菜々「お世話に」心「なり」楓「ました」瑞樹「私たち」早苗「ジサツします」 (1000)

※デレマスSS
※おおよそ不謹慎
※地の文台本混合
※自殺推奨/自殺防止のいずれも含意しない
※許して

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1476646031

それは秋分も過ぎた九月の終わりの出来事だった。
ほんの数日前まではじっとりと粘るような湿気と、刺すような日差しが日本中を蒸し焼きにしていた。
それだとというのに、この日は打って変わって、空が鈍色の雲で覆われ、気温が10度前後にまで落ち込んだ。
蝉は文字通り鳴りを潜め、季節のBGMは鈴虫など秋の虫達へと奏者を変えられた。
暑さも寒さも彼岸までとはよく言うけれど、秋分を過ぎた途端にここまで劇的に変わってしまうものかしら。
1週間前から3日前の東京23区は9月中旬にも拘らず平均して32度という真夏日を記録したばかりだった。
そんななのに一昨日昨日今日ってこんなに寒いものだから、プロダクションの何人かの同僚達は体調を一気に崩してしまった。

恥ずかしながら、あたしもその中の一人。

あまり声の調子が良くないと言われてしまった昨日のレッスンが終わった後、一息つこうとマットに座り込んだ瞬間に目眩がやってきた。
視界が揺れて玉虫色に輝き、光の滲みがまるで消しゴムのように視界から情報を消した。
まずい、と思って立ち上がろうとしたけど、平衡感覚を失って立てなくなってしまった。
一緒にレッスンしていたくるみちゃんと仁奈ちゃんが、目頭を押さえてうずくまるあたしに気づいた。
声をかけられたけれど二人の声だということくらいしかわからず、くぐもっていく音の中であたしは声すら発せなかった。
やがて前後左右どころか上下がわからなくなり、全身から力が抜けて崩れ落ちた。
支えられるような感覚を最後にそこで気を失った。
気を失う間際は絞め技で「落ちた」時の感覚に似ていた。

とりあえずはここまで。眠い。

気づくと事務所のソファで横になっていた。ちひろちゃんが気づくと心配そうに駆け寄って来た。
「早苗さん、大丈夫ですか」
「うん、もう大丈夫。迷惑かけちゃったわね」
自分の声に驚いた。さっきよりもかすれている。

時計を見た。針は真上を向いた長針と少し右を向いた短針で30度の鋭角を作っている。
まずい、倒れてたとはいえ、収録の時間まで余裕がない。駅まで多く見積もって15分。乗車時間13分。その他雑な時間15分。収録は2時から。オッケー、ギリギリ間に合うわね。
タオルケットを振っ払って立ち上がろうとしたあたしをちひろちゃんが間髪容れずに止める。

「収録は代打を頼んであるので、今日の予定はもうありません。今日は上がっても大丈夫ですよ」
開口二番、想像の斜め上の発言にあたしは思わず小さく叫んでしまう。掠れた声が裏返り、殆ど空気の漏れにしか聞こえない。自分でも聞き苦しい。
「ええ!?誰に!?」
「菜々ちゃ……さんです」
「ええっ、あの子今日オフじゃないですか!」
「そうだったんですけど、空いてる人が今日は他にいなかったんですよ。仁奈ちゃんもくるみちゃんも、今日はレッスンだけでしたから」
「そもそも、深夜枠の番組ですから、どのみち出演NGになってたでしょうね。ドラマや映画ならともかく、バラエティですし」
「まあ、それ以前に、あたしとあの子達だったら年齢の差が大きすぎるもんね……代役は無理よね」
菜々ちゃんは連日の出勤の合間にやっと取れたオフのはずだった。
それなのにあたしのせいで、彼女の家からは近くないテレビ局へ駆り出させてしまった。
関東は23区のほんの一部とその周辺以外まだよくわからないけど、多分菜々ちゃん家からは遠いと思う。

「……あら?」
あたしは違和感に気づく。普段の事務所と違い、オフィスの席はちひろちゃんのデスクを除いて空席ばかりで、談話室は全て空室。
青木姉妹は麗ちゃん以外お休み。高校生や中学生の子達の談笑の声も聞こえない。
……事務所にあたしたち2人しかいない?
「じゃあ、あたし以外だったらくるみちゃんと仁奈ちゃんしかここにいないのかしら?そういうことになっちゃうけど」
「実は……そうなんですよね。1週間くらい前から『立ち上がるのが難しい』
『喉がまるで使い物にならない』と仰る方が急に増えたんです。うちの事務所だけじゃなくて、お向かいの方も。
全体的に今日の都内では出勤してる人の方が稀のようです」
「あたしたちの業種はなんとも言えないけど、都内に人が少ないのはそりゃあ、土曜日だし?」
「オフィス街周辺なら電車が比較的空いているのも頷けます。しかしこの近辺はどちらかといえば歓楽街ですよね?普通なら土曜日はもう少し人が多くなります」
「あぁ……言われてみれば人少なかったかも」
電車出勤時はその日のスケジュール内容を誦んじたり、窓の外を高速で流れる看板の文字を読み取って動体視力の調子を試したりしてるから、乗客のことまでは頭がいかない。
確かに、思えば今日は座れてたような気がする。座れてたどころかがら空きだったような。
駅にもほぼ人がいなかった。駅員も居なかった。あの時間帯でうちの田舎より低い乗車率は今思えばおかしい。
昨日はどうだったろうか。一昨日は、その前は。一週間前から異変があったかもしれない。

