめて得意の特殊車輌産業ではシェアを奪わせまいと、とあるありがたい提案をしてきてくれた」

みほ 「あの…レイバー初心者の私達に対して、ハードルだけがどんどん上がってる気がするんですけど…」

後藤 「そんな事は無いさ。そのおかげで、運用実績データとレポートを提出すれば『四菱製 98式特殊運搬車 改』が二台もタダで使えるんだし」

みほ 「はぁ…。…改?」




後藤 「そこだ西住。今までの『キャリア』の役割は、『現場までのレイバー運搬』と、荷台を垂直に立ててレイバーサイズの『固定バリケード』として使用する事にあった」

みほ 「…はい。シミュレーションでも、そのように使用してきました」


ギャギギイッ


後藤 「ところで今回の四菱製 98式特殊運搬車 改。荷台基部に旧式ながらレイバー譲りのオートバランサーを設け、荷台上部のカウンターウェイトで慣性打消を行うという、何だかよく分からん凄い機能が付いている」

みほ 「???」

後藤 「…まあ簡単に言うと『レイバーサイズのバリケードを移動しながら使用出来る』用になったって事。ウチも昔手動でやった事あるんだけど、その時は危なくてとても使用出来たもんじゃなかったね」

みほ 「まさか、それが…」



後藤 「そう。『レイバー×2 & 移動式バリケード×2』…第一小隊でも第二小隊でも試した事の無い、お前さん達だけの戦術幅を拡げる『ユニット構成』の『型』だ」

みほ 「…あ、あはは…(体よく降って沸いた難題を、ただ押し付けられただけという気も…)」


グワンッグワンッ


後藤 「いやあ…『戦車』っていう『特殊車輌』に慣れ親しんでいるお前さん達でないと、とてもじゃないが使いこなせない代物でな?」


キキィーッ!


そど子 「…ちょっと!いきなりこんな大型車輌押し付けられても、扱いにこまるんですけどっ?!しかもバック移動前提だし!!」

後藤 「大丈夫。操作はカートと同じだから簡単だ。しかも脚で走るレイバーよりも最高速は早いぞ?…理論上は」

ゴモヨ 「全然簡単じゃないです!それに荷台に振り回されて、車が浮いてスゴく怖いんですが…」

後藤 「大丈夫。オートバランサー付きだから、レイバーで意識的に倒そうと押さない限り、まず倒れないぞ?…理論上は」



そど子 「その『理論上は』って言うの、止めなさいよ!余計不安になるでしょ?!」

後藤 「…ああ。金春は総合指揮車の代車で、園と後藤を外から見ながらアドバイスしてやってくれ。自分の操縦テクも磨きながらな?」

パゾ美 「…少しは私達の話も聞いて下さいよ!」


ギャーギャー


みほ 「何か…巻き込んじゃって、ごめんね?カモさんチームの皆さん…」ハァ…


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ーー東京 八王子市 「特機専門研修校(レイバーの穴)」 特殊車輌用特設コース~指揮テント内


ギャーギャー


沙織 「…あ、みぽりん!」

優花里 「西住殿。見に来てくれたんですかあ?」

みほ 「沙織さん、優花里さん!…うん、『キャリア』組の練習を見に来てたの。『バックス』のお二人は、今何をしてるの?」

沙織 「ううっ、それが…。聞いてよ、みぽりん?やっぱり私、実技は苦手だよお…」

みほ 「ど、どうしたの?」

優花里 「…今まで私達、バリケード状態のキャリアをレイバーに見立てて、随伴車輌として誘導指示を行ってたんですよ。でも…」

沙織 「理屈はゆかりんに教えてもらって、頭では理解しているつもりなんだけど…どうしても上手く行かなくて」

優花里 「なのでもう一度、今度は別の方法で改めて説明させて頂いてたんですよー」



後藤 「…キャリア(対象)の邪魔にならないよう、尚且つ対象の位置が常に分かる場所をキープし続けながら、指揮車(随伴車輌)を運転する。…確かに、初めての武部には難しいだろうな」

沙織 「…後藤隊長もいらっしゃってたんですか?」

後藤 「ああ。…随伴車輌は、対象の動きを予想して外へ外へと移動することが肝要だ。内輪に巻き込まれないようにな?」

優花里 「はい。出来れば、障害を事前に対象に知らせるために、尚且つ対象から常に見えるよう、やや先行するのが望ましいです」

後藤 「ただこれを行うのは、自分を俯瞰から眺める感覚が身に付かないとかなり難しい。武部が戸惑うのはむしろ当然と言える。それを自然に行えている秋山の方が異常と言えるだろう…」



