[ラブライブ SS]海未「あの頃から何年」 (52)

書き溜めを吐き出したくなったので。


駄文すいません。
あとキャラの喋り方とか違和感あったらごめんなさい。
脳内で補完お願いします。

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1474824095

ー1ー

桜が舞った、並木道。
私はそこに立ち尽くしていた。
都会の賑やかさの中で、私はそこで目を閉じ、静かに息を吐く。

思い出す。
あれはもう何年前のことだったか。
歳を数えるのも嫌になる年齢になって、それでもあの人との思い出は数え切れないほど思い出して……。

一緒にこの道を歩いた。
一緒にあの学校で過ごした。
一緒に青春を駆け抜けた。

いつでも一緒にいた。
いつでもそばにいてくれた。

あなたは今何をしていますか。

自分の夢に夢中になれていますか。
脇目も振らずまっすぐに生きていますか。
楽しい日々を過ごせていますか。

もしそうならあなたを送り出した私はとても嬉しく思います。
あなたのピンと伸びた背中を涙を堪えて見送った甲斐があります。

だけど私は……。

「ねえ海未ちゃん、聞いてる?」

「えっ? あ、すいません。 ちょっとぼーっとしてたみたいです」

「もー! ちゃんと私の話聞いてよね!」

「ごめんなさい。 それで、何の話でしたっけ?」

「だからー、進路の話だよ! 海未ちゃんまだ進学先決めてないって言ってたじゃん?」

「あー……。 そうでしたね。 もう10月、さすがにそろそろ決めなくてはいけませんよね……」

「海未ちゃん頭いいからやっぱり○○大いくのかな? それとも運動のために□□大とか?」

「ふふ、さすがに私でもそんな頭のいいところにはいけませんよ。 そういう穂乃果はどうするつもり……って聞くまでもありませんよね」

「ふふふ、そんなこと言わずに聞いてくれてもいいんだよ? さぁ! さぁ!!」

「なんですかその反応は」

「ほら! ねぇ!」ワクワク

「……はぁ。 あなたは卒業したらどうするんですか?」

「穂むらに就職だよ!」

「あーはいはい。 すごいですね」

「ちょっと、何その薄い反応!」

「だってわかってましたし……。 というかいつも自分で言ってるじゃないですか」

「そうだっけ? まぁどのみち私の頭じゃ進学なんて無理だしねー」

「そうですね。 あなたでは受験に受かる気がしないので潔く諦めましょう」

「ひどっ!! もう私おこったもんね! ふんだ!」プンスカ

「……はぁ」

「ただいまー」

「あ、ことりちゃんおかえり!」

「あら、ことり。 どこへ行ってたんですか?」

「え? あー、えっと……お手洗いに、ね」

「? そうですか。 言ってくれればついていきましたのに」

「あ、ごめんね。 ちょっと急いでたから」

「もーことりちゃんったら、そんなに我慢したら体に悪いんだよ」

「ごめんね。 これからは気をつけるね?」

「そうそう、それでいいんだよ! ことりちゃんが病気になったら私も悲しいしね!」

「穂乃果ちゃん……っ! ありがとっ」

「うわ、もぉことりちゃんってば、くるしいよ~」

「えへへ~♪」

「はいはい。 その程度にしてそろそろ部室に向かいましょう。 後輩たちが頑張ってるのに私たちだけ油を売ってるわけにはいきませんよ」

『はーい』

「……ふぅ。 久々に踊りましたが案外やれるものですね」

「海未ちゃん最近勉強ばっかりで部活に顔出せてなかったもんね。 それで調子のほうはどう?」

「はい。 とりあえず模試は手応えありましたし、このまま勉強を続ければ△△大にもいけるだろうと先生も言ってくれました」

「うわ~、すごいっ! やっぱり海未ちゃんってすごいんだね! ことりも友達として鼻が高いよ♪」

「そういうことりこそ、英語の成績は特に良かったと聞きましたよ」

「えへへ、英語は昔から得意だったから自信あるんだー!」

「……」

「あれ、海未ちゃん? どうしたの、急に下向いて」

「……ことり」

「?」

「ことりは……どうするんですか?」

「ん? なんのこと?」

