神谷奈緒「憎めない常務と秋の魅力満喫☆わくわくバスツアー……!?」 (97)



前作
神谷奈緒「夏の常務も憎めない」

ちょっと長いです




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―――――プロダクション・会議室―――――


美城常務「ふむ……全員、集まったようだな。ではこれより会議を始める」

宮本フレデリカ「あ! じょーむ! じょーむ!」

常務「どうした」

フレデリカ「もー、じょーむったらあわてんぼうさんだねー? 今日の会議の予定、いつもなら"9時~10時"なのに、今日は"9時~20時"ってなってたよー?」

速水奏「ああ、私も見たわ」

大槻唯「うっかりさーん♪」

塩見周子「ま、そんなこともあるよねー」

鷺沢文香「字も満足に書けないのですか……?」

橘ありす「1人だけ辛辣すぎじゃないですか!?」


神谷奈緒(おい、気づいてたか……?)コソコソ

北条加蓮(いや……見てなかったかな……)コソコソ

渋谷凛(どうせ1時間って思いこんでるもんね)コソコソ

奈緒(そもそもなんで朝からこんな会議に出なきゃいけないんだ……)コソコソ


フレデリカ「言いたかったのはそれだけ! じゃ、始めよっか!」

常務「キミ達は一体何を言っているんだ……?」

ありす「え?」

常務「今日のタイムスケジュールに変更はない。9時~20時の予定だ」

奈緒「はぁ!?」

唯「ええ!?」

奏「へぇ……」

周子「へぇ……」

フレデリカ「へぇ……」キリッ

ありす「フレデリカさんは"へぇ……"ってキャラじゃないですよね」

文香「ふえぇ……」

加蓮「それはどうリアクションすればいいの」


凛「え? ほ、本当に会議がそんなに長引くの?」

常務「いや、流石にこの部屋に閉じこもるのは10時間が限界だろう。11時間はもたない」

奈緒(基準どこだよ、1時間でもキツイからな)

常務「今日、キミたちにしてもらうのはこれだ」


「常務と秋の魅力満喫☆わくわくバスツアー!」バーン


みんな「!?」


常務「そうだ、これが大人のタイトル回収だ」

ありす「何の話ですか」

周子「でもでも、急にどうしたんー?」

常務「思えば、キミ達には迷惑ばかりかけてきたと思ってな」

フレデリカ「そんなことないよー?」

文香「ええ、いつも楽しませていただいています……」

奈緒・加蓮・凛・ありす「……」

奏「そう思えていない役割も存在する……ということね」

唯「みんなでおでかけ!? ちょー楽しそう!」

奏「ここはお言葉に甘えておきましょう? それで、どこへ行くのかしら? ロンドン?マドリード?メルボルン?テヘラン?バンクーバー?テキサス?」

加蓮「バスって知ってる?」

奏「台北?香港?釜山?群馬?群馬?群馬?群馬?」

奈緒「怖えよ! 群馬の何が奏の琴線に触れたんだよ!?」


常務「というわけで、これからバスツアーに出発する」

凛「こ、これからって……!」

ありす「諦めましょう……、決めたら止まらない人です……」

奈緒「それは上司として0点じゃないのか」

フレデリカ「じゃ、早速いこーよ!」

常務「馬鹿野郎!!!!!」

奈緒「なぜここでキレたんだ!?」

フレデリカ「……」シュン……

加蓮「ほら凹んじゃった!」

フレデリカ「ふっかーつ!」

凛「どんなメンタルしてるの?」

常務「うるさい」

フレデリカ「……」シュン……

奈緒「遊ぶな!!!」


常務「旅の必需品と言えばなんだ? 北条」

加蓮「え? わ、私?」

常務「そうだな、旅のしおりだ」

加蓮「聞く気がないなら質問しないでよ!」

常務「というわけで、今回の旅のためにしおりを作ってきた。目を通してくれ」

ドーン!!!!!!!!!(300ページ)

奈緒「殺せんせーかよ!!!」

常務「伝わりにくい。35点」

奈緒「うわ腹立つ!!!」


常務「まあ、9割が私のポエムだから、その部分は後で読んでおいてくれればいい」

奈緒「絶対に読まないからな」

文香「暖炉にくべる燃えやすいものを探していました……」

ありす「よく本人目の前で言えますね!?」

唯「ちなみに自信作はどれー?」ペラペラ

凛(読むんだ……)

常務「192ページ目の作品は森久保先生に褒められた傑作だ」

奈緒「乃々を巻き込むのはやめてあげろ!」


常務「では、最初のページを開いてくれ」

ありす「……」ペラ……

常務「バスの座席表だ」


~バス~

常 ×
唯 奏
フ 周
橘 文
奈凛加


奏「なるほど……、ツッコミ力の高いメンバーを後ろの見渡せる位置にまとめて、効率を上げる作戦ね」

奈緒「何の効率が上がるんだよ」

常務「ちなみに進行方向は右だ」

奈緒「右ぃ!?!?!?!?」


~イメージ図~

三 常 ×
三 唯 奏
三 フ 周
三 橘 文
三 奈凛加
三 →→→
  ブーン


加蓮「気持ち悪っ!!!」

凛「どんな形のバスなの!?」

奏「それは困るわ」

奈緒「奏は急に冷静になるなよ」


常務「ジョークだ」ハハハ

ありす「的確に怒りのツボを突いてきますね」

フレデリカ「まあまあ! ありすちゃんはフレちゃんの後ろだよ! おしゃべりしようね!」

文香「いえ、ありすちゃんは隣の私と語り合うのです……」

フレデリカ「ふーん……?」

文香「ふふ……」

ありす「ち、ちょっと!」

周子「盛り上がってまいりました!」

ありす「煽らない!!!」

常務「まあ私がその場所なら神谷と話し続けるが」

フレデリカ「……」ギロッ

文香「……」ギロッ

奈緒「何であたしが睨まれなきゃいけないんだ!?」


常務「ちなみに、当初はもう少し大きいバスを借りる予定だった。その時の案がこれだ」



常 ×
唯 奏
フ 周
橘 文
奈 加
代々木


凛「渋谷だよ!!!!!」

常務「原点回帰ということだな」

凛「そもそも"渋谷凛"の3文字でいいじゃん!!!」

奈緒(それ以前に1人で3席ってのは何なんだよ)