優花里 「…何だか私と冷泉殿にだけ、風当たりが強くありませんかあ?」

後藤 「冗談だよ、あんま本気で受け取るな。…秋山?お前さんの心配は一切しとらんから、今日は武部にひたすらコツを教えてやってくれ」

優花里 「はい、お任せ下さい!武部殿?出来るまで何時間でもお付き合いしますから、もう泣かないで下さいね?」

沙織 「ううっ、ゆかりん…ありがとう~」

みほ 「ふふっ…沙織さん、頑張ってね?」




後藤 「…さて。今までの『型』は、いわば技術面やら手法やら…こういっちゃ何だが、実は枝葉末端に過ぎない」

みほ 「枝葉末端、ですか?」

後藤 「一番大事な『型』というのは、実は『命令指揮系統』にあると俺は思っている…誰を配置するかっていう『人選』も含めてな?」

みほ 「それは『バックス』の二人も関係があるって事なんですね?」

後藤 「そういう事だ。これさえ決めちゃえば、俺はこっち方面の仕事をお前達に丸投げ出来て、大層楽になるって訳」

沙織 「?」

秋山 「何の話ですか?」



後藤 「…秋山。お前さんは、二号機バックスを行いつつ、今まで通り西住の『参謀』として、作戦構築と実行の負担を減らしてやって欲しい」

優花里 「?!…わ、私、参謀役だったんですかあ?!」

みほ 「…うん。間違いじゃないよ?」

優花里 「ウヒャア~!」モシャモシャ

後藤 「…ただし『作戦構築』した際、必ず『武部の確認』を取る事。それ以外の作戦実行は認めんからな?」



沙織 「え?わ、私が…あの、何の冗談で…」

みほ 「…確かに戦車道においても、沙織さんは情報の取りまとめ役という大切な役割を果たしてきてくれました。異存はありませんが、理由を教えてくれますよね?」

沙織 「み、みぽりん?」

後藤 「…もちろんだ。さしずめ武部は、一号機バックス兼『安全顧問』と言った所かな」

優花里 「安全顧問…?」




後藤 「…ここに、西住に昨日やってもらったシミュレーション概要の幾つかを持ってきてある。秋山?これを見て、何か感じないか?」

優花里 「んー…良い作戦だとしか思いませんが…」

後藤 「で、これを武部に見せてみる…どうだ?何か感じないか?」


沙織 「ん~…みぽりん、どうしてここにこの子(レイバー)を配置したの?」

みほ 「それは…敷地内の建物を盾にして、レイバーを置けるスペースが敷地内にあったから…」

沙織 「…一つ手前のここじゃダメなのかな?」

みほ 「効果は変わらないけど、少し狭かったから…でも、どうして?」



沙織 「私が選んだのは、建築資材屋さん。でも、みぽりんが選んでいたのは…幼稚園だよ?」

みほ 「確かに、幼稚園だけど…」


沙織 「…幼稚園の子供達がさ?もちろん作戦時は現場にいないにせよ、幼稚園を憧れのパトレイバーの盾にされて、ましてや攻撃されたら、どう思うかな?って…」



みほ 「あ…」




後藤 「他には何か無いか?」

沙織 「え?ええと…こっちの子の配置。信号の屋じゃ無くて、信号の手前じゃダメなのかな?」

優花里 「…十字路を抑えるという意味では良いですが、相手からの直接攻撃の可能性を考えると、やや奥まった方が良いという判断かと…」


沙織 「信号機って、こっちの子の邪魔にはならないのかな?あ、あとここ、電線が走ってる。切れちゃったら、周りの人達が停電で困らないかな?それに…」

後藤 「武部、もういいぞ。ありがとう」



優花里 「…おおっ!」




沙織 「え?え?な、何かごめんね?私とんちんかんな事言ってるよね?」オロオロ

後藤 「…とまあ、これが『常識』のある人の意見な訳だ。誰かを守る使命感に酔い、その場は収めたとしても…そこで生活してる人達の被害を産んでしまっては、元も子もないだろ?」

みほ 「確かに、その通りです…」

優花里 「…でも、分からなくなってきました。即時解決が求められるであろう『現場』で、そんな悠長な事で良いのか、と…」

後藤 「そうは言うがな?お前達は『現場』におけるあらゆる可能性を考えて『作戦』を立案するわけだろ?」

優花里 「…はい」

後藤 「作戦展開時の隊長である俺の役割の半分以上は『作戦に巻き込まれる関係各位への折衝』なんだぞ?」



優花里 「一々、事前にでありますか?」

後藤 「そりゃあそうさ。時間も手間もかかるが仕方ない。俺達、警察の戦場『現場』にある物全てが、誰かしらの財産なんだから」

みほ 「…そうですよね、確かに」

後藤 「そういう人達に相談する際にだよ?ただお前さん達みたいに『作戦ですから』って説得するのと、武部みたいに『貴方達の事を分かっています』って説得するの、どっちが協力する気になるかって話」

優花里 「確かに…」

後藤 「まあもっとも、そういう誠心誠意溢れる『説得』が通用しないのも当然いるわけだ。その際はやむ無く『説教』やら『説法』やらに変えていかざるを得ない」


優花里 「…『脅し』や『騙し』に聞こえますね、西住殿?」

みほ 「しーっ…」



後藤 「『説得』は大事だよー?これをやっておかないといざ被害が発生した時、何を請求されるか分かったもんじゃない。レイバーその物が維持費がかかる金食い虫だが、特車二課が貧乏な一番の理由がそれなんだから」


みほ 「…でも今ので確信した…戦車道でも、きっと私の知らない、見えない所で、沙織さんが色々気を使ってくれてたんだって…ありがとう、沙織さん」

優花里 「…はい。私も改めて武部殿にお世話になっていた事を実感しました。武部殿、ありがとうございます!」

沙織 「そ、そんな…二人とも止めてよ?改めて言われると恥ずかしいよー?」

後藤 「武部は皆の心の負担を減らしてくれる、ささやかな癒しってとこだな」

沙織 「…!(やだ…厳しい只のおじさんと思い直してたけど、実はやっぱりイケテルおじ様なのかも?!)」

みほ 「沙織さん?!」ビクッ?!



後藤 「さて…何だかんだ言ったが、三人とも優先順位は間違えないでくれよ?

・第一に人命優先。(チームメンバー含む)

・第二に犯人を取り逃がさない事。

・第三に周辺被害を最小限に食い止める。

最終決定権を持つのは、隊長代理の西住、お前だ。第二は秋山、第三は武部が、それぞれ西住を支えてやってくれ…これが『命令指揮系統』の『型』だ」

みほ 「…はい!分かりました」


後藤 「…まあ『型』はあくまでも基準点に過ぎなくてな?フェイクに使うなり、応用を効かすなり、後はお前さんの好きなようにしてくれれば良いからさ」

みほ 「はい。今後、色々と考えてみます」



後藤 「うん…そのためにも、午後からはイメージしたチームの完成『型』で、シミュレーション上の『状況』をクリアしてもらう」

みほ 「はい!」

後藤 「ただし、今度は『状況』側に俺がリアルタイムで『作戦』を与えていく…。つまり俺が『実行犯』って訳だ。だから手加減はしない…本気で、攻めて来い!」


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今回はここまでです。

戦車道ではそれ用の保険でもあるのか突っ込まれて喜んでたおっさん居たけど、レイバー保険なんて無いもんなぁ乙

ふぅ堪能した つづき待ってます

パトレイバーは実際レイバーがあったらって世界だから保険ないと民間じゃ使ってもらえないだろうしなぁ
P2以降は特に関東レイバー衰退しちゃったけど、世界的にはどーなんだろ?
篠原や四菱は輸出メインになったのだろうか



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ーー東京 八王子市 「特機専門研修校(レイバーの穴)」 教習生宿泊室内


