龍崎薫「肝試し?」 モバP「うん」 (114)




※ホラー要素なしの、ほのぼの系です。純真無垢な子供たちがほのぼのと修羅場するだけのお話です。

※キャラ崩壊注意。

※書き溜め完結済み。

※予告なしでお風呂入ったりご飯食べたり寝たりするので、超まったり更新。


主な登場人物
・モバP
・天使(13)
・天使(12)
・天使(9)




SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1375533689




―――事務所―――


P「肝試し自体は知ってるか?」

薫「知ってるよ! 夜にみんなでおばけのいるところに行くんでしょ?」

P「まあそんなところだな。今度の番組で、薫にも行ってもらいたいんだ」

薫「ええー!? かおる、怖いのはやだなぁ」

P「ああ、その点は安心してくれ。局のディレクターが提示してきた心霊スポットの中から、お化けがいないところを厳選したからな」

薫「そうなの? えへへ、せんせぇありがとうございまー!!」





P「うん。でもやっぱり夜道を子供だけで歩くことには変わりないからな。そこはあらかじめ練習して慣れておきたいんだ」

薫「練習?」

P「実際に、その偽心霊スポットに行ってみて、薫が通ることになってるルートを確かめておくってことさ。ついでに、薫に暗い夜道でも転ばないでしっかり歩く練習もしておいてもらいたい」

薫「はーい!」

P「よーし、いい返事だ! 親御さんには許可貰ってあるから、さっそくこれから行ってみようと思う。他の2人はもう車で待ってるからな」

薫「……他の2人?」





―――車内―――


小梅「…………」

ありす「…………」

小梅「……………………」

ありす「……………………」

小梅(ど、どう、しよう……なにか、喋った方が、いい……の、かな……?)

ありす(最近、プロデューサーの付き合いが悪い……。なにがそんなに忙しいのかな?)

小梅(で、でも、タブレット弄ってるし……な、なにかやってる、最中、だったら……迷惑、かも……)

ありす(せっかく新しい水着まで買ってプールに誘ったのに、「ごめん、水場はちょっと……」って断られましたし……)

小梅(プ、プロデューサーさん……は、はやく、来ない……かな)

ありす(プロデューサー、早く来ないかな……)

P「お待たせー」ガチャ

薫「お待たー!!」

小梅「!」

ありす「!」





・・・・・・


P「じゃあ、着くまで寝ててもいいからなー」

薫「はーい!!」

P「終わった後は、怖くて寝れなくなるかもしれないからなぁ。ははは」

ありす「幽霊なんているわけないのに……馬鹿馬鹿しい」

小梅「……こ、これから、行くところは……だ、大丈夫。確認、した……から」

ありす「?」





P「ああ、言ってなかったっけ? 先々週くらいから、俺と小梅でずっと心霊スポット巡りしてたんだよ。幽霊のいないところを探してさ」

小梅「オフの日……を、合わせて……10ヶ所、くらい……い、行ったかも」

P「いやぁ、特にあの廃病院はやばかったよな! 小梅がいなかったら無事帰れたかわからん」

小梅「……プロデューサーさん、ずっと、だ、抱き付いてきてた……」クスッ

P「あ、あれはしょうがないと思うぞ! 帰ったら即、お祓い行ったからな!!」

小梅「プ、プロデューサーさん、は……好かれる、体質……ですから……」

P「まじで!?」

ありす「…………」ムスッ

P「ん? どうしたありす、怖い顔して」

ありす「……べつに。なんでもありません」プイッ

P「?」





薫「ありすちゃん、怖いのだめなの?」

ありす「そんなんじゃありません。それとありすって呼ばないでください」

小梅(あ、あれ……? でも、さっき……)

P「よし、それじゃあそろそろ車だすか!」

薫「はーい!!」

P「はは、薫は夜でもお日様みたいに元気だなぁ! こりゃお化けも寄ってこれないかもな」

小梅(に、苦手な……属性、かも……)

ありす(プロデューサー、元気な子が好きなのかな……)


http://i.imgur.com/TdhmePd.jpg
http://i.imgur.com/PEdCTxv.jpg
龍崎薫(9)

http://i.imgur.com/J8oomzX.jpg
http://i.imgur.com/tpe0Z6G.jpg
白坂小梅(13)

http://i.imgur.com/piVjO3p.jpg
http://i.imgur.com/NntBGXJ.jpg
橘ありす(12)

画像ありがとうございます!




・・・・・・


P「コンビニ寄るけど、みんな降りるかー?」

薫「降りまー!!」

小梅「わ、わた、私は、く、車の、中で、ま、待ってます……」

ありす「……私も、車にいます」

小梅「!?」

P「そっか。じゃあ薫、行くぞー」ガチャ

薫「はーい!!」ガチャ

小梅「……え、あ、あの……」

ありす「……」





―――コンビニ―――


P「薫、トイレは済ませておいてくれよ。向こうのトイレは使えたもんじゃなかったからな。2つの意味で」

薫「もお、せんせぇはでりかしーがないよ!」

P「おっと、すまんすまん。薫も立派レディだもんな」

薫「えへへへ! うん、かおるはね、レディなんだよ!」

P「いつか薫も、どこぞの知らない男を連れてくるのか……うぅ、お父さんは悲しいよ」

薫「じゃあ、じゃあ! かおるがせんせぇのお嫁さんになったら、せんせぇ悲しくない?」

P「そりゃ嬉しいなぁ。でも薫がお嫁さんになれるようになったら、俺はおっさんだからなぁ。ちょっと厳しいかな」

薫「えー! そうなの?」





P「10歳以上も歳が離れてると、俺は早苗さんにシメられちゃうからなぁ」

薫「ならかおるが早苗さんに、せんせぇをイジメないでってお願いしてあげるね!」

P「多分それを言わせたらもっと酷い目に遭わされそうだけどな! まあ気持ちだけ受け取っておくよ! ありがとな、薫」ナデナデ

薫「えへへへ!」///

P「なんだ天使か。薫が娘だったら、どんなに嬉しいことか」

薫「かおる、せんせぇがパパなのはヤだよ? だって……」

P「まあそうだよな。俺の子供になりたい奴なんているわけないよなぁ。ごめんごめん」

薫「……うー。なんか、ちがうような……」





―――車内―――


ありす「……」

小梅「……」

ありす「…………」

小梅「…………」

ありす「白坂さん」

小梅「!?」ビクッ

ありす「プロデューサーと……、出かけてたんですか?」

小梅「う、うん……プロデューサーさん、が……つ、ついてきてくれ……って」

ありす「ふうん。そうなんですか」

小梅「そ、そう……」

ありす「……」

小梅「……」ホッ





ありす「白坂さん」

小梅「ひゃい!?」ビクッ

ありす「プロデューサーって、どんな人だと思いますか?」

小梅「ど、どんな、人って……?」

ありす「優しいとか、かっこいいとか、抜けてるとか」

小梅「あ、うん……え、えっと……。か、かわいい、かな……」

ありす「可愛い? どういうことですか?」

小梅「プロデューサーさん……、お、おどかすと、すごく……びっくりしてくれる、から……」

ありす「……ふうん」

小梅「そ、それに、プロデューサーさんは……あ、あったかい、光」

ありす「?」





小梅「明るい、けど……優しくて、ま、まぶしく、ない……。だ、だから、『みんな』……引き寄せられる……私も……」

ありす「……」

小梅(あ、あれ……ふ、不機嫌……? 負の、オーラが……)

ありす「もしかしてそれは、恋愛感情でしょうか?」

小梅「恋、愛……?」

ありす「違うんですか」

小梅「……そ、そういうの、わからない……ごめん、ね」

ありす「……」

小梅「でも、こ、恋人、とかは……ホラー映画、とかだと……悲惨な最期を、迎えたり……する」

ありす「現実と映画は違います」

小梅「う、うん……そう、だね。現実は、もっと…………容赦が、ない」

ありす「……え」





P「ただいまー」

薫「まー!!」

小梅「お、おかえり、なさい……」

P「いやー、車内は涼しいなぁ。まあ外も昼に比べたら、全然すごしやすい気温にはなってるけどな」

薫「お菓子買ってきたよ!」ドサドサ

ありす「こんなに……」

P「こんな時間に付きあわせちゃったからな、そのお詫びだ。あ、これ小梅の好きなスプラッター食玩シリーズだぞ」

小梅「わぁ……! プ、プロデューサーさん……あ、ありがとう、ございます……」

ありす「……」

薫「ありすちゃんはどれ食べたい?」

ありす「橘です。私は、この酢昆布を」

P「おお、ありすは渋いの行ったな。この柿ピーも食べるか? あーん」

ありす「た、食べません!」

薫「じゃあかおるが食べちゃうー! ぱくっ!」

P「おいおい指ごと食べるなって。ははは」

薫「えへへ!」

ありす「……」

小梅「……プロデューサー、さん」

P「ん? どうした、小梅?」

小梅「あ、あそこの、林の奥から……いっぱい、どんどん……こっちに、ち、近づいて来てます……」

P「よーし出発だ! 全員シートベルトを着用しろ!! 全速前進だ!!!」





・・・・・・


薫「ありすちゃん、それなぁに?」

ありす「橘です。これはタブレットといって、パソコンのようなものです」

薫「そんなに薄いのに? すごーい!」

ありす「そうですね」

小梅(あ、あれが、あったら……いつでも、ホラー映画が、み、見れるのかな……)