加蓮(凛、ずっと横になって寝てるのかな)


常務「さて、ここからはツアーの内容に触れていくことにする」

奈緒「もう好きにしてくれ……」

常務「唐突だが、秋と言えば?」

唯「唯はね! スポーツ!」

フレデリカ「フレちゃんは食欲~!」

文香「やはり読書でしょうか……」

常務「ふむ、悪くない。だが、それだけではないだろう」

ありす「……?」

常務「芸術の 秋」

奏「まあ、よく聞くわね」

常務「棒術の 亜季」

加蓮「いや上手そうだけどね? 今は関係なくない?」

常務「早実の 敵」

奈緒「やっぱり慶応か? 慶応義塾のことなのか?」

常務「前述の カニ」

凛「いつ言ってた? いつカニについて触れてた?」

常務「カルーセル 麻紀」

ありす「もはや個人名ですけど!?」


常務「まあ、そんな感じのツアーとなる」

奈緒「わっかんねぇ……!!!」

常務「何か質問はあるか」

フレデリカ「はーい!」

常務「なんだ」

フレデリカ「バナナはおやつに入りますか!?」

奈緒(それ前も聞いてただろ!?)

常務「良い質問だ」

ありす(久々に出ましたね)

常務「何度も言うが、飲食物の持ち込みは禁止だ」

ありす「初耳中の初耳ですけど!?」

奈緒「拷問かよ!?」


唯「えー! アメちゃんもダメなのー?」

周子「八つ橋もー?」

フレデリカ「サムゲタンも!?」

ありす「たとえOKでも持っていけないでしょうサムゲタン」

常務「その代わり、1回250ジュエルで飲食物ガチャが引ける」

加蓮(単位に既視感!!!)


常務「初回は60ジュエルで引けるぞ」

凛(既視感が増した!!)

常務「10連ガチャでは爽健〇茶が確定だ」

奈緒「普通に買わせてくれよ頼むから!」

常務「さらに今なら! 期間限定SSR"橘ありすの飲みかけアクエリ〇ス"が当たる」

ありす「ちょっと!」

フレ・文香・周子・奏・唯「ガチャガチャガチャガチャ」

ありす「ちょっと!!!」


常務「限定商品はこれだけではない」

加蓮(普通に商品って言うのやめた方が)

常務「なんと"神谷奈緒のつけ眉毛"も当たる」

奈緒「つけまつ毛みたいに言うな!!!」

凛(そもそも飲食物ですらないし)

フレ・文香・周子・奏・唯「……」シーン……

奈緒「これはこれで腹立つな!!!」

ありす「ま、回しましょうか……?」

奈緒「優しさが痛い」


常務「では、説明は以上だ。早速出発しよう」

唯「はーい!」

フレデリカ「いえーい!」

奈緒(行くしかないのか……)

奏(諦めなさい……)

奈緒(普通に思考に入ってくるな!)

常務「……」

加蓮「?」

常務「……」

凛「……?」

常務「……よし、OKだ」

奈緒「編集点作ったか今!? これ撮ってるのか!?」キョロキョロ


~駐車場~


常務「えー……、こほん」

常務「ニューヨークへ行きたいか?」

加蓮「そういうウルトラなバスツアーじゃないでしょ」

常務「早速、このバスに乗って……と、言いたいところだが……」

唯「?」

フレデリカ「どーしたの?」

常務「いや、最近は物騒な事件が多いからな、この金属探知機のゲートを通ってもらいたい」バーン

奈緒「うわ! 空港とかでよく見るやつだ!」

ありす「そんなに信頼度ないんですか私たち」

常務「まあ、安全のためだ。従ってくれ……、死にたくないならな!!!」クワッ

凛「怖っ」


常務「ではまず大槻、通ってくれ」

唯「はーい!」トコトコ


ぴぃぃ~~~~にゃぁぁぁ~~~~~


常務「む、警報音が鳴ったな」

奈緒「警報音キモっ!」


常務「大槻はそのブレスレットだな、それ以外は平気そうだから、乗ってくれ」

唯「おっけー!」トコトコ

ありす「なんで音に関してはスルーなんですか」

常務「次、塩見」

周子「へーい」トコトコ


ぴぃぃ~~~~にゃぁぁぁ~~~~~


周子「ありゃ、鳴っちゃった」

常務「アクセサリーはつけていないようだが……」

奏「何かポケットに入ってたりするの?」

周子「あー、これかな?」ガサゴソ

ありす「?」

周子「あずきバー」

凛「確かに硬いけど!!!」


常務「何、あずきバー!? これは立派な凶器だ、没収とする」

周子「え~!?」

ありす「いや、常務、さすがにそれは……」

常務「橘が言うなら仕方ないな、むやみに人を傷つけるなよ」

周子「わーい、ありすちゃん、ありがとねー」トコトコ

ありす「え? え???」

奈緒「もうついて行けてないもんな」

加蓮「誰があんなやり取りについて行けるのって話だけどね」


奏「次は私かしら?」

常務「ああ、通ってくれ」

奏「恐らく平気だと思うけれど」トコトコ


ぴにゃ! ぴにゃ! ぴにゃ!


凛(さっきと違くない?)

奈緒(何種類ボイス録ったんだよ)

常務「おめでとう、3人目のお客様だ」

加蓮「その音だったの!?」

ありす「というか記念の刻みが小さすぎるのでは!?」

奏「イヨッシャ!!!!」

奈緒「お前誰だ!?」

常務「記念にこれをあげよう」

奏「あら、何かしら」

常務「あずきバーだ」

奈緒「あずきバーはもういいよ!!!」


~一方その頃・車内~


周子「やっほー」トコトコ

唯「おー! しゅーこちゃん! ……あれ? アイス?」

周子「そー、せっかく出したから食べようかと思ったんだけど、これが硬くってさ」ペロペロ

唯「へー! 美味しそー!」

周子「1口食べる?」

唯「え!? いいの!?」

周子「ま、1口食べれるものなら、だけど」

唯「ありがとー!」ガリガリガリガリ!!!!!

