千歌「果南ちゃん、私たち、別れよっか」 (29)

ー2年前ー

千歌「ねえ、果南ちゃん...。最近、何かあった?」

果南「...何もないよ? ごめんごめん、なんか心配させちゃった?」

千歌「...嘘。それ、嘘だよ。最近の果南ちゃん、絶対におかしい」

果南「...そんなことないよ」

千歌「そんなことあるよ! 最近ずっと、すごく寂しそうな顔してるし、今だって無理して笑ってるのバレバレだもん」

果南「っ...」

千歌「何かあったんだよね? 果南ちゃん、高校でのこと、何も話してくれないし...。私が助けられることなら、何でも言って?」

果南「何でもないからっ...」

千歌「話してよ! 私、そんなに頼りない? 私だって果南ちゃんのことっ...!」

果南「うるさいっ!!」

千歌「...えっ」ビクッ

果南「うるさいよっ!! 千歌にできることなんて何もない!!」

果南「だってっ! 私だってわかんないんだよ!! 全部、全部全部全部私が望んでやったことなのに...何でこんな...っ」ポロポロ

千歌「果南...ちゃん...」

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果南「本当に正しかった? 他にもっと上手な、誰も傷つかないような方法はなかった? そんなことばっかり考えて...」

果南「楽しかった時のことばかり思い出して、後悔だけが胸に残るのっ...」

果南「...普通でなんて、いられるわけないっ!!」

果南「私は...、そんな強い人間じゃ、ないっ...」

ギュ

果南「...ぁ」

千歌「果南ちゃん...」

千歌「ごめんね。私、バカだから...。果南ちゃんの言ってること、何も分かんないよ」

千歌「けど、ね」

千歌「果南ちゃんは頑張ったと思う。すごく頑張ったんだと思うよ」

果南「ぅ...千歌...」

千歌「だから...。今は私のためにお姉さんでいてくれなくて良い。こんな時ぐらい、私に頼って、 甘えてくれても、いいんだよ?」

果南「千歌ぁ...っ、ほん、と...?」

千歌「よしよし...」

果南「...ごめん、ごめん、ね...? ちょっと、だけだから...っ」ギュッ




果南「うぁあああ...っ!! 」

~~~

ー2年後・浦の星女学院校門ー

曜「ち~かちゃんっ♪」ムギュ

千歌「ひゃあっ!?」

曜「はあ、不足してた千歌ちゃんパワーが充電されていくぅ...」ムギュギュ

千歌「も~! 曜ちゃんっ!」

曜「へへ♪ ねえ、どっか寄って帰らない? 梨子ちゃんも花丸ちゃんも来るって!」

梨子「へ?」

花丸「ずら!?」

梨子「もう...聞いてないよ、そんなこと。まあ、このあと予定はないから、行くけど」

花丸「マルも大丈夫ずら!」

千歌「あ~...。ごめんっ! 私はこれから予定あるの! また今度誘って?」

曜「えぇ~っ」

梨子「...もしかして、果南さんと?」

千歌「う、うんっ」

曜「はぁ...。やだやだ、千歌ちゃんはいつから幼馴染の親友より幼馴染の恋人を取っちゃうような女の子になったのかなあ」

千歌「もう!! だから曜ちゃんっ!!」

梨子「...そう、ならしょうがないね」

花丸「多分、善子ちゃんなら暇してると思うずら!」

曜「よっし、じゃあ善子ちゃん呼んでゲーセンにでも繰り出すぞ~! 千歌ちゃん、また明日♪」

千歌「うん、また明日ね!」

千歌「ふふ」

千歌「恋人、かぁ」