薫「ありすちゃん、ちょっと貸してー?」

ありす「え、だ、だめです」

薫「えー! なんでぇ?」

ありす(……検索履歴を見られたくないから)

P「おーい、ありす。貸してやってくれないかな? ありすの方がお姉ちゃんなんだから、そこは……な?」

ありす「うぅ……」

小梅(……)





小梅「……か、薫、ちゃん……あっち……見てみて」

薫「え? ……ああっ!」

P「そうか、そういえばそうだったな。前来た時も……」

ありす「あ……」

小梅「こ、ここは……高いところ、だから……車からの……や、夜景が、綺麗……」

薫「すごいすごーい! キラキラしてる!」

小梅「陽の光……ない方が、綺麗なことも、ある……よね。……むしろ、太陽は……滅びるべき」

P「それは極端すぎるだろ」

薫「お日様もぽかぽかしてて、気持ちいいよ?」

小梅「……薫、ちゃんは……お日様みたい、だね」

薫「え? そうかなあ?」

P「そうだな、薫は明るくてみんなを元気にしちゃうもんな」

薫「かおる、お日様? えへへ! うれしいなっ!」





P「で、小梅は……あれだな」

小梅「……月?」

P「いや、いい奥さんになりそうだなって」

小梅「…………。……え、ええっ……?」

薫「あー! ずるい! かおるもせんせぇの奥さんになるの!!」

P「いや俺の奥さんとは言ってないが」

薫「あれ、そっかあ」

小梅「……そ、そういう冗談は……だ、だめ……」

ありす「……」

ありす(……やっぱり、強敵かも)





・・・・・・


P「そういえばお前たち、夏休みの宿題とかあるのか?」

薫「うぅ……」

P「その反応は、忘れてたな? まあまだ8月の序盤だし、手を付けてなくてもおかしくはないが」

ありす「私はもうほとんど終わっていますが」

P「お、そうなのか? さすがはありすだな。偉いぞ」

ありす「う……こ、これくらい、当然です」

P「そんなことないだろ。俺なんか、ラスト三日で友達の家に泊まりこんで、写し合いで終わらせたくらいだからな」

薫「!!」

P「『その手があったか!』みたいな顔してないだろうな、薫」

薫「ぎくっ!」

P「俺のは悪い例だから、ズルしたり溜め込んだりはしないようにな。わかんないところがあったら、俺が教えてやるから」

薫「えへへ! せんせぇ、ありがとうございまー!!」

ありす(……もうちょっとゆっくりやればよかった)





P「小梅はどうだ?」

小梅「うぅ……あ、あんまり……」

小梅(で、でも……プロデューサーさんに、ダメなとこ、み、見せたくない……)

薫「じゃあ小梅さんもいっしょにお勉強だね!」

小梅「え……」

薫「お勉強も、みんなでやったほうが楽しいよね! ね、せんせぇ!」

P「それじゃあ来週あたりに勉強会でも開くか?」

薫「さんせー!!」

小梅「あ、あの、ちょっと待っ……」

薫「かおるね、算数が苦手なの!」

P「そっか、じゃあしっかり教えてやるからな。あと、小梅もな」

小梅「うぅ……は、はい……よ、よろしく、お願いします」

ありす「……」

P「ありすはどうする?」

ありす「え?」

P「俺だけじゃさすがに手が回らないからな。ありすも一緒に教えてやってくれると助かるんだが……まあ、無理にとは言わないけど」

ありす「……。しょ、しょうがないですね、手伝ってあげます」

P「そうか、助かるよ。ありがとな、ありす」

ありす「……えへ」





・・・・・・


小梅(……ちょっとだけ、心配、だったけど……こ、ここのみんななら……“呼び寄せる”ことも、ないかも……)

ありす「……『子供 勉強 教え方』……うーん……」ポチポチ

薫「あれ? そういえばなにしに来たんだっけ?」

P「この後帰ったら、あの書類整理して、先方へのメールを作成して、あの企画書に目を通して……あれ、俺いつ寝るの?」

小梅(プロデューサーさんは……そういう、体質だから……一人にできない、けど……)

薫「小梅さん、小梅さん!」

小梅「な、なに……かな」

薫「そのバッグの中、見てもいい?」

小梅「う、うん……いいよ……」

薫「わーい!」

小梅(こういう、好奇心旺盛な子は……真っ先に……死にそう)





薫「これ、なんの本?」

小梅「こ、怖いお話を……ま、まとめた……本。薫、ちゃんは……あ、あんまり、見ないほうが、いい……かも」

薫「うん、わかった!」

小梅(え、笑顔、眩しい……ほんとに、太陽、みたい……やっぱり、ちょっと苦手……)

P「小梅は面倒見がいいんだな。今度、そういう仕事も持ってこようか?」

小梅「だ、だめ……です……」

P「向こうに着いたら、薫をよろしくな」

小梅「プロデューサー、さんも……私から、離れないで……」

P「え? 離れるわけないだろ? むしろ絶対に離さないからな、絶対に。常に手を繋ぐ勢いだぞ」

ありす「……」ジー

小梅「!?」ビクッ





小梅(す、すごい、見られてる……。お、怒らせること、しちゃった、かな……? プロデューサーさんと、手を繋ぐのが、ダメ、なのかな……?)

小梅「や、やっぱり、手、繋ぐの……やめます……」

P「ええ!? なんでだ!? 頼む小梅、そんなこと言わないでくれ! 俺を見捨てないでくれぇ!!」

ありす「……」ジー

小梅「うぅ……え、えっと……」

薫「じゃあかおるが手を繋いであげるね、せんせぇ!」

小梅(も、もっと、ややこしく……)

P「すまん薫、気持ちは嬉しいが、俺は小梅じゃなきゃだめなんだ。小梅じゃないとだめな体(質)になってしまったんだ……」

ありす「……」ポチポチ

小梅(ま、窓の反射で……『寺生まれ 弱点』で、調べてるの……み、見える……。わ、私、寺生まれじゃ、ないけど……)

P「小梅ぇ……今度俺んちのシアタールームでホラー上映会してあげるから、見捨てないでくれぇ……」

小梅「……きょ、今日は、ずっと抱き付いても……い、いいです……」

薫「えー!? いいなぁ!」

ありす(……『アンデッド属性 弱点』……)ポチポチ





・・・・・・


ありす(どうしよう……2人とも強敵だ)

薫「せんせぇ! かおるね、お料理また上手になったってママに褒められたんだよ! 今度、また作ってあげるね!」

P「おー、ほんとか。ありがとな」

薫「えへへ! そしたらせんせぇ、かおるのこと奥さんにしたいって思っちゃうよ!」

P「奥さんかぁ……9歳はブラジルでもちょっとアウトかなー」

ありす(私ならセーフですが。ってそうじゃなくて……。でも、この素直さと積極性は、すごく脅威です。それに料理ができるって羨ましい)





P「小梅は将来結婚したいとかってあるのか?」

小梅「わ、わからない……です」

P「うーん、まぁまだ13歳だしな」

小梅「でも……子供は、あんまり……」

P「そうか? 子供可愛いと思うけどなぁ」

小梅「こ、子供は、かわいい……ですけど……に、妊娠中は、ホラー映画……見ちゃ、いけないって……」

P「あー、聞いたことあるかもしれん。胎教に悪いとかいうアレだな」

小梅「……それに、昔見たホラー映画で……う、産んだ子供が……」

P「よーし、小梅、それ以上言ったら今夜は俺と一緒に寝てもらうからなー」

小梅「……あぅ。ごめん、なさい」

ありす(白坂さんは、このホラー関係が強すぎる……。もし白坂さんがその気になれば、怖がりのプロデューサーなんて簡単に独り占めできちゃう)

ありす「ちなみに白坂さんほどのホラー好きであれば、映画を楽しんで見る分には胎教に悪いとは言い切れないかと」

小梅「そ、そう、なんだ……」

ありす(2人は何度も心霊スポットを巡っているという話だし、吊り橋効果も心配かも……)





P「やべ、眠くなってきた。ありす、ガム取ってくれないか?」

ありす「どうぞ」

P「さんきゅ」

ありす(とにかく、私もこれ以上出遅れないようにしないと……!)