周子「Oh……」


~車外~


常務「次だ、宮本」

フレデリカ「あいあいさー!」トコトコ


ぴぃぃ~~~~にゃぁぁぁ~~~~~


常務「む」

フレデリカ「あー、鳴っちゃったかー! フレちゃんの髪の毛が金色だからかなー??? それともキラキラしたこの瞳のせいかなー??? なんでかなー!!!」

常務「誤作動のようだな、乗っていいぞ」

フレデリカ「……あ、はい」トボトボ……

加蓮「仲悪いの?」


常務「鷺沢」

文香「はい……」トコトコ


ぴぃぃ~~~~にゃぁぁぁ~~~~~


奈緒「もう鳴るのが普通に思えてきたな」

常務「見た感じではアクセサリー系ではないようだ」

文香「陰キャラですから……」

ありす「なんて返せばいいんですか」

凛「そのカバンじゃないの?」

常務「ふむ、中身は?」

文香「おかしなものは何も……。せいぜいネオジオポケットとセガサターンとワンダースワンとドリームキャストしか」

奈緒「なぜそのチョイスに!?」

文香「皆で楽しめればと……」

ありす「全部初めて見ましたよ……」

常務「今どきこんなもので喜ぶのは安部菜々くらいのものだ」

凛「個人名を出す必要はあった!?」


常務「では橘、通ってくれ」

ありす「はいはい……」トコトコ


ぴぃぃ~~~~にゃぁぁぁ~~~~~


ありす「あ、あれ? 心当たりがないんですが……」

加蓮「荷物も軽めだし……」

常務「いや、確かに反応している」

ありす「え? な、なににですか?」

常務「キミのその、どんな時にも挫けず、諦めない、""鋼""の意志に……な」ドヤァ……

ありす「大丈夫なら乗りますね」トコトコ

凛「あ、そこ段差あるから気をつけてね」

ありす「ありがとうございます」トコトコ

奈緒「すぐ乗るから待っててな」

ありす「はい」トコトコ

常務「次、渋谷」

加蓮「よっぽど鋼メンタルでしょ」


凛「……」トコトコ


シーン……


凛「よかった……」

常務「面白味の欠片もない(問題ないな、乗ってくれ)」

凛「隠せ!!!」


常務「北条」

加蓮「はいはい」トコトコ


シーン……


加蓮「セーフでしょ?」

常務「その髪はチョココロネではなかったのか」

加蓮「仮にそうでもチョココロネは金属探知機には引っかからないから」トコトコ


常務「さて……」

奈緒「……」

常務「今の気持ちは?」

奈緒「"早くしてくれ"一択だよ!」

常務「ふ……、そこまで楽しみにしてくれていたとは」

奈緒「うるさいな! 通るぞ!」トコトコ


ぴぃぃ~~~~にゃぁぁぁ~~~~~


奈緒「うわ鳴った!」

常務「さて……」

奈緒「わかってるんだよ! どうせ"その眉毛が……"とか言うんだろ!?」

常務「いや、また故障だな、乗って構わない」

奈緒「……」

常務「どうした? 先に乗るぞ」テクテク

奈緒「なんなんだよもー!!!!!」バンバン


~一方その頃・車内~


凛「奈緒、遅いな……」

奏「またなにか、いじられてるのかしら?」

周子「奏ちゃんは冷静だよねー」

奏「あら、そんなことないわ。そうあろうと努めてるだけ……」

奏「そう、このあずきバーのように、冷たくあろうと努めて……」

奏「……硬っ! えっ、このあずきバー……えっ硬い……なにこれ、え、ちょっと、なにこれ硬い……硬い!!!」

周子「前言撤回かなー」


~~~~~


常務「さて、全員乗ったようだな、これからの予定だが、まずは昼食だ」

奈緒「ここまでに時間かけすぎて、もういい時間だもんな」

加蓮「無駄なやり取りが多すぎるのよ」

常務「私の行きつけの料亭に向かう。秋の味覚を堪能しよう」

フレデリカ「おー!」

ありす「それは楽しみですね」

常務「大丈夫だ、味は私が保証しよう」

加蓮「その発言で一抹の不安が芽生えたけどね」


常務「その後、果物狩りや紅葉狩りも予定している。楽しみにしてくれ」

凛(わりとプランはまとも……)

唯「あ! じょーむ!」

常務「……」

唯「あれ? おーい! じょーむ!」

常務「常務ではない……」

奈緒(え?)

常務「バスガイドの美城だ」ドヤァ

ありす「めんどくさっ!」

常務「(ガイドが)有能すぎるのも困りものだな……」

奈緒「とうとうただの自画自賛じゃねーか!!!」

文香「〇スガイド……」

加蓮「何でそこ伏せたの」


~移動開始~


バスガイド常務「アテンションプリーズ!!!」

奈緒「バスガイド知らないだろ!?」

常務「まず、シートベルトは忘れずにつけてくれ……、死にたくないならな!!!」クワッ

凛「ちょくちょく脅すのは何?」

常務「さて、右を見てくれ」

周子「?」サッ

常務「川だ」

加蓮(下手か!)

常務「左を見てくれ」

唯「?」サッ

常務「山だ」

凛(学んでよ!)

常務「前を見てくれ」

ありす「今度はなんですか……」

常務「私だ」ドヤァ……

奈緒「やめちまえ!!!!!」


常務「しばらくは移動時間となる。各々、楽しい時間を過ごしてくれ」

奈緒(ようやく休める……)

フレデリカ「しりとりー!!!!!」

文香「理論」

加蓮「始まったと思ったら終わった!!!」

フレデリカ「……」シュン……

奈緒「厄日かよ」

ありす「ふ、フレデリカさん、アメなめますか……?」

フレデリカ「!」パァァァァ

フレデリカ「ありがと!!!」

文香「……」グヌヌ

凛「いや、もとはといえば原因は文香だから」


常務「北条の体調は大丈夫か? 調子が悪くなったら言ってくれ」

加蓮「ありがたいけど平気かな」

常務「頭痛、酔い、腹痛、生理、発熱、なんでも言ってくれ。薬は裏ルートで用意してある」

加蓮「表ルートで手に入れてよ!」

奈緒「薬とか一番裏通しちゃダメなやつだろ!」

常務「それでも辛い時は……」パチン

フレデリカ「はーい! ドクターフレデリカの参上だよ!」

文香「惨状の間違いでは……?」

周子「前科何犯?」

奏「自首するなら付き合うわ」

