【艦これ】暁「目標は阿武隈お姉ちゃん」 (54)

暁「今日も一日頑張ったわ! また一歩、一人前のレディーに近づいたわね!」えっへん!

電「暁ちゃんすごいのです! 電も見習うのです!」

雷「暁! 雷だって頼れるレディーを目指して頑張っているんだから!」

響「でも、たしかに暁は最近少し大人びてきた気がするね」

暁「そう? やっぱりどう考えても暁が一番ってことよね!」

響「あとはそうやってすぐに自信過剰になるところが玉にキズだね。一人前のレディーはもっとお淑やかであるべきじゃないかな」

暁「むー。分かっているわよ。これはあくまで決意表明よ!」

雷「ところで響。さっきからなに見ているの?」

響「ああ。次回の作戦要綱さ」

電「作戦要綱? ちょっと電にも見せて欲しいのです」

『阿武隈さん攻略作戦 作戦要綱』

暁「阿武隈さん攻略作戦!? なにこの作戦!?」

響「阿武隈さんに登ることを目的とした、今からワクワクが止まらない作戦だよ」

雷「どう考えても響が勝手に考えた作戦よね、これ!?」

響「失礼だね。ここをよく見て欲しい」

『作戦立案 大淀』

暁「大淀さんなにやってるのよーっ!? ってあれ……?」

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1476632603

『駆逐艦を中心とした精鋭の艦隊を率い、高い練度を誇る軽巡洋艦阿武隈を攻略せよ! 任務報酬 ケーキ』

暁「完全に遊びじゃないのよーっ!? なによ報酬がお菓子って!」

響「これは遊びではない。実戦だよ。とても困難な、そして必ず達成しなければならない重要な任務となるだろう」キリッ

暁「アンタは阿武隈さんに登りたいだけでしょうが!?」

電「そもそも阿武隈さんを攻略っておかしいのです……」

雷「あはは、暁ってばちょっと落ち着きなさいよもう……あれ?」

『海域難易度 ☆』

雷「って難易度最低の星一つじゃないの!? 鎮守府正面海域じゃないのよ!」

『補足:まあ阿武隈さんですし楽勝でしょう』

電「ものすごく過小評価されているのです!?」

雷(これ阿武隈さんなら、響のアホらしい行動にも付き合ってくれるだろうってことでしょうね)

暁「もう! 響のボケに付き合っていたら夜が明けちゃうわ! さっさと寝ましょう」

響「阿武隈さんに登らないのかい?」

暁「登らないわよ!」

響「……そうか。残念だね」ずーん

暁「なんでそこまで落ち込んでいるのよ!?」

電「響ちゃん、そんなに阿武隈さんにおんぶしてもらいたいの?」

響「別にそこまででもないさ」

雷「とてもそうは見えないけど」

響「……今日は眠れそうにないな。少し夜風に当たってくるよ」どよーん

暁「ものすごく落ち込んでいるじゃないの!?」

雷「はいはい、響。明日になったら好きなだけ阿武隈さんに登って良いから、今日はもう寝ないと駄目よ」

電「勝手に阿武隈さんが売られたのです!?」

響「了解。Верный(ヴェールヌイ)、就寝する」

電「そして立ち直りが早いのです!?」

響「今からワクワクが止まらないな。今日は眠れないかもしれないね」ウキウキ

暁「どっちにしろ寝られないんじゃないの!?」

響「いや、それじゃあ駄目だね。早く寝て、朝一番に作戦開始できるようにしないと」

響「それじゃあおやすみ……すー」

電「二秒で熟睡したのです!?」

暁「あーもー! なんなのこの子!?」

響「阿武隈さんの背中は……やはり温かいな」

雷「夢の中でも阿武隈さんに登ってるの!? どんだけ阿武隈さんに登りたいのよこの子!?」

暁「はあ……暁は疲れたわ。さっさと寝ましょう」

雷「そうね」

電「なのです」

暁「電、雷。おやすみなさい」

電「おやすみなさい、なのです」

雷「はーい、おやすみなさーい」

暁「響もおやすみなさい……まったく、今日も響に振り回されるばかりだったわ」

暁「もうちょっと暁を見習って、レディーらしくして欲しいものね」

暁「ともかく、ゆっくり休まないと。しっかり休息を取るのも、一人前のレディーとして必要な心がけだわ」

バンッ!

川内「ほら! こんな月の綺麗な夜になに寝てるの! 良い子は夜戦の時間だよ!」

暁「良い子は寝る時間よおおおおおおぉ!? 今何時だと思っているのよ!」

川内「夜10時! 夜戦にもってこいの時間よね!」

雷「駄目だわ! いつものように話が通じない!」

川内「話なんてしてたら時間の無駄じゃん! さあ夜戦に行くよ!」

響「せっかくだけど断るよ……良い夢を見てた気がするけど、全部忘れてしまったじゃないか」

川内「ふーん……そう来るか。けど君達に拒否権はない!」

電「理不尽なのです!?」

暁「暁達は明日も予定があるの! 夜戦に行ってたら朝起きられなくなっちゃうじゃない!」

川内「そんなの気合いが足りないよ! 夜戦を楽しみにする心で乗り越えなきゃ!」

雷「川内さんいつも朝になったら寝て、夕方まで起きないわよね!?」

川内「うぐっ!?」

響「乗り越えられてないじゃないか。夜戦を楽しみにする心はどこへ行ったんだい」

電「なのです」

川内「ふ……どうやら川内さんを本気にさせてしまったね」

川内「いいよ! 私の夜戦を楽しみにする心、とくと見せて上げるよ! もちろん夜戦でね!」

暁「結局夜戦!?」

雷「なるほど、これがループって奴ね!」

響「雷、感心している場合じゃないよ」

川内「さあ、私と夜戦しよ!」

暁「お断りよ!」

川内「お断りを断る!」

雷「困ったわ……これじゃあ夜戦を了承したらもちろん、断るにしても眠れそうにないわね」

電「なのです……」

響「参ったね」

ガチャ!

神通「姉さん! そこまでです!」

阿武隈「暁ちゃん、響ちゃん、雷ちゃんに電ちゃんも無事!?」

川内「うえっ!? 厄介な二人組が来た!?」

磯波「わ、私もいます!」

暁「阿武隈さん! 神通さんに磯波も!」

電「阿武隈さん達が来てくれたのです!」

雷「これで安心だわ!」

響「すぱしーば。これは頼もしいな」

暁「それにしても、阿武隈さんと神通さんはともかく、磯波はどうしたの? こんな夜遅くに」

磯波「その……私も川内さんを連れ戻しに来ました」

川内「ああ、ごめんごめん。すぐに暁達四人を連れてそっち行くからさ。先に出撃準備しといてよ」

磯波「夜戦に行くために、連れ戻しに来たわけじゃありませんからね!?」

暁「そうよ! それに暁達を勝手に参加させないでよね!」

阿武隈「駄目だよ川内。暁ちゃん達だって都合があるんだから。ちゃんと他の人のことも考えないと」

川内「えー? 夜戦に勝る都合なんてあるの?」

雷「あるわよ」

電「あるのです」

響「あるよ」

磯波「ありますから」

暁「あるに決まってるじゃない」

川内「なんでよ!?」

阿武隈「だから、川内も諦めてさっさと自分の部屋に戻って寝ないと駄目だよ?」

川内「いーやーだ! やせんするの! やーせーん!」ジタバタ!