みほ 「…ハーッ…」グダー


優花里 「…今日は西住殿が疲れ果てています…」

沙織 「後藤隊長にシミュレーションでボッコボコにされたらしいよ?」


みほ 「…いいの。ボコは、どんなにボコボコになっても立ち上がるの。それがボコだから!」グッ


麻子 「お、復活した」

華 「でも、またやられてしまうんですよね?」


みほ 「ううっ…私きっとまた後藤隊長に…でも、それもまたボコだから…」ゴロゴロ


優花里 「自分をボコに見立てて、また落ち込んでしまいました…」

華 「心なしか楽しそうに見えるのは気のせいでしょうか…?」

麻子 「自虐に浸っているのでは」

沙織 「…(みぽりんって、ひょっとしてM?)」





みほ 「…あ、そうだ。カモさんチームに大事なお話をしておかないと…」ムクッ


そど子 「…あんのバカ隊長、とんでもない要求してきて…」グダー

モヨ子 「…頭が、ぐらんぐらんする…」グダー

パゾ美 「…体が、動かないー…」グダー


優花里 「荒んでる上に疲れ果ててますね」

みほ 「あの、カモさんチームの皆さん?疲れているとこ悪いんですけど、少しお話しておきたい事が…」


そど子 「…一体何よ。疲れてんのはお互い様でしょー?手短にお願いねー…」グダー

みほ 「あ、あの…この特車二課の体験入隊についてなんだけど…」


そど子 「…知ってるわよ。私も、モヨ子も、パゾ美も」

みほ 「…え?」




そど子 「来週に暴走レイバーとぶつかるって話でしょ?…西住さん達が廊下で話してるの、聞いちゃったもの…」ゴロッ

麻子 「あの場にいたのか…」

そど子 「…何であんなに褒めて欲しがるのよ?みっともないったらありゃしない…」

麻子 「うっさい、そど子」

そど子 「はいはい、私なんかどーせそど子ですよーだ…どーでもいーわよ、暴走レイバーなんて」ゴロッ

みほ 「園さん…」

そど子 「…少なくともここにいる内は、私達にも居場所や立場や責任ややる事があるんでしょ?ならやるわよ…やってやるわ…やるしか、ないじゃない…」ゴロッ

モヨ子 「…」ゴロッ

パゾ美 「…」ゴロッ


みほ 「皆さん…そう。そうだよね…」ニコッ



沙織 「…って、違ーう!」ガーッ

華 「いきなりどうしたんですか?」

麻子 「空気を読め、沙織」

沙織 「夕方五時からフリーだよ?!いつも疲れて寝るばかり!今日こそ東京満喫しなきゃ?明後日は大荒に帰っちゃうんだから!!」

そど子 「あー…私達はパース。今日は疲れたから、このまま晩ご飯までゴロゴロしてる」

麻子 「気が合うな、そど子。それでは私も失礼して…」

そど子 「ちょっと止めてよ冷泉さん?狭いし暑いし近付かないで!?」

麻子 「ずいぶん冷たいじゃないか」

沙織 「ほら麻子も行くよ?!皆もさっさと支度して!!」

麻子 「やーめーろー…」

華 「あらあらー…」


優花里 「…(この先のオチが見えるだけに、正直あまり同意出来ません…)」


みほ 「~♪(またコンビニ寄っていこっと!)」


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ーー東京 八王子市 外れ



カナカナカナカナ…


沙織 「…八王子って東京じゃないじゃん!(暴言)」

華 「翻訳すると『この辺りには何も無い』ですね?」

麻子 「施設名に入ってる八王子市なんて言葉は、あくまで飾りに過ぎないんだな…」

みほ 「千葉なのに、東京ボコランドみたいな?」

優花里 「この時間は一時間にバスが二本しか出ていません」ヤッパリ

麻子 「この時間に下界に下りても、帰りのバスが無いぞ」ウワー

華 「雑貨屋みたいな店はありますが、食事処は近所に無さそうです…」ショボン

みほ 「この道真っ直ぐ十五分位行けば、コンビニに…」ワクワク

沙織 「もうじき暗くなるから、女の子は一人でこの先行っちゃダメ!」クワッ

みほ 「…はい…」ショボン




優花里 「施設内には自転車が二台しかありません…」

麻子 「今からサンダースに連絡して、大荒からⅣ号持ってきてもらったらどうだ?」ヤレヤレ

沙織 「…最悪、それ有りかも…」

優花里 「街に出るためだけに戦車引っ張り出すのは止めてください!」

みほ 「…こうしててもしょうがないから…帰ろっか、ね?沙織さん」

沙織 「…うん、帰る…」

麻子 「お腹が空いた…」

華 「…今日の晩ご飯は何でしょうか…」


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ーー東京 八王子市 「特機専門研修校(レイバーの穴)」 教習生宿泊室内


リー…リー…リー…


zzz…

ムニャムニャ…
モウ,タベラレマセン…
レオパルドツーノカックウホウデスヨー…
オバアガ…オバアガ…
ゼッタイカレシヲミツケテカエルンダカラ…
ワ,ワタシガセイトカイチョウ?!…
グーグー…


みほ 「…立場…責任…やる事…そして居場所、か…」


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~4日目


ーー東京 八王子市 「特機専門研修校(レイバーの穴)」 機材格納庫内 総合指揮車内


コンコン


佐久間 「…おい後藤、いるか?」

後藤 「おう佐久間。どうかしたか?」

佐久間 「昼メシ前に、ウチの方の進行報告をしておこうと思ってな?」

後藤 「おお。どこまで行けた?」

佐久間 「午前一杯で、『フォワード』組は『バックス』組とフォーメーション組ませて模擬戦を敢行。『キャリア』組は基本動作が何とか形になった感じだな」

後藤 「ん~…ちと急造感が否めないな。出来れば日を跨いで同じ訓練をやらせた場合の伸び率を、お前に確認して欲しかったんだが…」

佐久間 「皆よくやってるよ。特に武部とキャリア組がね?無理やり合同練習にブチこんじまえば、何とかなるんじゃないか」



後藤 「…じゃあ、進めちまうか?」

佐久間 「良いんじゃねえか」

後藤 「じゃ、やっちゃってくれ」

佐久間 「んじゃメシ食った後、午後イチから始められるようにしておくわ。…で、そっちはどうなんだ?」

後藤 「こっちは何時でも。むしろ早く合流させて、実際の指揮を体感させて早く慣れさせたい」

みほ 「…あそこでこう来たらこう返す。でも周辺被害も考慮しないといけないから…」ブツブツ

後藤 「おーい西住、あんまり根を詰めるなよ。ボコボコにし過ぎて悪かったがな?」

みほ 「…あ、いえ。私は、大丈夫です(…気は使ってくれてるものね…単純にまだまだって事なんだろうな、私が…)」



後藤 「…とまあ、やる気も上々だ」

佐久間 「いやはや、逸材ってのはいるもんだな…お?そろそろメシの時間か…アイツ等ん所戻らなきゃ」

ドタドタ…

後藤 「…さて西住。午後からはいよいよ皆と合流して、実戦形式の『合同模擬戦闘訓練』を行う」

みほ 「はい。(やっと皆と合流出来る…!)」

後藤 「これは例の『型』を効率的に高めるために行うものだ。この訓練の『型』を、今からしっかり覚えて欲しい」

みほ 「訓練にも『型』が反映されてる訳ですね?」

後藤 「そうだ。これさえ覚えてくれれば、これからはお前達だけで訓練を行えるようになる」


みほ 「…あ…」



後藤 「そうだ…特車二課配属後は、当然だが佐久間はいない。そして俺も、実務に復帰して今までのように面倒は見れなくなる。だから…」

みほ 「これからは、私 一人で…」

後藤 「そう。お前一人でチームを支えなきゃならん。…そう情けない顔をするな。配属後の小隊練度は、お前さん次第なんだからな?」

みほ 「…は、はいっ!頑張ります!」

後藤 「…お前さんなら大丈夫。すぐにこの訓練の意図を見抜いて、自分なりに工夫し出すさ。もどかしさを感じたなら、そこが鍛え所だ。隊長代理として、お前さんの方から皆に指摘してやってくれ」

みほ 「はいっ!」





キーンコーンカーンコーン…


後藤 「ま、その前に腹ごしらえだ。腹が減ってはナンとやらってな?じゃ、行くか」

みほ 「…はいっ、お供させて頂きます!」


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今回はここまでです。

パトレイバーは映画はまだしも、実写化が・・・だったからな(・・・は色々察してくださいな)



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ーー東京 八王子市 「特機専門研修校(レイバーの穴)」 教室内


佐久間 「本日午後からは、昨日の『型』の応用編。『型』を全て組み合わせた、実戦形式の『合同模擬戦闘訓練』を行う。これは特車二課配属後も行ってもらう事になるから、よく覚えておくように」

後藤 「ちなみに我々は、世間で言う所の『事件』を『状況』、『犯人』を『目標』と呼んでいる」

みほ 「戦車道でも使う言葉です」

後藤 「うん、意味はほぼ同じだ。『事件』と『犯人』はどちらも、全てが終わって結論付けてからの呼び方。現在進行形だから『状況』『目標』という呼び方をすると言う訳。ややこしい話だね」

