父「もうすぐ娘の誕生日か」 (41)

父「アイツは今高校1年生だから……今年で16歳か」


父「早いものだな…ついこの間まで、『大きくなったらパパのお嫁さんになる!』なんて言ってた子が、もう結婚できる歳にまで…」


父「まぁ、まだ娘をどこぞの誰かにくれてやる気は毛頭ないがな!」


父「それにしても、16年か……長かったような、短かったような」


父「妻に先立たれ、仕事に家事に育児にと大忙しの日々だったが、娘がとてもいい子に育ってくれたおかげで、なんとかここまでやってこれた」


父「……よし、今年のプレゼントは奮発してやろう。日頃家のことをやってくれている、そのお礼も兼ねてな」

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【我が家】

父「ただいま」


娘「あっ、パパ!お帰りなさい!」


父「おっ……この匂いは、焼きそばかな?」


娘「あったりー!今日のはちょっと自信作なんだ!あ、先にお風呂にする?」


父「いや、先に夕飯にしよう。話したいこともあるからな」


娘「……?」

【食事中】

父「お前、もうすぐ16歳の誕生日だろ?」


娘「ん?ひょうらけろ?」


父「食べながら喋るな……いやなに、今なにか欲しいものとかないか?」


娘「えっ、それって誕生日プレゼントのこと!?」


父「そうだ。何でも言ってみろ。何だって買ってやるぞ」

娘「な、なんでも!?確か去年まではプレゼントは3000円までって……」


父「お前ももう高校生だ。3000円程度じゃ足りないだろう」


娘「わ、わぁぁぁっ!本当になんでもいいの!?男に二言はない!?」


父「当たり前だ。日頃からお前には世話になってるからな。その労いの意味もある」


娘「やったぁ!嬉しい!パパありがとう!大好き!」


父「ふ、……それで、お前は何が欲しいんだ?言ってみろ」


娘「えっとね、パパのサイン!」


父「は?」

娘「今用意するからちょっと待ってね……」ガサゴソ


父「なんだ、何急にカバンを漁り始めて……今は食事中だぞ」


父「それに用意って何?なんの用意?」


娘「あーあったはいこれ」


父「……?学校からのプリントか?」


娘「違う違うそれ婚姻届」


父「なるほど婚姻届か」





父「ごめんちょっと意味わかんない」

娘「え?いやその婚姻届にサインして欲しいってだけなんだけど……」


父「いや"だけ"の使い方合ってる?ていうかこの婚姻届誰の?なんか妻の欄に娘の名前が書いてあるんだけど」


娘「私とパパのだよ。見ればわかるじゃん」


父「見てもわからん上に聞いても理解できないのは私が馬鹿だからなのかそうなのか」


娘「いやパパは黙ってこの婚姻届届けに自分の名前と判子押せばいいだけなんだけど」


父「それをした瞬間私の社会生命が終わるよね?あれ私何か間違ってるかな?」

父「ちょっと待って、状況を整理させて」


娘「うん」


父「もうすぐ16歳になる、私の娘が」


娘「うん」


父「私に、自分と父との婚姻届を書かせようとしている」


娘「何か問題が?」


父「逆にこの状況が問題ないと思えるお前の頭が問題だよ」

娘「パパ忘れたの?私たち昔結婚の約束をしてるんだよ?」


父「は、はっ!?いつ?どこで?私は知らないぞそんなことは!」


娘「ほら、私が『大きくなったらパパのお嫁さんになるー』っていったらパパ『いいぞー、娘が結婚できる歳になったらなー』なーんて言ってたじゃん」


父「お前それマジで言ってるのか……」


娘「何言ってるの?どこにもふざけた要素なんてないでしょ」


父「強いていうなら最初から最後までふざけた要素しかないな」

娘「まぁ、そういうわけだから、ほら早くサインサイン」


父「だからどういうわけだ」


娘「だから、もうすぐ私は結婚できる年になるわけでしょ?」


父「そうだな」


娘「で、パパは昔『私が結婚できる年になったら結婚をしてあげる』という約束をした」


父「そんな約束は反故だ反故!」


娘「あれれ?でもさ、『男に二言はない』んだよね?」


父「ぐっ……!?」

父(こ、こいつ……)