阿武隈「もー、川内ってば本当に大きな子供なんだから……」

電「でもちょっとかわいいのです」

暁「さっきまで迷惑掛けられていた相手にのんきね、電は」

神通「ほら、姉さん。ちゃんと阿武隈の言うことを聞いて部屋に戻ってください」

川内「ちょ!? 神通はお姉ちゃんと阿武隈どっちの味方なのさ!?」

神通「阿武隈」

川内「だからなんでよ!?」

暁「日頃の行いね」

響「日頃の行いだね」

雷「日頃の行いじゃない?」

電「日頃の行いなのです」

磯波「日頃の行いだと思います」

川内「ひどい!? というか三水戦の磯波にまで信頼されてない!?」

神通「日頃の行いです。反省してください」

川内「追い打ち!?」

川内「うう……こうなったら、私の夜戦で神通達を見返してあげるよ! と言うわけで皆で夜戦しようよ! ねっ、夜戦!」

神通「ますます見損ないそうです」

川内「むー。最近神通ってば、お姉ちゃんに対して冷たいぞー」

神通「姉さんが夜に騒いで皆さんに迷惑ばかり掛けているからです」

阿武隈「ほら、神通もこう言っているんだから、部屋に戻ろう、ね? ほら、あたしも部屋までついて行ってあげるから」

川内「だから子供扱いするなー! 他はともかく阿武隈だけにはされたくなーい!」

響「よしよし」なでなで

川内「……ん?」

電「響ちゃんなにやっているのです?」

暁「なんで川内さんを撫でようとしているのよ?」

雷「しかも、手が頭に届いてないわ」

響「阿武隈さん以外だったら、子供扱いされると嬉しいのかなって」

川内「阿武隈以外だったら子供扱いされても良いってわけじゃないからね!? しかも駆逐の子が相手なら、なおさらだよ!」

雷「つまり阿武隈さんは特別ってことね」

神通「そんな!? 姉さん駄目です! 阿武隈には提督という将来を誓いあった相手が!」

川内「ちがーうっ!?」

磯波「あ、あの……川内さん。あまり騒ぐと暁さん達だけでなく、他の部屋にも迷惑になりますから」

川内「え? 私別に悪くないよね? 私は素敵な夜戦へのお誘いしただけだし」

阿武隈「……えっと、大本の原因は川内だと思うよ」

神通「その通りです」

電「なのです」

磯波「なのです?」

暁「なのです」

雷「なのです」

響「なのです」

川内「その『なのです』攻勢になんの意味が!?」

神通「え、えっと……なのです」

川内「神通も続かなくていいから!?」

神通「……そうですか」

川内「なんでそこまで残念そうなの!?」

響「神通さん、なのです」

神通「響ちゃん? ……なのです?」

磯波「なのです!」

電「なのです!」

暁「なのです」

雷「なのです!」

阿武隈「なのです!」

神通「なのです!」

電「なのですなのですすーぱーなのです!」

川内「なんなのこれ!? 意味分からないんだけど!?」

神通「姉さん、これは『なのです』なんです。ねえ、阿武隈」

阿武隈「そうだよ川内、これは『なのです』なんだから。ねえ神通」

川内「あんたらなんでそんなに仲良いのよ!? お姉ちゃんちょっと妬けるんだけど!?」

磯波「もう、川内さん今日は諦めて部屋に戻ってください」

川内「やだー。夜戦しないなら朝までここで安眠妨害してやるー」ごろごろ

神通「暁さんの布団を占拠しないでください」

暁「そうよ! これじゃあ暁が眠れないじゃない!」

雷「雷達も川内さんがうるさいと眠れないわよ!」

阿武隈「もー。響ちゃんより聞き分けないんだから、川内ってば」

響「阿武隈さん、それはどういう意味だい?」

暁「響、あなた普段の行動を思い返してみなさい」

響「……思い返す? ……この前、訓練のご褒美に阿武隈さんが作ってくれたプリンはおいしかった。実にハラショーだ」

雷「それは行動じゃないわ、感想よ」

電「響ちゃん、普段から阿武隈さんを困らせてばかりなのです」

響「不死鳥の秘密は、阿武隈さんエネルギーを補給するタイミングにあるんだよ」

阿武隈「意味不明なんですけど……」

暁「日本語で話しなさい。ここは日本の鎮守府よ」

神通「……いいなあ、阿武隈」

川内「え? 今のどこにうらやましい要素があったの?」

磯波「どうしても部屋に戻って頂けないんですか?」

川内「夜戦に付き合ってくれたら戻るよ?」

阿武隈「それ、戻らないってことだよね?」

磯波「……仕方ありません、奥の手を使うしかなさそうですね」

川内「奥の手? そんなの磯波にあるの?」

磯波「甘くみないでください、川内さん。これでも私はこの鎮守府で古参にあたります」

電「磯波ちゃんとはよく一緒に訓練や出撃したのです」

磯波「ええ、電ちゃんにもお世話になりました。今度、また一緒に訓練したいですね」

川内「へえ……それで、夜の私をどうこうできるとでも?」

磯波「ええ、確実に」

阿武隈「ちょ、ちょっと磯波ちゃん!?」

暁「危険よ! 相手は一応夜戦のプロフェッショナルなのよ! そして夜戦をするためなら、なりふり構わない川内さんなのよ!」

雷「そうよ! 阿武隈さんや神通さんに任せておけば安心よ!」

川内「ちょっとそこの二人。私の認識ひどくない?」

磯波「いえ、大丈夫ですから任せてください。今この場に限っては、川内さんは私に勝てません」

川内「面白い……やってみなよ! 無理だと思うけどね!」

磯波「そこまで言うなら、やって見せましょう!」バッ!

川内「……ん? なにこの用紙? 燃料、弾薬、鉄に高速修復材の数字が並んでいるけど?」

磯波「今までに川内さんが夜間の無断出撃――そのうち、緊急性や必要性が認められなかったもので消費した資材……今この場で弁償してもらいます!」

川内「すみませんでしたああああああぁ!」

阿武隈「よわっ!?」

磯波「これだけじゃないですよ。川内さんが他の子を無理矢理夜戦に連れて行った結果、翌日に生じた欠員などの補填で生じた費用も合わせてお願いしますね」

川内「もう勘弁して!? こんな金額、ポンと支払えるわけないでしょ!?」

響「つまり、それだけの資材を必要のない無許可の夜間出撃で浪費したわけだね」

神通「はあ……姉さん」

川内「ああ!? 妹の目が今までになく冷たい!?」

暁「そりゃ、まあそうよねえ……」

電「ちょっとかわいそうだけど、どうにもならないのです」

川内「暁達まで冷めた目で!? とってもに心が痛いんだけど!?」

雷「もう川内さんったら、そんなんじゃ三水戦の旗艦降ろされちゃうわよ!」

川内「縁起でもないからやめて!」

神通「とりあえず、姉さんはお説教です」

川内「え? そ、その……できればお手柔らかにお願いしたいなぁ……」

神通「姉さんの態度次第ですね」

川内「……阿武隈へるーぷ!」

阿武隈「神通、あたしも参加させてもらっていいかな?」

神通「阿武隈がよければもちろん」

川内「こんな時まで仲良いね二人とも!?」

川内(い、いやけどなんだかんだ神通は阿武隈に甘いから、阿武隈がいればそれなり神通の怒りも緩和されるはず――)

