秋の陽炎型 (95)


陽炎から秋雲まで。

陽炎型姉妹実装17人分。



続き物です。
夏→冬→春→秋 の順にご覧下さい。


夏の陽炎型
夏の陽炎型 - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1437361196/)

冬の陽炎型
冬の陽炎型 - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1453085655/)

春の陽炎型
春の陽炎型 - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1460947475/)



SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1476638462



【 陽炎 】


『 そのハンバーグには、刻んだピーマンが入ってる 』

笑顔でおかわりをする雪風に、真実を告げるつもりはない。


『 そのカレーには、すりおろしたセロリが入ってる 』

上機嫌で大盛りをねだる時津風に、これからも言うつもりはない。


素敵なお姉ちゃんを、褒めてほしい。
陽炎はとうとうやりました。



黒潮「陽炎」

不知火「陽炎」

陽炎「やったわ!二人とも全然気付いてない」

黒潮「見事やで」

不知火「流石は陽炎です」

陽炎「自信が付いたわ!ナスでもゴーヤでも何でも来い、よ!」

黒潮「おー」パチパチ

不知火「おー」パチパチ

陽炎「今度は谷風と舞風に挑戦よ!絶対好き嫌いを無くすんだからね!」



【 不知火 】


うさぴょん うさぴょん なに見て跳ねる

十五夜 お月さま 見てうさぴょん



陽炎「今夜は十五夜ね」

不知火「お月見の準備が出来ました」

黒潮「風流やなー」



金剛「HEY!お邪魔しマース」バーン!

陽炎「あ、金剛さん」

金剛「アイオワを連れて来まシター!」

アイオワ「よろしくハロー」

黒潮「は、はろー」

金剛「日本の秋を教えてマース」

アイオワ「金剛ティーチャーね」

不知火「日本の秋、ですか」






金剛「コレが花見デース!」

アイオワ「Oh!ハナミ!」

陽炎「月見です」


金剛「コレが餅デース!」

アイオワ「Oh!モチ!」

不知火「団子です」


金剛「コレがスズキデース!」

アイオワ「Oh!ワゴンR!」

黒潮「ススキやでー」


陽炎「全力で大嘘を教えてるわね」

不知火「あいかわらず絶好調です」


金剛「そして、マリファナ、デース!!」

アイオワ「Oh!マリファナ!知ってマース!!」

黒潮「紅葉やでー」



【 黒潮 】


黒潮「お灸?何それ、どないしたん」

陽炎「試供品で貰ってきたの」

黒潮「へー、お灸なんか初めて見るわ」

陽炎「ほら、横になって」

黒潮「はあ?ウチがやんの」

陽炎「当たり前じゃない、アンタ以外に誰がやんのよ」

黒潮「いや、ウチいらんて。お灸とかおばあちゃんやん」

陽炎「これ、効能。よく読んで」

黒潮「えー、血行促進、リラックス効果、冷え性予防……」

陽炎「もっと下」

黒潮「何々……デトックス作用にダイエットにも有効?」

黒潮「いやいや嘘やん、そんなん聞いた事ないわ」


陽炎「温熱効果で身体のツボを刺激するんだから、理に適ってるでしょ」

黒潮「いや、そもそもウチ太ってないし」

陽炎「アンタ体重計持ってくるわよ」

黒潮「う」

陽炎「いいから、さっさと服脱いで」

黒潮「え、何なん?ホンマにやるん。ウチ熱いのとかイヤや」

陽炎「馬鹿ね、最近のはちゃんとしてるわよ」

黒潮「えー」

陽炎「煙が出ないのとかハーブとか、色々あるんだから」

陽炎「寝てるだけで痩せて健康になれるんだから、結構な話じゃない」

黒潮「なら陽炎がやればええやん」

陽炎「私、太ってないブヒ」

黒潮「よっしゃ陽炎、ちょっと表出よか」

陽炎「アンタが痩せないからでしょ」

陽炎「ほらほら、さっさとしなさい」

黒潮「何やもう、強引やなー」






黒潮「脱いだでー」

陽炎「スカートもよ」

黒潮「えっ?下はええよ」

陽炎「どうせなら全部やった方がいいでしょ」

黒潮「でも恥ずかしいやん」

陽炎「誰もいないのに何言ってんのよ」

黒潮「いやー、でもなー」

陽炎「むくみとかも取れるのよ。冷え性も治るし」

陽炎「それに万が一、服が焦げたらどうするの」

陽炎「ほら、さっさと脱ぎなさい」

黒潮「ホンマ強引やなー」






黒潮「脱いだでー」

陽炎「それじゃあ もぐさ を置いていくわよ」

黒潮「何かくすぐったいわ」

黒潮「火傷とかせんやろか、痕とか残ったらイヤやわー」

陽炎「台座もあるし、そんなに高熱にならないから大丈夫よ」

陽炎「あ、ちょっとパンツずらすわね」ペロン

黒潮「ほわっ!?」

黒潮「なっ、何すんの?お尻丸見えやん!」

陽炎「ここにヒップアップのツボがあるのよ」

黒潮「アカン、アカン、お尻はアカンて」

陽炎「アンタお尻大きすぎなのよ。ちょっと引き締めなきゃ駄目」ペシペシ

黒潮「ちょっと!お尻叩かんといて!」

陽炎「あとは太ももとふくらはぎね」

黒潮「ちょっと陽炎?話 聞いてる」

陽炎「ハイハイ」

陽炎「それにしても……」

黒潮「太ってない、太ってない。違うで」

陽炎「お尻だけじゃなくて、太ももまでムチムチじゃない」

黒潮「ムチムチちゃうわ!」

陽炎「アンタこれ以上太ったら出荷するわよ」

黒潮「出荷って……何なんウチ」



司令「あー、ちょっといいかな?」ドアガチャバタン!

司令「新しい部屋割りについてなんだけど……」スタスタ

陽炎「あ」

司令「あ」

黒潮「えっ?」



◇◇◇


甘味処 間宮



司令「えーっと……餡蜜とアイス最中に、わらび餅でお願いします」

間宮「あらあら、すごいですね」

黒潮「全部大盛で!」

司令「大盛でお願いします。あと、俺にコーヒーを」

間宮「あらあら」クスクス





黒潮「こんなんじゃ絶対ごまかされへんから」パクパクモグモグ

司令「何でも注文していいよ」

黒潮「あーあ、ウチ汚されてもうた。花びら散りまくりやわ」

司令「おかわりもいいよ」

黒潮「辱めやわ、くっ殺やわ、涙止まらへんわ」

司令「パフェも美味しそうだよ」

黒潮「ウチもうお嫁いかれへん」

黒潮「絶対司令はんに責任とってもらうから」

司令「モンブランフェアだって。頼んでみようか」






黒潮「それで……えっと…」モジモジ

黒潮「ホンマのとこ……どこまで見たん」チラ

黒潮「ウチの裸」

司令「え、いや……えーっと」

黒潮「ホンマのこと言うて、ホンマのこと言うて」

司令「あー…その、全部……かな ///」(小声)

黒潮「~~~~ッ!! ///」バンバンバン!