娘「……それとも、そんなに私のことキライ?」


父「え?い、いや……そんなわけがないだろう。お前は私の大事な一人娘だからな」


娘「ホント?パパは私のこと愛してる?」


父「ああ。そうだともさ。娘を愛せない父親なんているわけがないだろう」


娘「わかった。ありがとう。ふつつかものですが宜しくお願いします」


父「待て待てなぜそうなる」

娘「え?だってパパは私のこと好きなんでしょ?」


娘「私もパパのことが好き」


娘「何の問題もないじゃん」


父「その『好き』はそういう意味の『好き』じゃない!」


娘「私だってそうだよ。パパのことはパパとして大好きなの」


娘「声を聞くだけで濡れちゃうほど」


父「お前の愛は歪んでるよ」

娘「だから何の問題もないよ。私のことが好きっていう気持ちさえあれば大丈夫だから」


父「何が大丈夫なんだよ!倫理的にも法律的にも何一つ大丈夫じゃないよ!」


娘「ああ、それについては大丈夫。だってパパと私、血が繋がってないじゃない」


父「誰がいつそんな事言った!?お前は私と妻との間に生まれた、れっきとした私の娘だ!」


娘「えっ?」


父「え?」

娘「えっ……えっと、パパ、知らないの?」


父「……は?な、何が?」


娘「パパと私……血なんて繋がってないよ」






父「???」

娘「えーっと……これ見て。友だちの検察医にやってもらったDNA鑑定」


父「」


娘「私は……パパの子じゃない。ママとその不倫相手との間にできた子」


父「」


娘「何とか私とパパが合法的に結婚出来ないか、友達の探偵にいろいろ調べてもらったんだよ。見る?」


父「」


娘「……おーい?」

娘「……大丈夫?」


父「…………いや、すまん」


父「そういえば、アイツ死ぬ間際に何度も何度も『ごめんなさい、ごめんなさい』って言ってたなぁってことを思い出したんだ」


娘「そこで少しは疑おうよ」


父「いやだって普通考えないだろ確かに出産予定日聞いて『アレ?』とは思ったけどさぁ」


父「思えばお前が生まれる一年前から妙によそよそしい感じはあったけどさぁ」


娘「結構疑える要素あったね…」

16なのに検察医が友達ってどういうこと?超高校級の検察医か?(適当)
というかすでに親子関係にある場合はどっちにしろ結婚できないんじゃ……

父「……マジか。マジかぁ」


娘「なんか、ごめんね…。てっきりパパも知ってて、私を傷つけないために隠してくれていたんだとばかり….」


父「逆に私も知らなかった真実に辿りついたお前が凄いというか怖いよ。なんだよその人脈…。お前の交友関係どうなってるんだ…」


娘「え、えへへ…。そんな、大したことないよ」


父(そういえばこいつ何やらせても完璧だったな…)

>>20 空ちゃんだっておいたんと結婚してたしへーきへーき
高校生が大人の友達作っちゃダメなんて決まりもないし

娘「まぁそういうわけだから、早くサインサイン」


父「お前よくこのタイミングでそれ言えるな!?」


娘「別にいいじゃん死んだ人のことなんてどうでも。私たちは未来に生きてるんだよ!法律の壁が無くなった今パパを縛るものは何もないよ!さぁ欲望のままにペンをとれ!」


父「とるか!!ていうかお前の母さんだろ!その言い方はないだろ!」


娘「えぇ……どこの馬の骨かもわからんやつと作った子供を自分と夫の子供と偽って仲良し家族ごっこやるようなクソアマをママと思いたくないんだけど….」


父「え、あぁ……ごめんな、なんか….」


娘「…謝らないでよ」


娘「謝るぐらいなら……サインして?」


父「しないといっとろうが」

娘「……別にいいじゃん」


娘「私のことは愛してくれてるんでしょ?」


娘「私が血の繋がってない、赤の他人とわかった今でもその気持ちは変わっていないんでしょ?」


父「……当たり前だろう。血が繋がっていなくても、お前は私の娘だ」


娘「だったら―――」


父「だからこそ、ダメなんだ」


娘「―――っ」

父「いくらお前が優秀でも、いくらお前が可愛くても、いくらお前が私を愛してくれていても、お前は私にとって『娘』に過ぎない」


父「私はお前に『父親』としての愛情しか与えてやれない」


娘「………」


父「そしてそれは決して『ずっと一緒にいてあげる』ことではない。そんなものは愛とは言わない」


父「私はお前に自由に生きてくれることを望んでいる。私に縛られず、私の知らない世界でのびのびと生きて欲しいと思っている」


娘「…………パパ」

父「もちろん私だってお前と一緒になりたいという気持ちはあるさ。お前を他の誰にも渡したくないという気持ちもある。でも無理だ。お前は私の娘として、この世に生まれてきてしまったんだから」


父「私はお前の父親として、お前の幸せを願わずにはいられない」


父「だから……これにサインは、することができない」


父「わかってくれ。親子とは、そういうものなんだ」


娘「……………」

娘「………うん。パパなら、そういうと思ってたよ」


父「娘…」


娘「へへ。一足早く、とんでもない誕生日プレゼントを貰っちゃったね」


父「……まぁ、私もお前から特大級のプレゼントを貰ったからな…」


娘「ご、ごめんね…知らない方が良かったこともあるよね…」


父「いや、いい。お前も言っていただろう。私たちは未来に生きている、と」


父「過ぎたことでうじうじするのは、らしくないよな」


娘「……うん!」

娘「よしっ!」


父「?」


娘「さっきは変なこと言ってごめん。今からはちゃんと『娘』に戻るから」



娘「私は、幸せになるよ」


父「……ああ。それがいい」


娘「あ、そうだ。今日はデザートがあるよ!」


父「お、そうなのか?」


娘「ミスドがセールやってたんだ~♪パパはチョコファッションが好きだったよね?」


父「ああ。ありがとう」


娘「じゃ、いただきます!」


父「いただきます」

娘「どう?美味しい?」

父「ああ。美味しい。ありがとうな、娘」

娘「えへへ…お礼なんていいよ。お礼をするくらいなら」






父「へ?」ガクリ

娘「ちょっと眠ってて?」

【???】


父「んぅ……」


父「……こ、ここはどこだ」


娘「あ、気付いた?」


父「娘……!お、お前何し―――」ガチャ

父「手錠……?」


娘「ふふふ、いいでしょそれ。高かったんだよー」


父「お前……!何のつもりだ!こんなことをしてただで済むとでも…!」


娘「……まぁ、パパが真面目なのも知ってるし、娘に言い寄られたくらいでコロッといっちゃうほどチョロくないことも知ってたよ」


娘「だから……最終手段に出たわけ」


父「は、はぁ………?」

娘「……パパ。私これでも結構勉強してるんだよ?」


父「お、おい……何をする気だ……」


娘「1回じゃ落ちなくても……」


父「やめろ……来るな……やめろ……!」


娘「何回も何回もやれば、いつかはパパも私を『女の子』として見てくれるよね?」









「うわああああああああああああああ!!!」

今後の展開妄想しながら抜いてきます
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