千歌「証」 (42)

――――
練習中

千歌(えーっと……次のステップはこうで……)

千歌(ここはこうだから……)

千歌(ここで右にずれる!)

梨子「えっ?」

千歌「あっ!」

どてーん

曜「二人とも大丈夫!?」

千歌「イタタっ……あ!ご、ごめんね梨子ちゃん!大丈夫!?」

梨子「う、うん。大丈夫……」

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千歌「良かったぁ……。本当にごめんね!まだここの振り付けがちょっとあやふやで……」

曜「この曲は練習し始めたばっかりだししょうがないよ千歌ちゃん」

梨子「焦らず頑張って行こうね」

千歌「……うん。そうだよね」

曜「でね。あのステップは―――」

千歌「……」

曜「千歌ちゃん?」

千歌「あっ。ううん!それでそれで!」



夜 千歌の部屋

千歌(……今日は二人に迷惑かけちゃったなぁ)

千歌(他のみんなが用事でいなかったからまだマシ……なわけないよね)

千歌(よし!明日はできるようにちゃんと復習しとかなきゃっ!)

――――
次の日 夜

千歌(はぁ……結局今日も昨日と同じところで引っかかっちゃった……)

千歌(私のせいで練習が捗らなかったし、足引っ張っちゃったな……)

千歌(練習後に曜ちゃんにつきっきりで教えてもらっても
上手く行かなかったし、本当ダメダメだぁ……)

千歌(いっそいなくなった方が……)

千歌(……)

千歌「……なーんてね!変なこと考えてないで
早くみんなに追いつけるよう頑張らなきゃ!」ブンブン

千歌「頑張るぞ!頑張るぞ!頑張るぞっ!」ブンブンブン

ガタンッ

千歌「あ!あー……小物入れ落ちちゃったよ……」

千歌「はぁ……一人で何やってるんだろ。片付けなきゃ―――」ピタッ

千歌「……カッター」

『千歌(いっそいなくなった方が……)』

千歌(……そんなこと本気で思ってるわけじゃない)

千歌(……けど)ジー

――――
次の日

千歌「~~~~♪」ルンルン

梨子「千歌ちゃんなんだか今日はご機嫌だね?」

千歌「うん!なんかスッキリしたというかね」

梨子「あ!もしかして、昨日できなかったステップができるようになったとか?」

千歌「うー……それは……で、でもなんだか今日はできる気がするんだ!」

曜「昨日あの後一杯練習したもんね!」

千歌「うん!見ててね曜ちゃんっ。あの練習はきっと無駄にはさせないからっ!」

曜「おー!……ってあれ?千歌ちゃん腕どうしたの?」

千歌「っ……え?」ドキッ

梨子「あれ?小さな切り傷が……」

千歌「あーっと……これは……そう!ウチの手伝いしてたら切っちゃったの!」

梨子「ええっ!?大丈夫なの?」

千歌「う、うん!見ての通り小さな傷だし。すぐ消えると思うよ!」

曜「もう!気をつけないとダメだよ千歌ちゃん?」

千歌「えへへ」

千歌(危ない危ない)




夜 千歌の部屋

千歌(ふぅ、今日は危なかったぁ……傷が残ってることすっかり忘れてたよ)

千歌(なんとか誤魔化せたけど……あ~本当危なかったぁ)

千歌(でも昨日までできなかったステップが今日はできた!)

千歌(これで通しで練習できるしようやくみんなに追いつけた!)

千歌(昨日一杯練習した成果かな?それとも……)チラッ

カッター「」

千歌(あの時……なんだか不思議な感じがした)

千歌(痛さもあったけど、許されたというか……解放感?)

