チノ「ラビットハウスが潰れてしまいました……」 (20)

ある日、ラビットハウスにて、


ココア「お客さん来ないね……」

リゼ「この店に客が少ないのはいつものことだろ」

ココア「このままお店が潰れちゃったりしてね」アハハ

リゼ「おい、縁起わるいこと言うなよ」


ガチャ

チノ「た、大変ですココアさん! リゼさん!」

ティッピー「こりゃ一大事じゃわい~!」

タカヒロ「はぁ……なんでこんなことに」

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ココア「チノちゃんたち、そんなに慌ててどうしたの!?」

リゼ「なにやら大事のようたが……」

チノ「実は……ラビットハウスが潰れることになったんです」

ココア?リゼ「ええっ!?」





それから数ヶ月後……、


タカヒロ「はぁ……一体どうすればいいんだ」

ラビットハウスが潰れてから、俺たちの暮らしは散々なものだ。
もともと経営が芳しくなかった店だったが、あっという間に借金のが膨れ上がり、気づけば億単位となっていた。

店を抵当に入れ、俺は数ヶ月前から職を探しているが今の時代なかなか安定した職は見つからず、どこも雇ってもらえない。
少しでも金を作るため、チノとココアくんには知り合いが密かに経営している「プチエンゼル」という非合法で無店舗型の売春クラブで無理矢理働かせ、ティッピーはラビットファーにした。リゼくんは当然バイトをやめた。

しかし、膨れ上がった億単位の借金を返すにはまだまだ足りない。




タカヒロ「はぁ……俺は一体、どうすればいいんだ!」


???「お困りのようですね」

タカヒロ「誰だ?」

???「私、こういう者です」っ

タカヒロ「名刺……、テレビ局のディレクターか」

ディレクター「借金でお困りのようですが、借金を返せる方法がありますよ!」

タカヒロ「なに!? 一体どんな方法だ!」

ディレクター「風船ですよ、風船」

タカヒロ「風船だと?」

ディレクター「ええ、風船で海を渡り渡米して世間から注目されればいいんですよ! そうすればスポンサーがついて莫大な金が手に入ります」

タカヒロ「なん……だと……それは名案だ!! こうしちゃおれん、すぐに準備だ」



ディレクター「……ふふっ」

そしてタカヒロは、風船で海を渡るという無法な挑戦を企てた。
そのためにタカヒロは空を飛ぶために大量の風船、ヘリウムガス、食料や緯度経度計測器などの必要なものを自費で揃え、着々と準備をしていました。



タカヒロ「ふふふっ……これが成功すれば借金返済どころか大金持ちだぞ」


チノ「……お父さん」

タカヒロ「おや、チノじゃないか。何気に会うのは久々だな」

ココア「……なにを、してるんですか?」

タカヒロ「ココアくんも久しぶりだね。見たまえ、これは私がこの数ヶ月の間太平洋横断のために造り上げた『ファンタジー号』だよ! これでアメリカまで行って有名になれば借金なんてあっという間に完済、それどころか大金持ちさ」





チノ「……お父さん、もう……やめてください!!」

タカヒロ「何!? 突然何を言い出すんだ、チノ!」

ココア「……私もチノちゃんも、もうこんなのこりごりなんだよぉ~~!!」

タカヒロ「ココアくんまで……」

チノ「もう……こんなの嫌です! 借金を返すためとはいえ、毎日毎日知らないおじさんに身体を好き勝手にされるのは」ウルウル

ココア「そうだよッ! 私もチノちゃんも学校に行かないで毎晩好きでもないおじさんの相手をするだなんて……もう耐えられない!」

タカヒロ「ワガママを言うな! 俺だって店が潰れてから大変なんだぞ! このファンタジー号だってそんな借金だらけの生活をなんとかするためにあるんだ! 誰のためにこんなことをしてると思っている、お前たちのためでもあるんだぞ!!」

チノ「そんなぁ……、なら、そんなものを造るお金があったらそのお金を借金返済に充ててくださいよっ!! お父さんのばかぁ!」

タカヒロ「何っ!? 親に向かって馬鹿だと……この親不孝者!!」


バチーーーンッ!!