神通「姉さん。夜も遅いですし、阿武隈に迷惑が掛かりますから、今日は短めに切り上げますが。場合によっては明日も続けますからね」

川内「うええええええ!?」

神通「ほら、姉さん行きますよ。いつまでもここにいたら暁さん達に迷惑です」

川内「やせんはあるよ……ここにあるよ」ずるずる

雷「意外と余裕そうね」

磯波「精神的な打たれ強さはものすごいですから、川内さん」

響「さすがは三水戦の旗艦ってところかな」

阿武隈「まったく、夜戦バカさえなければ非の打ち所のない子なのに……じゃあ、あたしも行くね」

電「おやすみなさい、なのです」

雷「阿武隈さん、おやすみなさーい」

暁「阿武隈さん、また明日なのです」

阿武隈「えへへ、うん。おやすみなさい、暁ちゃん、響ちゃん、雷ちゃん、電ちゃん、磯波ちゃん」

磯波「はい。すみませんが、私も今日はお休みさせて頂きますね」

電「はい。磯波ちゃんもまた明日なのです」

響「……」コソコソ

――しばらくして。

川内「燃え尽きた……真っ白に燃え尽きたよ」

阿武隈「もう、川内ってば大げさなんだから」

神通「阿武隈の言うとおりです。姉さんがこのくらいのお説教で参るはずありません」

川内「なにその余計な信頼」

阿武隈「ほら、やっぱり元気じゃない」

神通「そうですね。まあ、今日はこれ以上続けるつもりはありませんから、阿武隈の入れたお茶でも飲んでシャキッとしてください」

川内「夜中にカフェインなんか飲めないって。眠れなくなっちゃうじゃない」

神通「普段から一晩中起きてばかりの姉さんが、なに言っているんですか」

阿武隈「大丈夫だよ。ちゃんとノンカフェインで、落ち着いて眠れる効用のあるハーブディーだから」

阿武隈「熊野さんに教えて貰ったんだ、おいしいから飲んでみて飲んでみてっ」

川内「素で受け止められると調子狂うんだけど」

神通「さすが阿武隈ですね」

川内「なに誇らしげにしちゃってんの!?」

阿武隈「えへへ、ありがとう。けどまだまだ神通には敵わないよ」

神通「謙遜しないでください。私の方こそ、阿武隈には見習うところばかりです」

川内「本当に仲いいねあんたら!?」

神通「あの……そんなに大声出されると、私混乱しちゃいます」

川内「あのさ……いや、もういいよ。うん」

阿武隈「でも川内はさ、どうしてそんなに夜戦したがるの?」

川内「好きだからに決まってるじゃない!」

阿武隈「それは知ってるけど、なにも夜に騒ぐことないと思うんだけど」

川内「えー、好きなものを好きと言って何が悪いのさ。それに、好きなものを周りと共有したいって普通の感情だと思うな」

神通「それは最もですけど、人様に迷惑かけるのは良くないです」

川内「ちぇー。何で皆もっと夜戦を好きになってくれないんだろう。水雷戦隊の華と言えば夜戦じゃない」

神通「まあ、否定はしませんが」

阿武隈「できればあんまりやりたくないなあ……夜戦は皆にとっても、すごく危険なことだし」

川内「なんでさ!?」

神通「考え方は人それぞれですよ、姉さん。阿武隈は敵を倒すより、仲間を無事に帰すことを第一に考える人です」

川内「それも理解できないことはないけど……でも私はやっぱり夜戦しないと満足できないね!」

阿武隈「だから否定はしないってば。ただもうちょっと周りの迷惑も考えようね」

神通「そうですね。夜中に騒くのと、無断出撃だけはやめてください」

川内「ごめん、それ無理」

阿武隈・神通「いいかげんにしろ夜戦バカ」

川内「とうとうハモった!?」

トントン――ガチャ

五十鈴「ああ、阿武隈。ここにいたのね。神通もこんばんは」

阿武隈「あっ、五十鈴お姉ちゃん! ごめんね、部屋に戻るの遅くなって……もしかして、捜しに来てくれたの?」

五十鈴「べ、別に。ただちょっと遅いなって思っただけよ。心配なんてしてないわ」

神通「すみません、阿武隈を遅くまで付き合わせてしまって」

五十鈴「いいのよ、別に。今日も川内の面倒見てくれてたんでしょ?」

川内「五十鈴さんまで扱いひどくない?」

神通「あの……本当にすみません」

川内「そこは私を擁護(ようご)して欲しかったんだけど!?」

五十鈴「ほら、もう夜も遅いわ。早く寝ないと明日に差し支えるわよ。他の皆に示しが付かないでしょ?」

川内「いや、阿武隈はともかく私は大丈夫だから」

五十鈴「アンタが一番心配なのよ! 昨日もまた昼間寝てて、阿武隈に三水戦の訓練押しつけてたじゃない!」

川内「私の領分は夜だからね! 昼は阿武隈に任せた!」

阿武隈「任せないでよ!? 一水戦と三水戦両方見るのすっごく大変なんですけど!?」

五十鈴「そうよ! 五十鈴や他の皆がサポートしなきゃ、阿武隈ダウンしてるところだったわよ!」

神通「……えいっ」

川内「はうっ!?」がくっ

阿武隈「ふえええっ!? ちょ、ちょっと川内大丈夫なの!?」

五十鈴「思いっきり気絶してんだけど!?」

神通「大丈夫です。この程度でどうにかなる姉さんではありませんから」

五十鈴「い、嫌な信頼ね……」

神通「伊達に姉妹やってませんからね……ふう」

阿武隈「妙な説得力があってコメントに困ります……」

神通「それでは姉さんはこのまま連れて帰ります。阿武隈、五十鈴さん。おやすみなさい」

阿武隈「うん! また明日ね! おやすみなさい神通」

五十鈴「おやすみ。神通もあまり無理しないようにね」

神通「姉さんがもう少しおとなしくしてくれれば、無視しないで済むんだけど……」

五十鈴「それは無理そうねえ」

神通「反論できないところが悲しいです……それでは。姉さん、行きますよ」

川内「う、うーん……夜戦」ズルズル

阿武隈「川内痛そうだけど、大丈夫かな……?」

五十鈴「……さて、阿武隈。五十鈴達もそろそろ寝ましょう。このままじゃ寝不足になっちゃうわよ」

阿武隈「はーい。それと心配してくれてありがとう。おかげで助かっちゃいました」

五十鈴「別にそんなんじゃないって言ってるでしょ? 阿武隈が五十鈴に気を回すなんて十年早いわよ」

阿武隈「そうだね。えへへ、ありがとう」

五十鈴「まったく……本当に毒気の抜かれる子ね。さて、そろそろ行きましょ」

阿武隈「はーい」

ガチャ

響「出てくるのを待ってたよ。ハラショー」よじよじ

阿武隈「ふえええええ!? 響ちゃんいきなり登ってこないでぇ!?」

五十鈴「アンタ五十鈴達が出てくるの待ってたの!?」

響「待ち伏せは兵法の定石だよ。信頼の名は伊達じゃない」きりっ

阿武隈「もー。響ちゃんってば早く寝ないと駄目でしょ」

響「そうだね。今日はここで寝て良いかな? 間違いなくグッスリ寝られるはずさ」

阿武隈「駄目です」

響「……そうか。残念だ」ずーん

阿武隈「なんでそこまで落ち込むかなぁ……もう、響ちゃんの部屋に戻るまでなら良いよ」

響「ハラショー。阿武隈さんには力を感じる」キラキラ

五十鈴「ものすごくご満悦ね、この子……」

阿武隈「どうしてこんな変な癖が付いちゃったかなぁ……」

大淀「響ちゃん、おめでとうございます! 任務成功です!」

阿武隈「きゃあ!? 大淀さん急に現れないでくださいよ!」

五十鈴「大淀、あなたどうしたのよ? 急に任務成功とか言い出して」

大淀「響ちゃんが『阿武隈さん攻略作戦』を無事完遂したようなので、その確認とお祝いに来ました」キリッ

五十鈴「ドヤ顔で何言ってんのアンタ」

響「この作戦を無事完遂した成果は大きい。阿武隈さんエネルギーの恒常的な供給は、水雷戦隊の維持と発展には必要不可欠だからね」

五十鈴「そんな意味不明な話、聞いたこともないわよ」

大淀「五十鈴さん、ご存じないのですか?」

五十鈴「なにがよ?」

大淀「響ちゃんや暁ちゃん、初霜ちゃんや霞ちゃんが改二になれたのも、阿武隈さんエネルギーを十分に取り込んだからなんですよ」

五十鈴「さらっと大ボラ吹いているんじゃないわよ!」

響「やはり大淀さんは気づいていたか。さすがだね」

阿武隈「響ちゃんも乗らないの! そもそも、大淀さんはなんでこんな作戦を響ちゃんに吹き込んだんですか!」

大淀「面白そうだったからに決まってるじゃないですか」

五十鈴「それだけ!?」

大淀「それ以上の理由がいりますか?」

阿武隈「面白そうだけで、あたしを作戦目標にしないでください!」

大淀「最近いろいろと忙しかったので、ついカッとなって」

阿武隈「つい、じゃないです! そもそもなんであたしなの!?」

大淀「こんなアホらしいことに付き合ってくれるのは、足柄さんと阿武隈さんくらいですから。私が気兼ねなくボケられる貴重な相手です」

阿武隈「あーもー! あたしだっていいかげん怒っちゃいますからね!」ぷんすか!