司令「間宮さん、カステラとバナナパフェ追加で」

黒潮「大盛で!両方大盛で!あと栗ぜんざいも!」

黒潮「くううぅぅ~~~ ///」ゴロゴローッ!

黒潮「司令はんのアホ、アホ!エッチ!」

司令「あー、いや、本当にスマン」

黒潮「絶対内緒やから!他の娘とか絶対やで!」






黒潮「それで……その、どうやった?」

司令「どう、とは?」

黒潮「だからその……ウチの身体見て、どう思ったかって事やん」

司令「……いや、それは何と言うか本当にすまない」

黒潮「そうやのうて!」バンッ!

司令「?」

黒潮「へっ、変やなかった?その、何か太っ…太ってるなーとか」

司令「いや、全然。綺麗だったよ」

黒潮「~~~~ッ!!? ///」ボンッ!

黒潮「しっ、司令はんのアホ!アホアホアホーッ! ///」バシバシバシ!




雷「な、何て会話してんのよあの二人は…… ///」

電「は、はわ…はわ、はわわ…… ///」

暁「く、黒潮がレディに…レディに…… ///」

響「やれやれ、司令官も隅に置けないね ///」



【 親潮 】


親潮「ようやく着任出来ました」

親潮「みんな元気でしょうか。早く黒潮さんに会いたいです」

黒潮「親潮ー!」ダダダーッ

親潮「!」

黒潮「おかえりー!会いたかったでー」ダキーッ

親潮「黒潮さん!あたしも!あたしも会いたかったです」

黒潮「うんうん、また一緒やなー」



黒潮「あんな親潮、聞いて聞いて」

黒潮「陽炎がな、ウチの事いじめんねん」

親潮「ッッ!?」

黒潮「毎日顔を合わす度にな、ひどい事ばっかり言うんや」

親潮「そ、そんなまさか」

黒潮「ホンマやん。こないだもお灸据えたる!言うてな、嫌がるウチに熱いのをな」

親潮「し、信じられません……」

黒潮「不知火も一緒になってウチを追いかけ回すんや」

黒潮「ウチもう、泣いて泣いて」

親潮「いじめなど言語道断です!」

親潮「どんな理由があるにせよ、決して許されるものではありません」

親潮「分かりました。この親潮から厳しく言わせてもらいます」

黒潮「さすが親潮や、親潮だけがウチの味方や」ホロリ

親潮「お任せ下さい。ビシッと言ってやります!」

黒潮「うんうん、言ったって言ったって、ビシッと言ったって」



親潮「ところで黒潮さんは、いつ式を挙げられたのですか」

黒潮「えっ?」

親潮「綺麗だったでしょうね、ウエディングドレス。親潮も見たかったです」

黒潮「ウチ、ドレスなんか着てないで」

親潮「え?白無垢だったのですか」

黒潮「いや、そうやのうて」

親潮「和装もいいですよね……着任が遅れたのが本当に悔やまれます」

黒潮「そもそも式を挙げてないんやって」

親潮「何と!そうなのですか」

黒潮「そらそうやで」

親潮「えっと、それは敵の殲滅を果たしてから改めて……という事ですか」

黒潮「敵?殲滅?」

親潮「ふむ、まあ比較的平穏と言えど一応は戦時下ですしね」

親潮「全て終わってからの方が、順序としては正しいのかもしれません」

黒潮「いや、だからケッコン自体してないんやて」

親潮「は?」

黒潮「式も挙げてないし、指輪も貰てない」

親潮「それはつまり……事実婚、という事ですか」

黒潮「は?」

親潮「確かに深い絆と信頼があれば、形式に拘る必要はありませんが……」

親潮「婚前交渉というのは、あまり感心出来ませんね」

黒潮「婚前交渉て」


親潮「それで、今は何カ月なんですか」

黒潮「」

黒潮「何カ月って……何の事やろ」

親潮「何を呑気な。お身体は大丈夫なのですか」

黒潮「全然平気やで」

親潮「なるほど、もう安定期なのですね」

黒潮「黒潮って安定感あるなー(物理)とはよく言われるけど」

親潮「名前はもう決められましたか」

黒潮「名前って言われてもな」

親潮「男なら勇ましく、黒剛、黒龍、黒鷹……」

親潮「女なら慎ましく、黒鶴、黒鳳、黒驤……」

黒潮「いやいや、何も決めてないって」

親潮「まあ、顔を見てからの方がいいですかね」


黒潮「よし親潮、少し落ち着こうな」

親潮「ああっ、あたしとした事が気が付きませんで」

親潮「立ちっぱなしは身体に障りますよね。どこかゆっくり座れる場所へ」

黒潮「そんなん全然平気やで。昨日だって出撃してきたし」

親潮「なっ、なんて事を!」

親潮「お腹の子に何かあったらどうするのですか!」

黒潮「」

親潮「責任感の強い方ですから、無理をするのは分かります」

親潮「しかし、もう貴方ひとりの身体ではないのですよ」

黒潮「いや、そら体重は二人分やけど……」

親潮「そうですよね、二人分ですものね。お腹空きますよね」

黒潮「いや別に。さっきたこ焼き食べたし」

親潮「もっと栄養のあるものを食べないと」

親潮「鯉こくなんていいと聞きますね、浦風に頼んでおきましょう」

黒潮「鯉こくって何やろ」


親潮「どうしました難しい顔をして、何か不安でも」

黒潮「そら不安にもなるわ」

親潮「安心して下さい。このお尻なら大丈夫です」ペシペシ

黒潮「ちょっ!?親潮? ///」

親潮「陽炎型で一番の安産型ですから。浜風にだって負けてません」

黒潮「いや、ウチお尻全然大きくないし、違うし」

親潮「何を言っているのですか、これだけ立派なら全然大丈夫ですよ」パシパシ

親潮「元気な子がバンバン産めます。何の心配もいりません」

黒潮「ウチはアンタが心配やわ」

親潮「腰もお腹も張りがあって、順調そうですね」サスサス

黒潮「メッチャ優しくお腹撫でられてる」

親潮「うふふ、親潮叔母さんでちゅよ~。早く会いたいでちゅね~」

黒潮「その聖母みたいな顔やめて」

親潮「新しい生命の鼓動、小さな息吹を感じます」ナデナデ