~~~

千歌「ね、ねえ...。果南、ちゃん?」

果南「ん?」

千歌「果南ちゃんって付き合ってる人とか、いるの?」

果南「ええ? 私、通ってるの女子校だよ?」

千歌「分かってるよ! けど、女子校ってその、女の子同士とかで付き合ったりとか、あ、あるんでしょ?」

果南「あのねえ、千歌は少女漫画読み過ぎ」

千歌「なら、好きって言われたり、ラブレターもらったり、告白とかされたことは?」

果南「えっ...と...」

千歌「ほらっ! あるんじゃん!! 果南ちゃんって格好良いから絶対あると思った!!」

果南「あはは...ちょっと前は、ね。けど、今は全然だから。付き合ってる人なんて当然いないし」

千歌「そっか。ふふ、良かったぁ...」

果南「何で喜んでるの?」

千歌「うぇ!?」

果南「...もしかして、千歌って私のこと...」ニヤニヤ

千歌「う、うぅぅ...」

千歌「そ、そうだよ...。私は果南ちゃんのこと好きだよ」

果南「...えっ。いや、本当に? ...あはは、ビックリしちゃった」

千歌「...引いた?」

果南「...ん~、別に。私も千歌のこと、大好きだもん」

千歌「へ...?」

果南「付き合おっか、私たち」

~~~

千歌「懐かしいな...。あれからもう2年近くなんだ」

千歌「それにしても...、果南ちゃん、遅いなあ」

ー部室前ー

千歌(まだ電気点いてる。果南ちゃん、何してるんだろ)

『...なん、...き...っ!』

千歌「え...?」

千歌(今の果南ちゃんの声じゃ、なかったよね? 誰かと一緒?)チラ

鞠莉「もう一度、言うね、果南...。好き、なの、今でもまだ。だから...」

千歌(えっ...)

千歌(鞠莉...さん?)

果南「何度も言わせないで。私にはもう千歌がいる。鞠莉とはやり直せない」

千歌(果南ちゃん、やり、直すって...どういうこと?)

鞠莉「どう、して...? 果南は私のために、2年前、私と別れてくれたんでしょ? なら...」

果南「っ...! やめてよ...。そんな言い方」

千歌(2年前...)

千歌(もしかして2年前って...あの時の...?)

鞠莉「果南も...きっと私のこと、まだ好きでいてくれるはずでしょ...っ!?」

果南「鞠莉っ...!」

千歌(ダメだ...これ以上聞いたら...)

千歌(おかしくなっちゃいそうっ...!)タタッ

~~~

ー夜・千歌の自室ー

千歌(2年前。きっと果南ちゃんの様子がおかしかったあの時だ)

千歌(あの時、果南ちゃんがあんなに落ち込んでたのは、鞠莉さんが留学して離れ離れになったから?)

『うるさいっ!!』

『全部、全部全部全部私が望んでやったことなのに...何でこんな...っ』

千歌(いつも私に優しかった果南ちゃんがあんなに取り乱して...)

千歌(そんなにつらかったのに...鞠莉さんのことを優先して、離れ離れになることを選んだってこと?)

千歌「...っ」ズキン

『あはは...ちょっと前は、ね。けど、今は全然だから。付き合ってる人なんて当然いないし』

千歌(鞠莉さん、やり直すって言ってた。きっと、果南ちゃんと鞠莉さんは昔、付き合ってたんだ。私は...)

『私にはもう千歌がいる』

『果南は私のために、2年前、私と別れてくれたんでしょ?』

千歌(私は...鞠莉さんから、果南ちゃんを奪っちゃったってこと...?)

千歌「...っ」ズキンズキン

千歌「私、最低じゃん...っ」ポロポロ

千歌(...あんな話、聞かなきゃ良かった)

~~~

ー翌日放課後・部室ー

鞠莉「千歌っち! ちょっと遅れてるよ? もっともっとシャイニー☆」

千歌「は、はいっ...!」

千歌(鞠莉さん、いつもと同じだ。昨日、あんなことがあったのに...)

果南「千歌! 周りをよく見てもっと集中して!」

千歌「う、うんっ!」

千歌(果南ちゃんも、いつも通り。昨日のは夢だったのかな)

千歌(...本当に夢なら良いのに...)

千歌(そういえば昨日の鞠莉さんの告白、どうなったんだろう。途中から聞くのが怖くて帰っちゃったけど、果南ちゃん、もう私がいるからって断ってくれてたんだよね)

千歌(...もう、私がいるから、か)

千歌(もし、私と付き合ってなかったら、きっと鞠莉さんとやり直してたんだろうな)

千歌(果南ちゃん、私と鞠莉さん、どっちの方が好きなの? もしかして、私は...)

曜「...か...ゃん!」

千歌(私は果南ちゃんにとってただの...)

梨子「千歌ちゃん!! 危ない!!」



千歌(邪魔なだけの存在...?)

ガンッ!!

~~~

ー夕方・保健室ー

千歌「...ぅ」

「千歌...っ...?」

千歌「んぅ...」

千歌(果南、ちゃん...?)

