竜角の狩猟者「それじゃあ、いってきます」 (23)

遊戯王ss
「竜角の狩猟者」っていうカードを知らなきゃ分からないよ

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昔々、あるところに、疫病に苦しむ村があった。
多くの人々が倒れていく中、その病に耐性を持った少女がひとり。
彼女は故郷を救うため、霊薬の原料となるドラゴンの角を求め、旅立つのだった。

竜角の狩猟者「それじゃあ、いってきます」

お婆さん「くれぐれも、気をつけてな」

お爺さん「すまんの……お前のような、か弱い女の子ひとりに……」

竜角「気にしないで。私は疫病にかからないみたいだし、これくらいしなきゃ」

少年「お姉ちゃん……ちゃんと帰っきてね」

竜角「大丈夫。ドラゴンの角を取って、すぐ帰ってくるからね」

……
…………

ノーテス「グォォオオオオ!!」

竜角「くっ……はぁっ!」 ズバッ

ノーテス「グォォォオオオオオオ!!!」 バタッ

竜角「ふぅ……危なかった……」

竜角「今のドラゴン、さっきの茶色いやつや赤いやつに比べて強かったぁ~」

竜角「けど、これで……角も8本目。結構、順調に集まってきてる」

竜角「よし! あと少し取ったら、一旦村に戻ろうっと」

竜角(それにしても、なんかドラゴンの数が急に増えたような……それに、さっきから形も変だし)

竜角(こいつにはクマみたいな毛、さっきの茶色いやつには、ハリネズミみたいな針。赤いやつには、サソリみたいな……)

イリテュム「ギャオォォオオオオ!!」

竜角「っ! いつの間に!?」

イリテュム「ギャオォォォオオオオオオ!!!」 ブンッ

竜角「きゃっ!」 ガンッ

竜角「痛っ……っ!」

竜角(まずい、痛みで体が……)

イリテュム「ギャオォォオオオオ!!」

竜角(っ! もう、ダメ……!?)

???「ハァッ!」 ブンッ

イリテュム「ギャオォォォオオオオオオ!!!」 ザクッ

???「大丈夫か?」

竜角「あなたは……」

???「話は後だ。まずはこいつを片付ける」 ジャキッ

イリテュム「ギャオォォオオオオ!!」

???「ハァッ……タァッ!!」 ズバァッ!

