この物語はフィクションです。
いかなる既存の人物、既存の事象、既存の団体、既存のシリーズには一切の関係がありません。
それでもよろしければお付き合いください。
前のスレを新しく作り直しました。
なので所々改変などがありますのでご了承ください。
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この物語のオチをあらかじめ告げるならば、それは夢オチである。
全ては夢で始まり、夢で終わるーー夢幻廻廊の如きシナリオだ。
しかし、それでも夢に囚われることは出来ない。
さぁ、目覚める時間だ。
今宵はどんな夢物語を聞かせてくれるだろうか。
夢とはやはり突拍子もないもので、気がつけば自分は白い廊下のような場所に立っていた。
清潔感に満ちた道のりを、迷うことなく進んでいく。見覚えはないが、この場所を知っているかのように。
不思議に思う。
夢を夢として自覚しているのに、身体のコントロールが効かない。僅かながらに動く視界のみが自身の限界だ。
まるで映画のようだ、と呟くこともできなかった。
しばらくして、とある扉の前に立つ。
ノックをし、扉を開けようとすると酷い頭痛がした。
立っていられないほどの痛み。
何か、そう何かが、自分がこの扉を開けることを固く拒んでいるみたいだ。
自分はこの扉を開けなければならない。
そんな強迫観念めいたものが、さっきまで自律していた心を揺さぶる。
頭痛はどんどんと激しくなっていき、何かが中から這い出てくるような気がした。いや、気のせいではない。何かが頭の中から這い出てくる。
扉を開けなくては。
根拠はないが、この扉を開ければ痛みから解放されるという考えに至った。
震える指先で扉に手をかける。
ウゾウゾと蠢く脳内が酷く気持ち悪い。
扉は横にスライドするもので、その仕組みに則って開けようとする。
『開けるのか?』
開ける。
『その先にどんな光景が広がっているか解らないのに?』
開けないと。
「覚悟は出来たか?」
最後の言葉は声音が違っていた。
先程まで畝っていた頭の中が、少しばかり軽くなった。
誰の声か、何故か気になる。
しかし声の主は見えない。
『 』
『 』
『 』
『 』
『 』
聞こえない声が後ろからした。
振り向けないが、複数の気配を背中に感じる。
しかし怖くはない。むしろ頼もしくすらあった。
覚悟は出来た。
扉を開ける。
既に頭痛はなりを潜めていた。
強烈な光が奥から差し込んできたーーー
ピンポーン
軽快な音で目を覚ます。
薄ぼんやりと霞んだ視界と意識をスマホの画面で覚醒させる。
時刻は少し早い朝、確か始業式の前に何か予定があった筈だ。
ピンポーン
もう一度家のチャイムが鳴った。その音で全てを思い出した。
晃「……今日は叔父さんが来るんだったか」
つい先日、両親は仕事のために自分を残して海外へと渡った。
ついて行くことも可能だったが、高校はせめて日本で卒業させてくれと自分から頼んだのだ。
すると両親は保護者代わりに母の弟である叔父に面倒を見てもらうと手配してきた。叔父は小説家で、寝るとこさえあればどこでも良いらしい。
ピンポーン
晃「っと、出なくちゃ……」
フラフラとした足取りで玄関の方まで歩く。
玄関の戸を開けると、眼鏡をかけた如何にもおじさんというような形の人物が立っていた。物静かな雰囲気で、少し疲れたような顔をしている。
叔父の名前は……確か奥田浩二だったか。
浩二「やぁ、久しぶり……って覚えてないか。前に会ったのってまだ小さかったもんね。ごめんね、昼から来れればよかったんだが、昼は昼で出かけなくちゃいけなくてね」
晃「……いえ。お久しぶりです、叔父さん」
浩二「おいおい、もっと砕けた話し方でいいよ。高校生はもっと生意気でなくちゃね」
晃「はぁ、じゃあ、よろしく」
浩二「うんうん。僕もそういう感じのが楽だ……っと、えっと君の名前は」
晃「……晃。水瀬晃」
浩二「あぁそうだった……悪いね。昔から人の名前が覚えられなくてね。普段から話してる人じゃないとすぐに忘れちゃうんだ。油断すると姉さんの名前も忘れてしまいそうでね」
それはさすがに冗談だろうが、母さんからも聞いていた。
晃「とりあえず、入って。お茶いる?」
浩二「あぁ、頼むよ。運動不足でここまで来るのに少し疲れた。お邪魔します」
叔父を居間に案内し、自分は部屋に戻って制服に着替える。
