咲「この学校に麻雀部なんて存在しないよ」和「そんなオカルトありえません」 (165)



和(ここは……? 部室のベッドですか……?)

ズキッ!

和「痛たたっ……」

咲「あっ、和ちゃん。目が覚めた?」

和「あ、咲さん」

和(あれ? 見慣れた部室のはずなのに……なんだか違和感が……どうしてでしょうか?)

咲「どうしたの? まだ体調悪い?」

和「いえ、もう平気です」

咲「もー、びっくりしたよ。急に倒れるんだから」

和「倒れた? そうだったんですか……。なんだか頭がぼーっとしていて、倒れたときの記憶が思い出せない……あれ?」

和「雀卓……。雀卓がありません。なにか違和感を覚えると思っていたら、雀卓がない……。どこへ運んだんですか?」

咲「……ジャンタク? なにそれ?」

和「……咲さん? 雀卓ですよ、麻雀をする卓」

咲「……? どうして麻雀をする卓がこの部屋に必要なの?」

和「ここは麻雀部の部室なんですからあたりまえじゃないですか!!」

咲「……麻雀部の部室? や、ここは学生議会室だし、それに――」

咲「この学校に麻雀部なんて存在しないよ」

和「そんなオカルトありえません」



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和「もしかして、私のことをからかってますか?」

咲「からかってないけど……。あっ、もしかして、さっきまで見てた夢の話?」

和「夢!? なに言っているんですか」

咲「どうしたの? 様子がおかしい……のはいつものことだけど、おかしい方向がおかしいよ?」

和「おかしいのは咲さんの方じゃないですか!!」

咲「うーん……、もう少し寝てたほうがいいと思う」

和「咲さん!?」

咲「和ちゃんの分の仕事は私がやっておくからゆっくり寝ていていいよ」

和「私は別に寝たくなんかありませんよ!!」

咲「いいから、いいから」



和(そもそも、どうして倒れたのでしたっけ……?)

和(確か……部室で麻雀をやっていて……)


【回想】

咲「京ちゃん、ちょっと考える時間が長すぎるかな……」

優希「京太郎、いいから早く切るじょ」

京太郎「うるせぇ、ここは長考しどこなんだよ!」

京太郎「この面子で、オーラス、俺がトップ……、こんなチャンス二度とねぇ」

京太郎「二位の和との点差は1500点、ベタ降りするか? でもノーテン罰符でまくられちまう可能性が……」

咲「考えてることが口からこぼれてるよ」

京太郎「ええいっ、死ぬときは前のめりだっ!! どりぁあああ!!」

和「ロン」

京太郎「お、親の清一色……俺、三位転落?」

和「いえ、これは清一色ではなく――」

和「九蓮宝燈です」

京太郎「ちゅーれんぽーとー? ……って、ええええっ!!!」

咲「うわっ、すご……」

優希「初めて見たじょー」

和「48000点ですね」

京太郎「ということは、俺……」

優希「定位置(四位)だじぇ」



優希「九蓮を和了(あが)ちまったということは……のどちゃん、死んじまうじぇ」

和「オカルトですね。ありえません」

優希「京太郎、九蓮に振り込んでトップからドベに落ちた時ってどんな気持ちだ?」

京太郎「…………」

優希「へんじがない。ただのしかばねのようだじぇ」

京太郎「俺の……46000点が……」

優希「足りない2000点は身体でのどちゃんに返せ、な? とりあえずタコス、パシってこい。ついでにドロリッチもパシってくるじょ」

京太郎「なんで、傷心の俺がパシらなきゃなんねぇんだよ!」

優希「敗者にはキツイ罰を、それがこの部の鉄の掟だじぇ」

和「そんな掟ありません。なら、私が買ってきましょうか? タコスと……その……ドロチッチ?」

優希「そんなの悪いじぇ、のどちゃん。これは京太郎の躾の一環だじょ」

京太郎「俺はお前の飼い犬かっ!」

和「別に構いませんよ。私もちょうど喉が渇いていましたし。いってきま……あれ?」

グラッ……

和「視界が揺れている……?」

咲「和ちゃん? どうしたの? 和ちゃん?」

和(咲さんの声にエコーが……あれ?)

咲「和ちゃん? 和ちゃん!?」

和(景色も音も全てが遠くにいっていくような……)


和ちゃん……のどちゃん……和……

和ちゃん……――ちゃん……………

…………………………………………



和「思い出しました!!」

咲「うわぁ! びっくりした」

和「ついさっきまで、私と咲さんと優希と須賀君の四人で麻雀を打っていたじゃないですか!」

和「それで対局後、買い物に行こうとして立ち上がったときに私が眩暈を起こして――」

咲「須賀君って誰?」

和「……咲さん、それは少し酷すぎる気が……」

咲「いや、だって急に知らない人の名前を出されても……」

和「たとえ冗談であったとしても、存在をなかったことにされて傷つかない人はいないと思います」

咲「や、だって本当に知らないし……」

和「須賀君ですよ、咲さんと中学が一緒で、今は麻雀部の男子部員の須賀君ですよ!」

咲「スガ……? 同じ中学? あっ、もしかして、京ちゃんのこと? 和ちゃん、京ちゃんと知り合いだったんだ~」

和「知り合いだったんだ、って同じ仲間の……」

咲「へー、意外なとこで意外な繋がりがあるもんだね~」

和「何を言っているんですか! 大切な部活メンバーの一人じゃないですか!」

咲「一緒に部活はできないよ。だってうち、女子校だし。京ちゃんは入学できないよ」

和「えっ……? 女子校?」

27 :

白糸台優勝100連覇

2016/10/03(月) 21:36:20.90 ID:iDhGWAIa0

京太郎「100スレまで残り4」

菫「DMM萌えゲームネタを挟む」

照「運営終了は犯罪」

淡「本当に終わるゲームは詐欺」

誠子「ペロペロ催眠完全無料版始まったら本気出す」

尭深「スレ主も鬱で投稿頻度低め」

運営終了は犯罪です


京太郎「俺様は白糸台優勝100連覇男子部唯一の男別次元の男をトレースして人数を調整してる」

京スレならスレタイに入れとけクズ

いや、どう見ても違うと思うが。

いやこれからメインになるのは明らか
和なりが他のメンバーに思い出させようとしたり、探したりする流れに決まってる
つまり出てなくても京スレってこと
だったら最初からスレタイに入れとくべき
速報なら京スレが何でも許されると思ったら大間違いだから

こんなだからレズ豚はどこ行っても嫌われる

百合豚って本当に害悪だな

こんなところに来る前に精神科に行きなさい

設定が女子校で京太郎は学校にいないと記述されてるのに京太郎SS認定なのか…

やっぱり百合豚って知能障害者だわ

百合豚は京太郎を愛し過ぎて名前を見ただけで
狂ってしまう生き物だからしゃーない

なんつーか、煽ってるのはもう
モバつけろ厨みたいなやつだと思うが



まこ「あん? 和がヘン? いや、和はいつでもヘンじゃろ」

咲「そうなんですけど……」

まこ「淫乱ピンクちゃん、ちゅう二つ名を持っとるくらい変わったやつじゃろ、和は」

咲「でも、今回は、なんだか心配になる方のヘンなんですよ」

まこ「心配になる方? たとえば?」

咲「『ここは共学です』って叫んで、学生議会室を出て行ったと思ったら、真っ青な顔して『男子がいません……男子トイレもありません。まるで最初から存在してなかったように壁になってます……』とか言い出したり」

まこ「そもそも最初から存在しとらんからのぉ」

咲「そうなんです。それから『咲さん……学校の名前が私立清澄女子高校になってます』って、まるで、ビッグニュースでっせみたいな顔で言ってきたり……」

まこ「そういうボケなんじゃ……」

咲「そんな雰囲気じゃないんですよ! その後も『そんなオカルトありえません、オカルトです。オカルト、オカルト……』って独り言を言いながら部屋の中をぐるぐる歩きだして」

咲「突然、電池が切れたようにその場に座り込んで、床を見つめて『冷静になりましょう、冷静に』ってブツブツ言ってるんですよ」

まこ「ホントの意味でヤバイ人になっとるのぉ」


【学生議会室】

和(私は眩暈を起こして死んでしまったのでしょうか……? ということはここは死後の世界? ……死後の世界? そんなのオカルト中のオカルトじゃないですか! それじゃぁ、別の世界にワープしてしまったとか? これもオカルトです)

和(もっと冷静に現実的に考えないと。たとえば、ドッキリカメラとか……)

和(芸能人でもない私を誰がなんのために? それに教育機関である学校が全面的に協力して? 現実的じゃありません。でも、誰かの壮大なイタズラでないと説明がつきませんし……)

まこ「ものすごい苦悩しとるのぉ」

咲「見てて可哀想になるくらい苦しんでますよ」

久「しょうがないわねぇ。私がなんとかしてあげるわ」

咲「会長! 来てたんですか?」

久「うん。今さっきね。ところで和はなんで落ち込んでるの?」

咲「それがよくわかんないんですけど、うちが共学でなかったこと知って落ち込んでる?」

久「ふふっ、入学して半年経つまで気づかなかったのかしら。どこまで面白い子なの、和は」

久「私は和を元気にするとっておきの方法を知ってるわ」

咲「本当ですか?」

久「ええ。咲、私と一緒に来て」

咲「は、はい」



久「咲はここに立っていてね」

咲「わかりました」

久「のーどか♪」

和「あっ、部長。お久しぶりです」

久「部長? いい響きね。私も部活をやっとけばよかったわ。それよりいいもの見せてあげる」

和「いいもの?」

久「はーい。咲のパンモロ~」

ぴらっ

咲「きゃあああぁぁぁぁ!!!!!」

咲「な、な、なにするんですか!!!」

久「和を元気づけようと思って」

咲「じ、自分のスカートをめくればいいじゃないですか!」

久「やーよ。『あ、別にそっちは興味ないで』とか超傷つくこと言ってきそうじゃない?」

咲「だからって私のスカートをめくらないでください!!」



久「でもちょっとショックだわ」

咲「なにがですか?」

久「咲がそんな大人っぽいパンツをはいてるなんて。もっと野暮ったいパンツをはいていて欲しかったわ」

咲「私がなにをはこうが勝手じゃないですか」

久「なに? 最近色気づいてきたの? モテたいの?」

咲「どうしてパンツ一つでそこまで言われなきゃならないんですか」

咲「そういう会長はどんなパンツはいてるんですか?」

久「私は普通よ、フツー」

咲「逃げないで下さい!」

久「だから、普通よ。ほら」

ぴらっ

咲「ぐっ……無難すぎる」

久「学校にはいてくるんだから当たり前でしょ?」



まこ「二人とも!!」ガシッ

久「な、なに?」

まこ「和をよう見ぃ。ドン引きしとる」

和「…………」

咲(毎日ドン引きさせる言動しかしない和ちゃんにドン引きされると、なにか理不尽なものを感じる……)

