【ミリマス】765学園物語 √RRR (490)

…朝が来た

そろそろ目を覚まさないといけない時間だろうか?

だが俺は、布団から出たくない

P「…おやすみ」

そう呟くと俺は再び心地良い眠りの世界へと意識を沈める

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1476108063

「ちゃん」

…声が聞こえる

「お…ちゃん」

おっちゃん?

「お兄ちゃん」

誰かが俺を呼んでいる

「遅刻しちゃうよ」

遅刻なんてどうでもいい、俺はこのまま布団という生涯の友と人生を共にするのだ

「はあー、ほんと…」

声の主が去って行った、邪魔者がいなくなり、俺は再度意識を手放そうとするが…

「えい!」

ゴス

P「いってぇ!?」

なにか固い物で頭を殴られ、あまりの痛みに強制的に意識が覚醒する

P「な、なんなんだ一体!」

「やっと起きた」

部屋を見渡すと広辞苑を片手に呆れた顔でこちらを見ている女の子が目に入った

「おはようお兄ちゃん、ちゃんと起きれたね」

P「起きれたけどさ…広辞苑の角で叩くのはやめようぜ桃子」

桃子「知らない、お兄ちゃんが起きないのが悪いんでしょ?」

この子は桃子、我が家の三人姉弟の末っ子だ

P「まったく…それにしたってもう少し優しく起こしてくれてもいいだろうに」

桃子「それでお兄ちゃんが起きるならね。でもお兄ちゃん絶対起きないでしょ」

P「…そんなことないぞ」

桃子「はい嘘」

P「ぐぬぬ…でもな桃子、頭は危険だからやめてくれ、記憶を失ったらどうするんだ」

桃子「そんなの迷信だよ…でも、一応気を付けるね」

P「そうしてくれ」

桃子「そんなことより早く着替えて降りてきてよ、お姉ちゃんが怒ってるよ」

P「それはまずいな 」

「やっと起きてきたわね、はやくお皿並べてくれないと冷めちゃうわよ」

P「ごめん、すぐ用意するよこのみ姉さん」

この小っさい人はこのみ姉さん。こんななりだが学園では教師で俺の姉だ、こんななりだが

このみ「ちょっと、今凄く失礼なこと考えたでしょ」

P「まさかぁ」

このみ「ぐぬぬ…」

P「とりあえず皿だすけどさ…そろそろ収納場所変えたら?届かないんだし」

このみ「前に私が提案したらあんたが面倒臭がってお流れになったんだけど?」

P「…ソウダッタカナー」

テーブルに料理を並べ、席に着く

このみ「早く食べましょ、新学期早々遅刻したくないでしょ?」

P「そうだな」

桃子「桃子も新学期早々遅刻なんてやだし」

このみ「はい、それじゃあ」

「いただきます」

三人で朝食を摂る、両親は出張でいないので我が家には現在この3人しかいないのだ





P「ご馳走様」

このみ「食器は流しに置いておいてちょうだい、帰ったら洗うから」

P「了解」

鍵をかけて三人で家を出る

桜の咲いた通学路を歩いていると

「あ!見つけた!」

P「」ビクッ

あいつの声が聞こえた

恐る恐る振り返ろうとするが、振り返る前に

「P~~~~!」

P「ごふっ」

背中に衝撃が走った

「おっはよう!今日も良い天気だね!」

P「う、海美」

海美「このみさんも桃子も、おはよう!」

桃子「おはよう海美さん。そんなことよりいきなり飛び付いたら危ないよ」

海美「それもそうだね!」

P「気を付けてくれよ?」

海美「うん!」

今背中に飛び付いてきたのは高坂海美

家が隣同士で親同士仲が良く、赤ん坊の頃からお互いを知っている謂わば幼馴染みというやつだ

性格は猪突猛進で体を動かしていないと気が済まない騒がしい奴だ

P「ほら、降りろ降りろ」

海美「は~い」

P「まったく…俺がもし避けてたらどうするつもりだったんだ?」

海美「大丈夫!Pは優しいからきっと私を怪我させないために避けないって信頼してるから!」

P「う…ま、まあ…な」

海美「えへへ…やっぱりPのそういうところ大好き!」

P「…お、おう」

桃子「…」ギュッ

P「いてっ!何するんだ桃子!」

桃子「別に、お兄ちゃんがデレデレしてたから」

P「べ、別にデレデレしてない!」

桃子「ふんだ」

桃子「こんなとこで時間かけてちゃ遅刻しちゃうから桃子先行くね」

P「あ、桃子!」


「おはよう桃子ちゃん」

「おはようももこ!」

桃子「おはよう、育、環」

このみ「私達も行きましょ」

海美「そうだね」

P「なんなんだ一体」

しばらく進むと校舎が見えてきた

俺達の通う小中高大一貫の巨大学園、765学園が…


このみ「それじゃあ二人とも、私はこっちだから」

海美「このみさん!またね!」

P「ああ、頑張って」

校門で別れる俺達

このみ姉さんは教職員玄関へ、俺と海美は高等部へ向かう

海美「私達もはやく教室いこ!」

P「先にクラスを見てからだろ?あと腕を組むのはやめなさい」

海美「え~」

海美「同じクラスだったね!」

P「そうだな」

クラス表を確認し、俺達が向かったのは高等部2年のAクラスだった

教室に入るとどうやらみんな好き勝手に座っているようだ

P「席は好きに座って良いみたいだな」

海美「じゃあ私はPの隣!」

P「…騒がしくしないならな」

海美「うん!」

「…なんだ、またお前らと同じクラスか、これで何年連続だ?やれやれ、たまには離れたいぜ」

「とか言ってるけど、冬馬くんさっきクラス見て喜んでなかったっけ~?」

「喜んでなんかねえよ!捏造するんじゃねえ!」

P「何年連続…か、初等部からずっと一緒だったから10年くらいか?冬馬、翔太」

翔太「そのくらいだね~。あ、僕は今年もPくん達と同じクラスで嬉しいよ!」

P「翔太は素直だな~、それに比べてこっちは…」

冬馬「な、なんだよ」

翔太「ほんと、冬馬くんって友達がいないよねー」

冬馬「うるせえ!俺にだって友達くらい!」

翔太「あれ?僕は友達甲斐、ないよねーって言ったんだけど?どう捉えちゃったの?」

冬馬「ぐぬぬ…」

P「ま、冬馬を弄るのはこのくらいにして」

P「俺も二人と同じクラスで嬉しいよ、今年もよろしく、冬馬、翔太」

冬馬「おう」

翔太「よろしく~」

P「他に知ってる奴は…」

「だ~れだ!」

P「うわっ!」

突然後ろから目隠しをされる

「にゃはは」

P「この声は…恵美か!」

恵美「せいか~い」

俺の後ろから出て来たのは所恵美、去年知り合ったのだが何かと縁があり、よく一緒に遊んだりしている

恵美「やー、また同じクラスだね~アタシは嬉しいよ」

P「嬉しいのはわかったから肩に体重をかけるな、重い」

恵美「…P~?女の子に重いなんて言うもんじゃないよ~?」

P「ちょ!恵美!」

恵美「ほれほれ~」

恵美がヘッドロックをかけてきた

拘束されて苦しいのもあるが恵美の胸の柔らかさや良いにおいのせいで顔が紅くなる

P「め、めぐみ」

海美「むー!めぐみー引っ付きすぎ!」

恵美「にゃははごめんごめん」

P「た、助かった」

ようやく解放されたが顔は熱を持ったままだった

海美「Pもデレデレしすぎ!」

P「お、おう、なんか悪いな」

海美がなぜ怒っているのかわからないが、一応謝っておく


翔太「Pくんは鈍感だな~」

冬馬「ん?おい翔太、もしかして高坂ってPのことが好きなのか?」

翔太「え?今気付いたの?初等部の頃から丸分かりだったのに」

冬馬「マジかよ知らなかったぞ」

「恵美、そろそろ先生が来る頃だから席に着いたほうがいいわよ」

騒いでいると、赤みがかった長髪の女子生徒がやってきた

田中琴葉さんだ

恵美「あ、もうそんな時間?」

琴葉「うん、だから怒られる前に戻った方が良いと思う」

恵美「はーい。…あれ、エレナは?」

琴葉「まだ来てないみたい、さっき電話したけど繋がらなかったから」

恵美「寝坊かな」

琴葉「だと思う、起こしてあげれば良かったかな?」

ガラッ!

その時、教室のドアが勢いよく開いた

「セ、セーフだヨー!」

緑の髪の女の子が息を切らして入ってきた

琴葉「もう、ぎりぎりよ?」

エレナ「ゴメンネコトハ!あとおはよう!」

琴葉「おはようエレナ」

恵美「おはよー!」

エレナ「メグミ!おはよ!」

琴葉「先生来るから、早く席に着いた方が良いわよ?」

エレナ「自由に座って良いんだよネ?じゃあコトハの隣!」

琴葉「もう、エレナったら…ふふ」

P「そろそろ先生来るこれかな」

冬馬「誰が担任なんだろうな」

P「うちの学園は美人揃いだからな、楽しみだ…このみ姉さんだったらやりにくいな」

冬馬「全くだぜ」

翔太「えっ、冬馬くん女の人に興味あったんだ…!」

冬馬「どういう意味だ!」

P「ははは」

海美「むー…」

横で海美が膨れている

何故だ

ガラッ

扉が開き先生が入ってきた

P「お」

「…」

冬馬「男か…」

「…」

先生は教壇に立ったまま俺達を見回した、そして…

「ふん、見事にへっぽこ揃いではないか」

そんなことを口にした

P「へ、へっぽこ?」

「貴様達には覇気が無い、他人を蹴落とし、喰らってでも頂点に立とうとする執念もなくただ与えられるのを待っている家畜も同然だ」

その発言で教室がにわかに騒がしくなる

「騒ぐな」

琴葉「あの、黒井先生」

黒井「…む、誰かと思えば琴葉ちゃんではないか、どうした?」

琴葉「去年と同じ事態になる前に自己紹介をお願いします」

黒井「ふん、いいだろう」

あの人黒井って言うのか…顔は陰がかかっててよく見えない

黒井「このへっぽこ2-Aを担当することになった黒井崇男だ」

黒井「貴様らは幸せだ、何故なら、この765学園の貴公子たる私に担任をしてもらえるのだからな」

黒井「私がこのクラスを担当する以上、Bクラスの高木やCクラスの美城に負けることは許さん」

負けるって一体何にだ

黒井「だが安心するがいい、貴様らがいかにへっぽこであろうと、その気があるのなら私が最高の生徒にしてやる」

黒井「さあ、私についてくるがいい」

………

なんなのなのこの人…

黒井「…ふん、とりあえず出席をとる、呼ばれたら返事をしろ」

黒井「尼崎龍馬」

冬馬「誰が尼崎龍馬だおっさん!俺は天ヶ瀬冬馬だ!」

黒井「私に名前を覚えて欲しくば私を貴様の存在を私に認めさせてみるが良い」

黒井「次は転入生を紹介する」

転入生?珍しいな

この765学園は初等部から大学までの一貫校だ

転入生もいないわけではないが、大抵学級が変わる頃に受験して入ってくることがほとんどなのであまり見かけることはない

一体どんな子が…

黒井「入りたまえ」

「はい」

転入生が扉を開けて入ってきた

息を飲むほど美しい銀の髪、芯の通った佇まい、そして…

黒井「自己紹介を」

「はい」

「本日よりこの学園へ転入して参りました」










貴音「四条貴音と申します、何卒、よろしくお願いいたします」









一旦ここまで
この頃はまだ設定が定まってなかったのでこのみ姉さんが大学部だったり、美希が高等部だったりしたので統一しました
一応他にも加筆修正をしているので、実質リメイク作です
無印を読んでくれた人も、これから765学園物語を読む人も、楽しく読んでくれたらと思います

四条貴音

そう名乗った彼女は優雅な動作で礼をした

黒井「貴音ちゃんの席だが…一番後ろの、あのへっぽこの後ろが空いている、あそこに行きたまえ」

貴音「はい」

皆が四条さんを見ていた

貴音「よろしくお願いいたします」

P「あ、ああ…よろしく…」

透き通るような声で挨拶され、思わず緊張してしまう

海美「すっごく綺麗な人だね」

海美が小声で話し掛けてくる

P「ああ」

黒井「この後は体育館で全校集会がある。その後は解散だ、部活に行くなり自習するなり好きにするがいい」

黒井「移動しろ」

俺達は体育館に移動した

順一朗「諸君、私は君達の元気で成長した姿を見られて嬉しいよ」

教壇で学園長の高木順一朗先生が挨拶をしている

P「そういえば俺、高木先生の顔って見たことないな…」

P「なあ、冬馬は見たことあるか?」

冬馬「いや、俺もねえな…まあ学園七不思議の一つだし今更だけどな」

P「それもそうか」

一部の教師は顔がまったく見えないので、学園七不思議の一つとして噂になっている

その後教師陣から新年度の注意事項があり、退屈な全校集会は終わった

冬馬「今日はこれで終わりか」

P「だな」

全校集会の後HRがあり、そこで黒井先生からの注意事項と無駄な嫌味を受けようやく放課後になった

冬馬「どっか遊びに行くか?」

P「俺は構わないぞ?」

この後特に予定もないし

P「海美と翔太はどうする?」

翔太「あ、ごめん僕ダンス部の練習があるからさ」

冬馬「ん?初日から部活あるのか」

翔太「うん」

P「てことは…海美も陸上部か」

海美「うん、ひびきんも行くって」

P「そうか、残念だな」

翔太「また誘ってよ」

P「ああ」

冬馬「二人だけか…所も島原もいないしどうしたもんかな」

恵美とエレナは既に帰ったのか、姿は見えなかった

P「男二人で遊ぶのもなぁ」

冬馬「だな…」

P「あ、そうだ、せっかくだし四条さんでも誘ってみるか?」

冬馬「四条ならもう帰っていないぞ」

P「早いな…」

冬馬「引っ越してきたばっかだろうし家の手伝いでもあるんじゃねーの?」

P「あー、なるほどな」

冬馬「まあ遊びに行くのはまた今度で良いか」

P「そうだな」

冬馬「じゃあ俺も帰るわ」

P「おう、お疲れ、帰りに綺麗なお姉さんを見つけてもストーキングするなよ~」

冬馬「誰がやるかそんなこと!」

P「あ、そうだったな、格好いいお兄さんを見つけてもストーキングするなよ~」

冬馬「上等だ、表に出やがれ」

P「冗談だよ」

冬馬と別れた俺は、グラウンドを見下ろしていた

野球部やサッカー部など、様々な部活動が練習をしている

俺は特にこれと言った部活動もなかったので帰宅部だが、練習をしている姿は楽しそうだった

P「…せっかくだし陸上部の練習でも見に行くか」

何故かはわからないがそう思った俺は、途中の自販機で飲み物を買ってグラウンドに向かった





陸上部の面々が練習をしている近くまで来る

少し見渡すと海美が響と一緒に走っているのを見つけた

とても楽しそうだ

P「海美は昔から本当に楽しそうに走るよなぁ」

良く転んだので何度も手当てしたっけな

幼いころから楽しそうに走る幼馴染みを思い出し、自然と頬が緩む

視線に気付いたのか海美がこっちを見た

遠目でもわかるくらいに笑顔が弾け、こっちに走ってきた

海美「どうしたのP?陸上部見に来るなんて珍しいよね」

P「ちょっと予定が空いたからな、せっかくだし見に来たんだよ」

海美「そうなんだ!」

「海美~急に走りだしたからびっくりしたぞ~」

少し遅れて同じく陸上部員の我那覇響もやってきた

P「よう響」

響「あれ、Pじゃないか、久しぶりだな!」

P「ああ」

響「Pが陸上部見に来るなんて珍しいぞ」

P「それ、海美にも言われたよ」

響「そっか」

P「ま、ちょっと暇になったから立ち寄っただけだよ。ついでに、差し入れだ」

俺はついさっき自販機で買ったジュースを二人に渡した

響「わ、これ自分の好きなシークヮーサー!」

P「響が好きだったのを覚えてたからな」

響「ありがと!」

P「海美はポカリだったよな」

海美「うん!ありがと、大好き!」

P「おう」

P「じゃあ俺はそろそろ帰るよ」

海美「え~、もうちょっとゆっくりしていけば良いのに」

P「あんまり居ても邪魔になるだろ」

海美「私は気にしないのに」

P「海美が良くても周りもそう思うとは限らない、男にジッと練習を見られるのが嫌な子だっているかも知れないしな」

海美「ちぇ~」

響「海美は本当にPのこと好きなんだね」

海美「うん!」

P「まあそういうことだから俺は帰るよ」

海美「うん…」

響「じゃあP、また明日!」

P「おう響、また明日な」

「…」

P「ん?」

校門を出るとき、誰かの視線を感じた

少し見渡してみるがそれらしい影はなかったので気のせいだったか

そんな風に考えていると、俺の横を中等部の子が歩いて行った

その生徒の鞄につけられている少し汚れた黒い猫のキーホルダーが視界に入り、それが何故か少し気になった

P「?」

何故それが気になったのかはわからないが、俺はそのまま帰路についた

鍵開けて家に入る

P「ただいまー」

桃子「おかえり」

家に帰ると、既に桃子が帰宅していた

階段を上って部屋に戻る

P「さてと…」

俺は服を着替えてパソコンの電源を入れた

P「さっさとレベルを上げてしまわないとな」

冬馬に勧められたオンラインゲームのランチャーを起動する

普通のMMORPGなのだが、オンラインゲームをあまりやったことのない俺にとってはネット上で色んな人と一緒に遊べるゲームは新鮮だった

ログインをしてフリカンのメンバーリストを開く

P「お、今日もvivid_rabbitさんとlily_knightさんがいるな」

vivid_rabbitさんとlily_knightさんは以前冬馬と二人でインスタンスダンジョンに行ったときに一緒のパーティーになった人達だ

どうもサブジョブのレベリング中だったらしく、動きが初心者丸出しだった俺達に色々教えてくれた

その後、フリカンに誘われてお世話になっている

P「こんにちは…っと」

vivid_rabbit『こんにちは!』

lily_knight『こんにちは!』

P「相変わらずタイピングが早いな」

burizardo_pegasasu『こんにちは!』

P「今日はどうしますか…っと」

vivid_rabbit『サブのレベルが60になったので別のロールのレベル上げをしようと思っています』

P「早いな…昨日寝る前はレベル50だったのに」

lily_knight『あ、じゃあ私も暗黒のレベル上げしないといけないからレベリングダンジョン行きませんか』

burizardo_pegasasu『良いですね、ロールはどうしますか?』

vivid_rabbit『DPS出します』

lily_knight『私はタンクです』

P「なら俺はヒラ出すか…」

vivid_rabbit『じゃあ、行きましょう』

みんなでダンジョンに潜ってレベリングをする

レベルが2程上がったところで冬馬の父親が帰ってきたらしく、冬馬はクラフト放置をして離席した

P「早くイシュ行きたいなぁ」

そんなことを考えていると

コンコン

部屋のドアがノックされる

桃子「お兄ちゃん、ご飯出来たって」

もうそんな時間か、ゲームしてるとあっという間だな

P「わかった、すぐいく」

俺はvivid_rabbitさんとlily_knightさんに離席の旨を伝え、クラフト放置をしている冬馬のキャラクターの目の前で紳士の舞のエモートを使ってから、リビングに降りていった

P「良い湯だった」

夕飯後、放置している冬馬を中心に大体10人くらいの人が紳士の舞をしている所を笑いながらスクショし、ログアウトした

風呂にも入り後は寝るだけだが…まだ寝るには少し早い

P「漫画も全部読んじまったからな…」

どう退屈を紛らわすか考えていると

ガラッ

部屋の窓が開けられた

P「…」

カーテンを開けると

海美「こんばんは」

隣の家の窓から、海美が身を乗り出していた

一旦ここまで

海美「とりあえず入るよ」

P「しょうがないな」

俺は窓から離れた

海美「ありがと。…ほっ!」

海美は窓の桟に足をかけ、俺の部屋に飛び込んできた

海美「到着ー」

P「お前ホント俺の部屋が好きだな?」

海美「うん、大好き!」

P「そうかい」

海美の部屋は俺の部屋の窓から行き来出来るほど近く、幼い頃はよく行き来していた

中等部になってから俺は行かなくなったが、海美は未だに俺の部屋にやってくる

海美「んー、Pのベッドだー」

P「あ、こら…海美のベッドとそんなに変わらないだろ?」

海美「そんなことないよー、Pに抱っこされてるみたいで暖かいー」

P「そ、そうか…」

海美「…クー」

P「こら起きろ、寝るなら自分の部屋で寝ろ」

海美「けちー、小さい頃は一緒の布団で寝たりしてたのに」

P「昔の話を持ち出してどうする。ほら帰った帰った」

海美「ちぇー」

渋る海美の背中を押して帰れという意思を伝える

そして海美が自分の部屋に戻ったのを確認し窓を閉めようとした時、海美が声をかけてきた

海美「ねえP」

P「ん?」

海美「おやすみ、また明日」

P「ああ、おやすみ、また明日」



結局ベッドに海美の匂いが残っている気がして、柄にもなくドキドキしてしまった

…朝が来た

そろそろ目を覚まさないといけない時間だろうか?