大淀「ふふ、ごめんなさい」

阿武隈「あたしが怒ったら大変なんですからね? きっと大淀さんは後悔しちゃうんだから!」

五十鈴(かわいい)

大淀(かわいい)

響「阿武隈さんは怒っていても、ほんわかオーラが隠し切れてないな。とても安心する」

阿武隈「ふえええ!? ちっとも怖がられてない!? なんで!?」

大淀「阿武隈さんは怒っていても可愛らしいというか、まあそもそも――」

阿武隈「そもそも……なに?」

大淀「すごくウキウキしてる響ちゃんが背中にいる時点で、威厳とか怖さとか皆無です」

響「うらー」

阿武隈「もー、響ちゃんってばあたしの輪っか触らないでください」

暁「あ! 響見つけた! やっぱり阿武隈さんのところにいたのね!」

雷「もう! 大体予想してたけどまた阿武隈さんに登っていたわね!」

電「響ちゃん、あんまり阿武隈さんに迷惑掛けちゃ駄目なのです」

響「ごめんね。作戦の早期実行が必要だと判断したんだ」

暁「こんな夜遅くにやる必要ないでしょ! 阿武隈さんに迷惑じゃない!」

阿武隈「大丈夫だよ、暁ちゃん。あたし自身はそこまで迷惑じゃないからね」

暁「むー」

阿武隈「でも、響ちゃんとあたしのために怒ってくれてありがとう。雷ちゃんも電ちゃんもありがとうね」

雷「別にたいしたことはしてないわ」

電「なのです。むしろ阿武隈さんにごめんなさいなのです」

阿武隈「電ちゃんが気にする必要ないよ。ありがとうね」

電「電こそ、ありがとうなのです」

阿武隈「響ちゃん、ほら暁ちゃん達に心配掛けちゃ駄目だよ。三人とも、響ちゃんを心配してきてくれたんだから」

響「そうだね……ごめんね、三人とも」

暁「もう……別にそこまで怒ってないわよ」

雷「そうね。響がハチャメチャなのはいつものことだもの」

電「響ちゃんが阿武隈さんにべったりなのは、いつものことなのです」

響「いや、それは……」

五十鈴「なにを今更。否定する余地なんかまったくないわね。本当のことじゃない」

大淀「ですね。別に恥ずかしがる必要ないじゃないですか」

響「黙秘権を行使するよ」

大淀「あら、残念です」

阿武隈「えへへ、あたしは響ちゃん大好きだよ?」ぎゅー

響「!?」じたばた

大淀「ふふっ、響ちゃんは恥ずかしがり屋さんですね」

五十鈴「普段は自分から阿武隈に飛び付いてるくせに、難儀な子ねえ」

雷「あ、響ずっるーい! 雷も雷も!」

電「電もして欲しいのです」

暁「あ、暁はもう一人前のレディーなんだからいらないわ! 別にうらやましくなんかないんだから!」そわそわ

五十鈴「まったく隠せてないわよ暁。まったく、一人前のレディーにはまだまだ届かないわね」

暁「い、妹離れできない五十鈴さんほどじゃないわ!」

五十鈴「なんですってぇ!?」

阿武隈「五十鈴お姉ちゃん! 暁ちゃん相手にそう怒らないの!」

五十鈴「う……わ、分かったわよもう」

大淀「あら、怒られちゃいましたね。五十鈴お姉ちゃん」

五十鈴「ぶっ飛ばすわよ」

暁「え、えっと……五十鈴さん、ごめんなさい。暁が大人げなかったわ」

五十鈴「暁……そんなの、五十鈴の方こそ大人げなかったわよ。ごめんなさい」

阿武隈「あたしもごめんね、大声だして怒っちゃって」

五十鈴「阿武隈こそちっとも悪くないでしょ。アンタが謝る必要はどこにもないわよ」

雷「そうよ。もうこの話はお終いにしましょ」

電「なのです」

大淀「ところで皆さん、そろそろ休まれた方が良いのでは?」

五十鈴「アンタがそれを言うか」

大淀「ぶっちゃけちょっとハジケ過ぎたことは反省してます。後悔はしてませんが」

五十鈴「説得力が感じられない発言ね」

雷「えー? もっと阿武隈さんとお話したーい」

電「雷ちゃん、あまりわがままを言ったら駄目なのです」

暁「そうよ、雷。お話ならまた明日できるじゃない」

響「そうだね。暁の言うとおりだ」よじよじ

暁「アンタはさらっと阿武隈さんに登ってんじゃないわよ!」

電「まだ満足してなかったのです?」

響「さっき部屋までおんぶしてくれるって約束してくれたし……」

阿武隈「あはは、響ちゃんってば甘えん坊さんなんだから」

五十鈴「阿武隈懐かれているわね、本当」

響「むー」

暁「そこで不服そうな顔をしても、ちっとも説得力がないわよ」

響「さすがにこれは恥ずかしいな……」

大淀「ああ、そう言えば響ちゃんに任務達成報酬を渡さなければなりませんね」

電「任務達成報酬って、ケーキですか?」

阿武隈「ケーキ? 大淀さん、駄目ですよ。こんな夜遅くにケーキなんてあげちゃ」

大淀「もちろん承知しております。では阿武隈さん、明日お願いしますね」

阿武隈「……はい?」

大淀「響ちゃんに任務達成報酬として、ケーキ作ってあげてください」

阿武隈「あたしが用意するの!? 大淀さんじゃなくて!?」

大淀「残念ながら、私には作れませんから。というわけで、よろしくお願いします」

阿武隈「なにも手作りじゃなくても良いじゃないの!? 大淀さんがお店で買ってくればそれで済むでしょ!」

大淀「今回の任務目標は阿武隈さんなので、響ちゃんに攻略されてしまった以上は阿武隈さんが報酬を支払うのが筋かと」

阿武隈「そんなの知りません! 大淀さんがイタズラで決めた任務の報酬を、なんであたしが支払わないといけないのよ!」

大淀「阿武隈さん。今から攻め込みますよなんて、敵から通達なんてされるわけないじゃないですか」

阿武隈「まず普段の常識としておかしいです! いいかげんにしないと、あたし怒っちゃいますからね?」

大淀「あら? 具体的にはなにをなさるおつもりで?」

阿武隈「ふえ? えっと……それは、その」

雷「なにも考えてなかったのね」

阿武隈「そ、そうです! もうお料理やお菓子作っても、大淀さんにはお裾分けしません!」

五十鈴「予想以上に考えがしょぼい!?」

暁「阿武隈さん、そんなんじゃ大淀さんは――」

大淀「申し訳ありませんでした!」

雷「反省するの早いわね!?」

電「あっさりと陥落したのです!?」

大淀「お願いですからそれだけは! 忙しい毎日に、たまに頂く阿武隈さんのお料理は活力の源なんです!」

阿武隈「あーもー! すり寄ってこないでください! 響ちゃんが落ちちゃいます!」

響「うーわー」ぐらぐら

五十鈴「いや余裕そうよこの子」

電「むしろ楽しそうなのです」

大淀「なにとぞ! なにとぞこの大淀の声をお聞きください殿!」

阿武隈「だれが殿ですか!? ちょっと落ち着いてください!」

霞「――あああああもう! 大淀今アンタ何時だと思っているのよ! 夜中に廊下で騒いでんじゃないわよ!」バンッ!