久「うーん? 和なら『ぐへへ、咲さん、どうしてそんなにエロいパンツはいてるんですか? 私との初夜のためですか? 初夜のためですよね? あ、でも今は昼ですから、初昼ですかね。さあさあ、咲さん、今からベッドでショチューしましょう。ショチュー』とかいつものノリで返してくると思ったんだけど……」

和「私はそんなこと言いませんよ!!」

咲(言いそうだけどな……)

和「それに、スカートをめくるのもはしたないのでやめたほうが……」

咲「う、うん。そうだね」

久「…………」

久「あれ? 今日の和どこかヘンじゃない?」

咲「最初からそう言ってるじゃないですか!!」

久「そうだっけ?」



和「すみません。ご心配をおかけしました……」

咲「う、うん。大丈夫?」

和「はい。少し落ち着きました」

和「ただ、今日は少し体調が優れないので帰らせて下さい」

まこ「それは別に構わんが……」

和「はい……。それでは、また」トボトボ

パタン。

咲「さっきの……和ちゃんですよね?」

久「どうしちゃったのかしら?」

まこ「うーん。元気がないのは心配じゃが、なんか……、まともになっとらんか?」

咲「そうですね。ということはこのままでも――」

久「いいわけないじゃない!!」

久「和がまともになったら、個性死んじゃうでしょ! ルックス100点、言動マイナス120点が和の魅力なんだから!!」

久「そこからマイナスがなくなったら、それってただの美少女になっちゃうじゃない!!」

まこ「ええことじゃ」

久「よくないわよ! 和の変人具合に惹かれてうちにスカウトしたのに!」

咲「そんな理由だったんですか……」


久「なんでそんなに冷めてるの!? 大事件よ! 大事件!! 早く元の和に戻さないと!」

咲「えっ? 別にこのままでもよくないですか?」

まこ「うん」

久「何言ってるの! みんなだって『咲さんの経血を有効的に使う方法を思いつきました!』とか言ってる和の方が好きでしょ?」

まこ「いや、別に」

咲「あの時は本当に……○してやろうかと思いました」

久「ああん! もうっ!!」


咲「よくよく思い返してみたら、和ちゃん関連で私ろくな目あってないな……。あの経血有効活用ど下ネタ事件の時も廻りに大勢、人がいたし……」

久「下ネタじゃないわ! だって和はネタとして言ってるんじゃないんだもの。欲望を口にしてるだけなの!」

久「でもね、聞いて。自分の欲望の赴くままに行動するなんて、全員ができることじゃないわ。極一部の人間しかできないことよ。もうそれって才能じゃない? だったら守ってあげないと! 和の才能を!!」

まこ「必要ない才能もあるじゃろ」

咲「和ちゃんの欲望の赴く先はいつも私じゃないですか! やってられませんよ!」


もし、平行世界の和が入れ換わっているとかなら、もう一方でもう一人の和が暴れてるんだろうな…


まこ「しかし、和はどうしてああなった?」

咲「誰かと中身が入れ替わった……とか?」

まこ「SF小説じゃあるまいし」

久「入れ替わっていたとしたら、誰と入れ替わったの? 元の和はどこへ行ったのよ」

咲「それは別の平行世界の和ちゃんとです。世界同士が偶然重なり合って超空間を通じて入れ替わっちゃったんですよ」

まこ「…………やっぱり、妹か」

咲「今、私とお姉ちゃんの両方をバカにしませんでしたか!?」

まこ「まぁ、仮にそうだとしたら、入れ替わった先の廻りの人間は災難じゃのぉ」


◆生真面目で融通が利かない麻雀大好きっ子の方……「和」表記
❤淫乱ピンクさんの方……「のどっち」表記


でいきます。どっちも和表記だとややこしいからね。


❤【清澄高校 麻雀部部室】


のどっち「咲さんの太ももすべすべ~」

咲「…………」

咲(目を覚ましてから和ちゃんがおかしい)

のどっち「いつからお触り解禁になったんですかぁ? 言ってくださいよぉ」

咲「言ってる意味がよくわかんないよ。あと、太もも触るのやめてほしい……かな?」

のどっち「私、病人なんですから優しくしてください」

咲「病気だったら、私が膝枕するよりベッドで休んだ方がいいんじゃない……?」

のどっち「咲さんの太ももじゃないと治癒できない病気なんですよぉ」

咲「そ、そんな病気ないと思うなぁ。あ、あと、手がだんだん太ももの内側にきてるような気がするんだ。出来ればやめてほしいな」

のどっち「それは出来ない相談ですね」

咲「えぇぇ……」


名前逆のイメージある

まだすまん続いてたか

淫ピでいいじゃん

>>30
全然大丈夫です。
今日はこれでおわりですから。
続きはまた明日で。

ピンクがどこまで行くのか、こっちの咲さんをみんなが見ている前で押し倒してことに及ぼうとする姿を見たい私がいます。

どっちにしろ戻ってきたのどかは咲の反応に…

乙!困ってる咲ちゃんかわいい


のどっち「あっ!! 雀卓があるじゃないですか! どうしてこんなものが!?」

咲「どうしてって……雀卓があるのは当然だよ」

のどっち「実はまだ誰にも言ったことがないのですが……」

のどっち「私、麻雀ができるんです」

咲「…………知ってる」

のどっち「えっ!? さすが咲さん! 私のことならなんでもお見通しなんですね!」

咲「お見通しもなにも……」

のどっち「でも麻雀は二人ではできませんし……。優希はもちろんできませんよね?」

優希「のどちゃん、なに言ってるんだじょ……?」

のどっち「もしかしてできるんですか!? なんだ、できるなら言ってくださいよぉ。って私も言ってませんでしたよね。あはは」

のどっち「そういえば、以前、染谷先輩のおじいさんが麻雀好きで隣でずっと見てた、みたいな話をしてませんでしたか? ということは、染谷先輩も麻雀ができる可能性が高いのではないでしょうか?」

のどっち「そしたら四人揃いますね! わーっ、楽しみになってきました。染谷先輩を呼んできますね」タッタッタッ

咲「ちょっと、和ちゃん!?」

咲「……本当にどうしちゃったんだろう?」


のどっち「すごいっ! ボタンを押しただけで牌が並んで出てくるんですね」

咲「う、うん……」

のどっち「では、誰から始めるかじゃんけんで決めましょうか」

咲「和ちゃん、サイコロ……」

のどっち「そうですね。せっかくサイコロがあるのですから使わないといけませんね」

のどっち「では、サイコロの出た目が一番大きな人から時計回りにしましょうか」

咲「や、そうじゃなくて……」


のどっち「牌なんて初めて触りました」

まこ「それは嘘じゃろ」

のどっち「むむ、私の醸し出す雰囲気が素人のそれじゃないことに気づいちゃいましたか。確かに、最近『哲也』という麻雀マンガを読み始めたので、もはや玄人なのかもしれません」

まこ(本当にどうしたんじゃ?)

のどっち「よーし、2の2の天和をやりますよ!」

ポチッ。カラカラ……

のどっち「あぁ、残念。サイコロの目は2と3でした。惜しかったです」

まこ(なにを言っとるんじゃ……?)


のどっち「優希は知っていると思いますけど、私って毎朝占いをしてたじゃないですか」

優希「のどちゃんが毎朝占い……?」

のどっち「でも、最近は占いの時間に麻雀ゲームをやるようになるくらいハマってしまいまして」

のどっち「私の必殺技は赤と白と緑を3枚づつ集めてドーンってやる技が得意ですね。普通は32000点なんですけど、運のいい日は48000点になる時もあるんですよ」

まこ(何の話をしとるんじゃ)


タンッ……タンッ……

まこ「ポン」

タンッ……タンッ……

咲「あの……和ちゃん。少牌してないかな?」

のどっち「ショーハイ?」

咲「だから、牌、足りなくないかな?」

のどっち「1……2……3…………12?」

咲「今の時点で13牌ないといけないよね」

のどっち「そうですね。じゃあ今回2枚引きますね」

咲「えっと、それは……」

のどっち「あー……、2枚とも必要ないですね……。さすがにこの2枚捨てて、次の番にもう一度2枚引いてきちゃダメですよね?」

咲「ダメとかそういう問題じゃなくてね」

のどっち「ふふっ、さすがに理由もなく2枚引いちゃいけないことくらいわかってますよ」

咲「や、だからね理由があろうがなかろうが……」

久々に面白い咲SS

こののどっちなら、鼻をつまみあげて、そのつまんだ鼻めがけて膝をねじ込んでも許される気がしてきた。


◆【清澄女子高校 学生議会室】


優希「およ? なんで部屋の前で立ち話?」

咲「優希ちゃん! 和ちゃんの様子がおかしくて……それで、話し合いをしていたの」

優希「のどちゃんの様子が……? ああ、そろそろのどちゃんの誕生日か」

咲「和ちゃんの誕生日とどう関係があるの?」

優希「のどちゃんは自分の誕生日を自分プロデュースで盛大に祝う習性があるんだじぇ」

久「習性って動物じゃないんだから」

咲「自分発信のお誕生日企画……ってこと?」

まこ「和にはイタイとかそういう概念はないからのぉ」


久「そういえば、和ってお祭りごと好きよね。夏祭りのときも張り切ってたし」

まこ「ということは、今日のは自分の誕生日を盛り上げるための準備、演出だったってことかのう」

久「とても演技には見えなかったけれど……」

咲「妄想の設定を作り込んでいくうちに、そっちが本当の自分だと思い込んじゃったとか?」

まこ「そんなバカなこと……和ならありそうじゃのう」

久「やっぱり、和って天才だわ。凡人には近づけもしない領域にやすやすと入っていけるのね」

まこ「しかし、さすが中学からの友達じゃのう。和の誕生日もしっかり覚えとるんじゃけぇ」

優希「高遠原中学の人間は全員のどちゃんの誕生日を覚えてるじょ」

優希「というより……忘れることなんて、できないんだじぇ」ボソッ


◆【原村家】


和「疲れた……。早く眠ってしまいたいです」

ガチャ。

和「お父さんの靴がありますね……」

和「…………」

和(会いたくないな……)

