まゆ「拝啓、忌まわしき過去に告ぐ絶縁の詩」【偶像喰種・外伝3】 (108)


……「どうしたの」、ですか?



すこし「あの人」の事を思い出してました


別に感傷になんて浸るつもりはないですけど


強くないと、奪われるばかりですね





一体、どれだけの"喰種"が



なにかを失わずにいられるんでしょうか


SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1476880848


偶像喰種シリーズの346サイド第三弾です。

期間開けすぎて偶像喰種を続けていく自信が無くなってきたので気合を入れるのと

偶像喰種の設定とかその変更点とかを一度まとめておきたかったのと

あと個人的にまゆの話を書きたかったのとで

第二章後編の途中ですが立ち上げることにしました。


わりと短く終わると思います。たぶん。

外伝の後編ではないです。


――――――――――――――――――――


    グール
―――"喰種"。


人みたいな外見をしているけれど、人じゃない。

そして、人のお肉とコーヒー以外は食べられない。


人を食べなければ生きていけないいきもの。


人間の天敵。



……そんな存在として、まゆは生まれました。


まゆは仙台で生まれて、仙台で育ちました。

パパとママはいません。
           ハト
まゆが12歳の時に、"白鳩"の人たちに殺されちゃったんです。


喰種対策局……通称"CCG"。そこで働くのが"喰種捜査官"。

パパとママは"ハト"って呼んでいました。

「人間」のみんなを"喰種"から守るために、まゆ達"喰種"を探し出して殺すことが仕事の人たちです。


パパとママは、たまたま"白鳩"の人たちに見つかって……

まゆだけを何とか逃がして、殺されてしまったんです。


パパとママが死んでしまう所を、まゆは遠くから見ていました。

まゆを逃がすことができて、思い残すこともなくなって……

2人で手を繋ぎながら、満足そうな顔で目を閉じていったのを覚えています。





パパとママは死ぬ前に、まゆに「お金」と「戸籍」を遺してくれていました。

お金はまゆが中学校に通えて、高校に通えて、公立を選ぶなら大学にも通えるくらい大きな額でした。

戸籍は足のついていない真っ白なもので、苗字は「佐久間」と書かれていました。


12歳のまゆは、こうして「佐久間まゆ」になりました。


パパとママが死んでから、まゆは一人っきりで過ごしました。


苦労はあまりしませんでした。

お勉強はパパがしっかり教えてくれて、中学校の内容にもしっかりついて行けました。

仙台には"喰種"がほとんどいませんでしたから、縄張り争いもありませんでした。

白鳩の人たちにも、パパとママの運が悪かっただけ。

……いいえ。2人で死ねたのだから、パパとママは幸運だったのかも。


ともかく、本当なら少し気をつけてさえいれば、正体を知られることもほとんど無いんです。


だから、まゆは目立ちすぎないように学校でお勉強をして、それが終われば部活には入らずに真っすぐお家まで帰って。

お食事は大体、自殺した人の肉をもらって。

そういう人がどうしても見つからない時は……ホームレスの人や、他の人に暴力を振るう人のような、出来るだけ手を出しやすい人から命をもらうようにして。

特に誰かに目をつけられることもなく……



そんな静かで孤独な暮らしを…まゆは2年とちょっと間、続けました。


仙台にはまゆと同じ"喰種"がほとんどいません。

だから争いもない代わりに、お友達になってくれる"喰種"にも、運命の人と呼べる"喰種"にも出会えませんでした。

まゆの周りは人間ばかりで、"喰種"のまゆは独りぼっちでした。


……運命の人。

まゆがそれを望むのは、贅沢だって分かってます。


普通にお勉強をして。

普通に就職して。

普通に人間ごっこをして。


本当ならろくに長生きできない駆逐対象のまゆにとっては、それで十分幸せなんだって分かっています。



でも、諦められないんです。


ママが話していたんです。

「ママはパパと出会ったとき、『運命の出会い』だと思った」って。

「だからパパとまゆと一緒に暮らせて、こんなにも幸せな毎日を過ごせるの」って。


まゆも、ママみたいに運命の人と出会いたかった。

ママとパパみたいに、運命の人と結ばれて、幸せに添い遂げる人生に憧れたんです。

遠くから見たパパとママの死に顔は、本当に安らかで幸せそうで。

まゆも、死ぬならあんな風に、運命の人と2人で寄り添えたらいいなって思ったんです。


仙台から離れるのも嫌でした。

だって、パパとママが出会った思い出の場所だから。

パパとママの子供として、まゆが生まれた場所だから。

運命の出会いは、ここで起きてくれるに違いないって思ったんです。


パパとママがいなくなって、寂しくなって、自分の人生の意味がわからなくて、死んじゃおうかなって考えた時も何回かありました。

それでも生きることを諦められなかったのは、運命の人と出会いたかったから。


だから、パパとママが出会った仙台で。まゆが生まれた仙台で。


ずっとずっと、運命の人がまゆの前に現れてくれるのを待っていたんです。


そして、中学三年生になる前の冬。


まゆの信じていた通り、まゆにとっての運命の出会いがやって来てくれました。


ただ、まゆがびっくりした事があって……





それは、まゆの目の前に現れてくれた人が"喰種"じゃなかったこと。



まゆの運命の人は―――――





―――「人間」、だったんです。


今日はここまで。


まゆはアニメ本編の時間軸において高1の16歳だという設定で書いています。

…まゆって高1か高2か判明してなかったよね?