思い出そうとすればするほど延々続々と湧いてくる違和感の塊たちを一旦隅に置いておく。
ちひろちゃんと菜々ちゃんの折角の厚意を無碍にはできないので、目眩が弱まった頃を見計らって病院へ向かった。
一階までなら付き添えると申し出られたけれど、流石にそこまでしてもらうわけにはいかない。

~~~~~

最初は熱中症を疑った。9歳だろうと31歳だろうと分け隔てなく容赦しない麗ちゃんのレッスンに音を上げたのだろうと。
でも、昨日今日の外気温は10度。室温は25度の平温だった。
メニューは密で、完成度に要求されるレベルも高くハードとはいえ、歌合わせとダンスの合わせをそれぞれ別々にやった程度だ。
仁奈ちゃんもくるみちゃんも、檄を飛ばされながらとは言っても傍目にはもたつくこともなくついて来ていたように見えた。
あたしだってこの歳でもまだ2人よりは体力はあるつもりだ。体のパフォーマンスは現役警官時代をなるべく維持している。
今日だってまだ足も腰も肩も膝も痛めてない。ただ筋肉は痛い。
それに三食は欠かしていないし、バランスも考えてる。
水だって過不足なく摂っていたし、砕いた塩飴を少し舐めたりもしていた。

極め付けは、1週間の禁酒。1週間もお酒を断っていたのよ。これもう現役時代より健康なんじゃない?

……だから、熱中症になるはずはなかった。

ちょっと見にくいので改行していただけると嬉しいです
内容は期待大

「風邪、としか言いようがないですね。めまいはおそらく……水分不足かと」

医者は風邪だと、そう言った。熱も関節痛も無いのに。
喉の不調と立ちくらみ(座りくらみ?)で倒れたと云う2点のみを見たって釈然としなかった。

あとさ、水分はとってたっつってるでしょうが!

「ここ4日間ほど、片桐さんのように喉の不調を感じて少し経った後に立ちくらみから倒れてしまう人が増えているんですよ」
「はぁ……」
どうやらちひろちゃんの言ってたことは本当らしかった。
不自然な流行りもあるものだとぼんやり思った。
「今年の風邪の傾向かもしれません。
熱はないようですので、咳止めと抗生剤を朝昼晩の食後、3日分出しておきます。お大事にしてください」

そんな、たかが、たかが風邪ごときで社会人が家から外に出れないレベルで体調を崩すものか。

などと怪訝に思いながらあたしは病院を後にした。
ビルを降りて改めて周りを見ると、確かに土曜日にしても人の通りが不気味なまでに少ないことに気づく。
都内の繁華街、そのど真ん中であるにもかかわらず、車がだだっ広い車道にほんの数台しかない様を見ればその異様さは明らかだ。
ラッシュアワー最中であったはずなのに、駅が異様な人の少なさであったのも相俟って少し怖いようでさえある。

嫌なものを見たと思った。

>>9
少し改行入れて>>10くらいだとどうでしょうか

申し訳ありません。只今家に乗用車が突っ込んできました。事故かと思われます。
ちょっとこれは大変なので少々中断します。
本日分残り2レスほどなので落ち着いたら戻ってきます。ご迷惑おかけします。

日付跨ぎましたが昨日分だけ投下します

病院からの帰り、家まで後数分のところでまたあの目眩が私を襲った。
視界がどんどん狭まり、目から頭の裏を錐で貫いたような、これまでで一番ひどい頭痛がした。
激しすぎる痛みに呻きが漏れる。溢れた涙を血かと勘違いするほどだ。
視界の中心から光が迸り、心臓が鼓動する度に痛みが目を中心に広がる。

人通りのない昼下がりの住宅街の道端で前後不覚に陥り倒れるわけにはいかないので、気合張って文字通り這うように自宅へ歩いた。
自室前にたどり着く頃にはもう酔っ払ったときよりもひどかったんじゃないかしら。この姿を誰にも見られてなくて本当に良かった。

一人称ミスるとは注意散漫でした
キリがいいので本当にここまでにして中断します
庭はやばそうですが家屋に被害はないので私は平気です
ご心配おかけしました

次回投下は日曜頃を予定ます
気づいたミスなどありましたらご指摘くださると助かります
失礼します

Rからきたけど過去作ないの?

『おかゆは4日分作って、うち3日分は12個の一口大に小分けしてラップして冷凍庫に入ってます。
食べるときにお茶碗に移して少し水を入れてレンチンしてくださいね。
1日分は鍋に入ったままなので今日中に食べてください。
それからほうれん草のさっと茹でたものが冷蔵庫に入ってるので、繊維質が恋しくなったら食べてください。
牛乳がなかったみたいなので代わりにくるみちゃんから頂いた豆乳と甘酒を入れておきました。
これでたんぱく質とアミノ酸を補給してください。
それから喉に効くはちみつ飴をおいていきます。
甘すぎない爽やかレモン味なのでしつこくないと思います。

ゆっくり寝て、早く治してくださいね。

ウサミンこと 菜々より
(・x・)』

知らない間にまた寝てしまったようだ。外が暗くなった頃目が覚めて、枕元に書き置きがあった。
どうやら当面のご飯を作ってもらっちゃったみたい。ありがとう、菜々ちゃん。

「あら?」

額と手元に違和感を覚えて改めて確認してみると、熱さまシートが貼られていた。
掛け布団の上にはうちのじゃないっぽい毛布がかかっていた。
うちのじゃないよね?色が同じだからわからない……

「ちょっと失敬……」くんくん

うん、うちのじゃない。
志希ちゃんじゃないからこの匂いが菜々ちゃんのものなのかはわからないけれど。
でも状況的には菜々ちゃんよね。

……あら、やだ。ちょっとくせになりそう。もうやめとこ。

「熱はないんだけどなー…… あはは」

本当、何から何までやってもらっちゃった。

喉乾いちゃったな。お水飲もっと。うふふ。
布団から立ち上がって冷蔵庫を開く。
飲み物ポケットにどでかく鎮座する豆乳と甘酒の紙パックの隣に私のお水はあった。

……なんか、大分しつこめにラップされて、上に付箋が貼ってあるけど。

『治るまでお酒は(乂・x・)だめっ』
「えー、ビールくらいはいいじゃなーい……っていうか甘酒もお酒っていうこと忘れてない?」
そんなのお構い無しにラップを剥がして打っ棄ってカシュっ!
……て、やりたいところだったけど。ここは菜々ちゃんを立てて、我慢。
働かざる者、飲むべからず。働かないで飲むビールはきっと最っ高に美味しいんだろうけれど……
菜々ちゃんの厚意を踏みにじってまで味わいたいものでもないわよね。

ラップのせいで銀色に光る缶を戻して、その隣の豆乳に手を伸ばした。

~~~~~

ほうれん草入りのちょっと熱いおかゆは適度に塩が効いてて美味しかった。熱々のおかゆに、冷やしてあったほうれん草を入れるアイデアは功を奏したようね。
食事を済ませて、薬を飲んで、食器をシンクに置いて、そこでまたあることに気付く。