だが俺は、布団から出たくない

P「…おやすみ」

そう呟くと俺は再び心地良い眠りの世界へと意識を沈める

桃子「いや、そういうのいいから」

P「嫌だーまだ眠いんだよー」

桃子「いいから起きてよ」

P「お前は、お兄ちゃんのかけがえのない友との仲を引き裂こうというのか」

桃子「ていうかそこまで抵抗出来るならもう起きてるのと変わらないでしょ」

桃子「まだぐずるつもりなら広辞苑持ってくるよ」

P「ちくしょー…」

無慈悲にも脅迫してきた桃子に屈し、渋々布団から出て準備を始めた

P「眠い」

冬馬「なんだ、夜更かしでもしたのか?」

P「そういう訳じゃないんだが」

寝付けなかっただけだ

翔太「あるよねー、ちゃんと寝たのに眠い時って」

P「不思議だよなー、まあ逆に寝過ぎても眠いんだけどさ」

冬馬「規則正しい生活してればそんなことにはなんねーだろ」

P「正論なんだけど冬馬に言われると腹立つ」

翔太「だよねー」

冬馬「何でだよ!?」

そんな話をしていると

貴音「みなさま、おはようございます」

四条さんが登校してきた

P「おはよう、四条さん」

冬馬「おう」

翔太「おはよー」

貴音「…?P殿、少しお屈みを」

P「俺?」

貴音「はい」

突然四条さんが頭を触ってきた、少しくすぐったい

貴音「取れました」

P「あ、頭に花びらがついてたのか。ありがとう四条さん」

貴音「いえ…」

ドサッ

奇妙な音が聞こえたので音がしたほうを見ると

海美「」

海美が呆然とした表情で立ち竦んでいた

P「おー、海美おはよ」

しかし返事がない

冬馬「翔太」

翔太「これは構図的に誤解しても仕方なくない?多分Pくんが言っても聴かないだろうし、後で説明しとくよ」

冬馬「助かる」

P「何の話しだ?」

冬馬「うるせー馬鹿」

P「?」

その後昼休みまで海美の機嫌が悪かったが…一体何だったんだろうか

退屈な授業を終えた昼休み、楽しい昼食の時間だ

P「さーて、昼にするかー」

冬馬「今日はどうすんだ?購買か、学食か」

翔太「僕は学食いくよ、今日は新しいラーメン出るらしいし」

貴音「…らあめん」

冬馬「じゃあ学食で良いんじゃねーか?」

P「そうだな」

海美「異議なし!」

どうやら学食で決まりのようだ。俺はあることを思いついたので提案してみた

P「四条さん、良かったら一緒に学食行かない?」

貴音「わたくし、ですか?」

P「うん、せっかくだし」

貴音「わかりました、ご一緒させていただきます」

765学園は学食に力を入れており、レストラン顔負けの豊富なメニューが特徴だ

中でも中華料理は特別力が入っていて、メニューには満漢全席すら存在している

P「翔太は新作ラーメンだったな」

翔太「うん、僕は席取ってくるから」

冬馬「任せたぜ」

海美「何食べよっかな~」

貴音「…」

P「四条さんは何を食べるの?」

貴音「そうですね、わたくしは…らあめん、でしょうか」

P「そうなんだ、てっきり和食かと思った」

それぞれの注文が届く、が

P「あれ、四条さんのまだ来てないな」

四条さんの注文した料理はまだ届いていなかった

貴音「わたくしのことはお気になさらず、先に食べてください」

冬馬「そうか、悪いな」

海美「いただきまーす」

翔太「これが新作ラーメンか~」

貴音「御手洗殿、良い選択をしましたね」

翔太「貴音さん、僕は翔太でいいよ、みんなそうだし」

貴音「そうですか、ならば翔太、良い選択をしましたね。スープは塩をベースに豚骨を加えた塩豚骨、そして仄かに香る柚子の香り…恐らく刻んだ柚子を麺に練り込んでいるのでしょう」

翔太「わ、ほんとだ、柚子の味がする」

冬馬「すげえな四条…匂いだけでわかるのか」

P「匂いだけでそこまでわかるものなんだなぁ」

海美「ね、ね、Pのそれは?」

P「これか?これは二階堂精肉のコロッケを使ったコロッケ定食だよ」

海美「前からあったっけ?」

P「確か前年度末あたりに出たはずだ、俺達は去年は購買がメインだったから知らないのも無理はないな」

P「俺だって間島に聞いて初めて知ったくらいだし」

ちなみに間島というのはBクラスにいる俺の友人で、筋肉モリモリマッチョマンの変態だ

海美「そっか!ね、ね、一口ちょうだい?」

P「良いぞ、持ってけ」

海美「あーん」

P「…」

海美「あーん」

P「…」

海美「あーん!」

P「仕方ないな、ほら、熱いから気を付けろよ」

海美「熱いならふーふーしてほしい!」

P「…」

仕方なくコロッケに息を吹き、冷ましてやる

P「ほら」

海美「ん!美味しい!」

P「そりゃ良かった」

海美「私のも一口あげるね!」

P「野菜炒めか、それじゃあ一口だけ」

海美「はい、あーん」

P「いや、自分で」

海美「あーん」

P「…」

海美「あーん!」

このままだと退いてくれなさそうなので、大人しく口を開けた

P「…あーん。…あっちぃ!」

熱い!

海美「どう?美味しい?」

P「熱いわ!」

海美「えへへ~」

海美が照れたように笑う

貴音「ふふ、P殿と高坂嬢は仲が良いのですね」

海美「うん!私Pのこと大好きだから!」

P「まあ幼馴染みだしな」

冬馬「翔太」

翔太「冬馬くんが何を言いたいのか僕には良くわかってるよ」

P「けど本当うちの学食って豪華だよな」

冬馬「二階堂精肉、木下農園、天空橋養豚場、佐竹飯店…他にも色んなところが協力してるんだろ」

翔太「ここより豪華な学食ってそうそうないよね~」

貴音「なんと!それは真、素晴らしいですね」

のんきな話をしていた、その時だった

「わっほ~いお待たせしました~!醤油ラーメンと塩ラーメンと鳥白湯と豚骨と醤油豚骨と味噌と赤味噌と担々麺とワンタン麺と新作ラーメン、全部特盛り、です!」

ズドン

P「…え?」

突如四条さんの前に置かれた大量の麺・麺・麺…ラーメン尽くしだった

冬馬「な、なんだよ…これ」

貴音「いただきます」

一旦ここまで

申し訳程度に志保さんのシーンを追加
普段は鞄に入れているキーホルダーを敢えて見せつけるように鞄につけて横を通り過ぎました
なおPは引っ掛かったものの思い出すには至らず

