【モバマス】智絵里「突撃という言葉に敏感に反応してしまいます……」【ガルパン】 (80)

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CGプロ――



窓「ざーざー……」

加蓮「あーあ……私、雨って嫌いなんだよねー……」

P「分かる、濡れると気が沈むよな」

加蓮「そう! せっかくおしゃれしてるのに、ビショビショになるんだよ?」

P「そうそう! スーツが濡れると、後処理が面倒なんだよなぁ」

加蓮「子供の頃は、あんなに好きだったのに……」

P「年を取ると逆に好きになるらしいぞ?」

加蓮「んー……おばあちゃんはまだ先かな」

P「俺も同じだ。まぁ、年相応を楽しめば良いさ」

加蓮「そうだねー……」

P「……時間だな、車をまわすから、先に下におりてくれ」

加蓮「はーい」

数時間後――
撮影現場――



加蓮「え?! 迎えに来てくれないの?!」

P『悪い、用意していた車のエンジンがイカれてしまったらしいんだ』

P『直るのに、2時間はかかるらしい』

加蓮「そんなに? 美世さんだったら、もっと早く直せるでしょ?」

P『その美世に頼んだ結果が2時間なんだ』

加蓮「あっそれは仕方ないね」

P『ちかたなくてすまない』

P『しかも、うちは今、無駄遣い撲滅週間だろ?』

P『ちひろさんに掛け合ってみたが、近い距離なら電車でお願いします、と釘を刺されてしまった』

加蓮「まぁ、近いしね」

P『近いしな』

加蓮「電車で1本だもん」

P『近いよな』

P『悪いが今日は直帰で良いか?』

加蓮「うん、私は大丈夫」

P『交通費はこっちで申請しておくから』

加蓮「おっ、流石Pさん! 気が利くね♪」

P『おいおい、誉めても何も出ないぞ?』

加蓮「仕事がくるじゃん」

P『枕営業みたいな言い方はやめろォ!』

加蓮「アハハ……それじゃ、また明日~」ピッ

加蓮「……ふぅ」

加蓮「それじゃ、お疲れさまでーす」

スタッフ「あ、お疲れさまですー!」

東京某所――



加蓮(うわぁ……これもう土砂降りじゃん)

天気「どっじゃああああ……!」

加蓮(早く帰って、今日はさっさと寝ちゃおっと)トコトコ

加蓮(湿気でウィッグがゴワゴワになる前に……!)キリッ

加蓮(……)トコトコ

加蓮(仕事が重なってるから、しばらく学園艦には戻れないなぁ)

加蓮(でも、練習メニューは河嶋先輩に渡してあるし、次の合同合宿の打ち合わせの準備は済ませてあるし……)

加蓮(皆もだいぶしっかりしてきたから、特に問題はないよね)

加蓮(特に華さんの運営能力が格段に上がってきていて……)

加蓮(もしかしたら、次の生徒会長になったり……なんてして)フフ

加蓮(あ、もう女子寮に着いた)

加蓮(近いなぁ)

加蓮(……あれ?)

加蓮(女子寮の前に、誰かいる……)

加蓮(なんか、戦時中の日本軍みたいな格好だけど……女の子みたい……)

??(……)ザーザー

加蓮(……って、ちょっと!? あの子、びしょ濡れじゃない?!)

??(……)ザーザー

加蓮(うっ……どうしよう……身元不明のびしょ濡れの女の子……助けるべきか、見過ごすべきか……)

加蓮(土砂降り……)









みほ『川に転落!?』

通信手『はい! 崖に落ちて、そのまま増水した河川に……!』

みほ『っ……!』ガチャッ

通信手『あ! 副隊長?!』

砲手『副隊長?!』









加蓮(っ……!)ギュ

加蓮(私は……私は……!)









みほ『これで……全員……!』バシャバシャ

操縦手『けほっ……けほっ……!』

通信手『怖かったよぉ……!』

砲手『よしよし……』

装填手『……』ボーゼン

小梅『みほさん……ありがとうございます……!』ギュ

みほ『大丈夫……もう大丈夫だから……!』ギュ

小梅『ありがとう……本当に、ありがとう……!』グスッ

みほ『……』ギュゥ...









