狐娘「家に転がり込んでやったわ」 (324)

狐娘「うむ」

青年「うむ。じゃねぇよ」

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*

狐娘「くっ……ここはもう持たん!わしに任せて逃げるんじゃ!」

狐娘『なっ……お前!一緒に生きて帰ろうと約束しただろう!』

狐娘「……そんな約束、わしの記憶には無いの」

狐娘『っ…!お前……』

狐娘「わしより、ぬしが生き残る方がよい」

狐娘『……お前の骨なんて拾いたくないからな…!』グス

狐娘「わしも、ぬしの骨を拾いたくはないからの」

狐娘「さぁゆけ!わしのことは気にせ―――――んがっ?!」ゴスッ



青年「お前は何をやってるんだ」

狐娘「いったた……ぬしは知らんのかや?犠牲ごっこを」

青年「犠牲…?」

狐娘「古くから続く因縁……その犠牲じゃよ」

青年「犠牲……」






青年「って。その犠牲ごっことやらをするのは構わん、だがな」

青年「夜遅くに大声出してドタドタと騒いでたら近所迷惑だろうが!」

青年「しかも一匹二役とか無理があるだろ」

狐娘「ちっちっち。わしはこれでも、‘‘恥辱の化け狐’’と言う異名を持つんじゃぞ?」ニヤ

青年「それバカにされてるだろ」

狐娘「ば、バカになどされておらん!」

青年「はいはい。洗面所で籠城してないで、風呂に入るぞ」グイ

狐娘「うぎぎ……嫌じゃぁ…!」グググ

青年「なんでだよ!オレの言うこと聞くって言っただろ!」

狐娘「……ぬしとは、その……恥ずいのじゃ///」

青年「元はと言えば、おめーがいつもフザケて風呂に入るからだろ」

青年「この前だって―――

―――


狐娘『ククク……見よ!力がみなぎってくるわ!』ニヤリ

狐娘『余りの大きさに、わしの力が白く具現化しておる……』ホカホカ

狐娘『ぬしよ、しかとその目に焼き付け―――

狐娘『む?…にゃ、にゃんでしょこに……』ボンッ

狐娘『み、見るな!!』

青年『いや見ろって言ったのお前じゃん』


―――


青年「なんて風呂上がりに鏡の前でフザケて、何度もお湯を浴び続けてたやつが何を恥ずかしがってんだよ」

狐娘「わしだって乙女じゃからの」

青年「オレより何倍も歳が上とか威張ってた癖に、どの口が言ってんだ」

狐娘「歳は上じゃが、心と体は……オ ト メっ じゃよっ」

青年「ふんっ」ズムッ

狐娘「ぅごっ……乙女の腹を殴るとは……」

青年「言い方に気をつけたまへよ。この家の主はオレだからな」

狐娘「つまるところ、わしはこの家の大狐柱じゃな」フンス

青年「じゃな。じゃねぇよ、意味わからんわ」

狐娘「……」パクパク

青年「『あ』『ほ』ってそれはお前がだっつの!喋れよ!」

狐娘「こんこんっ♪」ウワメ

青年「媚びても風呂は入ってもらうからな」

狐娘「ちっ、小童の癖に図に乗りおって」




狐娘「う"っ!」ガク

青年「っ!どうした!?」

狐娘「う"ぅっ……」

青年「ど、どこか痛いのか!?どうすれば……狐のことなんてオレ―――

狐娘「う……ぅ……ぅ」

青年「う、う…?」







狐娘「産まれるぅ……なんつっての―――



 ドガシャァ!!


狐娘「」

青年「今度フザケたら叩き出すからな」

*

狐娘「ぬしよ、上がったぞ」ホカホカ

青年「おーう。ちゃんと入ってきたみたいだな」

狐娘「うむ。じゃから、はよぅ乾かせ」ススッ

青年「へいへい。そこ座ってくれ」カチ

狐娘「ほーぉ……この温風は心地がよいのぅ」ボォォー

青年「ドライヤーくらい自分で―――使わせたら火傷しそうだよなぁ……」

青年「ってお前、髪ビチャビチャじゃん」

狐娘「こうやって頭を振れば……」フルフル


 ビチチチッ

青年「バカヤロッ!周りに散りまくるからやめろ!」

狐娘「わしの物は無いぞ?」

青年「オレの物があるだろ!」

狐娘「全く、オスの癖して細かいやつじゃな」

青年「あーもう怒った」

狐娘「ふん。ぬしが怒ったところで、たかが知れておるわ」

青年「へー、そういうこと言うんだ」







青年「保健所に引き取ってもらう」

狐娘「やめい」

*

青年「そろそろ電気消すぞ」



狐娘「本当に消してもよいのか?」

青年「何が言いたい」

狐娘「ふっ……まだわからぬのか?」

青年「……」

狐娘「くくっ。ぬしはその明かりの中でしか生きられぬのではないか? と言っておるのじゃよ」ニヤリ

青年「……」






青年「それお前じゃん」

狐娘「頼むぅ……消さないでおくれ……」ガバッ

青年「はぁ、一番小さいのつけといてやるよ」

狐娘「まっ、それが妥当じゃな」

青年「こいつ……」イラッ




青年「……」パッ

狐娘「ぐすん」


青年「……」ピカ

狐娘「おほーっ」


青年「……」パッ

狐娘「……ぐすん」


青年「あほらし、寝よ」

狐娘「せめて小さいのを点けてから寝てくれんか……」

青年「オレは明日仕事なの」

狐娘「わしにそんなものは無い」

青年「オ レ が!なの!」

青年「もう寝るからな」モゾモゾ

狐娘「……」
 





狐娘「……」ペシンペシン

青年「……」




狐娘「……ぐすん」ペシン

青年「わかったわかった、布団に入っていいから尻尾で叩くのやめてくれ」

狐娘「この線からこっちがわしの領地じゃな!」ゴソゴソ

青年「人様の布団に入り込んでおいて、領地とか言い出したぞこの狐」

狐娘「むっ!わしの領地に侵入しおったな」

青年「だったらなんだよ」

狐娘「そうじゃな……何か罰を与えんとのぅ」

青年「罰?」

狐娘「……そうじゃ。ぬしよ、片腕を差し出せ」

青年「お、お前……侵入しただけで片腕もぎ取るのか!?」

狐娘「何を言っておる、ただ少しこちらに出せと言っておるだけじゃ」

青年「…?こう、か?」スッ

狐娘「うむ。…なかなかよい枕じゃな」ギュ

青年「……」






青年「……まぁ、いいか」

*


「ちゅんちゅんっ」

青年「う、ん…?もう、朝か」



 




狐娘「ちゅんちゅんっちゅんっ」

青年「お前かよ。てっきり鳥かと思ったわ」

狐娘「腹が減った」

青年「……まだ四時かよ勘弁してくれ……」モゾモゾ

狐娘『ぐーぐー』

狐娘「むむ?どうしたんじゃ、わしの腹よ」

狐娘『お腹減ったのぅ、野垂れ死にそうじゃぁ』

狐娘「これはいかん!……しかし、ここに食い物は無くての……くそぅ」

狐娘『えーんえーん、お腹減ったよぉママー』

狐娘「すまんのぅ、すまんのぅ…………ちらっ」

青年「はいはい、作れば良いんだろ作れば」

青年「つーか、何で途中から子供っぽいのが出てきたんだよ。ていうか腹が喋るってなんだよ」

青年「ったく。放っておいたらずっと一人コントしだすし、寝ようにも寝れないっつーの」

狐娘「ほほぅ、コンと狐をかけたんじゃな。こんこんっ♪」

青年「飯作るから、ほんともうマジで黙ってて……」

狐娘「……」パクパク

青年「『め』『し』って、わかっとるわ!」


*

青年「ほらよ、きつねうどん」コト

狐娘「おほーっ!いただくぞっ」ズルル

狐娘「うまうま……美味じゃわ!」

青年「朝からよく入るなぁ。あと、本当に油揚げ好きなんだな」

狐娘「同族には、コレが嫌いな者も居るぞ」

狐娘「ま、わしは好きじゃがな」ハムハム

青年「さいですか」

狐娘「ところで、なにゆえコレは‘‘きつねうどん’’と言うのじゃ?」

青年「それはな……」

狐娘「それは…?」





青年「狐の肉から取ったスープ、狐の肉をすり潰して作った油揚げ、そして狐をふんだんに使ったその麺で作るからだよ」ニヤ

狐娘「」カラン…

青年 (狐肉の油揚げなんて知らんけど)

青年「オレはきつねうどんを作るのが好きでな」

青年「今度はもっと美味いのを作ってやるよ。そのきつねうどんの前に、お前が居るかはわからないけどなぁ?」ニヤ

狐娘「き、狐殺し……」グス

青年「オレが何でお前にこうやって飯を食わせてるからわかるか?」

狐娘「……」ゴクリ

青年「お前を良い感じに太らせて、肉を美味くする為さ」

狐娘「は、はは……またまた、ぬしは冗談が上手いの……このきつねうどんのようにな」ガタガタ

青年「そうだな。今度は超美味いきつねうどんが作れそうだ」

狐娘「わ、わしを殺すと末代まで呪うからの!」

青年「ノロいお前が呪いなんて高度なことできるとは思えないが」

青年「せいぜいオレの為に肥えてくれよな」

狐娘「くぅ……わしは負けん!抗ってみせる!」


*

青年「じゃあオレは仕事行ってくるからな」

青年「絶対置いてある物に触るなよ!絶対にだぞ!」

狐娘「わかっておる……フリじゃろ?‘‘てれび’’とやらでわしは観たぞ」

青年「フリじゃねーよ!マジで触んなよ!」

狐娘「くふふっ……わかっておる、わかっておる」ニヤニヤ

青年「……」

狐娘「どうした?はよぅ行かぬと遅れるぞ?」

青年「…行ってきます」

狐娘「うむ。行ってくるがよい」フリフリ


 バタン


狐娘「……」

狐娘「さて、とぉ……行ったな」

狐娘「確か、オスはえっちな読み物を持っておると聞いたな」

狐娘「くふふっ。弱みを握ってわしの支配下に置いてやるわ」

狐娘「この、寝具の下かのぅ?」ゴソゴソ

狐娘「……む?」チラ






狐娘「なっ…! ななな―――――






机「えっちな本」バーン!

狐娘「なんじゃあぁぁ!?!」

狐娘「こ、ここここれは、えっちな本…!!」ガタガタ

狐娘「な、なんぞ……これは!?」

狐娘 (い、いや待つんじゃ!普通こういうのは隠蔽してあるもの…!)

狐娘 (それを読んでくりゃれとばかりに机の上に置くか!?)

狐娘 (すなわち―――







狐娘 (これは罠!)

狐娘 (くっくく……ふははっ……)

狐娘 (よかろう。受けて立つぞ、ぬしよ!)


机「えっちな本」


狐娘 (はぁ……はぁ……ぐぅ、瘴気が!)

狐娘 (じゃが負けん!わしとて伊達に歳を重ねたわけでは無い!)



狐娘 (いざ、参らん!)スッ






 ガチャ


青年「ただいま」

狐娘「ぎょにゅえぇえええぇぇっ!?!?」ビクッ

青年「どうした……おっ」

狐娘「にゅ、にゅしよ……早かったののの!」

青年「今日仕事かと思ってたら、休み入れたの忘れてたよ」

狐娘「……」パクパク

青年「『あ』『ほ』って、そうだな。今回は認めよう」

青年 (予想通り、エロ本を置いておけばコレに注意をそらせる事がわかったのは収穫だな)

青年 (次からも出かける時はエロ本トラップを仕掛けておくか……)

狐娘「あの、その、なんじゃ!こういうのは!まだぬしには早いと思うんじゃがな!?」

青年「早いって、オレもう大人だぞ?」

狐娘「わ、わしにとってはまだ童子じゃ!」

青年「それはあくまでお前にとっては、だろ?」

青年「オレ達人間にとっては、もう立派な大人なわけですよ」

青年「その気になれば、お前とだってそういうことを出来るんだぜ?」

狐娘「……」





狐娘「……///」

青年 (体の関係を迫られりゃ、そのうち出ていくだろう)

狐娘「……ぬ、ぬしは、わしと……したいのかや…?///」

青年「いや、いいです」

狐娘「ズコっーー!!」ズサァッ







青年「でも体は良いと思う」

狐娘「っ……やはり、わしと……///」モジモジ



青年「小さいから小回り効きそうだし、スポーツに向いてそうだよな」

狐娘「」ギュルルルッッッズバンッ

青年 (横回転しながらずっこけるなんて、体張ってんなぁ)

狐娘「ぅ、ぐ……じゃが、わしはぬしがしたいと言うのであれば……構わんぞ」

青年「というと?」

狐娘「ぬしには借りがあるからの」

狐娘「ここへ来て早数日……しかしの、わしは一時もあの日を忘れたことは無いぞ」

狐娘「あれは、激しい雨が降る梅雨の時期じゃった……」

青年「何勝手に回想に入ろうとしてるんだよ」

―――


 ザ
 ァ  
 ァ
 ァ
 :
 :


狐娘『……』

青年『ん…?こんな所で何してるんだ』

青年『って、ずぶ濡れじゃないか。何か拭くものは……』ゴソゴソ

青年『ハンカチしかなくてごめんな』フキフキ

狐娘『んっ……』

青年『家に帰らないのか?』

狐娘『……』フルフル

青年『…?よくわからんが、オレの家で風呂でも入るか?』

狐娘「……」ウツムキ

青年『遠慮すんな。ほれ、おぶってやるよ』

青年『あっ。警察沙汰になったら誤解を解くくらいは協力してくれよ?』ハハハ

狐娘『……』コク

青年『何があったのか知らないけどさ、まずは風呂に入って温まれよ。風邪を引いたら大変だしな』

狐娘『……』グス

青年『……よしよし。行こうか』ナデナデ 


―――

狐娘「そう言って、敢えて何も聞かず、わしをおぶって連れ帰ってくれたからの……」

狐娘「今思い出しても、忘れられぬ思い出じゃぁ」グス

狐娘「本当、あそこでぬしに出会えて良かった。わしは幸せものじゃな」

青年「……」

狐娘「ふふっ、どうしたんじゃ」

狐娘「ぬしも感極まって言葉も出ぬか?」

青年「―――してんだよ……」

狐娘「む…?」











青年「なに捏造してんだよぉぉぉ!!」

青年「ちげーだろ!全くそんな記憶無いわ!!」

青年「正しくは―――

―――


 ザ
 ァ  
 ァ
 ァ
 :



青年『ひぃー、急に降ってきやがった』

青年『あー早く帰ってゲームしてぇ……ん?』








 狐娘『こーん……こーん……』
  in
ダンボール





青年『……』

狐娘『こーん……』









狐娘『……こーん』チラ

青年 (目が合った)

狐娘『……』

青年『……』






狐娘『…………』

青年『…………』












狐娘『………………』

青年『………………』








青年『さて、帰るか』スッ

狐娘『待てぃ!』

青年『幻聴が聴こえる。きっと仕事で疲れが溜まってるんだな』

狐娘『幻聴では無い』

狐娘『待たんか』ガシッ

青年『うわ、面倒事に掴まれた』

狐娘『わしを拾え』

青年『嫌です』

狐娘『遠慮せずともよいぞ?』

青年『遠慮なんてしてません、嫌なだけです』

狐娘『そう言わず。こんな儚げな少女を見捨てるのかや』

青年『儚げなんだったら、もう少し儚げにしててください。どちらかと言うと墓投げをしそうに見えるんですが』

狐娘『お前の様な馬鹿を投げることはできるぞ』

青年『すいません、馬鹿はそろそろ帰りますね』

狐娘『待てい』ガシッ

青年『なんですか』

狐娘『拾え』

青年『嫌』

狐娘『救え』

青年『嫌』

狐娘『わしと共に生きろ』

青年『オレだけ生きます』

狐娘『ぬがぁーー!』

青年『駄々をこねてもダメだからな』

狐娘『拾えー!ひーろーえー!』

青年『……』

青年『……わかったよ』スッ

狐娘『っ…!…ぬふふ、それでよいのじゃよ』ギュ

青年『拾って……はい、捨てる』

狐娘『ズコーーー!!』ズザザザッッゴンッ

青年 (電柱にぶつかったけど大丈夫か…?)

狐娘『何がしたいんじゃ!』

青年『帰りたいです』

狐娘『わしを拾いつつ帰れ!』

青年『さっき拾ったので後は帰るだけですね』スッ

狐娘『捨てるな』

青年『ゴミってどこに置くか知ってます?』

狐娘『……ごみ捨て場と聞いたことがあるの』

青年『はい』ユビサシ

狐娘『はいじゃないが』

青年『もういい加減、帰らせてくれません?』

狐娘『頼むぅ……拾ってください……』

青年『お前みたいな容姿なら、モノ好きが拾ってくれるんじゃないか?』

狐娘『身の危険を感じるんじゃが!』

青年『良いじゃん。拾って欲しいんだろ?』

狐娘『うぅ……うわーん!』エグエグ

<あんな小さな子供泣かせるなんて……

<大人気無いわよねぇ

青年『すいませーん!迷子の子がいまーーすっ!!』

狐娘『なんと』

<あら、迷子になったから泣いていたのね

<あの方、良い人じゃない

青年『じゃ。オレはこれで』

狐娘『むぐぐ……』

*





*


 ガチャ


青年『はぁ、なんかわけわからん生き物に出会ってしまった』

狐娘『全くじゃな』

青年『おいこら』


―――

青年「それからと言うものの、ずっとお前はこの家に居座りやがって…!」

青年「なーにが、一時も忘れなかっただ。一時どころか全くもって違う記憶じゃねぇか!」

狐娘「じゃが、ぬしは覚えてくれておるんじゃな」

青年「え……お、おう……」

狐娘「ふふっ、ぬしは優しいのぅ」

青年「なんだか腑に落ちねぇ……」

こんな感じでゆるゆる続けます

一応適当に酉付けときます


*


狐娘「おーい、ぬしよ。喉が乾いたぁ」机バンバン

青年「……」本ペラ

狐娘「む…?おーぃ……」

青年「……」ペラ

狐娘「むぅ……」

青年「……」チラ






青年 (日頃のテンションが鬱陶しいので、少し無視することにしてみた)


*


狐娘「仕方が無いのぅ、茶くらい汲んでやるわ」

青年 (それが普通だっつの)

狐娘「お茶っ葉っぱー原っぱー♪原っぱーがーお茶っ葉ー♪」テクテク

青年「茶葉と原っぱのどこに接点が―――

狐娘「……」チラ

青年「……」ペラ

青年 (っぶな!思わず突っ込んでしまいそうになったわ)





狐娘「そうじゃ、忘れておった」

狐娘「今のうちに厠にでも行っておくか」スッ

青年 (…ん?)




風呂場「ガチャ」

青年「いやそこ風呂―――

狐娘「……」チラ

青年 (っぶねぇぇ…!油断してたやべぇ)

青年 (ていうか尿意を忘れるってアホすぎるだろ!)


*

狐娘「おっ。湯が沸いたようじゃな」

狐娘「ぬしは『厳選激辛てぃー』とやらでよいか?」

青年「いやいや辛いお茶なんて聞いたこと――― バッ

狐娘「……」ジー

青年 (無視無視っと……)



狐娘「お湯はりが 終了しました」

青年「それ風呂―――

狐娘「……」ジー

青年「……」ペラ





青年 (ほああぁ!?なに今日のこいつ!?どんだけボケ倒してくるんだよ!)


*

狐娘「……」ズズ

青年「……」ペラ

狐娘「ふぅ……やはりきつねうどんは美味じゃな」

青年「お前何言って―――バチンッ

狐娘「……」

青年 (んがっー!!危なかった…!自分の頬を思わず殴っちまったよ!)

青年 (茶を飲んだのに、きつねうどん食ったとかわけわからんわ!)

狐娘「さて、と。そろそろちゃぶ台返し運動でもするかの」スク

青年「……」ペラ






 





青年 (ちゃぶ台返し運動ってなんだよーッッ!!)


*

狐娘「ぬしよ、そろそろ観念したか?」

青年「……」

狐娘「むぅ」プクー

青年 (流石にやられてばっかだとオレの気が晴れん)

青年 (もっとからかってみるか)



青年「あれぇ?狐娘のやつ、どこに行ったんだ?」

狐娘「へ…?」

青年「おかしいなー。出かけたのか?」キョロキョロ

狐娘「わしはここにおるぞ!」

青年「うーん、どこ行ったんだろうなー」

狐娘「ここじゃ!ココ!」ドスッ

青年「ぐおっ……急に体に衝撃が……」

青年「誰も居ないのに、なんでだ…?」

狐娘「も、もしや……わしのことが見えなくなったのかや…?」

青年「いやー、一人だと快適だぜ」

狐娘「……」グス

狐娘「ぬしよ……」

青年 (ちょっとやり過ぎたかな……)




狐娘「まっ、見えぬのなら都合がよいわ!」

狐娘「うるさい小言も言われぬし、ここにずっと居続けてやるとするか。くふふ」

狐娘「コッソリ物を動かして、怪の仕業に見せかけて脅かしてやろうかのっ」プクク

青年「てめぇこのやろ」


*

狐娘「のぅ、ぬしよ」

青年「やめろ」

狐娘「わしはまだ何も言っとらんぞ」

青年「どうせくだらないことなのは目に見えてる」

狐娘「わしは時を遅らせられる技を習得した」

青年「いやだから聞かないってば」




狐娘「……あ れ …? こ え が 」パクパク

狐娘「おくれて きこえて くる のぅ」パクパク

青年「……」

狐娘「ふふん。凄すぎて声も出ぬか?」ニヤリ











青年 (ぜんっぜん遅れてねぇぇ……)


*

狐娘「のぅ、ぬしよ」

青年「今度はなんだよ」

狐娘「うーんと、机の前に座ってくれぬか」

青年「ここか?」

狐娘「うむ。……よっこいせ」ドサ

青年「オレの膝の上に座って何がしたいんだよ」

狐娘「まぁ待て。そう焦るな」モゾモゾ

青年「ちょっ、うおっ。服の中に入ってくるな!」

狐娘「見よ。二人羽織じゃ」フンス

青年 (もう何が何やらとっちらかっちゃってどこからツッコめばいいんだよ……)

青年「二人羽織ならオレの頭が見えちゃダメだろう」

狐娘「なら服の中に頭を埋めるがよい」

青年「『埋めるがよい』じゃねぇよ!意味わからんわ!」

狐娘「はよぅせい」グイッ

青年「はいはい、やればいいんだろ」


狐娘「……」

青年「……」




狐娘「……で、どうするんじゃ?」

青年「何も考えてなかったのかよ!」

狐娘「なら、これで飯でも食うてみるか」スッ



狐娘「……」

狐娘「飯が出てこぬな」

青年「オレがここに居るんだから出てくるわけ無いだろ、出てきたら怖いわ」

狐娘「飯」

青年「……」

狐娘「はよぅ」

青年「わかったよ」スッ

狐娘「きつねうどん頼むぞ!」

青年「へいへい」












青年 (一体全体何がしたかったんだよッッ!!)

