森久保「ドリーム・ステアウェイ」 (10)

1/夢の始まり

【ごーんごーんと鐘の音が聞こえる】
【始まりを告げる音が、終わりを告げる音が聞こえる】
【それは、一人の少女を目覚めさせる】

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1476274450

乃々「……鐘の音?」

   優しい音色が、私の耳をくすぐった。
   ごーんごーんという鐘の音。
   その優しい音は、これが夢であるとを私に認識させた。
   そうだ、これは夢だ。夢の中だ。
   だって、こんな優しい音が現実で聞こえるハズが無いのだから。

凛「確かに、夢も魔法も現実には無いかもしれない」
乃々「だ、誰ですかあなたは」

   真っ白い空間に、突然現れた謎の人物。
   誰だと言いながらも、この人のことを私は知っているような気がした。
   ひどく懐かしく、遠い記憶。その中に彼女がいる気がした。

凛「もしも。もしも、あなたがこの現実を少しでも変えたいなら、手を伸ばして」

乃々「手を伸ばしてって……森久保なんかが変えられるわけ……」

凛「ううん、あなたなら出来る。ほら、耳を澄ましてみて?」

   言われた通りに耳に意識を傾ける。

   かつーんかつーん。

   ヒールが地面を叩く音が聞こえた。

   それも一つでは無い。大量に。

   これは誰の足音だろうか?

凛「普通の女の子のだよ」

乃々「普通の……?」

凛「そう、普通の。あなたと一緒。ガラスの靴と綺麗なドレスを着ている普通の子たち」

   あなたと一緒、と言われて驚いた。

   気がつくと私は、綺麗なドレスとガラスの靴を履いていた。

   よそ行きの格好で、私はどこへ向かうのだろうか。

   よそ行きの格好で、みんなはどこへ向かっているのだろうか。

凛「みんな違う階段を昇っているけれど、目的地は一緒」

乃々「目的地……?」

   上を見上げてみれば、立派なお城が建っていた。

   そして、私の目の前にあるのは、気が遠くなるほど長い長い階段。

   私はこの階段を昇るのだろうか。私は昇れるのだろうか。

凛「お膳立てはここまで。あとは、自分の気持ちで決めたらいいよ」

乃々「気持ちって言っても、森久保は……森久保は……」

   気後れして後ずさりをする。

   私なんかが夢を叶えられるわけ――

   そう否定しかけた瞬間、体に冷たい息吹が吹きかけられた。

   身も凍るような冷たさ。

   そうだ、そうだ。私はこの冷たさを知っている。

   私はこの冷たさを憎んでいる。構造を憎んでいる。

   この冷たさが、この現実が嫌だったから、私は夢を求めたんだ。

乃々「私は……!」
凛「例えどんな結末になろうと、私はあなたの……乃々の味方であり続けるよ」

   その声に後押しされるように、私は一歩踏み出した。

   お城へ至る階段の、長い長い階段の一段目へ。



【ようこそ! 新しいシンデレラ!】

本日分はここまでです。
ありがとうございました。

このSSまとめへのコメント

このSSまとめにはまだコメントがありません

名前:
コメント:


未完結のSSにコメントをする時は、まだSSの更新がある可能性を考慮してコメントしてください

ScrollBottom