その途中でコツンと窓に何かが当たる音がした。
カーテンを開けると、自撮り棒で窓をつついている隣の家の幼馴染、神崎鹿波が不機嫌そうな顔でこっちを見ている。
晃「こわ……」
仕方なく窓を開ける。
ようやく自撮り棒を引っ込めてくれた。
晃「なに……あんまりゆっくりしていると遅刻する」
鹿波「別に、時間合わせるためよ。外で待ってるわ。……あまり時間かけないでよね」
それだけ言い捨てると、さっさと窓を、そしてカーテンすらも閉めてしまう。
晃「…………それだけ?」
スマホで済ませばいいものを、と思いながら鹿波を待たせるのも後味が悪いので少し急ぐ。
浩二「あれ、もう行くのかい? 朝ごはんは」
晃「食べながら行く。友達が待ってるみたいだ」
浩二「そうかい。今日はお昼には帰ってくるんだろ? 僕は仕事でいないからお昼は一人で食べててくれ」
晃「わかった」
浩二「夜には戻るから、晩御飯はどこかに食べに行こう。好きなものでいいよ。お寿司とか良いかもね」
叔父さんに送り出され、玄関の戸を開ける。外に出てみると、塀の前で鹿波がもたれて待っていた。
鹿波「……おはよ」
晃「おはよう、待たせたか」
鹿波「別に……。さっさと行くわよ」
晃「なんだか最近お前変じゃないか? 何をそんなにイラついてるんだ」
鹿波「イラついてるわけじゃないわ。ただ朝だからテンションが低いだけよ」
言い訳めいた鹿波の言い分に晃は首をかしげる。
晃「…………」
鹿波「……ねぇ」
晃「ん?」
鹿波「卒業したら、外国の方に行くの?」
晃「あぁ。一人暮らししても良いけど、あっちの大学も少し興味があるし」
鹿波「……そう」
晃「寂しいのか?」
鹿波「っっ! そんなわけないじゃない!! 勘違いも甚だしいわあんたの間抜け面をもう見なくて済むと思ったらせいせいするもの!」
慌てたような様子で早口で捲し立ててくる。
鹿波「はぁ、はぁ、良い? 分かった?」
晃「了解、分かった、オーケー落ち着け」
鹿波「……ふん、なんか疲れたわ。早く行くわよ」
晃「お、おう」
なんだかよく分からないが、さらに不機嫌になった気がする。
いつものことだが、やはりなにか様子がおかしい。
学校に近づくと、当然だがそれに比較して生徒の数も増えてくる。
「でさ、今日は成功したんだぜ! 良い夢見たわ」
「偶然だろ、俺は何も見てないぞ」
「いやいや、やっぱガチだって。思った通りの夢だったし」
何の話かわからない。
気にせずに教室まで行き、鹿波と別れた。
クラスに入ると、いの一番に親友の小坂井鎌一が挨拶してきた。
鎌一「よっす、少し早いってことは今日は神崎と来たのか?」
晃「あぁ」
鎌一「かー! 仲が良いってことで」
晃「そういえば、なんか最近変な話を聞かないか? 良い夢とか、成功とか失敗とか」
鎌一「あん? お前知らねえの、銀鍵の夢まじない」
晃「銀鍵の夢まじない?」
鎌一「あぁ。といっても俺も詳しくは知らないが……この写真を枕元に入れて見たい夢を祈るんだと」
鎌一が見せたのは、洋風の古い銀製の鍵だ。
ズキリと、頭の隅が痛んだ気がした。
晃「信じてるのか?」
鎌一「まさか。やってみたがまず夢なんて覚えてねーよ」
それもそうだと頷く。
朝の夢も、もうほとんど覚えていない。
鎌一「そろそろ始業式だ。おいお前ら、遅れずに行くぞ!」
「生徒会長がリーダー気取りだぜ」
鎌一「リーダーだよ。生徒会長舐めんな」
鎌一に先導されて、体育館に向かった。
校長の話が長い始業式を流し、教室に戻っている途中で鹿波の背中を見つける。
晃「鹿波、お疲れ」
鹿波「お疲れ。何か用」
晃「鎌一に聞いたんだけどさ、なんかおまじないが流行ってるらしいけど、何か知ってる?」
鹿波「し、知らないわ。信じてないし、バッカじゃないの?」
晃「バカじゃないけど……」
鹿波「ふん……あんたは何か見たい夢でもあるわけ?」
晃「うーん、強いて言うなら」
鹿波「言うなら?」
晃「鹿波との夢、とか」
鹿波「へ……ーーー~~~~~っっっ!!!!」
冗談混じり言ってみると、鹿波は顔を赤くしながら、肩を一つバシッと叩いてきてそのまま逃げるように走って行ってしまった。
晃「……からかいすぎたか?」
少しの罪悪感で頭を掻きながら、教室へと戻っていく。
人混みの中、嫌に周りの夢の話が気になった。
放課後になり、お昼をどうしようかと悩む。
夜は外に食べに行くというのなら、家でひっそりと食べるのがいいのかもしれない。