「……あら。もしかして」

もしかしてしまった。
シンクに突っ込んで「いつか洗わないと」と思いながらも「いつかは今じゃないよ」と長らく放置し、
そろそろ物理的生理的衛生的などあらゆる限界を超えそうになっていた食器類はすべて綺麗に洗われ、乾燥機に整然と並べられていた。

「あらぁ……菜々ちゃんありがとう……」

ここまでされてしまうと感謝の念に加えて申し訳なささえ感じる。
さらには、自分のガサツさが浮き彫りになったかにも見えて来て、恥ずかしさも覚える。
視線をずらすと、お風呂の準備までしてあったのが目に入った。
洗濯機の上にバスタオルが置いてあって、その上にまたメモ書きが置いてあった。

『お風呂の温度は39度です。こんな気候かつ早苗さんの体調なので調節は任せますが、
少しでも異変を感じたらすぐに出てくださいね。入らないと言う選択肢もあります。
下着の類はタンスを勝手にお邪魔するわけにはいかなかったのでそれもセルフでお願いしますね。

P.S.
さすがに中辛のカレーと羽毛の布団までは用意できませんでした』

……菜々ちゃんは天使。異論はないわね。

~~~~~

やることを一通り終えて再び床に就く。
眠ろうとして目を瞑る。世界は闇に包まれる。
何も視えなくなった世界で眠りに落ちるのを待った。

……眠れない。さっきまであんなに寝てたんだから当然だ。

「久々にSNSでものぞいてみようかな」

何の気なしにスマホを手に取り、電脳の海をふらついて眠気が来るまで待つ。
時計のように並んだ12本の灰色の針が反時計回りに明滅する。
適当にものを読んで、いつの間にか眠りに落ちる。

……つもりだったのだが。

「繋がらないわね、どうしたのかしら」

電波自体に問題はないのだが、サーバが落ちているのか、画面にはタイムアウトの文字だけが浮かぶ。
SNSも音楽サイトも、どこも同じような反応だった。ならばと開いた電子書籍すらも読むことができない。

「携帯料金払ってなかったかしら……そんなことないはずよね」

数ヶ月前の不安定期なだったらいざ知らず、最近では各種支払いに悩まされることはまずない。
携帯料金も問題なく引き落とされてるはずだ。払ってなかったら数日前には督促のハガキが届いている。
料金完納でありながら使用不可能になる状況など、電波不調以外には考えられない。

「むー……見れないんだったら仕方ないわね」

待てど暮らせど見れないものは仕方ない。
スマホを充電器に挿し直して、改めて寝直すことにした。

「……Hey,Ory」

充電環境にある端末はこう話しかけると反応するのだが……返答なし。
Oryちゃんはネット接続環境じゃないと動けないから、これで本当にこの端末がネットに繋がっていないということがわかった。
電波は入ってるのに。

「……じゃあ、Hey,Kiry」

こちらも反応なし。Kiryちゃんはオフラインでも動ける子だけど、
今日はどういうわけか全然反応してくれなかった。

……あっ、この声のせいか。そりゃ反応しないわ。あっはっは!


「ゲホッ、げっほ、げほ!!」


笑ったら変なとこ入った。

~~~~~~
眠れもしない、かと言って暇を潰せるものもないと来ると、
無為に無駄に時間を過ごすという苦痛だけが残り、最早拷問である。
目を瞑れば自然と眠りに落ちる。生き物の自然の摂理であるが、
ある程度の時間寝てしまった直後となるとなかなかそうはいかない。

頭を覚醒させたまま、思考は川の流れのように絶えず動き続ける。
そうすると、まるで魚が釣れるみたいにいろいろなことを考えるようになる。
今日あったこと、明日やりたいこと、最近会ってない人のこと、仁奈ちゃんとくるみちゃんのこと、
自分自身のこれからのこと……は、キャッチアンドリリースで。

明日は……明後日まで休みだったわね。事務所の他の子も気になるし、
めまいも喉も治ったら事務所の様子を見てこよう。明日ダメだったら明後日でもいい。

瑞樹ちゃんと心ちゃん、楓ちゃんが心配だけど、あたしのやることを先ず終わらせなきゃ。それは治すこと。
体は資本だけど、とりわけあたしたちの場合、声は商売道具であり、財産ですらある。
これを取り戻さないことには、仕事ができないもの。

最近の都内はこんな感じだけど、他の地域も似たようなものなのかしら。地元の親が気にかかる。
「……夏じゃなくてよかったわ。夏だったら米がダメになるところだった」
地元はもう、稲刈りも脱穀も終えているはずだ。
仮に新潟もここみたいな感じだったとして、米にはダメージ入っていないだろう。
……たぶん。

明日の天気はどうなるのかしら。また寒いのかな。

「そだ、テレビがあるじゃない♪」

リモコンを手にとって、テレビの電源をつける。
すぐに電源がついて、画面には虹色のストライプが映った。
ポー……という、平坦な電子音のおまけつき。

「……最近のテレビだったら大体どんな深夜でも番組はやってるはずなのに」

それに深夜というほどの時間でもない。
チャンネルを次々に変えてザッピングしてみたけど、
日本全国モニタとアンテナさえあればどこでも映る、あのチャンネルですら様子は変わらなかった

しばらくして「少々お待ちください」という文字が映し出されるものの、また少しするとストライプに戻ってしまう。
「dモードも……ダメか。全部潰れちゃってるわね」
「……そういえば、テレビの収録は関係者が倒れてできなかったって菜々ちゃん言ってたけれど」