凍えそうな真冬の日、まゆは読者モデルのお仕事をしていました。


お金は、パパとママがいつの間にかたくさん貯めていましたから、まゆが稼ぐ必要はありませんでした。

でも、まゆにはお勉強と……

……それから、ママに教わった編み物の練習くらいしかすることが無くて。

そんな時に「読者モデルにならないか?」って声をかけられたんです。


特に、何か惹かれたワケでもなかったんですけど……

あまり人と話すようなお仕事でも無かったみたいですし、お仕事の場所も仙台でしたから。

だから……まあ、いいですよ、くらいの気持ちでお話を受けることにしました。



そのお仕事がきっかけで「あの人」と出会えたんですから、読者モデルになって良かったって、心の底から思ってます。


「あの人」に出会ったのは、お仕事が終わって、帰ろうとした時。

まゆが何となく撮影所の廊下を歩いていると、たまたま人にぶつかってしまったんです。

珍しく転んでしまったまゆに、「あの人」は手を差し伸べてくれました。


その手を取って、その人の姿を見て……まゆの全身に電気が走ったみたいになって。

その真っすぐな瞳を見て、はっきり気付いたんです。

「この人だ」って。

「これが運命の出会いなんだ」って。


……感動して、「あの人」にずっと見とれていたから。

だから「匂い」に気付くまで、ちょっと時間がかかっちゃったんです。


まゆが何か話しかけようとした時、やっと気付くことができました。


まゆは目や耳や、お鼻もよく効きます。

まゆに限った話じゃなくて、"喰種"はみんな感覚が優れているんです。

目や耳は遠くの景色や音をハッキリ把握できますし、匂いもそう。

"喰種"だけが、同じ喰種の匂いと、人間の美味しそうな匂いを判別出来るんです。


だから、まゆは気付きました。

目の前の「運命の人」からは、とっても美味しそうな匂いが漂っていることに。


まゆ……とってもビックリしてしまって。

それと、ちょっとショックで。

せっかく出会えた「運命の人」が、まゆと違う「人間」だなんて。


だから、まゆはちょっとだけ固まってしまったんです。

そしたら、「あの人」は手を放してしまって、体をくるりと、まゆに背を向けて。


まゆの前から消えそうになっちゃったんです。


まゆは我に返って、「あの人」がいなくなってしまうことに慌ててしまって。

もう少しだけ「あの人」の傍でいたかった。

人間だなんて、そんなこと、今はどうでもいいんです。


だから、本当に本当に慌てちゃって―――――



まゆ「あっ……あの!」

「?」

まゆ「私とおはにゃっ……おふぁ……おひゃな……」



まゆ「……お話、してくれませんか……?」



まゆ、本当に恥ずかしいところを見せてしまいました……


一旦ここまで。


――――――――――――――――――――


まゆは「あの人」を、近くの自動販売機と座るところのある場所に連れて行って。

まゆと「あの人」の分のコーヒーを買おうとして、断られて、逆に買ってもらって。

"喰種"のまゆが唯一飲める、ブラック無糖のホットコーヒーをちょっとだけ飲んで……さて。


引き留めたのはいいんです。いいとして……

……どうすればいいんでしょうか。急なことだったから、何を話すか……まったく思いつかないんです。


そうだ。


まゆ「あの、お仕事は何をされていますか?」

「? 仕事?」

まゆ「はい」

まゆ「まゆ、あなたのことを知りたくって」

「俺の? ……うーん」


まゆの運命の人は、恥ずかしそうに顔を掻きます。

その仕草も、なんだか様になっていて素敵……


「……俺自身はあんまり自慢できる職業についてないんだ」


少しだけ俯くと、運命の人はお仕事について語ってくれました。


「俺が働いてるのは、東京にある346プロダクションって言う大企業なんだけど……俺はただの雑用係でさ」

「ここに来たのも、忙しい上の人達の代わりにファッション雑誌の仕事の契約を取ってこいって無茶言われただけなんだ」

「下っ端でもいいから、アイドルに関わる仕事がしてみたくてな。本当はプロデューサーをやってみたかったんだけど、俺じゃダメだったみたいだ」

「……ごめんな? 面白くもなんともない話だろ?」


面白くないなんて、そんなことないです。

あなたの声を聞けるだけで、まゆにとって、とっても価値のある時間なんです。


それに、あなたの顔を見て分かったことだってあるんですよ?

この人は、この話の中で……



まゆ「アイドルが好きなんですか?」



アイドルの話をした時だけ、ちょっと嬉しそうにしているんです。


まゆの運命の人は、恥ずかしそうに顔を掻きます。

その仕草も、なんだか様になっていて素敵……


「……俺自身はあんまり自慢できる職業についてないんだ」


少しだけ俯くと、運命の人はお仕事について語ってくれました。


「俺が働いてるのは、東京にある346プロダクションって言う大企業なんだけど……俺はただの雑用係でさ」

「ここに来たのも、忙しい上の人達の代わりにファッション雑誌の仕事の契約を取ってこいって無茶言われただけなんだ」

「下っ端でもいいから、アイドルに関わる仕事がしてみたくてな。本当はプロデューサーをやってみたかったんだけど、俺じゃダメだったみたいだ」

「……ごめんな? 面白くもなんともない話だろ?」


面白くないなんて、そんなことないです。

あなたの声を聞けるだけで、まゆにとって、とっても価値のある時間なんです。


それに、あなたの顔を見て分かったことだってあるんですよ?

この人は、まゆにしてくれたお話の中で……



まゆ「アイドルが好きなんですか?」



アイドルの話をした時だけ、ちょっと嬉しそうにしているんです。


「え? あ、ああ」


やっぱり。


まゆ「……どうして?」


あなたにとって、アイドルはそんなに素敵なんですか?


「…はは。恥ずかしい話でいいなら、話していいかな?」


もちろんです。

恥ずかしくなんてないです。

まゆがただ一人見ているひとが、見ているものを。

まゆはそれが知りたいんです。


そして「あの人」は、ぽつりぽつりと話し始めてくれました。

最初は、アイドルになれる人の可愛さや、美しさについて。

次は、アイドルの歌声が魅せてくれる愛くるしさ。

ステージの現地?に行くことが出来たときの、遠い席から見た、アイドルの跳ねる姿が元気いっぱいでかわいい、とか。

新人から頑張ってる姿を見続けて応援し続けて、大きなステージに立てたときの涙には、自分ももらい泣きさせられてしまった、なんて。

その姿を間近から見ていたくて、346プロダクションに入ったんだって。


まゆの運命の人は、アイドルについて話しているうちに。

だんだん言葉数が増えて行って……「はしゃいでいる」って言葉が、すごく似合ってて。


この人は本当にアイドルが好きなんだ。


いいなあ…。

まゆがこんなに想ってる人が、そのアイドルには見えていないはずなのに。

この人は、ずっとアイドルのほうを見ている。

まゆがこんなにあなたのことを見ているのに。

この人はアイドルのほうばかり見て。

まゆのこと、見て欲しいのに。



……あっ。


簡単なお話じゃないですか。


まゆ「あの」

「ん?」

まゆ「本当に、アイドルが好きなんですね」

「…あはは。いつの間にか熱く語りすぎてしまってごめんな」

まゆ「いいんですよ。まゆ、楽しそうにお話しするあなたの姿が好きですから」

「そうか? 少し照れるな」

まゆ「うふふっ♪」


まゆ「…その話について、なんですけど……」


まゆ「もし……」



まゆ「もしまゆがアイドルになったら、あなたは応援してくれますか?」


「!」

まゆの運命の人が、びっくりした顔でまゆを見ます。

簡単な話だったんです。

まゆはこの人にまゆを見て欲しい。

この人は、アイドルを見ている。

だったら、まゆがアイドルになれば、この人はまゆを見てくれる。


ずっと待ち続けていた、まゆの運命の人が……♪


「……驚いた」

「まゆちゃん…だよな?」

まゆ「はいっ」


まゆの名前、憶えてくれたんですね。

とっても嬉しい……!