加蓮(助けたいって気持ちから、逃げたくない……!)キッ

??(……)

加蓮「ねえ、ずぶ濡れだよ?」

??「!?」ビクッ

加蓮「風邪引いたら大変でしょ?」

??「うぅ……」クルリ...









福田「……」グスッ

加蓮(えぇ?!)

福田「で、でも……」

加蓮「あなた……福田ちゃんじゃない?」

福田「ふぇ?!」ビクッ

加蓮「知波単学園戦車道の子だよね? 戦車道雑誌にのってたよ(嘘は言ってない)」

福田「はい……」

加蓮「おいで、お風呂くらいはいれてあげるから」

福田「でもここは、不審者が入れる場所じゃ……」

加蓮「……え? よく知ってるね?」

福田「!!!!」ギクッ

福田「し……失礼します!!」ダッ

加蓮「待って!!」ガシィッ

福田「ひっ?!」

福田(は、速い!?)

加蓮「びしょ濡れのままってわけにはいかないよ」ザーザー

福田「あ……あなたまでびしょ濡れにならなくても……」

加蓮「……ホント、おかげで2人で暖まる必要があるね?」

福田「あ……」

加蓮「大丈夫、私に任せて?」

福田「……はい……」

女子寮玄関――



加蓮「ただいまー」ビッショリ

福田「……」ビッショリ

凛「……え! どうしたの加蓮、びしょ濡れじゃない!」

奈緒「あれ?! その子ってまさか、知波単学園の福田ちゃんじゃね?!」

凛「加蓮……悪いけど、ここは事前連絡無しじゃ部外者は入れないんだよ?」

奈緒「おいおい、怒られるぞ?」

加蓮「……」スゥ









加蓮「こいつを風呂にいれてやりたいんですがかまいませんね!!」









凛「……」つ鍵

加蓮「ありがとう♪」

奈緒((アイドルの方の)荒木先生から借りたジョジョ読んでますわコレ)

加蓮「持つべきものはシンデレラガールの友達だよねぇ」

凛「そのまま泊まっても構わないから」

加蓮「ありがとう、今度勉強教えてあげるねー」

加蓮「さ、行こ?」スタスタ

福田「あ……はい……」トコトコ

凛「ゆっくりしてね」フリフリ

奈緒「なあ凛、さっきの鍵ってもしかして……」

凛「シンデレラガールだけが使える、最上階の部屋の鍵」

奈緒「ここって、元はホテルなんだろ? スイートルーム使い放題とか、羨ましいなー」

凛「部外者は立ち入り禁止だけどね」

奈緒「……ところで、凛は5部読み終わったのか?」

凛「今6部読んでるところ」

奈緒「最低3回は読めよ? 理解不能を連呼するのはそれからだ」

凛「? 分かった……」

女子寮最上階――
シンデレラガールーム――しぶりんの間――



加蓮「お邪魔しまーす」ガチャリ

福田(ここが、あの噂の……)

