【ガルパン】まほ「黒森峰でもあんこう音頭を取り入れるべきだと思うんだ」 (38)


~ 黒森峰女学院・ブリーフィングルーム ~



まほ 「エリカ、赤星、よく来てくれた。まずはこれを見てくれ。」 ピッ

エリカ 「これは… 大洗とプラウダの、公式戦の映像ですね?」

まほ 「そうだ、そして聞きたい。お前たちは ──── 」

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まほ 「雪の中、圧倒的戦力差で包囲されて食料もない。
そんな状況で隊員の士気を高めることができるか?」

小梅 「…はい?」

エリカ 「ええと、それは… 援軍が来るとか、勝利の秘策があるとか、
そういった希望は無しですか?」

まほ 「一切ない。」



エリカ 「…正直に申し上げて、不可能です。
演説一つでどうこうできるレベルではありません。」

まほ 「そうだろうな、いや、責めているのではない。私だって無理だ。
座学でそんな問題を出せば出題者の正気が疑われる。」

小梅 「しかし、ただ一人だけそんな状況をひっくり返した人を知っています。
大洗・プラウダ戦の映像を持ち出したということは…?」

まほ 「そう、それが西住みほであり、士気高揚のカギとなるのが ─── 」ピッ



TV < アアアン♪アアアン♪アン♪アン♪アーン♪




まほ 「あんこう音頭だッ!」

エリカ 「」

小梅 (みほさん可愛い…)



エリカ 「ええと、そのぅ… 確かに、プラウダ戦の顛末は知っています。
踊ったということも聞いています。」

エリカ 「でもこれは、年頃の乙女がやっちゃいけない動きでしょうッ!?
何この… 何ッ!?」

まほ 「ちなみに、これは先ほどの条件に加えて
優勝できなければ廃校になると聞かされた直後の話だそうだ。」

まほ 「絶望的な戦力差と、心身を縛る寒気の中、
寄せ集めの戦車と素人集団で優勝しなければ廃校とか。」

まほ 「ハハッ、これで士気を高めろとか質が悪いにも程がある。」

エリカ 「ファー」



小梅 「改めて条件を並べてみると、とんでもない話ですね…。」

まほ 「副隊長がみほに放った一言がまたケッサクでな。『おい、なんとかしろ』だそうだ。」

エリカ 「鬼か。」



まほ 「踊りで士気を高めた、で終わらせてしまえばただの笑い話だが、
冷静に分析するとこれは理に適った行動なのではないかと思えてな。」

エリカ 「この、どすけべ音頭がですかッ!?」

まほ 「あんこう音頭だ。言いたい気持ちはわかるが、あんこう音頭だ。」

小梅 「気持ちはわかるんですね…。」



まほ 「まず第一に、士気が下がるのはじっとしていて余計なことを考えるからだ。
だからこそ、踊って頭を空っぽにするのは手段として悪くない。」

エリカ 「それはある意味、現実から目を逸らしているだけではないでしょうか。」

まほ 「悪い方へ、悪い方へと考えすぎて動けなくなるよりはよほどマシだ。
隊員は時としてバカになる才覚も必要だぞ。」




まほ 「第二の理由、寒いので体を温める必要がある。
かといって、あまり激しい運動をして疲労を残したり
汗で体を冷やせば逆効果だからな、適度な運動が求められる。」


小梅 「踊ることがちょうどいい運動になるんですね。」



まほ 「最後に、皆で踊ることで一体感が生まれる。
ちょっと恥ずかしい踊りだということがポイントだな。」


まほ 「この時の流れとしてはまず、みほが士気を高めるために踊りだし、
恥ずかしがり屋のみほが自分たちを盛り上げるために踊っているのだと
感動した同じ車両のチームが参加。」


まほ 「そして一人、また一人と並んで踊りだして、全員であんこう踊りだ。
なんて美しい光景だろうか!」


まほ 「ああ、私もモニター越しに見るだけではなく、みほと一緒に踊りたかった!」


エリカ 「さすがに競技会場に乗り込んで踊るのはいかんでしょ…。」



小梅 「隊長、やけに詳しいですね。」


まほ 「大学選抜戦で大洗のチームと話す機会があったからな。
そこでみほについて語ろうともちかけたら熱く語ってくれたぞ。
特にⅣ号のもしゃ毛と、M3リーの一年生チームが。」