大淀「あら霞ちゃん、こんばんは」ケロッ

五十鈴「嘘泣きか!」

大淀「霞ちゃんに、大人げないところを見せるわけにはいきませんからね」

暁「暁達には見せていいのかしら」

響「暁、大淀さんそこまで考えてないと思うよ」

雷「なんてこと言うの響」

阿武隈「ごめんね霞ちゃん。起こしちゃったよね」

霞「別に。阿武隈さんは悪くないわよ。またはっちゃけた大淀に絡まれただけでしょ」

大淀「あれ? 私と阿武隈さんで対応違いすぎません?」

霞「なんで同じ対応してもらえると思ったのかしら?」

大淀「うう、霞ちゃんが最近反抗期です。ちょっと前まであんなに素直だったのに」

霞「勝手な思い出ねつ造してんじゃないわよ!」

大淀「ねつ造なんかじゃありません! これは妄想です!」

霞「なお悪いわ!」

大淀「ふふっ、その打てば響くようなその反応。阿武隈さんや霞ちゃん相手にボケるのは本当に楽しいですね」

霞「こっちはこれっぽっちも楽しくないわあああああぁ!」

阿武隈「霞ちゃん落ち着いて!」

電「なのです! 霞ちゃんもそんなに騒いじゃ駄目なのです!」

霞「これが落ち着いていられますかっての! 今日という今日はこいつにお灸を据えてやるわ!」

大淀「霞ちゃん、お気遣いありがとうございます。けど腰痛も肩こりもしておりませんから、必要ありませんよ」

霞「本気でぶっ飛ばすわよ!?」

阿武隈「大淀さん、おやつ抜き」

大淀「みなさん。近所迷惑になりますし、そろそろお休みしましょう」

五十鈴「本当に変わり身早いわね、アンタ」

大淀「それではみなさん、おやすみなさい。霞ちゃん、明日も起こしに来てあげますけど、夜更かししてはいけませんよ?」

暁「え? 霞ってば毎日大淀さんに起こしてもらっているの?」

霞「そんなわけないでしょ!? 大淀! あんたでたらめなこと言うんじゃないわよ!?」

大淀「もう、霞ちゃんってば照れ屋さんなんですから」

霞「とっとと寝ろーっ!」

大淀「ふふ、それではまた明日。みなさん、ごきげんよう」

電「おやすみなさいなのです」

霞「二度と起きてくるんじゃないわよ!」

雷「それはさすがに言い過ぎじゃない?」

霞「ふんっ! これくらいじゃあいつはまったく動じないわよ」

響「ただしおやつ抜きには動揺する」

阿武隈「あはは……」

霞「はあ……すっかり目が覚めちゃったわよ。ったく、どうしようかしら」

雷「それなら、私達と一緒に寝ましょ!」

霞「は?」

響「阿武隈さんと一緒に寝ると、とても安心できてぐっすり寝られるんだよ」

霞「なに言ってるのアンタ?」

電「霞ちゃん、響ちゃんの言っていることは本当なのです」

霞「電、アンタまで……」

電「なのです」

霞「念押ししなくて良いわよ。電がふざけてないことくらい、私にだって分かるわ」

暁「もう。阿武隈さんに伺いを立てないで、勝手に話を進めたら駄目じゃない」

阿武隈「五十鈴お姉ちゃん、あのね」

五十鈴「はあ……いいわよ、五十鈴は別に」

阿武隈「そう? ありがとう、お姉ちゃん」

五十鈴「まったく、一部屋に七人だと狭くなりそうね」

阿武隈「あはは、ごめんね」

霞(ナチュラルに自分を含めたわね……まあいいけど)

電「わーい、阿武隈さんや霞ちゃんとお泊まりなのです! 五十鈴さんも一緒なのです!」

雷「楽しみね!」

霞「って私を勝手に含めるんじゃないわよ!」

雷「もう、霞ってば照れ屋さんなんだから」

暁「レディーたるもの、自分の気持ちを素直に表現するのも大切なのよ」

霞「バカなこと言ってんじゃない!」

阿武隈「まあまあ霞ちゃん。大声出すと周りの人の迷惑になっちゃうからね」

霞「あっ……ごめん」

雷「雷こそごめんね、つい調子に乗って霞をからかっちゃったわ」

霞「まあ……いいわよ、別に」

阿武隈「えへへ、霞ちゃん良い子」ナデナデ

霞「頭撫でるんじゃないっての」

響「嬉しそうだね」

霞「別に嬉しくなんかないわよ、子供じゃあるまいし」

電「阿武隈さんも楽しそうなのです」

五十鈴「いつの間にかすっかりお姉ちゃんが板に付いちゃったわねえ」

雷「五十鈴さんも寂しいの?」

五十鈴「それはそう……ってそんなわけないでしょ」

響「阿武隈さん。早く寝よう。これ以上夜更かしすると、寝不足で明日が楽しく過ごせない」

五十鈴「アンタはいつでも楽しいが基準ね」

響「あまり褒めないで欲しい。さすがにちょっと恥ずかしい」

五十鈴「褒めてな……いや、ある意味褒めてるわね」

響「ハラショー」

阿武隈「響ちゃんの言うとおり、もう寝ないとね。ほら、みんな行こう」

雷「はーい!」

電「はいなのです」

霞「まったく、お気楽ね。あんた達は」

暁「もう、霞ったら。いつもそんなにツンツンしていたら疲れちゃうわよ。レディーとして、もっと優雅さが必要よ」

響「阿武隈さんと一緒に寝ると安心して寝られるから、心配いらないよ」

霞「だからそんなわけないでしょ……ったく」

阿武隈「えへへ、それじゃあ霞ちゃん、おやすみなさい」

霞「はいはい、おやすみ……誰と寝たってたいして変わるわけないじゃないの」



霞「すー……」

響「ぐっすりだね」

暁「ぐっすりね」

電「ぐっすりなのです」

雷「さすが阿武隈さんだわ」

五十鈴「なにこれ」

暁「霞がこんなに安心仕切った顔で熟睡するなんて……これがレディセブンの一人、阿武隈さんの力なのね」

電「また変な単語が出てきたのです」

雷「暁、この前は七大レディーとか言ってなかったかしら?」

阿武隈「暁ちゃん、そんな風に言われると恥ずかしいんですけど……」

暁「どうして? 立派なレディーであることに恥じる必要なんてどこにもないじゃない?」

電「暁ちゃん、そういうことじゃないのです」

暁「え? それってどういう……はっ!?」

響「どうやら気づいたようだね」

暁「レディーたるもの、自分の凄さを無駄に振り回したりせず、謙虚であれってことね! 阿武隈さん素敵だわ!」キラキラ

阿武隈(なんだか変な勘違いされてる!?)