P「眠気覚ましならコーヒー飲みたいけど、トイレ行きたくなったら致命的だからなー」

小梅「あ、あの時は……た、大変だった……」

P「本当にご迷惑お掛けしました……」

ありす「……」

ありす(…………ちょっと……トイレ行きたい、かも)





・・・・・・


薫(みんな、むずかしいお顔してる……)

P「もともと向こうに幽霊がいないことは確認したけど、途中で拾って連れて行っちゃったりすることもあるのか……やっぱり小梅が頼りだな」ブツブツ

ありす「私の取り柄ってなんだろう……ゲームと読書……だめだ、役に立たない。論破ならできるのに……」ブツブツ

小梅「……さ、最近……血、見てない、な……」ブツブツ

薫(よくわかんないけど、あんまり楽しくないのかな?)

薫「ありすちゃん!」

ありす「橘です。それとさっきから気になってたんですが、どうして白坂さんは「小梅さん」で、私は」

薫「その本、なあに?」

ありす「…………。ミステリー小説です」

薫「みすてりー?」

小梅「……ひ、人が、殺される過程を……楽しむ、本……」

ありす「違います。そんな楽しみ方をしているのは白坂さんくらいです」

小梅「あ、綾辻、行人さんの……『殺人鬼2』は……」

P「やめろォ!!」

薫「せんせぇ、どうしたの?」

P「たった44ページであそこまで心をバッキバキに圧し折られた小説は初めてだった……」

小梅「は、初めて……読んだ、ミステリー小説。……すごく……好き」

P「気持ち悪くなってきた……ガムくれ、ガム」

小梅「……は、はい。ご、ごめんなさい……」

P「いや、気にしなくていいよ」

小梅「気分転換に……最近、聞いた……怖い話を」

P「気にしなくていいよ!?」

ありす(『殺人鬼2』……今度読んでみようかな)ポチポチ

薫(うーん、難しいお話……)





薫「せんせぇ!」

P「どうした、薫?」

薫「もしね、動物になれたら、なにになりたいっ?」ペカー

P(……なんだ天使か)

小梅(……聖属性)

ありす(……こういうことか)

P「俺は……そうだな、アリかな。あいつらの仕事楽そうだし……ふふ……」

ありす「社畜根性が染みついてますね」

薫「ありすちゃんは?」

ありす「橘です。私は……そうですね……、」

P「アリだろ? ありすだけに。ふふっ」

ありす「…………。では女王アリでいいです。アリデューサーが死ぬまでこき使ってあげますよ」

P「あれ、今とあんま変わんなくね?」

薫「小梅さんは?」

小梅「……わ、私も……アリ、が、いいかな……」

P「べつに俺たちに合わせる必要はないぞ?」

小梅「い、いえ……この前、道端で死んでたネズミに……アリが、」

P「ああやっぱりいいや、ごめんなさい」

薫「うーん、みんなアリさんになりたいんだぁ……。あっ! みんなアリさんになりたいから、アリさんってたくさんいるのかなあ?」

ありす「……なんだか哲学的ですね」

P「薫の爪の垢を煎じて太平洋に撒いたら、世界から戦争がなくなる気がする」

小梅(……その水、飲んだら、わ、私……消滅、しそう)





・・・・・・


P「さて、件の偽心霊スポットの近くに到着したわけだが……」

小梅「プロデューサーさん……そ、そんなに強く、握ったら……袖、伸びちゃいます……」

P「伸びたら今度服買ってあげるから勘弁してくれ」

ありす「プロデューサーが一番怖がってたら世話ありません」

P「いやいや、あの廃病院に行くまでは、むしろ怖いの全然平気だったんだぞ? ……それが最近は病院見るだけでやばい。病院で血圧測ったら、医者に心配されたくらいだよ」

薫「えへへ! ぎゅーっ!」

P「こらこら薫、腕伸びちゃうだろ」

薫「便利だね!」

ありす(……両手、塞がっちゃった。完全に出遅れた……)





P「よし、それじゃあまずは俺と小梅が先に見てくるからな」

ありす「え? 全員で行くんじゃないんですか?」

P「一応本番は1人だからな。その練習も兼ねて、1人ずつ行ってもらう。まあ俺も毎回ついて行くから2人ずつ、か」

ありす「むしろ白坂さんと一緒の方が安心なのでは?」

P「そう思うだろ? でも小梅が何もないところをじっと見てたらどうする? 小さい声で「あ……」って呟いたらどうする? 袖を掴んで「……ふ、振り向かないで……走って、ください」って言ってきたらどうする?」

ありす「やめてください。具体的すぎて怖いです。実体験ですか」

P「有名な心霊スポットを10ヶ所以上だからな。いろいろあったよ……ふふ……」

小梅「プロデューサーさん……す、すごく、かわいかった……です」

P「そういうわけで、俺が付き添う。いい歳したおっさんが自分より慌てふためいてるのを見たら、嫌でも冷静になれるぞ?」

薫「でも、なにかあったらせんせぇが守ってくれるもんね!」

P「……お、おう」

ありす(一瞬で逃げ場を封鎖された……)





小梅「残った、2人は……な、なにしてれば、いいん、ですか……?」

P「車で待機だな。キー抜いてもライトは付けたままにできるから、中で待っててくれ」

ありす「それもそれで怖いですね」

P「いいか、俺は鍵を持って行くからな。絶対に「開けてくれ」だなんて言わないからな。もし俺の声で開けてくれだなんて言っても、」

ありす「……あんまりいじわるすると、さっきネットで拾った怖い話しますよ」

P「よし、じゃあ行くか小梅!」

小梅「……は、はい」

P「薫、ありすの言うことをちゃんと聞いて、絶対に車から出ないで、おとなしく待っててくれよ?」

薫「はーい!!」





―――××団地―――


P「こ、小梅……ほんとに幽霊はいないんだよな……?」

小梅「いない、です……。こ、ここには、霊道が、まったくない……から……」

P「うぅ、わかってても不気味だ……。ボロボロの無人団地に四方を囲まれた廃公園って……怖すぎる」

小梅「……あ、あんまり、怖がると……呼び寄せちゃいます……よ……?」

P「今日帰ったら何食べよっかなー!!」

小梅「あっ……」

P「!」ビクッ!!





小梅「……ったかい、うどんが、食べたいな……」

P「そ、そうだな! あは、ははは! うどん、いいよな。美味しいよな!」

小梅「………………」ジー

P「……小梅? なんで俺の後ろの方見てるんだ?」

小梅「……いえ……な、なんでもない、です……」

P「なんでもないなら、どうしてそんな気まずそうに目を逸らすんだ!? なに見てたんだ!? やめろよ、あっち振り向けないだろ!」ギュー

小梅「……えへ。ごめんなさい……冗談、です……」ニコ

P「……次やったら、ほんとに今夜、俺の家に連れて帰るからな」ギュー

小梅「はい……あ、あの、そんなに抱き付くと、苦しい、です……」

P「だめだ。もうしばらくこのままだ」ギュー

小梅「……プロデューサーさんは……私の、だ、大事な人……だから……私が、ぜったい、守ります……」

P「うぅ……情けないプロデューサーですまん……」

小梅「いつもは……かっこいい……です。今は……かわいいけど……えへ」





―――車内―――


薫「せんせぇ早く帰ってこないかなー?」

ありす「……龍崎さんは」

薫「かおるでいいよ?」

ありす「龍崎さ」

薫「かおる」

ありす「……」

薫「……」

ありす「薫ちゃんは……」

薫「えへへへ!」ニパー





ありす「プロデューサーのことが、大好きなんですね」

薫「うん! かおるね、せんせぇのことだいすき!!」

ありす(笑顔が眩しい)

薫「ありすちゃんも、せんせぇのことだいすきなんだよね?」

ありす「橘です。……大好きっていうか……その……」

薫「違うの? あれぇ?」

ありす(みんなあなたのように素直にはなれません)

薫「ありすちゃんは、いっつも「むーっ」ってお顔してるね」

ありす「え?」

薫「むむーって!」ムムーッ

ありす「……そんなに、怖い顔してますか?」

薫「なにかヤなことあったのかな? っておもっちゃうなー」

ありす(9歳にそんなこと思われてたんだ……)





薫「もっとにこにこーってしたり、うぅ~ってなったり、えへへー! ってしたほうがいいのになーって!」

ありす「……薫ちゃんは、表情豊かですよね」

薫「ありすちゃんすっごくかわいいから、ひょーじょーゆたかになったほうが、もーっとかわいくなって、せんせぇも嬉しいんじゃないかな?」

ありす「私が可愛くなってプロデューサーを取っちゃったら、薫ちゃんは悲しいんじゃないですか?」

薫「ああっ!? そっかぁ! や、やっぱりさっきのナシ!!」

ありす「ふふっ」クスッ

薫「うぅ~っ! だ、だめなのー!!」アセアセ

ありす(そっか……あんまり難しいことばっかり考えてないで、もっと気楽にいる方がよかったのかな)