ありす「ツッコミが辛辣すぎませんか!?」

フレデリカ「はーい! 服役囚フレデリカだよ……」

奈緒「ジョブチェンジが劇的だな!?」


~しばらく経って~


常務「そろそろ目的地が近づいてきたようだ」

奈緒「ようやくか……」

常務「皆、窓の外を見てほしい」

ありす「!」

加蓮「わぁ……」

凛「綺麗な紅葉……」

周子「この赤と黄色、京都を思い出すねぇ」ウンウン

奏「都心から少し走っただけでも、こんなにキレイな紅葉が見れるのね」

常務「これから昼食だ、期待してくれ」

常務「……」

加蓮「?」

常務「……」

凛「……?」

常務「……よし、OKだ」

奈緒「また編集点!? やっぱりこれ撮ってるのか!?」キョロキョロ


~料亭~


常務「皆、席には着いたな」

唯・フレ「はーい!」

常務「ここは、天ぷらが非常に美味だ。"山菜と川魚の天ぷら御膳"がおすすめのようだな」

唯「じゃあ唯はそれで!」

フレデリカ「フレちゃんも!」

奏「私もそれにしておくわ」

周子「あたしもー」

ありす「私もそれでいいです」

凛「私もそれにしておこうかな。奈緒と加蓮もいいよね?」

奈緒「ああ」

加蓮「うん」

文香「カレーライスで」

奈緒「空気読め!!!」

ありす「フレデリカさんですら空気読んでたのに!」

フレデリカ(ですらー?)


~全員同じやつにしました~


常務「出来上がったようだな」

唯「もーお腹ペコペコだよー!」

ありす(わ……、美味しそう……)キラキラ

凛(ありすがかわいい……)

奏「じゃあ、いただこうかしら」

常務「待て」

奈緒「?」

常務「ただ食べるだけではつまらないだろう」

加蓮(いや、面白さ求めてないし)

常務「そこでキミ達には、食レポをしてもらいたい」

ありす「ええ……!?」

常務「ちょうど9品目ある。私が食べるモノと人を指定するから、何か感想を言ってくれ」

凛(め、めんどくさい……)

常務「くれぐれも『おー↓いー↑しー↑いぃぃー!!!↑↑↑』のような感想にならないように」

ありす(常務が言うとなかなかキツイというか)

文香「ご乱心ですか」

ありす「たまには我慢しません?」


常務「ではまず、ヤマメの天ぷらを、宮本」

フレデリカ「はいはーい!」

フレデリカ「……」モグモグ

フレデリカ「!」

フレデリカ「素晴らしいですね。サクサクの衣はもちろんですが、それによってヤマメの身の柔らかさが引き立っている。"素材の味を活かす"という文言は、ともすれば単に淡白な味を指すことになりかねませんが、コレは明確に違う。恐らく、衣をつける前に塩を揉みこんで下味をつけているのでしょう。さらに衣からも柑橘系の香り……。ヤマメを活かすために、最大限の技術を集めている。感服いたしました」


りんなおかれんありす「!?!?!?」


常務「悪くないな」

奈緒「あれでその評価!?」

加蓮「ハードルどうなってるの!?」

凛(ちょっと見直したけど)

常務「次、タラの芽の天ぷらを、橘」

ありす「え、ええ!?」

常務「頼んだ」

ありす「ええ……、し、食レポ……」

奏「大丈夫よ、食べて、感じた、そのままを言えばいいの」

唯「うんうん! なんでもいいんだよ!」

周子「がんばー」

奈緒「が、頑張れ!」

凛(この集まり、基本的にありすに優しいよね)


ありす「……」ドキドキ

ありす「……」モグ……

みんな「……」ドキドキ

ありす「!」

ありす「お、おいしい……!」パァァァァ

ありす「あ、あの、山菜なのにジューシーというか、しっかりと噛みごたえがあって」

ありす「少し苦みもあるんですけど、風味が口いっぱいに広がって……!」

ありす「えっと、えっと、と、とっても美味しいですっ!」

ありす「ど、どうでしょうか……」


へんじがない ただのしかばねのようだ(死因 ありす かわいい)


ありす「みなさん!?!?!?」


常務「死ぬかと思ったな」

加蓮「今回は同意」

凛「わかる」

奈緒「な」

周子「わかるけど、トラプリが語彙を失ったらマズいから帰ってきて?」

奏「会話が回らなくなるわ」

奈緒「そっちで回せよ」

奏「まって奈緒、怖い」

常務「では次、ゼンマイの天ぷらを、塩見」

周子「へーい」モグモグ

周子「おー、確かに、山菜のわりにしっかりしてるね」

周子「京都の天ぷらにも負けないんじゃないかな? 衣を薄めにして、"食べている"感を強めてるのもいい感じ」

周子「きっと、お酒があれば飲みたいような味かもね。かるーく塩を付けた方が、アタシ、"塩"見シューコちゃん的にはおすすめかな」ウィンク

奈緒「おお……」

凛「流石、そつなくこなすね……」

加蓮(私たちとありす以外で一番まともなの、案外周子なのかも)

奏(私じゃなくて!?)

加蓮(そういうとこだからね)


常務「次はマイタケの天ぷらだな、大槻」

唯「はい!」モグモグ

唯「わ! 美味しい!」

唯「最初はサックサクで! でもキノコはちゃんとキノコー! って感じでいい感じ!」

唯「しょーこちゃんにも食べさせてあげたい! ちょーおいしいよ!」

凛(唯らしいね)

奈緒(伝わればそれが1番だもんな)

唯「ひゃっはー!」

ありす「それいります?」


常務「メイン食材はここまでだな、次、渋谷には茶碗蒸しを食べてもらう」

凛「茶碗蒸し……」モグ

凛「出汁が利いてておいしい……。タケノコとか銀杏も秋の味覚って感じでいいね。わりと食べごたえもあるし、美味しいよ」

常務「普通だな」

凛「いいでしょ!?」

常務「鷺沢、味噌汁」

文香「うまい」ズズッ

常務「なるほど」

凛「レポでもなんでもないじゃん!!!」


常務「速水、漬物を食べてくれ」

奏「ええ、わかったわ」

奏「……」モグ

奏「あら、思ったより味が強くくるわね。ご飯が進みそう」ポリポリポリポリポリポリポリポリ

ありす(やかましいですね)