五十鈴「ふっ、ふふふっ……レディセブンの阿武隈って……駄目だわ、あーお腹痛い。阿武隈、暁の手本となるような立派なレディでいるのよ……くくっ」

阿武隈「お姉ちゃんは笑いすぎです」

暁「阿武隈さんを見習って、暁ももっと一人前のレディーとして頑張るわ!」キラキラ

阿武隈「えへへ、ありがとう暁ちゃん。それじゃああたしも暁ちゃんの手本になれるよう、しっかり頑張らないとね」

電「電も阿武隈さんを目標として頑張るのです」

雷「雷も頑張るわ!」

響「私も、第二次『阿武隈さん攻略作戦』の成功を目指して頑張るよ」

阿武隈「それは頑張らなくて良いです」

霞「……お姉ちゃん」

阿武隈「……ふえ?」

五十鈴「っ!?」

霞「……すー」

五十鈴「……お、お姉ちゃん……霞が阿武隈にお姉ちゃんって……阿武隈、アンタ五十鈴を笑い殺す気!?」

阿武隈「理不尽なんですけど」

響「五十鈴さんの笑いのツボが、よく分からなくなってきたんだけど」

雷「良いんじゃない? そんなの人それぞれで」

――翌日。

阿武隈「はい、由良お姉ちゃん。髪結い終わったわよ」

由良「うん、今日もバッチリ。ありがとう、阿武隈ちゃん」

阿武隈「えへへ、どういたしまして」

由良「霞ちゃん、今日はスッキリした顔しているわね。なにかあったの?」

霞「え? いえ別に特に何も……」

由良「そう? ああ、せっかく由良達の部屋に来たのに、お構いもしないでごめんね」

霞「別に気にしないでってば。霞が勝手に来ただけなんだから」

阿武隈「でも付き合ってくれてありがとうね」

霞「だから、私はなんとなく来ただけだって言ってるでしょ! 別に阿武隈さんの髪結いに付き合ったわけじゃないってば!」

阿武隈「うん、分かってるよ。でも結果的に付き合ってくれたことは事実だから」

霞「はあ……どこまでお人好しなのよ、ったく」

由良「ふふっ、霞ちゃんにも阿武隈ちゃんのかわいさが伝わってきたようね」

霞「なに言ってんのアンタ」

若葉「若葉だ。頑張って若葉を育てるぞ」

響「響だよ。頑張って若葉を育てるよ」

若葉「ちょっと待て響。なぜ若葉にクッキーを差し出すんだ」

響「若葉を育てるんじゃないのかい?」

若葉「違う。若葉は若葉でも、この植木鉢にある若葉の方だ」

響「そうか。ついうっかりしてしまったな」

若葉「ちょっと待て。なぜ若葉を植木鉢に入れようとするんだ」

響「え? 若葉は土で育つんじゃないのかい?」

若葉「違うぞ。植木鉢で元気に芽生えている若葉の方だ」

響「そうか。つい勘違いしてしまったな」

若葉「ところで、植物には声をかけてあげると、元気に育ってくれるらしいぞ」

響「そいつはいいな。私達もやってみよう」

若葉「ああ、それがいい」

響「若葉、響だよ」

若葉「若葉、若葉だ」

響「響だよ。若葉、大きくなるんだよ」

若葉「若葉だ。若葉、元気に育て」

子日「若葉ちゃん、子日だよ! おおきくなーれ!」

霞「そして、あんたらは窓際の植木鉢を前になにしてんのよ!?」

由良「なんだか頭が痛くなってきたわ……」

若葉「見て分からないのか。ガーデニングだ」

子日「大きくなったら庭に植えるんだよ!」

霞「そういうこと言ってんじゃないわよ!」

由良「さて、お話は尽きないけど、そろそろ朝ご飯食べに行こうかしら。このままじゃ遅くなっちゃう」

阿武隈「そうだね。霞ちゃん、行こっ」

霞「はいはい。分かったから手を引くんじゃないわよ」

ガチャ――

菊月「いたぞ……攻略目標だ」

長月「目標発見……久々に本気になるとするか……我に続けええええぇ!」

白露「ちょっと待ったーっ! いっちばーんはこの白露なんだから! いっちばーん!」

時雨「姉さんにだって負けはしないさ。時雨、行くよ……いっちばーん」

島風「だれが相手だって負けないよ! 速きこと島風の如しなんだから!」

大潮「大潮も負けませんよ! どっかーん!」

清霜「清霜だって負けません! この任務を達成して戦艦になるんだから!」

文月「ふわ~。阿武隈さん、まってまって~」

夕立「ぽいぽいぽーい!」


ドドドドド――!

阿武隈「……ふえ?」

白露「いっちばーん先に阿武隈さんに上陸!」

阿武隈「ふええええええ!? 白露ちゃん飛び付いて来ないでくださいいいいぃ!?」

長波「島風達は朝から元気だなー……若いって良いよなあ……」

風雲「アンタだって十分若いでしょうが」

長波「いやまあそうだけどさぁ……」

白露「阿武隈さんに揚陸成功! やったね!」

時雨「白露、さすがだね。やっぱりいっちばーんは伊達じゃない」

大潮「大潮、無事に任務達成しました! 皆さんのおかげです!」

菊月「ミッションコンプリート……」

長月「作戦難易度は低かったが、得られた成果は大きなものだ。良くやった」

文月「えへへ~阿武隈さんおんぶおんぶ~」

島風「おねーちゃん、おはようございまーす!」

清霜「阿武隈さんどう? 清霜すごかったでしょ? そろそろ戦艦になれるよね?」

夕立「阿武隈さん、おはようっぽい? ドーナッツあるっぽい?」

阿武隈「うん、みんなおはよう……取りあえず降りてくれるかな?」

菊月「……なにかあったのか?」

阿武隈「一人ならともかく、複数人だと重いし危ないんですけど」

長月「……だ、そうだ。白露、降りてやれ」

時雨「阿武隈さんに乗ってるのは文月と長月じゃないか」

長月「……なん……だと?」

時雨「わざとらしく驚かなくて良いから」

大淀「おはようございます、みなさん。ふふっ、阿武隈さんお困りのようですね」

阿武隈「あ、おはようございます……って大淀さん! これもあなたの仕業なんですか!?」

大淀「油断しましたね阿武隈さん。私は響ちゃんだけにしか阿武隈さん攻略作戦の発令をしていないなんて、言った覚えはありませんよ」

若葉「くっ……大淀さん、やはりその知謀は底知れないな」

白露「そうかなあ……?」

阿武隈「ていうか、大淀さん一体なにがしたいんですか?」

大淀「そうですね、それは――」

菊月「ふむ……悪くない」よじよじ

大潮「阿武隈さん、次は大潮も良いですか?」

大淀「みなさん、楽しそうじゃないですか。ほら」

阿武隈「……まあ、別に良いけど」

大淀「これって、とても素敵なことだと思うんです」

文月「阿武隈さん、文月ももっと~」

島風「お姉ちゃん、島風と遊んでー!」

清霜「清霜も清霜も! ねえ何して遊ぶ? ねえ何して遊ぶ? なになになに、ねえ?」

神通「あ、アブちゃん! 次は私も!」

阿武隈「ちょっと神通!? なんでさりげなく混ざろうとしてるの!?」

響「全然さりげなくなかったけどね……」

子日「神通さん、子日達より背が高いもん!」

神通「だって阿武隈ばっかりずるい! 私だって阿武隈やみんなと一緒にはしゃぎたいのに!」

阿武隈「だから理不尽なんですけどぉ!?」

吹雪「みんなもう阿武隈さん攻略作戦を完遂してるんだ。どうしよう……私だけ出遅れちゃった」

吹雪「やっぱり私じゃ力不足なのかなあ……これじゃあ、扶桑さんみたいな重雷装航空戦艦になんてなれない……」(※扶桑姉さまは重雷装航空戦艦ではありません)

吹雪「もう、諦めた方がいいのかな……」

綾波「諦めちゃ駄目ですよ、吹雪ちゃん!」バンッ!

吹雪「綾波ちゃん!?」

綾波「どうして諦めてしまうんですか!? そんなの吹雪ちゃんらしくないです!」

吹雪「でも……」

綾波「でもじゃないです! 吹雪ちゃんは一人じゃありません! 吹雪ちゃん一人では無理でも、綾波達がいます!」

吹雪「そんな……私は綾波ちゃん達に助けてもらうような、そんな立派な駆逐艦じゃないよ……」

綾波「そんなことありません!」

吹雪「だって、私は綾波ちゃんみたいな火力はないし、島風ちゃんみたいに速くもないし――」

吹雪「秋月ちゃんみたいな対空能力も、朝潮ちゃんみたいな対潜能力もない、それに初霜ちゃんみたいにもふもふじゃない!」

初霜「!?」

綾波「けど、吹雪ちゃんには吹雪ちゃんの良さがあります!」

吹雪「私の良さ……? そんなの……」

綾波「扶桑さんみたいな、重雷装航空戦艦になりたいという誰にも負けない……他の誰も持ってない、大きな夢です!」

吹雪「っ!?」

吹雪「私の夢……私だけの夢……そっか。そうだよね!」

綾波「吹雪ちゃん!」

吹雪「綾波ちゃん、ありがとう! おかげで迷いは吹っ切れたよ!」

綾波「良かったです! それでこそ吹雪ちゃんですね!」

吹雪「そうだね! 今は無理でも、近い未来に皆に負けないくらい強くなっちゃうんだから! 初霜ちゃんのもふもふにだけは勝てる気がしないけど!」

初霜「!?」

綾波「吹雪ちゃんなら強くなれます! さすがに初霜さんのもふもふだけは超えられませんけど!」

初霜「!?」

吹雪「よし、特型駆逐艦吹雪! 阿武隈さん攻略作戦を開始します!」

綾波「綾波も続きます!」

初霜「ちょっと待って! お二人の私に対する認識を一度訊いてみたいわ!」

電「そこまでなのです!」バンッ!

吹雪「電ちゃん!? どうして私達の前に立ちふさがるんですか!?」

電「これ以上、阿武隈さん攻略作戦のメンバーを増やすわけにはいかないのです!」

綾波「どうしてですか?」

電「それは……」



白露「いっちばーん!」

時雨「いっちばーん」

響「ハラショー。やはり今日も阿武隈さんの背中の居心地はとても良いな」

春雨「あの……春雨も阿武隈さんに登ってみたいです」

阿賀野「ねえねえ春雨ちゃん、阿賀野の背中だったら空いてるよ?」

由良「あら、阿武隈ちゃんも響ちゃん達もかわいい。みんな、写真撮るからこっち向いてね、ねっ、ねっ?」

五十鈴「この騒がしい状況で撮ってる場合じゃないでしょうが!?」

ビスマルク「駆逐艦の子達が阿武隈に集まっていて、容易には攻略できないわ。さすが阿武隈……このビスマルクが認めただけのことはあるわね」

榛名「ええ、ビスマルクさん。榛名にとってもこれは手強い相手です」

鳥海「そうですね。ここは一つ作戦を修正しましょう」

島風「もー! 島風だってお姉ちゃんと遊びたいのにー!」

阿武隈「ふええええ!? みなさん少し落ち着いてくださいいい!?」



電「これ以上は阿武隈さんがパンクしちゃうのです」

吹雪「なるほど」

吹雪「けど私だって本気です! そうですかと諦めるわけにはいきません!」

綾波「その意気です吹雪ちゃん!」

電「なら電は絶対ここを退かないのです! 阿武隈さんを護るのです!」

阿武隈「そんな電ちゃん!? あたしは大丈夫だから下がって!」

電「大丈夫なのです、阿武隈さん。電に任せて欲しいのです」

吹雪「電ちゃん、行くよ! 吹雪、出撃します!」

電「第一艦隊、第一水雷戦隊――電! 出撃です!」

吹雪「はあああああ!」

電「ええええええい!」

綾波「綾波も参ります!」

バッ――!