黒潮「幻聴やで」

親潮「あ、動いた」

黒潮「」



【 初風 】


妙高「おはようございます」

提督「ああ、おはよう妙高……ん?」

提督「おや、今日は髪型が違うんだね」

妙高「はい、気分転換に」

提督「髪を下しているのは初めて見たよ」

妙高「あら、そうでしたか?うふふ」

提督「うん、とてもよく似合っているよ」

妙高「ありがとうございます」


提督「しかし随分と印象が変わるもんだね」

妙高「提督はどちらの髪型がお好きですか」

提督「うーん、難しい質問だね」

妙高「どっちでもいいは駄目ですよ」クスクス

提督「あはは、参ったね……でも、本当にどちらも同じくらい素敵だよ」

提督「やっぱり元がいいからかな」

妙高「あら、お上手ですね」

提督「いやー、ははは」

初風「……」ムー


提督「こうして見ると、意外に髪が長いんだね」

妙高「結んでいると分かりませんよね」

提督「うん、さらりと伸びてとても綺麗だ」

妙高「うふふ、触ってみます?」

提督「いや、それは…… ///」

妙高「遠慮なさらず、さあどうぞ ///」

初風「……」ピキピキ

初風「デレデレしてんじゃないわよっ!」ガスッ!

提督「ぐはあッ!?」

初風「もう執務中なんだからね!ほら、早く書類を片付けるわよ!」

妙高「あらあら」



◇◇◇


提督『違う髪型も新鮮だね、よく似合っているよ』

提督『元がいいからかな、どちらも素敵だよ』

提督『綺麗な髪だね、ああ、触ってみたいなぁ』




初風「……」

初風「……」ゴソゴソ

初風「……」キュッキュッ

初風「……」


初風「……駄目だ」

初風「普段やらないから上手く結えない」シュン


陽炎「あら初風、何してんの」

初風「あ、陽炎」

陽炎「リボン?結んであげよっか」

初風「え、あの」

陽炎「ほらほら、そこ座って」

初風「う、うん……」

陽炎「アンタがリボンなんて珍しいわね」


陽炎「それじゃ最初に少し梳くわね」スッスッ

陽炎「しっかしアンタ、本当に綺麗な髪ね」

初風「そんな事ないわよ、普通よ」

陽炎「いやいや、毛先までサラッサラじゃない」

陽炎「このままシャンプーのCMとか出れる勢いよ」

初風「何よそれ」クス

陽炎「それで、えーっと、どんな風に結ぶ?」

初風「どんな風って……」

陽炎「ポニテ、ツイン、サイド、何でも出来るわよ」

初風「あ、えーっと……どうしよう」

陽炎「何よ、決めてないの」

陽炎「とりあえず色々やってみる?」

初風「う、うん」


陽炎「瑞鳳さん」ズイ

陽炎「瑞鶴さん」ズイ

陽炎「加賀さん」デデン!

陽炎「アンタ何でも似合うわね」

初風「そ、そう?」

陽炎「変わった所で浦風とか」ウラー

初風「フレンチウルーラーね」ウララー

陽炎「お、これも意外と」

初風「あの子よくこんな面倒くさい髪型にしてるわね」

陽炎「仕方ないわねー、浦風は金剛さん愛しちゃってるから」

初風「まあ、分かるけど」


陽炎「アンタは?妙高さんの真似しないの」

初風「私は……無理よ」

陽炎「無理って」

初風「妙高姉さんみたいにはなれない。あんなに大人っぽくなれない」

陽炎「あー、まあ妙高さんは特別ね」

初風「ちょっと目標として遠すぎるわ」

陽炎「身近にいるじゃない」

初風「えっ」

陽炎「目標になりそうな、素敵なお姉さん」ニコニコ

初風「……見当たらないわね」キョロキョロ

陽炎「んー?」

初風「愉快なのはいるけど」

陽炎「アンタ角刈りにするわよ?」グリグリグリ

初風「ちょっ、いたっ、痛いって、止めなさいよ!」ギャース!

陽炎「お姉ちゃん大好きって言いなさい」グリグリー

初風「誰が言うか……って、本当に痛いっての!こら!」フシャー!



【 雪風 】


鎮守府の、近場の山も秋模様。
赤に黄色に鮮やか燃えて、深まる季節を映し出す。

されど雪風、紅葉狩りには興味なし。
歓喜の歌を奏でつつ、どんぐり拾いに精を出す。



雪風「どんぐりころころ♪」

時津風「どんぐりこー♪」

黒潮「どんぐりこ、ちゃう。どんぶりこ、や」

雪風「はわ」

時津風「どんぶりこー?」

黒潮「せや、どんぶりこ」

雪風「どんぐりなのに?」

黒潮「どんぐりなのに」

時津風「どんぶりこー♪」

雪風「どんぶらこー♪」

黒潮「どんぶらこは桃や」

時津風「ふえ」

雪風「桃なのに?」

黒潮「桃なのに」




リットリオ「日本語難し過ぎでしょ」

ローマ「子供向けの歌でこのレベルよ……」

リベッチオ「どんぶりこー♪」



【 天津風 】


那智「ハロウィンとは何だ」

足柄「はあっ?嘘でしょ、知らないの」

那智「いや、何となくは分かるんだが」

足柄「お化けの恰好をして家を回るの」

足柄「トリック・オア・トリート……お菓子をくれなきゃ悪戯するぞ、ってね」

足柄「まあ、私も詳しい事は知らないんだけどね」

那智「ああ、うん。そうだよな」

那智「子供が仮装して、大人がお菓子をあげるんだよな」

足柄「まあ、簡単に言うとそうね」


那智「で、何で私達が変装しているんだ?」

足柄「変装じゃないわよ、コスプレよ」

那智「うむ、話が通じてないな」

足柄「姉さんはドラキュラとフランケンどっちがいい?」

那智「変装するのはお菓子を貰う方だろう」

足柄「そうよ?当たり前じゃない」

那智「いや、待て、不思議そうな顔をするな。不思議なのはお前の頭だから」

足柄「は?姉さん、あんまり分からない事ばかり言ってると怒るわよ」

那智「いや、だから分からないのはお前だろう」

足柄「もうっ、しっかりしてよね」



◇◇◇


足柄「ハッピーハロウィーン♪」ガルーン!