今日は終わります


*

青年「ほら。出かける時はこれ持っていけよ」スッ

狐娘「なんじゃ?これは」

青年「人類の神機だよ」

狐娘「神機解放」

青年「神は狩らねーよ。お前いつの間にオレのゲームしてんだ」

狐娘「仕事の時じゃな」

青年「勝手にするなよ……」

青年「携帯渡しておくから、何かあったらこれで連絡してこい」

狐娘「うーむ、どうやって使うんじゃ?」

青年「それは教えるよ。ガラケーだからすぐ覚えられるさ」

青年「オレがお前に教える時、ボケなければな!」 

狐娘「それは……無理な話じゃな」

青年「なんでだよ!ボケないと死ぬのかよ」

狐娘「なぜならば、わしが静かだとぬしが寂しそうじゃからの」ニヤ

青年「さ、ささ寂しくなんてにゃいし!」


*

青年「なぁ、いつまで居座るつもりだ?」

狐娘「いつまでも居座るつもりじゃ」

青年「お前、家は?」

狐娘「無い」

青年「またまたご冗談を……」

狐娘「……」ウツムキ

青年「え、マジで…?」







狐娘「家がどこにあるのか、わしからは言えんの……なんつって」プクク

青年「」

狐娘「おっ、爆笑で思わずツッコむ気力も無いかっ」

青年「もう怒った」スク

狐娘「な、なんじゃ…?」

青年「お前を元の場所に捨てる」ガシッ

狐娘「むおっ!?は、離せぃ!」バタバタ

青年「いいや。離さん!」


*

 ドサッ

青年「ほら、ダンボールに入っとけ」

狐娘「ぐぬー!この縄を解け!」ジタバタ

青年「解いてくれる人が現れるのを祈ることだな」

青年「ったく。何か事情があるのかと思えば、最後までボケやがって」

狐娘「わしを捨てると呪うからのぉ!」

青年「へっ、呪えるもんなら呪ってみやがれ」

青年「じゃあな。あばよとっつぁん!(女だけど)」スタスタ

狐娘「ぐむむー!」



 ポンッ

青年「ん?なんだ―――















警官「ちょっといいかな、君」

青年「」

青年「な、なななんでリアルとっつぁんが!?」

警官「とっつぁん?君は何か宝石でも盗んだのかね?」

青年「盗んでませんよ!」

警官「だが、君はお宝よりも価値のある物を捨てようとしているようだね」

警官「自分の娘という、最高の宝物をね」ドヤ

青年「全然うまくねーよ」

警官「むむむ!」

青年 (しまった。素で言っちまった)

警官「おほん。住民から『子供を捨てようとしているのを止めてくれ』と通報があってね」

警官「少しやり取りを見ていたが、どうやら君のようだ」

青年「す、捨てようとしてません!」

青年「それにこいつは元々ここに居たんですよ」

青年「ですから、捨てたのでは無く、戻しただけです」

狐娘「パパ……あたち、すてられちゃうの…?」ウルウル

青年 (このヤロウッッ!!)ギロ

警官「どうなのかね?」

青年「こ、この子はオレのではありません!」

警官「なら、何なのかね?」

青年「何、とは…?」

警官「この子が君の子では無いとしたら……」

警官「一体どこの子なのか、そして君は他人様の子を縄で縛り、何をしようとしていたのかね?」

警官「まさか……あまつさえ、誘拐しようなどと言うのではあるまいな?」

青年 (ごもっともだよ……)

青年「ご、誤解です!」

青年 (仕方が無い……この手は使いたくなかったがやむを得ん)

青年「警官さん!見てくださいよコイツの頭!」

警官「何かね」

青年「ココ!ほら!普通の人間には無い耳があるでしょう!?」

青年「コイツは人間じゃないんですよ!」

青年 (勝った。まごうことなき完封、圧勝、大勝利だ)





警官「はははっ。流石に大人の、しかも警察を騙そうなんてできないぞぉ?」

青年「え…?」

警察「コレはあれだろう?動物の耳を模したアクセサリーだな。最近よくあるやつだ」

警察「嘘をつくなら、せめてもう少しマトモな嘘をつきなさい」ハハハ

青年「なんと」

狐娘「こんこんっ♪けいさつのおいたん。これはね、パパがぷれぜんとしてくれたのっ!」ニコ

青年「ななんと」

警官「やはりそうだったか。こいつぅっ」コツン

青年「」






青年「な、なら!ココ!後ろのコレ!」

青年「尻尾ですよ!人間に無いね!これでどうだ!」

警官「ふむ……」

青年 (勝った。今度こそ完全に)

警官「すぅー……はぁ……」

青年「…?」




警官「その、あまり個人の趣味に口は出したく無いのだが……」

警官「外でこういうプレイ……しかも、自分の娘にさせるのはちょっと私も見過ごせ無いな」

青年「は…?プレイ?」

警官「おほん……後ろの…おほん。アレに、おほん!挿れるのは、ね?」

青年「う、後ろ…………」






青年「後ろおぉぉぉ!!?」カァァ

青年「ちょ、ちょちょちょ!!違う!!」

警官「んんっ。その、ね。君もまだまだ若そうだが、コレはどうかと思うがね……」

青年「違う!!ちーがう!!」

警官「なら、どこから付いているのかね?」

青年「腰より少し下辺り……ですかね?」

警官「やはり……」

青年「違いますって!」

狐娘「おいたん!あたちがこうしてって言ったの!」

警官「んん…?どういうことか、教えてくれるかなー?」

狐娘「うん!パパにね、ゆうかいされたらどうすればいいのか、おしえてもらってたの!」

警官「ほぅ」

狐娘「それでね、それでね!どうせするなら、ほんきでやろうってなったの!」

警官「なるほど……では、やはりこの子は君の子だね?」

青年「………………はぃ」

警官「こらこら。それなら初めからそう言いなさい」

青年「すみません……」

警官「ちゃんと連れて帰るんだぞ?」

青年「はぃ……」

警官「では、今回だけは大目に見てやろう」

狐娘「おいたんありがと!」

警官「ははっ。パパにもう捨てられないようにするんだぞー?」

狐娘「うんっ」


*






*


 ガチャ



青年「……」

狐娘「ふむ、帰ってきたの」













青年「ちっくしょおおおぉぉぉーーッッッ!!!」ゴロロロッッ


*

狐娘「ぬしよ、今日の夕飯はなんじゃ?」

青年「なべ」

狐娘「なべ?」

青年「うん」

狐娘「一体なに鍋なんじゃ」

青年「すきやき」

狐娘「ほほぅ!なかなかよいではないか」

青年「そうだね」

狐娘「ぬしよ、元気が無さそうじゃな」

青年「おめーのせいだよ。危うく前科がつくところだったわ」

狐娘「わしのふぁいんぷれーが光ったの」

青年「マジで勘弁してくれよ……」ハァ


*

 グツグツグツ


狐娘「……」ススー

青年「野菜も食え」ガシ

狐娘「い、いやー。わしも食いたいのはやまやまなんじゃが、野菜の奴が箸を避けてのぅ」

青年「そうかそうか。ならオレがよそってやろう」

狐娘「それには及ばぬ。日頃から世話になっておるからな、今日くらいわしのことは忘れるがよい」

青年「こいつ……」

狐娘「そうじゃ、礼として今日はわしがよそってやろう」スッ

青年「おっ、さんきゅー。気が利くな」

狐娘「ほい」コト

青年「だと思ったよ!野菜しか無いじゃん!」

狐娘「肉はわしが食ってやるからの。安心せい」

青年「なんの安心だよ!お前を鍋の材料にしてやろうかッ!!」

狐娘「鍋はなにゆえ、なべと言うか知っておるか?」

青年「急にどうした」

狐娘「わたなべさんが作ったからじゃよ、ふふん」

青年 (……もう、ツッコむのすらしんどい)モグモグ

狐娘「ほい」スッ

青年「わんこそばの如く野菜を次々と入れてくるなよ」

狐娘「肉はわしに任せい」

青年「オレにも残しておけよ……」

狐娘「悪いの!もうわしの分しか無いのじゃよ」

青年「お前もう明日から飯抜きな」

狐娘「すまん」スッ

青年「そうだ。それでいい―――って野菜はもういらないっつーの!」

狐娘「ぬしは欲張りじゃな」

青年「お前にだけは言われたくないな」

狐娘「まぁ……こうやって好き放題野菜を盛れる器のように、ぬしの器も大きいからの」

狐娘「じゃから、わしはぬしと一緒に居れる」

青年「……そうかい」

今日は終わります

腹パンは手加減して小突く程度なのでセーフなはず…!


*

狐娘「わしはの、改めてぬしの存在の有り難みがわかった」

狐娘「ぬしの存在があれ程大きいとはな……」

青年「明日は豪雨か?」

狐娘「天気予報では曇りらしいぞ」

青年「そうじゃねぇよ。お前から素直に感謝されると怖いわ」

青年「なんだ、金か?それとも何か欲しいものがあるのか?」

狐娘「……」フルフル

狐娘「ぬしよ……」ギュ

青年「……」













狐娘「これからもツッコミを入れてくれるかや…?」

青年「……うん」

青年 (ボケるのを止めるという選択肢は無いんだな)


*

>遡ること三時間と少し前


狐娘「つ、ついに来たる日が来たの…!」

青年「行くのか?」

狐娘「うむ」

青年「……死ぬなよ」

狐娘「任せい。わしも友人を作ってみせるぞ!」

青年 (先週辺りにネットで、怪しげな『人外の箱庭』というチャットの集まりに参加してみた)

青年 (そこではなんと、参加者全員が狐娘みたく人間じゃないらしい)

青年 (んなアホな……なんて思いつつ狐娘に話してみると珍しく興味を持った)

青年 (それからと言うものの、PCの使い方を教えたのも相まって、毎日の様にチャットで話したり、しまいにはゲームまでしていたらしく)

青年 (どうやら、今日オフ会を開くから参加するらしい)

狐娘「わくわくするのぅ!」

青年「場所はどこなんだ?」

狐娘「少し歩いた所に公園があるじゃろう?その近くの『かふぇ』とやらに集まるらしい」

青年「おいおいカフェって、大丈夫なのか…?」

狐娘「なんでも、そのかふぇとやらのおーなーを含めた店の者も、全てわしと同じ様な者達らしいぞ」

青年「はへー……」

青年「本当に行くのか?」

狐娘「少し緊張はするが……わしも友は欲しいからのっ」ソワソワ

青年「……そうか。ちなみに飛び入り参加とかってできんの?」

狐娘「わしらの様な人外であれば、友人を連れて来てもよいと言っておった」

青年「ふーん、寛大だな」

狐娘「む…?そろそろ時間じゃな」

狐娘「では……参る!」ザッ

青年「参るってお前何者なんだよ……」


*

   ―カフェ―


青年 (……)





青年 (来てしまった…!)

青年 (狐娘のやつ、一人で本当に大丈夫なのか…?)

青年 (おっ……居た居た)






「えぇー、今日は皆さん集まって頂きありがとにゃ!」

「アタシは人外の箱庭で、一応まとめ役みたいなことをしてた猫娘にゃ。どうぞよろしくん」ペコ

猫娘「さてさて、ひとまず自己紹介からしていこうかにゃー」

猫娘「んーと、じゃあ時計回りでいこうかにゃん」

「では、私からですね」スッ

「初めまして。私は蛇娘と言います」

蛇娘「今日は皆さんと楽しい時間が過ごせたら良いなと思って参加させて頂きました。よろしくお願いします」ペコ

青年 (礼儀正しいなこの子)

青年 (なるほど、白蛇か……)

青年 (文字通り肌が凄い白いな。ていうか全体的に細っ)


 パチパチパチ


「次はボクだね」スク

「ボクは小熊猫の熊娘……まぁ動物で言えばレッサーパンダってやつだ」

熊娘「共通の友達が欲しくて参加したよ。みんなよろしくね」ニコ

青年 (あら可愛い。人懐っこい顔してんな)

青年 (レッサーパンダねぇ。耳はそれっぽいのがあるが……)


 パチパチパチ


「わ、私の番ですね……」スク

「私は、えと、羊娘って言いますぅ……」モジモジ

羊娘「人の世は大変だから、その……お友達ができたらなぁって……思って……来ましたっ」

羊娘「よ、よろしくお願いしますっ」ペコ

青年 (第一印象は気が弱そうな娘だな)

青年 (ついついみんなに気を遣ったり、頼み事を断われなさそうだ)


 パチパチパチ

青年 (いよいよ狐娘の番か……)チラ

狐娘「わ、わわしが最後じゃななな……」カクカク

青年 (緊張しすぎだろ!動きカックカクでロボットじゃん)

青年 (しかも口調からして周りから浮きまくってるしやべぇよ)

狐娘「わ、わしは…狐娘と……言う……よろしく頼むぞ……」

狐娘「……」


青年 (名前の後に一言何か言えよ!)

狐娘「…? ……!」ハッ

狐娘 (っ!そうじゃ、何か挨拶じゃな!)

狐娘「今日は味噌汁に合う具材を探しに来ました」


 シーン……

青年 (バカヤロッッ!!何血迷ってんだよ!それオフ会じゃなくてお麩会じゃねぇか!)机バンッ

青年 (いやそもそも自分で言っといてお麩会って意味わからんわ)

狐娘「あ、あぁあぁ……え、ぇ、ぅ……」スク


 パチパチ……パチ……


青年 (座ったからか皆察してくれたな……)

青年 (もう掴みが最悪すぎて、皆からは何だこいつって思われてるぞこれ)

青年 (ていうか本当にチャット内で喋ってたのかすら怪しいな)

狐娘「……」ウツムキ





狐娘「…………」グス

青年 (見てらんねぇ……)















青年 (行くっきゃない)鼻メガネ スチャ


*


猫娘「みんな自己紹介ありがとにゃー!それじゃあ―――

青年「すみませーん!遅れました!」

猫娘「んにゃ…?」

熊娘「ぶはっ……」ピクピク

蛇娘「どなた…?」ヒソヒソ

羊娘「ここに居るので……全員だと思うけど……」ヒソヒソ

猫娘「えっと……キミは?」

青年「今日、人ならざる者達のオフ会があると友人から聞きまして」

青年「僕もお友達が欲しいなーって。よろしければ参加させて頂けませんか?」

猫娘「それは良いけど、ちなみにご友人と言うのは?」

青年「狐娘ちゃんです」ニコ

猫娘「狐娘さん、のご友人?」チラ

狐娘「え、えと……あの……たぶん?」

狐娘 (誰じゃこいつは)

青年「もぅ、多分だなんて酷いなぁ。照れ屋なんだからっ」コノコノ

猫娘「ふふっ……じゃ、キミも自己紹介お願いできるかな?」

青年「はい!僕は狼男って言います!」

青年「今日は皆さんと少しでも仲良く、そしてお友達になることが出来たら嬉しいです!」

青年「と言っても、見た感じオスは僕だけなんで緊張しちゃいますが……あははっ」ポリポリ

猫娘「そんなことないにゃ!メスだろうとオスだろうと、友達にきっとなれるにゃー」

青年「そう言ってもらえると助かります」ペコ

猫娘「アタシ達の自己紹介も、一応しなおそっか!」

青年「いえいえ!お気遣いありがとうございます。ですが……」

青年「皆さんのことは、今日一杯お話して知っていきたいので、むしろ何も知らない方が楽しめちゃったり!なんて!」ハハハ

猫娘「そかそか!じゃあキミは……丁度狐娘さんの横が空いてるからそこに座ってにゃっ」

青年「お邪魔します!」


*


青年 (よしよし、掴みはこんなもんだろ)

青年 (周りには気さくなオスに写っているはずだ)

青年 (初対面のやつには、若干ウザい程度の高いテンションで更に笑顔を作っとけば何とかなるもんだ)

熊娘「ねーねー君さ、なんで鼻メガネなんかつけてるの?」ススッ

青年 (一応気を遣って笑いを堪えてくれてるな……)

青年「え?これが僕の顔ですよ?」

熊娘「ぶっ……くく…!」プルプル

青年「なんちゃって。実はちゃんとした眼鏡も持ってきてますよ」3Dメガネ スチャ

熊娘「っー!げほっげほっ!」バンバン



熊娘「ふぅ、ふぅ……君面白いね……」

青年「そういえばお名前を聞いていませんでした」

熊娘「ボクは熊娘って言うんだ。よろしくね」スッ

青年「こちらこそ」ギュ

猫娘「みんな、そろそろ飲み物でも頼もっか。すみませーん」



「ご注文をお聞きします」スッ

蛇娘「私はコーヒーを」

羊娘「私は……レモンティーをお願いします……」

猫娘「アタシはっと、カフェオレで。あとポテトもお願い」

熊娘「ボクもカフェオレ!」

狐娘「わ、わしは……うーむ……」

狐娘「この緑のやつを頼む」スッ

青年 (そこはいつもみたくボケろよ!)

青年 (つーかファミレスみたいなラインナップだな)

青年 (緑のやつって、メロンソーダか……)ペラ

青年 (それだったら例えば、『わしはマロンソーダじゃな』『いや栗なんて聞いたことねーよ、メロンだろ!』ってボケとツッコミで和ませられるだろ!)プルプル

猫娘「狼男さんは?」

青年 (しかも猫娘と蛇娘と羊娘のグループ、オレと熊娘のグループ、そしてポツンと狐娘が取り残されてる状態はまずい)ムググ

青年 (何とかして、せめて冗談が言える面白いやつって思われないと絶望的だぞ)

青年 (何か案は―――

猫娘「おーぅい」

青年「はっ!な、なんでしょう?」

猫娘「何飲むのー?」

青年「あ、じゃあ僕も狐娘ちゃんと同じくマロンソーダで―――

青年「ってそれは栗だっつの!メロンだよってね!メロンソーダお願いしまぁぁすっっ!!」

熊娘「ーっっ!」バタバタ

青年 (あっぶなー!セルフボケツッコミなんてアホなことしてしまった)

青年 (幸い、熊娘が笑ってくれてるから何とか場は白けてないが……)チラ

「かしこまりました。コーヒーがお一つ、レモンティーがお一つ、カフェオレがお二つ、ポテトの盛り合わせがお一つ、マロン…ふふ……メロンソーダがお二つ。以上でよろしいでしょうか?」


猫娘「お願いしまーす」

「少々お待ちください……ふふっ……」ペコ

青年 (なんかマロンソーダが笑われてたな。我ながら少し恥ずかしい……)

青年「狐娘ちゃん、お腹空いてないの?」

青年「飲み物持って来てもらった時、何か食べ物頼もうよ」

狐娘「あ、ぅ……わしは、腹は減っておらん……」

青年 (嘘つくなよ!家でガバガバ食う奴のセリフじゃねぇよ。朝飯もロクに食ってない癖に……)

青年「そっかー、じゃあみんなでつまめるものでも頼もっか」ペラペラ

青年「熊娘さんの好きな食べ物って何です?」

熊娘「熊娘で良いよ。ボクの好きな物は、大雑把に言うと肉だね。ちなみに野菜はあまり好きじゃない」

青年 (パンダの癖に肉好き野菜嫌いってどういうことだよ)

青年「そうなんですね!僕もお肉大好きっす!野菜嫌いなのは狐娘ちゃんと似てるなぁ。ねぇ、狐娘ちゃん?」

狐娘「へ…?あ、う…む……そう、じゃな」

青年 (歯切れ悪すぎ!会話終わっちゃったよ!)

狐娘「……」シュン

熊娘「君も野菜嫌いなの?」

狐娘「う、うむ」

青年「狐娘ちゃんったら、この前も鍋をした時にお肉ばかり食べてたんですよ」

狐娘「む…?な、何故をそれを……」

青年「え、あ……そう!狐娘ちゃんには同居人がいたでしょ?その人から聞いたんです」

狐娘「なんと!知り合いじゃったか……」ガビーン

青年 (こいつマジか)

熊娘「ボクも鍋はついついお肉ばかり食べちゃうよー」

熊娘「ちなみになに鍋?」

狐娘「す、すきやきじゃ」

熊娘「すきやき!一番好きな具は!?」

狐娘「に、肉……」

熊娘「ボクも!」

青年 (話題ループしてるぞおい)

熊娘「ねね!この近くに美味しい焼肉屋さんできたの知ってる?」

青年 (そういうの疎い狐娘は知らないだろうな……)

狐娘「あぁ、――屋か?」

青年 (何で知ってんだよ)

熊娘「そうそう!ボク、まだ行ったことないだよね」

青年 (来た!これは一緒に行きたいというサインだ)

青年「狐娘ちゃん、熊娘さんと一緒に行ってみたら?」

狐娘「じゃ、じゃが……」

熊娘「狐娘さんが良いならぜひお願いしたいな!一匹だと少し気が引けてたんだ……」

狐娘「狐娘でよい。そちが構わんのであればわしはよいが……」チラ

青年「ん?あ、あー……僕もご一緒にしてもいいですか?」

熊娘「もちろん!みんなで食べると美味しいからね!」

青年「では、よろしければ連絡先を交換してもらっても?」

熊娘「良いよー!狐娘のも教えて欲しいなっ」

狐娘「う、うむ」



青年 (そんなこんなで鳩ぽっぽと時間が過ぎていった)




猫娘「みんな、そろそろ良い時間だしお開きにしよっか」

猫娘「今日は集まってくれて、どうもありがとにゃー」

猫娘「また、時間が合えば集まろうねっ」


*


青年 (……ふぅ、ようやく終わったか)

青年 (狐娘は……まだ熊娘と話してるな)

青年 (話した感じ、熊娘は食べることが好きみたいだな)

青年 (元々ここに居る人らはゲームが好きみたいだし、狐娘とも合うと思うが……)

青年 (まぁ今回は熊娘と友達になれそうだし、ゆっくり増やしていけばいいさ)

青年 (それにしても、最後は合コンみたいなノリで全員と絡みまくったが果たして大丈夫だったのか不安すぎるぜ……)ウググ





猫娘「ねぇ、狼男くん」

青年「はい。なんでしょう?」

猫娘「このあと少し時間ある?」

青年「それは、大丈夫ですけど……」

青年 (え、なに、まさかお説教?もしくは、もう来んなとか?)

猫娘「じゃ、とりあえず外出よっか」

青年「わかりました」


*


青年「ここは……公園ですか」

猫娘「見晴らし良いでしょ?街が一望できてこの場所好きなんだ」

青年「確かに……」

猫娘「……今日はありがとね」

青年「何のことです?」

猫娘「キミ、狐娘ちゃんが孤立しないように仲を取り持ってくれてたでしょ?」

青年「さぁ……なんのことやら」

猫娘「狐娘さんね、チャットのグループ内では結構喋ってたんだ」

猫娘「ゲームも上手いし、面白い子だったんだけど」

猫娘「リアルになると、緊張しちゃって上手く自分を出せない子が居てね……」

猫娘「そういう子は、勇気を出してオフ会に来るも結局孤立、それから居づらくなって次第にフェードアウトしちゃう子が殆どなのよ」

猫娘「なるべく輪に入れるようにアタシもしてるけど、やっぱり強引すぎるとそれはそれで、ね」

猫娘「狐娘ちゃんも自己紹介から空回りしちゃってて、マズイなーって思ってたの」

猫娘「でも、あなたのお陰で助かったよ。ありがとね」

青年「……なんだか真面目っすね。にゃーとか言ってたのに」

猫娘「もぅ、からかわないのっ」メッ

猫娘「キミだってフザケてたじゃない」

青年「あれはたまたまですよ」

猫娘「ふーん」









猫娘「人間でも優しい人はやっぱり居るのね」

青年「……バレてたんすか」

猫娘「あのねぇ、あんな鼻メガネや3Dメガネで誤魔化せるわけ無いでしょ?」

猫娘「いやまぁ、アタシ以外の子は信じちゃってたけどさ……」

猫娘「せめて動物の耳を模したアクセサリーとか、獣毛をつけるくらいしなさいよ」

青年「動物の耳を模したアクセサリー……ぅっ…頭が……」

猫娘「それにね。キミ、先回りしてあのカフェに来てこっちの様子をチラチラ見てたでしょ?」

青年「全部お見通しっすか……」

猫娘「アタシ以外の子が鈍感すぎるのよ!」

猫娘「あなた、狐娘さんの恋人さん?」

青年「それは無いですね」

猫娘「そうなんだ。……本当の名前、教えて欲しいなっ……なんて///」

青年「青年です」

猫娘「青年くんか……。キミ、結構評判良かったよ?」

青年「え、本当?」

猫娘「うん。熊娘さんと狐娘ちゃんの三人で話してる時、こっちで少しキミの話題になったんだ」

猫娘「あの方、オスなのに下心見えなくて不思議。とかね」フフフ

青年「まぁ、必死でしたからね。いろんな意味で」

猫娘「ふふっ。また集まる時は良かったら来て欲しいな?」

青年「ぜひお邪魔します。鼻メガネ付けてですが……」

猫娘「ありがと。あっ、そうだ。連絡先交換しない?」

青年「交換しても、多分こっちから連絡しませんよ?」

猫娘「えー酷いなぁ」

青年「だって猫娘さんとはそんなに親しくないですし」

猫娘「じゃあアタシから連絡するよ。親しくないなら、これからなれば良いでしょ?」

青年「お好きにお任せしますよ」

猫娘「にゃふふ。決まりね」ニコ

今日は終わります

ちょっとまて参加者は本当に人外だったのか…
てっきり頭がアイタタタ系の集まりと思ってたけどこの世界では普通に妖怪とかも生活してるの?


