島村卯月「駄菓子屋さん」 (33)

レッスン終わりの事務所にて、



島村卯月「え 凛ちゃんのお家って本当は花屋さんじゃないんですか!?」

渋谷凛「うん、実はそうなんだ。騙してたわげじゃないけれど今まで言ってなかったね」

本田未央「いやいや、いきなりそんなこと言われても信じられないよ!」

卯月「そ、そうですよ。それに私は一度凛ちゃんのお家の花屋さんで買い物したことあるし」

凛「実はあの時はお店をカモフラージュしてて、本当は花屋じゃないのに花屋を装ってたの」

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未央「どうしてわざわざそんなことを?」

凛「私ってクールなイメージだけどさ、アイドルの実家ってなんとなく華やかな方がいいかなって思って。卯月がうちに来た時って私がプロデューサーにスカウトされた時期とかぶるしさ」

未央「それじゃその頃からすでにアイドルになることは考えてたんだ」

卯月「なるほど!」

未央「いやしまむー、簡単に納得しないの!」

卯月「それで、凛ちゃんのお家は本当は何屋さんなんですか?」

凛「それは……わ、笑わない?」

卯月「そんな、笑うだなんて失礼なことしませんよ! ねえ、未央ちゃん?」

未央「そうそう、たとえ何屋でも私たちの絆は揺るがないよ」キリッ

凛「絆ってそんな大層な話じゃ……なら言うけど」

卯月「はいっ」ワクワク

未央「何屋かなぁ~」ドキドキ


凛「……駄菓子屋」ボソ

卯月、未央「えっ!?」

凛「だから、私の家は本当は駄菓子屋なの!?」

未央「駄菓子屋……ふふっ」

凛「ちょ、未央! 笑わないって言ったでしょ」イラ

未央「ごめんごめん。別に馬鹿にしたわけじゃないよ。ただしぶりんのイメージから想像できなかったからさ」

卯月「駄菓子ってひょっとしてう●い棒とかですか?」

未央「あぁ、しまむーの家はお金持ちだから駄菓子とはあまり縁なさそうだもんね」

卯月「そんなことないですよ。コンビニにお菓子とか置いてあるの見たことあるもん!」

凛「それじゃ卯月、10円で買えるガムとか知ってる?」

卯月「えっ、ガムって10円で買えるんですか!?」

未央「まさかそれすら知らないとは……」

卯月「でも、どうしてお家が駄菓子屋さんであることを隠してたんですか?」

未央「そうだよ。確かにしぶりんのイメージとは合わないかもだけどさ」

凛「実は……今のご時世駄菓子屋なんて正直儲からないし。最近赤字続きなんだ」

未央「え、そうなの!?」

凛「ここのところ私がアイドル業で稼いだお金でなんとかしてたんだけど、このままじゃお店を閉めるかもしれなくて」

卯月「そ、そんな!」

未央「てゆうか、もうしぶりんが大黒柱だよね」

凛「それでなかなか言えなくてさ……」

卯月「……凛ちゃん、諦めちゃダメですよ!」

凛「えっ」

未央「しまむー」

卯月「普段お世話になってるし、凛ちゃんのお家がそんな大変なことになってると知って放っておけません。ここは私たちで協力しよう、未央ちゃん!」

未央「協力って?」

卯月「凛ちゃんのお家の駄菓子屋さんが閉店にならないように繁盛させるんです!」

凛「そんな、二人にそこまで迷惑はかけられないよ……」

卯月「えっと、余計なお世話でしたか……」

凛「別にそういうわけじゃ……」


未央「……しぶりん、私も放っておけないよ!」

凛「未央まで!」

未央「私もしぶりんには迷惑かけっぱなしだし、それにNGのリーダーとしてこのままにしとくわけにはいかないよ。ここはこのみおちゃんに任せなさい!」

凛「二人とも……ふふっ、ありがとう」


こうして卯月と未央は、凛の実家の駄菓子屋さんの立て直しに協力することになりました____、

そして後日、


卯月「今日は珍しく三人揃ってオフです」トコトコ

未央「うん。それに休日ってこともあるししぶりんの家に行くにはもってこいだね」テクテク

