島村卯月「髪を梳かす理由」 (73)


アイドルマスターシンデレラガールズの二次創作SSです

よろしくお願いします

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卯月「事務所に入ってすぐの頃、私はよく凛ちゃんに寝癖を直してもらっていました」

 凛『卯月。頭の後ろに寝癖がついてる』
 
 卯月『えっ、本当ですか』
 
 凛「仕方ないな、私が櫛で直してあげるよ」
 
 卯月「ごめんなさい……」
 
 凛「いいよ。ほら、そっちの椅子に座って」
 
 サッ サッ サッ…
 
卯月「今でも自分の髪を触る時は、あの凛ちゃんの優しい手つきを思い出します」

卯月「最後に私が凛ちゃんに髪を梳いてもらったのは、いつの日のことだったでしょうか」


──大学──

女子「体育疲れましたね。自動販売機でジュース買いましょう」

卯月「はい、いいですよ」

女子「卯月ちゃんは最近走るのが速くなりましたね。やっぱり、アイドルをしていると鍛えられるものですか?」

卯月「そうですね。ライブだと歌いながら踊ったりもするので、体力は自然とつくのかも」

女子「ピンクチェックスクール、大人気ですものね」

卯月「ふふ、ありがとうございます」

女子「まぁ、私はトライアドプリムス派なんですが」

卯月「あはは……」


女子「渋谷凛ちゃんとは、あまり一緒に仕事なさらないんですか?」

卯月「どうしてですか?」

女子「私、彼女のファンなんです。だからサインが欲しくて」

卯月「そういうのは……」

女子「ふふ、今のは冗談です。ただ、渋谷凛ちゃんのプライベートが気になるというのは本当です」

卯月「プライベート、ですか」

女子「普段どんな感じなんでしょうか。うちの学校にはいないタイプでしょう、ああいう子」

卯月「……」


ピッ ピッ

卯月「凛ちゃんは、嘘をつかない子です」

女子「嘘?」

卯月「言いたいことがあったらはっきりと言ってくれるんです。すごく友達想いだから」

女子「わぁ、かっこいい」

ガコンッ

卯月「そうです。凛ちゃんは、かっこいいんです」

女子「ふふ、そうなのね」

卯月「そうなんです」


──エントランス──

楓「……」ボーッ

卯月「あ、楓さん、おはようございます」

楓「まあ卯月ちゃん、おはようございます。今日は事務所に来るのが随分早いんですね、私はまだ眠くって」ファーァ

卯月「最近はいつもこの時間ですよ」

楓「そうですか。……今日は凛ちゃんと一緒に来ていないの?」

卯月「凛ちゃんですか?」

楓「前にエントランスであったときは、凛ちゃんも一緒に出社してきていたと思いますが」

卯月「あはは。いつの話をしてるんですか、今はもう別々ですよ」

楓「あら……」


卯月「帰り道も最近は時間が合わなくて。凛ちゃんは加蓮ちゃんたちと、私は途中まで響子ちゃんと、帰ることが増えてきました」

楓「そう……。それは、寂しいことですね」

卯月「でも嬉しいことでもあります」

楓「ふふ、前向きなんですね」

卯月「はいっ」ニコッ

楓「最近、卯月ちゃんはますます垢抜けてきましたようにお見受けします。プロダクションに入ったばかりの頃に比べて、とても堂々としていますよ」

卯月「ありがとうございます。プロデューサーさんや事務所のみんなと過ごして、私も少しづつ慣れることができたんだと思います。これからも、頑張りたいと思います」

楓「頼もしい言葉。初めて会った頃は、頭に寝癖をつけて慌てた感じだったのに」クスクス

卯月「あはは。その寝癖を、事務所で凛ちゃんによく直してもらっていました」

楓「ええ。まるで姉妹のようでしたよ。あの頃の2人は」


楓「ところで、今日の髪型もとても可愛らしいですね。自分でセットしているんですか?」

卯月「はい。櫛とスプレーを使って、鏡の前で頑張ってやっています」

楓「卯月ちゃんは髪が長いから、毎朝大変でしょう」

卯月「でもそれも”慣れ”です。その証拠に、以前に比べて短い時間でキレイに髪型を作ることができるようになりましたから」

楓「なるほど。それは、嬉しいことですね」

卯月「……」

卯月(でも、寂しいことでもあります。なんて、口が裂けても私は言えないんだ)

楓「ではそろそろ。また会いましょう、卯月ちゃん」

卯月「はい、さようなら楓さん」

ツカツカツカ

楓「……」


──事務所──

杏「……全く、凛ちゃんも素直じゃないんだから」

卯月「おはようございます、杏ちゃん」ガチャッ

杏「あれ卯月ちゃん。今凛ちゃんとすれ違わなかった?」

卯月「いえ、会いませんでしたけど……」

杏「事務所からちょうど凛ちゃんが出て行ったところだったんだよ。もう、運が悪いというか間が悪いというか」

卯月「……」

杏「追いかける?」


卯月「いえ、凛ちゃんの仕事の邪魔になっちゃうと悪いので……」

杏「……」

杏(どうして2人して、会わない方の理由を先に考えちゃうのかな)