ありす「ありがとうございます、薫ちゃん」ニコッ

薫「あ、う、うん!!」

ありす(もうちょっとだけ、素直になってみようかな……)

薫「むぅ。……そういえば、せんせぇ遅いね?」

ありす「そうですね。ルートの確認だけなら、もう戻ってもいい頃なのに」

薫「お、おばけに食べられちゃったりとか、し、してないかな……?」

ありす「ふぅ。薫ちゃん、幽霊なんて存在しないんですよ?」

薫「え? そうなの?」

ありす「ええ。あんなものは、作り話なんです。怖がるだけ無駄ですよ」








……コンコン。








ありす「!」ビクッ

薫「あ!」

P『あーりーすー』コンコン

ありす「……?」

薫「せんせぇ!」

P『あーりーすー』コンコン

ありす「プロデューサー? 終わったんですか?」

P『あーーりーーすーー』コンコン

ありす「……っ」ゾクッ

薫「せんせぇ、今開けるねー!」

ありす「ダメ!」バッ

薫「?」

P?『あーーりーーすーー』コンコン

ありす(車内が明るくて、外が真っ暗だから、外の様子がまったく見えない……)

薫「ありすちゃん、せんせぇを入れてあげよ?」

ありす「……プロデューサーは、鍵を持っているはずです。そう言っていたでしょう?」

薫「あ、そっかぁ! じゃあせんせぇ、どうしたんだろ?」

ありす「……」

P?『あーーーりーーーすーーー』コンコン





ありす「プロデューサー! 悪ふざけが過ぎますよ!」

P?『…………』

薫「……せんせぇ?」

ありす「プロ……」

?『あーーーーーーーーーーーーーー』コンコンコン

ありす「プ、プロ……」

薫「やだ、せんせぇ! せんせぇたすけて!!」ギュッ

ありす「だ、大丈夫です! 私が、ついてますから!!」ギュッ

?『あああああああああああああああああああああ』コンコンコンコン

ありす(南無妙法蓮華経、南無妙法蓮華経……!)ギュー

薫「せんせぇ! せんせぇ!!」ギュー

?『』ガチャッ

ありす(鍵が……!?)

P「おっす、ただいまー」

小梅「……た、ただい、ま……」

ありす「ふっ!」ブンッ

P「ごぶるしゃ!?」バギィ!!





・・・・・・


P「申し訳ございませんでした……」ボロッ

ありす「はぁ……はぁ……次、こんなことしたら、許しませんからね……」

P「承知致しました……」ゲザッ

薫「ぐすっ……せんせぇ、怖かったよぉ……」ギュー

P「ごめんな。なんか車の中から「幽霊なんていない」って聞こえてさ」ナデナデ

ありす「だから脅かしてやろうと思ったわけですか?」

P「いやいや、こういう場所では幽霊を全く怖がってないほうが危ないんだぞ? 危機感のある人間だったらまず入らないような危険なところに入ってっちゃったり、地蔵を蹴倒したりお札をはがしたり……。だから、ちょっとは危機感持ってもらいたくてな」

ありす「本音は?」

P「ありすちゃんの鉄面皮剥がしてやりたくなってぐへへ……ぶべるしゃ!?」バギィ

小梅(プ、プロデューサーさん……どんどん、す、素敵な、顔に……)ドキドキ





薫「かおる、怖くなってきちゃったぁ……」

P「大丈夫だよ。この辺りにはお化けはいないって、小梅のお墨付きだからな。変なことしようとしないで、ただちょっと歩くだけなら怖くないさ」

薫「うぅ……」

P「すっかり怖気づいちゃったな。ちょっとやりすぎたか」

小梅「……なかなか……名演技、でした」

ありす「あんな悪ふざけに全力になるのやめてください」

P「バカ言え、俺が全力になったらエクソシストモードになれるんだぞ。大学時代、女友達にトラウマを植え付けたこともある」

小梅「……こ、今度、見たい……です」

P「外とか事務所だといろんな意味で危ないから、やるなら俺の家でな」

ありす「えっ」

P「よし、それじゃあ次は誰が行く?」

薫「…………」

ありす「……じゃあ、私が」

P「ん、わかった。それじゃあ薫、小梅とお留守番しててくれるか?」

薫「う、うん」

P「すげー元気なくなっちゃったな。小梅、すまんが頼んだぞ」

小梅「え……あ……が、がんばり、ます……」

P「じゃ、行こうかありす」

ありす「は、はい」





―――××団地―――


P「この怖さ、2回目だからちょっとは慣れたかな……。醜態は晒さずに済みそうだ」

ありす「……あの」

P「ん?」

ありす「ずっと我慢してたんですが……そろそろ……」

P「?」

ありす「さ、さっきので、ちょっと出そうになっちゃって……もう、限界みたいです」モジモジ

P「……まさか、トイレか?」

ありす「……は、はい」

P「一応言っておくが、こんな山奥にトイレはない。使うのであれば、あのボロ団地のトイレしかないぞ?」

ありす「……うぅ」

P「あそこに共用トイレが見えるな? 入口まではついて行ってやるから、ちゃちゃっと済ませて来い」

ありす「水って通ってますかね……?」

P「うーん、期待しないほうがいいぞ」

ありす「ですよね……」





・・・・・・


ありす「こ、怖かったです……」

P「もしかしてなにか起こるかと不安だったが、何事もなくてよかったよ」

ありす「何事もないってことは、なかったですよ。汚いし、暗いし、虫もいるし……」

P「本番はしっかりトイレ行ってからロケにしないとな」

ありす「はい……あ、あの……手……」

P「ん?」

ありす「手、つ、つないでも……いいですか?」

P「ちゃんと手洗った?」

ありす「……」

P「嘘嘘! 冗談だって。ははは!」ギュッ

ありす「あ、ありがとう、ございます……」カァ

P「……」

ありす「? ……あの、なにか?」





P「いやな、普段ありすがこんな風に甘えてくれるなんてないからさ。ちょっと嬉しくてな」

ありす「……甘えても、いいんですか?」

P「当たり前だろ。ありすは子ども扱いを嫌がるかもしれんが、小学生なんて俺からしたら全然子供だ。だからもっと甘えてほしいくらいだ」

ありす「そう、ですか」

P「うん」

ありす「……じゃあ、普段から……もうちょっとだけ、甘えても、いいですか……?」

P「ああ、もちろんだ!」

ありす(薫ちゃんの言った通り、素直になったらプロデューサーとの距離が縮まった)

ありす「……えへへ」ギュッ

ありす(これからは、もっともっと……素直になってみよう)





―――車内―――


薫「…………」

小梅「…………」

小梅(……な、なんだか……すっかり、元気、なくなっちゃってる……)

小梅(正直……これくらいの元気のほうが、私は、好きだけど……か、可哀想、だよね……)

小梅(……で、でも、どうしよう……人を……元気するのは、苦手……。逆なら……で、できる、けど……)

小梅(ううん……そ、そんなんじゃ、だ、だめ、だよね。だって)

小梅(わ、私は……ア、ア、アイドル、だもん……!)

小梅「~~♪」

薫「?」ピクッ

小梅「~~~♪ ~~~~♪」

薫「……」





小梅「か、薫ちゃん、元気ない……から、その……元気の出るお歌を……歌って、あげるね」

薫「!」

小梅「わ、私、は……歌くらいしか、取り柄がない、けど……」

薫「……えへへ! 小梅さん、ありがとうございまー!!」ダキッ

小梅「わっ、わっ……!!」///

薫「えへへへー! じゃあ、かおるもいっしょにお歌、歌ってもいいっ?」

小梅「……えへ。うん、じゃあ……い、一緒に、歌おっか……」

薫「うん!!」ペカー

小梅(……た、太陽は、に、苦手、だけど……)

