杏「きらりはくふくふ笑う」 (42)

【モバマスSS】

ハッピーエンドではないです
 


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 杏は微睡みから目を覚ました。
 見慣れてしまった天井、照明。見回すとこれも見慣れてしまった壁、窓、調度品。
 ベッドに寝たままの状態自体には慣れたものだが、場所が自分の家でないとやはり調子は狂う。
 しかも、今は怠惰を楽しんでいるわけではない。杏にしては珍しく、不本意ながら寝ているのだ。

 どうせ寝なければならないのなら慣れた場所が良い。自分の部屋か、あるいは事務所のソファか。

 そこまで考えて杏は笑ってしまった。

 事務所のソファにはどれほどご無沙汰しているのか。
 杏にとっての定位置には、もうあのソファはないだろう。とっくに撤去されていてもおかしくないのだから。
 それとも「トップアイドルになれるクッションソファ」などと、ふざけたネーミングで安置されているかも知れない。

 ちひろなら、いや、仁奈や莉嘉でも悪戯半分でやりかねない。
 とはいえ、杏に今更それをどうこうする気も権利もないのだが。

「……そろそろ、だよね」

 杏は病室の壁に掛けられた時計を見た。
 そろそろ、きらりが来ると約束した時間だ。

「杏ちゃーん、来たゆ~」

 案の定、きらりの声がする。流石に病院の中だと声は抑えているが、特徴ある口調はそのまま。
 約束に厳しいきらりだけある、と杏は感心した。

 今の杏には、きらりのいつもの口調も乱入も心地良い。 
 なにしろ、ベッドに縛りつけられるようにして過ごしているのだから。
 多少の波乱はあっても変化は大歓迎だ。


「やほー、杏ちゃん、来たよー」

 だから第一声はこうなる。

「うぇー、退屈だよ、きらり、なんとかして」

「だーめぇ。今の杏ちゃんはおねんねしてるのがお仕事だよ」

「うー、退屈すぎる。せめてゲームくらい」

「だーめぇ。Pちゃんにちゃーんと頼まれてゆからね」

「くそっ、Pめ、年々横暴になっていくじゃあないか。杏のこと大切にするって言った癖に」


「大切にしてるよ?」

 真顔で首を傾げるきらりに、杏は絶句。そして、ややあって唸るように呟きながら頷いた。

「……そりゃあ……わかってるけどさ」

 くふくふときらりは笑う。
 きらりは、数年前の杏とPの結婚式の前後から、時々こんな風に笑うようになった。
 含み笑いを我慢して、それでも仕方なく笑ってしまうような、そんな笑い方。

 正直、杏はこの笑い方が好きではない。
 らしくない、と感じてしまう。いや、はっきり言えば不快だ。
 それでも、杏は何も言わない。何も言えない。
 そんな笑いをさせている原因が自分にあるかも知れないから。
 その真偽をはっきりさせるために尋ねることも出来ない。


 肯定されてしまえば、自分はきらりと一緒にいられなくなる。少なくとも、こんなつきあい方は出来なくなる。
 
 そして、きっと、多分、きらりは、肯定を、する。だろうから。

「杏ちゃんはぁ、もうちょっとPちゃんのことわかってあげないとぉ」

「わかってあげないと?」

「まゆちゃんに取られちゃう」

「う」

「凛ちゃんだって、まだ狙ってゆ」

「うう」


 二人の名前が出た。
 二人の名前しか出ないことを、杏は知っている。
 こんな会話の流れになったときに必ず出る二人の名前。
 名前の出ない三人目を、杏は知っている。

「まだまだみーんな、Pちゃんのこと大好きだから」

 三人目の名前は出ない。
 何事も無かったように、何事も気付かなかったように、会話は続けられる。

「ふんっ」

「杏ちゃん?」

「べっつにぃ、Pがモテてるのは杏の自慢になるから良いもんねー」

 また、きらりはくふと笑った。


「それにさ」

 きらりの笑いを耳に入れていないふりをして、杏は言葉を続ける。

「杏はこれからPの子供を産むんだから」

 くふくふときらりは笑う。

「杏ちゃんだけだもんね。Pちゃんの子供が産めるのは」

「こう見えても、妻だからね」

「杏ちゃんとPちゃんの赤ちゃん、とーーっても、可愛いよね」

「幸子より?」


「幸子ちゃんよりカワイイよ!」

 くふくふときらりは笑う。

「楽しみだよ、可愛い可愛い杏ちゃんの赤ちゃん」

「んふふ、きらりは杏より楽しみにしてない?」

「杏ちゃんとPちゃんの子供だにぃ」

「Pの子供だから可愛いに決まってるよ」

 くふくふ

「早く出てこーい、可愛い赤ちゃん」


 きらりが杏のお腹に冗談めかして呼びかける。

 通常の妊婦よりもずいぶん早く、杏は入院していた。

 杏の体格で子供を産むということがどういう意味か。その危惧は当然のようにPにも杏にもあった、そしてきらりにも。
 だから、大事をとって入院している。医師の指示に従っている。
 万が一を億が一に、億が一を兆が一にするために。