鎌一「何してんだ晃。早く帰ろうぜ」
晃「あぁ」
鎌一「今日は生徒会も休業だからな。ちょっと街で遊んできたいんだが……その代わり店を手伝えと来たもんだ。残念」
晃「おばさんは元気か?」
鎌一「元気元気超元気。元気過ぎて俺が元気じゃねーよ。妹も元気だし兄もその倍だからなぁ」
鎌一の哀愁漂う笑みに同情しかできなかった。
晃「俺も今日はちょっとそういう気分じゃないな」
鎌一「かぁー! 絶好の遊日和なのによ!」
あそびよりってなんだろう。
どうでもいいか。
鎌一とすごすごと帰路に着いた。
家に帰ると既に叔父さんはいなかった。
すぐに自室に入り、ベッドに倒れ込む。
晃「……疲れた」
寝ようとするが、その前になんとなくおまじないを試してみようという感覚に陥った。
ほぼ無意識にスマホを手に取り、例の画像を出す。
晃「…………」
枕元に入れ、瞼を下ろすと、ストンと意識が落ちる感覚がした。
………
目が醒めると、藍色の光景が視界に差し込んだ。
寝ているベッドが、自室にあるものじゃない。
ここは何処だろうか。
?「ようこそ、我がベルベットルームへ」
気付くと、ベッドの隣にある椅子に奇妙の老人と、青色のドレスを着崩した少女が座っていた。
晃「あなたは……えっと」
イゴール「私の名はイゴール、お初にお目にかかります」
ベアテ「妾の名はベアテ、お前さんの案内役を務めさせてもらおう。せいぜい楽しませておくれ?」
少女はニヤニヤとしながらこっちを見ている。
晃「ここは……夢か?」
イゴール「ふむ……ここは夢と現実、精神と物質の狭間にある場所」
イゴール「本来ならば、何かの形で契約を果たされた方のみが訪れることができる部屋でございます」
晃「……意味がわからない」
イゴール「今は分からずとも結構。しかし、近い未来あなたには選択を迫られる場面が訪れるでしょう」
イゴール「その選択次第によっては、またこの部屋に来ることもできるかもしれません」
晃「選択?」
ベアテ「だから、今は分からずとも良い。ただ黙って、腹を括るのだ。まぁここでのことは覚えておらんかもしれんがな。なにせ半分夢じゃからの」
ベアテ「ふむ、もうそろそろ本格的に夢に落ちる時間じゃな。ほれ、目を眠れ、お前さん」
イゴール「ふふふ……では、お客様の新たな旅立ちに、幸あらんことを」
イゴールの言葉と共に、また意識があやふやになる。
耐えられなくなって、そのまま柔らかいベッドに横になった。
浮いている。
沈んでいる。
ここは何処なのかは解らない。
何も見えない。
真っ暗な場所でただ浮かんでいる。
不意に全ての方向から玉虫色の球体が現れ、こちらを睨みつけた。
魂が急に冷えていく気がした。
『我は汝、汝は我……』
こちらをジッと見つめている何かが呟いた気がした。
『汝、己が望みを叶えるために、他者の夢を壊す覚悟はあるか?』
わからない……。
意識が沈む。
眼を覚ますと、ちょうど叔父さんが帰ってくる音がした。
街の方に食べに行くんだったか……。
身体がひどく怠い。
浩二「晃くーん?」
……下りなければ。
一階に下りる。
晃「おかえり、叔父さん」
浩二「おぉ、ただいま。じゃあ行こうか。何食べたい?」
晃「えっと……」
その時、不意に家の電話が鳴り出した。
真っ先に叔父さんが出る。
浩二「はい、水瀬です。はい……晃くん? わかりました。晃くん、神崎さんの家から電話。お母さんらしい」
晃「? ……はい、代わりました」
神崎母『晃くん? 鹿波がそっちに行ってない?』
晃「鹿波なら来てませんけど……」
神崎母『そう……おかしいわね。もうこんな時間なのに連絡一つよこさないなんて』
時間を確認すると、夜中になってもういい時間帯だった。
それほど眠っていたのだろうか……。
神崎母『こんなこと今までなかったんだけど』
晃「ちょっと探してきます」
神崎母『悪いけど、そうしてくれるかしら? 今日は旦那も遅いから、私は家で待ってようと思うのだけど』
晃「わかりました。もし先に帰ってきたら、連絡ください」
話をつけ通話を切る。
浩二「用事かい?」
晃「あぁ、ちょっと友達を探しに」
浩二「そうか、ならまたの機会にしよう。行っておいで」
晃「行ってきます」
外に出て、夜道を走る。
どこに向かえばいいだろうか。
当てもなく走り回っていると公園に着いた。
大きな塔のような遊具が眼につく。