和「そっと自分の部屋へ行けば、顔を合わすこともないでしょう」

ガチャ

和「自分の部屋だと思いたくない程、散らかってますね……」

和「脱いだ服をそのままにしておける神経がわかりません。ああ、シワになってる」

和「本も床に散乱していますし……。読んだらその都度、元に戻せばいいのに」

和「うっ……、占いと恋愛の本ばかり……。受け付けませんね」

和「はぁ……、片付けは明日にしましょう」

和「今日は本当に疲れてしまいました」

和「明日になったら、全部元に戻っていればいい、のに…………すぅ……すぅ……」


❤【原村家】


のどっち「パパ~」

ガチャ。

恵(和のお父さん)「パ、パパ!?」

のどっち「本当にもぉ~、びっくりしましたよぉ」

恵「の、和……?」

のどっち「部屋にある雀卓って、パパからの誕生日プレゼントですよね? ありがとうございます。大切に使いますね」

恵「は?」

のどっち「咲さんもパパもどうしてそんなに私のことが分っちゃうんですかぁ? やっぱり愛の力ですかねぇ」

恵「和?」

のどっち「それに部屋も片付けてくれて……、まるで自分の部屋じゃないくらいに綺麗になってました」

のどっち「あ、そうだ。優希から教えてもらったのですが、1つ二千円の高級タコスがあるらしいです。今度の日曜日そこにデートにいきましょうよ」

恵「デート……だと!?」

のどっち「それじゃあ、もう寝ますね。プレゼントありがとうございました。パパ大好きですぅ♪」

パタン。

恵「…………」

こののどっちと京太郎が邂逅したら京太郎は殺されてしまうのだろうか

このパパってどういう意味のパパなんだろうか…

つーかのどっちの世界だと憧が円光やってそうで怖い

どっちの世界でも、の間違いだろ?


◆【清澄女子高校 校門前】


和「はぁ……」

和「結局、日を跨いで朝になっても、やっぱりここは清澄女子高校で、麻雀部なんて姿も形もなくありません」

和「こんなオカルトを現実として受け入れざるを得ないのでしょうか……?」

ドン。

和「きゃっ」

和「す、すみません、考え事をしなが歩いていた……もので……」

照「原村和……」

和「ど、どうしてあなたがここに!?」



和「さ、さ、さ、咲さん!! 落ち着いて、落ち着いて、落ち着いてください!!」

咲「それはこっちの台詞だよ。どうしたの?」

和「落ち着いて……はぁ、はぁ……聞いて下さいね」

咲「わ、わかった」

和「校門の前に咲さんのお姉さんがいました」

咲「うん」

和「…………」

咲「…………」

和「…………」

咲「そりぁ、いるでしょ。それで?」

和「驚かないんですか?」

咲「驚くもなにも、同じ家に住んで、毎日会ってるんだから驚きようがないよ」


和「そうだったんですか……」

咲「うん。今日は学生議会の仕事があったから、私の方が早くに家を出たけど、普段は一緒に通学してるよ」

和「仲直り……できたんですね」

咲「仲直りもなにも、そもそもケンカなんてしてないんだけど……」

和「そう……ですか。よかった……」

咲「…………」


咲「ねぇ、和ちゃん。どうしてお姉ちゃんがいることを私に伝えようと思ったの?」

和「……少し、おかしな話をしてもいいですか?」

咲「和ちゃんの口から出る話の八割方はおかしな話だし。いつもの通りだね」

和「私の知っている咲さんはお姉さんにずっと無視されていて……」

咲「お姉ちゃんはそんなことしないよ」

和「す、すみません」

咲「…………」

和「…………」

咲「つづきは?」

和「咲さんが怖い顔をなさっていたので、これ以上は話さない方がいいのかな、と」

咲「や、架空の話だし別にいいよ。つづけて」


和「咲さんはひどく傷ついていました」

咲「そりぁ、そうだろうね。でも、お姉ちゃんは私のこと無視なんて絶対しないけどね」

和「…………」

咲「つづけて、つづけて」

和「私はそのことがずっと不満でした。だってそうじゃないですか。咲さんのことを大切に思わない人のために咲さんが傷つくなんて間違ってます」

和「そのことを咲さんに訴えたら、咲さんは……」

――咲『和ちゃんが私のためを思って言ってくれてるのはわかっいるんだ。でも……、それでもお姉ちゃんのことを悪く言うのはやめて欲しい』

和「そう、言われてしまって……」

咲「…………」


和「それなら、お姉さんのことなんてどうでもよくなるくらい、清澄で楽しい思い出を作ればいいんだ、と考えまして……」

和「毎日、咲さんが好きそうな本を読んでその話をしてみたり、咲さんが興味のある話題を探したり、咲さんがお弁当を忘れてしまったときのために毎回2つ作ってきたり……まぁ、お弁当は一度も渡せたためしがないのですが……」

咲「重いな。特にお弁当」

和「重いですか……」

咲「うん。重い。方向性が変態から友情にいっても、基本重いよね、和ちゃんは」

和「そう……ですよね。私、重くて気持ち悪いですよね」

咲「気持ち悪いとは言ってないじゃない。相づちの代わりに感想を挟んでみただけだから。そんなに本気で落ち込まないでよ」


咲「で、渡してない方のお弁当は毎回どうしてたの?」

和「夕食にして、一人で食べてました」

咲「毎朝2つ作って、学校で1つ食べて、持って帰って家でもう1つ食べてたの?」

和「……はい」

咲「それはやめておいた方がいいね。仮に出す機会があったとしても『え? なんで?』ってなっちゃうよね?」

和「そうですね……」

咲「ちなみに今日も作ってきたの?」

和「すみません、習慣になっていて……」


和「自分でも空回りをしているという自覚はあるんです……。でも、どうしていいのかわからなくて……」

咲「…………」

和「咲さんはいつも陰があって……、笑っていてもどこか哀しそうで……」

和「咲さんにはずっと笑っていて欲しい、そう思っていたのですが……。もしかしたら、咲さんはそんな私の思いを察して無理に笑っていてくれていたのではないか……」

和「咲さんは優しいから、私に気を遣ってくれているだけなのかもしれない。……結果として私が咲さんの重荷になっているのではないか……」

和「考えれば考えるほど、なにをしていいのかわからなくなってきてしまって……」

和「でも、そうこうしている内に、咲さんの心がどんどんすり減っていくように思えて……、見ていられなくて……」

和「せめて、咲さんが困っているときに、すぐ助けることが出来るよう準備しておこうと思って……」

咲「お弁当?」

和「はい。お弁当を二つ、体操服も二着、教科書も咲さんのクラスの時間割分を入れていました」

咲「鞄、パンパンになるでしょうに」


和「私はどうしたらいいのでしょか……?」

咲「うーん」

咲(この話悩み相談だったのか……)

咲(つまり、和ちゃんの妄想の私との関係を、リアルの私に相談している、と)

咲(なんだ、このシチュエーション)

咲(でもなぁ……)チラッ

和「…………」

咲(真剣に答えなきゃいけないような気がするんだよね)


淫ピじゃない和はいい子だな

でもこっちの咲さんに相談して答えが得られたとしても、元の世界の咲さんもそうだとは限らないんじゃないかなって

乙。まあ、ちょっと分岐点間違えただけであっちもこっちも根本的には同じ人だと思うよ

まぁどっちにしても重くてめんどくさい子ってのには変わりねぇな


咲「私達が初めて会った日のこと、覚えてるでしょ?」

和「はい。咲さんが3連続プラマイゼロを――」

咲「そっちじゃなくてさ、現実の方」

和「現実……」

咲「四月に体力測定をやるとか言って、マラソンをやらされたじゃない?」

咲「あの時さ……」


………………
…………
……


《回想》 【清澄女子高校 外周】


タッタッタッ……

咲「はあ……、はぁ、はぁ……」

咲(キツイ……。足疲れたし……息も苦しい)

咲(いきなりマラソンとかバッカじゃなかろうか)

咲(もういいや。歩こ)

咲(先生に怒らたって知らない。無理なものは無理なんだ)

のどっち「あと少しですよ」

咲「へ?」

のどっち「せっかくここまで来たのですから。あと少しでゴールです。一緒に頑張りましょう」

咲「う、うん」


咲「ゴ、ゴールだぁ……」

咲「はぁ、はぁ……。もうヤダ。一生分走った」

咲「絶対、明日筋肉痛だよ」

のどっち「スポーツドリンクです。よかったらどうぞ」

咲「あ、ありがとう」

咲(あっ、キャップが開いてある。開けてくれたんだ。気の利く子だなぁ)

ゴクゴクゴク

咲「はぁ~。おいしい」

のどっち「おいしいですか……。なんだか照れますね」


咲「スポーツドリンク代。今はお金持ってきてないから、教室に帰ったら返すね」

のどっち「いえ、それは差し上げたものですから」

咲「でも、そんなの悪いよ……」

のどっち「お気になさらないで下さい。私もごちそうさま、って感じなので」

咲「……?」

のどっち「そのスポーツドリンクはお近づきのしるしです。宮永さん」

咲「どうして名前を……。って体操服に書いてあるか」

のどっち「それもありますが……。以前から宮永さんみたいな子とお近づきになりたいな、と思っていたんです」

咲「そうなんだ。なんか……面と向かって言われると、恥ずかしいというか……照れるね」

のどっち「私も今、ドキドキしてます」


のどっち「あっ! 私のクラス、向こうで集まってますね。もう少しお話ししたかったのですが……」

咲「そっか。それじゃあ、また」

のどっち「はい。また……」

タッタッタッ

咲(いい子だったな……)

咲(あんな子と友達になれたらいいなぁ)


……
…………
………………


和「いい思い出……ですね」

咲(まあ、その後、本人の手によってぶち壊されるんだけどね)