千歌(うーん……よくわからないけど……なんだか)

千歌(私だけ特別になった証。そんな感じ……)スッ

―――――
次の日

千歌「スンスンスーン♪」ルンルン

曜「あ!おはよう千歌ちゃん」

千歌「曜ちゃーん!おはようっ!」ブンブンブン

曜「うんうん!千歌ちゃんは今日も元気だ―――あれ?どうしたのそのリストバンド」

千歌「ふふふっ!どう似合う?」

曜「うん。オレンジ色で千歌ちゃんらしいと思うけど……」

千歌「あー!もう!みかん色なのこれはっ!」

曜「でもなんで急に?練習の時はお揃いのつけてるのに……」

千歌「あ。えーっと……キャラ付で普段からこういう
みかん色の物身に着けてくのってどうかなって!」

曜「まあ千歌ちゃんがいいならいいと思うけど……」

千歌「うんうん!あっ授業前にお手洗い行ってくるね!」タッタッタ

曜「あ!ちょっと千歌ちゃんっ!―――」

曜「…うーん?」





夜 千歌の部屋

千歌(はぁ……朝の曜ちゃん絶対怪しんでたよね)

千歌(急にリストバンドは不自然過ぎたかなぁ?)

千歌(でも他に腕を隠せそうな物も思い浮かばないし……)

千歌(さすがに普段から両腕リストバンドはまずよね……)

千歌(うーん……でもこのまま行くと腕もきれそうなとこがなくなっちゃうし……)

千歌(どうしよう……どうしよう……あっ)

千歌(そっか!別に腕じゃなくてもいいんだっ)

――――
数日後

曜「……」ジーッ

千歌「ど、どうしたの曜ちゃん?」

曜「うーん、最近なんか千歌ちゃんから違和感が……」

千歌「い、違和感!?」ドキッ

曜「梨子ちゃんも何かおかしいと思わない!?」

梨子「え?そう?」ジー

千歌「や、やだなぁ?そんなことないよ!」ドキドキ

曜「いや、絶対変だよ……」ジー

梨子「そうかなぁ?」ジー


千歌(な、なんで!?痕はどこからも見えれないよね!?)

曜「あ!わかった!」

千歌「っ……」

曜「スカートの長さが前よりも3cm長い!」

千歌「……」

梨子「……え?」

曜「どうにもおかしいと思ったんだよね」

千歌「……」

梨子「……」

曜「……あれ?二人ともどうしたの?」

千歌「いや、なんというか気が抜けたと言いますか……」

梨子「私もそんな感じ……もう何かと思っちゃった」

曜「でも千歌ちゃんってスカートの長さ変えることなんて滅多にないし……」

千歌「もうその話はいいからっ!それより次の授業なんだけど―――」

梨子「あ、そういえば次って―――」

曜「うー……絶対おかしいのに……」シュン





夜 千歌の部屋

千歌(はぁ……曜ちゃんったら驚かせるんだから!バレたかと思っちゃった)

千歌(でもスカートの長さは盲点だったなぁ……傷が下に行きすぎないようにしなきゃ)スッ

千歌(っ……!)

ポタポタ

千歌(……気持ちいい)

千歌(私は私なんだ……生きてるってこういうことなんだ……っ)

ポタポタ

―――――
数日後 練習中

千歌「あれ?今日は2人だけ?」

梨子「うん……たまたまみんな用事があるみたい」

千歌「そっかぁ……でもしっかり頑張らないとね」

曜「とりあえず三人で通しで一曲踊ってみる?」

千歌「うん!」





千歌(三人での練習ってあの日以来かな?)

千歌(……私がステップができなくて足を引っ張っちゃったあの日……)

千歌(……でも今は違う!私は普通じゃない私を見つけたんだもん!)

千歌(私は私!なんだってできる!)

千歌(ここはこのステップ!)

千歌(うん!大丈夫いけるいける!)

千歌(次は移動して……っ!?)

千歌(昨日切ったとこがっ……痛っ……)

曜「えっ?」

千歌「あっ!」

どてーん

千歌「いたた……曜ちゃんごめんね。大丈夫……?」

曜「うん、平気……って!千歌ちゃん血が出てるよ!?」

千歌(っ!昨日の切ったとこが完全に開いちゃった!?)