奏「漬物といえども、立派な料理だということを思い出させてくれる……」ポリポリポリポリポリポリポリポリ

凛(こんなにポリポリ音が似合わないのは奏くらいかも)

奏「素晴らしいポリポリポリポリ腕前ね!ポリポリポリポリ」ポリポリポリポリ

奈緒「うるせぇ!!!!!」


常務「炊き込みご飯を北条」

加蓮「はいはい……」モグモグ

加蓮「ん、ご飯にちゃんと味が乗ってるね、これだけでも十分進みそう」

加蓮「タケノコ、ニンジン、鶏肉もしっかり印象に残るし、彩りもきれい……」

加蓮「うん、美味しい」

加蓮「……病院の時のご飯と比べたら、本当に……」

加蓮「こうやって、みんなで一緒にっていう雰囲気も、ね」

加蓮「って、しんみりさせちゃったかな? ごめんごめん」


みんな「……」グスッ


加蓮「ええ!? そ、そんなに!?」

奈緒「がれえぇぇぇん!!!!」ワー

加蓮「ち、ちょっと! 奈緒!」

常務「目にゴミが入っただけだ」ツー……

奏「誰も……聞いてないわよ……」


~数分後~


常務「すまない、取り乱してしまったな」

唯「だいじょぶだいじょぶ!」

ありす「今回は、しょうがないと思います」

加蓮「ごめんって」

常務「最後は神谷だな」

奈緒「あー、忘れてた……あれ? もう一通り全部食べたんじゃないのか?」

常務「水だ」

奈緒「水ぅ!?」


常務「ああ、飲んでくれ」

奈緒「はぁ!?」

常務「さあ」

奈緒「わ、わかったよ!」ゴクゴク

常務「どうだ」

奈緒「水だよ!!!!!」

常務「以上、プロジェクト食おーね・食レポのコーナーでした」

凛「そのタイトル初耳なんだけど!?」

奈緒「あたしをオチに使うな!!!!!」


~食後~


常務「さて、素晴らしい食事だったな」

フレデリカ「美味しかったー!」

ありす「まあ、料理は素晴らしかったですね」

奈緒(あたしも食レポしたかった……)

唯「次は何をするのー?」

常務「ああ、この料亭は果樹園に隣接していて、普段は食後のデザートにその果物が出される」

周子「おおー」

常務「だが今回は、果物狩りを兼ねて、自分でデザートを獲ってもらう」

凛「ふうん、楽しそうだね」

奏「どんな果物が獲れるのかしら?」

常務「バナナ、パパイヤ、マンゴー、パイナップル」

奈緒「亜熱帯かよ!?」

ありす「この緯度で!?」


常務「もちろん冗談で、ブドウ、リンゴ、ナシ、モモの4エリアに分かれている」

文香「馬鹿みたいに大きいのですね……」

ありす「一言余計なんですよね」

常務「各地に水道や机があり、その場で食べることもできる。もちろん、みんなで持ち寄って1か所で食べるのも良いだろう」

常務「制限時間は私が飽きるまでだ」

奈緒「わかんねぇよ!!!」

常務「では……、散!!!」

ありす「始まり方が無駄にかっこいい」


奈緒「……だってさ、どうする?」

加蓮「まあ、せっかくだから色々なの食べたいよね」

凛「じゃあ、分かれて、後で持ち寄ろうか」

加蓮「そうしよっか」

奈緒「そうだな」

凛「じゃあ、2年後に!」

奈緒「遠いよ」

加蓮「シャボンディ諸島で!」

奈緒「どこだよ」


~リンゴエリア~


ありす(さて、とりあえずはリンゴでも……)

ありす(イチゴがないのは残念ですが、シーズンもズレてますしね……)

ありす(あ、あのリンゴ、美味しそう……)

ありす「えいっ」ピョン スカッ

ありす「あ、あれ? と、届かない……」

ありす「えいっ! えいっ!」ピョンピョン

ありす「……諦めましょう」シュン……

フレデリカ「あ~りすちゃ~ん!」

ありす「げ、……何しに来たんですか」

フレデリカ「ふふふ……、あのリンゴが欲しいのかな? 取ってしんぜよー!」

文香「いえ、私にお任せを、ありすちゃん」

ありす「ふ、文香さん!?」

フレデリカ「わ! 出たな! 鷺沢!」

文香「宮本は引っ込んでいたらどうですか?」

ありす「苗字で呼ぶ距離感でしたっけ!?」


フレデリカ「あのリンゴだよね!?」

ありす「そ。そうですけど」

文香「私でも手が届きそうです……」バッ

フレデリカ「フレちゃんが取るんだよー!」バッ

ピトッ……

フレデリカ「あっ……」
文香「あっ……」

フレデリカ「……///」

文香「……///」

フレデリカ「フミカ……ちゃん……///」

文香「フレデリカ……さん……///」

ありす「なんでそこでフラグが立つんですか!?!?!?」


フレデリカ「仲良くが一番だよねー」シャクシャク

文香「仰る通りです……」シャクシャク

ありす「ええ……」

フレデリカ「はい、あーん」

ありす「え、ええ!?」

フレデリカ「ほらほら~!」

ありす「あ、あーん……」パクッ

ありす「///」シャクシャク

文香「……」

文香「……」

文香「……」

ありす「ちょ、文香さん! 無言でリンゴを近づけないで!」



~ブドウエリア~


凛(さて、適当に取って、合流しなきゃね)

凛「どれがいいかな……」

唯「あれとかおっきくって美味しそうだよ!」

凛「あ、ホントだ……。って、唯!?」

唯「はろはろ~!」

凛「えっと、唯もブドウ?」

唯「ううん! 適当に歩いてたらここについちゃった!」

凛「ふふ……、唯らしいね」

唯「……」

凛「……? どうかした?」

唯「凛ちゃん、疲れてない?」

凛「えっ……?」

唯「っていうか、トラプリ3人! いっつも大きな声出してるから……」

凛「あー、……大丈夫だよ、ちょっと大変だけど、ちゃんと楽しいからさ」

唯「そっか! ならよかった! あ! アメちゃんあげるよ! 他の2人にもあげといて!」ハイ

凛「ん、悪いね……、何味?」

唯「ジンギスカン!」

凛「ごめんいらない」


唯「それにしても、じょーむって面白いよねー!」モグモグ

凛(ブドウ、もう食べてる……)

唯「はい! 凛ちゃんもどーぞ!」

凛「あ、ありがと……」モグモグ

凛(おいしい……)

唯「何の話だっけ?」