確かその遊具にホームレスが住み着いているという噂を聞いたことがある。
そのせいで人が寄り付かないのだとか。
晃「鹿波は……いないか」
次はここから近い学校の方に行ってみる。
通り道に一人の男子生徒が歩いているのを見かけた。
どこかで見覚えがある。確か、生徒会の副会長の武藤静樹だったか。
静樹「うん? あぁ水瀬先輩ではないか。学校に忘れ物ですか?」
晃「いや、友人を探している。まだ誰か学校に残ってるか?」
静樹「それならばもう校内にはいない。僕も生徒会室を追い出された身だ。もう少し仕事をしていたかったのだが、仕方ない」
晃「今日は生徒会ないって鎌一に聞いたけど……」
静樹「自主的にですよ。今日やれることは今日済ませる。当たり前です」
胸を張る静樹に感心しながら、暗くなった校舎を眺める。
鹿波はいなさそうだ。
晃「じゃあ俺は違うところ行ってくる」
静樹「手伝いますか?」
晃「……いや、いい。疲れてるだろうし、休んでくれ」
静樹と別れ、次のところに向かった。
次は……もしかしたら街の方にに行ったかもしれない。
駅に行ってみよう。
駅に着くと、ちょうど電車が停まったところだった。
その電車から見知った人物が降りてくる。
晃「那月……さん?」
智美「ん……水瀬くん、どうしたの?」
那月智美、クラスメイトの女生徒だ。
面識はあまりないが、学年一位という肩書きが有名で名前を覚えていた。
晃「街の方に行ってたのか?」
智美「うん……欲しい専門書があったから。水瀬くんは?」
晃「あぁ、神崎を探してて……そういや那月、街の方で神崎を見なかったか?」
智美「神崎さん? ごめん見てない。探してるの?」
晃「あぁ、家にも帰ってないみたいだ」
智美「神崎さん真面目そうな印象あったけど……私も探しましょうか?」
晃「あぁ……いや」
そんな時、スマホのチャット欄にメッセージが届いた。
画面を見ると鹿波からだった。
カナミ:ごめん。今帰った
カナミ:お母さんに頼まれて探してくれてたんでしょ?
カナミ:ごめんなさい
晃「…………」
智美「神崎さん、帰ってきたみたいだね。良かった」
晃「あぁ。すまない、那月さん。俺も帰るわ」
智美「ふふ、振り回されてるね」
晃「送っていこうか?」
智美「ううん、いい。家近いし。疲れてるでしょ?」
正直、すごく体が怠い。
早く家に帰ってもう一回寝たいくらいだ。
素直に那月と別れ、家まで歩いた。
浩二「おかえり、さっき神崎さんのお母さんから電話があったよ。娘さんが帰ってきたって」
晃「あぁ……疲れたから、もう寝るよ」
浩二「わかった、一応カップ麺はあるから、夜中目が覚めてお腹空いたら食べていいよ」
晃「ありがとう……おやすみ」
浩二「あぁ、おやすみ」
自室に戻ってベットに体を投げ出す。
枕の下で何かゴリッとした感触がした。
手で探ると、銀製の鍵を見つけた。
晃「なんで……これ」
頭がズキズキと痛む。
視界が揺れ、気絶するように倒れた。
晃「う、ぐ……」
………
……
…
リンゴーン… リンゴーン…
気がつくと、真っ白な光景が目の前に広がっていた。
まるで、ウェディングの式場のようだ。
晃「………!? 」
いつの間にタキシードを着ている。
辺りを見回すと、参列している人、神父、すべての人が仮面を付けている。
酷く不気味だ。
とにかく現状を調べようと思ったが、体が動かない。
その時、正面の門が重く開く音がした。
身体が勝手にそっちの方へと向き直る。
そこから、華やかなウェディングドレスを纏った、鹿波が現れた。
静かにこっちへと歩いてくる。
そしてとうとう、自分の隣に立った。
神父の方へと向き直ってしまう。
仮面の神父は一つ頷いた後、分厚い本を手に取り語り出した。
『妻、神崎鹿波。健やかなるときも、病めるときも、喜びのときも、悲しみのときも、富めるときも、貧しいときも、これを愛し、これを敬い、これを慰め、これを助け、その命ある限り、真心を尽くすことを誓いますか?』
聞こえたのは、そう、鹿波の声だ。少し低いが、目の前の仮面の神父から鹿波の声がする。
鹿波?「………誓います」
『夫、水瀬晃。健やかなるときも、病めるときも、喜びのときも、悲しみのときも、富めるときも、貧しいときも、これを愛し、これを敬い、これを慰め、これを助け、その命ある限り、真心を尽くすことを誓いますか?』
神父の言葉に、口が強制的に開く。
晃「誓いまーーー 」
ズキン!