「実は俺もそう思ってた。まゆちゃんの撮影するところ、実は少しだけ見ていたんだ」

「すごい子を発見したと思った。この子がアイドルになってくれたら、きっとすごいアイドルになるって思ったんだ」


……!?

まゆのこと、そんな風に思ってくれていたなんて……!!

うれしい。まゆ、本当にうれしいです。


「346プロでアイドルをやらないか!?」

「俺がなんとか話をつけてみる! うちでプロデュースするなら、まゆちゃんをトップアイドルにしてやれる!」


こんなに一生懸命に、まゆのことを……!

あなたがまゆを、プロデュースしてくれるなんて……!!


まゆ「お願いします。まゆをアイドルにしてください」

まゆ「まゆをあなたのところに連れて行って……!!」



15歳を迎える前の冬。

まゆの人生は。その全ては、あっという間にこの人に絡め取られてしまいました。

まゆは読者モデルとしてお世話になった人達にお礼を言って、お仕事を辞めさせてもらいました。

元々少なかった荷物もすぐにまとめて。

仙台……パパとママの出会った場所から、まゆは出ていきました。


まゆが「この人」……まゆのプロデューサーさんと出会った運命の場所に、ありったけの感謝を込めて。



まゆが"喰種"で、「この人」……まゆのプロデューサーさんが人間だなんて、もうとっくに頭から消えていました。


だって、まゆがまゆのプロデューサーさんの隣にいられることと比べたら些細なことですから。



だってこの人は、まゆの運命の人だから。


今日はここまで。

これを書いてる間はずっと先週号のゴールデンカムイの狂気回が頭の中をぐるぐる回っていました。


ちゃんとした文章として書けてますかね?


…しまった。

まゆのソロ曲に「運命の出会いなんて別に信じてなかったの」って書いとるやんけ……ミスった……


投下します。


――――――――――――――――――――


…まゆが"喰種"で、まゆのプロデューサーさんが人間だと言うことに、何も問題はないと思っていました。


でも……


その障害は思っていたよりずっと早く、まゆの前に立ちはだかりました。


それは、まゆがプロデューサーさんと一度お別れして、新幹線でプロデューサーさんを追った後のお話です。


ふた晩。

まゆがプロデューサーさんと会えなかった時間は、普通の人には短いのかもしれないけれど、

あれからメールをくれた携帯電話にプロデューサーさんを重ねて、甘えてすり付くような日々を送ったまゆには、とてもじれったくて長い時間のように感じました。


荷物はすぐにまとめて、お引越しのお手続きに思っていたより時間がかかって。

はじめてのお役所で戸惑っていた時間はずっと、「こういう」お勉強をしていなかった自分を責め立てずにはいられませんでした。


でも、それも今となっては良いスパイスです。

まゆは、たった今……夢のお城に辿り着くことができたのですから。


346プロダクションの建物には、仙台にいたとき住所をあらかじめ教えてもらっていたから、直ぐにたどり着けました。


その見た目は、まゆも調べて知っていたのですが……

この目で見ると、その大きさと美しさに……改めて圧倒されてしまいますね。


まさに「お城」と呼ぶに相応しい場所でした。



これが、まゆとプロデューサーさんを包んでくれるお城なんですね……!!

うふふっ♪ とっても素敵です。


まゆ「……はっ」


いけない…!

まゆのプロデューサーさんは、この建物の入り口で待っていてくれるって話していました。

まゆの目の前に見える、この大きな時計の門で。


もう、まゆはここにいるのに。

いつまでも待たせてはダメじゃないですか。


まゆ「今、行きますね」


まゆは今、門に向かって駆け出します。

いいえ。その向こうの、まゆの運命の人。まゆの王子様に向かって。


プロデューサーさん……

プロデューサーさん。


ずっと会いたかった、



まゆのプロデューサーさん……!!







―――――えっ?





……プロデューサーさん?


……どこ?


待っていてくれるって、言っていたのに。

あの人の話したことを、聞き間違えるはずなんかないのに。

確かに、この時計の建物でって。

ここで迎えに来るって、言っていたのに……!!


あの人の、愛しい「はねた」髪が見当たらない。

明るくて格好いい髪の色が見つからない。

心地のいい、ふわっとした匂いも……残り香しか感じない。

ここにいるスーツの人は、みんなプロデューサーさんじゃない。


あそこにいる人はまゆの方を見ているけど、あの人は違う……

まゆのプロデューサーさんより背が高い。

まゆのプロデューサーさんは、あの人みたいに黒い髪じゃない。


匂いだって違います。

あの背が高い人は"喰種"。

なのに、まゆを見ているのはなぜ……?


……近づいてくる?

まゆのプロデューサーさんじゃない人が、まゆに向かって?

どうして……?



「……佐久間、まゆさんですね」


どうして、あなたがまゆの名前を……?


まゆ「あ、あの……あの人は……?」

「…あの人、とは」


まゆ「まゆのプロデューサーさんは、どこですか?」

まゆ「まゆを迎えに来てくれるって、ここで迎えに来てくれるって」

まゆ「そう、約束してくれたのに……」


まゆ「まゆのプロデューサーさんはどこ……?」


「……」スン


まゆのプロデューサーさんじゃない人が、一回だけ鼻を動かしました。

そして、まゆに背を向けると……


「……『込み入った』お話をします。付いて来てください」


……お話、ですか?


――――――――――――――――――――


まゆが案内されたのは、小さな個室でした。


まゆのプロデューサーさんの代わりに来た大きなスーツの人が言うには、

「この、防音効果つきの個室フロアは、個人面談のスペースという名目で作られました」

「ですが、本当は私達"喰種"同士が話すために利用されています」


…だ、そうです。


……いいえ、今はそんなことを気にしてはいませんでした。

こんな大きな会社のなかに、"喰種"のためのスペースを作れるのか、なんて。

それを疑問に思う余裕が、今のまゆにはなかったんです。


そこで、まゆに突きつけられた言葉が……





あまりにもひどいものでしたから。




「…あなたの……佐久間まゆさんのプロデュースは、私が受け継ぐことになりました」

「佐久間さんが出会った『彼』は、"喰種"ではなく人間です」

「ですから……」





「346プロダクションの規則のため」

「また、機密保持のため」



「佐久間さんのプロデューサーに『彼』を充てることは出来ません」



今日はここまで。明日ラブデスが届くので、思いっきり聴こうと思います。


ここだけの話、偶像喰種外伝を書き始めた去年の今頃からシンデレラガールズ183名全員分の人間、喰種の設定振り分けをちみちみ考えてました。今は7割くらい固まってきています。

後編は100人も出す予定がある訳じゃないのでほぼ完全に無駄な設定なんですけどね。でもコミュとか見ながら振り分け考えるの結構楽しい。


http://imgur.com/EPmwJjg
http://imgur.com/pJQ3rqN

せっかくだし特にネタバレにもならないので振り分け設定公開。
暫定でこんな感じです。
二人ほど外伝前編と設定を変えている子がいます。

なにか振り分けについて質問・ご意見あればください。


…どうして?