加蓮「着いてきて、こっちがお風呂だから」

福田「な、慣れているでありますね?」

加蓮「よくTPでお泊まり会してるから」

福田「そうでありますか……」

脱衣所――



加蓮「あっちゃ~……服が張り付いて気持ち悪いね」クスクス

福田「うぅ……不肖福田、知らない方にほいほい着いていってしまったであります……」

加蓮「私は取って食わないから、安心して?」

福田「そこは信用しているでありますが……」

加蓮「……それじゃ、知り合いなら良いよね?」

福田「え?」

加蓮「珍しいこともあるよね」ウィッグハズシテ

加蓮?「世界はこんなに広いのに……」メイクオトシテ









みほ「こうして偶然出会うなんて」

福田「お、大洗の西住殿?!?!?!?!」

みほ「私、ここでアイドル活動しているんです」

福田「全然気付かなかったであります……!」

みほ「どうですか? 私とならお風呂に入れますよね?」

福田「は! 西住殿とあれば、何も問題ないであります!」バッ

みほ「それじゃ入ろ? これ以上は風邪引いちゃうよ」クスクス

福田「はいであります!」

浴室――



かぽーん

福田「ふぅ……」

みほ「しっかり暖まってね?」

福田「ありがとうございます、西住殿」

福田「実は身支度もせず、路頭に迷っていたであります……」

みほ「うん、何となく想像ついてた……」

福田「……」チャプ

みほ「福田さんが良ければ、相談に乗りますよ?」

福田「でも……」

みほ「一緒に戦った仲間じゃないですか」

福田「西住殿……」

福田「うぅ……」ジワ...

福田「うわあぁぁ……」ビエーン

みほ「よしよし」ナデナデ

福田「助けてください……西住殿ぉ……!」エグエグ

みほ「うん」

みほ「その前に……泣けるだけ泣いちゃいましょう」

福田「ひっぐ……うぅぅ……ぐすっ」グスグス

みほ「……」ナデナデ

お風呂上がり――



みほ「んっ……んっ……」

福田「んぐ……こく……」









2人「「ぷはー!!」」

福田「やはりお風呂上がりの牛乳は最高であります!」

みほ「どう?」

福田「はい! 落ち着いたであります!」

みほ「良かった」ニコリ

みほ「着替えは用意しましたので、どうぞ」

福田「こ、こんなにしていただけるなんて……!」

みほ「その代わり、風邪引かないでくださいね?」

福田「は! 福田、風邪を引かないであります!」

みほ「あはは……」

みほ「サイズはどうですか?」

福田「ピッタリであります!」

みほ「ふふ、良かった」

福田「でもこれ……どうやって用意したでありますか?」

福田「福田、かなり背が、その……あれなので、丈が合うことは滅多に無いでありますが……」

みほ「背丈のほぼ同じ子(双葉杏)がいるから、その子から(きらりを経由して)借りました」

福田「なるほどであります!」

みほ「濡れた服は(きらりにお願いして)乾かしてもらっているので、それまではこの部屋でゆっくりしてください」

福田「お世話になりっぱなしで、申し訳無いであります……」

みほ「私がしたいだけだから、あまり気にしないでください」

みほ「福田さん、言いにくいことだとは思うけれど……」

みほ「どうして雨の中、ずぶ濡れでさ迷っていたんですか?」

福田「はい……」

福田「福田は……福田はもう、自分が何なのか、分からなくなったであります……」

みほ「自分が……?」

福田「誰にも言えない秘密を抱え過ぎて……嘘で周りを騙し続けて……自分でも制御出来なくなって……」

みほ「それは大変だったね……」

福田「だから、ここで秘密を洗いざらい明かしたいであります」

みほ「私で良いの?」

福田「あなたじゃなきゃ駄目であります!!」

福田「だって……」

福田「私も……CGプロのアイドルだから……」

みほ「へぇー、そうなんですか……」









みほ「えぇ?! そうなんですか!?」

みほ「え、誰!? 誰だろ?!」

福田「……変装用具だけは、持ってきているであります」

福田「おかしな話であります……皆を騙している罪悪感で飛び出したのに、皆を騙す道具はしっかり用意しているなんて……」ガサゴソ

みほ「ううん……その気持ちは凄く分かるよ」

みほ「確かに、変装中のもう1人の自分は、皆にとっては嘘かも知れません」

みほ「でも、自分にとっては、大事な人間ですから」

福田「……この気持ちを理解してもらえたのは、あなたが初めてであります」

福田「だからこそ、この秘密を知ってもらいたいと思うであります……」

福田「髪は束ねて、頭の上へ持っていくであります」ヨジヨジ

福田?「これは、かつらをかぶった時、黒髪が見えないようにするためであります」ファサッ

みほ「あれ?! 急に見覚えるのある顔になったちゃった……!?」

福田?「眼鏡を外し……コンタクトレンズをつけさせてもらうであります」ヨイショ

福田?「あとは、知波単魂を調整して……」アーアー

みほ(あ、やっぱり必要なんだソレ……)