吹雪「っ!? 電ちゃん速い!?」

綾波「二人相手で単独でまともに挑んでは、不利という判断から速さでかき乱すつもりですね!」

電「やっぱりお見通しなのです。だけど、負けないのです!」

吹雪「それができるのも、電ちゃんの高い練度があって出来ること……さすがですね」

綾波「だけど、綾波だって負けませんよ!」

吹雪「ってあれ!? 電ちゃんが消えて――」

電「隙ありなのです!」

吹雪「ええ!? いつの間に背後に!?」

綾波「しまった! 吹雪ちゃん――だめ、間に合わない!」

白雪「危ない吹雪ちゃん! てーい!」

スパコーン!

電「なのです!?」

吹雪「白雪ちゃん!」

綾波「吹雪ちゃん、今です!」

吹雪「あっ――よし、電ちゃん覚悟ーっ!」バッ!

電「はうっ!? 吹雪ちゃんが電の背中に張り付いちゃったのです!」

綾波「やーりまーしたー!」

白雪「やったね吹雪ちゃん!」

阿武隈「電ちゃんーっ!?」

五十鈴「だからなにこれ。一体なんなの?」

霞「私が訊きたいわよ」

電「で、でもこれしきで電は参ったりしないのです……」プルプル

吹雪「ふふ……強がってはいても、足が震えてるよ電ちゃん」

島風「それって吹雪ちゃんが重いだけじゃないの?」

吹雪「ええ!?」ガーン!

電「や、やっぱり無理なのです……」バタン!

吹雪「そんなぁ!? 駄目です電ちゃん! とっても軽い私くらい、余裕で背負ってください!」

白雪「さっきと言ってることが違うよ吹雪ちゃん……」

阿武隈「電ちゃん! しっかりして!」

電「阿武隈さん……電は負けてしまったのです……阿武隈さんの一番弟子として情けないのです」

阿武隈「そんなことないよ電ちゃん! 電ちゃんがいつも一生懸命に頑張っているの、あたし知ってるんだから!」

初霜「その通りです、電! 電はとっても頼りになる、私の親友です!」

電「初霜ちゃん……」

霞「まっ、阿武隈さんはいつも脳天気でアホみたいなお人好しではあるけど。それでも私達を日々成長させようと常に試行錯誤していることは確かだしね」

霞「そんな人に一番ついていこうとしている電が弱いわけないでしょ。ほら、いつまで這いつくばっているのよ! さっさと立ちなさいったら!」

白露「一番!?」

時雨「白露、反応しないでよ」

電「霞ちゃん……」

暁「そうよ電! 一番阿武隈さんとの訓練で頑張っていて、知識と経験を吸収しようとしているのは他でもない、電じゃないの!」

暁「『阿武隈お姉ちゃん』に電も追いつきたいんでしょう? だったら立ち上がないとダメなんだから!」

電「暁ちゃん……」

磯風「その通りだ電さん! 電さんはこの磯風の姉弟子なのだ! 姉弟子として、磯風に手本を見せてくれ!」

電「磯風ちゃん……」

電「なのです……電は阿武隈さんにそう簡単に諦めることなんて、教わってないのです」

吹雪「これは……電ちゃんから感じるこの威圧感は……!?」

白雪「夕立さんや神通さんと同等……?」

電「だから、電は簡単に諦めちゃいけないのです」

綾波「いえ……これは」

電「電は……阿武隈さんのような水雷戦隊旗艦になるのです」

吹雪「わ、私を背負いながら立ち上がってる……?」

島風「すごい……吹雪ちゃんは電ちゃんより重いはずなのに」

吹雪「だから島風ちゃんやめて!?」

電「あああああ! 電の本気を見るのです!」

吹雪「きゃああああ!?」

時雨「立った! 電が立った!」

白露「やるね電! でも白露だっていっちばーんは譲らないんだから!」

吹雪「で、でも私達はまだ負けたわけじゃありませんよ!」

白雪「そうですね、仕切り直しと参りましょう」

初霜「そうですね。でも1対3はさすがに電に不公平よね。私も加勢します!」

電「初霜ちゃん!」

磯風「ふっ、ならば妹弟子であるこの磯風も当然――」

暁「暁の出番ね! 見てなさい!」

磯風「!?」

電「暁ちゃん!」

暁「妹の危機に駆けつけるのは、姉として、一人前のレディーとして当然よ!」えっへん!

吹雪「これで3対3、尋常な勝負ですね。望むところです!」

磯風「え、いや、あの、私は……?」

電「なのです!」

磯風「……ええい、吹雪! 今からでも遅くない! 叢雲でも初雪でも深雪でも、誰でも良い! もう一人連れてこい!」

吹雪「ええっ!? いきなりそんなこと言われても無理ですぅ!?」

磯風「くっ、ならば霞! おまえが吹雪側として参戦するんだ! そうすれば4対4になる!」

霞「お断りよ」キッパリ

磯風「おまえならそう言ってくれると思ったぞ!」

若葉「それなら、なぜ訊いたんだ?」

電「初霜ちゃんと暁ちゃんの三人なら、絶対に負けないのです!」

初霜「そうね、頑張りましょう」

暁「電、暁に任せておきなさい!」

――ザッ!

吹雪「……違う。人数が三人になったからとかじゃない。電ちゃんも初霜ちゃんも、暁ちゃんもさっきまでと雰囲気が違います!」

白雪「隙が見当たりませんね……」

綾波(やっぱり。今の電ちゃんは周りに『この人なら絶対大丈夫』って思わせる……そんな雰囲気があります!)

綾波(電ちゃんがいるおかげで、初霜ちゃんも暁ちゃんもまとまっている……まるで阿武隈さんみたいです!)