どうして、まゆとプロデューサーさんを引き離すの?


「……当然のことですが、彼からは何も説明を受けていないのですね」

「彼は人間ですから、何も知らないのが当たり前ですが」

「だからこそ、貴女が人間か"喰種"か判別するにも、私が直接会うしかありませんでした」


……?


「彼の勤める、この346プロダクションについて」

「この場で少しだけ説明します」


そう言って、背の高い"喰種"の男の人は、お話を始めました。


その人が話したことは、大体こう言うこと…だと思います。


―――346プロダクション。


それは"喰種"の優れた面に注目し利用している『人間』の一族、『美城家』が経営する芸能事務所。


CCGの目を盗み、すごく昔から"喰種"と様々な取引をしていた美城家の人々は、

人間よりはるかに身体能力や感覚器官が優れてる"喰種"たちに改めてアプローチをして、この346プロを作りました。


だから美城にとって"喰種"は、芸能において複雑なパフォーマンスを短時間で習得でき更に比較的低賃金で雇うことの出来る優秀な人材として。

そして"喰種"にとっては言うまでもなく、資金源や情報源、もしくは食事の配給や教育、あとは学校への入学に必要なお金の負担みたいなサービスを提供してくれる後ろ盾として。

互いを自分の利益のために利用するという、一種の共生関係を築いてきた……そういうことでしょうか。



なんてことでしょう。

まゆはプロデューサーさんの働いている場所が普通の人間の事務所でも、関係なく付いていくつもりでした。

でも、まゆが運命を感じてやってきたこの場所は、偶然にも"喰種"のために作られたお城だったんです。


"喰種"が内緒のお話を出来るフロアを社内に作れるのは、こう言うことなんですね。


ここは"喰種"のための会社なんですから。


「―――喰種対策法において、人間が"喰種"の存在を秘匿することは重罪にあたります」

「ですから、346プロダクションでは徹底した『社内秘情報』の秘匿が為されます」


「それは例えば、"喰種"である社員による人間の社員やアイドルの監視」

「必要最低限の『人間に対する社内秘情報の開示』に関する明確な記録の規則化」

「規則に当てはまらない『社内秘情報の所持者』に対する『処分』方法の確立」


「……そして、そのための人員配置方法の制定などにあたります」


「ですので……」



「佐久間さん」

「"喰種"である貴女のプロデュースに人間の彼を登用することは、『社内秘情報』の秘匿において適当ではありません」

「むしろ、貴女をはじめ多くのアイドルや社員を駆逐の危険に晒す行為です」

「希望に沿えず申し訳ありません」

「ですが、佐久間さんの希望を採用することは本当に危険な行為であることをご理解ください」


そこまで説明すると、背の高い男の人は丁寧に頭を下げてくれました。


なるほど。そう言うことだったんですね。

まゆにも、少し考えれば分かることです。

まゆのパパとママのように、ふとした事でまゆのプロデューサーさんにまゆの正体がばれてしまえば。

まゆだけじゃなくて、346プロダクションのみんなに迷惑をかけてしまう。

…いいえ、迷惑どころじゃなくて、多くの命が失われてしまうかもしれないんですね。


まゆのせいでそんな大惨事が起きてしまうなんて……考えただけでも辛くなってしまいます。


そんなこと、引き起こしちゃダメですよね。





それなら……。


今日はここまで。

今回の流島編で東京喰種終わるかと思って『モチベ続くかなー…』と心配してたけど、まだ続きそうですね。


まゆ「…あの。いくつか質問しても良いですか?」

「? ええ。開示できる範囲でなら回答します」


まゆ「ほとんどの"喰種"は貧しくて攻撃的だって、パパから聞いてるんです」

まゆ「そう言う"喰種"の人たちが、ここを羨んで攻撃しちゃう場合の対策はしていますか?」

「はい。外部の"喰種"への対策として、346プロダクションは複数の"喰種"組織に『牽制』行為を依頼しています」

まゆ「その牽制はCCGに対しても働きますか?」

「いいえ。346プロダクションの人材だけで対策が可能と結論付けられているため、必要以上の『支払』を避けて対CCGマニュアルには『彼ら』の協力を組み込んではいません」

まゆ「その根拠は?」

「CCGへの対策は本来、何事もなければ情報の秘匿だけで済むこと。そして私を含め346のスタッフは『非常時』の戦力をそれのみで賄える程度の能力を保持していることの2つにあたります」

まゆ「346の人たちだけじゃ流石に外部の"喰種"は牽制しきれない?」

「長期的な牽制のための人員を賄うには、量が乏しいかと」

まゆ「外部の"喰種"組織が裏切る可能性はないんですか?」

「現時点での衝突によってあちらが被ると予測される損害が『取引』を破棄するメリットに釣り合わないため、可能性は低いと結論付けています」

まゆ「……強いんですねえ、ここの人たち」

「アイドルの皆さんの笑顔を守るためですから」


まゆ「『取引』って?」

「346プロダクションの取り扱う『財産』を定期的な報酬とし前述の仕事を依頼しています」



まゆ「『財産』って何のことですか?」

「……申し訳ありませんが、上級機密のため回答できません」


1レスだけですが一旦ここまで。

シンゴジラの会議シーンとか日本国憲法の授業とか、

あと条約やら組織のシステムやら考えるのは結構好きです。


ちゃんと説得力があるように書けているでしょうか?


【急募】メモ帳に書いた文章を保存し忘れた状態でエラーが起こり強制終了で未投稿文が全部パーになった時の立ち直る方法


……財産。


ほかの"喰種"組織が欲しがっているもの。

お金を持っている人が欲しがるもの?