――のどっち『以前から目をつけていた私好みの女の子が顔を紅潮させて喘いでるぅ、って一人で興奮してました。汗もいっぱいかいてらしたので、物理的にお近づきになれば、匂いもかげるのではないか、と考えていたら身体が勝手に動いて声をかけていたんです。あの時の咲さん、とっても官能的でしたよ』

ゲスいなあww

こののっどちは根っこからおかしい

>>16
付けろよしね


咲「えーと、何の話をしようと思ってたんだっけ?」

咲「そうそう。マラソンの時もね、一人だったら最後まで走れなかったと思うんだ」

咲「自分と同じ立場の人がそばにいる、つらさを共有出来る人が隣で走ってる……それだけで救われることってあるんだよ」

和「つらさを共有する……ですか」

咲「そう、共有するの。具体的には、和ちゃんの悩みを打ち明ければいいんだよ」

和「私が咲さんに悩みを相談するんですか?」

咲「うん」

咲(『咲さん』は目の前にいるんだけどねぇ……。私のことを指していないことはわかってはいるが)


咲「こんなに悩んでるのは世界で私だけだとか、誰もこの気持ちを分ってくれない、なんて考えたらどんどん落ちていっちゃうじゃない?」

咲「他の人も悩んでるんだな、って知るだけでラクになったりするもんだよ。和ちゃんが……ううん、他人ができることなんて多分、それくらいだよ」

和「それでも……咲さんは私のことで気を病むのではないかと心配で……」

咲「なんだ、そんなことで悩んでたのか、って思うだけじゃないかな?」

和「そうですかね……」

咲「心から心配してる、みたいな表情は作るだろうけど。家に帰ったら忘れちゃってるよ」

和「それはそれでショックなような……」

咲「まあ、他人の悩み事なんて、所詮他人事だしね」


咲「和ちゃんは他に悩んでることないの?」

和「他の悩み……。父との関係がうまくいってないことでしょうか」

咲「じゃあ、そのことを私に相談してみるといいよ」

咲(妄想の方の私にね)

和「はい……。そうしてみます」

咲(納得してくれたけど、どうする気なんだろうか?)


咲(なんだか、相談に乗ることによってさらに落ち込ませちゃったな……)

咲「まあ、とにかく、想像力を目一杯働かせて、人の気持ちを考えることってすごく大切なことだと思う」

和「はい……」

咲「それで身動きがとれなくなっているんだろうけど……」

咲「少なくとも、人の心情なんてお構いなしに背後から胸を鷲づかみにしてくる和ちゃんよりはいいと思うよ」

和「…………」

咲(ここまでいくと、和ちゃんって二重人格者なんじゃ、って思えてちょっと怖いけどね)


❤【清澄高校】


咲「暑い……。もう十月に入ったのにどうしてこんなに暑いんだろう?」

のどっち「九月や十月でも熱中症で倒れる方はいますからねぇ」

咲「この暑さだとね。私、暑いの苦手なんだ」

のどっち「でしたら、水分補給はなおのこと大事ですね」

のどっち「あっ、よかったら私の水飲みますか? 今日の暑さをニュースで知いたので、多めに作ってきたんです」

咲「いいの?」

のどっち「はい。生理食塩水です。どうぞ」

咲「生理食塩水?」

和「生理食塩水は人間の体液と同じ浸透圧を持っていて、水分補給に最適なんですよ」

咲「へぇ~。そうなんだぁ」

ゴクゴク

和「ま、人間の体液というより、私の体液ですけどね……」

咲「ゴボッ!! ゲホゲホ!!」

そういや「作ってきた」って言ってたもんなぁ。

味で気が付かないってことは汗かな。唾液や愛液だと臭いでわかるし

京太郎がメインじゃないと飽きる

のどっちが途中から和になってるけど、唐突に帰ってきた?

>>81
完全にミスだね。

78は「和」→「のどっち」で。

一人称のミスと誰が話しているかの表記ミスは冷めるから気をつけようと
思ってたのにやっちゃった。

続きは明日で。

明日なんてなかった


咲「な、なにを入れたのっ!?」

のどっち「やだなぁ~、私だって人間ですよ? 私イコール人間、人間イコール私、まったく問題ないじゃないですか~」

咲「問題だらけだよっ!!」

咲「ねぇ、本当に答えて! この水に和ちゃんのなにを入れたの?」

のどっち「それを私の口から言わせますか? 咲さんのエッチ……」

咲「どうして私がセクハラしてるみたいになってるの!?」


のどっち「なーんちゃって」

咲「へ?」

のどっち「さっきのは冗談ですよ」

咲「ほ、本当?」

のどっち「はい。なにも入ってません。……ということにしておきましょう」

咲「聞こえてるよ?」


のどっち「ふふ、でもはじめて会った日のことを思い出しますね」

咲「初めて会った日のこと?」

のどっち「間接キスって、どうしてあんなにドキドキするんでしょうね」

咲「間接……? あっ……そういえば、はじめて会ったとき、部室で紅茶を入れてくれたのは……和ちゃんだった? うん、確か和ちゃんだったよ!」

のどっち(紅茶? スポーツドリンクだったような……。)

咲「まさか、あの時からもう既に?」

のどっち「……黙秘します」

咲「なにそれ?」

のどっち「…………」

咲「本当に黙るの?」

のどっち「私の成分が咲さんに吸収されているみたいで、ゾクゾクくるものがありました」

咲「なんの感想!? やっぱりなにか入れてた?」


のどっち「無理やり飲まされた訳ではないので、暴力行為は認められませんよ。それと病気をうつすなど人の生理的機能を害したわけでもないので傷害罪は成立しません。暴行脅迫行為がないので強制わいせつ罪も成り立ちません。よって刑法上は無罪です」

咲「ちょっ……和ちゃん?」

のどっち「刑事でダメなら民事での損害賠償があります。不法行為に基づく損害賠償請求の可能性ならありますが、体液が混じっていたことをどのように証明するのですか? 民間の業者にDNA鑑定を依頼すると結構なお金がかかりますよ?」

咲「既に法律で理論武装が完了しているところが怖いんだよ!!」


◆【清澄女子高校 学生議会室】


ガチャ

久「おはよー」

まこ「おはようさん」

優希「おはようだじょ」

和「おはようございます」

咲「おはよ……、ちょっと、優希ちゃん! 昨日よりスカート短くなってない?」

優希「さすが咲ちゃん、めざといじぇ。テーマはセクシー&ぷりちぃ~だじょ」

咲「テーマとか訊いてないよ! 少し屈むだけで、見えちゃうよ!」

優希「見せパンはいてるじょ。パンツじゃないから恥ずかしくないじぇ」

咲「見せパンはパンツだから!! ってか、見せパンでも風紀が乱れるからダメだよ」

咲「それに、学生議会の一員として、他の生徒の模範とならなきゃいけない立場なんだからもう少しきちんとした――」

コンコン

和「はい、どうぞ」

ガチャ

照「…………」


咲「あっ、お姉ちゃ……お姉ちゃん? 制服は? その格好で学校に来たの!?」

照「……(コクリ)」

咲「で、でも学校だし、ゴスロリは……」

照「これは正装。今日は大天使ミカエルの命日だから喪に服してるの……」

咲「そ、そっか……。なら仕方ないね」

まこ「おいおい、さっきまでと言っとることが違うじゃろ」

優希「そうだじぇ」


咲「えー……、だって命日じゃ仕方がないじゃないですか」

まこ「脳内キャラの脳内命日じゃろ、そんなもん!!」

咲「私はあくまで学生議会の一員としての服装のあり方を説いただけであって、お姉ちゃんは学生議会の人間じゃありませんし……セーフです」

まこ「おいっ!」

咲「それに肌の露出が問題であるというのが主旨であって、お姉ちゃんの服装の場合まったく露出していないので問題はないかと」

まこ「失言を弁明する政治家か、おんどれは」

優希「風紀がどうとか言ってたじぇ」

咲「お姉ちゃんは凜としているから、風紀は乱してません。その場に居るだけで空気かピンと張りつめまるくらい凜々しいので」

まこ「思いっきり乱しとるわ!! こんな格好で教室にこられたら、場が凍ってピンとするわのぉ!!」


咲「風紀に関しましては、主観による要素が大きく、ひとそれぞれ感じ方が違うので一概には……」

まこ「不祥事を起こした会社の役員みたいじゃのぉ」

咲「…………」

咲「お姉ちゃんは格好いいからなにやってもいいんですよっ!!」

まこ「とうとう開き直りよったな」

優希「身内には甘々だじぇ……」

久「咲の言う通りよ!」

まこ「また、めんどくさいのが入ってきおった……」

久「田園風景をバックにゴスロリで通学なんて、そんなの面白す……素敵すぎるわ」

久「ゴスロリで通学……。こんな発想、常人のそれじゃないわ!! 照さんの才能も私達で守って――」

まこ「もうええわ……」

和ほどじゃないけど咲も結構人格違うみたいだな
もし宮永家が平穏であったとしてもこうはならないだろうし

はよ


久「はあ……、思い出すわ~、初めて照さんの存在を知った日のことを」


………………
…………
……


◆【二年前、四月。 清澄女子高校 一年生教室】


久(はぁ~。私、もう飽きちゃってる……)

久(中高一貫校だから高校受験なしでラッキー、とか思ってたけど……)

久(よく考えたら6年間も同じ場所に通わなくちゃいけないのよね……)

久(なんのトキメキもうまれない、高校生活の初日……)

久(同じ制服、同じ通学路、校舎が違うだけで同じ敷地内の学校……)

久(見たことある先生に知ってる生徒……。何人か外部からきてるとはいえ、ほぼ見知ったメンバー……)

久(高校一年生じゃなくて、中学四年生って感じ……)

久(これはもう病気ね……。退屈っていう病気)

久(なんでもいいから、刺激が欲しいわ……。面白いことが空から舞い降りてこないかしら)

先生「じゃあ、次の自己紹介は宮永さん。宮永照さん、お願いしますね」

照「ただの人間には興味ありません。この中に、宇宙人、未来人、異世界人、超能力者がいたら、私のところに来なさい。以上」

久(面白いの降ってきたぁ!!)