卯月「杏ちゃん?」

杏「……最近ニュージェネレーションズでの仕事があんまりないみたいだけど、みんなとは話せてるの?」

卯月「未央ちゃんとはときどき。今の撮影所が隣同士なので、休憩時間に遊びに来てくれたりします」

杏「凛ちゃんとは?」

卯月「いえ、声をかけようとは思うんですが、いつも忙しそうだから……」

杏「凛ちゃんに会えなくて、卯月ちゃんは寂しくないの?」


卯月「寂しくないといえば嘘になります。でもそれは同時に、私たちがそれぞれの道を見つけられたってことだから」

杏「それぞれの道ねぇ」

卯月「今のお仕事は楽しいです。だから、寂しいってこと以上に私は嬉しいです。凛ちゃんも私と同じ考えだと思います」

杏「……」

卯月「では、私ももう行きますね。心配してくれてありがとう、杏ちゃん」

ガチャッ

杏「……2人して同じようなことを言うんだね」

杏「卯月ちゃんが言ってることは正しいよ。だけど、私たちがやっているのは効率のいいゲームの攻略じゃないはずなんだけどな」


スクッ

楓「杏ちゃんもそう思いますか」

杏「わっ! 楓さん!?」ビクッ

楓「驚かせてすみません。裏口から入って、話を聞かせてもらっていました」

杏「何してるんですか、いい大人が……」

楓「私になりに、気を”きかぜ”たつもりです」

杏「……?」

楓「凛ちゃんも卯月ちゃんも、少し急ぎすぎてる感じがしますね。いえ、焦ってると言うべきでしょうか」

杏「……あ、楓だけに「気を木風(きかぜ)た」ってことか」

楓「あ、いえ、そっちは別にどうでもいいんですけど……」アハハ


楓「何をそんなに急いでいるんでしょう。まだスパートをかけるような年齢でもないというのに」

杏「2人ともすごく真面目な子だからねぇ。勉強が全てだと思ってるガリ勉くん、みたいなものなのかな」

楓「初めの頃の2人からは、そんな感じはしませんでしたが」

杏「ストイックなことは悪いことじゃないですけどね」

楓「でも、鳥に羽休めが必要なように、私に休肝日が必要なように、疲れを癒す時間は必要なはずです」

杏「そりゃそうですけど、でも2人がこれでいいんだって言ってる以上、杏たちが何をしたところでしょうがなくないですか」

楓「それでも、可愛い歳下に余計なちょっかいを出すのが良い大人のたしなみというものです。杏ちゃん、手伝ってくれますね?」

杏(私は卯月ちゃんとタメなんだけどなぁ……)


──翌日・エントランス──

楓「おっはよ~ございます、卯月ちゃーん!」デロデロ

卯月「楓さん!? どうしたんですか、そんなデロデロに酔っ払って……」

楓「油断して飲みすぎちゃったんです。ごめんなさい、肩をかしてもらえますかー?」

卯月「もちろんいいですよ、はい、捕まってください」

楓「ありがとうございます。ふふっ、卯月ちゃんの体ってとても柔らかいんですね!」ニコッ

卯月「えぇ?」

楓「女の子らしくて素敵です。私なんてみくちゃんに細すぎって言われちゃって、褒め言葉だったとは思うんですけど、でも卯月ちゃんの触り心地と比べたらそれはもう……」ペタペタ

卯月「ちょ、ちょっと楓さん、落ち着いてください!」

楓「頭撫でちゃおーっと♪」ワシワシ

卯月「わーっ!」


──事務所──

杏「それでね、技の一貫を消すためにそれを無効にできるタイプがサイクル戦では重要になってくるんだよ。でも当然そのタイプが後出しされるってことはわかってるから、相手もそれを読んだ技をこちらに打ってくるわけでね……」

凛「う、うん。何を話してるのかよくわからないけど……私もう行くから、話はまた今度ね」

杏「ちょっとまって凛ちゃん!」ガシッ

凛「ええっ?」

杏「話が面白いのはここからだよ。サイクル戦では相手がどのタイプを後から出してくるかの読みが必要となる。そしてどちらが先に攻撃できるのか、どの技を選択すれば絶対に相手を倒すことができるのかといった調整が必要になることもある。そんな戦いの中で高火力で交代先に負荷をかけるという最もシンプルな戦術が……」

凛「だから、さっきから何言ってるか全然わかんないって。もう行くって言ってるでしょ、私に意地悪してるの?」

杏「意地悪はしてない、妨害してるだけ!」

凛「それ意地悪じゃん!」

杏「ち、違うんだって、杏にだっていろいろと事情が……」

杏(なんで杏がこんな面倒くさいことしなくちゃいけないんだぁ!)