"喰種"が欲しがるもの。

346プロダクションじゃなきゃ、手に入らないもの……





…ああ、なるほど



そういうことですかあ


1レスだけですが今日はここまで。

そろそろ続きを再開しようと思いました。


まゆ「……すこし、お耳を貸してもらえますか?」

「?」


背の高い男の人は、素直に私の口元に、耳を近づけてくれました。


まゆはそこで……


こしょこしょこしょ、っと。


「―――」


この表情。

やっぱり。


まゆの思った通りでした。


まゆ「大当たり、みたいですね?」

「……そうですか。気付かれて、しまったんですね」

まゆ「人間の人たちならともかく、"喰種"には簡単に予想のつくものだと思います」

まゆ「まゆに話せなかったのは、まゆがまだ『半分、外部』の"喰種"だったことと」

まゆ「まゆが『そういうもの』に抵抗があるかどうか分からなかったから」

まゆ「違いますか?」

「……ええ」


まゆ「それに、たしかに人間にばれたらひどい事が起きそうですけど……」

まゆ「"喰種"にばれてしまっても、あまり影響はなさそうですよねえ」

まゆ「"喰種"がばらそうにも、普通に考えて、その"喰種"まで死んでしまいそうですし……」


まゆ「まあ……」


まゆ「『死んでもいい』場合は、別ですよねえ?」


「!!」

「……私を脅すために、命を棄てると……!?」


まゆ「はい」



まゆ「運命の人なんです」

まゆ「あの人だけが、まゆの運命の人」

まゆ「あの人がいなければ、私は生きていけない」

まゆ「あの人と共にいられないのなら」


まゆ「全てを壊しても構わない」



まゆ「もちろん、まゆも『全て』の中にいますよお?」


まゆ「だから……」


そこで、ちらりと背の高い男の人を見ます。

顔を青ざめさせて、私を見ていました。

睨んでいたのかもしれません。


多分、この人は……

私が次に言うことを予想して。

どうやって私を取り押さえるか。

もしくは、まゆの運命の人と会社のことを天秤にかけているのでしょう。

「まゆの運命の人をプロデューサーにすること」。

この人の大切なものを守るために、必死になって考えているのでしょうか。


……



冗談が過ぎちゃったみたいです


まゆ「安心してください」


「……えっ?」


まゆ「別に、『まゆの運命の人をプロデューサーさんにしてください』なんて」

まゆ「それを望んで、脅しをかけたわけじゃないんですよ?」


「!?」

「で……では、何を……?」


まゆ「簡単なことです」



まゆ「私をアイドルにしないで、あの人の傍にいさせてほしいんです」

まゆ「アイドルじゃなく、ただ一人の、あの人を愛してる女の子として」

まゆ「346プロダクションには一切関わらないで……立ち入り禁止になってもいいから」

まゆ「あの人と関わることを、止めないで欲しいんです」


まゆ「最期まで」


まゆの本当の望み。

まゆの一番近くにあの人をおいて。

あの人の一番近くにまゆを居させてくれること。


それを語ると、背の高い人の表情は、今度は信じられないものを見る顔になりました。

動揺した様子で、立ち上がって、うろたえていました。

やっぱり、そうですよね。


「正気ですか!?」

「佐久間さんがアイドルにならないのなら、貴女を保護するわけにはいかない!」

「仙台とは話が違います。ここは東京なんです!」

「捜査官の数も質も比べ物にならない!」

「何の保護もなしに、人間の傍で生きていける筈が……!」


「あなたには破滅の最期しか待っていないのですよ!?」


そこまで吐き出すと、背の高い人は……まゆの表情に気付いたようです

とっても驚いた顔。

それは多分……


まゆが、とっても穏やかな顔をしていたからなのでしょう。


まゆ「それで、いいんです」

まゆ「あの人の、アイドルへの情熱を考えたら……アイドルになって、まゆを見て欲しかったですけど」


まゆ「まゆにとって一番大切なことは、たった一つですから」


まゆ「だから、どんな形で終わっても」

まゆ「化け物として、白鳩に捕まって」

まゆ「惨い殺され方をしてしまったとしても」



まゆ「最後まであの人の隣にいられたのなら」

まゆ「それが、まゆの幸せな最期です」


――――――――――――――――――――


まゆ「私が考える限り、の話ですけど」

まゆ「私は本当は、ここの人たちの大切な人を奪うつもりなんかありません」

まゆ「まゆのたった一つの願いさえ叶えてくれれば、私は奪いません」


まゆ「分かってます」

まゆ「私が"喰種"である限り、私が何もしなくても346プロダクションの秘密がばれてしまう危険はゼロじゃありません」

まゆ「だから、今までより少しだけ多く警戒してもらえると、私も助かります」

まゆ「結局、ちょっとだけご迷惑を掛けちゃいますけど……それは、ごめんなさい」


まゆ「……もう、会うことはないと思います」



まゆ「さようなら、どうかお元気で」


――――――――――――――――――――


――――――――――――――――――――


……これで、346プロの方々には安心してもらえたんでしょうか?

ちょっと自信はないですね。

もしかしたら、まゆが思ってもいなかった苦労をかけてしまっているかも……

うー……ううん……


せめて、まゆがアイドルとしてあの人の隣にいることと比べて。

少しでも「悪くない」状況になっていたら、と思います。



……さて。

あの人の傍に、と言っても……これからどうしましょう?

まずはあの人の家を探して……一緒に住まわせてもらいましょうか?

それとも、適当な家を借りて、あの人の下へ通い続けるか……

アイドルじゃないなら、一応問題はないはず……ですよね?


あの人を"喰種"から守ることも、考えなくちゃいけませんね。

346プロの人たちだけじゃなくて、まゆのことを知った『外部』の人たちからも……

まゆが「居なくなって」からの、あの人の安全のことも……

あの人が346プロダクションの職員だってことは、変わらないし……


……うう、思っていたより問題は山積みかも……




せめて……



まゆ1人の犠牲で完結することができれば、最上の結果と言えるのですけど、ねえ……





今日はここまで。

ボツ案と言うか、データが消えたやつでは
まゆが代理Pを脅してそのまま人間のプロデューサーにしてもらってました。

でも他人に平気で無茶な要求をするのはちょっとイメージと違うなー…と思ったので、出来るだけ譲歩してもらってまゆ1人の犠牲に絞れるように方向転換してみました。

結局1週間以上空いてゴメンネ

乙!
完結すれば文句はないで

>>66
アザス


現時点での振り分けはこんなもんです。

http://imgur.com/896JMW6
http://imgur.com/BEWEZKH

一応、振り分けてる子は全員振り分け理由を考えているので
気になる子がいたら聞いてください。


――――――――――――――――――――



それは、私が346プロダクションを去ってから、1週間くらいたった日のこと。

『あの人』を守る準備が終わって、そろそろ会いに行こうって思っていた日のことでした。





『from まゆのプロデューサーさん』



メール?


……ああ、どうしましょう……!


まゆの『プロデューサー』さんじゃなくなってしまったのに、まだ宛名を変えていなかったなんて……


でも、うれしい。


まゆにメールをくれたことなんて、仙台を出ていく前にちょっとだけだったのに。


ああ、いけない。


『あの人』がメールをくれたことが、とっても嬉しくて。


内容を見るのを忘れそうになっちゃう。


ええと……





『title 話したいことがある』



『メールできなくてごめんな。まゆちゃんとは関わるなって上から釘を刺されていたんだ』

『まゆちゃんがアイドルをやらないって決めた事と』

『その理由が、俺がまゆちゃんの担当プロデューサーじゃないからだって事を聞いた』


『それについて、俺から話したいことがある』

『もう一度346プロダクションに来てくれないか』

『待ち合わせは―――――』



……


……ああ、アイドルをしないこと。知ってしまったんですね。

まゆから話そうと思っていたのに。


……叱られちゃう、かな……

失望されちゃう、かな……?