??「出来ました」









智絵里「こ、こんばんは……緒方智絵里です」

みほ「嘘……まさか福田さんが、智絵里さんだったなんて……」

智絵里「ずっと騙していて、ごめんなさい……」

みほ「あ、いえ……それは私もなので」

智絵里「そう……私はずっと、皆を騙してきました」

智絵里「知波単の皆を……CGプロの皆を……そして自分さえも……」

みほ「……」

みほ「全部聞かせてください」

みほ「私なら、もう覚悟していますから」

智絵里「みほさん……ありがとうございます……」

智絵里「事の発端は、弱気な自分を変えたいと思ったことです」

智絵里「それまでの私は、黒髪のお下げに眼鏡をかけた、弱々しい性格をしていました」

みほ「それって、福田さんの姿をした智絵里さん、ということですか?」

智絵里「はい、まさにそんな感じです」

智絵里「そこで私は、強い女の子になれる高校に入ろうと思い、高校試験を経て、入学しました」

みほ「それが、知波単学園……!」

智絵里「これが知波単での自分――福田智絵里の誕生です」









みほ「あ、智絵里は本名なんですね」

智絵里「はい、福田智絵里が本名です」

智絵里「私の目論見は、半分当たりました」

智絵里「知波単魂を学び、軍人のような生活(※ドラマCD参照)を経て、入学前よりもずっとずっと、世間を生き抜いていける強さを手に入れました」

みほ「でも、残りの半分は……?」

智絵里「……それまでの自分の生活と違いすぎて、馴染めなかったんです」

智絵里「でも、そこで逃げ出すのも悔しかったので……」

智絵里「『知波単の福田』として……もう1人の自分がいるものとして、その子に全部任せていました」

智絵里「ここで私は、性格を騙していることに、罪悪感を抱えるようになったんです」

智絵里「Pさんにスカウトされたのは、その頃でした」

智絵里「見た目じゃなくて、素の自分を見てもらえたのが、その時は本当に嬉しくて……」

みほ「うん、それは嬉しいですよね」

智絵里「知波単で性格を偽っていた分、アイドルではそのままの自分を見せられるんだって、思っていたんですけど……」

智絵里「私、自分の姿にはコンプレックスがあって……」

みほ「そうですか? 可愛いと思いますけど……」

智絵里「可愛いのは良いんですけど……もっと大人として扱われたかったから……」

智絵里「私、見た通り……小s――小柄なので、もっと大きくなりたかったんです」

みほ「それで、変装することにしたんですね」

智絵里「はい」

智絵里「スタイリストの人と何度も相談して、
……」

智絵里「その結果、この『緒方智絵里』が出来ました」

智絵里「弱気な性格でしたけど、なりたかった自分になれて、毎日が凄く楽しかったです」

みほ「うん、その気持ち、凄く分かる」

智絵里「ただ……今度は見た目を騙していることに、罪悪感を抱えるようになってしまいました」

みほ「そっか……」

みほ「ちなみに『緒方』を選んだ理由は……?」

智絵里「響きがお洒落だからです!」

みほ「あっ……意外と普通の理由……」

智絵里「そして、両親がケンカするようになったのは、この頃からです」

みほ「それは……辛いですね」

智絵里「強い女の子『知波単福田』派の母と、可愛い女の子『緒方智絵里』派の父の間で、子育ての方向性が分かれちゃったらしくて……」

智絵里「でも私にとって、その2つはどちらも嘘なので……自分は、両親すら騙しているんだって思うようになりました……」

みほ「……」

智絵里「でも、ここで、私が限界に達してしまいました……」

智絵里「『突撃は駄目だった』、『突撃は良かった』……」

智絵里「それを考えているうちに、物事の正否がグチャグチャになるのを感じたんです……」

智絵里「それと同時に、自分のしている偽りが、ひどく醜く思えてきて……!」

