メグミ「まぁ、今は隊長の方が大切だから、これくらいで許してあげるわ」

メグミ「二度と共同冷蔵庫にあるものを勝手に食べないように」

ルミ「あい……」ｸﾞｯﾀﾘ

アズミ「話を戻すけど、隊長は一体何を気にしてらっしゃるのかしらね？」

メグミ「そうね……そういえば、最近『みほさん』って呟くことも多いわね」

アズミ「みほ？　それって、あの大洗の隊長のこと？」

メグミ「そうね」

ルミ「私たちが負けたあの？」

メグミ「そうよ」

ルミ「あの西住流の？」

メグミ「ええ」

ルミ「メグミの戦車を海賊船で吹き飛ばしたあの子の妹？」

メグミ「だから、そうよ、って」

ルミ「ところで、陸上で戦車に乗りながら船と事故るって、ねぇどんな気持ち？」

メグミ「……筋肉バスターよ」

ルミ「え？」

メグミ「次、あなたが私を怒らせたときに掛ける予定の技」

メグミ「大学の正面で、公衆の面前で、『私は処女です』って書いた紙をあなたの股に貼り付けて」

メグミ「筋肉バスターかましてあげるわ」

ルミ「……ごめんなさい」

アズミ「ルミ、あんた馬鹿でしょ」

アズミ「それで、隊長がよくその大洗の隊長さんの名前を呟いてるって話だけど」

メグミ「ええ、そうね。もしかしたら、あの子のことが恋しいのかも」

ルミ「ボコだっけ？　隊長の好きなクマのやつ。あの子も好きだって言ってたわね」

メグミ「そうそう。私たちじゃいまいち話し相手になれないから」

ルミ「その『みほさん』なら話せると」

メグミ「そういうことね。同じ趣味なら話も弾むでしょう」

アズミ「あ、そういえば」

メグミ「どうしたの？」

アズミ「ちょっと前に隊長から相談受けたのよ」

メグミ「相談？　何について？」

アズミ「確か、ある人と距離を縮めたいんだけどどうすればいいのか、って」

ルミ「距離を縮める」

アズミ「ええ。ちょっと遠くにいるんだけど、今より仲良くなりたいんだって」

メグミ「それで、どうしたの？」

アズミ「えーっと、確か……」

～回想～

アズミ「仲良く、ですか？」

アリス「うん。でも、具体的にどうすれば良いか分からなくて……」

アズミ「そうですね。とりあえず、連絡取り合ってみたらどうですか？」

アリス「連絡を？」

アズミ「人って何度も接することで、相手に対する理解が深まって親密になったりするらしいですよ」

アズミ「会社や学校では席が近いほど恋愛感情も生まれやすいとか」

アリス「恋愛感情……」

アズミ「心理学では単純接触効果って言ったりするようですが」

アリス「へぇ、知らなかった」

アリス「あ、でも電話番号もメールも知らない……」

アズミ「そうなんですか？」

アリス「どうしよう……」

アズミ「うーん、電話番号もメールも知らない仲となると、ちょっと難問ですね」

アズミ「住所とかもご存知ないんですか？」

アリス「あ、それなら家に行ってきたから知ってる」

アズミ「でしたら、手紙とかはどうでしょう」

アリス「手紙？」

アズミ「電話やメールほど気軽じゃないかもしれませんが、それだけ気持ちは伝わりやすいでしょうし」

アズミ「それに手紙で電話番号やメールを教えて貰えばより親密になれますよ」

アリス「なるほど」

アズミ「あと相手から情報を教えてもらうときは、まず自分から教えた方がいいですよ」

アリス「なぜ？」

アズミ「自己開示といって、自分から情報を渡すことによって親密感が増すんです」

アズミ「これには返報性って特徴もあって、自己開示された相手は同じだけ自己開示しようって気持ちが生まれるんですよ」

アズミ「そうすることで二人の距離が縮むんですね」

アリス「なるほど。アズミは心理学に詳しい」

アズミ「それほどでもありませんが」

アズミ「まぁ相手の心理を知ることも戦いにとっては重要ですから」

アリス「もっといろいろ教えて欲しいな」

アズミ「もっと、ですか」

アズミ「じゃ、じゃあ、私の部屋で役に立ちそうなところだけお教えしましょうか？」

アリス「うん！　お願い」

アズミ「って感じだったわ」

ルミ「なるほど。で、どんな感じだったの？」

アズミ「どんな？」

ルミ「隊長よ。お勉強会みたいなことしてたんでしょ？」

アズミ「お勉強会って、ちょっと部屋でお話しただけよ」

アズミ「……まぁ部屋出たあと鼻血止まらなかったけど」

ルミ「はい、アウトォ！」

アズミ「え、え？」

ルミ「大人しくお縄につきなさい。このロリコンボインが」

ルミ「隊長不可侵はこの世の真理。絶対よ。これを破れば世界大戦が巻き起こるわ」

アズミ「ちょっ、待った待った！　違うわよ？　別にやらしいことはしてないから」

ルミ「じゃあ何で鼻血が出るのよ」

アズミ「いや、隊長があまりにも可愛かったから……」

ルミ「可愛いってだけで鼻血は出ないでしょ、普通。興奮してるでしょ、完全に」

アズミ「……まぁ、確かにあの太ももは柔らかくて興奮したけど」

ルミ「柔らかい？　なぜそこで感触が出てくるんでしょうね？」

アズミ「はっ！　いやそれは、柔らかそう、って言おうと……」

ルミ「裁判長。判決を」

メグミ「」

アズミ「さ、裁判長、お慈悲を……」

メグミ「」ﾆｺｯ

アズミ「はぁ、あ、ありがと――」

メグミ「ギルティ。卍固めの刑に処す」

アズミ「ちょっと待って裁判長ぉ！　弁論の機会を！　あ、いっだだだだだ！」

ルミ「……さらばアズミ。安らかに眠れ」