……
…………
………………


咲「お姉ちゃん……、そんなことしてたの?」

照「ふふぅん」

まこ「なんで、したり顔なんじゃ」


久「そこからの照さんの暴走は見事だったわ。放送室を占拠したり天使の羽根が生えた服で通学してきたり」

まこ「行動派の中二病か……。一番やっかいじゃな」

久「もし、インターハイに変人……個性派人間っていう種目があれば、照さんは毎年インターハイチャンピオンね」

咲「やっぱり、お姉ちゃんのことバカにしてますよね?」

久「バカになんかしてないわ! むしろその逆よ! 照さんが自由に暴れ回れる環境を整えるために学生議会に入いたの。それくらい敬愛しているのよ」

咲「そんな理由でっ!?」

久「照さんのおかげで灰色の予定だった私の高校生活が、面白まだら色スクールライフになったのよ。当然よ」

まこ「まだら色なんじゃな……」

久「もうこの気持ちは恋? いや、恋を越えたなにかね」

咲(この人も相当変人だな……)


久「大学にはいろんな人が来る、っていうけど照さんや和みたいな変じ……個性派はいる? 絶対いないわ!」

咲「変人って言いかけて、個性派って言い直すのやめてもらえますか」

久「照さんと出会ってもう2年半になるけど、いまだに飽きてないの。これって凄いことでしょ?」

久「照さんが卒業出来なかったら、私ももう1年高校生やろうかしら」

咲「縁起でも無いこと言わないでくださいっ!! お姉ちゃんが留年してもう1年ここにいるなんて……いるなんて……、いいですね、それ」

まこ「おい!!」


❤【清澄高校 麻雀部部室前】


久「……久しぶりに麻雀部に顔を出してみようかしら」

久「引き継ぎで何回かは行ったけれど、最近はほとんど行ってないのよね」

久「引退した人間が部室に頻繁に顔を出すのってどうなの? と思って遠慮してたんだけど……、たまにはいいわよね」

久「みんな元気にしてるかしら」



ガチャ

久「やっほー、みんな元気?」

しーん……

久「あれ? 留守?」


久「もぉ~、掃除道具出しっ放しじゃない。仕方ないわねぇ、私が片付けて――」

ガチャ

久「ひゃ、わぁっ!!」

京太郎「あ、どうも」

久「ロッカーの中でなにしてるの?」

京太郎「三角座りです」

久「……は?」

京太郎「あ、体育座りって言った方が伝わりました?」

久「そういうことじゃなくて……」

京太郎「狭い場所ってどうしてこんなに落ち着くんでしょうね?」

久「私に訊かれても……」

京太郎「ロッカーだけが俺を受け入れてくれるんですよ」

京太郎「あ、部長も入ります? ロッカー。暖かいッスよ?」

久「……遠慮しとくわ」

京太郎「そうッスよね……俺みたいなゴミ虫と一緒の空間にいたくないッスよね……」

久「ゴミ虫って……誰かにそんなこと言われたの?」

京太郎「…………」

バタン

久「なんで!? なんで無言で戸を閉めたの!?」

え、なに?京太郎も入れ替わったの?

和に誰?って言われて男は消えろって言われたんだろ


久「どうしたってのよ……。って、まこ!! なんだ、いるじゃない!!」

まこ「…………」

久「いるなら反応してよ。私、テンション上がっちゃって、やっほーとか言っちゃたんだから」

まこ「あ、ああ。久しぶりじゃの」

久「声ガラガラ! どうしたの?」

まこ「ここ数日大声でツッコミすぎてのう」

久「えっ?」

まこ「もう声が……」

久「声が枯れる程のツッコミってなに? どういうこと?」

まこ「咲には悪いが今日はもうええかなって」

久「声が枯れていても麻雀の練習はできるでしょ?」

まこ「いや、麻雀やのうてツッコミ」

久「ツッコミ!?」


まこ「今日は勉強しようかと思てのう」

久「勉強も大事だけど……。ねぇ、その本、明らかに参考書じゃないわよね? 『鉄板ツッコミフレーズ25』? なんの勉強しようとしてるの?」

まこ「一日百回以上ツッコんで、わしはつくづく思い知ったんじゃ」

まこ「わしのツッコミって『なにしとんじゃ』ばっかりで、ワンパターンじゃなって」

久「なにに対する反省なの?」

まこ「和がのう……見てくるんじゃ」

久「……? 和が見てくる?」

まこ「『そのツッコミじゃないんですよねぇ……』ちゅう目でわしを見てくるんじゃ!!」

久「なにそれ?」

まこ「口にこそ出さんが、『前はもっとキレのあるツッコミしてたのに……なんかちょっとガッカリです』ちゅう目をしとるんじゃ!!」

久「どんな目よ」

まこ「それがプレッシャーで、プレッシャーで……」

久「ま、まこ? ちょっとおかしいわよ? それに、よく見たら、目の下にすごいクマができてる」

まこ「ああ、最近、明日のツッコミのことを考えると眠れんからな……」

久「悩みがお笑い芸人さんみたいになってるから!!」


久「咲?」

咲「…………」

久「さきぃ~……?」

咲「あっ、部長……。お久しぶり……ですね」

久「窓辺でアンニュイな表情をしてたから、なにしてるのかなって」

咲「雲を……見てました」

久「雲かぁ……。雲もいいんだけど、今は部活しなきゃでしょ?」

咲「ほら、あの雲……ヤドカリに見えませんか?」

久「え? あぁ……うん。見えるわね……」

咲「でも、今はどう見てもヤドカリに見えないんですよ」

久「……????」


咲「あの雲、ずーと見てたんです。そしたら、だんだん『チョココロネから腕が生えてきた人』に見えてきて……」

久「腕……生えちゃったかぁ……」

咲「一度そう見えちゃったら、あの雲が『チョココロネから腕が生えてきた人』にしか見えなくなってきて……」

久「そもそもそれって、チョココロネなの? 人なの?」

咲「どう見ても、『チョココロネから腕が生えてきた人』に見えちゃうんですよ。それって不思議だなって」

久「そう……。不思議ね……」

咲「はい。不思議ですね……」

久「…………」

咲「…………」

久「咲って、不思議ちゃんみたいな感じだったけ?」

咲「ふふっ、チョココロネから腕が生えてきた人、笑ってる」

久「……最近、心の病でもかかえた?」

咲「がんばれぇ、チョココロネから腕が生えてきた人~」

久「どうしちゃったのよっ! 心を支えきれてないじゃない!!」


久「どうしちゃったのよ、みんな!!」

久「そうだわ、和や優希は? あの二人なら――」

ガチャッ!

のどっち「あーい、めんそ~れ~」

久「…………め、めんそーれ」

のどっち「会長、ごきげんよう」

久「ご、ごきげんよう」

のどっち「久しぶりですね。最近ここに来なじゃないですか」

久「私、引退した身だし……」

のどっち「えっ!? 引退してらしたんですか?」

久「知ってるでしょ!?」

のどっち「そういえば、そろそろ学生議会選挙ですもんね」

のどっち「ということは……。いいこと思いつきましたっ!! 私、少し出かけてきますね」

久「えっ……?」

のどっち「それでは、会長。あも~れ、かんた~れ、めんそ~れ」

久「え……あ、うん……」

待ってた。続きはよ


◆【清澄女子高校 学生議会室】


咲「お姉ちゃん、学生議会室になにか用があってきたの? ここは悪い人ばかりだから、あまり来ない方がいいよ」

まこ「なんじゃとぉ!」

照「上埜さん……。あの話は本当……?」

久「上埜さんじゃなくて、久でいいわよ」

照「…………。本当なの? 上埜さん」

久「ありゃ?」

咲(会長のこと苦手なんだね、お姉ちゃん)

まこ(距離をとりたいんじゃな……)


照「原村和……。上埜さんから聞いたのだけれど……、異世界から来たっていうのは……本当?」

和「……!?」

咲「会長、お姉ちゃんに和ちゃんのことバラしましたね?」

久「別にいいじゃない」

咲「よくありませんよ!!」

久「和と照さんって馬が合いそうだし」

咲「だから会わしたくないんですよ!」


和「異世界……。そんなオカルト、認めたくありませんが……。そう結論づけるしかないのかもしれません……」

咲「和ちゃん、そんなリアリティだそうとしなくていいから」

優希「のどちゃん、ノリノリだじょ」

照「ふ、ふーん」

まこ「めちゃくちゃ嬉しそうな顔しとるぞ」

久「ずっと探してたからね、異世界人」


照「ま、まだ信じたわけじゃない……。仮にあなたが本物の異世界人だったとしても、私も対有機生命体コンタクト用ヒューマノイド・インターフェースだもの……」

優希「張り合いだしたじぇ」

咲「ほら、和ちゃんのせいで、また新しい設定が一つ増えちゃったじゃない。私もう、覚えきれないよ!」

久「ねぇ、まこ! 天才と天才が会話してるわ。歴史的瞬間に立ち会ってるのね、私達っ!!」

まこ「服をグイグイすなって!」


照「証明……。異世界人であるということを証明して……」

和「証明と言われましても……。なにをどう証明すればいいのか」

照「……あなたがいた世界の話をして」

和「私のいた世界……」

和(今さらかもしれませんが、事細かに元いた世界の話をしたら……、本格的におかしな人だと思われないでしょうか……。もし、逆の立場だったらきっと私は……)

照「……なにか禁則事項でもあるの?」

和「そういうわけではないのですが……」

照「話せる範囲でいい……」

照「私はあなたの話を信じるわ……」

和「……!?」

和「……わかりました、話します。私がいた世界では――」


久「はぁぁ……、電波を受信しあってる。やっぱり和と照さんって、周波数が一緒だったのね」

まこ「なんで、真剣な顔してあんな会話ができるんじゃ」

優希「別世界を作ってるじょ」

久「はぁ、はぁ。興奮しすぎて過呼吸気味になってきたわ。まこ、こういう時ってどうすればいいの? ねぇ、どうしようっ! このワクワク、どうしたらいいの?」

まこ「服、伸びるけぇグイグイすなって」

久「そうだわ! 録音!! 例え私が倒れても録音しておけば後で聞けるわ! まこ! 録音して! 早くっ!!」

まこ「グイグイすなっちゅうとるじゃろが!!」


和「高校でも、大規模な麻雀の全国大会が毎年開催されていて――」

(中略)

和「私はインターミドル個人戦で優勝しました。それから――」

(中略)