*

狐娘「ぬがー!」

蛇娘「ほら、早くしなさいな」

狐娘「くぅぅぅ…!もう!また自分を殴りおってッ!」ダンダン

蛇娘「ふふっ……あなたの手持ちは、どうやら全員マゾなようね?」

狐娘「くそっくそっ」

蛇娘「はい電磁波」

狐娘「あ"あ"あ"あ"ぁ!!」

狐娘「こうなったら……麻痺にならぬ地面タイプの物理で殴る!力こそ正義!交代じゃっ」

蛇娘「はい威張る」

狐娘「ちっ。また混乱したか……」

狐娘「じゃが甘いの!攻撃を二ランク上げるということは、そちらだって倒される可能性があるんじゃぞ?」

蛇娘「みがわり」

狐娘「死ね」

狐娘「卑怯者め、セコいやつじゃわ。絶対性格が悪い」

蛇娘「私が好きな性格は臆病よ」

狐娘「そっちでは無いわ!」

蛇娘「厨ポケモノ、害悪ポケモノ、そんなの人外のかって。ほんとうに強いトレーナーなら、いかなる手を使ってでも勝ちに行くべき」

狐娘「うっさいわ!改変するでない!」ダッ

蛇娘「危ないわね。リアル捨て身タックルはやめなさい」ヒョイ


*


狐娘「もうよい!他のをやるぞ」

蛇娘「敗北を飲むのね?」 

狐娘「負けておらん!」

蛇娘「まぁいいわよ。じゃあスマシスでもしましょうか」

狐娘「ふん、しゅんころしてやるわ」

蛇娘「それを言うなら瞬殺でしょう」

狐娘「おぅい、熊娘と羊娘よ。そち達も入るがよい」

羊娘「ふえぇ……。私が入っても大丈夫なの…?」

狐娘「くくっ……まぁ耳を貸せ」

羊娘「…?」スッ

狐娘「一人では敵わん。なら、二人でやればよいだけ……そうじゃろう?」ヒソヒソ

羊娘「そういうの嫌いなんだけど。狐娘ちゃんこそ卑怯者じゃない?」

狐娘「ぇ…ぁ、しゅまん……」シュン










羊娘「ボケたんだけど……」

狐娘「ズコー!」ズゴゴゴッ

熊娘「じゃあボク達は狐娘を狙おうね!」

蛇娘「えぇ。任せなさい」

狐娘「なにわしを嵌めようと共謀しておる!」

蛇娘「あなたが先に始めた事でしょう?」

狐娘「ぐむむ……」


 3…2…1, GO!!


狐娘「羊娘は崖の近くへ離れよ!わしに任せい!」

羊娘「う、うん!」

狐娘「先程の恨み……返させてもらうからのぉ!」

蛇娘「……」ガチャチャチャッッッ

狐娘「む…ぉ……くぅ……」カチャカチャ…


 ドォゥン!!

羊娘「わぁ……」

熊娘「ありゃりゃ、本当に瞬殺だった」

蛇娘「ふふっ」ウッホウッホ

狐娘「くそぅ……ゴリアピやめんか!」

狐娘「わしのフォックスを舐めるなよ…!」カチャカチャ

熊娘「よっ、ほりゃっ……とうっ」カチャカチャ


 ドォゥン!!

熊娘「やった!」

狐娘 (ちっきしょぉぉ……マックなんぞ脳筋を使いおって……)

羊娘「むむっ……」

狐娘 (あれは……ないすじゃ!そのサムスの溜めたものをぶち込んでやれ!)


 ガシ ブンッ

蛇娘「悪いわね。盾になりなさい」

狐娘「むぉっ!?わしのフォックスがサムスとゴリラの間に―――

羊娘「えいっ」

 バヒューン==○ バゴゴゴッ  ドォゥン!!

狐娘「画面をよく見んか!」

羊娘「ご、ごめんなさぃ」ポムッポムッ

狐娘「謝りつつボムをまきおって……」

狐娘「なら、遠距離で攻める!」


  P――――――
 バシュバシュバシュバシュ

蛇娘「フォックスの銃はのけぞらないから、痛くも痒くも無いのよっ」

 ドォゥン!!

狐娘「これならどうじゃぁ!」コロコロ

蛇娘「回避ばかりしても、そこに合わせて当てれば良いだけよ」

 ドォゥン!!


狐娘「ちっ……来た!ボール!」

蛇娘 (なっ―――アイテム無し設定でスマッシュボールが出るなんて……)

蛇娘 (この狐、仕組んでいたのね……)

羊娘「えいっ」


 バヒューン===○ バゴゴッ…パキンッ


狐娘「そちが取ってどうするッ!!」

羊娘「ふえぇ……」

狐娘「もうよい!あの図に乗ったゴリラを消し飛ばしてやれ!」


 ズバババババッッ
 
羊娘「むむむ!」

蛇娘「残念、避けるのは意外と簡単よ」

狐娘「のわー!わしを巻き込むな!」

 ドォゥン!!


蛇娘「カウント……はい、終了」

狐娘「ぬがぁぁー!!」

羊娘 (せめてチーム戦にすれば良かったのに……)


*


蛇娘「ふふっ……今日も私の全勝ね」

狐娘「いいや!ポケモノは引き分けじゃ!」

狐娘「あんのイライラする戦法は認めん!」

蛇娘「だってわざとだもの」

蛇娘「本気ですれば、それこそ叩きのめしてしまうわ」

狐娘「くぅ…ふざけおってからに!」

熊娘「ボクはもう二人についていけないよ……」

羊娘「私もですぅ……」



青年「ちょっといいか」

狐娘「なんじゃぬしよ。手短に話せぃ」

青年「もうテンション上げるの疲れるから、ローテンションでツッコむけどさ」

青年「何でお前らオレの家に居るの?」

狐娘「…?」

蛇娘「…?」

熊娘「…?」

羊娘「…?」

青年「揃ってキョトンとするなよ」

青年「つーか、もう仲良くなったのか」

青年「あのな。遊ぶのは構わん」

青年「だけどな……オレの家のリビングで遊ぶなよ!」

青年「一体いつからここは動物園になったんだ!」

熊娘「えっ、住んでもいいの?」

青年「そこまで言ってねーよ!」

蛇娘「シェアハウスならぬ、人外ハウスね」

青年「うまくねーよ!シェアもしねーよ!」

狐娘「みな、ぬしが怒っておる理由……わしは見当がつくぞ」

羊娘「それは…?」

狐娘「ぷくくっ……ぬしめ、一人だけスマシスに入れてもらえなくて寂しいんじゃよっ」

狐娘「じゃが安心せい!スマシスは五人以上でも出来るっ!」

青年「きつねうどんにするぞコラ」

狐娘「まぁまぁ、そう言わずとも。この家はぬしには似合わぬほど大きい。そうじゃろう?」

青年「一戸建てだからな」

狐娘「わしらの様な、小さき者が何人いようが溢れることはない」

青年「そういう問題じゃねぇっつの」

熊娘「じゃあ住んでも?」

青年「何で住みたがるんだよ!」

熊娘「だって今住んでる所、家賃高いしぃ……」

青年「それはオレの知ったことではないな」

狐娘「うむうむ。住むがよいぞ」

青年「お前に決定権は無い」

蛇娘「決まりね」

青年「なにも決まってねーよ!!」

青年「って、あれ?猫娘はいないのか?」

青年「お前ら仲間外れにしてやるなよ」

蛇娘「馬鹿なこと言わないで頂戴。あの方に恩はあれど、仇は無いわ」

熊娘「結構食い下がって誘ったのにねぇ」

羊娘「今日も仕事があるらしいんです……」

青年「仕事なら仕方が無い、か……」

狐娘「そうは言っても、のぅ?」

蛇娘「えぇ。あまりにも多すぎると思うの」

青年「どういうことだ?」

熊娘「ボク達の誘い、殆ど仕事で断られるんだよねー」

羊娘「ですです……」

青年「うーん、つっても大体どの職種も週休二日、多い週は三日とか休みはあるんじゃないか?」

熊娘「オフ会から二週間たったけどさー……」

蛇娘「猫娘さんとは、まだオフ会含めて二度しか会っておりません」

青年「に、二度だけ…?」

狐娘「うむ。流石に働き過ぎと思うのじゃが……」

狐娘「わしは現代の、人の世の仕事は詳しくわからぬ」

狐娘「猫娘が働き過ぎなのか、それとも人間の感覚では普通なのか……」

青年「うーむ……普通で言えば、ちょっと休みが無さ過ぎるな」

青年「日曜も仕事か?」

蛇娘「えぇ。誘ったけど同じだったわ」

羊娘「私達を避けてるとは、思えないんです……よね……」

熊娘「だねー、夜にはちゃんとゲームに顔出してくれるしね」

青年「よっぽど働かないと生活できない程なのだろうか」

青年「て言っても、バイトでも週二日休もうが節約すればそれなりに暮らせると思うし……」

青年「勤務時間も当然、五時間程度はあるよな」

青年「ぜんっぜんわからん。余程のブラックなのか…?」

蛇娘「そう言えば、あなた仕事は何をしてらっしゃるの?」

青年「……内緒」

狐娘「白い粉か?」

蛇娘「葉っぱなの?」

青年「決して後ろめたいものではない」

熊娘「でも一戸建てを持ってるなんて、ねぇ?」

羊娘「いっぱいお金が必要って聞いた……けど……」

蛇娘「まぁ、何かあるのよ。それより―――

狐娘「のぅ、ぬしの親はどこにおるんじゃ?」

蛇娘「っ!馬鹿!」

狐娘「かれこれここに住むが、一度も会っておらんのでな。少し気に―――

青年「いないよ。正確には、もう亡くなった」

狐娘「そ、そうじゃったのか。すまん……」

青年「許さん」

狐娘「えええぇぇ……」

青年「オレにだって一つや二つ、閉まっておきたい記憶だってあるんだぜ」

青年「三日間飯抜きな」

狐娘「そんな殺生なっ」

青年「安心しろ、水だけはやるよ」

蛇娘 (馬鹿ね。少し家の中を見ればわかるじゃないの)

蛇娘 (衣類にしても、この人間と狐娘以外のものが全く無いし生活した跡も無い)

蛇娘 (ここから推測するに、両親は別居かそれとも他界か)

蛇娘 (他界だとするなら、思い出さない為に断ち切る意味も込めて処分したのかしら)

蛇娘 (この人間は親のことを全く話さないって、狐娘あんた自分で言ってたじゃないの)

蛇娘 (なら、もうこの世には居ない可能性が高いことになるって、気づかない所が馬鹿ね)

青年「まぁ冗談は置いといて」

狐娘「な、なんじゃっ。それならそうと早く言わんかっ」コノコノ

青年「飯抜きは本当だけどな」

狐娘「」ズコー











狐娘 (なら……一体どこが冗談じゃったのじゃ……)ガク

青年「この家はな、オレの為に両親が残してくれたんだ」

青年「元々、どちらとも体が弱くてな」

青年「早くおっ死ぬ事を覚悟していたのか、二人ともギリギリまで必死に働いて……」

青年「自分達が亡くなった後、せめて財産として何か形あるものを残せるようにって」

青年「それで、ここの土地を買って家を建てたらしい」

青年「親父が死ぬ間際に聞かされたんだけどな」

青年「何か金に困ったら、この家と土地を売れってさ」

青年「あの頃は適当にバイトしてただ暮らしていたけど」

青年「流石にそんなの聞かされたら、この家を守って行かなくちゃならないと思ったよ」

羊娘「うぅ……い"い"はな"じですね"ぇ」グス

青年「で、お前らいつまでの居るつもりだ」

狐娘「いつまでもじゃな」

蛇娘「文句があるなら力で示しなさいな」

青年「なに…?やるってのか」スッ

蛇娘「望むところよ」スッ

狐娘「ぬ、ぬしら!喧嘩は……」


 3…2…1, GO!!


狐娘「スマシスかい」ズコッ

蛇娘「……っ」ガチャチャチャッッ

青年「開け…モナドよ…!」カチャカチャ


 ドォゥン!!

蛇娘「くっ、やるわね」

青年「だんだんのってきたよぉ!」

狐娘「何が、起こっておるんじゃ……」

蛇娘 (この人間……私でも狙って使うのが難しいモナキャンを平気で扱うなんて……)

熊娘「これ、隙が結構あるキャラだったよね?」

蛇娘「その隙を埋める為にモナドアーツを使ってるのよ」

青年「うっっおおおぉぉーー!!!スリットエッジ!!」


 ドォゥン!!


蛇娘 (ようやく一度落とせた……しかしこちらも40%ほど貰っちゃったわね)

青年「こっこだぁぁぁぁぁー!!」

蛇娘「うる、さいわね!」カチャカチャ

蛇娘 (ぴょんぴょん飛んで鬱陶しいわ……兎かっての!)

青年「エアーッスラーッシュッッ!!」


 ドォゥン!!

蛇娘「まさかエアスラをうってくるなんて……」

青年「ハイリスクな技だが不意打ちに意外と使えたりするよ、やったねェ!」

蛇娘「……私の負けね。ストック三でも負けてたわ。ていうかうるさすぎ」

青年「お疲れさん。本当は一度も落とされる気は無かったんだがな」

蛇娘「腹が立つ嫌味ね」

青年「ちなみに原作のセリフを言いつつプレイするのが最近のマイブームなんだ」

蛇娘「そんなフザケたプレイングで負けるなんて……」

狐娘「ぷぷーっ、負けておるわ!ざまぁないのっ」

蛇娘「」ブチ

 ギチチチチチッッ


狐娘「いだだだだだ!!」

熊娘「四の字固め決まったぁぁ!」

熊娘「これはもう勝負アリですかね!?解説の羊娘さんはどう思います?」

羊娘「えー、蛇ならではの柔軟さに加え、蛇娘ちゃんは狐娘ちゃんより力があるので、もう無理なんじゃないでしょうか」

熊娘「ボクもそう思いますよ、これは決まりましたね」

狐娘「ぐぅぉ…………きゅぅ」カク

蛇娘「b」

熊娘「かんかんかん!圧倒的勝利!勝ち誇った笑みでサムズアップを見せつけていますねぇ」

羊娘「やはり決め手は、蛇娘ちゃんを怒らせたことではないでしょうか」

熊娘「ですねぇ。怒ると通常では考えられないような力が出ると言いますしね!」

青年 (なんだこれ)


*

   ―公園―


青年 (あの四匹……いや、羊娘は大人しいから三匹か)

青年 (狐娘に加え、更に他の二匹もボケ倒してくるから過労死しそうだ)

青年 (気分転換に菓子を買いに行くと出てきてしまったが……)


猫娘「……」ボー

青年 (帰り際に猫娘を発見した)

青年 (しかし、そんなに親しい訳でも無いし……)

青年 (話しかけて嫌そうな顔されたらどうしよう……でも挨拶だけでもしておくべきか……)


猫娘「…あっ、やっほー」フリフリ

青年 (助かった!あっちから話しかけてくれた)

青年「や、やっほー……」

青年 (やっほーってなんだよ!テンパって同じく返してしまった)

猫娘「となり、座りなよ」スス

青年「あー……じゃあ……」スッ

猫娘「珍しいね、こんな所で会うなんて」

青年「ちょっと気分転換に、な」

猫娘「そっか」

青年「ところで猫娘、顔の頬が赤く腫れてるけどちゃんと手当したのか?」チラ

猫娘「ぇ…ぁ……」サッ

青年「火傷っぽい痕だから、気をつけろよ?残るぞ」

猫娘「にゃはは……心配ありがと」




猫娘「君は……他の人とは違うんだね」

青年「何が?」

猫娘「だって、みんな『大丈夫?』とか『何があったの?』って聞くから……」

青年「うーん、『何があったの?』ってさ、何かあったからそうなってる訳だし」

青年「『大丈夫?』も、見れば大丈夫じゃないことくらいわかるしな」

猫娘「そっか……」

青年 (とりあえず、知らない体で聞いてみるか)

青年「そういや、今日狐娘は遊びに出かけていたが、誘われなかったのか?」

猫娘「ううん。何度も誘ってくれたよ」

猫娘「でも断っちゃった。みんなには申し訳無いことしちゃったな……」

猫娘「きっと付き合い悪いって思われてるよね……」

青年「だろうな。……それが薄情なやつだったらの話だが」

青年「少なくとも、あの四人はそうじゃないとオレは思う」

青年「だから心配しなくて良いんじゃないか」

青年「むしろその程度でどうこう言う奴らは、こっちから切ってやったら良い」

猫娘「……君は優しいね」

青年「優しくなんかない。今だって、この際お前と仲良くなれたらって下心はあるしな」

猫娘「にゃはは、そう言うのは隠しておくもんだよ」

青年「……かもな。連絡は皆と今も取ってるんだろ?」

猫娘「うん。と言っても、場所は変えたけどね」

青年「場所…?あのチャットサイトじゃなくて?」

猫娘「今はゲームをしつつ、そのゲーム内で話をしたりしてるの」

青年「なるほど……」

猫娘「っと、そろそろ行かなきゃだ……」

青年「引き止めて悪かったよ、ありがとう」

猫娘「ううん。こちらこそお話聞いてくれてありがとね!」

猫娘「じゃぁ……またね」ニコ

青年「うん。また」


*


青年 (急遽、貯金をおろしてノートPCを買ってきた)

青年 (デスクトップPCは狐娘専用のになりつつあるしな……)

青年 (あの三人は帰ったのか)チラ

青年「狐娘、お前らがやってるゲームってなんだ?」

狐娘「む…?これじゃよ」スッ

青年「これ、は……」

青年「このゲームの中で、皆と集まってるんだよな?」

狐娘「うむ」

青年「ちなみによく集まる場所ってどこなんだ?」

狐娘「ぬしに言ってもわからぬと思うが……」

青年「大丈夫だ、教えてくれ」

狐娘「――サーバーの、―街にある近くの入江じゃよ」

青年「なるほど、さんきゅ」


*


青年 (猫娘に何があったのか。後は狐娘がちゃんと皆と仲良くやれてるか、迷惑かけてないか)

青年 (それを確かめるには、ゲーム内で絡む方が手っ取り早い)

青年 (何より……別れ際に、あんな悲しそうな顔で無理に笑ってるのを見て、気にするなって言うのが無理だ)

青年 (あの狐娘達がやってるゲーム……)

青年 (既視感があると思ったら、オレも昔やってたことあるな)

青年 (アカウントまだ残ってるだろうか……)カタカタ

青年 (やべぇ、忘れた。パス含め全部……)


*


青年「狐娘、少しPC貸してくれ」

狐娘「うむ、よいぞ」ススッ

青年 (確かこのフォルダの中に……)カチカチ

青年 (あぁくそ、なんでこんなに下の方に……)カチカチ

青年 「」ターンッッッ

狐娘「ぬおっ」ビクッ

狐娘「どうしたのだ…?」

青年「い、いいやいや!なにも!?」

狐娘「変なぬしじゃな」

青年 (っぶねー!奥深くを探していたからか、昔の保存してたエロ関係のものが……)

青年 (見つかってネタにされる前に消しとくか)

青年 (……)

青年 (消す、のか……本当に消しても良いのか…?)ムムム

青年 (いや、消そう。思い出はオレの中にある。さらば青春、あばよ性春……)カチカチ

青年 (っと、あったあった。アカウント情報のメモ。流石オレだな)

青年 (えーと、ふむ。スマホにメモってっと……)

青年「よし。狐娘、さんきゅな。もういいぜ」

狐娘「元はぬしのじゃろうに。まぁよいか」


*


青年 (よし、気を取り直して……)

青年 (インストール、はもう出来てるな)

青年 (おおっ、これこれ。このトップ画面のBGM……懐かしい……)

青年 (まさか狐娘達がネトゲやってるなんてなぁ)

青年 (しかしこのアカウント、黒歴史すぎるな)

青年 (正直やってた頃も色んな意味で有名なっちゃったし……)

青年 (やっぱり新しいの作って―――

青年 (でも、初期キャラだと怪しまれるよな)

青年 (ま、いいか。どうせ本腰入れてやり込むわけじゃないしな)