これもその影響だというのだろうか。関東キー局全てが?

~~~~~~
もともと漫画を読むたちではないため、うち程度の蔵書では数十分で読み終わってしまう漫画しか置いてなかった。
それらも全部読み終えてしまうといよいよ暇を潰せるものがない。
仁奈ちゃんがプレイしてるのに影響されて買ったゲーム機も、一人でプレイするにはあたしにとって退屈すぎるものだった。
もともと仁奈ちゃんと遊ぶためだけに買ったようなものだから、相手がいなければなんら意味がない。

……あの後、仁奈ちゃんとくるみちゃんはどうしたかしら。
心配かけてしまったのも気にかかるが、それよりも彼女らはあたしのような体調不良には陥ってないだろうか。

ゲーム機を見てると、連想ゲームが繋がるように彼女らのことが思い浮かんできた。

4月のあの事件以来、あたしと仁奈ちゃん、くるみちゃんとの距離は一層縮まった。
以前からあの二人は放って置けないような感じで気になってはいた。

それがある事件をきっかけに、よく話すようになった。

それからは一気に打ち解けて、プライベートでも遊んだり、
仁奈ちゃんとは、今年の夏はきみにいっぱいとNear to Youでも一緒に仕事をさせてもらって、
今月に入ってからは3人でユニットを組ませてもらって、何かと濃い関わりを持つに至った。

なんか、人が恋しいわ……さっきまで菜々ちゃん来てたのに、もっと話せばよかった。
喉がこんなだから、話せなかった。

喉さえ調子が戻れば……。

区切り的にここまで
ありがとうございました。予定が前倒しになりました。
次回は来週の月曜日か火曜日を予定しています。

>>29
デレマスSSは今の所Rに投下したもののみが過去作になります
あとは他所へ投げた他作品の二次創作なのでここでは伏せさせて下さい
申し訳ないです

時間をあまり開けてしまうとリズム悪くなって美味くないですし、前倒しで投稿しようと思ったのですが……
先ほど雑談スレで申し上げた通りに家のルータがいかれてしまったか
あるいは料金未納のために固定回線からアクセスすることができなくなりました
それ故にイーモバイルからの投稿になってしまい、誰かに1レスごとに合いの手入れてもらわないと連投ができない状態です
明日以降に納めに行くので月曜の投稿まで待っていただけますか

それに書き溜めもあまり溜まっていないので(小声)
このレスを書きながら貯金に次回以降の書き溜めを書いてはいますが
今回分を今から投稿するとしても6、7レスほどの内容に収まります

いつの間にか寝てしまった。あれだけ眠れないって悶えて、いつ寝たのかは覚えていないけど。

そして目を覚ました。暑苦しさで。

なにこれ、暑すぎ。
てか、なんか、痛い。肌が。
とても。えっ、何、すんっごいヌルヌルしてるんだけど。

何だこれ。汗だこれ。汗。うわ。え?キモッ。

いや無理、限界。

「~~~~~~!!!!」
昨日よりだいぶマシになった喉は声にならない叫びをあげ
飛び跳ねるように布団から出たあたしは部屋の窓を開けて外気を取り入れようとした。
そして外のあまりの眩しさに仰け反る。遅れて、外気が、涼むにはまるで役に立たないことを知る。

「熱ッッッッつ!! なに!? なんなの!?」
寝起きなのも含めてあたしは訳がわからなくなってた。

外界より煌々と照る光と灼々たる熱の暴力に相い対し、少し落ち着いてきたあたしは、部屋の温度計を見た。
「……47度。やだ、猛暑日どころじゃないじゃないの……もうどうなってるのよ……」
外は快晴も快晴。広い空は太陽一つだけが鎮座し、雲などひとかけらも出ていなかった。
寝起きで目が慣れていないこともあって、薄目で外を窺うのがやっとだった。
空から徐々に目線を下ろすと、日射に灼かれたアスファルトが陽炎を生み、グラグラと景色を揺り動かしている。
この気温からして午後まで寝過ごしただろうか。そう思って時計を見て血の気が引いた。思わず二度見した。
午前9時12分。日の出から6時間と経っていない。

「……こりゃ今日は外出なんて無理ね。死んじゃう。喉もだけど、午後になったらこんなの、どれだけ上がるか」
セミこそもう鳴いてないけど、このカッ飛んだ暑さは8月を思い起こさせた。
いや、ここまで暑くなかった気さえする。肌が痛むほどの暑さなんて前代未聞だ。
「……これ、確実に死人出るわね」

相変わらずテレビもスマホも使えない……正確には、使えるものの、情報が手に入らない。
撮りためたビデオでも観ようかと思い、デッキのリモコンを手に取ったらスマホに着信があった。ちょうど10時のことだった。

番号を見て仰天した。346プロダクション、専務室。

「……はい、もしもし。おはようございます、片桐です」

声のせいで間違われないか不安だったが、それは杞憂だとこの後すぐにわかった。

「片桐本人だな、おはよう。美城だ。臥せってる間に急に電話を入れてすまない。
単刀直入に言おう。今日は派遣も含む社員全員、屋内からの外出を禁止とした。
今日は必要がなければ外に出てはならない。
既に知っているだろうが屋外が未曾有の気温となっている。屋外は生命が危険だと判断した」

落ち着いた声の裏に少し焦りを感じる。彼女にしては珍しい。
一息で情報の波をあびせかけてきた専務に対して、あたしは一言を発する隙を突くのにやっとだった。

「ちょ、ちょっと待ってください。今346はどうなってるんですか」
「あまり時間がないので直ぐにでも切りたいのだが……
電話しか通信手段がない今、やむを得まい。
今346のビルには私と千川の2人しかいない。
相次ぐ体調不良で外出不可能者が出ていたことは一週間ほど前から把握していたが、
これはおそらくこの異常な気候変動が原因と思われる。
インターネットやテレビ、ラジオなど、電話以外の通信インフラが全て落ちているのもこれが関係しているだろう。
推測だが鉄道等の公共交通機関もほぼ機能していない虞がある」

「これは名簿に入っている連絡先から1人ずつかけてるということですか?」

「これ以外に連絡手段がない。いつ電気も不通となるかわからない。
その前になるべく多くの人間に情報を伝えねばならない。君以外の人間も含めて、社員に伝えねばならぬことは山ほどある」
専務の口調がどんどん早くなる。

「専務1人で全員におかけになるのは無理があります。千川さんはどうしたんですか」
「彼女も今連絡に当たっている。連絡すべき人数が多い。手分けはしている。
すまないがもう切るぞ。どうか体を大事にしてほしい」
それを最後に電話はプツリと切れた。
……とにかく本当に大変なことになっていることはわかった。

「ちょ、ちょっと待ってください。今346はどうなってるんですか」
「あまり時間がないので直ぐにでも切りたいのだが……
電話しか通信手段がない今、やむを得まい。
今346のビルには私と千川の2人しかいない。
相次ぐ体調不良で外出不可能者が出ていたことは一週間ほど前から把握していたが、
これはおそらくこの異常な気候変動が原因と思われる。
インターネットやテレビ、ラジオなど、電話以外の通信インフラが全て落ちているのもこれが関係しているだろう。
推測だが鉄道等の公共交通機関もほぼ機能していない虞がある」