あんまりスレ内で詳らかに裏事情書かれても冷めるしtwitterで書いててほしいかな…

言うが早いか四条さんはラーメンに手をつけ始めた

P「ていうか四条さん、こんな量食べきれるのか?」

貴音「はて」

どんぶりを置く四条さん

P「!?」

冬馬「もう一杯食った…だと…」

特盛りのラーメンはあっという間に空になっていた

翔太「えっ…なにこれ…手品?」

そうしてる間にも四条さんはどんぶりを次々と空にしていった

貴音「真、美味でした」

すべてのどんぶりを綺麗に空にした四条さんは満足げにそう言った

冬馬「すげえな…色んな意味で…」

P「驚いたよ、ほんと」

海美「貴音さん凄いね!」

翔太「これだけ食べられるなんてね~」

冬馬「四条ならこの学食で未だ誰一人成し遂げられなかった佐竹スペシャルも食えそうだな…」

佐竹スペシャルか…名前は知っているけど実物は見たことが無い

P「っと、そろそろ戻らないと」

翔太「あ、そっか、次は移動教室だっけ」

冬馬「そうだった」

海美「次の授業なんだったっけ」

P「音楽だったはず」

翔太「音楽室遠いから、早く戻ろうよ」

俺達は食器を返し、音楽室へ向かった

放課後

P「あー、本当に降ってきたな」

外を見ると雨が降っていた

冬馬「夕方から降るかもって言ってたしな」

海美「え~、雨?じゃあ今日は陸上部お休みか~」

翔太「ダンス部は室内だから大丈夫だね」

P「部活と言えば…四条さんはどこか部活に入ったりするのか?」

貴音「そうですね…まだどのような部活動があるか把握できておりませんのでまだなんとも…」

P「あ、それもそうか…」

765学園は部活が多い、四条さんは転校してきたばかりなのにちょっと無神経だったか

貴音「ただ、昨日茶道部に誘われましたので見学していこうと思います」

P「茶道部か」

冬馬「良いんじゃねーか?」

翔太「貴音さんならよく似合いそうだね」

翔太「それじゃあ僕行ってくるから」

冬馬「おう、またな」

P「また明日」

海美「ばいば~い!」

貴音「では、わたくしも失礼いたします」

P「うん、また明日」

冬馬「じゃあな」

海美「貴音さん、またね!」




冬馬「さて、どうすっかな」

P「雨降ってるしどこかに行く気にはなれないな」

冬馬「なら解散でいいか、今日は父親が早く帰ってくるから早めに飯作らないとな」

P「そっか、じゃあまた明日」

冬馬「おう」

海美「あまとうまたね!」

冬馬「あまとう言うな!」

P「さて、俺達も帰るか」

海美「うん!…あれ?」

海美が鞄を探りながら首をかしげる

P「どうした?」

海美「え?あ、あはは~…傘忘れちゃった」

P「おいおい…」

海美「どうしよう」

P「…しょうがないな、ちょっと狭いけど一緒に入るか?」

海美「!うん!」

雨の降る中一つの、傘をさして二人で歩く

P「大丈夫か?濡れてないか?」

海美「肩がちょっと濡れちゃったけど、こうすれば平気!」

そう言いながら俺の腕に抱き付いてくる

P「あ、こら抱き付くな」

海美「こうやって詰めたら、私もPも濡れないよ!」

P「まあ、そうだけどさ」

ちょっと恥ずかしい

海美「えへへ」

海美が腕に頭を擦り付けてくる

P「こら、頭を擦り付けてるな」

海美「Pの腕温かい~」

P「お前は小さい頃から甘えん坊だな」

色んな所が成長してるんだからもう少し自重してほしい

海美「こんなことするの、Pだけだもーん」

P「…」

雨が少し強くなり始めた頃、俺達は家の前に到着した

P「あまり濡れてないだろうけど帰ったらちゃんとシャワー浴びて体を温めろよ?風邪引いても知らないぞ」

海美「風邪引いたら、看病に来てくれる?」

P「…ん、まあ」

頬をかきながらそう答える

海美「じゃあ頑張って風邪引く!」

P「おいこら」

海美「あ、それとも私が風邪引かないように一緒にお風呂入る?」

P「はいらない」

海美「え~」

P「えーじゃない、じゃあな」

海美「ぶ~!けち~」

海美と別れ家に入る

湯船に浸かって身体を温め、部屋に戻ると

海美「あ、おかえりー」

何故か海美がベッドに寝転がって漫画を読んでいた

風呂上りだからか、ノースリーブにハーフパンツといったラフな格好をしている

髪は乾かしていないようだ

P「お前は…」

海美「ちゃんと風邪引かないようにシャワー浴びたよ!」

P「髪乾かさないと意味ないだろ?ほら、ついてこい」

海美の手を取り脱衣所に連れて行く

海美「うん!」

海美を鏡台の前に座らせ、ドライヤーをセットする

P「熱かったら言えよ?」

海美「うん」

ドライヤーと櫛で海美の髪を乾かしていく

小さい頃から何かと海美の世話を焼いてきたが、髪を乾かしてやるのは久しぶりな気がする

海美「Pにこうやってもらうの、久しぶり」

P「だな」

海美「やっぱり良いな~、これ」

海美の髪を乾かした後、部屋に戻る

俺は鞄から今日の課題を取り出した

一直線にベッドに向かって漫画を読んでいた海美は

海美「あれ、それ何?」

と聞いてきた

P「数学の課題、今日出ただろ?」

海美「…………そんなのあったっけ?」

P「あったよ」

机に向き直ると、部屋の窓が開く音がした

海美が部屋に戻ったのだろう

邪魔さえしなければ部屋にいても構わないのだが、一人の方が集中できるのは間違いない

課題に取り掛かろうとした瞬間

海美「P!一緒にやろ!」

海美が課題を手に戻ってきた

P「仕方ないな」

クローゼットから折り畳みの椅子を持ってくる

海美は椅子に座ると課題と向き合い…

海美「…」

机に突っ伏した

P「こら、突っ伏したら頭が邪魔で腕が動かせないだろ」

P「邪魔をするなら帰れ」

海美は僅かに顔を上げると

海美「お願い…教えて」

と素直に言った

復習も兼ねて海美に教えながら課題を進めていく

P「ここがこうなるってことはこの式は…」

チラリと海美の方を見る

P「!」

ラフな格好をしているためか海美の胸元は無防備で、ピンクの下着が見えていた

海美「どうしたの?」

P「い、いや、なんでもない」

こんな罠が潜んでいたとは…

不意打ちを受けた為か、この後はあまり集中出来なかった

海美「終わった~!」

P「ああ…」

二人揃ってぐったりする

海美「なんでPもぐったりしてるの?」

P「気にするな」

理由を言えるわけが無い

海美「とにかくありがとう、やっぱりP大好き!」

P「そうかい」

この後海美は部屋に戻った

P「…はあ」

海美は幼なじみだ

そりゃ確かに最近はかなり女の子っぽくなってきてるけど…

それでもやっぱり手の掛かる妹のようなものだ

だから恋愛感情なんてない…はず

P「寝よ寝よ」

悩んでも仕方ない

今は寝るとしよう

ゴールデンウィークが近付いてきた昼休み

恵美「そういやさ」

食堂でパスタを食べながら恵美が聞いてくる

恵美「P達はゴールデンウィークどうすんの?」

P「ゴールデンウィークか」

冬馬「俺は特に予定はねーな」

翔太「僕もかなー、ゴールデンウィークはダンス部もお休みだし」

海美「私も」

恵美「じゃあさ、みんなでキャンプ行かない?」

貴音「キャンプ、ですか」

冬馬「おい所、ゴールデンウィーク中のキャンプなんて正気か?行きも帰りもごった返して疲れるだけだぞ」

恵美「でもキャンプはまとまった休みがないといけないじゃん」

冬馬「確かにそうだがそれなら夏休みで良いだろ?ゴールデンウィークだと川に入るにしてもまだ早いしな」

恵美「そっかな~、良いアイディアだと思ったんだけど」

P「まあキャンプはまた今度にしよう」

翔太「ゴールデンウィークは普通に集まって遊ぶで良いんじゃない?」

冬馬「まあ無難なとこだな」

恵美「うーん、そだね、そうしよっか」

ゴールデンウィーク、どうやって過ごそうかな

冬馬「じゃあな」

P「おう」

冬馬と別れ、帰路につく

何処かに行きたいとか、そういうのはないが…

P「ま、ゴールデンウィークに入ってから決めるか」

そしてゴールデンウィーク初日

俺は惰眠を貪っていた

誰にも邪魔をされない至福の時間

しかしその至福の時間は

海美「起きて!」

呆気なく壊された

P「!?」

突然布団が剥ぎ取られる

海美「起きて起きて!」

そして激しく揺さぶられた

P「お、起きてるからぁ…」

海美「おはよ!ご飯出来てるよ!」

突然の出来事に混乱したが、目が覚め冷静になって海美に問いかけた

P「それよりも何で海美が俺の部屋にいるんだよ…」

海美「あれ、言ってなかったっけ?私のお父さんとお母さんが旅行行ってて、家に私一人だからゴールデンウィークの間Pの家に泊めてもらうって」

P「初耳なんだが…」

海美「とにかくゴールデンウィークの間、お世話になるね!」

P「まあ俺は良いけど」

海美「それじゃあ下行こ?朝ご飯出来てるから」

P「わかった」



このみ「おはよう寝ぼすけ」

桃子「…」

P「おはよう…桃子なんか機嫌悪くない?」

桃子「別に、お兄ちゃんには関係ないから」

P「お、おう、そうか…」

桃子「ふんだ」

P「…?」

このみ「それじゃあ皆揃ったところで」

「いただきます」

このみ「そういえば海美ちゃんがうちに来るのは久しぶりね」

海美「ご無沙汰してました!」

このみ「せっかく泊まりに来てるんだし、ゆっくりしていってね」

海美「はい!」

P「あ、そうだこのみ姉さん、海美が泊まりに来るって教えてくれなかっただろ」

このみ「あ、今日から海美ちゃんうちに泊まりに来るから。はい、教えたわよ」

P「事後報告じゃないか!」

このみ「良いじゃない、私が許可したんだから」

P「くそっ…ちっこいくせに…」

このみ「あぁん?」

P「なんでもありません」

海美「相変わらずこのみさんと仲良いねー」

P「そうかぁ?」

桃子「…」

海美「桃子、どうしたの?」

桃子「別に、どうもしないよ」

海美「うーん…」

P「…」

海美と桃子は何故か昔から折り合いが悪い

海美は桃子に積極的に話し掛けたりしているんだけど、桃子のほうがそれを拒否しているようだ

嫌ってるわけではなさそうなんだが…

桃子「ご馳走様」

このみ「お粗末さま」

桃子「それじゃあ桃子、出かけてくるから」

P「いってらっしゃい、あんまり遅くならないようにな」

このみ「いってらっしゃい」

海美「いってらっしゃーい」



海美「私、桃子に嫌われてるのかな~」

P「どうなんだろ」

このみ「大丈夫、桃子ちゃんは海美ちゃんのこと嫌いじゃないわよ」

海美「本当?」

このみ「ええ、だって桃子ちゃんは嫌いな相手は無視するもの。だからちゃんと受け答えしてる以上嫌われてないわ」

海美「そっか…でもなんであんなに素っ気ないんだろ」

P「それは俺も気になる」

このみ「具体的な理由は秘密だけどあえて言うなら…拗ねてるのよ」

P「拗ねてる?何に?」

このみ「秘密って言ったでしょ?自分で考えなさい」

海美「うーん…」

このみ「私も出かけてくるから、もし出かけるなら戸締まりよろしくね」

P「わかった」

海美「この後どうするの?」

P「普段なら冬馬や翔太を誘ってどこかに遊びに行くが…今日はそんな気分じゃないな」

海美「じゃあ今日は一日家でのんびりしよっか」

P「お前がそんなこというの珍しいな」

海美「だってせっかく二人っきりだもん、一緒にごろごろしたい!」

P「ま、それでもいいか」

海美「やった!」

P「まあごろごろするだけってのも退屈だからゲームでもするか?」

海美「うん」

P「じゃあ部屋から取ってくる」

海美「あ、P」

P「ん?」

海美「わざわざ取りに行かなくても、Pの部屋でやろうよ」

海美「ベッドにダーイブ!」

P「お前がそれするとベッドメイク面倒なんだぞ」

海美「えへへ、ごめんごめん」

P「何やる?」

海美「うーんと…あ、このゲームは?」

P「ああ、つい最近発売されたアイドルマスターの最新作アイドルマスタープラチナスターズだな」

海美「これで良いよ」

P「一人用だけど、交代でプロデュースしていけば良いしな」

海美「この最新作アイドルマスタープラチナスターズって面白い?面白いなら私も買おうかな~」

P「中々面白いぞ?最新作アイドルマスタープラチナスターズ」

それから数時間、俺と海美はプラチナスターズ以外にもゲームをとっかえひっかえしながら遊んでいた

そしてあるゲームを遊んでいるとき、肩に重みを感じた

海美「…スー…スー…」

P「…寝ちまったか」

海美「…スー…」

P「…仕方ないな」

俺は寝ている海美を起こさないように、ゆっくりと海美の頭を俺の膝の上に乗せた

P「硬い膝で悪いな」

海美「んん…」

起こさないように海美の頭を撫でる

海美が起きるまで、穏やかな時間を過ごした

一旦ここまで

とりあえず>>76さんの言う通りここに裏話を書いても冷めるだろうし、そういうのはTwitterのみにしてますのでご理解を

ゴールデンウィーク二日目

P「暇だ」

海美「だね」

俺と海美はリビングで転がっていた

P「あいつら誘ってどこかに遊びに行くか」

海美「賛成!」




冬馬「で、釣りに行くのか?」

P「ああ」

翔太「釣りか~…僕あんまりやったことないんだよね」

海美「大丈夫、そんなに難しくないよ!」

貴音「釣った川魚を川原で捌いて食べる…中々に風情がありますね」

P「あれ、四条さんいつからそこに」

冬馬「気が付いたら後ろにいたんだよ」

翔太「あの時の冬馬くんのびびりかた、かなり面白かったよ」

P「マジかよ見たかったな」

冬馬「お前らな…」

俺達の住んでいる町から少し離れた所に綺麗な川がある

俺達はそこを目指して歩いていた

冬馬「ん、先客がいるな」

P「本当だ、珍しいな」

二人組の女の子が並んで糸を垂らしている

P「場所を変えるか」

冬馬「あそこが一番釣れるんだが…仕方ねえな」

俺達は別の釣り場を探して移動する

良さげなスポットを見つけたので、準備を始める

冬馬「ほら、翔太」

翔太「うん」

海美「貴音さん、こうやって」

貴音「なるほど…」

みんなが思い思いの場所で釣りを始めた

俺は特に気にせず、海美の隣に座った

海美「みんなでこうやって釣りするの久しぶりだね」

P「そうだな…釣りはやらなくなってたからな」

海美「いっぱい釣って帰って桃子とこのみさんと一緒に食べようね!」

P「ああ」

冬馬「お、来たな!」

冬馬の竿に魚がかかったようだ

冬馬「うっし、釣れた!楽勝、だぜ!」

P「冬馬のくせに…」

翔太「ね~」

冬馬「どういう意味だ!」

海美「あ、私も来た!」

翔太「僕もかな!」

貴音「わたくしの竿にもかかったようです」

P「おいおい俺もだ」

皆の竿に一斉に魚がかかる

冬馬「一気に来るなんて珍しいな」

「ち、千早さん!竿に動きが」

「落ち着いてエミリー、落ち着いて竿を引くのよ」

「は、はい」

P「向こうも当たってるな、今日は入れ食いか?」

冬馬「これだけ釣れるなら…そうだな、提案があるんだが」

P「却下」

冬馬「聞いてもないのに却下するんじゃねえ!」

P「まあどうせくだらないと思うけど?聞いてやるよ」

冬馬「なんつう上から目線だよ…まあいい」

冬馬「勝負しねえか?」

翔太「勝負?」

冬馬「おう、釣った魚の数で勝負するんだ」

P「勝負ねぇ…」

冬馬「一番少なかった奴が罰ゲームで1週間学食奢りでどうだ?」

P「随分自信があるじゃないか、後悔するぞ」

冬馬「へっ、一番最初に釣ったのは俺だからな!今日は俺に風が吹いてるから楽勝、だぜ!」

P「面白い、吠え面かかしてやるぜ」

翔太「冬馬くんの奢りなら満漢全席行ってみようかな」

冬馬「もう勝った気でいるのか?甘いな翔太」

冬馬「高坂と四条はどうする?」

貴音「わたくしは構いません、天ヶ瀬冬馬の奢りだと言うのなら遠慮なく頂きましょう」

海美「勝負!勝負!勝負なら負けないよ!」

冬馬「全員参加だな、それじゃあ勝負開始だ!」

そういって冬馬は竿を握り直した

…だが

冬馬「…なあ」

P「なんだ」

冬馬「お前らの魚、増えてる気がするんだが」

翔太「冬馬くんが喋るのに夢中になってる間僕等は釣り続けてたからね~」

P「この結果は当然のものです(キリッ」

俺はC組の武内の真似をする

翔太「ぶふっ!!」

すると翔太が噴き出した

冬馬「くそっ、卑怯だぞ!」

P「卑怯は」

翔太「褒め言葉」




それから1時間ほど釣りを続けたが…

P「あれだな」

海美「?」

P「今日釣れすぎじゃないか?」

翔太「そうだね~」

貴音「昼食には困りませんね」

大量にかかる魚たち、ここまで一気に釣れるのは初めてだ

チラリと冬馬の方を見る

冬馬「…」

冬馬のバケツには魚が一匹入っていた

P「冬馬く~ん、釣れてるカナー?」

冬馬「うるせえ!」

昼を少し回った頃、腹が鳴った

P「昼飯にするか」

翔太「さんせ~」

冬馬「俺は魚を捌くからよ、Pと翔太は火を熾してくれ」

P「わかった」

冬馬「高坂は俺が捌いた魚に串を通す、四条は皿を用意してくれ」

海美「は~い」

貴音「はい」

冬馬が慣れた手つきで昼食を用意する

俺達は昼食が出来るのを楽しみにしながら、それぞれの準備を進めていった

釣りたての魚は美味かった

太陽が西に傾き、世界があかね色に染まり始めた頃、俺達は帰る準備を始めた

P「さてと」

冬馬「…」

翔太「冬馬くん、結果発表しようよ」

冬馬「…そうだな」

あの後も俺達は釣れ続けた

…冬馬を除いて

P「一番少ないのは冬馬だな」

冬馬「…畜生、こんなはずじゃ…」

翔太「楽勝、だぜ!(キリッ」

P「ま、まあこんな時もあるって」

冬馬「…」

その時、四条さんが冬馬に話しかけた

貴音「天ヶ瀬冬馬」

冬馬「四条…」

貴音「勝負は時の運…たとえ今は敗北しようとも、次に勝てば良いのです」

冬馬「そうだな…」

貴音「ではわたくしからあなたに一つだけ、言葉を贈りましょう」

冬馬「なんだ?」

貴音「ご馳走様です」

冬馬「…あっ」

冬馬「あ…あああ…!」

ゴールデンウィーク最終日、我が家のリビングは大変賑やかだった

P「ゴールデンウィーク明けのテストに向けて勉強会なんだぞ?」

海美「う~…勉強したくないー…」

恵美「アタシもー…」

琴葉「恵美、せっかくPくんが場所を提供してくれているのに…」

恵美「わかってるけどさ~」

冬馬「へぇ、四条は勉強得意なんだな」

貴音「得意、と言うほどの物ではありませんが…人並みには」

桃子「ねえ、桃子さっきうるさいって言ったよね?」

エレナ「はい…」

翔太「ごめんなさい…」

響「もうしません…」

このみ「賑やかねー」

P「ほら海美、勉強見てやるから」

海美「う~…頑張る…」

恵美「あ、じゃあさ、アタシのも見てよ!」

P「まあ良いけど」

海美「じー…」

琴葉「それじゃあPくん、恵美をお願い。私はエレナを見るから」

P「わかった」

琴葉「ほらエレナ、勉強するわよ」

エレナ「はーい…」

このみ「なら響ちゃんと翔太くんはこのみお姉さんが見てあげるわ」

翔太「お願いしまーす」

響「お願いしまーす」

P「海美は飲み込みは早いのになんで勉強になるとこうなるんだか」

海美「だって勉強つまんないんだもん」

恵美「そーだそーだ!」

P「恵美はわざとやってないだけだろ」

恵美「ソ、ソンナコトナイヨー」

P「バレバレだっての…目立ちたくないから適度に点数抑えてるだろ」

恵美「あ、そこまでバレてるんだ」

P「なんだかんだで見てるしな」

恵美「えっ…そ、そっか…」

恵美が何故か頬を染める

P「?」

海美「…」ギュー

P「いてっ!なんで抓るんだ」

海美「めぐみーばっかりずるい、私も見てよ!」

P「?今こうやって勉強見てるだろ」

海美「そうだけどそうじゃないの!」

P「一体なんなんだ…」

夕方頃

エレナ「もう一生分勉強した気がするヨー…」

冬馬「何言ってやがる島原、人間生涯勉強だぜ」

エレナ「おー、アマトウの癖に良いこと言ったヨ」

冬馬「あまとう言うな!」

海美「も…だめ…死ぬ…」

P「うん、よく頑張ったな、偉いぞ海美」

勉強を終え、瀕死の海美の頭を撫でてやる

海美「あ…えへへ」

頭を撫でられた海美は満面の笑みを浮かべた

恵美「アタシも頑張ったと思うけどな~…チラッ」

P「はいはい、恵美もよく頑張りました」

恵美「へへ~」

桃子「…」

桃子「お兄ちゃん、桃子も頑張ったんだけど」

P「ん?おお、そうか、よく頑張ったな」

桃子「…」

桃子が不服そうにこちらを見ている

P「…どうしたんだ?」

桃子「別に、なんでもない」

P「?」

片付けを終え、皆を玄関まで見送る

琴葉「このみさん、Pくん、今日はありがとうございました」

P「気にしないでくれ」

このみ「こんな家で良かったらいつでも来てね」

琴葉「はい。…じゃあ恵美、エレナ、帰りましょう」

恵美「そだね、じゃあまた明日」

エレナ「またネ!」

エレナ、田中さん、恵美の三人は楽しそうに話しながら帰って行った

翔太「じゃあ僕達も帰るね」

P「おう」

冬馬「明日から学校だぞ、遅れるなよ」

P「わかってるよ。…冬馬」

冬馬「なんだ?」

P「明日から学食だぞ、忘れるなよ」

冬馬「…あっ」

冬馬は真っ白になり、翔太に引き摺られながら帰って行った

貴音「では、わたくし達もそろそろお暇いたします」

響「そだね、帰ろっか」

P「ん?響は四条さんと同じ方角なのか?」

響「うん、詳しい場所は知らないけど近所なんだって!よくうちにご飯食べに来てるぞ!」

P「えっ、平気か?」

響「…」

P「響…」

貴音「はい、響にはお世話になっております」

P「そ、そうか」

響「と言うわけで自分達も帰るぞ!」

P「ああ、お疲れさま」

響「じゃーねー!」

貴音「また明日、学食でお会いしましょう」

P「はは…手加減してやってくれ」

四条さんは響と一緒に歩いて行った…

みんなを見送ってから家に戻るとこのみ姉さんが話しかけてきた

このみ「良い子達ね」

P「だろ?」

このみ「…友達とその思い出、大切にしなさいね」

P「?ああ」

俺達のゴールデンウィークはこうして過ぎていった…

ゴールデンウィークが明け、特にこれと言った出来事のなかった五月が過ぎ去り六月となった

冬馬は四条さんに骨の髄までしゃぶられ、苦手意識を抱いたそうだ

季節は今、春から夏に移りつつある

それは同時に梅雨の到来ということであり、度重なる雨に海美はイライラしていた

海美「あーもう!」

P「どうしたんだ急に」

海美「来る日も来る日も雨ばっかり!運動は出来ないし髪はぼさぼさになるしもうやだ!」

冬馬「梅雨なんだから仕方ないだろ」

P「まあ海美は昔から雨で苦労したからな…主に髪の毛が」

海美「毎朝必要以上に髪を手入れしないとダメだから面倒なの!」

冬馬「そんなもんなのか、女ってのは面倒臭いんだな」

冬馬「やっぱり男のほうがいいぜ」

P「しかし暑いな」

冬馬「湿度が高いからな」

海美「どうせ髪がぼさぼさになるならプール入りたいな~」

P「プールか…そういえばもうすぐプール開きだな」

冬馬「だな」

海美「Pと一緒にプールで泳ぎたいな~」

P「プールの授業は男女別なんだから無理だ」

海美「でも~…一緒に泳ぎたいよ~」

P「仕方ない…夏休みになったら市民プールでも行こう、な?」

海美「ほんと!?」

P「ああ」

海美「やった!デート、デート!」

冬馬「お」

P「?」

スマホを弄っていた冬馬が声を上げる

冬馬「週末の球技大会の日、晴れるってよ」

P「良いな」

海美「やったね!」

P「俺もここ最近の雨のせいで体動かせなかったからな、たまには頑張るとするか」

冬馬「どうせやるなら勝ちにいこうぜ!」

海美「気合い入れていこ-!」

そして球技大会の日

天気は予報通り前日から晴れており、気持ちの良い天気だった

P「冬馬!」

冬馬「っらぁ!」

俺の回したパスを受け、冬馬が敵のゴールにボールを叩き込んだ

冬馬「おっしゃあ!ナイスパスだったぜ、P!」

P「当然、俺達なら」

冬馬「楽勝、だぜ!」

冬馬と拳をぶつけ合う

相手は3年生だったのだが、試合は終始優勢のまま幕を閉じた

冬馬「上級生って言っても大したことねーな」

P「だな」

冬馬「これなら黒井のおっさんの鼻を明かしてやれそうだぜ」

P「男子の部はもらったも同然だな」

冬馬「ああ、Bの間島とCの武内さえ警戒してりゃ後は雑魚ばっかりだからな」

P「問題は女子の方だ」

冬馬「ああ、同学年には我那覇に菊地、横山に上には学園最強と名高い徳川がいやがる」

P「うちにも海美とエレナはいるが…」

冬馬「これは荒れそうだな…そこでだ」

P「ん?」

冬馬「賭けねえか?」

P「は?」

冬馬「だから、どのクラスが勝つかに賭けるんだよ。負けたら学食奢りでどうだ?」

P「冬馬」

冬馬「あん?」

P「ご馳走様」

冬馬「俺が負けるって決め付けんなよ!」

体育館

俺達の出番はまだ先なので女子の競技を見に来ていた

P「…なあ」

冬馬「ん?」

P「…バレーボールしてる女子ってエロいよな」

冬馬「……………」

P「沈黙は肯定と見做すぞ」

冬馬「……………」

P「特にジャンプしたときに裾が捲れて見える臍がさ…揺れる胸も良いけどさ」

冬馬「お前は何もわかっちゃいねえ」

P「なに?」

冬馬「確かに臍も胸も素晴らしい、だがな」

冬馬「本当に見るべきところはな、太腿なんだよ」

P「太腿だと…!?」

冬馬「太腿は人間のラインの中でもっとも美しい部位なんだよ」

冬馬「ヒップから伸びるライン…脚線美って言葉があるくらいだからな」

冬馬「そして何より太腿のもっとも素晴らしいところは…」

冬馬「ひ ざ ま く ら が出来るところだ!!」

P「!!」

冬馬「想像してみろ、自分の彼女に膝枕されているシチュエーションを!」

冬馬「髪を撫でられふと上を見上げる、するとこっちを見て微笑んでいる彼女と目が合うんだ!」

冬馬「最高じゃねえか!」

P「…膝枕か」

冬馬「うちのクラスで膝枕して欲しいなら島原か所、高坂辺りだな」

冬馬「あいつらは知り合い補正を抜きにしても良い肉付きだしな」

P「ふんす!」

ぐさぁー!