天津風「何よその恰好」

足柄「狼男。あ、女だから狼女ね」

天津風「何のつもり?」

足柄「だってハロウィンだし」

天津風「ハロウィン明日だけど」

足柄「えっ」

天津風「明日」

足柄「……」

天津風「……」

足柄「ハロウィン・イブ?」

天津風「ないわよ、そんなの」

足柄「……」

天津風「……」

足柄「トリック・オア・トリート」

天津風「話を聞きなさいよ」


足柄「お菓子」

天津風「だからないわよ」

足柄「……カツ?」

天津風「もっとないわよ」

足柄「何でないのよ!ハロウィン・イブよ!」

天津風「知らないわよ」

足柄「せっかく張り切って来たのに」

天津風「そもそも違うから、逆だから。私が貰う方だから」

足柄「お菓子がないなら悪戯になるわよ」

天津風「本当に話を聞かないわね」

足柄「今ならエロいのと愉快なの、二つから選べます」

天津風「最低の選択肢ね」

足柄「どっちにする?」

天津風「どっちも嫌よ」

足柄「ワガママ言わないで」

天津風「ワガママじゃないから、違うから」






谷風「あっ、那智じゃん?どうしたの」

那智「む、谷風か」

谷風「那智も きなこ棒食べる?」

那智「いらん」

那智(コイツはいつも何か食べているな)

谷風「それで、何なのその恰好」

那智「む、これはドラキュラだ」

谷風「はあ?何それ」

那智「ハロウィンだからな」

谷風「ハロウィン明日だよ」

那智「明日はお前達が主役だろう。私達はお菓子を渡す係だ」

谷風「え、それで代わりに今日コスプレしてんの」

那智「足柄が強引にな」

谷風「そんなにお祭りが楽しみだなんて、那智って意外と可愛いね」

那智「足柄が、強引に、な!」

谷風「あ、ちょっと待ってて。それじゃあ、お菓子をあげるよ」

那智「いや、だから菓子はいらんと」

谷風「駄目だよハロウィンなんだから。お菓子かイタズラを選ぶんだよ」

那智「む、それは……」

谷風「大丈夫だって、谷風さんのとっておきだからさー」






足柄「お待たせー」

那智「どうだった」

足柄「ええ、軽く失神させてきたわ」

那智「何やってんだお前」

足柄「明日仕返しされちゃうかもね~」ワクワク

那智「何でちょっと嬉しそうなんだ」

足柄「いいのよ。これであの子も少しはやる気になるでしょ」

足柄「放っておくと、すぐ一歩引いて傍観しちゃうんだから」

那智「まあ……確かに天津風には、どこか冷めている部分があるにはあるな」

足柄「見てるだけじゃ駄目なの。自分も輪に入って楽しまなきゃ、思い出なんて増えないわ」

那智「ふむ」


足柄「そっちは?谷風の所に行ったんでしょ」

那智「ああ、それなんだが、菓子を貰った」

足柄「はあ?姉さん何、駆逐艦からお菓子巻き上げてんのよ」

那智「まっ、巻き上げてなどいない!押し付けられたんだ」

足柄「お菓子って、コレ?たくさんあるわね」ポテフ

那智「ああ、めちゃウマらしい」ヨッチャンイカ

足柄「へー……あ、ホントだ。美味しい」ポリポリ

那智「ビールが欲しくなるな」モキュモキュ

足柄「どっかで買って帰る?」

那智「浮かれ過ぎだろう」

足柄「いいじゃない、お祭りだし」

那智「ハロウィンは明日だぞ」

足柄「ハロウィン・イブよ」

那智「なんだそれは」クス

足柄「あ、こっちもイケるわね」ポリポリ



【 時津風 】


鳳翔「また、お祭があるみたいですね」

時津風「そうだよ!みんなウキウキだよ!」

鳳翔「えーっと、パンプキンでしたっけ?」

時津風「ハロウィンだよっ!惜しいけど全然違うよ」

鳳翔「あらあら」ウフフ

時津風「お化けがたくさん来るんだよー」

鳳翔「あら、それは大変ですね」

時津風「そうだよー、イタズラとかいっぱいするよー」

鳳翔「えっと、退治すればいいのかしら?」弓矢ジャキィン!

