奇術師「木を食らい火を吹く」 (12)

とある町はずれ

木こり「よお、あんたかい」

奇術師「やあ、朝早くから大変だね」

木こり「なぁに、仕事だ」

木こり「あんたこそ、こんな早くからどうしたんだ」

奇術師「実は、また木を譲ってほしくてね。金貨1枚分ほど貰いたいんだ」

木こり「ああ。それならあの小屋にあるの全部持ってってくれ」

奇術師「いいのかい?そんなに」

木こり「ああ、あんた以外の客は皆足元見て金払いやがる。いつもの礼だよ」

奇術師「それは、どうも。ありがたく受け取っておこう」

木こり「おお、今後ともよろしく」

奇術師「こちらこそ」

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奇術師の屋敷


奇術師「ただいま」

使用人「お帰りなさいませ」

奇術師「依頼は」

使用人「3件ほど。うち二つは既に人をやっております」

奇術師「ご苦労様、もうひとつは?」

使用人「領主様じきじきにということでしたので」

奇術師「ふむ。見せてもらってもいいかな」

使用人「はい」

奇術師「へえ。放火ね」

使用人「はい。なんでも、通常の攻撃では破壊できない材質だとか」

奇術師「なるほど、1時間ほどで行く。依頼人にも伝えておいてくれ」

使用人「かしこまりました」

貴族街


奇術師「警備が厳重だな。面倒だ」

奇術師「気づかれないように行こう」

そういった奇術師は、一瞬の赤い輝きを見せた後、ゆらりと空間に溶け込んだ。

奇術師「所詮は寄せ集めか。気に留めるまでもなかったな」

依頼は、貴族街のはずれにある建物の放火だった。
どうやら、依頼人にとって都合の悪い書物が入っているらしい。

奇術師「ここか」

奇術師「警備は12人、入り口はひとつ。窓はなしか」

奇術師「ずいぶん厳重に警戒するんだね、そんなに大事なものなのかい?」

私兵長「ああ、そのとおりだ」

奇術師「驚いたな、いつからそこにいた」

私兵長「驚いた顔には見えないがね」

奇術師「感情が顔に出ないほうなんだ」

私兵長「のんきにお話ししにきたわけじゃねえんだ」

先ほどまで警備に当たっていた私兵が奇術師を囲っていた。

奇術師「なるほど、よく訓練されてるな」

奇術師「なぜ君がここにいるのかな?」

私兵長「ある男から情報が入った。反政府組織の男が犯罪組織の男を雇い、ここをつぶす。とな」

奇術師「犯罪組織か。結構ないわれようだな」

奇術師「で、君が来たというわけか」

私兵長「ああ、あいにく燃やされちゃ困るものもあるんでね」

私兵長「こいつらではお前に勝てないだろうしな」

奇術師「まるで君なら勝てるとでも言ってるようじゃないか」

私兵長「そういってるんだ」

奇術師「自身があるのはいいことだが」

奇術師「君じゃ僕に勝てない」

私兵長「それはどうだか」

奇術師「まわりを見ろ」

私兵長「なっ!」

奇術師「君との楽しいお話中に、君の仲間はおねんねだ」

私兵長「貴様...!」

奇術師「言っただろう、君じゃ僕には勝てない」

私兵長「やってみなきゃわからないこともあるもんだぜ!」

私兵長「ふん、口だけか他愛もない」

奇術師「くそ...」

私兵長「残念だが、お前は国に引き渡す」

奇術師「ちっ」

私兵長「ついて来い!」

私兵「私兵長殿!」

私兵長「おお、今こいつを捕まえた。お前はあいつらをなんとかしてやってくれ」

私兵長「俺はこいつを国に引き渡す」

私兵「な、何を言っておられるのですか?」

私兵長「なにをって」

私兵「捕まえたって、あそこに」

奇術師「見つかっちゃった」

私兵「ぐはっ!」

私兵長「私兵!」

奇術師「穏便に済ませたかったんだけど。やっぱり蜃気楼にしておくべきだったか」

私兵長「貴様、どういうことだ!」

奇術師「さあね」

私兵長「答えろ!」

奇術師「君はね、火に当てられたんだよ。それだけの話」

私兵長「どういうことだ!」

奇術師「さようなら」

私兵長の心臓部で、小さく火柱が上がった。

私兵長「」ドサッ

奇術師「閻魔にあったらよろしく伝えておいてくれ」

そういうと奇術師は依頼をこなし、静かに場を去った。

奇術師の屋敷


使用人「おかえりなさいませ」

使用人「お疲れ様でした。お夕飯の支度はできております」

奇術師「ああ、ありがとうね」

奇術師「それと、例の依頼にやった二人を呼んでくれ」

使用人「かしこまりました」


奇術師の部屋


奇術師「さて、報告を」

女「はい。依頼どおりに東の盗賊段を壊滅させました」

男「こちらも、問題なく」

奇術師「それはよかった。二人ともお疲れ様」

奇術師「しばらくゆっくり休むように」

はい。そういって二人は部屋を去った。

奇術師「やはり美味」

木こりから買った木を食べながらそう呟いた。

奇術師「力がみなぎる...」

使用人「失礼します」

奇術師「なんだい」

使用人「勇者が、あらわれました」

奇術師「へえ...ってことは」

使用人「魔王が復活いたしました」

奇術師「なるほど、遅かったね」

使用人「ええ、どうされますか」

奇術師「明日にでも出発しよう。旅の支度を」

使用人「かしこまりました」

翌朝 酒場


勇者「仲間を探してるんだ。誰か腕の立ちそうな奴はいないか」

店主「それなら、さっき入ったばかりの奴なんか見たところ強そうだったが」

勇者「どいつだ」

店主「あそこの、コートの男だ」

勇者「協力感謝する」

勇者「おい、そこの君」

奇術師「なんだい」

勇者「俺の仲間にならないか、魔王を倒す旅をするんだ」

奇術師「いいね。ついていくよ」

勇者「やけにあっさりだな。死ぬかもしれないんだぞ」

奇術師「お...僕が負けることはないんだ。絶対にね」

勇者「心強いな、早速出発したいんだが」

奇術師「ああ、準備は整ってる」

勇者「?」

勇者「ならいいが...」

勇者(何か怪しい。少しずつ探りを入れていこう)

奇術師「ところで、仲間は僕一人でいいのかな」

勇者「ああ、これから次の町に出発する」

奇術師「わかった。先に出ていてくれ、すぐに追いつく」

勇者「?」

勇者「わかった」

奇術師「ね、ほんとうだったろ」

店主「あ、ああ」

奇術師「これ、貰っておいてね。どうもありがとう」

店主「こんなに...」

奇術師「口止め料も入ってる。それじゃ」





勇者「早かったな。なんだったんだ、用事って」

奇術師「用事ってほどでもないよ」

勇者「そうか...っ!」ビリッ

勇者(女神の加護がこいつを拒絶している?)

奇術師「どうかした?」

勇者「いや、大丈夫だ。先を急ごう」

奇術師「了解」

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