青年「ログイン!行くぜ!」カチ




  【聖刻の堕天使がログインしました】

今日は終わります

>>82
一応人外であることを隠しつつ人間に紛れて生活している感じです


*


青年「確かこの辺りだったよな……」

きつどん『じゃから言うたじゃろうに』

青年「なんだこいつ、Sayで喋ってやがる」

きつどん『すまん』

青年「あ。謝った……ミスチャットか」

青年「てか、きつどんってもしかしてきつねうどん…?」

青年「いやいや、そんな安直にプレイヤーネームつけるか?」

青年「堕天使なんてつけてるオレが言うのもなんだけどさ」

青年「えーと、入江だったな……」

青年「おおっ、三人固まってるな。周りに他のプレイヤーは居ないしコレだな」カタカタ

聖刻の堕天使『こんにちは。今パーティ組める人を探していまして。よろしければ一緒にレベリングにでも行きませんか?』

きつどん『なんじゃこいつは』

きつどん『む?そうなのか』

青年「多分個人チャットで説明してるんだろう。狐娘のだけがだだ漏れだが……」

くまにゃん『こんにちは。聖刻さん』

青年「くまにゃんて!熊か猫かハッキリしろよ!どこぞのゆるキャラのパチモンみたいじゃねーか」

青年「あと聖刻さんはやめて……まだ堕天使の方がマシだ……」

聖刻の堕天使『初めまして。堕天使で良いですよ』

シャーフ『初めまして、聖刻さん』

青年「こいつワザとだろ……って、え?」

青年「シャーフだけ男アバだな。もしやネトゲ内のフレとか…?」

きつどん『なんのようじゃ』

青年「要件はさっき言っただろうが……」カタカタ

聖刻の堕天使『一緒にレベリングでもどうですか?』

きつどん『れべりんぐとはなんぞ?』

青年「くっそめんどくせぇ」カタカタ

聖刻の堕天使『レベルを上げに行きませんか?』

くまにゃん『ごめんなさい。待ち合わせをしているんです』

くまにゃん『あと一人なんですけど……』

くまにゃん『もし五人でパーティを組んでもよろしいのでしたら、お待ち頂いても良いですか?』

青年「くまにゃん、なんていい子なの」

青年「これ、羊娘かな」

青年「そしてもう一人の男アバは熊娘ってところか……」

聖刻の堕天使『私は構いませんよ。シャーフさんときつどんさんは私が入っても良いですか…?』

シャーフ『俺は良いぜ』

きつどん『ときつどんではないが、かまわんぞ』

青年「お、おぉ……シャーフはなかなか男らしい喋り方だな」

青年「ツッコむの面倒だしきつどんはスルーだな」

青年「となると、この男アバは熊娘では無いのか」

くまにゃん『聖刻さん。ボク達、レベル低いですけどそれでも大丈夫ですか?』

青年「また聖刻さん言ってるし……」

青年「って、待て待て!『ボク』?」

青年「くまにゃんって熊娘なのか!?」

青年「と、とりあえず返信……」カタカタ

聖刻の堕天使『大丈夫ですよ。パーティ招待お願いします』

くまにゃん『ありがとうございます』ピコン

シャーフ『フッ……前衛はこの俺に任せな!』

青年「シャーフのやつ、えらいカッコイイこと言うな」

青年「まっ、こういう奴が居る方がパーティプレイは意外と面白かったりするよな」

きつどん『ところで羊娘よ、猫娘はまだかのぅ?』

シャーフ『ちょ、ちょっと!ここでは言っちゃダメだよぉ!』

青年「おめーかよ!!まさかの羊娘か!」

青年「ロールプレイでもしてんのかな」

青年「リアル知ってるとじわじわくる」

きつどん『すまんすまん、しゃーぷよ』

シャーフ『それ尖っちゃってるよ!』

きつどん『しゃーふ』

シャーフ『合ってる』

きつどん『しゃんぷー』

シャーフ『なんでわざわざ言い直したの!?』

シャーフ『あとそれ原型ほとんどとどめてないよ!』

くまにゃん『二人とも恥ずかしいからやめて……』

青年「くまにゃん、割りとガチめなお願い」

青年「そりゃ見ず知らずの人に、このやり取り見られるのはオレでも恥ずかしい」

青年「ん…?よく見たら狐娘のだけ若干他二人のより装備が……」

聖刻の堕天使『きつどんさん、装備良いもの持ってますね』

きつどん『ふふん!かきんのちからじゃよ』

青年「あんの狐野郎、小遣いを課金に使いやがって……」

青年「あれほどゲームの課金にだけは使うなよって釘を刺したのに」

聖刻の堕天使『あとで説教だな』

きつどん『む?』

くまにゃん『?』

青年「やっべ、素で打ち込んでしまった」カタカタ

聖刻の堕天使『あんまり課金すると、あとでお説教されるかもですよw』

青年「苦しいな。やり過ごせるか……」

きつどん『ようわからぬが、大丈夫じゃろう』

きつどん『なんせわしは必殺技を編み出したからのぉ!』

聖刻の堕天使『ひっさつわざ…?』

きつどん『うむ!そのなも、なきおとしじゃ!』

青年「その名も、泣き落とし……」

青年「へぇ、泣き落としか。使ってきたらマジでお仕置きだな」

聖刻の堕天使『へぇー!なんだか凄そうですね!』

きつどん『まぁのぅ!』

青年「それにしても……蛇娘はどこに居るんだ?」

青年「周りには他のプレイヤーは見当たらないし、何か用事でもあってたまたま今日いないだけかな」

聖刻の堕天使『今日来るのは、今お待ちしている方だけですか?』

シャーフ『そうだぜ。俺達の相棒だ』

くまにゃん『もう一人居るんですけど、今日は他の場所でレアモブ狩りするって言ってました』

青年「蛇娘すげぇな。レアモブ狩りなんてガチじゃん」

くまにゃん『あっ』

くまにゃん『聖刻さん、もうそろそろ来るみたいです』

聖刻の堕天使『わかりました』

青年「ようやく、か……」 

青年「にしても、結構な時間だべってたなぁ」

青年「猫娘は仕事していたのだろうか……」

青年「おっ、あの遠くから走ってくるのが猫娘かな」

くまにゃん『招待しますね』

青年「いよいよか……」




✝闇夜猫✝『こんばんにゃー!』ピコン

青年「おっ?なんだか、そこまでアレな名前じゃないな。やみよるねこ…?」

聖刻の堕天使『こんばんは、初めまして』

✝闇夜猫✝ 『あ!初めましてっ!ダークナイトキャットでっす☆』

青年「やべぇの来たな」

聖刻の堕天使『だーく……え?』

✝闇夜猫✝『ダークナイトキャットでっす☆』

青年「……」

聖刻の堕天使『……』

✝闇夜猫✝ 『ダークナイトキャットでっす☆(>ω<)b』

聖刻の堕天使『あ……はい』

くまにゃん『ごめんね。本当に……』

青年「熊娘も苦労してんなぁ」

✝闇夜猫✝ 『それでー、あなたは?』

聖刻の堕天使『?』

✝闇夜猫✝『にゃふふっ、あなたからは隠蔽の真名の波動を感じるわ』

青年「まじ、かよ……」

青年「つまり、なんだ。ダークナイトキャットみたく他の読み方を教えろと?」

青年「聖……えぇー……まじで?」

青年「もう適当に英単語並べとくか」

聖刻の堕天使『クク……よくぞ気づきましたね』

聖刻の堕天使『私の二つ名は、フォールンセイントエンジェルです!』

✝闇夜猫✝『カッコイイ!』

青年「もうどうにでもなれ」カタカタ

きつどん『ふぉーるん?なんじゃ?』

青年「お前の名前が単純とか言ってすまん!むしろ単純な方が良かった!」

シャーフ『揃ったことだし、早速行こうぜ!この頼もしい追い風と共にな!』

青年「お前もまだ続けんのかよ」


*


聖刻の堕天使『シャーフさんがヘイト稼ぐまで手をだしちゃダメですよ!』

きつどん『へいととは?』

シャーフ『きつどん、そう焦るな。敵がお前に惚れてしまっては困るだろう?』

きつどん『それはかんべん願いたいところじゃな』

聖刻の堕天使『闇夜猫さんはシャーフさんのHPが70%を切ったら即回復をお願いします』

✝闇夜猫✝『違う!』
 
聖刻の堕天使『え、えぇ…?』

✝闇夜猫✝『私はダークナイトキャットよ!』

青年「めんどくさ!」

青年「蛇娘、頼むから来てくれ……熊娘だけじゃ収拾つかなくて可哀想だ」

くまにゃん『ごめんね。本当にごめん』ペコペコ

青年「頭下げるモーション連打してるくれるなんて、いい子すぎる飼いたい」

聖刻の堕天使『ダークナイトキャットよ、回復は任せたぞ!』

闇夜猫『背中は任せなさい!エンジェル!』

青年「いつまで続くの……」

きつどん『ぬおおおお』ダダダダ

青年「バカヤロッ!あいつレアモブ引っ掛けて来やがった!」

青年「こんなパーティで果たして倒せるのか…?」

聖刻の堕天使『きつどんさんはそのまま逃げて!』

青年「あぁもう!ダークナイトキャット長すぎてめんどくせぇよ!」

聖刻の堕天使『ダクキャさんはきつどんさんを回復しつつ攻撃範囲外に後退』

聖刻の堕天使『シャーフさんも後退して他のモブの範囲に入らないようにしつつヘイト稼ぎお願いします!』

青年「くまにゃんは……もう自分で動けてるな」

青年「あぁくそ、弱体魔法で間に合うのかこれ」

聖刻の堕天使『きつどんさん、思いっきり攻撃して大丈夫ですよ!』

きつどん『きたか!任せい!』

青年「ヘイトは十分稼いだろ。あとはジリ貧になる前にゴリ押しするしかない!」

きつどん『くそぅ、しぶといやつめ。とっととくだけちれ!』

シャーフ『ハハッどうした?お前の攻撃はその程度かッ!ぬるいぜ!』

✝闇夜猫✝『ダークエターナルブリザード!!!』

青年「チャット打つ前に行動しろよ!」

青年「くまにゃんなんて、ひたすら無言で敵に攻撃してるぞ……」

青年「って、ようやく倒せそうだな」


*

聖刻の堕天使『おっ、倒せましたね』

きつどん『おほー!やったわ!やってやったぞ!見たか!』

シャーフ『まぁ当然の結果だな。俺の前にひれ伏すがいい』

✝闇夜猫✝『私の中に眠る闇の力が……負けるはずなんて無いにゃ!』

くまにゃん『みんなおつかれさまー』

青年「くまにゃんが唯一の癒やしだな……」

青年「っと、そろそろ本題に入るか」

聖刻の堕天使『皆さん、そろそろ少し休憩しませんか?』


*


  ―もし蛇娘を無視し続けたら―



蛇娘「ねぇ、ちょっと」

青年「……」

蛇娘「あなた、とうとう声が聴こえないくらい馬鹿になったのかしら?」

蛇娘「もう……なんで私だけここに残らなきゃならないのよ」

蛇娘「まさかジャンケンの勝者に、こんな仕打ちが待っているとは思いもしなかったわ」

蛇娘「みんな早く帰ってこないかしら」

青年「あいす」

蛇娘「え?」

青年「あいすはやくたべたいな」

蛇娘「いやアンタがみんなに買いに行かせたんでしょ」

青年「……」

蛇娘「また無視?私爬虫類なんですけど」

青年「……」

蛇娘「ちょっとツッコミなさいよ」

青年「寝よ」ゴロン

蛇娘「客が居るのに寝るってどういうことかしら?」

青年「……」

蛇娘「ねぇってば」

蛇娘「そうだ、この前のスマシスのリベンジさせなさいよ」

青年「……」

蛇娘「……私、あなたに何かした?」

蛇娘「せめて原因くらい教えてくれてもいいでしょう?」

蛇娘「ねぇ……」












蛇娘「なんなのよ……」グス

青年 (やばい泣かせてしまった)

蛇娘「いみわかんない」ポロ

青年「ごめん」

蛇娘「っ……聞こえてるなら返事しなさいよ!」ゴシゴシ

蛇娘「何かしちゃったのかと思ったじゃない」

蛇娘「……ばか」

青年「うん」

蛇娘「責任取りなさいよ」

青年「なんの!?」

蛇娘「私を泣かせたことのよ!」

青年「何をすればいいんでしょうか」

蛇娘「知らないわよ」

青年「……」ナデナデ

蛇娘「なっ、なんで頭を撫でるのよ!」

青年「……」スッ

蛇娘「……なんで止めるのよ」

青年「だって……」

蛇娘「続けなさいよ!」

青年「…はい」ナデナデ













狐娘「なんじゃこれは……」

熊娘「帰ってきたらなにがどうなってるの……」

今日は終わります

やっぱり†付いてるの来たじゃないですかぁ残るは卍だな

てすと


*


くまにゃん『そうですね、そろそろ休憩入れましょうか』

きつどん『ふむ、承知した』

シャーフ『わかった』

シャーフ『また風が騒ぎ出したら始めようぜ。殺戮という名のパーティをな!』

✝闇夜猫✝『いいわよ。もう一人の私も今は休息が必要と言っているわ』

聖刻の堕天使『ありがとうございます』

青年「約二名どうしようもないのがいるな……」

青年「狐娘がまだマトモに見えるってヤバすぎるだろ」

青年「っと……。とりあえず一番まともな熊娘と個人チャットで話してみるか」カタカタ

聖刻の堕天使『(よう、熊娘)』

くまにゃん『(?)』

くまにゃん『(どなたですか?)』

聖刻の堕天使『(オレだよ、オレオレ)』

くまにゃん『(あの……流石にゲーム内で詐欺は……)』

青年「しまった。そういや熊娘はオレのこと知らなかったんだった」

青年「熊娘の言う通り、これじゃあオレオレ詐欺だな……」

聖刻の堕天使『(ごめん、青年だ)』

くまにゃん『(えっ…?)』

くまにゃん『(そこまで調べてるなんて……その情熱を他の事に向けてみては?)』

青年「詐欺じゃねーよ!まだ疑ってやがる……」

聖刻の堕天使『(小熊猫の熊娘、オレは青年だ)』

青年「そうか、くまにゃんって熊猫って意味か……」

くまにゃん『(嘘つくのはやめてください)』

くまにゃん『(青年がそんな恥ずかしいプレイヤーネームつけるはずがありません)』

青年「やめてぇぇぇ!!」

青年「昔はやんちゃしてただけなのぉぉ!」

聖刻の堕天使『(これは昔のアカウントなんだ。だから……その……勘弁してください)』

くまにゃん『(ボクは騙されませんよ。証拠をください)』

聖刻の堕天使『(何をすれば…?)』

くまにゃん『(アイス五人分を逆立ちで買ってきてください)』

聖刻の堕天使『(ここにアイス売ってねーよ!つーか逆立ちとか無理ゲーすぎるだろアシカか!)』

くまにゃん『(こんにちは、青年)』

青年「ツッコミで確認ってどういうことだよ……」

くまにゃん『(しかしまた、なんで女アバなの…?)』

聖刻の堕天使『(昔のだからノーコメントでお願いしたい)』

くまにゃん『(わかった)』

くまにゃん『(それにしても……言ってくれたらいいのに)』

くまにゃん『(隠してボク達に近づいてくるなんて、あんまり良い趣味とは言えないよ?)』

聖刻の堕天使『(全くその通りです、すみません)』

くまにゃん『(日頃お世話になってるから良いけどさ……)』

くまにゃん『(それで。何か用があって来たんでしょ?)』

聖刻の堕天使『(そ、そうだった。つい昔のように楽しんでしまっていた……)』

聖刻の堕天使『(狐娘とは最近どうだ?)』

くまにゃん『(狐娘と? うーん……)』

くまにゃん『(ボクは楽しく付き合わせてもらってるけど、狐娘がどう思ってるかはわかんないかな)』

聖刻の堕天使『(そうか。熊娘が楽しいならそれで良いんだ)』

くまにゃん『(……青年は優しいね)』

聖刻の堕天使『(それ猫娘にも言われたが、オレはお前らが思ってる程優しくなんてないよ)』

くまにゃん『(そう言うところだよ)』

聖刻の堕天使『(よくわからんが、次行くぞ)』

聖刻の堕天使『(猫娘の事についてなんだが)』

シャーフ『……っ!こいつぁデケェ風がそろそろ来そうだぜ!』

シャーフ『みんな!油断するなよ!』

青年「うるせぇ……そろそろレベリングを再開したんだろうな」

くまにゃん『(スルーして良いよ。続けて)』

青年「熊娘わかってるじゃん!」

聖刻の堕天使『(猫娘、最近どうだ?何か気になることとかあったら教えて欲しい)』

きつどん『腹が減ったのぅ……』

シャーフ『きつどん、何か食べてくるがいい』

シャーフ『腹が減っては風は狩れぬ』

きつどん『そうする』

青年「風を狩るってなんだよ……」

くまにゃん『(猫娘ねー……うーんと)』

くまにゃん『(たまにね、ふとたまに。凄く元気が無い時があるんだ)』

くまにゃん『(ボク達には見せないようにしてるのかわからないけど)』

くまにゃん『(気が緩むのか、ふと猫娘を見るとさ、悲しい顔をしてる時があるよ)』

✝闇夜猫✝『ぐぅ……静まって!もう一人の私!』

✝闇夜猫✝『邪魔をするなァ!……へへっ、この体は乗っ取ってやったぜ……』

くまにゃん『(…………)』

聖刻の堕天使『(…………)』

くまにゃん『(たぶん、むりしてるんだよそうだよきっと)』

青年「漢字変換も忘れてる辺り、動揺が伝わってくる」

くまにゃん『(ゲームの中ではあんな感じだけどさ)』

くまにゃん『(あっちで遊ぶ時は、オフ会の時みたいに頼れる人なんだけどなぁ……)』

青年「あっちって言うと、リアルの方か」

くまにゃん『(ボクちょっと調べたんだけどさ)』

聖刻の堕天使『(調べた…?)』

くまにゃん『(うん)』

くまにゃん『(猫娘ちゃん、虐待?ってのにあってるんじゃないのかなって)』

聖刻の堕天使『(虐待…?)』

くまにゃん『(体のどこかに、いつもアザができてるんだ)』

くまにゃん『(ボクね、何でしつこく猫娘を誘ったかっていうと)』

くまにゃん『(その虐待?ってのは自分と近い人がやるんでしょ?)』

くまにゃん『(だから、なるべく外に、そしてボク達と居たら少しでも減るかなって思って……)』

青年「熊娘……なんていい子なの……」グス

青年「虐待、ねぇ……」

青年「あの火傷も、もしかしたらそれかな」

青年「ふーむ……」

くまにゃん『(青年?どうしたの?)』

聖刻の堕天使『(ごめん、少し考え事してた)』

シャーフ『クソ!悪い風がどんどん吹き荒れてきやがる……』

シャーフ『きつどん……きつどんはまだか!』

きつどん『わしはおるぞ』

シャーフ『きつどん!ダークナイトキャットは動けん!俺達だけででも食い止めに行くぞ!』

きつどん『今いんすたんとうどんを食っておるから待っておれ』

シャーフ『くぅ……きつどんもやられたか……』

シャーフ『ごめん、私もちょっとご飯食べてくるね』

青年「急に素に戻るなよ」

青年「って、もうこんな時間か」

聖刻の堕天使『(猫娘の件、ありがとな)』

くまにゃん『(うん)』

くまにゃん『(青年も、何か力を貸してくれたら……ボク、嬉しい)』

青年「……」カタカタ

聖刻の堕天使『(悪いが、オレは何かするつもりは無いよ)』

くまにゃん『(えっ……)』

聖刻の堕天使『(猫娘のことを聞いたのは、何かしようと思ってでは無い)』

聖刻の堕天使『(オレは面倒事はゴメンだからな)』

くまにゃん『(そっか……)』

聖刻の堕天使『(熊娘、お前もあまり先走って手を出すなよ)』

聖刻の堕天使『(じゃ、そろそろ落ちる)』

聖刻の堕天使『皆さんパーティ組んで頂きありがとうございました。そろそろ落ちますね』

聖刻の堕天使『お疲れ様でした』

きつどん『む?そうか。またの』

シャーフ『お疲れ様!またねどこかでー』

✝闇夜猫✝『お疲れ様にゃー!』

くまにゃん『……お疲れ様でした』


*


青年「ふぅ……」

青年「しまった。目的は猫娘だったのに流れで落ちてしまった」

青年「……まぁ、こればっかりは、経験者として言わせてもらうと、猫娘から助けを求められないとどうしようもないからなぁ」

青年「それに、自分から抗わないと解決にならない」

青年「……ま、猫娘を尾行してたオレが言えたことじゃないか……」

青年「素行調査の依頼された時はわからなかったが……あの人、独占欲も強いのかもしれんなぁ」

青年「ちょっと調べて引き受けるべきだったと後悔だな……」

青年「『金遣いが荒くなったり、高い金品が増えた』、か」

青年「その金がどこから出てるか、調べてみるか」


 ガチャ


狐娘「ぬしよー、腹が減ったぞ」

青年「ノック」

狐娘「すまん……」


 パタン


 コンコンッ


青年「いいよ」

狐娘「ぬしよ、腹が減った」

青年「さっきカップ麺食ってたんじゃなかったのか」

狐娘「何故それを知っておる!?」

狐娘「もしや近頃噂の、えすぱーとやらか?」

青年「近頃って……もう数年以上も前だろ」

狐娘「まぁよいか。それよりわしが作った麺は味が無くてのぅ……」

青年「味が、無い…?」




*


 ガチャ


猫娘「……戻りました」

「遅い」

猫娘「すみません」

「どこに行っていたんだ?」

猫娘「……」

猫娘「外で散歩を……」

「散歩?こんなに長い時間をか?」

猫娘「……はい」

「……」バシャッ

「嘘をつくな!最近どこかにコソコソ行ってると思えば……」

「どうやらネットカフェに入り浸っているようじゃないか」

猫娘「な、なんで…それを……」

「俺はな、ネットカフェに行ったことを咎めてるんじゃない」

「飼い猫の分際で、俺に隠し事をしたことを咎めてるんだよ」

「全く、誰のおかげで生きていられると思ってるんだ?」

「良いんだぞ?お前の正体をバラしたってな」

「化け物の様な体で、人様と一緒に生きようなんておこがましいんだよ」バシッ

猫娘「っ……」

「ネットカフェで何してるんだ?」

猫娘「……」グス

「何をしているんだ、と聞いている」

猫娘「ゲームを……」

「ほぅ、ゲームか。何のだ」

猫娘「―――って言うのです……」

「へぇ、奇遇だな。そのゲーム、俺もやっていたことがある」

「これでも少し名の通ったプレイヤーだったんだぜ?」

「暇だったし丁度良い。明日お前も来い」

猫娘「で、でも……明日は約束が……」

「なんだと…?」

「約束の内容は」

猫娘「と、友達と……」

「お前は恩人の俺よりも、その友達とやらを優先するわけか」

「ふん。俺の祖父や祖母が世話になったのか知らんが」

「俺はお前から何も世話されるどころか、こっちがしてやっていると言うのに」





「明日、ネットカフェからゲームに入れ」

「場所は後でメールする」

猫娘「……」

「返事は?」

猫娘「……」コク

「返事ってのはな、声に出してするもんなんだよ」ドス

猫娘「っ…げほっ……はぃ」

「できるなら最初からしろ」

「床の水、拭いておけよ」

猫娘「……はい」

猫娘 (明日、遊べなくなっちゃった……)ゴシゴシ


*


狐娘「これじゃ」スッ

青年「見事に、お湯だな」

狐娘「うどんは好きじゃが、うどんのみの味じゃと、いくらわしでも……」

青年「……」チラ

机『スープの素』

青年 (こいつ……スープの素を入れて無ェ……)

青年「あのな、インスタントのカップ麺はこれを入れなきゃ話にならんぞ」スッ

狐娘「なんじゃそのゴミは」

青年「ゴミじゃねぇよ!カップ麺の命だ!」

青年「冷凍うどんは……あったあった」ゴソゴソ

青年「お湯を沸かしてっと……」

青年「うどんは冷凍のだが、この粉末をお湯でとかせばきつねうどんになる」

狐娘「ぬしは超能力が使えたのか……」

青年「はいはいオレは超能力者ですよ。あっちに座っとけ」

狐娘「待っておるぞー」


*


青年「美味しいか?」

狐娘「うむ!ほいひいぞ!」モグモグ

青年「……」



青年「みんなと最近どうだ?」

狐娘「どうと言われてものぅ」

狐娘「みな、仲良くして貰っているとしか……」

狐娘「そういえば猫娘から、何故か明日は絶対にいつもの場所に来るなと言われたの」

青年「ゲームのか?」

狐娘「うむ」

青年 (どういう意図かわからんな)