強烈な痛みが、頭の隅に走った。
立っていられなくなるほどなのに、身体が動かない。
『本当に、それでいいのかーー?』
頭の中に声が聞こえる。
これでいいのだろうか?
晃「いや、良いはずがない……!」
こんな偽り、許されるわけがないーー!
『嘘偽りが許せぬと、汝は応えた。それが己の願いならば、我は力を貸そうーー』
痛みはどんどんと大きくなっていく。
『呼ぶのだ、自らの意志を。己が力を』
混濁する頭の中にある名前が浮かぶ。
『そして壊すがいい。我は汝、汝は我。貴様のエゴで、夢を喰らえ』
晃「ーーーーペル、ソナ!」
口にしたその瞬間、全ての痛みから解き放たれた。
目の前に現れたのは、玉虫色に光る異形だった。
人型を成しているものの、化け物というにはあまりのもふさわしい正体をしている。
鹿波?「どうしてーー晃」
花嫁姿の鹿波が呟いた。そして、踵を返すと、正門の方へと走っていく。
追いかけようとするが、参列者の群れが自分の行き先を阻んだ。
『どうして拒む』
『どうして壊す』
『どうして、叶えてやらない』
口々にそう責め立てる彼らは、やがて一つになり激しい炎の塊となって姿を現した。
『"私"の、邪魔をするなーーー!!』
炎の怪物による咆哮が、周囲を揺るがした。
激しい炎が意志を持っているかのように、自分の方へと走る。
晃「ヨグ=ソトース!」
自身のペルソナに薙ぎ払うよう心の中で命じると、ソレは思い通りに動いてくれた。
歪な爪が炎を払う。
しかし炎に実体はない。すぐにまとまり、そしてすぐさま改めて突進してくる。
晃「消し去れ、エイハ!」
自分でも良くわかっていないのに、なぜか身体が勝手に動く。
精神を集中させ、力を放出した。
ペルソナが手をかざすと、黒い呪怨が炎を掻き消していく。
そして全て消し去った頃には、辺りには誰もいなくなっていた。
安堵と同時に視界が揺れる。
晃「ふっ……ぐっ。何だったんだ、今のは……」
いつの間にか怪物は消失し、その場に崩れ落ちた。
晃「まず……」
………
……
…
『ムニャ……シャドウじゃない人間が倒れてる……?』
『迷い込んじゃった……? ふわーぁ』
…
……
………
目を開けると、いつもの部屋だ。
あれは夢だったのだろうか……?
枕の下には相変わらず銀製の鍵がある。
あのとき意識を失ってから、自分で戻したのだろうか。
とりあえず、学校に行かなくては。
それから三日経っても、
鹿波が目覚めることはなかった。
→story:1 『ハネムーン』 開始
とりあえずリメイクしたのはここまでです。
名前などは引き継ぎました。
誠に勝手ながらこのような変更をしたのをお詫びいたします。
質問等は後日お答えします。おやすみなさい
人物紹介
水瀬晃
本作の主人公
高校三年生で、卒業と同時に親のいる海外へ行くことになっている。
奥田浩二
母の弟で、晃の叔父。
晃が高校を卒業するまで、国外にいる両親に代わり保護者を務めてくれる。
神崎鹿波
晃の幼馴染
晃とは違うクラス。
素直になれない性格。
小坂井鎌一
晃のクラスメイト。
生徒会長を務めている。
ノリが軽い奴 。
武藤静樹
生徒会副会長
真面目で融通がきかないタイプ。
那月智美
晃のクラスメイト。
勉強熱心で学年一位。
水瀬晃
ペルソナ:ヨグ=ソトース
エイハ
スラッシュ
ディア
耐久:物理 呪怨
弱点:祝福
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