冬馬の目に指を第2関節まで抉りこむ

冬馬「ぎゃあああ!目が、目がああああ!!」

P「なんとなくお前に海美をそんな目で見られるのはムカつく」

冬馬「それならさっさと自分のものにしちまえよ…」

冬馬が蹲って呻いている

しかし膝枕か…

海美にはゴールデンウィークにしてやったが…

自分がされているところはあまり想像出来ないな

海美「負けちゃったー…のりさん強かったよー」

翔太「こっちは余裕だったよ」

そんな話をしていると、海美と翔太が戻ってきた

P「ん、おかえり」

冬馬「おお高坂、ちょうどいい」

冬馬が血涙を流しながら立ち上がる

海美「どしたの、あまとう?」

冬馬「あまとう言うな、いや、実はPがお前に膝枕してほしいって言っててよ」

P「は?ちょっと待てお前」

海美「膝枕?うん、良いよ!」

海美「ほら、P」

座った海美が膝を叩く

P「い、いや、俺は」

冬馬「問答無用だ、翔太」

翔太「はいはい」

P「は、離せ!離せ翔太!」

翔太「ごめんね~、でももどかしいからさ~」

二人がかりで拘束され、海美の膝に寝かされる

P「うっ…」

目の前に割と大きい海美の胸がある

下から見上げるようなアングルは初めてで、新鮮だった

海美「…ふふ」

海美が微笑みながら俺の髪を撫でる

…これは…

冬馬「おお…」

翔太「へえ…」

翔太と冬馬の関心するような声が聞こえた

二人きりならともかく、他人にこんな場面を見られていることが恥ずかしくなる

恥ずかしさがピークに達し、俺は起き上がった

P「も、もう十分!」

海美「そう?私はまだまだ物足りないのに」

冬馬「…へたれやがったな」

P「うっせ…それよりも次俺達の番だからそろそろ行くぞ」

冬馬「へいへい」

再びグラウンドに向かう

モヤモヤをぶつけるかのように、俺はサッカーに集中する

海美の膝の感触を頭に残しながら、球技大会は終了した

一旦ここまで

765学園では一年に一度、近所の砂浜を貸し切って学園全体での海水浴を実施している

この時持ってくる水着は特に指定されておらず、学園指定のセーラー水着でも自前の水着でも構わない

しかし毎年過激な水着を持ってくる生徒がいて、問題になっているとはこのみ姉さんの談

そして待ちに待った海水浴の日、幸いにも梅雨は三日前に明けており、元気な太陽が俺達を照らしていた

海美「青い海!白い雲!青い海!やったー!」

海美が元気に砂浜を走り回っている

冬馬「高坂のやつ元気すぎんだろ…」

P「ま、気持ちはわかるけどな」

辺りを見渡す

「どうかしら、春香?」

「千早ちゃん…それは?」

「こうやって水風船を二つ詰めれば私も大きく…あら春香、どうして泣いているの?」



「海楽しみだね、静香ちゃん」

「そうね」

「美味しいご飯食べられるかなぁ」

「そうね」

「静香ちゃんの胸小っちゃいね!」

「そうね」

「静香ちゃん待って!そんなに腕曲がらないから!ごめんなさい!」

「わっほーい!佐竹飯店海の家出張店特製特盛カレーとラーメン、チャーハン、焼きそばお待たせしましたー!」

貴音「…」

「おかわり無料ですから気軽にどうぞ!」

貴音「なんと!それは真、素晴らしきことですね」

四条さんは…見当たらないと思ったらいきなり食っていた

まだ昼前なのに大丈夫だろうか…

海美「ね、ね!」

P「うん?」

海美「ビーチバレーしようよ!」

冬馬「ビーチバレーか…良いぜ、叩きのめしてやるよ!」

P「チームはどうする?」

翔太「僕が海美ちゃんと組んでも良いけど」

P「あ、いや、それなら俺が海美と組むから翔太は冬馬と組んでやってくれ」

翔太「わかったよ」

海の家でネットを借り、コートを作る

P「それじゃあこっちから行くぞ!せい!」

そして対戦が始まった

冬馬「へっ、そんなぬるいサーブで俺達に勝つつもりかよ!」

翔太「冬馬くん、お願い!」

冬馬「任せろ!くらいやがれ!」

冬馬のスパイクが炸裂する

海美「!」

海美が拾いに行くが間に合わなかった

冬馬「見たか」

P「開幕スパイクとはやってくれるじゃないか」

冬馬「相手がお前らなんだ、手加減なんかしてられねえからな」

P「面白い、叩きのめしてやる」

激しい攻防を重ね、次第に息が切れてくる

P「っ、はあ…はあ…」

冬馬「くそっ…しぶといじゃねえか」

海美「あはは、いい汗出るね!」

翔太「うん、良い運動だよね」

俺達のサーブだ

P「行くぞ」

しかし手元が狂い、弱いサーブになってしまう

冬馬「もらったぁ!」

冬馬がスパイクを決める

海美がブロックしようと跳ぶが届かない

海美「わっ、たっ、たっ」

着地した海美が砂に足を取られてバランスを崩しこけそうになっていた

P「海美!」

海美が怪我をしないように助けに行こうとするが…

P「うおっ…!」

俺も脚がもつれ、海美のほうへ転がった

転んだ俺に向かって海美が倒れてくる

咄嗟に海美を守ろうと抱き止め、身体を反転させた

P「…海美、大丈夫か?」

海美「う、うん…大丈夫」

P「そうか、それならよかった」

押し倒したような体勢になってしまったが、海美に怪我はないようだ

しかし海美の顔が紅い、一体…

そこで俺は、右手に感じる柔らかい感触に気が付いた

視線を向けると

P「えっ…」

海美「…」

俺の右手は、海美の胸を鷲掴みにしていた

その事に気付き、一気に顔が赤くなる

P「す、すまん!」

海美「だ、大丈夫、大丈夫」

海美に謝る

海美の顔ははっきりとわかるくらい真っ赤だった

手を離した後も右手に感触が残っているような気がして、海美の顔が見れない

なので冬馬の方を見ると

冬馬「ひゅーひゅー」

ヤジを飛ばしていた

P「…」イラッ

P「海美、立てるか?」

座り込んでいる海に声をかけ、手をさしのべる

海美「う、うん」

海美の手を掴み立たせてやる

P「あれ、見てくれ」

海美「?」

海美が視線を向けた先にはこちらにヤジを飛ばす冬馬がいた

海美「…」イラッ

P「俺は良い思いをさせてもらったから冬馬くんに『お礼』をしたいんだけど…付き合うか?」

海美「…良いね、付き合うよ」

P「さあ、再開しようか」

冬馬「お、もう良いのか?」

P「ああ、おかげさまで良い思いをさせてもらったよ」

冬馬「へっ、礼はいらねえぜ」

P「まあそう言うなよ、俺達からの礼…」

サーブが飛んでくる

それを海美がもっともスパイクの威力が出せる位置にパスする

P「受けとれぇ!」

海美「とりゃあ!」

海美のスパイクが砂浜に突き刺さる

冬馬「あ、危ねぇ!?」

P「ちっ、避けやがったか」

冬馬「何しやがる!」

P「海美!顔は目立つから狙うな!ボディだ、ボディを狙え!」

海美「うん!」

冬馬「お、お前ら!」

その後冬馬にダイレクトアタックを繰り返し、俺達の勝利でビーチバレーは終わった


冬馬「」

P「ふう…」

海美「すっきりしたー」

翔太「ご愁傷様」

深い満足感を味わっていると背中に衝撃を感じた

「おやぶ~ん!」

P「おっとと」

「おやぶん、何やってたの?」

P「ああ、ビーチバレーをやってたんだよ、環」

背中に飛び付いてきた環に話し掛ける

環「ビーチバレー!たまきもやりたい!」

P「良いぞ」

環「やった!」

この子は大神環、765学園初等部に在籍している子で、近所に住んでいるので暇なときは海美と一緒に公園で遊んだりしている

桃子「もう環、勝手にどっか行ったら駄目だよ」

「あ、桃子ちゃんのお兄さんだ!」

環とじゃれていると、桃子とその友達の中谷育ちゃんがやってきた

P「よう桃子、育ちゃん」

育「こんにちは、お兄さん!」

桃子「あ、お兄ちゃんいたんだ、何やってたの?」

P「ビーチバレーだよ」

桃子「ビーチバレー…ふーん」

育「あの、私達もやって良いですか?」

P「もちろん」

育「やった!桃子ちゃん、一緒にやろ?」

桃子「桃子は別に…って、育引っ張らないでよ。…もう」

と言いつつも楽しそうに育ちゃんと一緒に歩いて行った

恵美「なんか楽しそうなことやってるね」

P「っと、恵美か」

初等部組のビーチバレーを見ていると声をかけられ、肩に重みを感じた

P「ちょっとビーチバレーをな」

恵美「ビーチバレー、良いねーウチらも混じって良い?」

P「別に独占してるわけじゃないからいくらでも混じって良いぞ?」

恵美「そっか、ありがと!琴葉-!エレナ-!ビーチバレーやろー!」

恵美が二人呼ぶ




…人が増えてきたな、響やB、Cクラスの生徒も来てるし、中等部の生徒もいる

結構な人数になった頃、学園長が何かを持ってきた

…学園全体でビーチバレー大会をやることになったようだ

賑やかになりそうだ

空があかね色に染まるころ、ビーチバレー大会は幕を閉じた

P「結局あんまり泳げなかったな」

ほとんどビーチバレーをしてた気がする

海美「もうあんまり時間はないけど、水遊びくらいなら出来るよ!」

笑いながら海美が水をかけてくる

P「わぷっ…やったな!」

負けじと俺も水をかけかえす

海美「ひゃっ、冷たい!あはは!」

そのまま水を掛け合う

集合時間になるまで、俺は海美と水遊びを続けたのだった

夏休みのある日、懐かしい夢を見た

それは幼い頃の記憶

「ここ、どこ…?」

夢の中の少女はまだ小さくて

暗闇の中一人で泣いていた

「おとうさん…おかあさん…」

この子をこのまま泣かせていたくない

この子には笑っていて欲しい

そう思い手を伸ばす

しかし俺が手を伸ばす前に、少女の前に手が差し伸べられた

「あっ…」

「いつまでないてるんだ?」

…そこで夢は途切れた

目を覚まし、体を起こす

P「…懐かしい夢を見た気がする」

あれはいつぐらいだったかな…

桃子「お兄ちゃん起きたの?ご飯もうすぐ出来るから早く降りてきてね」

部屋の外から、桃子の声が聞こえた

P「わかった、すぐ降りるから」

桃子に返事をして支度をする

夏休みは始まったばかり、何をして過ごそうか

あるファミレスにて

P「肝試し?」

冬馬「ああ、C組の奴が発案した本格肝試しだとよ。結構怖いらしいぜ」

翔太「C組って言うと…うわー、それは何というか」

海美「本当に怖そうだね」

貴音「…」

ふと貴音のほうを見る

顔面蒼白になって震えていた

P「た、貴音、どうしたんだ?」

貴音「は、はて…どうしましたか?」

P「いや、どうしたはこっちの台詞…滅茶苦茶顔が青いぞ」

貴音「わ、わたくしは別に、問題ありません」

P「そうか?」

貴音「はい」

翔太「貴音さんってもしかして…」

海美「うん、お化けとか苦手なのかも」

冬馬「この肝試し、今日行ってみねえか?」

貴音「」ビクゥ

P「お、いいなそれ」

貴音「あ、あの、わたくしは辞退…」

P「貴音も行くよな?」

貴音「させ………わかりました、参りましょう」

P「よし、じゃあ全員参加だな」

翔太「貴音さん涙目だよ」

海美「やっぱり苦手っぽいね」

貴音「面妖な…」ガクガク

夜、指定された場所に来る

指定されたのは墓地だった

P「はー、夜の墓地ってやっぱり雰囲気あるなー」

貴音「面妖…マジ面妖…」ブツブツ

貴音が俯きながら何か呟いているが聞き取れない

恵美「あれ、P達じゃん」

突然声をかけられた

冬馬「所じゃねえか、ここにいるってことはお前らも?」

恵美「そ、肝試し!でもルール的に三人じゃ参加できなくてさ」

海美「あ、そっか、二人一組だもんね」

恵美「そそ、だからどうしよっかって話してたんだけどちょうどP達を見つけたし」

恵美「ウチらは三人でそっちは五人だからこれで八人、ちょうど良い人数だね」

P「そうだな、じゃあチーム分けるか」

恵美「それじゃあアタシはPと組もっかな~」

海美「むっ」

そう言いながら恵美が左腕に抱き付いてくる

…柔らかい物が腕に当たっている

P「め、恵美、その…胸が当たってるんだが」

恵美「にゃはは、当ててんの♪」

海美「めぐみーダメ!」

今度は海美が右腕に抱き付いてくる

海美「Pと組むのは私!昼から予約してたもん!」

P「予約なんかしてたか…?」

恵美「えー、しょうがないなぁ…」

あっさりと離れる恵美

表情を見るにただ単に俺をからかっていたようだ

結局チームは

田中さん×恵美

貴音×エレナ

羅刹×翔太

俺×海美

になった

P「じゃあ行くか」

海美「うん!」

P「それじゃあみんな、ゴールで会おう」

P「結構本格的だな、火の玉も浮いてるし」

海美「だね…手握って良い?」

P「別に良いけど、こういうの苦手だったか?」

海美「苦手じゃないけど…かなり雰囲気があるから」

そういって俺の手を握る海美

俺は海美の手を引いて歩き出した

少し歩いていると、小さな悪戯心が芽生えた俺は即興で話を作り、語り始めた

P「そう言えば知ってるか?」

海美「?」

P「噂ではこの墓場には悪霊がいて、それに取り憑かれるとおかしな事を口走るようになるらしいぞ」

P「例えばあんな風に…」

指を指すとそこには女の子が立っていた

「…」

P「…え?」

どこを向いているのかわからないような目をしているはずなのに、確かに目の前の女の子から見られていることを感じる

「…」

海美「P、あの子怖い…」

P「あ、あの…君?」

「美味しいですよね」

P「え?」

「美味しいですよね、カブトムシ」

それを聞いた瞬間、全身の産毛が逆立った

P「とりあえず逃げるぞ!」

海美の手を引いて走る

海美「う、うん!」

「美味しいですよね、カブトムシ」

俺達が走りだしても、彼女はそこでただ俺たちを見ていた





P「なんだったんだあれ…」

海美「わかんないけど…」

とにかく危険だった

P「まさか適当ぶっこいたらあんなことになるなんてな…」

こういう時にふざけるもんじゃないな

P「…海美?」

隣の海美が妙に静かなことに気付き、隣を見る

すると海美は何かを凝視していた

P「どうしたんだ?」

海美「あ、あれ…」

海美が何かを指差す

海美の指さした方を見ると…

冬馬「は、離せ!離してくれ!だ、誰か!」

冬馬が白衣を着た何かに引き摺られていた

冬馬「嫌だ!誰か助けてくれ!」

俺達はその光景を見ていながら

体がぴくりとも動かなかった

やがて冬馬の叫び声が遠くなり聞こえなくなった頃

体が動くようになり俺達は座り込んだ

一旦ここまで

P「なんだ…あれ」

海美「わかんないけど…あまとう大丈夫かな?」

P「冬馬なら平気だろ…多分」

チラリと冬馬が消えた方を見ると

海美「あ、あれゴールかな?」

微かに明かりが見えた

P「かもな…ところで海美?」

海美「なに?」

P「そろそろ腕を解放して欲しいんだが…鬱血しそうだ」

海美「あっ…」

冬馬が引き摺られていた辺りからずっと腕に込められていた力が緩む

海美「…もうちょっとだけ、このままで良い?」

腕を抱く力が優しく包むような力加減に変わった

P「…ゴールまでな」

海美「…うん!」

その後、無事にゴールに辿り着いた俺達は皆を待っていた

最初に恵美のペアが帰ってきた

二人ともそんなに怖くなかったらしい

恵美「いやー全然大したことなかったねー」

琴葉「ふふ、そう言いながらも物音がする度にびくってしてたわね」

恵美「ちょ、こ、琴葉~!」

次に翔太が一人で帰ってきた

冬馬はどうしたのか聞くと…

翔太「うん、なんかね、腕が6本ある髪の長い白衣の女の人に連れて行かれちゃった」

やはりあれは見間違いではなかったか…

まあそのうち帰ってくるだろう

そして最後に、エレナと貴音が帰ってきた

貴音は号泣、エレナもかなり怯えて泣いていたので余程怖かったのだろう

そして俺達は泣いている二人をあやしながら肝試しを終え、帰路についた…

肝試しの帰り道、海美と並んで歩く

未だ海美は俺の右腕にしがみついていた

P「…なあ海美、歩きづらいんだが」

海美「帰るまで、ね?」

P「…やれやれ」

こんなに怖がりだったかな?