佐久間 「なぜこういう話をしたかと言うと、この訓練時、『仮想状況』と『仮想目標』を冷泉の一号機に設定しているためだ」

冷泉 「げ。なんで私だけ仲間外れなんだ…」

佐久間 「これは天才に対するハンデの一環だ。エースの宿命と思って諦めろ」

麻子 「おお…聞いたか、そど子?」

そど子 「はいはい、凄い凄い」

麻子 「…荒んでからのそど子は冷たい」



佐久間 「『仮想状況』『仮想目標』は、お前達もよく知っているであろう『黒いレイバー』事件…あれを冷泉に演じてもらう事になる」

華 「話には聞いた事がありますが、実際に映像を見た事はありません」ハイ

沙織 「私は話もよく分かりません!」ハイハイ

後藤 「そういうと思ってな?某動画サイトに上がっているダイジェストがあるはずだ。今からスクリーンに投影して見せるから、まずはイメージを統一しようか…秋山?」

優花里 「はい、お任せ下さい!」




(映像再生中)


優花里 「キタ━(゚∀゚)━!」

後藤 「コメントは消しなさいよ…」

優花里 「はい、すみません…」シュン

麻子 「…速い…」

後藤 「…コイツが晴海・城門に現れた通称『黒いレイバー』だ。目的・性能・名前に至るまで一切不明…いや。あえて目的を上げるとしたら…」

みほ 「したら?」

後藤 「『インネン付けて喧嘩を吹っ掛けてきたタチの悪いレイバー』てとこだな」

華 「このレイバーとタイマン張ってるのは…?」

後藤 「ウチ第二小隊のレイバー『98式AV イングラム』。篠原重工肝いりのフラッグシップ・レイバーだ…ま、連敗続きだけどな?」

麻子 「連敗?」



沙織 「…で、でも、いい勝負ですよね?最終的には『撃退』した訳ですし…」

後藤 「…優先順位、話したろ?人命優先、犯人を取り逃がさない事、周辺被害を最小限に食い止める…その何れも我々は成し遂げられなかった。惨敗してるんだよ、俺たちはソイツに」

沙織 「すいません…」シュン

佐久間 「…おい、後藤?」

後藤 「おお、すまんすまん。ついアツくなってな?許してくれや」

みほ 「…隊長?まさか、私たちが今度対峙する相手って…」

優花里 「コイツ、なんですか?」



後藤 「…いや、多分それは無い」

みほ 「?何でそう言い切れるんですか?」

後藤 「…あまり多くは機密に関わる事なので言えないが、今回は『出てくる要素が欠けている』んだよ…だから、出てこない。ま、俺の勘みたいなもんだと思ってくれや」

みほ 「はい…分かりました」

後藤 「こういう、混乱に乗じて、ただ暴れるだけが目的に見える「愉快犯」「悦楽犯」みたいなのも一応気にしとかなきゃならん…ほんと、頭痛いわ」




佐久間 「話を元に戻すぞ?…冷泉、お前にはコイツを演じてもらう訳だが…見ての通り「ムダが多い」のが分かるだろ?お前には『ムダが無い場合をイメージ』して演じてもらう」

麻子 「…分かった」

後藤 「お前の目指すべきスタイルが『無駄の無い黒いレイバー』って訳だ」

佐久間 「そして他の者は『ムダの無いレイバー』の撃退に全力を投入してもらう。イメージ上とは言え、レイバー史上最強のコイツを撃退出来たとなれば、かなりの自信になるはずだ」

みほ 「…はい、分かりました」

後藤 「…それじゃイメージの統一が出来た所で、今度は具体的な訓練方法を伝えていこうか。テントから出るぞ?」


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今回はここまでです。

ここまで読んで、もしリチャード・王がみほに興味を持ったら…なんて考えてしまった

こないかな



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ーー東京 八王子市 「特機専門研修校(レイバーの穴)」 特機模擬戦闘用広場~


ブロロロロ…

チュイインッ…

ドドドド…


後藤 「…各自、自機に乗り込んだな?今からは防音型通信機による双方向会話モードに切り換えて会話を行うからな?」

佐久間 「昨日各自に伝えた『型』は覚えているな?その『型』を基本に、今から合同訓練方法の『型』を説明していく!」

みほ 『お願いします!』



後藤 「まず基本となるのは、何と言っても『フォワード』組の二人のレイバーだ」

ヂュインッ

麻子 『おう』

ヂュインッ

華 『はい!』

後藤 「冷泉には『確実に相手の弱点を突く時間短縮』、五十鈴には『相手の弱点に照準を合わせ続ける時間延長』、各々の更新を狙って模擬戦を連続して行ってもらう」

麻子 『…それは…』

華 『ひょっとして…』

佐久間 「…これは操縦技術の劣る五十鈴のために、冷泉に課す『時限性ハンデ』だ。最初は技術のある冷泉に有利だが、長引くほど体力のある五十鈴に有利になる」



後藤 「昨日のお前達を見て、西住が面白い事を言っていたよ。本来の意味では無い、同じ液体で同じコップにいる『水と油』なんだそうだ」

麻子 『水と…』

華 『油…?』

みほ 『な、何でこんな所で…?!』カアッ

佐久間 「これはお前達の『長所・短所が全く真反対』である事を暗に示唆している。今回の練習の『型』は、まさにそれを活かし、互いを組合せ『どこまでも高め合える』ものなんだ」


みほ 『…!』



後藤 「お前達はレイバー乗りとして面白い位に水と油だ。互いの長所短所を身をもって体感し『敬意を持って食い合う』事で、自分のスタイルを完全に物にしろ!」


麻子 『…よろしく、五十鈴さん』ニヤリ

ヂュインッ

華 『こちらこそ…麻子さん』フッ



佐久間 「あと冷泉は、無駄な動きを極力無くし、効率化を図り、耐久力を養え。疲れ果て、脱力した状態での無理無い動きを体で覚えるんだ」

後藤 「…せめてドーファンの一回充電フル稼働時間の30分は保たせるように。でないと西住の戦略に影を落とす事になるぞ?」

麻子 『言いたい放題だな…見てろよー?』キッ

ズシュン

佐久間 「フフン、その意気だ。…対して五十鈴は、冷泉の動きをただ受け止めるだけでなく、自分から動いて『受け流す』事を意識するように」

後藤 「レイバーに対して『慣れ親しむ時間』を、嫌が応にも引き延ばして技術を上げてやる…覚悟しておけよ?」ニヤリ

華 『…下手な遠慮こそ失礼です。どうぞご遠慮無く』キッ

ズシュン




後藤 「指揮車…『バックス』組は、地面に記入された疑似地図と、設置されたダミーに当たらないよう、僚機レイバーを誘導しろ。『接触0を全開運動で何分持続できるか、時間延長を競え』!」

佐久間 「武部は相変わらず位置取りが苦手なようだが、今度は『僚機』だけで無く『目標』の動きも『命懸けで』意識しろ。さもないと踏んづけられるぞ?」

沙織 「わ、分かってるんですけど…」

ブロロロロ…

後藤 「秋山。練習だと思って余りにも疑似地図上の家屋やダミーに接触するようなら、『状況』現場で実際に被害に合った人達に謝ってもらうからな?」

優花里 『そ、そんなつもりは…気合、入れ直します!』

ブロロロロ…



後藤 「『キャリア』組は、とにかくレイバーを『エリア内から出さないように行く先を遮る時間延長』を狙え。あと『意識的にぶつけて、その回数をボーナスとして加算』しろ」