綾波「でも、吹雪ちゃんだって負けてません!」

吹雪「綾波ちゃん……うん。そうだよね! 電ちゃん、行くよ!」

電「受けて立つのです!」

熊野「ちょっとお待ちなさいな! 双方とも矛を収めてください!」

電「……ふえ?」

吹雪「え?」

暁「熊野さん、ごきげんようです」ペコリ

熊野「あら、暁さん。ご丁寧に。ごきげんよう」ペコリ

吹雪「ちょっと熊野さん、どうして止めるんですか」

熊野「盛り上がっているところ、悪いのですけど。このままでは朝食を食べ損ねますわよ?」

吹雪「あ」

電「なのです!?」

阿武隈「もう! みんないい加減にしないと朝ご飯食べられなくなっちゃうでしょ!」

響「!?」

浜風「!?」

霞「この世の終わりみたいな顔してんじゃないわよ、そこの二人」

雷「まったく二人とも食いしん坊さんねえ」

阿武隈「元気なのは良いけど、ちゃんと時間を守って行動しないと駄目だよ? いーい?」

子日「はーい!」

文月「は~い!」

島風「はしゃぎすぎて、ごめんなさい。おね……阿武隈さん」

阿武隈「うん、良い返事だね。えらいえらい」

長月「適切な食生活は軍人にとって欠かせないからな」ぐー

菊月「腹が減っては戦はできぬ……」ぐー

白露「お腹の虫を鳴らしながら言っても締まってないから」

春雨「ふふ、お二人ともお腹空いているんですね」

夕立「夕立も朝ご飯食べないと力が出ないっぽい!」

阿武隈「さーて、みんな元気が有り余っているみたいだから、今日の訓練はあたしも頑張って指導しちゃおっかなー」

磯風「望むところだ」

電「なのです!」

若葉「いいだろう……この瞬間を待っていた!」

初霜「若葉ったら、今から張り切ってると疲れちゃうわよ」

白露「一杯食べて、一杯訓練頑張らないとね!」

時雨「食べ過ぎたりしないようにね、姉さん」

白露「時雨こそね」

阿武隈「神通や榛名さん達も、みんなを静かにするのに協力してくれてありがとうございました」

神通「ううん、別にこれくらい」

大淀「大したことありませんよ。でもお礼は期待していますね」

阿武隈「あなた後ろで楽しそうに見てただけですよね?」

大淀「あら、不思議なこと」

雷「なにが不思議なのかよく分からないわよ」

大淀「でも誇らしいです」

霞「だからなにがよ!?」

ビスマルク「阿武隈が気にする必要はないわ。阿武隈や電には返せないくらいの恩があるんだから」

榛名「ええ。普段から護衛部隊や遠征による資源調達など、沢山お世話になっています。これくらいなんてことありません!」

鳥海「ふふ。私も阿武隈さんと戦術について話し合ったり、世間話するのは楽しいですから」

蒼龍「そうそう、気にしない気にしない。持ちつ持たれつってね」

熊野「そうですわ。私も阿武隈さんや電ちゃん達とお茶を飲みながら語り合うのは、とっても楽しい時間でしてよ」

大鳳「そうね。阿武隈さん達を見ていると、みんな元気でこっちまで元気を分けて貰っている気分になるわ」

阿武隈「えへへ……ありがとう」

電「あ、あの……」

阿武隈「あ、ごめんね電ちゃん。あたし達もすぐ行くからね」

電「はいなのです……それと、さっきの……」

阿武隈「さっきの……あれのこと?」

電『電は……阿武隈さんのような水雷戦隊旗艦になるのです』



電「な、なのです……」

阿武隈「そっかぁ……ちょっとこそばゆいけど、でも嬉しいな」

電「め、迷惑じゃなかったですか?」

阿武隈「そんなことないよ。とっても嬉しいな」

電「あ……良かったのです」

阿武隈「あたしも電ちゃんに幻滅されないように、頑張らないとね」

電「そんなことあるわけないのです! 阿武隈さんは前からずっと電の憧れなのです!」

阿武隈「電ちゃん……」

電「でも、電が阿武隈さんみたいになれるか、ちょっと不安なのです……」

阿武隈「大丈夫、電ちゃん。あたしに憧れてくれるのは、すごく嬉しいよ。だけど、電ちゃんは電ちゃんなりに頑張れば良いんだよ」

電「私なりに……?」

響「電は電だ。いくら頑張っても、電は阿武隈さんにはなれはしない」

電「……」

響「もちろん、私や暁、霞、初霜、それこそ神通さんだってそんなのは無理だよ」

電「それは……」

響「けど、阿武隈さんの良さを見習って、電の良さにすることはできる」

電「響ちゃん……」

暁「そうよ、電。暁だって、阿武隈さんだけじゃなくて、赤城さんや熊野さん、五十鈴さんとかいろんな人からレディーになるための秘訣を吸収しているんだから!」

五十鈴「え? 五十鈴は初耳なんだけど」

暁「あ……か、勝手に暁が、五十鈴さんを見習っているだけなんだからね! 勘違いしないでよね!」

五十鈴「なにその反応」

阿武隈「ほら、電ちゃん! さっきも言ったけど、電ちゃんはいつも頑張っていることは、あたしも良く知っているよ」

阿武隈「だからもっと自信を持たないと! 夢を叶えるのに、一番大切なのはそれを叶えようとする意志なんだから!」

電「意志……」

磯風「そうだ。夢を叶えようとする意志は、まさしく夢を叶えるための最低条件だな」

電「なのです……そうなろうと願って、向かわないと、なれるものもなれないのです」

暁「そうよ! だから暁は常に一人前のレディーを目指してるんだから!」

雷「なるほど! 暁ってばすごいのね!」

暁「そう? ありがとう、雷」

雷「え……?」

暁「どうしたの、雷?」

雷「いや、てっきり当然よ! とかそういう反応が返ってくるかと思ったから」

暁「もー! それどういう意味!?」ぷんすか!

電「分かったのです! 電は阿武隈さんみたいな一水戦旗艦を目指すのです! 頑張るのです!」

阿賀野「ちょっと待った! 電ちゃん、それ阿賀野の立場がなくなっちゃうから!」

ビスマルク「あら? 今までもそんなのあったのかしら?」

阿賀野「ひどい!?」

ビスマルク「ふふっ、冗談よ」

阿賀野「とにかく、阿武隈さんの跡を継ぐのは阿賀野なんだから。例え電ちゃんが相手であっても負けないわ! 勝負よ電ちゃん!」

電「ふぇ!? え、えっと負けないのです!」

阿賀野「……それはそうとして、やっぱり電ちゃんかわいー!」ぎゅっ!

電「はわわーっ!?」

暁「あっ、こら! いきなり電を抱きしめているんじゃないわよ!」

鳥海「ふふっ、微笑ましい光景ですね」

大鳳「そうね。なんだか和むわ」

響「お腹が空いたな。そろそろなにかを捕食しないと」

雷「なにいきなり物騒なことを言ってるのよ」

若葉「何を捕食する気だ」

響「フレンチクルーラーなんていいかもしれないな」じー

阿武隈「響ちゃん、あたしの髪見ながら言わないで」

風雲「朝食にドーナツはどうかと思うけど」

響「じゃあ三時のおやつにするよ」じー

阿武隈「だからあたしの髪を見ながら言わないで」

響「えっ? やっぱり今食べてもいいのか?」

阿武隈「そんなこと言ってません!」

島風「響ちゃん、阿武隈さんの髪を食べちゃダメだよ」

響「小粋なロシアンジョークだよ」

五十鈴「一回ロシアに謝ってきなさい」

響「五十鈴さん。そんな形だけの謝罪要求、私の心には響かないよ」

響「響だけにね」どやっ

五十鈴「やかましいわ」

おまけ


響「阿武隈さん、バカな真似はやめるんだ」

阿武隈「ごめんね、響ちゃん。できることなら、あたしだってこんなことはしたくないんだ」

響「だったらその手に持っているものを、しまってくれないか」

阿武隈「それはできないんだ」

響「……どうしてだい」

阿武隈「これも、響きちゃんのためだから」

響「阿武隈さん、あなたは間違っている……お願いだ、いつもの優しい阿武隈さんに戻ってくれ」

阿武隈「そんなことないよ。はい、作戦報酬のケーキです。ニンジン入りのキャラットケーキだよ」

響「……ニンジンは嫌いだ」

阿武隈「騙されたと思って食べてみて」

響「くっ……ニンジンの味を感じない、自然な甘さでどんどん食べてしまう。なんてハラショーなんだ」

五十鈴「あんたら楽しそうね」

雷「じゃーん! 雷はニンジンだって食べられるわ!」

電「なのです!」もぐもぐ

暁「なのです!」もぐもぐ

初霜「なのです!」もぐもぐ

若葉「なのです」もぐもぐ

若葉「……」チラッ

霞「やらないわよ」

これで終わりです。
ここまで読んでくださった方、ありがとうございます。

秋刀魚漁ももうすぐ! でも6-4、6-5攻略してたから資源がない! そんな方も私以外にいますでしょうか?



本作は下記の話の設定を引き継いでおります。
ですが、読まなくても本作を理解するのに支障はないと思います。

阿武隈「騒がしいながらも楽しい鎮守府」
阿武隈「騒がしいながらも楽しい鎮守府」 - SSまとめ速報
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【艦これ】初霜「私が、守ります!」 綾波「綾波が、守ります!」 - SSまとめ速報
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やはり貴官でありましたか!
狂おしく乙であります!

>>50-52
乙ありがとうございます。とても励みになります。

阿武隈さんのかわいいSSや二次創作もっと増えて欲しい(切実)
そろそろ公式で描き下ろしや、駆逐の子達のお姉さんしてる阿武隈さんを出してくれても良いのよ?

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