梨子「千歌ちゃんっ!!」

千歌「梨子、ちゃん...? あれ、私どうして...」

千歌(保健室? そっか、私、練習中に何かにぶつかって...)

梨子「良かった...っ。本当に心配したんだから!」ギュ

千歌「ごめん、ね? 心配かけちゃって」

梨子「うんっ...うんっ...!」ギュ

千歌「えっと、果南ちゃんは?」

梨子「...っ。 今、千歌ちゃんの鞄とか取りに行ってるの。さっきまでは、一緒だったよ」

千歌「そっか」

千歌(果南ちゃんも心配してくれてたんだ)

千歌(やっぱり、嬉しいな)

梨子「ね、千歌ちゃん」

千歌「なに?」

梨子「千歌ちゃん、果南さんと何かあった?」

千歌「えっ?」

千歌「なんで、知ってるの?」

梨子「今日は千歌ちゃんの様子がおかしかったから。練習中も果南さんのことを見ては、暗い表情を浮かべたりして」

千歌「...そっか、バレてたんだ」

梨子「もちろん、千歌ちゃんのことなら、なんでもわかるよ」

千歌「えへへ、ありがとう」

梨子「ねえ、千歌ちゃん?」

千歌「もう、次はなに?」


チュ

千歌「え...え...? 梨子ちゃん、なんで...」

梨子「ごめん、ね。ビックリした、よね」

梨子「けど、そんな沈んだ千歌ちゃん、見てられなかったから」

千歌「えっ...?」

梨子「果南さんと上手く行ってないんだよね。もしかしたら、別れた?」

千歌「...そ、そんなこと」

梨子「嘘ついてもすぐわかるよ。私は、千歌ちゃんのこと、ずっと見てたんだから」

千歌「ぅ...」

梨子「そう、ずっと見てた。初めて会った時から好きだった。果南さんと付き合ってるのは知ってたけど、ずっと諦めきれなかった」

梨子「千歌ちゃんがこんな時に、ズルくて、最低なことを言ってるのは、分かってる。けど、私はそれでも千歌ちゃんが欲しい。他の人には...渡したくない。だから...」グイッ