佐久間 「大洗じゃ泣く子も黙る風紀委員だったんだろ?『接触』を怖がるんじゃねえよ?!」

そど子 『む、無茶言わないでよ!』

ゴモヨ 『背後から襲われるのは、慣れてないのに…』



後藤 「…まあ『キャリア』組は、全く新しい部門に近いからな。少しアドバイスしてやろう…いいか?やってる事は今までと同じだ!『お前らが体を張って、悪を取り締まる』んだよ!!」

そど子 『私たちが、取り締まり?!』

ゴモヨ 『そ、それなら何とか出来るかも…』

ドドドド…


みほ 『ノリノリじゃないですか…あんなに権力や威信に嵩をきた物言いは嫌いだって言ってたのに…』ハァ…

後藤 『ふっ。残念ながら、煽るのや悪ノリ『自体』は、嫌いじゃないんだなあ?…西住。お前は全体を見遠し、弱いパートにアドバイスを行って『模擬戦を維持できる』ように気を配れ」

みほ 『私は、模擬戦の『時間延長』を目標にすれば良いんですね?』

後藤 「そういう事。もっとも?戦車道優勝経験者ともなれば、この程度の同時並列での『総合判断』など手緩いもんだろうけどさ」



みほ 『…さっきから皆に対して何ですか。ずいぶんと安い煽りですね?』ニコッ

後藤 「適度な緊張とヤル気を促すには、闘争心を煽るのが一番だからな。憎まれ役ぐらいかって出るさ」

みほ 『好きなだけじゃないですか…それより、本来は「バックス」が「キャリア」への指示を行うのが基本ですが、運搬・開放・回収時以外は、「コマンド」の私の指示で「キャリア」には動いてもらうようにします』

後藤 「『レイバー×2、キャリア×2』の変則シフト対応だな、どう動かす?」



みほ 『「キャリア」組の園さんと後藤さんは、少しでも状況を把握できるように、運転席側を内角にして、基本常に時計回りにエリアを回るようにして下さい』

そど子 『運転席が右側だから、時計回りにエリアを巡回するのね?』

みほ 『はい。風紀委員的に言えば…エリア全域をカバーするために、園さんと後藤さんにはエリアを跨いだ対角線上、定速での「見回り巡回」を心掛けて欲しいんです』

ゴモヨ 『何か問題が発生したら、巡回進行方向で近い方が問題解決に対応する…確かに「見回り巡回」と同じだけど…ううっ、上手く出来るかなあ…?』

みほ 『ちなみに明日は、後退移動で反時計周りに見回り巡回してもらいますね?』

そど子 『自然に無茶言わないでよ?!』

麻子 『いや、西住さんは大体いつもそんな感じだ。「追い付かれる風に逃げて」なんて言われるんだぞ?記述された最高速度より、体感で相手の加速度が分かってないと対応出来ない技だ』

みほ 『いつも助かります、麻子さん?』

後藤 「…(同僚や部下に、無意識のうちに最大能力を要求するタイプか…。こりゃあ大洗の連中も必死になるわ)」



ブロロロロ…


みほ 「…金春さんは基本、私の指示で運転を。『状況中』は声が出せなかったり、とっさの判断が必要ですから、右に曲がって欲しい時は右肩、左に曲がって欲しい時は左肩に手を置き…」

パゾ美 「戦車道の時と同じって事ですよね?」

みほ 「そうです、そうです!車高が高く『キャリア』同様に全速後退での操縦も多くて難しいと思いますが、練習中は意識的に走り回るようにして少しでも早く慣れていきましょう」

みほ 「了解しました。西住隊長の思い通りに動けるよう頑張ります!」



佐久間 『注意事項はそんな所かな…じゃあ、そろそろ始めるとしようか。西住、号令を頼む』


みほ 『はいっ!…それでは皆さん。…模擬戦、始めてください!!』


今回はここまでです。



やはりパトレイバー(後藤隊長)とのコラボは外れないな。



・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・

チュイイッ

ズシューンッ ズシューンッ ズシューンッ…

優花里 『…冷泉殿がステップして、五十鈴殿との間を詰めて行ってますね…来た!』

キシュウンッ…グンッ!

バカアンッ!

華 『くっ…!!』

優花里 『辛うじて盾でやり過ごした…というよりは、冷泉殿がカマをかけたと言ったとこかな。五十鈴殿!』

キュウンッ

華 『…はい、何でしょう優花里さん?』

優花里 『こちらの予想以上に冷泉殿の伸びが良いようです。もう心持ち、半歩ほど間を開けるようにして対応して見て下さい』

華 『この、位、ですか?』

ズシュン…

麻子 『む…?』

ズシュズシュズシュ…バッ!

ジュインッ!

華 『…動きが見えますね、はい!』

優花里 『落ち着いた対応で良かったです!これならまず向こうの攻撃は当たりません…照準合わせも無理なくこなせそうですか?」

バシュッ…ガッキ、ジャコンッ!

チーッ…

華 『…行けそうです!』

優花里 『あと照準の狙う先なのですが、これからは頭や胴体では無く、手足の…』




・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・

佐久間 「五十鈴にはまだレイバー操縦に戸惑いが見られるな…」

後藤 「二号機コンビに関しては、『戦』にはアクティブな秋山が、不馴れが故に慎重でつい動きが止まる五十鈴の『ケツ』を巧く叩いてくれるはずだ」ニヤリ

みほ 『ケっ!~…』カアッ

後藤 「…どした?西住」

『…い、いえ…』アタマブンブンッ





・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・

キキーッ…

沙織 『こらあっ、麻子ー?!』

ジュインッ

麻子 『な、何だ?まだ何もしていないだろ』

沙織 『してるよー動いてる時!住居エリアに思いっきり入り込んでたじゃん!』

ズシュ

麻子 『足跡見ても、はみ出てないだろう?』

沙織 『足で踏まなきゃ良いってもんじゃないでしょー?内側に傾けた体と頭が、建物にめり込んじゃってるよ!』

麻子 『そんな所まで気にしなきゃならないのか?』

ギチョンッ

沙織 『あったり前でしょう?警察が建物平気で壊したらおかしいじゃない!』

グイイッ!

麻子 『…フフン!今の私は「黒いレイバー」。あらゆる物を破壊する…』

沙織 『そういうの良いから。ほら、真面目にやって?ちゃんと見てるからね!』

チュインッ

麻子 『ぐっ、この…』




・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・

みほ 『…あれ?沙織さん、いつの間に…』

佐久間 「気が付いたか?模擬戦に入った途端、僚機との位置取りにすらモタついてた武部が、今は敵機との間も自然に取れてるだろ?」

後藤 「本番の緊張感を知ってる奴は、ヘタに考え込まさずにとっとと現場に放り込んで夢中にさせた方が良いんだよな」

佐久間 「一号機コンビも、冷泉みたいな『天才』が鼻高にならないよう、理屈じゃなくごり押しで言う事を聞かせられる武部がピッタリだ」

後藤 「武部の『シリ』に敷かれてるって訳だな?冷泉は」ニヤリ

みほ 『シっ!~…』カアッ

後藤 「…さっきからどした?西住。体調でも悪いのか?」

『い、いえっ!…(また、お、お尻って…隊長だけ?それとも男の人って皆こうなのかな?で、デリカシーが無いというか…)』アタマブンブンッ

佐久間 「お?二号機が動くぞ…」

みほ 『…(ううん!き、きっと私が気にし過ぎなんだ。私が慣れなきゃ…)…じゃなくて!集中、集中!!』パンッ!