薫「~~♪ ~~~♪♪」

小梅(ひ、光がないと……影、できない……から……。……もっといっぱい……輝かせよう……)ニコ





・・・・・・


P「すごくいい歌声が聞こえると思ったら、なんだ天使か」

薫「えへへー! 薫、元気いっぱいだよ、せんせぇ!!」

P「そっかそっか。うん、じゃあちゃちゃっとあっちの様子見てきて、そしたらみんなで帰ろうか」

薫「うん!」

P「……小梅、ありがとな」ボソ

小梅「……」コク

P「じゃあ今度はありすと小梅が留守番しててくれな」

ありす「はい」

小梅「……は、はい」

P「よし、行くか薫!」

薫「はーい! 行ってきまー!!」

P「こらこら、走るんじゃない」

薫「えへへへ!」





―――××団地―――


薫「なんか、おばけ出そうだね!」

P「だから心霊スポットなんだけどね」

薫「でも小梅さんが、おばけはいないって言ってたよ!」

P「そうだな。だから安心できるんだ」

薫「うん! 小梅さんがいないって言ったんなら、ぜったいいないもんね!」

P「はは、すっかり小梅のこと大好きになったみたいだな」

薫「うん! それに、ありすちゃんもだいすき! ……あ、でもね、一番はせんせぇなんだよ?」

P「うん、そっか。ありがとな」ナデナデ

薫「えへへー!」

P(この調子だと間違いなく局の人達が望む画は撮れそうにないが……)

薫「せんせぇとお散歩……あれっ、これってデートなのかなあ!?」///

P(この笑顔を曇らせることに比べれば、大したことじゃないかな)

P「よしよし、じゃあデートの続きはまた今度にして、車に戻ろうか」

薫「うん! せんせぇ、みんなのとこまで競走だよ!!」

P「お、やるかぁ?」

薫「えへへ! かおる、行っきま~!!」





―――車内―――


ありす「そもそも、あなたがプロデューサーの暴挙を止めてくれれば、私たちが無駄に怖い思いをしなくて済んだんです」

小梅「……ご、ごめん、ね……」

ありす「ごめんで済んだら片桐さんはただの酔っ払いさんです」

小梅「……うぅ」

ありす「だいたいプロデューサーは怖がりすぎなんです。白坂さんも、プロデューサーの気を引こうとして、幽霊がいるなんて虚言はやめたほうがいいと思いますが」

小梅「……!」ムッ

ありす「なんですか、その目は。なにか反論でもあるんですか?」

小梅「……」

ありす「ふふん、まさか幽霊はいるとでも言いたいんですか? 非科学的ですね」

小梅「……怖い、の?」

ありす「な、なんですか?」ピクッ

小梅「こ、子供らしくって……いいんじゃ、ないかな……怖がりでも」

ありす「な……っ! なにを、言っているのか……理解に苦しみますねっ! 存在しないものをどう怖がればいいのやら……ふ、ふふ……」ヒクヒクッ





小梅「……怒った、の……?」

ありす「いぃえぇ、怒ってなんていませんよ全然……!」

小梅「……ラ、ランドセル、背負ってるうちは……背伸び、しなくって、いいと思う……よ」

ありす「……~~っ! あなたに効きそうな呪文をさっき調べましたよ。『ニフラム』!!」

小梅「……!」ムッ

ありす「ふふん」

小梅「…………………………『ザキ』」ボソ

ありす「はい!?」

小梅「……ふふ」

ありす「あ、あなたは言ってはいけない言葉を言いました!」ガタッ


ギャーギャー!!





―――車外―――


P「いやあ、あの2人も打ち解けてくれたみたいで良かった良かった」

薫「せんせぇ、ケンカしちゃってるけどいいの?」

P「ああ。あれは仲良しのケンカだからいいんだよ」

薫「へー、そぉなんだあ!!」

P「だからもうちょっと様子を見とこうか」

薫「うん!!」


ありす『それじゃあ今度バイオハザードで勝負です!!』ドタバタ

小梅『……の、のぞむ、ところ……。スプラッターショーに……してあげる……』ドタバタ


P「な? 今度遊ぶ約束まで取り付けちゃったぞ」

薫「いいなー! 薫も遊びたい!」

P「うーん、CEROと相談かなぁ」

P(まぁなんだかんだで良いチームになりそうだな。俺の目に狂いはなかった)





―――後日、事務所にて―――


ありす「ちょっと小梅さん! いまわざとこっちにロケラン撃ったでしょう!」

小梅「……手が、滑って……」

ありす「袖伸ばしたままプレイするからです! ちゃんと手を出してください!」

薫「ねーねー! それはなあに?」

小梅「こ、これはね……こうやって……連射、で、できるの……」ダダダダダ

ありす「どうして私を狙うんですか! そっちのチェーンソーを狙ってください!」





ガチャ


P「おーい」

薫「あ、せんせぇ!」

P「もうそろそろ移動したいから、セーブして終わりにしてくれ」

ありす「いえ、セーブポイントまではまだ結構……」

小梅「……えい」チュドーン

ありす「ああっ!?」

P「……なにもゲームオーバーしろとは言ってないが」

薫「せんせぇ、次のお仕事はなぁに?」

P「ああ。次はバラエティ番組のチーム戦だな。みんな、大丈夫か?」

薫「みんな仲良しだから大丈夫だよ!!」

ありす「……小梅さんのフレンドリーファイアさえなければ」

小梅「……お仕事は……ま、真面目に、やる……」

P「そかそか、よし、じゃあ行くか!」

薫「おおー!!」





おしまい。







あれ、一日で投下し終わっちゃいました。自分で思ったより短かったみたいです。



『殺人鬼2』は耐性ない人にとってはリアルにネクロノミコンなのでやめた方がいいです。開幕44ページでオーバーキルされます。

耐性ついてくると、半年に一回は読み直したくなりますけどね。



お漏らしは、やるならお漏らし用のスレでやりたくてスルーでした。

期待を裏切ってごめんなさい。でも自家発電も悪くないよ。


「食え」は、1も2も『どっちも』あります^^


今、小梅とモバPの廃病院編の構想を練ってます。お仕事が一段落したら書くかもなので、HTML化は保留してます。


番外編


小梅「肝試し?」 モバP「うん」


―――事務所―――


P「今度そういう企画に参加してほしいんだが、大丈夫かな? プロフィールを読んで、小梅ちゃんしかないと思ったんだが」

小梅「……だいじょうぶ、です……」

P「そっかそっか、それはよかった」

小梅「……ば、場所は……?」

P「局のディレクターからたくさん候補出されたんだけど、俺こういうの行ったことないからさっぱりなんだ。小梅ちゃんが選んでいいぞ」

小梅「じゃ、じゃあ……ここ」

P「××病院跡、か。なんか雰囲気あるな」

小梅「結構、有名……です」

P「そうなのか。じゃあまず俺が現場の下見に行ってくるよ。危ないところがないかチェックしないとな」

小梅「……1人……で……?」

P「ああ、もちろん。まさかとは思うが、本当に何かいたら困るからな」

小梅「……や、やめたほうが……」

P「?」

小梅「……危ない、です」

P「いやでも、危ない場所なら猶更、アイドルたちを行かせる前に俺がちゃんとチェックしないと」

小梅「……それなら……わ、私も……行きます」

P「え?」

小梅「……そ、そういう場所……慣れて、ますから……」

P「うぅむ……。しかし……」

小梅「行かない方が……良い場所、わかります」

P「絶対に俺から離れないか?」

小梅「……は、はい……」

P「よし。じゃあ、今度のオフに2人で行ってみよう。なにかマズイことになりそうならすぐ帰って、その場所はやめておこう」

小梅「はい……!」


―――次のオフ―――


P「お待たせ、小梅ちゃん!」

小梅「!」ビクッ

P(……すげえ怯えられてる。嫌われてる、のか?)

P「やっ。こんばんわ」

小梅「こ、こん、ばんわ……」

P「せっかくのオフなのにごめんな」

小梅「い、いえ……」

P(無理やり付きあわせた形だからな。本気で申し訳ない)

P「今度、何かの形で埋め合わせするよ」

小梅「だ、だいじょうぶ、です……」

P(大丈夫、か。すごい距離を感じる……まあ他の子も最初はこんなもんだったっけ。ありすとかな)

P「じゃあ行こうか。車に乗ってくれ」

小梅「……はい」

P「……」

P(今まで少なからず一緒に仕事をしてきたが……この子の信頼を得ることは、まだ全然できていないらしい)


―――車内―――


小梅(廃病院……楽しみ……)ワクワク

P「結構時間かかるから、寝ててもいいぞ」

小梅「……は、はい……」

小梅(い、今までの、ホラースポット……は……歩いて行けるとこ、だけ、だったけど……こ、今回は、初めての、遠出……)

小梅(プロデューサーさん……わ、私の、ために……このお仕事……取ってきてくれたの、かな……?)