イリテュム「ギャオォォォオオオオオオ!!!」 バタッ

???「ふんっ、歯応えのないやつめ」

竜角「あっ、あの……ありがとうございます」

???「礼には及ばないさ。ただ仕事をしただけだからね」

???「申し遅れたな。私はバスター・ブレイダー」

竜角「私は、えっと……竜角の狩猟者です」

バスブレ「竜角ちゃんか。ところで、怪我をしているんじゃないか?」

竜角「えっ……あっ、はい」

バスブレ「近くに私のキャンプがある。そこで治療してやろう」

竜角「いえ、でも……」

バスブレ「遠慮なんてしなくていい。さぁ」

竜角「……じゃあ、お言葉に甘えて。あっ、でもその前に……」

バスブレ「何かな?」

竜角「その……このドラゴンの角、取らせてもらってもいいですか?」

……
…………

バスブレ「なるほど。じゃあ君は、村の人たちのためにドラゴンの角を集めていると」

竜角「はい。村に来たお医者さま……レクターさんによれば、それが疫病の霊薬になるって」

バスブレ「そうか……そうと知っていれば、今まで倒したドラゴンの角を取っていたものを……」

竜角「いえ、これは私の使命ですから……」

バスブレ「まだ若いのに、随分しっかりしているな。感心してしまうよ」

竜角「バスターさんは、どうしてドラゴンを?」

バスブレ「ここ最近、急にドラゴンの数が増えてね。悪さをする個体もいるので、原因を調査しつつ狩っているんだ」

バスブレ「しかも、変な共通点があってな……イカの脚を持っていたり、ハエの羽根がついていたり……」

竜角「あっ、私が倒したやつにも、タカの翼が生えてるのがいました」

バスブレ「……もしかしたら、君の言う疫病とも、何か関係があるのかもしれないな」

竜角「だとしたら、ドラゴンの角が霊薬になるのも、納得がいきますね……」

バスブレ「よし。私は一旦戻って、仲間にこのことを話してみよう」

竜角「お仲間さんも、バスターさんと同じ戦士の方なんですか?」

バスブレ「いや……こわ~い黒魔術師さ」

竜角「もう、そんな嘘で怖がるほど、子供じゃありませんから!」

バスブレ「はははっ……君はどうする?」

竜角「私は村に戻って、この角を届けてきます」

バスブレ「そうか。それじゃあ、元気でな」

竜角「……あの、バスターさん」

バスブレ「ん?」

竜角「本当に、ありがとうございました」

バスブレ「……どういたしまして」

竜角「疫病がおさまったら、ぜひ私の村に来てくださいね」

バスブレ「あぁ、そうするよ」

竜角「絶対ですからね? 私、待ってますから!」 ニコッ

……
…………

竜角「よいしょ、よいしょ……」

竜角(この丘を越えたら、もうすぐ……みんな、待ってて!)

竜角「よいしょ……って、あれ?」

竜角(あの炎は……まさか!?)

竜角「みんな!」 タタタッ

……
…………

ゴォッ
メラメラ……

ルクス「ギャオォォオオオオ!!」

プレスト「ギャオォォォオオオオオオ!!!」

竜角「嘘……そんな……」

竜角(村が……燃えてる……)

竜角(ドラゴンたちに、燃やされてる……)