智絵里「知波単の皆を騙している自分……事務所の皆を騙している自分……両親を騙している自分……!」

智絵里「立ち向かっているんじゃなくて、逃げていただけの自分……そのせいで皆を騙している自分……!」

みほ「……」ギュ

智絵里「自分の全てが曖昧で、全てが醜くて……意味がわからなくなって……」グスッ

智絵里「気付いた時には……泣き叫びながら、学園艦を飛び出していました……」ポロポロ

みほ「そっか……」

みほ「辛いことを思い出させて、ごめんなさい……」

智絵里「ううん……秘密を明かすって、私が決めたことだから……」

みほ「智絵里さんの陥った症状……聞いたことがあります」

みほ「キャラ作りによって、人を騙している事に罪悪感を覚える『アイドル嫌悪感』に『戦車道鬱』が併発したみたいですね」

智絵里「戦車道鬱……?」

みほ「そもそも戦車道は、スポーツというよりも道なんです」

みほ「自分の人生を反映させることで、自分らしさと戦車を一体にし、心技体全てを向上させる……」

みほ「戦車道が道を強調しているのは、これが根底にあるからです」

みほ「そんな戦車道にとっての最大の弱点は、その道がぶれることです」

みほ「特に知波単の皆さんは『知波単魂』という強固な道がありましたから……」

みほ「もしそれの存在が揺らいだとき、戦車道鬱を発症する子が多発するんじゃないかな……とは思っていました」

みほ「幸い、西さんは求心力の高い隊長へ育っているのが分かったので、特に問題はないと考えていましたけど……」

みほ「『アイドル嫌悪感』も持ってた福田さんが発症したのは、仕方ないことだと思います」

智絵里「みほさん……」

智絵里「でも、こんなことになっちゃったのは、私の弱さが原因で……」

みほ「それは違います!!」

智絵里「えっ?」

みほ「智絵里さんは、逃げてなんかいません」

みほ「だって……逃げていないから、辛いと思っているんじゃないですか?」

智絵里「……ぁ……」

みほ「弱気な智絵里さんが、どうしてアイドルを続けてこられたか、分かりませんか?」

みほ「それは、福田さんが学んだ『知波単魂』を活かしているからじゃないですか!」

智絵里「知波単……魂……」

みほ「初めて会った時から智絵里さんは、弱気な割には正面からぶつかっていく、凄くタフな子だと思っていました」

みほ「……あ、今のは加蓮さんの意見です」

智絵里「そう、かな……?」

みほ「『知波単の福田』さんに投げて自分は逃げたと言いましたよね?」

みほ「本当に逃げたなら、こうして芸能界に立ち向かっていけましたか?」

みほ「私は……智絵里さんは、ずっと立ち向かい続けていたと思います!」

みほ「でも、そのままでは大変だから、『知波単の福田』さんを呼んで、彼女と一緒に成長していったんじゃないですか?」

みほ「私はそれを『逃げた』とは思いません」

智絵里「みほさん……」

みほ「『緒方智絵里』さんも同じです」

みほ「自分がなりたい姿があって、それが楽しくて、皆にも愛されて……」

みほ「芸能界って言うくらいなんですから、そうあるべきだと思うし、智絵里さんはそれを成し遂げています」

みほ「それに、ステージに立つあなたの姿は、本当に素敵です」

智絵里「す、素敵……///」

みほ「折角です! この際、どちらもものにしちゃいましょう!」

智絵里「えぇ?!」

みほ「元気一杯でタフな福田さんも、優しくて可愛い緒方さんも、智絵里さんの素敵な一面です」

みほ「そのどちらもマスターしたら、智絵里さんは完璧じゃないですか!」

智絵里「そ、それは、そうかも知れないけど……」

智絵里「でも、相容れない2つを、ものにするなんて……」

みほ「できます!」

みほ「だって『永遠の17歳』をものにしている人だっているんですよ?」

みほ「時の流れに逆らえるなら、正反対のキャラをマスターするくらい簡単です!」