「これは名簿に入っている連絡先から1人ずつかけてるということですか?」

「これ以外に連絡手段がない。いつ電気も不通となるかわからない。
その前になるべく多くの人間に情報を伝えねばならない。君以外の人間も含めて、社員に伝えねばならぬことは山ほどある」
専務の口調がどんどん早くなる。

「専務1人で全員におかけになるのは無理があります。千川さんはどうしたんですか」
「彼女も今連絡に当たっている。連絡すべき人数が多い。手分けはしている。
すまないがもう切るぞ。どうか体を大事にしてほしい」
それを最後に電話はプツリと切れた。
……とにかく本当に大変なことになっていることはわかった。

余計なお世話かもしれないけど、あたしが知ってる限りの同僚たちにさっきのことを伝えることにした。
すでに専務やちひろちゃんから連絡が入ってたり、電話がそもそも繋がらない人もいたけれど、
あたしにできるやるべきことをやった。あとは……

「いつもの4人、ね」

まずは昨日の今日会った菜々ちゃん。すぐに出た。

「おはようございます早苗さん。どうかしましたか」
「専務から連絡行った?今日外出禁止だって」
「入りましたよー。専務じゃなくてちひろさんからでしたけど。
10時ちょい前くらいですかね。この時間でこんな気温じゃあ、無理ですよね」
「菜々ちゃんあれから体調どう?」
「平気ですよ。全くなんともないです。早苗さんは……声はまだみたいですね」
「3人と連絡とれた?あたしこれから電話入れるんだけど」
「私もそう思ってました。知り合い同士でなるべく固まって連絡網みたいなの作って
メンバーに回してもらうのを提案しようと思ってます。2人だけじゃ負担が大きすぎます」

ナイスアイデア。

「今から楓ちゃんと瑞樹ちゃんに電話入れるつもりなんだけど
心ちゃんの番号知らないのよね……LINEはもう使えないし、菜々ちゃんお願いできる?」
「さっきから何回かかけてたんですけど、全く出ないんですよね。
昨日様子を見に行ったら早苗さんよりだいぶ元気だったのであんまり心配してなかったんですが、今はすこし心配です」
「あたしからもかけるから、番号聞いてもいい?」
「いいですよ。070……」

菜々ちゃんから心ちゃんの番号を聞いた後、今日はどうするかをお互いに伝えた。
あたしも菜々ちゃんも、日没後に外に出て自宅周辺の様子を見るということで落ち着いた。
気温の変動が読めないことから、念のため厚着を持っていくことを提案された。
「下に履くものは、少々暑いのを覚悟して暖か目にしたほうがいいかもしれません」
そして帰宅後、お互いに状況を伝え合うというところまで合意した。



そして電話を切る、その直前に。

「!……つっ……!!」

右目が急に暗くなり、ついで右耳からギィーン……と重い音の耳鳴りがして聞こえなくなった。
頭痛がやってきた。電話を右手から左手に持ち替えた。

「……早苗さん?」
「……ごめん、大丈夫よ。続け……ッッッッアアアッ!!!!」
菜々ちゃんの声にハウリングがかかり、不明瞭になる。

「……!!……!!」
痛みで声にならない。痛みに反応する体の動きがさらなる痛みを呼び、その痛みがさらに強い痛みを呼び。
加速度的に強まる、永遠に終わらないように思える甚大な痛みの螺旋に飲まれた。
「早苗さん!?どうしたんですか!?返事してください!!早苗さん!!早苗さん!!!」
涙が止まらない。頭だけの痛みが全身に波及し、体を蝕むように感ぜられた。
吐き気を催す。逃げようと体が反射的に身をよじっても、痛みからは逃れられない。
痛みはどんどんと増して行く。

「………………」
あたしはそのまま気を失った。

申し訳ありません、倒れました
10月30日に延ばします
11月6日になってもダメだった場合、不本意ですがHTML依頼を出します

仁奈早苗くるみはただ単に私が好きな組み合わせなのです
理由もなしに絡ませてしまった以上は説明責任を果たさねばならないだろうと薄々思ってはいたものの
理由はこの通り一行で終わってしまう単純なものです
「夏にデレステでイベント共演していた」「くるみちゃんのママが早苗さんに似ている」
などの理由もありますが、やはり上に比べると些細なものです

構想もあるのでジサツが終わった暁には仁奈早苗くるみの「4月の出来事」を書きます

少々私事が入り恐縮でありますが、診断名がちょっとショックだったため予定通りジサツの連載は昨日は休みました
本日も投下しないかもしれません
ご迷惑おかけします

次に目を覚ましたのは正午をとっくに過ぎた午後3時。気温はさらに上がって、52度を示していた。こないだ旅行に行ったニューデリーですらここまでの気温ではなかった。
もはや驚いてみせる余裕がない。
カーテンも雨戸も閉めて、光が一切入らないようにして、クーラーを最低温度最大風量まで回していても尚まとわりつくような熱気が伝わってくる。
電気が止まってしまえば、もうあたしは死んでしまうかもしれない。

左手の電話を見ると、左手の形に沿うように画面が割れているのが見えた。
裏面を覆うプラスチックケースも画面と同様の不運に見舞われた。
割れ裂けてささくれ立ったケースはあたしの左の薬指の第二関節あたりを切り、赤い血に染まっていた。
指は痛みを感じない。痛いのだろうけれど、あの地獄のような痛みの後だとこれしきの傷では痛みを感じなくなっていた。
「……相当苦しんだみたいね、あたし」

付着した血液を拭き取り、携帯を確認すると、かろうじて携帯の中身は無事なようであった。
とは言っても依然として通信はできないままだけど。
ひび割れた画面を通した着信履歴には、30分ごとに菜々ちゃんから着信があったことが示されている。
最後の着信は2時間前。そこに留守電が入っていた。

『もしもし、菜々です。いきなり切れてしまったので心配しています
余裕が戻ったら電話下さい。待ってます』

平然を装ってるけど、鼻声で、明らかに声が震えていた。泣いた後のようにも聞こえる。

「余計な心配させちゃったわね……」

履歴からそのまま電話をかける。発信音が聞こえるから、通話機能も無事みたい。よかった。

しかし。

「……出ないわね」
長い呼び出し音の後、お留守番サービスがどうのと自動音声が聞こえた。
この後4回ほど掛け直したが、いずれも同じ結果であった。
呼び出し音が鳴っていると言うことは、まだ電話回線がダウンしたわけでもなさそうだ。

「どうせ日が落ちるまで時間空いてるし、気長に待つわよ、あたしは」

待ってる間に3人に電話をかけよう。まずは瑞樹ちゃん。
2コール半、6秒ほどして瑞樹ちゃんが出た。

「もしもしー、早苗ちゃん?どうしたの」
「出た!あぁよかったぁ……」
「出たって何よ。幽霊じゃないんだから。もう」

「菜々ちゃんから倒れたって聞いたからさー、心配でかけちゃった」
「私も昨日菜々ちゃんから、早苗ちゃん倒れたーって聞いてて……こっちもかけようと思ってたのよ。
電話帳で発信押そうとした瞬間にかかってきたからちょっとびっくりしちゃった」
「体調は大丈夫そう?」
「なんとかねー。昨日は死ぬかと思ったけど。頭痛は少しあったけど今は全然ない。多分、胃腸に来ちゃってる」
「あちゃー」
「そっちは?」