エリカ (何やってんのあいつ…)



まほ 「M3リーの車長は目がマジだったな。
プラウダ戦の話をすると、後光が差していただのワルキューレが降臨しただのと
尾ひれがついていたので話半分に聞いていたが。」


小梅 「話の信憑性はともかく、みほさんが慕われているというのは
まぎれもなく事実のようですね。」


まほ 「あんこう音頭で士気を高めるという方法は
隊長が慕われているというのが大前提だからな。」


まほ 「普段から嫌われている隊長が踊りだしたところで
なんだこいつ、で終わってしまうだろう。余計に寒くなる。」


小梅 「すべったときは取り返しがつかない、危険な策なんですね…。」



エリカ 「わ、私は隊長が踊るというのであれば、真っ先にお供いたしますッ!


まほ 「ん?今、踊るって言ったよね?」


エリカ 「え…?あ、はい。」



まほ 「じゃあ… 練習しようか。」 ドサドサッ


小梅 「DVDと、ピンク色のスーツですか。”あんこう音頭入門”?」


まほ 「このスーツを着て踊るのが本来のスタイルらしい。
DVDを入れて… 再生ッ!」ピッ




TV < 燃やして焦がしてゆ~らゆら~♪




エリカ 「なんですかこの卑猥な格好は!?
スーツがピッチリすぎて体のラインがはっきり浮き出ていますよ!」

エリカ 「やっぱり、どすけべ音頭じゃないか!」



TV < 波に揺られてアンアンアン♪



小梅 「意外に運動量はありそうですね。」


まほ 「雪の中で体を温めるならばこれくらいは必要なのだろうか。」


エリカ 「何で普通に分析してんのぉ!?」



TV < 味噌で醤油でアッツアツ~♪



まほ 「一通り終わったな。よし、今度はDVDを見ながらやってみよう。
エリカ、赤星、スーツに着替えろ。三人で踊るぞ。」


エリカ 「えええええええええッ!?やるんですか、この、エロダンスを?
行かず後家量産音頭を!?」

エリカ 「隊員にやれと命じるならともかく、西住隊長がこれをやれば
普段のイメージが木っ端みじんになりますってば!お願い、やめてッ!」



まほ 「エリカ、西住流とは何だ?」


エリカ 「それは… 勝つことです。」


まほ 「そうだ。ならば勝利のためのテクニックを他者から学ぶことに何を躊躇うことがある。」


エリカ 「物事には限度ってぇもんがあるでしょう!?
小梅、あんたも嫌ならはっきり嫌だって言いなさいよ!」


小梅 「私は、みほさんもやっていた踊りにちょっと興味があるかな、って…。」


エリカ 「味方がいねぇぇぇぇッ!!」



まほ 「こんな格言を知っているか?
『やってみせ、言って聞かせて、させてみせ、ほめてやらねば、人は動かじ。』」 カチャッ


エリカ 「山本五十六ですね。あと、なんかムカつくのでコーヒーカップは下ろしてください。」


まほ 「この言葉には続きがある
『話し合い、耳を傾け、承認し、任せてやらねば、人は育たず。
やっている、姿を感謝で見守って、信頼せねば、人は実らず。』」



まほ 「名将と呼ばれる人でさえも他人を動かすのに
これだけの心構えをもってやっているのだ。」



まほ 「未だ何者でもない我々が、ただやれと命じるだけで動かせると考えるのは傲慢だ。
新しいことを始めるなら、率先して動く必要があるだろう。」



まほ 「どうしても嫌だというのであれば見学しているだけでもいい。
続く者がいないのは、私がみほに比べて人望が無かったというだけの話だしな…。」



エリカ 「… … …ます。」ボソッ


まほ 「ん?何だって?」


エリカ 「不肖、逸見エリカ!あんこう音頭を踊ります!
敬愛する西住まほ大隊長のため、一心不乱の大音頭を取らせていただきます!」


まほ 「そうか、やってくれるか!じゃあこれ、エリカの分のあんこうスーツだ。」ドサッ