あんなにも目をきらきらさせて、まゆに期待してくれていたのに。


まゆの願いが、あなたの願いを裏切るものかも知れないって。

それは、覚悟していたけど……


嫌われたく、ないな…………



でも、会いに行かなくちゃ。

あなたが伝えてくれた日が、最後になるかもしれない。

それでも、会って欲しいって言ってくれたから……



それに、まゆも会いたい……!

初めて会った日から、恋い焦がれ続けた、まゆの運命の人……!

ずっとずっと、再び会う日を心待ちにしていた人……!


一度だけでもいいから。


あの人に会いたい…………!!


――――――――――――――――――――


――――――――――――――――――――







不安を抱えて、会いに行ったあの人がくれた言葉は。

まゆの頭の中のものを、ぜんぶ掻き消してしまうものでした。










「俺……」



「まゆちゃんの担当プロデューサーになってもいいって言われたんだ」



――――――――――――――――――――


今日はここまで。

この外伝は一応純愛ラブストーリーのつもりで書いてます。

デッドプールの映画がデッドプール本人に「ヒーロー映画じゃなくてラブストーリー」ってジャンル分けされてるのがすごく好き。


まゆ「…………え…………!?」


「あ……ごめんな!? いきなりこんな話して!」

「上の方で、俺をまゆちゃんのプロデューサーに推薦してくれた人がいたらしくてな」

「すごく反対されたみたいで、俺にその事を伝えてくれた人も物凄く渋い顔してたんだけど……」

「それでも、その推薦してくれた人のおかげで、俺はまゆちゃんのプロデューサーになっていいって言われたんだ」


……誰かが。

まゆのために、あなたをプロデューサーにしてくれた?


「俺も突然のことで混乱してるんだけど……あの人、まゆちゃんの知り合いだったりするのか?」

「その人の名前は―――――」


そこで、あなたから聞いた名前。

記憶の隅に引っかかっていたから、少し考えて……思い出すことが出来ました。



あの、背の高い男の人でした。


――――――――――――――――――――


まゆ「―――あのっ!」


とてもとても、嬉しかった再会を終えて……

私はひとまず、あの背の高い男の人にお礼を伝えに行きました。


「佐久間さん、ですか? ……お久しぶりです」

まゆ「お、お久しぶりですっ」

まゆ「その……全部、聞きました。本当にありがとうございますっ!!」

「……」

(……疑問の前に、迷いもせず真っ先に感謝の言葉が出て来るとは……)

(この方はやはり……)

まゆ「? 何か、変なことを言いましたか?」

「……いえ。そして、決して礼を言われるようなことでは……」


背の高い男の人は、そう言って首に手を当てました。

もう。私にとっては、どれだけお礼を尽くしても、お返し仕切れないほどの恩をもらってしまったと言うのに……


「……貴女は、彼の見つけたシンデレラです」

まゆ「!」


この方には、お礼を言うほかに……もう一つ、聞いておきたい疑問があったのです。

それは、どうして私のためにここまでしてくれたのか、ってこと。

"喰種"のまゆが人間のあの人のプロデュースを受けることのリスクは、十分に理解しているつもりでした。

あの人のお話から、きっと、この方のしてくれた事は、たくさんの反対を受けながら行われたことだと言うのも分かります。


会ったばかりの私のために? ……どうして?


そう聞こうとしていたのに、この方は先に答えを言ってしまうみたいです。


「貴女の輝きを見つけ、城に導いたのは……私ではなく彼でした」

「彼はプロデュースの実績も経験もない、ただの事務員……上も彼自身も、そう言ってはいましたが」

「私は、佐久間さんを『見つけた』ことこそ一番大事なものだと判断し……そして、こうも思いました」


「あなただけのガラスの靴。それを用意することが出来るのは、彼しかいないと」


まゆ「……!」


たったそれだけの思いだったんですね。

それだけの理由で、ここまでのことを……!

……まゆの気持ちは、理解されなくてもいい。

独りぼっちでも構わないから、どんな最期でもいいから、あの人の隣にいたいと……そう思っていたのに……!


――――――――――――――――――――


『…まゆちゃん。一つ、謝らなければいけない事がある』

『本当なら、まゆちゃんにはきちんとしたデビューの機会が与えられていた。346プロが、全力で君をサポートした』

『でも、俺がプロデューサーになるからには……まゆちゃんに金をかけられないって、言われたんだ』

『経験も実績もない新人の俺に、期待することが出来ないからって……』

『だから、周りのアイドルより物凄く低いレベルから、アイドルを始めることになってしまうんだ』

『ごめん、本当にごめん』


『……でも』

『本音を言うなら、ずっとまゆちゃんをプロデュースしたかった』

『プロデュース出来ないって言われて、悔しかった。こんな事を言うのは、プロデューサー失格だって言われても仕方ないかもしれないけど』

『初めて君を見た時……君を、撮影現場で見た時』

『この子に、きらめくステージに立ってほしい』

『それまでの道を、俺が支えてやりたいって。そう思ったんだ』

『君の、一番最初のファンになりたかったって。今までにないくらい、強く思ったんだ』


『だから……まゆちゃん。佐久間まゆちゃん』

『君が、俺でいいって言ってくれるなら……』


『どうか、俺に君をプロデュースさせてくれないか』

『どこまでも君を支える。どんなスタートからでも、必ず君をトップアイドルにしてみせる!』

『だから……!』


『俺を、きみの魔法使いにさせてくれ』


――――――――――――――――――――


――――――――――――――――――――


あの人を……まゆの運命の人を、まゆのプロデューサーさんにしてくれたこと。

プロデューサーさんと、どこまでも一緒に歩いて行けるようにしてくれたこと。

プロデューサーさんが、まゆをこんなにも想ってくれたって教えてくれたこと。

プロデューサーさんのお願いを叶えてくれたこと。


この方がくれた、たくさんのプレゼントは……まゆをとびっきりの幸せで満たしてくれました。


「プロデュースの条件として、346プロの核から少しでも遠ざけるために、佐久間さんを灰被りにせざるを得なかった」。

そう言って、頭を下げる必要なんて、どこにあるんでしょうか。

灰の中でも、辛く長い馬車の路でも。

プロデューサーさんと一緒に歩いて行けるのなら、それは幸せな旅路になるというのに。


……ああ……!!