「とは言っても、ホントに早まるのはノーサンキューだけどね」

「うん。杏ちゃん、大変だもんね」

「心の準備だけでも、ね」

 杏はふと天井を見た。
 そのまま、きらりのほうには顔を向けずに言う。


「ねえ、きらり」

「んにゅ?」

「前にも話したけれどさ」

「うん」

「どっちかを選ぶ、なんてことになったら、子供を選んでよね」

「杏ちゃん」

「もしものときは、お願いだよ、きらり」

 くふくふ


「だーめ」

 くふくふくふ

「そんな弱気はだーめ」

 くふくふくふくふ

 杏はきらりを見ない。きらりの顔を見ない。きらりの表情を見ない。

「杏ちゃんは、元気に赤ちゃんを産んで、立派に育てるの」

「約束してよ。子供を選ぶって」

「杏ちゃんがいなくなると、Pちゃん哀しぃよ? 赤ちゃんだって、寂しぃよ?」


「きらりがいるから」

 くふくふくふくふくふ

「きらりがいるから、心配しないよ。そうでしょ?」

 くふくふ 杏ちゃん くふくふくふくふくふくふくふくふ
 くふくふくふくふくふ 駄目だよ くふくふくふくふくふ
 くふくふくふくふくふくふくふくふくふ Pちゃん くふ
 くふくふくふ 赤ちゃん くふくふくふくふくふくふくふ
 くふくふくふくふくふくふ 可哀想よ くふくふくふくふ

「きらりなら、いいよ」


 そう、思っていたはずだった。

 きらりのことが大好きだった。
 信用できる友達だった。
 自分に何かあったとき、全てを託しても良いと言える友達だった。

 くふくふ そ くふくふくふくふくふくふくふくふくふ
 くふくふくふ れ くふくふくふくふくふくふくふくふ
 くふくふくふくふ も くふくふくふくふくふくふくふ
 くふくふくふくふくふ い くふくふくふくふくふくふ
 くふくふくふくふくふくふ い くふくふくふくふくふ

「私の代わりに」


 だから、そう言える。

 きらりに託すことが出来る。
 それはもしもの話。
 決してきらりはそれを望んでいないと信じられるから言える話。
 
 くふくふくふくふくふくふくふくふくふくふくふ
 くふくふくふくふくふくふくふくふくふくふくふ

 でも、この笑いはなんだ。
 きらりが悦んでいる。
 何故? 託されるから? 手に入れるから? 奪えるから? 

 杏はきらりを見ない。
 声だけが聞こえる。異様な笑い声だけが聞こえる。


 抑えなければならないのに、それでも漏れてしまう笑いが聞こえる。

 違う。きらりは違う。

 自分の知っているきらりは違う。

 こんな笑い方はしない。
 こんな喜び方はしない。
 きらりなら。
 自分の知っているきらりなら。


 くふくふくふくふくふくふくふくふくふくふくふ
 くふくふくふくふくふくふくふくふくふくふくふ
 杏ちゃんの赤ちゃんならきっと可愛いにぃ

 くふくふくふくふくふくふくふくふくふくふくふ
 くふくふくふくふくふくふくふくふくふくふくふ
 きらりもうんと可愛がることが出来ゆよ
 くふくふくふくふくふくふくふくふくふくふくふ
 くふくふくふくふくふくふくふくふくふくふくふ
 Pちゃんのこともまかせて
 くふくふくふくふくふくふくふくふくふくふくふ
 くふくふくふくふくふくふくふくふくふくふくふ
 杏ちゃんのぶんまで幸せにするよ
 くふくふくふくふくふくふくふくふくふくふくふ
 くふくふくふくふくふくふくふくふくふくふくふ
 きらりも幸せになるよ
 くふくふくふくふくふくふくふくふくふくふくふ
 くふくふくふくふくふくふくふくふくふくふくふ
 杏ちゃんがいなくなれば
 くふくふくふくふくふくふくふくふくふくふくふ
 くふくふくふくふくふくふくふくふくふくふくふ


「やだ」

 そう、きらりの声がはっきりと聞こえた。
 笑いが止まった。

「こんなの、やだ」

 杏は顔を上げる。
 そこには、きらりがいた。
 涙目のきらりがいた。
 笑い声の止まったきらりがいた。
 嫌だ、と呟くきらりがいた。

「きらり?」

「ごめん、ね」

 身を翻し、きらりは病室を出て行く。

 ドアの向こうから、再び笑い声が聞こえたような気がした。

 それ以来、杏はきらりの姿を見ていない。

 
 