P「冷房もっと強くした方がいいかな?」

小梅「……だ、だいじょうぶ、です」

小梅(プロデューサーさん……明るくて……苦手なタイプ、だったけど……。すごく、優しくて……あたたかい……。だから『みんな』……引き寄せられる……)

P「ん? どうしたんだ小梅ちゃん、俺の顔なんかジッと見て。なんかついてるか?」

小梅「……3人……くらい」

P「え?」


―――コンビニ駐車場―――


P「コンビニ着いたけど、小梅ちゃんは降り―――」

小梅「zzz」

P(……寝てる)

P(俺の前だとオドオドしてるけど、さすがに寝顔は無防備で可愛いな)

P「……」

P(あの前髪の下……どうなってるんだろう。気になる)

小梅「zzz」

P(多分、普通の右目があるだけなんだろうけど……ううむ、一度気になると、どうしようもないな)

P「……」ソロー

小梅「zzz」

P(もうちょい……あと、ちょっとで……!)

小梅「」ガシッ

P「うおっ!?」

P(う、腕を掴まれた……! まさか起きて……!?)

小梅「zzz」ギリギリ

P(いや、寝てる……? っていうかすごい力だ、なんだこれ!?)

小梅「zzz」パッ

P「……っ! た、助かった……」

小梅「zzz」

P(な、なんだったんだ、今のは……。いや、触らぬ神に祟りなし……だな)



小梅「……んっ」

P「起きたか」

小梅「……もう、着いた……?」ゴシゴシ

P「いや、コンビニで休憩してただけだよ。そろそろ出発する」

小梅「……あ」

P「飲み物とかお菓子買っといたよ」

小梅「ご、ごめん、なさい……」

P「そういう時はありがとうって言ってほしいな」

小梅「……あ……あり、がとう、ございます」

P「ん、どういたしまして。目についたのをたくさん買っといたよ。何が好きかよくわからなかったからさ」

小梅「あっ……スプラッター食玩シリーズ……!」キラキラ

P(ほんとに何が好きかよくわかんねぇ……)


―――車内―――


P「小梅ちゃんは、どうして怖いのが好きなんだ?」

小梅「怖いのは……好きじゃない、です……」

P「え? じゃあホラースポット巡りは?」

小梅「あれは……怖くない、から……」

P「うん、見解の相違だね」

小梅「……?」

P「じゃあ小梅ちゃんの怖いものってなにかな?」

小梅「……よ、酔ってる、お父さん……と、教科書の……音読……」

P(なんか深く掘り下げたくない感じの答えだなぁ……)

小梅「プ、プロデューサーさんも……最初は、苦手……怖かった……けど……。……今は……好き」

P「えっ?」

小梅「……だ、だから、プロデューサーさんと……ホラースポット……た、楽しみ、です……えへ」

P「……」

小梅「……プ、プロデューサーさん……? な、なんで、泣いてる……の……?」

P「これからは、小梅って呼んでもいいかな?」

小梅「え……は、はい……だいじょうぶ、です……」

P「こうめぇぇぇえええっ!!」ダキッ

小梅「ひゃう……!? く……くるしい……です……」ムギュ



P「なんかもう肝試しとかどうでもよくなってきたわ」

小梅「だ、だめ……です……」

P「あはは、冗談だって。なんならこの後、うちのシアタールームで夜通しホラー上映会したっていいぞ」

小梅「……ほ、ほんと……!?」キラキラ

P「あ、でも寮の管理人さんが心配するからダメだな」

小梅「…………。」シュン

P「でもいつかやろうな」

小梅「は、はい……!」パァッ

P(かわいい)



P(スプラッターって、要はグロいヤツのことだよな……)

P「小梅、好きな内臓は?」

小梅「腎臓」

P(……そ、即答……!? 冗談のつもりだったのに……)

小梅「プロデューサーさん……は……?」

P「うぇっ!? ……ああ……うん、小腸……かな……?」

小梅「…………」

P「…………」

小梅「……にわか」ボソッ

P「!?」



小梅「……プロデューサーさん……は、もっと……勉強した方が……いい、です」

P「べ、勉強……? 内臓の?」

小梅「これ……貸して、あげます……」スッ

P「これ、小説か? 『殺人鬼2』……いきなり2でいいのか?」

小梅「いい……です。1も、読みたくなったら……貸してあげます」

P「ありがとう、家に帰ったらさっそく読んでみるよ」

小梅「……しっかり……噛みしめて、ください」

P「俺、本読むときは頭の中で映像が動くタイプだからなぁ。でもバイオハザードとかの映画も見るし、結構耐性あると思うぞ?」

小梅「……ふふ」

P「な、なんだその「片腹痛いぜ」みたいな笑いは……!?」


―――廃病院 駐車場―――


P「よし、着いたぞー」

小梅「zzz」

P(また寝てる。でもさっきの反省を生かして、普通に起こ……)

P「……」

P(前髪はアウトだけど、ほっぺたはどうだろう?)

小梅「……むにゃ」プニプニ

P(起きない。天使。よし、このやたら長い袖を結んで……と)ギュッ

小梅「zzz」

P(よし、これで腕を掴まれることはない。いざ、前髪を……!)スッ

小梅「……Schauen Sie……nicht zuruck……」ボソ

P「え?」

小梅「……Sie werden……es……bereuen……」ブツブツ

P(どこの言葉!?)ゾクッ

小梅「zzz」

P「こ、小梅……じ、じつは起きてるんだろ……? なぁ?」ユサユサ

小梅「……むにゃ。……プロデューサー、さん……? あれ……袖、が……」

P「つ、着いたぞ。よし、さっそく行ってみよう!」スタスタ

小梅「あ、あの……袖が……ほ、ほどけない、です……待って……あぅぅ……」モゾモゾ



P「な、なんか……すげえ雰囲気あるな。ところどころ崩れてるし、黒焦げのところもあるし……」

小梅「はい……この、廃病院は……ホラースポット巡リストの……登竜門……」

P「日本語か英語かハッキリしような」

小梅「こ、ここから、生きて帰れたら……一人前の……巡リスト」

P「は……? ちょ、ちょっと待ってくれ。どういう意味だ今の?」

小梅「まずは軽く……霊安室から……」

P「いきなりボス戦!!」

小梅「さ、さ……早く、入ろう……」グイグイ

P「あれー、な、なんか急に腹痛が……」

小梅「だいじょうぶ……ここは、病院……だから。……すぐ、楽になります……」

P「それ楽になったっきり帰ってこれないヤツだろ! いやだ! 俺は入らないぞ!」

小梅「……ふふ、ふふふ。……プロデューサーさん、面白い……」

P「あれぇ!? 小梅には今のが冗談に聞こえたのか!? ここ笑いどころじゃないぞ!?」

小梅「さ……早く、逝こう……」グイグイ

P「いやだぁぁ! 今絶対イントネーションがおかしかったもん!! ちょ、力強い……!? いやだぁぁぁぁ……」ズリズリ



P「あ、あんなところに!!」

小梅「あ……これ、ピアス……?」

P「よし、いまのうちに逃げ……って、おいおい! こんな場所に落ちてるものを拾うなよ……危ないぞ」

小梅「……これ……かわいい」

P「ねえ聞いてる? ねえねえ」

小梅「プ、プロデューサーさん……似合い、ますか……?」

P「すごく可愛いと思うけどさ。でも捨てような?」

小梅「……褒められた……えへ」

P「ポケットに入れた! 今ポケットに入れただろ! あれ、おっかしいなー、小梅ちゃん耳聞こえなくなっちゃったのかなー?」

小梅「じゃあ……病院に、入ります……」

P「……もういいよ……煮るなり焼くなり好きにしなさいよ」ズルズル


―――廃病院―――


P「なんかこの病院、夏なのにクソ寒いんだが……」

小梅「……エコロジー……?」

P「違う、そんな地球に優しそうなものじゃない」

小梅「だい、じょうぶ……富士山の……頂上も……さ、寒い、ですし……」

P「えっ、ここってそんな極限環境と同列なのか!? じゃあさっきから息苦しいのは酸素濃度の問題!?」

小梅「ここで……自[ピーーー]る人は、いなそう……だけど」

P「なんで富士山頂の話からいきなり自殺の話になったんだ? 飛躍しすぎだろ」

小梅「富士山といえば……樹海……樹海は自殺の……名所……」

P「ああ一応小梅なりに思考の道順があったんだな。物騒だけど。物騒だけど!」

小梅「懐中電灯……消して、歩きましょうか……?」

P「この状況でどうして縛りプレイに挑戦するんだ!?」

※失礼しました。やり直し。



―――廃病院―――


P「なんかこの病院、夏なのにクソ寒いんだが……」

小梅「……エコロジー……?」

P「違う、そんな地球に優しそうなものじゃない」

小梅「だい、じょうぶ……富士山の……頂上も……さ、寒い、ですし……」

P「えっ、ここってそんな極限環境と同列なのか!? じゃあさっきから息苦しいのは酸素濃度の問題!?」

小梅「ここで……自[ピーーー]る人は、いなそう……だけど」

P「なんで富士山頂の話からいきなり自殺の話になったんだ? 飛躍しすぎだろ」

小梅「富士山といえば……樹海……樹海は自殺の……名所……」

P「ああ一応小梅なりに思考の道順があったんだな。物騒だけど。物騒だけど!」

小梅「懐中電灯……消して、歩きましょうか……?」

P「この状況でどうして縛りプレイに挑戦するんだ!?」



P(まあ、なんだかんだでこういう時ってのは、幽霊なんて見ないもんだ。こうやってわいわいやって、話のタネになっていくんだろう)

小梅「つ、次は……こっち……!」

P(いつもは積極性に欠ける小梅が、俺の腕をぐいぐい引っ張って表情を輝かせている。小梅のこんな一面を知れただけでも、収穫はあったってもんだ)

小梅「あ……看護婦さん……」

P(歳相応にはしゃげる場所があるってのはいいもんだ。俺みたいに仕事が趣味の人間にはわからない感覚なんだろうな)

小梅「……あ、枝毛」

P「ちょっと待てさっきなんて言った!?」

小梅「ここ……枝毛になってる……」

P「その前!!」

小梅「あっちから……看護婦さん……じゃなくって……看護師さんが……来てる」

P(うおおおおおおおおおおッ、あのナースさん透けてるッ!!? あれマジなヤツじゃねぇかぁああああ!!)