時津風「うあうあー、そんなの駄目だよ!お化けがかわいそうだよー!」

鳳翔「あらあら」


時津風「イタズラしないように、お菓子をあげるんだよ」

鳳翔「お菓子ですか」

時津風「そうだよー、たくさんあげた方が喜ぶよ」

鳳翔「それではお菓子を用意しておかないといけませんね」

時津風「うんうん!チョコなんていいみたいだよ」

鳳翔「そうなんですか。それではチョコレートをたくさん買っておきましょう」

時津風「うんうん!いいかもね、いいかも!」ニコーッ

鳳翔「楽しみですね、パンプキン」

時津風「ハロウィンだよー」



【 浦風 】


鎮守府の中庭。その一角に香る異国の風。


石の花壇にレンガの畳。
木製のベンチとブリキの雑貨。
オーナメントは好みに合わせ、古くても趣味のいいものを。

バラにベコニア、ビオラやアイビー。
咲く花は季節と共に顔を変え、されど変わらず庭を潤す。


イングリッシュガーデン。

柔らかな情調に満たされて、ここでは少しだけゆっくりと風が吹く。



◇◇◇


浦風「今日は姉を連れてきたんよ」

雪風「こんにちは、雪風です」

時津風「時津風だよっ!よろしくね」

金剛「ようこそWelcomeデース」

榛名「とっても可愛らしいですね」

霧島「それでは、どうぞこちらに」

比叡「楽しんでいってくださいね!」


金剛「今日のおやつはberry pieデース」

雪風「榛名さんが作ったの!?すごーい!きれー!」

時津風「すごーい!お店みたいだよ!」

比叡「榛名は金剛型の名パティシエですから!」

榛名「いえ、そんな」テレテレ

霧島「紅茶もありますよ。ダージリンにアッサム、ウバなんかも」

金剛「hmm……フーム……」チラ

雪風「おやつ、おやつ♪」キャッキャッ

時津風「うれしい、うれしい♪」キャンキャン

金剛「二人にはこれデース!」

金剛「ブリティッシュロイヤルミルクティー!」

金剛「英国王室御用達のスペシャルメニューネー!」


金剛「クイーンやプリンセスもお気に入りデース!」

雪風「すごーい!!」

時津風「お姫様なの!?」

金剛「今日は二人の為に、特別に用意しまシタ」ニコ

雪風「ふ、ふわわ~」

時津風「すごいよ、すごいよ」

比叡「はいどうぞ、お姫様」

雪風「よ、よきにはからうです」

時津風「か、かたじけないでござる」

霧島「二人ともそれじゃあサムライよ」

榛名「普通で大丈夫ですよ」クス


時津風「おいしーい!甘ーい!」

雪風「すっごく、すっごく、おいしいです!」

霧島「浦風もどうぞ。こっちは砂糖控えめですよ、お姫様」

浦風「あ、ありがとう、ですのよ?」

霧島「プッ、何よそれ。何で疑問形なのよ」

浦風「む、難しいのぉー」タハハ

比叡「熊野さんとか上手そうですよね」

浦風「あれは本物のお嬢様じゃけー」

霧島「お嬢様といえば、こないだ最上型の皆さんとお茶しましたよ」

霧島「皆さん紅茶にも、とても詳しくて」

霧島「香りだけで銘柄を言い当てたのには驚きました」

浦風「ほー、たいしたもんじゃねぇ」

榛名「普段からよく飲まれているみたいです」

榛名「コーヒーよりも紅茶派との事でした」

浦風「ウチも紅茶派」

雪風「雪風はカルピス派です」キリッ

時津風「時津風はねぇ、メロンソーダ派だよ」

榛名「それはまた、随分強烈な派閥ですね」クスクス


霧島「銘柄だけでなく淹れ方や歴史など、皆さん博識でした」

霧島「やはり好きな分野には、自然と詳しくなるのかもしれませんね」

雪風「ゆ、雪風も紅茶の事、知ってます!」

時津風「時津風だって詳しいよ!」

榛名「あら、そうなのですか」

雪風「えっと、えっと……りぷとんです!」

時津風「あとね、午後の紅茶ってのもあるんだよ」

金剛「Oh!ユッキーは物知りですネー」

霧島「時津風もよく知っていましたね」

比叡「二人ともすごいです!」

榛名「榛名、感心しちゃいました」

時津風「えへへ~ ///」ニコニコー

雪風「雪風はお姉ちゃんですから! ///」フンス フンス!




美しい景色と穏やかな風。
美味しい紅茶に、楽しいおしゃべり。
姉妹がいて、友達がいて。今日があり、明日がある。

欲しいものはすべてここに。
大切なものはすべてここに。


今日という日が心地よかった。



【 磯風 】


赤や黄色も鮮やかに、山も可憐に衣替え。
敷き詰められた秋の中、恵みを求めてやれ進む。
今日は楽しい栗拾い。夜の予定は栗ご飯。


磯風「見てくれ、大漁だ」

浦風「どう思う」ヒソヒソ

浜風「絶対、毒です」ボソボソ


大きな籠に山盛りのキノコを抱え、颯爽と磯風が現れた。


磯風「キノコの事はよく分からんが、多分松茸だと思う」

浦風「そんなカラフルな松茸があるか」

浜風「アレです、よく魔女とかが持ってるやつです」

浦風「栗拾ってこい言うたのに、何でキノコ採ってくるんじゃ」

磯風「栗なんかいらないだろ。甘いし」

浜風「甘いからいいんじゃないですか」

磯風「いらんいらん。余計なバルジが付いてしまう」

浦風「くっ、スレンダーめ……」


磯風「キノコの方がいいだろう。炊き込みご飯にホイル焼き、何でも出来るぞ」

浦風「毒じゃなかったらな」

浜風「待って下さい。鳳翔さんならもしかして、毒キノコかどうか分かるかもしれません」

浦風「浜風」

浜風「はい」

浦風「磯風を甘く見るな」

浜風「……ッ!」

浦風「磯風の持ってきたキノコだぞ?」

浦風「そんなもん毒キノコか、これから毒になるキノコかのどっちかじゃ」

浜風「逃げ道は無いんですか」

浦風「こんなモン持ち帰ったら、ウチらだけじゃなくみんなに迷惑が掛かる」

浦風「絶対にここで食い止めるで」

浜風「は、はい」


浦風「い、磯風。どうじゃろうか、キノコはここに置いて帰っては」

磯風「何を言っているんだ、せっかく採ってきたのに」

浜風「それは、その……熊、そう!熊さんのご飯です」

磯風「む?」

浜風「そんなに持ち帰ったら、山の熊さんや鹿さん達が困ります」

浦風「そうじゃそうじゃ、食べ物が無いと熊が山から降りてくるで」

浜風「町のみんなにも迷惑が掛かってしまいますよ」

磯風「う、うむ……それは困るな」

浜風「持ち帰るのは思い出だけにしましょう」

浦風「はい!今、浜風いいこと言うた!」

磯風「な、なら野草はどうだろうか」

浜風「野草?」

磯風「秋の七草だ。キノコのついでに摘んできた」

浦風「野草なら……まあ」

浜風「キノコじゃなければ何でもいいです」

磯風「そうか!よし、それじゃあキノコは置いて帰ろう」

浦風「それで、野草ってのは何じゃ」

浜風「トリカブトとかじゃないでしょうね」

磯風「うむ、野草の事はよく分からんが、多分山菜だと思う」

浜風「山菜ですか、どれどれ……」



マンドラゴラ(Mandra(゚Д゚)ゴルァ!!)


魔界に咲く毒草。

根は人の形をしており、引き抜くと悲鳴を上げる。
その声を聞いた者は死ぬ。

ちなみに根も葉も花も全てが毒で、食べた者はもれなく死ぬ。



浦風「」

浜風「」


浦風「お前……どしたんやコレ」

磯風「崖にたくさん生えてたから、根こそぎ抜いてきた」

浜風「えっと……叫び声とか聞こえませんでしたか」

磯風「キャンキャンうるさいから、思いっきり地面に叩きつけたら静かになったぞ」

浜風「それって死んだんじゃ……」

浦風「何この悪魔」

浜風「磯風、身体は大丈夫ですか?」

磯風「身体?全然平気だぞ。鍛えているからな」

浦風「コイツ本当に凄いな」

浜風「長門さんみたいですね」

磯風「よし、今晩はごちそうだな。腕が鳴るぞ」

浦風「食べれるんか、コレ」

浜風「絶対、毒です」トオイメ

浦風「逃げ道は無いんか……」トオイメ



【 浜風 】


浜風「提督、上着の裾がほつれています」

提督「あっ、本当だ。どこかで引っ掛けたかな」

浜風「これくらいならすぐに直せます。脱いでもらえますか」

提督「え?ここで」

浜風「すぐですから」

提督「あ、ああ」



 ~ 数分後 ~


浜風「はい、終わりました」

提督「おお、ありがとう。もう終わったんだ」

浜風「少し綻んでいただけですから。これくらいなら簡単です」

提督「料理だけでなく裁縫まで出来るなんて、浜風はすごいなぁ」

浜風「ありがとうございます」

提督「うんうん、将来いいお嫁さんになるよ」

浜風「いえ、そんな ///」

提督「でも、よく裁縫セットなんて持っていたね」

浜風「普段から持ち歩いているので」

提督「えっと……あんまり詳しくないんだけど、女子ってみんなそうなのかな」

浜風「いえ、私だけだと思います」

提督「だよねぇ。ちょっと珍しいよね」

浜風「必要に迫られまして」

提督「そうなの?」

浜風「ボタンをよく失うので。あとはシャツが破れたりとかも」

提督「ええー…それは意外だね」

浜風「恥ずかしながら」

提督(そんなにヤンチャそうには見えないけどなぁ)


浜風「さて、執務に戻りましょう」

提督「うん、そうだね。それじゃあ、棚の資料を取ってくれるかな」

浜風「上の棚ですね」

提督「ああ、届くかな。椅子を出そうか」

浜風「大丈夫です。手を伸ばせば何とか……」グググ


  ブチッ ブチッ バイーンッッ!