 
 
 
 
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 きらりは、受付で杏の部屋を確認する。
 部屋番号は知っているが、面会の申し込みは必要だ。それに、杏は特別個室にいる。
 何しろ元とは言えトップアイドル、普通の病室に入るわけにも行かないだろう。

 受付を済ませ、病院本棟からは離れになる特別病棟へ向かう。
 特別病棟にあるのは産婦人科だけではない、一時期、北条加蓮も時々検査入院していたはずだ。
 入院ではないが検査という意味では、輿水幸子もちょくちょくお世話になっていた。

 エレベーターに乗り、目的の階。杏の病室はすぐそこだ。

「杏ちゃーん、来たゆ~」

 約束していた時間通りだ、と確認しながらきらりは扉を開く。


「やほー、杏ちゃん、来たよー」

 ベッドの上で所在なさげにぼうっとしていた杏が、きらりの姿を認めると言った。
 
「うぇー、退屈だよ、きらり、なんとかして」

「だーめぇ。今の杏ちゃんはおねんねしてるのがお仕事だよ」

「うー、退屈すぎる。せめてゲームくらい」

「だーめぇ。Pちゃんにちゃーんと頼まれてゆからね」

「くそっ、Pめ、年々横暴になっていくじゃあないか。杏のこと大切にするって言った癖に」

 そんなことを言いながらも、杏の顔は嬉しそうに笑っていることをきらりは見逃さない。


「大切にしてるよ?」

 一瞬、杏は口を閉じ、くふくふと笑った。

「……そりゃあ……わかってるけどさ」

 くふくふと杏は笑う。
 杏は、数年前にPと結婚した前後から、時々こんな風に笑うようになった。
 含み笑いを我慢して、それでも仕方なく笑ってしまうような、そんな笑い方。

 正直、きらりはこの笑い方が嫌いだ。
 らしくない、と感じてしまう。

 それでも、きらりは何も言わない。何も言えない。
 そんな笑いをさせている原因が自分たち……自分かも知れないから。
 尋ねることも出来ない。


 肯定されてしまえば、自分は杏と一緒にいられなくなる。少なくとも、こんなつきあい方は出来なくなる。
 そう、感じてしまうから。
 
 そして、きっと、多分、杏は、肯定を、する。だろうから。

 Pを奪ったのは自分だと、杏自身が知っている。自分が何をしたか、杏は知っている。
 渋谷凛、佐久間まゆ、そして、もう一人。
 自分が皆からPを奪ったことを、杏は知っている。
 杏はそれを隠さない。
 
 きらりはそれに気付かないふりをする。
 
 そして会話を重ねる。
 無邪気に、杏の心など知らないふりをして。

「杏ちゃんはぁ、もうちょっとPちゃんのことわかってあげないとぉ」


「わかってあげないと?」

「まゆちゃんに取られちゃう」

「う」

「凛ちゃんだって、まだ狙ってゆ」

「うう」

「まだまだみーんな、Pちゃんのこと大好きだから」
 
 もう一人の名前は出ない。出せない。

「ふんっ」


「杏ちゃん?」

「べっつにぃ、Pがモテてるのは杏の自慢になるから良いもんねー」

 また、杏はくふと笑った。

「それにさ、杏はこれからPの子供を産むんだから」

 くふくふと杏は笑う。

「杏ちゃんだけだもんね。Pちゃんの子供が産めるのは」

 きらりはそう答えるしかない。

「こう見えても、妻だからね」


 杏はくふくふと笑う。

 自分は妻だと、唯一の妻だと言うように。
 凛でもまゆでもない、自分が妻だと言うように。

「杏ちゃんとPちゃんの赤ちゃん、とーーっても、可愛いよね」

「幸子より?」

「幸子ちゃんよりカワイイよ! 楽しみだよ、可愛い可愛い杏ちゃんの赤ちゃん」

「んふふ、きらりは杏より楽しみにしてない?」

「杏ちゃんとPちゃんの子供だにぃ」

「Pの子供だから可愛いに決まってるよ」

 くふくふ


「早く出てこーい、可愛い赤ちゃん」

 きらりは杏のお腹に冗談めかして呼びかける。

 通常の妊婦よりもずいぶん早く、杏は入院していた。

 杏の体格で子供を産むということがどういう意味か。その危惧は当然のようにPにも杏にもあった、そしてきらりにも。
 だから、大事をとって入院している。医師の指示に従っている。
 万が一を億が一に、億が一を兆が一にするために。