ガチャッ

卯月「おはようございますー……」

杏「!」

凛「卯月?」

卯月「え、凛ちゃん! あ、やだ……」サッ

凛「どうしたのそのボサボサの頭。まさか、ちょっと見ないうちに新しい髪型に?」

卯月「いえ、そういうわけじゃなくて……」

凛「わ、悪いことは言わない、前の髪型に戻したほうが卯月は可愛いよ。だってそれって、まるで寝癖みたいだし……」

卯月「寝癖でもこんなひどいことにはなりません!」


──レッスンルーム──

加蓮「あれ、私が一番乗り。凛が先に来てないのって珍しいなぁ」

ガチャッ

楓「おはようございます、加蓮ちゃん」

加蓮「あ、楓さん。おはようございます」

楓「ふふ、場所を間違えたわけではありませんよ。加蓮ちゃんたちに伝えることがあってここに来たんです」

加蓮「伝えること?」

楓「今日のトライアドのレッスンですが、少し時間を遅らせて開始することになりました。奈緒ちゃんにもそうお伝えください」

加蓮「え……なんでそんなことに?」

楓「卯月ちゃんの寝癖が大変だから。それが理由です」クスッ


──事務所──

凛「……ふーん、なるほど。楓さんがそんな悪酔いを」

卯月「はい。なんとかプロデューサーさんのところまで連れてくことができたんですけど、ご覧の通りの髪型で……」

凛「仕事前にそんな酔い方するなんて珍しいね。ていうか、初めて聞いたなぁ」

卯月「凛ちゃん、櫛を持ってないですか。私、家に忘れてきてしまって」

凛「うん、あるよ。でも今ここで直すの? 鏡がないと難しくない?」

杏「確かに1人だと難しいかもね」ボソッ

凛「……」

卯月「……」

凛「……私がやってあげよっか」

卯月「い、いいんですか?」

杏「いいに決まってるよねぇ、凛ちゃん?」

凛「そ、そりゃまあ、そのぐらい別にいいけど」


サッ サッ サッ

凛「……懐かしいな。卯月の髪をこうやって触るのって、だいぶ久しぶりな気がする」

卯月「そうですね。私も凛ちゃんの優しい手つきが、とても懐かしいです」

凛「優しいって……それはだって、私はハナコのブラッシングとかもやり慣れてるし」

サッ サッ

凛「それに、花屋で花を触る時なんかはいつも細心の注意を払ってるから、多分そういうのが手つきにも出てるんだと思う」

杏「へぇ。つまりそのぐらい気を使って大事に、卯月ちゃんの髪の毛を触ってるんだ」

凛「え、あ……」カァー

卯月「ふふ、ありがとうございます、凛ちゃん!」

凛「もう……」


サッ サッ サッ

凛「……そろそろ時間だ。ごめん卯月、私もう行かなくちゃ」

卯月「はい。ありがとうございました。少しの間でしたけど、また凛ちゃんに髪を触ってもらえて、とても懐かしい気持ちになれました」

凛「うん……」

ガチャッ

楓「時間なら大丈夫よ、凛ちゃん」

凛「あれ、楓さん」

楓「プロデューサーに頼んだの。今日の練習は少し時間を遅らせてほしいって」

凛「! な、なんでそんな勝手なことを!」

楓「大丈夫。加蓮ちゃんたちにはちゃんと断りを入れておきました。いいじゃないですか、別に練習時間は減ってないんですから」

凛「いや、でも……」

楓「歳下の凛ちゃんには私の粗相の責任を取る義務があるんです。卯月ちゃんの髪をしっかり梳かしてあげてください」

凛「え……」


楓「さ、杏ちゃん」チラッ

杏「……」コクッ

楓「私たちはそろそろお暇させていただきます」

杏「仕事の時間だねぇ。あー面倒くさい面倒くさい」

スタスタ… ガチャッ

卯月「……」

凛「……」

卯月「お酒ってあんなにすぐ抜けるものなんですね」ポカーン

凛「つ、突っ込みどころそこなの?」


サッ サッ サッ

凛「でもまあ、任されたからには最後まで卯月に付き合うけどさ」

卯月「すみません、私のせいでこんなことになってしまって」

凛「卯月のせいじゃないでしょ。ほら、頭を動かさないで」

卯月「はい……」

サッ サッ

凛「……いつの日からか、私がこうやって卯月の寝癖を直すの、ぱったりやらなくなったよね」

卯月「はい。私もだんだん慣れてきて、忙しい朝でも1人で髪型を整えられるようになったから」

凛「そっか……。1人でできるようになったっていうのは、嬉しいことだね」

卯月「はい……」

凛「でも……少し寂しくもあるかも。って言ったら、変かな」

卯月「え?」


サッ… サッ…

凛「少し前に、事務所のコーヒーメーカーが新しくなったこと、卯月は知ってる?」

卯月「えっと、はい。買い換えたんですよね、もう古くなっちゃったから」

凛「今のコーヒーメーカーは以前のものに比べて、操作が簡単で、しかも美味しいんだ」

凛「事務所のみんなも、プロデューサーも、全員喜んでる。でも私は、実を言うと少し寂しかったりする」

凛「早くて美味しいんなら、それに越したことはないはずなのに。コーヒーに使っていた時間が1分短くなれば、私は1分早くレッスンルームに迎えるのに」

凛「それでも、お湯が沸くのを待ってる間にみんなと話していた時間とか、手間をかけてプロデューサーに入れたコーヒーの色とか、そういうのを思い出すと」

凛「ときどき胸のあたりが、ぎゅーって痛くなるんだ」

卯月「……」

卯月(同じだ、私と……)