竜角「こんな……こんなのって……」

???「おやおや、これはこれは……村の勇者のお帰りか」

竜角「……レクター、さん?」

レクターや「お疲れさま。けど残念、一歩遅かったな。村はもう燃えちゃったぜ」

竜角「どうして……どうして、こんな……」

レクター「そうだな、頑張ったお前には、ご褒美をやろうか。『真実』っていうな」

竜角「真実……?」

レクター「まずさ、おかしいと思わなかったか。なんで疫病が、この村にだけ流行ったのか」

レクター「それはな、こいつのおかげだよ」

竜角「これって……」

レクター「6本の脚に正12面体の頭、かわいいだろう? 『アモルファージ』っていうんだ。俺のしもべさ」

竜角「……まさか」

レクター「病原菌を蒔いたのはこいつ、ひいては俺だった、っていうわけさ」

竜角「……そんな、どうして……」

レクター「見てみたかったのさ。こいつが人間に感染したら、どうなるのかなって」

レクター「動物に感染すると、そいつを完全にドラゴンへと変えるんだ。だから、人間でも似たようなことが起きると思ったが……」

レクター「なんも面白くない、コロッと死ぬだけだった。あーあ……無駄な時間、過ごしちまったぜ」

竜角「そんな……あなたのせいで、みんなが……」

竜角「信じてたのに……みんな、あなたのことを……」

レクター「おっと、勘違いしてもらっちゃ困るぜ。俺はちゃんと霊薬の作り方を伝授したじゃねぇか」

レクター「村がこうしてドラゴンに襲われたのはな、お前のせいさ」

竜角「っ、私の……?」

レクター「そうさ。お前が無闇矢鱈にドラゴンを殺しまくるから、棲み処を追われた連中がここに来ちまったんだろうが」

レクター「本当、ひでぇ女だよ。村を捨てるどころか、ドラゴン嗾けて村を襲わせるとはな」

竜角「っ! そんな……私、そんなこと……!」

レクター「結果的にそうだろうよ。お前に殺されたドラゴンたちは、お前を恨んでるだろうなぁ」

レクター「それどころか、裏切られた村の連中も」

竜角「っ!」

レクター「信じてたのになぁ、ドラゴンの角を持って帰ってくるって。それなのに、この有様だよ」

竜角「違う……私、そんなこと……」

レクター「何が違うってんだ? ひとり村から抜け出して災厄を逃れておいて、よく言うぜ」

レクター「み~んな、お前のせいだ。み~んな、お前を恨んでる」

竜角「……あぁっ」

レクター「自分だけ助かって。自分だけのうのうと生きて」

竜角「あぁぁああっ!!」

レクター「最低な女だよ、お前は」

竜角「あぁぁぁああああああっ!!!」

バスブレ「そこまでだ!」

レクター「あっ?」

バスブレ「ドラゴンの咆哮を追ってきてみれば、泣き叫ぶ女子と嘲笑う男」

バスブレ「どういう事情かは知らんが、お前が悪人であることだけはハッキリと分かるぞ」

レクター「ちっ、めんどくせぇのが来たな……」

バスブレ「っ、竜角ちゃん!」

竜角「……」

バスブレ「おい、しっかりしろ!!」ユサユサ

レクター「無駄だよ。そいつはもう、二度と立ち直れねぇだろうさ」

バスブレ「貴様、この子に何をした!」

レクター「何もしちゃいねぇよ。ぜ~んぶ、そいつ自身が招いたことさ」

バスブレ「しらばっくれたことを……貴様は何者だ!」

レクター「俺様の名は、竜魔王レクターP」

バスブレ「レクターだと? ……なるほど、全て貴様が仕組んだことだったというわけか」

レクター「超速理解ありがとう。また1から説明する手間が省けたよ」

バスブレ「黙れ! 貴様のような悪は、俺が断じて許さん!!」 チャキッ

レクター「ちっ……本当めんどくせぇな、お前」

チョウ「」 ヒラヒラ

レクター「おっ、ちょうどいいところに蝶々さんが」

レクター「せっかくだ、見せてやるよ」

レクター「アモルファージの力をな!!」

バスブレ「何!?」

レクター「いけっ!」

アモルファージ「」 カサカサ……プスッ

チョウ「!」 ビビビッ

バスブレ「なっ……んだと……!?」

バスブレ(チョウが見る見るうちに、大きくなっていく……)

ゴゴゴ……

バスブレ(そして、ドラゴンに……)

イリテュム「ギャオォォォオオオオオオ!!!」

レクター「さらにマジック発動! アモルファスP!!」

レクター「イリテュム、合体だ!」

バスブレ「っ!!」

レクター「フハハハハッ! アーッハハハハッ!! 見ろ、これこそが俺様の最強形態……」

レクター「虚竜魔王アモルファクターPだ!!」

バスブレ「くっ、なんという禍々しい気だ……っ!」

アモルファクター「喰らえ、ハァッ!」 ゴォッ

バスブレ「ぐわぁっ!!」 バタッ

バスブレ(くそっ、このままでは……)

アモルファクター「消えろ、愚かな戦士め!」

バスブレ「っ!」

???「黒・魔・導!」 ドゥッ!

アモルファクター「おっと……ん?」

???「大丈夫か、バスター・ブレイダー」

バスブレ「ブラック・マジシャン……なぜここに……」

ブラマジ「今朝、何か嫌な予感が頭を過ぎってな。まさかと思って駆けつけたのさ」

バスブレ「すまない、助けられた」

アモルファクター「おやおや、雑魚が増えた。まるでゴキブリだな」

バスブレ「こいつは強いぞ」

ブラマジ「ならば、こちらも奥の手を使おう」

バスブレ「あれか……よし!」

ブラマジ「いくぞ、マジック発動!」

ブラマジ「私とバスター・ブレイダーを融合し……現れよ!」
バスブレ「私とブラック・マジシャンを融合し……現れよ!」

???「超魔導剣士 ー ブラック・パラディン!!」

アモルファクター「どんな姿になろうと同じさ! オラァ!!」 ブンッ

ブラパラ「ハッ!」 ズバッ

アモルファクター「何!?」

ブラパラ「ふんっ」ガキィッ

アモルファクター「くっ……」

ブラパラ「ハァッ!!」 ザシュッ

アモルファクター「ぐはぁっ!!」

ブラパラ「終わりだ……ハァァアアアア!!」 ズバァッ!

アモルファクター「ぐわぁぁああああ!!」 バタッ

アモルファクター「くそっ、この俺様が……こんなヤツらに……っ!」 バリィッン!