和「咲さんと初めて出会ったのはその時でした。その後――」


優希(話長いじょ……)

咲(オチとかないんだ……)

まこ(設定、作くり込んどるなぁ……)

久(和の妄想は前世の因縁とか魔法が出てこないリアリティ派なのね)


照「だいたいわかった。……それで私は? 私はそっちではどんな感じ……?」

和「咲さんのお姉さんは……白糸台高校の三年生で――」

照「白糸台!?」

咲「どうして和ちゃんがお姉ちゃんの黒歴史、白糸台高校のことを知ってるの?」

まこ「黒歴史は現在進行形で続いとるじゃろ」

咲「秋葉原や池袋にすぐ行けるってだけの理由で東京の全寮制高校を受験したけど、面接で落とされた白糸台高校をどうして知ってるの!?」

照「うぐぅ……」

咲「筆記はほぼ満点だったのに不合格にさせられた白糸台のことをどうして知ってるの!?」

照「うぐぅぅ……」

咲「お姉ちゃんが受験した年以降、合格最低点が非公開になって、『面接の結果を非常に重視する』って但し書きが新たに付け加えられた白糸台を和ちゃんがどうして知ってるの?」

まこ「言葉の矢が全部姉に当たっとるぞ」


咲「ご、ごめん。お姉ちゃん……」

照「うぐぅ……」

咲「で、でもお姉ちゃんは闇属性だから、『黒糸台』とか『闇糸台』なら絶対合格してたよ」

まこ「どんなフォローじゃ」

照「それもそうね」

まこ「立ち直りよった。なんじゃこの姉妹」


照「それで、つづきは? 私が白糸台でどんな偉業を成し遂げたの?」

まこ「偉業なんて誰も言うとらんじゃろ」

和「咲さんのお姉さんは、『高校生1万人の頂点』と雑誌に書かれていました」

照「ふ、ふふぅん」

咲(嬉しいんだね、お姉ちゃん)

和「現に、咲さんのお姉さんを中心とする白糸台高校は二連覇していて、今回の大会は三連覇がかかっていました」

照「ふふっ。そして、私の圧倒的魔力によって三連覇を果たし、殿堂入りしたのね……」

和「あ、今年は私達が勝ちました。お姉さん達白糸台は準優勝です」

照「嘘だッ!!!」

咲「お姉ちゃんが言うとシャレになんないから。6月に惨劇が起きちゃいそうだから!」


照「まぁ、いいわ。その宮永照はたぶん3人目だから……」

咲(ごめん、お姉ちゃん。意味がわからない……)

久「…………」

久「いつか訊こうと思ってたことなんだけど、照さんって綾波と長門、どっちを意識してキャラを作っているの?」

照「!!!?」

咲「お姉ちゃんの急所を的確に突くのはやめて下さい!!」

久「この前、照さんが『この学校は、好きですか? 私はとってもとっても好きです。でも、なにもかも、変わらずにはいられないです』って言ってたじゃない? それの元ネタを調べてみたんだけど、あれって――」

咲「あーー!! あーー!! 聞こえない、聞こえない!!」

優希(お姉ちゃんのことになると、咲ちゃん毎回壊れるじょ)

咲「お姉ちゃんはサブカルチャーに影響を受けやすいだけなんですっ!」


照「うぐぅ……」

まこ「その『うぐぅ』も元ネタありそうじゃな」

優希「ネットで調べてみるじょ」

咲「検索禁止です!! 元ネタを探すのやめて下さいっ!!」

咲「お姉ちゃんは割とメジャーな作品から引っ張ってくるから、すぐ見つかっちゃうんです。だから禁止!!」

久「でも、それもなかなか真似できないことよね。有名なものから堂々とパクってくるなんて。常人だとかなり勇気がいるし……。やっぱり照さんって天才だわ」

咲「お姉ちゃんが常人じゃないみたいな言い方やめて下さいっ!」

咲「お姉ちゃん、ここは元ネタを探そうとする悪い人しかいないから近づかない方がいいよ」


まこ「そういえば、今日古文単語の小テストがあるんじゃった。はよ、教室行かな」

優希「あ、小テストといえば、今タコスが食べたい気分だじぇ」

久「ねぇ、ねぇ照さん。本当にその格好で来たの? 学校で着替えたとかじゃなくて?」

咲「優希ちゃんの小ボケを処理する前に次の話にいかないでください」

照「当然、家から……」

久「この自然だらけ風景をバックにゴスロリで歩いてきたんだ。面白……凄いわね」

和「あの、私の話……」

咲「和ちゃん、トークに入っていくならもっと声を張らないと。あと輪から離れすぎ」

和「は、はい。がんばります」


❤【清澄高校 麻雀部部室】


咲「の、和ちゃん? どうして意味もなく鎖骨を触ってくるの?」

のどっち「意味ならありますよ~。そこに綺麗な鎖骨があったからです」

咲「で、出来れば、やめて欲しいな……ね?」

のどっち「出来ないのでやめません」

咲「えぇ……、困る……」


のどっち「これくらい、ただのスキンシップですよ。普通です、普通」

咲「ふ、普通かなぁ……?」

咲(普通なのかな……? 私が過剰反応してるだけ? よくわかんなくなってきたよ)

咲(確かに和ちゃんとは普段からスキンシップが多かったけど……。手を繋いだり、肩を寄せ合ってお風呂に入ったり……)

咲(その時は全然イヤじゃなかった。むしろ和ちゃんといると心がすごい楽だなぁ、って思ってた。でも今回は……なんて言うのかな)

咲(和ちゃんからは性のニュアンスを感じる)

咲(身の危険というか……)

咲(私が自意識過剰なだけなのかな……? だとしたら恥ずかしいなぁ)


のどっち「鎖骨のくぼみって、気持いいですよね~」

咲「私はその……よくないかも」

咲(私の曖昧な態度がよくないのかな? 嫌なことは嫌だってハッキリと伝えないと!)

咲「や、やめて!」

のどっち「……咲さんって鎖骨が性感帯なんですか?」

咲「なに言ってるの!?」


さわさわ……。

咲(お、おかしいな……。私、きちんとやめて、って言ったよね? どうして触るのをやめてくれないんだろう?)

咲(だんだんと自分の気持ちがよくわかんなくなってきたよ。今の気持ちをなんて表現すればいいんだろう。怖い? 怖いとは少し違う気がする……。もっとぴったりの言葉がある気がするよ。……助けて? あ、そうだ“助けて”だ。私の今の気持ちは“助けて”なんだ。あーよかった。なんかスッキリしたよ)

のどっち「咲さん?」

咲「な、なに?」

のどっち「欲求不満なんですか?」

咲「何言ってるの!?」


のどっち「だって、下唇噛んでましたから……」

咲「下唇?」

のどっち「だからなんですね」

咲「どう繋がったの!?」

のどっち「えへへ♪」

咲「ここでアルカイック・スマイル!?」

のどっち「あははははは♪」

咲(た、助けてぇ……)


咲「和ちゃん、やめて……お願い」

のどっち「……はい、わかりました」

さわさわ……。

咲「わかったって言ったのにどうしてやめてくれないの!」

のどっち「ふふっ、わかってますよ~」

咲「制服に手を突っ込んでいる時点でおかしいと思うの。だから――」

のどっち「そうですね~。そこまでして鎖骨だけ? って思いますよね~」

咲「へ?」

のどっち「では、もう少し下に……」

咲「ちょっ、今、ちく……本当に触った!!」


咲「和ちゃん、いい加減に……」

咲(はっ!! 私、和ちゃんに対してなんて酷い言葉をぶつけようとしてるんだろう)

咲(少し好きになれないところが見えたからって、言っていいわけないよ)

咲(そ、そうだ。和ちゃんとのいい思い出を思いだそう)

咲(合宿の時、私のことを心配して一緒にいてくれた。あの日から私達、下の名前で呼び合うようになったんだった。あの時は嬉しかったな……)

咲(麻雀の楽しさを思い出させてくれたのも和ちゃんのおかげだし、学校行くのが楽しくなったのも和ちゃんのおかげだもんね)

咲(私のことを一番考えてくれているのも和ちゃんだ。私のことで気を揉んでくれて……今は鎖骨を揉んでるけど……)

咲(私ばっかり心配をかけて、和ちゃんになにもお返しできてないよ。和ちゃんにはいくら感謝してもしきれないのに……)

咲(この前、神社で『和ちゃんにが毎日笑って過ごせますように。私なんかのために悲しんだりしませんように』ってお願いしたけど……したけれどっ!!!)

咲(神様……、こういうことじゃないです!!)