凛「それに文句があるってわけじゃないよ。時間が経つってそういうことだから。今はいろんなものが進化して、たくさんのことが分かってる」

凛「髪の整え方や、コーヒーの早い淹れ方だけじゃない」

凛「どのアイドルをどの方向性で推せば人気になるのか、どのユニットで固めればどの層が満足するのか」

凛「そういうのも多分、もう大方の答えは分かっているんだ」

卯月「……」

凛「でもそれが、それぞれの道に進むってことなんだと思う。文系と理系で別れるように、人がより活躍できる場を見極めてさ」

凛「私と卯月の組み合わせは、きっとその正解の側じゃないんだ。だから今は、別々の場所で仕事をしてる」

卯月「……そう、なのかもしれませんね」

凛「……ごめん。私、ひどいこと言ってるよね」

卯月「そんなことありません、やっぱり凛ちゃんは優しいです」エヘヘ


凛「……本当にごめん。昨日杏と卯月の話をしてから、いろいろと考え過ぎちゃって」

卯月「いえ、私も最近よく考え事をします。考えても、その考えを言う機会がないと、全部一気に吐き出しちゃいたくなりますよね」

凛「うん。なるべく口を閉じてるつもりでいるんだけど、卯月の前だと難しいみたい」

卯月「正直なところが凛ちゃんのいいところですよ。だから、私に話してもらえるのはすごくありがたいです」

凛「だけど、自分の気持ちを卯月に吐き出す雑談の時間も、今はないんだ。仕事で忙しいし、コーヒーはほんの数分で淹れ終わっちゃうから」

卯月「……何か、雑談をする理由があればいいのかもしれませんね」

凛「何かって?」

卯月「例えば今みたいに、髪を梳かしている時間の暇つぶし、みたいな」

凛「でも、髪を梳かすのにも理由がいるでしょ」

卯月「髪を梳かす理由?」


──翌日──

美穂「いい朝だなぁ。今日はちょっとだけ早く事務所に向かおうかな」

美穂「もう誰か来てるかもしれないし……ん、あれは?」

卯月「……」コソコソ

美穂「卯月ちゃーん!」

卯月「あ、美穂ちゃん」ビクッ

美穂「素敵なお帽子だね。新しく買ったの?」

卯月「ううん、元から家にあったやつなんだけど……」

美穂「ふふ、いいお天気だもんね。その気持ちわかるなぁ」

卯月「えへへ、違うんだ。実は」ヒョイッ


ボサッ

美穂「わっ、すごい寝癖!」

卯月「これを隠すための帽子なの」

美穂「今日の朝は特別忙しかったのかな? でも、その割にはまだまだ早い時間なような」

卯月「ううん、違うの。この頭はただの理由なんだ」

美穂「理由?」

卯月「髪を梳かす理由」

美穂「……?」

卯月「じゃあね美穂ちゃん。今日もお仕事、一緒に頑張ろうね」


──事務所──

卯月「おはようございます」ガチャ

凛「遅いよ卯月」

卯月「凛ちゃん、もう来てくれてたんですか」

凛「うん。どんな頑固な寝癖が相手でも大丈夫なようにね」クスッ

卯月「もー、凛ちゃんったら。これでも私、結構自分の髪質を気にしてるんですよ」

凛「……私は好きだよ」

卯月「え?」

凛「卯月のふわふわの髪の毛。触ってると心地いいから」

卯月「……」キョトン

凛「ほら、この椅子に座って。帽子はもうとっちゃって大丈夫だから」ポンポン


凛「うーん……」

卯月「どうしたんですか? あ、もしかしてこのカットクロス逆でした?」

凛「あ、いや違くて。髪を梳かせばいいとは言っても、単純にストレートにすればいいってわけじゃないしなぁって思って」

卯月「?」

凛「だって卯月の髪って、ウェーブがかかってるのが魅力の一つでしょ。寝癖の状態からどのくらい直そうか、悩んじゃうなぁ」