パゾ美 『…西住隊長?』ジーッ

みほ 『あ、あはは…ごめんね?金春さん。気にしないで』




・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・

華 『それにしても、当たり前ですが「威嚇」だけでは麻子さんを止められません…どうしたら良いんでしょう』ハァ

優花里 『…(銃での威圧と言っても所詮は実弾じゃ無い。実際に撃たないと舐められるのも無理はありません…)』

ヂュイン?

華 『…優花里さん?』

優花里 『…(ここは一つ、派手にかまして緊張感を無理矢理にでも高めておきましょうか…)…五十鈴殿?』

華 『はい、何でしょう?』

ギチョンッ

優花里 『…チャーシューメン!でもホップステップジャンプ!でも何でも良いのですが、何か馴染みのある三連リズムの掛け声はありますか?』

華 『…あまり馴染みがありませんが、チャーシューメンは何故か心に染み渡ります』グゥ

優花里 『もうお腹が空いたんですか?!…空腹をイメージさせてしまうのはマズイですね。では…』




ギュインッ

麻子 『む。何をする気かは知らんが、その距離では当たらんぞ?』

キキーッ!

優花里 『…皆さん?ウチの五十鈴殿をあまり舐めてもらっては困ります!生憎、今日使用しているのは汚れない水風船型模擬弾!隙があったらどんどんブチ咬まして行きますからね?!』

ブオオッ…

沙織 『ちょっとゆかりんに華。制服そんなに替えがある訳じゃ無いんだよ?濡れたら大変な事に…!』

華 『はぁ…フォワードとバックスは一心同体。あまり気乗りはしないのですが…タイマンで舐められる訳にもいきませんから!』




ジャコンッ!

ギャギギッ!

優花里 『フォワードはバックスの指示に従うべし!五十鈴殿?どうぞ遠慮無くやっちゃって下さい!』

チャキッ

華 『…レシーブ、トス、スパイク!』

バンッ・バンッ・バンッ!

バシャッ・バシャッ・バシャッ!!

ギシッ…

麻子 『…ぐわ、み、水浸し…』

沙織 『キャアッ?!ちょっとサイテー!』

そど子 『ちょっと!こっちにまで水来たじゃないのよ?!』

ゴモヨ 『ヒドイ…距離掴むのに窓開けっ放しで運転しなきゃならないのに』




優花里 『頭・胸・腰。レイバー三大弱点を一気に撃ち抜くこの技…名付けて「アヒルさんアタック」!アヒルさんチームのバレーと引っ掻けてみました』

麻子 『全然うまくない…』ビショビショ

華 『「一撃必殺」を目指して鍛錬を積んでいたこの私が、軽薄にも「連撃必中」を披露するなんて…』

沙織 「ちょっと華?気が進まないってそこ?皆を水浸しにするのが申し訳無いじゃなく?!」ビショビショ

そど子 『ちょっと秋山さん?あなた一人で逃げたわね!』ビショビショ

ゴモヨ 『この怒り、どこにぶつけるべきか…』ビショビショ




ズシュン

麻子 『フッフッフッ…今宵の電磁警棒は血に飢えている。五十鈴さん?せいぜい覚悟するがいい…』

シャカッ!

華 『クス…同じ小隊に、二丁ものリボルバーカノンは必要ありません。麻子さんこそ覚悟なさって下さいね?』

ジャキッ!

ズシュンズシュンズシューンッ!

ガキャアンッ!

優花里 『いーですよ!二人ともやる気満々で』

沙織 『誰のせいだと…まあ、ただの安全棒に水風船対決だけどね』




ズシューンッ

華 『そこからはエリア外。逃げられませんよっ?!』

そど子 『冷泉さん?覚悟!』

ガーッ!

麻子 『何の…うわ、おい、ちょっと?』

ギャキーッ…ドスンッ!

優花里 『…おお、レイバーキャリアでのパワードリフトターン!大迫力でありますよ?』

チッカチッカチッカ…

麻子 『ばっ…ばっ…あ、危ないだろ?ぶつかるとこだったじゃないか!そど子』

そど子 『あったり前じゃない!当ててんのよ、わ・ざ・と!!…それに、私の名前は「そど子」じゃなくて「園みどり子」よ!』

ジュインッ

麻子 『おお…久しぶりだな、このやり取り。感慨深い』




キキーッ

ゴモヨ 『…でも、前進からわざわざ切り返してバックでバリケードをぶつけるのは面倒かも…』

そど子 『一手間多い分、ロスになるわね。悔しいけれど、西住隊長の言う通り全速後退で移動した方がいいのかしら?』

麻子 『自然に無視するな。悲しくなるだろ?』

ゴモヨ 『でも、バック用カメラ越しだと車間が掴みにくくて…』

ギュインッギュインッギュインッ

華 『…皆さん?まだ終わってないですよ?覚悟して下さいね?!』



・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・

ギャーギャー

みほ 『ぷっ…ふふふっ…』

パゾ美 『あの場にいなくて良かった…』

みほ 『ふふっ…そうだよね。例の特殊カーボンでも、さすがに水までは防げないもんね?』

ビショビショ…

佐久間 『うおっマジか?』

後藤 『あーあ、テントも水浸しじゃないの…』

佐久間 『…大分、砕けてきたな?』

後藤 『そりゃあ、久しぶりに皆揃っての練習だもん。テンションも上がるだろうさ…』


…サーーーー………ッ……


みほ 『…あ…これって…』

後藤 『…良い風が出てきたな…これが、新レイバー隊の空気ってやつかな…』

みほ 『新レイバー隊の…』





ギュインッ!


麻子 『皆して虐める…西住隊長、何とかしてくれ』

キキーッ

優花里 『あーっ?西住殿を頼るのはズルいですよ!?』

ギャギギッ

そど子 『自己申告での隊長アドバイスは、1ミッションで一回にしてよね?』

ギャーギャー

みほ 『あ…うふふっ…』

ブロロッ…

パゾ美 「…さ、西住隊長?どう、動きますか?指示を」

みほ 「…金春さん!」

後藤 『…ほら行け西住?皆が呼んでる。お前が行かなきゃ、このチームは始まらないんだぞ?



みほ 『はいっ!…麻子さん?それじゃあ、中央広場北のビルを背にして?それなら物理的にキャリア組は届かないし、後ろのビルを気にして二号機は手を出せないから』

ギュインッ

麻子 『!それは良いことを聞いた…今日は1日ここに居座ってやる』

ギッチョン

優花里 『あーっ?地の利を活かした籠城は卑怯でありますよ!』

華 『第一それでは訓練になりません!』

ヂュイン?