「そろそろ教えてくれてもいいんじゃないですか? 進路のこと」

「……」

「……そうですか。 いえ、いいんです。 私も無理に聞き出そうとは思っていませんので」

「……ごめんね」

「謝らないでください。 むしろしつこく聞いてる私の方が謝るべきなんです」

「ううん、海未ちゃんは悪くないよ。 話さないことりが悪いの。 でも……もう少しだけ待って欲しいの。 近いうちに、きっと話すから」

「別に無理に話さなくっても……」

「……」

「……はい。 その日まで待っていますね」

「ねぇ2人ともー!! いつまで休んでるのー!!」

「あっ、穂乃果ちゃん。 ごめんねー! 今戻るからー!」

「穂乃果ったら、 もう2時間も踊りっぱなしなんだから少しは休んだほうがいいですよ」

「えー! 後輩が頑張ってるのに先輩である私が休むわけにはいかないよ!」

「はぁ。 オーバーワークは怪我のもとだって何度も言ってるのに。 真姫からも何か言ってもらえませんか 」

「え? んー、まぁ別にいいんじゃない? 凛も花陽も久々に3年生が来て楽しそうだし。 海未には申し訳ないけど穂乃果にはもう少し頑張ってもらわなきゃね」

「真姫まで……」

「正直スポーツおばけの凛と張り合える人なんて同じおばけの穂乃果くらいしかいないしね。 だからずっと相手していてもらったほうが私としても楽できていいってわけ」

「穂乃果ちゃんは何おばけなの?」

「そうねぇ、努力おばけとでも言ったところかしら」

「ふふっ、それは穂乃果ちゃんにピッタリの命名だね♪」

「あー、真姫ちゃんサボってるにゃー! いーけないんだーいけないんだー! かーよちんに言ってやろー!」

「ちょっ、サボってないわよ! 休憩してただけだし、今戻るわよ!」

「それじゃあ海未ちゃん、私たちも戻ろっか」

「はい。 後半は穂乃果に負けてられませんね」

「あー、楽しかったー!!」

「久しぶりに練習に顔出しましたが、あの調子だと今度のライブも問題なさそうですね」

「そうだね。 とりあえずことりたちが引退してからもちゃんと頑張ってくれてるみたいで良かったよ」

「思い返せば、穂乃果から『ラブライブが終わったので3年は引退します!』と宣言されたときは何事かと驚いたものです」

「ほんとうにね~。 ことりもびっくりだったよ」

「あはは……。 だってラブライブってさ、ほかの部活で言ったらインハイみたいなものでしょ?」

「確かに時期や規模で言ったらそうなりますね」

「ならさ、それが終わったら私たちは次の夢に向かって頑張らなきゃいけないんじゃないかなって、そう思ってさ」

「それはまぁそうですけど。 ですが絵里たちは3月まで残っていたのですから、私たちもそれでよかったのではと思いますが?」

「えっと……、私たちには私たちなりのアイドル研究部があるっていうことで!」

「なんですかその取って付けたような理由は。 ですが他でもない穂乃果がそう決めたのですから私たちは反対しませんけどね。 しっかり悩んで出した結論だったのでしょう?」

「うん。 スクールアイドルは楽しくて、みんなと輝ける場所で、私を成長させてくれた。

……でも私たちにはもっと大切なものがあるから……」

「……大切なもの?」

「あ、あー!! あんなところに珍しい色をした鳥さんがいるよ!!」

「えっ? どこにもいないじゃないですか」

「あ、あれー、おかしいなー? さっきまでそこの木にとまってたのになー?どこかに飛んでいっちゃったみたい。 えへへ」

「……はあ? いきなりどうしたんですかことり」

「え? な、なんでもないよ! それより誰が先にあそこの曲がり角まで着けるか競争だよ! よーい、どん!」

「あ、ことりちゃんずるい! 私も負けないぞー!」

「ちょ、2人とも!……なんなんですかまったく。 待ってくださいー! 2人ともー!」

穂乃果が濁した言葉、
『大切なもの』

あの子がスクールアイドルを手放してまで得ようとしたもの。
きっとあの子なりに私やことりの進路のことを考え、ひたすら悩んだ末に出した決断だったのだと、その時の私は思っていた。