エリカ 「うぅ… どピンクだよぉ…。」



~ 着替え終了 ~




小梅 「これは… 恥ずかしいッ!」


エリカ 「下着の上に直接って… 考えた奴はピンク色のお薬でもキメていたわけ!?」


まほ 「まぁそう言うな。私なんか下着も取り払って、全裸の上にスーツだぞ!
恥ずかしいと思うから恥ずかしいのだ!」


エリカ 「恥という概念そのものまで捨てないでください…。」


まほ 「先ほども言ったが、あれこれ考えるから立ち止まってしまうのだ。
見よう見まねでいいから早速やってみるぞ、再生ッ!」 ピッ



TV < アアアン♪アアアン♪アン♪アン♪アーン♪



まほ フリフリ

小梅 フリフリ

エリカ フリフリ



エリカ (ぴっちりスーツで踊るのって、予想以上に恥ずかしいわね…。)


エリカ (ギャラリーがいないのはせめてもの救いだけど)


エリカ (そもそも、このお尻についている尾ひれは何なのよ!卑猥に過ぎるッ!)


エリカ (目の前で体のラインが浮き出たスーツの隊長のお尻がフリフリフリフリと…)







エリカ (… … …ブラボー。)



まほ 「ふぅ… これはなかなかいい運動になるな。」


小梅 「踊っているうちに恥ずかしさも薄れてきました。
人前でやるとなると、まだ自信はありませんが…。」


まほ 「みほはこれを必要と感じて、躊躇わずにやってのけたのだな。
『あらゆるしがらみを捨て、即座に行動できる者。古来より人はそれを英雄と呼ぶ。』」


小梅 「ちょっとダージリンさんに影響されていません?」


まほ 「あるいは継続のミカか。戦車道の知り合いは変な奴ばかりだ。」



まほ 「さて、あんこう音頭の効果についてエリカはどう思う?
顔が赤いようだが、まだ恥ずかしいか?」


エリカ 「えッ?あ、はいッ!なかなかに効果的なのではないかと思います!
途中から頭の中真っ白でした!」



まほ 「そうか…それは良かった。私は来年で卒業だ。
戦車道大会は二年続けて優勝を逃したがその分、多くの課題が見えてきた。」


まほ 「今になってやりたいことや、伝えたいことがたくさん出てきてな。
突然こんな踊りに付き合わされて迷惑だったろうか?」


エリカ 「隊長… そこまで私たちのことを考えていてくださったのですね」ウルッ



エリカ 「卒業式までまだ時間はたっぷりあります!
隊長の中にある新たな戦術改革を叩き込んでください!」


エリカ 「それら全てを第64回大会に持っていきます!
今日のあんこう音頭も、『裏・西住流士気高揚術 あんこう舞踏』として後世に伝えていきます!」


まほ 「何だその名前は… まぁいい、エリカ。少し気が早いが黒森峰の次代を頼んだぞ。」


エリカ 「はいぃッ!」グスッ



小梅 (あんこうスーツでなければ感動のシーンなんだろうけど…。)


小梅 (それと、エリカさんずっと隊長のお尻をガン見していましたよね… とは)


小梅 (言わない方がいいんだろうなぁ。)



~ 翌年 第64回戦車道大会 黒森峰女学院 対 プラウダ高校 会場 ~


ミーン ミーン ミーン…





エリカ 「… … …。」


小梅 「… … …。」



黒森峰女子 「隊長!今日はすっかり快晴、戦車日和ですね!
悪天候でなければプラウダなど恐れるに足らず、です!」


エリカ 「なんで…。」


黒森峰女子 「え?」


エリカ 「なんで雪じゃないのよォォォォォォーーーッ!」


黒森峰女子 「」







この後、無茶苦茶蹂躙した                                 【おしまい】


初SSでした、読んでいただきありがとうございます

冷静に状況を考えると
カチューシャの降伏勧告は本当に温情

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