麻子 『何を言う?地の利を活かすのは兵法の基本だぞ』

みほ 『…大丈夫!あんまり居座るようなら、キャリア組に広場の脇に押し寄ってもらうから』

そど子 『それいいわね?覚悟なさい、冷泉さん!』

ゴモヨ 『追い立てます!』

…ガーッガッキガッキガッキ

麻子 『ガーッ。その仕打ちはあんまりだろ?少しは休ませろ』

沙織 『あーっ?やっぱりサボリだったのね?』

麻子 『お前どっちの味方(バックス)なんだ?』

みほ 『…あ。次のミッションは仮想地図を書き換えますね?』

麻子 『鬼か!』





・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・


ギャーギャー


佐久間 「おう…おう…ああっ、何でそこで…よし、いいぞ!」

後藤 「どうだ?」

佐久間 「やっぱ実戦慣れしてる連中だよ!放り込んで大正解だわ…なあ、後藤?」

後藤 「何だ?」

佐久間 「…俺ぁ練習時の一時的なチーム編成はやってきたが、実質的なチーム編成を一から構築するの、実は初めてなんだよ」

後藤 「感想は?」

佐久間 「…楽しいなあ!やっぱ現場がいいよ。各々のパーツが組合わさって一つになり、有機的に繋がって、無駄を省き、磨き上げる…予想とはまた異なる物が産まれる…組織作りの妙だよなあ…」




後藤 「組織作りは即興ライブみたいなもんだからな。生み出す空気は、指揮者たるコマンドと、それを演じるチームメイトが造り出していくもんだ。西住…これがお前らの、お前のレイバー小隊だ」

みほ 『…私達の…』

後藤 『そういや、体裁上お前さん達は第二小隊の予備人員て事になってる訳だが…まあ、ややこしいわな?第二小隊とは別の呼び方を決めときたいんだが…単純に第三小隊とでもしておくか?」


みほ 『…あんこう…』


後藤 『…うん?』


みほ 『あんこう、小隊…これが、私の、私たちのレイバー隊…あんこう小隊」


後藤 「特車二課 あんこう小隊、か…」




そど子 『私達はカモさんチームよ?!』

麻子 『うるさい、そど子』

そど子 『えっ…何か、酷くない?』


みほ 『あ、あはは…ごめんね?カモさんチームの皆。でも私、今回は皆で一つのチームになりたいの。だから…』


ゴモヨ 『そういう事なら、私は、別に…』

パゾ美 『総合指揮車とキャリア二台で、カモさんチームは健在だし』

そど子 『し…仕方ないわね。じゃあ、今回だけはそれで行きましょ?』

麻子 『…やれやれ、やっと納得したか』

華 『皆さん、ありがとうございます』

沙織 『何かようやくまとまった気がするよー』

優花里 『引き続き頑張りましょう!』




後藤 「…そうだ。まだ訓練は終わってないぞ?気合入れてけ?ビシッと!!」



佐久間 「…名前も決まって、ようやく一つになったってのに…明日でもう、終っちまうんだなあ… 」


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今回はここまでです。



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~五日目


ーー東京 八王子市 「特機専門研修校(レイバーの穴)」 校庭~


後藤 「…~今日午後の最終合同訓練で、お前達の成長度合いをしっかり見せてもらった」

佐久間 「五日間の短い間だったが…カモさん?チームの連中は四日間か。無茶なカリキュラムに、よくぞここまで食らい付いて来てくれた。改めて礼を言わせてもらう、ありがとよ!」


みほ 「そんな…」

華 「こちらこそ、未熟な私達をここまで教えて頂いて、感謝しています」

優花里 「佐久間教官?本当にありがとうございます!」

そど子 「全くもって無茶ぶりも甚だしかったわよ…」

ゴモヨ 「最初はどうなる事かと…」

パゾ美 「何とか生きて大洗の土を踏めそう」

麻子 「もっと褒めてくれても構わないぞ?」

沙織 「…ちょっと!あんた達ねー?」


佐久間 「ったく…お前達のかしましさは最初から最後まで変わらんな?まあ、最後まで元気なのは何よりなんだが」ハァ…



後藤 「…で、どうだった佐久間?こいつ等の最終評価は」

佐久間 「そうだなあ…ま、辛うじてお墨付きって所かな?しかも、各自のパートに限定しての物だが」

後藤 「…そうか。何とか形になったって事か…」ニヤリ

華 「お墨付きって…評価されている立場でなんですが、少々甘いのではないでしょうか?」

佐久間 「んなっ?!」

後藤 「おいおい、特機教育のスペシャリストに何て事を…(でもまあ、いいか。奴のお墨付きが役立つのは、特車二課に行った時だけだし、増長されるよりよっぽどマシだからな…)」

佐久間 「あのなあ?俺がおべっか使える程器用だったら、こんな所で教官なんざしてねえよ」

みほ 「私達には比較対象のイメージが極端に乏しいので、正直あまり実感が無いんです…」

沙織 「私なんか特にそうだよお…」

佐久間 「…ああ、そういう事か。自信が持てないって話だな?」

沙織 「はい…」



佐久間 「んんッ、分かった!餞別がわりに、一つ話をしてやろう。…お前達は、何で特機生が極端に少ないか、その理由は分かるか?」

優花里 「…人気が無いからでありますか?」

そど子 「出世、出来ないから」

麻子 「教官が今時流行らないモーレツスパルタ式教育だから」

佐久間 「あんなのスパルタに入るか!最後までお前達は…こういう時くらい素直に話をしろや」

沙織 「それ以外の理由が、何かあるんですか?」

佐久間 「意外と辛辣だな、お前も…。理由は、お前達が受けた『特性試験』にある。武部?お前、俺がお前達のポジションを発表した時、何て言ったか覚えてるか?」

沙織 「確か…『あんなに揺れちゃ、髪も服も乱れ捲り』って言ったような…」

佐久間 「…俺は、お前のその言葉を聞いた時、正直言って呆れもしたし、恐れもしたよ。気が付いてたか?」

沙織 「呆れた上に、怖がられてたんですか?私!」

佐久間 「お前達が受けた特性試験はな?レイバーの中でも『最凶クラス』の難易度を誇る『篠原製AVシリーズ』用。…100人のうち二人通過すれば御の字という、超難関試験なんだよ!」





みほ 「?私達全員通過してますが…」

後藤 「普通の人間はな?『天国にも昇る気持ちで地獄行き』って、途中リタイアしちまう代物なんだわ。かく言う俺も洗礼を受けた」

優花里 「…それはひょっとして『酔う』って事でありますか?でもあの程度の揺れで酔っていては、とても戦車には乗れません」

佐久間 「それだよ。戦車道受講者が当たり前のように持つ『揺れ・閉所内での集中力維持』。それはパトレイバーの操縦者に必要な絶対条件なんだ」

沙織 「そうだったんだ…」



佐久間 「お前達がどれだけの逸材か、少しは分かってもらえたか?それに、どんだけ戦車の中で転げ回ってるんだよ、お前らは…。それだけで、どれだけ戦車道にかけてるかが分かるわ…」

優花里 「きょ、教官殿…」

佐久間 「特車二課で存分に暴れる姿を見てるからな?あと、大洗戦車道で皆が再び活躍する日を信じて楽しみにしているぞ?」

華 「…はい!」

パゾ美 「そうだと良いけど…」

佐久間 「まあ駄目ならここに来いや。まとめて面倒見てやるから」

沙織 「そ、それはちょっと…」

ゴモヨ 「困るかも…」

佐久間 「ああ、それと…練習時に蓄積したデータディスクは持ってるな?特車二課についたら、整備班班長に提出する事」

麻子 「…分かった…」

そど子 「忘れないようにするわ…」



佐久間 「俺の方からおやっさ…整備班長に話しておく。シゲ…整備班主任が、各自に合った第二小隊の蓄積データをフィードバックしてくれるはずだ。それからな?それから…」


みほ 「教官…」


後藤 「…」


佐久間 「…呉々も体には気を付けるように!
これにて、特教練での全ての特別講習課程を修了とする。皆、ご苦労だった!!」ニカッ


ザッ!