「まだ残ってる頭痛と喉がちょっと。熱はないのよ?でも立ちくらみがひどくて、目は見えなくなっちゃうし、
耳は聞こえなくなるしで、昨日途中で帰って来ちゃった。菜々ちゃんに代打頼んでもらって、ね」
「やだ、目と耳がダメになるって、ちょっと大丈夫?そういえば少し声かすれてる?」
「やっぱわかっちゃう?これでも結構良くなった方なのよ。もう目も耳も平気。
さっきまで頭痛の方で気絶して、今やっとまともに会話できるようになったの。あまりに痛すぎたのかしらね?左手で携帯持ってたのに画面もケースもバッキバキよー」
「……さらっととんでもないこと言ってるけど、なんか私より相当深刻じゃない?電話してて平気なの?」
「なんともないわよー今のとこ。昨日菜々ちゃんから何か聞いた?」
「昨日は何処の局も臨時で一切の業務を停止してる、ということを聞いたわ」

「……え、そこまでだったの?」
「ええ。菜々ちゃんはそう言ってた」
「あたしが聞いたのは『偉い人が直々に収録中止を伝えに来た』ってことくらいだったけど」
「それも聞いたわ。青い顔して震えてて、杖ついてて今にも倒れて死にそうだった、って」
「うわぁ……」
「そういえば専務から電話かかってこなかった?外出禁止ですってよ。
言われなくてもこんな地獄みたいな炎天下にのこのこ出て行くもんですかってのよ。ねえ?」
「もうかかってたのね。こっちも朝10時ごろ連絡あって、ちひろちゃんと手分けしてこれから全員に電話をかける、みたいなこと言ってたわ」
「なら全員にかけ終わったのかしらね。こっちにかかって来たのは1時くらいだから」
「楓ちゃんと心ちゃんは?」
「楓ちゃんのところは専務からもちひろちゃんからも連絡行ったみたい。
菜々ちゃんからも私からも連絡が行ったから、いい加減同じ内容何回も聞くの聞き飽きたとか言ってたわよ」
「なら楓ちゃんはわざわざかけなくてもいいかしら」
「一応かけたら?あなたのことすごく心配してたから」

「そういえば心ちゃんは?」
「私はまだ連絡ついてない。菜々ちゃんは昨日私に会う前に会ったって言ってたけど、その時はなんともなかったみたいだから心配なのよね。
専務もちひろちゃんも何回かかけたけど、出ないみたいなこと言ってたし」
「いよいよ心配ね。あたしもこの後かけるつもりだけど」
「早苗ちゃん今日はこれからどうするの? どうするのって言っても、その様子だと外に行くのも大変だと思うけど」

瑞樹ちゃんに、菜々ちゃんと約束したことを過不足なく伝えた。

「日没後に外の様子見、ねぇ……外出禁止のお触れが出たばかりだってのによくやるわよ」
「"日中"なわけだし日没後はセーフでしょ」
「一応、うちの窓からだと出なくてもいろいろ外のことはわかるんだけど」
「どうなってる?」
「どうもこうも、不気味なくらい無人よ。電車もバスも今日は朝から全然走ってないわ。
一昨日くらいは便が減っててもなんとか走ってたし、人も車もちょこちょこ見かけてたんだけど
今日は一切なし。ゼロ。本当に正真正銘の無人よ。夜になってもビルは全っっっ部真っ暗。
街灯あんまりないところだからおっかなくって歩けないわ。
昼は雲も無いから、ずっと外の景色見てるとでっかい写真を眺めてるんじゃ無いかって錯覚してくるわよ」

瑞樹ちゃんの住んでいるところはプロダクションからはそう遠く離れてはいないところ。
プロダクションへは歩こうと思えば歩きで行けちゃう距離だし、そんな都心が今ではとんでもないことになっているらしい。
うちの周辺もちょっと怪しいかも。

瑞樹ちゃんとも自宅周辺の調査を軽く行ってから現状を報告し合うという事で電話を切った。
この時点で午後3時半。結構長く話し込んでいたらしい。
クーラーが効いてきたのだろうか、少し肌寒くなってきた。風量を少し落とした。
……なんかさっきからやたら耳が突っ張るわね。中耳炎になっちゃったかしら。
くだんの風邪(?)は鼻にも喉にも来てはいないのだが。

連絡するのは、あとは楓ちゃんと心ちゃん。頭痛の予兆が全くないことを確認してから
次に楓ちゃんに電話をかける。
呼び出し音が鳴る前、コンマ1秒ほどで出た。何、早っ。

「も「もしもし楓ですっ!早苗さん大丈夫ですか!?」」

食い気味に応答されたので話そうと思ってたことが頭から吹き飛ぶ。

「アンタなんでそんな声でかいのよ。耳が痛いわ」
「ごめんなさい、心配で 心配で……」
「ありがとうね。楓ちゃんは大丈夫そうね。喉も」
「一週間 く らいお休 み を頂いて ましたし、私、は、、、げ、元気ですよ」
「何よりよ。菜々ちゃんからなんか聞いた?」
「『酒飲んでるんじゃありませんよ』って 唐揚 げされ ちゃい ました」
「取り上げられたのね」
「鳥、揚げ……ふふっ」
「あーはいはい」

奈々ちゃん、楓ちゃんのところでも禁酒令を敷いてたのね。

……さっきからなんだか音声の調子が悪い。
通話はさっきの瑞樹ちゃんとの通話で問題ないことを確認しているから、これは別の原因があるのだろう。

「さ、、、早苗さ、早苗さんは今は頭痛は大丈夫なんですか?」
「さっきまですんごい悶絶してた。左手でスマホをバッキーて割っちゃうくらい」
「えぇ……」
「楓ちゃんとこちょっと電波悪い?なんかさっきから声が途切れたりしてるけど」
「あぁー……えっ、、、と、で、、電ぷ、っぷ、電波は悪くないです」
「……ちょっと?」

なんか寒いわね。クーラーの温度下げすぎたかも。22度くらいに設定し直す。

「……ごめんなさい。じぅ、じっ、じちゅ、実はちょっとまだ、、調子は戻ってないんです」

言葉を繰り返したり、途切ったり、詰まったりしているように聞こえる。

「……大体事情はわかったわ」
「から、体もちょっと……震えちゃうんですよね……」
「それは飲みすぎなんじゃないの?」
「そ、そん、そんなk、そんなことはないですよ。ちゃんと、、、禁酒してましたから。昨日までは」
「……原因は?」

想像はつくけれど。

「風邪、としかいいようがない、な、ないって……」
体や声が震えてままならない症状の風邪って何よ。
……まあ、私も似たような診断だったけれど。
「声、震えちゃうのね?」
「はい……」
「メールできたらよかったんだけど……今だともう、ねぇ」
「お話でき て よかっ、、、たです」
「私も。お大事にね、楓ちゃん」
瑞樹ちゃんにも言ったことを伝えようと思ったけれど、声がこうなってしまってるのに返事が必要な会話をするのも酷だと思った。
「これは一方的に話すことだから聞いて欲しいんだけど……」

だから、こう前置きして、さっき瑞樹ちゃんに言ったことを伝えた。

「体の震えが止まってからでいいからね?」
「わk、わかり、、、ました」
「じゃあ、切るわよ。お大事にね、楓ちゃん」
「早苗さん も」

予定を4日ほど遅れてしまったことをお詫び申し上げます。
あまり展開進みませんでしたけどここまで。

次回は日曜、月曜を目指してはいますが、
病気の状態と論文の中間発表がある関係で少し余裕を持って11月13日とします。

今回も読んでいただきありがとうございました。

生存しております。
余裕を持って設定したつもりでしたが力及ばず実現できませんでした。
本日の所用が終了したのち、余力があれば本日投下します。
力尽きた場合もう一つの現行スレと同様に11月16日の投下とします。