青年「それって、他のみんなにも?」

狐娘「そうじゃろうな」

青年「さんきゅ、ありがとな」ナデナデ

狐娘「む…?ようわからんが、どういたしましてと言えばよいのか?」

青年「あぁ」


*

   ―翌日―


青年「……さてと」

青年「何時頃かわからないし、張り込むか」

青年「来るなってことは、あの場所に猫娘が何かしらを連れてくるか……」

青年「もしくは、何かあそこで起こるってことだな」

青年「……オレのせいでもある、よなぁ……」

青年「いくら仕事とはいえ、やっぱりあの依頼は断るべきだった」

青年「猫娘、大丈夫…なはずないよな……」

青年「あの依頼人、会社で評判は良くなかったし何かしらに手を染めてくれてると楽なんだけど……」

青年「熊娘には酷いこと言ってしまったが、整えてから手を出さないと余計に猫娘に八つ当たりされる可能性が高い」

青年「手がかりを求めて、ネトゲってのもなんか笑えるが……」

青年「行くしかないな」

青年「確かもう一体……あったあった。残ってて良かった」

青年「念の為、サブキャラを使おう」

青年「よし、行くぜ!ログイン!」カタタターンッッ



 【卍理ヲ支配ナル者卍がログインしました】

今日は終わります

>>128
記号使わさせて頂きました


*


熊娘「猫娘、来るなって言ってたけど……」

熊娘「来るなって言われたら、逆に来たくなるのが動物の性ってものだよねぇ」カタカタ

熊娘「時間聞いたら昼過ぎって言ってたから、そろそろかな」

熊娘「ボクのキャラ、隠蔽《ハイディング》スキルが低いんだよなぁ……」

熊娘「ギリギリ見える範囲まで離れていようかな……」

熊娘「あ、あれ…?先客が二人も居る……」

熊娘「全体マップには写ってなく、近くまで来て視認したってことはこの二人も隠蔽を使ってた、のかな」

卍理ヲ支配ナル者卍『あの……どこか場所を変えてくれませんか?』

熊娘「えっ……あ、ボクのことじゃないな」

コブ丸『あなたこそ、私から離れてくださるかしら?』

熊娘「この名前って確か……」

卍理ヲ支配ナル者卍『私はここに用事があるので。』

コブ丸『あら奇遇ね、私もこの場所に用事があるわ』

卍理ヲ支配ナル者卍『近くに居られると隠蔽率が下がるんですよ』

コブ丸『だから?』

卍理ヲ支配ナル者卍『場所を変えてください』

コブ丸『嫌よ』

卍理ヲ支配ナル者卍『そもそも、私が先にここに居ましたよね?』

コブ丸『あら、そうだったの?私が先かと思っていましたわ』

卍理ヲ支配ナル者卍『とぼけないでください』

コブ丸『そもそも、PvPや特殊なフィールド以外の場所で隠蔽スキル使うのってマナー違反でしょう?』

卍理ヲ支配ナル者卍『やむを得ない状況なのでセーフです』

コブ丸『何その超次元なルール、意味わからないんだけど』

コブ丸『ファイアトルネードとか使ってるサッカーじゃあるまいし』

卍理ヲ支配ナル者卍『凍てつく闇の冷たさを教えてあげましょうか?』

コブ丸『はい?』

卍理ヲ支配ナル者卍『ボケたんですよ、ツッコむ所です』

コブ丸『ツッコんでほしいならしてあげるわよ』

コブ丸『まず、あなたのその名前。なんなの?』

卍理ヲ支配ナル者卍『そこをツッコむのはズルい』

コブ丸『ズルいとか知らないわよ。りをしはいなるもの…?』

卍理ヲ支配ナル者卍『ことわりですよ。読めないんですか?』

コブ丸『こwとwwわwwwりwww』

コブ丸『まさかとは思ったから敢えて聞いただけよ』

コブ丸『本当にそうだとはwことわりwww』

卍理ヲ支配ナル者卍『何か文句でも?』

コブ丸『大いにあるわよ。なによ、理を支配してどうするの?w』

コブ丸『ていうか、理ってなんなの?』

コブ丸『そもそも……あなた何がしたいワケ?www』

卍理ヲ支配ナル者卍『理を支配してるんですよ』

コブ丸『ふふw支配www』

コブ丸『知ってる?ネット内とリアルは反比例するって。』

コブ丸『こんな所を支配してるなんて、さぞかしリアルは残念なんでしょうねwww』

卍理ヲ支配ナル者卍『エターナルフォースブリザード!!!』

コブ丸『あなたが死になさいよ』

卍理ヲ支配ナル者卍『ならこちらも言わせてもらいますけど』

卍理ヲ支配ナル者卍『コブ丸ってなんなんですか?』

卍理ヲ支配ナル者卍『昆布でも巻いてるんですか?』

卍理ヲ支配ナル者卍『それとも某サイコガンのキャラを真似てるんですか?w バキューン!』

卍理ヲ支配ナル者卍『コブ丸って一体何を思ってつけたんですか?』

コブ丸『ただリアルの名前をもじっただけよ』

卍理ヲ支配ナル者卍『でwでたーwwwリアルの名前をもじってつけるやつーwww』

卍理ヲ支配ナル者卍『コブ丸はリアルで昆布巻いておでんでも作っててくだちゃいねーwww』

コブ丸『うざ』

卍理ヲ支配ナル者卍『ブーメラン乙』

コブ丸『いい加減に黙りなさいよマンジマン』

卍理ヲ支配ナル者卍『なんですかそれ』

コブ丸『あなたこそ、何を思って名前の前にそんな記号をつけたワケ?』

コブ丸『神社になりたいの?』

コブ丸『それとも卍解とかするのかしら?』

コブ丸『というか、二つもつけて囲う意味あるワケ?www』

卍理ヲ支配ナル者卍『うぜぇ』

コブ丸『特大ブーメラン乙』

熊娘「なに喧嘩してるの……」

熊娘「蛇娘も来ちゃったんだ」

熊娘「まぁ、気になるよね」

熊娘「蛇娘のことはちゃんと相手に謝っとこう……」

熊娘「ネトゲ内と言えど、意外とフレがこの相手と知り合いだったりとか」

熊娘「そういう気まずいのは避けなくちゃ……」カタカタ


コブ丸『で?結局のところ、何があるのよ』

卍理ヲ支配ナル者卍『?』

コブ丸『この位置、入江から死角になるでしょ。』

コブ丸『隠蔽してまで張り込むって、一応事情があるんじゃないかしら』

卍理ヲ支配ナル者卍『あぁ、それね』

卍理ヲ支配ナル者卍『気になる?w』

コブ丸『早く話しなさいよ』

卍理ヲ支配ナル者卍『実はここに知り合いが来るかもしれないんだ。それも面倒そうな相手を連れて』

コブ丸『ふーん』

卍理ヲ支配ナル者卍『ふーんって、あのねぇ……』

コブ丸『こっちも同じよ。……と言っても、何が起こるか私にもわからないんだけど』

卍理ヲ支配ナル者卍『あんたもここに知り合いが来るのか……』

卍理ヲ支配ナル者卍『もしかして、一緒の知り合いだったりしてw』

コブ丸『バカ言ってんじゃないわよ』

熊娘「なんか急に和解したんだけど……忙しい人達だ」

熊娘「あっ、来た!」

コブ丸『来た!』

卍理ヲ支配ナル者卍『来た!』

コブ丸『ちょっと嘘でしょ?!』

卍理ヲ支配ナル者卍『え、もしかして?』

コブ丸『私が用があるのは、あの向かいに見えるプレイヤーよ』

卍理ヲ支配ナル者卍『私もですけど……』

コブ丸『なん、なの……』

卍理ヲ支配ナル者卍『……個チャで話そうか』

コブ丸『そうね……』

熊娘「最初からそうしなよ!」



花鳥『おいお前ら!さっきからうるせぇんだよ!』

熊娘「あぁもうほら、言われたじゃん……」

花鳥『ったく、マナーも守れねぇのか?』

コブ丸『ブーメランすぎるわよ。あなたこそ個チャで注意してきなさい』

花鳥『はぁ?』

卍理ヲ支配ナル者卍『sayで注意って意外と迷惑なんですよ?花鳥さん』

コブ丸『あと何いきなり話しかけてきてるわけ?』

花鳥『話しかけてねぇだろ、黙れ雑魚』

卍理ヲ支配ナル者卍『今話してるんですけどーwww』

コブ丸『雑魚って言う方が雑魚って相場は決まってんのよw』

卍理ヲ支配ナル者卍『ていうかイマドキ雑魚ってw』

熊娘「言葉は悪いけど、相手の言ってることにも一理無くは無い…?」

熊娘「でも、まぁ……煽りに乗っちゃったらダメだよね」

熊娘「あとこの二人は絶対に敵にしたくないなぁ」

花鳥『なんだこいつら』

熊娘「って!この花鳥さんの横に居るの猫娘のキャラじゃん!」

コブ丸『ところで花鳥さん。横に居るの、お知り合い?』

花鳥『そうだが?』

卍理ヲ支配ナル者卍『えぇー!結構可愛い子ですね!』

花鳥『アバが可愛くてもしょうがねぇだろ』

卍理ヲ支配ナル者卍『まさか……リアルのお知り合いだったり?』

花鳥『まぁな』

コブ丸『お友達ですか?』

花鳥『友達?笑えない冗談だな』




花鳥『こいつは俺の……まっ、下僕ってところだ』

卍理ヲ支配ナル者卍『へぇ……』

コブ丸『下僕……』

熊娘「……この人が、猫娘を……』


*


青年「ふぅー、久々に煽り合って遊んだな」

青年「相手もわかっててやってるみたいだし良かった」

青年「しっかし、このコブ丸……誰なんだ?」

花鳥『お前ら、こいつの連れか?』

青年「む…?」

卍理ヲ支配ナル者卍『だとしたらどうします?』

コブ丸『さぁね』

花鳥『お前らと話してるとイライラするなマジで』

卍理ヲ支配ナル者卍『イライラは要らんってなw』

コブ丸『まさに、この場がエターナルフォースブリザードね』

卍理ヲ支配ナル者卍『このエリア支配しちゃったw』




卍理ヲ支配ナル者卍『で?』

花鳥『あ?』

卍理ヲ支配ナル者卍『何の用ですか?』

花鳥『このクソ猫の連れかって聞いてんだよ』

花鳥『だからこのクソ猫の連れかって聞いてんだよ』

花鳥『つか、もういいわ。てめぇおらとPvPしろよ』

花鳥『ぼこぼこにしてやんよ』

卍理ヲ支配ナル者卍『おらwおっすオラ花鳥!w』

コブ丸『ボコボコっていつの時代よw』

花鳥『たいぴんぐみすたろきつけよ』

コブ丸『落ち着きなさい。変換すら忘れてるわよw』

花鳥『はやくしろ』

卍理ヲ支配ナル者卍『はちみつください』

花鳥『はぁ?』

コブ丸『バカね。ネタよ』

花鳥『はやくしろや!!』

卍理ヲ支配ナル者卍『イライラしてるぅwww』

花鳥『死ね!!!!』




青年「これだけ煽ればいいか……」

青年「さて、PvPだな」

卍理ヲ支配ナル者卍『いいよ。キャラ変えるから待ってね』

花鳥『おう』

青年「メインキャラで行くしかないよな」

青年「やだなぁ……このタイミングでこれ出すの」カチカチ

聖刻の堕天使『お待たー』

コブ丸『ちょwwwwww』

コブ丸『聖刻のwww堕天使wwwww』

コブ丸『あなたお笑い芸人になれるわよw』

聖刻の堕天使『うるせぇですよ……』 

青年「やっぱり言われると思った……」

花鳥『はやく』ピコン

聖刻の堕天使『落ち着きなさいよ』

青年「って、やべ!初期装備のまんまじゃん!」

聖刻の堕天使『ちょ、たんま!』



花鳥『ふ……』

花鳥『怖気づいたのか?w』

花鳥『さっきまでの威勢はどうしたんだよwおらwww』

青年「クソ、こいつ……装備ヘボいことバレてるな」


 ピコン


青年「っ!」

コブ丸『(あなた、そんな装備でやるつもりなの?)』

聖刻の堕天使『(訳あって装備全く持ってないんだ)』

コブ丸『(仕方が無いわね……)』ピコン

青年「トレード、申請…だと……」カチカチ

コブ丸『(あの花鳥とかいうのとだいたい同レベルの装備貸してあげる)』

コブ丸『(あなたが誰なのか知らないけど、あのDQNをぶっ飛ばしてきなさい)』

聖刻の堕天使『(さ、さんくす……)』

青年「数十分前の敵は今日の友ってな!」カタカタカタ

聖刻の堕天使『待たせたなぁ!』

花鳥『お前……持ってたのか』

聖刻の堕天使『にやりんちょ。申請受けたぜ』ピピ

花鳥『さっきの鬱憤、晴らさせてもらうからな』

聖刻の堕天使『知ってるか?ここのエリアの秘密』

青年「……」カタタタッカチカチ

花鳥『秘密だと…?』






コブ丸『(熊娘、そこで何してるの?)』

くまにゃん『(ようやく気づいたんだね……)』

コブ丸『(丁度良いわ。あなたもこのPvPを観て行きなさいな)』

くまにゃん『(大丈夫なの…?)』

コブ丸『(さぁ?)』

くまにゃん『(さぁって……)』

コブ丸『(でも……あのプレイヤーネーム、どこかで見たと思ったらレッドリストに乗ってるプレイヤーなんじゃないかしら)』

くまにゃん『(レッドリストって何!?)』

コブ丸『(wikiにあるでしょ。色んな意味で関わらない方が良いっていうプレイヤー名が乗ったリストよ)』

コブ丸『(ちなみにあの聖刻の堕天使は、詐欺や迷惑行為はしていないわ)』

くまにゃん『(じゃあなんでそんなリストに…?)』

コブ丸『(それはね、PvPの時だけは相当鬱陶しいらしいわよ)』

コブ丸『(ペラペラチャットで喋りながら姑息な手や不意打ちを使って勝利してるらしいわ)』

くまにゃん『(姑息…?)』

コブ丸『(姑息って言っても私からしたら、どれも上手い手だと思うのだけれどね)』

コブ丸『(例えば、誰も見向きもせず売る様なドロップアイテムを応用したりね)』

くまにゃん『(そ、そうなんだ……)』

コブ丸『(尺稼ぎの堕天使やら小細工のペ天師とか書かれていたわ)』

くまにゃん『(なにそれ……)』

熊娘「ていうか、あのキャラ青年だよね……」

熊娘「……」

熊娘「うん。お互い知らない方が良いこともあるよね黙っておこう」

熊娘「それに、あの名前でレッドリストなんて厨ニなものに乗っちゃうなんて、ボクならアカウント消すレベルだなぁ」

熊娘「青年は色んな意味で凄いや……」


*


聖刻の堕天使『このエリアには、PvPの時だけ魔法が強化される付加効果があるんだ』シュゥゥ

聖刻の堕天使『ほら、魔法のエフェクトもこんなに変わってるだろ?』ボォォ

花鳥『変わってねぇだろ。ハッタリだな』

聖刻の堕天使『じゃあ、一発食らってみるか?』

花鳥『あぁ、いいだろう』

 ズバンッ

聖刻の堕天使『どう?』

花鳥『うそだろ……』

花鳥『なんで、こんなに』

花鳥『あんな魔法、俺の装備とステータスなら四分の一も減らないはずなのに』

花鳥『何をした?』

聖刻の堕天使『何も。だから言っただろう?』

聖刻の堕天使『ここのエリアは特殊だってな』

聖刻の堕天使『普段こんなマイナーな場所でPvPなんてしないからな』

聖刻の堕天使『でも、ちゃんとネットには乗ってるはずだぜ?』

花鳥『クソが!』

聖刻の堕天使『おっと回復はさせんよ』バシュシュシュッッ

聖刻の堕天使『バカなお前に教えてやるよ』

聖刻の堕天使『お前の敗因はただ一つ』

聖刻の堕天使『余裕ぶっこいてオレの強化された一発目の魔法を受けてしまったからだよ』

聖刻の堕天使『そしてディレイ時間含め、魔法を回し撃ちで倒せる圏内までHPを減らしてしまったバカがお前だ』

花鳥『く、くそ!!!』

花鳥『なんでだ!』

コブ丸『あっけなく終わったわね』

コブ丸『あなた……ドーピングアイテム使ったでしょ』

コブ丸『最初の魔法のエフェクトでアイテム使用のエフェクトを隠しつつね』

聖刻の堕天使『良くわかったな』

聖刻の堕天使『昨日さ、レアモブ狩った時に一分だけステータスを上げるアイテムが落ちたんだよ』

聖刻の堕天使『それと元々持ってたアイテムで更にブーストした』

聖刻の堕天使『遠距離キャラで近距離キャラっぽそうな花鳥に勝つには、一発どこかで大きいのを当てなきゃ勝てないからな』

花鳥『アイテムだと?』

花鳥『卑怯者め』

聖刻の堕天使『その卑怯者に負けた気分はどうだ?』

聖刻の堕天使『ダメージ軽減スキルさえかけておけば、こっちはお前に勝てなかったんだけどね』

花鳥『もう一度だ!!次はぶっ殺してやるよ』

聖刻の堕天使『やらねーよ』

聖刻の堕天使『お前、リアルだったらさっきので死んでるんだぜ?なんでもかんでも二度目があるわけねぇだろ』

花鳥『勝ったと思うなよ…』

聖刻の堕天使『もう勝負ついてるから』

花鳥『ふざけやがって』

聖刻の堕天使『(そういや、あんたどこに住んでんの?)』

花鳥『(急に個チャでなんだよきめぇ)』

聖刻の堕天使『(横のと知り合いなんだよ)』

花鳥『(横……このクソ猫か?)』

聖刻の堕天使『(…うん)』

花鳥『(住んでるのは――県だ)』

聖刻の堕天使『(一緒じゃん、良かったら会わない?)』

花鳥『(……良いぜ)』

聖刻の堕天使『(ありがと。あなた強そうだしお話でも聞かせてよ)』

花鳥『(いつだ)』

聖刻の堕天使『(じゃあ今日で。ちなみに――市だよね?)』

花鳥『(あぁ。なら今日の三時――の辺りでどうだ?)』

聖刻の堕天使『(いいよ。じゃ三時に。その後ろの下僕さんも連れてきてくれると嬉しいな)』

花鳥『(なんでだよ)』

聖刻の堕天使『(いいじゃん、ひと目くらい見させてよー)』

花鳥『(まぁ……いいが)』

聖刻の堕天使『(じゃそういうことで!)』

聖刻の堕天使『そろそろ落ちます。コブ丸さん花鳥さん、お疲れ様でしたー』

青年「よし……」パタン

青年「なんだか出会い厨みたいなことしてしまった……」

青年「しっかし、ほいほい提案に乗ってくれたな」

青年「大方、リアルでオレをどうにかしようと企んでそうだ」

青年「あとはこの書類を突き付けて終わりだな」ゴソゴソ


*


青年「狐娘、少し出かけてくるから」

狐娘「待つんじゃ」

青年「なんだ?」

狐娘「わしも連れてゆけ」

青年「着いてきても楽しくないぞ?」

狐娘「ぬしと一緒じゃと楽しくないことなぞ無いからのぅ」

青年「オレをアトラクションか何かと勘違いしてないか……」

青年「行くならそれなりの格好に着替えてこいよ」

狐娘「わかっておる」タッタッ

今日は終わります


*


青年「こんにちは。花鳥さんですか?」

「ん…?なんだお前は」

青年「堕天使ですよ。聖刻の」

「お前が、あの……」

青年「知ってるということは合ってるんですね」

「やっぱり男だったんだな」

青年「女じゃなくてガッカリしました?」

「いや。最初から期待してない」

青年「そういえば、下僕さんの姿が見当たらないのですが」

「あぁ。そこに居るぞ」クイッ

「俺と同じ場所に居させるのも嫌だからな」

「おい!」

猫娘「っ……」タッタッ

猫娘「なんでしょうか…?」

「一応挨拶でもしとけ」

猫娘「……はい―――えっ」

猫娘「噓、なんで……」

青年「こんにちは、猫娘」

「あぁ、そういや知り合いとか言ってたな」

青年「一先ず場所変えませんか?」

「いいだろう」


*

   ―公園―


「それにしても……こんな若いとは思わなかったな」

青年「そうですか?」

「どんな憎たらしい奴かと思えば……」

青年「今日会ってほしいと言ったのには理由があるんです」

「それは?」

青年「あなたの下僕さんを頂きたいなと思いまして」

「ハハッ……なるほどな。それでコイツを連れて来いと」

青年「えぇ」

「渡せと言われて、はいそうですかと渡す程俺がお人好しとは思っていないよな?」

青年「……お金ですか?」

「そうだな。まぁ、お前がどのくらい積むかにもよるが……」

青年「五十でどうですかね」

「お前……こんな奴の為に、そんなに出すのか?」

青年「もちろん」

「面白いことを教えてやるよ」グイッ

猫娘「痛っ……」

「コイツはな、人間じゃないんだぜ?」

青年「だから首輪を着けているんですか?」

「まぁな。飼い猫にはちゃんと首輪を着けておかないと、だろう?」

「こんな気味の悪いクソ猫に、お前は金を出すのか?」

青年「そうですね。なら、お金の代わりにこれを出すとしますか」ゴソゴソ

「なんだ、それは」

青年「これは、あなたが犯罪に手を染めた証拠ってやつですよ」

「犯罪、だと…?」

青年「最近金遣いが荒くなったらしいですね?」

「それがどうした」

青年「あなた、会社のお金を横領してるんじゃないですか?」

「ハッ、そんな証拠どこにあるんだ?」

青年「ですから、ここに」スッ

「ハッタリもリアルじゃ通用しないぞ?」

「お前みたいな一般市民がどうやって調べられる」

青年「もちろん私が調べた訳じゃありませんよ」

青年「調べたのは、あなたが勤務する会社の人間ですからね」

「な、なん…だと」

「しかし……何故俺の会社がお前に……」

青年「尾行くらいお手の物ですから」ゴソゴソ

青年「伊達眼鏡に上着を羽織れば」

「お前ッ!俺が依頼した……」

青年「ようやく思い出しました?」

「クソ、ふざけやがって…!」

青年「いやー、苦労しましたよ」

青年「会社の関係者に頭下げて調べてもらうのはね」

青年「でも、あっちにも薄々怪しいと思われていたみたいですよ?」

青年「あんな金額の金、どこから出てくるんでしょうね?って」

青年「それと。あなたって結構雑なんですね」

青年「矛盾してる部分を突っついたらすぐにボロが出ましたよ」

「……なんだ。何が目的なんだ」

「そんなことを言いに、わざわざゲームで絡んでリアルに呼び出したのか?」

青年「ですから最初に言ったじゃないですか」

青年「そこの下僕さんを頂きに来たって」

「……」

「このクソ猫を渡せば見逃してくれるのか?」

青年「そうです」

「ふん。変な趣味を持ってるんだな」

「まぁ、こんな奴でもモノ好きなお前なら性欲のはけ口に使えるかもしれんな」

「俺は絶対に嫌だが」

「良いぞ。こんな奴を手放そうと、痛くも無い」

「どうせゴミだったんだしな」

「……で、証拠の書類ってのはその手に持ってるのだけ。そして本物なんだな?」

青年「ですね。これしか無いですし、提出するものです」

「なら、それを少し確認させてくれないか?」

青年「見せるだけですよ?」

「あぁ。俺がそれを見るだけで、お前はコイツを手に入れられる。良い条件だろ?」

青年「そうですね、構いませんよ」

「ほら、行け。首輪の鍵もついでにやるよ」ドンッ

猫娘「っ……」

青年「では、これを」スッ

「ふんっ」パシ

「……ちっ。マジのやつじゃねぇか」

青年「そりゃそうですよ」

「……」

「ハッ……こんなもの!」ビリッ

青年「……」

「これで証拠隠滅ってわけだ」

青年「オレの情報収集をナメてもらっては困りますね」

青年「またすぐに同じものを調べ上げますよ」

「なら、そうならないように、今度はこっちも相応の手を使う」

青年「……あなたの方がよっぽど卑怯者じゃないですか」

「お互い様だろ」

青年「今後、私と下僕さんに一切関わらないって約束……いえ、誓ってください」

「なら。お前も俺について今後一切調べないと誓え」

青年「わかりました」

「ふん。くだらねぇことしやがって……」

「だが、せいせいしたぜ。そのクソ猫を欲しいっていうモノ好きが居るとはな」

「ソイツを渡したんだ。誰にも喋るなよ」

「クソ猫、お前もせいぜい新しい主人に媚びることだな」スタスタ


*


青年「えーと、スマホスマホ……」ゴソゴソ

青年「あった。狐娘と通話状態にしておいたからな……」

青年『狐娘、今終わった。先に帰ってて良いぞ』

狐娘『む?もうよいのか?』

青年『あぁ。ありがとな』

狐娘『礼には及ばぬ。ぬしも早ぅ帰って来るのじゃぞ』

青年『わかった』

青年 (念の為、見える位置に待機しててもらったが、何も起こらなくて良かった……)

青年 (狐娘のやつ、気を遣って着いてきてくれたんだな。後できつねうどんでも作ってやるか)