智絵里「そう……なのかな……?」

みほ「あとは……『メドローア』とか……」

智絵里「私、自信が出てきました!」

みほ「そっちで自信が出たんだ……」

智絵里「でも、本当に頑張れるのかな……?」

智絵里「今までだって、ずっと頑張ってきているのに……」

みほ「……智絵里さんは真面目だから、頑張ること以外知らないのかも知れませんね……」

みほ「それじゃ、私の質問に答えてくれますか?」

智絵里「あ……はい」

みほ「簡単な質問ですし、たった1つしかありません」









みほ「戦車道とアイドル……好きですか?」

智絵里「……!」

智絵里「それは、どっちも最初は大変でしたけど……」

智絵里「でも、みんなに助けられて、それでどんどん覚えていって……」

智絵里「あのでも、辛くなかったってわけではないんです。時には何度も辞めようと思ったことはありましたから……」

智絵里「でも、実際に辞めようとか、それとは違って――」

みほ「智絵里さん! 長い! 長いです!」アセアセ

智絵里「あ、ご、ゴメンなさい……!」

みほ「一言でお願いします! 戦車道とアイドル、好きですか?!」

智絵里「え、その、えっと……」









智絵里「好き、好きです! 大好きです!」

みほ「……それだけで十分なんです」

みほ「私も、アイドルを辞めたいって思ったこと、何度もありますよ」

智絵里「みほさんでも、ですか?」

みほ「戦車道なんて、一時は見たくもないと思っていましたから」アハハ

智絵里(わ……笑えない……!)ゴクリ

みほ「……好きだから頑張る、好きだから頑張れる……」

みほ「そんな単純なことで、良いじゃないですか」

みほ「もし頑張れなかったり、嫌いになりそうな時は、私に相談してください」

みほ「ズル休みでもして、一緒にどこか出掛けましょう」

みほ「そうして元気が出たら、その時にまた頑張れば良いんです」

智絵里「みほさん……」グスッ









みほ「オススメはボコランドですね」

智絵里「えっ」

みほ「ボコはいいぞ」

智絵里「アッハイ」

後日――
知波単学園艦――甲板――



みほ「あれから、ご両親と話しましたか?」

智絵里「はい」

智絵里「『戦車道もアイドルも、どっちの私も見て』って言えました」

智絵里「そうしたら『やっぱり智絵里は何をしてても可愛いね』って言われて……///」

みほ「良かった、それじゃ夫婦喧嘩は終わったんですね?」

智絵里「はい、それはもう、嘘のように……」

みほ「それはそうですよ、なんたって家族なんですから」

みほ「そう……家族ですから……」

智絵里「はいっ」

みほ「アイドル活動はどうですか? やっていけそうですか?」

智絵里「はい。たくさん泣いたから、スッキリしました」

智絵里「今は、やってみたいお仕事がたくさんあって、むしろそれで悩んでいます」

みほ「うんうん、こっちも大丈夫みたいだね」

みほ「……ずっと気になっていたことを、聞いていいですか?」

智絵里「えっと、何でしょうか?」

みほ「福田さんって、凄く小柄ですよね?」

智絵里「あー……はい、そうです、けど……」

みほ「小さいですよね?」

智絵里「あの、あんまり小さいとか言わないでください」ムッ

智絵里「私、身長はコンプレックスなんです」プンスカ

みほ「あ、その、ゴメンなさい……でも聞かせてください」

みほ「福田さんって身長いくつですか?」

智絵里「……」

智絵里「135……」ボソッ

みほ「智絵里さんって、公式プロフィールでは身長156って書いてありますけど……」

みほ「20センチもの差を、どうやって埋めたんですか?」

智絵里「……」

智絵里「靴底の厚いヒールを履いて……」

みほ「それでも10センチが限界なんです」

智絵里「……」

智絵里「……詐称しました……」