卯月「……ふふ、ふふふっ」

凛「え、私何か変なこと言った?」

卯月「いえ、ただそんなに真剣に悩んでくれてるのが、ちょっと面白くて」

凛「もう、私は卯月のためを思って考えてるんだよ」

卯月「ふふ、ありがとうございます。でも、もっと気楽にやってもらって大丈夫ですよ」

凛「えー、そうかな?」

卯月「そうですっ」

凛「そうかなぁ?」


サッ サッ サッ

凛「……この間、新しい曲の音源を初めて聞かせてもらったんだけどさ」

卯月「えっ、新曲ですか、おめでとうございます」

凛「ふふ、ありがとう。でね、その曲のサビの部分がとあるアニソンに似てたみたいなの。そしたら……」

卯月「そしたら?」

凛「奈緒がさ、手元の歌詞を無視して、うっかりそのアニソンの方の歌詞を歌っちゃったんだよ」

卯月「あははっ。奈緒ちゃん、うっかりさんですね」クスクス

凛「奈緒、顔真っ赤にして謝ってたなぁ。ぼーっとしてたわけじゃないらしいから、本当につい口からこぼれ落ちたって感じなんだけど」

卯月「ふふふ。でもそれは、アニメのことが本当に好きなんだって証拠だと思いますし、単なる失敗談じゃないような気がします」


サッ サッ サッ

凛「だよね。私も同じ風に思った。だから、奈緒はそっちの仕事に対してはどう考えてるのかなって気になっててさ。コスプレとか、声優とか」

卯月「奈緒ちゃんなら大活躍できそうですね」

凛「好きこそものの上手なれとも言うし。奈緒が乗り気なら、きっと今後はそういった仕事も増えていくんじゃないかな」

卯月「いいですね、趣味が仕事の強みになるって、素敵です」

凛「あ、実は私も……まあ、趣味とは少し違うけど、えっと、花を扱ってる雑誌から声がかかってきてるんだ」

卯月「えっ。凛ちゃんすごい!」

凛「正確には私と夕美の2人にだけどね。特集みたいなのを組んでもらえるらしくて、柄にもなく今から緊張気味なんだ」

卯月「えへへ。素敵な報告ですっ」


サッ サッ サッ

凛「卯月の方はどうなの。ピンチェでの活躍はもちろん耳に入ってるけど、個人的な活動みたいなものは?」

卯月「実は、とあるネイルのハンドモデルに選ばれて……」

凛「ネイルのハンドモデル? へぇ、すごいね。でもちょっとイメージとは違うかも」

卯月「とあるテレビ番組できらりちゃんと共演した時、私もネイルをしてもらったんです。その時の放送が意外にも反響を呼んだみたいで」

凛「ギャップ萌えってやつなのかな。ふふ、応援するよ卯月」

卯月「ありがとうございますっ」

凛「そうだ、あのね……」

卯月「はいっ……」


サッ サッ…

凛「……よし、終わり。多分これで、いつもと同じ感じだと思うから」

卯月「いいえ。きっといつも以上に、髪がツヤツヤしてると思います」ニコッ

凛「……」

卯月「?」

凛「……えっと、そろそろみんな事務所にくる頃だよね。みんなが来る前に片付けなきゃ」クルッ

卯月「はい。ありがとうございました、凛ちゃん」

凛「ううん、こっちこそ。私の雑談に付き合ってくれてありがとう」

卯月「うふふ。どういたしまして」

凛「そして……また明日だね」

卯月「はい、また明日!」


卯月(それから私は、毎日のように凛ちゃんに髪を梳かしてもらいました)

卯月(凛ちゃんは、最近身の回りにあったことを雑談という形でたくさん私に教えてくれました)

卯月(懐かしいやり取りに、私も凛ちゃんも自然と口数が多くなってはいたけれど)

卯月(しかし、この時間がいつまでも続くとは、お互いに思っていなかったのです)