凛「常務でしょ?」

唯「そうそう!」モグモグ

凛「いや、そりゃ端からみれば愉快極まりないけどさ、実際に関わるとなると……」

唯「凛ちゃんも、将来はあんな感じのくーるびゅーてぃーになるのかな?」

凛「冗談じゃない!!!!!」

唯「わ! ビックリした!!!」


唯「って、あ!!!」

凛「ど、どうしたの?」

唯「ビックリしてブドウのタネ、飲んじゃった!」

凛「え? ああ、ごめんごめん」

唯「ブドウになっちゃう!!!」

凛「ならないよ!?」

唯「ならないの!?」

凛「そんなに驚くかな!?」

唯「じゃあガムを飲んでもガムにならないの!?」

凛「タネですらないじゃん! ガムになるって何!?」

唯「え!? ガム知らないの!?」

凛「ガムは知ってるよ!!!」

唯「え!? ベム知らないの!?」

凛「妖怪人間は関係ないでしょ!?」

唯「ベムに謝ってよ!!!」プンプン

凛「唯の怒りのツボはどこなの!?!?」



~ナシエリア~


加蓮(さて、ナシだけど……)

加蓮(ま、どれを取っても一緒でしょ)

加蓮「目についたやつを取ろっと」

周子「と、思うじゃん?」ニュッ

加蓮「うわ! お、脅かさないでよ……」

周子「あ! 平気!? 心臓動いてる!?」

加蓮「そこまで弱くないし!」

周子「よかったー、この歳で人殺しはちょっとアウトだよね」

加蓮「人殺しはどの歳でもアウトだからね」


周子「加蓮ちゃん、美味しいナシの見分け方、教えてほしい?」

加蓮「え、そんなのあるの?」

周子「ないけど?」

加蓮「……」イラッ

周子「あ! 平気!? 血圧上がりすぎてない!?」

加蓮「その心配するふりして煽るのやめてよ!」

周子「フンフンフフーン」

加蓮「味方の持ちネタパクってるし」

周子「シオデリカ~」

加蓮「その場合塩見シオデリカだけどいいの? 塩分2倍よ?」

周子「うわめっちゃ面白い!」

加蓮「うるさいな!」


周子「さて、本題に入ろっか」

加蓮「え……?(き、急に真剣な表情に……)」

周子「ここどこ?」

加蓮「迷子だったの!?」

周子「あずきバーで加蓮ちゃんに殴られたとこまでは覚えてるんだけど」

加蓮「捏造しないでくれる!?」

周子「あんまり大きな声を出さない方がいいよ?」

加蓮「誰のせいだと思ってるの!」

周子「あたしのせいだと思う。ごめんなさい」

加蓮「反省早っ」

周子「常務のことは嫌いになっても、シューコちゃんのCDは買ってね☆」

加蓮「身勝手極まりない!!!」

周子「でも、調子悪くなったら言わなきゃダメだよ?」

加蓮(……掴めないなあ)



~モモエリア~


奈緒「いよっし! 取るぞ!」

奈緒「どういうのがいいとかはわからないけど、とりあえず大きいやつを……」

奏「……あら? ようこそ、このモモエリアに人が訪れるのは何年ぶりかしら」

奈緒「うわあ、めんどくさそうなのに絡まれた……」

奏「そんなこと言われると傷つくわ……。私だってたまには自由に振る舞ってみたいのよ」

奈緒「たまには?」

奏「あのメンバーに囲まれていると、どうしても個性が消えてしまいがちになるのよね」

奈緒「むしろどこにいる時よりも奏は輝いて見えるけどな?」

奏「あら、そんなに褒められると照れるわ」

奈緒「皮肉だよ」


奏「モモと言えば、こんな逸話を知ってる?」

奈緒「逸話?」

奏「ええ、哀しき魔女の話……」

奈緒「知らないけど……、有名なのか?」

奏「これは、遥か昔の、遠い国のお話なの」

奈緒「あ、始まるんだ」

奏「ある国の、それはそれは美しい女性が、モモを育てていたの」

奏「でも、戦火によって、自慢のモモ園は壊滅状態……」

奏「自らも傷を負い、最後に残ったモモの木の下で、最後のモモを食べたの」

奏「そう、こんな風にね」カプリ

奏「すると……」

奈緒「す、すると……?」

奏「なんと、その女性が……え、まって、美味しっ! このモモ、美味しい……」モグモグ

奏「えっ、ちょっとまって、なにこれ、美味し……えっ」モグモグ

奏「これやば……、美味し……、え、すご……、美味しい!!!」モグモグ

奏「ちょっと! 奈緒も食べてみて!」

奈緒「逸話は!?!?!?」


奏「逸話? ああ、なんやかんやで、なんかこの世を支配するだけよ」

奈緒「そこを話せよ!!! 気になるじゃんか!!!」

奏「そんなことよりモモよ」

奈緒「話し始めたのは奏だろ!?」

奏「はいはい、どうぞどうぞ」

奈緒「自由かよ……」モグ……

奈緒「……うわ! 美味いな!?」

奏「ね?」ドヤァ

奈緒「そのドヤ顔は誰の目線に立てば出てくるんだ!?」


~果物狩り終了・バス車内~


常務「皆、果物狩りは楽しめたか?」モグモグ

奈緒「なんでリンゴ食いながら話してるんだよ」

フレデリカ「楽しかったー!」

唯「うんうん!」

文香「常務がいなかったからですね……」

ありす「敵意が明確すぎる」


常務「では、みんなお馴染み、バスガイドの美城に戻らせてもらおう」

奈緒(誰も求めてないけどな)

凛(さっきの一回で"お馴染み"にカテゴライズするの傲慢すぎるでしょ)

常務「さて……」コホン

常務「ハイテンションプリーズ!!!」

加蓮「とうとうCAだとしても間違ってるし!!!」

フレ・文香・周子・奏・唯「Foooo!!!!!!」

ありす「対応能力おかしくないですか!?」

常務「移動中のバス内といえば何だ? 北条」

加蓮「え、また私!? えっと……」

常務「そうだ、カラオケだな」

加蓮「もう怒る気力もないんだけど」


常務「しかしこのリンゴ、鮮やかな赤い色をしている……、紅葉もだが、秋のイメージカラーが赤になるわけだな」

奏「そうね、赤は人の目を惹きつける色……」

周子「うんうん、例えば妖艶なルージュで紅に染まった唇」

フレデリカ「最初に目に入ってしまえば、その唇に心を奪われるのは仕方ないかもね~?」

奏・周子・フレ「そう、唇に」