梨子「大丈夫!?すぐ手当しなきゃ!」

千歌(!? 見られるのはまずいっ)

千歌「ほ、保健室くらい一人で行くから!二人はそのまま練習してて!」ダッ

梨子「えっ?」

曜「千歌ちゃん!?」

千歌「大丈夫だからっ!」タッタッタ

梨子「は、走ったりしたら!」

曜「あ……」

梨子「行っちゃった……」

曜「……」




夜 千歌の部屋

千歌(結局そのまま帰ってきちゃった。保健室で手当てするわけにもいかないし……)

千歌(ちゃんとメールもしたし二人なら大丈夫だよね)

千歌(……それよりまたやっちゃった。これじゃあの時の同じだよ)

千歌(せっかく最近上手にやれてたのに……傷のせいで……)

千歌(……)


千歌(……違う。ちゃんと手当しなかった私の責任だよ)

千歌(これのおかげで上手くやれてるんだもんね)

千歌(それよりまた迷惑かけちゃった……)

千歌(……やらなきゃ)スッ

グサッ

千歌(っ……!)

千歌「はぁ……はぁ……」

千歌「もっと、もっと……」グサッグサッ

ガララララッ

千歌「!?」




少し前

梨子「じゃあ千歌ちゃんのことお願いね」

曜「うん!まかせといて」

梨子「本当は私もお見舞いに行きたいけど
今日は前から家族でご飯食べに行く約束してて……」

曜「そんなに気にしないでも千歌ちゃんも
メールで大したことないって言ってたし大丈夫だよ」

梨子「うん……じゃあまた明日ね」

曜「まったね!」




千歌の家

曜(千歌ちゃん帰ってすぐ寝るって言って寝ちゃったみたい)スタスタ

曜(起こしてもいいって言われたけど……さすがにね)

曜(でもどうせ来たんだし、寝顔くらい見て帰っても罰当たらないよね)

ガラララッ

千歌「!?」

曜「……え?」




現在

千歌(まずい!見られた!)

曜「ち、千歌ちゃん……?血が……え?ええ?」

千歌「よ、曜ちゃん……!ち、違うの!これは……えっと……」

曜「カッターもって……傷だらけで……だ、……ダメえええええっ!」

千歌「落ち着いて!曜ちゃん落ち着いて!」

曜「ななな、なんで自殺なんて!?ダメ!ダメダメダメー!」ギュー

千歌「曜ちゃあああんっ!」ジタバタ




数分後

千歌(その後なんとか曜ちゃんに落ち着いてもらって)

千歌(バッチリと手当てをしてもらったあと……)

曜「……」

千歌(こうして正面に正座させられてます……)