──試着室──

加蓮「……うーん、今月のお小遣い結構ピンチかも」ジャラッ

ガチャッ

美穂「あ、加蓮ちゃんだ」

加蓮「美穂おはよう。ピンチェで着る衣装?」

美穂「そうなの。卯月ちゃんと響子ちゃんはもう確認したみたいだから、私が最後に見に来て……」

加蓮「ふふ、ちょうど独り言をしてたからかな、卯月の名前が出たね」

美穂「?」


パチンッ

美穂「……なるほど。それで加蓮ちゃん、お小遣いがピンチだって」

加蓮「悪いね。美穂にも負担してもらうつもりは全くなかったんだけど……」

美穂「気にしないで。私も卯月ちゃんの困ってる姿を見ていたし、力になれて嬉しいよ」

加蓮「最近は仕事で一緒になることが多いんでしょ。どんな感じ、卯月は?」

美穂「卯月ちゃんは本当にいい子だよ。笑顔が可愛くて、等身大に明るくて、近くにいると安心できる、そんな存在」

加蓮「なるほど。つまり、私の知ってる卯月と同じってわけだ」クスッ

美穂「卯月ちゃんは卯月ちゃんだもん。それはどこでだって、いつだって変わらないよ。一緒に仕事ができて、本当に良かったって思ってるんだ」

加蓮「ふふ。卯月と一緒にいれて楽しくてしょうがないって感じだね」

美穂「伝わってるかな、私の気持ち」

加蓮「もちろん。そのためのプレゼントなんだから」


──事務所──

ガララッ

凛「それじゃあ、今日も始めようか」

卯月「はいっ」パサッ

ガチャ

加蓮「おはよう凛、卯月」ニコニコ

凛「加蓮?」

加蓮「ふふ、楓さんから聞いた通りの寝癖ヘアーだね」

卯月「あっ……」サッ

加蓮「隠さなくても大丈夫。卯月のために今日は早起きしてやってきたんだから」

卯月「私のため?」

加蓮「うん。凛がいつもお世話になってるお礼だよ」チャカッ

卯月(そう言って加蓮ちゃんが取り出したのは、小型のスチームドライヤーでした)


加蓮「3人でお金を出し合って買ったんだ。どんな寝癖でも一瞬で直っちゃうすごいドライヤーなの」

卯月「……」ポカーン

加蓮「性能がいいから、値段は結構張っちゃったんだけどね。それでも卯月にはいつもお世話になってるからさ。私と奈緒で協力して買おうって」エヘヘ

卯月「……」

加蓮「そしたら美穂も手伝わせて欲しいって言ってきて。ふふ、卯月は本当にいい友達を持ったね」

卯月「……」

加蓮「卯月?」

凛「加蓮、ありがとう。でもこの髪を見られるの恥ずかしいみたいだから、一旦事務所から出よっか」

加蓮「何言ってるの、そんな時こそこのドライヤーの出番なんじゃん。ほら、凛が使ってあげなよ」

凛「……卯月」

卯月「……お願いします、凛ちゃん」


ブーン…

凛「……」

加蓮「ほら、もう終わり。すごいでしょ、マイナスイオンか何かも一緒に出るらしいから、キューティクルにも良いんだって」

卯月「……ありがとうございます、加蓮ちゃん」ニコッ

加蓮「ふふ、お互い様だよ。私も卯月の存在にはいつも助けられてるんだから」

凛「……」

加蓮「それじゃ凛。レッスンルームもう空いてるらしいから、準備が終わったらすぐ来てね、練習するよ」ガチャッ

シーン

卯月「こんなに唐突に終わっちゃうものなんですね」

凛「ねえ卯月。卯月さえ良ければ私は……」


卯月「ダメですよ」

凛「……どうして?」

卯月「だって、今の私たちにはドライヤーがあります。櫛で髪を梳かす理由がないじゃないですか……」

凛「理由って、そんなの……」

卯月「……」

凛「……ごめん」

卯月「こちらこそごめんなさい。それと、今までありがとうございました」

卯月(それから1週間。私と凛ちゃんは顔を合わすことすらありませんでした)