~~~~~~~
午後4時10分。クーラーを切ったのにもかかわらず室温が戻らない。
それどころかさらに冷え込んでいるような気さえする。耳のつっぱりも耳抜きをしたところでキリがない。
「菜々ちゃんの予想が当たったのかしら……」
外出用に用意していた上着を室内で羽織る。数刻前では考えられない選択肢だった。

実際に菜々ちゃんの見込みは正しかったといえた。思い切り空気を吸った鼻を弱く刺す痛みは嫌でも冬を思い起こさせる。

「心ちゃん、つながって……」
楓ちゃんには確認してなかったけれど、多分あの様子では彼女から誰かに電話をかけているような様子はない。
電話帳から心ちゃんの番号を呼び出してかけてみる。

「……出ないわ」
菜々ちゃんの時と同じようにお留守番サービスにつながるばかりで、本人が出ることはなかった。

冷えが込んできた。
「ちょっと、本当に寒くなってきたわ……まだ日は入ってないはずよね……?」
雨戸の隙間から伸びる橙色の光が、まだ日中であることを物語っている。

「ちょっと開けてみようかしら……」

ガラス戸を雨戸と共に開けはなつと、眩しい西日と乾いた冷たい空気が部屋に入り込む。

「日中あんなに暑かったのに……」

日較差40度超。砂漠か何かだろうか。
「ともあれ、もう外出は可能よね。出かけよう」

菜々ちゃんと心ちゃんが気がかりだけど、調査してからでも遅くはない。
これはまたとないチャンスかもしれないのだから。

家を出て歩くこと数分、またしても異常な光景に出くわす。
これは昨日よりもひどい。
「……文字通り、人っ子一人いないわね。車も一台もないわ」
瑞樹ちゃんの話を聞いた時から予感はしていたけれど。
実際に目の前にしてみると、風にそよぐ街路樹の枝葉、
今は意味のない信号機の光、それらを除いた全ての景色はまるで静止画にしか見えない。
視線を固定していると、大きな絵の中に閉じ込められたみたいで怖くなってくる。

下町とはいえ、ここまで静かなのは深夜でもなかなか見ない。
昨年の暮れ、楓ちゃんと飲み明かして終電を超えた時間で都内の大通り真ん中で年を越したことを思い出す。
東京駅丸の内口の、本当に真っ暗になって、あたしたち以外誰もいなかったあの光景を思い出す。

「あの時も、こんな風に誰もいなかったわね」

年の瀬の深夜真っ只中となればあの一帯のオフィス街はほとんどどこも休みで人がいない。
何もない平日であればあの付近は常に人が行き交い、あの時みたいに車道で歩きながら喋るなんてこともできない。