生まれる前からの幼馴染。

一緒のいた時間の長さが物語る。
私は穂乃果に対しての圧倒的な理解者であると。
この子の考えていることは手に取るようにわかる、会話中は次はどんなことを口走ろうとしているのかも予想できる。
笑顔の裏に見せる辛さを覗き込むことができる、涙の奥に隠れた強さに触れることができる。
親友としての、私の特権。

それ故に穂乃果の語った言葉を自分で解釈して、納得して……。

だから考えてもいなかった。
私が理解していなければならなかったのは『彼女』だということを。

ー2ー

あれから幾つかの月日が流れた。

私は都内の大学に進学することが決まり、穂乃果も今からすでに穂むらで働く気満々でいる。

……でもあの子からは、まだ話を聞くことができていない。

別に仲違いがあったわけでもないし、変わらず3人は一緒にいた。
ことりは時々申し訳なさそうな目で私を見ていたが、その度に私は気にしてないと言った意味を込めて微笑を返す。
その繰り返しで今日まで過ごしてきた。

今でも待っている。
あの子の口から、あの日語ってくれると約束した言葉が紡がれるのを。

たかが進路……。
大事な選択ではあるが、人に隠すほどのことだろうか。
ましてや私たちは幼馴染であって、今まで小学校も中学校も高校もお互いの進路を合わせてきた。

だから今回も……、同じとはいかなくともお互いの進路について応援しあえる日が来るのだろうなと思っていた。

でも、それが現実になることはなかった。

私は焦っていた。
彼女は私に話すことを躊躇っている、というよりは私に話すことを避けているのだろうか……と感じるくらいに。

彼女の中で私という存在が何かをきっかけに変わり始めていて……。
彼女にとって私は、将来のことを教える価値がない存在になってしまっている。

……最近ではそんなことすら考えてしまう始末。
そんなことはありえないとわかっていながらも。

ことり。
私は……。

「とうとう私たちも卒業かー。 寂しくなるね……」

「そうですね。 去年卒業した先輩方もこんな気持ちだったのでしょうか」

「去年は絵里ちゃんたちが卒業してから海外に行ったんだよねー。 あぁ、あれももう一年も前のことになるんだなぁ」

「月日の流れというのはあっという間、まさにその通りですね。 だからこそ私たちは貴重な時間を有意義に使わなくてはいけないのです」

「うんうん、まさしくその通りだよね! 一度きりの人生、これからも精一杯やりたいことをやって生きていくべきだよね!」

「それは賛成です。 それはともかくあなた、この1ヶ月間ずいぶんと素敵な生活を送っていたそうですね?」

「えっ……?」

「学校がないのをいいことに毎日家でダラダラダラダラと過ごし、たまにふらっと練習参加しに行っては帰ったらすぐ寝、翌日は昼間に起きてぼーっとしてはまた昼寝をして惰眠を貪る……そんな日々だったと報告を受けていますが?」

「うげ!? な、なんで海未ちゃんがそんなこと知ってるの!?」

「あなたの様子をおばさんや雪歩から聞いているんです。 それはもう見事なダラけっぷりだった、と」

「え、えっと、……そ、そう! 私のやりたいことがそれだったんだよ! 学校の時は寝坊することも昼寝することもできなかったでしょ!? それに働き始めたらもっと早い時間に起きないといけない! だから今のうちにダラけられるだけダラけたかったの!」