みほ「……」

みほ「あっ! 本当に足りないんですか?!」

智絵里「156になりたかったから……」

みほ「上げ底と詐称のコンボでプラス20センチを!?」

智絵里「……アイドルの時くらい……大きくなりたくて……」

みほ「あー……でも、納得しました!」

みほ「智絵里さんのファンがいつも『ちえりん本当に156あるの? 俺には天使にしか見えないんだけど』って言ってますけど……」

みほ「ファンの目は節穴じゃなかったんですね!」

みほ「はい、節穴アイなんかじゃありません……」

智絵里「それに、調子が良ければ……アイドルオーラで、こう……ぶわっと大きく見せて……」

みほ「さすが大天使チエリエル」

みほ「ちなみに、バストはやっぱり……?」

智絵里「豊胸ブラで」

みほ「ウェストは……?」

智絵里「さすがにそれは……」

みほ「じゃあヒップは……?」

智絵里「もう! バスト以外はいじってません!」プンスカ

みほ「ご、ゴメンなさい」タハハ...









みほ(智絵里さんは135の超安産体形……!)ゴクリ

みほ「……そろそろ来る頃ですね」

智絵里「それでは、私はここで……」

みほ「いつでもメールしてくださいね?」ニッコリ

智絵里「はいっ」ニッコリ

智絵里「それじゃ、また今度」テクテク









みほ「『また今度』……うん、そうだよね」

みほ(私たちは、ここでさよならじゃ無いよね!)

しばらくして――



西「お待たせしました、西住殿!」ビシッ

みほ「こんにちは」ペコリ

西「今度の合同合宿の件について、本来ならば我々が伺うべきところを、申し訳ありません!」

みほ「いえいえ、ちょうど近くだったので」

みほ「むしろ、予定を変更させてしまって、ゴメンなさい」ペコリ

西「私たちは構いません」

西「やはり学園艦間は距離があるので、近くにいる者が訪れた方が、何かと都合がつきますし……」

みほ「ですよね」

みほ「それに……今日は皆さんに、紹介したい人がいますから」

西「紹介したい人……でありますか?」

みほ「おーい! おいでー!」









福田「……ふ、福田! 僭越ながら帰ってきたであります!」ビシッ





西「ふ、福田……!」










知波単ズ「「福田ァ!!!!!!!!」」ズラァ!





福田「ひゃあ?!」

みほ「ビックリした!!」

知波単生「福田ァ! 何故会議中に飛び出した!」ズラズラ

知波単生「敵前逃亡だぞ福田ァ!」ズラズラ

知波単生「分かっているのか福田ァ!」ズラズラ

福田「う、その……!」

西「……福田」ヌッ...

福田「た、たた、隊長……!」ヘナヘナ

西「会議中の突然の脱走、数日にわたる失踪……」

西「戦車道だけでなく、艦全体に衝撃を与えることとなった……」

福田「……か、覚悟はできているでありますぅ……!」ガクブル

西「……」










西「よく戻ってきてくれた……!」ギュ

福田「はひぃ?!」

知波単生「隊長! 我々にも抱擁させてください!」ギュー

知波単生「全員心配したんだぞ福田ァ!」ギュー

知波単生「いつでも相談しろと言っていただろ福田ァ!」ギュー

知波単生「福田ァ! 抱き締めずにはいられない!」ギュー

福田「ぐ、ぐるじぃ……!」タップタップ









みほ「ふふ……良かったね、福田さん」ニコリ

みほ(ジョジョ読んでる子がいる……)

西「あの日、突然泣き叫ぶものだから、全員心配したんだぞ?」

知波単生「自分は、福田は気が狂ってしまったのだと思いました!」

知波単生「自分は、あれが福田の最後の姿になると思いました!」

知波単生「自分は、すぐに福田のあとを追いました!」

知波単生「しかし、当時の調査で我々は……何の成果も!! 得られませんでした!!」

みほ(あの子、進撃の巨人読んでる……!)