「……今年も、無事に越せるといいな」

どうかこれが、大いなる悲劇の幕開け、だなんてことにならないように願う。

~~~~~~
「……まあ、予想はしてたけれど。いざ目の当たりにすると壮観ね」
生活圏を徒歩で散策するのを片手間に、近所のスーパーに向かった。
当然、と言ってはなんだけど、少しばかりお年寄りがカートを押してるくらい。
客はほとんどいない。日中の客足も推して知るべしかしら。

客がいないだけならよかったのだが。

「……おかゆやレンジのご飯すらすっからかんね。野菜もお肉もお魚も一切売れちゃってる」
まあ、おかゆは菜々ちゃんが作ってくれたのがまだあるから、全然問題ないけど。

『先の異常気象の影響により、本日は「スカッとマスカット」
「カットサラダ」「もやし詰め込んじゃったー☆」「玉ねぎですよ、たまねぎ!」
「刻むぜ!ビート!」「恒例の高麗人参」関連の果物、野菜の入荷がありません。
お客様にはご迷惑おかけしますが何卒ご理解いただきたく存じます』

野菜以外も、肉、魚などの生鮮系はどれも全滅だった。
人通りの薄さや気温を考えて日中誰かが買い占めに殺到したというのは考えづらい。昨日の段階で売り切れたとみて良い。
インスタント食品のコーナーは棚が拡大された形跡が見受けられるものの、
その中にあるものはほとんどが売り切られ、無くなっていた。
「春雨スープ、わかめスープ……これくらいかしら」
家にあるものと、栄養のバランスを考えても此れ程のものしか手に入らないようだった。

「あとは……炭酸は炭酸水しか残ってないわね」

レジには、いつもは見かけない初老の男性が、1人だけでレジをさばいていた。
さばいてるといっても、レジを待つ客はあたしを含めて4人くらいしかいなかったけど。

生の食料品も無いことだし、せっかくだから他の階を回ってみた。
どの回も人があたし含めても2人ほどしかおらず、店員も少ないのか、ネットを張ってアウトしている売り場もまま見られた。

スーパーを出てしばらく。
「ちょっと風が出てきたわね。もっと冷えてきたわ」
午後7時。炭酸水と少しばかりのインスタント食品の入ったビニール袋をぶら下げて、あたしは帰路についた。

カーブミラーが結露によって曇り、その用をほぼ成していない。
「……車が走ってなくてよかった、というべきかしら」
尤も、ほとんどのドライバーは注目せずに一時停車するだけらしい、というのは交通課時代の伝聞。
一時停止を守っても、ここくらい幅が広いと油断してカーブミラーを見ないドライバーは多い。

s/伝聞/認識

でお願いします

~~~~~~
「うぅ~、寒っ。暖房暖房、っと」
帰宅してすぐエアコンを暖房で運転させる。
リモコンをテーブルの上に置いて、携帯を覗き込む。
相変わらずネットには通じない。
電話帳から菜々ちゃんの番号を呼び出してかけてみる。

「もしもし、菜々ちゃん?」
「早苗さん!」
すぐに出てくれた。よかった。
「大丈夫ですか?」
「平気よ。頭痛が急に来ちゃって。心配させちゃってごめん」
「早苗さんが無事なら、よかったです」
「あっ。ねえ、そっちはどんな感じ?やっぱり冷えてる?」
「摂氏9度です。気圧も990で、湿度もかなり落ちてます
早苗さんのところも気温下がってますか?」
「そりゃもう。目が覚めて瑞樹ちゃんと楓ちゃんのところに連絡したんだけど、
その時から気温下がってたみたいね」
「何時頃ですか?」
「午後3時半くらいかな?そこから下がって来たんじゃないかなって」
「こちらも同様です。少なくとも首都圏はほぼどこも同じ状況じゃないかと思います」
「さっきまでスーパー行ってたんだけど、食料品ほぼ全滅で、
上の衣料とか本屋とかは全然人いないし、店員も不足してるっぽくて、結構な売り場がアウトされてたわ」
「こちらもそうですね。食料品以外の売り場はそもそも立ち入りすらできませんでした……
あ、おかゆ食べてます?」
「今あっためてるとこー。今更かもしれないけど、ありがとうね、菜々ちゃん。色々やってもらっちゃったみたいで」
「いいんです、早苗さんが元気なら、それだけで」

やん。もう。

「……道中はどんな感じだった?」
「ほぼ無人でしたね。それでもちらほら、400m毎に人2人くらい見るか見ないかくらいでした」

だいたい似たような状況だったことを確認しあい、話題は楓ちゃんたちの話に移った。

「楓ちゃん、どうしちゃったの、あれ」
「声の震えですよね。1週間ほど前からああだったようです」
「行った時も?」
「恐らくは。ただ、結構ご無理されてたみたいで」
「心ちゃんどうなってるの?」
「最後にお会いしたのはおとといですが、あれ以降不明です。電話も繋がらないんですよ……」
「同じだわ……変わったことはあった?」
「いえ、特にはなかったので、だから心配なんです」
「明日行ってみる?」
「電車があれば行きたいのですが……」
「日中大丈夫そうだったら車でそっち行くわ。乗せてくから案内してもらえる?」
「ありがとうございます。でも、体調が体調ですからご無理なさらないように」
「今日は割と平気だったし、何かなければそっちに行くから。瑞樹ちゃんにも一応伝えとくわね」
「お願いします」
「それと専務への連絡はどうする?」
「近い知り合いで連絡網を作って代表がそれを連絡すると言う形で落ち着きました。
私、早苗さん、瑞樹さん、楓さん、心さん、のあさん、美優さん、晶葉ちゃん、こずえちゃんが私のグループということになってます」
「のあちゃん達4人はどういう……?」
「彼女達は他のグループに属していますが、そのグループで連絡を伝えるのが約束できない恐れがあるため、とのことです」
「ふむふむ……」
「心さん宅行った後どうします?」
「出来そうなら楓ちゃん拾ってそのまま瑞樹ちゃんち行こうと思ってる。
固まったほうが今はいいかもって思って。ちゃんと瑞樹ちゃんには連絡するわ」
「私からも伝えておきますね」
「よろしく。じゃあ、これくらいかな、伝えることは」
「そうですね」

「……体、気をつけてね」
「お互い様ですよ」
「おやすみ」
「おやすみなさい」

今日はこれまでです。今回もありがとうございました。次回もよろしくお願い申し上げます。
次回以降1場面あたりの登場人物が3人以上に増えるため、混乱を防ぐ目的で名前台本形式が混ざります。
台本、地の文、名前付き台本と形式がごちゃ混ぜになってしまったのは無計画の至りであります。

別スレや別ネタに浮気していた上、一ヶ月も放置してしまい申し訳ありません。
次回更新は誘拐と同様1週間後としたいですが、私事や体調の事情により2週間ほどかかるかもしれません。

当初の予定より深刻に殺伐な方向へ行ってしまっているのでプロットを練り直しております。

生存しております。今しばらくお待ちください。
お待たせして申し訳ありません。

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