「お黙りなさい! そもそも寝坊も昼寝もこれまで結構な割合でしていたでしょう! なまけは敵! 今からあなたのその腐った根性を矯正します!」

「や、やめて~! 春休みまでピシッとして過ごすのはやだよー!!」

「節度を今のうちから身につけておくことが大切なのです! そのための春休み、認識を改めなさい!」

「うえぇぇ~ん! 誰か助けてぇ~!」

「逃げるんじゃありません! おとなしく私が1週間かけて作った矯正プログラムを受けなさい!」

「海未ちゃんこそそんなもの作ってる時間が無駄じゃんかー! ばかー!!」

ガララッ

「穂乃果ちゃん? 海未ちゃん? いるー?」

「あっ、ことりちゃんだ! たすけてー!」

「え? な、なになに?」

「ことり! 穂乃果を捕まえてください!」

「えっと、状況がわからないけど、とりあえず穂乃果ちゃんを捕まえればいいの?」

「敵が増えた!? ひどいよ! 信じてたのに!」

「ふふっ。 穂乃果ちゃんごめんね?」

「うぎゃー!! はーなーしーてー!」

「つーかまえた♪」

「ナイスですことり! というかことり、今までどこへ行っていたのですか? 気付いたらいなくなってましたよね?」

「あ、そうそう。 ことりね、2人を呼びに来たんだった」

「呼びに?」

「うん。 ちょっとお母さんに呼ばれて理事長室に行った帰りに、廊下で花陽ちゃんに会ったの。 それでアイドル研究部のみんな中庭にいるから2人と一緒に来て欲しいって」

「おっ、そうだったんだ! じゃあこんなことしてる場合じゃないね! 早く行かなきゃ!」

「あっ、穂乃果! 待ちなさい!」

「いやだよーだ! 私は春休みを思いっきりダラダラして遊び呆けるという充実した予定があるのだー!」

「……あっ、もう。 逃げ足の早い子ですね本当に」

「あはは。 だいたい何があったか想像つくけど、今日くらいは今まで頑張ってきたご褒美をあげてもいいんじゃないかな?」

「……ことりにそう言われてしまうと、……はぁ。 それもそうですね。 あの子にとっては学生として最後の長期休暇ですし、見逃してあげますか」

「さすが海未ちゃん、海のように広い心を持っておいでで♪」

「からかわないでください。 それじゃあ私たちも行きましょうか」

「うん、そうだね!」

ギユッ

「……」

「……」

「……?」

「……」

「……あの、ことり?」

「えっ?」

「えっと、どうして私の手を握って……?」

「……えっ!? あ、ご、ごめん!」

「いえ、謝らなくてもいいですけど……何かあったんですか?」

「う、ううん! 何もないよ! なにも!」

「そうですか。 では行きましょう?」

「そ、そうだね。 あはは……」

グイッ

「……っ!?」

「……」

「……あの、えっ……? 行かないんですか?」

「……」

「こ、ことり?」

「……。 海未ちゃん」

「は、はい」

「2人っきり、だね」

「えっ? あっ、はい。 そうですね、穂乃果も行っちゃいましたし……」

「……だから、今伝えたくて。 海未ちゃんに、話さなくちゃいけないこと」

「!! そ、それって……」

「うん。 ずいぶんと遅くなっちゃったけど、最近まで話す決心がつかなくて。 でも今なら大丈夫」

「そうですか。 で、ですがことりも大袈裟ですよね。 進路くらいそんな隠し通す必要もなかったのに」

「……そうだよね。 うん、そうだよ……」

「……?」

「ねぇ、海未ちゃん。 ことりたちって、これからもずっと仲良しでいられるよね?」

「え? まったく、なにを言うと思ったら。 そんなの当たり前じゃないですか。 私も穂乃果も、これまでもこれからもずっと仲良しのままですよ」

「だよね……。 よかった……。 ぐすっ」

「え、こ、ことり!? どうして泣いて……!?」

「……あのね、ことりね……、外国行くんだ」

「……えっ?」

「……フランスに行ってね、服飾のお勉強頑張りたいの」

「フランス……ですか。 やっぱり去年のこと諦めてなかったんですね」

「うん……。 どうしても、挑戦したいなって気持ちは捨てられなくって」

「……そうですか」

「そ、それでね、ことりがあっちに行ったらなかなか帰ってこられないと思うし、それでことりたちの関係も変わっていっちゃうんじゃないかって不安で、怖くて……」

「……もう、バカですね。 そんな心配は必要ありませんよ。 先ほども言った通り、私たちはいつまでも仲良しのままですから! 絶対に!」

「……うん! あ、あはは。 これならやっぱり今日まで引き延ばす必要なかったね……」

「まったくですよ。 私のこと少々甘く見過ぎでは?」

「ごめんね……」

「このこと、穂乃果は?」

「穂乃果ちゃんにはね、実はもう話してるの」

「え、そうだったんですか?」

「うん。 去年のラブライブ終わった後に」

「……えっ?」

「……あっ、か、勘違いしないで欲しいけど、海未ちゃんだけ除け者にしてたわけじゃないの! これには理由があって……」

「理由……ですか。 私今ちょっと怒っていますのでそれなりに納得いくものでないと許しませんよ?」

「ひぃ……!? いや、その……ね? 穂乃果ちゃんにはどうしても話さなくちゃいけない理由があったの……」

「聞きましょうか。 その穂乃果だけにしか話せなかったっていう理由とやらを」

「あ、あのあの、えっと……ことりね、留学のためにはフランス語もできなくちゃいけないって知ってたの。 本当は英語が通じる国でもよかったんだけど、フランスの方が設備が充実してるってことがわかって……。だからこの半年間を使って勉強しようと思ったの。 だからそのためには部活をしている時間もなくて……」