チノ「きゃぁ!」

ココア「チノちゃん!! チノちゃんに何するの!?」

タカヒロ「ふん、お前たちは金のために黙って毎晩身体を売っていればいいんだ!」

ココア「……最低ッ!! 自分の娘を売り飛ばして手まで上げるだなんて!!」ギロッ

チノ「ココアさん……」

タカヒロ「小娘が生意気な、俺はこのファンタジー号で冒険家になるのさ! 渡米か成功して莫大な金が入ってきてもお前たちには1円たりともやらないからな」

ココア「……行こうチノちゃん、チノちゃんは私が守るよ」

チノ「ココアさん……はい。さよなら、お父さん……」

テクテク

タカヒロ「ふん、親の苦労も知らない馬鹿な娘たちめ……」

そして翌日、
タカヒロの呼びかけにより大学教授とテレビ局や新聞などのマスコミ、さらに支持者が何名か広場に集まっていた。


ワイワイ……ガヤガヤ……


タカヒロ「みなさん、本日はお集まりいただきありがとうございます」

教授「タカヒロくん、本当にこんなので飛ぶつもりかね?」

タカヒロ「当然ですよ。このファンタジー号でアメリカを目指すんです。今日はテスト飛行ですがね」

ディレクター「何を言ってるんですかタカヒロさん! テスト飛行とは言わずこのままアメリカまで行っちゃいましょうよ!」

タカヒロ「なに?」

教授「君、なにを言っているんだ! テスト飛行でさえ無謀だというのにこのまま渡米するだなんてあまりにも無茶苦茶だ! 自殺行為だぞ!!」

ディレクター「タカヒロさん、今すぐにでも大金が欲しいんですよね……」

タカヒロ「そ、それはぁ……」

ディレクター「1日でも早く借金を返済したいなら、今すぐにでも出発して世間から注目を集めるんです。タカヒロさんの旅立ちは私たちテレビ局がバッチリカメラに撮って流しますから」

タカヒロ「…………」

教授「タカヒロくん、テレビの煽りに乗ってはいけない。考え直すんだ」

タカヒロ「…………俺、行きます」


ヒューーーーン


教授「タカヒロくん!」

ディレクター「よぉーーし、カメラをまわせ! 生中継だ!!」




こうして、タカヒロは旅立ちました……

その次の日、リゼの家にて……


リゼ「二人とも、もう仕事には慣れたか?」

チノ「はい、おかげさまで」

ココア「いやぁ~、リゼちゃんの家で拾ってもらって助かったよ」


タカヒロと決別したココアとチノは、リゼの家でメイドさんとして住み込みで働いていました。


チノ「リゼさんには感謝しています」

リゼ「気にすることないさ。うちは広いし、二人くらい増えたところで____」


タタタッ……!

リゼパパ「大変だぁーー!!」

リゼ「オヤジ!? どうしたんだよ、そんなに慌てて」

リゼパパ「タ、タカヒロから……携帯で連絡が!」

リゼ「なにぃ!?」

ココア「チノちゃん……」

チノ「……あんな人、今さら知りません」

リゼパパ「それが、タカヒロはチノちゃんとどうしても話がしたいそうだ」

チノ「……代わってください」




タカヒロ『チノか……』

チノ「……お父さん」


タカヒロ『……朝焼けがきれいだよ』





____これが、タカヒロの最後の言葉となりました。


チノとの通話を最後にタカヒロとの音信は切れ、その3日後にSOS信号が発信され海上保安庁の捜索機が出動し、海上で飛行中のファンタジー号を発見。
しかしタカヒロは捜索機に向かい手を振ったりしゃがみこんだりを繰り返しSOS信号の発信をやめ、そのままファンタジー号は雲間に入り捜索は断念されました。

海上保安庁はタカヒロが乗ったファンタジー号が到着する可能性のあるアメリカ、ロシアなどの国々に共助要請を出し、しかも、それからというものをタカヒロを見たものは誰一人としていませんでした。



後日、

記者「あなたたちのテレビ局のディレクターが"風船おじさん"を煽ったのではないかと言われていますが?」

テレビ局「いえ、そのようなことは現場にいたわけではありませんので把握していません。それに、タカヒロ氏は数ヶ月後に無線免許を取得して、それから飛行すると聞いておりましたのでまさかその日に飛び立つとは思いませんでした」


「風船おじさん」とは、メディアがタカヒロにつけた呼び名であり、連日のようにマスコミはタカヒロ改めて"風船おじさん"のことを取り上げたのです。

新聞にも『風船おじさん! 無謀な挑戦で渡米も不明に』
と活字を大々的にして記事にし、

さらにあのディレクターが所属するテレビ局でもワイドショーの番組では風船おじさんのことを取り上げました。


チノちゃんはこれ以来、マスコミの風船おじさんの報道合戦に嫌気がさし、テレビ嫌いとなり、そして元気がなくなってしまいました……。
そんなココアはチノのため、リゼの家で住み込みで働き続けていますが、タカヒロによっていつの間にか店の共同経営者とされたチノちゃんはタカヒロが残した億超えの借金を返すこともできず、日に日に痩せこけていきました。
ココアも過労がたたり心身を悪くし、リゼはそんな二人のために何もできない自分がにくくなり、心を弱めてしまい_____、



リゼパパ「くそッ…………タカヒロ! 」


タカヒロと旧知の仲であるリゼのパパは、行方不明のタカヒロのために涙など流さず、むしろ憤りを感じていました。
タカヒロが生きて発見されることを見つかり、チノやココアたちを苦しめた張本人とし
て彼女たちに代わりぶん殴ってやろうと____、

リゼパパ「……タカヒロ……死んだら承知しねえぞ」

そして、風船おじさんとなったタカヒロは、いつの間にか誰の心の中からも消え去りました____。





しばらくして、


蓮舫「はぁ~~、ダリぃ」イライラ


私の名は蓮舫____、
最近、二重国籍だったことが世間にバレてしまった……クソ!

蓮舫「どうしようかなぁ~……ん? こんなところに少し前の新聞があるぞ」


蓮舫「なになに……『風船おじさん 失踪宣告か?』…………ふふっ」ニヤリ




その後、風船おじさんならぬ『風船おばさん』が世間を騒がせることとなりました。










千夜「私だけ出番なかったぁ……」

シャロ「私もよ!」


終わり

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