男「“一本でもニンジン”の限界にチャレンジしたい」 (21)

男「あのさ」

友「ん?」

男「“一本でもニンジン”って歌あるじゃん?」

友「あー、あったあった! どんどん数字が増えてく歌な。懐かしいな~」

男「俺さ……あれの限界にチャレンジしたいんだよな」

友「は……? 限界ってどういうこと?」

男「ようするに、あの歌の数字をどこまで大きくできるかやってみたいんだ」

友「まーた下らないことを……」

友「でもちょっと面白そうだな……やってみるか!」

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男「まずは、一本でもニンジン♪」

友「うん、基本だな」

男「二足でもサンダル♪」

友「あーそうそう、こんな歌だったわ。すげえ懐かしいんだけど」

男「三艘でもヨット♪」

友「四をヨットって、今思うとちょっと苦しいよなぁ」

男「たしかに」

男「四粒でもごましお♪」

友「ごま塩ふりかけたご飯食べたくなってきた」

男「ちょっとした飯テロソングだな、これ」

男「五台でもロケット♪」

友「ロケット五台って地味にすごいよな。値段いくらぐらいになるんだろ」

男「一台100万円として……」

友「そんな安いわけねえだろ! 億はいくだろ!」

男「六羽でも七面鳥♪」

友「七面鳥食いたくなってきた」

男「クリスマスまで我慢しよう」

男「七匹でもハーチ♪」

男「八頭でもクジラ♪」

男「九杯でもジュース♪」

男「――で、本来の歌ではここで『十個でもイチゴ♪』になるわけだが、ここから限界に挑戦したい!」

友「つまり次は……“十一”を目指すわけだな?」

男「その通りだ」

男「十一か……。十一のつく物とか動物とかってなんかあるか?」

友「じゅういち、じゅういち、じゅういち……うーん思いつかねえ」

男「いきなり難易度高いな……」

友「英語もありなら、セブンイレブンは“イレブン”が入ってるけど」

男「よし、それにしよう!」

男「十軒でもセブンイレブン♪」

友「だいぶ苦しいけど……まあしょうがないな」

男「十二……これは簡単だな。すぐ思いついた」

男「十一本でも十二指腸♪」

友「なんかグロイな。これ子供の歌だし、十二支とかのがよかったんじゃ?」

男「なあに、子供の歌にだってグロ枠は必要だろ」

友(必要かなあ……)

男「次は十三……十三ってなんかあるか?」

友「ゴルゴ13とか?」

男「それだ!」

男「十二人殺してもゴルゴ13♪」

友「もう子供には歌わせられないよな、これ」

男「十四はどうしよう?」

友「ジュウシマツでいいんじゃないか?」

男「即答かよ! やるじゃん!」

男「十三羽でもジュウシマツ♪」

友「悪くはないけど、七面鳥とかぶっちゃうのが痛いな」

男「この際、被りは気にしないことにしよう」

男「十五……これは簡単だな!」

男「14日でも十五夜♪」

友「いやいやいや! 15日じゃなきゃ十五夜じゃないだろ?」

男「いや、十五夜ってのは旧暦の8月15日の夜のことで、新暦とズレがあるから」

男「14日が十五夜になる可能性もあるぞ」

友「へえ~、そうなんだ!」

男「ま、よく覚えておきたまえよ」

友(く、悔しい……!)

男「十六……これも簡単だな」

男「十五杯でも十六茶♪」

友「思いっきり特定の商品名だけどな」

友「まあでも……セブンイレブンとゴルゴ13も似たようなもんだし、いいか!」

男「いいさ!」

男「十七ってなんかあるか?」

友「十七ねえ……」

友「あっ、十七条の憲法はどうだ?」

男「いいね! それでいこう!」

男「十六人で定めても十七条の憲法♪」

男「たしか十七条の憲法を定めたのは、聖徳太子だったよな」

友「今は研究が進んで、実在しなかったみたいな話も出てるらしいけどな」

男「マジで!? ショックなんだけど!」

友「なんでそこまでショック受ける必要があるんだよ」

友「お前、聖徳太子と接点ある人生送ってないだろ。高校でも世界史選んでたし」

男「たしかにそうだけどさぁ……でも子供の頃に偉人だと教わった人が」

男「実在しないとか、実はワルだった、とかって話を聞くと……やっぱりショックだよ」

友「まあ、気持ちは分かる」

友「次は十八だな」

男「十七人いても18号♪」

友「18号ってなんだよ。台風?」

男「ちがうちがう、ドラゴンボールの人造人間18号」

友「なんで18号が十七人もいるんだよ? 一人しかいないだろ」

男「夫であるクリリンがハーレムを作りたくて、クローン技術で培養した……って設定にしよう」

友「お前、クリリンに気円斬喰らわされても知らないからな」

男「次は十九か……なにかないかな」

友「じゅうきゅう、じゅうきゅう、じゅうきゅう……」

男「人造人間19号は?」

友「いや、さすがにダメだろ、それは」

男「うーん……なんかないかなぁ」

友「ジュークはどうだ? 日産の車」

男「おお、いいね!」

男「十八台でもジューク♪」

男「ジューク十八台って、いくらぐらいするんだろうな」

友「ロケット五台に比べりゃ安いもんだろ」

友「次は二十だな」

男「二十……にじゅう……二重!」

男「十九個でも二重丸♪ ――ってのはどう?」

友「お、いいね! なんか久々に無理がないというか、しっくりきた感じがする」

男「だろ? 俺が本気出せばこんなもんさ」

男「さて、二十一か……」

男「にじゅういち、にじゅういち、にじゅういち……」

友「ドラえもんの作者の漫画に、『21エモン』ってのがあったよな」

男「あったあった! ホテルを経営してるやつな! それでいこう!」

男「20世紀に連載してても21エモン♪」

男「次は二十二だ。“にじゅうに”がつく名詞を探そう」

友「にじゅうに、にじゅうに、にじゅうに……う~ん……」

男「なんも思いつかないな」

友「ああ、マジで何も思いつかない」

友「いっそスマホで調べちゃうか? そうすりゃ一発だぜ」

男「――いや、それはダメ! あくまで自力でやる!」

友「よくいった!」

友「よーし、自力で頑張ってみるか!」

男「おう!」

……

……

……

……

男「あ~……なんも思い浮かばない!」

友「どうやら俺らじゃ“二十一”が限界だったようだな……」

男「ずっと考えてたら、もう22時だ……」

友「お腹すいたし、メシでも食おうぜ」

男「そうだな。冷蔵庫になにかないか探してくる」

男「ニンジンしかなかった……」

友「お、いいじゃん! 今からメシ買いに行くのめんどくさいし、それ蒸して食べよう」

男「一本しかなかった……」

友「……」

友「ま、しょうがない! こういう時は歌を歌って元気出そうぜ!」

男「そうだな!」

友「せーのっ!」


二人「一本でーもニンジン♪」







― 終 ―

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