──エントランス──

楓「……近頃はよくこの場所で会いますね」

卯月「楓さん……」

楓「でも実を言うと、2回目のあれは偶然ではなく待ち伏せだったんです。そして、3回目の今日も」

卯月「楓さんには、いろいろと気を使っていただいて……」

楓「ううん、余計なお世話をしちゃったみたいね。加蓮ちゃんから聞きました、ドライヤーの話」

卯月「……」

楓「でも加蓮ちゃんは悪くない、それだけはわかってあげてください。悪いのは、勝手なお節介を焼いてしまった私だけです」

卯月「……加蓮ちゃんも楓さんも悪くないことなんてわかってます。そしてきっと、誰が悪いとかそういう話じゃないんです」

卯月「だって、私も凛ちゃんも分かっていたんですから。あんな昔みたいな時間が、ずっと続くわけないんだって……」


楓「……今、事務所には凛ちゃんが1人でいます」

卯月「……!」

楓「またプロデューサーに頼んで、トライアドのレッスンを後ろ倒しにしてもらったんです。でも、こんな無理なお願いができるのも今日で最後でしょう」

楓「凛ちゃんの元へ行ってください。そして、2人の気持ちをもう一度確かめて合ってきてください」

卯月「……」

楓「卯月ちゃん、頑張って」

卯月「……はい」

タタタッ…

楓「……ねぇ卯月ちゃん。こんなちゃらんぽらんな私ですけど、あなたの気持ちは痛いほどわかっているつもりなんですよ」


楓「最速の方法が手元にあって、最善の答えがすでに用意されてる。それって辛いことですよね」

楓「歩くより自転車の方が速いんです。会うより電話の方が早いんです。今の時代、いろんなことが分かりきってて、それを実現するだけの土台が整ってしまっている」

楓「しかもそれらは毎日進化をし続けていて、自転車より自動車の方が速く、電話よりメールが便利な世の中になってきています」

楓「だから、そうでないことをするときに、そうでないことをするための理由が必要になってしまう」

楓「自動車があるのになぜ歩くのか。メールで済ませればいいのになぜ会おうとするのか」

楓「非効率的なことには全て理由が求められます」

楓「そしてそれはきっと、アイドルにおいても同じなんです」


楓「あのアイドルを推せば黒字が出るのに、なぜこのアイドルに出番を与えるのか」

楓「あのユニットの方が人気があるのに、なぜこのユニットを使う必要があるのか」

楓「あの組み合わせの方が批判が少ないのに、なぜこの組み合わせを選んだのか」

楓「全部全部、理由を求められます」

楓「私たちはそれを咎めることはできません。だって私たちは常に与えられる側で、使われる側で、選ばれる側だから」

楓「そしてそれが最善の答えである以上、私たちに勝手な身動きなんて許されるはずかない」

楓「時間が経つとはそういうことです」

楓「……でもね卯月ちゃん」

楓「そんな中でも、自由になれる道はきっとあるの……」


──事務所──

ガチャッ

卯月「……」

凛「卯月、おはよう」

卯月「おはようございます、凛ちゃん」

凛「久しぶりだね。なんだかんだ、1週間以上顔を見れてなかった気がする」

卯月「……はい」

凛「それじゃ、ここに座って。髪を梳かす準備はもう出来てるから」

卯月「でも……髪を梳かす理由がありません」

凛「ここまで走ってきたでしょ。髪、ボサボサだよ。それとも、あのドライヤーを持ち歩いてるの?」

卯月「あ、いえ……」


サッ サッ サッ

凛「この1週間、何かあった?」

卯月「いえ、特に何も……凛ちゃんの方はどうでしたか?」

凛「あったよ。大きなことが」

卯月「へえ……あ、前に言ってた花の雑誌のお仕事ですか?」

凛「ううん。そんなんじゃない」

ピトッ

卯月「……?」


卯月「凛ちゃん……? その、指が唇に……」

凛「動かないで」

卯月「え……」

凛「……」

スッ

卯月「!!」

凛「……」

卯月「……」


──廊下──

ツカツカ

加蓮「おかしい。絶対におかしい」

加蓮「どうしてまた練習が後ろ倒しになるの。どう考えてもありえないでしょ」

加蓮「卯月にはドライヤーがあるんだから、もう絶対に寝癖なんてつかないんだよ? それに……」

 楓『今凛ちゃんは卯月ちゃんの厨二病の手当てで忙しいんです。卯月ちゃんだけに、右腕のうづきが止まらないみたいで、ふふっ』

加蓮「あの報告絶対に嘘でしょ! 全く、楓さんも何考えてるんだか!」

加蓮「……はぁ。とか言ってるうちに事務所に着いたね。さて、本当は2人が何してるのかを暴いて──」

杏「ちょーと待った」

加蓮「……?」

杏「おはよう加蓮ちゃん。少しだけ杏の世間話に付き合ってもらってもいいかな?」


──事務所──

凛「……」

卯月「……」ドキドキドキ…

凛「……うん。だいたいわかった、卯月の体温」パッ

卯月「……へ? た、体温?」

凛「うん。唇は人間の体の中で血行が一番いい場所だから、人の体温を割と正確に測ることができるんだ。って、全部奏が言っていたことの受け売りだけどね」

卯月「……」ポカーン

凛「どうかした?」

卯月「い、いえ。でも、どうして急に私の体温を?」

凛「暑い時には冷たいコーヒーが、寒い時には暖かいコーヒーが美味しいと思って」


卯月「コーヒー?」

凛「髪の前にそっちを先にしよっか。それじゃあ卯月、一旦カットクロス脱いじゃって」

コポコポコポ…

卯月「……あれ、このコーヒーメーカー、前に置いていたものじゃないですか?」

凛「うん。水を沸騰させるのに3分もかかる骨董品だよ」クスッ

卯月「新しいものはどうしたんですか?」

凛「新しいのは、壊れたんだ」

卯月「え……」