P「こ、この部屋に隠れるぞ!」グイッ

小梅「……あ」



小梅「看護師さんに……霊安室まで……案内……してもらいたい……」

P「あのスケスケナースさんにお願いしたら、確実に黄泉の国へ案内されるぞ……!?」

小梅「……消灯時間、だから?」

P「命の灯火を消灯されるからだよ! いいからベッドの下に隠れるぞ!」

小梅「……けほっ……汚い」

P「我慢してくれ!」

P(……って、うおおおおおっ! 出入り口の擦りガラス越しにナースさんの頭がうっすら見えるぅぅぅ!!)ギュゥゥ

小梅(……抱きしめ、られてる……なんか、すごく……あったかい……)ギュッ

P(抱き返してる……さすがの小梅も恐怖を感じているってことか。おおお俺が、ま、守ってやらないと……!!)

小梅(他人の……た、体温……ひさしぶり。……すごく……あ、安心、するかも……えへ)

P(小梅が俺の胸に顔を埋めている……なんて小さな体なんだ。くそ、一刻も早くここを脱出しなければ……!)

小梅(プロデューサーさん……こ、怖いと、ぎゅってしてくれる……のかな……。そ、それなら……もっと、ここにいたい……な)

P(俺が小梅を、絶対に守り抜いてやる……!!)

小梅(プロデューサーさんは……私が、幽霊から、守る……。だから私が、プロデューサーさんを……びっくり、させちゃおう……)



P「い、行ったか……あのスケスケナース」

小梅「みたい、です……」

P「よし、今のうちに元来た道を引き返すぞ!」

小梅「…………」

P「……小梅?」

小梅「さっきの……看護師さん……あっちに、行ったので……危ない、です……」

P「うっ……確かに、また鉢合わせたら困るな。じゃあ窓から出て帰るか」

小梅「えっと……それだと……死にます」

P「死ぬの!? ま、まじでか!? じゃあ、あっちから、こう回って、あそこに行くか」

小梅「幽霊の……いるところ、わかります」

P「ほんとか!」

小梅(嘘……です)

P「じゃあ幽霊のいないところを案内してくれ! 幽霊との遭遇を避けつつ、駐車場に向かうぞ!」

小梅「は、はい……」

小梅(霊安室……ど、どこかな?)



P「あれ?」

小梅「……ど、どうしました……?」

P「腕時計が壊れたみたいだ。しばらく前から止まってる」

小梅「……そういうのは……よくあること、です……」

P「そうなのか?」

小梅「そのままずっと、止まった時間の中で……生き続ける……そういう予兆、です」

P「そういう怖いことサラっと言わないでくれるかな!?」

小梅「……だ、だいじょうぶ、です。プロデューサーさんは……私が、守ります……」

P「うぅ、情けない話だ……。それなら小梅は俺が、何があっても守ってやるからな」

小梅「……あ、ありがとう、ございます……えへ」



小梅(暗いところ……ずっと、見てると……視界全部……黒くなる……。この現象……なんなんだろう……)ポケー

P「お、おい小梅? な、なに見てるんだ? さっきから、あっちの方見てるけど……」

小梅「……え? な、なんでも、ない……です」

P「ほ、ほんとにか? なにかいるとかじゃないか?」

小梅(……!)

小梅「……あ」

P「なんだ!?」

小梅「い、、いえ……なんでも……」

P「本当の本当にか!? 変な気遣いは逆効果だぞ!? なんかいるんなら、ちゃんと教えてくれ!!」

小梅「……じゃあ、プロデューサーさん……」

P「…………な、なんだ……?」

小梅「……ぜ、絶対に振り返らないで……走って、ください」

小梅(誰も、いない……けど)

P「しっかり掴まっててくれよ! うおおおおおっ!!」ダッ

小梅(あ……お、お姫様、だっこ…………えへ)




P「ハァ、ハァ……ゼェ……も、もう追ってきてないんだな……!?」

小梅「はい……だ、だいじょうぶ、です」

P「あれ、ここどこだ? 確かあっちからこう来て、あそこで曲がって……。くそ、がむしゃらに走ったから道なんて覚えてないぞ……」

小梅「私……わかってます……。だいじょうぶ……」

P「小梅はほんとに頼りになるなぁ」

小梅(……ごめん……なさい)

P「ふぅ、ちょっと休憩…………うおおおおっ!?」グイッ

小梅「プ、プロデューサーさん……!」

P「病室のドアの隙間に腕が引きずり込まれたぁぁぁ!! ちょ、助けてくれ!! うぎぎぎぎっ……!!」グググ…

小梅「プロデューサーさん……私の目、見て……」

P「いやそんなことやってる場合じゃ……!」グググ…

小梅「いいから……」

P「……あ、ああ」グググ…

小梅「これから手を叩くと……う、腕が、抜けます……」パンッ

P「うわっ! ……ほ、ほんとだ……腕が抜けた」

小梅「……もう大丈夫、です」



P「今、何をしたんだ……?」

小梅「……あっちの人たちは……実体、ありません……だ、だから、よっぽど強い霊じゃないと……人を引きずったり……で、できません」

P「じゃあ、今のヤツは強かったってことか」

小梅「今のは……プロデューサーさんが……操られて、か、勝手に、動いてただけ……催眠術みたいな……もの、です……」

P「催眠術? じゃあ、それを小梅が解いてくれたってことか?」

小梅「……あ、あれくらい、なら……私でも、だ、だいじょうぶです……」

P「こ、小梅がこんなに頼りになるとは……。すまん、侮っていた」

小梅「……怖がって……緊張すると、かかりやすく……なります……。リラックスして……ください」

P「こんな場所でリラックスって言われてもなぁ」

小梅「……またなにか、あっても……わ、私が、守ります、から」

P「ありがとう、小梅……。すまんが腰が抜けたみたいだから、ちょっと待っててくれるか?」

小梅「は、はい……」

P「……それから。手を握ってもらっても……いい、か……?」

小梅「抱き付いても……いい、です……えへ」ギュッ

P(天使や……)

小梅(……や、やっぱり……ぎゅってすると……あったかい)



小梅(霊安室……あそこの地図で、確認……しよう)

P「ん、あれはナースステーションかな。おお、院内マップもあるぞ。半分くらい焦げてて読めないけど」

小梅(……霊安室……あった。……地下に……あるんだ……)

P「よし、こっちからこう行けば帰れそうだな。小梅、どうだ?」

小梅(……それだと……霊安室とは、逆方向……)

小梅「こっちから……行きたい、です」

P「そうか、小梅に全部任せるよ」

小梅(まったく、疑ってない……。ちょっと……心、痛い……かも)

P「とにかく安全に帰ろう! こんなとこで死んだら、笑えないにも程がある」

小梅「……はい。安全に……」



P「……ところで、小梅。ちょっと困ったことになったんだが……」

小梅「?」

P「その……トイレに行ってもいいかな……? 途中で飲んだコーヒーが効いたらしくって、もうかなり限界なんだ」

小梅「トイレ……そこに、あります……」

P「恥ずかしい話なんだが、そこの入口までついて来てくれないかな」

小梅「……中に、入らなくって……いいん、ですか?」

P「さすがにアイドルにそんなことはさせられないよ。入口にいてくれるだけでいい」

小梅(……プロデューサーさん……やっぱり、変なところで……優しい)



P「小梅ー! いるかー!?」

「は、はい……!」

P「よし、すぐ済ませるからな」

P(うぅ……くそ、後ろがやけに気になる。なんか気配を感じる気がしてならない。さっさと出すもん出してしまおう……)

P(それにしても寒い……なんかトイレに入った辺りから、もっと寒くなった気がする)

P(ほんとに物理的な寒さなのかな、これ……)

P「小梅ー! 変なのは来てないかー!?」

「……」

P「えっ?」

「……」

P「こ、小梅ー!?」

「だいじょうぶ……です」

P「……? ああ、そっか……うっ!?」

P(うぉっ……!? さ、寒い……!! なんだこれ!?)ガタガタ

「……プロデューサー、さん……?」

P「い、いや、なんでもない。もう終わったから、出るよ」ガチャッ


―――森の奥―――


P「…………え?」

P(どこだ、ここ……森の中……? 今出てきたトイレのドアもなくなってる!)