青年「猫娘、家に必要な物って置いてきて無いのよな?」

猫娘「うん……」

青年「そっか、なら良いか」

青年「これからどうするかだな……」

青年「一先ず、すぐに住めるアパートを探そうか」

青年「で、落ち着いたらちゃん好きな所に移り住めば良い」

青年「仕事はこの近く?」

猫娘「……」コク



猫娘「…あっ……。えと、はい」

青年「ん?なに…?」

猫娘「ううん……返事は声でした方が良いって……」

青年「まぁ、声の方がわかりやすいとは思うけど……」

青年「こんなに近くに居るんだし、頷くだけでわかるぞ」

猫娘「うん……」

青年「じゃ、とりあえずオレの家に帰るか」

青年「あ、そうだ。帰りに二箇所寄りたい所があるんだけど良いか?」

猫娘「……」

青年「猫娘…?」

猫娘「……」グス





猫娘「私みたいな化け物、居ない方がいいんだよね……」

青年「化け物って……」


猫娘「私、死んだ方がいいのかなぁ……」


猫娘「生きてちゃいけないのかな」


猫娘「…もぅ…やだよぉ……」ポロ







青年「それは他人が決める事じゃ無い」

青年「でも、猫娘の存在を否定することだって誰にも出来ない」

青年「猫娘、お前の価値は猫娘自身が見つけるんだ」

青年「……」カチャカチャ

青年「縛る鎖はもう無くなったんだ、お前は自由だよ」

猫娘「ぐす……どうすればいいの……」

青年「ど、どうって…?」

猫娘「わかんない、怖いよ……」

青年「す、住む場所くらい一緒に見つけてやるから……」

猫娘「……捨てないで……」グス

青年「見つかるまでは、頻繁に会ってやるから……」

猫娘「一人にしないで……」ギュ

青年「えぇ…………」



猫娘「お願い…します……ご主人様……」スッ

青年「く、首輪…?」

猫娘「飼い猫でも何でもするから……あなたの側に居させてください……」

青年「やべぇの来たな」



青年「それ傍から見たら、お互い変態に見えるからな?」

猫娘「いいもん……」

青年「よくねぇよっ!」

猫娘「ひゃっ」ビクッ

青年「いや、すまん。大きな声出して……」

青年「えーと。よくないですよね、はい」

猫娘「…………」

青年「あのー……」









猫娘「……ぐす」

青年「わかったよ!とりあえず帰るぞ」


*


狐娘「で?」

青年「拾ってきた」

猫娘「お世話になります」スッ

青年「土下座までしなくていいから……」

狐娘「わしが言うのもなんじゃが」

青年「……」

狐娘「そういう趣味は、その……のぅ?」

狐娘「確かに人では無い者じゃし、猫要素があるとは思う。思うが……」

狐娘「首輪は流石のわしもドン引きじゃわ……」

青年「違う!これにはワケがあるんだッ!」

猫娘「ご主人様。私は外で寝ても構いません」

狐娘「……」ジトー

青年「オレがそう呼べって言ったんじゃ無いからな」

青年「猫娘、お前は家の中で飼うから大丈夫だ」

狐娘「飼う…?」

青年「違う、住むだ。本当に違う、間違ったマジでごめん」

猫娘「いいえ、それで一緒に居られるなら……」

青年「あとな、そのご主人様ってのと敬語もやめてくれ。ムズムズする」

猫娘「でも……」

青年「やめないと飼わない」

猫娘「わかった」

狐娘「わざと言っておるのか?」

青年「違う、飼ってくれって言われたの!」

猫娘「狐娘様と仲が良いんだね……」

狐娘「待て」

猫娘「…?」

狐娘「様付けはやめい」

青年「狐娘様」

狐娘「やめんかと言うておろうが!こう……ムズムズする!」

青年「だろ?ようやくオレの気持ちがわかったか」

猫娘「ふふっ……」

狐娘「それよりぬしよ。風呂を沸かしてくれんか」

青年「はぁ。そうだな、猫娘も入ってこいよ」

猫娘「いいの…?」

青年「風呂入るのに良いも悪いも無いだろ」

猫娘「許可が無いと、駄目だって聞かされてたから……」

青年「きょ、許可制か」

青年「この家の風呂は許可なんていらないからな」

青年「好きな時に入っても良いぞ」

猫娘「……ありがとう」ペコ

狐娘「着替えはぬしのを勝手に使ってもよいからの」

青年「よくねぇだろ」

青年「猫娘、服は持ってきて……」

猫娘「無いよ。……元々二着しか持ってなかったけど……」

青年「それ仕事の時が困るな」

猫娘「一応洗濯はさせてくれたよ」

青年「……他人に感づかれると面倒だから、か」

青年「じゃあ、服も買いに行かないとな」

猫娘「そこまで、迷惑かけられないよ……」

狐娘「なぁに、気にするでない」

狐娘「ぬしは迷惑をかけられている方がよいのじゃよ。なんせ寂しがり屋じゃしのっ」

青年「お前は迷惑かけすぎだろ」


*

   ―翌日―


狐娘「ぬしよ、てれびとやらに昨日の者がおるぞ」

青年「ん…?あー、やっぱり逮捕されたんだな」

猫娘「えっ…?」

狐娘「ぬしが何かしたのかや?」

青年「あの男、とある会社の課長だったらしかったんだが」

青年「会社の金を横領……まぁ勝手に自分で使ってたんでその事を警察に伝えた」

青年「猫娘のことをクソ猫だのなんだの言って」

青年「しまいには性欲のはけ口だとか抜かしやがって……」

青年「本当に腹が立ったしぶん殴ってやろうかと思ったが……」

青年「そうすると後で難癖つけられそうだから必死に耐えたよ。その分帰りに発散したけども」

猫娘 (だから昨日、ゲームセンターでパンチングマシーンを叫びながら殴ってたんだ……)

猫娘「で、でも……大事な書類?を破られたんじゃ……」

青年「あれはコピーだよ」

青年「わざわざ元を出す程オレはアホじゃないからな」

青年「あと、喋るなって言われたから文字で伝えた。なので問題無しだ」

狐娘「屁理屈すぎて笑うのぉ」

青年「あんなクソ野郎、マトモに相手なんてしたくないんでね」

狐娘「ま、同感じゃな」

猫娘「……ありがとう」

狐娘「うむ」

青年「お前じゃないだろ……」

今日は終わります

えっちいことは無いですよ!


*


青年「んんー……ふぅ」ノビー

青年「風呂出たあと何するかなぁ……」ヌギヌギ

青年「あぁそうだ、ポケモノ育成しなくちゃな……」

青年「そろそろ狐娘が調子に乗ってきたし、ここらで完全なる敗北を味合わせてやらなければ」


 ガチャ


猫娘「あっ、待ってたよー」


 バンッ


青年「思わず閉めてしまった……」

青年「猫娘、ちょっといいか。色々と聞きたいことが―――



青年「あ、あれ?猫娘?」


 ガチャ…


猫娘「……」シュン

青年「あの、どうした…?」

猫娘「ううん。迷惑だったかなって……」

青年「迷惑というか困惑してる」

青年「とりあえず、せめてタオル巻いて……」

猫娘「…?」キョトン

青年「なんで?って顔してるが、タオル巻いてくれないと困る」

青年「お前は一応、年頃の女の子だろう。男のオレに裸をそう見せるもんじゃない」

猫娘「別に良いよ…?」

青年「オレが良くないの」

猫娘「…わかった」ススッ

青年「で、次の質問行くぞ」

青年「なんで風呂場に居るんだ?」

猫娘「…??」

青年「何言ってるの?って顔されても、オレも更に困る」

猫娘「体は洗わないの…?」

青年「洗うよ、洗うけどもちろん自分でするぞ」

猫娘「なんで…?」

青年「なんでもなにも無くね?」

猫娘「えっと……」

青年「もしかして、狐娘も?」

猫娘「うん。私が洗ったよ」

青年 (だからあんなに狐娘はげんなりしてたのか……)

青年「あれ…?なら、猫娘はまだ上がってないのか」

猫娘「うん。最後に掃除しなくちゃだし……」

青年「掃除なんてお湯張る前に浴槽をぱぱっとするだけだろ」

猫娘「そうなの…?」

青年「そうなのって、一体どこを掃除しようとしてたんだ」

猫娘「全部だよ」

青年「…はい?」

猫娘「このお風呂場、全部」

青年「しなくていい」

猫娘「でも……」

青年「しなくていい。そういうのは大掃除とか、たまにするもんだ」

青年「あと、風呂入るのも最後じゃなくていい。もちろんオレが入る前に入っても構わない」

猫娘「うん……」

青年「お前、何かしないとオレに申し訳無いと思ってないか?」

猫娘「っ……」ピク

青年「そんなこと考えてるなら、それこそがオレにとっては申し訳無い事だぞ」

青年「狐娘のようにまでとは言わない。でも、もう図太くなれ」

青年「まぁ急にやれって言われても難しいと思う。だから少しずつ変えていけばいい」

青年「それまで、一緒に居てやるから」ポンポン

猫娘「……ぅん」コク


*


青年「で、どうしてこうなった」

猫娘「んー?」ワシワシ

青年「確かに図太くなれとは言った」

青年「だが、頭を洗ってくれとは一言も言ってないぞ……」

猫娘「かゆいところはありませんかー?」ワシワシ

青年「聞いて無ぇ……」

青年「てっぺん」

猫娘「はーいっ」ワシャワシャ

青年「……もうちょい左」

猫娘「うんっ」ワシャワシャ

青年「誰かに洗ってもらうって結構気持ちいいもんだな」

猫娘「えへへ……良かったぁ」

青年「散髪に行った時、床屋のおっさんが洗ってくれるのも何故か気持ちが良いんだよな……」ウーム

青年「そろそろいいんじゃないか?」

猫娘「そうかな?じゃあ流すねー」


 シャーッ……


青年「あー、さっぱりした」

猫娘「トリートメントもつけておかなきゃね」カシュカシュ

青年「おぉ……これもまた、なんか良いな」

猫娘「優しく優しく……」ナデナデ

青年「……」

青年「やばい眠い。半端なく眠気くるわ」

猫娘「ふふっ…じゃ、流すねー」


 シャーッ……


青年「ありがとな。じゃあこれで―――

猫娘「次は体ね」ゴソゴソ

青年「いや、あの」

猫娘「先に体を流してっと……」シャーッ

猫娘「背中洗うねー」ゴシゴシ

青年「はい……」

猫娘「んしょ……んしょ」ゴシゴシ

猫娘「よっし、あとは前―――

青年「待った待った!!前は自分で洗う!」

猫娘「私は気にしないよ…?///」

青年「照れながら言うなよ、気にしてるじゃん!」

青年「前は洗うから良い」ゴシゴシ


*


青年「じゃ、今度はオレが洗ってやるよ」

猫娘「えっ。でも……」

青年「嫌か?」

猫娘「ううん!お願いしますっ」スッ


青年「まずは頭からだな」ワシワシ

猫娘「んっ……」ピク

青年「思ったけど、耳はどうすれば良いんだ…?」

猫娘「あんまり泡が中に入らないようにしてくれると嬉しい……」

青年「了解。外側だけ洗うか……」ワシワシ

猫娘「んんっ……にゃんだかくすぐったい」

青年「そうか?もう少し強めに洗ってみるか」ワシャワシャ

猫娘「~♪」

青年「うし。流すぞー」


 シャーッ……


猫娘「ふにゃぁ」フルフル

青年「あー……体は頼む。後ろ向いてるから……」

青年「オレは先に入っとくよ」チャプン

猫娘「気にしなくてもいいのに」ゴシゴシ

青年「気にする」

猫娘「……ありがと」




青年「……」

青年「傷跡、消せるかわからないけど、今度薬局にでも塗り薬を見に行こう」

青年「今よりはマシになるはずだ」

猫娘「…うん……」


*


青年「ふぃー、良い湯だった」ホカホカ

狐娘「出たか……一応無事のようじゃな」

青年「なんとかな……」



猫娘「上がったよ。お風呂ありがとう」

青年「そうか。じゃ、猫娘の部屋に案内するよ」

猫娘「部屋…?」



――


 ガチャ


青年「ここだよ」

青年「と言っても、まだ布団が無いんだよな……」

猫娘「無くても寝れるよ」

青年「そりゃ寝れるけど、疲れ取れないし何より風邪を引くぞ」

青年「毛布が確かあったはずだから、今日はリビングで……」

青年「いやでも、ソファで寝させるのもなんだしなぁ……」

猫娘「狐娘ちゃんはどこで寝てるの?」

狐娘「わしはぬしの部屋じゃな」

猫娘「…?」

猫娘「同じ部屋で布団敷いて寝てるの?」

狐娘「わしは布団なぞ敷かん」

猫娘「どういう…?」

狐娘「わしが寝るのはぬしのべっどじゃからの」

猫娘「えっ」

猫娘「せ、青年くんはどこで…?」

狐娘「ぬしも無論、べっどじゃろう。なんせぬしのじゃしな」

猫娘「いっ、一緒に寝てるの!?///」

青年「こいつ、部屋要らないって言ったからな」

青年「ま、日中はリビングに常に居るなら良いかってことで」

狐娘「布団敷くのは面倒じゃしな」



猫娘「…ぃぃなぁ」ボソ

青年「ん…?」

猫娘「私も、一緒に寝たいな……」

青年「無理だろ、物理的に」

青年「言っておくが、これシングルベッドだからな」

青年「狐娘でもうキツキツだ」

猫娘「……そっか…私なんかがおこがましいよね……」

猫娘「ごめんね、無理言って……」

青年「い、いや!寝てもいいぞ?うん」

青年「オレのベッドで良いなら、狐娘と一緒に寝ると良い。オレは他の所で寝るから」

猫娘「それじゃぁ意味ないもん……」シュン

青年「えぇ……」

青年「……わかりきってると思うが、一応試してみるか?」



 狐青猫
 娘年娘



青年「無理じゃね?」

青年「てか、なんでオレが真ん中なの?」

狐娘「もう少しあっちに寄らんか」グイッ

青年「むりむり!」

猫娘「もっとこっちに寄って良いよ///」ギュ

青年「それじゃあ猫娘が落ちるだろ!」

青年「シングルベッドはやっぱり無理があるって」

猫娘「むぅ……」

青年「オレが下で寝るから、二人はベッド使ってくれ」

青年「ベッドじゃないが、下に敷く用の大きいのを今度買ってくるよ」

青年「それで良いか?」

猫娘「うん!」

狐娘「わしは何でも構わぬ」

青年「じゃ、今日はもう各自で自由に寝よう……」


*

   ―とある日―


青年「ふぁぁ……眠い」

青年「ここ最近、珍しくオレにしては働いたなぁ」

青年「あー、疲れたなー」

狐娘「ぬはははっ」モグモグ

青年「そんな疲れたオレの膝上に座って、更に菓子を食いつつテレビを観て大笑いしてるお前は何とも思わないのか」

狐娘「なんじゃ、構ってほしいのかや?」

青年「違う。せめて降りてオレを労れ」

狐娘「それを構ってほしいと言うのじゃよ。この構ってちゃんめっ」コノコノ

青年「ふんっ」ギチチ

狐娘「うぐごっ…!こ、こうしゃん!こんひゃん!(降参)」バシバシ


狐娘「はぁ…はぁ……腕で首を絞めるのは反則じゃろ……」

青年「知らんがな。手加減してるんだし良いだろ」

狐娘「仕方の無いぬしじゃな」

青年「お前はいつまで居座るつもりなんだ?」

狐娘「いつまでもじゃな」

青年「このやり取り、前もしたな」

狐娘「そもそもあの時、ぬしがわしのことを欲しいと言うたから来たのに……」ブツブツ

狐娘「流石のわしも、この仕打ちは少し泣けてくるのぅ……」ブツブツ

猫娘「どうぞー」コト

青年「おっ。お茶さんきゅ」


 ピーピーッ


猫娘「あ、洗濯機さんが洗い終えたって言ってる……」

青年「ありがとな、家事してくれて」

猫娘「ううん。これくらいなら全然良いよ」

猫娘「洗濯物干してくるね」トコトコ




青年「有能すぎる……」

青年「しかし、たまには手伝った方が良いよな」



青年「て つ だ っ た ほ う が い い よ な!」

狐娘「そんなに耳元で言わんでも聞こえるわ……」

狐娘「ふぅ……」

狐娘「まっ、わしもぬしに世話になっておることは事実じゃしの」

狐娘「たまには『おもてなし』とやらを、してやろうではないか」

青年「えっ……なんか怖い」

狐娘「怖いとは失敬なやつじゃな」


狐娘「……見よ」スッ

青年「手の平…?」

狐娘「こちらは?」スッ

青年「手の甲……裏だな」


狐娘「つ ま り……」


狐娘「手の平を、こう!」パンッ

青年「両手を合わせて…?」

狐娘「表、無し!なんつっての!」ニヤリ

青年「ふんっ」ギチ

狐娘「ぎにゅ……」

青年「おもてなしが、なんだって?」

狐娘「じょ、冗談じゃよ……」


*


狐娘「よっこいせっと」スク

狐娘「ぬしも、そふぁとやらから降りぃ」

青年「やだ」

狐娘「そこは素直に言うことを聞かんか……」

青年「何をするか言ってくれたらな」

狐娘「ふふん、わしが特別に耳かきをしてやろうと思うてのっ」

青年「えー、怖い」

狐娘「何故じゃ」

青年「お前にオレの聴覚を預けるとか無理だわ」

狐娘「わしはぬしに口を預けたがのぅ?」

狐娘「あんな長い物を強引に入れられたと言うのに……」

青年「あれはしゃーない」







猫娘 (長い物を強引に……しかも口に!?)ピクピク

猫娘 (……い、いやいや。ダメダメ。聞き耳なんて立てちゃ……)

狐娘「長い時間、出し入れされた時は苦しかったのぉ……」

青年「でも気持ち良かっただろ?」

猫娘 (長い時間出し入れ!?)

猫娘 (『気持ち良かっただろ』!?)



狐娘「まぁ……すっきりはした」

猫娘 (す、すっきりするものなんだ……)

猫娘 (普通逆じゃないの…?)


狐娘「じゃが、あの白いのは美味く無い」

青年「美味いなんて思うやつは変わったやつだろう」

青年「お前かごっくんするからだよ」

猫娘 (しししし白いの!?///)カァァ

猫娘 (しかも、ごっくん!?///)

猫娘 (や、やっぱりアレ? アレなのかな……)

猫娘 (二人ってもうそんな関係だったんだ……先越されちゃったなぁ)ウル


青年「それに、お前が何度言っても言う事を聞かないからだ」

猫娘 (言う事を聞かないと、されちゃうんだ……)ゴクリ


狐娘「嫌なものは嫌じゃ」

青年「今度から毎晩するからな」

猫娘 (ま、毎晩!?それって結構な頻度だよ!?)

猫娘 (もしかして、欲求不満なのかな……)


狐娘「はぁ……ま、よいか」

猫娘 (良いの!?そんなアッサリ……)

猫娘 (わ、私も青年くんになら……///)







青年「歯磨きほどサボると後悔するものは無いぞ?」


 ゴンッッッ


青年「!?」ビクッ

狐娘「!?」ビクッ



青年「猫娘、何かあったか…?」

猫娘「う、ううん……大丈夫……あはは……」ヨロ

猫娘 (歯磨きね……紛らわしいよ!)

猫娘 (あっちと勘違いしちゃったじゃにゃいの!///)


*


狐娘「ほれ、早ぅせんか」

青年「マジでするの?」

狐娘「うむ」

青年「もしオレの聴覚を奪ってみろ、オレもお前の聴覚を奪うからな」

狐娘「さらりと恐ろしいことを言うでない……」

狐娘「ここじゃ」ポスポス

青年「わかったよ」

青年「……」



青年「あれ…?」モフモフ

狐娘「ふふん。膝枕ならぬ、尻尾枕じゃ」

青年「……悔しいが、なかなか良いじゃねぇか」

狐娘「では……参る!」スッ

青年「どこにだよ……」

青年「……」






青年「……」






青年「うまいじゃん」

狐娘「じゃろう?」

青年「ぅん……」

狐娘「少し奥の方に入れるぞ…?」カキカキ

青年「ぁぁ……」


狐娘「ふんふーん…♪」カキカキ

青年「く、くそ……全然きもちよくなんてないんだからねっ」

狐娘「ここの上側を……」

青年「あぁ………ぁ……」

狐娘「……」カキカキ


青年「……」

狐娘「……」フワフワ

青年「……なんだこのフワフワしてるのは」

狐娘「梵天じゃが、気に入らんか…?」

青年「いや、もっと」

狐娘「くふふっ、任せい」フワフワ

青年「……」ウトウト


*


*


*


青年「……ん……ん?」モゾモゾ

狐娘「む…?起きたか」

青年「あれ、オレはなにを……」

狐娘「反対側の耳をしておった時に寝てしもうたぞ」

青年「ぁー……そうか。だんだん思い出してきた」

青年「……うん」

青年「確かに、お前のおもてなし受け取ったよ」

青年「寝つくほどだったから、よほど気持ちよかったんだろう」

狐娘「体は正直じゃと言うことじゃな」フフ












猫娘 (気持ち良かった!?)

猫娘 (体は正直!?///)

猫娘 (な、何をしてたの…!)