「とは言っても、ホントに早まるのはノーサンキューだけどね」

「うん。杏ちゃん、大変だもんね」

「心の準備だけでも、ね」


 きらりがふと時計を見たとき、杏は言った。

「ねえ、きらり」

「んにゅ?」

「前にも話したけれどさ」

「うん」

「どっちかを選ぶ、なんてことになったら、子供を選んでよね」

「杏ちゃん」

「もしものときは、お願いだよ、きらり」


 ねえ、三人目。そんな声が聞こえたような気がした。

 くふくふ

「だーめ」

 くふくふくふ

「そんな弱気はだーめ」

 くふくふくふくふ

 きらりを時計を見ている。話しかけてくる杏の顔を見ない。杏の表情を見ない。

「杏ちゃんは、元気に赤ちゃんを産んで、立派に育てるの」


「約束してよ。子供を選ぶって」

 ほら、三人目。私が居なくなるんだよ。

 くふくふくふくふくふ

 嬉しくないの? チャンスだよ。

「杏ちゃんがいなくなると、Pちゃん哀しぃよ? 赤ちゃんだって、寂しぃよ?」

 息苦しさを、きらりは感じていた。

「きらりがいるから」


 三人目。

 くふくふ きらりが くふくふくふくふくふくふくふくふ
 くふくふくふくふくふ いるから くふくふくふくふくふ
 くふくふくふくふくふくふくふくふく 心配など ふくふ
 くふくふくふ しないよ くふくふくふくふくふくふくふ
 くふくふくふくふくふくふ でしょ? くふくふくふくふ

「杏ちゃん、駄目だよ。Pちゃんと赤ちゃんが可哀想」

 そう、思っていた。

 二人のことが大好きだった。
 二人のためならがんばれる。託されてもいい。

 だけど、失いたいとは思わない。失いたくない。
 失うために奪いたくなどない。


 くふくふ き くふくふくふくふくふくふくふくふくふ
 くふくふくふ ら くふくふくふくふくふくふくふくふ
 くふくふくふくふ り くふくふくふくふくふくふくふ
 くふくふくふくふくふ な くふくふくふくふくふくふ
 くふくふくふくふくふくふ ら くふくふくふくふくふ

「それもいい、なんて絶対言わない」

 二人を守りたい。

 二人のためになら役立ちたい。
 それは、二人のため。
 二人が好きな自分のため。

 二人の幸せを壊したいわけじゃない。そんな前提の自分の幸せはいらない
 杏が何を言っても、それだけは変わらない。


 くふくふくふくふくふくふくふくふくふくふくふ
 くふくふくふくふくふくふくふくふくふくふくふ

 でも、この笑いはなんだ。

 杏が笑っている、嘲笑っている。
 何故? 手に入れたから? 奪ったから?
 凛から、まゆから。

 きらりから。 

 きらりは杏を見ない。
 声だけが聞こえる。異様な笑い声だけが聞こえる。

 抑えなければならないのに、それでも漏れてしまう笑いが聞こえる。

 違う。杏は違う。
 自分の知っている杏は違う。

 こんな笑い方はしない。
 こんな喜び方はしない。
 杏なら。
 自分の知っている杏なら。


 くふくふくふくふくふくふくふくふくふくふくふ
 くふくふくふくふくふくふくふくふくふくふくふ
 私とPの赤ちゃんならきっと可愛いよ
 くふくふくふくふくふくふくふくふくふくふくふ
 くふくふくふくふくふくふくふくふくふくふくふ
 きらりもうんと可愛がるよね
 くふくふくふくふくふくふくふくふくふくふくふ
 くふくふくふくふくふくふくふくふくふくふくふ
 Pも一緒にね
 くふくふくふくふくふくふくふくふくふくふくふ
 くふくふくふくふくふくふくふくふくふくふくふ
 でも私が居るんだよ
 くふくふくふくふくふくふくふくふくふくふくふ
 くふくふくふくふくふくふくふくふくふくふくふ
 私が居るからきらりのものにはならないよ
 くふくふくふくふくふくふくふくふくふくふくふ
 くふくふくふくふくふくふくふくふくふくふくふ
 Pも子供も私のものだよ
 くふくふくふくふくふくふくふくふくふくふくふ
 くふくふくふくふくふくふくふくふくふくふくふ


「やだ」

 杏の声がはっきりと聞こえた。
 笑いが止まった。

「こんなの、やだ」

 きらりは視線を降ろした。
 そこには、杏がいた。
 涙目の杏がいた。
 笑い声の止まった杏がいた。
 嫌だ、と呟く杏がいた。

「杏ちゃん?」

 一瞬の空白の後、再び笑い声が聞こえ始めた。

 身を翻し、きらりは病室を出る。

 それ以来、きらりは杏の姿を見ていない。

 
 
 
  
 
 

 
 
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「本日はお話ありがとうございました。ところで……」

 かつてアイドルであった女への取材を終え、記者は尋ねる。

「彼女にお会いになったりはしないんですか?」

 かつてアイドルであった女は、記者の質問に答えた。

「まだ……笑い声が、聞こえるんです」


 終

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