みほ 「…佐久間教官。ご教授、ありがとうございました!」ケイレイ!


ザザッ!

あんこう小隊 「「ありがとうございました!!」」ケイレイ!


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ーー東京 八王子市 「特機専門研修校(レイバーの穴)」 敷地外公道~


後藤 「…助かったよ、佐久間。何とか形にしてくれた。俺からも礼を言うよ…」

佐久間 「…」

後藤 「…」ゴソゴソ


シュボッ…フーッ…


後藤 「…吸うか?」

佐久間 「…敷地内は禁煙だぞ?」

後藤 「ここ、とっくに敷地内じゃないじゃん」




佐久間 「…警察が良いのかよ?こんな所でタバコ吸って」

後藤 「路上喫煙禁止地区じゃない一般道だろ?ちゃあんと調べてあんだから」

佐久間 「この辺のお巡りの巡回時間もだろ?…火」

後藤 「…」


シュボッ…


スーッ…フーッ…


佐久間 「…旨え…」





後藤 「…そいじゃ俺も、ボチボチ行くわ。アイツ等のレイバーを特車二課に届けなきゃならんからな…何よその手は?」

佐久間 「…没収。タバコと携帯灰皿、預かっとく」

後藤 「…駄賃代わりってか?」

パシッ


佐久間 「…おやっさんやシゲ、南雲さんによろしくなー?あとついでにアイツらにも」

後藤 「おーう…」


フーッ…


佐久間 「…歳取ると…やたらと煙が、目に沁みるよなあ…」


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-----------------


ーー大洗行特別バス車内


みほ 「…」

沙織 「佐久間教官…見えなくなるまで、ずっと見送ってくれてたね…」

麻子 「うん…」

華 「厳しくも優しい教官でした…」

優花里 「ちょっと寂しいですね…」


みほ 「…五日目と六日目の明日・明後日は、ひとまずお休みだね。皆、どうするつもりなの?」

麻子 「とりあえず、Ⅳ号に乗ってから考える」

沙織 「おばぁの所に帰らなくて良いの?」

華 「書類関係の件もありますし…」



優花里 「…あれから、学校の方は何か進展はあったんですかねえ?」

そど子 「ある訳無いでしょ?あったら私達全員呼び戻されてるわよ」

ゴモヨ 「大洗に久しぶりに戻れるのは嬉しいけど…」

パゾ美 「辛い現実を突き付けられるみたいで…少し嫌かも」

そど子 「…ま、私達もB1bisでヤケアイスにヤケおでんでも食べに行くわ」

麻子 「珍走団…」

そど子 「おだまり」


みほ 「園さん…?」

そど子 「…安心して、西住さん。ちゃんと週明けには特車二課に行くわ。来週一杯しか無いけど、私達の唯一の居場所なんだから…」

みほ 「…分かりました」

沙織 「とりあえず皆、戦車には乗るんだねえ…」




華 「そういえば沙織さん。昨日はフテ寝してましたけど、もう東京巡りや彼氏さんの事は諦めたんですか?」

沙織 「いいもん。こうなったら特車二課に期待するもん。何てったってシーサイドベイシティだよ?きっと素敵に決まってる」

麻子 「…(懲りないな、沙織は…)」

優花里 「…(悪い予感しかしません…)」


沙織 「…どんなとこなんだろうね?特車二課って…」

みほ 「うん…緊張が先に立つけど、少し、楽しみかな…」


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第四章 終了となります。お読み頂き、ありがとうございました。あとお知らせです。

一応タイトルを回収し、次章からガラッと雰囲気も代わるため、一旦ここで締める事にしました。

一番の理由は「45000字(空白抜き実際は約23000字)」というボリュームです。

以前スレが炎上した最大の理由が、実は長すぎる事でした。
私自身は長編SSが好きなのですが、実際には20000字でも多いとの指摘を受け、そういう物かと反省した次第です。

現時点で物語の約三分の二を消化。残り三分の一で約25000字(実質約13000字)。
これに本作のダイジェストを先付けし、約30000字の続編(単独作としても読める物)を近日中(一週間位でしょうか)に新スレとして立たせて頂こうと思っています。

明日お昼頃、皆さんへのコメントを返させて頂き、その後、申請しようと思います。
長いのに読んで頂いている皆様には大変申し訳ありませんが、何卒よろしくお願い致します。


某笑にガルパン&パトレイバーものがあるから気分転換に見てみるといい


長いかなぁ?一スレで纏まるならそっちの方が読みやすいんだけど、炎上しちゃったんなら仕方ないか

遅くなってすいません。
返信させて頂きます。

>>110,111,129,154,199,261
本当にいつもありがとうございます。
一人じゃないんだ!とやる気が維持出来ます。

>>112
ご指摘ありがとうございます。
途中からですが修正対応しました。

>>128
みほ殿の無茶ぶりと、レオポンさん達の活躍はもっと評価(?)されても良いと思い、反映しました。

>>131,132,133,134
元ネタは某所での弐尉マルコ氏の物でした。

>>153,180
ありがとうございます。
「型」関係は一番書きたかった所で、今後の展開にも影響してきます。

>>155
ギク

>>156
そうだったんですね…
五十鈴さんは薙刀の格好が似合いそうだったので。

>>157
今こそまたやりたいです。今ならREBOOTスタッフで。

>>158
すいません、見落としてました。自動変換って怖いです。

>>179,180,183,184
これ、調べれば調べるほどヤバげなネタでして…。
あえてボカしました。すいません

>>181,260
凄く嬉しいです!頑張ります。

>>182,185
パラレル→どう解釈してもいいのなら、個人的には311以降、レイバー産業は拡がってると思いたいです。

>>200
実物大イングラムが見れたのが良かったです。

>>209
パトは多様で、今回は「明るい」要素が「ガルパン」に合いそうと思い書いてます。「黒いレイバー」関連は今位の関わりで限界でした…力及ばずすいません。

>>210
出来る限り毎日更新しますね。

>>224
最後まで頑張ります!

>>259
ありがとうございます。参考にさせて頂きます。

>>262
私の力量不足ですいません。
一括で読んでほしかったです…。



という事で、ありがとうございました。
次スレの

【ガルパン】後藤隊長「特車二課 あんこう小隊 奮戦記です!、か…」【パトレイバー】

〈 第5章. 栄光の特車二課 〉~八日目

何卒よろしくお願いいたします。

では、申請を出してきます。

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