提督「あっ」

浜風「キャーッ!?」

提督(胸のボタンが弾け飛んだ)

浜風「あ、あっちを向いて下さいっ」

提督「あ、ああ、すまない」

浜風「あっ、あの、ちょっと縫いますから、その」

提督「わ、わかった。向こうを向いてるから」

浜風「……」

提督「……」

浜風「み、見ましたか?」

提督「い、いや全然!何も見えなかったよ、うん」

浜風「…… ///」

提督「…… ///」

浜風「つまり、その……こういう事です」

提督「ああ、うん、理解したよ。制服はもうワンサイズ上を発注しよう」

浜風「すみません…… ///」



【 谷風 】


出掛ける支度をしていると、めざとく谷風がやって来た。
清霜から話を聞き付けて、慌ててここに来たようだ


谷風「寿司屋に行くんだって?谷風も連れてっておくれよぅ」


生粋の江戸っ子である谷風にとって、寿司は欠かせぬソウルフードなのだと言う。


那智(お前のソウルフードは、寿司ではなくてお菓子だろう)

那智は心の中でそう思ったが、口に出すのは止めておいた。


那智「別に構わんが、退屈だぞ」

谷風「がってんだー!」パアアァ!


”生粋の江戸っ子”という言葉の意味を、那智は百回くらい教えたが。
大阪生まれ広島育ちの谷風は、大きく「うん!」と答えるだけで、最後まで理解を示さなかった。


武蔵「フッ、随分待たせたようだな」


果たして約束の時間になると、のそり、と武蔵がやって来た。
足元にはいつものように、清霜が纏わりついて離れない。


那智「いや、時間通りだ」

清霜「それじゃあ、しゅっぱーつ!」






那智「冷酒を二合と、先ずは刺身を引いてくれ」

武蔵「こいつらには茶碗蒸しを頼む」

那智「お前達はちらし寿司でも食うか?」

谷風「てやんでい、べらんめい!江戸っ子は握りって決まってらぁ!」

那智「ほう」

谷風「旬のネタを好きにつまむのが粋ってもんでい!」

武蔵「ふむ」

谷風「ちらし寿司なんて女子供の食うもんさぁ!」

那智(いや、だからお前は思いっきり女で子供だろう)

清霜「わたしも好きなの選びたいです」

武蔵「よし、なら食べたいものを注文しろ」

清霜「やったー!わたし玉子ー!」

谷風「よっしゃー!谷風さんも玉子ー!」

那智(旬だなぁ……)

武蔵(粋だなぁ……)






谷風「玉子うめーっ!」

清霜「茶碗蒸し美味しい!」

那智「刺身にはやはり日本酒だな」

武蔵「ああ、酒が進むな」


清霜「武蔵さん、他にも何か頼んでいい?」

武蔵「好きにしろ」

清霜「やったー!じゃあ清霜はねぇ、きゅうり巻きー!」

谷風「ばっか、おめえそういう時は、カッパ巻きって言うんだよ」

清霜「何だよー、きゅうりじゃんかー」

谷風「かあーっ!清霜は物を知らねぇな。谷風さんはマグロ巻きな!赤いやつ!」

那智「鉄火巻きだな」

武蔵「うむ、鉄火巻だ」

店主「あいよ、鉄火巻ね!」

谷風「お、おぅ… ///」

清霜「鉄火巻じゃんかよー!」

谷風「う、うっせーやい ///」


清霜「でも、どうして鉄火巻きって言うの?」

武蔵「諸説あるんだが……」

那智「有名なのは、鉄火場の巻き寿司で、鉄火巻きだ」

清霜「鉄カバって何?」

谷風「そりゃおめえ、鉄のカバだよ」

清霜「カバが鉄なの!?強そうだね」

谷風「メッチャ強いよ」

清霜「ビームとか出る?」

谷風「そりゃロボだからな」

清霜「すごーい!強ーい!」

谷風「これでムーミン谷も安泰だぜ」

那智「安泰だな」

武蔵「ああ、安泰だ」






武蔵「寝たか」

那智「ああ」

武蔵「好きなものを食べて満足して寝る。結構な事だ」

那智「しかし安上がりだな。玉子と細巻きくらいしか食べてない」

武蔵「ふむ」

那智「ウニでもイクラでも、何でも食べていいんだが」

武蔵「別に遠慮した訳でもあるまい」

那智「まあ、好きなのを食べるのが一番か」






那智「さて、そろそろ握ってもらおうか」

武蔵「うむ、赤だしも欲しいな」

那智「それでは握りをお任せで。酒はもういいから赤だしを頼む」

店主「あいよ」

武蔵「あ、あと玉子を追加で」

那智「玉子?」

武蔵「いや、何となくな」

那智「まあ、目の前であんなに旨そうに食べられてはな」クック

武蔵「そういう事だ」フッ

那智「じゃあ、私にも追加してくれ。玉子」

店主「あいよ」

武蔵「何だ、お前もか」

那智「何となく、さ」フフッ



【 野分 】


年頃の娘のお腹を守る、あったか柔らか毛糸のパンツ。
一枚一枚心を込めて、鳳翔さんの手編みです。



萩風「朝夕めっきり冷えてきたね」

嵐「すぐ冬になるよ。寒いのヤダな」

舞風「ん?野分、何コレ」

野分「毛糸のパンツです。人数分あります」

嵐「はあ?毛糸のパンツ」

野分「鳳翔さんから頂きました。手編みとの事です」

舞風「えー…?」


那珂「こんなの那珂ちゃん穿けないよ!アイドルだもん!」

萩風「私もちょっと恥ずかしいかも」

野分「しかしせっかく編んでくれたのに、一度も穿かないというのは」

嵐「う……」

萩風「でも、ねぇ…」

野分「暖かそうですよ」

舞風「それは分かるけどさぁ」

野分「まあせっかくですし、ちょっとだけ穿いてみては」

野分「誰かに見られる訳でもありませんし」

嵐「まあな、鳳翔さんにも悪いもんな」

野分「それでは穿いてみましょう」

嵐「毛糸のパンツなんて初めてだな」

野分「……」ゴソゴソ

嵐「……」モゾモゾ


野分「ふおおおおおおーーっ!?」

嵐「うああああああーーっ!?」

那珂「!?」ビクッ!