千歌「あの……」

曜「千歌ちゃんの大バカ……本当に心配したんだよ……」

千歌「ごめんね……まさか曜ちゃんが来るなんて思わなかったから……」

曜「そういうことじゃないよ!」

千歌「うぅ……」

曜「私が来るのわかってたらしないとか……そういう問題じゃないよ……」

千歌「……」

曜「傷痕一杯あったよね」

千歌「……うん」

曜「さっきの練習中の血も……それなの?」

千歌「……さっきはごめんね。見られるといけないと思って」

曜「いつからしてたの?」

千歌「えっと……二週間くらい前から……」

曜「なんで、なんで自傷行為なんて千歌ちゃんがしてるの!?」

千歌「……」

千歌「……カッターでね。肌を刺すときって凄いんだよ?
痛いけど私が私でいることが実感できる」

千歌「この傷だって!普通の人にはない私だけの傷。特別の証なんだよ!」

千歌「確かに周りから見たらいいことじゃないと思うけど……
お願い曜ちゃん。私の特別を取らないで……」

曜「……」スッ

千歌「……曜ちゃん?」

ドンッ

曜「ねえ千歌ちゃん。そんなに自分を傷つけてまで、特別な証が欲しいの?」

千歌「よ、曜ちゃん?どうしたの急に……覆いかぶさって……」

曜「私ね、千歌ちゃんが傷つくのは嫌なんだ」グッ

千歌「だ、大丈夫だよ……やらないから手をどけて?」

曜「今は……だよね?一人になったら千歌ちゃんまたしようとするよね?」

千歌「……」

曜「……そっか。そんなに特別がいいんだ」

曜「……なら!」

千歌「えっ……。んむっ……」

曜「んっ……ちゅっ、ちゅっ…」

千歌「んんんっ……!ぷはっ……よ、曜ちゃん!?」

曜「……これでなれたよね?」

千歌「え?」

曜「なれたよね、特別に。だって……普通の女の子はこんなことしないよ?」

千歌「えっ、で、でも……」

曜「でもじゃない!」ガシッ

千歌「よ、曜ちゃん……?」

曜「キスだけじゃ……キスだけじゃあ足らないなら
もっと!もっとすごいこともしてあげるから!」

千歌「な、なんで……」

曜「……」ポタポタ

千歌「よ、曜ちゃん……?泣いて―――「嫌なの!」

曜「千歌ちゃんが傷つくのは嫌!千歌ちゃんだって痛いのは嫌だよね!?」

千歌「わ、私は……」

曜「特別にだったら私がするから!だからお願い……もうやめてっ……」グッス

曜「大好きな千歌ちゃんが……傷つくとこなんて見たくないの……」 

千歌「えっ……。そ、それってどういう―――んんっ!」

曜「んちゅっ……ちゅ……千歌ちゃん……」

千歌「ん……んぅ……っ!」

曜「ぷはっ……こういうこと……だよ」

千歌「曜ちゃん……」

曜「大好きな人が傷つくのを見るのなんて嫌なの……だから自傷なんて「―――ねえ、曜ちゃん」

千歌「……本当に私をもっと特別にしてくれるの?」

曜「……うん。千歌ちゃんが、望むなら」

千歌「……曜ちゃんは私でいいの?」

曜「千歌ちゃんは思わないかもしれないけど、私にとって千歌ちゃんは特別なんだよ?」

千歌「曜ちゃん……んっ」

曜「自傷行為なんてもう絶対させないから……」ちゅっ

千歌「あっ……」





千歌(体が熱い……体だけじゃない。なんか胸の奥が変)

千歌(なんだろうこの気持ち……)

千歌(ふわふわして……暖かくて気持ちいい……)

千歌(あっ……そっか。これって……)

千歌(曜ちゃん……)

―――――
数週間後

曜(その日以降、千歌ちゃんは自傷をやめた)

曜(これは私が何回もこの目で確認していることだから間違いはないと思う)

曜(そして私と千歌ちゃんの関係も少し変わった)

千歌「曜ちゃーんっ!おはよーっ!」ブンブン

曜「あっ、千歌ちゃんおはよう!」

千歌「ねえ、曜ちゃん。今日は帰ったら自転車で曜ちゃんの家行ってもいい?」

曜「え?でも練習もあるし疲れちゃうんじゃ……」

千歌「大丈夫大丈夫!それに……特別にしてほしい気分だから///」

曜「千歌ちゃん……///」

曜(そして私の中に一つ大きな疑問がわいてきた)

千歌「それでね!今日はなんだけど―――」

曜「う……ま、まさか……」

千歌「……今度はこの紐で縛ってシテほしいの!」

曜「や、やっぱり……で、でもこの前は首輪だけだって……」

千歌「あ、あのね。首輪だけだとなんだから体が寂しくって」

曜「そ、それなら私頑張るから!」

千歌「ち、違うよ!曜ちゃんがってわけじゃなくてなんだか気分の問題で……
ね、ダメ……?もっと曜ちゃんに特別にしてほしいなぁ……」ウルウル

曜「うぅ……了解……ヨーソロー……」

千歌「えへへ!ありがとうっ!―――あ!梨子ちゃんだっ」タッタッタ

ヒュウウウウ

曜(千歌ちゃんって本当はただのドMだったんじゃないだろうか……)

曜(でも……千歌ちゃんが満足そうならいいかな?)

曜(だって、私はそういう千歌ちゃんが大好きなんだもん)

曜(……)

曜(……そのうちちゃんと告白しないとだよね)

曜(……)

曜(ま、まさか断られたりしないよね!?)

曜(ここまで色んな事してるんだし!それに最近なんだかもっと距離が近くなった気がするし!)

曜(うー。でも千歌ちゃんだからなぁ……ああ……)ウジウジウジ

千歌「曜ちゃーん!何してるの?」ギュッ

曜「千歌ちゃん///」

曜(まあ……もう少しこのままの関係でいいかな?)

おわり

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