今日は終わります

どれくらいまでの表現がセーフなのかビクビクしてます


*


青年「でさー、どこにも居ないと思ったら風呂に居たんだぜ?流石のオレも驚きだわ」

青年「しかも成り行きで一緒に入っちゃったし、母意外の女性と入るのとかこれで二度目だぞ……」

青年「どう思うよ、くーちゃん」

熊娘「それをなんでボクに報告するの…?あとくーちゃんってなに」

青年「一番わかってくれそうだから、かな。くーちゃんはあだ名」

熊娘「青年がボクを信頼してくれてるって取っていいの?」

青年「うん」

熊娘「そっか、それは嬉しいな」 

熊娘「嬉しいよ、うん。でもね?」








熊娘「ボクのバイト先に毎回来ないでくれるかな?」

青年「水臭いじゃねぇか相棒!」

熊娘「いつからボクが相棒になったのさ……」

青年「一週間前」

熊娘「早すぎるよ!もっと過程ってものがあるでしょ!」

熊娘「たまたまバイト先で鉢合わせて、急に相棒呼びはボクもタジタジだよ」

青年「固いこと言うなって、オレ達の仲だろう?」

熊娘「ならプライベートで絡んできてよ……」

青年「良いじゃん、あんまり客は居ないし暇だとオレの直感が告げてる」

熊娘「しっ、しー!それ店長の前で絶対言わないでよね!?」ヒソヒソ

青年「ごめんもう言った」

熊娘「何してくれてんの!?」

熊娘「店長、結構気にしてるんだから……」

青年「しかし、まさかオフ会開いたカフェでバイトしてるなんてな」

熊娘「あの日は店長にボクが頼んだんだよ」

青年「そうだったんだな。制服似合ってて可愛いぞ」

熊娘「う、うるさいなっ///」


*


熊娘「それで、何しにきたの?」

青年「ちょっと喋りに」

熊娘「本当に何しに来たの!?」

熊娘「せめてお店に貢献してよ」

青年「じゃあアイスティーひとつ」

熊娘「アイスティーね」

青年「もうひとつアイスティー」

熊娘「アイスティー二つね」

青年「それにアイスティーを二乗」

熊娘「待って意味わかんないんだけど」

青年「じゃあコーヒーお持ち帰りで」

熊娘「お持ち帰りなんて無いよ!ここファストフード店じゃないからね!?」

熊娘「しかもアイスティー全く関係無いし……」

青年「くーちゃんは今日も元気が良いのぉ。良きかな良きかな」

熊娘「お爺さん、ボケるのは早いですよ……コーヒーでいいんだよね?」

青年「婆さんや、アイスティーで」

熊娘「コーヒーどこ行ったの!?」

熊娘「あとボク一応女の子に入るからね。お婆さん呼びはデリカシー無さすぎだよ」

青年「くまにゃん」

熊娘「やめて」

青年「てか、冗談抜きで何も持ち帰り出来ないの?」

熊娘「うん。料理も無理だよ」

青年「だからじゃないか?」

熊娘「……?」キョトン

青年「いや、さ。客が必ず店内で食べるとは限らないわけじゃん」

青年「時間なくて移動中、もしくは車中でささっと。とかさ」

青年「あとはこの店の料理が好き……でも店内で食べるのは気が引けるなとか」

青年「全部のメニューをお持ち帰りしろとは言わないけどさ、一部は用意した方が良いんじゃないか?」

青年「例えば、『コーヒーとか飲み物、サンドイッチとか軽いものだけは包んで持ち帰れますよ』みたいな」

青年「もしくは新メニュー追加して、それを元から持ち帰る前提で作るとか」

青年「容器も用意しなきゃならないが、客は増えると思う。味は美味しいしな」

熊娘「なる、ほど……」

熊娘「今度店長に相談してみるよ」

青年「飽くまでオレの個人的な意見ってのは付け足しといてくれよ」

熊娘「わかった」

青年「じゃ、またな」スタスタ

熊娘「またねー」












熊娘「ほんと、何しに来たんだろ……」


*


青年「で、アイツが両手を合わせてこう言ったんだ」

青年「『表、無し!キリッ』つって」

青年「酷くないか?表が無いからどうしたんだよって」

青年「ねぇ、くーちゃん」

熊娘「今日も来たんだ……」

青年「くーちゃんも会いたかったくせにっ」

熊娘「だからせめてプライベートにしてよ……」

青年「でも暇だろ?」

熊娘「そりゃ暇だけどさ……」

青年「狐娘に言われて、改めて思ったんだけどさ」

青年「もしかしたらオレ、構ってちゃんなのかもしれない」

熊娘「それをボクに報告してどうするの」 

青年「構ってくれよ」

熊娘「プライベートにしてよ!」

青年「プライ」

熊娘「ベート」

熊娘「いや意味わかんないから」

熊娘「家には狐娘や、めっちゃ構ってくれそうな猫娘も居るじゃん」

青年「狐娘はダメだ。あいつと居るとボケまくって大変だからな」

青年「たまに甘えてくるのは可愛いんだが、いかんせん比率がボケ7、甘え3くらいなんだよ」

熊娘 (青年も十分ボケまくってる気がするんだけど……)

熊娘「じゃあ猫娘は?」

青年「猫娘は……色んな意味でダメだ」

熊娘「どういうこと?」

青年「オレが居ると気を遣ってくるからな」

青年「本人に悪気は無いと思うが、やっぱり適度に離れた方があっちも落ち着くだろ」

熊娘「それは……どうだろうね……」

熊娘 (むしろ側に居ない方が落ち着かない無いと思うよ……)

熊娘 (青年と離れてる時、相当悶てる猫娘を見せてあげたい)




青年「ということだ」

熊娘「全く意味がわからないからね」

熊娘「あっ、蛇娘はどうなの」

青年「アレもダメだ。逆にオレが落ち着かない」

熊娘 (アレ呼ばわりされる蛇娘、一体何をしでかしたの……)

熊娘「なら羊娘は?」

青年「あのお方にはかないません」

熊娘「急に敬語でどうしたの」

青年「羊娘は気弱そうに見えて、なかなか肝が座ってる奴だ」

熊娘「気弱なのに肝が座ってる…?」

青年「言うなれば、『ふえぇ……』とか言いながらレベル1で魔王に躊躇無く戦いを挑む感じ」

熊娘「それは確かに凄いね」

青年「なので、くーちゃんが丁度良いのさ」

熊娘「丁度良いと言われてもねぇ……」

熊娘「なら、こうやって付き合ってあげてるんだしお店に貢献してよ」

青年「じゃあ熊娘ください」

熊娘「ボクはメニューに入ってないから!」

青年「違う、本当にオレは熊娘が欲しいんだっ!」

熊娘「えっ///」

熊娘「ほ、ほんと…?///」ピコピコ

青年 (耳が超動いてる……)



熊娘「……どうせ冗談なんでしょ?」

青年「うん」

熊娘「君は一体何がしたいの……」シュン

青年「でも一家に一匹は欲しい」

熊娘「ボクは家電製品かっ」ビシッ

青年「熊娘のツッコミのポテンシャルはどから来るの?」

熊娘「君がボケるからだよ!ツッコまないと収拾つかなくてとっ散らかっちゃうでしょ!」

青年「お片づけできるなんて偉い偉い」ナデナデ

熊娘「えへへ……///」










熊娘「って、えへへじゃないよ!君が散らかしてるんでしょ!」パシッ

青年「ノリツッコミとはやるなー」

熊娘「で、もちろん何か頼んでくれるんだよね?」

青年「アイスカフェオレひとつ」

熊娘「アイスカフェオレひとつね。サイズは?」

青年「Sで」

熊娘「Sは三百五十円だよ」

青年「はい。釣りは取っときな」キリッ

熊娘「丁度ね。毎度ありー、ちょっと待っててね」スタスタ




熊娘「はい、アイスカフェオレ」スッ

青年「さんきゅ。ここで飲んでも?」

熊娘「席に座ってなら」

青年「了解」スタスタ





青年「……」ズズ…

熊娘「なんでボクを見ながら飲むの……」

青年「こりゃぁ進む進む!熊娘だけで3杯はいけるぜ!」ゴクゴク

熊娘「酒のつまみみたいに言わないでよ」

青年「……」ジー

熊娘「な、なに…?」

青年「さっきから、耳出てるぞ」

熊娘「はえっ!?嘘っ!」バッ

青年「帽子とか被らないのか?」

熊娘「うーん。人が多い時は被るけど、普段はこうやって……」ヘナ

青年「耳って折れるんだな」

熊娘「うん。意識すればね。あとは髪で覆えば隠せるよ」

青年「可愛い耳なのに隠すなんて勿体無い」

熊娘「そ、そうかな…?」

青年「うん」

熊娘「やっぱり青年は変わった人だね……」

熊娘「ボクの耳を可愛いだなんて言ってくれた人は初めてだよ」

青年「そうか?他にもいるだろ」

青年「猫娘の件で思ったが、お前らはあんまり人間に明かさないんだな」

熊娘「そうだね……少なくともボクは、明かすと良い事なんて無かったから……」

熊娘「青年みたいな人ばかりだと嬉しいんだけどなぁ……」

青年「……」

青年「……ごちそうさん。今度尻尾触らせてくれよな」

青年「じゃ、そろそろ帰るよ」フリフリ

熊娘「あ、うん。またね」


*


熊娘「ふあぁ……」ノビー

熊娘「店長に相談してから、お客さんが少しずつ増えてきたなぁ」

熊娘「今はまだボクだけで回せてるけど、これ以上増えると無理かもしれない……」

熊娘「……」




熊娘「…………今日は来ないのかな」

熊娘「い、いや!それだと、なんだかボクが楽しみにしてたみたいじゃないか!」ピコピコ

熊娘「きょ、今日は来なくて良かったなー!」

熊娘「……」




熊娘「『耳が可愛い』かぁ」

熊娘「……そんなの、きっと一時のものだよ」

熊娘「きっと青年も他のみんなみたいに―――

熊娘「……」

熊娘「『化け物』、か……」

熊娘「ううん。ここでは上手くやってるんだし、大丈夫だよ……ね」

熊娘「さぁてと、仕事しますかっ!」

皆さんレスありがとうございます

今日はここで終わります


*


猫娘「はーい!ね、やって参りました、二度目のオフ会!」パチパチ

熊娘「オフ会って言うか、もうネット関係無く普段も集まってるじゃん……」

羊娘「くまにゃんダメだよそれ言っちゃ」

熊娘「くまにゃんやめて」

狐娘「めし」

蛇娘「あなたは食べてばかりね。太るわよ」

狐娘「そちの方が飯を食ったあと、いつも太っておるじゃろ」

蛇娘「あ、あれはしかたないのよ!///」

羊娘「妊婦さんみたいだよね~」

狐娘「ほほぅ、もう身籠ったか」ププ

蛇娘「狐娘は後で超人技の刑ね」

狐娘「な、何故わしだけ……」ガク


*


熊娘「じゃあみんな、とりあえずいつもの近状報告でもしとく?」

狐娘「わしは変わらぬ」

蛇娘「私も同じく」

羊娘「私も……」

熊娘「何でも良いから少しくらい何か教えてよ……」

猫娘「わ、私は……最近、飼われました///」モジモジ

熊娘「凄い爆弾ぶっこんできた」

蛇娘「ちょっと待ちなさいよ。飼われたって?」

猫娘「飼い猫になったにゃー」ニャンニャン

蛇娘「まるで意味が理解出来ないのだけれど、私がおかしいのかしら?」

狐娘「猫娘は、わしと同じく青年の家におる」

羊娘「居候ってこと?」

狐娘「そうなるらしいの」

熊娘「青年は飼ってないって言ってたけど……」

蛇娘「じゃあその首輪は何なのよ」

猫娘「プレゼント///」

狐娘「ぬしは何を血迷ったのか、首輪をぷれぜんとしたんじゃよ」

蛇娘「あの猿、本当に何がしたいワケ?」

羊娘「首輪つけてると、確かに飼い猫に見えるね……」ナデナデ

猫娘「にゃふふ~♪」

熊娘 (あー、そうか……)

熊娘 (あの件が終わる前も首輪をつけてたとすると……)

熊娘 (青年が首輪をプレゼントすることによって、昔の記憶を新しく上書きしようとしてるのかな……)

熊娘 (てか、そうじゃないとタダの変態だよね)

熊娘「まぁ、青年も何か思惑があるんじゃない?」

羊娘「じゃないと変態さんだよねぇ」

蛇娘「そういえば、今日はあの猿は来ないの?」

猫娘「邪魔しちゃ悪いからって言ってたよー」

熊娘「そっかー、どんな面白いことしてくれるのか楽しみにしてたんだけどなぁ」

狐娘「ぬしはここに限らずいつも面白いがのぉ」

猫娘「この前、リビングでかめはめ波の練習してた時は、見なかったフリしかできなかったにゃぁ」

熊娘「へ、へぇー……」ピク

蛇娘「幼稚ね。流石猿だわ」

羊娘「もしかめはめ波が出ちゃったらどうするんでしょうねぇ?」

蛇娘「いや出るわけ無いでしょ」

熊娘「……」









熊娘 (魔閃光をやったことがあるなんて言えない……)


*


狐娘「……」モグモグ

熊娘「狐娘が急に静かになった」

蛇娘「食べることに集中しすぎでしょ。口パンパンじゃない」モキュモキュ

羊娘「蛇娘ちゃんのお腹ほどでもないよ~」

蛇娘「う、うるさいわね……それはもう忘れなさい」

猫娘「このクッキー……味、どう?」

熊娘「んー?ボクは美味しいと思うよ」

蛇娘「まぁまぁじゃないかしら」モグモグ

羊娘「と言いつつ、狐娘ちゃんと同じくらい食べてる蛇娘ちゃん可愛い~」

蛇娘「う、うるさいわね///」


猫娘「良かったぁ。実はこれ、私と羊娘ちゃんとで作ったんだよね~」

熊娘「手作り?」

羊娘「そうだよ~」

熊娘「へぇ~、羊娘の家で作ったの?」

羊娘「ううん。ここに来る前に猫娘ちゃんの家に寄って一緒に作ったよ~」

熊娘「猫娘の家…?え、青年の家!?」ガタ

蛇娘「どうしたのよ」モグモグ

熊娘「ぼ、ボクも呼んでよ!」

猫娘「でも、料理苦手って言ってたから……」

熊娘「ぅぐ……」

熊娘「ぁの……ほら!手伝いとか、この際に料理を習えるし!」

羊娘「狐娘ちゃんと同じく、食べる専門が良いって言ってたのに…?」

熊娘 (くっそぉ、そんなこと言うんじゃなかった……)

熊娘「えと……とにかく次は呼んでね!」

猫娘「わかったにゃぁ」

羊娘「はぁい」


*


熊娘「ねぇ狐娘、猫娘」

狐娘「なんじゃ?」

猫娘「なにー?」

熊娘「青年って、どんな仕事してるの…?」

狐娘「知らぬ」

猫娘「うーん……私も詳しくはわからにゃいのよね」

熊娘「そっか。あんまり忙しそうじゃないし、少し気になったんだ」

蛇娘「私達が家に行くと、高確率でエンカウントするわね」

羊娘「もしかしてニートさん?」

熊娘「羊娘、ど直球すぎるよ……」

猫娘「何でも、人を尾行したり、はたまた他人の生活を調べたりとか言ってた気がする」

蛇娘「何それ、ますますわからないわ」

羊娘「ストーカーさん?」

熊娘「羊娘、それも失礼だよ……」

狐娘「……ぬしはああ見えて、自身のことは隠す癖があるからのぅ」

狐娘「帰ってくるなり、倒れるように寝た時もあった」

猫娘「そうなの!? 知らなかった……」

狐娘「まぁの。猫娘が来てからは一度も無いが」

狐娘「わしらの事は気にかけて心配するくせに、自分のことは後回しじゃからな」

狐娘「全く困ったもんじゃ」フゥ

熊娘「そうなんだ……」

猫娘「今度、青年くんの為に何かしてあげようかな……」

狐娘「ふぅむ。なら、わしはまた耳かきでもしてやるかのぅ」

熊娘「あぁ、耳かきね。気持ちいい―――ん?」

熊娘「ちょっと待って、誰に耳かきを…?」

狐娘「この話の流れでは、青年しかおらんじゃろ」

熊娘「青年に耳かき!?え、ちょっ!」ガタッ

蛇娘「落ち着きなさいよ、たかが耳を掻くくらいでしょう?」

狐娘「蛇娘の言う通り、膝枕をして耳を掻いてやるだけじゃよ」

蛇娘「膝枕!?」ガタッ

蛇娘「あ、あああああなた…!膝枕をしたの!?」ワナワナ

羊娘「蛇娘ちゃん、落ち着いてっ」

羊娘「流石に枕は膝にならないよ☆」ウィンク

蛇娘「少し黙ってなさい」

羊娘「はぁい……」モグモグ

猫娘「狐娘ちゃん、初耳なんだけど…?」ヒクヒク

狐娘「む?した時は猫娘も居たと思うが……」

猫娘「私が、居た時……」

猫娘 (洗濯してる時か!)ハッ

蛇娘「ひ、膝枕なんて破廉恥な…!」

狐娘「じゃが膝枕以外どうすば?」

蛇娘「近くで横になってもらえば良いじゃないの」

狐娘「それじゃと見えにくいじゃろう」

熊娘「青年は何て言ってた…?」

狐娘「気持ちがよいとは言っておった」

猫娘「そ、そうなんだぁ……」

狐娘「終いには寝おったしのぉ」

熊娘「寝た?」

狐娘「うむ。そして事の最中に眠りおった」

猫娘「……ずるい」

狐娘「ず、ずるい?」

猫娘「私もしたい」

狐娘「わしに言われてものぅ……」

熊娘「猫娘は良いなぁ、いつかチャンスあるじゃん」

熊娘「ボクなんて多分、する時なんて無いよ……」

羊娘「耳かきも良いよね~」

羊娘「私は今度、一緒にお菓子作りしますよ~」

猫娘「ぇ、そんな約束いつの間に……」

羊娘「今日したよぉ」

猫娘「今日!?」

羊娘「作り方教えて欲しいって言われて~」

熊娘「ぼ、ボクもする!」

猫娘「私も…!」

羊娘「良いよ~っ 一緒に作ろ~」

狐娘「なら、わしは完成したのを食う」

蛇娘「ていうか、あんたら青年のこと好きすぎでしょ……」


*


猫娘「そういえば、みんなはどこで服を買ってるの?」

蛇娘「私は交差点近くの店」

熊娘「交差点…?」

蛇娘「ほら、ここの近くに大きな交差点があるでしょう?」

熊娘「あぁ、あそこね」

羊娘「わー!私と一緒だぁ」

蛇娘「当たり前でしょ。私が紹介した時に一緒に行ったじゃない……」

熊娘「みんなオシャレだなぁ」

熊娘「ボクなんて、動きやすさ重視でオシャレなんて二の次だよー」ハハハ

蛇娘「あなた、どこかの土管工のおじ様みたいね」

猫娘「MとLの人かにゃぁ」

熊娘「ひどい」

羊娘「オーバーオールだよね?私は可愛いと思うけどなぁ」

熊娘「羊娘…!」パァ

狐娘「ダサい」

熊娘「狐娘ッ!!」バンッ

蛇娘「でも、まぁ……あなたらしいわね」

熊娘「それは褒められてるのか貶してるのか……」

熊娘「ふ、ふーんだ。いいもん、青年には可愛いって言ってもらえたもんねー」プンプン

猫娘「それは聞き捨てならにゃい」

狐娘「青年はお洒落のことなぞ、詳しくわからぬからな」

熊娘「ぇ…?」

狐娘「大方、褒めておけばよいと思っておるんじゃろう」

狐娘「青年の私服を見れば、一目瞭然と言うものじゃ」

蛇娘「確かに……」

羊娘「この前は、白地のTシャツに『笑』って漢字の一文字だけ大きく書かれたのを着て、すんごくカラフルな短パンを履いてましたねぇ」

蛇娘「ギャグセンスあり過ぎるわね。文字通り笑っちゃったわよ」

猫娘「実は、ああいったTシャツはまだまだ色んなバリエーションあるよ……」

狐娘「ぬしは自分でTしゃつに、ぷりんと? とやらをしている様じゃぞ」 

猫娘「自作なの!?」

蛇娘「あの猿に比べたら、熊娘なんて何倍もマシってことね。誇って良いわよ」

熊娘「素直に喜べない……」


*


猫娘「……」ウトウト

狐娘「すぅ……すぅ……」

羊娘「すーすー」



蛇娘「あなた、どうするの」ボソ

熊娘「……」ピク

蛇娘「私の家に来なさいよ」

熊娘「蛇娘に迷惑はかけられないよ」

蛇娘「それなら、青年の家にこの二人みたく居候すれば良いじゃない」

熊娘「ううん。それだと青年に迷惑がかかっちゃうよ」フルフル

蛇娘「移住すると大変になるわよ?」

熊娘「慣れてるから大丈夫」

蛇娘「……そう」


蛇娘「私は、変えなくても良いと思うの」

蛇娘「ここにはみんなが居るわ。それに、理解がある人間だっている」

熊娘「そんなのわかんないよ」

熊娘「青年だって、きっと……」

蛇娘「あの猿はそんなこと気にしないわよ」

蛇娘「私も時折、素が出ることもあるわ」

蛇娘「今日なんて、こうやって服で隠してるけど鱗が見えちゃってるし」スッ

熊娘「ボクだって嫌だよ…!」

熊娘「でも、離れられる方が怖いもん……」

蛇娘「だったら自分から離れる、そういうワケ?」

熊娘「……そうだよ」

蛇娘「はぁ……」ハァ


蛇娘「そこの狐を見てみなさいよ」

熊娘「え…?」チラ

蛇娘「あなたの悩みなんか、馬鹿らしくなるくらいのアホ面で寝ているでしょう?」

熊娘「それは言い過ぎだよ……」

蛇娘「市販のもので何とかなるんでしょ?」

熊娘「なる、とは思う」

蛇娘「なら良いじゃない」

熊娘「えぇー……恥ずかしいもん」

蛇娘「あなたねぇ、今までもこんなこと繰り返してたワケ?」

熊娘「うん……」

蛇娘「馬鹿なの?」

熊娘「かも、しれない」











蛇娘「笹食べたくなるから山に篭もるって、ドン引きなんだけれど」

熊娘「い、言わないでよ///」

熊娘「まぁそれと、同じ場所に留まり続けると少しずつバレてくるんだよね、正体が。」

熊娘「そのせいで色々あったから、良い機会かなって」

蛇娘「そっちを話しなさいよ。笹よりよっぽど重要じゃない」

熊娘「ごめんごめん」テレ

蛇娘「そういえばこの前、寂しいとか言っていたわね」

熊娘「あー、うん。たまーにね」

蛇娘「ふふんっ。なら私のとっておきのお店を紹介してあげる」

熊娘「お店?」

蛇娘「そう…!寂しい時は『くまのぬいぐるみ』を抱いて寝れば安心よ!」

熊娘「いやいやいや、同族抱いてどうすんのさ」

蛇娘「同族だからよ」

熊娘「まさかそのお店、ぬいぐるみを……」

蛇娘「えぇ!もちのろんよ!」

熊娘 (なんでこんなにテンション高いの……)

蛇娘「……羊娘、もう良いんじゃないかしら」

熊娘「んえ?」

羊娘「あらら……バレてたんですね~」

蛇娘「あんな寝たフリ、バレない方がおかしいわよ」

熊娘 (ボク気付かなかったんだけど!)

羊娘「熊娘ちゃん、寂しい時は~みんなを頼れば良いのですっ」

羊娘「きっと寂しさなんて吹き飛んじゃいますよっ」

熊娘「羊娘……」

蛇娘「さ。そろそろそこの二匹起こして、今日はお開きにしましょ」

今日は終わります!