萩風「なっ、何?」

舞風「野分どうしたの?」

嵐「すげーよ!何だコレ!何だコレ?」

嵐「メチャクチャあったかい!何なんだよこれは?」

野分「ふ、フィット感が凄いです、凄すぎます」

嵐「萩風穿いてみ、穿いてみ?これホント凄いから」

萩風「そ、そうなの」

野分「舞風も是非、これは尋常ではありません」

舞風「う、うん」

萩風「……」イソイソ

舞風「……」ハキハキ


萩風「はあああああぁぁんん!?」

舞風「ふわああああああーー!?」

那珂「ッ!?」ビクビクッ!

萩風「吸い付くような……包み込むような……」

萩風「だ、ダメっ、声が出ちゃう……!」ガクガク

舞風「熱い……お腹が熱いよぉ……」

舞風「立ってられないよぉ……」ブルブル

那珂「えっ?え?」

野分「毛糸なのにシルキィ、パンツなのにギルティ」

那珂「のわっち、頭大丈夫?」

嵐「身体を守るような……心を攻められるようなこの感覚」

那珂「何言ってんのか全然分かんないよ」


野分「那珂ちゃん、これ凄いです」ズイ

嵐「那珂ちゃんもほら、早く」ズズイッ

那珂「だ、駄目だよ……那珂ちゃんは、那珂ちゃんは」

萩風「はあああぁぁあんっ!」

萩風「だ、ダメ……身体がっ、疼いて」

萩風「この火照りを、誰か止めて……!」ハアハア

舞風「あちゅい……お股があちゅいよぉ……」フラフラ

那珂「み、みんな!しっかりして」

嵐「那珂ちゃん!早く!那珂ちゃん!」

那珂「駄目だってば、那珂ちゃんアイドルなんだから……」

野分「那珂ちゃん!穿いて!那珂ちゃん!」

那珂「あ、あう……那珂ちゃん…アイドル……」

萩風「那珂ちゃん!ほらほら!那珂ちゃん!」

那珂「毛糸のパンツなんて……そんなの、そんなの……」

舞風「那珂ちゃん!今だよ!那珂ちゃん!」

那珂「え、ええーーいっ!!」パーンツ!


那珂「…………」


那珂「んっああああああぁぁーーっ!!」ナッカチャーン!

那珂「来たよ!凄いよ!情熱パッションだよ!」

嵐「那珂☆chan!那珂☆chan!」

那珂「新世代の愛犬と薔薇城の天使はね!」

野分「那珂☆chan!那珂☆chan!」

那珂「砂糖菓子の島で小さな星を飾るんだよ!」

萩風「那珂☆chan!那珂☆chan!」

那珂「那珂ちゃん歌うよ!みんないくよ!」

舞風「那珂☆chan!那珂☆chan!」

那珂「暁の水平線に!勝利のシンデレラだよっ!!」


嵐「恋の!」アラッ!

野分「ツー!」ノワッ!

萩風「フォー!」ハギッ!

舞風「イレブン!」マイッ!

那珂「シンデレラ!!」ナッカチャーンッ!!


   キャーッ キャーッ ナッカチャーンッ!! ナッカチャーンッ!!

   ミンナアリガトー! ナカチャンダヨー! ダイスキダヨー!



神通「ちょっと、ふざけ過ぎじゃないでしょうか」

川内「慕ってくれてるみたいだしさ、いいんじゃないかな」



【 嵐 】


嵐「ただいまー」

萩風「おかえりー、お菓子あるよ」

嵐「お菓子?食べる食べるー」

萩風「今日はすごいよー」ジャーン!

嵐「わー、ゴーフルじゃん!どうしたの」

萩風「熊野さんから貰ったの」

嵐「熊野さんって、あの重巡の」

萩風「演習で一緒になってね、お茶会に招待してくれたんだ」

嵐「へー、いいなぁ」


萩風「最上型の人、みんないたよ」

嵐「まだ最上さん達と話した事ないんだけど、どうだった」

萩風「みんないい人ばかりだったよ」

嵐「怖くない?」

萩風「ぜーんぜん!最上さんは気さくだし、鈴谷さんは面白いし」

嵐「三隈さんは?」

萩風「三隈さんは……うん、不思議だった」

嵐「不思議なの」

萩風「くまりんこって言ってた」

嵐「くまりんこなの」

萩風「ウチには中々いないタイプだよね」

嵐「他所にも中々いないタイプだと思うよ」


萩風「そういえば球磨さんもクマクマ言うよね」

嵐「クマクマ言うね」

萩風「筑摩さんは言わないね」

嵐「筑摩さん言わないね」

萩風「でも、代わりに利根さんが のじゃのじゃ言うよ」

嵐「バランスかー」

萩風「バランスだねー」


萩風「紅茶の茶葉も分けてもらったから、淹れてみるね」

嵐「紅茶にゴーフルって、何だか上品だね」

萩風「お嬢様みたいだねー」

嵐「あ、でもティーポットとかないよ」

萩風「うーん、急須でいいんじゃないかな」

嵐「急須かー、急に庶民的になったね」

萩風「普段はティーパックだもんね」


嵐「ゴーフルおいしいね」

萩風「おいしいね」

嵐「紅茶もおいしい」

萩風「おいしいね」

嵐「お嬢様っぽいよね」

萩風「ぽいぽい」

嵐「今ならお嬢様ライセンスとか貰えそう」

萩風「貰えるかな」

嵐「紅茶だよ?ゴーフルだよ?いける予感だよ」

萩風「でも急須だよ」

嵐「あー、急須かー」

萩風「急須じゃ駄目ですか」

嵐「惜しかったねー」

萩風「お嬢様への道は険しいねぇ」



【 萩風 】


リベッチオ「これ、何?」

萩風「お箸だよ」

リベッチオ「オハシ?」

萩風「日本ではこれを使うんだよ」

リベッチオ「ふーん」

萩風「便利だよ。切ったり挟んだり、何でも出来るんだよ」

リベッチオ「すごーい」

萩風「やってみる?」

リベッチオ「うん!」






リベッチオ「うーん……ツルツル滑って難しいよ」

萩風「最初はそうかもね。でも、すぐに使えるようになるよ」

リベッチオ「そうかなー」

萩風「リベなら出来るよ!」

リベッチオ「うん!練習するね!」


 ~ 一週間後 ~


リベッチオ「じゃじゃーん!」パシパシパシ!

萩風「わあ、すごーい!上手になったねー」

リベッチオ「えへへー、これでバッチリだよ~」

萩風「すごいすごい、みんな驚くよ」

リベッチオ「えへへ、そうかな~」

萩風「きっとたくさん褒めてくれるよー」

リベッチオ「それじゃあ、みんなに見せてくるねー」ウキウキ






リベッチオ「なに食べてるの~」

黒潮「んー?たこ焼きやでー」

リベッチオ「リベに任せてー!」スチャッ!