海美「ね、ね、今日凄く怖かったから一緒に寝て良い?」

…これが目的か

P「駄目だ」

海美「ケチ」

P「ケチで結構、ほら行くぞ」

海美「あ、待ってよ」

海美に抱き付かれるのも悪くない

そんなことを思いながら歩いていった

だらだらと夏休みを過ごし、7月を越え8月となった

暑さは激しさを増し、うだるような毎日が続いていた

そしてそんなうだるような暑さの8月は海美の誕生月でもある

なので…



ファミレス

冬馬「…はあ?」

P「だからさ、もうすぐ海美の誕生日なんだよ」

冬馬「いや知ってるけどよ」

翔太「Pくん、流石にまだなんの用意もしてないっていうのは…」

P「誕生日パーティー自体は問題ないんだよ、でもプレゼントがさ…」

冬馬「お前が選んだものなら何でも喜ぶと思うぞ?」

P「そうか?」

恵美「はー、海美も大変だねぇ」

P「そこで聞きたいんだが、何を贈ったら良いと思う?」

冬馬「気持ちさえこもってたら何でも良いんじゃねえか?」

翔太「何でもとは言わないけど…Pくんの気持ち次第っていうのは僕も一緒かな」

P「恵美はどう思う?」

恵美「うーん…」

顎に手を当てて考える

恵美「やっぱアクセじゃない?」

P「アクセサリー?」

恵美「そ、あんまり派手じゃない方が良いかもね」

P「アクセサリーか…」

恵美「指輪とか良いんじゃない?」

恵美がにやにやしながら言う

P「指輪か、ありだな」

冬馬「マジかよ」

P「ふむ、とにかくアクセサリー方面で考えてみるか」

冬馬「おう」

翔太「きっと海美ちゃん、喜んでくれるよ」

恵美「にゃはは、頑張れ頑張れ~」

P「それじゃあ、また明日な」

そして俺は店を出た

町に出てアクセサリーショップを見て回る

P「海美に合いそうなアクセサリーか…」

どんなやつが似合うだろうか

色々見ていると、少し前のラーメン屋から貴音が出てきた

…後ろで店主らしき人が店終いをしている、まだ昼なのに…

貴音「おや、あなた様」

貴音がこちらに気付いた

P「貴音」

貴音「このようなところで奇遇ですね」

P「そうだな、貴音を町で見るのは初めてだ」

貴音「今日はどうされたのですか?」

P「ああ、ちょっと買い物をな」

貴音「そうでしたか」

P「あ、そうだ貴音」

貴音「?」

P「もし貴音が男からプレゼントを貰うとして、どんなプレゼントなら嬉しい?」

貴音「プレゼント…ですか」

貴音が少し考え込む

貴音「そうですね…わたくしなら、らあめんせっと…でしょうか」

P「ああ、うん、予想はしてたけど」

予想通り過ぎて何も言えない

貴音「そのようなことを聞くと言うことは…もしやわたくしにプレゼントしてくださるのでしょうか」

貴音が目をきらきらさせながら聞いてくる

P「あ、いや、そういう訳じゃないんだ」

貴音「そうですか…」

…少しテンションが下がったみたいだが、仕方ない

貴音「らあめんせっと以外となると…小物類ではないでしょうか」

P「やっぱりアクセサリーとかが良いのかな」

貴音「そうですね…わたくしが贈られる立場なら」

貴音「そして贈ってくださる殿方が自分がお慕いしている方ならば、常にその殿方の気持ちを身に付けていられるというのは幸せな事です」

P「…そんなもんなのか」

貴音「ええ」

あまり良くわからないが…やっぱりアクセサリーが一番ってことか

貴音「海美もあなた様が選んだ小物ならば、必ず喜ぶでしょう」

P「あれ、俺海美へのプレゼントだって貴音に言ったっけ?」

貴音「いえ、ですが…あなた様は少々分かり易い方だと思います」

P「そうか?」

貴音「はい」

P「うーん…」

以前恵美や桃子、このみ姉さんにも言われたんだよな

P「まあいいや、ありがとう貴音、今度ラーメンでも奢るよ」

貴音「真ですか!」

貴音が顔を近づけてくる

かなりテンションが上がっているようだ

P「ただし一杯だけな」

貴音「…あなた様はいけずです」

際限なしにしたら死んでしまうからな

俺が

いよいよ8月10日を迎えた

海美の誕生日を祝うために、我が家では料理を作ったり、飾り付けをしたりとパーティーの準備をしていた

恵美「アタシこういう飾り付け結構好きなんだよね~」

響「自分も!なんだか楽しくなるさー」

エレナ「楽しいのは大事だヨー♪」



貴音「真、美味ですね」

冬馬「四条てめぇ!作ったそばから摘まみ食いしてんじゃねえぞ!最初の皿なんか空っぽじゃねえか!」

貴音「天ヶ瀬冬馬、これは摘まみ食いではありません」

貴音「…毒味です」

冬馬「とっとと出てけ!お前は厨房に入ってくんな!」

貴音「ああ…」

海美「あはは…やっぱりいくつになっても、こうやってお祝いしてもらうのは嬉しいね」

P「そうだな」

皆が忙しく動き回っている中、壁にもたれ掛かりながら海美と話す

P「みんな海美のことを大事な友達だって思ってくれてるって良くわかる」

海美「うん、私も皆が大好き」

P「今日一日、楽しんでくれよな」

海美「うん!」

桃子「お兄ちゃん、サボってないで手伝ってよ」

態度はあんなでも桃子は率先して準備していた

以前このみ姉さんが言っていたこともなんとなくわかる気がした

P「おっと、すまんすまん」

桃子に怒られたので俺は作業に加わった

全ての準備が終わり、みんなが席に着いた

このみ「みんな、席に着いたわね?それじゃあ明かりを消すわよ」

明かりが消え、リビングが蝋燭の火だけ残して暗くなる

闇の中で揺れる蝋燭の火はとても綺麗だった

このみ「それじゃあ海美ちゃん」

海美「はーい!すぅー」

海美が息を吸い込み

海美「ふぅー!」

蝋燭の火を吹き消した

「海美、誕生日おめでと-!」

海美「みんな、ありがとう!」

みんなで料理を堪能した後

いよいよプレゼントを渡すときが来た

響「はい海美、大切に使ってね!」

海美「うん!ありがとうひびきん!」

俺の前の響が海美にプレゼントを渡す

冬馬「最後、お前だぞ」

P「わかってる」

恵美「アドバイスしてあげたんだから、ちゃんと決めてきなよ」

P「ああ」

P「…海美」

海美「うん」

P「これ、プレゼント」

海美「ありがと、開けてもいい?」

P「ああ」

海美「わぁ…」

海美「指輪だぁ…」

一旦ここまで

海美「ね、ね」

P「どうした?」

海美「これ、Pにつけて欲しいな」

P「俺に?」

海美「うん…良い?」

P「わかった」

海美の手を取る

P「どの指が良い?」

海美「ま、任せる」

海美の顔は真っ赤だった

左手をとる

海美「ひ、左手」

海美の声が微妙に上擦る

海美「薬指薬指薬指薬指薬指…」

海美が何やら呟いている

P「よし、これでいいか」

少し迷ったが、海美の左手小指に指輪をはめた

P「どうだ、サイズは?」

海美「あ、うん、ぴったり…どう?」

海美の小指に輝くペリドットの指輪を見る

P「うん、良く似合ってるぞ」

海美「良かった…」

海美「P、最高の誕生日プレゼントをありがとう、大好き!」

海美「一生大切にするね!」

そう言って笑った海美の笑顔はとても綺麗で眩しくて

俺は…

俺はやっぱり海美のことが…

夏祭り

学園の近くにある神社を中心に町中で様々な屋台が出店し、打ち上げ花火で締める夏のイベントだ

そんな夏祭りだが、花火の見れる最高のポイントに我が周防家の所有する土地があり、毎年そこで花火をみていた

今年は花火に友達連中を誘っており、俺達は女性陣が来るのを待っていた

冬馬「しかし女ってのは本当に準備に時間かかるな」

P「良いじゃないか別に」

翔太「そうそう」

冬馬「あー、早く色々見て回りたいぜ」

そんな話をしていると

恵美「お待たせ~」

冬馬「やっと来たか」

女子連中が来たようだ

恵美「じゃじゃーん、どうよ?」

恵美がその場でくるっと回る

P「おお、浴衣似合ってるな」

恵美「でしょ?へへ~」

エレナ「ほらほら、コトハも恥ずかしがらず二♪」

琴葉「え、ええ…」

恵美に続いて田中さん、エレナも出てくる

P「おお、二人も良く似合ってる」

エレナ「ありがとうだヨー♪」

琴葉「あ、あの…ありがとう」

貴音「響…屋台が遠ざかってしまいます」

響「そんなの後だぞ!先に皆と合流してからね!」

貴音「屋台…」

響が貴音を引き摺りながらやってきた

P「響ー」

響「あ、いた」

貴音「お待たせしました」

到着した二人を見る

P「へえ…貴音は和服は絶対似合うと思ってたから予想通りだけど」

P「響も良く似合ってるじゃないか」

響「当然だぞ!なんせ自分は完璧だからな!」

P「そうだな、完璧完璧」

響「うがー!頭をぽんぽんするなー!」

環「おやぶん!」

P「おっと」

響をからかっていると環が飛び付いてくきた

環「どう?どう?ゆかたにあう?」

P「おお、可愛い浴衣じゃないか環」

環「動きにくいけどおやぶんがよろこぶからってめぐみに言われたからきたぞ!」

P「そうか~環は偉いなぁ」

環の頭をわしゃわしゃと撫でてやる

環「くふふっ♪」

このみ「環ちゃん、急に走ったら危ないわよ」

環の頭をわしゃわしゃしているとこのみ姉さん、桃子、育ちゃん、そしてこのみ姉さんの友達の莉緒さんがやってきた

莉緒さんはこのみ姉さんの同僚で親友だ

俺も昔から付き合いがある

基本的には年上のお姉さんなのだが、その中身を一言で表すと凄く残念な人だ

残念エピソードが多すぎるので語らないが、その残念さで本人のモテたいという夢から全速力で離れて行っているのもまた残念だ

色々と改善すれば引く手数多だと思うのだが、改善策が大抵斜め下なので無理だろう

そして…

海美「お待たせ!」

最後に海美がやってきた

海美「浴衣…どうかな?」

P「…」

昔から何度も見てきた姿なのに

とても…

P「か、可愛いぞ」

海美「…うん!」

顔が赤くなる

それを悟られまいと顔を逸らす

逸らす前に一瞬だけ見えた海美の顔は

俺と一緒で真っ赤だった

冬馬「全員集まったんならさっさと行こうぜ」

翔太「冬馬くんはせっかちだなー」

冬馬「俺はもう腹ペコなんだよ」

貴音「天ヶ瀬冬馬、わたくしも全面的に同意いたします」

響「貴音はいつでも腹ペコだろ」

貴音「…」

このみ「まずは皆で一通り回りましょ」

この夏祭りは色んな色物屋台が特徴で、今年も沢山の出店していた

焼きそばやお好み焼き、チョコバナナや綿飴りんご飴などの食べ物から射的、金魚すくい、型抜きなど定番のものは一通り揃っている

中にはアートという名のガラクタや、北京ダック、ドーナツ、眼鏡などの珍しいものもあった

冬馬「相変わらず色々あって迷っちまうな」

P「常に何かしら興味を引かれるモノがあるって凄いと思う」

一通り回り終えた時、このみ姉さんがある提案をした

このみ「一通り見て回ったわけだけど、まだ花火まで時間があるから自由行動にしましょう」

このみ「それで、花火が始まる前にいつものあの場所に集合、良いかしら?」

「賛成」

このみ「それじゃあみんな、また後でね」

莉緒「このみ姉さん、あの屋台行くわよ」

このみ「良いわよ」

このみ姉さんと莉緒さんはあっという間にいなくなった

恵美「じゃあウチらも行こっか」

琴葉「そうね」

エレナ「うん!」

恵美「桃子達も一緒においでよ、三人だけじゃ、何かあったら困るだろうし」

環「えー、たまきおやぶんと一緒がいい」

育「環ちゃんわがままいっちゃだめだよ」

桃子「お兄ちゃんならまた遊んでくれるから」

環「うー…わかった…」

恵美「ほら、そこの二人もナンパ除けについてきてよ」

冬馬「ナンパ除けかよ…」

翔太「良いじゃん良いじゃん」

気が付くとみんなはどこかに行っていなくなっていた

P「あいつら…どうせなら声をかけてくれても良いだろうに」

頭をかいていると袖を引かれた

P「海美、どうした?」

海美「せっかくだしその…二人で回りたいな…だめ?」

P「あ、ああ…良いぞ」

海美と二人で回ることにした

海美と二人で屋台を回る

いろんな屋台に気を引かれ、買い食いをする

海美「これ、美味しい!」

P「これも美味いぞ!」

海美「ほんと?あーん」

P「ほら」

海美「うん、美味しい!」


海美「おじさん、クレープちょうだい」

P「え?あ、いや、俺達はまだ付き合っては…」

海美「サービス?おじさん、ありがと!」

クレープを二つ貰った

…カップルに見えているんだろうか

海美「はい、クレープ!」

P「ああ」

二人でクレープを食べながら歩く

P「美味いな」

海美「うん!」

P「お、あっちにたこ焼きもあるな」

海美「いこいこ!」

屋台に向かって歩いていく

しかしちょうど人の波に飲まれ、はぐれそうになる

海美「わっ!」

P「海美!」

俺はとっさに海美の手を掴んで、抱き寄せた

海美「あ…」

P「とりあえず固まってやり過ごそう」

海美「…うん」

人波が収まり、動く余裕が出来てきた

それを機に俺は掴んでいた海美の手を離し、歩き出そうとしたその時

海美の手が俺の手を掴んだ

海美「ね、手繋いだままでいい?」

P「別に良いけど…どうしたんだ?」

海美「またさっきみたいな人波が来たらはぐれちゃいそうだし…だめ?」

P「…ん、良いよ」

海美と手を繋いだまま、歩き出した

その後も手を繋ぎながら海美と屋台を回っていると、そろそろ花火が始まる時間が近づいていた

P「良い時間だな、そろそろ行くか?」

海美「うん」

そして俺達は、約束のあの場所へと足を進めた

海美「もうみんな来てるかな?」

P「どうかな」

約束の場所へ向かうために林を通る

毎年通っている場所なので暗くても迷うことはない

しかし今日は少し違った

海美「あっ!」

海美の短い悲鳴と、何かが倒れるような音がした

P「海美大丈夫か!」

海美「いたたた…」

後ろを振り返ると、海美が転んでいた

P「転んだのか?」

海美「ううん、足が…」

足の方を見る

P「これは…挫いたみたいだな」

慣れない草履を履いていたからか足を挫いたようで、足元を照らすと足首が赤くなっていた

P「立てるか?」

海美「ん…いたっ」

どうやら厳しそうだ

P「仕方ない」

俺は海美に背を向けてしゃがみ込む

P「おんぶするから、乗れ」

海美をおんぶして立ちあがる

…海美ってこんなに軽かったんだな

P「しっかり掴まってろよ」

海美「うん」

ゆっくりと歩き出す

少し歩いたところで海美が口を開いた

海美「…なんだか懐かしいね」

P「なにがだ?」

海美「憶えてる?昔のこと」

P「…憶えてるよ」

まだ小さかった頃の夏祭り、この林で俺達とはぐれてしまい迷子になった海美は一人で泣いていた

だけど俺は海美を見つけ、泣き止ませるために今みたいにおんぶして両親の待つ場所へ連れて行ったことがあった

海美「あの時ひとりぼっちで、周りは暗くて、とっても怖かった」

海美「このままずっと一人なんじゃないかって思っちゃった」

海美「でもPが来てくれて、ずっと側にいてやるって言ってくれて」

海美「私嬉しかった」

P「…」

海美「私の気持ち、あの日からずっと変わってないよ」

海美「ずっと、大好き」

P「…」

海美「あれからずっとPの背中を追い掛けて、追い掛けて来た」

海美「私ね、もう友達くらいじゃ物足りないよ」

海美「一歩先に進みたい、彼女って言わせたい」

P「海美…」

海美「私はPが好き、ずっとずっと、今までも、これからも」

海美「Pはどう?Pの気持ち…聞かせて?」

P「俺は」

P「俺はな、海美、お前に笑っていて欲しかったんだ」

P「昔からお前の笑顔が好きだった」

P「だからあの日、お前が泣いてた時、俺は誓った」

P「一番近くにいた…いつも側にいるお前の笑顔を守ろうって」

P「俺もあの日から…その気持ちは変わってないよ」

海美「…」

P「あの頃は何でかわからなかったけどさ、今なら分かるよ、なんで俺がお前の笑顔を守りたかったか」

P「あの頃からきっと、俺は海美の事が好きだったんだ」

海美「…!じゃあ…」

P「お前がストレートに伝えてきた気持ち、俺も伝えるよ」

P「俺もお前が好きだ」

P「高坂海美が、世界で一番好きだ」

P「海美の笑顔も、海美自身も、必ず守るから」

P「ずっと、俺の側で笑っていて欲しい」

一旦ここまで

海美「…」

P「…海美?」

海美「やっと…やっと届いた」

背中から海美の涙声が聞こえてくる

P「お、おい泣くなよ」

海美「だって、やっと好きって…私、ずっとそれを言って欲しくて…」

P「ほら泣くな泣くな、俺はお前を泣かせたいわけじゃないんだから」

海美「うん…」

P「ほら、ハンカチ」

海美「うん…ありがと」

P「あの日言ったこと、もう一度言ってやる」

海美「うん…!」

P「俺がずっと側にいてやる、だから泣くな」

海美「…うん!」

P「…改めて言うと照れくさいな」

海美「私は嬉しい!」

P「そっか…ん、見えてきたな」

いつもの場所が見えてきた

恵美「おーい、花火始まっちゃうよー」

P「今行くー」

恵美に返事を返し、俺達は一歩前へ進んだ

海美が足を挫いたことを説明した後、俺達はブルーシートを敷いた

冬馬「そろそろだな」

P「ああ」

時計を見る、もう間もなく花火があがる時間だった

ヒュー

バッ

恵美「あ、上がったよ!」

花火が始まった

恵美「た~まや~」

エレナ「か~ぎや~」

琴葉「綺麗…」

莉緒「このみ姉さん、花火を見ながらの1杯…素敵だと思わない?」

このみ「莉緒ちゃん、イイ女は多くは語らないのよ」

莉緒「ふふ、そうね」

毎年見ている花火だが、今日の花火はまた一段と綺麗だった

それはきっと…

海美「花火、綺麗だね!」

P「ああ」

海美が隣にいるからだろう

海美の頭に手を置く

海美「…」

海美が頭を俺の胸の方に預けてきた

そのまま髪を撫でてやる

花火が終わるまで、俺は頭を撫で続けた

花火が終わり、俺達は帰路についた

恵美「んじゃまたね」

P「三人だけで大丈夫か?」

恵美「へーきへーき」

恵美達はタクシーを拾って帰るそうだ

響「自分たちもタクシー拾うから平気だぞ」

貴音「わたくしも、問題ありません」

P「そうか」

このみ「私達は育ちゃんと環ちゃんを送ってからになるから、Pは海美ちゃんと先に帰ってなさい」

P「わかった」

このみ「冬馬くんと翔太くん、ボディーガードよろしくね」

P「俺達も帰るか」

海美「うん」

P「足はどうだ?」

海美「マシになってきたよ」

P「それなら良かったよ」

海美をおぶって歩く

P「海美」

海美「?」

P「改めて、これからよろしくな」

海美「…うん!よろしく!」

家の前まで辿り着いた

海美「ここまでで大丈夫」

P「了解」

海美を降ろしてやる

P「一応応急処置はしたけど、帰ったらちゃんとするんだぞ」

海美「うん、わかってる」

P「ならば良し」

海美「あ、ちょっと屈んでくれる?」

P「なんで」

海美「良いから良いから」

P「?」

言われた通り少し屈む

海美「…ん」

頬に柔らかい感触があった

P「!?」

海美「えへへ、色々な意味のお礼!」

P「なっ!う、海美!?」

思わず頬をおさえる

海美のしてきたことに気付き、一気に顔が赤くなる

海美「幸せにしたげるね!」

P「それはこっちの台詞…」

海美「お、おやすみ、また明日!」

海美も恥ずかしかったのか、脚を庇いながらそそくさと家に入っていった

部屋に戻り、ベッドに転がりながら今日のことを思い出す

それだけで胸の奥から海美への愛おしい気持ちが溢れてくる

我ながら単純だ、と苦笑しながら窓の方を見ると海美が窓を開けようとしていた

すぐに窓を開けてやると、海美が部屋に飛び込んできた

P「おいおい、足は良いのか」

海美「うん、今は大丈夫」

P「どうしたんだ?」

海美「あのね、今日はなんだか一人だと寝れる気がしないから」

海美「一緒に寝よ?」

一旦ここまで

P「一緒に寝るってお前…」

海美「お願い!」

P「…」

海美「…」

P「仕方ないな…」

海美「やった!」

P「寝ぼけて俺を蹴り落とすなよ?」

海美「うん、大丈夫!…多分」

P「おい」

海美と一緒にベッドに上がる

P「一応タオルケットは用意してあるから、使ってくれ」

海美「ありがと」

俺が壁際になるように奥へ行く

P「それじゃあ海美、おやすみ」

恥ずかしいので海美に背を向ける…が

海美「こっち向いてよ」

肩を掴んで揺さぶられる

P「よ、酔う、酔うから」

海美「じゃあこっち向いてよ」

仕方なく海美の方へ体を向ける

P「…」

すると海美が抱き付いてきた

P「…暑いんだが」

海美「うん、暑いね」

そう言いながらも、海美は体を離そうとしない

むしろ頭を胸にぐりぐりと押しつけてくる

体も密着しているので海美の体の柔らかい部分が触れたり、風呂上りのシャンプーの匂いなどが鼻腔をくすぐってくる

P「あっ」

海美「?」

P「いや、なんでもない」

海美に気付かれないように、少し腰を引いた

海美「んー」

P「…暑いんだが」

海美「暑いね」

なんとなく手持ち無沙汰になり、海美の頭を撫でる

P「…」

海美「…」

P「…海美?」

海美「ん…」

P「寝たか…」

鉄の意志でハイパー化した愚息を収め、海美を抱き寄せる

P「…おやすみ、海美」

海美を抱き締めながら、俺は意識を闇に委ねた

カーテンから差し込む朝日に、目を覚ます

P「ん…?もう朝か…」

心地良い目覚めだった

好きな人が隣にいるだけでここまで変わるものか、と考えながら体を起こす

P「海美はもう起きたみたいだな」

隣で眠っていたはずの海美はすでに目を覚ましたらしく、ベッドの中にはいなかった

P「俺も起きよう」

ベッドから降りて着替えをし、朝食を摂るために下へ降りていった

顔を洗いに洗面所に行くと桃子が顔を洗っていた

P「おはよう桃子」

桃子「…」

顔を拭いた桃子が不機嫌そうにこちらを振り向く

P「ど、どうしたんだ?なんで朝からそんなに不機嫌なんだ」

桃子「…」

しかし桃子は、何も答えずに俺の横を通り過ぎていった

顔を洗い歯を磨いた後、リビングに顔を出すと海美がこのみ姉さんに料理を教わっていた

テーブルには桃子が座っていた

もしかしたら寝起きだから不機嫌なのかと思ったが、依然不機嫌な所を見ると違うようだ

P「おはよう桃子」

改めて挨拶をする

桃子「…」

じろりと一睨みしたのち

桃子「ふんだ」

顔を背けられた

このみ「あらおはよう、休みなのに珍しく早いじゃない」

P「失礼な、俺だってたまには早く起きるよ」

このみ「もうすぐご飯出来るから待ってて」

P「海美、料理出来たんだな」

このみ「前からちょくちょく教わりに来てたもの」

P「そうだったのか」

このみ「Pのために美味しいご飯を作れるようになりたい!ってね」

このみ「愛されてるわね~」

P「ん、まあな」

このみ「余裕ね…これだから恋人持ちは…」

海美が自分のために苦手だった料理を克服しようと頑張ってくれている

こんなに嬉しいことはない

海美「お待たせ!」

海美が料理を運んでくる

P「おお」

焼き魚に味噌汁、漬物など定番の物だが数年前に見た炭と比べるとはるかに上達している

このみ「それじゃあ食べましょうか」

「いただきます」

手始めに味噌汁に口をつけてみた

P「こ、これは!」

P「これ、いつもと全く違う味だな、美味いぞ」

海美「お母さんに教えてもらった!」

このみ「ウチの作り方と照らし合わせて、色々と弄りながら作ったのよ」

桃子「…美味しい」

海美「良かった!」

このみ「海美ちゃんにはこれからウチの味全部教えてあげる」

このみ「そして今度は海美ちゃんが新しい味を作っていくのよ」

海美「はい!ありがとうこのみさん!」

これから楽しみだ

朝食後、部屋に戻ると海美もくっついてきた

ベッドに腰掛け片手で本をめくる

…右腕には海美がコアラのように引っ付いていた

P「なあ海美」

海美「なに?」

P「暑いんだが」

海美「うん、暑いね」

そう言いながらも海美が離れる気配はない

P「お前は本当に甘えん坊だな」

海美「好きな人に甘えられるって幸せだって思う」

P「…そうか」

…昔は気にならなかったが恋人になった今、密着していると緊張するな

ふと机の方を見て思い出した

P「そういえば…」

海美「?」

P「お前、夏休みの課題はやったか?」

海美「…」

P「…」

海美「…」

P「…」

目を逸らされた

P「もしもし、冬馬か?」

冬馬「で、呼び出された訳か…」

恵美「あ、アタシは宿題終わってるし帰って良い?」

P「ノートを開いて証拠を見せたらな」

恵美「ぐぬぬ…」

翔太「僕は終わってるから、見る側にいるよ」

P「結局宿題終わってないのは…エレナ、恵美、海美の3人か」

響「自分は冬馬が終わってるのにちょっと驚いたぞ」

冬馬「どういう意味だ我那覇、俺は夏休みを満喫するために宿題は夏休みの最初の方に終わらせる主義なんだよ」

P「まあそうだよな…恵美や海美はなんでいつもギリギリになるんだか」

恵美「や、だってさ~」

海美「私だってやろうやろうと思うんだけど」

恵美「気が付いたら一日経ってるんだよね~」

海美「ね~」

P「お前ら…」

桃子「お兄ちゃん」

P「どうした、桃子」

桃子「恵美さんはともかく、海美さんを100%やる気にさせる方法ならあるよ」

P「なんだって」

桃子「ちょっと耳貸して」

桃子が耳打ちしてくる

桃子(課題が終わるまでお兄ちゃんとのいちゃいちゃを禁止すれば良いよ)

P(そんなんであの海美が課題するようになるか?)

桃子(お兄ちゃん、もっと自惚れても良いと思うよ。多分お兄ちゃんが思ってる以上に海美さんお兄ちゃんのこと好きだから)

P(そこまで言うなら試してみるか)