千歌「り、梨子ちゃ...っ」

梨子「私なら千歌ちゃんを泣かせたりしない。ずっと一緒にいるよ? だから...」

千歌「っ...だめっ...」



梨子「私と付き合って。千歌ちゃん」


~~~

ーしばらくして・帰り道ー

果南「もう、大丈夫? 気分悪かったり、しない?」

千歌「うん、もう大丈夫」

果南「良かった。今日の千歌、なんかおかしかったよ? 心ここに在らず、って言うのかな。...何かあった?」

千歌「...ううん」

果南「そう? なら良いんだけど」

千歌「ねえ、果南ちゃん」

果南「ん? なに?」

千歌「私のこと、好き?」

果南「ふふ、突然なに?」

千歌「答えてほしいの」

果南「当たり前でしょ? 好きだよ、大好き」

千歌「ふふ、そっか...」

果南「なに? 気味悪いし、 恥ずかしいんだけど」

千歌「ね、果南ちゃん」




千歌「私たち、別れよっか」


果南「...え?」

千歌「聞こえなかった?」

千歌「別れよう?」

果南「ちょっと待って。千歌、どういうこと? わかんない」

千歌「さっき、私、告白されたんだ」

果南「...!」

果南「...それで?」

千歌「告白、受けようと思う。だから、別れて」

果南「冗談だとしても、そろそろ怒るよ?」

千歌「怒っても良いよ。冗談じゃないし。怒っても別れるから。私の気持ちはもう変わらないの」

果南「許さない」

千歌「許してほしいなんて、思ってない」

果南「...千歌、もしかして、昨日の聞いてた?」

千歌「...何のこと?」

果南「...私、鞠莉とは付き合うつもりない。私には千歌がいる」

千歌「それって、義務感?」

果南「え?」

千歌「果南ちゃんは昔、鞠莉さんと付き合ってた」

千歌「果南ちゃんは鞠莉さんのためを思って別れて、鞠莉さんは留学した」

千歌「果南ちゃんはまだ、鞠莉さんのことが好き」

千歌「それで昨日、鞠莉さんからやり直したいって言われた」

千歌「どこか、間違ってた?」

果南「...間違ってないよ」

千歌「そうだよね? ごめんね。私がいるから、果南ちゃんは鞠莉さんに『付き合えない』なんて言ったんだよね」

千歌「私のことを考えてくれたんだよね? 果南ちゃんは優しいから。別れたら私が悲しむって思って、また鞠莉さんを諦めようとしてるんだよね?」

千歌「もう大丈夫だから。私はもう独りじゃない。だから義務感や責任感で付き合ってくれなくていい。終わりにしよ?」

果南「千歌...」

果南「...ごめんね」

パァンッ!!

千歌「えっ...」ヒリヒリ




果南「言いたいことはそれだけ? バカ千歌」

果南「千歌は私のことを何だと思ってるの?」

果南「神か仏か、聖人君子とでも勘違いしてる?」

果南「義務感や責任感で、好きでもない人間と一緒にいるわけないでしょ」

千歌「で、でも...っ、果南ちゃんと鞠莉さんは...」

果南「付き合ってたよ。千歌の言うとおり、今でも好きだよ。千歌の言ってることは全部合ってる」

千歌「...なら、やっぱり!!」

果南「鞠莉以上に千歌のことが好きなんだよ。それぐらい千歌を好きになったの! なにか、おかしい?」

千歌「だ、ダメだよ...。私なんて、鞠莉さんに比べたら...。お金もないし、可愛くないし、果南ちゃんと釣り合わない。果南ちゃんを幸せにできない...」

果南「私は、千歌に幸せにしてもらいたくて付き合ってるんじゃない!!」

果南「私が、千歌を幸せにしたいから! 千歌が一緒にいてくれる以上のことなんて、何も求めてない!!」

千歌「か、果南ちゃ...」ポロポロ


ギュ


果南「...ごめんね。不安にさせて」

果南「私さ、あの頃から何も変わってないんだ。子供で強くなくて。バカだから、もし、千歌が私のこと考えて言ってくれてるんだとしても、わかってあげられない」

果南「だって、今私が一緒にいたいのは、千歌なんだもん。それ以外の過去のこととか、将来のこととか、難しいことはわかんない」

果南「それで、良いんじゃない?」

千歌「ぅ...ひっく...果南ちゃ...私、ごめんなさっ...ぃっ」

果南「良いよ、千歌を不安にさせた私が悪い」

果南「あの頃から甘えっぱなしだったもんね」



果南「そろそろまた、千歌が私に甘えても良いよ」



千歌「うぁああああん...っ!!」

~~~

果南「落ち着いた?」

千歌「ぐすっ...うん」

果南「もう、昔っから思い込んだらなりふり構わず暴走するところ、変わってないね」

千歌「それ、お互い様じゃん...」

果南「はは、そうかも。...ところで、さ」

千歌「ん?」

果南「さっき、告白されたとか、言ってたけど...」

千歌「ああ...うん」

果南「本当なの!?」

千歌「本当だよ?」

果南「受けようと思うっていうのは...?」

千歌「ふふ、もう断ったよ。私は果南ちゃんのことしか考えられませんって」

果南「...心配させないでよ」

千歌「ヤキモチ妬いたんだ?」ニヤニヤ

果南「それ、お互い様だよね?」

千歌「ふふ、そうだね」

千歌「ねえ、果南ちゃん。甘えていい?」

果南「ん、なに?」

千歌「キス。キスしたい」

果南「...さっきまでの反動?」

千歌「別に良いでしょ! はやく!」

果南「はいはい」

千歌「ちょ、ちょっと強引な感じで...」

果南「...へえ、そういうのが好きなの?」グイッ

千歌「べ、別に...んむっ...」

果南「んっ...ちゅ。ふふ、これで満足?」

千歌「むぅ、言わな~いっ」

果南「ええ...。自分からおねだりしたくせに...」

千歌「...ねえ、果南ちゃん」

千歌「私のこと、好き?」

果南「...当たり前でしょ? 好きだよ、大好き」

千歌「ふふ、そっか...」





千歌「私も、大好き、だよ」



終わりです。

前作もよろしくお願いします。

ルビィ「私、本当は『悪い子』なんです」
千歌「Aqoursのみんなにドッキリをするよ!」
ダイヤ「夕暮れ、千歌さんとふたり」

あ、自分って千歌が好きなんだ、と気付きました。
駄文失礼致しました。

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