卯月「そろそろ凛ちゃんのお家です」

未央「えっと……あ、あれかな?」


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未央「えっ!?」

卯月「看板に『シブヤ駄菓子』って書いてあるし、あれがそうですね!」

未央「いやいやいや! いろいろとツッコミどころあるんですけど!?」

凛「あ、おはよう二人とも。結構早く着いたね」

未央「しぶりん、これはどういうこと!?」

凛「どういうことも何も、これが本当の我が家だけど」

未央「建物が古いってのはまだわかるよ。でもさ、どうして周辺の道や建物まで田舎っぽくなっての?」

凛「それも含めて駄菓子屋なんだよ。もうカミングアウトしたから隠す必要ないと思って」

卯月「なるほど、確かに都会っぽい雰囲気よりこうした感じの方が駄菓子屋さんらしくて親しみがあるかもです!」

未央「都会の街並みの一部だけこんな田舎っぽいのは違和感しかないよ!?」

凛「とりあえず店の前で立ち話もなんだし中に入ってよ」

未央「う、うん……」

卯月「お邪魔します」

そして店の中で、


卯月「うわぁ~~、見たことないお菓子がいっぱいです!」キラキラ

凛「ふふっ、卯月ったらはしゃいで」

未央「さすがは駄菓子屋さんだけあっていろんなお菓子があるね」

凛「外観はボロボロだけど、品揃えに関しては自信あるよ」

未央「でもさ、こんなにいろんなお菓子があるんならある程度お客さんは来るんじゃないの?」

凛「いや、それでも厳しいんだよ。駄菓子って一つの値段も子供の御駄賃で買えるくらい安いでしょ? それに客層も小さな子供がメインだからたくさん売れてもそこまで収入があるわけじゃないんだよ」

未央「そうなんだ。駄菓子屋って大変だな……」

卯月「でもそれって駄菓子を入荷する際のコストもそこまでかからないってことなんじゃ?」

凛「確かに仕入れに関しては他の商品よりは抑えられるかもね。でもうちも三人家族だし、そこそこ出費があるから」


未央「なるほど、じぶりんの家庭を救うのは一筋縄じゃいかないようですな……」

卯月「が、頑張らなくちゃ!」

未央「ところでじぶりん? 今日はご両親は?」

凛「お父さんとお母さんも仕事でいないよ。今日は私一人だけ」

未央「え、仕事って? 駄菓子屋は?」

卯月「ひょっとして、出稼ぎですか?」

凛「うん。駄菓子屋と私のアイドル業の収入だけじゃ厳しいから両親二人して休日に別のところで働いてるの」

未央「そこまで深刻なんだ……」

卯月「ちなみにどんなお仕事なんですか?」

凛「お父さんはプールの監視員のバイト」

未央「プールの監視員って、暑い日は需要ありそうだけど寒い日は暇じゃないの?」

凛「温水プールもある大きな施設だから結構仕事あるらしいよ」

卯月「それじゃお母さんも監視員ですか?」

凛「ううん。お母さんは……仕事の内容は私もよく知らないけれど一日で五万円も稼いでるよ」

未央「それ絶対いやらしい仕事だよね!? 違うプールのお仕事だよね!!」

凛「さてと、それじゃさっそくどうすれば売り上げが良くなるか考えようか」

未央「なんか今までの話を聞いててますます険しい感じがしてきたよ」

卯月「あの……参考までに聞きたいんですけどどんな駄菓子が売れているのか教えてもらえますか?」

凛「やっぱり定番の人気商品は売れ行きが良いよね。誰もが知ってる有名なメーカーの定番の駄菓子はそれなりに売れてるよ」

未央「なるほど。確かに誰もが知ってる人気商品なら買い手も現れるよね」

凛「でも、それでも思ったより売れないことが多いんだ」

卯月「それはどうしてですか?」

凛「定番の駄菓子ならコンビニやスーパーにも必ず置いてあるでしょ。だからわざわざうちみたいな駄菓子屋で買う必要ないし、それにコンビニの方が多くの人が利用するからお客さんも入りやすいし」