P「小梅……小梅は!?」

P(……あの光は……夕陽? いや違う、火事だ! あっちにある建物が燃えてるんだ)

P「小梅ぇええ!? どこに行ったんだ!?」

P(空に飛んでるあれは……飛行機? いや、あれはまるで、昔の戦争映画で見るような……)



小梅「プロデューサーさん!!」バシッ

P「はっ!?」

P(ここは、さっきの病院……!? 今のは……夢か?)

小梅「……に、逃げます……」グイ

P「え?」

小梅「うしろ、見ちゃダメ……です」

P「うしろ?」クルッ

小梅「……あ」

P「うおおおおおおおっ!?」



P「走るぞ、掴まれ!」グイ

小梅「は、はい……!」ギュッ

P「小梅、アレはどうにかならないのか!?」

小梅「無理……です。……あんなに、強いのが……こんなところに……いる、なんて……」

P「アレはなんなんだ? 黒い煙か!? 黒い津波!?」

小梅「怨念の……塊……だと、思います……。捕まったら……死ぬ、かも……」

P「ひいいいいッ!!」

小梅(こんなに……強い、霊が……今までずっと……隠れてたなんて……お、おかしい)

小梅(……まるで……)

P「前からも来る!!」

小梅(でも、たしか……そこを曲がると……)

P「突き当り……いや、階段だ! 上に……」

小梅「……だめ、です」

P「くそ、上からも黒いのが……! こうなったら下だ!」

小梅(や、やっぱり……誘い込まれてる……。……この先、には……)


―――霊安室―――


P「はぁ、はぁ……」

小梅「プロデューサー、さん……あれ……」

P「ちょ、ちょっと待ってくれ小梅……もう息も絶え絶えだ。歳は取りたくないな……」

小梅「……もう……歳……取れなくなる……かも」

P「……え? うおっ!?」

小梅「……白骨……死体」

P「……誰のだ?」

小梅「……ボスキャラ?」

P「……だよなぁ」



?『……』スゥ…

小梅「!」

P「うわあっ!? え、こ、子供……!? 子供がどうしてこんなところに!?」ギュッ

小梅「……あの骨の……本体、だと思います……」ギュッ

?『……』スッ

P「な、なんか手を出してるぞ。お金か? マネーを出せば見逃してくれるのか……?」ガクブル

小梅「……も、もしかして……」スッ

P(病院の外で拾った、ピアス……?)

小梅「こ、これ……あなたの……なの……?」

?『……』

?『』ニコッ

?『……ママの形見……ありがとう』

?『』スゥ…

小梅「……」

P「……き、消えた……」

小梅「気配、消えました……。た、助かった……みたい、です……」

P「…………はぁぁぁ……」ヘタッ



―――車内―――


小梅「た、多分……あの子は……せ、戦争中、この病院で……亡くなった子……みたいです」

P「それは……なんとなくわかってたよ。トイレから出た時、一瞬だけど、戦時中みたいな景色を見たんだ。多分、あのとき燃えてたのはあの病院だったんだろうな」

小梅「……ずっと……ピアス、さ、探してたんだと……お、思います……」

P「ピアスって、戦前からあるものなのか?」

小梅「……古代文明から……あ、あり、ます。……ま、魔除けの……象徴、として……」

P「へぇ、そうなのか。でもあの子の耳には穴開いてなかったし、ほんとにただ受け継いだだけなんだろうな」

小梅「……かも、しれないです……。それは、直接……聞かないと……わからない、です」

P「またあの廃病院に行きたいとは思わないけどな……。それに、満足げに成仏していったじゃないか。この世にはもういないだろう」

小梅「……はい……そう、ですね」

P「ピアスが欲しかったんなら、もっと静かにお願いしてくれればよかったのになぁ。おかげで何度か心臓が止まりかけたよ」

小梅「でも、最後は……廊下の、黒い怨霊たち……ぜ、全部、消してくれました……」

P「あの病院の幽霊が全部、配下だったとはなぁ。ならスケスケナースさんが俺たちを深追いしなかったのも、そのおかげだったのかな」

小梅「……番組は……あ、あの病院に……するんですか……?」

P「いやいやいや、もうこりごりだよ」



小梅「じゃあ、別のところ……ですか?」

P「できることなら企画ごとポシャりたいところだけどなぁ……。もしそうもいかないようなら、幽霊の全くいないところを探してみないとな」

小梅「……お、お手伝い……します」

P「ほんとか? また今日みたいなことにならないとも限らないぞ?」

小梅「……それなら……な、なおさら……プロデューサーさん……1人じゃ、危ない……ですから」

P(天使か)

小梅「それに……今日、みたいなことには……もう、ならない、です……。これが……守ってくれます」

P「おいそれ! あのピアスじゃないか!! 勝手に持ってきたのか!?」

小梅「持って行ってって……言ってました……」

P「そ、そうなのか? っていうか、さっき見た時よりずいぶん汚れてないか?」

小梅「こっちが……本来の、姿……です」

P「……もう何があっても驚かないよ」

小梅「だ、だから……次もまた、連れて行って……くださいね……プロデューサーさん……」

P「ああ、わかったよ」

小梅「……えへ」




P(今日の一件を経て、俺は小梅と仲良くなれたと思う)

P(最初は俺を警戒してビクビクしていた小梅だったが、今では気兼ねなく会話ができている)

P(まだ心を開くってほどじゃあないかもしれんが、それはこれからのホラースポット巡りで頑張ってみるとしよう)

P(それと、これはまだ小梅には言ってないことだが)

P(当初の予定を変更して、肝試しにはあと2人くらい追加してみようと考えている)

P(それは番組的な思惑ももちろんあるが、それ以上に、いつも事務所で所在なさげに縮こまっている小梅のためでもある)

P(うちの子たちは良い子ばかりだから、普通に会話することくらいはあるだろうが……小梅にも、もっと気兼ねなく話せる友達ってのがいてもいいだろう)

P(既に、残る2人のアテは付けてある。いろんな意味で小梅とは正反対の彼女らと打ち解ければ、小梅のためにも、彼女たちのためにもなるはずだ)

P(もしそれが成功すれば、ユニットでも組んでみるのもいいかもしれないな)

P(生きてる友達に囲まれて、小梅が全力で笑える日はきっと来る)

P(今からその時が楽しみでならない)





小梅(……プ、プロデューサーさん……やっぱり……良い人、だった……)

小梅(それに……なんだか……守ってあげたくなる)

小梅(私だけじゃ……まだまだ、ダメだけど……)

小梅(……も、もう……アイドル活動も……ホラーも……1人じゃ、ない……)

小梅(プロデューサーさん、には……言ってない、けど……)

小梅(『あの子』は……まだ、成仏してない……。っていうか……今、私の……膝で……寝てる)

小梅(力が……つ、強くなりすぎて……そう簡単には……成仏、できない……らしいから)

小梅(わ、私が……ピアス、つけて……憑りつかせて……あげてる)

小梅(……プロデューサーさんに……言ったら……こ、怖がっちゃうかも、しれない……から……まだ、内緒だけど)

小梅(いつも……プロデューサーさんに、助けて……もらってるから……。……憑りつかれやすい、体質の……プロデューサーさんは……わ、私たちが……守ります……)

小梅(だ、だから……これからも……ず、ずっと一緒に、いてください)




P「小梅、さっきから俺の顔見て、どうかしたか?」

小梅「……な、なんでも、ないです」

P「ほんとにか? 死相が見えるとかじゃないよな? な?」

小梅「大丈夫……です。……今は、みんな……遠くから、隙を窺ってる……だけ、ですから……」

P「帰ったらお祓い行こっと!!!!!」

ピアスの子が「あの子」なのか




今度こそ おしまい。






ここまで読んでくれた方はお憑かれ様でした。穴だらけでしたが、楽しんでいただけたら幸いです。

>>106
その通りです。ピアスの子=あの子って設定で書きました。
廃病院に行くまでは、『あの子』はいなかった設定です。



それでは夜にでもHTML化依頼を出してきます。

ありがとうございました!

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