黒潮「アカンで。これはな、爪楊枝で食べるんや」

リベッチオ「そうなの?」

黒潮「たこ焼きを箸で食べるとか、アホの子やでー」

リベッチオ「そうなんだー」





リベッチオ「なに食べてるの~」

浦風「お好み焼きじゃ」

リベッチオ「リベに任せてー!」スチャッ!

浦風「そりゃいけんのぉ。お好みはヘラで食べるもんで」

リベッチオ「そうなの?」

浦風「箸とか素人のする事じゃ。通は鉄板でヘラじゃけぇ」

リベッチオ「そうなんだー」





リベッチオ「なに食べてるの~」

谷風「もんじゃもんじゃー」

リベッチオ「リベに任せてー!」スチャッ!

谷風「てやんでい、べらんめえ!」

谷風「コテを使わねえとは、どういう了見でい」

リベッチオ「箸じゃ駄目なの?」

谷風「かあーっ、話になんねぇ。どこのおのぼりさんだよ」

リベッチオ「そ、そうなんだー」




野分「雑炊にはレンゲですよ」



雪風「オムライスはスプーンで食べます!」



不知火「おにぎりに箸を使うのはおかしいですね」





リベッチオ「うわああーーん!練習したのにいいーー!!」ダダダーッ!

萩風「あらあら」



【 舞風 】


舞風「野分、はい、あーん」

野分「ま、舞風、恥ずかしいですよ」

舞風「いいからいいから。ほら、あーん」

野分「う、うう……あ、あーん」パク

舞風「えへへー」

野分「もう、舞風ったら」

大和「仲がいいですね」

野分「や、大和さん!」

舞風「大和さん、こんにちは」

野分「すみません、お見苦しい所を ///」

大和「いえいえ、とても微笑ましいですよ。羨ましいくらいです」

舞風「えへへ、舞風と野分はね、とーっても仲良しなんだよ」

大和「うふふ、まるで恋人同士みたいですね」

野分「し、姉妹ですから ///」


舞風「大和さんも武蔵さんと仲良しだよねー」

大和「え?え、ええ……そうですね」

野分「大和さん?」

舞風「喧嘩でもしたの」

大和「いえ、そういう訳では」

大和「仲が悪い訳ではないのですが、お二人のようには……なかなか」

舞風「あー、武蔵さんちょっと怖いもんね」

野分「こら!舞風!!」

大和「いえ、いいんです。言いたい事 分かります。悪気がないのもね」

舞風「あ、あの、大和さんごめんなさい」

大和「いいんですよ。確かに武蔵には、少し近寄りがたい雰囲気があります」

大和「無口で無愛想ですし……正直、何を考えているのか分からない所もあって……」

野分「大和さん……」

大和「でも、昔は違ったんです」

大和「素直で優しくて……幼い頃の武蔵は、本当に可愛い いい子でした」



~回想~


むさし『おねえちゃあーん』タタター

大和『はい?』クルッ

むさし『おねえちゃん、だいしゅき!』ダキッ

大和『あらあら』

むさし『むしゃしはね、大きくなったら、およめさんになるの!』

大和『あら、おませさんね。誰か好きな人がいるの?』

むさし『やまとおねえちゃん!』

大和『まあ、武蔵ったら』

むさし『おねえちゃんは?むしゃしの事、しゅきー?』

大和『ええ、とっても。大好きですよ』ニッコリ

むさし『やったー!』


武蔵「大和おおおおおおーーッ!! ///」

大和「!?」ビクッ!

武蔵「何を訳の分からない事を言っているんだお前はあああーーッ!!」

大和「え、でも、全部本当の事ですし……」

武蔵「ええい!黙れ黙れ黙れーーッ! ///」

金剛「Hey!ムシャシー!懐かしい話をしていますネー」

武蔵「どこから来た金剛!お前は帰れ!」

霧島「む?金剛お姉さまに何ですかその態度は、ムシャシ!」

武蔵「よし!霧島!お前も帰れ!」

日向「騒がしいな、少し静かにしてくれないかムシャシ」

武蔵「よし、分かった!お前ら全員黙らせてやる!」ジャキインッ!

大和「止めて下さいムシャシ!いい子だから」

武蔵「よし!分かった!全員敵だな!よし!」


    ドカーン! ドゴーン! ドカーン!!

   キャーッ! ムシャシー! ムシャシーッ! キャーッ!!



野分「……仲いいですね、大和さん達」

舞風「だから心配しなくて大丈夫だってー」



【 秋雲 】


お菓子を抱え部屋に戻ると、姉達が血まみれで死んでいた。
衣服もズタズタに引き裂かれ、身動きどころか呻き声すら聞こえない。
ハロウィンパレードの本番を控え、ゾンビコスは万全の仕上がりのようだ。

大音響でスリラーを流すと軽快に踊り出した。ゾンビのくせに全員やたらと動きがいい。
食材の調達に向かった洞窟で、荒れ狂う蝙蝠の群れに襲われた磯風の気持ちを、少しだけ理解する。


   オイテケー オイテケー ガルボオイテケー

   オイテケー ワタシフランー ズルイワタシモー


こんな状況でも、しるこサンドは人気がない。


陽炎「スナック菓子もたまにはいいわね」 プリッツ

不知火「種類も随分と豊富です」 チップスター

黒潮「こんなにあると迷ってまうな~」 じゃがりこ

親潮「今日はどこに行ってもお菓子が貰えますね」 ムーンライト

初風「いたずらする暇がないわね」 ルマンド

雪風「お菓子もっと食べたいです」 ハッピーターン

天津風「まだ足りないの?」 フラン

時津風「こんなんじゃ全然だよー」 どうぶつビスケット

浦風「お菓子なら提督さんの所にたくさんあったで」 とんがりコーン

磯風「うむ、大きなダンボールが置いてあったな」 ガルボ

浜風「あんまり欲張ると迷惑なんじゃ……」 カントリーマアム

谷風「提督はそんなケチくさい男じゃねえって」 キャベツ太郎

野分「それでは決を採りましょう」 アルフォート

嵐「ルールはいつも通りでいいんだよな?」 キットカット

萩風「うん。全会一致でのみ、議決だよ」 ポッキー

舞風「それじゃあ、賛成の人は手を挙げてー」 クリームコロン

秋雲「提督の所にお菓子を貰いに行きたい人ー!」 しるこサンド


全員「はーい♪」

陽炎「決まりね。陽炎型駆逐艦隊、全艦!抜錨よ!!」(颯爽)


以上です。
読んでくれた人ありがとう。

浜風「磯風」
浦風「磯風」

前作のこれが無かったな

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