凛「あまりに便利で、みんなが毎日使ってたから」


卯月「誰かが倒してしまったってことですか?」

凛「ううん、ある意味寿命だったんだろうね。最新型と言っても、たくさん使えばいつかは壊れちゃうもん」

卯月「……」

凛「ねぇ、卯月」

卯月「はい」

凛「私たちは、正しいことは変えられない」

凛「コーヒーは早く美味しく淹れた方がいいに決まってるし、寝癖は早くキレイに直した方がいいに決まってる」

凛「ニュージェネよりピンチェやトライアドの方が売れるなら、私たちはそれに従わなくちゃいけない」

凛「それが人として、アイドルとして、社会人として、当たり前の選択だから」


凛「だけど……正しいことの先には、解答のない選択肢がきっとあるんだ」

凛「新しいコーヒーメーカーが壊れた時、それを買い直すのか、古いのを再利用するのかは、私たちの自由。そうでしょ?」

凛「卯月がもらったドライヤーも、毎日使い続けていれば壊れてしまうときが絶対にやって来る」

凛「そして、その時ドライヤーを買い直すのか、私に櫛をお願いするのか、その選択は卯月の自由なんだ」

卯月「……」

凛「私たちが今別々なのは、それが正しいことだから。だけど、その正しい答えだって、壊れるときはいつかやって来る」

凛「正解だった価値観がなくなった時、初めて私たちは自由になれるんだ」

凛「だからお願い……」

凛「もう2度と、”今までありがとうございました”なんて言わないで」

卯月「……」

コポコポコポ…

卯月(お湯が沸くまでの間、私と凛ちゃんはずっと目を合わせ続けました)


──事務所前──

杏「でね、当然技の威力をあげる道具にはそれ相応の制約が加わるんだよ。例えば技を打つたびにダメージを受けたりとか、使える技がひとつきりに絞られたりね。でも、いわゆるドーピングな副作用があったとしても、それを使うことによって試合の展開を優位に進められることが多くなって……」

加蓮「わ、わかったから。いや、全然わからないけど、わからないことがわかったから! その話は奈緒とかの方が多少詳しいだろうし、もういい加減に……」タジタジ

ガチャッ

凛「扉の前で何してるの、2人とも」

卯月「あ、危ないですよ?」

杏「凛ちゃん、卯月ちゃん」

加蓮(助かったぁ……)ホッ


凛「ほら加蓮、行くよ。時間が後ろ倒しになったとはいえ、自主練はもうできるんだし」

加蓮「え、でも厨二病の手当てがあるって」

凛「何言ってるの? 今蘭子は関係ないでしょ、ほら急ごう」スタスタ

加蓮「あ、うん。えっと卯月、お大事にね」

タタタッ

杏「……いいの、卯月ちゃん?」

卯月「はい、凛ちゃんとしっかり話し合うことができました。杏ちゃん、ありがとうございましたっ!」ペコッ

杏「うむ。卯月ちゃんは後で、杏にキャンディー10個を献上するようにっ」


美穂「卯月ちゃーん!」タタタッ

卯月「あ、美穂ちゃん!」

美穂「あのね、響子ちゃんがサンドイッチを作ってきてくれたんだ。だから、卯月ちゃんのことも呼びに来たのっ」

卯月「そうなんだ。ふふ、嬉しいなぁ」

美穂「今日は午後から一緒のお仕事だね。私と卯月ちゃんと響子ちゃんの3人で!」

卯月「うん、一緒に頑張ろうね!」

美穂「おーっ」

アハハ…


──大学──

女子「お化粧が崩れてしまいました。卯月ちゃん、一緒に化粧室に行きましょう」

卯月「いいですけど、できればコンセントあるところがいいんですが」

女子「うちの大学の化粧室は、どこでもコンセントがあったはずですよ。何か使うんですか?」

卯月「はい、ドライヤーを使おうと思って」

女子「へぇ。気合いが入ってますね」

ブーン

女子「あ、それ知ってます。今人気のやつですよね、結構お値段の張る……」

卯月「友達からプレゼントしてもらったんです。寝癖直しもヘアメイクも簡単にできるので、すごく助かっています」

女子「それはそれは……いい友達を持ちましたね」

卯月「はいっ」ニコッ


女子「しかし、最近のピンクチェックスクールは、以前に増して魅力が出てきたように思います」

卯月「え、本当ですか?」

女子「はい。このままだと私、トライアドから卯月ちゃんに乗り換えちゃいそうです」

卯月「なんですかそれ」フフッ

女子「魅力が増すきっかけが何かあったんですか」

卯月「うーん、強いて言えば、心構えが変わったのかもしれません」

女子「なるほど、プロ意識というやつですね?」クスッ

卯月「そうとも言うのかも」フフッ


卯月「でも、何か特別な出来事があったいうわけではないんですよ。ただ、凛ちゃんに……」

女子「渋谷凛ちゃん?」

 凛『もう2度と、”今までありがとうございました”なんて言わないで』

卯月「……」

卯月「私は、今の自分にやれることを精一杯やろうって思っているんです」

女子「……」

卯月「これから先どうなるのか、何かが変わるのか、それは私に決められることじゃないけれど」

卯月「”また一緒だね”って、凛ちゃんと笑いあえる日は、いつかきっと来てくれるはずだから」


卯月「だから島村卯月は、今日も1日を全力で頑張ります」

卯月「美穂ちゃんとおしゃべりして、響子ちゃんといっぱい笑って、プロデューサーさんとたくさん仲良くなって」

卯月「家に帰ったらママのお手伝いをして、大学の宿題を済ませてから、明日のためにぐっすり眠って」

卯月「そうして翌朝にできた寝癖を、私はドライヤーで直すんです」



おわり


お疲れさまでした

見てくださった方、ありがとうございました


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