「……なるほど。 つまり、穂乃果の引退宣言はそういうことだったんですね」

「うん……。 ことりちゃんがやめるなら私たちも一緒に、って」

「私は別に構いませんけどね。 そもそも穂乃果をサポートするために始めたスクールアイドルですし、あの子がいなかったら私も続ける道理はありせんし」

「海未ちゃんもそういうだろうって穂乃果ちゃんが言ってた。 だから3年生の部活はこれで終わりって」

「そんな事情があったんですね。 ですか、それだけだと私に隠していた理由としては不十分では?」

「うっ……、やっぱりだめ?」

「まさかこれだけしかないんですか? だったら怒ります」

「いや、他にも理由はあるんだけど……えっと……」

「それなら話してください。 さぁ」

「う、うぅ……」

「ことり」

「……」

「……あの、ことり?」

「……よし。 話すぞ話す話す話す話す話、す……」

「な、なんか邪悪な気を感じるんですけど気のせいですかね……」

「そ、園田……

園田……う、海未、しゃん……」

「……は、はい?」

「あの、わ、わた、わたしこと南ことりは……えっと」

「……?」

「あなたのことが……好きです……」

「……は?」

「」プシュュュュュュ...

「いや、あの、私もあなたのことは好きですよ? それはともかく早く理由を……」

「違うよ海未ちゃん……。 ことりはね、海未ちゃんみたいに友達としての好きじゃないの。 女の子として、好きなの」

「………………。 ………………はぁ?」

「だからぁ!! ことりは海未ちゃんのこと、いつでも手繋いでいたり、抱きしめあったり、ちゅっちゅしたりしたい意味で好きなのぉ!!」

「……」

「……?」

「えっと……ち、ち、ちょっと待ってください? 私たち女の子同士ですよ?」

「そんなことわかってる! でも海未ちゃんに打ち明けられなかったのは、もし留学の試験に失敗したときに情けない姿を見せたくなかったから! これが理由なの! わかった!?」

「えっ!? わ、わかりません!」

「わからないの!?」

「あ、当たり前です! そもそも、あなたは勘違いしてるんです! あなたの感じているそれは恋愛感情ではなく、家族や親友に寄せる親愛の情! それに決まってます!」

「ち、ちがうもん! ことりは海未ちゃんのこと本当に恋愛感情で好きなんだもん!」

「と、とりあえず打ち明けられなかった理由は受験に失敗した時の不甲斐ない姿を私に見られたくなかったということで納得します。 ですが、他の部分はまったく納得できませんよ!? ていうかむしろ理由を隠されていたこと以上に大問題なんですが!?」

「えっ!? これって大問題なの!?」

「はい! 大問題です!」

「ひ、ひどいよ海未ちゃん!」バッ!

「……!」

(ぶ、ぶたれる……!)ギュゥ

「……海未ちゃん」

「……う、うっ……? ……って、ちょ、顔ちか……


んむぅ!?」

「……ん」

「……!!????!?」

「……これでも、まだ疑う……?」

「……あ、あなた……何して!?」

「……ことりが、海未ちゃんのこと好きな証明」

「え、え……エッ!?」

「海未ちゃん、好き。 大好きなの。 お願い。 ことりのものになって?」

それからの私の記憶は曖昧だ。
この後もことりに誘惑され続けていたのか、走って逃げ出したのか、はたまた意識を失ったのか。
ただただ気が動転していて、どれが本当の記憶なのか思い出せない。

だって人生で初めてのキスの相手が……幼馴染で、しかも同性で……。
こんなの動揺しないほうがおかしい!

その後、中庭で後輩たちがライブをしてくれたけど、私とことりは焦点の合わない目で、後輩のダンスとお互いの顔色を伺うという動作をひたすら無意味に繰り返していた。

あぁ……なんでこんなことに……!?

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