↑これがちゃんと表示されてるかだけが心配…


*

   ―カフェ―


熊娘「えぇと……あっちのお客さんはオムライス、奥のお客さんにはモーニングセット……」

 ピンポーン

熊娘「あぁもう!呼び出し音鳴った!間に合わないよ!」

青年「やー、忙しいな」マタオコシクダサイマセー

熊娘「最近お客さん多すぎるよ!ボク一人じゃもう手が足りなさすぎるぅ……」

青年「尻尾使えば?」

熊娘「大道芸人かっ!」ビシ

青年「そういや、呼び出し音が鳴ってたけど良いのか?」

熊娘「良くないよ!忘れてたよ!」

青年「料理はオレが持って行くから注文取るの頼むぞー」

熊娘「はーいっ」タッ






熊娘「…ん?」

熊娘「ちょっと待って、ナチュラルに会話してたけど……」

熊娘「なんで青年がここに居るの!?」

青年「それより早く行けよ」

熊娘「くぅ……モヤモヤするけど今は行くかぁ……」スタスタ


*


*


熊娘「あー……疲れたぁ。ようやく終わった」

青年「朝と昼のラッシュはヤバイな」

熊娘「繁盛するのは良いけど、あと一人くらい雇ってよぉ……」

熊娘「それに、こんなに人来るなんてどういうことなの……」

青年「何か怪しいものとか使ってたりしてな」ハハハ

熊娘「ありえるぅーっ」アハハ





熊娘「って!アハハじゃないよ!」

熊娘「だからなんで青年がここで働いてるの!」

青年「人がどこで働こうが自由だろ?」

熊娘「そうだけどさぁ……」

熊娘「一言くらいボクに言ってくれても良いじゃない……」モジモジ

青年「確かに、熊娘には言ってなかったが、正直言う必要無いと思ってたんだ」

熊娘「えっ……」

熊娘「そ、そっか……」

熊娘「ま、まぁボク達、まだ知り合って日が浅い、から……」

熊娘「そぅだよ、ね……」シュン

青年「何言ってるのか知らんが、オレ一週間くらい前からここで働いてるからな?」

熊娘「一週間!?」

青年「てっきり熊娘は知ってるもんだとばかり思ってたよ」

熊娘「あ、あー……はは……そういうことね!」

熊娘「でもその間、いつ会ったっけ…?」

青年「たまに注文の料理が早く出来る時なかったか?」

熊娘「んー……あっ、最近やけに早いなーとは思ってた」

熊娘「いつも店長一人が作ってるから、ちょっと時間かかるんだよね」

青年「そういった日はオレが手伝ってたんだ」

熊娘「ほへー、なるほどねぇ」

熊娘「しかしまた、なんでここなの?」

青年「店長さんに頼まれた」

熊娘「頼まれた…?」

青年「入ってくれなきゃ店たたむって泣きつかれたんだよなー……」

熊娘「それは困るね」

熊娘「ていうか、泣きつかれるってどういう関係なのさ……」

青年「……正直、関わらなきゃ良かったと思う関係」

熊娘「えぇ……」

青年「あの人、いや人じゃないけども……酔うと本当に面倒臭い」

青年「酒飲まなければ割りと良い人なんだがなぁ」

熊娘「そんなになの…?ボクそういえば見たことないな」

青年「そんなに、なんだよな。しかも酔った時のことを覚えて無いときたもんだ」

熊娘「わぁぉ……」


 ガチャ

「お疲れ様~っ 今日も忙しかったねぇ」

青年「やべ、噂をすれば……」

熊娘「お疲れ様です。ようやく客足が落ち着きましたね」

「なになに~っ 二人で楽しそうにお話しちゃって~」

熊娘「いやー、店長が酔ぅ―――むぐっ!?」

青年「店長はお綺麗だなーと、ね!」ギュ

熊娘「っ……」コクコク

「もぅっ、褒めても何も出ないわよ~?」

「あっ、モーニングの余ったサンドイッチ食べる? 午後からは出せないし明日出す訳にもいかないから~」

青年 (出てくるのかよ……)

青年「じゃ、じゃあ頂きます!」

「ふふっ ちょっと待っててね~」スタスタ






青年「ふぅ……」

熊娘「……///」モジモジ

青年「あ、すまん。もういいか」パッ

熊娘「ぅん……」










熊娘 (急に抱きつかれてドキドキしたぁ……///)カァァ


*

   ―休日―


熊娘「ん……」パチ

熊娘「ぅ……ん……いまなんじ……」ゴソゴソ

熊娘「まだ六時じゃん……二度寝しよ……」モゾモゾ


*



*



熊娘「ん……ぁ……」

熊娘「ぁーー……よく寝た」

熊娘「いまなん―――十三時!?」ガバ

熊娘「ど、どうしよ……十二時から約束……やばいもう遅刻……」

熊娘「……」




熊娘「まぁ遅刻してるなら急がなくてもいっか」エヘヘ


 ピカッ ピカッ


熊娘「誰かから通知来てるな……」ススッ

熊娘「グループの……うわ、通知カンストしちゃってる……みんな話しすぎでしょ」

熊娘「面倒だし飛ばして最新のを見るかぁ」




   【人外ハウス(6)】


蛇娘『早く来なさいよドクズ』



熊娘「ひえぇぇ……」ガクガク

熊娘「これ相当怒ってるぅ……」

熊娘「……」ススッ




   【人外ハウス(6)】


熊娘『めんごめんご!ごめんごっ!テヘペロリンチョ!』
 
熊娘『今起きたYO!』



蛇娘『あなた、皆に迷惑かけておいて……』

熊娘『ひゅーw 蛇神様のお怒りだw』

蛇娘『しばく!!!!!!!!!!』



熊娘「マズイなんで煽っちゃったんだろ……」ガク

熊娘「寝起きで変なテンションになっちゃってる……」




   【人外ハウス(6)】


羊娘『熊娘ちゃんおはよ~』

猫娘『もぅねぼすけさんなんだからー』

狐娘『熊娘よ、はよぅ来い……』

狐娘『わしが死んでしまう』

蛇娘『とっとと支度しなさい』

熊娘『はい』



熊娘「蛇娘には全力で謝ろう……」

*


*


 ガチャ


熊娘「お邪魔しまーす」

狐娘「ようやく来たか」

熊娘「ごめん……」




熊娘「あの……」






熊娘「すんっっませんっしたぁぁぁっっっ!!!」ドゲザ

蛇娘「で?」

蛇娘「謝ることなら誰だって出来るわよねぇ?」

熊娘「あ、ハイ……その、つまらない物ですが……」スッ

蛇娘「ケーキぃ?本当につまらないわね」プイ

羊娘「とかなんとか言って、大好物なくせにぃ~っ」

蛇娘「う、うるわさいわね!」

猫娘「何か用事でもあったのー?」

熊娘「いやいや、二度寝してたらつい……」

蛇娘「本当に救いようの無いノロマね」

羊娘『もぅ……何してるのかしら熊娘は……』

羊娘『みんなが揃ってないと意味が無いじゃないの……』

羊娘「って蛇娘ちゃん言ってたよ~」

熊娘「そ、そうなんだ……」

蛇娘「羊娘、あなた後で覚えておきなさいよ…!」キッ

羊娘「こわーいっ 助けて青年さん~」ギュ

青年「お前らマジでオレの家を占拠するつもりじゃねぇだろうな……」

猫娘「ちょっと!青年くんに抱きつくのはダメっ!」グイーッ

羊娘「やーんっ」

青年「それより早く作ろうぜ。もう腹が減ってたまらん」

猫娘「そだね、早速作ろっか」

狐娘「きた!たこぱじゃな!」

蛇娘「寝坊した罰として、最初は熊娘が作りなさいな」

熊娘「そこはジャンケンでしょ!」

蛇娘「はい?あなたのせいで皆が空腹だと言うのに?」

羊娘「みんなが先に食べようって言ったのに、頑固に熊娘を待つって言ってたのはどこの誰だろうね~?」

蛇娘「羊娘…!!」ギロ

熊娘「じゃ、じゃあボクが作るよっ」

青年「オレも少し作ってみたい」

猫娘「えぇ!?」

青年「たこ焼きなんて滅多に作らないしな」

熊娘「い、一緒に作る…?///」

青年「おう」

猫娘 (きょ、共同作業……)ガーン

狐娘「たこ!はよぅたこを!」バンバン

羊娘「はい」スッ

狐娘「む…?」

羊娘「タコだよ」

狐娘「う、うむ……」








狐娘 (生は求めてないんじゃが……)モグモグ

今日はここで終わります

表示ちゃんとされてるみたいで良かったです、ありがとうございます


*


青年「結構ひっくり返すの難しいな……」

熊娘「そう?」ヒョイヒョイッ

青年「お前たこ焼き屋でバイトしてただろ」

熊娘「何で知ってるの!?」

青年「だってもう手つきが熟練ぽい」

熊娘「黙々とたこ焼きをひっくり返してたら『タコ娘』とかお客さんに言われて泣いた記憶が……」プルプル

青年「イカ娘じゃなくて良かったな」

熊娘「イカもタコも変わんないよぉ……」


*


羊娘「狐娘娘ちゃん、何してるのん?」

狐娘「ふふん。ここに油揚げがあるじゃろ?」

狐娘「これを切って……こう!」クルッ

狐娘「ほいっ タコ巾着!」

青年「食べ物で遊ぶな」ベシ

狐娘「遊んどらん!」プクー

狐娘「ぬしはもち巾着を知らんのか?ぷぷっ」

青年「てめぇ……」

羊娘「じゃあ狐娘ちゃんは当然、笹巾着も知ってるよね~?」

熊娘「笹!?」ガタッ

狐娘「笹巾着…?」

羊娘「まさか知らないの?」

狐娘「あー、あー……あれじゃろ?あの、アレ。そう、アレじゃろな勿論知っておるぞ」

青年 (すっごい目が泳いでる)

羊娘「そっかー。どんな味なの?」

狐娘「ぇ…ぁ」

羊娘「狐娘ちゃん知ってるんだよね? どんな味なのか教えて欲しいな~」

熊娘「ボクも!」

狐娘「あの……ぅ……そう!笹の味がしたわ!」

羊娘「笹?」

狐娘「う、うむ……」

羊娘「狐娘ちゃんは油揚げの味を聞かれて、『油揚げの味がする』って答えるの~?」

狐娘「……」チラ

青年 (オレに助けを求めてくるなよ)

羊娘「ごめんね、意地悪だったかな」

羊娘「笹巾着ってそもそも食べられないからね~」ニコニコ

羊娘「狐娘ちゃん、油揚げの中に笹が入ってると思ってたでしょ~」

狐娘「羊娘……もしや、えすぱーとやらか…?」ゴクリ

熊娘「なるほど……。巾着を笹で作ると、中と外で二度美味しい、と」

青年 (笹は食わないんだってば……)


*


蛇娘「このたこ焼きの生地、美味しいわね」モッキュモッキュ

蛇娘「どこか有名なシェフが作ったのかしら?」

猫娘「スーパーで買った物だけどねー」

蛇娘「何ですって!?」

猫娘「お好み焼きにも入れるんだけど、このたこ焼きの生地には山芋を混ぜてるにゃ~」

蛇娘「芋の癖に、やるわね……」モッキュモッキュ

猫娘「ハムスター」

蛇娘「…?」キョトン

猫娘「ごめんちょっと心の声が漏れた」

猫娘「蛇娘ちゃん、外食はよくするの?」

蛇娘「いいえ。殆ど家よ」

蛇娘「外で食べる時は、あなた達と以外は無いわね」

猫娘「そっかー、いろんな意味で良かったにゃん」

蛇娘「ふふっ 私と食事を共に出来ることを光栄に思いなさい」モッキュモッキュ

猫娘「……ぅん……」




猫娘 (言葉から全く威厳が感じられない……)


* * *

* *



『……』ボー


狐娘『む…?』

狐娘『この様な廃れた神社に人が来るとは……』

狐娘『そんな物を持って、縄跳びでもするのかや?』

狐娘『そちも、なかなかの物好きじゃな』

『……誰だよお前』

狐娘『名を聞く時はまず、己から名乗れと教わらなかったのか?』

『さぁな』

狐娘『ふん。人と人ならざる者、両者においての数少ない共通点である、常識というものじゃろう』

『ババ臭ぇ言葉遣いだな。オレのことなんて放っておけよ』

狐娘『放っておくも何も、ここはわしの住処なんじゃがな』

狐娘『そちは、自身の家に他者が入ってきて放っておくのか?』

『……こんな所に住んでるお前こそ物好きだよ』

狐娘『くふふっ。まぁ、よくそう言われるのぅ』

『なら、中に入れてくれよ。客人が来たぞ』

狐娘『こんな図々しい客はなかなかおらんわ』ハァ




*

*


『ボロくせぇ家だな』

狐娘『人の言葉で言うなら、余計なお世話と言うものじゃよ』

『茶は出てこないの?』

狐娘『一発ぶってもよいか?』

『ダメ』

狐娘『ちょこっと。少しだけじゃから』

『殴るのに少しもクソも無いだろ……』



狐娘『見たところ、まだそちは若そうに見える』ゴソゴソ

『まぁ……』

狐娘『だとするなら、年長者には敬意を払うもんじゃろう』ススッ


狐娘『それを、やれ上がらせろだの、やれ茶を出せだの……』コポポ…


狐娘『全く、無礼にも程がある』コトッ

『(文句を言いつつも、茶は出してくれるんだな……)』

『ていうか、年長者?逆だろ』

『お前の方こそオレより若く見えるんだけど』

狐娘『ふふんっ。これでも、おそらくそちの二倍以上生きておるわ』ドヤ

『言葉遣いどころか中身までババアだったとはな』ズズッ…

狐娘『ふんっ!!』

『いってぇ……頭突きしてくんなよ』

狐娘『戯けが。調子に乗るからじゃ』

『老人はジョークというものを知らないから困る』

狐娘『ふんっ!!』

『効かねぇよ!』ガシ

狐娘『ぬおー!離せぇえぇ!』ジタバタ

『見た目は子供、中身はババアとか、どこかの名探偵さんも驚きだ―――――な…………?』


『……え?』モフモフ

狐娘『む?』

『えーーっ……とぉ……』フゥ








『よし。帰るか』スク

狐娘『なんじゃ?もう帰るのかや』

『あぁ。用事を思い出したんでな』

狐娘『そうかそうか。またのぅ』フリフリ

『う、うん……』


*


『何だったんだアイツは……』

『仮装……はもう時期的にありえないし、こんな廃神社でコスプレって線も変態過ぎるよな』


『……っ』ハッ

『アイツ……耳が頭にあったような…?』




『ま、良いか』




『……』



『……断とうと思ってたのに、とんだ邪魔が入ったな』ゴソゴソ



『……』




『これは、まだこっちへ来るなって二人が言ってるのか…?』




『……ううん。そんな訳が無いな』




『……何もあの人達に返せなかった』




『恩返しする為に頑張って来たってのに……』





*


*


*



青年「ん……」パチ

青年 (寝てた、のか……)

青年 (みんなは……寝てるな)チラ

青年 (まぁ、後で起こせば良いか)

青年 (……)



狐娘「ぅむ……」スースー

青年 (狐娘……)

青年 (何度もオレから別れるチャンスをやったってのに……)

今日はここで終わります


*


青年「寒い……」ブルッ

狐娘「そうかのぅ?」ヌクヌク

青年「寒い台所で人に飯を作らせて、お狐様はコタツで暖を取るんですかい」

狐娘「わしは料理すきるゼロじゃしー」

青年「塵も積もればマスター出来るだろ」

青年「お前は『できない』じゃなくて『やる気が無い』だけだ」

狐娘「はぁぁ……ひとこと言えば十で返ってくるのはどうにかならんのか」

青年「言わせるお前が悪い」

狐娘「それより、はよぅ寿司をーっ」グテー

狐娘「そう言えば猫娘、今日は見かけんのぅ?」

青年「お墓参りだってさ」

狐娘「墓参り? まぁ、よいか」

青年「猫って酢は大丈夫なんだろうか……」

狐娘「大丈夫じゃろ。わしらはそう人間と変わらぬ」

青年「ちりめんじゃこ混ぜとこう」ゴソゴソ

青年「お吸い物もそろそろ……」チラ


青年「よし、完成」

狐娘「来たか!」ガバ

青年「ほらよ、いなり寿司」コト

狐娘「ほおおぉ!わしの尾と負けぬくらいきつね色に輝いておるわ!」

青年「あぁ~さぶ、オレもコタツに入ろう」


*


 ガチャ


猫娘「うぅ……寒ぃ……」ブルブル

狐娘「む?帰ったか」

青年「おかえり」

猫娘「ぁ……」

青年「どうした?」

猫娘「ううんっ。ただいまっ」グス

青年「な、なんだ…?」

猫娘「やっぱり、『お帰り』って言われると嬉しいなーって」

青年「それぐらいならいくらでも言ってやるよ」

狐娘「そちも早ぅ入れ。凍え死ぬぞ」

青年「お前、冬場はどこで暖を取ってたんだよ……」

猫娘「お邪魔しまーす」ススッ

青年「何でオレの真横に入るんだ」

猫娘「ふあぁ……暖かぁい……」

青年「聞いて無ぇ」

狐娘「ぬしの足は冷たいのぉ。少しあちらへ避けよ」ゲシ

青年「この狐野郎……」

狐娘「い"だだだだっ!!」ガタッ

狐娘「ぉーこわっ。足を小突くだけでこの仕打ちとは……」

青年「オレ何もして無いぞ?」

狐娘「いやいやいや……ぬししかおらんじゃろ」

青年「本当だってば。コタツの中見ろよ」

狐娘「……」ゴソゴソ

狐娘「確かに、ぬしの足は反対側に離れておるな……」

青年「だろ?」


狐娘「……」チラ

猫娘「……」





狐娘「……」ジー

猫娘「……」





狐娘「…………」

猫娘「…………」



青年「え、なにこの沈黙」

狐娘「まさか……」






狐娘「この家には透明人間がおるのか!?」

猫娘「アホすぎでしょ」

青年「オレの心の声を代弁してくれた」

猫娘「狐娘ちゃん、私達はお世話になってるんだよ?」

猫娘「もう少し青年くんに気を遣うべきじゃないかな」

狐娘「ちっちっ。世話をしているのは、むしろわしの方じゃよ」

猫娘「え…?」

狐娘「くふふっ。泣き喚くぬしの姿を猫娘にも見せてやりたかったのぅ?」

青年「それは忘れろ」

猫娘「な、泣き喚く…?」

狐娘「毎夜、わしが慰めてやったというのに……」

青年「捏造するなよ」

猫娘「ちょっ、ちょっと待って!」バンッ



猫娘「夜に……慰められて……青年くんが鳴くっ!?」

青年「発音がおかしいぞ」

猫娘「や、やっぱり二人共そういう関係だったんだ……」ブツブツ

青年「……」











青年「オレ、今溜まってるんだよなー(尿意が)」

猫娘「ふぇ?」

青年「あー、やりたい」

猫娘「や、ややや……ヤりたい!?」

狐娘「とっととしてくればよいじゃろ」

猫娘「ナニを!?どこで!?」

狐娘「…? 厠に決まっておるじゃろ?」

猫娘「と、トイレでするの!?」




猫娘「あ、あー……でも、そっか……」ボソボソ

猫娘「男の人ってトイレですることが多いのかな…?」ボソボソ



青年「猫娘が帰ってきた時から思ってたんだよなー(トイレに行きたいって)」

猫娘「えっ」

猫娘「そ、それって……///」



猫娘「私を……その……ゴニョゴニョ」モジモジ

青年「なんだ?猫娘もしたいのか?」

猫娘「えぇ!?」

猫娘「いゃ…そのぅ……」



猫娘「したく無くは……ない、けど……」カァァ

青年「先にしてきていいぞ」

猫娘「んん!?」

猫娘「あれ!?えっ!?」

猫娘「あっ……一人でする方の……」

猫娘「って、そっち!?」

青年「どうした?」

猫娘「えっ……ええぇ…!こんな、堂々と宣言してシなきゃいけないの…?」

狐娘「こやつは何を言っておるんじゃ…?」

青年「用を足すだけだよな」

猫娘「」ゴンッッ

狐娘 (猫娘はズッコケ方に命張っておるな……)

青年「大丈夫か…?机に額打ち付けて……」

狐娘「凄い音がしたのぉ」

猫娘「あ、アハハ……ぅん……へーきへーき……」ヨロヨロ

青年「額から血が出てるのに平気には見えないんだが……」

青年「ちょっと待ってろ」スク



*


猫娘「いつつ……」

青年「一応消毒しておくか」スス

青年「ガーゼを貼って……ほい」ペタ

猫娘「ありがとう……」

青年「まぁ、悪ノリしたオレにも責任があるからな」

猫娘 (悪ノリだったんだ……)


*

*


狐娘「む…?そろそろじゃな」

猫娘「買い物は済んでるから、後は待つだけだねー」

青年「夕飯時ってのに、遅いな……」


 ピンポーン


狐娘「おっ、来たのぅ!」タタッ


 ガチャ

熊娘「やっほー、こんばんはー!」ニコ

蛇娘「お邪魔するわね」

羊娘「こんばんはっ です!」

猫娘「皆遅かったけど、大丈夫だった…?」

蛇娘「例の如く、熊娘が寝坊しただけよ」

熊娘「やー、昼寝してたら…ね?」

蛇娘「『ね?』じゃないでしょ。意味がわからないわ」

熊娘「すんませんっした!」ガバ

猫娘「あはは……」

羊娘「待たせちゃってごめんなさい~」

青年「じゃ、作るとするか」

狐娘「鍋じゃな!」

蛇娘「頼まれてたの。ん。」スッ

青年「おっ、サンキュー」

青年「IHのコンロすげぇ!爆発怖くない!」

狐娘「コンロというの物は爆発するのか…?」

猫娘「はいはい、じゃあ作るねー」

*

*


*



「ふあぁ……たらふく食ったら眠気が……」スタスタ

「おぉ…愛しの布団よ……」



  パサッ……


「む…?これは、紙束か?」



「……」キョロキョロ

「くふふっ。少しくらい読んでも構わんじゃろ」ペラッ


*



   ―月 ―日


勤めていた会社を辞めました

ようやく就職できたあの頃、二人が凄く喜んでくれたのを今でも思い出します

でも、もう働く意味が無くなりました



*


   ―月 ―日


寝て起きて、ご飯を食べて、また寝る

それで一日があっという間に過ぎて行きます

やっぱり何か始めた方が良いかな?

ぼーっとしていると、昔のことを思い出して―――



*

   ―月 ―日


何かを探そうにも気力が湧きません

二人に恩返しをする……

それが僕の生きている意味だったのに

どうすれば




父さん 母さん……


*

   ―月 ―日


今日、父さんのご友人の方からウチで仕事をしないかって誘われました

聞くと、何やら胡散臭い……ごめん失礼だったね

でも、もう働いても……



*

   ―月 ―日


ご友人のお誘いを受けました

働く意味、それを無理やりつけるとするなら

父さんと母さんが残してくれた家を、守りたいから

でも、探偵って想像してたのと全く違って少しガッカリ……



*


   ―月 ―日


久しぶり

働き始めて半年が経ったよ

今日は報告をしに来た。

ずっと考えていたんだ。生きている意味を

親戚に虐待され、たらい回しにされた俺を、実の息子のように接してくれて……

そういえば、口調を変えてみたんだ
どう? 少しはカッコ良くなってると嬉しい

もっと男らしく。父さんはそう言ってたよね

これで少し安心してくれたかな





父さん、母さん

やっぱり俺も、そろそろそちらへ行こうと思う

一人は寂しいから……


*

   ―月 ―日


変な人に会った

正確には…人、では無いと思う

都市伝説だと思っていたけど、本当に居たんだ……

命を断つには丁度いい場所だと思ったんだけどな


*

   ―月 ―日


一ヶ月ぶりかな

不思議と、あの怪しい奴に会いに行ってしまう

そいつと話してると、気づいたら日が暮れて、帰路に着くんだ

何者なのかはわからない

だから、もっとそいつの事を知って、今度紹介するよ




*

   ―月 ―日


居ない

いつもの神社に行っても居なかった

何度か冗談や悪戯で隠れんぼをしたことはあった

でも、今日はどこを探し回っても見つけられなかった




嫌われたのかな


*

   ―月 ―日


狐娘が居なくなってから半月が経った


そういえば、まだ二人には紹介してなかったね

毎日話をしていたやつ、狐娘って言うんだ

古臭い言葉遣いで面白いやつだよ



*

   ―月 ―日


一ヶ月が経った

いつもの神社に赴くも、姿は見当たらない

思えば、狐娘と話をしている時は嫌なこと辛いことを忘れられた

決心したあの日、狐娘に会ったのは

きっと何かの縁なのかもしれない




狐娘にはお礼を言わなくちゃな


*

   ―月 ―日


3ヶ月ぶり、かな

今日は長くなるかも

とりあえず、あれから何かあったのか報告するよ


狐娘が家に居候? することになった

捨て犬のフリしてさ、戻ってきてくれたんだ

知人に離れる為に挨拶をして回ってたらしい

狐娘と話している時

何気無くペットを飼いたいって言ったのを、覚えていてくれてたみたいなんだが

まさか狐娘自身がなるとは……

まだ命を絶とうと思っていた頃、軽い気持ちで一緒に居てくれと言った

きっとそれを律儀に果たしに来たんだろう

俺は…狐娘と話したあの時間

長い時を生きる狐娘にとっては、ほんの一瞬だったかもしれない



だけど俺は…

狐娘のお陰で、まだ生きてみようと思えた

それだけでも感謝しきれない程だ




だから何度も狐娘と離れようとした

結局、今も一緒に居るんだけどな……


父さん、母さん

二人が生前、このノートをくれたよね

ノートに言葉を書いてると

不思議と亡くなったはずの、父さんや母さんと話をしている気がしてさ……

でも、それも今日で終わりにするよ



そうそう居候と言えば

最近、成り行きで猫娘って子も家に住んでるんだ

どっちかって言うと、この子の方がペットっぽいが……

俺ね、友達が一杯出来たよ。毎日が楽しい

後から友人に聞くと

どうやら、狐娘が俺の為にオフ会やら色々としてくれたらしいんだ

全く気付かなかったよ

いつも言い合いばかりしてるけど、きっと俺が楽しんでるってことをわかっててやってそうだ




父さん、母さん

元気をくれてありがとう

話を聞いてくれてありがとう

俺、もう少し頑張ってみるよ

だから、そっちに行った時は……

また家族になれると嬉しい

父さん、母さん。 またね


*


「ふふっ。素直じゃないぬしじゃな」

「まっ、ぬしの腰が曲がったとしてもわしはずっと側に居てやるから安心せい」




      ―終―

終わります
ありがとうございました

このSSまとめへのコメント

1 :  SS好きの774さん   2017年02月24日 (金) 00:29:48   ID: semEt0hr

面白かったです!

2 :  SS好きの774さん   2017年05月31日 (水) 17:16:56   ID: sGMrQ4aE

え、終わっちまった、、。

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