卯月「そっか……。それじゃ逆に駄菓子屋さんにしかないマニアックな商品を置いてみるってのはどうでしょうか?」

未央「それだよしまむー!」

凛「駄菓子屋にしかない駄菓子か……、でもあまりマニアック過ぎるのを置いてもな……」

未央「それとさ、今の時代ってやっぱりネットじゃん。お店のホームページとか作って取り扱ってる駄菓子のアピールとかしないの?」

凛「一応ホームページとSNSにアカウントは作ったよ」

卯月「それじゃ、何か面白い商品のアピールをするのはどうでしょうか?」

凛「面白い商品?」

未央「うん。駄菓子って遊び心があるのが多そうだしさ、ちびっ子が喜びそうな駄菓子ってないの?」

凛「ちびっ子ウケが良さそうなの……あっ、あるにはあるよ」

その頃、店の近くで……


パパりん「プールのあとはオッパイ~~♪ オッパイ~~♪ オッパイアイスーーチューー」

パパりん「いやぁ~~プールの監視員のバイト疲れたな。そういや今日は凛が友達連れて来るとか言ってたけど……」

警察官「あ~~君、ちょっといいかな?」

パパりん「えっ、あ、はい?」

未央「えぇーー!? しぶりんのお父さんが警察官に連れていかれたって!?」

凛「たった今連絡があった……」

卯月「えっと……お父さん大丈夫なんですか?」

凛「はぁ……まったく恥ずかしいよ。こんな昼間から外で大声で『オッパイ~~♪』だなんて連呼するなんてさ」

未央「そりゃおまわりさんも黙ってないよね」

卯月「あはははっ……」

未央「しかもその時食べてたのが面白いと思ってたオッパイアイスだったなんてね……」

凛「うん。ちびっ子じゃくていい年したおっさんが食いついたよね……」

卯月「えっと、これじゃオッパイアイスをアピールする作戦はダメ……ですよね?」

凛「うん……」

ガラガラ

卯月「あれ、誰か来たみたいですよ」

未央「ひょっとしてお客さんかも!」

凛「うん」



ミッ●ーマウス「ハハッ、なかなか良い店だね」

ド●ルド「ランランルー♪」

ドラ●もん「駄菓子屋さんなんて久々だな」

凛、未央「ッ!?」

卯月「うわぁ~~三人もお客さんが来てくれましたよ。いらっしゃいませ!」

未央「いやいやいや、おかしいでしょ!? とんでもないお客さんが来ちゃったの!?」

凛「なんなのこの客たち……というか着ぐるみは?」

未央「しぶりん、それは言っちゃだめ!!」

ミッ●ーマウス「やぁ、君たちはここの店員さんかな? ハハッ」

凛「そ、そうですけど……」

ド●ルド「それじゃハッピーセットを三人分」

未央「うちはマク●ナルドじゃないんですけど」

ドラ●もん「それじゃどら焼きください」

未央「どら焼きは和菓子でしょ」

卯月「あれ? こんなところにどら焼き味のキャンディがありますよ」

凛「あ、そういえばこの間仕入れたんだった」

未央「あるんかい!」

ドラ●もん「じゃあそれを100個ください」

凛「え、100個も!?」

卯月「凄いですよ凛ちゃん! いきなり大儲けですよ」

未央「大儲けって、キャンディなんて一個の値段安いよね」

凛「そのキャンディ、一つ1000円するけど」

未央「駄菓子の"駄"は駄賃の意味じゃないの!?」

ドラ●もん「なかなか良い店だね。また来るよ」

ド●ルド「ランランルー」

ミッ●ーマウス「ハハッ」

卯月「ありがとうございます! 凛ちゃん、ドラ●もんさんたちはお得意さんになるかもしれないですよ!」

凛「え、うん……そうだね」

未央「それにしても、どしうてあんなのが来たのかな?」

少し離れたところで、


ドラ●もん「いっただきまーす」ペロペロ

ミッ●ーマウス「ハハッ、そろそろ着ぐるみはいいかな」

ド●ルド「ランランルー」

ヌギヌギ……

ちひろ「うぅ……どうして私がこんな熱い着ぐるみを」

武内P「これも渋谷さんの家を潰さないだめです。我慢してください」

ちひろ「汗かいちゃましたよ」

武内P「これで評判が広まって渋谷さんの家の駄菓子が少しでも繁盛すれば良いのですが。そうすれば渋谷さんやそれを心配していた島村さん達もアイドル業に集中してくれると……」

ちひろ「ええ、それは事務所にとっても良いことですね」

武内P「本業だけで食っていくのは難しいのだと、改めて痛感しました。それでもやはり本業を大切にすることはどの分野でも同じなのですね____」

ちひろ「ええ、そうですね。それはそうと……いつまで着ぐるみ着てるんですか、美城常務?」

美城えもん「…………ハハッ」

後日、



卯月「凛ちゃん未央ちゃん、私お仕事終わりに地道にいろんな人に声をかけてお客さんになってくれそうな人を連れて来ましたぁ~~!」

凛、未央「「えっ?」」



ア●パンマン「アンパン味の駄菓子はありますか?」

凛「……ないです」

セレナ「あの……少し前までカッコ良かったんだけど間抜け面になっちゃった男の子を元に戻す駄菓子ってありますか?」

未央「えっと……高須クリニックに行ってください」

阿部さん「どんなノンケでもホイホイついて来ちまうような駄菓子はあるかい?」

凛「ない」

蓮舫「二重国籍じゃダメなんですか?」

未央「ダメだと思います」

高畑裕太「女を襲っても世間から責められない駄菓子ない?」

凛「その前に性欲をコントロールしなよ」

清原和博「白い粉をくれ」

未央「えっと……この瓶ラムネってお菓子?」

杉田智和「早見沙織さんの小便ありますか?」

凛「シネ」

川谷絵音「未成年でも飲める酒ある?」

未央「この水に入れてビールみたいな泡が出るジュースでよければ……」

ちひろ「卯月ちゃん凄いですね!」

美城常務「これほどの集客力……島村卯月の評価を改める必要があるかもしれない」ボソッ

武内P「これで島村さんのことをもう灰かぶりとは言わせませんよ」

美城常務「…………今回も君の勝ちです。しかし謝罪はしないぞ」

武内P「……ふふっ」


卯月「島村卯月、頑張ります!」

凛「卯月、変なのまで連れてこないでよ!」

卯月「あれ、凛ちゃん怒ってる?」

未央「あはは……」

武内P「さて、私は資料の整理を……」



トントン

武内P「ん?」

阿部さん「やらないか」

武内P「えっ……」



\アァァァァァァッーーーーーー♂/




その後シブヤ駄菓子では、うんチョコが売れ行き商品となったとさ____


終わり

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