知波単生「そんなに私の提案した突撃が嫌だったのか福田ァ!」

知波単生「福田専用の突撃も考えたんだぞ福田ァ!」

福田「えっ何でありますかそれは(真顔)」

みほ(福田さんですら引いてる――!!)

知波単生「我々自慢の可愛い福田が、白旗を持って離反を宣告、その隙をついて全員で旗車両に突撃する作戦だ!」ホラッ

みほ(しかも騙し討ち――!?)

福田「……」ジー

福田「……これでは、ダメであります」

知波単生「ど、どうしてだ!?」

知波単生「完璧な作戦ではないか!」

福田「だって……だってこれでは……」









福田「自分だけ優遇され過ぎであります」

福田「これを通すなら、皆さんの突撃も用意するべきであります!」





知波単ズ「「福田ェ……!!」」

みほ(コレどうやって発音したの――!?)

知波単生「よし! これから全員分の突撃を考案するぞ!」

知波単生「空き教室に突撃だ!」

西「あの、これから西住殿との打ち合わせが……」

知波単生「福田を先頭に、全員続けー!」

西「あのーみなさーん?」

知波単ズ「「うおぉおぉぉー!!」」ドドドドド









西「……」ポツン

みほ「……」

西「……」

みほ「……」





西「……」テヘッ

みほ「……教育ですかね?」

西「まあ、それは追々やるとして……」

みほ(このやりとり……間違いない……アンツィオもやってる……!)

西「西住殿が、福田を連れてきてくれたのですね?」

みほ「はい、偶然出会いまして……」

西「以前にも増して、良い目付きになっていました……素晴らしい師に出会ったのでしょう」

みほ「西さんも、素敵な師になると思います」

西「恐縮であります!」ビッ

みほ「それにしても、福田さんってあんなに愛されていたんですね」フフ

西「はい、我々の自慢です」









西「皆、何故か福田のことが、天使に思えて仕方ないのであります」

みほ(あれー?!)

西「最近隊員の中から、緒方智絵里という愛弗(あいどる)と瓜二つとの報告を受け、いっそう福田崇拝が進んでいます」

みほ(あっれー?!?!)

西「……す、すみません西住殿……早く私も、福田のそばにいないと……!」フルフル

西「何日も離れていたせいで、これ以上は……体が……!」ブルブル

みほ(チエリン(ミホニウム的なアレ)中毒だコレ!!!!!!!!)

みほ(この後すぐ、西さんは福田さんのそばへ駆けつけ、事なきを得ました)

みほ(福田さんが皆から愛されていると知って、私はホッと一安心)

みほ(しかし、アイドルオーラが漏れていることは厳重注意しておきました)

みほ(ちょっとしたトラブルはありましたが、これで福田さんの抱えていた問題は、じきに解消されるでしょう)









みほ(ちなみに――)

みほ(チエリン中毒となった知波単の皆さんは、麻子さんによる『ちょっと熱っぽいから助けに来てくれない?』的な歌を聞いて回復したらしいです)

みほ(……どういう意味でしょうか?)

後日――
聖グロリアーナ学園艦――



アッサム「最近知波単で、学内アイドルが流行っているようですね」

ダージリン「アイドル……って、え? あのアイドルのこと?」

アッサム「それ以外にどんなアイドルがありまして?」

オレンジペコ「ダージリン様、落ち着いてください。耳を疑う気持ちは分かりますが」

ダージリン「私、アイドルに関してはさっぱりだわ。誰か詳しい人はいるかしら?」

アッサム「申し訳ありませんが……」フルフル

オレンジペコ「戦車のアイドリングぐらいしか……」フルフル

??「……え、その……わたくしも知りませんですわ!」

ダージリン「そう……あなたが最後の砦でしたのに……」









ローズヒップ「うちは大家族なので、テレビのチャンネル争いはいつも戦争ですの!」オホホホ...





続く?

前回『書き溜めがある』と言いましたが、

智絵里回は少々思うところがあったので、

書き終えていたのを捨てて、新たに書いてました



以上です、ありがとうございました

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