P「海美」

海美「なに?」

P「課題が終わるまで、俺はお前に構わないから」

カラン

海美が手に持っていたペンを落とす

海美「」

P「課題が終わったらまた」

海美「頑張る」

P「え?」

海美「めぐみー遊んでる場合じゃないよ宿題やろう」

恵美「あー、スイッチ入っちゃったかー…」

本当にやる気になった

桃子「それじゃあお兄ちゃん、集中してる海美さんの邪魔しちゃ悪いから桃子と遊んで」

P「仕方ないな、最近構ってやれてなかったし…良いぞ」

P「普段桃子と何して遊んでたっけ」

桃子「お兄ちゃん海美さんや友達とばっかり遊んでたから憶えてないもんね」

P「お?もしかして寂しかったのか?」

桃子「そ、そんなこと言ってないでしょ!」

P「悪い悪い」

桃子の頭を撫でてやる

桃子「も、もう!子供扱いしないでよ!」

P「ん、そうか」

撫でる手を止めた

桃子「あっ」

P「ん?」

桃子「別に、嫌じゃないから…頭撫でるのは許してあげる」

P「はいはい」

素直じゃない妹だ

P「どうだ、調子は」

ある程度遊んだら満足したのか、桃子が部屋に戻ってしまったので課題組の様子を見に来る

恵美「疲れた~」

海美「ううう…」

めぐうみコンビは大変お疲れのご様子

P「エレナは?」

恵美「エレナはそんなに宿題残ってなかったからすぐ終わらせて、今響達と買い物行ってる」

P「なるほど」

海美「疲れた~」

P「どれどれ…なんだ、あと少しじゃないか、頑張れ」

海美「うん…」

P「終わったらご褒美あげるから」

海美「ほんと!?よし、あと少し頑張る!」

恵美「…」

P「?恵美、どうしたんだ?」

恵美「あ、いや、前から仲良いってわかってるけどなんか雰囲気が変わったような…」

P「あー、実はその…」

海美「私達、付き合い始めたの!」

P「まあ、そういうことだ」

恵美「あっ…そ、そうなんだ、おめでとう」

恵美「まあアタシは時間の問題だと思ってたけどね!いやーめでたいめでたい!」

恵美「さ、さ、彼氏に甘えるためにも早く終わらせないとね!」

海美「うん!」

P「…恵美?」

恵美のテンションに違和感を覚えた

勉強会が終わり、見送るために外に出る

恵美「んじゃ、ウチらは帰るね」

P「ああ」

恵美「じゃまた」

P「送っていこうか?」

恵美「いいよいいよ、ちょっとカラオケ行きたいし」

P「そうか…恵美」

恵美「ん?」

P「もし悩んでることがあるなら相談に乗るからな、いつでも時間取るから」

恵美「…そういうのは可愛い彼女にしてあげなって」

恵美「大丈夫、そんなに気にしなくても次会うときにはきっと元のアタシに戻ってるからさ」

P「恵美」

恵美「そんじゃまたね!」

恵美は逃げるように帰って行った

P「何でも無いならなんであんな泣きそうな顔をしてたんだよ…」

それから夏休みが明けるまで、恵美は顔を出さなかった…

夏休み明けの登校日

海美「久しぶりの学校だ~」

P「久しぶりって言いつつもお前は部活で来てただろ?」

海美「Pと一緒に行くのは久しぶりなの!」

P「さいですか」

P「ま、なんにせよ学校が始まったし、また気を引き締めていこうな」

海美「だね」

P「授業中に寝るなって言ってるんだぞ」

海美「ぜ、善処する」

P「おはよう」

海美「おはよ!」

教室に入るといつもの面子がすでに揃っていた

冬馬「よう」

翔太「おはよー」

貴音「おはようございます」

俺達が席に着くと恵美がやってきた

P「恵美、おはよう」

恵美「おはよ!いやー、二人とも今日も熱いねー!」

いつものテンションで喋ってくる…が

P「恵美、なんか窶れてないか?」

海美「うん、なんか調子悪そう」

恵美「…あー、いやー実は勉強会の後夏風邪引いちゃってさ」

恵美「だからかもね、でももう治ったしへーきへーき!」

P「そうか…?」

海美「調子悪くなったら無理しちゃ駄目だよ!」

恵美「…うん、わかってる」

夏休み明けの学校は特に変わりなく、毎年繰り返している退屈な全校集会を終え教室に戻る

あえて変わったことがあるとするならば、教師の一人が夏休みの間に転職したらしいということだけだった

教室に戻り全員が着席したのち、黒井先生が喋りだす

黒井「貴様達に報告しておくことがある」

黒井「間もなく我が校ではプロデューサー選挙を行う」

プロデューサー選挙…その言葉に教室がにわかに騒がしくなる

うちの学園には生徒会の代わりにプロダクションと呼ばれる組織が存在している

とは言っても世間一般で言われている生徒会と役職の名前を変えただけで、中身は変わらないそうだが…

生徒会長の代わりがプロデューサーだそうだ

黒井「貴様達の中で立候補したい者は私の所に来るが良い、詳細を伝える」

そういうと黒井先生は教室を出て行った…

P「プロデューサー選挙か…あんまり興味ないな」

冬馬「だな」

そもそも今のプロデューサーだって誰だったか曖昧なくらいだ

冬馬「この後どっか寄ってかねーか?」

冬馬が遊びに誘ってくる

だが…

P「悪い、今日はちょっと海美に陸上部のほうに呼ばれてるんだ」

冬馬「そうか、なら仕方ねーな」

P「悪いな」

冬馬「気にすんなよ」

冬馬と別れて陸上部に顔を出す

海美「あ、来た来た!」

P「どうしたんだ?陸上部に呼び出すなんて珍しい」

海美「実はお願いがあって」

P「うん」

海美「私の専属マネージャーやって欲しいなって」

P「…うん?」

海美「そしたら一緒にいられる時間も増えるし!」

P「待て、俺はマネージャーなんかやったことないぞ」

海美「大丈夫!私が戻ってきたらタオルで汗を拭いてくれて、ドリンク飲ませてくれて、後甘えさせてくれたらいいだけ!」

P「まあそれくらいなら…別に良いかな」

海美「じゃあ早速今日からお願い!終わったら一緒にかえろ?」

P「わかったよ」

顧問にも話が行っていたらしく、すんなり承諾された

なので海美に頼まれた専属マネージャーをやることになる

専属とは言っても他に何もやらないというのは感じが悪いので、暇していた響を捕まえて聞いてみた

響「はー、海美も結構強引だなー」

P「まあ許してやってくれ」

響「Pも満更じゃなさそうだね、もしかして付き合ってたりして!」

P「良くわかったな」

響「なーんてどっちもヘタレだしそんなわけ…えっ、なんだって?」

P「だから、付き合ってる、海美と」

響「」

響「!?」

P「…そんなに意外だったか?」

響「だ、だってヘタレだって有名な二人が付き合うなんて!」

なんで有名なのか聞いてみたい気もしたが、へこむ事態になりそうなのでやめておこう

響「それで、どっちから告白したんだ!?」

響が目をきらきらさせながら聞いてくる

女子って何でこんなに恋バナとか好きなんだろうか

P「…海美からだよ」

響「うわぁ…女の方から言わせるなんて、やっぱりPは甲斐性なしだぞ」

P「うっせ」

P「話しは後でしてやるからさ、マネージャー業務のこと教えてくれよ」

響「あっと、そうだった」

話を打ち切り本題にはいる

響「といっても基本的に海美がPに頼んだことをやるだけだぞ!」

P「つまり他の生徒の汗を拭いたり、ドリンクを飲ませたり、甘やかせば良いのか」

響「…海美、それは流石にないぞ…」

響がとても残念なものを見る目をしている、失礼な奴だ

響「とりあえずタオルを渡したり、ドリンクを渡したりって感じさー」

響「あ、別に甘やかしたりしなくて良いからね!」

P「そうなのか」

響「後は備品を倉庫に片付けたりするぐらい!」

P「わかった、ありがとう響、時間取らせて悪かったな」

響「なんくるないさ~、マネージャーがいたら自分達にとっても便利だしね!」

響「じゃあタオルの場所と、ドリンクの作り方教えるね」

P「ああ」

響「あ、そのうち洗濯とかもすることになるかもだけどタオルの匂いとか嗅いじゃ駄目だぞ!」

P「しねーよそんなこと」

響「ほんとかぁ?」

P「当たり前だろ、俺は海美一筋なんだから」

響「…なら大丈夫だね!」

P「ああ」

響から教わった通りに俺は海美より先に休憩に入った部員にタオルとドリンクを渡していく

響「ね、簡単でしょ?」

P「ああ」

響は後ろについて変なところがないか見てくれている

響「今まで自分が色々出来るからって理由でマネも兼任させられてたから、Pがマネになってくれるのは本当にありがたいぞ」

P「まだ完全にやるって決めたわけじゃ無いぞ?」

響「えー、Pがいてくれたら楽なのに…正式にマネやりなよー」

P「気が向いたらな」

まだわからないのではぐらかしておいた

P「お」

練習を見ていると、海美が休憩に戻ってくるのが見えた

タオルとドリンクを持ち海美に駆け寄る

P「海美、お疲れ」

海美「ありがと!」

P「ほら、動くなよ」

タオルで海美の顔や頭を拭いてやる

海美「はふぅ~…」

P「気持ちいいか?」

海美「うん…気持ちいい…」

汗を拭き終わると、海美は俺の足に頭を降ろした

P「お前本当に俺の膝枕好きだな」

海美「うん」

P「硬くて寝心地悪いだろうに」

海美「そんなことないよ、私Pの膝枕、大きくて硬くて好きだよ」

P「………………………」

その後練習は終わり、俺は片付けを手伝いながら海美が戻ってくるのを待っていた

響「じゃあP、明日もマネージャーよろしく頼むぞ!」

P「ああ」

少し手伝っただけだがああやって海美のサポートをする、というのは悪くないかもしれない

海美「お待たせ!」

そんなことを考えていると着替え終えた海美が戻ってきた

P「それじゃあ帰るか」

海美「うん!」

元気に返事をしながら海美が左腕に腕を絡めてくる

P「…歩きにくいぞ」

海美「大丈夫!」

まだ気温は高く、じわりと汗が出て来る

P「…暑いんだが」

海美「暑いね」

そう言いながらも海美は離れようとしなかった

P「海美はさ」

海美「?」

P「俺にマネージャー、続けて欲しいか?」

海美「うん」

P「今日ほんの少しかじっただけだから失敗するかも知れないぞ?」

海美「大丈夫!私が選んだんだもん、間違いない!」

海美「それにもうすぐ大会もあるから、どうせ目指すなら一人より二人が良いし」

P「…そうか」

海美の気持ちを聞いて、俺は決意した

P「海美、俺陸上部にマネージャーとして入部しようと思う」

P「どこまで出来るかは分からないけど…全力でお前をサポートしたいんだ」

海美「うん…ありがとうやっぱり大好き!」

一旦ここまで
多分このシリーズで一番面倒くさい性格をしてるのは恵美です

…文化祭が近づいて来た

現在文化祭での出し物を決めるHRの真っ最中なのだが…

想像以上にグダグダしていた

これには訳があって、いつもならクラスをまとめてくれている田中さんが不在だからだ

田中さんはクラスの中で唯一プロデューサー選挙に立候補し、見事プロデューサーとなった

そのため文化祭全体を取り仕切る事になっており、今もプロダクションで色々と作業をしているだろう

これは今日も決まらないな…と思っていたとき、冬馬が立ち上がった

冬馬「このままじゃ埒があかねえ、もうそんなに期間もねえしさっさと決めちまおうぜ」

P「決めるったってなんかアイディアでもあるのか?」

冬馬「一応はな」

そう言うと冬馬は教壇へ向かい正面に立った

そして冬馬は自分のアイディアを話し始めた

冬馬のアイディアを受け、クラス中からも少しずつアイディアが出始める

最終的にお化け屋敷、メイド喫茶、演劇の三つに絞られ、多数決で決めることになった

冬馬「で、お前は何にするんだ?」

P「そうだな…」

正直どれでも良いんだが…

冬馬「まあメイド喫茶なら高坂のメイド姿が見られるかもな」

P「…」

冬馬に言われ、海美のメイド姿を想像する



…良いな、これ

だが

P「メイド喫茶以外なら何でも良い」

誰かが海美に奉仕されるなんて我慢ならない

結局クラスの出し物はお化け屋敷となった

一部猛烈な反対もあったが、残念ながら多数決の前には黙らざるを得なかった

P「海美は文化祭どうするんだ?」

休憩中の海美に声をかける

海美「私はPとなら絶対楽しいから、一緒に回れたらそれでいいよ」

P「そっか」

その日の夜、また海美が一緒に寝ようと言ってきたので仕方なく一緒にベッドに入る

暑さはなりを潜め、夜は少し冷えるようになってきたため、海美はますますくっついてくるようになった

向かい合って寝る俺達

海美は俺を抱き締めるように体を密着させ、俺は頭を撫で続ける

なんだかんだで海美の頭を撫でるのは好きかも知れない

そんなことを考えていると、海美がさらに身体を押し付けてくる

柔らかい感触や、海美の匂いが俺の理性をくすぐるが、なんとか堪える

海美「ねえ」

素数を数え、精神をなんとか安定させようとしていると

海美「キス、するね」

俺の唇に海美の唇が重なった

一瞬のような、永遠のような時間が流れる

やがて唇を離し、俺を見上げる海美

P「海美…」

海美「…熱いね」

P「熱いか」

海美「Pを抱き締めてたら、Pの匂いとか、心臓の音とか聞こえてきて、私の身体が中からどんどん熱くなって」

海美「今もまだ熱い」

海美「でもこの熱さ、私は嫌いじゃないかも」

P「そうか」

海美「ねえ、P」

P「うん?」

海美「Pの身体も、熱くなってるよね?」

P「…」

実はキスをされた辺りからずっとビルドアップしていた

気付かれないように腰は引いていたのだが、無駄だったか

海美「二人の身体が温まってるなら…」

海美「良い、よね?」

海美「私もう、我慢できないから」

P「ああ、俺もだ」

キスをして…

スポーツの秋に夜のスポーツをした

一旦ここまで

朝、とても幸せな気分で目を覚ます

昨日の夜とうとう海美と一線を越え、心だけでなく体も深く繋がった

しかし海美のスタミナが凄すぎて先にダウンさせられてしまった…次は勝ちたい

海美「んー…」

隣で一糸まとわぬ姿で眠る海美の頭を撫で、今日の予定を考えようとしていると背中に腕を回された

P「ん、海美、起きたのか?」

海美「うん」

海美「昨日は…すっごく良かった」

P「俺もだよ」

海美「だからね、もう一回やろ」

P「えっ」

海美が覆い被さってくる

P「ちょ、まっ!」

海美「じゃあ、行くよ」

朝から一発、エクササイズした

P「こ、腰が痛え…」

海美「~♪」

隣では海美が鼻歌を歌っている

凄い体力だ…

P「海美…今日は一日ゆっくりしないか?」

体力が底をつきそうなので体力を回復させたい

海美「良いよ」

P「ああ、ありがとう」

海美「体力が回復したら…ね?」

P「…えっ」

休日の二日間を体力を回復させたり消耗させたりして過ごした

冬馬「お前、なんか疲れてないか?」

P「え?いや、大丈夫だ」

冬馬「なら良いけどよ」





響「結構マネージャー業務慣れてきたんじゃない?」

P「おかげさまでな」

響「こっちもスケジュールとか管理して貰えてだいぶ助かってるぞ」

P「なら良かったよ」

今日はここまで
ちょっと短いけどすまぬ

キャラ設定最新版

P
主人公

高坂海美
メインヒロイン
幼少時の一件がきっかけでPに好意を抱く
アタックし続けた結果とうとうPと結ばれる
付き合い始めてから周囲の人
の糖分摂取量が跳ね上がった
いつでもどこでもPといちゃいちゃしたいと思っている

所恵美
ヒロイン
中等部でのある一件がきっかけでPに好意を抱くが、海美の気持ちを知っていたため遠慮気味
雨の中、Pとお互いの気持ちをぶつけ合い、結ばれる
付き合い始めてからはあまり挑発してこなくなったが、挑発しなくてもPの方から行くので関係なかった
遠慮したがりなところは変わらないが、Pの事に関しては譲らない

田中琴葉
ヒロイン
高等部のプロデューサーで、Pと一緒にプロダクションの仕事をしていくうちに互いに意識するようになった
付き合い始めてからは、本人も知らなかった秘められたSっ気が少しずつ顔を覗かせている
海美とはPを取り合ったため、気まずい仲

伊吹翼
ヒロイン
星井美希のようになりたくて色々と模索していたところでPと出会う
モテモテ作成を進めていくうちにPに惹かれていき、美希と争った
付き合い始めてからはPといちゃいちゃいちゃいちゃしており、恋のレッスンを順調にこなしていっている

ジュリア
ヒロイン
校舎裏でギターを弾いていたところ、Pと出会う
一緒にギターを弾くことで、Pの事を信頼していく
Pに告白され、受けたものの恥ずかしくて手を繋ぐことすら必死

北沢志保
メインヒロイン
Pの従妹で、よく懐いていたがある事件がきっかけで会わないようにしていた
ある事件でPは記憶を失っており、その記憶を思い出して欲しいと思いながらもどこかで思い出して欲しくないとも思っている
Pへの罪悪感と好意から割と盲目的で、死ねと言われたら死にかねない危うさがある

島原エレナ
ヒロイン
Pの友人で、太陽の化身のような明るさを持つ
Pとは割と良く絡んでいたが、3年生に進級して席が隣になり、ちょっとだけ意識している

佐竹美奈子
ヒロイン
765学園の食堂を支配している絶対強者
常に自分の料理を食べてくれるターゲットを探している
人柄も良く、人気があるがみな口を揃えてあの量さえなければ…と言われている

七尾百合子
ヒロイン
本が大好きな妄想文学少女
本人曰く人見知りらしいが、オンラインゲームのフレリストを見る限りただの自己申告である
高等部の図書室には中等部にない本が沢山あるため、図書委員になりたがっている

天空橋朋花
ヒロイン
子豚ちゃんと呼ばれる生徒達を従える自称聖女
誰に対してでも割と高圧的な態度を取るが、実はそれは構って欲しいという欲求の裏返しとは子豚ちゃんの談
自分を普通の女の子扱いしたPを気に入っている

馬場このみ
ヒロイン
Pの義姉
幼い頃に父が再婚し、突然出来た弟に戸惑いながらも今まで仲良く暮らしてきた
脱衣所などでPと遭遇するとドキッとしているが、顔には出さない

最上静香
ヒロイン
うどん

鬼ヶ島羅刹
Pの友人
何をやっても基本的に弄られる
勝負事に滅法弱く、今までの人生で勝った事は両手の指で数えられる
しかし決めるときには決めるため、周囲からの評価は高い

御手洗翔太
Pの友人
昔名前が原因でからかわれていたが、Pと冬馬に助けられてから友人となる
人を弄るのが好きで、冬馬がよく被害に遭っている

四条貴音
Top Secret

黒井崇男
昨年のPの担任
わかりにくいツンデレ
キツいことをよく言うが言葉の意味さえ分かっていればその中身はほとんど激励だと言われている
渾名は黒ちゃん、やセレブブラックなど
たまに職員室でセレブイエローこと二階堂千鶴先生と高笑いしているのが目撃されている
最近は高笑いしたときに腰が痛むようになってきたのが悩み
セレブピンクこと水瀬伊織とはあまり仲が良くない

周防桃子
Pの妹
お兄ちゃん大好きっ子だが素直ではないためツンツンしている
Pが女子と仲良くしていると盗られると思い、不機嫌になる

今日は無しで、文化祭は大部分改変予定だからお楽しみに
それと√PGは一旦破棄してその間は√FW Aでも書こうかなと

一応√FWに少しと名前だけは出したけど、基本的には大学部だから出しにくいというか何というか

文化祭の準備は順調に進み、いよいよ文化祭当日となった

海美「P!文化祭だよ!」

P「ああ」

海美「うー!なんかすっごくわくわくしてくるー!」

P「初めから飛ばすと途中でバテるぞ?」

海美「大丈夫、Pと一緒なら私の体力は無限大だから!だから手繋ご?」

P「唐突だな…まあいいけど」

海美と指を絡める

海美「えへへ」

頬を赤らめて満面の笑みで俺を見上げる海美

俺はなんだか照れ臭くなり、頬を掻いた





P「どこから見て回る?」

海美「んー…」

海美は少し考えた後

海美「Pと一緒に楽しめるところかな」

俺に丸投げした

P「一緒に楽しめるところね…」

文化祭のパンフレットを見ながら考える

P「そうだな、まずは…」

海美「まずは?」

P「食べ歩きでもするか」





海美「これたへぇる?」

P「口に物を入れたまま喋らない」

海美「ん…これ食べる?」

P「おう」

P「貰うよ…うん、美味いな」

二人で屋台を回る

色んな種類の食べ物があるのでつい色々と買ってしまう

海美「これだけいっぱいあると食べ過ぎちゃうね」

P「ま、たまには良いんじゃないか?」

海美「そうだね!その分私と一緒に運動しようよ!」

P「良いな、たまには付き合うぞ」

海美「やった!」

いかん眠い一旦ここまで
TA03以降幼なじみ美奈子を没ったのをちょっとだけ後悔してる

よし、美奈子は昔よく遊んだけど美奈子が引っ越し、幼すぎて海美もPも美奈子もお互いを覚えてないけどある約束だけ覚えてるって設定にしよう

海美「ね、ね、次はどこ行く」

P「そうだな…うちのクラスでも行ってみるか」

海美「うん!」




エレナ「アレ?ウミ達どうしたノ?」

P「いや、お化け屋敷に入ろうと思ってさ」

エレナ「ワオ!じゃあお客さんだネ!2名様ご案内だヨ~!」

俺達はエレナに案内され、暗幕を潜り中に入った

海美「真っ暗だね!」

P「ああ、真っ暗だ」

本当は足元が見えるくらいには明るいのだが

海美「真っ暗だと足元が危ないから抱き付くね!」

P「そうだな、真っ暗だと足元が危ないからな」

左腕に海美を感じ、俺達は歩き始めた




海美「ひゃっ!」

P「おっと」

わかってはいてもやはり脅かされると驚くものだ

海美「楽しいね!」

P「ああ」

海美「Pと一緒だからかな?」

P「海美が隣にいるからだな」

海美「えへへ、嬉しい!」

いちゃいちゃしながら進んでいると

冬馬「ゾンビキーック!」

P「あだっ!」

強制退場させられた

一旦ここまで

海美「追い出されちゃったね」

P「やれやれだ」

仕方が無いので別の場所へ向かう

もちろん手を繋ぎながら

P「のんびり色々見て回るか」

海美「うん!」




海美「美味しかったー」

P「なんか懐かしい味だったな」

海美「うん、何でだろ?」

佐竹飯店文化祭出張店でおやつの大学いもを食べた俺達は、何故だかとても懐かしい気持ちになった

P「昔食べたことあったっけ?」

海美「うーん…覚えてない!」

まあどこか別の店で食べた味と勘違いしてる可能性もあるし、深く考えなくても良いか

海美「あ!ねえP!むこうで響がペットカフェやってるみたいだから行こうよ!」

P「良いな、よし、行くか」

海美「私いぬ美と遊ぶの好きなんだ~」

P「俺はハム蔵かな」

海美「楽しみだね!」

P「だな」

俺達はペットカフェへと入っていった

P「響酷くないか?」

海美「そう?」

ペットカフェではブラックコーヒーだけ出され、砂糖は自分たちで周りから採取しろと言われたのだ

もちろん周りに砂糖などなく、渋々ブラックコーヒーだけ飲んで出てきたのだった

P「次は…」

琴葉「あれ、Pくん、海美?」

後ろから声をかけられる

海美「あ、琴葉」

田中さんが後ろに立っていた

P「田中さん」

琴葉「どうしたの、こんなところで?」

P「ああ、実は次どこに行こうか悩んでて」

琴葉「そうなのね」

海美「あ、ねえねえ琴葉、今見廻り中でしょ?」

琴葉「そうだけど…」

海美「どこかに面白そうな所無かった?」

琴葉「面白そうな所…そうね…」

田中さんが顎に手を当てて考えている

琴葉「昼頃に中等部に行ったら演劇をやってたの」

琴葉「それが中々面白かったかな」

P「演劇か」

琴葉「もうすぐ第二公演が始まるから、興味があれば観に行ってみると良いかも」

琴葉「私のアドバイス、役に立ったかしら?」

海美「うん!ありがとう琴葉!」

P「流石、頼りになるな」

琴葉「ふふ、デート、楽しんできてね」

P「ありがとう」

一旦ここまで
DTコンテストは中々良い刺激になって有難い

P「面白かったな」

海美「うん!やっぱりヒーローは良いね!」

田中さんにおすすめされた演劇「マイティヒーローズ」

シナリオも演出もかなり凝っており、見応え十分だった

海美「ああいう風に戦えたらきっと楽しいよね」

P「そうだな…ヒーローになった海美はちょっと見てみたいかな?」

海美「そしたらヒーローカップルだね!」

P「ん?俺はヒーローじゃないぞ」

海美「ヒーローだよ」

海美「あの日からずっと、Pは私だけのヒーローだから」

海美が懐かしそうに目を閉じる

P「…そっか、俺はヒーローか」

海美「うん」

P「はは、なんだか良い気分だ」

海美だけのヒーロー、とても良い響きだ

海美「だから、これからも私のこと見ててね」

P「ああ、もちろんだ」

海美「ところで劇の間ずっと主役の子のスカートとかお腹をちらちら見てた件なんだけど」

P「ごめんなさい」

何でバレたんだろう

海美「楽しかった-!」

海美と屋上に座り込む

校庭ではまだイグニッションダンスが行われており、皆思い思いに踊っていた

P「俺はちょっと疲れたよ」

海美「じゃあ休む?ここ来て良いよ」

そういって自分の太股を叩く海美

P「ん」

俺は遠慮なく甘えることにした

海美「星と月が綺麗だねー」

P「ああ」

夜空に星と月が輝いている

少し肌寒い澄んだ空気の中、俺達はそのまま夜空を見ていた

ふと俺の頬に海美の手が添えられる

海美「ん」

P「…」

そのまま海美は俺にキスをした

P「どうした?」

海美「んー、なんとなく?」

P「なんとなくか」

海美「うん、なんとなく」

にっと笑う海美

俺はそんな海美に手を伸ばし、髪を梳いてやる

そんな感じで過ごしていると

恵美「あ、ここにいた」

屋上の扉が開き、恵美がやってきた

P「恵美」

恵美「おーい、Pと海美いたよー」

扉に向かって声をかける恵美

どうやら俺達を捜していたようだ

冬馬「見つかったならわざわざ呼ぶ必要はねえな」

そう言いながら屋上に冬馬がやって来た

P「俺達を捜してたのか?」

冬馬「おう、ちょっとな」

そう言って袋を見せる冬馬

P「それは?」

冬馬「月見団子だ」

ドヤァ…と音が聞こえてきそうなくらいドヤ顔で冬馬が言う

恵美「今日は満月じゃん?だからお月見しようって話しになってさ」

海美「お月見!」

P「良いな」

だから俺達を捜してたんだな

冬馬「もうすぐ翔太達も来るからよ、先に準備しとこうぜ」

P「ああ」

冬馬とお月見の準備をする

そして準備を終えた頃、翔太達がやってきた

翔太「お待たせ」

琴葉「追加のお団子、買ってきたわ」

エレナ「お月見、楽しみだヨ-!」

貴音「…」

恵美「んじゃ、早速始めよっか」

エレナ「いただきまーす!」

琴葉「エレナ、一気にお団子を取るとお行儀悪いわよ」

冬馬「どうした四条、団子食わねえのか?」

翔太「あ、もしかしてお団子駄目だった?」

貴音「…いえ、頂きましょう」

海美「楽しいね!」

P「ああ」

みんなではしゃぎながら何かをする

俺はこの瞬間が好きだった

海美「ずっとこんな風に笑っていたいね」

P「そうだな…」

ずっとは無理でも、この先もみんなで笑い合える関係を続けていきたい

そう願った

恵美「…」

一旦ここまで

P「なあ海美」

海美「んー?」

汗を拭き、ドリンクを飲んで休憩している海美に問いかける

文化祭が終了し、大会へ向けて激しい練習をしているためか少し疲れているようだ

P「海美は将来、どうするか考えたことあるか?」

海美「んー…Pのお嫁さん」

P「それは内定済みだろ?」

海美「えへへー」

P「仕事とか」

海美「うーん…私は特に考えてないけど…運動に関わるお仕事がいいなー」

P「コーチとか、そういう感じか?」

海美「うん、それでも良いんだけど…ダンスもやってみたいなって」

P「そういえばお前ダンスが好きだったな」

海美「うん」

海美「Pはどうするの?」

P「…俺は」

P「俺は…まだ決めてないな」

海美「…」

P「まあ…そのうち見つけられるだろうし」

P「だからさ、海美は…その、俺のことは気にせずに自分のやりたいことを」

言葉を最後まで口にする前に、海美に抱きしめられた

海美「大丈夫、私はいつも隣にいるよ、置いていったりしない」

P「海美…」

海美「Pはずっと側にいるって言ってくれた、だから私もずっと側にいるから、大丈夫」

P「だけどな…」

海美「焦らなくても良いから、私はずっと一緒にいるから」

海美「だから一緒にやりたいこと、見つけよ?」

P「海美… 」

海美は俺の中にあった焦りを見抜いていたのだろうか

目標に向かって進む海美と、何も見えない俺

いつか置いて行かれるのでは?