~~~♪


ありす「え? え???」

奈緒「こ、このイントロは……」


周子・フレ『聴いてください、Tulip』

奏『忘れてきて あげたのよ 自分の傘は~♪』


凛「いつ打ち合わせとかしてるの!?」

文香「ハイハイハイハイ!!!」

加蓮「なんか厄介な人いるし!」


~Tulip終了~

奏「ありがとう」


ありす「……いや、歌は凄かったですけど」

奈緒「本来なら、生歌をバスで聴けるってホントに凄いことなのにな」


~~~♪

凛「うわ!」

加蓮「間髪入れずに次にいくの!?」

ありす「というか、このイントロは……」


唯『ねえ 今 見つめているよ 離れていても』


奈緒「!?」


フレ『もう涙をぬぐって笑って』


周子『一人じゃないどんな時だって』


奏『夢見ることは生きること』


文香『悲しみを越える力』


フレデリカ(ありすちゃん!)コソコソ

ありす(えっ!? え!?)


~~~♪

ジャ ジャ ジャン!!!!!!


みんな「……」ジー……

ありす(ええ……、し、しょうがないですね……)


ありす『歩こう~♪ 果てない道~♪』


常務「やった!!!」グッ


奈緒「それが言いたいだけだろ!!!!!」


~~~~~


常務「そうこうしている間に、次の目的地が近づいてきたな」

常務「喉も温まったようで何よりだ」

加蓮(ライブするわけじゃないんだから喉とかどうでもいいでしょ)

奈緒(ってかあたしたちは最初から叫びっぱなしだし)

奏「次は何をするのかしら?」

周子「さっき"自然公園"って見えたけど」

常務「ああ、この自然公園で紅葉狩りだ」

凛「へぇ……」

フレデリカ「もみじがりって何をするの? 狩っちゃうの?」

文香「いえ、果物狩りや、動物を狩るのとは違い、この"狩り"は草花を眺める際に使われる言葉です」

フレデリカ「ふむふむ!」

常務「つまり、赤い葉っぱを見て『赤いなー』というだけのイベントだ」

奈緒「楽しさが微塵も伝わらない紹介だな!?」

常務「毒にも薬にもならない」

ありす「なんで追い打ちをかけたんですか?」


~自然公園~


みんな「おぉ~!!!!」

常務「素晴らしい景色だ……、やはり、紅葉狩りをせずに秋は越えられないな」

奈緒「さっき何て言ってた???」

唯「小梅ちゃんなら『真っ赤な血の海が~』とか言うのかなっ?」

奏「ふふ……、そうかもね」

文香「茜さんなら、『燃えてますねー!』なんて仰るかもしれませんね……」

周子「わかるー」

フレデリカ「と、巴ちゃんならカープの応援を始めそうだね!」

ありす「いい例えが浮かばないなら黙ってましょうよ」

加蓮「ここで叫び始めたら即刻つまみ出されるでしょ」

常務「ここで酒飲み始めたら即刻つまみが出てくる!?」

加蓮「出てこない!」

凛「別に酒飲みキャラじゃないでしょ!?」


文香「やはり、日本の四季をこうして目にする度に、この国の良さを反芻することができますね……」

ありす「まあ、それは同意ですね」

奏「あら、そういえば、フランスにも紅葉ってあるの?」

フレデリカ「あるある~、おそらくね~」

唯「なにそれ~?」

奈緒「また適当なことを言って……」

フレデリカ「適当じゃないよ~! フランス国旗の赤は紅葉の赤だもん!」

凛「その発言を適当って言うんだってば!」


唯「じゃあフランスの白は?」

フレデリカ「ほかほかご飯!」

加蓮(茜?)

周子「青は?」

フレデリカ「サバ!」

奈緒「サバ!?」

ありす「全部デタラメじゃないですか!」

フレデリカ「デタラメなんてひどいよー! それを裏付ける俳句だって残ってるんだから!」

奈緒「なんでフランスに俳句が残ってるんだよ!?」

文香「ちなみになんという句ですか……?」

フレデリカ「えっとね! 『目には紅葉 山盛りご飯と 青いサバ』だよ!」

奈緒「なんか聞いたことあるぞ!?」

ありす(……元の句を知ったうえで、この会話のためにアレンジしたなら、割と凄い気が)



※元の句→『目には青葉 山ほととぎす 初鰹』



常務「では、少し歩こうか……話をしながらな」ニヤリ

奈緒(……?)

ありす(イヤな予感が……)

常務「北条、今、何時だ? そうだ、15時を過ぎたあたりだな」

加蓮「とうとう返事すらさせてもらえないの!?」

常務「さて、夕食の話になる」

奏「……少し早いんじゃないかしら?」

常務「いや、このタイミングで話すしかなくてな」

唯「?」

常務「む、見えてきたようだ、この公園は、様々な競技ができる多目的運動場がある」

凛「……夕飯の話は?」


常務「まあ、そう急ぐな」

フレデリカ「けっこーおっきいね?」

常務「ああ、そして、運動目的だけでなく、ライブなどの設備も整っているらしい」

奈緒「……」

ありす「えっ……」

周子「まさか?」

常務「ところで」


常務「先ほどのカラオケで喉は温まっているな?」


凛「……えっ」



~控室~


奈緒「いやいやいやいや!!!!!」

加蓮「なんでこんなことに……」

ありす「聞いてませんよ……」

奏「周子、この曲の後の動き、こっちから捌けた方が次に行きやすいわ」

周子「はいはーい」

唯「フレちゃん! 髪留めズレてるよ~!」ヨイショ

フレデリカ「わお! さんきゅー!」