❤【清澄高校 信用のおけない語り手、のどっち】


よくわかる咲さん講座~☆

今日は咲さんがよく使用する“ツンデレ語”について解説していこうと思います。

トゥディキーワード、どーん☆ “やめて”です。

咲さんの“やめて”は文脈によって意味が異なるんです。

例えば……


のどっち「咲さんの乳首の位置ってこのへんですか?」ツンツン

咲「和ちゃん、そういうの本当にやめて……よね」ドン


私を背後から持ち上げて、ブリッジの要領で床にどーん☆

あの時はすっごく痛かったですけど、後ろから抱きしめられたのでちょっとドキドキでした☆

本当に息の根を止めてやろうか、そんな気迫が感じられるときの“やめて”は本当にやめて欲しいときの“やめて”です。

パターンAですね~。


つづきまして……


のどっち「そのワンピース、私服ですか? かわいいですねっ!!」

咲「うん。お姉ちゃんが私のために作ってくれたの」

のどっち「咲さんって日本一ワンピースが似合うんですね」

咲「もー、やめてよ。日本一は言い過ぎだよー」

のどっち「可愛さなら世界一ですねっ」

咲「だから、やめてったらー」


この“やめて”は“もっと”って意味ですね。

もっと褒めろ、もっとこい、という意味の“やめて”です。

これがパターンBです。


では、今回のケースを見てみましょう。




のどっち「意味ならありますよ~。そこに綺麗な鎖骨があったからです」

咲「で、出来れば、やめて欲しいな……ね?」


はい。パターンBですね。

翻訳すると、

咲「で、出来れば、“もっと”欲しいな……ね?」

と、なります。

赤面しておねだりです。萌えですね。

口で「もっと」って言うくせに、身体では抵抗してるのは、乙女心ですよね? わかります。

まあ、力持ちの咲さんから考えるとないに等しいくらいの抵抗ですけどね。




咲「や、やめて!」

のどっち「……咲さんって鎖骨が性感帯なんですか?」


これも翻訳しますと、

咲「も、もっと!」

となります。

どうも咲さんは鎖骨を触られるのがお気に入りの様子ですね。

紅潮してますし、やっぱり鎖骨が性感帯……。

いいことを知りました。


それにしても、咲さんのツンデレはレベルが高すぎます。

確かに、私はツンデレが大好物だということは初めて学生議会で会ったときに伝えましたけど。

まさか半年間にも及ぶツンツンが、デレるための前フリだったとは。さすがの私も参っちゃってます。

その演出力に感動してしまいました。どこまで私のツボを熟知しているんでしょうか。

そうですよね。高校生活は3年間あるんですから、最初の半年くらいツンツンしていないとツンデレとは言えませんよね。

そんな長期スパンから逆算してツンデレが出来る咲さん……素敵すぎます。



それと咲さんのクセを一つ。

咲さんは欲求不満になると、下唇を軽く噛むという、ただただエロいクセがあるんです。

今回も噛んでました。私を誘惑しているんですね。

最後までいくのは、もはや時間の問題のような気がして幸せすぎます。

よーし、今日は乳首に軽く触れるくらいでいいかな♪



今日はこれまで。
また明日~……                か明後日。

のどっちもう手遅れだな

これは逮捕ですわ


◆【清澄女子高校 教室 和のクラス】


ガヤガヤ

和「…………」

和(お茶を飲みましょう……)

和「…………」

和(休み時間の10分って長いですね……。5分でいいような気がします……)

和「…………」

和(かつて男子が座っていた席に見たことない女子が居て、クラスの半分が知らない人で不思議な感じがします)

和(なんだか転校生になったみたいです……)

和(転校は何度か経験しましたが……、この居心地の悪さには未だ馴れませんね……)

和「…………」

和(もう一度お茶を飲みましょう……)

和「…………」

和(そうだ! 咲さんに会いに行きましょう)

和(休み時間に少しお話しするくらいなら、迷惑じゃないですよね。きっと)


◆【清澄女子高校 教室 咲のクラス】


和「…………」

和(ゆーきと咲さんと……あと、知らない人がたくさん居ますね……)

和(盛り上がってますし、話しかけづらい……)



女生徒B「あははっ! ホント、咲って天然入ってるよね~」

女生徒C「思い出し笑いって……、ありえねー。ははっ」

優希「咲ちゃん、サイコパスだじょ」

咲「思い出し笑いくらいするでしょ、みんなも!!」

女生徒B「ないない」

女生徒C「そういえばさ、この前芸術鑑賞会があったでしょ。その時オペラ歌手の人来てたじゃん。咲の感想がさ――」

――咲『やっぱ、プロの性欲は凄いよねー。キリッ』

女生徒C「って」

優希「性欲って。どこ見てるんだじょ、咲ちゃん」

咲「あ、あれは『声量』と『性欲』を言い間違えただけだよ!」

女生徒B「どうやったら、そう言い間違えるんだよ」

女生徒C「ははっ、確かに、あのオバちゃん性欲凄そうだったけども!」

優希「面白すぎるじょ、咲ちゃん」

咲「それに私、『キリッ』とか言ってないから!!」



和「…………」

和(咲さん、楽しそう……)

和(こっちの世界ではお友達多いんですね)

和(社交的な感じがしましたし、自分の意見をきちんと言葉にしてましたし。お友達が多いのも当然ですね……)


優希「思い出したじぇ。咲ちゃんの天然エピソード」

女生徒B「なになに」

咲「もういいよ!」

優希「染谷先輩が実家の喫茶店からお高いコーヒーを学生議会室に持ってきてくれたんだじょ」

優希「そしたら、咲ちゃんがコーヒーの粉をカップに入れて、お湯を注ぎだして……」

優希「かき混ぜながら咲ちゃんが言った一言が傑作だったじぇ」

――咲『あれ~? 溶けない。なんでだろう?』

優希「いや、それインスタントじゃねーから!」

咲「だ、だって、お父さんがそうやってコーヒーを作ってたんだもん……」

女生徒C「あはははは! バカだ。バカがいる」

優希「その後もさらにかき混ぜ続けて、とどめの一言だったじょ」

――咲『う~ん。高級なコーヒーだから粉はちょっとでよかったのかな。キリッ」

女生徒C「あはははっ! まだ気づいてねーのかよ!」

女生徒B「フツー、スプーンですくった段階で気づくでしょ」

咲「だから、私は『キリッ』とか言ってないよ!!」


優希「咲ちゃんの面白いところは自分のことをしっかり者だと思ってるところだじょ」

女生徒B「天然の人って自分では真逆だと思い込んでるよね」

女生徒C「天然というか、咲の場合バカだけどね」

咲「ぐぬぬ……」

咲「ま、まあ、私はこの中の誰よりも成績いいけどね」

女生徒B「クラスに一人はいるよね。バカだけど成績いい奴」

咲「よーし、殴り合いだ!!」


ぎゃーぎゃー


和「…………」

和(今回は声をかけるのやめておきましょう……)

和(私には面白い話をする話術なんてありませんし、速いテンポにもついていけそうにありませんしね……)

和(それに、ゆーきはともかく他の人は知りませんし……)

和(今話しかけたら、楽しい談笑に水を差すことになりそうですね。今回はやめておきましょう。きっと迷惑でしょうし……)

和(急な用があるわけではないですしね。また今度にしましょう)


トボトボ……

和(この気持ち……覚えがあります)

和(阿知賀女子にいた頃も穏乃に会いにクラスの前までいきましたっけ……)

和(あの時も同じで……、結局話しかけずに自分のクラスに戻りましたね……)

和(穏乃も新しいお友達と楽しそうに話をしていて……、古い友達の私が話しかけたら、きっと微妙な雰囲気になっていたでしょうし……)

和(今回もこれでよかったんですよ)

和(これでいい……)

和「…………」

和(どうしてこんなにモヤモヤした気持ちになるんでしょうか……?)

和「…………」


また、明日。


まってる


◆【清澄女子高校 教室 和のクラス】


和「…………」

和(お茶を飲みましょう……)

和(10分の休み時間の間に、何回ペットボトルの蓋を開けたり閉めたりしているのでしょうか……?)

和(…………)

和「誰か話しかけてこないかな……」ボソッ

照「あ、話しかけてもよかったんだ」

和「ひゃっ!!」


和「ど、どうしてあなたがここにいるんですか!?」

照「異世界人の観察……」

和「人のことを勝手に観察しないで下さい!」

照「自分もしてたくせに……。隣のクラスへ観察」

和(うっ、見られていたんですか……)

照「原村和……、あなた、やっぱり機関のエージェントなのね」

和「は?」

照「異世界からこの世界に偵察に来たエージェントなんでしょう?」

和「そういうオカルト的な話はちょっと……」

照「あなたにお願いがあって来たの……」

和「お願いですか……」

照「実は私、リーディングシュタイナーが使える(ような気がする)の。だから、次に異世界へ移動するときに連れて行って欲しい。きっと戦力になる……」

和「おっしゃってる意味がよくわかりません」


照「こっち世界にはどれくらい滞在する予定なの?」

和「そんな旅行気分で来たわけではないので……」

照(自分が異世界人だということを隠さなくなってきた。いい傾向……)

和(なぜ、今の会話でニヤニヤするのでしょうか?)

照「観察して気づいたことがあるのだけれど……」

和「なんでしょう?」

照「あなた、クラスに友達いないの?」

和「ふぐっ!!」

和「…………い、いますよ。ただ、友達だった人がこっちでは友達でなかっただけで……」

照「そう……」

和「話しかけたら、すごく脅えられてしまいました」

照「それで、聞こえるか聞こえないかのギリギリの声で『誰か話しかけてこないかな……』って独り言……」

和「言わないでくださいっ!」


照「クラスで孤立しているのね」

和「そういうことを言葉にして本人の前で言いますか……」

照「だったら、休み時間ごとに私が来てあげましょうか?」

和「へ?」

照「寂しいんでしょう?」

和「べ、別に寂しくなんかは……ありません……」

照「でも、誰かに話しかけてきて欲しいんでしょう?」

和「うっ……。で、でもご迷惑では……?」

照「迷惑かどうかは私が決めること。私の気持ちを勝手に決めつけないで」

和「す、すみません……。ですけど……」

照「あなたは元いた世界の話をしてくれればいい……。それで私は充分」

和「……な、なら……、お願いします……」

照(仲良くなっておけば、次に世界移動するときに連れて行ってもらえる……。ふふっ、ふふふ)


また、明日。
明日はのどっちのターン。

乙ですよー
面白い

照面白いぞー


❤【清澄高校 麻雀部部室】


のどっち「咲さーーん!! 聞いて下さいよ、聞いて下さいよ、聞いて下さいよ!!」

咲「聞こえてるよ……。一回で充分だから」

のどっち「自分の誕生日を盛り上げるために用意していた小道具が全部、ぜーんぶ消えてしまっているんですぅ! たくさん用意したのにぃ!!」

咲「和ちゃんの誕生日……? あっ! 今日だ」

咲「あぁ……」

のどっち「……? どうしました?」

咲「ご、ごめん。誕生日プレゼント、買うの忘れてた……」

のどっち「えっ!? プレゼント? 私のためにですか!?」

咲「ごめん。最近いろいろあったから……」

のどっち「咲さんって本当、ツンデレですね」

咲「ツ、ツンデレ!?」

のどっち「だって以前、この話をしたときに――」


――咲『は? 誕生日? その日は和ちゃんのご両親が私に謝罪しに来る日でしょ? なんで祝わなきゃいけないのさ』


のどっち「とか言ってたくせにー♪」

咲「言ってないよ、そんなひどいこと……」


のどっち「でも、本当に残念です。どこへいってしまったのでしょうか。マッサージ機……」

咲「マッサージ機?」

のどっち「いろんな使い道があるハンドマッサージ機を咲さんに体験してもらいたかったのですが……」

咲「いろんな使い道って何?」

のどっち「……やっぱり、咲さんも興味ある感じですか? ですよね~」

のどっち「私も使えなかったら本来の使い道である肩こり解消用にすればいいや、と軽い気持ちで購入してみたのですが……意外や意外。これが結構なお手前で――」

咲「やめて! 話広げないで! 嫌な予感がする!」


のどっち「自己プロデュース誕生日会……毎年恒例だったのですが……」

咲(毎年恒例だったんだ……)