そう思うと怖かった

しかし海美は言った、一緒にいると

それを聞き、俺の心は決まった

P「ありがとな、海美」

P「お前が隣にいてくれるなら、俺は頑張れる」

P「隣にいてくれるお前のためにも、俺は俺に出来ることをやるよ」

海美「その意気その意気!」

海美「私達は二人で進めるんだから、楽しいことも、苦しいことも、二人で乗り越えていこうよ!」

P「ああ!」

海美のおかげで気持ちが楽になった

これからも海美を隣で支えていくために、今できることを全力でやろう

練習を終え、ハードルやその他の備品を倉庫に片付けていると

海美「二人でやった方が早いから!」

と海美が手伝ってくれた

海美「鍵も預かってるから早く終わらせちゃお?」

P「ありがとう海美」

海美「どういたしまして!」

二人でやるとやはり早い

あっという間に片付けが終わった

P「よし、備品も揃ってるし帰るかな…海美、鍵を」

そう言いって振り返ろうとしたとき、海美にタックルされた

P「おわっ!」

突き飛ばされた先にはマットがあったので怪我や痛みはなかったが、体勢を崩して倒れてしまう

P「海美!いきなり何を!」

言い切る前に海美が馬乗りになる

P「ちょ、何考えてるんだ!学内だぞ!」

海美「うん、知ってる」

P「帰ってからでも良いだろ」

海美「ダメ、さっきPを抱きしめたら我慢できなくなっちゃった」

P「だ、駄目だ!」

海美「でも体は正直みたいだよ?」

P「くっ…」

海美「もうすぐ大会だし、練習も忙しくなるからやれるときにやっておかないと」

P「待てって!せめて帰ってから…!」

海美「ダメ、待たない」

P「~!」

海美は棒遊びも得意だった

一旦ここまで

その後、大会まで練習と棒を使ったトレーニングを繰り返しいよいよ陸上大会当日となった

陸上部員は学園から出るバスで会場に向かうことになっており、マネージャーである俺もバスに乗せて貰うことになっている

席は最前の補助席だったのだが…

海美が隣が良いと言い出し、最終的に海美の隣だった響と変わり俺が海美の隣に、響が補助席に座ることになった

海美「とっなり~とっなり~♪」

上機嫌な海美に対し

響「自分…選手なのになんで補助席に…」

響は体育座りでしょげていた

…大会が終わったら何か奢ろう

会場に到着し、バスを降りる

P「…すごいな」

映像などで見たことはあるが、実際に自分の目で見るとその広さが際立つ

P「こんな広いところで海美が走るのか…」

自分が走るわけでもないのに会場の広さに少し戦慄した

海美はこの会場に萎縮していないか、目を向ける

海美「うーん楽しみ!」

どうやら杞憂のようだ

割り当てられた控室に荷物を運び、選手達は着替えのため更衣室に向かった

この先競技が始まるまで俺の出番はないので客席へ向かう

客席には既にいつもの面子が揃っており、こちらに手を振っていた

P「お前ら早いな、まだ時間あるのに」

恵美「せっかくだし海美達の練習も見ようかなーってね」

琴葉「私も、プロデューサーになった以上部活動には目を通しておかないと…これから部費とかを管理しないといけないから」

田中さんは真面目だな

冬馬「俺は別にこんな早くに来なくても良かったんだがよ」

翔太「とか言ってるけど僕が起きるより早くに電話かけて来たの誰だっけ?」

冬馬「おまっ!」

P「はは、ありがとな」

貴音「私は響、海美、その他の者達が本日のために努力していたことは知っています」

貴音「だから私は、その友人の努力の結果をこの目に刻みましょう」

P「貴音…」

みんなが海美のために駆け付けて、応援してくれている

P「頑張れ、海美」

開会式が終わり、いよいよ陸上大会が始まる

会場の空気は張り詰め、選手達の緊張が客席にまで届いている気がする

そんな中、第一競技が始まった






陸上部のみんなは大会に勝つために必死に練習してきた

俺はこの目で見てきたから良くわかる

だけど

それは他の学校も同じなんだ

P「…」

うちの学園だけが努力している訳じゃない

それはみんなもわかっていることだ

だけど負けて落ち込んでいる部員を見ていると、悔しさが込み上げてくる

競技に関係のない俺でもそうなのだから選手の悔しさは相当なものだろう

次の競技のアナウンスが聞こえてくる

この競技は確か海美が参加する競技だった筈だ

選手が入場してくる、もちろん海美の姿もある

ここから見える海美の表情はとても真剣で、綺麗だった

各選手が位置に付く

海美の出場する競技は短距離走

瞬発力、加速力、最高速度、全てが優れている海美の得意競技だ

係員が腕を上げ

パァン

合図をした

その瞬間、海美は後続を完全に置き去りにした

短距離走に参加した他の選手も自信があっただろう

だけど相手が悪かった

海美は後続を完全に置き去りにし、1位でテープを切った

今の海美は控えめに見ても絶好調だ

海美は客席の俺達に向かい

海美「ぶい!」

Vサインを決めた





その後走り幅跳びや障害物走などをこなし、昼休みを迎える

海美「ね、ね、どうだった?」

P「ああ、凄かったぞ」

海美「えへへ、褒めて褒めて!」

P「よーしよく頑張ったな~」

昼飯も食わず、海美の頭を撫でてやる

海美「私、午後も頑張るから!」

P「ああ、俺も応援してるからな!」

P「とりあえず昼、食べようか」

海美「うん!」

鞄から二人分の弁当箱を取り出す

P「一応作ってみたんだ、このみ姉さん程うまくは出来てないけど」

海美「そんなことないよ!Pが私のために作ってくれただけで最高に嬉しい!」

P「なら良かったよ」

弁当箱を開け、箸をつけようとしたところで海美に引っ張られた

P「どうした?」

海美「あーん」

海美が口を開けてこちらを見ている

海美「あーん」

P「ほら」

おかずをつまみ、海美の口へと運ぶ

海美「うん!おいしい!」

海美は嬉しそうだ

海美「はい、あーん」

今度は海美がおかずをつまみ、俺の方へと差し出してくる

P「あーん」

P「うん、悪くないな」

味見はしていたが目立った失敗もなく、美味しい弁当になっていた

それから俺達は自分の弁当には手をつけず、互いに食べさせあう

そんな時、肩を叩かれた

P「ん?」

後ろを振り返るととても良い笑顔の冬馬がいた

P「どうしたんだ冬馬?」

冬馬「お前ら、向こう行け」

冬馬の笑顔に気圧され、俺達は渋々移動した

隔離されたまま昼食をとる

邪魔が一切入らなかったので思う存分いちゃいちゃした






昼休みが明けて陸上大会は後半戦を迎えた

みんなの頑張りで上位は維持できている

海美と響は温存出来ているしこれなら優勝を狙えるだろう

…そう思っていた時、それは起きた

P「よーし良いぞ海美!」

海美が参加したハードル走

海美はトップだった

しかし海美になんとか食らいついていた選手がバランスを崩し…

海美を巻き込んで転倒した

P「海美!」

倒れた海美に駆け寄る

P「海美!大丈夫か!」

海美は膝を抱えて歯を食いしばっている

P「膝をやられたのか?少しじっとしてろ」

海美を抱き上げると風花先生が手を振って合図しているのを見つけたので指示に従うことにした

風花「こっちに医務室があるから」

P「ありがとうございます風花先生、もうセクハラしません」

風花「ほんと!?じゃあ先生頑張って治療するから!」

風花「はい、これで良し」

風花先生の手当てが終わる

長年海美の怪我の手当てをやってきたが、やはり本職には敵わない

P「流石ですね風花先生、見直しました」

風花「ふふ、たまにはオトナとして頑張らないとね」

P「風花先生、後でちょっと相談が」

風花「何となく用件はわかるけど…」

P「お願いします、後で詳しく話します」

P「海美、足の様子はどうだ?」

海美「うん、痛むけど折れてはなさそうだから大丈夫」

P「なら良かったよ」

安心して息を吐いた

P「でもその足じゃ走れないな」

海美「でも、リレーが残ってるのに」

P「走ったら悪化するぞ」

海美「…」

風花「海美ちゃん、私も走らない方が良いと思う」

P「また来年、次がある、だから今回は」

海美「次なんてない!」

海美が咄嗟に立ちあがる

海美「っ」

しかし足が痛むのだろう、すこし顔をしかめて再び座り込んだ

P「ほら、無理するなって」

海美「次なんてない、この大会は今しかないもん!」

P「お前の言いたいこともわかるけど…」

海美「お願い、出させて」

P「…」

海美「お願い」

海美がまっすぐこちらを見つめる

その瞳には強い意志が見えた

しばし見つめ合い…

P「仕方ないな」

折れることにした

海美「ありがとう!」

P「ただし無理そうならちゃんと言うんだぞ」

海美「うん!」

風花「本当は止めなきゃなんだけど、二人で決めたのなら協力するわ」

P「ありがとう風花先生」

P「それじゃあ海美、出番までゆっくり休むんだぞ」

そして俺は医務室を出た

高木「話は聞かせて貰ったよ」

P「高木先生」

うちの学園の部活動には顧問が存在しない

生徒だけで部活動の全てを担っている

もっとも大会や合宿の際には必ず誰かが付いてくるのだが、今回はそれが高木先生だった

高木「高坂くんが怪我をしたようだが本人は最後のリレーに出たがっているようだね」

P「はい、俺も最初は止めましたが…本人の意志を尊重したいと思います」

高木「うむ、私も高坂くんの意志を尊重しよう」

P「ということは」

高木「高坂くんのリレー出場を許可しよう」

P「ありがとうございます」

高木「ただし条件がある」

P「え?」

高木「その条件は…」

一旦ここまで

観客席に戻ると冬馬達が駆け寄ってきた

冬馬「おい、高坂は大丈夫なのか」

P「ああ、風花先生に応急手当してもらったからな」

エレナ「それなら一安心…かナ?」

P「とりあえず海美には最後のリレーまで休むように伝えてある」

恵美「それってリレーに出場するってこと?」

琴葉「そんな!怪我してるのに!」

P「俺だって止めたさ、だけど出場するのは海美自身の意志だ」

P「俺が言っても聞かないほど、海美は本気だ」

P「それに高木先生も許可を出した、それなら俺は見守るだけだ」

高木先生が出した条件、それは海美をアンカーにすること

アンカーなら他の生徒が差をつければ海美への負担も少なくなるからだそうだ

恵美「Pに出来ること…いや、Pにしか出来ないこと忘れてるよ」

P「え?」

恵美「海美が頑張ってゴールしたらさ、思いっきり甘やかして褒めてあげること」

恵美「海美のためにPも頑張る、そしたらさ、きっと気持ちが届くから」

P「…ああ、そうだな!」

恵美「わかればよろしい、じゃあウチらは応援しようよ」

恵美「海美は一人じゃない、ウチらがついてるって、届けてあげなきゃ」

競技が進みもう間もなく最終競技が始まる頃、俺は再び医務室を訪れていた

P「海美、調子はどうだ」

海美「うん、ちょっとマシになったかな」

P「それなら良かった…いけるか?」

海美「いくよ」

P「わかった、そろそろだから移動しようか」

海美「うん」

海美を背負い立ちあがる

P「風花先生、ありがとうございました」

風花「気にしないで」

風花「海美ちゃん、頑張ってね!」

海美「うん!」

P「みんな心配してたぞ」

海美「うん、後で謝らなくちゃ」

P「部活のみんなは逆に気合い入ってたな、多分エースであるお前がやられたからだと思うが」

海美「私エースなんて柄じゃないのに…でも嬉しいな」

P「…最後の競技、勝っても負けても俺はお前を褒めてやる、だからさ」

P「全力で行ってこい!」

海美「うん!行って来る!」

海美「でも、その前に」

P「ん?」

海美「頑張る勇気、頂戴?」

P「…仕方ないな」

俺は周囲に人気が無いことを確認すると

サッと額にキスをした

海美「…おでこだけ?」

P「今はな」

海美「むー…ちょっと不満だけど、楽しみは後にとっとくね!」

P「おう、楽しみにしてろ」

海美「それじゃあ改めて」

海美「いってきます!」

P「いってらっしゃい」

俺は少し足を庇いながら歩く海美の背中を、黙って見送った

観客席に戻り、腰を下ろす

冬馬「いよいよか」

P「ああ」

翔太「全力で応援しないとね」

みんなが海美の応援をしてくれる

こいつらと友達になれてよかった

改めてそう思う

そしてとうとう最終競技…リレーが始まった

皆後のことを気にしないで良いためか全力で走っている

足の速いメンバーを揃えているので少しリードしているが…このままでは厳しいか?

そしてバトンが周り、もう間もなくアンカーの出番が来る

今バトンを手にした響は、圧倒的な加速で後続を抜き去り単独トップに躍り出た

P「響-!行けー!」

冬馬「良いぞ我那覇-!」

貴音「響、あなたの力を」

声援に気付いたのか響はちらりとこちらを見ると

bビッ

サムズアップをし、さらに加速した

そしてバトンが…

響「海美!」

海美「響!」

海美に渡る

海美「っ!」

海美が走りだすがやはり痛むのか、いつもより数段遅い

冬馬「やっぱり傷に響いてるみたいだな…」

桃子「止めた方が良いんじゃ…」

P「…」

二番手の選手が追い上げてくる

翔太「追いつかれるよ!」

P「…」

そして二番手は、海美を抜かし一番手となる

琴葉「抜かれた!」

環「うみー!がんばれー!」

少しずつ離されていく

エレナ「ウミー!ファイトだヨ-!」

恵美「海美-!根性見せろ-!」

だから俺は

P「海美-!勝て-!」

心の底から応援する

…少し、海美のスピードが上がった気がした

P「行け!行け-!」

喉が潰れても構わない

今一番頑張っているのは海美だ

だから俺は、全身全霊で海美を応援する

P「海美-!!」

海美のスピードが徐々に上がり、とうとう先頭と並んだ

先頭の選手が驚愕に目を見開いているのが見える

陸上部のみんなの声援も聞こえる

響「海美-!あとちょっとだぞ!」

P「海美-!」

最後の叫びを上げた瞬間、ゴールテープが切られた

…………………………




バスを降り海美を背負って歩く

このみ姉さんは環達を送っていったので、今は二人だけだ

P「お疲れ様」

海美「…うん」

P「よく、頑張ったな」

海美「…うん」

同時に切ったゴールテープ、カメラや検証の結果、相手の方が先に触れていた

最終結果は2位、765学園の陸上部は優勝を逃してしまった

海美「私が怪我しなかったら、勝ててたよね」

海美「私が無理に出場しなかったら、きっと勝ててたよね」

P「…かもしれないな」

海美「…」

P「でもな海美、終わったことなんて考えるだけ無駄だ」

P「今自分がやれる精一杯をやった、それが今回はたまたま負けてしまっただけだ」

P「いつも全力なお前のことはみんな知ってる、誰も責めたりなんかしないさ」

海美「…」

P「この負けを次にぶつけよう…時間はある、だから一緒に、走って行こう」

海美「…うん」

そのまま歩き出すと、背中から小さい嗚咽が聞こえた

海美「勝ちたかった…勝ちたかったよ…」

P「悔しいか?」

海美「…うん…悔しい」

P「その悔しさをバネにして、次は必ず勝とうな」

海美「…うん」

P「だから泣くんじゃない、頑張る決意が涙と一緒に流れるぞ」

海美「…ん!」

P「よし、偉いぞ」

海美「泣いたらお腹空いちゃった」

P「帰ったら何か作るよ、何が良い?」

海美「なんでも!」

P「一番困る回答をどうも」

帰ったら冷蔵庫の中を確認しないとな

海美「Pの料理なら絶対美味しいから、Pの作った料理が食べたい!」

P「だからなんでも、か…わかったよ」

海美「楽しみにしてるね!」

P「ああ」

海美を背負って帰り道を歩く

こうして陸上部の大会は、僅かに悔しさを残して終幕した

P「だいぶ寒くなったな」

刺すような空気に少し震える

今日は12月の24日、テンションの上がる人と下がる人が明確に分かれる日の一つだ

こうやって町で人を眺めているだけでも、結構な差がある

去年までは俺もあっち側だったんだよな…などと考えているとようやく待ち人がやってきた

海美「お待たせ!」

P「おう」

海美が右腕に抱き付いてくる

P「それじゃあ必要なもの買いに行くか」

海美「うん!」

今日は我が家でクリスマスパーティーを行うことになっている

俺と海美は買い出し班だ

海美「何足りないんだっけ?」

P「えーっとな」

恵美と冬馬から渡されたメモを見る

P「恵美からはジュース類とパーティーグッズ、冬馬からはサラダ用の野菜と食器類だとさ」

海美「これ、わざわざ町まで出る必要なかったんじゃ…」

P「まあ気を利かせてくれたんだろ、恵美なんかにやにやしてたし」

海美「じゃあ遠慮なく!デートしよ?」

P「良いぞ」

唐突に始まったから何のプランもないけれど、デートを楽しむとしよう




デートとは言っても二人で町を回るだけの簡単なものだ

プレゼントを渡したり高級なレストランなんてものは俺達には無縁だ

それでもショーウインドウの商品の値段を見てはしゃいだり、少し足を止めて町のイルミネーションを見たり、音楽を聴くだけで楽しかった

海美「♪」

海美もかなり機嫌がいい

一旦ここまで
あけましておめでとう
今年もよろしくお願いします

P「クリスマスもさ」

海美「?」

P「こうやって誰かと一緒に…海美と一緒に過ごすと随分変わって見える」

海美「そう?」

P「なんて言うのかな、こう…特別感があるというか」

海美「特別なのは当然!今年のクリスマスは今日しかないんだから」

海美「でもね?Pと一緒に過ごせるクリスマスはこれからもずっと…たくさんの特別があると思う」

海美「私は今からその特別が楽しみで仕方ない!」

そう言って楽しそうに笑う海美

P「俺も、海美と過ごす特別なクリスマスが楽しみだよ」

海美が俺の腕に頭を寄せる

腕から伝わる温かさに、俺の心は弾んだ

海美「じゃあさ、私達の特別なクリスマス、楽しもうよ」

P「そうだな」

俺達はデートを再開し、充実した時間を過ごした

P「…ん?おっと海美、デートはここまでだ」

町の時計を見ると思ってた以上に時間が経っていた

P「それじゃあそろそろ必要なもの、買いに行くか」

海美「うん!」

近所のスーパーへ向かうために移動していると、ある店のショーウインドウの中にマフラーを見つけた

P「マフラーか…」

少し長いマフラーを買って海美と二人で巻くのも有りかな…と考えながらスーパーへ向かった

スーパーとドン○で必要なものを買い揃え帰宅する

飾り付けは既に終わっており、後は料理が出来れば完成だ

冬馬「帰ってきたか、サラダ作るから野菜こっちにくれ」

P「おう」

冬馬に買ってきた野菜を渡す

冬馬は野菜を受け取ると調理に取り掛かった

冬馬の邪魔をするわけにもいかないので俺はジュースを紙コップに注ぎ、リビングのソファに座る

するとソファの後ろから恵美が顔を出した

恵美「海美とのデート、どうだった?」

P「どうって言われてもただウインドウショッピングしただけだぞ」

恵美「そっか」

あっさり引き下がる

恵美「Pは今幸せ?」

P「どうしたんだよ」

恵美「いいからいいから」

P「そりゃあな、幸せだ、友達もいるし海美もいる」

P「自分が思ってた以上に恵まれてたんだなって思う」

恵美「ん、なら良し」

P「?」

恵美が何を聞きたいのか、良くわからない

恵美「まあアタシの質問に深い意味はないよ」

恵美「幸せならそれが一番」

P「何の話だ?」

恵美「ちょっとした心理テストみたいなもんだから気にしないで」

P「心理テストね…それで、結果は?」

恵美「ん、秘密」

P「なんだそりゃ」

恵美「にゃはは、まあ良いじゃん良いじゃん」

恵美「さーて、アタシはちょっとキッチンの方でも見に行こっと」

恵美「もーお腹ぺこぺこでさー、催促してくる」

恵美は離れていった

…本当に何だったんだ?