まゆ『あなたがいいんです。あなたじゃなきゃ、嫌なんです』

まゆ『だから、まゆのこと。よろしくお願いします』

まゆ『……それと……もう一つ、勝手なお願いがあるんです』

まゆ『……私のこと、ちゃんと「まゆ」って、呼んで欲しいんです』


『!』

『…ああ、分かった』


『全力で、君をプロデュースする』



『これからよろしくな、まゆ』





本当に、本当に本当に本当に本当に……





ありがとうございます……!!



今日はここまで。

多分次で終わります。

これが終わったら、年明けと共に外伝後編をスタートする予定です。


――――――――――――――――――――



「……最後に、これだけは伝えなければいけません」


「346プロダクションは、機密を知った『美城一族』以外の人間を殺害しなくてはならない規則があります」


「つまり佐久間さんが彼に"喰種"だと知られたときは、346プロの全てがあなた達の敵になる……そう、考えてください」


「正体を隠し続けて生きることになります。それでも彼の傍にいることを願いますか?」



――――――――――――――――――――


~346プロダクション・一室~


シュン

シュンシュン


コポポ……



今西「コーヒーを淹れたんだが、君も飲むかい?」

「……いえ。私は……」

今西「まあまあ。折角だし、君も一服したほうがいい」

「……ありがとうございます。それではお言葉に甘えて……」


今西「――それにしても……」

今西「まったく、君も無茶をするものだ。人間を……よりによって、"喰種"のプロデューサーに充てるとは」

「……すみません」

今西「いやいや…私は怒ってないさ、むしろスカッとした気分だよ!」

今西「頭の固い上層部の苦々しい顔をこれでもかと言うほど見れたんだ。本当によくやった!」

「……」

今西「……」



今西「……実際。君のような"喰種"が346プロに居てくれることは、とても心強いことなんだ」

今西「上の奴らや……千川君でさえも。ここには人間を嫌っている"喰種"ばかりだ」

今西「"喰種"の幸せ……"喰種"だけの、独立した幸せしか考えていない」

今西「放っておけば、雇い主にも牙を剥きかねないくらいに」


今西「だから本当に嬉しいのさ」

今西「君はただ佐久間君の幸せのみを追求した結果、この手に行きついただけなのかもしれないが……」


今西「人間と"喰種"が繋がるきっかけの一つを、間違いなく君が作ったんだからね」


「……ありがとうございます」

「……失礼します」


バタン





今西「……うーむ」

今西「佐久間君に向けた態度を知って、少しは前の君を取り戻したかと思っていたんだが」

今西「なかなか、車輪の呪いを壊すことは難しいみたいだね」


今西「高垣君との関わりでも、君の呪いは解けなかった」

今西「……いや。彼女がいてくれたからこそ、佐久間君の前では君自身を取り戻せたのかな?」

今西「それならば……あと一押しと言ったところか」






今西「……それにしても、だ」

今西「君が逆らった時の上の反応を、是非とも直に見てみたかったよ」

今西「きっと驚き……そして、恐怖におののいただろう」


今西「無いとは思うが、その気になれば誰も君に勝てやしないのだからね」










今西「そうだろう?『隻眼の王』よ」





――――――――――――――――――――


とりあえず、外伝前編はこれで終わりです。

本当は「自分の味覚と戦いながらお弁当作りを頑張るまゆ」とか書きたかったんですが、

このペースだと多分終わらないなと判断して、ここでまとめることにしました。


元々「346プロの機密保持システム」の説明をやっておきたかったのと

本編第二章後編を書き始めたままいきなり外伝後編に移るのはちょっとやり辛くて導入が欲しかったために書いたものでしたが、

シリーズで一番迷走したものになってしまったと思います。


上で書いた通り、デレステで全アイドルが揃うであろう年明けから後編を開始しようと思っています。

本当は第二章が完結してから投稿するつもりでしたが、

どちらかと言えばアイマスよりデレマスに意識が向いている現状、こっちを先に完結したほうがやりやすそうだと判断して書く順番を変更しました。


今まで書いた外伝は決して褒められた出来ではありませんが、

後編もダメだったら本当に偶像喰種シリーズは見放されてしまうなとかなり危機感を覚えているので

これだけは本気で丁寧にやっていこうと思います。

どうか読んでいただければ幸いです。


ここまで読んでいただき、本当にありがとうございました。


後日、次回の予告編だけ投稿してこの話はお終いにします。


追記。

【MMDM@ster】東京偶種 トーキョーグウル【オープニングパロ】
http://www.nicovideo.jp/watch/sm30123930


自分とは別の方が製作・投稿された、アイマス×東京喰種のノベマスシリーズ『東京偶種』を紹介しておきます。

OPおよび本編3話までが投稿されており、配役は偶像喰種とはかなり変わってます。

こちらもどうぞ応援してあげてください。

バレンタインまゆのボイス、「ね?」の言い方が超怖い…
久々に恐怖を感じた…


http://imgur.com/xotECx3
http://imgur.com/ebzCOpk

CGアイドルの人間、喰種の振り分け表
多分完成版です。

隻眼:人間:喰種の割合が2:101:80になり
わりかしバランスのいい振り分けになったんじゃないかと思います。

Paだけやたら人間に偏っているのは健康的で美味しそうな娘が多いからです。


~次回予告~



――――――――――――――――――――


まゆは一回だけ、あの人とお話をしたことがありました。

多分、今の346プロダクションでトップの人気を持ってるひと。

宝石みたいにとても綺麗で、透き通る声と、その中に誰も逆らえないくらいの迫力を持っているひと。

……そして、346プロで一番強い"喰種"。


……いえ。



―――『隻眼の喰種』。



アイドルとしても"喰種"としても、とてもとても強くて美しい存在……


その名は、高垣楓。



誰もが恐れて、限られた人間や"喰種"しか話しかけることもできないような楓さんに。

まゆは一度だけ、お話をしたことがあるんです。


それは、まゆとまゆのプロデューサーさんの『アイドル』が始まって、数か月がたった時のことでした。

きっかけは、まゆのプロデューサーさんの、食べているものに気付いたこと。

人間のお食事にはあまり詳しくなくて、まゆは気付くのが遅れちゃったんです。

どうして、プロデューサーさんは毎日同じものを食べているのでしょう。

まゆのために休みなく働いているプロデューサーさんが食べている、液体に浸された細い麺や、四角い固形物は、いったい何なのでしょう、と。


少し調べてみるとプロデューサーさんの食べていた「それ」は

早く、楽に作ることが出来る代わりに、お身体によくないものだって知りました。

人間は、人間以外の動物のお肉や、特別な草をきちんと食べなければ、お身体を壊してしまうものだって。