のどっち「いろんなグッズを用意したのに……」

咲「残念だったね……」(よかった……)

のどっち「ま、なくなってしまったものは仕方ないですよね」

咲「立ち直り……早いんだね」

のどっち「それで急遽、ゲームを考えたんです」

咲「ゲーム?」

のどっち「名付けて、『のどか様ゲーム』。合い言葉は『のどか様の言うことはぜった~い♪』です。さん、はい♪」

咲「え?」

のどっち「『のどか様の言うことは~?』」

咲「ぜ、ぜったーい?」

のどっち「はい。では、はじめましょうか」


咲「ちょっと! 私、やるなんて一言も言ってないよ」

のどっち「…………」

咲「の、和ちゃん?」

のどっち「誕生日、なのにな……」

のどっち「忘れられていたなんて……悲しいですね」

咲「やる、やるから」

のどっち(チョローい♪ 咲さん本当、チョロデレ)


のどっち「のどか様だ~れだ? はいっ! 私です!」

咲「あの……和ちゃん。ルールがよくわからないんだけど……」

のどっち「のどか様を引いた人がのどか様になれて命令できるだけですよ~」

のどっち「ということで、私がのどか様です」

のどっち「最初ですから、軽いのがいいですね~。そうだ! 咲さんのスカートをミニにする、という命令でいきましょうか」

咲「それは以前に戻せばいいの?」

のどっち「以前? 咲さんって中学生の時はミニだったんですか?」

咲「そんなに前じゃなくて、夏頃の長さに戻せばいいの?」

のどっち「戻す? 私達が出会った頃から、ずっと咲さんのスカートは膝下でしたよ」

咲(あれ? なんだか話がかみ合ってない)


のどっち「そうですね~。最低、膝上5セン……いや、10センチはいかないといけませ……ん……よ?」

咲「これでいい?」

のどっち「……超ミニですね。屈んだら見えちゃいそ……えっ? いいんですか?」

咲「いいもなにも、全国大会の途中までこの長さだったんだけど……」

のどっち「咲さんのサービス精神はストップ高ですね!」

咲「えぇっ……普通だよ、このくらいの短さは……」

のどっち「なんだ、乗り気じゃないような振りして、やる気満々じゃないですか~」

咲「乗り気もやる気もないよ……」


のどっち「のどか様だ~れだ?」

咲(これ、絶対二人でやるゲームじゃないよ……)

咲「あっ、私だっ!」

咲「えっと、じゃあ……。あっ!! のどか様の命令です。このゲームはこれでおしまい」

のどっち「そういうのナシで」

咲(えぇ……)

咲「だって、『のどか様の言うことは絶対』だって……」

のどっち「だって『のどか様』って私のことですし」

咲(理不尽すぎる……)


咲「だったら……『午後の紅茶』を買ってきて欲し……買ってきなさいっ! ……という命令で」

のどっち「午後ティーですか」

咲「ち、ちなみにだけど、学食の前にある自動販売機には売ってないよ。校舎を出てコンビニまでいかないと買えないから」

咲(和ちゃんには悪いけど、コンビニへ行っている間に逃げよう)

のどっち「はい、どうぞ」ドン

咲「……どうして、鞄の中に入っているの?」

のどっち「読み筋です」

咲(よ、読まれてたのか……)


今日はこれまで。

明日明後日は、数ヶ月に一回くらいあるすごく頑張らなきゃいけない日なので、なしで。
日曜に書いて、月曜に投稿の予定。だから、金土日は来てもなにもないと思う。

のどっちも読み筋とかいうのかー


◆【和の部屋】


カチ……カチ……。

和「あ、ツモっりました」

和「これで4連続トップ……。ようやくレートも1900台に乗りましたね」

和「なんだか、長野に来たばかりの頃……中学二年の頃に戻ったみたいです」

和「一人でパソコンに向かって麻雀をして……」

和「あの頃から、なに一つ成長してませんね、私……」

和「阿知賀の時は穏乃と憧が私の手を引いて阿知賀麻雀クラブ連れて行ってくれました。そこでたくさんの人と出会って……思い出もいっぱい……」

和「高遠原の時もゆーきが私の手を取って麻雀部へ連れて行ってくれて……。仲間ができて……みんなでやる麻雀ってやっぱり楽しいなって……思い出させてくれて……」


和「私は誰かが手を差し伸べてくれたから、その手を取っただけで……」

和「自分からはなにもしていなくて……」

和「今回もまた、ずっとそうしているつもりなのでしょうか……」

和「居場所を与えてくれる誰かを……ただ待っているだけ……」

和「…………」

和「このままでいいわけありませんよね」

和「変わらないと……」

和「大切なものはすぐに消えてしまうから……」

和「私にとって大切なものは……」

和「……よし」


◆【清澄女子高校 学生議会室】


久「そろそろ小姑達に文化祭の招待状送らないといけない時期ね。面倒くさいわ……」

まこ「小姑って……。OG会をそう呼んでるってバレたらとんでもないことになるけぇ、やめといた方がええ」

久「去年もそうだったじゃない。ちょっと遅れただけでネチネチネチネチ」

和「あのっ!」

久「ん? どうしたの、和?」

和「私がやっておきましょうか?」

久「えっ? 結構な人数よ?」

和「大丈夫ですよ。やっておきますね」


まこ「あ~、パソコンはようわからん。画像もずれるし、そもそもなんでカタカナ打ちしか出来んようになるんじゃ!」

咲「壊しちゃったんですか?」

まこ「わしはなんもいじっとらん……たぶん」

咲「全員、アナログ派ですもんね。私もパソコンはさっぱり」

和「私が代わりましょうか?」

まこ「いや、和もパソコン出来んじゃろ」

和「ローマ字打ちですか? かな打ちですか?」

まこ「ローマ……いや、今日はかな打ちの気分」

カチッ、カチッ。

咲「えっ……どうして出来るの? 和ちゃんって、ネットとブログの更新ぐらいしか出来ないって言ってなかったけ?」

和「画像はこれでいいですか?」カチッ

まこ「おぉ!!  出来た」

和「よかったら、残りは私が代わりにやっておきましょうか?」

まこ「ええんか!?」


優希「ん~、タコスがないとやる気起きないじょ」

和「ゆーき、タコスを買ってきましたよ」

優希「おぉ、のどちゃん、気が利きすぎるじぇ」

和「この書類も私がやっておきますから、ゆっくりタコスを食べていて下さい」

優希「ほへ?」




咲「……和ちゃん、どうしたんだろう?」

久「16歳になったのを契機にさわやかキャラになろうとしてるとか?」

まこ「それはもう、無理じゃろ」

優希「内面も外見もまっピンクなのは全校生徒が知ってるじぇ」


咲「あの……、和ちゃん? どうしたの?」

和「少し思うところがありまして。少しでもみなさんのお役立って、自分の居場所は自分の手で作っていこうかと」

咲「そ、そうなんだ。が、頑張ってね」

和「はいっ」



久「……これはこれで面白いんだけど、落差が凄すぎない?」

優希「キラキラしてるじぇ」

まこ「わしらの廻りにおらんかったタイプになっとるな」


和「変わってしまってから、やっぱり大切だったと気づいても遅いんですよ」

和「過去は変えれなくても今は守ることができます」

咲「和ちゃん……?」

和「たとえみなさんが少し変わってしまったとはいえ、やっぱり私は咲さんが好きで、ゆーきが好きで、部長が好きで、染谷先輩が好きで……この場所が好きなんです」

咲(変わったのは和ちゃんだけどね。……なんて言える雰囲気じゃないな)

和「私は好きだという気持ちに馴れてしまっていたのかもしれません」

和「以前、咲さんとサン=テグジュペリの『星の王子さま』について話しましたよね?」

咲(話してないよ。そして、読んだことないよ、私!)

和「大切なことは目には見えない……。その意味がわかったような気がします」

和「形や中身が変わってしまっても、私の気持ちまで変える必要なんてないんですよ」

咲「そ、そっかぁ……」



久「メッセージ性が強すぎるわ」

優希「のどちゃん、変な宗教でも作ったのか?」

まこ「入ったじゃのうて、作ったの方がリアリティあるところが末恐ろしいのう」


久「ま、いっか。文化祭も近いし、やることやっときましょうか」

優希「切り替え早いじゃ」

久「じゃあ、和と咲は食品衛生関係の書類記入漏れチェックをやっておいて。はい、これ」

ドサッ

咲「たくさんありますね……」

久「食中毒が出たら大事だからね」

パラ……パラ……

咲「文化祭の模擬店を出すのってこんなに大変なんだね。あ、記入漏れ」

和「そうですね。実際に食品を提供するわけですから」

咲「これを保健所に提出して、昼休みに食品の取り扱い説明会を開いて……ああっ! 面倒くさい!!」

咲「食べるものなくても文化祭は成り立つよね? 来年からこんなクッソめんどいこと廃止にしよう」

和「さ、咲さん! 言葉遣いが少し……」

咲「え? 言葉遣い?」


咲「あ、ここも記入漏れ。なんで提出前にチェックしないんだろうね」

和「そうですね」

咲「ん? 『栗ぃむソーダ』? 何これ、超そそる」

咲「……ふっ、ふふ。ソーダにモンブランぶち込んで提供するの? あはは、バカだ」

咲「別々で提供すればいいじゃん。なにが悲しくてそんなものに500円も払わないといけないのさ」

咲「一体、どこのクラスがこんなバカなことを…………、お姉ちゃんのクラスだ」

咲「しかも、お姉ちゃんが責任者だ……」

和「…………」

咲「そうだね。モンブランもソーダも大好きだもんね、お姉ちゃん……」

咲「おいしいものとおいしいものを掛け合わせたら、超おいしいものになりそうだもんね……うん」

和「…………」

咲「和ちゃん」

和「は、はい!」

咲「今のこと……お姉ちゃんに報告したら怒るから」

和「い、言いませんっ、誰にも!!」

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