ブラパラ「ふぅ……融合解除」

バスブレ「竜角ちゃん!」

竜角「……」

バスブレ「竜角ちゃん、もう大丈夫だ」

竜角「……」バキィッ

バスブレ「うぉっ……竜角ちゃん?」

竜角?「……ふふっ、はははっ」

バスブレ「どうしたんだ、竜角ちゃん!」

竜角?「もう……どうしようもないんです……私は……」

竜核の呪霊者「どうしようもない、存在だったんです……ハァッ!」 ブンッ

バスブレ「くそっ……目を覚ましてくれ、竜角ちゃん! 私だ!!」

竜核「ウォアァァアア!!」ズバッ

バスブレ「っ……どうすれば……!?」

ブラマジ「催眠魔法!」

竜核「ウォアァ……ァ……」 バタッ

ブラマジ「大丈夫か!?」

バスブレ「私は平気だ。しかし、彼女が……」

ブラマジ「……一度、我々の元へ運ぼう」

バスブレ「……あぁ」

……
…………

ブラマジ「なるほど。つまり、村の人々を救うために、彼女はひとり奮闘していたのか」

バスブレ「だが、あの様子では……どうやら騙されていたようだ」

ブラマジ「……あまり自分を責めるな。こういう言い方は何だが、お前にできることは何もなかったさ」

バスブレ「……顔に出ていたか」

ブラマジ「長い付き合いだ、分かるさ」

ガチャッ

ブラック・マジシャン・ガール「お師匠さま、終わりました」

ブラマジ「どうだった?」

ガール「それが……ドラゴンの返り血を浴び続けたせいか、身体に大きな変化が出てます」

ガール「また、皮膚や息からは、あの動物をドラゴンに変える疫病の元が放出されてました」

バスブレ「なんだって……!」

ガール「今は落ち着いていますが、目が覚めたらまた、暴れ出すと思います。そのまま人の多いところにいかれると……」

ブラマジ「我々は大丈夫だが、多くの人間が疫病にかかってしまう」

バスブレ「……」

ブラマジ「……どうする?」

バスブレ「聞くまでもないだろう……こうなった以上、彼女を……狩らねば」

ブラマジ「本当に……それでいいのか?」

バスブレ「他に手はない。いこう」

ガール「あの、どこへ?」

バスブレ「彼女と決着をつける」

……
…………

バスブレ「ここなら周囲に何もない。うってつけの場所だ」

ブラマジ「……本当に、いいんだな?」

バスブレ「大丈夫だ……起こしてくれ」

ブラマジ「……」 ペカー

竜核「……んん……んあっ」

バスブレ「……目が覚めたか?」

竜核「……バスター、さん?」

バスブレ「……」

竜核「ううっ……うぁああっ!!」

ガール「っ! お師匠さま!」

ブラマジ「彼女によって殺されたドラゴンたちの怨嗟が、魂を穢している。もう、打つ手は……」

ガール「そんな……」

竜核「ウォアァァアア!!」 ブンッ

バスブレ「……」 ガキィッ ズバッ!

竜核「ウゥ……」

バスブレ「……」ジャキッ ザシュッ!

竜核「ウァアッ!」

バスブレ「……」シュッ ズバァッ!

竜核「アァァアアアア!!」 バタッ

バスブレ「これで……全て、終わりだ……」 チャキッ

竜核「ウッ……」

バスブレ「ハァァ……ハァッ!!」 ブンッ!



……「私、待ってますから」 ニコッ……


バスブレ「っ!」 ピタッ

竜核「ウァ……」

バスブレ「……無理だ」

ブラマジ「バスター・ブレイダー……」

バスブレ「やはり私には、どうしても……!!」

ブラマジ「……聞いてくれ、バスター・ブレイダー」

ブラマジ「彼女を殺さずに救うことは、もはや不可能だ。だが……」

ブラマジ「その負担を、軽くする方法はある」

バスブレ「……何?」

ブラマジ「それは……お前が彼女と融合し、その穢れを永遠に共に背負うことだ」

バスブレ「……だが、それでは……彼女に平安は訪れない」

ガール「……こう考えたらどうでしょう? 今はどうすることも出来なくても、生きていればいつか、治療する方法が見つかるかもしれないって」

ブラマジ「……」

バスブレ「……かけてみるか、未来に」

ブラマジ「……いいんだな?」

バスブレ「すまない、いつもお前に助けられてばかりだ」

ブラマジ「……いや、今度はお前が彼女を救うんだ」

竜核「ウゥ……ウァアアッ……」

バスブレ「……頼む、ブラック・マジシャン」

ブラマジ「……マジック発動、融合」

ブラマジ「場にいるバスター・ブレイダーと、ドラゴン族モンスター1体を融合し、現れよ」

ブラマジ「竜破壊の剣士 ー バスター・ブレイダー」

……
…………

私は……私は……

もう大丈夫だ、竜角ちゃん

みんな……ごめんなさい。私は……

いいんだ、竜角ちゃん。君が村のために尽くしたことは、みんなよく分かっているはずだ

バスター、さん……

大丈夫、何も恐れることはない。これからずっと、私が側にいる
私も共に、ドラゴンの怨嗟を背負う。そして、いつかは……

……ありがとう、バスターさん

終わり

竜角ちゃんに救いを与えたかったけど俺には無理だった

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