まゆのわがままのせいでプロデューサーさんがお身体を壊しそうになっていることを知って

だから、まゆが責任を取らなきゃって思ったんです。

だから、人間の響子ちゃんがお話していた「お弁当」と言うものを作って、

プロデューサーさんに、ちゃんと食べてもらおうって思ったんです。


ただ、それは"喰種"のまゆには困難な道でした。

まゆは"喰種"だから、美味しいお弁当の味なんて分からないんです。

かと言って、味見をしないままプロデューサーさんにお弁当を押し付けるなんてダメ。

幸子ちゃんや美穂ちゃんに味を見てもらおうって考えも浮かびましたけど、これもダメ。

まゆのしたことで、もし万が一皆に怪しまれては……皆が悲しむことになっちゃいますから。



だから……恐る恐る、あの人に味見をお願いしたんです。


唯一、"喰種"でありながら人間のお食事の味も分かる『隻眼の喰種』……楓さんに。


――――――――――――――――――――


楓「うーん……とりあえずレシピからは外れてないみたいだけど……もうちょっと、塩気がほしいOK(シイオーケー)?」

まゆ「お塩、ですか?」

楓「はい。でもとっても丁寧な味付けで美味しいですよ♪」

まゆ「あ、ありがとうございます!」


それまで、楓さんとお喋りをしたことはなかったけど……

思っていたよりずっと、高垣楓というひとは優しくて、温かみのあるひとでした。

まゆの不慣れなお料理も嫌がらずに食べてくれて、直すべきところは今みたいにそっと伝えてくれて。

それでいて、ときどき洒落を挟むようなお茶目なところもあって。


まるで何処かの若いお姫様のようなひとだと、まゆは思っていました。


楓「それにしても……まゆちゃん、とっても健気で一生懸命な女の子なのね」

まゆ「? そんなこと無いですよ。私はただ、プロデューサーさんに元気でいてほしくて……それだけです」

楓「ふふ♪ そんな一途なところも素敵」


楓「……ああ……」


楓「……あの人も、まゆちゃんみたいに」

楓「隠さないで、一途なところをもっと見せて欲しいのに」


……あの人?


私が首を傾げていることに気付くと、楓さんはくすくすと笑って、お話を始めました。

まるで、最初からこれが目的だったかのように。


楓「……実はね。私もまゆちゃんのこと、ちょっと気になってたの」

楓「もちろん、他にも気になる子はたくさんいるんだけど……まゆちゃんは、あの人とお話したみたいだから」

楓「あの人がまゆちゃんのことで、珍しく真っすぐなところを取り戻したって聞いたから」


……?

まゆがお話したってことは……

あの背の高い男の人のことでしょうか?


まゆ「? あの方とはお知り合いなんですか?」


まゆのお願いを聞いてくれた、あの背の高い男の人は

まゆのプロデューサーさんと気があったみたいで、今ではよくお話をするくらい仲良しです。

確か、今はプロデュース活動の前線に立っていないけれど

過去に担当したアイドルやまゆ達のサポートのお仕事が認められて、とあるプロジェクトを任されることが決まった……みたいなことが、まゆの耳には入っています。


あとは、まゆが"喰種"だって隠すための行動に協力してもらったり、そのための知識を教えてもらったりして

輝子ちゃんや美嘉ちゃんと同じくらい、私の大切な友達でいてくれています。


それが、楓さんには気になったんでしょうか?


また私が首を傾げると、また楓さんは笑います。

静かに、くすくすと。


楓「大人げないってことは分かってるんですけど、ちょっとだけまゆちゃんに嫉妬しちゃったんです」

楓「見え隠れはしていても……あの人は、私と出会ったころには」

楓「曇りが無くてたくさんの星が映っていたはずの目は、すでに厚い雲に覆われてしまっていたから」


楓「あの人の大切な3人がいなくなって、既に星を見失ってしまっていたから―――――」



そんな風に静かに語り、目を誰もいないところに逸らす楓さんの姿は……なんだか、寂しそうでした。

そう感じた理由は、そのあと楓さんが語ったことの中にもあったんでしょうか。

まゆにはあまり意味の分からなかった、あの言葉にも……



楓「私と出会った時も、強かったはずの私を難なくねじ伏せてしまった時も」


楓「血まみれの世界から煌めくステージに、私を引っ張り上げてくれた時も」


楓「ファンの皆さんを通じて、『命』のことを教えてくれた時も」


楓「ずっとずっと、必死で輝きを隠そうとしているような目をしていて……」



楓「それでいて、まるで雨に濡れた子犬のような、救いを求める目をしていて……」



楓「……ああ」



楓「いつか雲を取っ払った目を見たいって、ずっと思っているのに」







――――――――――――――――――――


楓さんがひとり漏らしていた、僅かに満たされなかった願いは


それから、およそ半年の月日を得て、叶うことになりました。


今のまゆにも、楓さんにも、予想なんてできなかったでしょう。


楓さんの知らないところで、知らなかった子達が、あの人に光を取り戻させたことも。








さらに半年後、その光ごとなにもかもが砕かれてしまうことも。



――――――――――――――――――――








偶像喰種 外伝 後編



楓「拝啓、忌まわしき過去に告ぐ絶縁の詩」



近日公開







とりあえず予告も投下し終わったので、このスレはここで終わりになります。

近いうち……たぶん1月中には新しくスレ立てして外伝の締めを始められると思います。


でもこんなことを言って二回ほどスレ立て及び投下が大幅に遅れたことがあるのであんまり信用しない方がいいかもしれません。

ただちゃんと完結はさせますので、どうか読み続けていただけると嬉しいです。


では、また次回よろしくお願いしますm(__)m


追記。


構想では外伝初期でカットしたデレアニ1クール目の範囲も混ぜて書いていくことになっているので

多分今までにないくらい長くなります。本編第一章より長くなるんじゃないかと思います。

書ききれるか不安ですがなんとかやってみようと思います。

大丈夫、ゆっくりでも完結すればええんや(放置してる自分のSSから目をそらしながら)

>>105
励ましのお言葉ありがとうございます!

…気持ちは痛いほど分かります。決して無理せず「書きたい」と思えるようになるまできちんと休んでください。

乙です!
346編の方がずっと気になっていたのでむしろ朗報

クインケ「シマムラ」は果たして卯月なのか、卯月の両親のいずれかなのか、あるいは卯月とは関係ない喰種の島村さんなのか...
つぼみのドラマパート並みの高垣無双を期待しています!

>>107
応援ありがとうございます!


楓「拝啓、忌まわしき過去に告ぐ絶縁の詩」【偶像喰種・外伝後編】
楓「拝啓、忌まわしき過去に告ぐ絶縁の詩」【偶像喰種・外伝後編】 - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1484053883/)

外伝最終章始めます。

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