クリスマスパーティーの途中、エレナがふと外を見る

エレナ「ワオ!雪降ってるヨ-!」

P「お、本当だ」

空から降りてくる白い結晶がクリスマスムードの町を白く染める

冬馬「うげ、積もったら面倒な事になりそうだな…」

恵美「えー、良いじゃんホワイトクリスマスなんだし」

翔太「僕はバスさえ止まらなかったら雪降ってても良いかなー」

貴音「…積もった雪の綺麗な部分だけを集めてしろっぷをかけたいですね」

琴葉「貴音さん…お腹壊しますよ」

すぐに止むと思っていたのだが、その後も雪は降り続けた

帰りに支障が出るとまずいので、クリスマスパーティーを切りあげて帰る準備をする

冬馬達と響、貴音は見送りは必要ないと言っていたので恵美達を送っていくことにした

海美「ううー寒ーい!」

外に出ると予想以上に寒い

琴葉「本当に冷えるわね…」

恵美「ホワイトクリスマスって見る分には良いけど寒いから籠もりたくなるね」

エレナ「あはは!雪だヨ-!」

エレナは楽しそうに走り回っていた

恵美「この辺りで良いよ」

ある程度進んだところで恵美がそう言った

P「良いのか?」

琴葉「ええ、あと五分もかからないから」

エレナ「雪でPもウミも濡れちゃって、このままだと風邪引いちゃうからネ」

P「わかった、じゃあ気を付けてな」

恵美「じゃね!」

海美「それじゃあまた今度!」

三人が歩き出したのを確認し来た道を戻る

肌を晒している部分は刺すように冷たいが、別の手に包まれている右手は暖かかった

海美「あ、そうだ」

海美が持っていた鞄を漁る

P「どうしたんだ?」

海美「これ、クリスマスプレゼント!」

海美がラッピングされた物を渡してくる

P「帰ってからでも良かったのに…これは?」

海美「帰ってからじゃ駄目!今だから大切なの!」

海美「とりあえず開けてみて?」

言われたとおり袋を開ける

中身を取り出すと…

P「これは…マフラーか?」

海美「初めてだったからあんまり上手には出来なかったけど…」

海美の手作りなのだろう、他の人から見れば歪なマフラーなのだろうが…

P「ありがとう海美、最高のプレゼントだ」

俺にとっては世界で一番素敵なマフラーだ

海美「つけてみて」

P「ああ」

マフラーを首に巻く

しかし…

P「これ、長すぎないか?」

一人で巻くには長すぎる

半分に折ってから巻いても腰辺りまで余るくらいだ

海美「ううん、長さ合ってるよ」

そう言うと海美は俺のマフラーを解き、巻き直す

だが折ってから巻くのではなくそのまま巻いた

P「やっぱり長くないか?」

やはりかなり余ってしまう

というより持ち上げていないと地面で引き摺ってしまいそうだ

海美「ううん、だって」

海美は俺が手に持ったマフラーを手に取り

自分に巻いた

海美「こうすれば、ちょうど良い長さでしょ?」

一つのマフラーを二人で使う…そのための長さだったのか

海美「えへへ、暖かいね!」

P「ああ」

ただマフラーを巻いたからだけじゃない

海美と同じマフラーを巻く…それが最高に暖かかった

P「海美」

海美「?」

P「俺からも、プレゼントだ」

持っていた袋を渡す

海美「ありがと!開けてもいい?」

P「ああ」

海美「これ…ニット帽?」

P「市販品で悪いな…だけど絶対海美に似合うと思う」

海美「嬉しい…」

そう言うと海美は俺にニット帽を渡す

海美「Pが私に被せて欲しいけど…良い?」

P「もちろん」

海美にニット帽を被せてやる

海美「…どう?」

P「うん、思った通りよく似合ってる」

海美「えへへ…ありがとう」

プレゼントを交換した俺達は、寄り添いながら家への帰り道をゆっくり歩いて行った…

その夜、クリスマスツリーを収納してホワイトクリスマスした

一旦ここまで

大晦日

特にやることのない俺達は、特に意味もなく我が家に集まっていた

冬馬「暇だ」

P「そーか」

冬馬「大晦日だから店も閉まってるし」

海美「そーだね」

冬馬「…いつまでも炬燵に籠もっていちゃついてんじゃねえ!」

冬馬が俺を炬燵から引き摺り出そうとする

P「やめろー!俺と海美を引き離すつもりか!」

冬馬「抱き合って炬燵に籠もってんなよ!独り身に対する嫌味か!」

P「やーめーろー!」

冬馬「くそっ、地蔵共め」

結局冬馬は諦めたようだ

冬馬「何でも良いけどよ、年越しはどうすんだ」

P「あー?」

冬馬「年越しはどうすんだ」

P「うちのリビングでやるんだろ、このみ姉さんがもう人数分の蕎麦を注文してるし」

冬馬「年越し蕎麦食って、それから?」

P「カウントダウンしてから寝るで良いじゃないか、夜の寒い時間に外なんか出たくないぞ」

冬馬「それはわかる」

P「初詣は明日の朝行こうぜ」

冬馬「俺と翔太はどこで寝るんだ?」

P「お前と翔太は俺の部屋に布団敷くから」

P「海美達は客間に布団敷くらしいからそっちでな」

海美「やだー」

恵美「わかったー」

エレナ「うんー」

琴葉「もう、二人ともだらしないわよ」

恵美とエレナは炬燵に足を突っ込んで溶けていた

田中さんも口ではそう言いながらも体は正直なのか少し猫背気味だ

P「とーまー、とーまー」

冬馬「なんだよ」

P「みかん取って」

冬馬「しょうがねえな…ほらよ」

P「さんきゅー」

冬馬がみかんを剥いて渡してくれる

P「うん、美味い」

海美「私にもちょーだい」

P「ほら」

海美「あーん…うん、美味しい」

あっという間にみかんを食べ終わってしまった

P「とーまー、とーまー」

冬馬「なんだよ」

P「ジュース取って」

冬馬「しょうがねえな…ほらよ」

P「さんきゅー」

P「とーまー、とーまー」

冬馬「なんだよ」

P「ヅラ取って」

翔太「えっ…冬馬くんヅラだったの…」

冬馬「俺はヅラじゃねえ!」

海美「あまとう…その歳で…」

冬馬「お前らのお陰で本当に毛根が死にそうだよ!」

その後も冬馬を弄ったりゲームをしたりして時間を過ごす

夕方になる頃にはエレナが寝落ちし、それに引き摺られるように次々と寝落ちしていった

P「眠いな…」

最後の力を振り絞り、こたつを弱くする

再び寝転がると、先に意識を手放していた海美が俺を抱き枕扱いしてきたので、海美の体の柔らかさと温かさを感じながら俺も意識を手放した

P「…はっ!?」

突然目を覚ます

辺りを見渡すがみんなまだ眠ったままだ

外はすっかり真っ暗になっており、部屋の電気も豆球が点いているだけなのでかなり暗い

P「今何時だ…」

スマホを確認する

表示された時間は…23時50分

P「ま、マズい!みんな起きろ!」

慌てて隣の海美を揺すり、反対側で寝ている冬馬を足で揺する

冬馬「ん…なんだよ…」

瞼を擦りながら冬馬が体を起こす

P「今23時50分なんだよ!」

冬馬「ふーん………はあ!?」

P「急がないと年を越しちまう!」

冬馬「おい翔太!起きろ!」

P「恵美!エレナ!」

年越しを目前に慌ただしく動き回る

結局年末でも落ち着きがない俺達だった

慌ただしく年を越した俺達は、日が昇り明るくなるまで遊んでから初詣に向かった

P「凄い人混みだな」

冬馬「正月だからな」

神社は参拝客でごった返しており、動くのにも苦労する

P「とりあえずおみくじか?」

冬馬「先に賽銭の方が良いだろ」

P「そっちの方が良いか」

人の波に飲まれながらなんとか賽銭を終え、今はおみくじを引いていた

P「俺は…吉か」

P「海美はどうだ?」

海美「私は中吉だったよ」

海美のおみくじを見ると確かに中吉だった

P「お、成したいことが成るって書いてあるな」

海美「じゃあ今年は大会勝てるね!」

P「ああ」

P「恵美はどうだった?」

同じようにすぐ近くにいた恵美に話しかける

恵美「…」

P「恵美?」

恵美「ん?…なに?」

P「おみくじ、どうだったんだ?」

恵美「ああ、うん、こんな感じ」

P「なになに…運命の人はすぐ側に?」

恵美「にゃはは、おみくじなんて当てにならないからさ」

P「わからないぞー、もしかしたら本当にいるかもしれないし」

恵美「…そだね、いたかもね。…もう手は届かないけど」

P「え?」

恵美「何でもない」

後半小声だったからかよく聞き取れなかった

恵美「まあ良いじゃん、それよりもエレナ達戻ってきたみたいだし合流しよっか」

恵美は足早に歩いて行った

P「?まあいいか」

海美に手を差し出し、手が握られたことを確認すると海美の手を引いて歩き出した





その後初詣を終え、解散して帰宅する

海美「今年はどんな年になるかな」

P「いい年に決まってる」

海美「そうだね」

皆は帰宅し、このみ姉さん達も居ないので今は家に二人きりだ

海美「ね」

P「ん?」

海美「部屋にいこ?」

P「ああ」

一年の計は元旦に有り

おしべとめしべをくっつけた

一旦ここまで

もうすぐ冬休みが終わる

そんな中、海美が二人っきりで出掛けたいと言いだした

ほぼ毎日のように誰かしらと一緒に行動していたため、夜のベッド以外であまり二人っきりになれなかったからだろう

だから俺達はある遊園地に来ていた

海美「遊園地!」

P「ご機嫌だな」

海美「うん!だって久しぶりに二人っきりだし!」

そう言って楽しそうに跳ねる海美

よく見るといつもと違うコーディネートだ、気合いが入っている

海美「めぐみーが服、選んでくれたんだ~」

なるほど恵美のコーディネートか、通りでいつもと違うわけだ

海美「やっぱりめぐみーは凄いよね!私に似合う服をパパパーって選んじゃったの」

確かによく似合っている、海美は普段から可愛いが今日は一段と可愛く見える

P「そうだなよく似合ってる、可愛いぞ」

海美「えへへ…ありがと」

P「それじゃ早速入場するか?」

海美「うん!」

海美が腕に抱き付いてくる

P「学生2枚、お願いします」

P「どのアトラクションに行く?」

そこそこ大きい遊園地のため、色々なアトラクションが存在している

間違いなく一日では回りきれないだろうから絞らないとな

海美「う~ん…」

海美が顎に人差し指を当てて考える

可愛い

海美「じゃあとりあえず肩慣らしに」

海美が指差した先にあったのは…

レールを高速で走り、波打つ動きをするたびに悲鳴が聞こえる恐怖の存在…

ジェットストリームアタックコースターだった

海美「あれ乗りたい!」

P「あ、あれか…」

開幕からジェットストリームアタックコースターか…

乗れないことはないが…

P「さ、最初からジェットコースターってのは少しきつくないか?」

海美「そうかな?」

P「ああ」

海美「じゃああれは?」

指差した先にはフリーフォール

P「…」

P「海美、絶叫マシーンも良いけど最初からフルスロットルだと疲れるぞ?」

海美「大丈夫!スタミナならあるから!」

P「情けないことに俺は海美程スタミナがないからな、途中で疲れるかも知れない」

P「そしたら一緒に楽しめないぞ」

海美「それはやだな…」

P「陸上部でも始める前に準備運動するだろ?それと一緒だ、最初からフルスロットルは準備運動をしないのと一緒だぞ」

海美「それは確かに危ないね」

P「だろ?だから最初は軽いのから慣らしていこう」

海美「うん!」

最初に向かったのはトライブレードカップだった

P「軽めに行こう」

海美「うん!」

その後すぐにこの選択を後悔することになる

海美「じゃあいくよ!」

動きだすと同時に海美が真ん中のハンドルを握り、高速で回し始めた

P「ちょっ」

少しずつ回転が早くなり、今では風を切る音が聞こえるくらいの速度が出ていた

P「うおおぉぉぉ!?」

海美「あはははは!」

目が回る、というか吹き飛ばされそうだ

P「う、海美ぃ!」

海美「あはははは!たのしー!」

結局トライブレードカップは終了するまで、その回転速度を維持していた

P「うぐぐ…」

海美「うーん楽しかった!」

ふらふらしてまっすぐ歩けない俺と余裕な海美

P「目が回る…」

海美「そう?私は平気だったよ?」

P「俺は鍛えてないからな…」

海美「じゃあ私と一緒に鍛えようよ!」

P「気が向いたらな…」

俺達は次のアトラクションへ向かった

その後、トライブレードのダメージが抜けきらない俺は安全策としてカートやメリーゴーランドといった軽めのアトラクションをメインに回り、ある程度回復してから昼食をこなした

しかし午前中お預けを食らっていた海美はとうとう我慢出来なくなったのか、俺の袖を引っ張る

海美「ね、もう良いでしょ?そろそろ乗りたい」

P「仕方ないな…何が良い?」

海美「今一番近いアレからいこ!」

海美が指差したのは名物のL専用ビットブランコだった

かつては別の名前がついていたらしいが、あるブランドからの抗議で名前が変わったらしい

この空中ブランコ最大の特徴は他の遊園地にある空中ブランコとは違い、このビットブランコは支えが一切無く文字通り宙に浮いていることだ

原理は不明だが縦横無尽に動き回るビットは評判がいい

少し並んだが、すぐに順番が回ってくる

変な仮面をした金髪の係員の指示に従いビットに乗り込む

全員が乗り込むと軸となる緑色の宇宙船のようなものが浮かび上がり、所定の位置に付くと順番にビットが射出された

P「うおっ…」

ビットが一気に加速し、空に飛び出す

格納されている閉所から一気に解放された感覚を味わう間もなくビットのスピードに翻弄される

海美「わー、高い!」

海美の言葉を聞き、下を見ると確かに結構な高度がある

P「ていうか高すぎないか!?」

観覧車やジェットストリームアタックコースターよりも高い

海美「これ私が操作して良いんだよね」

海美が乗る前に渡されたヘッドギアを付ける

このビットブランコは機械に任せた挙動を楽しめるが、専用のヘッドギアを着用することでビットを自由に操作できるらしい

ちなみにビット同士はぶつからないように反発するそうだ

海美「私の動きに着いてこられるかな?」

P「まあ好きにやってみ」

海美「わかった!じゃあまずはこれ!」

P「えっ」

海美が念じた瞬間、ビットがひっくり返る

P「!?」

そのまま速度を上げUターンする…逆さまのまま

P「お、落ちる!」

海美「シートベルトしてるから大丈夫大丈夫!それー!」

螺旋を描きながらビットが上昇し、ある程度の高さに到達すると急に動きを止め、そのまま落下

更には直角に曲がったり様々な動きを繰り出す

P「あああああああああ!」

そこから先の記憶はない

気が付くとビット格納庫の中だった

P「なんかあっという間に終わった気がする」

海美「だね!」

P「次はどうしようか」

海美「ゆっくりで良いよ?さっきので気絶してたし」

P「…マジ?」

海美「うん」

P「…」

かっこ悪いところを見せてしまったようだ

その後ゲームセンターや色々なアトラクションを堪能し、もう間もなく閉園時間となった

最後のアトラクションとして観覧車を選んだ

向かい合って座るのではなく隣りに座る

P「ふう…」

海美「今日は楽しかったね!」

P「ああ」

ジェットストリームアタックコースター、ジャブロー・ザ・フリーフォール、ビットブランコ…結局絶叫系ばかりだったな

海美「今日は来れて良かった」

P「だな」

海美「いっぱい遊べたし一日中一緒にいられたし!」

P「二人で出掛ける機会が中々なかったからな」

ゆっくりとゴンドラが動く

それに合わせて景色が微妙に変化していく

海美「同じ高いところから見る景色でも、昼と夜じゃ全然違うね」

P「そうだな…昼には昼の、夜には夜の良さがある」

海美「私達も、この先色んな景色を見るんだろうなー」

P「ああ…」

ゴンドラが天辺に近付く

海美「ねえ」

P「ん?」

海美「…ん」

海美の呼びかけに答え顔を向けると唇を奪われた

海美「えへへ、夜の観覧車でちゅーするってやってみたかったんだ~」

不意打ちを受けて顔が赤くなる

P「そ、そうか」

海美「うん!」

よく見ると海美も頬が赤くなっていた




ゴンドラが天辺を越え、下りに入った

海美「ねえ」

P「ん?」

海美「観覧車は天辺過ぎちゃうと降りて行っちゃうよね?」

P「ああ」

海美「でもさ、私思うんだ」

海美「上った後は、絶対に降りないといけない訳じゃないって」

そう言いながら肩に頭を預けてくる

P「…」

海美「だから私は、私達はずっと上っていきたい、Pと一緒にどこまでも、上れるところまで」

海美「大変なこともいっぱいあると思うけど、私は最後まで一緒に、ね?」

P「俺もそう思うよ、海美と一緒なら限界だって超えてやる」

海美「うん」

P「だから俺はこの手を離さない、この先何があったってお前と一緒に上ってやる」

海美「私も、この手は離さない」

海美「Pが嫌だって言っても、私はずーっと一緒にいるから」

P「馬鹿だな、俺が嫌だなんて言うわけないだろ」

海美「うん、知ってる!」

ゴンドラが地上に降りる前、俺達はもう一度キスをした

P「時間が時間だからやっぱり冷えるな」

遊園地を出た俺達は、海美のくれた手作りのマフラーを一緒に巻き手を繋ぎながら歩いていた

海美「うん、でもこの売店で買ったテムのカイロと二人で巻いてるマフラー、なによりニット帽があるから暖かいよ」

P「俺も、お前がくれたマフラーと繋いだ手があるから暖かい」

海美「嬉しい」

帰り道、ふとローソンに立ち寄る

P「お、ちょうど温かい物が売ってるな、買っていくか?」

海美「うん!あ、半分こしよ?」

P「そうだな、すいません肉まん一つ」

律子「はーい」

買った肉まんを半分こしながら、俺達は帰路についた

バレンタインデー

男女問わず様々な思惑が交差する一年に一度の大イベントだ

この日が訪れるたびに、日本では散った者達の怨嗟の声と、勝ち取った者達の歓喜の声が響き渡るという

P「みんな浮き足立ってるな」

冬馬「へっ、バレンタインなんかで浮かれやがってよ」

と言いつつもそわそわと落ち着きがない

P「へー」

冬馬「なんだよ」

P「なんでも」

冬馬「…」

靴箱の前に着くと冬馬は深呼吸し、何かを決意したかのように自分の靴箱をあけた

冬馬「…」

P「どうした、チョコでも入ってたか?」

冬馬「…なんもねーよ」

校内は割と騒がしかった、至る所でチョコのやりとりがある

「貴音様、日本の伝統に則り猪口礼糖をお渡しします!」

貴音「ありがとうございますエミリー、味わっていただきます」

莉緒「男の子は裸にチョコレートが好きだって言う話を聞いたから試してみたら火傷しちゃったのよ」

このみ「莉緒ちゃん…」

「…」

「志保ちゃんそのチョコ、どうしたの?」

「…何でも無いわ」

「そう?なら良いけど…」

教室に入ると恵美達が声をかけてきた

恵美「おはよ、さっそくだけどこれあげる」

そう言ってチョコを二つ差し出してきた

冬馬「あ、ああ…ってなんで俺はチロルチョコなんだよ」

P「サンキューな恵美」

恵美「本命じゃなくて義理だけどねー」

P「それでもやっぱり嬉しいもんだよ」

恵美「…そっか!」

恵美がにかっと笑った

琴葉「私からも、今年度は色々とお世話になったから」

田中さんも同じようにチョコを渡してくれる

P「ありがとう田中さん」

琴葉「こちらこそ」

エレナ「じゃあワタシもチョコあげるヨー!」

P「サンキューエレナ」

冬馬「所、田中、島原…俺、お前らと友達で良かった」

エレナ「アマトウは現金だネー」

冬馬「何とでも言え」

翔太「おはよー」

P「おう翔太、おは…よ…」

教室に入ってきた翔太は両手に紙袋を下げていた

その中身は溢れんばかりのチョコだった

冬馬「ま、マジかよ…マジかよ…」

冬馬ががくっと膝をつく

恵美「うっわまたいっぱいもらったねー、毎年増えてない?」

翔太「うん、増えてるかな」

P「相変わらず人気だな」

翔太は昔から女子人気高かったからなぁ

翔太「ところで海美ちゃんは?」

P「ああ、海美なら…」

その時、廊下を走る音が聞こえてくる

海美「ま、間に合った~」

海美が教室に滑り込んできた

P「おはよう」

海美「おはよ!」

翔太「珍しいね、海美ちゃんがぎりぎりなんて」

海美「ちょっと寝坊しちゃって」

P「このみ姉さん達が今日は見てないって言うし海美の義父さん(おじさん)義母さん(おばさん)は朝早いからもしかしたらと思って見に行ったらまだ寝ててな…翔太ぁ!」

翔太「反省してまーす」

海美「起こしてくれたら良かったのに」

P「起こしたけどお前が後5時間とか言うから諦めたんだよ」

海美「ちゅーしてくれたらすぐ起きたの!」

P「そうか?なら出来なかった分今から…」

冬馬「他所でやれ」

貴音「ふふ…仲良きことは良いことです」モシャモシャ

冬馬「うおっ、四条いつの間に」

貴音「高坂海美が教室に入ってきた辺りからでしょうか」

冬馬「全く気付かなかったぜ」

P「ところで貴音は何食ってるんだ?」

貴音「そこにあった紙袋の中のチョコですが」

翔太「えっ!?」

その後も雑談していると黒井先生が入ってきた

授業の準備をしていると海美が耳元に口を寄せ囁いてくる

海美「今日の放課後、楽しみにしててね」

P「…ああ」

海美は上機嫌で顔を離すと鼻歌を歌いながら準備を始めた

放課後が楽しみだ

部活動を終え、一緒に帰宅する

靴箱の中に黒猫のシールが貼ってあるチョコを発見したが、それを見た海美は何故か特に何も言わなかった

家に帰ると夜まで待っていて欲しいと言われたのでベッドに転がって時間を潰す

22時を回った頃、窓が開いた

そちらに目を向けると海美が部屋に入ってくるところだった

海美「お待たせ!」

P「ん」

よく見るとポンチョのようなものを着ている

海美「今日はバレンタインだから」

部屋に入ってきた海美がポンチョを脱ぐ

そこには自分自身にプレゼント用のリボンを巻き、チョコを差し出す海美の姿があった

海美「チョコと私をプレゼント!」

P「えっ」

海美「莉緒さんがね、こうしたらPが絶対喜ぶからって」

海美「最初は体にチョコを塗ろうって話してたんだけど莉緒さんが試したら火傷するからやめなさいって」

P「そ、そうか」

莉緒さん…相変わらず非常に残念な人だ

海美「それで…受け取ってくれる?」

P「ああ、もちろんだ」

海美「ありがとう、それじゃあね」

海美がチョコを開け自らの口に含むと

海美「んー」

口移しで食べさせてきた

P「…」

海美「…どう?」

P「凄く甘い」

海美「良かった、それじゃあもっと食べてね?」

チョコを堪能し、お返しに一足早いホワイトデーをプレゼントした

P「…ん」

ふと目を覚ます、春の陽気に包まれ始業式の後居眠りしていたようだ

年度が変わり、教室もクラスメイトも変わった

進級したことで様々な変化があった

家には従妹が住むようになったし、冬馬や翔太といった仲の良い連中とは今年は違うクラスになった

担任も高木先生に変わった

だけどカワラナイモノもある

P「ふわぁ…」

欠伸をした後周りを見渡すと、教室にはもう誰もいなかった

P「みんな帰ったか」

…いや、一人だけいた

俺の中で絶対にカワラナイモノ

海美「おはよ、よく眠れた?」

P「おかげさまで」

海美「じゃあ良かった」

P「起こしてくれたら良かったのに」

海美「気持ちよさそうだったから」

P「そうか」

海美「うん、思わず眺めてた」

P「寝顔を見られるのは結構恥ずかしいんだが」

海美「私は楽しかったよ」

P「そうかい」

P「教室にいる意味も無いし、帰るとするか」

海美「うん」

席から立ちあがり鞄を持つ

海美が隣に並んだ

海美「ねえ」

P「ん?」

海美「良い夢でも見た?」

P「なんでそう思うんだ?」

海美「凄く幸せそうな寝顔だったから」

P「さあな、覚えてないよ…でも」

海美「でも?」

P「幸せな夢なら、今もお前と一緒に見てる」

P「この先ずっと見ていたいと思える、幸せな夢を」

海美「…そっか」

P「なんか凄え恥ずかしいこと言った気がする」

海美「そんなことないよ、私も同じ気持ち」

海美「Pと一緒に、ずっと幸せでいたい」

P「…そうか」

海美の頭に手を置く

海美は少しくすぐったそうにした

P「これからもよろしく頼むよ」

海美「うん!」

海美「ねえ、ちょっとしゃがんで?」

P「ああ」

言われたとおり少ししゃがむと海美が首に手を回し、キスをしてきた

P「…お前は本当にキスが好きだな」

海美「うん、何回だってしたくなっちゃう」

P「ほどほどにな」

教室の扉を開け、一歩踏み出す

教室から出たとき、海美が少し前に出てこちらを振り返った

海美「ねえ!」

P「どうした?」

そして満面の笑顔で

海美「言っとくけど大好き!」

尾張名古屋

最後の一言を書きたいが為に書き始めた765学園物語
自分自身正直ここまで続くとは思ってなかったけど読んでくれてる人達のおかげで今も続けられてます
読んでくれてるみんな、本当にありがとう

というわけで明日からは√PGの再開と√TPの始動を

このSSまとめへのコメント

このSSまとめにはまだコメントがありません

名前:
コメント:


未完結のSSにコメントをする時は、まだSSの更新がある可能性を考慮してコメントしてください

ScrollBottom