文香「ここのMCではあちらのカメラが……」

凛「だからその適応力はなんなの!?」


ガチャ

常務「皆、衣装に着替えたようだな。準備は万端か?」

ありす「メンタル以外は」

常務「既に3万もの客が詰めかけている」

奈緒「逆にあたしたちに知らせずによく集めたな!?」

唯「ってかじょーむ! 晩ごはんの話じゃなかったっけ???」

凛「そういえば……」

常務「もちろん、その話をするために来た」

ありす「ら、ライブと関係あるんですか?」

常務「今回のライブの後、客にはアンケートを答えてもらう。そこで、ライブの満足度が夕飯の献立に直結するシステムだ」

奈緒「はあ!?」

奏「よく考えるわね……」

常務「力を合わせて、客の満足と豪華なご飯を手に入れてくれ」

ありす「ええ……」

常務「まずはトリャイアドピュリミュスからだ」

奈緒「結局まだ言えないのかよ!?」

常務「開始時刻は2分後だな」

ありす「ええ!? そ、そんな急になんて」


凛・奈緒・加蓮「……」プチーン


ありす「……え?」

凛「いいよ……やってやろうじゃん……」ゴゴゴゴ

奈緒「ああ……やるしかないな……」ゴゴゴゴ

加蓮「目にもの見せてやる……」ゴゴゴゴ


ウオォォォォォ!!!!!!!!!!
ダダダダダッ


ありす「」


文香「今度、かかりつけのカウンセラーを紹介しましょうか……」

周子「3人いないしありすちゃんはポカーンとしてるから代わりに言うけど、なんでかかりつけのカウンセラーがいるん?」


~ステージ上・Trancing Pulse 終了~


凛(はぁ……はぁ……)

奈緒(やって……やったぞ……)

加蓮(疲れた……)

凛(確か、この後は暗転して袖に捌けるんだよね)


(暗転)


奈緒(よし、退散……)ササッ

加蓮(……!?)



最初に違和感に気づいたのは加蓮だった。
確かこの次は、メインステージでLippsの3人がパフォーマンスをするはずだ。
しかし、舞台袖へ捌ける直前、ふと最後尾の加蓮が振り向いた時、スポットライトは……

センターステージに降り注いでいた。


当然ながら、加蓮の頭には「スタッフのミスかな」という思いが浮かぶ。
しかし、スタッフに慌てる様子はない。むしろ、笑みを浮かべる者さえいた。

控室に戻ろうとする2人を呼び止め、会場の様子を伺う。

光の降り注ぐセンターステージ。その場所に、いつの間にか、1人。


銀の短髪にライトを反射させながら。


『見上げた夜空 涙とけた雫……』


凛「え……?」

奈緒「そ、そんな……、バカな……」

加蓮「ウソ……でしょ……!?」



凛・奈緒・加蓮「アーニャ!?!?!?」



~控室~

ダダダダダ
ガチャ

奈緒「お、おい!!! なんだよあれ!?」

加蓮「心臓止まるかと思ったんだけど!?」

凛「サプライズはいいけどこっちは教えてよ!!!」

ありす「いえ……、それが……」

奈緒「え?」

常務「アナスタシア……!? なぜ……!?」

凛「把握してなかったの!?!?!?」


奏「出番だったから用意しようと思ったら、スタッフさんに静止されてね」

周子「しょうがなく待ってたらこれなんだよね」

奈緒「アーニャは何者なんだよ!?」

加蓮「あ、アーニャの歌、終わったみたい……」

常務「よし、次に歌うLippsはもちろん、全員で裏まで行こうか……」

ありす「そ、それがいいですね……」

ガチャ

スタッフ「アナスタシアさん、帰られましたー!」

みんな「もう!?!?!?!?」



~ライブ終了~


ありす「……疲れました」

加蓮「死ぬ……」

奈緒「かれーん……、いや、あたしもキツイ……」

唯「つーかーれーたー!」

奏「16時に始まって、今が19時を過ぎたとこだから、9人で3時間超ね……」

文香「ラブ〇イブの方々はいつもこんなに大変な思いを……」

凛「ごめん……、ツッコミを入れる元気もない……」


常務「皆、ご苦労だった」

文香「あ、諸悪の根源さん……」

ありす「ここにきて文香さんのエンジンがかかってきてますね……」

常務「今回の会議はどうだった?」

奈緒「これを会議と言い張るのか……!?」

常務「おまちかね、アンケートの結果だ」

加蓮「待ちかねてるのは帰宅だけどね?」

常務「おめでとう、最高評価ばかりだ」

フレデリカ「いえーい!」

周子「頑張ったもんねー」

唯「それで? それで? ご飯はどうなるの!?」

常務「ああ、最高評価だったので……」


常務「あずきバーだ」


奈緒「あずきバーはもういいよ!!!!!」



常務「それと、今回の旅の費用は給料から天引きしておく」

加蓮「こっち負担なの!?!?!?」

常務「次回も楽しみにしていてくれ」

凛「勘弁してよ!!!」

常務「次は全国ツアーだな」

奈緒「目標がおかしいんだよ!!!!!」



おわり




ありがとうございました。
次回は普通の会議に戻ります。



過去作


渋谷凛「スポーツ選手を」本田未央「目指したい?」

佐久間まゆ「絶対に譲りません」渋谷凛「私だって」

智絵里「わたしたちに」ほたる「届いた」朋「ファンレター!」


などもよろしくお願いします


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